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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品はオリジナルキャラクターを含みます。

この作品は執筆を終了しています。

遥か宙から花びらを

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  1. 1 : : 2020/08/10(月) 17:57:24
    オリジナルコトダマツリ参加作品です。

    作者咲紗と言いますが、以前のアカウント情報を紛失してしまったため、Twitterアカウントでログインしての投稿になります。そのため名前が豚骨味噌拉麺になりました。よろしくです。

    参加者された方は以下の通り(敬称略)です。
    ・風邪は不治の病
    ・ベータ
    ・De
    ・シャガルT督
    ・カラミティ
    ・フレン
    ・豚骨味噌拉麺(作者咲紗)
    ・あげぴよ
    ・herth

    参加者を円に繋げてお題を出していく方式です。
    私はフレンさんからお題を頂きました。せっかくなのでお題の開示は最後にしたいと思います。

    久しぶりの執筆で、拙いものですが、楽しんで頂ければ幸いです。

    以下スレッドより始まります。
  2. 2 : : 2020/08/10(月) 17:59:13
    「夏休みどうするー?」

    終業式の後、皆がそわそわしながら帰り支度をしている。
    目の前にいるAも例に漏れず。これからの夏休みをどう満喫するか、提案を促している。
    かくいうBも、浮ついた雰囲気に流されないよう努めつつも、顔は少しニヤついていた。

    B「まず課題を片付けさせてくれよ。そしたらめいっぱい遊ぼう」

    A「えー、課題なんか、最後の方でちゃちゃっとやっちまえばいいんだよ」

    B「……」

    「おまえ、そうやって中学の時もひいひい言ってただろ」

    準備が終わった様子のCが、他に2人引き連れて近づいてきた。

    D「毎日俺の家で宿題写してさ。今年からは勘弁してくれよ」

    A「もう高校生だしなー。さすがに自力でやるって」

    E「本当かよ!去年も受験生だからって言ってたよなぁ!」

    Aを除く4人が笑う。Aも申し訳無さそうに首をすくめて苦笑した。
    彼らは小学生からの幼なじみであり、このやり取りも、彼らが気の置けない仲だからのことである。
  3. 3 : : 2020/08/10(月) 18:00:49

    D「この後俺の家来る?」

    5人は帰路に着き、Dが帰りがけ提案する。これはいつものことであり、他の4人もそれにいつもの様に返す。

    C「もちろん」

    A「俺は一旦家帰るー。すぐ行くよ」

    B「俺も。なんか菓子買ってくわ」

    E「行く行く〜」

    校門前に出て、AとB、他3人で違う方へ進んでいく。5人では学校から近い所に住んでおり、自転車でお互いの行き来が用意なのだ。そして特にDは徒歩5分の近所に家がある。
    Dの自宅はそれだけではない。かなり大きな一軒家なのだ。俳優である彼の両親が建てたのだが、両親は海外で名前が売れており留守がちなのだ。
    故に、幼なじみである彼らの溜まり場となっている。

    D「はい、どうぞ」

    Dが玄関を開けて2人を招く。

    CE「お邪魔しまーす」

    広い玄関を抜けて、2階へ行く。階段には古い映画のポスターが飾られており、Dの私室までの広い廊下には、両親作の絵画や壺が置かれている。

    E「両親、自分のこと好きだよなー……」

    見慣れてはいるが若干引き気味のEが口にする。世界に名が売れている俳優だ。高い誇りを持つのは当たり前かもしれないが、少々やりすぎな気もしていたのだ。

    D「それもあるけど、たまにテレビが入ってくるからなあ」

    Eの内心を察してDが答える。

    E「あそっか。失礼だったかな」

    D「別にー。それに事実だし。特に父がプライド高いんだ」

    そう言いながら廊下の突き当たりに差し掛かり、Dは扉を開けた。

    C「涼しっ」

    D「スマホ使って点けといた。上手く点いてて良かった」

    Dはホッとしたように息を吐いた。Eは頭を捻った後、はっとして呟いた。

    E「エアコン変えたのかよ……すげー」
  4. 4 : : 2020/08/10(月) 18:02:35

    Dの自室には大きなテレビと、DVDや本のぎっしり詰まった本棚が目につく。どれも演劇関係のものだった。

    D「さ、座って座って」

    テーブルを囲んでCとEが床に座り込む。適当な様だが、配置は何年も前から固定されたものである。

    AB「Dー!来たぞー!!」

    玄関から聞こえた声に、3人が反応する。

    C「来たねぇ。なに買ってきてくれたかな」

    E「変な味の限定品じゃん?」

    D「それはお前だろ。迎え行ってくる。寛いでて」

    Dが出て行ったのを見て、EがCに尋ねる。
    Cは早速通学カバンの中からプリント類を広げていた。

    E「今年はコミケ出んの」

    Cは盛大にむせた。

    C「今聞くぅ?……残念ながら出ない!」

    E「なんで」

    C「冬に向けてデカい作品作ってんの!はい、この話終わり!」

    Cが無理やり質問をかわした途端、がちゃりと戸が開いて、3人が不思議そうにCとEを見ていた。

    A「何の話が終わりなの?」

    C「あばぁ!?何でもないの!」

    Cは明らかに挙動不審だったが、Aはそっかーと流した。

    E「……」

    EはじっとりとCを見つめている。Bはそれを見逃していなかった。

    C(それはそれ!これはこれ!)

    CのアイコンタクトにEは納得がいかないようだが、とりあえず頷いた。

    B(通じるんだ……)
  5. 5 : : 2020/08/10(月) 18:03:56
    B「はい、菓子」

    Bは話題を逸らすためにコンビニの袋をDに差し出した。

    D「ありがとう。お茶出すね」

    A「何買ったのー?」

    AとBが定位置に座り、Aがコンビニ袋をひっくり返して、菓子をテーブルにぶちまける。

    C「ちょっとぉ……」

    Cのプリントの上に定番のスナック菓子が転がる。

    A「ごめっ。何見てたの」

    C「課題。ちゃんと何から片付けるか考えないと」

    B「俺も考えないと。あたりめ開けんぞー」

    D「はーい」

    Bが辛口あたりめと書かれた袋を開け、大きな一欠片を頬張る。
    通学カバンの中を漁ってプリントを出すと、あたりめを齧りながら、出された課題をリストアップしていた。

    E「ジジィかよ。他のもなんか、若さがない」

    そう言って菓子を物色しているEが文句を言う。確かにBの買ってきた物は、定番スナック菓子に歯応えのあるツマミ系が混ざっている。

    A「俺はBのセンス好きだぞ」

    E「いや、スティックスターって所もまた」

    ああでもないこうでもないと駄弁っていると、Dがお茶を持って来た。
    Dは手際よく邪魔にならない所にグラスを並べる。

    D「まあいいじゃない。はいお茶」

    4人が口々に感謝を述べ、菓子を開封しながら、夏休みの予定を考えた。
  6. 6 : : 2020/08/10(月) 18:05:11
    C「AとDとEは部活どうなの?」

    この5人で部活に入っているのは3人。Aはサッカー部、Dは演劇部、Eはバレーボール部である。

    A「1年は邪魔だから、基本は午前で帰れってさ」

    彼らの学校では、大会を控える上級生の為に、下級生は早めに練習が終わるらしい。

    DE「俺もー」

    A「何かさ、中学と雰囲気変わってて調子狂うよな」

    分かる、と同意している3人に、BとCは顔を見合わせてよく分からないと言った表情を見せた。

    D「まあでも、今年は午後集まればいいね」

    A「さんせーい」

    B「で、全員いる時はどっか遊びに行こう」

    C「俺アニマイト行きたーい」

    E「お前はいつも行ってんだろうがよ」

    5人は思い思いの夏休みを思い浮かべた。今までと変わらないと言われてしまえばそれまでだが、彼らの習慣こそが日常であり楽しみなのだ。

    B「よし。課題やろう。リストアップしたから、好きに使って」

    Bが切り出す。各教科担当の教師がバラバラに課題を出したため、恐らくAやCが困惑するだろうと、Bが話しながら用意していたのだ。

    D「うわ多……」

    E「センコー会議とか挟んでないのかよ」

    A「本当に助かる!いつもありがとな」

    Bは少しだけ居心地が悪そうにして、Aから顔を背けた。

    B「お前たちが課題終わってないと、最後困るのは俺だからな」

    E「典型的〜」

    ここぞとばかりにEがBをからかう。Bはきつく睨み返すが、何を言っても無駄なことは知っているので反論はしなかった。
  7. 7 : : 2020/08/10(月) 18:08:22

    D「さ、Bがまとめてくれたわけだし、課題もう進めちゃおうか」

    C「早くやること終わらして〜、そんで後は遊ぼう!」

    彼らは勇んで課題に取り組んだ。紙を捲ったり、何かを書く音だけがしている。

    しかし、ある程度進んだ所で課題の難易度は増し、集中力が切れてくる。AやCの手が止まる時間が増えてきている。

    A「ん''〜〜〜〜〜~~?」

    C「Bくーん……」

    Bは後で、と目配せする。Aは何とか自力で片付けようとしているが、Cは完全に課題から目を逸らし、スマートフォンをいじり出していた。

    C「ん、何だろ」

    Cがスマホを見て首を傾げる。

    E「なに?」

    Eがそれを横から覗き込む。有名動画投稿サイト『ウイチューブ』が映されており、どうやらCはその1番目立つ所に表示されている動画が気になっているらしい。

    E「なんだよバーチャル配信者じゃん」

    今や当たり前の存在となっている、バーチャル配信者がサムネイルに表示されている。どうやら、先程デビューし、挨拶の動画を上げたものらしい。

    C「だってこれ急上昇動画だよ?こういう挨拶動画が上がるの珍しくない?」

    E「いや知らないけど」

    B「課題やれよ。わかんないとこ教えるからさ」

    C「これ見たら!音出していい?」

    そこまでCが興味を持っているのも気になる。

    AD「いいよ」

    AとDが良いと言うなら、Bだけが強く否定はできない。

    B「まあどうぞ」

    Cが動画を再生する。結局、Cのスマホを全員が覗き込んでいた。
  8. 8 : : 2020/08/10(月) 18:09:09

    画面には、ツインテールにSFチックなスーツを着た少女が映し出されている。

    U『Haloo. Bonjour. Привет. Olá. 你好。こんにちは。……』

    彼女は多数の世界の挨拶を繰り出し、マイクは良好と呟いて続けた。

    U『ワタシはU!今日から活動していく宇宙人だよ!』

    Uと名乗った配信者は、笑顔で手を振った。

    U『地球の事を知りたくて、配信者として活動することにしました』

    加工されたような声は違和感のない調整で、多くの人の耳に馴染むであろう声だった。

    U『ウイチューブの他にも、世界中の動画サイト、色んなSNSで地球の事を勉強したいと思います!』

    画面の下に、主な活動範囲が表示される。かなり広い範囲で活動するようだ。

    U『ワタシは色々知りたい!アナタたちにも色々教えたい!』

    Uは満面の笑みで両手を広げる。青白い髪が大きく揺れる。

    U『アナタたちと良好な関係を築ける事を願います!』

    U『早速今日の夜7時、生配信を行います。これは各国の時間に合わせて行うので、各サイトを確認してください』

    U『それでは、また今夜!』

    Uと名乗った配信者はそう言って動画を締めくくった。

    C「可愛い!」
  9. 9 : : 2020/08/10(月) 18:23:39

    どうやらCの琴線に触れたらしい。Cは目を爛々と輝かせ、動画を何度も見返している。

    A「本当に宇宙人なの?」

    D「まさか。でも、設定に忠実な語り口で、凄い演技力の人だと思う」

    Aはよく分かっていない様子だが、Dの言うことは正しい。バーチャル配信者はどこか自分と共通した設定を持つものだが、Uは宇宙人とだけ述べていた。その発言には妙な説得力があった 。

    B「すごい質のいい3Dモデルだなあ」

    C「そうそうそうそう!衣装も髪型も可愛い」

    A「そっかあ」

    Aはアニメやゲームに明るくないため、こういう時は聞き手に回るが、疎外感は感じていない。彼らが楽しそうな様子が不思議と嬉しいのだった。

    E「えぇ?」
  10. 10 : : 2020/08/10(月) 18:24:14

    その日、5人はある程度課題を進めて解散した。また5人が集まったのは2、3日後の事であった。

    B「こんにちは」

    D家のインターホンを鳴らしたのはBだった。CはBにぴったりくっついて、インターホンのカメラ越しに、Dに手を振っている。

    門扉の鍵が開く音がして、2人はD家の敷居を跨いだ。いつも遊びに来る家だから、Dの私室まではすんなり行ける。

    D「いらっしゃい」

    C「おはー」

    2人は今日もいつものように普段の所に座り、AとEを待ちつつ駄弁り始めた。

    C「ね、ね、昨日の生放送見た?」

    Cが切り出したのはUの話題だった。BとDはうなずいた。

    C「すっごく良かったよね!!」

    実際、Uの配信はバーチャル配信界隈でかなりの好評だったらしい。

    B「凄い設定作りこんであったね」

    D「ね。もっと彼女の話を聞いてみたいよ」

    今日からは各国の動画サイトで配信をし、問題がなければ他国にも翻訳して動画投稿していくらしい。
    ここまでマメな配信者はほとんどいないと、視聴者から驚愕の声が上がっていた。

    C「見た目も声も可愛いし、でも配慮が行き届いてて、本当に、初めての配信者とは思えないぐらいの人だよ」

    Cは本当にUが気に入ったようで、鼻息を荒らげてUの魅力に感じた部分を捲し立てている。

    Bは適当な相槌を挟んで流していたが、実際Uにはかなり興味をそそられていた。
    彼は中学生時代からSF創作のファンであり、小説や映画に限らず、アニメや漫画もかなり嗜んでいる。
    そうとなれば、Uの作り込まれた設定が彼の琴線に触れるのは必然だった。

    Cが話していると、3人のスマホにメッセージが来た。5人のグループチャットに、AとEがそれぞれ合流することを述べていた。Dがそれを確認した時、丁度インターホンが鳴らされた。

    D「迎えに行ってくるよ」

    C「行ってらっしゃい」

    B「いってら〜」
  11. 11 : : 2020/08/10(月) 18:25:00

    扉が閉められると、 再びCが饒舌に語り出す。Bはもう課題の続きを初めていた。CとBは2人だけの時、話すだけと聞くだけの役割がしっかりしている。

    A「お待たー!あれ、今日可愛いじゃん」

    C「でしょ」

    入ってきたAに言われると、Cは立ち上がって服の裾を持ってその場で回って見せた。

    E「何の話してたん」

    B「昨日の生放送。お前も見た?」

    Eはああと頷き、また、一瞬呆れたような顔をした。その表情は誰も気が付かなかった。

    D「よし。それじゃ揃ったし。また課題をやりつつ、今度出かける準備でもしよっか」

    彼らは今度、近所のプールに遊びに行くらしい。祭りや打ち上げ花火を見に行く約束もしていた。

    課題を進め、夏の定番的な遊びをする日々が続いた。

    その間にもUはバーチャル配信者として実力を確かな物にしていた。彼らが集まった時、Uが話題に上がらないことが無かった。
  12. 12 : : 2020/08/10(月) 18:26:12

    ~幕間 その1~

    U『ワタシたちは“知る”星の者だ』

    U『ワタシたちという生き物を知り、他の生き物を知り、宇宙に煌めく星々を知る……』

    U『ワタシたちはそのために宇宙を旅している』

    U『今は地球のある天の川銀河の調査の為、港となる惑星を探している』

    U『陸地があれば大体なんでもいいんだ。ワタシたちの宇宙服は優秀だからな』

    U『地球は非常に良い環境だが、既にワタシたちと同じ“知る”者があった』

    U『それがアナタたち地球人類であり、友好関係を築きたいと考えている』
  13. 13 : : 2020/08/10(月) 18:27:23

    事が起こったのは、夏休みも中頃。世間ではお盆休み手前といったところだろうか。

    C「ね、Uの映画レビュー動画、Dのお父さんが話題に出てたね」

    Uが言及していた映画は、Dの父親が主演で出演しており、彼の演技が高く評価された作品だった。

    D「うん」

    Dは少し照れくさそうに笑って頷いた。

    U『主演俳優の演技は素晴らしいものだ。是非映画館とやらで見てみたいし、本人にも演技について聞いてみたい』

    そう言われるのは、やはり息子として嬉しく、誇らしいものだった。

    A「お父さん、本当に凄いもんね。かっこいいし」

    E「オカンの方も凄い演技するよな」

    決して驕るわけではないが、両親の事は本当に誇りだった。

    そしてそれを知ってなお、普通に接してくれる4人の存在がありがたかった。

    D「照れるなあ。本当に、ありがとう」

    そのような会話があった日の晩である。4人を見送り、夕飯の準備をしていたDの携帯に電話がかかってきた。

    Cの母親からである。Dは手を止めた。
  14. 14 : : 2020/08/10(月) 18:27:55

    C母「こんばんは、D君」

    何だか不安そうな声だった。

    D「はい。Dです。なんでしょうか」

    C母「Cはまだそちらにいるの?」

    D「確かに帰りましたよ。見送りもしました」

    彼女の不安そうな声の正体がわかってしまった。Dにも恐怖が伝播する。

    D「帰って……ないんですか」

    恐る恐る聞くと、受話器のむこうでCの母親が受話器を強く握りしめたように感じた。

    C母「……そうなの。警察に連絡する前に、確認しようかと。他の子にも聞いてみるから、もしかしたら、他の子のお家にも寄り道しているかもしれないし」

    そう言い放つ声には余裕が無かった。息子が遅くまで帰ってこないとなれば、当たり前のことだ。

    C母「それじゃあ、息子が帰ってきたら、すぐ連絡させるから。夜遅くにごめんなさいね」

    D「いえ。自分からも連絡してみます」

    電話を切り、急いでメッセージアプリでCにメッセージを送った。

    D『今どこにいる?』

    D『お母さん心配してるよ。俺も心配だぞ』

    Cは基本的に、すぐに返信をするし、できないなら既読をつけるか、適当なスタンプを送るなり、メッセージを読んだことを何かしら反応を返す。

    しかし、何もない。試しに電話を掛けてみるが、延々に呼出音がなるだけだった。留守番電話も残せない。

    Dは携帯を強く握りしめた。

    夕飯は喉を通らなかった。返信や電話を待って、眠れなかった。

    AやBやEから、グループチャットに沢山メッセージが書き込まれたが、Cからの反応は一切無かった。
  15. 15 : : 2020/08/10(月) 18:28:29

    そのまま翌日になり、Dは寝不足で部活動で学校へ向かった。駐輪場には偶然Eがいた。

    E「なあ、Cは」

    D「全然。朝になっても何も残されてないよ」

    Eも相当混乱しており、指先が少し震えていた。

    E「俺たちじゃ何にも出来ないのかよ」

    昨晩家族に何か言われたのか、わなわなと震えながら声を絞り出すように言った。
    DはEの手を取った。

    D「Cにはこまめに電話とか、メッセージを送ろう。これも十分、出来ることだよ」

    慰めになっただろうか。DはEの顔を覗き込んだ。Eは慌てて顔を背けていたが、少しだけ希望を感じているように思えた。

    結局、その日も、次の日も、Cからの音沙汰はなかった。警察に捜索願が出され、かなり力を入れて捜索していたが、Dの家から出ていってからの情報が一切得られていなかった。

    Cが失踪して5日経った頃、4人は再びDの家に集まっていたが、その表情は絶望に打ちひしがれていた。

    E「思ったんだけどさあ」

    重たい口を開け、第一声を放ったのはEだった。

    E「Uが関係してるんじゃないかって」
  16. 16 : : 2020/08/10(月) 18:29:22

    突拍子もない事に、Bは声を荒らげた。

    B「はあああ?何でそう思うんだよ?根拠ねーんだろ?」

    AがBを宥めるも、Eには説明を求めた。

    E「Cはずっと、Uの話、してて、それで考えて」

    Eは顔を伏せたまま、丸めた背を更に丸めて、自信なさげに呟いた。

    E「Uは本当に宇宙人なんじゃないかって」

    Aは口をポカンと開けていた。すると、Bがまた興奮したように捲し立てる。

    B「Uは関係ないだろ。お前がUの事好きじゃないのは知ってたけどよ」

    B「Cが好きだったヤツのことそういうのはさ、Cにも失礼なんじゃねーの。皮肉屋だとは思ってたけどさ、そんな酷いやつだとは思わなかったよ」

    E「お前!!」

    興奮したBに釣られてか、Eも顔を真っ赤にして反論した。AとDはどう止めたらいいか困っていた。

    E「俺だって、こんなこと言いたかなかったよ。でも、Cがアレの話ばかりしてたのを考えると、それしか引っかかるものないだろ」

    A「2人とも、熱くなりすぎだって」

    Aが止めに入ると、Eはそのまま荷物を持って帰ろうとした。

    E「お前と俺じゃ、見えてる物が違うんだよ。わかってた」

    そう吐き捨てたEの顔は、改めて見ると少々やつれているように見えた。

    B「……」
  17. 17 : : 2020/08/10(月) 18:29:43

    しんとしてしまった部屋に、気まずい空気が漂う。

    D「ねえ、B」

    B「なに」

    Bは明らかに不機嫌だったが、一呼吸置いて少し落ち着いていたようだ。深いため息をついている。

    D「明日も集まる約束してたよね。謝ろ」

    A「2人とも、Cを思ってぶつかったんだもんね。だから、お互い謝った方がいいよ」

    以前からBとEは時々意見を対立させ、AとDは事の治まるのを見ていたが、今回ばかりはそうはいかない。

    B「……」

    Bには、反省と後悔と、しかし譲れない怒りが身体中に表されている。

    D「Cが帰って来た時、喧嘩しっぱなしじゃ格好つかないだろ?Bも嫌じゃない?」

    5人の間で喧嘩が起こることはあったので、DもAも対処法を承知している。

    B「……まあ、うん。言いすぎた」

    5人はいつだって仲良しだった。クラスが別れても、喧嘩したとしても、必ず自分たちで解決してきた。
    Cの顔を思い出して、Bはかなり落ち着いていた。Eの言うことを真っ向から否定したのは良くないと。

    B「でも、先にEが謝ったらな」

    だからといってどちらが先に謝罪すべきかは譲れないらしい。

    A「はは……相変わらず頑固なことで」

    Aは肩を竦めた。Bは少し顔を緩めた。

    D「このままいてもアレだし、帰ろっか」

    AとBは荷物を纏めて帰り支度を始めた。すると、Bが何かを見つける。

    Eのボールペンだった。かつて5人が家族ぐるみでテーマパークに出かけた時、Bが贈ったものだった。

    D「預かっとこうか?明日も来るでしょ?」

    Bは首を横に振って、ボールペンを大事そうに握った。

    D「そう」
  18. 18 : : 2020/08/10(月) 18:30:41

    ~幕間 その2~

    U『ワタシたちの美醜感覚はまさに十人十色である』

    U『自らの美しさに従順でありたい者、自分の求める可愛いものを集める者、様々である。また、他者のその感覚に興味は薄い』

    U『ワタシたちは寿命を克服し、他者への愛が繁殖を目的としたそれでは無くなったからだろうか』

    U『ああ、ワタシの好ましく思う者?』

    U『そうだな、地球人に伝わるよう言うなら、以前レビューした映画の主役の男性や、その妻なんかは非常に好ましいな。ワタシ好みの顔だ』

    U『面食い?ふふ、オマエたちは他人の好みが気になってしまうんだな』

    U『大丈夫。オマエたちの中にも好ましい顔の人間はいるよ』
  19. 19 : : 2020/08/10(月) 18:32:01

    次の日になって、約束の時間になってもEが来なかった。

    B「俺のせいだ……」

    Bは俯いたが、Aが肩に手を置いて言った。

    A「おかしいよ。電話もメッセも無いなんて」

    集まりの約束に来られないならきちんと連絡する。これは5人が初めて知り合った頃に、徹底しようと約束したことだった。

    D「家の電話にも掛けてこないね」

    掛け時計の音が嫌にうるさく響いた。しばらくの無言の後、Bが勢い良く立ち上がった。

    B「Eの家に行ってみる」

    Aがえっと声を上げて止めようとするが、Bは制止を振り切って出ていってしまった。

    A「往復で20分位かかるじゃないか……」

    D「気長に待とう」

    再び部屋が静かになり、時計の音だけがカチコチと鳴っている。

    D「実際、Eの言ってたことってどう思うよ」

    Aに質問を投げかけるが、Aは唸って結局わからないと首を傾げた。

    D「そうだよなー……。でも、妙に引っかかるというか」

    A「そうなの?突拍子もないし、Bがムッとするのも分かるな」

    Uの人気は凄まじく、その作り込まれたキャラクター故に、SNSではUが本当に宇宙人なのではないかと考察する者もいる。

    しかし、Eが創作と現実の区別を間違えているようには見えなかった。だからといってUの存在は無視出来ない。ないのだが……。

    などと言うように、考えは堂々巡って答えは出ず。

    2人で唸って何分か。Aの携帯が鳴った。呼出音がやけにけたたましく聞こえた。電話の主はBだった。

    A「はい」
  20. 20 : : 2020/08/10(月) 18:33:31

    応答するも、荒い呼吸だけでBは何も言わなかった。

    A「……?Bなんだろ?どうしたんだよ」

    B『ぁ、Eの、へやで』

    それはあまりに力なく、か弱く、何かに恐れる声だった。

    B『Eが、し……。死……ん…………』

    目を見開いたAを見て、Dも尋常ではない様子を察した。2人は顔を見合わせ、Aは通話をスピーカーに切り替えた。

    A「Eがどうしたんだよ、何があった!?」

    B『ぅ、あ……首を……く、びが……』

    辛うじて聞き取れる音声を拾った瞬間、最悪を想定した2人。Dがすかさず声を上げた。

    D「今からそっちに行く。今はEから目を逸らすんだ。直ぐに行く」

    B『あぁ…………』

    返事ともため息とも取れる声を聞き、携帯をAに渡す。Aは通話を切らずに鞄を持って立ち上がった。

    Dの自宅から出て、自転車を出した。Aも停めていた自転車に乗り、少し躊躇ってワイヤレスイヤホンを携帯と繋いだ。鞄を前カゴに乱暴に突っ込み、ペダルを漕ぎ出す。Dも後に続いた。

    呻くBに対してAはひたすら安心させるようなことを言い続けた。

    数分して、Eの自宅に着く。大きめのアパートの一室の戸が開いていた。部屋番号がEの住所だった。

    A「B!!」

    自転車を停めて大急ぎでBがいるだろう所へ向かう。

    開け放たれた玄関も、そこから見える部屋も整っている。EとBの靴が並んでいた。

    Aが先に立って、恐る恐るEの部屋の戸を開けた。
  21. 21 : : 2020/08/10(月) 18:35:31

    D「ひっ……」

    A「あ」

    2人は思わず顔を覆った。

    Eは悲惨な状態だった。ブラインドの紐で首を括ったのか、床にだらんと四肢を投げ出している。辺りの床には汚物が垂れており、耐え難い悪臭が充満していた。

    最悪の想定が当たったことに、AもDも言葉を失っている。先にいたBは携帯を握りしめ、呆然と立ち尽くしていた。

    A「ああああああああああああ!!!!!」

    惨事に耐えきれなかったAが叫びを上げた。

    扉が開いていたのでより響いたのか、隣の住民が現れた。玄関から女性の大声が聞こえた。

    騒ぎを聞きつけた隣の部屋の住人が、救急車と警察を呼んでくれた。また好意で住人の部屋で落ち着かせてもらっていた。

    救急隊が来て、隣の部屋が慌ただしくなり、3人は身体を縮こませた。

    女「大丈夫……じゃないね」

    隣に住んでいた女性が、冷たいジュースを出してくれたが、誰も手をつけなかった。

    遅れてやって来た警察に、女性が対応しに行く。

    女「きっといろいろ聞かれるかもだけど、辛かったら無理しなくていいからね」

    3人は頷き、部屋に残された。氷が溶けてグラスの中で音を立てる。

    A「うぅっ……」

    Aが肩を震わせて涙を流した。Bは正座して、ズボンの裾をぎゅっと掴んで身体を震わせている。Dも悔しそうな顔を浮かべて俯いている。

    女「今はあの子たちもショックを受けているでしょうから……」

    外から話し声か聞こえる。女性はかなり良くしてくれて、それが余計に切なかった。

    B「俺のせいだ……俺が……」

    唇を震わせながら言う。酷くか細い声だ。
  22. 22 : : 2020/08/10(月) 18:37:02

    D「違うよ。BもEも悪くないって。昨日言ったでしょ」

    Dが反論するが、Bは真っ白な額に汗を流している。

    B「でも俺、Eをあんな風に否定して」

    D「うーん……」

    そんなことで自殺をしてしまうのか、と軽々しくも言えない。どこかでのストレスの積み重ねに、今回の喧嘩が後押しになってしまったのかもしれないから。
    かと言って自殺の原因が昨日の喧嘩だと肯定は出来ない。

    女「ごめんね」

    女性が戻ってきた。

    女「警察の人が、誰か1人でもいいから少しはお話を聞きたいらしいんだけど」

    女性は3人の様子を見て、無理そうだと判断しかけたが、Dが小さく胸の所で手を挙げた。

    D「あ、俺行きます」

    女性が心配したが、Dは彼女に会釈をして、警官の元へ歩いていった。

    D「2人をお願いします」

    警官からは、最近のEの様子を聞かれたが、Dはわからないとだけ答えた。実際わからないので、そう答えるしかないし、警察も納得していた。

    Eの母親が早く帰って来た。事実を聞かされた母親は、小さな叫び声を上げて泣き崩れた。
    詳しい事はそちらに聞くからと、3人は早々に帰された。女性に礼を告げて、それぞれの自宅に帰った。
  23. 23 : : 2020/08/10(月) 18:38:25

    その日の晩、3人はそれぞれ、もはや習慣となったUの動画を見ていた。今日は生配信らしい。

    U『ワタシたちの宇宙船は大きな多面体だが、形としてはマーブルチョコレートを想像してもらうとわかりやすいだろう』

    今回はUの乗ってきた船の話だ。

    U『乗組員はだいたい1500人前後が生活している』

    U『司令、操縦、研究、製作、戦闘エトセトラ。この船で出来ないことはない』

    船が如何に優れているか話したが、突然ハッとしてから笑い、話を続けた。

    U『そう言えばワタシの役目を教えていなかったな』

    U『ワタシの父は船長だ。つまり1番偉くて、ワタシは父にとって不要な情報を記録するのが仕事』

    U『例えば父はこの船を守るために脅威有り得るもこを、記憶し、また予測せねばならない』

    U『ワタシは他の文明や文化を記憶して……ん?』

    Uが横を向き、しばらく動かなくなる。チャット欄が心配のコメントで埋め尽くされる。

    U『父よ!今は活動中だ!邪魔しない約束だっただろう!』

    動き出したUは酷く取り乱している。

    『◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼』

    得体のしれない声が聞こえた。低く、腹に響くような音。しかも一切の発音が聞き取れない。

    U『しかし父よ、時間はまだあるはず!』

    『◼◼◼?◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼』

    父と呼ばれたそれは、何かを喋り続けている。チャット欄は困惑に包まれている。

    U『父よ……。どうしても、やらねばならぬのですか』

    『◼◼。◼◼◼◼◼◼◼◼』

    深刻そうな会話に、親フラキタ!などと盛り上がったコメントも静かになった。

    U『いくら何でも早すぎる』

    『◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼』

    U『……分かりました。それまでには何か考えておきます』

    声は聞こえなくなり、Uは何かを確認すると、進行を再開した。

    U『申し訳ない。父は頑固なんだ。船長だからな。逆らえないし』

    U『今日は早いがここまでとする。代わりに後で没にした短い動画を上げておこう』

    チャット欄には錯乱したようなコメントが幾つか残されていた。Uは気づかなかったようだが。
  24. 24 : : 2020/08/10(月) 18:40:29

    3人が次に会う約束は2日後だったが、次の日の晩に、自宅にいたAに電話があった。Bからだった。

    A「はーいもしもし」

    B『A。Eは正しかった』

    Bは突然そう切り出した。

    B『確かに見えているものが違っていて、それは理解すべきものでは無かったんだ』

    AはまたBの小難しい話かと思って聞いていた。何かSF小説でも読んでいたのかと。

    B『理解してから、視線を感じるんだ。彼女の特性を考えても、感じるはずないのに。』

    A「B?」

    B『1日耐えては見たけれど、さすがに明日は迎えられそうにない』

    A「もしかして。B!おい!どうしたんだよ!?」

    B『向こうでEに謝るから、先にお前に言っとくよ。あと、こっちにはくるな。』

    Bの言っている意味がわからず、嫌な方に解釈してしまう。しかもそれが当たっているように思えた。Aは必死に何かを言おうとするが、Bの名前しか出てこない。

    B『ああ、もう、視線が。見るな。何か聞こえたら電話を切るんだ。見るな。う、次に、会えたら。いいな』

    支離滅裂な言葉の途切れ。直後、酷い叫び声と鈍い音がした。嫌な予感がした。

    A「B!!待って!」

    勝手に電話が切れてしまった。今、自宅には誰もいない。両親は結婚記念日で旅行中である。時間は夜の11時を回っており、今からBの家へ向かうのは難しかった。

    AはBからの再びの電話を待って夜を過ごした。
  25. 25 : : 2020/08/10(月) 18:41:15

    ~幕間 その3~

    U『他の生き物を滅ぼしたことがある』

    U『カレらは非常に恐ろしい生き物だった。問答無用で襲いかかってくるんだ』

    U『ワタシたちの容姿が悪かったのかと、認識フィルタを使ったが、効果はなかった』

    U『宇宙を旅していると知的生命体に遭遇することが稀にあり、しかし良好なコミュニケーションをとるのは難しい』

    U『完全に敵対してしまった時、お互いに残された選択肢は、分かりやすく言えば“食うか食われるか”』

    U『つまりワタシたちは勝利し、カレらは滅びた。カレらは通りがかった船を襲い、それ使われた技術を盗んでいた』

    U『宇宙はそんなことだらけだ。知的生命体が跋扈する星域もあれば、天の川銀河みたいに知的生命体が非常に少ない場所もある』

    U『知的生命体の多い地域は本当に大変だ。戦わなければ生き残れない』
  26. 26 : : 2020/08/10(月) 18:42:53

    翌朝8時頃になって、Aは急いでBの自宅に向かった。Dにメッセージを送り、先にBの様子を見ようと誘った。

    Bの自宅前には、警察車両が止まっていた。

    嫌な予感が当たってしまったようだった。Bの家に急いで近づいた。

    「この先はダメだよ」

    警官が規制線を張っていたが、制止を振り切って家に足を踏み入れた。怒鳴り声が聞こえたが、なりふり構っていられなかった。

    すえた臭いが鼻につく。これは覚えがある匂いだった。Bの自室のドアを開けた。

    A「っ!!」

    「君、困るよ」

    ベッドに倒れていたBは変わり果てていた。暴れたのか部屋は荒れ、辺りに血痕が飛び散っている。

    身体中が刺傷と引っかき傷まみれで、特に目元や胸元が重点的に傷ついていた。苦悶の表情は痛みを想像させる。

    A「ああっ、ああああああああああ」

    Aはその場で泣き崩れ、追いかけてきた警官に身体を掴まれようやく立てた。

    「だから止めたのに。君、歩けるかい」

    そのまま泣いているAに、警官はため息をつき、外に連れ出した。

    警官は叱ろうと思ったが、Aの哀れな様子に何も言えなかった。

    遅れてやって来たDがAを見つける。他の警官に話して、Aの所までは行かせてもらった。

    D「A。この騒ぎはもしかして……」

    Aは頷いて涙を拭った。それでもまだ涙は溢れる。

    「君たちはあの子の友達?」

    D「はい。でもこんな事になったのは今知りました」

    Eの時のように幾つか質問をされる。Aも話せる状態ではなかったが、警官が察して、はいかいいえで答えられる物に質問を絞ってくれた。

    別の警官が来て、幾つか警官に言葉を残した。警官は首を捻る。

    「ええ?他にもお友達がこの短期間で行方不明に自殺……?」

    先程まで優しい顔つきだった警官が、厳しい目付きになる。Aはビクリと身体を揺らし、それに気がついた警官が慌てて表情を戻した。

    「今度、落ち着いたらまた話を聞いてもいいかな」

    AとDはこくんと頷き、Bの自宅から離れた。
  27. 27 : : 2020/08/10(月) 18:43:32

    D「明日まで確か家で1人でしょ」

    A「うん」

    D「元々花火見に行く予定だったし、泊まりに来なよ」

    A「……うん」

    一旦Aの自宅に寄ってからDの家に着いた。今までは課題をやりながら雑談していたが、そんな余裕はない。昼間はDの自室で、ただ2人で静かに過ごしていた。

    夕方になって、早めに熱いシャワーをそれぞれ浴びた。リビングダイニングに移動して、冷凍のピザを温めた。コメディ映画を観ながら食べた。2人ともピクりとも笑わなかった。

    携帯に通知が来た。Uの動画投稿のお知らせだった。普段とは違う時間の通知に、2人は驚いた。

    Dがテレビに繋いでウイチューブを見た。配信タイトルは『大切なお知らせ』。気分は乗らなかったが、少し気にはなったので、見ることにした。
  28. 28 : : 2020/08/10(月) 18:44:54

    U『いつもと違う時間にごきげんよう』

    U『長い挨拶は苦手なので、要件だけ伝える』

    U『本日、ワタシたちは人類を滅ぼす』

    U『以前より決まってはいたが、ワタシはそれを止めるために活動してきた』

    U『しかし、父を説得するだけの一手が得られなかった。ワタシの至らなさ故だ』

    U『日付変更線が0時を回る時、ワタシたちは現れる』

    U『それから、何とか父に言って、ヒトそのものは生物として保護する動きで話が進んでいる』

    U『つまり、ヒトという生物は完全に抹消しないので安心してほしい』

    U『人類を滅ぼす理由……か』

    U『ワタシたちを傷つけないため、と父は言っていた。父の言うことは、いつも正しいが、いまいち要領を得んな』

    U『まあ、つまりだ。アナタたちが愚かだからでも、脅威たりえるからでもない』

    U『ただ、ワタシたちが地球人類を発見してしまったのだと解釈してくれ』

    U『人類に非はない。ただ不運だっただけだ』

    U『話は以上である。父の手伝いがあるからな』

    U『ああそれと、光は避けることなく。それではさようなら』
  29. 29 : : 2020/08/10(月) 18:46:41

    5分にも満たない短い動画。ものすごい勢いで視聴回数のカウンターが増えている。

    Dは引退報告か何かかと一瞬考えたが、どうも様子がおかしい。引退報告にしても物騒で歪曲した言い回しで誤解が生まれそうだった。

    動画のコメント欄も困惑に包まれている。既にSNSでも話題に上がりつつあり、Uの存在を信じている人、非難する人、宇宙人に関する考察を述べる人、ただ野次を投げている人。様々な反応が飛び交っている。どれも深刻な状況であると考える人は少ないが。

    Uは異常に人気だったが、それはバーチャル配信という世界の話であり、その領域を超えてしまえばUを知るものは極端に減る。Uの人類滅亡宣言は、インターネットの三文記事になるのが関の山であり、街ゆく人々や、何か組織の上層部の人間が気に留める様な事にはならなかった。

    A「もしかして……本当に?」

    しかし、身の回りで惨事の起きた2人は彼女の話を全く信じられないわけではない。
    AがDを見る。お互い不安な顔だった。

    D「……辻褄は合うのかもしれない」

    Dはそう言うが、内心ほとんど確信に近いものがあった。Uの今までの発言を思い返すと、彼女が宇宙人だと思った方が納得がいくのだ。

    本業の人が集まって活動しているものと思われていたが、それでも厳しいものがあるので、やはり本当に宇宙人なのではないかとまことしやかに囁かれていた。

    2人はただ、Uの言った時間を待つしかなかった。それが嘘なら1番いい。

    事実だった時は、きっと祈るしかないだろう。

    再び静かに時間が過ぎていくが、先程までの静寂とは違う。嫌な緊張感があり、冷房がしっかり効いているというのに汗がじっとり滲んでくる。
  30. 30 : : 2020/08/10(月) 18:47:31


    ひゅー、どどん。


    Aが肩を跳ねさせる。Dが窓際に立ちカーテンを捲ると、暗くなった空に大輪の花が散っていた。

    A「ああ……」

    みんなで見ようと約束していた花火大会が始まったらしい。本当だったら、5人で会場で花火を楽しんでいたのだ。

    Cも帰ってこず、EとBは錯乱して命を絶ってしまった。きっとこの晩を超えた先、2人は傷を負って生きていくしかないだろう。

    そんな気持ちとは関係なく、沢山の花火が夜空を彩る。赤、黄、青、緑、また赤……。菊、牡丹、冠、千輪菊。絶え間なく花火が上がる。

    D「綺麗だよ。A。外に出よ」

    Dが、ダイニングのソファーに座ったまま花火を見ているAを手招く。窓を開けて一緒に庭に出る。涼しい風が吹いている。

    外に出ると一層花火の音と光が際立った。

    Aは静かに涙を流した。Dも目尻に涙を溜めたが、袖で拭って誤魔化した。

    A「Cは見てるのかな」

    D「BとEも見てるよ」

    今夜で1番大きな花火が上がった。
  31. 31 : : 2020/08/10(月) 18:48:55

    花火大会が終わった。

    AとDは暗くなった庭でお互いを見た。

    A「ねえ、やっぱり本当に」

    D「分からない」

    Uの動画を思い出した。きっと彼女の口振りからして、これから惨いことが起きるだろう。

    A「逃げよう!」

    Aは勢いよく言った。表情も体も酷く強ばっていた。

    D「どこに逃げるのさ」

    Dは冷静だった。冷静を装わざるを得なかったとも言えようが。体は小さく震えていた。

    A「何か、あるでしょ!丈夫な地下室とか──」

    言い終わるやいなや。

    閃光。

    2人は再び庭の外を見た。

    二度目の閃光。

    D「!!」

    顔を見合わせて、2人は急いで階段を登り、見晴らしの良いDの部屋のベランダに出た。

    Aはベランダの縁に身体を乗り出して辺りを見回した。

    A「海の方に……」
  32. 32 : : 2020/08/10(月) 18:49:56

    Aの指さしたのは、水平線の遥か彼方にうっすら見える物体。

    巨大な多面体。明らかな人工物が宙に浮いていた。ぼんやりとした輪郭の物体は、船とかけ離れた姿だが、船と呼ぶのがぴったりだった。

    Uが言っていた船の特徴に一致しているように見えた。

    D「ああ……」

    1番大きな船には小窓があるように光が点滅し、その光からまた小さな多面体が飛び立っていた。

    小さな船はあらゆる方向に飛び、下に橙色の閃光を放っていた。それらは大きな船を中心に、光を放ちつつ同心円状に移動していた。

    A「やっばりUは宇宙人だったんだ」

    一度眠った街が再び目を覚ました。家々は明かりを灯して、住人たちが当たりを見回している。

    犬や猫、鳥たちもけたたましく鳴き声をあげていた。

    間もなくして、閃光が近くで弾けるようになってきた。すると、誰かの叫び声が聞こえてきた。

    D「……!」

    Dは声にならない叫びをあげていた。

    小さな船から発せられる光は、人間を分解しているように見えたのだ。

    逃げ惑う人々に、船は容赦なく光を浴びせる。一瞬の内に肉体が器官に、組織に、果ては細胞にまで分解され消えていく。

    そんな恐ろしい物体が、空を埋め尽くさんばかりに飛び交っている。

    絶望的だった。Uの言っていたことは全て事実で、人類に抵抗は不可能だった。

    せめて痛みの無いよう、光に抵抗しないことだった。下手に動くと一部だけが分解され、酷い有様になっている人が見えていた。
  33. 33 : : 2020/08/10(月) 18:50:55

    U『光は避けることなく』

    その言葉の真意は、こういうことだったのだ。下手に動くと分解が上手くいかないのだろう。

    きっと喜んで光に向かった人は、Uの動画を見ていたか、察しがいい人間だったかだろう。

    A「D!何か近づいてくる……!」

    Aが叫び、目を向けた先に、少し意匠の凝った中型の船があった。一直線にDの自宅上空を目指している。

    2人とも息を呑んで船の動きを注視する他無かった。

    Dの自宅上空にたどり着いた船は、周囲を回って、Dを見つけるとベランダに乗り付けたように見えた。

    船の下側が開き、立ち乗り二輪車の様な乗り物が出てくる。そこには、どのSF創作にも該当するようでしない、不思議な造形の宇宙服を来た人型の生物が乗っていた。

    「大気成分オールグリーン。ヘルメットオフ」

    この夏聞き馴染んだ声がした。

    A「この声!」

    D「本当に……」

    2人の驚愕の表情に、生物はにまりと笑ったように見えた。

    U「初めまして。ワタシはU。“元”バーチャル配信者だ」

    Uと名乗ったそれは、頭部だけ確認出来る。確かにUと共通点があるものの、ヒトとは明らかに違う生き物だった。

    Uの頭髪と同じ青白く薄い体毛。発達した尖った大きな耳。後頭部には触角が生えているが、先端は宇宙服の中で見えない。大きく丸い瞳はネコ目だがヤギのような瞳孔。口は小さな嘴状。

    何が進化したらこのような知的生命体になるのだろう。
  34. 34 : : 2020/08/10(月) 18:52:02

    A「あなたが、U!?」

    U「そうだ」

    首肯するUは、宇宙服の首元のスイッチを押した。すると、再びヘルメットが展開され、ガラス面に動画で見たUのアバターが表示される。

    U「ワタシはまどろっこしいのが嫌いなので、手短に話をしよう」

    Uは言いながらヘルメットをまた外す。乗り物から降りて、ベランダに立つ。同じ地面に立つとUの身長がかなり大きいのが分かった。180cm程はあるだろうか。

    U「ワタシはね、キミを迎えに来たんだ」

    Dが指さされる。言われた意味が分からなかった。

    D「何の……ですか」

    U「ヒトの保護のためさ」

    確かに、彼女は夕方の動画でそんなことを言っていた。しかし、まだ要領を得ない。

    U「ヒトを完全に絶滅させたくないので、父に何とか譲歩してもらったのさ」

    父とは、先日の不思議な声の持ち主だろうか。Aは必死に思い出そうとしていた。

    U「ヒトを完全に管理した状態なら、いくつか保護をしてもいいと」

    AとDを一瞥して、UはDをじっと見ている。

    U「そして、沢山のヒトを保護する中で、キミはワタシが直々に管理すると決めた個体だ」

    UはDの肩を掴んだ。宇宙服は硬い感触だった。

    A「あ、じゃあDは生き残れるんですか」

    U「そうだ。良かったね。友達は生き残れるんだ」
  35. 35 : : 2020/08/10(月) 18:53:13

    言い回しに引っかかったDは、すぐに察して大声を上げた。

    D「その言い方だと、Aが生き残れないみたいじゃないですか」

    U「みたいじゃない。生き残れないんだよ」

    Aは何となく察していたようだった。Dは改めて聞かされて、体から力が抜けていくのを感じた。

    D「どうしてっ……」

    絞り出す様な問いに、Uもまた苦しそうに答える。

    U「キミを選んだ理由はいずれ。カレが選ばれなかったのは、まあ、ただ運が悪かったんだよ」

    Uは肩を竦めた。それは、仕方がないと諦めているような感じだった。

    D「なんだよ、それ」

    U「平均的な者から選ぶ時、無作為に抽出したからね。溢れてしまうものは出るよ」

    納得が行かなかった。Dは反論したかったが、Aは首を振った。Uはほほうと声を上げた。

    A「Uさんの言う通り、友達のDが助かるならいいんです」

    でも、とAは続けた。

    A「最期にいろいろ聞いてもいいですか」

    Uはどうぞ、とジェスチャーをした。

    A「最近になって、友達が3人いなくなりました。Cっていう子が行方不明に。BとEっていう2人が、自殺しました」

    U「不幸なことだね」

    A「これって、Uさんが関係していたりしませんか」
  36. 36 : : 2020/08/10(月) 18:54:26

    Uはしばらく考えた。すると、あっと声を上げる。そして目を伏せて、本当に申し訳なさそうにした。

    U「Cという人間なら、つい最近弔ったよ」

    Dが声を荒らげそうになったが、Aが制止した。

    A「Uさんが?」

    U「生物調査班の1人が、勝手に地球の知的生命体を誘拐したんだ。規則では禁止してたのに」

    Uは母船を眺めて、大きな目を細めた。そしてAとDに向き直した。

    U「そうか、キミたちの友達だったのか。本当に申し訳ない」

    Uは頭を深々と下げた。

    U「誘拐したヤツは今分解した状態で禁錮に処している」

    A「Cは、どうなったんです」

    U「遺体は保存して、ワタシたちの仕来りで青い花を捧げているよ」

    Uが花を1輪取り出す。淡く光る青い花。Uが息を吹きかけると、はらはらと光の粒になって消えていく。

    A「弔ってくれたんですか」

    U「そうだ」

    AとDはそれを聞いてほんの少しだけ理解が出来た。ただ、DはUを許せそうに無かったが。

    U「BとEという者についてたが……。これは察しの良さによるものだろうな」

    U「認識フィルタについては動画を見てくれたかな」

    他の知的生命体と接触するとき、好ましく思われやすい容姿に変換する技術。以前Uが話をしていた。もちろん2人はその動画を見ていたので頷いた。

    U「あまりにも察しの良い個体には、このフィルタは効き目が薄い」

    U「つまり、カレらはこのままのワタシを見ていた」

    Uはぎょろぎょろと大きな瞳を動かした。AとDも彼女の見た目にはまだ慣れておらず、眼球の挙動にぎょっとした。

    U「すると、見慣れないモノに恐怖する知的生命体は、いずれ発狂する」

    ここでやっと、BとEの言っていたことを理解した2人は、少しの間項垂れ、またUに向き合った。

    U「これも、日本では火葬されず遺体が残っていれば、回収して我々式に弔おう」

    A「そうだったんですね。ありがとうございます」

    Aは頭をさげた。
  37. 37 : : 2020/08/10(月) 18:55:59

    A「聞きたいことは終わりです。でもお願いが1つ」

    U「キミの友を思う心に敬意を表し、それを必ず叶えよう」

    Uは胸に右手を当て、右足を後ろに下げながら頭を下げ、左手を正面に掲げる。きっとUたち特有の誓いを表明する姿勢だろう。

    A「どうか、Dに痛い思いや、怖い思いをさせないでください」

    Uは姿勢を維持して聞いている。

    A「Dが苦しまず生きてくれれば、あとは何もいりません」

    A「もう思い残すことはありません」

    それを聞いたUは、姿勢を戻す。右手は胸に手を当てたまま、そのまま今度は地球式にお辞儀をした。

    U「そうか。こんなに誰かを思う人間はさっきぶりだよ」

    Uの目には涙が溜まっていた。美しい友情に感動したようにも、自分たちの行いに後悔しているようにも見えた。

    U「キミの肉体も、精神も、きちんと無駄にはしない」

    U「安心して逝きなさい」

    Uはヘルメットを付けて、Dを抱き上げる。そして乗ってきたものに乗って船へ戻る。

    D「待って!」

    Dは手を伸ばした。届くはずが無かった。

    A「じゃあね」

    Aは笑顔でゆっくりと手を振っている。

    D「待ってってば!おいU!止めてくれ!」

    DはUの頭や身体を叩いた。しかし堅い宇宙服も、Uも微動だにしなかった。

    U「それはできない」

    格納庫が開き、そこに収納される寸前、光がAを照らし、Aは笑ったまま分解されていく。

    肉体が器官に、組織に、そして細胞にまで小さくなる。

    D「ああ、あああ……」

    Uに降ろされたDは涙した。無機質な、侵略生物のいる場所で泣き崩れた。Uが肩に手を置くが、Dはそれを振り払った。

    D「絶対に許さない……!」

    Dの凄まじい怒気を孕んでいるもののか弱い威嚇に、Uは瞼を伏せて言う。

    U「ああ、それでいい。恨んでくれ」

    何と優しい、自分に向けられた敵意を真っ向から受け止める態度だろうか。
    Dは、Uが逆上するものと思っていたので、その涙を溜めた大きな瞳に面食らった。

    U「しかし、ワタシはA君との約束を果たすよ」

    それを聞いてしまえば、Dは自分の閉じた未来を受け入れるしか無かった。

    きっとそれがAの願いでもあるから。





  38. 38 : : 2020/08/10(月) 19:10:45

    地球は静かな翌日を迎えた。巨大な船は地球の表面を巡回した。

    船が通った後には、淡く光る青い花弁が散っていた。

    U「これは弔いだ。ワタシたちの勝手で滅ぼしてしまった生き物に対する弔い」

    青い花弁は日に照らされ美しく輝き、夜空で淡く光って儚く消えていく。

    U「もちろん、残っている生物にも配慮している。この船でしか繁殖しない花だからな」

    中型の船が、無人の都市を飛んでいく。

    U「これから地球は天の川銀河第一基地となり、ワタシたちが“知る”ための礎となるだろう」

    続々と船が地上へと飛んでいく。今度はきちんと着陸して。滅ぼすべき者がいなくなったから。

    U「キミが選ばれた理由を言っていなかった」

    Uは振り向いた。Dは平たい大きなクッションに座っている。

    U「確か、フランスにいた君の両親と先に会ってね」

    真っ白な部屋に貼られた地球の世界地図の、丁度フランスを指さした。

    U「最初はキミの両親を管理する予定だったんだ。文化を担うものとして、見た目も良く功績も大きかったからね」

    今度は壁棚のDVDを指さす。Dは少し視線を動かした。

    U「でも、キミの両親は、キミが選ばれない事を知って言ったんだ」

    Uの船で作られた服に包まれたDを見つめる。動かない。

    U「自分たちはどうなってもいいから、息子を助けてくれって」

    UはDの手を取った。手は暖かいが、ピクリともしない。

    U「キミの両親に言われて、そしてワタシが見てきた視聴者の中でとても良いヒトだった」

    優しく微笑みかけるが、Dはやはり動かない。息をしているのを確認し、Uは続ける。

    U「友に思われ、友を思い。両親に愛され、両親を愛する」

    Uが見つめると、Dは泣きそうな顔になった。

    U「そうでないヒトが悪いとは言わないけど、ワタシは愛された人を愛するよ」

    真摯な言葉である。Uは両手を広げてDを迎え入れる。

    U「そうでなければ、キミはここにはいなかったよ」







    そしていつか船は動き出し、宇宙の旅を再開する。






    遥か宙からやって来て、遥か宙へと飛び立っていく。








  39. 39 : : 2020/08/10(月) 19:15:42











    以上で完結です!いかがでしたでしょうか?

    フレンさんから頂いたお題は「夏休み」「花火」でした!

    以前から書きたかったものと、頂いたお題を合わせたので、夏休み感はふんだんに入れられましたが、花火の要素がたくさん入れられ無かったのが反省点です。

    私からは以上です。ぜひ他の方の作品も読んで、オリジナルコトダ祭りを楽しみましょう!!

    お疲れ様でした!

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tukurumono1151

豚骨味噌拉麺

@tukurumono1151

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