このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
この作品は執筆を終了しています。
【ネタバレ注意】舞園「やらなきゃ…ここから出るために…。」
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                  - 1 : : 2014/04/12(土) 23:18:11
- テーマ:クロが何を思いながら殺人を犯し、学級裁判に望んでいるのか。
 
 2作品目です。内容は上のテーマ通りです。
 よって、展開はシリアスであり、欝な展開もありますし、グロテスクな表現もあります。
 
 また、内容は私の妄想と状況から推測して書くため、「それは違うよ!」という展開もあるかと思います。意見してくれると、そういう見方もあるのかと喜ぶので「こうじゃないの?」という書き込みは大歓迎です。
 
 1&2ゲームプレイ済みとアニメを見てるくらいの知識です。ファンブックなどの公式設定などは知らないため、間違ってることもあるでしょうが、ご容赦を。
 
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                  - 2 : : 2014/04/12(土) 23:19:48
- 舞園さんはクロではありませんが、一応未遂なので。
 では行きます。
 
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                  - 3 : : 2014/04/12(土) 23:24:16
- ~舞園さやかの場合~
 モノクマに渡されたDVD。そこには自分の仲間たちが倒れている映像が流れていた。
 舞園「いやああああああ!」
 苗木「ま、舞園さん!」
 舞園「なんで!?どうしてこんな!?出してよ!早くここから出してよ!?」
 苗木「舞園さん!落ち着いて!」
 舞園「いやあああ!」
 舞園はなりふり構わず走り出した。視聴覚室から出て、走るが、呼吸が落ち着かず、すぐに走れなくなった。
 舞園「はっ…はっ…!」
 舞園(なんで、どうして、私の仲間が…私の居場所が…。)
 彼女は最初からアイドルだったわけではない。幼い頃から多数の習い事、テレビの偉い人への接待、同期先輩後輩、同じアイドル見習いたちからの嫌がらせ、それらを払い除け、時には自ら攻撃を仕掛けて、蹴落とした。
 アイドルになるためなら他の者を蹴落とし、嫌いな相手に媚びへつらうこともする。
 文字通りなんでもしてきた。そして今の超高校級のアイドルという立ち位置に彼女はいる。
 苦楽を共にしてきた仲間たちの無残な姿を見て、動揺しないわけがなかった。
 舞園(メンバーはどうなったの?私の居場所は?これまでやってきたことが…無意味になる…?)
 それはとてつもない、恐怖。
 今までの努力すべてがなかったことになる。
 あんなに嫌な思いをしたのに!
 あんなに苦しい思いをしたのに!
 それらを全部乗り越えて、やっとたどり着いたのに!
 それがすべて、なかったことになる。
 
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                  - 4 : : 2014/04/12(土) 23:56:36
- 舞園(ダメ…。それだけは…絶対にダメ…。)
 苗木「舞園さん!」
 舞園の息が整い出した頃、苗木が追いついた。舞園はすぐに逃げ出そうとするが、苗木に腕を掴まれてしまう。
 舞園「いや!離して!」
 苗木「舞園さん!落ち着いて!みんなで協力すれば絶対に脱出できるよ!」
 落ち着けるわけがないが、それでも苗木は言葉を紡ぐ。
 舞園「助けなんて来ないじゃない!」
 根拠のないことをいう苗木に苛立ちを覚える。
 そして苗木は次の言葉を言ってしまうのだった。
 苗木「僕が君をここから出してみせる!どんなことをしても絶対に!絶対にだ!」
 とりあえず自分を安心させるための言葉、だということはすぐにわかった。
 この程度の言葉などで自分が揺らぐこと、本来はない。
 舞園「な、えぎ…くん…。」
 気づけば苗木の胸に抱きつき、舞園は自分の中の不安や迷い、怒りに悲しみといった感情を流し出すように声を上げて泣いた。
 と、同時にこれは決別の涙。
 自分を出すためならどんなことでもすると言ってくれた彼。そんな彼を裏切る…。
 舞園(やっぱり私は外の世界に出たい…。)
 例え、優しい彼を裏切ることになるとしても。
 だから…今だけ。泣くのはこれから先何があったとしても今回だけ。
 舞園(だから苗木君…今だけ思いっきり泣かせて…。)
 舞園「ああああああああ…!うわああああああ…!」
 
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                  - 5 : : 2014/04/13(日) 01:01:44
- 落ち着きを取り戻し、部屋に戻った舞園は冷静に計画を練り始めた。
 舞園(まずは武器。私の腕力では素手でここの誰かを殺すことは無理。殺すとしたら、不二咲さんか、苗木君だけど…彼らはできれば殺したくない…。)
 裏切る覚悟をしたといっても、彼らを、彼を殺したいわけじゃない。
 私が出るために、一度だけ裏切るだけ…。
 舞園(食堂に包丁があるのは確認してる。後日…犯行の直前に取りに行こう。)
 そして、殺す相手。
 自分には殺すことができない、できなさそうな人物や苗木のような殺したくない人物を除外していく。
 結果。
 舞園(桑田…くん。)
 候補には葉隠、腐川、山田がいたが、その中から桑田は一番誘い出しやすいだろうと思った。
 舞園(アイドルである私から誘いを受けたら、桑田くんなら夜時間でも簡単に来てくれそうです…。)
 何より彼は超高校級の野球選手という才能を持ちながら、ダサいという理由でその才能を活かせる道に進まず、モテそうという理由でミュージシャンを目指していると聞いた。
 自分が上り詰めた場所をそんな軽い考えで目指そうという彼に怒りを感じた。
 と、自分に言い訳をするための動機も用意した。
 舞園(私は…桑田くんを…殺す。)
 相手を決めてから、まずは謝罪した。
 これから桑田に行うことは謝っても許されることではない。
 そして、裏切ってしまう苗木にも謝罪をする。
 舞園(こんな弱い私でごめんなさい。あなたたちを巻き込んでしまってごめんなさい。どういう結果になっても迷惑を掛けてしまうことになってしまって…ごめんなさい。)
 それでも彼女は殺人を犯して、外に出ると決めているのだった…。
 
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                  - 9 : : 2014/04/13(日) 13:01:12
- 夜時間直前。
 もうほとんどの者が部屋に戻り、就寝の準備を始めているだろう。
 舞園は再度手に持った包丁を見る。
 包丁を見るたびに手が震える。それが恐怖なのか、悲しみなのか、もはや彼女にもわからなかった。
 しかし、それでも計画を辞める気はない。
 舞園(今夜、桑田くんを殺して、外に出る…!)
 そのために自室の扉を開け放った。
 
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                  - 10 : : 2014/04/13(日) 13:04:20
- 苗木には怖がる演技をして、部屋の交換を持ち出すと、快く了承した。
 本当に舞園のことを心配して、了承してくれたのだ。
 舞園の心が痛む、がここで止まれない。
 直様、舞園はメモ用紙に桑田を呼び出す文章を書き始める。
 
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                  - 14 : : 2014/04/13(日) 18:36:45
- 舞園(桑田くんの部屋の扉の隙間からメモを入れた。あとはそれに気づいて、部屋に来るのを待つだけ…。)
 扉から死角になる場所に身を潜める。
 心臓が早く脈打つ、決意したはずなのに手足が震える。
 初めてライブに出演した時もこんなひどくはなかったんじゃないか?と場違いなことを考えて気を紛らわした。
 来なければ殺せないし、できれば来て欲しくないという自分もいる。
 外に出るためとは言え、人を殺すことなどしたくない。
 そう考えていたとき
 桑田「ういーす。舞園ちゃーん?」
 桑田はその扉を開けてしまったのだ。
 舞園「やああああああ!」
 油断している桑田に包丁を突き出した。
 
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                  - 15 : : 2014/04/13(日) 19:01:33
 失敗した。
 完全な不意打ちである初撃を避けられ、さらに苗木との探索で見つけ、護身用にと持ち帰らせた模擬刀で反撃を受けた。
 舞園(右手が痛い。)
 舞園(怪我は結構してきたけど、今までこんな怪我したことがない。骨折しちゃったかな?)
 舞園(苗木君にシャワールームの立て付けのことを聞いていなかったら危なかった。)
 聞いていなければ逃げ場がなく逆に殺されていただろう。
 さっきまでシャワールームの扉を叩いていた桑田はどこかにいったのか静かだ。
 今のうちに移動したほうがいいのかもしれないが、右手が痛くて、うまく動かない。
 それに扉を叩かなくなっただけで扉のすぐそばにいるのかもしれない。
 諦めてくれるまでこの中にいるしかない…。
 そう考えてしまい、舞園はシャワールームから出ることができなかった。
 
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                  - 18 : : 2014/04/13(日) 20:57:28
 しばらくして、奇妙な音が聞こえた。
 カチャ、カチャ…。
 その音がドアノブをなんとか開けようとしている音だと気づくのにそこまで時間はいらなかった。
 しかし、今の舞園には何もできることはない。
 ただ開錠の時を待つだけだ。
 ガチャン!ギィィィィ…。
 舞園「あ…。い…や…。」
 血走った目、攻撃されて逆上しているのは目に見えてわかった。
 そしてその手には先ほど自分が攻撃に使った包丁。
 舞園「いやああああ!ごめんなさい!ごめんなさい!」
 今自分の頬を濡らす涙は何の涙だろうか。
 この謝罪は何のための謝罪なんだろうか。
 桑田が何かを言っているが、舞園には聞く余裕も聞く必要もない。
 ただその場から逃げようと入口に立っている桑田を退けようとした。
 しかし、捕まってしまい…。
 グサッ…。
 舞園(ああ…。まさか…私が…。)
 包丁が刺さって力が抜ける。
 立っていることも難しく、へたり込む。
 舞園(だ…め…意識が…。)
 瞼が閉じていく中、思い浮かべたのは、自分を信じてくれた苗木のこと。
 舞園(そう…だ。このままじゃ…苗木君が…。)
 自分で裏切っておきながら、こんなことを思う資格もないとは思いながらも、最後に苗木にしてあげられることをしよう。
 ノロノロと動く左手の指先に自分の腹から溢れでた血を付け、背中に目の前の彼の名前を書く。
 舞園には桑田に見えているかどうかを考える余裕はなかったが、実際、舞園の体で見えていなかった。
 舞園(こ、れ…で…。)
 舞園(…ごめ…な…さ……。)
 最後に誰かへの謝罪をしながら舞園さやかはその生に幕を下ろした。
 
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                  - 19 : : 2014/04/14(月) 00:24:27
- 賛否両論はあるでしょうが、殺人を犯すと決心したとは言え舞園さんは根はいい人だと思っているので、最後まで彼女は謝罪をしながら死んでいったんだと思い、こうなりました。
 恐らく殺人が成功していたら、その罪悪感からずっと謝罪をしていそうなイメージなんです。
 私はこう考えてるっていう意見を短くでも書いてくれるとうれしいです。別に議論するわけではないので、軽い気持ちで書いてもらえれば。
 さて、次から桑田くんのターンになります。
 舞園さん視点と対比して、読んでみるといいかもしれません。
 
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                  - 20 : : 2014/04/14(月) 00:28:08
- ~桑田怜恩の場合~
 変な白黒の熊がコロシアイがどうと言っていたが、そんなことを本気にする奴がいるなんて思ってなかった。
 DVDを渡されて変な映像を見せられた時も、不安にはなったが、それでも殺人を起こそうとするやつがいるとも思わなかった。
 桑田(ほかの奴が何思ってるかなんてわかんねーけど、コロシアイなんて起きねぇだろ。)
 そう思っていた。
 
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                  - 24 : : 2014/04/14(月) 18:12:39
- DVDを見た日の夜。
 桑田は夜時間にはなったが、素直に寝る気はなく、何をしようかと考えてる最中だった。
 桑田(ん?何だありゃ、紙?)
 明らかに自室に入るときはなかったものだ。
 桑田はその紙を拾い上げ、そこに書かれてある内容を読む。
 桑田(ま、舞園ちゃんが話がある?え、まじか?もしかしてこれってキタんじゃね!?)
 この手紙を見てすぐに舞園の部屋に来て欲しいという旨が書かれてあった。
 桑田(しかも夜時間に呼び出して二人っきりで話…おいおいおい!こりゃ…)
 下品な笑いが抑えきれない。
 ここの女の子のレベルはみんな高いが、超高校級のアイドルと評される彼女はその中でもやはり一つ抜きでていた。
 手紙をもらってから妄想が止まらない。
 桑田(いけね。こんな顔で行ったら嫌われちまう。)
 顔を両手で叩いて、情けない顔を治す。
 桑田「よっしゃ。行くか。」
 桑田は夜時間のルールも忘れて、自室の扉を開け放った。
 
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                  - 27 : : 2014/04/14(月) 21:02:19
- 桑田「えーと、舞園ちゃんの部屋は、っと。ここか。」
 桑田が注意深い人間だったら、違和感に気づいただろう。
 または各部屋の配置について、誰がどこの部屋かマップを注意深く見ていたら違ったかもしれない。
 もちろん桑田はマップを一度見ているが、浮かれていてそんなこと思いつきもしなかった。
 桑田「ういーす。舞園ちゃーん?」
 そしてその扉を開けてしまった。
 
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                  - 28 : : 2014/04/14(月) 21:03:18
 舞園「やあああああああ!」
 桑田「うわっ!?」
 身構えてなどいなかったが、野球選手の反射神経が働いたのか、その一撃を避けることができた。
 そこには包丁を持って、切りつけてくる舞園の姿があった。
 桑田「舞園ちゃん!?お、落ち着けって!?」
 話など聞く様子もなく、包丁を振り回してくる舞園。
 ここまですべて反射神経で包丁を避けているが、この狭い部屋ではジリ貧だと桑田にはわかっていた。
 桑田(あれは…!)
 視界の端に映る金色の模擬刀。その存在感を全力でアピールしている刀以外この部屋で武器と呼べそうなものはなかったし、一度目についてしまうとそれしか目に映らなくなる。
 桑田は模擬刀を手に掴むと、包丁を狙って振り下ろした。
 
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                  - 29 : : 2014/04/14(月) 23:27:32
- バキッ!
 嫌な感触がした。
 見ると、どうやら舞園の包丁を持っていた右手に当たってしまったようだ。
 怪我をさせてしまったことに一瞬怯むが、また攻撃されては困ると思い、落とした包丁を拾った。
 それを見た舞園がシャワールームへと逃げる。
 桑田「おい!待てよ!」
 桑田は飛びつくが、シャワールームの扉が空く気配はない。
 桑田(クソッ、女子の部屋のシャワールームには鍵が掛かるんだったな。)
 中の舞園に聞こえるように扉をどんどん叩きながら叫ぶ。
 桑田「舞園ちゃん!出てきてくれ!」
 コロシアイの話を本気にしたのがまさかあの超高校級のアイドルの舞園さやかだった。そのことに少なくないショックを受けたが、とりあえずはこの場を収めようと考えた。
 何を叫んでも、いくら叩いても出てくる気配はない。
 桑田「くそ!出てこねぇし…ん?」
 個室の扉にはピッキング防止がされているが、シャワールームの扉にはそういった技術は使われていないようで、普通の扉だ。
 桑田(だったら…。)
 桑田は自室に工具セットを取りに行き、中からドライバーを取り出した。
 
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                  - 30 : : 2014/04/15(火) 19:02:33
- 納得がいかなかった。
 あのモノクマにコロシアイをしろと言われたからといって、それを実行する人間がいたというのもそうだが、何よりその標的に自分が選ばれたことに納得がいかない。
 桑田(俺、舞園ちゃんに何かしたか!?殺されるほどの何かを!)
 した覚えなどない。むしろ自分など相手にされておらず、今のところ舞園は自分に何の感情も抱いてすらいない、くらいの認識だった。
 怒り、悲しみ、戸惑い、猜疑、様々な感情が渦巻き、桑田の冷静さを狂わせていく。
 カチャカチャ…。
 ドアノブを壊し、シャワールームの扉を開け放つ。
 舞園「あ…。い…や…。」
 明らかに怯えている舞園に桑田は声をかける。
 桑田「落ち着けって舞園ちゃん!俺は何もしねぇ!」
 舞園「いやああああ!ごめんなさい!ごめんなさい!」
 泣き叫び、謝り続ける舞園が飛びかかってくる。いや、体当たりでもして桑田を押しのけようとしたのかもしれない。
 とにかく、桑田も咄嗟に舞園を止めようとしてしまった。
 
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                  - 31 : : 2014/04/15(火) 19:03:43
- グサッ…。
 今伝わってきたこの嫌な感触は一体何だ?
 桑田は恐る恐る自分の右手を見る。
 桑田(なんで包丁が舞園の腹に刺さってるんだ…?)
 何も考えられない。どうしてこうなった。
 俺はただ話をしようと…。
 舞園が壁にもたれかかるように倒れ、眠るように息を引き取るまで、桑田はただ呆然としていた。
 
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                  - 32 : : 2014/04/15(火) 20:58:28
 桑田(くそっ…。どうして俺が…。なんで…。)
 出てくるのは答えの返ってこない疑問の言葉ばかり。
 おびただしい量の血で彩られたシャワールームの真ん中にいる舞園を見やる。
 桑田(そもそもこいつが俺を殺そうとしなけりゃ…!)
 桑田(自分がヤッタとばれてはいけない。)
 そう考えた桑田は証拠隠滅をすることにした。
 部屋の傷は仕方ない。とりあえず自分の毛の色は目立つ。万が一発見されないためにもクリーナーで掃除した。
 次に血まみれの自分のシャツ。
 返り血でべっとりと汚れてしまっている。
 桑田(どこかに隠すか。いや、発見されたら終わりだ。完全に隠蔽できるところ…。)
 燃やす。トラッシュルームにはゴミを焼却する焼却炉があった。
 急いでトラッシュルームに向かう。
 桑田(くそっ、なんだこれ。鍵がかかってる。)
 焼却炉の前にはシャッターが下りており、鍵がかけられていて開かない。
 破壊することもできなさそうだ。
 微妙な隙間は空いているが、人が通れるわけもない。
 桑田(くそっ、目の前にあんのに…。いや…確かあそこに…。)
 ボールはないが、水晶玉(葉隠曰く)ならあった。
 昼前に葉隠が水晶玉がないと騒いでいたのを思い出し、そしてその居場所も知っていたのだ。
 桑田(これを…あそこ目掛けて!)
 狙うは焼却炉を稼働させるスイッチ。
 今までの経験や自分の力から外れる気はしない。
 上手く稼働させて、血まみれのシャツを放り込むことができた。
 舞園が桑田を呼び出した紙もグシャグシャにしてトイレにでも流せばいい。
 桑田(これで大丈夫。俺がしたってわかるような証拠はもうないはず…。)
 これで卒業…?
 劇的な展開すぎて感情が追いつかない。
 桑田は今まで夢でも見ていたんじゃないかと思いたかった。
 自室に戻ってベットに倒れ込んで、ようやく体が震えだす。
 とんでもないことをしてしまった、いや、俺のせいじゃない。
 あの女が襲ってきたんだ、俺のせいじゃない。
 もみ合っているうちに持ってた包丁が刺さっちまった、事故だ。俺のせいじゃない。
 桑田「俺のせいじゃない…。俺のせいじゃない…。」
 一晩中自分に言い聞かせたが、体の震えは止まらなかった。
 
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                  - 33 : : 2014/04/15(火) 21:21:09
- モノクマ『お前ら、おはようございます…。』
 桑田(くそっ、結局寝れなかった…。)
 頭痛と吐き気、体は怠いし、体調は最悪。
 桑田(確かほかのやつにバレたらダメなんだよな…。)
 校則6、仲間の誰かを殺したクロは”卒業”となりますが、自分がクロだと他の生徒に知られてはいけません。
 何でバレたらいけないのかわからないが、それなら今までどおり、平然と、昨日までの自分と同じでいなければならない。
 モノクマの放送から随分と経った。
 桑田(朝食会…行くか。)
 最悪の気分のまま自分の個室から出て行った。
 
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                  - 36 : : 2014/04/15(火) 23:45:30
- 舞園が来ない、ということで苗木が騒ぎ、すぐに舞園の死体が見つかった。そして、体育館で学級裁判について説明を受けた。
 桑田(ふざけんな。何だ、学級裁判って。何だお仕置きって。)
 江ノ島「ふざけんな!」
 急に江ノ島が騒ぎ出し、モノクマに反抗した。
 モノクマが江ノ島に向かって、走って行き、それをあっさり江ノ島が踏みつけた。
 モノクマ「うぷぷぷ。学園長への暴力は校則違反だよー!」
 モノクマ「助けて!グングニルの槍!」
 グササササササッ!
 桑田(はっ…?なっ…。)
 気づけば江ノ島は多くの槍に全身を貫かれ、倒れていた。
 桑田(ふざけんな。もし学級裁判とやらで俺が犯人だって気づかれたら、俺が…ああなる!?)
 人を殺せば出られるんじゃないのかよ、ただで出られるんじゃないのかよ…!
 桑田(いや、そんなに甘くないってことだよな…。)
 もし俺が犯人だってバレたら、俺が殺される…。
 ここの全員を犠牲にしてまで出ようなんて思っていなかったが、こうなってしまったものは仕方ない。
 とにかく、今から証拠隠滅できるものはしてしまって、捜査に協力してる振りをしよう。
 
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                  - 37 : : 2014/04/16(水) 00:23:40
 モノクマファイルを見て、初めて苗木の部屋が現場だと気づいた。
 桑田(これ、苗木を犯人ってことにしてごまかせるんじゃねぇ?)
 なぜ舞園を殺した部屋が苗木の部屋なのかはこの際どうでもよく、とにかく苗木を犯人にすることで切り抜けられるかもしれない。そんな希望が桑田に沸いた。
 現場である苗木の部屋やトラッシュルームには人がいて、特にすることもできることもなかった。
 何より苗木の部屋が現場であることを押せば、何とかなると思った桑田は特に何もしなかった。
 赤い扉の先。
 全員が集まって、最後に苗木が来た。
 桑田「苗木が犯人なんだろ?」
 そう言って、苗木に注意が向くようにしておく。
 霧切に止められたが、腐川は苗木が犯人と疑っていないようだ。
 全員が収容できるエレベーターに乗り込む。
 桑田(この先にあるのがなんなのかはわからない。けど…絶対に死んでたまるかよ。)
 絶対に生き残ってみせる。
 そう考えて、エレベーターを降りるのだった。
 
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                  - 39 : : 2014/04/16(水) 20:24:23
- 学級裁判は省略して、学級裁判が終わったあとまで進みます。裁判中の話までするとさすがに長いのでw
 
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                  - 40 : : 2014/04/16(水) 20:26:05
- 苗木「桑田くん…君の工具セットを見せてもらえるかな?桑田くんの工具セットは使用されているはずだよ。」
 十神「もし他の用途で使用したと言うならその用途を言ってもらおうか。」
 霧切「言っておくけど、なくしたというのはなしよ。」
 桑田「……アポ?」
 何も考えられない。
 俺が犯人?
 バレた?
 投票された。
 舞園のやつ、あんなわかりやすく俺の名前書いといたのに、なんで気付かなかった?
 ネームプレートでの部屋の交換もなんで気付かなかった?
 そもそも俺は殺す気がなかったんだ。
 事故だ、殺されそうになったんだ、正当防衛だ、そうだ。
 俺は悪くない。
 モノクマ「ひゃっほー!大正解!今回舞園さやかさんを殺したのは桑田怜恩くんでした!」
 桑田「……はい?」
 全員が桑田に問いただす。なぜ殺したのか。
 桑田「仕方ねぇだろ…。オレだって…殺されそうになったんだ…。」
 桑田「それとも大人しく殺されてりゃよかったってのか…?」
 感情がぐちゃぐちゃで、何を考えていいのかわからない。
 
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                  - 41 : : 2014/04/16(水) 20:49:20
 モノクマ「てなわけで、桑田怜恩くんにお仕置きを受けてもらいまーす!」
 なんでだ!なんで俺がお仕置きを受けるんだ!?
 いやだ!いやだいやだいやだいやだいやだ!
 なんでこうなっちまった。
 そ、そうだ、正当防衛だったんだ!
 桑田「そうだ!正当防衛じゃね!?俺は自分の身を守るためにとっさに…。」
 セレス「あなたの行為のどこが正当防衛なのですか?」
 桑田(セレス…!)
 セレス「あなたはシャワールームの鍵を壊す際、自分の工具セットを使ったのですよね?つまり彼女がシャワールームに閉じこもったあと、あなたはわざわざ自室に戻り、そこから持ってきたドライバーで鍵を壊し、とどめを刺したのでしょう?」
 セレス「あなたには立ち止まるチャンスは何度もあったはずです。でもそうしなかった。あなたには明確な殺意があったからではないのですか?」
 桑田(そうだけどそうじゃねぇよ!)
 桑田「いや…だから…それは…」
 正当防衛とか事故とか、正当化するための言葉が考えついては消えていく。
 自分には殺意なんてなかった。
 舞園を殺す気なんてなかった。
 しかし、どんな言い訳を並べてもセレスの言うとおりこの状況は自分が舞園にトドメを刺しに行っているようにしか見えなかった。
 どんな言葉でもこの場を逃れることができるようには思えなかった。
 モノクマ「そんなことより、さっさとクロのおしおきを始めちゃおうか~!」
 桑田「頼むよぉ…やめてくれよ…!」
 ダメだ。逃げ道がない。どんな言い訳もどんな懇願もこいつは聞いてくれない。
 そんな妙な確信が桑田を絶望させる。
 モノクマ「超高校級の野球選手である桑田怜恩くんのために」
 どこで間違えたんだ。
 モノクマ「スペシャルなお仕置きを」
 舞園が悪い!俺は悪くない!
 モノクマ「用意しましたー!」
 モノクマ「では、張り切っていきましょう!おしおきターイム!」
 桑田「いやだあああああああああああああああ!!!!」
 それが桑田怜恩の最後の言葉になった。
 千本ノック –Million Fungoes-
 
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                  - 46 : : 2014/04/18(金) 22:15:38
- ~大和田紋土の場合~
 石丸清多夏。超高校級の風紀委員。
 その肩書きから頭の堅い、自分のような所謂「悪」を許さないやつだと思っていた。
 実際話してみて、予想を裏切らずお堅いやつだった。
 しかし、同時に努力を忘れず、常に前を向いてる男気溢れるやつだった。
 互いに全く合わない水と油のような才能を持っていたが、そんなものは関係ない。
 互いに認め合って、心が通じ合えりゃ、みんな『兄弟』だ。
 その日から俺と石丸、兄弟は『兄弟』になった。
 
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                  - 47 : : 2014/04/18(金) 22:29:28
 次の動機、それは「24時間以内に殺人が起きなければ、知られたくない過去や知られたくないことを世の中にばらす」というものだった。
 大和田は自身の秘密が書かれた紙を強く握り締める。
 大和田(なんでだ?なんで知ってやがる!?)
 焦りと知られたくない過去を想起して、怒りと悲しみが蘇る。
 大和田の秘密は「自分の兄貴を殺したこと」だ。
 俺が弱かったから、兄貴が死んだ…。
 俺が弱かったから、今こんな状況になってる…。
 いや!俺は強い、俺は強い、俺は強い…!俺は強くなくちゃいけねぇんだ…!
 大和田が必死に自分に言い聞かせていると、周りが騒がしくなる。
 朝日奈「さすがにこれくらいで人を殺す人なんていないんじゃない?」
 石丸「よし!ではここで公表してしまえば良いのだ!」
 『これくらいで?』
 自らが抱える秘密は決して『これくらい』ではない。
 そして、ここで公表しようが、24時間後に世間にばらされたら自らが率いるチームは終わる。
 前リーダーを殺して、今の座に就いているなどバレたらそんなリーダーに付いてくるものなどいないだろう。
 死ぬ直前兄貴は「俺たちで作ったチームを頼む」と言った。
 大和田がもっとも尊重する男同士の約束である。
 それを守るためには24時間以内に殺人を起こすこと…。
 しかし、男同士の約束といってここにいる奴らを殺すのは…。
 『間違ってる』
 そう頭でいくら理解しようとも、やはりチームが解散する、男同士の約束を反故にするということを拒絶してしまっていた。
 チームを潰すわけにはいかない、しかし、殺人など起こすわけにも…。
 大和田は大切なもののために、苦悩していた。
 
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                  - 48 : : 2014/04/19(土) 23:08:21
 大和田は秘密をばらされ、チームが解散してしまうかもしれないという状況から過度のストレス下に置かれていた。
 石丸「兄弟。あんな動機で殺人なんて起こるはずがない!そうだろう?」
 無邪気に聞いてくる石丸に大和田は少し苛立ちを感じながらも
 大和田「おうよ。誰にだって…そういう秘密はあらぁな。」
 いつもの強気な様子もなりを潜め、伏せ目気味に答える大和田だったが、その様子に石丸は気付かなかった。
 石丸「そのとおりだ!何も恥ずかしいことはない!だからみんなで公表するべきなのだ。」
 大和田「……いや、だからって自分からおおっぴらに言いふらすことでもねぇだろ。どうせ24時間後には公開されちまうんだ。それまで待とうぜ。」
 石丸「うむ。そうだな。みんなが不安になるだろうと思っての配慮だったが、兄弟がそういうなら大丈夫だろう。」
 石丸はここにいる者たちを信じている。秘密を暴露されるくらいで殺人など起きないと本気で信じているのだ。
 その石丸のまっすぐなところが、大和田には眩しすぎた。
 大和田「わりぃ、兄弟。ちょっと一人にしてくれや。」
 石丸「うむ、そうか。僕は見回りをしてくるとしよう。」
 そう言って、一人になった。
 石丸の真っ直ぐさが羨ましい。
 大和田(俺もあんな風に真っ直ぐに信じれたら…)
 兄貴を殺したという事実を知られてチームが解散する、というのは大和田の予想であって、確定事項というわけではない。
 その事実を突きつけられたメンバーはそれでも大和田についてきてくれる可能性もあるのだ。
 結局のところ、大和田はメンバーを信じきれていないのだ。
 もちろん仲間であり、信頼もあるが、今回の秘密を突きつけられたメンバーが自分に付いてきてくれると信じきれないのだ。
 リーダーとして、超高校級の暴走族として、男として、仲間を信じきれない。
 そんな自分の弱さが死ぬほど嫌だった。
 大和田(いや、俺は強い。強くなくちゃいけねぇんだ。兄貴よりも…。)
 
- 
                  - 49 : : 2014/04/22(火) 22:31:59
 フラフラと歩く大和田は自然と人気の少ない場所へと向かっていた。
 大和田「あ?」
 気づけば、あのでかい入口と思われる場所に立っていた。
 2階が解放された今、ここをまた調べようとする人間はいない。何度も探索され、脱出できないと思い知らされてる場所だ。新しい情報があるならそちらを手に入れに行くに決まっていた。
 大和田「ちっ。なんだってこんな場所に。」
 すぐに出ていこうと思ったが、視界の端にあるもの引っかかった。
 大和田(最初に探索したっきりでこういう細かいところは誰も見てねぇんじゃねぇか?)
 大和田が調べたのはレターケースだった。
 この部屋にあるのは金属の扉、ガトリングガン、監視カメラ、モニター、そして目の前にあるレターケースくらいだった。
 もう一度調べて意味があるとは思えなかったが、大和田にとっては気を紛らわせるための行動だった。
 大和田「あん?こりゃ…電子生徒手帳か?」
 見つけたのは3つの電子生徒手帳。
 点けてみると、そこには「舞園さやか」と名前が表示された。
 他の電子生徒手帳も点けてみると、「江ノ島盾子」、「桑田怜恩」と表示された。
 間違いない。このコロシアイで死んでいった者たちの電子生徒手帳だ。
 大和田(そういや、俺のは兄弟とサウナで対決した時に壊したっけな)
 そう思いながら、大和田はそれをレターケースに戻した。
 一応新しい発見はあったが、脱出につながりそうなものでなかったため、少し落胆したのが正直なところだ。
 大和田(こんな発見、役に立たねぇだろ…)
 そう思っていた。
 
- 
                  - 50 : : 2014/04/26(土) 00:59:43
- 不二咲「ねぇ大和田くん!」
 大和田「あ?なんだ不二咲」
 正直意外だった。
 こいつはいつもおどおどしてて、人にはっきりと意見を言えないやつ。
 暴走族である自分に話しかけてくるなんて思いもしなかった。
 不二咲「僕体を鍛えようと思ってるんだけど、今日の夜時間に付き合ってもらえないかなぁ?」
 大和田「あ?そりゃ構わねぇけどよ。なんだって夜時間なんだ?」
 不二咲「それは…後で言うよぉ…。」
 大和田(このタイミング…あの秘密とやらが関係ありそうだな。)
 さすがの大和田でも察しがついた。
 なぜ自分なのか、というのがわからなかったが、とりあえず聞くだけ聞こうと思った。
 大和田(…笑っちまうな。自分のことも解決できてねぇのに…)
 大和田「ちっ…。」
 不二咲に聞こえないように舌打ちをして、大和田はとりあえず不二咲と別れた。
 
- 
                  - 51 : : 2014/04/26(土) 01:01:21
 夜時間直前になり、大和田は自室を出た。
 夜時間出歩き禁止のルールなど最初から全く気にしていなかったが、今回その原因を作っているのがあの真面目そうな不二咲だと思うと、少し変な気分だった。
 大和田(あと…10時間もねぇな…。)
 時計を見て、改めて思う。
 殺人を犯す気などない。
 しかし、あと10時間もしないうちに、自分と兄で作ったチームが終わる…。
 そう思い込んで、しかし何もできなくて、やるせない気持ちだった。
 大和田(クソがっ!)
 苛立ち、怒り、焦り、様々な感情が大和田を蝕んでいた。
 
- 
                  - 54 : : 2014/04/27(日) 23:17:46
 大和田は更衣室に行く前に、玄関に行き、桑田の電子生徒手帳を拝借した。
 他人の電子生徒手帳の貸与は禁止だが、持ち出しは禁止されていない。
 それに自分の電子生徒手帳はサウナの件で壊れてしまっている。
 ここで拝借しないと男子更衣室に入ることができないのだ。
 多くの野球ボールで滅多打ちにされた桑田の姿が脳裏をちらつくが、無理やり振り払った。思い出して気分のいいものではない。
 気を取り直して、大和田は更衣室へと向かった。
 
- 
                  - 55 : : 2014/04/27(日) 23:21:11
 不二咲「あ、大和田くん。」
 大和田「おう、不二咲。待たせたか。」
 不二咲「ううん。大丈夫だよ。」
 大和田「じゃあ、プール側に行って、トレーニングと行くか。」
 更衣室のトレーニング器具はお互いが入れないため、一緒にトレーニングという要件を満たせない。そう思っての発言だった。
 大和田は電子生徒手帳を取り出し、男子更衣室の扉を開けた。
 大和田「じゃあ、また後でな。」
 不二咲「…大丈夫だよ。大和田くん。」
 大和田「あ?」
 不二咲「僕、実は男なんだ…。」
 大和田「は?何言ってんだ?」
 冗談かドッキリかと思った。そのため大和田は当然信じなかった。
 不二咲「先に入っててよ。すぐに証拠は見せれるから。」
 真剣な表情をする不二咲を笑い飛ばせない大和田は動揺しながらも言われたとおり更衣室へ入った。
 すぐに更衣室の扉が開かれ、不二咲が入ってきた。
 当たり前のように、当然のごとく。
 大和田「ま、まじで男だったのかよ…。」
 あのモノクマが不二咲の性別を知らないとは思えない。
 また電子生徒手帳の不備とか読み取る機械が故障しているとかそういったミスをモノクマがするとは思えない。
 「不二咲が男である」という事実が真実であると、信じないわけにはいかなかった。
 不二咲「うん…。隠しててごめんねぇ。みんなにはまだ言わないで欲しいなぁ。」
 うつむきながら謝る不二咲だが、大和田はそんなことを気にしてる余裕はない。
 大和田「あ、ああ…。」
 不二咲「約束だよぉ?」
 
- 
                  - 58 : : 2014/04/28(月) 22:58:09
- 大和田「…でも、なんでだ?」
 不二咲「え?」
 大和田「例の秘密、オメェの秘密ってのはその男であることを隠してたことだろ。なんで打ち明ける気になった。しかも俺に。」
 大和田は部屋を出るときに感じていた苛立ちや怒りが再燃してくるのを感じていた。
 なぜそうなったのか、大和田自身にもわかっていなかった。
 不二咲「僕は今まで弱い自分が嫌いだったんだ。男のくせに腕力は弱いし、女々しいし…。だから最初から女の振りをしてたら、僕のことを最初から男と思われなかったら大丈夫だって思ってたけど…それは、ただ逃げてただけって気づいたんだ。」
 不二咲が大和田をまっすぐ見つめる。身長差があるせいで不二咲が大和田を見上げて、睨みつけてるようにも見える。
 不二咲「変わりたいんだ!今までの弱い自分を壊してさ!」
 不二咲は弱い自分を乗り越えて、新しい自分になろうと頑張っている。頑張ろうとしている。
 それに対し、大和田は
 プチッ
 頭の中の何かが切れてしまった。
 苛立ち、怒り、焦り、そして嫉妬。それらの感情によって今まで溜め込んだストレスとその下に隠れていたどす黒い感情が溢れ出してきた。
 弱い自分から変わろうとする不二咲の強さ、それは自分が欲してやまないもの。
 大和田(俺よりも…コイツの方が強い…?)
 いや、俺は強い、俺は強い、俺は強い、俺は強い、俺は強い、俺は強い、俺は強い…!
 不二咲よりも兄貴よりも!
 誰よりも何よりも!
 大和田(俺は何よりも強くなけりゃいけねぇんだああああああああああああ!!)
 ドッ
 
- 
                  - 59 : : 2014/04/30(水) 00:36:27
 何かの衝撃。
 それは自分の腕から伝わって来るものだった。
 最初、それが何なのか全く理解できなかった。
 目の前の状況も自分の状況も何が起きたのかも。
 ただ目に映る状況を説明するなら
 頭から血を流して、倒れている不二咲が目の前にいて、血が付いたダンベルを自分が持っている
 というものだった。
 大和田「あ…ああ…」
 手に持つダンベルを見ると、血がべっとりと付き、そして不二咲の頭を見る。
 どう見てもこれで殴ってしまったとしか思えない。
 なぜ、どうして、俺はダンベルを手に持っていて、不二咲は倒れている…?
 答えはすぐに出た。
 『大和田紋土は不二咲千尋をダンベルで撲殺した。』
 大和田「あ、ああ…ああああああああああああ!!!」
 やってしまったことの重大さ、不二咲への申し訳なさ、何より自分の弱さが招いてしまった結果による、後悔。
 大和田「ふ、不二咲…。」
 大和田は微かな希望を持ち、不二咲がまだ生きている可能性を持って、不二咲の体を揺らす。
 しかし、全く動かず、虚ろに開かれた目から光が失われていることから確認しなくても死亡していることがわかった。
 大和田「ぐっ…不二咲ぃ…すまねぇ…。」
 大和田は泣きそうな声で謝罪したのだった。
 
- 
                  - 60 : : 2014/05/01(木) 00:58:34
 しばらく不二咲の死体と共にその場にいた。
 大和田(学級裁判、このまま何もしなけりゃ、俺がクロってバレて俺が処刑…。)
 それでもいいか、と思った。
 殺してしまった不二咲に申し訳が立たない、というのと何より自分を許せない。
 罰を与える存在がこのコロシアイを仕組んだ黒幕ということが納得いかないが、この際なんでもいい。
 生き残るメンツにも余計な手間を取らせなくていいだろう。
 大和田は倒れている不二咲を見る。
 冷静に考えれば、不二咲が持つ強さに嫉妬したということに気づいた。
 それもただの嫉妬ではなく、頭が真っ白になって咄嗟に相手を殺してしまうほどのイカレタ嫉妬。
 大和田(情けねぇ…。結局俺は弱いままか…。)
 自分より強いと思った相手を殺して、自分が上に立つという最低な方法を取ってしまった…。
 大和田は自慢のリーゼントが崩れるのも構わず、顔をうずめた。
 不二咲『みんなにはまだ言わないで欲しいなぁ。』
 不二咲『約束だよぉ?』
 そして、思い出した。
 不二咲は大和田に男であることを打ち明けたが、まだ他の者に打ち明けるほど勇気を持てていたわけではない。
 だから、大和田にそう頼んだのだ。
 あまり気にしなかったが、大和田はそれを了承している。
 不二咲との『約束』だ。
 大和田は霧切や十神を騙せるとは思っていない。
 しかし、不二咲が男であるという秘密は守る必要がある。
 そういう『約束』だからだ。
 しかも不二咲が男であることを明かしたあとであるから『男と男の約束』である。
 大和田(男同士の約束なら…守らねぇわけにはいかねぇな。それに…兄貴との約束もどうすんだ…!)
 兄との『男と男の約束』もある。その約束を果たすためにも自分はここから出る必要があるのだ。
 大和田はここから出るために生き残る決心をした。
 
- 
                  - 61 : : 2014/05/06(火) 23:44:52
- 決意してからの大和田の行動は早かった。
 まず、不二咲が男だとバレてはいけないことから現場が男子更衣室ではいけない。
 大和田は桑田の電子生徒手帳を借りたように、レターケースから適当に電子生徒手帳を取り出した。
 男子更衣室の中はいたるところに血が飛び散ってしまっている。
 そのため男子更衣室で血が付いているものすべてと女子更衣室で同等のものと交換する必要があった。
 不二咲とマットを同時に移動させる。
 不二咲周辺は特に血痕が酷いため、不自然がないようにするためにもマットごと移動させる必要があった。
 大和田(くっ…。不二咲…)
 自分でやったということ、さらに不二咲を物のように運んでいる事実が大和田の心を蝕んだ。
 さらにいくら男と打ち明けたといっても、それまでの女というイメージがいきなり消えてなくなるわけではない。
 男であると理解しても、女に手を挙げてしまったという意識が少なからずあった。
 女子更衣室に移動し、マットをゆっくりとおろす。
 そして女子更衣室にひかれているマットを退け、不二咲とマットを違和感のないように広げる。
 マットの上に倒れる不二咲を見ては、胸が引き裂かれそうな気持ちになるが、やることをやらなければ、と無理やり奮い立った。
 女子更衣室のポスター、マットを持ち、男子更衣室へ。
 男子更衣室のポスターと持ってきた女子更衣室のポスターを貼り換え、同じように男子更衣のポスターを女子更衣室に貼る。
 そして、忌々しい、凶器となったダンベルを持つ。
 不二咲の血で汚れ、大和田の所業を示している。
 それを不二咲のそばに置く。
 ダンベルを証拠隠滅できる場所を大和田は知らない。
 また隠しても発見されれば、終わりである。ならば、最初から死体のそばに置いていたほうがまだマシだと考えた。
 
- 
                  - 62 : : 2014/05/06(火) 23:45:25
 大和田(現場の入れ替えは終わった…。あとは…)
 電子生徒手帳と不二咲が持ってきた荷物。
 不二咲が男であると示す証拠品。
 これの壊し方を大和田は偶然ではあったが知っていた。
 恐らく霧切や十神であっても知らない自信があった。
 サウナの前に立ち、不二咲の電子生徒手帳を見る。ついでに桑田の電子生徒手帳も持ってきている。
 夜時間であっても、サウナは稼働しているようだ。
 サウナを見て思い出すのは兄弟、石丸のことだ。
 大和田(兄弟、すまねぇな…。)
 何について謝れば良いのか。
 騙すことか、裏切ったことか、不二咲を殺したことか。
 恐らく全てだ。
 超高校級の風紀委員の肩書きを持つ石丸は今夜の大和田の行ったことすべてを許さないだろう。
 だから、そのすべてについて謝りながら、大和田は不二咲の電子生徒手帳を破壊した。
 これで不二咲の電子生徒手帳の中身を見られることはない。
 そして自分自身の電子生徒手帳が壊れていると悟られると、『壊し方を知っている=犯人
 』であると結びつけることができるため、桑田の電子生徒手帳を持ち、自分の電子生徒手帳はレターケースに入れておいた。
 大和田(これで…)
 終わり。
 考えつく限りの証拠隠滅は行った。
 約束を守るための工作も行った。
 すべて終わったと実感して一気に疲労感が襲ってきた。
 同時に涙が出そうなほどの悲しみと後悔と怒り…様々な感情の奔流が襲ってきた。
 大和田(まだだ…。)
 大和田は叫びそうな衝動を抑え、部屋に戻った。
 扉を閉め、ベットに倒れた瞬間
 大和田「ああ…あああああ…」
 我慢した感情が一気に溢れ出した。
 壊れそうなほど心が痛む。
 この痛みから逃れるには思うがままに叫び、吐き出すしかなかった。
 大和田「あああああああああああああああああ!!!あああああああああああああああ!!!」
 涙は流さない。
 涙を流す資格などないから。
 涙を流して楽になることなど許されない。
 例え不二咲が許してくれても、大和田が許せないのだ。
 だが、それでは辛すぎる。
 だから涙は流さず叫び声だけ上げて、感情を吐き出す。
 叫び声は大和田が疲れて、眠ってしまうまで続いた。
 
- 
                  - 65 : : 2014/05/08(木) 00:25:17
 モノクマ『お前ら、おはようございます…。』
 眠ったのに寝た気分に全くならない。
 最悪の気分だった。
 大和田(桑田も…こんな気分だったのか…。)
 自分が同じ立場に立つなど考えもしなかった。
 不二咲がいないことはいずれ気づかれる。
 だが、不二咲は女子更衣室にいるため、女子更衣室のトレーニング器具を利用する朝日奈か大神あたりが発見しなければ見つからないだろう。
 発見されるまでは普段通りを装う必要がある。
 大和田(よし、行く…)
 ピンポンパンポーン
 モノクマ『死体が発見されました。一定の操作時間のあと、学級裁判を開きます!』
 大和田(…は?)
 一瞬思考が停止し、モノクマの言葉を理解するのに時間がかかった。
 大和田(もう見つかったのか!?放送からそこまで時間も経ってねぇぞ!)
 大和田は状況を把握するために急いで自室から飛び出た。
 
- 
                  - 66 : : 2014/05/08(木) 00:27:18
 大和田「なん…だ、こりゃ…!」
 不二咲の死体が女子更衣室で見つかった。
 そこはいい。
 問題は不二咲の体がトレーニング器具に磔にされ、その後ろの壁に「チミドロフィーバー」と書かれていることだ。
 大和田(なんだこりゃ!?俺はこんなことしてねぇぞ!)
 大和田が混乱しようとも、捜査は始まってしまった。
 大和田は前回と同じように死体の見張り役になった。
 近くに大神がいるため、怪しまれないように更衣室内を捜査しているふりをする。
 大和田(俺は不二咲をマットの上に寝かせておいたはずだ。)
 というより磔にする意味がない。そんな不二咲を冒涜するようなことをするわけがないのだ。
 大和田(ってこたぁ、誰かが放送の前に死体を見つけていて、こんなことしやがったのか!)
 さすがに察しがついた大和田だが、その誰かを考えつくことはなかった。
 こんな死体を馬鹿にするような行為をする人間を大和田には考えつかなかった。
 ここの連中を信用しているというより、そんな頭がイカレタとしか思えないことをする人間に心当たりがないのだ。
 不二咲を自分で殺しておきながら、資格はないとわかってもこんなことをしでかした人間を大和田は許せなかった。
 大和田は捜査をしながら怒りに震える手を必死に抑えるのだった。
 
- 
                  - 67 : : 2014/05/09(金) 19:58:13
- 赤い扉の前。
 桑田はどんな思いでこの扉を潜ったのだろうか。
 ぼんやりと考えながら、大和田はその扉を潜った。
 大和田はまだ来ない苗木を待ちながら考える。
 不二咲にあんなことをしたのは誰なのか。
 バレれば…桑田のように容赦のない処刑が行われる。
 隠し通せれば…ここにいる連中が処刑になる。
 大和田(今更迷うな…。男と男の約束を守るために、ここから出るって決めたじゃねぇか。)
 苗木がやってきて、エレベーターに乗り込む。
 前回より少なくなった人数に大和田は自分が原因であることを噛み締める。
 エレベーターが裁判場に到着し、降りる。
 結局大和田は自分の中の決意が揺れていることに気づかないまま、裁判に臨むのだった。
 
- 
                  - 68 : : 2014/05/09(金) 20:18:13
- 苗木「大和田くん、セレスさんはジャージの色については言っていなかったはずだよ。」
 ああ、やっちまった。
 色の話をしてたからつい口に出ちまった。
 犯人にしか知りえない情報ってやつを。
 石丸「待て!兄弟がそんなことをするはずがない!」
 石丸の言葉が大和田に刺さる。
 石丸「間違っている!間違っていると言いたまえ!」
 ここまでの話を聞いていて、大和田を擁護できるのは
 石丸「今の推理は徹底的に間違っている!」
 それでも大和田を信じているからだ。
 石丸「すべてお前らのでっち上げなんだ!」
 裏切ったことに対する罪悪感、石丸の信頼がそれを増大させ、大和田を締め付ける。
 ダメだ…。
 石丸がいくら反論したところでこの致命的なミスが覆らないことは大和田にもわかった。
 苗木がすべてのまとめを話し終えたあと。
 大和田「ああ…。そうだよ…。俺が…殺したんだよ…。」
 素直に認めるしかなかった。
 大和田「モノクマ、始めてくれよ。投票タイムってやつを…。」
 モノクマ「ラジャー!」
 石丸「ダメだ!待ってくれ!」
 モノクマ「嫌です!待ちません!果てして投票の結果黒となるのは誰なのか?」
 石丸「待てええええええええ!」
 石丸の悲鳴のような叫び声に大和田は歯を食いしばることしかできなかった。
 
- 
                  - 69 : : 2014/05/09(金) 21:05:07
- モノクマ「ひゃっほー!大正解!今回不二咲千尋くんを殺した犯人は大和田紋土くんでした!」
 石丸「僕は…信じないぞ…。」
 それでも石丸は大和田を信じることをやめなかった。
 だから大和田は突き放すように
 大和田「すまねぇ…。」
 一言謝罪した。
 石丸「なぜだなぜだなぜだなぜだなぜだ!なぜそんなことをしたんだああああ!」
 胸ぐらをつかんで問い詰めてくる石丸に大和田は黙ることしかできなかった。
 モノクマ「では黙秘権を発動した大和田くんの代わりに僕が説明します!」
 モノクマの事情説明の間、大和田は謝る。
 大和田(すまねぇ、不二咲。お前の秘密、守ることできなかった…。)
 裁判中で不二咲の性別は明らかにされたが、その内部的な事情までモノクマは説明した。
 そして…
 
- 
                  - 70 : : 2014/05/09(金) 22:30:17
- モノクマ「じゃあ教えるね。大和田くんが殺してまでして隠したかった秘密!」
 モノクマ「自分のお兄さんを殺したんだよ!」
 実に楽しそうな声でモノクマは言い放ったのだった。
 大和田「ぐぅっ…!」
 あの時の光景がフラッシュバックし、あの時の感情も蘇る。
 対向車線に出てきたトラックの光、死ぬかも知れないという恐怖、兄の最後。
 俺が無茶な走りをしなければ…
 兄貴が死ぬことはなかった…
 大和田はすべてを話した。
 その時の状況、思い、考え、そして後悔。
 大和田「俺が無理な走りをしなければ…兄貴が死ぬことはなかった…。兄貴は…俺が殺したんだ…。」
 まるで懺悔のように
 大和田「俺が弱いせいで…真実を語らせなかった…。」
 溜め込んだものを吐き出すように
 大和田「俺が殺した…殺しちまった…。」
 大和田「いつまでも自分の弱さを克服できないばっかりに…とんでもねぇことをしちまった…。」
 すべてを告白するのだった。
 
- 
                  - 71 : : 2014/05/09(金) 22:30:38
- モノクマ「宴もたけなわでございますが、お仕置きタイムです!」
 モノクマが意味深な言葉をその後に言って、十神たちと何かを言っていたようだが、大和田には興味がなかった。
 お仕置き…処刑…これから俺は、死ぬ。
 モノクマ「超高校級の暴走族、大和田紋土くんのために!スペシャルな!お仕置きを!用意しました!」
 自分の弱さのせいでこんなことになって、後悔ばっかりだ…。
 モノクマ「では張り切っていきましょー!お仕置きターイム!」
 どんな処刑が行われるのかわからないが、そんなことよりも
 大和田「すまねぇ、兄貴。男同士の約束、守れなかった…。」
 大和田(そして、不二咲。オメェとの約束も守れねぇで…本当に俺ってやつはどうしようもねぇ…)
 死ぬ直前になってやっと大和田は涙を流すことができた。
 石丸「うわあああああああああああああああああああ!!!」
 石丸の悲痛な叫び声とモノクマが処刑用のボタンを押すのは同時だった。
 猛多亜最苦婁弟酢華恵慈 -モーターサイクルデスケージ-
 
- 
                  - 74 : : 2014/06/06(金) 21:46:34
- 大和田・・本当はすごいいい奴なのに・・
 
- 
                  - 75 : : 2014/06/11(水) 10:41:10
- 見ててすごく感動です。原作では桑田君はそんなに好きでは無いのですが、桑田君視点のEPはものすごく面白かったです!文章雑ですみません・・・
 
- 
                  - 80 : : 2016/09/02(金) 23:14:09
- 桑田視点は同情できるところがあってよかったし、俺が大和田が好きなキャラだからって言うのもあるけど、やっぱり約束を守ろうとするいい人だと思いました!お疲れ様です!
 
- 
                  - 81 : : 2016/09/04(日) 23:25:38
- >>80
 約2年前のSSに感想ありがとうございます。
 彼らもやりたくてやったわけではないですし、
 苗木視点のみだけでは語れない部分もあったはずですので、
 そのあたりが書けて、楽しむことができたのなら何よりです。
 
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