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トーマスになった男

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  1. 1 : : 2021/02/07(日) 03:06:59
    トーマスに転生してしまった男があの死に様を回避すべく頑張ります。


    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





    昔から漫画が好きだった。
    運動神経も悪く、かといって頭の回転が早いわけでもない。人に胸を張って言えるような趣味もない。
    ただそれでも、小さい頃から読んでいた漫画という物が本当に好きだった。
    緻密に練られたストーリー、時には熱く、時には悲惨な物語を紡ぐ為に造られた個性あるキャラクター達。
    人気な作品は殆ど読んだ。幸い親がマニアだったので、漫画には困らなかった。
    ただその中でも上位に入るくらいには好きだった作品は、「進撃の巨人」。

    あらすじはその題名にもあるように、正体不明の怪物「巨人」が突如現れ、人類は滅亡寸前まで追い込まれる。
    辛うじて生き残った人類達が巨大な三重の壁を立て、その中で生活圏を立てている。という背景。
    そしてそこにいるのが調査兵団に憧れる主人公、「エレン・イェーガー」である。
    だがそのエレンがいる町の壁は謎のバカでかい巨人「超大型巨人」によって破壊される。
    そこから巨人達が侵入してきて、町は一気に瓦解するのだ。
    そこで色々と省くが、エレンは母、カルラが巨人に捕食される所を見てしまう。初めて見た時はマジで怖かった。
    エレンは復讐を決意する。

    「駆逐してやる…!この世から…一匹残らず!」

    この時の目凄いよね。
    そして幼馴染のミカサ・アッカーマンとアルミン・アルレルトと共に訓練兵になり、そこから物語が始動する…という物だが…












    「生まれてきてくれてありがとう、トーマス」












    何故か俺はトーマスになっていた。
  2. 2 : : 2021/02/07(日) 04:15:26
    トーマスと言えば、進撃の巨人の中で最も死ぬ姿を見られたであろう人物だ。
    彼はエレンと同じ時期に訓練兵に志願し、訓練兵団34班になった男である。
    二度目の超大型巨人出現時の瞬間にも立ち会った人物でありながら、初陣で奇行種の巨人に呑み込まれ、呆気なく死んだ男だ。
    恐らくエレンの同期で一番最初に巨人に屠られた人物。
    エレンも「よくもトーマスを!」って怒ってたのでそれなりの親交はあったのだろう。

    だが彼についてのストーリーは語られていない。無論、最初にエレン達に巨人の怖さを見せる為のキャラなので、そりゃそうだ。

    転生先がエレンじゃなくても、後々主要になり得る人物か、金持ちの家の子とかなら良かったんだが、寄りにもよってトーマスって。


    トーマスって。


    神は何を俺に期待してるんだ。


    俺は死んだんだと思う。
    死ぬ時は覚えてないけど、過去の俺については思い出せるので、これが転生なのは分かる。


    しかし、先程も述べたがトーマスについての詳細は一切分からない。
    名前が判明しているとはいえ、ただのモブキャラなのだ。


    トーマスの母親の名前は「サレウナ・ワグナー」で、父親の名前は「ロナウト・ワグナー」だそうだ。知らんわ。


    あと昔の俺は20歳後半だった為、母親のおっぱいを吸うのはかなり精神的に来た。
    餓死してしまうので仕方ない。
    しかも泣かないと親が心配してしまうので、適度に泣いた。最初はかなり辛かったが、人間凄いもので、段々慣れてくる。結果この経験のおかげで簡単に自分の意思で涙を流せる様になった。もう子役でも目指そうかな。


    さて、時間が経つのは早いもので、6歳になった。
    今ではもう子供のロールプレイが板についてきて、自分の中の大人の心が擦り切れていってる気がする。


    後10年で訓練兵になるのかあ、なんて思うと、ある疑念が生まれてくる。
    トーマスって結局、何で訓練兵になったんだろうか。
    台詞が初陣での「誰が巨人を多く狩れるか勝負だ!」と「うわぁ…クソ…(省略)」しかないので、全く背景が想像できない。
    恐らく誠実で多少の野心があるごく普通の青年だったんだろう。


    多分エレンみたいに復讐で巨人駆逐するぜタイプでは無かったんだろうなと思う。
    まぁ最初は憲兵団目指してたみたいだし安定した職につきたかったんだろうなぁ。


    考えても仕方ないか。
    そもそもモブキャラに必要ないしね。
    俺は憲兵団、もしくは駐屯兵団になろうかな。巨人怖いし、死ぬの嫌だし。トーマスが居なくなっただけじゃ変化は起きな……ん?



    いや、起きるな。
    俺、基トーマスはその鍵を持ってるじゃないか。
    エレンの巨人化の覚醒という鍵を。



    原作ではトーマスが奇行種に喰われて、エレンがブチ切れてその巨人を追っかける。その最中、別の巨人に両足を喰われてまた別の巨人に丸ごと呑み込まれるというシーンがあるのだが、その後、エレンは巨人の胃の中でめちゃくちゃ怒って、今後のストーリーでも頻繁に使う巨人化なる力を手に入れるのだ。めちゃくちゃ大事なシーンだ。


    …………待て。待て待て待て。ダメだ。それだと俺が確実に死ぬ事になる。
    でもエレンが巨人化するのには俺の死が鍵なのだ。俺が死ねば、今後エレンは人類の救世主となるのだ。


    …いや。



    まだ、残る手はある。



    だけどこれは非人道的行為に過ぎない。



    でも、それでも。



    生に執着するのが人間だ。



















    他の同期の奴を俺の代わりにする。








    エレンは優しい人物だ。仲間が傷付けられたら、人一倍怒り狂って、人一倍悲しんでくれる。
    だからあの時も、トーマスが死んだ時も、恐怖に負けず立ち向かって行ったんだ。



    なら、俺じゃなくても良いんじゃないか。



    エレンの優しさに漬け込んだ行為であるとは分かっている。
    だが、無理だ。



    あの漫画でも、アニメでも見たような恐ろしい巨人を現実で見るんだ。



    絶対、正気じゃいられない。



    俺はエレンみたいに勇猛な心を持ってないし、アルミンみたいに頭がいいわけでもないし、ミカサのように化け物じみた強さも持ってない。


    でも、知ってる。



    俺は初陣で、あっけなく死ぬ。



    だから、死にたくない。



    唯一取れる最善の方法が、これだ。
  3. 3 : : 2021/02/07(日) 08:35:29
    期待
  4. 4 : : 2021/02/07(日) 13:25:28
    この世界は学校というものが無く、俺は必然的に親の仕事の手伝いに回った。
    これがかなり辛かった。時期は夏真っ只中らしく、炎天下の中での農業や、運搬などは死ぬかと思うくらいには。


    当然、訓練兵になるともっとキツい扱きが待っている。
    練習風景は漫画では対人訓練、立体機動装置での移動方法・保持力測定等しか描写が無かったが、基礎訓練とか比べ物にならないくらいしんどいだろう。
    あの根性あるエレンが「血反吐を吐いた三年間」と言う程。それでも上位10人のうちに入るのは流石としか言えない。主人公万歳。


    その為、余った時間を特訓に使う事にした。
    何はともあれ体作りが資本になるのは間違いない。ここでふざけて別の事に耽溺でもすれば訓練兵になる時に巨人の前に練習で死ぬとかいう大ボケをかますことだってあるかもしれない。


    父親は商人であり、色んな町に繰り出しているのであまり家には居ない。おかげでトレーニングに精が出た。
    素人でも考えつくような筋トレと、対人訓練についての本を読んで、それを齧った程度。
    子供としてはある程度力がついた方だとは思うが、それを訓練兵時代に生かせるかどうかは謎。
    そもそもそれを実践できる相手が居ない。トーマスはモブキャラにしてはある程度美形で、友達がいそうなイメージだったんだが、どうやら周辺の家には同じくらいの子供が居ないらしい。


    トロスト区出身って他に誰がいたっけ……ジャン?

    そうだ。ジャンがいた。

    ジャンは訓練兵時代、エレンに突っかかって喧嘩して、それを止めに来たミカサに呆気なく惚れてしまう、初期は所謂噛ませみたいなポジションだった。
    余談だが、この際に「やめろよ!服が破けちゃうだろうが!」というエレンの台詞が好き。
    だが訓練兵時代は上位の中でも6位という、圧倒的な成績を叩き出し、それ以降は人望も厚く、尚且つリーダーの素質があるというまさに才能溢れた人物だ。


    幼少期についてはあまり描かれていないが、彼は母親想いの良い子である。
    病気で寝たきりのお母さんに、心配しながらお世話したり、手紙を送ってくれた母親に感激したりしていた。
    もしや、ここでジャンと交流を持つ事によって、ジャンの強化も図れるんじゃないか?
    6歳のジャンってどうなんだろう。


    というか、そもそもジャンの家の場所を知らないんだった。
    トロスト区ってだけでも広い町だ。
    ここで1つの仮説が立てられる。すぐに瓦解しそうな仮説だが。

    サシャの実家付近が襲われるエピソードでは、サシャが凄く親の事を心配していたにも関わらず、ジャンは親のことを余り心配していない。
    これは割り切っていたのだろうか。多分すぐウォール・ローゼに避難できる所に家があったからじゃないか?と俺は思う。
    つまりトロスト区の内側辺り。といっても全く確証が無い。もしジャンが割り切っていたのなら、本当に分からないのだ。


    トーマスの家は中央区に位置する。内側まで行くのはそう大した距離じゃない。


    手始めにジャンらしき子供を探してみるのは良いものの、結局いなかった。当たり前だ。そもそも家の場所が分からん。


    今日は諦めて帰るか。


    ………ん?



















    「いつも泣きやがって、何なんだよお前!ムカつくんだよ!」


    「うっ……えぇ……うぅ…」















    右手の裏路地で何やら喧嘩が起こっていた。なんかアルミンがやられてるシーンみたいな感じだけど相手の少年は反論するどころか泣いてるばかりらしい。
    胸ぐらを掴んで壁に押し当てているのはその少年より一回り大きいくらいの少年。
    その両隣には同じような奴が陣取り、囲む様にして怒鳴っている。


    まあ俺には関係ないと思った。三人相手にして無事でいられるかどうか分かったもんじゃないし、エレンみたいな勇気も持ってない。


    ここは目付けられる前にスタコラサッサしよう。














    「何とか言えよ!ジャン!」


    「うぅ……!」













    気のせいかな、今凄く知ってる名前が呼ばれた気がする。
    俺は半端に進めた足をそのままに、マイケル・ジャクソンみたいな体勢で顔だけ路地裏ににゅっと出す。


    「だから、なんとか言えって……………うわっ、なんだお前!気持ち悪!」


    やべ、バレた。


    こうなりゃ先手必勝!

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