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人類最強

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  1. 1 : : 2015/02/20(金) 17:50:02
    「やぁ、人類最強リヴァイ君」

    「いきなりなんだ。気持ち悪い」

    ふいに後ろからかけられた声に
    振り向くことなく自室へと歩き続ける

    そんな彼に気を悪くした様子もなく、
    ハンジは隣に並んで一緒に歩く

    「今日久々に街へ行ったんだけど、
     リヴァイはやっぱり有名人だね。皆が君のことを
     はなしていたよ。」

    「·····」

    「人類最強のリヴァイは俺達の希望だってさ」
  2. 2 : : 2015/02/20(金) 18:45:30
    え、これリヴァハン??
    リヴァハンなの?
    ま、いいや。
    きた~い!
  3. 3 : : 2015/02/20(金) 18:47:40
    2;期待ありがとうございます
    ですがラブ要素はありません...
  4. 4 : : 2015/02/20(金) 18:56:04
    「だからなんだ」

    ハンジは彼をからかっているわけではないのだろう

    つい先日第57回壁外調査が行われたばかりだ

    それくらいのことは彼にも察しがつく

    だが、いつになく素っ気ない態度をとってしまう

    「どうしたの?悩み事かな?」

    「お前はどこまで付いてくる気だ」

    ハンジの質問には答えず、ただ冷たく暗に『ついてくるな』と突き放す
  5. 5 : : 2015/02/21(土) 08:40:28
    「今日はいつもより厳しいね」

    ハハッといつものように笑う
    ...が、すぐ真剣な面持ちに変わる

    「そんなにキツかった?今回の壁外調査。·····ペトラやエルドの死」

  6. 6 : : 2015/02/21(土) 11:52:27
    その名前を聞き、歩みが止まった
    どこも捉えていないような瞳からはどんな感情も読み取れない

    「そりゃあ自分で選んだ班だし、仲間の死が辛くないって方が「俺達がすべきことは」

    ハンジの声をかきけすように言葉を被せる

    「俺達がすべきことは過去を振りかえって立ち止まることじゃない。あいつらが残した意思を引き継ぐことだ」

    静かに、はっきりとそう残し、部屋へと消えていった


    「リヴァイ······」
  7. 7 : : 2015/02/21(土) 18:23:33
    自室に戻り、書類整理に取りかかる

    だが最近はいつもと違う

    思い浮かぶのは得たいの知れない何か

    ついペンを持つ手が止まる

    (このままこうしていても何も変わらねぇ。風にでも当たるか)

    先ほど閉めたばかりのドアをもう一度開けた
  8. 8 : : 2015/02/22(日) 08:50:44
    『人類最強の兵士リヴァイ兵士長だ!』
    『一人で一個旅団並みの戦力があるってよ!』

    “人類最強”

    街に出ればそればかりだ

    初めて会う新兵は当然、ハンジですら時にそう呼ぶ

    確かに彼は地獄のような世界を何度も生き残ってきた
    彼の実力を越える者も今のところ現れない

    だが長く生き残ってきたということは反面、多くの仲間を失ってきたということ

    俺の人生の中には一体どれ程の『死』があるのか···
    一体どれ程の屍を越えて此処まで来たのか···

    そんな考えを打ち消すように

    「···らしくねぇ」

    と、一人呟いた 
  9. 9 : : 2015/02/22(日) 09:51:51
    期待
  10. 10 : : 2015/02/22(日) 16:51:28
    9;ありがとうございます
  11. 11 : : 2015/02/22(日) 17:12:55
    “人類最強”その言葉は、彼にとって何の意味もなさないはずだった

    何も知らない奴らの上辺だけの淡い期待

    彼にとってはただの幻想にすぎなかった

    しかし、今その言葉は彼の心に重く暗い影を落としている

    その言葉を投げ掛けられるたび、耳にするたび、
    とてつもなく虚しく感じた

    ふと、昔のことが思い出される
  12. 12 : : 2015/02/22(日) 20:14:53
    ―― 兄貴は地下でも一番強ぇんだ! ――
    ―― 壁外でも『無敵リヴァイ』は健在だな··· ――

    家族同然に信頼し合っていたイザベル、ファーラン

    立体起動で地下街を飛び回っていた時のこと、
    エルヴィンの取引に応じ調査兵団に入団し、いつか三人で地上に住もうと夢見ていたこと

    いつもならそれ以上は考えないようにしていた

    だが今日は·····

    ―― 兄、貴··· ――
    ―― あーあ!ここまでかよ!何なんだよ!ほんと、お前ら···さぁ! ――

    彼の中で唯一の後悔の記憶

    ―― 皆死なせてしまう ――
    ―― 俺の選択は間違いだった ――
    ―― 俺の驕りが···クソみたいなプライドが···! ――

    自身の思考を止める術もなく、ただ無力感に襲われる

    (強ければ何だという。俺は仲間が死んでいくのを見ていることしか 出来ねぇ。
     死に際に声をかけるぐらいしか出来ん。)

    目の前で死んでいった者、恐怖に負け、自ら命を絶つ者

    そして、任務遂行の為と見捨てた部下たち

    それに対する後悔の念はない
    犠牲を恐れていては何も変えられない

    ただ、誰より仲間を大切に思う彼には重い決断だった




  13. 13 : : 2015/02/23(月) 00:43:59
    (他人を助けられない強さに意味があるのか···)

    自分でも気付かないうちに随分と気分が落ちてしまったようだ

    「異常なもんを見すぎてつい頭までまいっちまったか···。柄にもねぇ」

    「たまにはいいと思うけどね」

    いつの間にかカップを二つ持ち、どこか悲しそうに笑うハンジが立っていた
  14. 14 : : 2015/02/23(月) 00:45:24
    すいません
    「つい頭まで」じゃなくて「ついに頭まで」です!
  15. 15 : : 2015/02/23(月) 18:39:56
    「紅茶を淹れてきたんだ。捗ってないみたいだからさ。一緒にどう?」

    断ると口を開きかけたが、思いとどまる

    「···中に戻るか?」

    ハンジが風邪をひかないようにというリヴァイなりの気遣い

    ハンジはそれを当然のように理解している

    「いや、少し夜風にあたりたくてね」

    はいっ、と片方のカップを渡す

    「あぁ···」









    しばらく無言の時間が続く

    最初に口を開いたのはハンジだった
  16. 16 : : 2015/02/24(火) 07:09:07
    「ねぇ···」

    「なんだ。巨人の話なら聞かねぇぞ」

    彼にだって分かっていた

    「無理して平気なふりはしなくてもいいんじゃない?」

    ハンジが自分を案じてくれていることは

    それでも彼は“人類最強”という呪縛に囚われていた

    「さっきも言っただろうが。俺がいつまでもあいつらを引きずるわけにはいかねぇ」

    「·····」

    ハンジには何か思うところがあるこだろう

    だが伝え方が分からないというように手の中のカップに視線を落とす
  17. 17 : : 2015/02/24(火) 18:19:35
    「気付いたらこんなところまで来ちまったんだ。第一、弱音を吐くなんざ俺らしくねぇだろ」

    らしくない、ここ数日で何度も思った

    自分に向けて言葉にしたのも一度や二度ではないだろう

    「たまには···いいんじゃない?」

    精一杯の想いを紡ぐ

    「君はとても強い。私も人類最強は君だと思っているからね」

    「·····」

    リヴァイは何も言わず、黙って地面を見つめる

  18. 18 : : 2015/02/25(水) 18:16:28
    「君だって人間だ。死は怖いだろ?」

    「死ぬことなんざ怖くねぇ」

    「そうだろうね。君ほど冷静に戦える兵士はいないよ」

    夜空を見上げているのか、もっと遠く、その向こうを見つめているのか、遠い目をしている

    「君が恐れているものは仲間の死だと思うね」

    「······」

    その無言は否定とも肯定ともとれた

    「私がこんなこと言うのもそれこそらしくないと思うけどさ···」

    「·····?」

    躊躇し、急に黙る



    それでも意を決したのか、すっとリヴァイの目を見る

  19. 19 : : 2015/02/26(木) 07:56:25
    「たまには休んでもいいんじゃないかな。人類最強」

    「·····!」

    彼にしては珍しく眼を開く

    それだけハンジの言葉は意外だったのだろう


    いつも巨人巨人と騒いでいるハンジからは想像もつかないほど真面目で必死だった

  20. 20 : : 2015/02/26(木) 18:25:42
    「君は一般人だけじゃなく兵士達からも期待されている。今まずっ とそれに応えてきた。
     でも、前だけを見て走り続けるのは辛いでしょ?
     時にはさ、立ち止まって休むことも必要だと思うんだ」

    「俺は立ち止まるわけにはいかねぇ」

    答えは最初から決まっていたんだろう

    まっすぐ前を見据え、はっきりとそう言った

    他者の介入を許さないほどの決意、覚悟

    (これが人類最強···か)

    それはハンジにとって頼もしくあり、日常のことであり、とても辛いことだった

    (君はこれから死ぬまでずっと、責任や期待、悲しみを背負って戦い続けなきゃいけないんだね)

    入団当初からの付き合いであるハンジでさえ、一緒に背負うことはできない

    彼の抱えるものを軽くすることは誰にもできない

    「お前が珍しくまともな話をすると思えば。人より自分の心配をしていろ」

    「ハハ···やっぱり慣れないことはするもんじゃないね」

    お互いにちゃんと分かっていた

    ハンジが本気で自分を心配してくれていること
    リヴァイに自分の想いが伝わっていること
    そして、それを理解したうえでの応えがこれだということ

    「もう戻ろうか」

    「···ああ」



    二人がいた場所には、もう微かな温もりも残っていなかった








         ~END~
  21. 21 : : 2015/02/26(木) 18:29:42
    書き終わりました!

    初めてだったのでいろいろとおかしいところもあったと思いますが、見て下さった方、ありがとうございました

    アドバイスなど頂ければ嬉しいです
  22. 22 : : 2015/02/27(金) 18:37:44
    なんか本当にありそうなきがします。
    ウルッときました。
    執筆お疲れさまでした!
  23. 23 : : 2015/02/27(金) 19:45:35
    蛙霊魂さんコメントありがとうございます!

    そう言って下さって嬉しいです

    本当にありがとうございました!

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Nyuuyokuzai

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