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この作品は執筆を終了しています。

ジャン『どうしようもないくらい』ミカサ『君が好きなんだ』 〜オレンジ〜 後編

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  1. 1 : : 2014/03/22(土) 14:48:30
    このSSは現パロで、GReeeeNさんの『オレンジ』を聞いて思いついたものです。
    GReeeeNさんの曲に対する誹謗中傷はご遠慮ください。

    自分なりの解釈が含まれますが、おつきあいいただければ幸いです。
    ジャンミカ。

    なお今回、歌詞の都合上星が出てきます。調べながら書いたのですが、たぶんその時間帯にこの星が見えるわけない!という事態になってます。目をつむってください、その星の名前に惚れたんです。

    更新カメさんですが、よろしくお願いします!
  2. 2 : : 2014/03/22(土) 14:50:42
    前編はこちら↓
    http://www.ssnote.net/archives/12209

    投稿は明日からになります

    ジャン↑
  3. 3 : : 2014/03/22(土) 14:51:27
    いきなりミス
    >>2私です
  4. 9 : : 2014/03/23(日) 15:13:27

    Chapter5 : それから 〜笑顔〜


    あの日から、数週間たった。
    それからの帰り道は、2人で並んで歩いた。
    今までの【一緒】とは意味が違う。

    はじめは夢なんじゃないかと何度も思った。

    でも、下校時間になると彼は校庭横の通路に立っている。私が手を振ると振り返してきて、それが夢じゃないってことを意識させてくる。

    そして…今日も

    彼はいつもの場所にいた。


    ミカサ『ジャン』

    ジャン『よう、帰るか』


    並んで歩き出す。
  5. 10 : : 2014/03/23(日) 15:13:54

    彼について、名前以外にわかったこと。

    彼は私と同じ学年であること。
    部活はバドミントン部であること…これはエレンから聞いたのだが、かなりの実力者らしい。


    それから、1つ変わったことがある。
    私の毎週月曜日の楽しみ、エレンと帰るのをやめたことだ。
    これは、エレンへの想いとの決別だ…長いこと引きずっていた想いとの。

    今の私は彼が好き。
    改めてそう思うと顔が紅くなる気がする。
  6. 11 : : 2014/03/23(日) 15:21:40

    ジャン『あ、そうだ。お前何部なんだ?』

    ミカサ『私は帰宅部だけど…あなたは確か』

    ジャン『バドミントン。かなり緩いから練習も土日だけだけどな』

    ミカサ『ああ、だからこうして一緒に帰れてるのか』

    ジャン『ははっ、まあそういうことになるな…今週末大会なんだけどな』

    ミカサ『それは…』


    ぜひ応援に行きたい


    その一言が言えない…
    本当は行きたいのに
  7. 12 : : 2014/03/23(日) 15:25:51

    ジャン『そこで、だ…。その、もし暇だったらでいいんだが』

    ジャン『見に来ないか?』


    まるで私の心を見透かしたような一言に少し驚きつつも、返事をする。


    ミカサ『ぜひ行きたい』

    ジャン『…!おう、ありがとな』


    そう言って彼は笑った。

    夕焼け色に染まる彼の笑顔はとても綺麗で…
  8. 13 : : 2014/03/23(日) 15:32:08



    ミカサ『好き…』


  9. 14 : : 2014/03/23(日) 15:32:40

    …!?

    声に、出してしまった。
    どうしよう、聞こえてしまっただろうか?


    ジャン『ん、何か言ったか?』

    ミカサ『いえ!何も!言ってない!ので、気にしないで…!』

    ジャン『…そうか』


    彼は少し不思議そうな顔をしたが、納得してくれた。

    どうやら聞こえてなかったようだ、一安心。でも今の私の顔は、きっと真っ赤なんだろう。
    ついに声に出るようになってしまったこの想い…こんなので大丈夫なんだろうか。
  10. 15 : : 2014/03/23(日) 16:24:45

    Chapter6 : それから 〜泣き顔〜


    スパァンッ!

    軽快な音を立ててスマッシュが決まる。


    ジャン『しゃあっ!』


    決めたのはもちろん彼だ。
    今のポイントで彼の決勝進出が決まった。

    今日は彼の言っていた大会の日。
    私は応援に来ていた。
    2階のギャラリーには私を含め、多くの人が応援に来ている。
  11. 16 : : 2014/03/23(日) 16:27:11

    女子生徒A『ジャンくんナイスショッ!』

    女子生徒B『はぁ…今日もかっこいい…』


    彼女たち…彼と同じ部活と思われる女子が歓声を上げる。…どうやら彼は人気、言ってしまえばモテるらしい。

    今まで全く意識してなかったが、確かに彼の顔は整っている方だ。


    女子生徒C『ジャンくーーーん!お疲れ様ーーーっ!』


    …聞こえていないのか、聞こえていないフリなのかわからないが彼はこちらを見向きもしない。
  12. 17 : : 2014/03/23(日) 16:29:15

    私は彼女たちから少し離れた場所にいる…どうもこの手の子は苦手だ。ギャラリーの柵に寄りかかり、彼を見やる。

    その時、彼がギャラリーの方を向いた。


    女子生徒D『こっち向いた!』

    女子生徒A『ジャンくーーーん!』


    女子生徒たちがここぞとばかりに声を上げる。
    …よくあそこまで叫べるな、と少し呆れる。私ならやらない…というかできない。
  13. 26 : : 2014/03/25(火) 09:34:02




    でも、ここで引き下がりたくない。




    彼が好きなのは、あなたたちだけじゃないの。




  14. 27 : : 2014/03/25(火) 09:36:24


    私にだって、手を振ることぐらいならできる。

    口の動きだけでも、伝えることはできる。


    右手を挙げ、彼に向かって手を振る。そして

    【おつかれさま】

    と、口を動かす。


    …通じるわけないか。


    すると彼はあの笑顔を浮かべ、手を振り、何か言うように口を動かした。
  15. 28 : : 2014/03/25(火) 09:59:51

    女子生徒B『今私に手を振ってくれた!!』

    女子生徒C『ばーか!笑 私だって!』


    今のは、私たち、に向けてじゃないだろうか。と心の中で突っ込む。

    彼の口の動きに彼女たちは気づいていないようだ。


    【ありがとう】


    私の見間違いじゃなければ、こうだったはず。

    …気づいてくれたのかな。

    手を振ったのは私たちにだとしても、この口の動きは私に、なのかな。


    『よう、きてくれてありがとな』


    後ろから声をかけられ、振り向くと彼がいた。
  16. 29 : : 2014/03/25(火) 10:08:11


    ミカサ『ジャン…!』

    ジャン『シーーッ…気づかれるとめんどくせえから…』


    どうやら、女子生徒たちに気づかれたくないようだ。


    ミカサ『わかった…でもすごかった、本当に。次も頑張って』

    ジャン『はは…ありがとな。次の相手は前回大会優勝者だけど、お前のおかげで頑張れそうだぜ』

    ミカサ『そんな…そういえば、伝わった?』

    ジャン『おつかれさま、だろ?伝わったよ、ありがとな』


    ヒソヒソと会話を続ける。
    2人だけの秘密の会話。
    …なんだかこういうの、いいな。
  17. 30 : : 2014/03/25(火) 10:14:38

    女子生徒A『あ、ジャンくんだ!』

    女子生徒D『お疲れ様〜』


    彼女たちに気づかれてしまい、あっという間に囲まれた。

    せっかく、2人で話してたのに…


    女子生徒C『さっき私に手を振ってくれたでしょ!嬉しかった〜』

    女子生徒B『私でしょ?』


    ジャン『…悪い、あれはお前らじゃなくてこいつにだから』


    そう言って、私を指差した。


    …え?

    私に…、私にだけ?


    頬が熱くなるのを感じる。今の私の顔、絶対に大変なことになってる。
  18. 31 : : 2014/03/25(火) 10:22:23

    女子生徒A『えー!?その子彼女?』

    ジャン『え!?あっ…いや、その、そんなんじゃないけど…』


    そうだ、今まで幸せすぎて忘れていた。


    私たちは、付き合ってすらいないじゃないか。


    ミカサ『…ごめんなさい、ジャン、少し席を外しても…?』

    ジャン『あ…いいぞ。この後もいてくれるか?』

    ミカサ『ええ、もちろん』


    歩きながら考える。

    なぜ彼は私に来てくれと言ったのだろうか…

    彼にとって私は、ただ一緒に下校するだけの仲のはずなのに…
  19. 33 : : 2014/03/25(火) 10:48:33

    ーーーーーーーーーーーーーーーー


    その後のことを簡潔にまとめると、彼は負けた。

    彼は最後のスマッシュがネットに引っかけてしまったのだ。



    今、帰り道を少し外れたところにある公園のベンチに座っている。準優勝に終わったにもかかわらず、彼は明るかった。

    でも…私にはわかる、これはカラ元気というもの。


    ジャン『悪りいな…せっかく来てもらったのによ』

    ミカサ『いえ…あなたの頑張ってる姿が観れてよかった』

    ジャン『そっか、ありがとな』


    そう言って彼は笑う…
  20. 35 : : 2014/03/25(火) 15:50:45



    ねえ、ジャン



    全然笑えてないよ



    あなた泣いてるじゃない



  21. 36 : : 2014/03/25(火) 15:53:30

    ジャン『ははっ…ダメだな…泣かねえって…決めたのによ…っ』

    ミカサ『ジャン…』


    ごめんなさい、私にはなんて言えばいいかわからない…

    でも…


    ミカサ『…話ならいつでも聞く。だから、私を頼ってほしい』

    ジャン『くそっ…う、あ…』

    ミカサ『ゆっくりでもいい、あなたのペースで…。話さなくてもいい』

    ジャン『っ……』
  22. 37 : : 2014/03/25(火) 15:54:01




    ジャン『俺、肩壊してて…今日が……最後の大会だったんだよ…ぉ…今日が……!畜生…!』




  23. 39 : : 2014/03/25(火) 16:20:56

    彼の背に手を置き、優しく背中をさする。最後の試合、彼がどんな気持ちで臨んだかなんて私でもわかる。

    いつも見ていた背中が、なんだか小さく見えた。

    本当は抱きしめてあげたい。

    大丈夫、って…


    でも、私は彼の彼女じゃない…



    数日前、彼の笑顔を夕焼け色に染めた太陽。

    その太陽は、今日、彼の泣き顔を夕焼け色に染めた。

  24. 43 : : 2014/03/26(水) 13:26:47

    Chapter7 : ひとつ光る星


    大会から1週間たった。今日も私と彼は一緒に帰っている。
    あの大会の後、彼は正式に部活をやめた。

    今の彼は笑っている。

    それは、あの日涙を堪えるためにつくった笑顔じゃなくて、本物の笑顔で安心する。

    …やっぱり笑顔の方がいいな、なんて思ってしまう。


    ジャン『最近暗くなるのも早くなってきたなー…』

    ミカサ『そうね…』


    そう、最近一番綺麗な夕焼けの時間はどんどん早まってきている。彼と帰る頃には、暗くなり始めている。
    …いつものオレンジ色とは違うけど、またこれもいいかな。
  25. 44 : : 2014/03/26(水) 13:30:14

    ミカサ『…あ』

    ジャン『あ?』

    ミカサ『いや…あそこに、星が』


    薄暗くなり始めた空に、星が光っている。

    その中でも、一番目立つ星。


    ミカサ『綺麗…』

    ジャン『あれか?』

    ミカサ『ええ、あの建物の近くの一際明るい星…』

    ジャン『あれ、フォーマルハウトっつーんだよ。南の魚座の一等星』

    ミカサ『へえ…物知りなのね、とても意外』

    ジャン『俺だって星ぐらい見るさ』


    そう言って、私にあの笑顔を向ける。
  26. 45 : : 2014/03/26(水) 13:30:39





    ________________



    『俺だって星ぐらい見るさ』


    ________________





  27. 46 : : 2014/03/26(水) 13:41:54

    その姿、台詞、笑顔が、彼によく似た誰かと重なって見えた気がした。

    それが誰だかなんて、思い出せないしわからないけど

    なんだか、とても懐かしい…


    ジャン『!?…俺なんかしたか?』

    ミカサ『え…!何も、してない』

    ジャン『じゃあお前…』




    ジャン『なんで泣いてるんだよ…』




    慌てて自分の頬を触る。

    本当だ…私、泣いてる…?


    ジャン『どうしたんだよ?』

    ミカサ『わからない…涙が止まらないの…』

    ジャン『…』


    頭に温かい感触

    あ、撫でられてる…のか


    でも


    どうして、なみだが、とまらないの?
  28. 47 : : 2014/03/26(水) 13:48:37
    ーーーーーーーーーーーーーーーー


    ミカサ『驚かせて、ごめんなさい…』

    ジャン『いや、何でもなくてよかったよ』


    あの後、私は10分ほど泣きながら歩いて3つ目の角まできていた。

    彼は黙って、隣を歩いてくれて

    何も言わずに、隣を歩いてくれて

    ただそれだけで、心が安らいで…


    ジャン『じゃあな、今日はゆっくり休めよ』

    ミカサ『ええ、ありがとう』


    彼に手を振り、家に入る。

    …玄関には、お父さんの靴があった。いつもこの時間は仕事でいないはずなのに。
  29. 49 : : 2014/03/26(水) 14:32:59

    リビングへの扉を開けると、お父さんとお母さんがいた。2人とも深刻な顔をして。


    …嫌な予感がする。


    ミカサ『お父さん…?どうしたのこんな時間に』

    ミカサ父『ミカサ…』

    ミカサ母『ミカサ、落ち着いて聞いて頂戴』



    父が次に発した言葉を理解するのに数秒かかった。



    ミカサ父『本当にすまない…』

    ミカサ『…お父さんは、悪くない。私は大丈夫』


    それだけ言って、自分の部屋へ行く。

    …お父さんたちに、泣き顔なんて見せられない。
  30. 51 : : 2014/03/26(水) 14:39:16



    ________________


    『今日も、疲れた』

    『そうだな、相変わらず速えなお前は。今日もぶっちぎりでトップじゃねえか』

    『いえ、あなたも速かった。ので、そうでもな…』

    『…ミカサ、どうした?』

    『あそこに、星が見える』

    『…あれか?』

    『そう、教官室がある棟の上にある…』

    『あれはフォーマルハウトだ。南の魚座の一等星』

    『…』

    『…どうした?』

    『いえ、物知りなのね…意外だと思って』

    『俺だって星ぐらい見るさ』

    『そうね、ごめんなさい』

    『いや…』

    『…』

    『…』

    『…ねえ、ジャン。この前の話のことなのだけど…』


    ________________



  31. 52 : : 2014/03/26(水) 14:44:40

    あの後泣き疲れて寝た私は夢を見た。

    彼がでてきて、私が隣にいて。
    一緒に歩いている夢。

    でも、今の私たちとは少し違った。

    兵服…?のようなものを着ていて。

    それ以外はどこが違うかなんて、もう霞んでしまって思い出せないけど

    あの時彼に重なって見えた、彼によく似た誰かは、その夢の彼なんじゃないかなんて思ってしまう。

    もしそうなら…

    あの星は、はるか昔から、私たち2人を繋いでくれた星。


    頭に手をやる

    撫でられた感触が残っている気がする。
  32. 53 : : 2014/03/26(水) 14:45:18

    父の言葉なんてもう思い出せない、思い出したくもないのに



    転勤、引越し、転校



    その単語だけが何度も何度も頭をよぎる。

    離れたくない、それでも、お別れしなきゃ。
    …何も言わずにいよう、言っても辛くなるだけだから。

    この気持ちも、伝えずにいよう。


    ああ、どうしようもないくらい、あなたが好きなのに。
  33. 60 : : 2014/03/27(木) 11:38:07



    ________________


    Chapter? : 見えない空、変わらない星


    日が落ちそうな空に、星がひとつ輝く。

    フォーマルハウト

    そんな名前だと彼は教えてくれた。


    この街であの空はもう見ることができないけど

    この星はずっと、どこにいても変わらず見えるだろう。

    彼と一緒にいたあの日のように…


    ________________



  34. 61 : : 2014/03/27(木) 12:01:34

    Chapter8 : 離れたくない


    今日は学級会が長引き、いつもの時間より少し遅くなってしまった。

    走って彼の元へ向かう。


    ミカサ『ごめんなさい、お待たせ』

    ジャン『そんなに待ってねえよ、行くか』


    いつものように歩く帰り道。

    正直に言えば、今日この状態のまま彼に会うのは辛かった。

    でも、待っててくれているのを見てしまったから…そのまま帰ってしまうのは申し訳ないから…


    ジャン『…ミカサ、今日は全然喋らないけどどうした?』

    ミカサ『ぜ、全然!そんなこと!ない!ので…』


    いけない、いつも通りに振舞わなきゃ…
  35. 62 : : 2014/03/27(木) 12:01:59



    ジャン『嘘吐くなよ…』


  36. 63 : : 2014/03/27(木) 12:05:56

    え…?


    ミカサ『なんで…そんなこと』

    ジャン『わかるよ。お前は何かあった時、言葉遣いが少し変わる』


    ________________


    『全然!大丈夫!ので、スピードは、落とさなくて平気…!』


    『いえ!何も!言ってない!ので、気にしないで…!』

    ________________


    自分でも気づかなかった癖

    彼が気づくなんて。

    誤魔化さなきゃ、誤魔化さなきゃ…
  37. 64 : : 2014/03/27(木) 13:18:49

    ミカサ『あなたは、本当に物知り』

    ジャン『誤魔化すな…いくら物知りでもわからないことだってある。今お前が大丈夫じゃない理由とかよ』


    彼のまっすぐな目が私を見つめる。


    ジャン『話したくないなら、無理に話すことはない。話したいならいつでも聞く。ゆっくりでもいい』


    だめ、そんな優しい目で見ないで。

    言いたくなるじゃない…


    ミカサ『私転校するの、父の仕事の都合で』


    彼が目を見開く。
    そう、それが普通の反応。

    あれだけ黙っていようと決めてたのに。
  38. 65 : : 2014/03/27(木) 13:23:54

    ジャン『そう、か…どこに』

    ミカサ『ここから電車で隣町まで行って、そこからまた…』

    ジャン『…すげえ、遠いな』

    ミカサ『そう、ね』

    ジャン『いつ?』

    ミカサ『………未定』

    ジャン『決まったら、言えよ。見送りに行くからさ』

    ミカサ『ありがとう』


    それからはずっと無言だった。

    夜の青と、夕焼けのオレンジの空にに輝く、あの星だけがいつも通りで。


    ジャン『それじゃあ、な』

    ミカサ『ええ、また明日…』
  39. 66 : : 2014/03/27(木) 13:25:46

    ああ、ごめんなさい

    ごめんなさい、ジャン

    私、嘘をついた。

    本当は未定なんかじゃない、もう決まってる…



    4日後、なの。

  40. 67 : : 2014/03/27(木) 13:38:18

    Chapter9 : 最後の日


    私が転校を告げた日から、早くも3日たった。

    今日が、彼と帰る最後の日。
    どうせなら、最後は笑顔で過ごしたい。

    みんなからもらった色紙を急いで鞄へしまい、いつもの場所、校庭横の通路へと走る。


    ミカサ『ジャン!』

    ジャン『よう、行くか』


    いつものように並んで歩き出す。
    今日が、最後の日。

    なるべく自然に振舞わなきゃ。
  41. 73 : : 2014/03/28(金) 16:59:50

    ミカサ『今日も一日疲れた』

    ジャン『俺も…なんだか一日が早く感じるよ』

    ミカサ『でも、あなたといると疲れを忘れられる』

    ジャン『!』

    ミカサ『…本心』


    そう、これは本心。
    辛いことも、忘れられる気がする。

    空の色に染まる彼の横顔は、本当に綺麗だ。

    いけない、また心臓の鼓動が大変なことになっている。

    …少し距離を取る。

    でもやっぱり近くにいたい、この瞬間も。残りの時間は少ないから。
  42. 74 : : 2014/03/28(金) 17:06:57

    ジャン『…どうした、突然スピード緩めて』

    ミカサ『…いえ、久しぶりにあなたの背中が見たくて』


    今度はうまく誤魔化せた…と思う、本当の気持ちも混ざっているから。


    夜の青、夕焼けのオレンジに染まる彼の背中

    空に輝くフォーマルハウト

    きっと一生、忘れない。


    ミカサ『ありがとう』

    ジャン『…ああ』


    そのあとはいつもみたいになんでもない話をして、3つ目の角まで歩いて。

    彼はいつもみたいに、またな、と言った。

    ごめんなさい、【また】はもうないの。
  43. 75 : : 2014/03/28(金) 17:07:47


    もう彼と会うことはないだろう




    ありがとう




    さようなら…


  44. 76 : : 2014/03/28(金) 17:42:04

    Chapter10 : どうしようもないくらい、君が好きなんだ


    エレン『元気でな、お前が幼馴染でよかったよ。毎日楽しかった。たまには連絡しろよ』

    ミカサ『ええ、私も…ありがとう。あなたも元気で…クリスタさんを泣かせたら承知しない』


    最寄り駅にはクラスメイトがたくさん来ていた。

    その中には、クラスは違うけどエレンとその彼女…クリスタさんも来ていて。

    …彼は来てなくて。

    当たり前だ、呼ばなかったのだから…
  45. 77 : : 2014/03/28(金) 17:46:46

    エレン『なあ、あいつは?ジャン・キルシュタイン』

    ミカサ『…呼んでないの。日程も知らせてない』

    エレン『はあ!?お前ら付き合ってるんじゃないのか?』

    ミカサ『いいえ、私と彼はただ一緒に帰るだけの仲。それに、来てもらってもお別れが辛くなるだけ』

    エレン『お前…』


    そう、これでいい


    ミカサ母『ミカサ、そろそろ…』

    ミカサ『今行く』
  46. 78 : : 2014/03/28(金) 17:57:25

    改札を通り、振り返る。


    ミカサ『さよなら、私の大好きな街』



    ミカサ『…できれば、もう一度あなたに会いたかった』



    いけない、また声に出てる。

    伝えないって決めたのは私。

    もう、泣かない。


    ミカサ父『電車まであと10分ある。座って待っていよう』

    ミカサ『…ええ』

    ホームの椅子に腰を下ろす。

    新しい生活が待っているんだ、忘れよう。少しでも、笑わないとお父さんたちに心配される。
  47. 84 : : 2014/03/30(日) 09:53:58
    ーーーーーーーーーーーーーーーー


    10分って、こんなに短いのか。

    もう、この街を離れるのか。

    椅子から立ち上がり、荷物を持つ。

    今更、彼を呼ばなかったことを後悔している自分がいて…ああだめ。また彼のことを考えてる。
  48. 85 : : 2014/03/30(日) 09:55:01




    『おい!!』



  49. 86 : : 2014/03/30(日) 09:55:30


    後ろから声が聞こえる。

    まさか、この声は…いや、そんなはずはない。知らせてないのだから…

    振り返るな、振り返るな!
  50. 87 : : 2014/03/30(日) 09:55:56



    『おい待てよ!!』


  51. 88 : : 2014/03/30(日) 10:00:11


    肩を掴まれ、思わず振り向く。


    ミカサ『なんで…』


    そこには、彼がいた。


    その少し後ろには、エレンとクリスタさんの姿。

    クリスタさんの手にはケータイが握られている。

    彼女が呼んだのかもしれない。

    でもどうして彼女が彼を知っているの?
    いや、今はそんなことどうでもいい。


    ジャン『なんでじゃねえッ!お前こそなんでこんな…黙って行こうとするんだよ!!』

    ミカサ『う、うるさい…っ!黙ってないと…別れが辛くなるだけ!だから、黙ってたのに…なんで来たの!!』

    ジャン『それはお前に会いたかったからだよ!悪いか!?』

    ミカサ『悪い!とても悪い!!』

    ジャン『なんでだよ!!』

    ミカサ『っ…それは…』
  52. 89 : : 2014/03/30(日) 10:07:07

    あなたが、好きだから

    好きだからこそ、最後に会うのいつものあの帰り道の、いつも通りのあなたがよかった。

    好きだからこそ、来て欲しくなかった。


    そんなこと言えるわけない。


    ミカサ母『ミカサ、そろそろ乗らないと』

    ミカサ『!…今行く』

    ジャン『お、おい!まだ理由聞いてねえぞ俺は!』


    もう数十秒で電車は出る…ここで本当にお別れだ。

    名残惜しい、もっと一緒にいたい。

    できれば、あなたに好きって伝えたかった。


    ミカサ『それじゃ、さようなら…あなたに会えて、よかった。一緒に帰ってくれてありがとう』


    どうにか笑顔を作る。

    泣いてないだろうか、私は。
  53. 90 : : 2014/03/30(日) 10:08:49


    ジャン『…っ』


    ドアが閉まる。

    ドア越しの彼は、下を向いていてどんな顔をしているのかわからない。
  54. 91 : : 2014/03/30(日) 10:09:13



    ジャン『…ミカサ!』


  55. 92 : : 2014/03/30(日) 10:10:55

    電車の中にいても聞こえるような大声に驚き、ドア越しに彼を見つめる。


    初めて彼が私の名前を呼んだ…

    今までずっと呼ばなかったのに


    ジャン『窓開けろ!』


    言われた通りに一番近い席の窓を開ける。
    彼が近寄って窓に手を置いてきた。


    電車はもう走り始めている。


    ジャン『受け取れ!俺が、最後の大会で使ったシャトルで作った!お前に持ってて欲しい!!中に、メアドも入ってる!電話番号も書いてある!いつでも連絡しろ!』


    そう言って彼は、小さな箱を投げ入れた。


    ミカサ『…っ』
  56. 93 : : 2014/03/30(日) 10:23:47

    堪えていた涙が溢れ出す。



    離れたくない、もっと一緒にいたい。



    電車はどんどんスピードを上げる。

    彼は走っているが、もう追いつけない。


    窓から身を乗り出す。

    彼の姿がどんどん遠くなる。



    ジャン『ミカサ!』

  57. 94 : : 2014/03/30(日) 10:24:17



    ジャン『好きだ!お前が好きだ!大好きだ!!』



    ジャン『絶対に、会いに行くから待ってろ!!』


  58. 95 : : 2014/03/30(日) 10:27:22

    彼は、あの笑顔を向けてくれた。

    涙で視界がぼやけてくる。

    …やっぱり伝えたい
    今、伝えたい!


    後悔したくない!!



    ミカサ『私もあなたが好き!大好き!待ってる!ずっと待ってるから!!』


  59. 96 : : 2014/03/30(日) 10:28:19

    ああ、あなたが好き

    あなたが大好き

    やっと、言えた


    彼の姿はもう豆粒のようになってしまって。

    もらった箱を開けると、シャトルで作られたストラップと、彼のメールアドレスが書かれた紙が入っていた。

    裏返すと


    『フォーマルハウト』


    それだけ書かれている。


    …そう、たとえ住む場所が違ってもあの星はずっと同じで、変わることはないだろう。


    私の目からは止まることなく涙が溢れていた。

  60. 97 : : 2014/03/30(日) 10:37:54

    Chapter11 : こみ上げるオレンジ


    ミカサ母『ミカサ、そろそろ時間じゃないの?』

    ミカサ『ええ、今行く…』


    あれから6年たった。
    この町の生活にも慣れて、私は元気だ。

    彼は週に一度ぐらいのペースで連絡を取っている。

    あれ以来、一度も彼の顔を見ていないが元気だろうか。


    …会いたい。


    ミカサ『それじゃいってきます』


    用事を済ませるために外へ出る。
    そろそろ日も落ちる頃だ、早めに済ませないと。
  61. 98 : : 2014/03/30(日) 10:48:38

    ーーーーーーーーーーーーーーーー


    駅に着く頃にはもう暗くなり始めていた。

    ひとつ、ふたつ

    空に星が出てきた。


    その中の一つを見て立ち止まる。


    一際輝くあの星


    …彼と私を繋いでくれた星
  62. 99 : : 2014/03/30(日) 10:49:02




    『綺麗だろ、フォーマルハウトって言うんだ。南の魚座の一等星』



  63. 100 : : 2014/03/30(日) 10:49:27

    心臓の鼓動が激しくなる。

    聞き覚えのある声、同じ言葉。



    ゆっくり、振り返るとそこには




    『なんてな…久しぶり』




    ずっと会いたかった、彼が。
  64. 101 : : 2014/03/30(日) 10:57:30

    ミカサ『な、んで…』

    ジャン『言ったろ、絶対に会いに行くって』

    ミカサ『っ…でも今日だなんて、聞いてない…』

    ジャン『言ってないからな、驚かせようと思って』


    彼はそう言ってあの笑顔を向けてくる。あの頃と、何も変わらない笑顔で。

    涙が、自然と溢れてくる。

    夢じゃない、本当に彼がいる…


    ジャン『! 悪い、泣かせるつもりはなかった…』

    ミカサ『いえ、これは…あなたに会えて嬉しいからであって。全く問題ない…』

    ジャン『そうか…?ならよかった…俺も会えて嬉しい、少し時間あるか?』

    ミカサ『ええ、もちろん…』

    ジャン『ならちょっと話さないか…。お前髪伸びたな、とても綺麗だ』

    ミカサ『なっ…!』
  65. 102 : : 2014/03/30(日) 11:03:12

    きっと今の私の顔は、信じられないくらい紅いと思う。

    隣を歩く彼は、6年前と違って身長が伸びた。声も低くなって、6年で人ってこんなに変わるんだな、なんて思ってしまう。


    こうやって2人で歩くと、あの頃を思い出す。

    何気ない日々、一つ一つが宝物だった。今でもそうだ。


    ミカサ『…フォーマルハウト』

    ジャン『?』

    ミカサ『この街でも、よく見える。青とオレンジの中に。でも、やっぱりそっちの方が綺麗』

    ジャン『…空は少し変わるけど、星だけは変わらないからな』


    あの頃見上げた星が、今日も夕焼け色の中輝く。


  66. 103 : : 2014/03/30(日) 11:10:32

    ミカサ『ジャン』


    ミカサ『星だけじゃない。私の気持ちも、あの頃のまま…変わってない』


    いつか会えたなら、必ず言おうと思っていた。私の気持ち。


    ジャン『そうか』




    ジャン『なら改めて言わせてもらう』

  67. 104 : : 2014/03/30(日) 11:10:50




    ジャン『ミカサ、好きだ。お前が大好きだ』



  68. 105 : : 2014/03/30(日) 11:19:45

    彼が私の手を取る。

    私はその手を握り返して笑う。



    ああやっぱり私、どうしようもないくらい、あなたが好き



    あの頃と少し違う夕焼け空に

    あの頃と変わらない星が輝いている




    この星がいつか、再び私たちを繋いでくれるように




    オレンジ色の夕焼け空に願いを込めた。






    〜完〜

  69. 106 : : 2014/03/30(日) 11:22:40


    というわけで、
    ジャン『どうしようもないくらい』ミカサ『君が好きなんだ』 〜オレンジ〜
    は終了となります、最後までおつきあいいただきありがとうございました!

    本編の中でなぜクリスタがジャンの連絡先を知っていたのか?の理由ですが、2人はクラスメイトという設定です。そこの描写を書くと本編からそれてしまうので削らせていただきました。

    今度は愛唄に沿って書いてみようかなと思ってます。カップリングは今回ちょこっと登場したエレンとクリスタの予定です。基本書き溜めしてから投下する人なのでスレ立てまでは時間がかかると思いますm(_ _)m

    GReeeeNだけじゃなく、普通にオリジナルの作品も書けるようにがんばります。

    ぜひ次回作もよろしくお願いします!
  70. 107 : : 2014/03/30(日) 11:23:08
    もしよければ過去の作品もよろしくお願いします!

    1作目
    ミカサ『部分記憶障害』
    http://www.ssnote.net/archives/3445

    2作目
    『待つ人の話』
    http://www.ssnote.net/archives/4701

    3作目
    『泣いた巨人』
    http://www.ssnote.net/archives/7726

    4作目
    ヒッチ『マルロが女になった』 マルロ?『だーかーら!マルロじゃなくてマロルですって!』
    http://www.ssnote.net/archives/10351

    5作目
    ジャン『どうしようもないくらい』ミカサ『君が好きなんだ』 〜オレンジ〜 前編
    http://www.ssnote.net/archives/12209



    ジャン↑
  71. 120 : : 2015/03/12(木) 00:18:42
    彩華のSSに対するコメントはこちらへお願いします!

    http://www.ssnote.net/groups/1306/archives/1

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banana8asui

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