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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品は執筆を終了しています。

そして何度繰り返したか

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  1. 1 : : 2014/04/11(金) 04:19:30
    http://www.ssnote.net/archives/13998

    ↑『そしてまた繰り返す』の続きです。ちゃんと貼れてますかね?


    前作に引き続き注意点
    ※エレクリ、クリエレ
    ※病み、依存あり
    ※チートあり
    ※キャラ崩壊あり

    以上を受け付けない方はご遠慮ください。

  2. 6 : : 2014/04/11(金) 10:00:12
    皆さん、期待ありがとうございます!

    では、書いていきます。




     少し昔話をしよう。

    その少年は、少々残酷な世界で生きていた、どこにでもいる普通の少年だった。

    母親は未知なる化け物に食われ、父親は行方知らずといった経歴を持つが、それはこの際置いておこう。今の彼には、それらの出来事など遥か昔の記憶の断片にしかすぎないのだから。

    話を戻す。

    当時、少年は母親を殺した化け物への復讐を誓い、それを実現させるために訓練兵団なるものに志願する。

    そこで、ひとりの少女に出会った。

    誰にでも優しく慈愛に満ちた少女に、少年はどこか歪さを感じた。

    少女の名は『クリスタ・レンズ』

    少年は彼女と関わり、そして触れ合う度、次第に彼女に惹かれていった。


    そんなある日。

    少女が死んだ。

    少年の目の前で、『クリスタ・レンズ』は母親の恨みでもある化け物によって捕らわれ、無惨にも食い千切られた。

    残されたのは、少女の腕のみ。

    呆然自失に陥った少年もまた、抗うことなく、少女を殺した化け物によって、命を落とした。

    ──そう、命を落とした筈だった。

    死んだ筈の少年は、別の世界で目を覚ました。

    理由? 原因? そんなものは判らない。

    判るのは、死んだ少年が生きていたこと。

    そしてその世界には、あの少女までもが生きていたということだ。

    クリスタ・レンズもまた、死して尚、未知の世界にて生きていたのだ。

    死んだ二人は再会する。

    少年は僅か一日で。少女は一月もの間を孤独と闘いながら少年を待ち続け、奇跡的に再び逢うことができた。


    ──そしてその日、二人は死んだ。

    鮮血を、肉片を、撒き散らし、飛び散らせながら。

    一度死んだ彼らは、二度目の死を迎えた。

    ──迎えた、筈だった。

  3. 7 : : 2014/04/11(金) 10:01:48
    おう、ログインしてなかった。

    >>6は作者なので
  4. 10 : : 2014/04/11(金) 18:19:04
    《二度目の世界、何度目の世界?》


     死んで生きてまた死んで。

    いったい何度繰り返しただろう。

    何十何百と、数多の世界に生き返ってはまた死んで。

    時には、日常の裏を殺人鬼や赤き請負人が闊歩する世界を。

    時には、機械仕掛けの悪魔と聖職者が争う世界を。

    時には、かつて名を馳せた英霊が、聖なる杯を求めて潰し合う世界を。

    時には、死神が悪霊を狩る世界を。

    時には、争いなどない平和で平凡で退屈な世界を。


    あらゆる世界を巡ってきた。

    自分の意思に関係なく。

    あいつの意思に関係なく。

    いつからか、それが当たり前になっていた。

    死んだら次はどこで目覚めるのか。いったいどんな世界なのか。そんな呑気なことすら思っていた。

    普通の人間なら、途中で壊れていただろう。何度死んだところで終わらないという事実に、そしてこれから先も死に続けなければならないという未来に。

    もしかしたら、俺もそうなっていたかもしれない。死ねないことに絶望して、ただ無気力に日々を過ごしていたかもしれない。

    そうならなかったのは、あいつがいたから。

    俺の隣に──死んで別の世界に行こうと、必ず同じ世界で、俺の隣にあいつは居てくれた。

    あいつが居たから、俺はこれまで絶望しないでこれたんだ。

    そしていつからか、あいつは俺の生きる理由になっていた。

    あいつさえ居てくれたら、他には何も要らない。

    クリスタさえ隣に居れば、何度死のうが構わない。

    クリスタ・レンズは、俺のすべてだ。



    ──だからまずは、クリスタが何処に居るかを捜すことから始めよう。あいつが居なくては、何一つやる気が起きない。

    鬱蒼と生い茂る森の入り口で、大木に背を預けながら、俺は遠くを見据える。

    先には、ぐるりと囲むようにして、高い壁がそびえ立っていた。

  5. 16 : : 2014/04/12(土) 04:46:09


    「あれは、確か……」

    昔に見た覚えのある壁。

    マリアだったかローゼだったか、確かそんな名前だった筈。もうひとつ名前があった気もするが……思い出せないし、別に今はどうでもいいか。

    ──とりあえず。

    「こいつらだよなあ」

    ──巨大な体躯。大小様々だが、小さいのでも人間の倍近くはあるそれら──“巨人”は、皆一様に気色悪い笑みを浮かべている。

    外見は……まあ、お世辞にも端整とは言えないな。手足の短いのやら長いのやら、顔が体の半分くらいのやら腹が異様に出ているのやら。

    気持ち悪い。

    ──ああ、早くクリスタに会いたい。あんなの見たから癒しが欲しい。

    「ん──?」

    俺の存在に気づいたのか、一体の巨人が地面を揺らしながらこちらに向かって走ってきた。

    大きさは……結構でかいな、おい。

    しかし、よくあんな大きくて重そうな身体をあの短い足で支えれるよな。見た目人間なのに、構造はまったく別なのか。

    ……いやまあ、あの大きさの時点で人間じゃないのは確かなんだけど。


    そんなことを考えている間に、巨人はもうすぐそこまで来ていた。

    「武器は無し。さて、どうするかなあ」

    ──直後

    巨大な口が目の前に迫っていた。

    「まあ」

    どしゃあ、と地面が削れる音がする。

    俺の眼下では、無様にも巨人が地面を這いつくばっている。

    「逃げればいいか。戦う必要なんてねえし」

    うつ伏せのままの巨人の背中に“降り立ち”、俺はそいつを放置したまま遠くに見える壁の方へ駆け出す。


    「さてと、あっちにクリスタはいるかな」

    早く会って抱きつきたい。

  6. 23 : : 2014/04/12(土) 13:51:52


     道中、そこいらにいた巨人にはひたすら無視を決め込み。

    壁のすぐ近くまで来た俺は、壁上で慌ただしく動き回っている人影を目で追いかけていた。

    「あー、なんだっけ、あれ」

    この世界が俺とあいつが初めに居た世界だとは限らないが、一応そうだと仮定して、もう曖昧になっている昔の記憶をほじくりだす。

    「──ああ」

    あいつら、確か壁工事団だったっけ? いや、何か違うような気もするけど……いまいち思い出せない。

    にしても、何をあんなに慌ててんだ? 見た感じ、俺の方を見て慌ててるみたいだけど。

    「別に変な格好はしてねえよな?」

    確認。

    上は黒いポロシャツ、下はジーパン。

    うん。特に問題はない……筈だ。多分。

    よくクリスタにはもっとお洒落しろって言われるけど、あんまそういうのに興味ないからなあ。

    動きやすいのや適当に目についたやつを着るようにしてたから、正直今の俺の格好がおかしくないとは断言できない。

    「…………ま、無視すりゃいいか」

    少し壁から離れ、軽くその場で屈伸する。

    足首を回し、何回か跳躍した後──駆け出す。

    「んっ──」

    勢いをつけて壁に向かって跳び、爪先がついたと同時に勢いを殺さず一気に上へと駆け登る。

    窪みや出っ張りがないから少しやりにくいが、この程度なら特に問題ない。

    壁上に出ると、そこには数人の工事団の奴等がいた。全員目を見開いて、俺のことを唖然と見ている。

    ──まあ、普通は垂直な壁を人間が走って登ってきたら驚くか。

    けどなあ、“壁を走る程度”ならクリスタにもできるし、別の世界では天井走る人もいたくらいだから、俺にとってはこれが普通なんだよな。

     ……まあ、何はともあれ。

    「とっととクリスタ探すか」

    この辺りに居ればいいんだけどなあ、と固まったまま動かない工事団の横を通り過ぎ──

    「よっ」

    躊躇なく跳び降りた。


  7. 24 : : 2014/04/12(土) 16:32:16
    ※初めにも書きましたが、ここからキャラ崩壊が顕著に現れます。今更感もしますけど、一応注意。


    《貴方が死んでも私の世界は終わらない。だから安心して死になさい》


    『ウォール・ローゼ トロスト区』

    超大型巨人と鎧の巨人に率いられた数多の巨人によりシガンシナ区が陥落。人類はウォール・マリアの内地を放棄し、ウォール・ローゼにまで活動領域は後退した。

    そしてここ、現在の活動領域の最南端に位置するトロスト区内の市街地を、ひとりの女性が歩いていた。

    「んー……何処にいるのかしら」

    腰まである金髪を毛先のあたりでひとつにまとめた彼女は、その艶のある髪をゆらゆらと揺らしながら、キョロキョロと辺りを見渡す。

    「もうっ、ずっと一緒に居るとか言ってたくせに。エレンの嘘つき。見つけたらお仕置きしてやる」

    初めにそれに近いことを口にしたのは彼女の方なのだが、そんなことは些細なことだ。

    「まずは何しようかしら。一日だけ口聞かないは前にやったし、抱き付き禁止もなんかなあ……」

    ああでもないこうでもないとぶつぶつ呟く彼女の名は、クリスタ・レンズ。

    エレン・イェーガーと共に数々の世界を体験し、心身共に成長した彼女は、今や成人した立派な大人の女性である。

    端整だった顔立ちはそのままに、少女らしさが抜けたそれは、美人と言っても過言ではないだろう。

    身長こそあまり伸びなかったが、丸みを帯びた女性らしい体つきや、不意に見せるちょっとした仕草に女の色気を感じさせる。

    そんな彼女がひとりで市街地を歩いているのだ。当然、周りの男が黙っている訳がない──筈なのだが、誰もクリスタに声を掛ようとはしていない。

    中には緊張して話し掛けられない男もいるのだろうが、殆どはそれとは別の理由だ。

    その理由とは、彼女の整った顔にはあまりにも不釣り合いな、片目を覆う黒い眼帯。

    それを見て躊躇している一瞬の間に、クリスタはすたすたと先へ行ってしまうのだ。声を掛けるタイミングを逃した男達は、ただその場に残されるのみである。


    クリスタ「……それにしても懐かしい光景。まだあの日から五年しか経っていないっていうのに」

    世界をいくつも経験したせいで、時間の感覚が狂ってるのかしら? と内心首を傾げつつ、想い人を捜して歩いていたのだが──あるところで、足を止めた。

  8. 26 : : 2014/04/13(日) 07:34:47

    クリスタ「……私に何か用かしら」

    クリスタの前を塞ぐように現れた、三人の男。

    彼女の身体を下から上へとじっくり眺め、卑しい笑みを浮かべながら、男達はクリスタに話し掛けてきた。

    「いやね、あんたみたいな美人さんがひとりでいるからよお。暇なら俺らと一緒にお茶でもしねえかい?」

    中心にいた体格のいい強面の男が言うと、周りの男達も口々にクリスタに声を掛ける。

    典型的なナンパだ。

    顔には出さないが、内心大きくため息をつくクリスタ。周りを見ると、他の通行人は皆見て見ぬ振りをして足早に離れていくのが確認できた。

    ──面倒なのに絡まれたわね。もうっ。

    クリスタ「生憎、私は暇じゃないの。今こうやって貴方達に付き合う時間さえ惜しいのよ。だからとっとと退きなさい、邪魔」

    まさかこんな強気で来るとは、と片目で自分達を睨み付けてきたクリスタに男達は驚くが、すぐにまた笑みを浮かべる。

    「まあそう言わずによ。少しでいいんだ、ちょいとそこで──」

    言いながらクリスタの肩に触れようとした男だが、即座にその手は払いのけられる。

    そして次の瞬間、男の顔面に何かがもうスピードで叩き込まれた。

    「へぶぅっ──!」

    醜い声をあげ、男は後ろに倒れる。

    唖然と倒れた男を見下ろしていた残りの二人は、ゆっくりと顔を動かしクリスタを見た。

    すらりとした足をピンと伸ばした姿勢の彼女は、小さく「ジーンズ履いててよかった」と呟くと、足を下ろし、倒れた男を汚いゴミを見るような目で見下ろす。

    クリスタ「私に触れて良いのはあの人だけ。お前みたいのが私に触るな」

    そして何事もなかったかのようにその場を去ろうとしたクリスタだが、仲間をやられた残りの二人が黙っている筈がない。

    「待てやおい!」

    ひょろっとした体格の男が、背中を向けていたクリスタの腕を掴んだ。

    ──掴んで、しまった……


    「へ──?」

     その後のクリスタの行動は早かった。

    自分の腕を掴んでいた男の手を取り、手首を掴んで自分の体の前に引っ張る。

    そして男の腕を真っ直ぐに伸ばしたと同時に、肘が上を向くようにぐるりとその腕を回し──思いきり、自分の余っていた方の腕の肘を、相手の肘に叩き落とした。

    「──っ!?」

    鈍い音が、辺りに響く。

    曲がらない方向に無理矢理肘を曲げさせられた男は、あまりの激痛に声にならない悲鳴をあげて地面に蹲る。

    そこに追い討ちをかけるように、クリスタは下を向く男の横顔に蹴りを叩き込んだ。

    蹴り飛ばされ、地面を転がる男。

    クリスタ「……ねえ、私言ったよね。触るなって」

    無様に地面でのたうち回る男に歩み寄り、痛みで歪んでいる顔を踏みつける。

    クリスタ「私の体は全部あの人のものなの。ねえ、汚れたらどうしてくれるの? お前みたいなのに触られて、あの人の為の体が穢れたらどうしてくれるの?」

    蹴って、踏んで、また蹴って。

    すでに男に意識はなかった。

    血が飛び散り、顔はもうまともに見ていられない程にぐしゃぐしゃだ。

    周りにいた人達は、また見て見ぬ振りをする。さすがにやり過ぎだと思い止めようとした者もいたが、無表情で男を蹴り続ける彼女に、恐怖から声を掛けられない。

    「お、おい、もうやめてくれよ……死んじまう、それ以上やったら死んじまうからよお……」

    クリスタ「なんで?」

    ナンパしてきた男の最後のひとりが、震える声でクリスタに声を掛けるが、返ってきたのは純粋な疑問の声。

    クリスタ「これが死んだら何か困るの? 別に世界が終わる訳でもないでしょ?」

    振り向き、首を傾げるクリスタに男は絶句する。

    クリスタ「これが死んでも私は困らない。私の世界は終わらない」

    ──ほら、何も問題ないじゃない?

    そう言って、彼女は薄く微笑んだ。
  9. 31 : : 2014/04/13(日) 18:09:06

    ──さて、いろいろと言ったけど、別に殺すつもりはないのよね。面倒事に巻き込まれるのはごめんだし……もう巻き込まれてるようなものだけれど。

    それにしても、少しやり過ぎたかしら?

     考え、周りを見渡す。

    鼻から血を流して倒れている強面の男に、顔面が見るも無惨な姿になっている、今まさに私が踏んでいる男。

    化け物でも見るような顔で私を見ている、ナンパしてきた残りのひとりに、怯えた様子でこちらを眺めている通行人達。

    ──あまり長居をするのはまずいかしら。憲兵でも呼ばれたらそれこそ本当に面倒だし……なによりエレンを捜すのに支障が出るわね。

     その捜し人が、駐屯兵相手に面倒を起こしていることを彼女は知らない。

    ──というかエレンよ、エレン。私が暴漢に襲われてるっていうのに、何処で油を売ってるのかしら。まったく、お仕置き追加ね。

    「いや、お前そこら辺の暴漢程度じゃやられないだろ。てか理不尽過ぎる」と本人が居たらつっこんでいただろう。

    そう言いつつも、男達がクリスタに触れた以上、彼女よりも痛め付けていただろうが。

    彼はクリスタに触れた者に対して容赦がないのだ。まあ、それは彼女の方も同じなのだが。

    「おいおい、こりゃいったい何の騒ぎだ?」

    クリスタ「……あら」

    不意に聞こえてきた声の方を向くと、そこには見覚えのある顔がちらほら。

    「うお、見ろよアルミン……あの女の人、めちゃくちゃ美人だぞ」

    アルミン「うん、まるで女神だね、ライナー。ただそれ以上に、倒れてる男の人達の方が僕は気になるんだけど」

    ライナー「いかん、いかんぞライナー。俺にはクリスタがいるだろ……他の女性に傾く訳には……」

    アルミン「とりあえず、その妄想を早くやめようか。それにしてもあの女の人、どこかクリスタに似ている気が……」

     あれはライナーとアルミンか。若いわね、まだ十四くらいかしら。

    「おい、お前ら何してんだよ……って何だありゃ、喧嘩か?」

    二人の後ろから近付いてきたのは……ジャンか。あの馬面、どの世界でも私のエレンに突っ掛かってくるからあまり好きじゃない──というか大っ嫌いなのよね。

    今すぐにでも蹴り飛ばしたいけど、我慢我慢。

    ジャン「っ!?」

    アルミン「? どうしたんだい、ジャン」

    ジャン「いや、なんか急に背筋が冷たく……」


     危険には敏感か、流石は馬。

    ……それにしても、ライナーとアルミン、さっき『クリスタ』って言ってたわよね。

    もしかして、この世界にはもうひとりの『クリスタ』が居るってことかしら? 

    今までの世界では、私やエレンと同じ存在には出会うことはなかった。

    ということは、この世界は今までとは別物──?

    クリスタ「……考えても仕方ないか」

    別に困ることはなさそうだし。

    ただ、もし『クリスタ』が居るのだとしたら、もうひとりの『エレン』が居る可能性も──って。

    クリスタ「居たわね」

    アルミンやライナー達に近付いてきた男の子は、間違いなく『エレン・イェーガー』だ。

    クリスタ「……この世界、まず退屈することは無さそうね」

    ──ま、何はともあれ、まずは私のエレンを捜さないとね。

    いったい何処をほっつき歩いているのやら。
  10. 33 : : 2014/04/14(月) 04:32:49


     クリスタがナンパ男達を撃退していた頃。

    彼女の捜し人であるエレン・イェーガーは、トロスト区内のとある裏路地を歩いていた。

    エレン「あー……ったく、駐屯兵の奴らもしつこいな。たかが壁飛び降りたくらいで追いかけてくんなよ。仕事しろよ」

    道中すれ違う人々が、自分を追う彼らが壁工事団ではなく駐屯兵団だと喋っていたのを聞いて、「あ、そんな名前だったか」と思い出したエレン。

    今は執拗に追いかけてくる彼らから逃げ回りつつ、クリスタのことを捜していた。

    ──いっそ誰かに聞くか? 美人で金髪で眼帯してる奴なんて、多分あいつくらいしか居ないだろうし。

     思い立ったら即行動。

    裏路地から人通りの多い通りに出ると、身近にいた中年の男に声を掛けた。

    エレン「すいません、ちょっと聞きたいんですけど──」

    足を止め、「なんだい?」と無視せずに返してくれた男に内心感謝しつつ、言葉を紡ぐ。

    エレン「金髪で、身長はこのくらいの女の人、見なかったですか?」

    自分の肩の辺りで手をひらひらさせながら言うと、男はそれを見て少し考え、「ああっ」と声をあげた。

    「もしかして、あの子のことかな?」

    エレン「あっ、知ってるんですか?」

    「知ってるも何も、今そこで見掛けたばかりだけど……ほら、あそこで──って、なんだあの男達、ナンパか?」

    ──ナンパ?

    男の指差した方を見ると、確かに、金髪の女の子が何人かの男に囲まれているのが目に映った。

    が、エレンは彼女が自分の捜し人ではないことに即座に気が付いた。伊達に何年も一緒に居たわけではない。ましてや自分にとって世界より大切な存在なのだ。他人と見間違える筈がない。

     なんだ、人違いかよ。と男に礼を言って立ち去ろうとしたエレンだったが、囲んでいる男達の隙間から少女の顔が見えた瞬間、思わず動きが止まった。

    エレン「──は?」

    ……クリスタだよな、あれ。

    いやいや、え、はあ? なんであいつ縮んでんの? いや、縮んでるというより若返ってるのか? 全体的に幼く見えるし。

    ……でも、なんで?

    死んで別の世界で目が覚める時、肉体は“大体は”死ぬ直前の状態で生き返るのが今まで共通していたことだった筈。

    今回は違うのか? でも俺は若くなってなんかいねえし……まさかあいつだけ?

    いや、そもそもあそこにいるのが俺の知ってるクリスタなのかも怪しいか。あいつなら、体が多少小さくなろうが、そこいらのチンピラだったら難なくぶっ飛ばしてるだろうし。

     今まさに蹴り飛ばしていることを彼は知らない。

    ──てことは、あれはこの世界に元から居た『クリスタ』か? それも初めてだけど……可能性としてはありえるか。ま、話してみるのが手っ取り早いし、とりあえず助けるか。

     予想外の事態に混乱するが、ひとまずあの少女を助けることにしたエレン。

    男に一言礼を言うと、ひとつため息をつきながら男達の方へと近づいていった。

  11. 36 : : 2014/04/14(月) 09:16:44

    エレン「なあ、ちょっといいか」

    男達の間に無理矢理割り込み、俺は『クリスタ』に声を掛ける。

    エレン「お前、クリスタか?」

    「え……あ、そう、ですけど……」

    今の反応で確定。

    こいつは俺の知ってるクリスタじゃない。あいつなら、俺を見た途端何かしらのアクションを起こす筈だし。

    記憶を無くしてるというのはさすがにないだろ……ない筈だよな?

    エレン「あっちでお前を捜してる奴がいんだよ。ついて来てくれ」

    「あっ──」

    手を掴み、強引に連れ出そうとしたが──当然、こいつをナンパしてた男達が黙っている訳がなかった。

    「ちょっと待てや」とひとりが俺の前に立ち塞がり、他の奴らは俺達を取り囲む。

    「おいおい兄ちゃんよ、その子は俺達が最初にお誘いしてたんだぜ? いきなり横から出てきて連れてくってのはないんじゃねえの?」

    エレン「お前らの事情なんか知らねえよ。俺はこいつの知り合いに、こいつを捜してくれって頼まれてんだよ。見つけたんだから、連れてくのは当たり前だろうが」

    もちろん、そんなの真っ赤な嘘だ。

    「それで俺達が納得すると思ってんの?」

    「そうそう」

    エレン「だから、お前らが納得するとかしないとか、そんなのどうでもいいんだよ。いいからとっとと道開けろ。通行の邪──っと」

     突然、男のひとりが殴りかかってきたのを、俺は半身になることで拳を避け──

    「がっ!?」

    エレン「あ」

    反射的に、男の顔面に肘を入れてしまった。

    エレン「あー、悪い。いきなり殴って来たもんだからつい……ま、折れてはいないだろうから安心しろよ」

    鼻を押さえて地面に倒れた男に一応謝りつつ、俺の後ろであたふたしている『クリスタ』の手を掴んで、唖然と倒れている男を見ている他の連中の隙間から抜け出す。

    ──さて、他の奴らに絡まれる前に離れた方がいいか。

    エレン「走るぞ」

    「えっ──きゃっ!?」

    振り返ると、今になって状況を呑み込んだのか、他の奴らが慌てて追い掛けようとしているのが目に入ったが……。

    エレン「こっちだ。ほら、ちゃんと走れ」

    「ちゃ、ちゃんとって言われてもっ──は、走るの速い──っ」

     これでも遅くしてるんだけどな……。

    少し走る速さを緩め、俺は荒く息を吐いている『クリスタ』の手を引いて、人通りの多い道を駆けて行った。

  12. 42 : : 2014/04/15(火) 04:20:34

    《再会の挨拶は熱烈に。お前がそう決めたんだぜ?》


    アルミン「では、アリスさんはその男の人を捜してるんですか?」

    クリスタ「ええ。はぐれてしまってね、中々見つからないのよ……あなた達は見かけたりしてないかしら? 黒っぽい髪色に、目が大きくて──そうね、そこの体格のいい子と同じくらいの背丈の人なんだけど」

    ボーッと私を見ているライナーを指差し、私は目の前に座るアルミンに問う。

    アルミン「ライナーくらいの身長で黒髪……すいません、僕は思い当たる人は見てないです」

    クリスタ「そう。まあ、そんな特徴の人なんてざらにいるし、答えてくれただけでありがたいわ。ありがとね」

    アルミン「い、いえ。その、お力になれなくてすいません」

    緊張しているのか、ところどころ突っかかりながらも、律儀に頭を下げるアルミンに思わず苦笑してしまう。別に彼が謝る必要なんてないのに。


     ──男達を再起不能にした後。

    私はアルミン達の元に行き、「ちょっと聞きたいことがある」と言って連れ出し、今は近くにあった喫茶店でエレンのことを聞いていた。

    彼らにも用事があるだろうし、初めは断られると思っていた私は、こうもすんなりと事が進んだことに驚いた。

    なんでも、町に出たはいいが特に目的もなく、暇でぶらぶらしていたところで時間もあったから──らしいのだが。

    本当のところはどうなのかしらね。

    アルミン「あ、エ、エレンやジャンはどう? それっぽい人見てないかな?」

    ジャン「俺は見てねえな。第一そんなどこにでもいるような特徴じゃあ、見掛けたとしても本人かどうかもわからねえよ」

    それに同意するよう、「俺もだ」と言って頷く『エレン』

     アルミン達に接触したのは、実は彼がいたのが理由だったりする。

    もしかしたら、あの人がこの『エレン』なのかもしれないと一瞬疑ったのだけれど……。

    肉体が若返ったことなんて今まで一度もなかったし、わざわざ私を騙すような真似をする意味なんてないから、その疑いはすぐに消えた。

    ……からかっている可能性もあるけど。

    アルミン「す、すいませんアリスさん。他の人も知らないみたいです……」

    クリスタ「謝らなくていいわよ」

    アルミンってこんな謝り癖あったかしら? と私はまた苦笑い。

    因みに、先程からアルミンの言う『アリス』というのは私の偽名だ。さすがに彼らの前でクリスタとは名乗れない。

    アリスにした理由は、とある名前から文字を抜いて、どことなく響きが良かったからこれにした。

    ──さて、楽しいお話はこのくらいにしましょうか。

    クリスタ「わざわざ付き合ってくれてありがとう。今は持ち合わせがないから、今度会った時に何かお礼するわ」

    アルミン「あ、いいっいえ、いいんですよそんな。僕達、なんの役にも立てませんでしたし」

    クリスタ「いいから。人の感謝くらい素直に受け取っておきなさい。私としても、付き合わせておいて何もしないっていうのは忍びないから」

    渋々と頷くアルミン。

    それを見て、私が立ち上がった直後

    「あっ……おい、あれってクリスタじゃないか?」

    と『エレン』がある方向に顔を動かしそう言った。

    ライナー「なにっ、クリスタだと!?」

    アルミン「え? ──あ、本当だ。ってあれ? 横にいる男の人、アリスさんが捜してる人の特徴に似てるんじゃ……アリスさん?」

    クリスタ「…………」

     ──なんで。

    なんでなんでなんでなんで。

    なんで貴方がそこにいるのかな?

    私を放っておいて、どうして貴方はそっちの『クリスタ』と一緒にいるのかな?

    事と次第によってはただじゃおかないよ?

    ──ねえ、エレン?
  13. 43 : : 2014/04/15(火) 14:53:31

             ◆ 

    ──クリスタといろんな世界を過ごすうちに、判ったことがある。

    あいつは極度の寂しがり屋だ。

    そして、嫉妬深くて、独占欲が強い。

    あとどこか狂ってる。俺もだけど。



     ──あれは確か、俺とクリスタが俗に言う恋人同士になってからすぐの頃。そこに至るまでの馴れ初めは今は置いておく。

     何度目かの世界かは忘れたが、やけに女の子が多い世界に居た時だ。

    どうやらその世界では、度々“外の世界”とやらから人が迷い込むことがあり、初めこそ俺達もその迷い込んで来た人間だと思われ、別段騒がれることもなかった。

    だが、“外の世界”ではなくまったく違う世界から来た、と判った途端、一気に興味を持たれてしまい。

    自称普通の魔法使いの白黒した少女や、鴉天狗と呼ばれるやけに質問の多い女の人、頭に角が生えた鬼の少女などに絡まれ、連日彼女達の相手をしなくてはならなくなり──

    自然と、クリスタと一緒にいる時間が少なくなっていた。

     そんなある日。

    朝起きたら、居候していた神社の一室で、俺は四肢を拘束されていた。

    何がなんだが理解できずにいると、瞳に光の灯っていない、薄ら笑いを浮かべたクリスタが現れた。

    「エレンが悪いんだよ」

    開口一番、クリスタの口から出たのは、そんな言葉だった。

    「全然私のこと見てくれないんだもん。構ってくれないんだもん。こうでもしないと、エレンは私のこと、相手にしてくれないでしょ?」

    その時は、確かにあまり相手してやれてなかったな。としか思わなかった。

    悪いことしたなあ、と素直に謝ると、意外とすんなり解放してくれた──と思ったら、急に抱きつかれて首筋にキスをされた。

    「これでエレンは私のモノだね」

    赤く染まったキスの痕を愛おしそう撫でながら言うクリスタの顔には、普段の可愛らしい笑顔とは違う、どこか狂気じみたものを感じた。

     それ以来、俺が他の異性と喋ったり、そのせいでクリスタの相手ができなかったりした時は、人前で抱きついたり、キスをしてきたりと露骨に甘えてくるようになった。

    たまに噛み付かれたりもしたけど、今はもう慣れたし、俺の方からもたまにするからあまり気にしていない。


     さておき。

    どうして急にこのような話を持ち出したかと言うと、今まさに目の前にいるクリスタが、その甘える時と同じ雰囲気を醸し出しているからだ。

    エレン「……えっと……」

    クリスタ「ちょっとこっち来てよ」

    あ、これまずい。

    口元は笑ってるのに目が笑ってない。

    こうなったこいつって何をするか判らないんだよなあ。前はナイフで切られて血を飲まれたし。

    ……いやまあ、飲むと言っても軽く舐める程度だけど。

    けどなあ、俺もクリスタのやつ舐めたことあるけど、別に美味くも何ともないよな、血って。

    なんでこいつは事あるごとに俺の血を舐めるんだろうか。

    不思議だ。
  14. 45 : : 2014/04/15(火) 19:28:04

    エレン「んっ……っ……」

    クリスタ「んんっ……んあっ、エレンッ──んうっ……」

    人気のない路地で、ちゅくちゅくと唾液が混ざり合う卑猥な音が響く。

    お互いに舌を絡め合い、口内を蹂躙し、荒い息を吐きながらその甘美な行為に没頭する。

    クリスタ「エレンッ……エレ──ッ、はあっ」

    舌を吸い、絡め、また吸い付く。

    片方の手で彼女の細い腰を抱き寄せ、もう片方の手で尻をまさぐる。

    エレン「っ……クリスタッ……んんっ」

    クリスタ「あっ、んぅ……ふっ──ん」

    ──…………。



     暫くして。

    小刻みに体を震わし、クリスタは潤んだ瞳を俺に向けながら、ゆっくりと顔を離した。

    つう、と透明な橋が口と口とを繋ぎ、そして消える。

    クリスタ「はぁっ……はっ……あ、エレ──んっ」

    荒い呼吸を繰り返すクリスタに顔を寄せて、唇から顎に伝う液体を舌先で舐め取る。そのまま首筋、耳の裏と舌を這わせ、最後に軽く唇に触れてから顔を離した。

    クリスタ「も、うっ──いきなり激しすぎだよ」

    エレン「何言ってんだよ。お前が言い出したんだろ? 別の世界で再会した時は思いっきりイチャイチャしたいって」

    クリスタ「そうだけど……なんかエレン、最近生意気になってきてる気がする」

     なんで生意気……。

    エレン「まあそれは置いといて。……無事に逢えて嬉しいよ、クリスタ」

    クリスタ「ふふっ、私も逢えて嬉しいよ、エレン」

    ぎゅうっ、と抱きついてきたクリスタを、同じようにぎゅうっと抱き締め返す。

    クリスタ「んふふー、エレンだエレンだ、エレンの匂いだあ」

    すりすりと胸元に鼻先を擦り付けて、クリスタはだらしなく口許を緩める。

    俺はそんなクリスタの髪の毛に顔を埋め、さらさらした髪の感触を目一杯堪能する。

    ──相変わらず気持ちいいなあ、こいつの髪の毛。できればずっとこうしていたいくらいだわ。

    ……だが、それは叶わぬ夢だった。

    クリスタ「ねえ、エレン」

    エレン「んー?」

    クリスタ「そろそろ話してほしいなあ。エレンがこっちの『クリスタ』と一緒にいた理由」

    エレン「理由って言われてもな……ただナンパされてたのを助けただけだぞ?」

    クリスタ「その割りには、なんか妙に仲良さそうだったよねえ。まさか、“私と間違えた”とか言わないよね?」

    ちょっと疑ってました、とか言えない。口が裂けても言えない。言ったら何をされるかことか……まあ、クリスタにされることなら大抵は許せるんだけど。

  15. 51 : : 2014/04/16(水) 17:36:45

     結局、俺がクリスタに何かされるようなことはなかった。

     「冗談だよ。それにもしそうだとしても、私も同じだからお相子だしね」だとかなんとか本人は言っていたが。

    なんでも、この世界の『エレン』のことを、こいつは俺だと疑っていたらしい。クリスタのことを知らないふりをして、からかおうとしてるんじゃないかと思っていたと、苦笑いしながら言っていた。

    「そんな面倒なことするかよ……つうか、むしろお前の方がやりそうだ」と言ったら、それも面白そうだとか言いやがるし。

     基本的にクリスタはS──つまりサディストだ。ドまではさすがにいかないが、俺を時たま弄ったりからかったりしてくる。会った当初はそうでもなかった筈なんだが、いつかの“私のモノ”発言から、性格が微妙に変わってきてるんだよな。

     だからと言って、俺がマゾというわけでもない。むしろいじめる方だ。涙目のクリスタの可愛さはいろいろと半端ない。特にアレをしている時のあいつはまた一段と──

     閑話休題。

     あの後、クリスタがこっちの俺達と少し話してくると行ってしまい、俺はというと遠目からその様子をボーッと眺めている。

     ……それにしても、こっちの俺は小さいな。まあまだ十四かそこらだろうし、これから伸びるか。俺は伸びたし。

     『クリスタ』の方は……あ、いつの間にかユミルがいるな。元々あいつと待ち合わせしていて、そこでナンパされてたのを俺が見つけたってところか。

    ……にしてもユミルか。あいつって、どの世界でも俺のクリスタにべたべたしてくるから苦手──というか大っ嫌いなんだよな。

    クリスタ自身が嫌がってる訳じゃないからあまり口出しはしないけど……クリスタとあいつが話してるのを見るだけでイライラする。

    ──これが嫉妬ってやつなんだろうなあ。女相手に嫉妬しても仕様がないのは判ってるけど、あいつは別だ。

    クリスタ「ただいまエレン。……エレン?」

    エレン「っ、あっああ、クリスタか。話は終わったのか?」

     ユミルの方に気を取られていて、近づいていたクリスタに気付かなかった。驚き、思わずたじろぐ。

    クリスタ「ええ、終わったけど……エレン、少し気を緩めすぎよ。私がこんな近くまで来てるのに気付かないなんて」

     言い終わり、呆れた様子でため息つくクリスタに、俺は誤魔化すように苦笑い。

    クリスタ「もう、笑ったってダメ。ほら、行くわよ」

    エレン「行くって……何処にだよ」

    クリスタ「最近争い事のない世界ばかりだったから弛んでるみたいだし、せっかくだから気を引き締め直そうと思ってね。ちょうど“そこら辺に”いい相手もいることだし」

     俺の腕を掴み、ぐいぐいと“壁の方へ”引っ張っていくクリスタ。

    エレン「えっと、クリスタ? なんとなく察しはついてるんだけど、その相手って──」

     振り向き、にっこりと微笑みながら、クリスタは口を開いた。

    クリスタ「巨人」

     ……語尾に音符マークでも付きそうな声だったのは気にしないでおこう。うん。

    「はあ……」と俺は息を吐きつつ、意気揚々と俺を引っ張るこいつを見て、もう一度深いため息をついた。
  16. 52 : : 2014/04/17(木) 03:55:05
              ◆

     かつてウォールマリアの壁は、突如現れた超大型巨人、鎧の巨人によって破壊された。

     これは誰しも知っていることだろう。その日の惨劇によって多くの人間が傷付き、死んで、壁の中は安全だという愚かな固定観念は崩れ去った。

     ──そして今、再びあの日の惨劇が繰り返されようとしていた。

    それはこの世界にとっては初めての出来事だ。だが彼ら──エレン・イェーガーとクリスタ・レンズにとっては二度目の出来事である。

    つまり彼らは知っているのだ。再び壁が破られ、多くの人々が命の危機に晒されるということを。

     さて、普通の人間なら、この場合どうするだろうか。

     悲劇を食い止めるために行動する。確かに、それがどんなに無謀で愚かしい行為だとしても、それは間違ったことではないのだろう。

     自分だけ逃げ出す。それもまたいいだろう。わざわざ他人のために命を賭ける必要などないと判断するのは、別に悪いことではない。

    他にも多々あるだろうが、果たして件の二人はどうしたか。人を救うために動いたか、はたまた自らの命の方が大事だと、二人でこの危険な地から離れていったのか────否。



     二人は“何もしなかった”

    ただ傍観し、静観し、超大型巨人が壁を壊すのを遠くから他人事のように眺めていただけだった。
  17. 54 : : 2014/04/17(木) 16:19:19

    《さあ、物語の始まりだ》


     町中が喧騒に包まれる。

     悲鳴が悲鳴を掻き消し、恐怖がさらなる恐怖を呼び、人々は死に物狂いに辺りを逃げ惑う。

    そんな混乱の中、俺とクリスタは避難経路の死角になる路地にいた。


    エレン「……なんつーか、俺ら明らかに浮いてるよな。あ、これ美味い」

    クリスタ「そうでもないんじゃない? みんな逃げるのに必死で、私達のことなんて気にする余裕なんてないだろうし……まだあるけど、いる?」

    エレン「欲しい。……ん、ありがと。ま、兵団の奴らにバレたら、さすがに何か言われるだろうがな」

     クリスタから手渡されたサンドイッチを頬張りながら、横目で逃げていく人達の群れを見る。

    大丈夫、大丈夫と家族を落ち着かせている男性に、カップルだろうか、互いに身を寄せ合っている若い男女。

    母親に手を引かれて必死に走る男の子に、父親に抱き抱えられながら、何がなんだか判らないといった様子の女の子。

    クリスタ「何見てるの?」

    エレン「ん? いや、別に何かを見てるって訳じゃないんだけど……ただ何となく眺めてただけ」

    クリスタ「──ふうん、まあいいけど。それよりこれからどうしよっか。そろそろ足の速い巨人ならここにも来るんじゃないかしら?」

    エレン「どうだろうな。この辺りは壊された壁から遠いし、前衛の駐屯兵が抑えてればまだ来ないんじゃないか? 奇行種とかなら別だけど」

     ……そういえば。

    エレン「俺達が巨人に食われたのって、今くらいだったっけ」

    ──今でも、憶えてる。

    目の前で、巨人がこいつを飲み込んだ光景を。

    頭の中が真っ白になって、何もできないまま噛み殺された、あの日のことを。

     ……こっちの俺達も、同じように巨人に食われるんだろうか。

    クリスタ「気になる? この世界の私達のこと」

    エレン「! ──なんで、わかった?」

    訊くと、クリスタは柔らかい笑みを浮かべ。

    クリスタ「だってエレンのことだもん。私がわからない筈ないでしょ?」

    …………なんだよ、それ。

    エレン「あー……」

    今の俺、ぜってー顔赤い。

    そっぽを向き、ボソッと小さな声で言う。

    エレン「なんていうか、ありがとな」

    その言葉に、返事はなかったけど。

    隣にいるクリスタが、可笑しそうに微笑んでいるだろうなあってことは。

    見なくても、何となくわかった。
  18. 55 : : 2014/04/17(木) 18:53:07
              ◆

    アルミン「あ……ああっ……」

     死、死、死、死、死、死、死、死、死──。

    彼の前で、仲間達が為す術もなく巨人に捕らわれ、命を落としていく。

    ある者は頭から噛み付かれ、ある者は体は引き千切られ、ある者は手足は折られ、最終的には死んでいく。

    その光景をただ唖然と眺めているアルミンは、いったい何を思っているのだろうか。

    不思議と、彼の体は、動かない。

    アルミン「…………」

    一体の巨人が、彼をつまみ上げた。

    それでも、彼は動かない。抵抗しないままのアルミンを、巨人は口へと持っていき──落とした。

    アルミン「うっ──」

     ベチャ、と音がした。

    アルミン「うあああああああっ!!」

    そこで漸く、彼の体は動いた。死への恐怖からか、はたまた別の何かなのかは判らない。

     手を伸ばし、絶叫する。助かる可能性はほとんどないとしても、どうしてもそれを認められなくて、腕を伸ばして助けを求める。

     死にたくない──!

    アルミン「──ぁ」

    不意に、手が掴まれた。

    直後、口の外へと放り出される。近くの屋根に着地し振り向くと、そこには片脚を失った親友がいた。

    アルミン「エレン!!」

    自分の代わりに巨人の口の中に入ってしまった親友に向かって手を伸ばす。

    アルミン「エレン!! 早く!!」

    そんな彼の叫びも虚しく。

    無情にも、巨人の口は閉じられた。

    アルミン「あ、ああ──うあああああああっ!!」

    腕一本を残し、彼の親友──『エレン・イェーガー』は巨人の腹の中へと消えた。

    アルミン「嘘だ! 嘘だ嘘だ嘘だっ! エレン──エレンッ!!」

    いくら叫んだところで、親友が戻ってくることはない。

    アルミン「あ、あ……そんな……エレン……ッ」

     唖然と、その場に膝をつく。虚ろな瞳で、親友を食べた巨人を見つめる。

    そんな無防備な彼を、巨人が狙わない筈もなく。

    別の巨人が、直接彼を食らおうと顔を寄せる。

    アルミン「あ──」

    ──そっか。僕も、死ぬんだ。

    そう思い、瞼を閉じた矢先。

    「何してんだよ、お前」

    知らない声が、彼の耳に届いた。

    アルミン「え──?」

    目を開けると、そこには見知らぬ男性が、“巨人の顔を手で押さえ付けながら”自分を見ていた。

    「死ぬんだったら最後まで生きてから死ねよ」

    ──ま、それを俺が言っても説得力なんて無いんだけどな。と続けて。

    男──エレン・イェーガーは、ポカンとこちらを見つめているかつての友に対して、ニヤリと口角をつり上げた。
  19. 57 : : 2014/04/18(金) 07:55:02

    エレン「なあ、クリ──『アリス』から聞いたけど、あんたがアルミンか?」

     まあ知ってるんだけど。

    アルミン「え? あ、そうです……けど。って、あ、貴方は何をしてるんですか!? 一般人は早く避難してください!」

    エレン「お前、よくこの状況でそんなこと言えるな……気が動転し過ぎだ。少し落ち着け──っ、ああもうてめえは動くな。気が散るだろうがっ」

    押さえ付けていた巨人が暴れだしたのを、俺はさらに力を込めて押さえ付ける。ただ俺達を食べようと前に前に頭を動かすだけだから、まだ楽でいい。

    いつかの別世界で、牛車に乗った英霊のおっさんの突撃を受けた時に比べたら、よっぽどマシだ。あれ死ぬ一歩手前までいったし。

    エレン「ったく。とりあえずアルミン、こいつのうなじを削いでくれ」

    アルミン「あっ、そっそうだった! ──あ」

    エレン「……? どうした?」

    アルミン「ひ、膝が笑って……」

    エレン「…………。周りに巨人はいないみたいだし、少しくらい時間掛かってもいいから、ひとまず落ち着かせろ。その間、こいつは俺が押さえておくから」

    さすがにブレードがないと巨人は殺せない。それはクリスタが調達してくるって言ってたから大丈夫だとして、まずは今の状況の打破と──“食われたこっちの俺がどうなっているのか”だな。

    随分俺の時とは食われる経緯が違っていたけど……あいつも同じように別世界で目覚めてたりするのか?

    アルミン「も、もう大丈夫──ですっ」

    エレン「ん、じゃあ頼む。外すなよ?」

    頷き、立体機動装置を使って巨人の背後に移動するアルミン。

    アンカーをうなじの辺りに刺し、ガスを吹かして一気に巨人へと接近する。

    アルミン「つあっ!」

    体重を乗せたその一撃は、ずれなく巨人のうなじを切り裂いた。少し斬撃が浅い気もするけど、死んだみたいだからいいか。

    アルミン「やった……!」

    エレン「喜んでるところ悪いが、早く仲間の所に移動した方がいい。一人じゃ死ぬぞ?」

    アルミン「そ、そうですね、すぐに──あ……」

    「おいアルミン! 大丈夫か!?」

    突然現れたのは、坊主頭が特徴のコニー・スプリンガー。

    コニーに続くよう、数人の訓練兵が俺達のいる屋根に着地する。

    その中には、こっちの『クリスタ』の姿もあった。俺を見て驚き、隣にいるユミルに何か話しているが……というかクリスタだよクリスタ。

    俺のクリスタはちゃんと装置を入手できたのかね。……つーか、どうやって手に入れるつもりなんだろ。あまり危ないことはして欲しくないんだけどなあ。

    気になる。



    【その頃のクリスタ】

    「あーもうっ! これもダメ。あれもダメ。こっちもダメ。まったく、どいつもこいつも装置壊されちゃってさ。一つくらいまともな死体はないのかしら」

    道に落ちている死体を漁りながら、ぶつぶつと愚痴をこぼしていた。
  20. 60 : : 2014/04/18(金) 17:17:44

              ◆

    コニー「おいアルミン、お前以外の班のみんなはどうしたんだ? なんでお前ひとりなんだよ」

    アルミン「…………」

    コニー「おいアルミン!」

    ユミル「周りを見りゃわかんだろうがコニー。こいつ以外は全滅したんだよ。まあ、複数の巨人に遭遇したのは気の毒だが、よりによって劣等生のこいつだけが助かるとは……エレン達も報われないな」

    コニー「……おいクソ女、てめえ、二度と喋れねぇようにしてやろうか!?」

    「やめてよ二人とも!!」


     ──何やら揉めてるみたいだが、俺には関係ないことだろうし放っておくとして。

    今の俺には、特にやることがなさそうだな。

    クリスタはまだ戻らないし、『エレン』は巨人の胃袋の中だから接触は無理。

    『クリスタ』の方は……涙目になりながら揉めてる二人を宥めてるな。なんつうか、昔のあいつは誰にでも優しかったから、“ああいうこと”をさも当たり前のようにやるんだよな。

    昔はそんなところに惹かれてた部分もあったけど、今はそうでもない。むしろ、あいつには俺以外に優しくしてほしくない。嫉妬でそいつ殺したくなるし。

    エレン「……六、七、八──九体か」

     それにしても、巨人の侵攻具合がやけに早くないか? この辺りは──だいたい中衛寄りの前衛だから、最前線の兵士がまともに機能してれば、小さくてすばしっこい奴ならまだしも十五メートル級の奴等がこれだけ来れるとは思えないんだが……。

    まさか、もう前衛は全滅したとか言わないよな。まだ住民の避難も終わってないだろうに、これじゃあすぐに後衛まで巨人が攻めてきて全員食われるだろ。

    ──まあそれも、俺にはあまり関係ないんだけど。

    ユミル「おい、ところでよ。さっきから気になってたんだが、あんた誰よ」

    エレン「ん? 俺か?」

    ユミル「あんたしかいねえだろうが。一般人か? どうしてこんな所にいるのかは知らないが、とっとと消えた方がいい。死んじまうぜ?」

    エレン「忠告どうも。だが生憎、連れとデートの待ち合わせをしてるんでな。下手に動けねえんだこれが」

    ユミル「はあ? おいおい、こんないつ死ぬかも判らない場所でデートかよ。あんたとそのお連れさんは自殺志願者か何かか?」

    エレン「それはお互い様だろうに」

    ユミル「──はっ、違いねえ」

    エレン「つー訳だから、こんな同類は放っておいて、お前らは早いとこ巨人を殺してこいよ。こんな自殺志願者と一緒に居て、死にたくはないだろ?」

    ユミル「言われなくてもそのつもりだっつうの」

    エレン「ま、せいぜい殺す相手に殺されないようにな」

    ユミル「お互いにな……行くぞクリスタ」

    若干の戸惑いを見せた『クリスタ』だったが、俺をチラッと見た後ユミルについていき、コニーとその他の兵士も立体機動装置を使って前進していった。

    いつのまにかアルミンもいなくなっていて。

    この場にいるのは俺と、もう一人。

    エレン「遅かったな」

    クリスタ「心配してくれた?」

    エレン「当然だろ」

    クリスタ「そうだったね」

    クスクスと笑う声が、背後から聞こえる。

    振り向くと、立体機動装置を装備したクリスタが、両手に別の装置を持って立っていた。

    エレン「随分時間が掛かったな」

    装置を受け取り、何年振りかになる感触を確かめる。

    クリスタ「なかなかまともなのが見つからなくてね。途中巨人が襲って来たりもしたから、予想以上に時間掛かっちゃった」

    エレン「ま、お前が無事ならなんでもいいんだけどさ……っと、こんなもんか」

    装着し、軽く体を動かして不備がないか確かめる。少しブレードの刃が少ない気もするが、何とかなるレベルだし、アンカーもガスの量も問題はなさそうだな。

    クリスタ「それで? こっちの『エレン』はどうなったの?」

    エレン「ああ、それがな──」

    ──……。
  21. 62 : : 2014/04/19(土) 04:26:28

    クリスタ「へえ。アルミンの身代わりにね。『クリスタ』も生きてるってことは、随分私達と違う状況みたいね」

    エレン「ああ、二人とも同じ班ですらなかったみたいだからな。多分、そこまで仲も良くないんじゃないか? あ、ただ『クリスタ』の方の性格は昔のお前にそっくりだったぜ」

    クリスタ「どのへんが?」

    エレン「微妙に博愛主義なところ。言葉の前に“偽の”がつくけど」

    クリスタ「──ああ、確かにこの頃の私はそんな感じだったかしら。まあでも、今の私が愛してるのはエレンだけなんだけどね」

    エレン「……お前って、たまにそういう恥ずかしい台詞ぶっ混んでくるよな。いやまあ嬉しいんだけどさ」

    言うと、「ふふっ」と目を細めてからかうような笑みを浮かべるクリスタに、俺は苦笑する。

    クリスタ「さてと、それじゃあこれからどうしよっか。武器は手に入れたし、適当に巨人でも殺してく?」

    エレン「そうだな、とりあえずそこらにいる巨人を──、おいクリスタ、あそこ、あの建物」

    クリスタ「建物?」

    俺が指差した方に顔を向けたクリスタは、「うわあ」となんとも言えない声を出す。

    周りの民家に比べて大きなその建物には大量の巨人が群がっていた。家が邪魔して下の方は見えないが、恐らく小さい巨人も何体もいるのだろう。

    クリスタ「あ、思い出した。あそこ、兵士の本部じゃなかったかしら。ガスの補給とかしたりする」

    エレン「……あれ、本部として機能してると思うか?」

    クリスタ「全然」

    エレン「だよなあ」

    補給しに行くにはあの巨人の中に突っ込まなきゃならない訳だが、普通の人間はあれを見たらまず諦める。

    そもそもガスが無いから補給しに行くんだ。まともに戦える状態でもない中、あれを相手にする奴はいないだろうな。

    クリスタ「どうする? 暇潰しに行ってみる?」

    エレン「暇を潰す感覚で行くような場所じゃないよなあれ。別にいいけど、死ぬなよ?」

    クリスタ「あの程度で死ぬ筈ないでしょ。エレンこそ、あまり怪我しちゃダメだからね。貴方の体は私のなんだから」

    エレン「はいはい。クリスタこそ怪我するなよ? お前の体は俺のなんだからな」

    クリスタ「はいはい」

    そこでしばらく見つめ合った後、ふたり同時に微笑んだ。
  22. 63 : : 2014/04/19(土) 14:49:35

    《あなたは強い。誰よりも強い。この世界に限ってはね》

    104期訓練兵

    首席『ミカサ・アッカーマン』

    彼女は104期訓練兵の中でも頭ひとつ飛び抜けた才能を、そして実力を持っていた。近い将来兵団を支える柱になるだろうということは、誰しもが認めていることである。

    さて、確かに彼女は一般の兵士とはかけ離れた存在ではあるのだが、彼女にもいくつか欠点はある。

    その内のひとつが、言語力の無さ。

    つまるところ、口下手。


              ◆

     ──カンカンカン、と町中に撤退の合図が鳴り響く。兵士達が皆壁の上へと移動する最中、とある家屋の上では数名の兵士達が集まっていた。

    彼らの視線は、あるひとりの少女に向けられている。

    ミカサ「私は……強い。あなた達より強い……すごく強い! ので私は……あそこの巨人共を蹴散らせることができる……例えば、ひとりでも──」

    ブレードを天に掲げ、凛とした雰囲気を醸しつつさらに言葉を紡いでいく。

    ミカサ「あなた達は腕が立たないばかりか……臆病で腰抜けだ……残念。とても、残念だ。ここで指をくわえたりしてればいい……くわえて見てろ」

    そんなミカサの言葉を聞いた兵士達の一部が、信じられないと言った表情で口を開く。

    ──いったい何を言ってるんだと。

    ──あの数の巨人を一人で相手にするのか。そんなことできるわけがない、と。

    そんな臆病者の彼らに、彼女はさも当たり前のようにこう答えた。


     「戦わなければ、勝てない」

    唖然とした彼らを置いて、ひとり巨人の群がる本部へ向かって走り出したミカサ。

    アンカーを射出し、ガスを蒸かして宙に飛び出した直後。

    「戦わなくては勝てない、か。確かにその通りよね」

    「──!」

    唐突に聞こえてきた声に反応して隣を振り向くと、そこにはミカサの知らない女性の姿が。

    ミカサ「……あなたは、誰?」

    「私? 私はね──」


    ──ただ暇潰しに来た、ちょっと特殊な一般人よ。よろしくね?
  23. 66 : : 2014/04/20(日) 06:11:25

    ジャン「…………」

    目の前で起きている出来事に、先に飛び出したミカサに続いて来たジャンは驚きのあまり目を見張っていた。

    それは他の者も同じようで、アルミンやサシャ、コニーらも含め、皆がジャンに似た反応を見せている。

    その原因である当の本人は、彼らを気にする素振りすら見せずに前進し、巨人を片っ端から切り殺しているのだが。

    クリスタ「ふふっ、これを使うのは久々だけど、わりとやれるものね」

    ちょうどよく背を向けていた巨人のうなじを削ぐと、すぐさま近くにいた別の巨人にアンカーを刺し、流れるような動きでそいつのうなじも削ぎ落とす。

    ミカサ「……速い」

    クリスタに迫る速さで巨人を削いでいたミカサが、彼女の隣に来るなりそう口を開いた。

    クリスタ「貴女の方が速いわ。私より多く殺してるでしょ?」

    ミカサ「あなたは、私の補佐をしながら……んっ! ──戦っている」

    クリスタ「邪魔っ! ──だから私の方が凄いって言いたいのかしら? それは過大評価よ──ふっ!」

    ミカサ「そうは──っ! ……思わない」

    クリスタ「そう? ありがと。……それより貴女、ガスの蒸かし過ぎじゃない? もうあまり無いんでしょ?」

    ミカサ「大丈夫……! それより、前を。巨人が来る」

    クリスタ「ならいいけど、落ちても助けになんか行かないわよ?」

    ミカサ「構わない」

    クリスタ「……ふうん、判ったわ。なら精々落ちないようにね。ミカサ」

    ミカサ「! ──なぜ、私の名前を……」

    クリスタ「貴女が生きてたら教えてあげる。ほらっ、また来たわよ! しっかり前を見なさい!」

    ミカサ「……言われなくても!」

    行く道を遮るように現れた巨人達を、片っ端から斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る──


    その一連の動作をひたすら繰り返していると、目的であった建物がすぐそこまで近づいてきていた。

    クリスタ「……! 流石、仕事が早いわね」

     口許に笑みを作ると、一気にガスを蒸かす。

    そして“先程まで群がっていた筈の巨人が一体残らず居なくなっている本部”に、彼女は速度を緩めることなく突き進む。

    そしてあらかじめ“開けられていた”窓を華麗にスルーして、隣の窓ガラスに向かって突っ込んだ。

    ──ガシャアン! とガラスの破片が辺りを舞う。クリスタは室内に飛び込むと、衝撃を転がることで緩和し、立ち上がって服についた埃を払う。

    クリスタ「──よしっ」

    エレン「よしじゃねえよ馬鹿」

    クリスタ「いたっ──ちょっと、いきなり何するのよ」

    エレン「散々人に怪我するなとか言ってたお前が、怪我しそうなことしてんじゃねえよ。なんでわざわざガラス割って飛び込むんだよ。そこの窓開けといただろうが」

    クリスタ「だって、一度こういうのやってみたかったんだもん……貴方だってあるでしょ?」

    エレン「いやねえよ。んなアクション映画みたいなことやりたいと思ったことすらねえよ」

    クリスタ「うー……だからって、何も叩くことないじゃない。馬鹿になったらどうするのよ」

    エレン「お前はさっきから何言ってんだ……まあ問題ないだろ。馬鹿になっても俺がお前を好きなのは変わらねえし」

    クリスタ「……貴方って、たまに恥ずかしい台詞平然と言ってくるよね。狙ってるの?」

    エレン「ははっ、さあ、どうだろうな」

    クリスタ「……むう。やっぱ生意気」



    【後から飛び込んできた皆さんとその他一同】

    『いや、なにイチャイチャしてんのこの人達。空気読めよ。てか誰だよあんたら』
  24. 67 : : 2014/04/20(日) 15:24:02

    《人類にとって巨人は脅威だが、巨人からしたら人類こそ脅威だ》


    エレン「いやー、それにしても驚いた。まさか巨人が巨人を襲うなんてな」

    クリスタ「そうだねえ、何なのかしらあの巨人。ちゃんと構えて戦ってたってことは、格闘術の知識でもあったのかしら? 貴女はどう思う?」

    サシャ「……へ? 私ですか?」

    クリスタ「そうよ。ね、どう思う?」

    サシャ「え、いや、私はそういう難しいことは判らないんですけど……」

    クリスタ「適当に思い付いたことでいいから、ほらほら、私に話してみなさい」

    サシャ「いや、そう言われましても……コニー! 助けてください!」

    コニー「うぇっ!? なんで俺に振るんだよっ。ここは──ライナー、頼む!」

    ライナー「だからなコニー、ケツにブレードをブチ込めば奴らも大人しくだな──」

    コニー「いや今その話はしてねえよ!」

    クリスタ「ほら、早く答えてよ」

    サシャ「いや、ですから私は──」

    ジャン「さっきからうるせえぞてめえら!! 今の俺達の状況を考えろ!!」

    アニ「……バカばっか」

    ベルトルト「あはは……」


     補給室にいる七体の巨人を倒すため、俺とクリスタを含めた九人は薄暗い通路を進んでいた。

    外で巨人相手に暴れている“巨人”がいる今なら建物が崩れる心配がないからと、アルミンの考案した作戦の下行動している。

    俺とクリスタ以外は、だが。

    作戦が伝えれた時、クリスタが「私達も一緒していいかしら?」と言い出したのだ。そしてその提案に対して、なぜか誰も反対する奴がいなかった。普通なら断ると思うのだが、ミカサなんかはむしろついてきて欲しいと言ったくらいだ。

    ……なあクリスタ、いったいお前は何をした。

    その本人は先程からサシャをからかって遊んでいる。サシャのことは昔から気に入っていると言っていたから、多分久々に会えてテンションが上がっているのだろう。前の世界だと会えなかったし。

    そして俺の方はと言うと──

    ミカサ「…………」

    エレン「…………」

    前にいるミカサからの視線に気づきながらも、ひたすら無視を決め込んでいた。
  25. 70 : : 2014/04/21(月) 06:02:43

     俺は極力どの世界であっても、ミカサとはあまり関わらないようにしている。理由は単純で、ミカサと関わるとクリスタが不機嫌になるから。ただそれだけだ。

    基本的に俺が他の女といると機嫌を悪くするのだが、ミカサに関してだけは他よりその度合いが強い。まあその理由も何となく判るから、俺の方からミカサに近づかないようにしているのだけれど。

    ミカサ「……、……あ」

    クリスタ「あら、ダメよミカサ。人の男に手を出したら」

     はやっ。なんだ今の反応速度。まだミカサの奴「あ」しか言ってねえぞ。

    ミカサ「いや、あの……私は──」

    クリスタ「貴女はこれから大事な作戦に臨むんでしょう? だったら今はそれを成功させることだけに集中してなさい。判った?」

    その集中を一番掻き乱してた奴がいったいどの口でそれを言うのか。

    ミカサ「……はい」

    渋々ながらも頷いたミカサだったが、それでもやはり俺のことをチラチラと盗み見るのをやめようとしない。

    ──俺がエレンだと気付いているのか。見た目は違うから、精々『エレン』と似てるくらいは思っているのかもしれないな。

    ……気にしていても仕方ないんだけど。


     そんなやり取りをしているうちに、配置場所である天井に着いた俺達。作戦を実行する七人はそれぞれ柱の上に身を潜め、俺とクリスタも少し離れた位置に身を隠す。

    下には三~四メートル級の巨人がうろついている。俺とクリスタの二人がかりでやれば殲滅するのは容易だが、別に頼まれてる訳でもないからやるつもりはない。

    エレン「……なあ」

    クリスタ「なあに?」

    エレン「こいつらについてきた理由は?」

    クリスタ「暇潰し」

    エレン「ふうん」

    クリスタ「……反応薄いなあ」

    エレン「そんなところだろうと思ってたからな。俺もお前も、他人の手助けがしたいなんて殊勝な心掛けは持ってないし。あるとしても気まぐれに助けるくらいだろ」

    クリスタ「あら、貴方の手助けだったらいくらでもするよ?」

    エレン「ははっ、ありがとよ。俺もお前の為なら何だってするぜ?」

    クリスタ「──えへへ、ありがと」

    子どもみたいに無邪気な笑顔を見せられ、俺の口許も自然と綻ぶ。人前では大人っぽく振る舞うから、こうした顔は俺と二人きりの時にしか見せてくれない。

    ま、どっちも可愛いのは変わらないんだけど。

    クリスタ「──あ、リフト降りてきた。作戦始まるみたいだね」

     見ると、銃を四方に向けて構えた兵士達が、リフトに乗ってゆっくりと降りてきているのが目に入った。それに気がついた巨人達が近づいていく。

    可能な限り惹き付け──そして、ひとりの合図と共に室内に銃声が響き渡った。

     直後、天井に身を潜めていた七人が、銃弾によって目を潰された巨人に向かって一斉に飛びかかる。

    ──ズシャッ、とうなじを削ぐ音が鳴り、“五体”の巨人が倒れる。

    残り二体は、いまだ健在。

    サシャ「あ……」

    コニー「……!」

    殺し損ねたのは、サシャとコニー。

    ミカサ「っ──!」

    ライナー「ちぃっ──!」

    援護に向かおうと、ミカサらが一斉に走り出す。

    サシャ「あ、あの……後ろから突然、た、大変失礼……しました……ひッ──、え?」

    恐怖で震えるサシャに、今まさに飛び掛からんとした巨人だったが──突然動きが止まったかと思うと、ドシンとその場に倒れこんだ。

    クリスタ「間一髪、ってやつかしら」

    呆気に取られるサシャ。そんな彼女に、ブレードを片手にクリスタが歩み寄る。

    クリスタ「大丈夫? 怪我はない?」

    サシャ「──え、あっ、はい……あ、ありがとう、ございます……」

    クリスタ「お礼はいらないわ。所詮は気まぐれだしね」

    サシャ「は、はあ……?」

    困惑するサシャに「こっちの話よ」と言い残し、彼女はコニーの近くに立つエレンの下へ移動した。

    残されたサシャは一瞬何がなんだか判らなかったが、名前も知らない金髪の女性が自分を助けてくれたこと、そして自分はまだ生きていること理解し、思わず近くにいたミカサに抱きついて安堵の涙を流してしまった。

     今度、ちゃんとお礼をしよう。

     そして、名前を聞かせてもらおう。

    そう心に決めながら、サシャはミカサに引き離され、泣きながらガスの補給の準備をするのであった。
  26. 71 : : 2014/04/21(月) 10:51:16
              ◆

    エレン「……なんだあれ、共食いか?」

    クリスタ「見た感じはそうみたいだよね。けど巨人が巨人を食うなんてことあるのかしら」

    エレン「さあな。ただ目の前でそれらしきことが起きてるんだ、俺達が知らないだけなのかもしれない」

    両腕を失い、家の壁に押し付けられて二体の巨人に噛みつかれている“巨人”を見下ろしながら、俺とクリスタは言葉を交わす。

    ガスの補給が必要なかった俺達は、他の奴らより先に外に出ていた。そしてあの巨人を殺す“巨人”のことが気になり、今のこの状況を目撃した。

    エレン「──あ」

    不意に反らした視線の先に、ミカサとアルミンの姿があった。何やらあの食われている巨人を見ながら話しているようだが……あ、他の奴らも来た。

    クリスタ「あの子達も来たんだね。やっぱり気になったのかな、あれのことが」

    エレン「だろうな。人間を襲わずに巨人を襲う奇行種だ。気にするのもおかしくは……おお?」

    クリスタ「……うわあ、あれはまた、凄い暴れっぷりだねえ」

    “巨人”が一体の巨人の首筋に噛みつき、噛みついたそれを振り回して周りにいる他の巨人を凪ぎ払う様を見て、クリスタが感嘆の声を出す。

    ──あいつは異常だな。奇行種だとしても行動や戦い方が異質すぎる。まるで巨人に恨みでもあるかのような……。

    クリスタ「──あ、倒れた」

    エレン「さすがに力尽きたか…………ん?」

    倒れた“巨人”から煙が上がる中、俺の目はある一点に釘付けになった。

    クリスタ「…………あれって……」

    どうやらクリスタも同じようで、俺と同じ場所を目を見開いた注視する。


    “うなじから、巨人に飲み込まれた筈の『エレン・イェーガーが現れた”


    エレン「……どう思う?」

    クリスタ「さすがに予想外すぎて、まだ何とも言えないかな……」

    エレン「──だよなあ」

    俺も同じような感じだし。

    クリスタ「……もし仮に、さっきまで暴れてたあの“巨人”が『エレン』だったとして」

    『エレン』を抱き締めて号泣しているミカサから視線を外し、クリスタは俺の方を振り向く。

    クリスタ「貴方も、あれ、できるのかな?」

    エレン「いや無理だから」

    何を言い出すんだこいつは。

    さすがに巨人にはなれねえよ……たぶん。
  27. 73 : : 2014/04/21(月) 14:50:11

    《ただの通りすがりの一般人よ。文句ある?》


    クリスタ「それで、何か言い訳は?」

    エレン「……俺はなにもしてない」

    クリスタ「ふーん、そう。じゃあ今夜は空っぽになるまで絞り取るから」

    エレン「え、いや、なんで急にそんな話に……」

    クリスタ「絞り取るから」

    エレン「……はい」

    クリスタ「ふふっ、今夜は寝かせないからね」

    エレン「…………」


     さて、この人のお仕置きは夜に決まったから、今は置いておくとして。

    現在、私達の状況はというと──何やら面倒な事態に巻き込まれているというか、なんというか。

    ブレードを構えた駐屯兵団の奴らに囲まれ、私達“五人”は逃げ場のない壁の隅まで追い込まれていた。

    私の隣にエレンとミカサが並び、後ろのアルミンと目を覚まさない『エレン』を庇うように立っている。

    クリスタ「まったく、どうしてこんな面倒なことに……」

     少し前の記憶を振り返り、私は呆れからのため息をついた。

    『エレン』が巨人から出てきた後、しばらくして多数の駐屯兵とその上官らしき人物がミカサ達の前に現れた。

    彼らは『エレン』が巨人から出てきたのを目撃し、彼が人類の敵である巨人の仲間だと疑いを掛け、危険だからこの場で処分すると言い出した。

    当然、ミカサやアルミンはそれを認めなかった。『エレン』を殺させやしないと彼らの前に立ちふさがり、ミカサなんかはブレードを抜いていつでも応戦できる体勢を取っていた。

    ここまでの話は、私とエレンにはまったく関係のないことだ。それがなぜ私達まで一緒に囲まれてるかというと──

    “エレンがやらかした。ついでに私もちょっとやらかした”

    この一言……二言? に尽きる。


     ミカサ達が囲まれていく中、ある一人の駐屯兵がエレンに気付くと、周りと何やら話し合いを始めたのだ。そして話がまとまったのか、こう問い掛けてきた。

    「お前は以前壁の外から来た人間ではないのか」と。

    ──詰め寄った。それはもう、顔が近づきすぎて鼻と鼻が触れ合うんじゃないかというくらい詰め寄ったわ。「いったいどういうことよ」と。

    ……そしたらなによ。目が覚めたら外にいて、壁を走って登ってきたって。そんなことしたら目立つに決まってるじゃないの。それくらい判るでしょ。

    それが原因で目をつけられ、今の状況に陥った要因のひとつだけれど、さらに私達の格好にも問題があった。

    兵士しか装備していない筈の立体機動装置を私達が付けているのを、どうやら彼らは私達が装置を盗んだからと解釈したらしい。

    ……いや、確かに盗んだようなものだけど。でも死体からなんだし、問題ないと思うのよね。

    が、そんなことを言うときっと彼らは激怒しただろう。仲間の死体が漁られたと知って何も思わない方がおかしいしね。

     それで結局、私とエレンも彼らにとって敵と認識されてしまい、今は仲良くミカサ達と一緒に囲まれてると言う訳だ。

    クリスタ「さあて、この状況、どうやって乗りきろうかしら」

    とりあえず、エレンと相談しようかな。

    そう思い、隣にいる彼に声を掛けようとした直後。

    「殺シテヤル」

    ──そんな声が、背後から聞こえてきた。
  28. 75 : : 2014/04/21(月) 20:56:32

              ◇

    「率直に問う、貴様の正体はなんだ? 人か? 巨人か?」

    ……正体、ね。そんなもの、あなたのさじ加減でどうにでも変わるでしょうに。

    初めからそれが化け物だと思ってる人間をどんなに説得したところで意味はない。殆どはそれが化け物としか認められないから。それは違うと、認めるのが怖いから。

    今はまさにそれ。初めから信用していないくせに、どんな答えを言おうが難癖つけて自分の都合の良いように解釈し、こちらの言い分なんて有って無いようなもの。相手にするだけ無駄ね。

    クリスタ「どうする? あいつ、間違いなく撃つわよ」

    エレン「だろうな。一応は発言を促してるが、あれは初めから俺達を始末することしか考えていない。恐怖からまともな判断ができてるようにも見えないし、何を言おうが無駄だろうな」

    クリスタ「そうね。周りにいる人達も似たようなものだし、まず説得は無理……あら?」

     何やらいろいろと叫んでいる上官らしき人の言葉を無視してエレンと話していたら、ミカサがスッと前に踏み出た。

    ミカサ「私の特技は──肉を、削ぎ落とすことです」

    ブレードを胸の前で交差させるようにして構え、彼女は周りを囲む兵士達を睨む。

    ミカサ「必要に迫られればいつでも披露します。私の特技を体験したい方がいれば……どうぞ、一番先に近付いてきて下さい」

     ……私からはミカサの顔は見えないけど、きっと恐ろしい形相をしているんだろうな、というのは、周りの人達の顔を見れば何となく判る。何人かは少し距離を置いた人もいるし。

     それにしてもいい気迫ね。

    クリスタ「彼女がいれば、私達は必要ないんじゃないかしら」

    いや、そもそも関係ないのだから、必要あるもないもないのか。別に三人を──『エレン』を守る義務も義理も私達にはないんだし。

    いっそ三人を置いて私達だけで逃げることもできるのだけれど……なんかタイミング逃しちゃったのよね。ここまで付き合っておいて今更っていうのもあるし。

    アルミン「人と戦ってどうするんだ……それにこの狭い壁のどこに逃げようって──」

    ミカサ「どこの誰が相手だろうと、エレンが殺されるのは阻止する。それ以外に理由は──」

     ミカサとアルミンが話しているのを横目に、私はどうするかを考える。

     一番手っ取り早いのが、エレンと一緒に三人を置いて逃げること。ミカサやアルミンには悪いけど、私にとって大事なのは『エレン』ではなくてエレンだ。正直、他の人がどうなろうが知ったことではない。

    ただそうすると、後々面倒になるのは間違いない。いや、今の段階でも充分面倒なことになってるんだけど、ここで逃げるとこの世界にいる間はずっとお尋ね者扱いを受けなきゃならない。それは正直勘弁してもらいたい。安心してエレンとデートもできなくなってしまう。

     次に、平和的に彼らを説得すること。これはまず無理だろう。エレンの言う通り、まともな判断を下せる状態だとは思えないし。だから却下。

     あとは、ひとつ前の案とは真逆。暴力的に彼らを説得……というか制圧すること。要は全員倒す、ただそれだけ。

    これはまあ、無理ではない。エレンも私も別世界で散々こういう目に──というかこれ以上酷い目に遭ってきたんだ。

    変な力を使う海賊に襲われたり、赤い槍を持った全身青タイツの英雄と戦ったり。今更この程度の相手に負けるとは思えない。

     ……よし、三番目のにしよう。戦闘に捲き込まれて『エレン』達の誰かは死んじゃうかもしれないけど、そうなったらそうなっただ。エレンさえ生きてれば私はいいし。

    ──そうと決まれば、まずはエレンに今考えたことを話さないとね。

    そう思い、彼に話し掛けようとした直後。

    エレン「クリスタッ」

    クリスタ「へあ?」

    ぐいっ、と彼の胸元に抱き寄せられ、思わず変な声が出た。

    そして、次の瞬間。

    とてつもない轟音が鳴り響くと同時に、辺りは一瞬にして砂塵と煙に包まれた。
  29. 79 : : 2014/04/22(火) 10:25:51

              ◆

    エレン「おーいクリスタ、大丈夫か?」

    クリスタ「うぅ……耳がキーンてする……」

    エレン「そりゃあれだけ至近距離で砲弾が爆発したからなあ。しばらくはそれ続くかもしれないぞ」

    クリスタ「……なんで、エレンは平気なの?」

    エレン「我慢してるだけ」

    クリスタ「あ、そうなんだ……、ここは?」

    エレン「近くの民家の中。爆発の粉塵にまぎれて逃げ込んだ。ま、今は休んどけよ」

    壁に背を預けるようにクリスタを座らせ、俺はガラスの割れた窓から外の様子を見渡す。


    『うああああああああああ!!』


    クリスタ「! なに、今の声」

    エレン「……さっきまで俺達がいた場所に巨人が出現した。で、周りの奴らが絶叫したってところだな」

    クリスタ「巨人? じゃあやっぱりあの子は巨人になれたの? つまり貴方も巨人になれるの?」

    エレン「いやだからなれねえって。それもう引っ張るな……あー、巨人になった瞬間を見たわけじゃないから断言はできないが、たぶんそうなんじゃないか?」

    アルミン達を守ってるように見えないこともないしな、あれ。

    エレン「しかしまあ、本当に撃つとはな、あのおっさん」

    クリスタ「仕方ないんじゃないかなあ。あの子達は巨人の仲間で、私達は犯罪者。あの人の頭の中では、それはもう絶体的なこととして認識されてたみたいだし、危険分子を早々に排除しようとするのも判らなくはないもの」

    続けて「んー、ちょっとはマシになったかな」と言ってクリスタは立ち上がる。

    エレン「あまり無理するなよ」

    クリスタ「大丈夫だよ。それにしてもあの人達、あの様子だと私達のこと忘れてるんじゃない?」

    エレン「かもな。まあ突然現れた恐ろしい巨人と、ぽっと出の俺達みたいなのとどっちが印象に強いかって言われたら」

    クリスタ「ほぼ間違いなくあっちだよね」

    そんな会話をしていると、アルミンが装備を外した姿で前に出てくるのが見えた。

    エレン「おいおい、説得する気か?」

    クリスタ「無謀ね。一度巨人化……なのかは判らないけど、あれを見せられた後に何を言おうと、あのおっさんは止まらないわ」

    ……クリスタがおっさんって言うと違和感があるのは何故だろう。まあ今はいいとして。

    エレン「そろそろ行くか」

    クリスタ「行くって、どこに?」

    エレン「判ってんだろ?」

    クリスタ「ふふっ、まあね──ん」

    微笑むクリスタに俺も笑みを返しながら、彼女の柔らかい唇に軽く触れるキスをする。

    エレン「あいつは俺のクリスタに手を出した」

    クリスタ「あれは私のエレンに手を出した」

    今度は、クリスタの方から俺の唇にキスをする。

    エレン「お前に手を出す奴は許さない」

    クリスタ「貴方に手を出す奴は許さない」

    エレン「だから──」
    クリスタ「だから──」

    窓をぶち破り、全力で駆け出す。

    その音に反応して何人かがこちらに気付くが、もう遅い。俺とクリスタを止められそうな人間はこの場にいない。

    「な、なんだ貴さっ──ぐぶうっ!」」

    顔面には俺の拳が、横っ腹にはクリスタの脚がめり込み、おっさんは間抜けな声をあげながらふっ飛んでいく。

    無様にも地面を転がったおっさんは、前に出てどういうわけか敬礼をしていたアルミンのすぐ側で止まった。

    誰もが状況が飲み込めずに唖然としている中、俺は静かに口を開く。

    エレン「俺達が何かって?」

    クリスタ「ただの通りすがりの一般人よ。文句ある?」



    【その頃のピクシス】

    「あれ、わしの出番は?」
  30. 81 : : 2014/04/23(水) 18:54:55

    《できないことはやるな。やれることをやれ》

    「キ、キッツ隊長!?」

    「そいつらを捕らえろ!」 

    ようやく事態を理解した数人の兵士が叫び、俺とクリスタを囲んでブレードを向けてくる。

    エレン「久々の対人戦だな」

    クリスタ「あまりやり過ぎちゃダメよ」

    エレン「加減はするよ」

    背中合わせで会話しながら、俺は目の前の兵士の動きに注視する。ブレードは……使わないでいいか。

    「うっ──うおお!」

     一人の男が雄叫びをあげながら俺に向かってきた。

    どうして一人で来るかな。数はそっちの方が多いんだから、他にいろいろとやり方があるだろうに。一人囮にして残りが後ろからぶっ刺すとか。今はクリスタがいるから無理だろうけど。

     俺がそんなことを考えてる間に、男はすぐ目の前まで来ていた。そして片方のブレードを掲げたかと思うと、どういう訳か男の動きが一瞬止まる。

    ──躊躇ったのか? 理由は知らないが、好都合。

    「うっ、うお──がっ!」

    エレン「一対一でそんな隙の多い動きするなよ」

    鳩尾に拳をねじ込み、殴り飛ばす。

    続けて、近くにいた女の兵士に接近する。

    「あ──」

    さっき殴り飛ばした男に気を取られていたのか、女は俺の接近に今になって気が付いた。慌ててブレードを構えようとするが、もう遅い。

    「あぐっ!」

    腕を掴んで引き寄せ、その際に浮いた足を払うと同時に、掴んでいた腕を引っ張り地面に投げ飛ばす。

    ここでいつもだったら追撃するんだが、一応女だしやめておく。本当はクリスタ以外の女に優しくする必要はないんだけど、殺すつもりはないし今はこんなもんか。

    「きっ、貴様あ!」

    「よくもっ!」

    今度は男が二人、憤怒の表情をしながらこちらに迫ってきた。

    男だったら遠慮はしない。

    思いきり踏み込んでブレードを横に振るってきたのを、少し後ろにさがることで避ける。だからそんな大振りするなよ。

    エレン「舌出すな、噛むぞ」

    「え、ぎいっ!」

    前傾姿勢になったそいつの顎を蹴りあげ、続けて地についてる方の足を軸にして回転し、男の腹めがけて蹴りを放つ。

    吹っ飛ぶ男を最後まで見ることはせず、もう一人の男の方に視線を向けると、腕を引いて今まさにブレードを突き出そうとしていた。

    「つあっ!」

    気合いの入った声と共に、ブレードが俺の顔めがけて突き出されるが、それは軽く首を傾けることで避ける。

    ──狙うなら当てやすい場所にした方がいいだろうに。そもそもブレードって突けるものなのか?

    そんなことを考えながら、男と体が交差すると同時に隙だらけの顔面に拳をめり込ます。

    メキッ、と音がしたが、鼻が折れた程度だろうし、死にはしないだろう。

    ……というかこいつら、俺のこと捕らえる気ないよな。むしろ斬り殺す気満々だろ。

    倒れている四人を見下ろしながら、「はぁ」と静かに息を吐く。残りの奴らは怖じ気づいたのか向かって来る気配はなく、後ろの方からは鈍い音と共に「ぎゃあっ」やら「ぐああっ!」やら悲鳴が聞こえてきた。

     振り向いてみると……あー。

    なんというか、流石はクリスタと言うべきなのか。男女関係なしに問答無用に叩きのめしてる。

    あいつは片目が見えないから視界が半分しかないんだが、それでも一方的だからなあ……あ、鼻折れたなあの人。
  31. 82 : : 2014/04/23(水) 19:27:43
    調子乗って書いてたら二千文字越えてた……気を付けなければ。



    「ふむ、なんとも見事な蹴りじゃな」

    エレン「蹴られたいなら行ってきたらどうだ? 今なら近づくだけでやってくれるぞ」

    「あのような美人に蹴られるのなら、それもまたいいかもしれんのう」

    エレン「ただし触るなよ。触ったら加減なしで蹴り飛ばすから。俺が」

    「それは残念じゃ」

    エレン「……で、あんたは誰だ? そこらの奴らとは違うみたいだが」

    隣に立つ皺の多いじいさんに眼だけを動かして視線を向けると、同じように視線を返してきた。

    「なあに、無駄に長生きしておるただの老いぼれじゃよ。そういうお主は?」

    エレン「ただの一般人だよ。あいつも俺も、非力で無力でそこいらにいる平々凡々な、ただの通りすがりの一般人だ」

    「ほっほ、そうかそうか」

    「ピッ、ピクシス指令!? 何をしているのですか!? 早くその男から離れて下さい! 危険です!」

    ──ピクシス“指令”、ね。

    エレン「だとよ。どうする? ただの長生きした老いぼれさん?」

    ピクシス「そうじゃのう。とりあえずは怪我人の手当てと──あの者達の話でも聞こうかのう。無論、お主らの話もな」

    隅の方で固まっている『エレン』達を見た後、じいさんは俺と再び視線を交わす。

    エレン「嫌だと言ったら?」

    ピクシス「別に何もせんよ。ただ近日中に町にお主らの顔が貼られるだけじゃ」

    そう言ってほくそ笑むじいさんに、俺も口許をつり上げる。

    エレン「そのお喋りに付き合う代わりに条件がある」

    ピクシス「ほう。なんじゃ」

    エレン「俺とあいつをあらゆる面で束縛しないこと。これが条件だ」

    ピクシス「……ふむ。嫌だと言ったら?」

    エレン「別に何も。ただあんたと周りの奴らの首が飛ぶだけだ」

    ピクシス「──ほほっ、言うのう若者よ。ただの一般人の言葉とは思えんわ」

    エレン「一般人だよ。ま、少し異常だけどな」


  32. 85 : : 2014/04/24(木) 05:07:11

              ◆

     その後。

    「連れがいいって言ったら話しをしよう」という俺の言葉で一旦会話を終えると、じいさんは周りに指示を出して怪我人の手当てを、俺はクリスタの下へと向かった。

    クリスタ「いいストレス発散になったわね」

     清々しい笑顔を浮かべ、第一声がそれだったのにはなんとも言えない気分だったが、ストレスの捌け口が俺に向かわなくて良かったと思うことにする。

    ……夜に“アレ”が待っていることには変わりないんだけど。


     さておき。

    クリスタに先程のじいさんとの話をすると、あっさりと了承を得ることができた。

    「貴方が決めたんなら私はそれでいいわよ」とニコニコした顔で言われた。……そんなにストレス溜まってたのかな?

    それから二人で軽く雑談していると、一人の女の兵士がどこか怯えた様子で話し掛けてきた。

    「ピ、ピクシス指令がお呼びです──ひっ」

    クリスタ「……判ったわ。案内して」

    「は、はい……こ、こちらです……」

    クリスタの睨みにビクつきながら、女性は俺達をじいさんの下へと先導する。

    クリスタ「…………」

    「うぅ……」

    クリスタ「…………」

    俺と腕を組んで歩きながら、じいっと睨むように前を歩く女性を見つめるクリスタ。

    たぶん、さっきこの人が声を掛けてきた時に俺の方を向いていたのが気に食わなかったんだろうな。今も「これは自分のものだ」と言わんばかりにぎゅうっとしがみついてきてるし。

    別にお前以外に興味なんてないのに。

    ……ん? いや待てよ。こいつは俺がクリスタにゾッコンなのは端から知ってる筈だ。

    そしてクリスタも俺に対してゾッコンだと断言できる。それだけこいつとの付き合いは深いと自負してるつもりだ。

    てことは、今のこれは──もしかして、ただ甘えたいだけだったりするのか?

    だとしたら……うん。可愛い。

    クリスタ「え? ひゃっ」

    組まれていた腕をほどき、クリスタの肩に腕を回して抱き寄せる。

    「どうしたの?」と首を傾げてきたので、「なんでもない」とだけ答えてぎゅうっと抱く力を強くする。

    二人きりなら、ここでキスなりなんなりするんだけど、今は人がいるから自重する。

    「あ、あの……」

    エレン「ん?」

    恐る恐る声を掛けてきたのは、案内をしていた女性兵士。

    クリスタ「何かしら?」

    「しっ、指令はこの壁の上におられます。ですから、その……」

    クリスタ「上? ──ああ、判った。私達でこれを使って登れってことかしら?」

    コツコツと立体機動装置の本体部を叩く彼女に、兵士はビクビクしながら頷いた。

    その様子に露骨にため息をつくクリスタ。

    クリスタ「もういいわ。案内ご苦労様」

    「はっはい。し、失礼します」

    早足で俺達から離れていく女性を最後まで見届けることなく、クリスタは俺の方を振り返る。

    クリスタ「まったく、何をあんなに怯えてるのかしら。仮にも兵士でしょうに」

    その明らかに不機嫌といった様子に苦笑しつつ、俺は壁の上に顔を向ける。

    エレン「ほら、行くぞ」

    クリスタ「ん、判ったわ……そんなに怖い顔してたかしら」

     あ、睨んでたのは自覚なかったんだ。

    首を傾げているクリスタに、俺はまた苦笑を洩らしながら壁に向かって走り出し、跳躍。

    足が壁につくと同時に、垂直なそれを一気に上へと駆け出した。



    クリスタ「……いや、装置使いなさいよ」
  33. 86 : : 2014/04/25(金) 15:56:32

    ピクシス「報告で聞いておったが……お主、本当に壁を足で登れるのじゃな。流石のわしも驚いたぞ」

    エレン「とてもそうは見えないんだが?」

    壁上にはじいさんの他に、『エレン』にミカサ、アルミンの姿があった。三人は信じられないといった顔でこちらを見ているが、じいさんは面白そうに口元をニヤつかせている。

    ピクシス「本当なんじゃがのう」

    エレン「だったらそのニヤケ顔やめろよ」

    ピクシス「ふむ、どうやらお主の連れも来たようだのう。しかし美人じゃ」

    エレン「聞けよ」

    クリスタ「……ねえ、このお爺さんが貴方の話に出てた蹴られたい願望があるっていう変態じいさん?」

    エレン「ああそうだ。近づかないようにな」

    クリスタ「判ってるわ」

    ピクシス「さて、呼んでおいてなんじゃが、少し時間をくれんか。今はそこの者達の話を聞いていたところなんじゃ」

    くいっ、と親指を『エレン』達に向けるじいさんに、俺はただ頷くことで応える。

    ……つーか、変態呼ばわりされたことはスルーなんだなあんた。まあいいんだけど。



     会話する四人を、俺は少し離れた位置からクリスタと見つめる。なにやら『エレン』が巨人になって壁を塞ぐだとかアルミンが言っているのが聞こえるが……。

    クリスタ「やっぱりあの子巨人になれたんだ。だったら貴方も──」

    エレン「なれねえよ」

    クリスタ「ちぇっ。なによ、最後まで言わせてくれてもいいじゃない」

    そう言って不満そうに唇を尖らすクリスタ。

    ──なんなの、お前は俺に巨人になってほしいのか? 俺はあんなのになりたくねえぞ。

    クリスタ「でっかくなったエレンに肩車してもらいたかったのに……」

    ボソッと呟いたその言葉に、俺は口を閉ざしてしまう。

    ──うん、なんだろうな。たまにこいつがよく判らなくなることがある。肩車って……


    ピクシス「穴を塞ぐことができるのか?」

    『エレン』「……塞いでみせます! 何があっても……!」

    ピクシス「よう言ったの! 主は男じゃ! すぐに参謀を呼ぼう!! 作戦を立てようぞ!!」

    今の声に反応して見ると、どうやらあっちの話しは終わったようだ。

    最後の『エレン』の言葉を聞く限り、巨人になったあいつが穴を塞ぐことに決まったようだが……果たしてそう上手くいくのかね。

    ピクシス「さて、次はお主らじゃな」

    エレン「ん? いいのかよ、あっち放っておいて。作戦立てんだろ?」

    ピクシス「ふむ。そのことなんじゃが、お主らも今から立てる作戦に参加せんか?」

    エレン「──はあ?」

  34. 88 : : 2014/04/25(金) 20:40:44


     ──何かがおかしい。

    目の前でじいさんの話すことを聞き流しながら、頭の中では別のことを考える。話を聞くのはクリスタに任せようと、チラッと隣の彼女に視線を向ける。

    俺の視線に気づいて頷くのを確認してから、改めて思考を戻す。

     俺達は──まあ自分でいうのもあれだが、間違いなく不審者だ。兵士でもないのに立体機動装置を扱え、一般人だと言っておきながら訓練を受けた兵士を一蹴し、さらには肉体のみで壁登りだ。

    “正常な人間”なら、どう考えてもこんな怪しい奴らを、今後の自分達の生存に関わる重要な作戦に組み込むとは思えない。

    このじいさんが、たとえどこか頭のネジが抜けた変人だとしても、“素性も明らかでない正体不明の人間”とこうまで無警戒で接するとは考えにくい。

    ましてや大事な作戦に加われ? おかしいと疑っても仕様がない。


     ……今思うと、他にもおかしな点は多々あった。

    ガス補給室奪還の際の、ミカサのクリスタに対する信頼の深さ。

    クリスタに訊いたら少しの間共闘しただけと言っていたが、それだけで「一緒に来てほしい」等と言うだろうか。そしてそれをアルミンや周りの連中が簡単に了承するだろうか。

    見ず知らずの──何人かは以前会ったが、大半は俺達を“知らない筈”の人間だ。信頼なんてゼロ。そんな奴に自分達の命が懸かった作戦を共にさせようと思うか?

    俺なら思わない。むしろ警戒するだろう。こいつは何だ、こんな奴を連れていっていいのか、って。

     あとはさっきのじいさんとのやり取りも──

    ピクシス「──どうじゃ? やってくれんかのう」

    エレン「…………」

    クリスタ「ええ、それなら別に構わないわ。作戦が決まったら知らせて頂戴」

    ピクシス「うむ。では後程の」


             ◆

     ふう、と隣で息を吐く音がした。

    エレン「悪いな、全部任しちまって」

    クリスタ「別にいいわよ。いきなりアイコンタクトしてきた時は何かと思ったけど」

    エレン「ははっ、わりい。それで、話はどうなった?」
  35. 90 : : 2014/04/27(日) 21:02:40

    クリスタ「一言で済ますと、“手を貸して欲しい”だって」

    ほんと、なに言ってんのかしらね。と肩を竦めるクリスタ。

    エレン「それで?」

    クリスタ「条件付きで受けたわ。あの人達に協力する代わりに、“今までのことはなかったことにしろ”って。勿論、手を貸してる間のことも含めてね。ま、それをあっちが律儀に守るとは限らないけど」

     ……そう言えば、俺は束縛するなとは言ったけど、時間は限定してなかったな。それに口約束だったし、と今更ながら自分の迂闊さに少し反省。

    それにしても──

    エレン「お前はどう思う? あのじいさん……というか周りの奴らも含めてだけど、俺達に対する警戒心があまりにも無さすぎる」

    クリスタ「……まあ、そうね。むしろ信頼してるようにも思えたわ」

    そこで一旦言葉を区切ると、少し考えてからもう一度口を開く。

    クリスタ「もしかしたらだけど、今までと同じなのかも」

    エレン「今まで?」

    クリスタ「ええ。違う世界に移ると、“私達という存在が、その世界に違和感がないくらい自然に組み込まれること”があったでしょ? 今回もそれが関係してるんじゃないかしら」

     ──世界に組み込まれる。

    それは今まで過ごしてきたいくつかの世界であったことだ。

    本来なら俺達──『エレン・イェーガー』と『クリスタ・レンズ』という人物が存在しない世界だとしても、まるで始めから存在していたかのように世界が、人が変わったことがあった。

    俺かクリスタの目覚める時間がズレなかったら確かめることはできないから、全部の世界がそうだったとは一概にも言えないのだが……。

    クリスタ「けど、この世界は何とも言えないのよね。別に私達の記憶を持ってるわけでもないし、信頼されてるとしても中途半端な感じだし……」

    エレン「……この世界には既に『エレン』と『クリスタ』が存在してる。それも何か関係してるのかもしれないな」

    クリスタ「そうね。そこが一番の相違点だし、可能性としてはあるかもね」

    散々世界を廻ったが、俺達と同じ存在に出会うことはなかった。しかし今回は存在しているのだ。今までと違うことがあっても不思議ではない。

    エレン「──ま、今は何とも言えないな」

    クリスタ「そうね。それにどうやら作戦も決まったみたいだし、今はそっちに集中しましょうか」

     こちらに走ってくる数人の兵士を視界に映しながら、俺は思考を切り替えた。
  36. 91 : : 2014/04/28(月) 14:52:41

     作戦内容は難しいものではなかった。

    『エレン』が巨人化して大岩を運び穴を塞ぐ。一部の駐屯兵の精鋭がそれの護衛に付き、残りの兵士は巨人の特性を利用し、壁の一ヶ所に集まり巨人達を引き寄せる。大雑把にまとめるとこんなところか。

     俺とクリスタは護衛の方を任されることになった。なんでもミカサが「自分と同等以上の実力がある」とクリスタを推したらしい。

    そして俺についてはクリスタが推した。というか無理矢理同行を認めさせた。

    実力の判らない俺を護衛に付かせるのはどうなのか、と渋る奴らもいたが、クリスタの「俺と一緒じゃなきゃやらない」の一言で決定した。

    ……いや、確かにクリスタの戦力を失うのは痛いかもしれないが──それでいいのかあんたらは。これ殆どクリスタの我が儘なんだけど。信頼とかそういう以前の問題なんだけど。



     さておき。

    幾人かの兵士が離反するという騒ぎもあったが、じいさんによる演説でそれらも無事収束し。

    現在、俺達二人は『エレン』とミカサを加えた精鋭班と共に壁の上を走って移動している。目標地点の近くに着いたら壁を降り、立体機動で移動することになっている。

    エレン「…………」

     ふと、前を走る『エレン』に視線を向ける。

    こちらの世界の俺は、巨人化なんて力を持ち、今はその力を用いて人類を救うため──希望になるために行動しようとしている。戦おうとしている。

    ──俺には無理だろうな、顔も知らない奴らの為に命を賭けるなんて。

    昔の俺なら、もしかしたら同じことができたかもしれない。巨人を駆逐すると言っていたあの頃なら、みんなの希望になるために巨人化だろうがなんだろうが利用して、死地でも何処にでも赴いていたかもしれない。

    ──が、今の俺はそんなことできない。するつもりもない。

    巨人の駆逐なんかどうでもいい。他人がどうなろうが知ったことじゃない。

     ──チラッ、と俺に寄り添うように走る彼女を見る。

    クリスタ「? どうかした?」

    エレン「いや……ただ、俺はお前が居てくれれば他はどうでもいいやって思ってな」

    言うと、「急にどうしたの?」とクリスタはクスッと笑みをこぼす。

    それに「別に」と答えながら、俺も笑みを浮かべた。


    「ここだ! 行くぞ!」

    そんなやり取りをしている内に、どうやら岩までの最短距離に着いたようだ。

    次々と壁を飛び降りていく中、俺とクリスタは『エレン』とミカサの少し後ろを飛びながら、目的の岩のある場所まで移動する。


    そして目的の場所に到着し、『エレン』が手を口元に運ぶ仕草をした直後──


    巨人が、現れた。

  37. 95 : : 2014/04/29(火) 19:31:24


     轟く咆哮。

    空気が震え、大地が揺れる。

    辺りに飛び散る家屋の残骸を気にも留めず、俺は目の前で暴れる巨人を見据える。



     ──巨人と化した『エレン』が初めにとった行動は、作戦通りに岩を運ぶことではなく、身近にいた人間──この場合はミカサだが、それに対する攻撃だった。

    エレン「……制御できてないのか?」

    その呟きに「そうみたいね」と巨人化した『エレン』を興味深そうに見つめるクリスタが答える。

    クリスタ「巨人化なんて不可思議な力だもの。制御云々以前に、もしかしたら始めから操れる類いのものではなかったかもしれないわね……あ、ミカサだ」

    先程の攻撃を何とか避けたミカサが、巨人の『エレン』の顔に飛び付き、必死に叫び声をあげる。

    クリスタ「無茶するわ」

     同感だ。

    クリスタ「愛かしらね」

     …………。


     どうつっこむか悩んでいると、『エレン』が顔面に張り付いたミカサを殴ろうとし──そのままの勢いで自らを殴り、自滅した。

    顔を半分以上失った『エレン』は、運ぶ手筈だった大岩に背を預けて座り込む。

     ……知能はそこらの巨人と変わらないのか。

    「撤退するぞ!」

    「ああ。仕方ないが……あいつはここに置いていこう」

    声の方を見ると、指揮を執っていた男に二人の兵士が詰め寄っているのが確認できた。が、気になるのはその三人ではなく、彼らの側にいるミカサの方。

     ──ま、そりゃ怒るよな。身内を捨てて逃げると言ってるようなものだし。

    俯き、静かに殺気を放つミカサを見つめながら、俺は四人に近づく。クリスタは壁から侵入してきた巨人を見据えたまま動いていない。

    「イアン! お前のせいじゃない! ハナッから根拠の希薄な──」

    男が指揮官──イアンという男に撤退するように促すが、イアン本人は眉を寄せて思案顔のまま言葉を返さない。

    「いいか! 俺達の班は壁を登るぞ!」

    苛立ったように男がそう言い放った直後、ミカサの雰囲気がガラリと変わった。

    ブレードを握り直し、長く息を吐きつつ、殺気を放ちながら男に近寄り──

    エレン「ストップ」

    ミカサ「っ──!」

    面倒なことをしでかす前に、俺はミカサの腕を掴んで動きを止める。

    エレン「まあ落ち着けよ。そうしたいのは判らなくもないが、今はあんなのを相手するよりやることがあるだろ」

    な? とミカサに顔を向けると、始めこそ俺を睨んでいたが、徐々に腕の力を抜いていく。

    それを確認し、俺はミカサから腕を離す。

    続けて、黙ってこちらを見ている三人に向かって口を開く。

    エレン「さて、俺は別にあんたらが尻尾巻いて逃げようが何をしようがどうだっていい。ただやる気がないんならとっとと消えてくれ。あれと戦うのに足手まといがいると邪魔だから」

    イアン「!」

    「なっ──」

    「っ──」

    イアンは目を見張り、他の二人は絶句する。

    「……お前はこの状況で、あいつらと……巨人と戦う気か?」

    エレン「? 何を当たり前のことを言ってるんだ? 『エレン・イェーガー』が大岩を穴まで運ぶのを護衛する、それが今回の作戦だろうが」

    眼鏡をかけた女にそう言い返す。

    「なっ、何を言ってるんだお前は!? 『エレン・イェーガー』はもう駄目だ! あんな欠陥のある人間兵器の為にお前は命を賭けるのか!? ……それに腕が立つだがなんだか知らんが、あれだけの巨人を相手にするのは無謀だ」

    今度はさっきから撤退すると言っていた男が叫んできたが……正直相手にするのが面倒になってきた。

    エレン「だから、逃げたかったら逃げろって。俺達は勝手にやるからさ」

    「おっ、おい!」

    男を無視して背を向け、俺はミカサの横を通り過ぎる。

    エレン「『エレン』の目が覚めたら言っておけ。できないことはやろうとするなって」

    ミカサ「っ……あ──」

    すれ違う際にそう言い残し、何か言おうとしていたミカサを放って俺はクリスタが立つ屋根まで移動した。

    クリスタ「二体増えたわ。それぞれ前と後ろに一体ずつ」

    エレン「ん。じゃあ俺は前をやるわ」

    クリスタ「なら私は後ろね。怪我しちゃダメよ?」

    エレン「お前もな」


     ──さあて、やりますか。
  38. 96 : : 2014/04/30(水) 00:00:54
    《決められた運命。いったい誰が決めたのかね?》


     彼らは最早人間ではない。

    それは別に、彼らが人間以外の種ということではなく、ただ単純に“普通の人間”の範疇を越えているという点に置いて、彼らは人間ではないのだ。

    異なる世界で目覚める際に、彼らは精神のみではなく“肉体も死ぬ寸前の状態を保ちながら”別世界にて目覚めている。まるで体ごと“移されている”かのように。

    つまり、彼らは引き継いでいるのだ。死ぬ直前までの様々な体験から得た経験を、今の世界に。

    人類最強の真紅に鍛えられた経験を。

    白き伝説の海賊と戦い生き抜いた経験を。

    一京のスキルを持つ人外と過ごした経験を。

    最古の英雄王と戦争を駆けた経験を。

    幻想に住む少女達と関わった経験を。

    本来なら到底あり得ないような体験をしてきた二人にとって、果たして知能もろくに持たないただ人類を襲う為だけに動く奴らを脅威と思うだろうか。

     答えは否。

    最早彼らにとって、“巨人”という存在はそこいらにいる何ら脅威にすらならない小動物と同じ様なものなのだ。

    なぜならそれ以上の脅威を、驚愕を、恐怖を、彼らはその身に体験している。

    そして彼らの身体は、それを憶えているのだから。


             ◆

     血飛沫が舞い、肉片が飛び散り、巨体は為す術もなく崩れ落ちる。

    それを見つめながら、俺は小さくため息を吐いた。

     ──ったく……いったいどれだけ殺したんだろうな。つーかどんだけいるんだよこいつら。いい加減うざったい。

    エレン「……あー、また来たよ」

    次から次へと破壊された扉から入ってくる巨人に、さすがに辟易してきた。

    途中で何人かの兵士が来たが、あいつらは一体に対して複数で挑むからあまり戦力にならない。いや、少しでも数を減らしてくれる分楽にはなるんだけど……クリスタに比べたらなあ。

    エレン「ま、うだうだ言ったって状況は変わらないし」

    俺を掴もうと腕を伸ばしてきた巨人に、“せっかく装備しているんだから”立体機動装置を使ってうなじを削ぎにいく。

    伸びてきた腕をかわし、巨人の背後にある家にアンカーを射出。

    背後に移動し、うなじにアンカーを刺すと一気に接近してブレードで斬り裂く。

    ズシン、と地に倒れたそれを屋根から見下ろした後、次はどいつをやろうかと辺りを見渡す。

    そこで気になったのが、巨人達がやけに此処に集まってきているということ。

    後方の巨人はクリスタが相手をしているからかあまり来てはいないが、それでも遠くを見ると、此処に向かって歩いてくる巨人の数が多くなってきている気がする。

    ……もしかして、『エレン』を目指しているのか?

    エレン「まあ、なんにせよ」

     やることは決まってるんだけどな──。



     身近にいる巨人を、ただひたすらに斬り殺していく。途中でミカサがいなくなり、またしばらくしたら戻って来たのは少し気になったが……まあいいか。

    エレン「あ」

     動きの鈍い巨人を削いだ後、ブレードの刃が欠けていることに気がついた。

    ──いっそ素手で戦うか。替え刃もどうせすぐダメになるんだし……。その場合うなじは削げないけど、まあ顔面吹き飛ばすくらいはできるし、問題ないか。

    そう考え、いざそれで戦おうとした矢先──ズシンッ、と一際大きく大地が揺れたのを感じた。

    エレン「……へえ。ようやくか」

    大岩を持ち上げて歩く“巨人”を視界に入れ、俺は自然と口角をつり上げる。

    クリスタ「ふうん。動けたんだ」

    エレン「みたいだな」

    クリスタ「制御できてるのかな」

    エレン「岩を運んでるし、周りに人間がいても襲わないのを見るとできてるんじゃないか?」

     『エレン』が動いたのを確認し、前方に合流した兵士達と一緒にクリスタも戻ってきた。

    エレン「ご苦労様。怪我してないか?」

    クリスタ「全然。後から来た人達は何人かやられたみたいだけど。そっちはどう?」

    エレン「無傷だよ。死んだ奴は……気にしてなかったからわかんねえや」

     何回か成り行きで助けたけど、ろくに意識してなかったし。

    エレン「あとはあいつが穴を塞げば終わりか」

    クリスタ「ええ。ここまできたら私達は要らない気もするけど、どうせだから最後まで付き合いましょうか」

    「そうだな」と内心面倒臭いと思いながらも、俺はクリスタの後について行くのだった。

  39. 98 : : 2014/04/30(水) 07:28:08

    「『エレン』を守れ!」

    「こっちだクソ巨人共!」

    自分達に見向きもせずに『エレン』を狙う巨人の注意を引くためか、兵士達は無謀にも地上に降りて挑発を行う。

    「ぎゃあっ!」

    「離せ! 離せよ! はな──」

    一人、二人と巨人に捕まり、喰われ、潰され死んでいく。

    「きゃあっ!?」

    六メートル級の巨人の横を通りすぎようとした女性兵士だが、脚を掴まれ持ち上げられ、今まさに頭から捕食されそうになっていた。

    「いや──やめて、離して……!」

     抵抗など無意味。

    口を大きく開き、巨人は彼女を呑み込もうとし──倒れた。

    「──へ?」

    クリスタ「呆けてる暇なんてないわよ。早く動く。死にたいの?」

     それだけ言い残し、クリスタは女性を置いて次の獲物へと颯爽と駆け出した。

    その様子を前方の離れた所から見ていた俺も、足元で倒れている巨人を置いて走り出す。


     『エレン』と穴までの距離はそう遠くない。あと少しで到着するだろう。

    あいつの近くにはミカサと──なぜかアルミンがいる。心配になってこっちに来たのか?

    あいつらから少し後方に俺とクリスタがいる。『エレン』の近くに現れた巨人を片っ端から殲滅していく。

    エレン「──! あれはまずいな」

     十メートルを越える巨人が二体、『エレン』達の前に現れたのを視認した俺は、周りの巨人を無視して一直線にそいつらに向かって駆ける。

    一体だけならミカサとアルミンでもどうにかできたかもしれないが、さすがに二体はキツいだろう。

    エレン「おい、俺が左をやる。お前らは右をやれ」

    ミカサ「! ──判りました!」

    アルミン「ミカサ!?」

    ミカサ「大丈夫。彼は強い」

    アルミン「でも一人でなんて──」

    後ろで何やら言い合ってるが、それを無視して俺は右にいるしゃがみ込んでいる巨人を横目で流しながら、左の巨人に接近する。

    左は壁。少々狭いが、まあ問題ないだろう。

    こちらに気づいて手を伸ばそうと動き出したが、そんなものは気にしない。気にする必要もない。

    クリスタ「つあ!」

    横から飛び出してきたあいつが、巨人の腕を文字通り“蹴り飛ばす”のを見て思わず笑みがこぼれる。

    その隙に、俺はアンカーを使わず“脚力のみ”で巨人の頭上に跳躍する。

    そして落下する勢いを加え、脳天めがけて踵をめり込ませた。

    ──ドゴオッ! という音と共に、巨人は勢いよく顔面から地面に叩きつけられ──そこをクリスタがうなじを削ぎ、特に何かすることもなく巨人は絶命した。

    エレン「もう片方は──」

     着地し、首を動かして周りを見ようとした直後。

    とてつもない轟音が辺りに響き、激しく大地を揺らす。それは『エレン・イェーガー』が大岩で穴を塞いだ際の衝撃だった。

     つまり。

    エレン「作戦成功、か」

    クリスタ「相応の代償と引き換えにね」

    黄色の煙弾を二人で見上げながら、そんなことを口にする。

     あとは壁の上に撤退して終わりか……ん?

    エレン「トラブルか?」

    巨人化した『エレン』のうなじ辺りで何やらもたついているアルミン達。それを黙って見ていると、『エレン』を抱えたアルミンが地上に落ちてきた。

     そこに近づく、二体の巨人。

    エレン「なにやってんだか」

    ため息を吐きつつ、二人を助け出そうとした刹那──突如現れた人影によって、一瞬にして二体の巨人はうなじを削がれ、地面にひれ伏した。

    エレン「…………」

    「…………」

    人影と、視線が交差する。

    しばらく見つめ合い、先に視線を外したのは人影の方だった。

    「……オイ、ガキ共……これは……」

     どういう状況だ──。

    これが、この世界での人類最強との初めての邂逅だった。
  40. 99 : : 2014/04/30(水) 09:10:21

             ◆

     その後。

    トロスト区内に閉じ込めた巨人は丸一日かけて掃討され、その際に二体の巨人の捕獲に成功。

    多くの犠牲を生んだトロスト区奪還作戦は、人類初の勝利という結果に終わった。


    人類勝利の立役者というべき『エレン・イェーガー』の身柄は憲兵団に拘束され、今後彼をどうするかは兵法会議にて決定されるらしい。

    まあ、俺とクリスタにはあまり関係ないことなのだけれど。


     ところで、この作戦が始まる前、俺達はじいさんとある約束を交わしていた。

    それを簡単にまとめると、俺達のした犯罪行為──駐屯兵に対する暴動や立体機動装置を無断で拝借したことを無かったことにし、かつ束縛しないこと、だ。

    つまり、作戦に付き合った以上、俺達二人はもう自由なのだ。

    ……自由の筈、だったのだが。

    「急に引き留めて悪かったね。くつろいでくれて構わない」

     とある一室。

    俺とクリスタの前に座るのは、“見た感じ”は人の良さそうな笑みを浮かべる男。

    穏和そうな見た目とは裏腹に、その肩書きは決して舐められたものではない。


    『調査兵団団長』

    名を、エルヴィン・スミス。


    エルヴィン「さて、率直に問おう」

    ──君達は、いったい何者だ?──



     ……どうやら、また面倒なことに巻き込まれたみたいだ。

    そう思ったのは、隣に座るクリスタも同じらしく。

    互いに視線を交わすと、同時にため息をついた。



    《……to be continued》
  41. 100 : : 2014/04/30(水) 10:00:07
    はい、『そして何度繰り返したか』はここで終わりです。ここまで読んで頂きありがとうございます!

    続きは新しいスレッドで。

    それでは。



    【次回予告!】

    人類と敵対することを決めたエレンとクリスタ。

    巨人化を操る『エレン』

    人類最強リヴァイ

    さらには調査兵団を初めとする兵士達に命を狙われ、二人は次第に追い詰められていく……。

    そしてとうとう、エレンを庇ったクリスタの身を刃が貫く!


    エレン「クリスタ!」

    クリスタ「ごめんね、エレン……でも、よかった」


    倒れるクリスタ。

    最早為す術はないのか……

    絶体絶命かと思われたその時!

    彼らの前に現れたのは、別世界の住人達──

    「おいおい、なあにやられちゃってんだよ『えーくん』よー。それでもあたしの“弟子もどき”かよ情けない。おねーさん悲しいよ」

    「げらげらげらげらげらげら」

    ある世界からは『人類最強』と『人類最終』が。


    「グラグラグラ! なあにやってんだ小僧共!」

    『伝説の白き海賊』が。


    「お兄様とお姉様に手を出すなんて、許さない! 私がぜーんぶ“破壊”してやる!」

    「あーもう。なんで私がこいつの世話せにゃならんのよ、面倒臭い……あんた達、後で助けるお礼含めてたんまり賽銭よこしなさいよ!」

    『狂気の妹』と『楽園の素敵な巫女』が。


    「ふん、雑種が……誰の許可があって我の前に立つか!」

    『黄金の英雄王』が。


    「ヤハハ! 楽しそうなことしてるじゃねえか!」

    『正体不明の問題児』が。


    「また面白いことになってるじゃん、ほんと君らと居ると退屈しないよ。──ああ君達、僕のことは親しみを籠めて安心院さんと呼びなさい」

    『一京のスキルを持つ人外』が。


    様々な世界からきた頼もしい者達を味方につけ、二人は人類に反撃を開始する!

    人類の殲滅は、ここからだ!









    いや、(嘘)予告ですよ?
  42. 102 : : 2014/05/01(木) 04:14:06
    >>101
    ありがとうございます!

    まあこのサイトにはない作品からも出してますからね。分からないものもあるかと。


    ちなみに上から『戯言シリーズ』『ワンピース』『東方project』『Fate/staynight』『問題児たちが異世界から来るそうですよ?』『めだかボックス』ですね。

    ついでに某シャーマンのキングさんやとある都市の第一位さんなども後ろで待機しています。

    なにこの過剰戦力。もう人類どころか巨人も全滅できるんじゃね? 
  43. 107 : : 2020/10/06(火) 10:16:44
    高身長イケメン偏差値70代の生まれた時からnote民とは格が違って、黒帯で力も強くて身体能力も高いが、noteに個人情報を公開して引退まで追い込まれたラーメンマンの冒険
    http://www.ssnote.net/archives/80410

    恋中騒動 提督 みかぱん 絶賛恋仲 神威団
    http://www.ssnote.net/archives/86931

    害悪ユーザーカグラ
    http://www.ssnote.net/archives/78041

    害悪ユーザースルメ わたあめ
    http://www.ssnote.net/archives/78042

    害悪ユーザーエルドカエサル (カエサル)
    http://www.ssnote.net/archives/80906

    害悪ユーザー提督、にゃる、墓場
    http://www.ssnote.net/archives/81672

    害悪ユーザー墓場、提督の別アカ
    http://www.ssnote.net/archives/81774

    害悪ユーザー筋力
    http://www.ssnote.net/archives/84057

    害悪ユーザースルメ、カグラ、提督謝罪
    http://www.ssnote.net/archives/85091

    害悪ユーザー空山
    http://www.ssnote.net/archives/81038

    【キャロル様教団】
    http://www.ssnote.net/archives/86972

    何故、登録ユーザーは自演をするのだろうか??
    コソコソ隠れて見てるのも知ってるぞ?
    http://www.ssnote.net/archives/86986

    http://www.ssnote.net/categories/%E9%80%B2%E6%92%83%E3%81%AE%E5%B7%A8%E4%BA%BA/populars?p=18

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