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仮面ライダーぼっち16

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  1. 1 : : 2014/03/27(木) 22:31:26
    三浦の変身した仮面ライダー王者の放ったファイナルベント「べノクラッシュ」によってライダーバトルから脱落した材木座。
    それはつまり、現実世界での死と等号で結ばれて……。
    彼ら彼女らは一体何を思うのか……。
    そして、友の死という重い現実が「ライダーバトルを止める」という八幡の思いにどのような変化をもたらすのか……?
    そして、窮地に追い込まれた留美は、彼女の変身を見せて……?


  2. 2 : : 2014/03/27(木) 22:43:36
    「材木座ァァァっっ!」
    場の空気が凍りつき、一瞬誰もが動きを止める。
    その沈黙を破ったのは、三浦優美子だった。
    「あんさー、あんた何おセンチな気分になってんの?これがライダーバトルなんだよ。だから、おもしろい」
    「三浦、お前ぇッ!」
    「そうだよ、これがライダーバトルだ」
    「平塚、先生……」
    「違う、今の私は、仮面ライダーゾルダだ。……ライダー同士は共存できないんだよ、お前らのように仲良しごっこでつるんでる方がおかしい」
    「へぇ、あんた平塚だったんだ……」
    「今言っただろう?今の私は」
    「ライダーバトルに教師はいらないんだよっ!」
    手にした剣で突如王蛇がゾルダに襲いかかる。
    ゾルダは手に持った銃で受け止めようとしたが、
    「キィン!」
    それを止めたのは、仮面ライダーナイト、雪ノ下雪乃だった。
    そしてそのまま王蛇に一突きを浴びせ、一瞬油断したゾルダに同様の攻撃を仕掛ける。
    「そうね。あなた達の言う通りよ。なら、当然自分がやられる覚悟もあるのでしょうねっ!」
    「はっ、おもしろい。やってやろ……って、時間切れか」
    王蛇の体から、小さな粒子のようなものがこぼれおち始める。
    ミラーワールドにいられる時間には制限がある。
    この現象が始まったら、急いで現実世界に戻るべきなのだ。
    そういう俺の体にも、同様の現象が起き始めた。
    「あんたもあーしがぶっ殺してやるよ」
    「では、私もこれで。次に会うときは、先生と生徒の関係だ。仲よくしてくれたまえ」
    どの口が、そんなことをっ……。
    言い残して、彼女達はこの世界を去って行った。俺達は誰も何も言わず、黙ってもとの世界へと帰還した。
  3. 3 : : 2014/03/29(土) 13:23:32
    最後まで見てるから完結まで続けていただきたい
  4. 4 : : 2014/03/29(土) 21:19:03
    ありがとうございます!
    その一言がすごくエネルギーになります!
    不定期更新ですが、必ず完結させます!
    これからもチェックお願いします!
  5. 5 : : 2014/03/29(土) 21:43:25
    「材木座……」
    俺の目からぼろぼろと涙がこぼれおちる。
    最初は体育の時間にペアを組むだけだった。
    それから、あいつのラノベの相談などを通じて、少しずつ一緒に過ごすようになった。
    お気に入りのぼっち飯プレイスにあいつが乱入してきた時は腹を立てたものだが、だが、それでも少しだけうれしかった。
    あいつはもう、戻ってこない。
    ニ度とその姿を見ることはできないのだ。
    「くっっ、うっっ……」
    膝をついてその場に崩れ落ちる。
    そんな俺の肩を、不意に後ろから肩をたたかれた。
    「……どうしたの、八幡?」
    「鶴見、か……?」
    「留美でいい」
    「そ、か……。悲しいことが、あってな」
    「そうなんだ。泣きたいときは、思いっきり泣くといい」
    「ハハ、まさか幼女に慰められる日が来るなんてな……」
    「子供扱いしないで」
    「悪い。お前は、どうしてこんな所に……?」
    「今日自由行動だけど、朝ごはん食べ終わって部屋に戻ったら、もう誰もいなかった……」
    「そりゃ、ひでぇな……」
    「ちょっと驚いた。そんなことより、八幡はどうしたの……?」
    「……」
    「ごめん、言いたくないなら言わなくていい」
    「ああ。すま、ない……」
    再び勢いよく涙があふれ出す。
    しばらく黙っていた留美が、俺に何かを手渡してきた。
    「これは……。水筒?」
    「うん。泣きすぎたら、喉かわいちゃうから」
    「ありがとう、助かる」
    ゆっくりと飲み口に口をつけると、自分でも驚くくらいすんなりと体に入って行った。
    自分の体の状態にも気付けないほどだったんだな……。
    「……あ、間接キスだ」
    「おま、小学生がそんなこと……。なんか、ごめんな」
    「ううん、別に問題ない」
    「……お前、ビッチの才能あるかもな」
    「こんなの、初めてだよ……」
    「申し訳ない……」
    「少しは、落ち着いた……?」
    「……ほんとだ、ありがとな、留美」
    「うん、よくなかったなら、私も、うれしい」
    「この礼は、きっと返すよ。今夜の肝試し、楽しめるといいな」
    「うん、でも、無理、かな……。じゃぁね、八幡。元気、出してね?」
    言い残して、留美は去って行った。
    とても、救われた。最初に比べて、気持ちがだいぶ落ち着いた。
    あいつの死への思いが薄まったわけではない。
    ただ、悲しみに暮れて涙することが、今するべきことじゃない。
    そう気付くくらいには、沈めてくれた。
    俺の手には、彼女の水筒だけが残った。
  6. 6 : : 2014/03/29(土) 22:23:55
    「わたし、止められなかった。厨ニのこと、わかってたのに……」
    俺達奉仕部の面々は、バンガローの一つに集まって材木座の死について話し合っていた。
    「由比ケ浜さん、あなたのせいではないわ。平塚先生が言っていたことも、間違っているとは、言えないし……。もしも責任があるというのなら、私たち全員に等しく責任があるわ」
    「そうだな……。俺達はまちがえた。だから、これからその分間違わないよう気をつけないといけない。立ち止まってる暇はない……」
    「うん、そうだね。これ以上、誰も死なせない。絶対に、ライダーバトルを止める」
    由比ケ浜の目は、真っ赤に染まっていた。

    「あー、ちょっといいかね?」
    先ほどのことなど、まるで何もなかったかのように彼女は俺達のもとを訪れた。
    「平塚っ!」
    「おいおい比企谷、教師に向かってその口のきき方はあんまりだろう」
    「あなたにそんなことを言う資格があるのかしら。材木座君が死んだ原因を作ったのは、あなたですよ?」
    「それについては何も思うことはないよ。言ったはずだ、それがライダーバトルだ、と。その覚悟がないのなら、変身する資格はない」
    「人が死んだんですよ!」
    由比ケ浜が我慢ならないといった感じで大声を上げる。
    「おいおい由比ケ浜、そう熱くなるな」
    「熱くなるなって……」
    雪ノ下もけげんな声を上げる。
    「今日来たのは、例のあの子の件だよ」
    「留美のことですか」
    「留美?ずいぶん親しげだな、比企谷。小学生に手を出さないでくれよ?」
    そう言って彼女はおどけて見せるが、当然俺達は誰も笑わない。
    「君達はあの子のことに関して、何かするつもりなのか?」
    「何かするって……、人が死んだんですよ?小学生の宿泊学習もなくなるに決まって……」
    「それはないよ、雪ノ下」
    「え?」
    「ライダーバトルで死んだ者に関する記憶はなくなる」
    「どういう、ことだ……」
    「そのままの意味だよ、最初からこの世界にいなかったことになり、ライダー以外の記憶からは抹消される」
    「そんなのウソだよ!」
    「由比ケ浜、少し考えてみろ。私がこの場で嘘をつくメリットが一つでもあるか?」
    「で、でもそんなこと……」
    「それを言い出したら、このライダーシステムこそがそもそもあり得ない存在だろう」
    「そんなことまでできるのかよ……」
    「ま、彼女に何かやるのなら、やってみたまえ。多少のもめごとなら、もみ消してやるさ」
    言って、平塚先生はドアに手をかける。
    「待てよ」
    「なんだね?」
    「そうまでして、あんたが戦う理由は何だ?」
    「それを話してやる義理はないが……だがまぁ、可愛い教え子の頼みだ、聞いてやる。私が戦う理由、だったな?」
    「ああ」
    「……永遠の命だよ」
    「永遠の、命……?」
    「そうだ」
    「死が恐ろしい、ということですか?」
    「それは少し違うよ、雪ノ下。死が恐ろしいのなら、そもそもライダーバトルになんて参加しない」
  7. 7 : : 2014/03/29(土) 22:55:13
    「なら、どうして……?」
    「正確に言うと、私が恐れることはな、したいことがすべてできないことだ」
    「ん……?どういうこと?」
    「人の命は有限だ。だから、どうしても我慢しなくちゃいけないことができる。私は、それが怖いんだよ。自分の欲望がかなわないことが。私はすべてがほしい。世界中の美味いものが食いたい。世界中の名所をめぐりたい。ありとあらゆる名声を得たい。まだまだあるがな、それらを達成するには、どうしても足りないものがある。わかるな?それが、時間だ」
    「それを得るために、永遠の命を……」
    「そうだ。それが、私の戦う理由だよ。話は以上だ。じゃぁな」
    「永遠の、命……。それが、先生の戦う理由、か。……ゆきのんは、何のために、戦うの?」
    「私の、戦うわけ、ね。それは……」
    「あ、ごめん。言いたくないことなら、いいんだ」
    「いいのよ、あなた達には、いつか話しておかないといけないと思っていたし……」
    「雪ノ下……」
    「私が幼い頃、家庭教師がいたの。その人の名前は、小川絵里。私の家族は、誰もかも自分のことしか考えていないように人たちだった。父はまだ、私をかわいがってくれていたけど、母と姉がひどくてね……。母は、私と姉を所有物として完全に制御しようとしていた。自由なんて、何一つないような生活だったわ。そんな母の魔の手から逃れるために、姉は私を囮にした。だけどね、地獄のような生活の中でも、一筋の光があったの。それが、彼女だった。殆ど家に閉じ込められていた私に、彼女は本当にたくさんのことを教えてくれた。周囲は打算で近づいて来るような人ばかりだったけど、彼女だけは、私にやさしくしてくれた……」
    「ゆきのん、大変だったんだね……」
    「ええ。彼女がいなければ、今の私はいなかった。この世界にも、いなかったかも……」
    「ゆきのん……」
    「そんな彼女が、交通事故にあった。私が中学一年生の時だったわ。そして彼女は意識を失って、今も植物状態のままよ。そんな彼女の意識を取り戻して、きちんとお礼を言う。あなたのおかげで、私は今生きている、と。そのために、私は仮面ライダーになったの」
    「じゃぁ、戦いを止めようとしてる私達は……」
    由比ケ浜は、気まずそうにうつむいた。
    「あなたが気にすることではないわ。それはきっと、最後に私が決めることだから……」
  8. 8 : : 2014/03/29(土) 22:59:23
    ※注釈
    雪ノ下の過去に関係する「小川絵里」ですが、これは「仮面ライダー龍騎」本編に置いて、「仮面ライダーナイト」に変身する秋山連の恋人で、同様に意識を失っており、彼の戦う理由となる女性です。
    雪乃のエピソードでは登場しますが、登場人物として何かを語ったりすることはありませんので、彼女のことを知らなくても物語を読むうえで支障はありません。


  9. 9 : : 2014/03/29(土) 23:20:24
    「それより今は、鶴見さんのことよね。どこぞのロリコンさんも心配しているようだし」
    そう言って雪ノ下は軽く笑みを浮かべる。
    そうだ、今は、未来のために戦う時だ。
    「留美ちゃんを、みんなと仲直りさせてあげればいいのかなぁ」
    「それは無意味よ。誰かを仲間はずれにすることでしか絆を確かめられないような連中と一緒にいても、決して彼女にとってプラスにはならない」
    「でも、周りが集団で、自分だけ孤立してるって言うのは、つらいと思うな……」
    「そうね、どうしたものかしら……」
    「そんなもん、ぶっ壊しちまえばいいだろ」
    「え?」
    「だってそうだろうが。その集団に入れば害される、かといって放置していても着実に負担を与えてくる。この二つを連立させて解けば、出てくる解は一つ、その集団を消滅させること。こんなもん数学学年最下位の俺でもわかる」
    「……あなたらしいわね」
    「そりゃどうも」
    「別にほめてはいないのだけど」
    「え?俺らしいって、けなされてるんですか?」
    「比企谷君みたいなんて、これ以上の侮辱の言葉もないと思うのだけれど……」
    「あはは、なんか、調子戻ってきたね!」
    「そうだな、俺達はこれでいいんだ」
    「あなたと同類にされるのはとても不愉快なのだけれど……」
    「お前は俺のこと嫌いすぎるだろ……」
    「そうね、嫌いすぎて、一周回って殺したいレベルよ」
    「普通一周回ったら好きになりませんか……?」
    「……ごめんなさい、悪寒が走ったわ」
    「おかん?お母さんのこと?」
    あほだ、あほの子がいる。
    「由比ケ浜さん、悪寒というのは君が悪い時に寒気を感じる現象のことよ。決して母親をさすわけではないわ」
    「雪ノ下、由比ケ浜もいるんだから、難しい言葉使うなよ」
    「それもそうね、ごめんなさい、由比ケ浜さん」
    「もうっ、二人ともっ!馬鹿にしすぎだからぁっ!」
    「ふふ、ごめんなさいね。ところで比企谷君、具体案はあるのかしら?」
    「ん、まぁな。あんまり話したいようなことじゃないが……」
    -------
    「なかなか卑劣ね、流石比企谷君」
    「ちょっと、ドン引きかも」
    「お前ら人の意見聞いといてその反応はあんまりだろ」
    「だけど、少し人手が足りないわね。まさかその役を私達三人だけでやるわけにもいかないし……」
    「その話、聞かせてもらったよ」
    ドアを開けて入ってきたのは、にやにやと笑いを浮かべた葉山三浦グループだった。
  10. 10 : : 2014/03/29(土) 23:31:24
    期待してます( ^ω^ )
  11. 11 : : 2014/03/30(日) 21:14:39
    ありがとうございます!
    全力でがんばります!
  12. 12 : : 2014/03/30(日) 21:34:43
    「なにそれ、超面白そうなんだけど」
    「三浦ぁぁっ!」
    俺はその瞬間、すべての理性が吹き飛んだ。相手が女子だとかなんだとか、そんなことは一切頭になかった。
    「貴様、どの面下げてここにっ!」
    三浦をつかもうとした俺の腕を、葉山が冷静に止める。
    「お前が、お前が材木座をっっ!」
    「比企谷、……少し黙れよ」
    「葉山っ!」
    「何むきになってんの、超うけるわー。きもいんですけど」
    「ハハっ、ヒキタニ君それはないっしょー。ヒキタニ君だって、ライダー殺したんでしょ?仮面ライダーシザース、だったっけ?」
    「なんで、テメェがそれをっ!」
    「ヒキ夫ー、あんただって一緒じゃん!あははははっ!」
    「……黙りなさい。比企谷君はあなたのような人とは違うわ」
    「なにが違うってーの?」
    「人を殺めた理由と、それに対する覚悟よ」
    「はぁ?」
    「あなたが材木座君を殺した理由は、ただ単にライダーバトルで勝ち残るため。しかも、その先に何の目的もなく、ただただ人殺しを楽しんでいる。その死を背負おうとすら思っていない。そんなあなたが、比企谷君と同じなはずないわ」
    「……っ!じゃぁなに、殺すけどしっかり覚えてるから許してねって、それが正しいっての?笑わせんなっての。ほんっと、あんたってむかつくわ。もう、死んでよ」
    三浦はバックルを取り出す。
    雪ノ下もそれに応じて、ポケットに手を入れる。
    俺はそんな彼女の手を止めた。
    「比企谷君?」
    「こいつの相手は、俺にやらせてくれ」
    「……いい目ね、あなたらしくもなく、感情が宿っているわ」
    「ヒッキー、……殺す、つもりなの?」
    「どう、かな。でも、こいつを一発ぶん殴ってやらねぇと、俺はあいつに顔向けできねぇンだよ」
    「面白いじゃん、やってやんよ」
    「優美子ー、俺もやった方がいい?」
    「いい、こいつはあーし一人で殺すから」
    戸部の申し出を三浦は退ける。
    「じゃぁいくよヒキ夫ー、遺言とか残しとかなくて大丈夫ー?」
    「……」
    「はっ、シカトかよ。ま、いーわ。……変身!」
    「材木座、お前の思いは、継いで見せる。必ず、ライダーバトルを止めてみせる。だから、見ててくれ。俺の……変身!」
  13. 13 : : 2014/03/30(日) 21:57:54
    続き気になるよぉ
  14. 14 : : 2014/03/30(日) 21:58:35
    ミラーワールドでは、三浦がコキコキと首を回して待っていた。
    紫色のまがまがしいその姿を見ると、俺の胸に、憎しみの炎が激しく燃え上がった。
    「うおおおおおおぉっ!」
    「Sword Vent」
    「ラァッ!」
    「ぶっ殺してやんよ!」
    「Sword Vent」
    二つの剣が激しくぶつかり合う。戦闘に置いて怒りに身を任せることはタブーだが、怒りほどパワーを引き出してくれる感情がないのもまた事実である。
    「くっ!」
    苦悶の声を上げて、三浦は少し後方に下がる。
    「……逃がすかよ」
    「Strike Vent」
    「はぁぁぁぁーっ!」
    龍頭型の武器から、灼熱を放出する。
    「がぁぁっ!」
    攻撃が三浦の体に直撃する。
    バンガローから出て、崖の近くで戦っていたので、三浦はその衝撃で落下した。
    「お前は、間違ってるから……」
    「Final Vent」
    「でいやぁぁぁぁっ!」
    崖の上から、三浦に向かい、ドラゴンライダーキックを放つ。
    「くっそっ!」
    「Advent」
    三浦がコブラを呼び出し、落下中の俺は思い切り毒液をかぶってしまった。
    毒液と俺をまとっていた炎が相殺し、l俺の攻撃はただの急降下キックへと弱体化し、おしくも三浦に回避されてしまった。
    「はっ、今のはさすがに、やばかったわ。でもねっ」
    三浦が言った、その時である。
    「グオラァァッッ!」
    突如咆哮を上げ、一匹のモンスターが三浦に向かい、襲いかかってきた。
    「あれは……」
    材木座の契約モンスター、『メタルゲラス』だ。
    「くっ!」
    サイの突進を受け、三浦の体が吹き飛ぶ。
    そしてモンスターは再び三浦に突進する。
    「お前も、あーしのしもべになれ!」
    言って三浦は、カードデッキから一枚のカードを抜き取った。
    「そんな、あのカードは……」
    彼女が手にしているのは、「Contract」と書かれたカード、すなわち、契約のカードだ。
    「二枚目、だと……?」
    メタルゲラスはしばらく三浦を見つめ、そしてカードの中に吸い込まれていった。
    「契約、完了」
    なんであいつにだけ、複数の契約カードが……?
    「反撃、いくよっ!」
    「Strike Vent」
    材木座が愛用していた武器、メタルホーン。
    「くっ!」
    ドラグセイバーで受け止めるが、パワー特化のその武器に対しては、防御側ではどうにも分が悪い。
    「はっ!とりゃっ!はぁあっ!」
    俺は無様に地面を転がる。
    「さいっこうだわ、殺した相手の武器で追いつめるってさぁ!」
    「この、外道が……」
    「なんとでもいえっつーの」
    仮面の下からでも、三浦がいやらしい笑みを浮かべているのが想像できる。
    「二枚ある、どっちがいい?」
    彼女が見せてきたのは、二枚のファイナルベントカード。
    それぞれ、サイとコブラのエンブレムが描かれている。
    「舐めた、まねを」
    「んじゃ、今日はこっちでいくか」
    「Final Vent」
    再びメタルゲラスが出現する。
    そして三浦は、そのまま必殺技の体勢をとる。
    「うおらぁぁっ!」
    「Advent」
    ドラグレッダーに飛び乗り、こちらも突進攻撃を繰り出す。
    ドガァン、という激しい爆発が起きる。
    俺も三浦も、立ち上がるのが精一杯という様子だった。
    「ちっ、今日は、この辺にしとくか」
    三浦はそう言い残し、ミラーワールドを去った。材木座のことを少しだけ考えた後、俺もそれにならった。
  15. 15 : : 2014/03/30(日) 22:07:10
    ==⇒13
    ありがとうございます!
    光栄です!
    龍騎の世界観に合わせるため、八幡達のキャラが結構崩壊してしまってると思うので、読んでいて「ん?おかしいな?」という点があれば、ぜひ教えてください!
    (由比ケ浜の占いキャラが最たるもので、ライアに変身する手塚を無理矢理くっつけたものですし……)

    自分は戦闘シーンが苦手で、読み苦しい点が多々あると思いますが、ぜひ最後までお付き合いください!

    皆さんの何気ない一言一言が、私のエネルギーです!
  16. 16 : : 2014/03/30(日) 22:23:04
    「比企谷君、大丈夫?」
    「ヒッキー、けがは?」
    「ん、大したことねぇよ」
    材木座の受けた痛みに比べれば……。
    「優美子、大丈夫か?」
    「ん、余裕っしょ。契約モンスターも増えたし、まずまずってとこ。あんな邪魔がなければ、今頃ヒキオ殺せてたのにな」
    「そう、か」
    「……今すぐ帰ってくれないかしら。あなた達と同じ空間にいるのは、苦痛以外の何物でもないのだけれど」
    「ま、まぁそう邪険にしないでくれよ雪ノ下さん。僕たちはただ、留美ちゃんのことが心配で……」
    「人を嬉々として殺すような人に、誰かを救おうという心があるとはおもえないのだけれど」
    「そ、そんなことない。ライダーバトルに関係なければ、優美子だって……。それに、君達の作戦には人手が必要なはずだ」
    「……」
    「でも……」
    「なぁ葉山、どうしてお前こんなことするんだ?」
    「どうしてって言われても……。俺はみんなに笑っててほしいだけだよ。みんなの笑顔の為なら、俺は何だってやってみせる」
    彼の表情から見る限り、嘘を言っているようには見えない。
    ……酔っているのだ、こいつは。自分と、それを取り巻く環境に。だから普段はどこまでも善人だが、その世界を乱すようなものには、どこまでも冷酷になれる。
    彼の優しさはきっと、どこまでも欺瞞なのだ。
    ならばこの場この件に関してだけ言えば、彼は信用できるのかもしれない。
    「……受けてみないか、雪ノ下」
    「……本気なの?」
    「ああ、俺は、あいつの世界を変えてみたい。いや、変えるなんてのは、傲慢だな。あいつを縛る鎖を少しだけ緩めてやりたい、その手助けがしたいんだ」
    「そう、……由比ケ浜さんは?」
    「わたしも、留美ちゃんのこと気になるし……。受けてみても、いいと思う」
    「葉山君、では、あなた達の協力を許可するわ」
    「はぁ?あんた何様のつもり?頭下げるのはそっちっしょ?」
    「まぁまぁ優美子、あの子を助けたいっていう気持ちは同じなんだ。ここは、穏便にいこう」
    「ちっっ、わーったよ。隼人が、そういうなら……」
    言って三浦は一種頬を赤らめた。
    こんな殺人鬼でも、普通に恋をする。そのことが、少しだけ気にかかった。
  17. 17 : : 2014/03/30(日) 22:29:13
    多少キャラ崩壊になってても全部読むから続けてほしいな自分も俺ガイルと龍騎大好きなもんでして(笑)特に龍騎は歴代ライダーシリーズの中でも一番好きです 特に仮面ライダーナイトが良いですねぇカード使う時にバイザーをクルッと回すのが好きです 友人にライダーの話をすると引かれてしまうので長文になってしまいましたすみませんm(__)mちなみに歳は17です
  18. 18 : : 2014/03/30(日) 22:44:41
    ここでひとつ、問いを与えようと思う。
    『世界は変わりません、自分は変わることができます。さて、あなたはどう変わりますか?』
    答え、『新世界の、神になる』

    鶴見留美の周囲の環境を変えるため、俺が考えた案はこうだ。
    人は、極限状態でその本性を出す。
    その状況に陥った時、普段はひょうひょうとしていても、いきなり頼りになるような奴もいる。
    だが、その大半は逆だ。醜い姿をさらけ出す。保身のために、簡単に近くの人間を売る。
    だからあいつらをとことん精神的に追い詰めて、そのくだらない関係をぶち怖す。
    一度醜い部分を見せあった者たちは、もう二度と仲良くなどできない。
    『みんながぼっちになれば、誰も傷つく者はいなくなる』
    戸塚や小町も含めて、俺の考えと具体案を再び話してみると、周囲はほとんど引いていた。
    あれ?さっき聞いた人もいますよね?なんで二回もドン引きするの?
    「八幡はよくいろんなこと思いつくね!」
    ただ一人戸塚だけが感心したような声を上げた。
    普通の奴が言ってもい闇にしか聞こえないが、戸塚が言うと額面どおりの意味として受け止められる。
    これにもし裏があったら、ライダーバトルで勝ち残って世界の破滅を願うレベル。
    「だけどそれは、問題の解決にはならない」
    葉山が異を唱える。
    それはそうだ、だが
    「解決にはならなくても、解消にはなるだろ」
    そういった俺をじっと見つめてくる葉山の視線に、思わずそらしてしまいそうになるが、何とか耐えた。
    俺は、間違っていない。
    逃げちゃだめだなんて言うのは、強者かどこかのパイロットだけだ。
    人間関係に悩みがあるならば、そんなものは壊してしまえばいい。
    『俺は悪くない、世界が悪い』なんて言葉があるが、あながち間違っていないと思う。
    世界、世間が間違っていることなんて往々にしてある。
    むしろ、『正義とは俺自身。俺自身が正義だ』とか言って天の道をいって全てをつかさどるまである。
    「そういう、考え方か。それが、彼女が気にかける理由……」
    葉山の表情が一瞬儚げなものになる。
    「いいよ、それでいこう。ただし、みんなが一致団結してそれに対処する可能性にかけて、ね」
    それがあり得ないなんてことは、お前が一番わかっているんじゃないのか……。だからお前は英雄になるなんて、思ったんじゃないのか。葉山のことはよく知らないので、憶測にすらならないが、俺は何となくそう思った。
  19. 19 : : 2014/03/30(日) 22:50:52
    ⇒⇒⇒17さん
    龍騎いいですよね!僕もライダーの中で一番好きです!二番目がオーズで三位がブレイドかな……。
    幼心に「Final Vent」「Advent」の音声には熱くなったものです。
    中学生になってから、何度も見直し、そのたびに『面白いなぁ……』と感じました。
    俺ガイルで葉山が少し黒い部分を見せた時に、「あ、こいつ東條っぽい、そういえば雪乃はナイトっぽいか?八幡はひねくれてるけど、きっとライダーバトルを止めようとするよなぁ……」
    なんて妄想しました。
    となるとオーディンは陽乃、ゲフンゲフン!

    必ず最後まで書きあげますので、どうぞお付き合いください!
    コメントありがとうございました!
  20. 20 : : 2014/03/30(日) 23:25:38
    平成ライダーって割りと悲惨な話多いですよねぇブレイドのラストとかWだったらおやっさんの過去とかファイズなんて見てるのが心苦しい時だってありました そこが良かったりするんですけどねぇ(笑)それにしても日曜日の朝8時に子供が見るにはけっこう重い内容とも思えます
  21. 21 : : 2014/03/30(日) 23:34:17
    「留美ちゃんの班だけ最後にした方がいいよな、くじを作って細工でもするか?」
    「いや、それはあんまり現実的じゃない。こっちで指名するようにしよう。すりるとか何とか、理由はいくらでもでっち上げられる」
    「わかった、誘導はどうする?」
    「そうだな、俺がカラーコーンいじってあいつらだけ別のルートに生かせるようにするよ。葉山達はその奥で待っててくれ」
    「ああ。後は戸部と優美子か……。あんまり細かい指示は覚えられないぞ?」
    「携帯をカンペ代わりにしたらいいだろ、面倒臭そうにいじってた方が雰囲気でると思うし」
    「なるほどな、よく考えてるな」
    「別に、んなことねぇよ」
    「じゃぁ、優美子達に伝える内容はそんなもんでいいな?」
    「ああ、頼む」
    俺と葉山は、今夜行われる肝試しの最終打ち合わせをしていた。

    「小悪魔衣装に巫女に、なんだこれ……。メイド服か?猫耳と、魔女の帽子……?」
    小学校教師、照井さんが用意してくれた服装の数々は、まるでコスプレ大会に出演するかと思うほどの奇抜なものだった。
    「肝試し大会でも振り切るぜ!」
    と、意味がわからないことを言い残してこの衣装を俺達に渡していった。
    女子高生のコスプレ姿が見たかっただけじゃねぇのか……?
    最後に、「コスプレの可愛さも振り切るぜ……」とか小声で言ってたし確信犯だろ。
    隣にいて、そんな彼の頭をスリッパで叩いていた女性は一体誰だったんだろうか……?

    「魔法使いって、お化けかなぁ……」
    魔法使いの衣装を手にした戸塚がけげんな声を上げる。
    「まぁ、大きいくくりでいえばそうなんじゃねぇか?」
    「でも、怖くないよね」
    「いや、大丈夫だ。十分怖いぞ?」
    本当に怖い。いよいよ戸塚に本気で惚れそうだ。
    「おにいちゃんおにいちゃん!」
    ふと、後ろから背中をたたかれる。
    「なにそれ、化け猫か?」
    「たぶん……でも、かわいいでしょ?」
    「ああ、世界一可愛いよ」
    「むー、その反応ポイント低いよー……え?」
    そんな猫の姿をした小町の頭を、雪ノ下が愛でるようにしてなでる。
    その雪ノ下の恰好は、白い浴衣を着た雪女だ。……不覚にも見とれてしまった。
    「あ、あの……雪乃さん?」
    雪ノ下は今度はしっぽを触っている。
    そして、コクリと頷く。それは何に対しての肯定なの……?
    本当に猫好きだな、こいつ。
    俺も猫の恰好したら……いや、そんなくだらない妄想はやめておこう。
    「あなたが猫の恰好をするなんて、それは私に対する侮辱かしら?その腐った目をつぶしてしまいたいのだけれど」とか、すごい笑顔で言われる未来が見えるもん。
    「お前、その衣装なかなかにあってるな。何人か人殺してそうだわ」
    「そういうあなたもゾンビがずいぶん板についているじゃない。初めてあなたに感心したわ」
    えー、初めてなんですか……?しかもそれ絶対感心してない。
    「ああ、なんなら味方のドラゴンが死んだら墓地から復活するレベル」
    「たとえが全く分からないのだけれど……」
    と、そんなやり取りをする俺達の耳に、『うーん、うーん』という声が聞こえてきた。
    小悪魔の恰好をした由比ケ浜だ。
    いろいろなポージングをしていて、初めてコスプレ大会に参加する人みたいだ。
    「忙しいやっちゃなお前は」
    「あ、ヒッキー。その……どう?」
    「少しでも変だったらとことんからかってやろうと決めてたんだがな。そうできなくて残念だ」
    「え?う?う?……って、ほめるならちゃんと言えばいいのに!ヒッキーのバーカ!」
    「お兄ちゃんは捻デレですなぁ」
    「変な言葉を作るな」
    「そろそろかしらね」
    「ああ、葉山」
    「そうだな、最終確認を始めよう」
  22. 22 : : 2014/03/30(日) 23:39:25
    ⇒⇒⇒nyさん
    そうですよね、かなり重いですよね。
    子ども達って、この話のことどのくらいわかってるんだろう、と、よく思います。
    特に今の「みっちー」は悪いですね~。
    この前鉱太のこと、「なんであなたは僕の言う通りになってくれないんだ!」(うろ覚えですが……)
    なんて言ってましたからね。

    他にもファイズの草加は、「俺のことを好きにならない奴はいらないんだよ!」なんて言ってますし……。
    龍騎の東條は、「英雄になるには大切な人を倒さなきゃいけない」という謎の理論で恩師や友人を殺そうとしてますし……。

    ま、僕もそんなところも好きですけど!
    この物語も少しでも面白くできるよう頑張りますので、最後までお付き合いお願いします!
  23. 23 : : 2014/03/31(月) 00:03:51
    雰囲気を出すためか、スタート地点には篝火がたかれている。
    「よーし!じゃぁ次はこのチームだぁーっ!」
    小町の声に、わぁぁっと盛り上がる小学生達。
    肝試し開始から三十分ほどがたち、7割のグループが既に出発している。
    小学生達を最初に待ちかまえているのは由比ケ浜だ。
    「ガオー!食べちゃうぞーッ!」
    ……何その脅かし方。全く怖くないんですけど。
    小学生達は笑って通り過ぎていく。
    「なんか、あたし馬鹿みたい……」
    何とも哀れな格好で、由比ケ浜は立ち尽くしていた。
    作戦のため、俺が進んでいくと、そこにははかなげに立っている雪ノ下がいた。
    すると突如、彼女が振り向いた。
    「ひゃうっ!」
    「よぉ」
    「……比企谷君、驚かさないでくれるかしら」
    「別に脅かすつもりはなかったんだが……幽霊なんていないんじゃなかったのか?」
    「そうね、そんなものは脳の思い込みよ。だから、いないと思えば絶対にいないのよ、……絶対」
    なんで二回言ったかは気にしないことにしよう。目がめちゃくちゃ怖いし。
    「それにしても、いつまで続くのかしらね……」
    「七割方終わってる。もう少しだよ」
    「そう、ならいいわ」
    「んじゃ俺、そろそろ行くから」
    「ええ、またあとで。……できれば会いたくないけれど」
    「その最後の一言は言う必要があったんですかね……」
    「冗談よ、それじゃ」
    その場に雪ノ下を残して、俺は先を急ぐ。
    「にーしーおーいーしーんーのー、ばーけーもーのーがーたーりー」
    最後の祠の前では、海老名さんが青々とした棒を振っている。
    何故に販促?
    だが、思った以上に雰囲気が出ている。

    ある程度コースを見回ってスタート地点に戻ると、残るは後ニチームとなっていた。もちろん、留美達もいる。
    彼女達は楽しそうに話しているが、その輪の中に留美はいない。
    「はい!じゃぁ次はこのグループだーっ!」
    そしてついに、留美達がスタートした。
    俺は先ほどのコースをたどり、コーンを移動させる。
    山へ至る道には、三浦達がたむろしている。
    「そろそろ出番だ、頼む」
    「はいはい」
    三浦がだるそうに返事をする。
    この場で二人係で戸部と三浦に襲われたらやばいな、などと考えていたが、どうやらそれは杞憂だったらしい。
    葉山には基本柔順だからな、こいつら。
    三人がスタンバイしたのを見届けて、俺は再び木陰に隠れる。
    するとそのすぐ後に、少女達の楽しそうな声が聞こえてきた。
    当然、留美の声はない。彼女達が視界に入ると、留美は真一文字に唇を噛みしめていた。
    だけど、今日もそれで終わりだ。
    グループの戦闘が分岐に差し掛かる。
    カラーコーンでふさがれた道を怪訝に思いつつも、足は道なりに進んでいく。
    俺は気配を殺して、その後をついていこうとした。
    「比企谷君、状況は?」
    と、小声で後ろから名前を呼ばれた。
    振り返ると、雪ノ下と由比ケ浜がそろって立っている。
    「今、葉山達の方に向かってるよ。お前らも来るのか?」
    「当然よ」
    「あたしも」
    雪ノ下と由比ケ浜に頷き返し、ゆっくり静かに移動を開始する。
    留美達のグループは、恐怖を紛らわすためか、ことさら大きな声で会話をしている。
    そんな中、誰かがふと、「あ」と声を上げた。
    グループの前方に人影があった。
    葉山達だ。
    「あ、お兄さんたちだ!」
    葉山達の姿を認めると、小学生達は駆けよっていく。
    「超普通の恰好してるしー!」
    「だっさーい!」
    「もっとやる気だしてよー!」
    「高校生なのに頭悪ーい!」
    見知った普段の顔があることで緊張が溶けたのだろう。まくしたてるように彼女達は口を開く。
    しかし、駆け寄ってきたその体を、戸部は乱暴に振り払った。
    「なにため口聞いてんだよ、アアン?」
    茂みの中から、数匹のレイヨウモンスターと、コブラのモンスターが現れた。
  24. 24 : : 2014/03/31(月) 00:17:48
    「え……」
    小学生達の動きが一瞬にして止まった。
    「ちょっとちょーしのってない?別にあーしらあんたらの友達じゃないんだけど」
    主人の怒りの声に反応してか、コブラもキシャァッと威嚇する。
    「な、何これ……」
    「騒ぐなよ、もし大声出したりしたらそっこーこいつらが殺すから」
    「つか、さっきあーしらのこと馬鹿にしてたやついるよね?あれ誰?」
    問うたところで、彼女達は何も答えない。
    ただ顔を見合わせるだけだ。
    「ねー、あーしのこと無視してんの?誰が言ったか聞いてんの!」
    ベノスネーカーが毒液を吐く。
    すると、地面がジュジュッという嫌な音を立てて蒸気を上げる。
    「ごめんなさい……」
    誰かがぼそりと謝罪の言葉を口にする。
    「なに?聞こえないんだけど?舐めてんのか?あ?おい」
    戸部の声に合わせて、レイヨウモンスターたちが一斉に咆哮する。
    「葉山さん、こいつらやっちゃっていいすか?」
    言いながら戸部は、シャドーボクシングを始める。
    小学生達は最後の希望を込めて、葉山の方を見る。
    だが、彼が放ったのは残酷な、ともすれば彼の本質を表すような一言だった。
    「こうしよう。この中の半分だけは見逃してやる。あとの半分はここに残れ、誰を残すかは自分たちで決めろ」
    「うっわー、葉山さん超優しいっすねー」
    「さっすが隼人、わかってるー」
    静まり返った空気の中で、誰かが涙を交えて行った。
    「すいませんでした」
    「謝ってほしいんじゃない。選べと言ったんだ。……早くしろ、全員やられたいのか」
    びくっと肩を震わせて、彼女達は再び沈黙する。
    「ねー、聞こえてないの?それとも聞こえてて無視してんの?」
    「早くしろよ、誰が残んだよ、お前か?お前か?あ、おい」
    そんな中で、最初の犠牲者が決定した。
    「鶴見、あんたのこんなよ」
    「そうだよ」
    言われて、留美は前に押し出される。
    「あと二人だ」

    「ここからが、あなたの狙いなのね」
    「ああ、それにしても、モンスターを使うってのは予想してなかったが……」
    「本当に壊しちゃって、いいのかな」
    「いいさ。あんなくだらない関係なんて、あっても害にしかならない。留美にとっても、他の子たちにとっても」
    「壊せるの?」
    「ああ。あいつらが葉山の言うように本当の絆で結ばれているなら、協力してこの状況を打開しようとするだろう。だが、そうじゃない」
    「そうね、誰かを陥れて自分の価値を確認するような輩のもとには、同じような人しか集まらない」

    「さっさとしろよ、おい!」
    「……美咲があんなこと言わなければ」
    そして、魔女裁判が始まった。
  25. 25 : : 2014/03/31(月) 20:28:28
    「そうだよ!ミサキーヌが悪いよ!」
    「ち、違う!先に言いだしたのは、園田マリ!あんたでしょ!」
    「あたし何も言ってない!何も悪くない!ハナさんの態度が悪かったんだよ!ハナさん先生とかにもいっつもそう!」
    「はぁ?普段のことなんて関係ないでしょ!最初に言い出したのがミサキーヌで、次に言ったのがナツメロン!」
    「私の名前は夏ミカンです!違う、夏美です!というか、私は何も言ってません!でまかせ言うなら、士君が黙ってませんよ!」
    「それならあたしだってつるぎ君がぼこぼこにしちゃうんだから!」
    「そんなやつ、私の巧の敵じゃないわよ!」
    その光景に、場違いとわかっていても思わず尋ねてしまう。
    「いまどきの女子ってのは、小学生でもあんなに彼氏がいるもんなのか?」
    「今聞くことだとはとても思えないのだけれど」
    「そうだよ!今は関係ないでしょ!」
    「すまん……」
    今にも殴り合いに発展しそうな空気で言い争う。
    「もうやめようよ。みんなで謝ろうよ……」
    恐怖と絶望、そして憎悪がないまぜになって彼女達は泣き始める。
    だが三浦はその涙を見ても、許すどころかさらに機嫌を悪くして言い放つ。
    「あーしさー、泣けばいいと思ってるやつが一番嫌いだから。どーする隼人?まだあんなこと言ってるよ?」
    「……あと二人、早く選べ」
    「葉山さーん、もう全員ぼこった方が早くないっすかー?」
    「そうだな……あと三十秒だけ待ってやる」
    「謝っても許してもらえないよ……。先生、呼ぶ?」
    「先生にこいつらが何とかできると思ってんのか?犠牲者が増えるだけだと思うけどなー」
    モンスターたちが一斉に咆哮する。
    その提案も、一瞬で沈められる。
    「残り二十秒」
    「やっぱ、ミサキーヌだよ」
    「うん、私もミサキーヌが悪いと思う」
    「え!?ちょっ、ちょっ!」
    周囲に押し出される形で、ミサキーヌと呼ばれた少女が留美の横に並ばされる。
    「ごめん、でも、しょうがないから」
    そう、しょうがないことだ。誰も空気には逆らえない。たとえそのせいで誰かがつらい思いをしていても。
    『みんな』がそういうから、『みんな』がそうするから。だから自分もそれに従う。本当はその『みんな』なんていないのに。
    それは、集団が作り出す魔物だ。
    日本のスポーツ選手はその能力に比べると、オリンピックでの成績が低い。これは、日本人が気が弱いとかそういう理由ではない。
    国民が、過度にオリンピックに対して熱くなるからだ。
    普段大して興味がない競技にも、みんなが騒いでいるから注目する。
    そして自分も同じように大騒ぎする。戦時中の「非国民」と同様のレッテルを、盛り上がらないものは張られてしまう。
    かつて、俺も彼女も、そしてきっと彼さえも、その被害者だった。
    だから俺は憎悪する。空気なんてものを作りだす者を、そしてそれに従って他人をたやすく貶める者を。
    たとえみんなを変えることができなくても、それをぶち壊してやることはできる。
    「十、九……」
    葉山のカウントダウンは続く。
    後は俺が「ドッキリでした~」とでも言って出ていけば万事解決だ。モンスターに関しては、まぁ着ぐるみかなんかということにしておこう。
    「グォっ……」
    出て行こうとすると、襟元を由比ケ浜につかまれる。
    「なんだよ」
    「ちょっと、待って……」
    「三、ニ……」
    「あの……」
    その時だ。ずっとカメラをいじってうつむいていた留美が葉山の声を遮るように声を上げる。
    葉山達の視線が留美に集まる。
    突如、光が奔流した。シャシャッと連続で機械音が鳴る。
    暗闇に訪れた真っ白な選考が、視界を奪う。
    「みんな逃げて、急いで!」
    留美は自分一人その場にの頃、他の少女達を逃がした。
    「留美ちゃん……」
    「こんな世界は間違ってる。だから、私が変える!……変身!」
    瞼を開けると、そこには留美の姿はなく、かわりに黄緑色の
    新たな仮面ライダーがいた。
  26. 26 : : 2014/03/31(月) 21:11:21
    「あなたたちみたいな人を、私は絶対に許さない!」
    「あんたも仮面ライダーだったんだ……。戸部ー、あーし疲れてるから相手よろしくー」
    「えー、マジないわー。ったく、しょうがねぇな。予定にはないが、やりますか!……変身!」
    「仮面ライダーインペラー。エクスタミネーートっ!」
    「仮面ライダーベルデ、あなたを絶対に、倒す」

    「これって……」
    由比ケ浜は驚いたように声をもらす。
    「まさか、鶴見さんがライダーだったなんてね……」
    「世界を変える、それがあいつの、戦う理由か……」
    「どうする?ヒッキー、ゆきのん」
    「どうするもこうするも、とりあえずは行ってみないことにはな。変身!」
    「その通りね、変身!」
    「変身!」

    「Spin Vent」
    「Hold Vent」
    そこではまさに、戸部と留美が戦闘を開始しようとしていた。
    戸部はさすまた状の武器を、留美はまるでヨーヨーのような武器を使っている。
    そのかわいげな見た目とは裏腹に、ヨーヨーはずいぶん強力な武器だった。
    伸縮自在でリーチも広く、さらには糸の部分を敵の武器に巻きつけたりして、行動の幅を狭めている。
    「想像以上の手だれだな……」
    「そうね、あれはそうとうに厄介な武器よ」

    「調子にノンなぁっ!」
    武器を失った戸部は、怒りにまかせて留美に襲いかかる。
    「はぁっ!」
    そんな彼の頭に堅いヨーヨーが直撃する。
    「Advent」
    留美に応じて出現したのは、全身緑色のカメレオン型のモンスターだった。
    モンスターはとてつもなく長い舌を出し、戸部の体に巻きつける。
    「な、なんだと……!?」
    それをそのままグルんグルンと回して、戸部は放り投げられてしまった。
    「くそっ、ここは引くか……」
    「Advent」
    戸部は大量のレイヨウモンスターを呼び出し、自分はその隙にもとの世界へと戻った。
    「留美……」
    「また、ライダー……しかも三人も」
    近づいて行った俺を見て留美はつぶやいた。
    「留美、俺だ。比企谷八幡だ」
    戦意がないことを示すため、俺は両手を上げる。
    「なにしに来たの?」
    「何しにって……お前と戸部が変身するのを見たから」
    「そう、でも私はたとえあなたが相手でも戦う。……かまえて」
    留美はそう言って、ヨーヨーを握り直す。
    「三体一というのは卑怯ね、ここは私が」
    「いや、雪ノ下、すまないが俺にやらせてくれないか?話したいことも、あるしな」
    「……そうね、これはあなたがけりをつける問題ね。どのような結果になろうとも、私達は干渉しないわ」
    「ヒッキー……信じてるから」
    「あまり信じられても困るんだが……。ま、見ててくれ」
    「うん!」
    「それでは由比ケ浜さん、行きましょうか」
    二人はミラーワールドを後にした。
    「行くよ、八幡」
    「その前に、一つだけ聞かせてくれ」
    「なに?」
    「もし俺がライダーだと知っていたらあの時、お前は俺のそばにいてくれなかったか?」
    「それは……多分、変わらなかったと思う。辛い時に一人でいると、もっと辛くなるから……」
    「ははっ、そいつが聞ければ十分だ。さぁ、戦おうぜ!」
    「Sword Vent」
    剣を構えて走る。留美の放ったヨーヨーを、重心を左にずらすことでかわす。
    すると留美はそのまま手を右に引き、俺の体に糸が巻きついた。
    「なんだと!?」
    留美はさらにヨーヨーを巻き、俺の自由を奪う。
    俺はその場で、身動きが取れなくなる。
    「はっっ!」
    留美はヨーヨーを持ったまま飛び上がり、降下キックを放つ。
    当然俺は回避できるはずもなく、その場に転がる。その際にヨーヨーの束縛が解けたことは、僥倖と呼んでいいだろう。
  27. 27 : : 2014/03/31(月) 22:05:00
    「Strike Vent」
    一端距離を置こうと、炎攻撃を放つ。
    「Coppy Vent」
    この技は知っている、由比ケ浜が使う、他のライダーの武器を複製する技だ。
    何を使うつもりだ……?
    次の瞬間、俺は眼をみはった。
    そこに留美の姿はなく、かわりにいたのは雪ノ下が変身するはずの仮面ライダーナイトだったからだ。
    「姿までコピーできるのか……」
    ちなみに彼女は、羽織っているマントで炎を見事に防いでいた。しかしそもそもあのマントは、雪ノ下の契約モンスターダークウイングが変形した姿のはず……。
    その条件も無視できるのか。
    「はぁっ!」
    留美が、雪ノ下の武器ウイングランサーを片手に突進してくる。
    剣と剣が激しくつばぜりあう。
    「留美、ライダーバトルで勝ち残って世界を変えても、そんなもんには何の価値もない!」
    「ライダーバトルとか、そんなのは関係ない!」
    「なに……?」
    「人間はみんなライダーなんだよ!自分が得するために、醜く他人を蹴落とす!だから、ライダーになってもならなくても私のやることは変わらない!」
    「そんな、力だけじゃっ!」
    「権力を求めて何が悪いのっ!そうしなきゃ、この腐った世界は変わらないから!」
    彼女の悲痛な叫びにひるんだ俺は、押し切られてしまった。
    「はぁぁぁっ!」
    「Final Vent」
    留美の姿がもとにもどり、その傍らに契約モンスターが出現する。
    どんな攻撃が来るのかと身構えると、留美が空中に飛び上がり、その足をカメレオンの舌がつかむ。
    伸縮自在なその舌を使い、留美はあっという間に俺のもとにやってくる。そしてそのまま、俺は腰を掴まれた。
    そのまま俺と留美は空中でクルクルと回る。
    「デス・パニッシャーっ!」
    と、俺の頭部が下になったところで回転が止まり、そのまま勢いよく地面にたたきつけられる。
    「がっ、あぁっ……」
    「もう、戦えないでしょ?諦めて、もとの世界に戻って。バックルをくれれば、八幡も戦いから……」
    「それは無理だな」
    悲鳴を上げ続ける体に鞭打って、俺はよろよろと立ちあがる。
    「俺はまだ、ライダーとしてやるべきことをやってない。だからここで、終われないっ!」
    「Final Vent」
    「どうして、なんでそんな力がっ……」
    「今倒れたら、お前に俺の言葉は届かないだろうが。だからっ、今だけはっ!くらえっ!ドラゴンライダーキックッ!」
    茫然と立つ留美の前方一メートルほどのところに、全力で必殺技をたたきこんだ。
    「……どうして、当てなかったの?」
    「本当に当てちまったらやばいだろうが。俺はお前と、話をしたいだけだ」
    「話……?」
    「ああ、そうだ。この力でゆがんだ世界を正す、か。すごいことだと思うぜ、素直に。でもさ、そうやって作られた世界は、どうしようもないひずみを生みだす。不可能だとわかっていても、一歩ずつ理想に近づいていくしか、お前の夢をかなえる方法はない」
    「だけど人は、汚いよ……」
    「ああ、その通りだ。でもな、それが人だ。……お前が思う、理想の人物を想像してみろ。欲がない、誰にでも優しい、差別しない、なんだってうまくこなすでもなんでもいい。いいか、考えたか?でもな、そんな人間は存在しない」
    「そっか……」
    「だから、人がいる限り、正しい世界を作るなんてのは、無理な話なんだよ。もがいてもがいて、それしかない。だけどさ、留美。それはお前一人で抱え込むことはないんだぞ?人が変えられるのなんて自分自身、よほど頑張ってその周りの環境を少しだけ変えるくらいが限界だ。お前はお前のまわりの世界だけを……」
    「でも私にはできなかったよ。だから、こんなことに……」
    「……こんなセリフは無責任だからすごく言いにくいんだけどな、……お前にならできるよ。あの時、お前は周りの奴らを見捨てる選択だってできた。それどころか、自分のモンスターを呼んで、どさくさに紛れて他の奴らを殺すことだってできた。でも、お前はしなかった。あいつらのせいで世界を変えたいと思うほどに悩んでいたにもかかわらず、だ。
    だからお前は変われる、環境だって変えていける。俺は、そう信じてる」
    「八幡……」
    「って、かなりくさいこと言ったな。また黒歴史が増えた……」
    「ううん、かっこよかったよ。八幡……わかった、私、ライダーバトル、やめるよ」
    「本当か……?」
    「うん、私のモンスターは、八幡が倒して?」
    「わかった」
    「じゃぁ、呼ぶよ?」
    「Advent」
    再びカメレオンのモンスターが現れる。
    こいつを倒して、留美をライダーバトルの呪縛から解く!
    「Final Vent」
    「はぁあぁあぁぁっ!」
    俺の全力の一撃はカメレオンの腹部を貫き、留美を縛っていた鎖とともに、勢いよく爆発した。
  28. 28 : : 2014/03/31(月) 22:12:55
    ミラーワールドを出た直後、留美は俺に語りかける。
    「ねぇ、八幡」
    「なんだ?」
    「さっき八幡は、理想の人なんていないって言ったよね?」
    「ん?ああ」
    「いいこと教えてあげるか、ちょっとしゃがんで」
    「ん?」
    唐突に、留美の唇が俺のそれに触れた。
    「な、お前……」
    「私の理想は、八幡だよ?」
    「なっ、おっ、お前、な……」
    「ありがと、八幡。大好き」
    俺がたちつくしていると、由比ケ浜と雪ノ下が歩いてきた。
    「終ったようね」
    「おつかれ!」
    どうやらさっきのは見られていないようだ。よかった……。
    「じゃぁ、八幡。おやすみ。またね」
    とたとたと走っていく彼女の背中からは、もう不安なものは感じられなかった。
    また俺達は出会えると、何の根拠もなくそう思った。
    そうして、一つの秘密を残して、合宿最後の夜は更けていった。
  29. 29 : : 2014/03/31(月) 22:46:05
    帰りの車内は静かなものだった。
    皆疲れたのか、後部座席は全滅していた。
    ただ俺一人だけは、隣に座る平塚に無防備な姿を見せないよう、
    しっかりと目を開けていた。
    「今回はずいぶん危険な橋を渡ったな」
    「そのくらいの処理はお願いしますよ。教師なんですから」
    「ははっ、随分と嫌われたもんだなぁ」
    「もとは好かれてるとでも思ってたのかよ」
    「ふふ、そういういい方はポイント低いぞ?」
    「うちの妹の口癖を使わないでもらえますか?気分が悪い」
    「まったく、今は一人の教師なのだがなぁ」
    それ以降俺は口をつぐみ、彼女と会話をすることはなかった。

    それから数時間車に揺られ、学校に到着した。
    「みんな、ご苦労だったな。家に帰るまでが合宿だから、気を抜くことがないように」
    こいつこれが言いたかっただけだろ。
    「お兄ちゃん、何で帰ろっか?」
    「ん、バスでいいだろ。帰りに買い物して行こう」
    「あいあいさー」
    びしっと元気のいい返事をする小町。
    「方向一緒ですし、雪乃さんも一緒に帰りません?」
    「そうね、ではそうしようかしら。……いらないおまけも付いているようだけど」
    なんですか、それは僕のことですか。
    「じゃ、あたしとさいちゃんは電車かな。ばいばーい!」
    二人が去ろうとした、その時だ。
    突然真っ黒なハイヤーが俺達の目の前に横付けされた。
    運転しているのは初老の男性。
    しかし、後部座席はこちらからは見ることができない。
    「金持ってそうな車だな」
    先頭には変なしゃちほこみたいなのがついてる。……あれって。
    中から出てきたのは、その体から光を放っていると錯覚させるような女性。
    「はーい、雪乃ちゃん」
    しかしなぜだろうか。声もとても親近感あふれるものであるのに、俺の頭の中ではけたたましく警戒アラームが鳴っている。
    「姉さん……」
    こいつが、雪ノ下の、姉……。雪ノ下を、自分の目的のために利用したという女。
    「はぁー、すっごい美人。雪乃さんにそっくりだぁ」
    小町も感嘆の声を上げる。
    「雪乃ちゃんってば夏休み全然帰ってこないんだから。お母さんかんかんだよー。だからこうして迎えに来ちゃった」
    自分で言うのもなんだが、俺は人を見る目があると思う。幼いころからのおやじからのすりこみと、自身の数多くのトラウマがそれを構成しているのだろう。
    その俺の目から見て、彼女の笑顔はうすら寒い。
    その仮面の下に、素顔を隠している。しかもその仮面は、一枚ではない。
    「あっ、あなたが比企谷君だね!雪乃ちゃんと仲良くしちゃってー、このこのー!」
    雪ノ下の姉は俺に近づいて、肘でつついてくる。
    絵にかいたような、非モテ男子が喜ぶ行動だ。
    だからこそ、嘘くさい。彼女は、存在自体が空々しい。
    俺はとっさに彼女の体を振り払った。
    「やめろっ!」
    「あれれー、嫌われちゃったかなー。ごめんね、龍騎」
    最後の一言は、俺にだけ聞こえる小さな声で。
    その時の彼女はとても冷たく、思わずのけぞってしまう。
    「もー、そんなに警戒しないでよー。雪乃ちゃんから聞いただけだよ」
    そんなはずがない。雪ノ下はこんな重要なことを言いふらしたりしない。ましてや激しく憎悪するこの姉になど。
    「あ、名前言ってなかったね。私の名前は雪ノ下陽乃。よろしくね!」
    「よ、よろしくおねがいします」
    由比ケ浜がぺこりとお辞儀をする。
    「えーっと、あなたは?」
    「ゆきのんの友達の、由比ケ浜結衣です!」
    「ふーん、友達、ねぇ……」
    一瞬値踏みするような表情を浮かべ、すぐにまた笑顔に戻る。
    「仲良くしてあげてね!」
    「久しぶりだな、陽乃」
    「あっ、静ちゃーん!どう、いい人は見つかった?」
    「静ちゃんはやめろと何度も言ってるだろ……その質問は受け付けん」
    「知り合いですか?」
    「昔の教え子だよ」
    「じゃぁ雪乃ちゃん、そろそろ行こっか。お母さん待ってるよ」
    「ええ」
    最後にこちらを振り向いて、ひどく悲しそうな表情で彼女は言う。
    「ごめんなさいね小町さん、またの機会ということで」
    「あっ、いえ、おうちのことなら……」
    「じゃぁね比企谷君!ばいばーい!」
    雪ノ下雪乃を乗せたその車が、まるで地獄に向かう霊柩車のように見えたのは、きっとおれの錯覚ではないだろう。
  30. 30 : : 2014/03/31(月) 23:03:58
    質問だけど
    八幡と留美の一騎打ちになった時、雪ノ下と由比ヶ浜は後にしたって書いてあるけどそれって雪ノ下と由比ヶ浜はミラーワールドから出ていったって事でいいの?
  31. 31 : : 2014/04/01(火) 21:13:35
    ⇒⇒⇒30
    はい、そうです。二人の勝負に手をださないと約束し、変身を解除して現実世界に戻ります。
    わかりにくくてすみません。
    この留美との戦闘シーンとまとめの部分は特に下手だったと反省しています。
    今後は、明確に伝えるべきところは、わかりやすく書くよう尽力します!

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kusutti

くすっち天頂

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