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【メカアク】 カノ「もう一度、『私』って言わないの?」 キド「オ、オレは…」

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  1. 1 : : 2014/06/30(月) 00:23:08

    【メカアク】 カノ「もう一度、『私』って言わないの?」 キド「オ、オレは…」

    ※注意
    ・TVアニメ『メカクシティアクターズ』のネタバレが含まれます。

    ・最近メカアクを知り、アニメのみを観た俄《にわか》ですので、細かい事を知らないのは、悪しからず。

  2. 15 : : 2014/10/05(日) 19:03:09

    ――――迷いは、突然の一言から



    キド「…え?」

    カノ「ん?どうしたの、キド?」

    キド「い、いや…何でもない…んだ」

    カノ「……」

    キド「な、なんだ?」

    カノ「いや…いいよ、やっぱり」



    キド「……」



    なぜこいつは…突然、こんな事を言い出すんだ



    『もう一度、“私”って言わないの?』



    あまりに唐突で…思わず口をつぐんでしまったじゃないか

    …挙動不審に思われたかな?

    でも…やっぱり、今のオレは…“オレ”なんだ



    カノ「……」



    大方反応は予想できてはいたんだけど

    実際に戸惑う彼女の様子を目の当たりにすると…ボクも言葉が続かなくなっちゃったな

    キド…

    …いや、ボクはキドがなぜ『オレ』という一人称にこだわるのかを知っている

    だけど、ボクがこんな事を聞いてしまったのも…惜しい気持ちがあるからなんだろうね



    二人が腰掛けるソファーには、人一人分の空間の空いている

    妙な雰囲気がその場に漂う

    半分は息苦しい…その心は、“その事”に触れないと決めていた気遣い

    もう半分は…互いに新たな展開を切望する心



    セト「言われてみれば、そうッスね」

    マリー「私はキドが“私”って言っている所は聞いた事がないからよく分かんないかな~」



    緊張を破ったのは、この隠れ家に住むもう二人の住人



    セト「そういえば、キドが一人称を変え始めたのは、“あの頃”だったっすねぇ」

    マリー「あの頃?」

    セト「まぁ、何と言いますか…三人でここに住み始めた頃ッス」

    マリー「うーん、その頃の皆のエピソードはあんまりまだ知らないんだよね~」

    セト「ま、まぁ、マリーにはタイミングがいい時に、カノが話すと言いますか」

    マリー「うぅーん、はぐらかされてばっかりだし…え?なんでカノが?」

    セト「……」チラ

    カノ「……」



    うわ、セトってば、ここぞというところで、ボクに任せっきりにしてくるんだから

    …とは言っても、あの時はキドとボクの二人で話していた事で、セトは居なかったんだっけ

    セトはその事は追及しなかったけど、この顔を見るに詳細は知らないままって事だよね?



    キド「……」ムッスゥ



    でもなぁ、キドは見栄っ張りだし

    この少し不機嫌そうな顔を見るに、まだ知られたくないって感じだろうね

    …仕方ない。キドの機嫌を損なった責任で、ボクが“いつものように”なんとかするか



    カノ「っそぉーなんだよぉ、キドってば恥ずかしがっちゃってね」

    マリー「自分を“私”って言う事が、恥ずかしいの?」

    キド「……」ギロリ



    …おぉ、怖ッ!

    これは、早いうちに会話終わらせないと、ボクの身がマズい気がする

  3. 16 : : 2014/10/05(日) 19:04:09

    カノ「ま、いいじゃないか、今日のところは!それよりさ、マリー?」

    マリー「ぅん?」

    カノ「ちょっと、紅茶を淹れて来てくれないかい?」

    マリー「え?それはいいけど、どうしたの突然?」

    カノ「いやぁ、急にマリーの淹れてくれた心のこもった紅茶が飲みたくなってねぇ⤴︎」

    マリー「わ、分かった!行ってくるね!!」ダダッ



    タッタッタッ



    純粋な少女は、パタパタと足音を立てながら、ティーポットのある台所へ向かって行った

    その足音は「急げ急げ!」と掛け声を発しているようにも聞こえる

    焦らなくてもいい事は、分かっている…いや、もしかしたら分かっていないのかもしれない

    誰かの役に立ちたくて、皆の笑顔が見たいが故に、少女はまっすぐに今日も生きている



    カノ「…行っちゃったね」

    セト「もう。カノは偶に少し強引な所があるッスよ。マリーは純粋だからいいものの…」

    カノ「いやぁ、ごめんごめん!」

    セト「またそうやってヘラヘラ笑って…あんまりヒドイと怒るッスよ?」

    カノ「でも大丈夫だって。セトから横取りなんて無粋な事はしないから…さ?」

    セト「な、何言ってるんすか!マ、マリーの事はそういうつもりじゃ…」

    カノ「またまたぁ~、セトは分かり易過ぎて、本気でからかう気にもなれないよ」



    アッハッハ



    いつもこの家に響く笑い声

    けれど、いつもなら心地いいはずのこの雑音が今だけは、心苦しく思う彼女

    彼の能天気っぷりを見て、思わず溜め息を漏らしてしまう



    キド「…はぁ」

    カノ「あ…」

    セト「ん?キド、どうかしたッスか?」

    キド「いや…いい」

    カノ「……」

    セト「何がいいんすか?」

    キド「何でもない…少し出掛けてくる…テキトーな時間に戻るから」

    セト「ちなみにどこ行くんスか?」

    キド「…どこでもいいだろ…大丈夫。ちゃんと帰るから」



    ガチャ バタン



    その場から逃げるように、彼女は家を後にした

    その足が若干ふらつき気味になっていた挙動に気付いた者はいただろうか



    トテテテ



    マリー「あれ?キドは~?」



    そして、入れ違いに“おつかい”から戻ってきた彼女は、不思議そうに尋ねる

    キョロキョロと子供のように辺りを見渡し、やはり居ない事に疑問を抱き、首をかしげた

    …それと同時に、両手で支えるポットとカップの乗ったトレイも傾く



    セト「あぁっ!危ないッスよ、マリー!!」

    マリー「え?!…うわっ、うわわわっ!!」



    物理法則に従い、重力方向へ滑り始めるティータイム

    いつもの惨事の風景が一同の脳裏をよぎった――――!!



    セト「あっと!…ふぅ、危ない…間一髪ってところッスかね?」

    マリー「あぁ~、危なかったぁ~、またやっちゃうかと思ったよ~」

    セト「マリーはそそっかしいんスから、『現状を忘れないように!』ッスよ?」

    マリー「ごめ~ん、気をつけるよ~」



    瞬時に未来を察知し、トレイが傾くのを支えに入ったセト。

    おっちょこちょいな彼女の事を熟知しているからこそ、できた対応といえよう

    トレイの角度が付き、カップ達が滑り始めた瞬間、最悪の未来が見えていた彼女

    だが、そう何度も繰り返されては困ると、彼の身体は思考よりも早く行動を行った――――


  4. 17 : : 2014/10/05(日) 19:04:53

    一同が安堵し、その後は平穏な憩いの場が盛りつけられた

    落ち着いたマリーは再び、質問してみる事にした



    マリー「ねぇ、結局キドはどうしちゃったの?折角、四人分の紅茶淹れて来たのに」

    セト「あぁ~、キドは…少し散歩してくるみたいッス!」

    マリー「散歩?」

    セト「そうそう!でも大丈夫ッス!ちゃんと帰ってくるって言っていたッスから!」

    マリー「そっかぁ、なら帰ってきたらまた紅茶用意してあげよ~っと」

    セト「…マリーは優しいッスね」



    …まぁ、嘘はついていないよね。セトが言った事はキドが言っていた事そのままだし

    でも、なんかボクだけマリーの事もセトの事も欺いているように思えて…少し苦しいね

    マリーだけじゃなくて、セトも…って思うのは、なんでだろう

    セトだって、聞こうと思えばボクに聞けるはずなのに、いまだにその様子はない



    カノ「……」

    セト「どうかしたッスか、カノ?」

    マリー「ぅん?」

    カノ「…え?…あ、何でもないよ、あはは」

    セト「……」

    マリー「ふぅーん…あ、紅茶おかわり要る?」

    カノ「いや、ボクはこれでいいよ。ご馳走様」スクッ



    そういって、おもむろにソファーから腰を上げる

    だが、長年彼と共に過ごして来たセトには、その挙動が示す内心がわずかに伝わってきた



    セト「どこか行くんすか?」

    マリー「カノまでお散歩?」



    瞬時に、何かを感じ取ったから「どこか行くのか」と尋ねる

    ポカンとした表情を浮かべるマリーの質問の解も、当たらずとも遠からず



    カノ「うん。ちょっと、用事がある事を思い出してね…まぁ、散歩さ」

    セト「…いってらっしゃいッス」

    マリー「今日の晩御飯は、カノとキドが担当だから、いい加減に帰ってきてね~?」

    カノ「うんうん。分かったよ、ふふっ」

    セト「ははっ、マリー…なんか…くすっ」

    マリー「え?べ、別に食い意地張ってるとか、そんなんじゃないからね?!」



    カノ「それじゃあ、いってきまーす」シレッ

    マリー「あ、カノいってらっしゃ~い!ねぇセト!違うからね?!」

    セト「いってらっしゃいッス。分かってるッスよ、あはは」

    マリー「もう!…でも、二人ともなんで散歩に?なにか引っかかるんだよね」

    セト「…それは、いずれ二人が話してくれるッスよ。待っていればいつか」

    マリー「そっか。なら、私は待とうかな」

    セト「うん。それがいいッス!」



    …今日は、あの日ッスからね。

    キドもカノも今日は買い出しに外に出たくらいッスから、まだ行っていなかったのかも

    だとすると、もしかしたら、二人ともあそこへ――――



  5. 18 : : 2014/10/05(日) 19:05:30

    ――――「お姉ちゃん」

    つい口から漏れてしまった言葉

    キドは、アヤノの墓石の前にしゃがみ込み、合掌していた

    この日はアヤノの一周忌だったのだ

    手を合わせる腕の中を見るように、首を胸元に傾け続ける

    目は開けない。ここへ訪れ墓参りを行っている時は、彼女は目を瞑ったままでいた



    キド「…ぐすっ」



    呟きは小さな嗚咽に変化した

    次は感情が口から漏れ出た



    もう…あれから一年経つんだね

    アヤノお姉ちゃん。私、やっぱり忘れられないよ。

    皆の頼もしい存在になるんだ!強く在るんだ!って、自分の心を奮い立たせているけど

    ここに来ると、それが抵抗なく一気に崩れてしまうんだ

    それは、まだ私の決意や覚悟が弱いって事なのかな…?



    「それは、違うよ?」



    …え?



    思わず頭を上げ、周囲を見渡す

    …誰も居ない

    それもそのはずである

    彼女は人が少ない時間帯を見定めて墓参りへやってきたのだから

    勿論、彼女の能力を使えば、誰にも憚らずにひっそりとそれを済ませることもできる

    だが、こんな時くらいは、力を使わずに“素の自分”で姉に向かい合いたいと思ったのだ



    キド「……」



    誰も居ない事を再認識し、訝しく思いながらも再び手を合わせ、うつむく



    そういえば、お姉ちゃん。カノがまたおかしな事を言ってきたんだ

    なんでも、オレが「私」って言わなくなった事を気にしていたらしい

    …オレはオレなんだ。皆の団長を担う為には、オレでなければだめなんだ

    もう…弱かったあの頃の自分には戻りたく…ないんだ

    今だって決して強いとは言えないかもしれないけど、こう生きると決めたから

    アヤノお姉ちゃんも…オレのこの思い…分かってくれるよな?



    キド「……!」



    少し離れた距離から聞こえてくる足音を素早く察知する

    周囲の様子を気にする性格だからこそ、より敏感に気付くことができる彼女の特性である

    相手がこちらに気付く距離でないことに、ひとまず安堵する

    だが悠長な事も言っていられず、彼女はそそくさと存在感を消し、別の墓の影に身を潜めた

    距離を確かめ、そこで改めて安堵する



    「……」



    その足音の主は、彼女がつい今しがた居た墓前で歩みを止めた

    その人物を認識するのには時間は掛からなかった

    黒を基調としたその特徴的なパーカーを着る人物は、彼女の中で一人しか心当たりはない

    …カノだ

    彼もまた、彼女と同じ目的でここを訪れたのは、一目瞭然で明白だろう

    そして、彼は先程の彼女とまるで同じ体勢となるようにしゃがみ込んだ


  6. 19 : : 2014/10/05(日) 19:06:29

    その様子を見ていたキドであったが、その場から出ていこうとはしなかった

    無意識的にだが、その陰に留まる事を選んだのだった

    …何かを呟いている

    彼の声がギリギリ明確に拾える距離

    だが、それは自らの発する音もまた、彼に聞こえる距離である事を意味する

    その事を理解していた彼女は、息を潜める事と声を聴きとる事に神経を集中した



    カノ「もう、一年になるんだね」

    カノ「こっちは大丈夫だよ。皆元気にしてる」

    カノ「強いて言うなら、ツボミがすっかり変わったって事かな」



    キド「……!」



    自分の名前が挙がり、ピクリと反応する

    変な事言ったら、また後で蹴ってやろうと密かに心に思う




    …アレ?何だろう。何かいつもと違和感がある

    あ、また何か話しているから聞かないと



    カノ「それでさ。ツボミはその時にどうしたと思う?ヒドイんだよ、これがまたさ、ははっ」



    …分からない。いつもと何が違うんだ



    カノ「でも、彼女はいつも皆の前に立とうと頑張ってる。それがツボミの心の強さだよ」



    …そっか。分かったよ、この違和感の正体が

    あいつが…カノが私の事を「ツボミ」って呼んでいる事だ



    カノ「でも、ツボミも元々強い子じゃないから、無理に振舞っているように僕には見えてね」



    いつもは「キド」って呼ぶし、それはあいつが提案した事だからそれに乗っていたのに

    あいつ、私が居ないときは…昔みたいに「ツボミ」って名前で呼んでいるんだ



    カノ「もっとボク達を頼りにして、自分だけで皆を支えようとしないでほしいんだよね」



    バカ。それは私が自分で決めた事だ。いつまでも弱虫の私で居るわけにはいかないから…

    だから、私は「オレ」って…あれ?今、オレ…自分の事を「私」って…?



    カノ「…それじゃ、僕達の近況も伝えたから、ボクは帰る事にするよ」



    ん?カノの奴、もう帰るのか?

    意外とあっさりと話して終わりにしたんだな



    カノ「といっても、いつもボク達の事を見守ってくれているんだよね」



    …そっか。そうだよな。お姉ちゃんはいつも私達の事を見ている

    こうしてここに墓参りに来るのは、その確認みたいなものだ

    ここに来れば、本当にまたお姉ちゃんと会える気がするから…



    カノ「また花と水を替えに来るよ…アヤノお姉ちゃん」



    振り返り、歩き始める少年。その影が語る心境は如何や



    …帰って行ったか

    そういえば、あいつの口から「お姉ちゃん」と聞くのは、いつ以来だろう

    もう…二年は聞いていないんじゃないか?

    思い出せば、お姉ちゃんとカノが二人でこっそりと何かし始めた頃からだろう

    その頃から、カノの表情は少しずつ変わっていった…と思う

    でも、それがなぜなのかはよく分からない。お姉ちゃんに何か関係があるのだろうか…?



    相変わらず影に居続ける少女。思案にふける中で、一つの事に気付く



    …あっ、オレも帰らないと!

    カノより遅れて帰ると、色々と面倒だ



    どうやら、彼女はまだ本質には迫れないようだ――――





  7. 20 : : 2014/10/05(日) 19:07:03

    ――――夕食後の席



    セト「ごちそうさまッス!」

    マリー「はぁ、今日も美味しかったね~」

    カノ「まぁ、料理上手のキドが居てくれたからね」

    キド「ふっ、褒めなくてもいいぞ」

    セト「とか言いつつ、内心喜んでいるのがキドッス」

    マリー「だよね~、キドの表情で私でもすぐわかるもん」


    キド「なっ!」

    カノ「……」

    セト「ん?カノ、どうかしたッスか?」

    カノ「ん?いや、何でもないよ?ただ微笑まして眺めていただけさ」

    キド「……」

    マリー「あっ!そういえばさ、キドは結局カノより遅れて帰ってきたね」



    核心へ迫るリスクの高い問いかけも、純粋な心だからこそ許される事がある



    セト「あっ…」

    キド「あ、あぁ。済まなかったな。少し外出しすぎたよ。今度は気を付ける」

    マリー「ふぅーん、そうなんだ~。でも、ご飯美味しかったからいいよ!」

    キド「ふふっ、ありがとな。また次も腕を振るうから」

    マリー「ほんとに?やった~!」

    カノ「ふふっ」


    セト「あっ、今日の片付けは俺とマリーでやっておくッス」

    マリー「ん?」

    キド「え?いいのか?私達が食事当番だし、気を遣わなくてもいいぞ?」

    セト「遠慮はいらないッス。今日は特別美味しく感じたッスから」

    カノ「まぁまぁ、お言葉に甘えようよ、“キド”」

    キド「あっ…んん、またお前は楽な方に…いや、じゃあよろしく頼もうか」



    “何か”言い掛けたものの、それを躊躇した

    先程の事もあり、自分への呼び方に対して、今更ながら僅かに反応してしまった



    セト「任せてくださいッス」

    マリー「うん!私もやるよ」

    カノ「いやでも、マリーがやると泡だらけになったり、お皿が悲鳴を上げたりで心配も」

    マリー「そ、そんな事…多分ないもん!」

    キド「多分の部分が小さくて聞こえにくかったぞ?」

    マリー「うぅ、あぅぅ」


    セト「ほらほら、二人とも茶番でマリーをいじめないでくださいッス」

    マリー「うぅ、セトだって笑ってるじゃん」

    セト「なんかこう、楽しいんス」

    マリー「うん、私もそうだよ?」

    キド「それじゃあ、二人とも片付けよろしくな」

    カノ「ボク達は、このまま居間でテレビでも観てのんびりしていようか――――」





  8. 21 : : 2014/10/05(日) 19:07:32

    ――――テレビの音と台所からの水洗音が家の中で交差し合っている

    箱から流れてくる雑音は、他愛もない内容

    向こうの部屋から聞こえてくるのは、楽しそうな声

    妙な心地よさを奏でる空間がそこにあった

    そんな雰囲気に誘われ、彼女は彼に核心を問いかける



    キド「あの、カノ…少しいいか?」

    カノ「なんだい、キド?」

    キド「その…出掛ける前、お前が言っていたことなんだが…」

    カノ「…あぁ、その事かい。いいんだよ、気にしなくても」

    キド「いや…オレは…ううん、私は!」

    カノ「……!」


    キド「…あぁ」

    カノ「キド…今…」

    キド「あぁ。『私』って…言ったんだ」

    カノ「…どうしたんだい?何か心境の変化でもあったのかい?」

    キド「まぁ…少し考えてな…話、聞いてくれるか?」

    カノ「そんなの、聞かないって言う奴が大馬鹿野郎だよ」


    キド「ははっ…馬鹿野郎か…」

    カノ「……」

    キド「私、ずっと悩んでいたのかもしれない」

    カノ「……」

    キド「この口調やお前達の名前の呼び方を変えたあの日から…ずっと悩んだままだ」

    カノ「…そっか」


    キド「私は強く在りたかった…お姉ちゃんのように」

    カノ「…うん。知ってる」

    キド「弱虫のままじゃいけないから。今度は私達だけで生きなくちゃいけないから…」

    カノ「うん…うん」

    キド「でも、今日カノに呼び方の事を指摘されて…少し、迷いが生じた」

    カノ「悩ませてしまったのなら、それは悪かったね」


    キド「いや、寧ろ良かったんだ。おかげで私は、目の前がようやく見えた気がした」

    キド「ずっと見えなかった。一度失って…作るとまた失って…盲目を繰り返していた」

    キド「分かったんだ。今の私に必要なのは、虚像の強さじゃなくて…信頼する強い心だって」

    カノ「キド…」

    キド「私は、やっぱりお前達を信じてるから…セトもマリーも…カノ、お前の事も」

    カノ「……」


    キド「私はもう偽らない。偽物の私はもう捨てて、皆と真に向き合って生きるから」

    カノ「…強くなったね、キド」

    キド「うん…だから、私はまた『私』として生きていく」

    カノ「うん。ボクもそれがいいと思う。似合ってるよ」

    キド「ふふっ、調子の良い奴め…だから、カノにもお願いがあるんだ」

    カノ「お願い?それは、何だい?」


    キド「……」

    カノ「……」

    キド「ツ…」

    カノ「つ?」

    キド「う、あう」

    カノ「一体、何だい、キド?」


    キド「わ、私の事を…また『ツボミ』って呼んでくれないか?」

    カノ「…え?それって…」

    キド「お前はすっかり『キド』と呼ぶのに慣れてしまったみたいだが…やっぱり私は…」

    カノ「……」

    キド「だ、だめ…か?」

    カノ「…そんなわけないよ…ツボミ」


    キド「…!!」

    カノ「あれ?なんだろ…目にゴミでも入ったかな?」

    キド「バカ…そんな強がりは要らないぞ?」

    カノ「強がり言ってたのは、いつもツボミだったじゃないか、ははっ」

    キド「だから、それはもうやめるって言っただろ?」

    カノ「それに、視界が歪んでいるのはボクだけじゃないみたいだよ?」
  9. 22 : : 2014/10/05(日) 19:08:28

    キド「…うっさい…たまたま目にゴミが入り込んだけだ。すぐ治まる」

    カノ「ツボミが頑固なのは、昔から変わってないね」

    キド「ふんっ、変わらないものもあったという事だ」

    カノ「…それで?ボクの事は、これからは何て読んでくれるんだい…ツボミ?」

    キド「バカ、言わなくてもそんな事分かるだろ…シュウヤ」

    カノ「ふふっ、ありがと…ありがと」


    セト「もう!二人だけでずるいッスよ?」

    マリー「そうだよ!私達も混ぜて~!!」

    キド「うわ!なんだお前ら、二人していきなり?!片付けは終わったのか?」

    カノ「あらあら、二人にずっと見られていたみたいだね」

    キド「ず、ずっと?!」

    カノ「そうなんでしょ?」


    セト「あーあ、それは言わない約束ッスよ!」

    マリー「えー、でもセトが私の口抑えて黙らせたんじゃ…」

    セト「あー、それも言わなくていい事ッスよ」

    マリー「あ、ごめん~」

    セト「ま、まぁ洗い物なんてあっという間に終わってしまって、お二人の話を聞いてたんス」

    マリー「ご、ごめんね?」


    キド「…いや、いいんだ。どうせ二人にも言うつもりだったからな」

    カノ「まっ、赤面は不可避だっただろうけどね」

    キド「こら、シュウヤ!一々かわかうな」

    カノ「あっはっは~、ごめんごめん」

    セト「…それで?」

    マリー「私達は?」


    キド「…決まっているだろ」

    カノ「うん、決まっているさ」

    キド「シュウヤ、コウスケ、マリ…これからもよろしくな」

    セト「よろしくッス。ツボミ団長」

    マリー「うわー、マリって名前、本当に久しぶりだぁ~」

    カノ「ボク達は少し道に迷って、スタートラインに着き直したに過ぎないんだね」



    彼女は自身が欲していた本質に一歩歩みを寄せた

    自身の事。だが、彼の事はまだ分からないままだ

    だが、焦ることはない。時期が訪れれば、知る事になるだろう

    それには相応の覚悟が必要であり、受け止める器を彼女はこれから育《はぐく》んでいく



    キド「…ふふっ」

    セト「ツボミ、どうかしたッスか?」

    マリー「ぅん?」

    キド「いや、なんでもないんだ」

    カノ「そっ!なんでもないのさ~」

    キド「なんでシュウヤが言ってるんだ、全く…ふふっ、だけど、これからもっと楽しくなる」

    キド「そんな日常が訪れる予感に…今ももう既に、胸が踊っているのさ――――」



    人生は、一つの糸のように紡がれていく

    過去も未来も、そして現実もいずれも決して無駄ではなく意義を持つ

    彼らの物語は、「これまで」も、そして「これから」も変わらずに紡がれ、「今を最も」楽しんで歩んでいく――――



    Fin.


  10. 23 : : 2014/10/05(日) 19:09:54

    終わりです。3か月間放置してしまい、申し訳ないです

    番外編9話以外の未完のSSは全て完成しましたので、順次投稿を再開しますね

    では。
  11. 24 : : 2014/11/28(金) 21:23:51
    お疲れ様でした。
  12. 25 : : 2015/01/03(土) 18:03:23
    その…
    とても面白かったです‼
    お疲れ様です‼
    私も文才があれば…
  13. 26 : : 2015/01/14(水) 20:19:34
    お疲れ様でした。
  14. 27 : : 2015/04/02(木) 01:30:31
    文才もあって、面白くて、感動的でした!
  15. 28 : : 2015/07/30(木) 19:11:21
    すごいです!!
  16. 29 : : 2015/08/03(月) 00:19:34
    素晴らしいです!
    この小説に巡り逢えたことに感謝したいくらいです!
    再度言いますが素晴らしかったです!
  17. 30 : : 2016/05/05(木) 10:20:07
    http://www.ssnote.net/archives/45676
  18. 31 : : 2016/11/07(月) 18:28:53
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  20. 34 : : 2017/03/28(火) 11:34:56
    30~33なんなの?

    荒らし?

    そうか。荒らしか。



























    ふざけんな
  21. 35 : : 2017/04/22(土) 14:29:48
    荒らすなあああああ
  22. 36 : : 2017/12/25(月) 01:32:27
    >>1
    お疲れナイスです

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