ssnote

x

新規登録する

作品にスターを付けるにはユーザー登録が必要です! 今ならすぐに登録可能!

この作品は執筆を終了しています。

アルミン「エレン、聞いて。伝えたいことがあるんだ」These:友人

    • Good
    • 3

loupe をクリックすると、その人の書き込みとそれに関連した書き込みだけが表示されます。

▼一番下へ

表示を元に戻す

  1. 1 : : 2014/01/01(水) 15:24:18
    12巻のミカサがエレンに「ありがとう」と言う場面が感動のあまり忘れられず、ついこれのいろいろなペアバージョンを妄想。…を投下します。

    シリーズ第4弾
    【エレン×アルミンver.】

    リクエストいただき、ありがとうございました☆
    のんびり投下、長さも未定ですが、見ていただければ嬉しいです!
  2. 2 : : 2014/01/01(水) 15:56:43
    [伝えたいことがあるシリーズ]←w

    第1弾【リヴァイ×エルヴィン】
    http://www.ssnote.net/archives/6228

    第2弾【エレン×リヴァイ】
    http://www.ssnote.net/archives/6266

    第3弾【エレン×クリスタ】
    http://www.ssnote.net/archives/6316
  3. 3 : : 2014/01/01(水) 16:23:52
    【エレン×アルミンver.】


    衰弱し巨人化できないエレンと、エレンを庇うように肩を抱くアルミン。二人の前に、巨人が迫る。助けに来たハンネスは、無情にも喰いちぎられた。


    エレン「ははははは!!」


    アルミン「エレン…!!」


    エレン「はははははは!!」


    エレン「何にも変わってねぇな!!お前は!!なんッッにも!!できねぇじゃねぇかよ!!」


    エレン「母さん…オレは何も…なんっにもできないままだったよ!!」


    アルミン「…」


    エレン「うあああああああ」


    巨人が二人を見てニタッと笑った。アルミンはその巨人と、エレンの苦しみ叫ぶ姿、周りの喧騒を呆然と見渡し逡巡した。

    が、やがて彼は微笑を浮かべ、エレンの顔を覗きこんだ。


    アルミン「エレン、聞いて。伝えたいことがあるんだ」
  4. 4 : : 2014/01/01(水) 17:37:29
    アルミン!
  5. 5 : : 2014/01/01(水) 18:55:56
    あ、柚子さん来てくれてた!!
  6. 6 : : 2014/01/01(水) 18:57:33
    アルミン「エレン…小さい頃から今日まで…壁の外の世界の話ばっかりの僕を信じてくれて、助けてくれて、ありがとう」


    アルミン「僕たちが危機に陥った時、迷わず、僕の考えを受け入れてくれて…頼ってくれて、ありがとう…」


    エレン「アルミン…」


    アルミン「何よりも…最後まで、僕の…友達でいてくれて…エレン…本当に…ありがとう…!!」


    エレン「…!!」


    微笑むアルミンの頬には涙が止めどなく溢れている。

    エレンは友人と目を見合わせながら、いつしか彼自身の頬にも、温かい筋が伝い落ちているのに気づいた。


    突然、エレンはアルミンを振りほどいて立ち上がった。
  7. 7 : : 2014/01/01(水) 19:42:03
    エレン「最後だなんて言うな!」


    アルミン「…!?」


    エレン「俺たちはまだ見てねぇじゃねぇか!!炎の水も…氷の大地もッッ…!!何にも!!」


    アルミン「エレン…!!」


    エレンは歩いてくる巨人に向き合った。


    エレン「俺がこいつらをぶっ殺して…」


    アルミン「エレン!!だめだッッ!!奴に捕まる…!!」


    エレン「壁もぶち壊して…」


    アルミン「戦うなっ…!!エレン!!」


    アルミンはエレンを巨人から遠ざけようとするが、アルミンの力ではエレンは止まらない。


    エレン「海を…!お前らと…うっ…!!?」


    アルミン「エレン!!!」


    巨人の素早い手が、とうとうエレンを捕らえてしまった。
  8. 8 : : 2014/01/01(水) 19:43:28
    すごい期待!頑張って
  9. 9 : : 2014/01/01(水) 19:51:12
    蘭々さん!お名前見たことあります感激です!
  10. 10 : : 2014/01/01(水) 19:52:40
    おおおお!すごそう。

    期待
  11. 11 : : 2014/01/01(水) 20:10:41
    はっ!雪座川さんも存じてますっ!感謝です!
  12. 12 : : 2014/01/01(水) 20:14:53
    エレン「うっ…!!クッソ!!離しやがれ…!!」


    アルミン「エレンッッッ!!」


    エレン「大丈夫だッッ…アルミンっ…うっっ!!!」


    巨人はニタニタ笑いながらエレンを掴んでゆらゆら体を揺らしている。

    エレンはその顔を、ギリギリと奥歯を噛み締め、睨み付ける。


    エレン「いいかああ
    ッッ!!よく聞け化け物ォォォッッ!!」


    エレン「俺はお前をッッ!!八つ裂きにして…!!細かくちぎって…!!ぐちゃぐちゃに…踏みつけてぇぇぇうああああああああァァァッッッ…!!」


    エレンの身体から、ビキビキッッと嫌な音が響いた。
  13. 13 : : 2014/01/01(水) 20:43:06
    アルミン「あ…ァァ…うっっ…」


    アルミンはへなへなと膝から崩れ落ちた。


    アルミン「…だ…だッッ…誰か…エレンが…エレ…」


    震える手で立体起動装置のアンカーを発射しようとするが、それは既に使い物にならない状態であった。


    エレン「うあああああああァァァァァ!!」


    アルミン「はっ…!!エ…エレンンンンンッッッ!!」


    アルミンは巨人に向かって走り出した。


    アルミン(エレン…君は…僕のッッ…!!)


    アルミン(大切な!!友達…だから…ッッ!!)


    アルミン「エレンを離せよ怪物があああああああッッ!!」


    その時、アルミンの頭上を影が飛んでいった。
  14. 14 : : 2014/01/01(水) 21:18:16
    ドォッッッゴオオオオオォォォォォッッッッッ!!!!!



    アルミン「なっ…!?」


    巨人がその影に張り倒され、エレンが落ちてきた。


    エレン「…ッはあっ!!ゴホッ…うっっ…!!」


    アルミン「エレンっ!!」


    アルミンがエレンのもとに駆け寄る。


    アルミン「一体何が…?」


    舞い上がる土煙の中目を凝らすと、その影は倒れた巨人のうなじを踏み潰し、とどめを刺したようだった。


    エレン「ハァハァッッ…アルミン…どうなってる…?」


    アルミン「…エレン、僕も…信じられないんだけど…」


    土煙が晴れ、それは影から実体へと変わった。


    アルミン「アニだ…」


    美しく整った筋肉。女型の巨人を纏ったアニ・レオンハートが立っていた。
  15. 15 : : 2014/01/01(水) 21:48:05
    アルミン「アニ…どうして…?」


    アニはエレンとアルミンの所へ近づいてきた。


    エレン「…ア…アニ…」


    アルミン「…!!」


    アニはひざまずき、エレンとアルミンの顔を覗きこむ。


    アルミン(アニは…またエレンをさらう気なのか…?)


    アルミン「アニ…」


    するとアニはスッと立ち上がり、壁のある方角へ走り去ってしまった。

    残された二人は、しばらく唖然としてへたりこむ。


    エレン「アルミン…アニが何で…俺を狙ったんじゃないのか?」


    アルミン「分からないけど…僕たちは、アニに助けられた…」
  16. 16 : : 2014/01/01(水) 22:20:22
    そこへ馬が3頭、エレンとアルミンのもとへ駆けてきた。


    ミカサ「エレン!!アルミン!!」

    ジャン「お前ら!生きてたか!!」


    アルミン「ミカサ…!ジャン!」


    リヴァイ「おい、エレンは生きてるのか?」


    アルミン「リヴァイ兵長…!…エレンは生きています、酷い怪我ですが…」


    ミカサ「エレン…よかった…」


    リヴァイ「ならいい。…なかなか持ちこたえたようだな…アルミンよ」


    アルミン「いえ…間一髪で助けられました…」


    ジャン「誰にだ?」


    アルミン「…女型の…アニ・レオンハートに…」


    ジャン「はぁっ?!アニは地下で水晶の中だろ?!」


    ミカサ「私たちが来た方では、女型には遭遇しなかった」


    リヴァイ「…チッ…それが事実なら、厄介なことになってるはずだ…」


    ミカサ「…アニは…エレンをさらわなかった…」


    リヴァイ「みてぇだな…とにかく、退却する。ミカサ、エレンを乗せろ。アルミンはジャンにつけ。急ぐぞ!」
  17. 17 : : 2014/01/01(水) 22:33:09
    また長くなりそうな予感…アセアセ

    50までで終わらなかったら新スレで続き落とそうかな…
  18. 18 : : 2014/01/01(水) 23:40:06
    リヴァイを先頭に帰路を急いだ一行が壁内に辿り着いた時には、すでにアニ失踪の情報が全ての兵士に伝達されていた。


    ジャン「…クッソっ…見張りは一体何してたんだよ…!?」


    アルミン「…水晶化を解いたとしても、地下では巨人になることはできない…アニが人間の姿のまま脱走したのは、おそらく間違いないと思う」


    ジャン「おい…それだと共犯者がいるってことになるぞ…?」


    リヴァイ「いたんだろ…」


    ジャン「…!」


    リヴァイ「現場に着きゃあ…まぁ全て分かるだろ」


    アルミン「…」
  19. 19 : : 2014/01/02(木) 00:50:18
    アルミン、ミカサ、ジャン、リヴァイがアニの拘束されていた地下に入ると、既にエルヴィンとハンジが控えていた。


    エルヴィン「ご苦労、リヴァイ」


    リヴァイ「…エレンとアルミンが女型に助けられたと言っている。その後行方をくらましやがったみてぇだが…」


    エルヴィン「…エレンは今?」


    リヴァイ「治療を受けている。巨人にいろんな骨を折られたんだそうだ…どうせすぐ治るんだろうが」


    エルヴィン「そうか」


    リヴァイ「それで…ここの状況は」


    エルヴィン「アニ・レオンハートの失踪が発覚したのが、監視交代の時間だ。次の監視に当たる兵士が発見した」


    ハンジ「発見当時既に、アニも当直兵士も姿がなかったらしい。もぬけの殻、ってやつだね」


    リヴァイ「当直兵士の行方も、まだ分からねぇんだな?」


    エルヴィン「ああ。その兵士は共犯の疑いが強いと思われる。彼女を収容していた牢獄に抜け穴は確認されない」
  20. 20 : : 2014/01/02(木) 02:15:38
    ハンジ「まったく、当直兵士の顔の確認くらいしっかりしてほしいよ…さっすが憲兵サマサマ」


    リヴァイ「…当直はいつも一人なのか」


    エルヴィン「そのようだ」


    リヴァイ「当直管理表の確認は」


    エルヴィン「済んだ。本物の当直兵士も現在行方不明だ」


    ハンジ「殺られたか…拉致監禁か…」


    リヴァイ「拉致した上で殺ってどっかに棄てたんだろ…俺ならそうする」


    ハンジ「リヴァイ…なんか君がやったみたいに思えてきた…」


    エルヴィン「…まあ、ここにいても、何も得られないということだ」


    すると突然、リヴァイがアルミンの方に視線を投げた。


    リヴァイ「おい、アルミン…何か思いつくことがあるか」


    アルミン「えっ?!僕ですか?」
  21. 21 : : 2014/01/02(木) 02:37:46
    推理小説かよ!!

    …っていうツッコミはナシなっしー!!ブッシャアアア←
  22. 22 : : 2014/01/02(木) 03:39:04
    わかったナッシィィィーーー!!ブッシャァァーーー
  23. 23 : : 2014/01/02(木) 03:43:49
    アレ?これってエレン無しでもいいの?
    なら今度はアルクリがいいな
    (まだ終わってはいません)
  24. 24 : : 2014/01/02(木) 04:13:56
    エレンなしで全然いいナッシィィィー!!

    てかそろそろエレン使いすぎてネタ切れなっしー!w
    アルクリ嬉しいなっしー!!ブッシャア
  25. 25 : : 2014/01/02(木) 04:17:04
    なお、伝えたいことがあるシリーズではBL要素ない模様…期待されてたら申し訳ないぇーがー…
  26. 26 : : 2014/01/02(木) 04:26:35
    リヴァイ「アルミンはお前だろうが…考えがあるなら進言しろと言っているんだ、お前…」


    ハンジ「アルミン、リヴァイに一目置かれるようになっちゃって。出世したねぇ!」


    エルヴィン「アルミン、それからミカサとジャンも、それぞれ考えがあれば遠慮なく話してくれ」


    ジャン「それは、たとえば…共犯者の目星や、アニの目的のことでしょうか?」


    エルヴィン「そうだね」


    アルミンは浮かない顔をしている。


    アルミン「…正直なところ、共犯者が誰なのか、見当もつきません」
  27. 27 : : 2014/01/02(木) 12:04:55
    リヴァイ「…その結論に至った考えを話してみろ」


    アルミン「はい。アニ側の人間として考えられるのは、巨人化できる人間だと推測されます…」


    アルミン「しかし、巨人化の能力を持つライナー・ブラウン、ベルトルト・フーバー、ユミルの3名は、僕たちと戦闘していたため、アニの脱獄に関わるのは不可能です…」


    アルミン「他にアニ側につきうる人間を考えるための情報も、僕たちにはありません…」


    ハンジ「私も、誰が誰と繋がってるか完璧に分かる人間なんていないと思うな…」


    エルヴィン「ああ、そうだな…ミカサとジャンは」


    ミカサ「アルミンに同じです」


    ジャン「俺も」
  28. 28 : : 2014/01/02(木) 12:32:10
    すごく面白いこのシリーズ
  29. 29 : : 2014/01/02(木) 13:06:00
    >28<(`°д°)/ さん

    うわぁぁぁめっちゃ嬉しいです!報われます…

    シリーズ化希望ペアがあれば申し付けてやってくださいね!
  30. 30 : : 2014/01/02(木) 13:09:09
    リヴァイ「あとは念のためエレンに確認して終いだな…奴がエレンを狙わないことはっきりしている。正直…」


    リヴァイ「わざわざ無駄死してまで追いかけ回す必要はねぇと思う…資料としてはもったいねぇが…」


    エルヴィン「ああ。一番はエレンを守ることだ。アニよりも自分たちの命を優先させるように」


    ハンジ「いろいろ考えるにあたって情報が必要なら、いつでも聞きにくるといいよ」


    アルミン「あの」


    エルヴィン「何だい、アルミン」


    アルミン「よかったら…後で当直管理表を見せていただけませんか?」


    エルヴィン「ああ、構わないよ。この後一緒に来たまえ」


    アルミン「はい!ありがとうございます」
  31. 31 : : 2014/01/02(木) 13:10:57
    こんにちは

    ユミベル

    レズならユミクリ
  32. 32 : : 2014/01/02(木) 13:53:45
    >31進撃の睡魔さん

    了解ユミベルいいですね!順次書いていきますね。

    エロ描写はないかもですが、ユミクリも練ってみます
  33. 33 : : 2014/01/02(木) 13:55:40
    廊下を6人でぞろぞろ歩く途中、ジャンがアルミンに耳打ちした。


    ジャン「おい…当直管理表見て何か分かることあるのか?」


    アルミン「いや…ただ、当直兵士の名前から何かつかめたらなって…望みは薄いけど…もし僕らが知ってる名前だったら…」


    ジャン「憲兵団に行った奴…俺もできるだけ記憶を漁ってみるぜ…」


    アルミン「心強いよ、ジャン」


    エルヴィン「では、私はアルミンを案内する。ミカサとジャンも早めに休むように」


    ミカサ「…わかりました」


    ジャン「失礼します!」


    リヴァイ「…ハンジ。行くぞ」


    ハンジ「うわぁぁぁリヴァイが私を拉致監禁するぅー!」


    リヴァイ「報告書をまとめに行くだけだクソメガネ…」


    ハンジ「嫌だあああああ」


    リヴァイ「うるせぇ!!」


    アルミン「ミカサ、ジャン!またあとで!」


    ここで各2人ずつに別れて歩き始める。


    ジャン「リヴァイ兵長も大変だな…ハンジ分隊長っていつもあんな感じなのか…」


    ミカサ「…あのチビには、あれくらい面倒がかかる方がいい。毎日じわじわ苦しむがいい…」


    ジャン「…エレンの見舞いに行こう…」
  34. 34 : : 2014/01/02(木) 15:07:21
    憲兵団支部内にある総務課の一画。


    エルヴィン「これだ」


    エルヴィンがアルミンに当直管理表を持ってやってきた。


    エルヴィン「納得するまで読みなさい」


    アルミン「ありがとうございます」


    アルミンはまず、アニ脱獄の日の当直兵士の名前、そして地下牢に出入りした人物全ての入退室時刻を丁寧に確認する。


    エルヴィン「見知った名前はあるか」

    アルミン「…え、あ、いえ…」

    エルヴィン「そうか…」


    新兵は当直兵士には当たらないことになっているのだろう。その他入退室も、エルヴィンやハンジなど一部調査兵団以外に知る人間は出入りしていないようだった。


    アルミン「エレン奪還戦出発の前に、団長とリヴァイ兵長も一度いらっしゃってるんですね」


    エルヴィン「ああ…そんなに疑わしそうに見られたら、緊張するな…アルミン」


    アルミン「えっ!?僕そんな顔してましたか?」
  35. 35 : : 2014/01/02(木) 15:10:34
    エルヴィン「構わないよ。君の智恵を借りるためだからね」


    エルヴィンは穏やかに微笑む。


    アルミン「だ、団長や兵長を疑うなんてことは…」


    エルヴィン「はは。その日は、定期的にアニの様子を監察する日だったんだが、エレンがさらわれたとの情報が伝えられてね」


    エルヴィン「急いで憲兵、駐屯兵を借りて君たちと共に壁外へと出向いたわけだ。忙しかったよ」


    アルミン「そうだったんですか…」


    エルヴィン「リヴァイはウォール教の司祭の監視ついでに、一緒についてきた」


    アルミン「司祭は今は…」


    エルヴィン「あまりにも何も得られないから、リヴァイとモブリットくんを交代させたよ」


    エルヴィン「あれぐらい口を割らないとなると、もはやリヴァイをつけている意味はないからね」


    アルミンは最後にアニ脱獄の日の内容を頭に入れるため、薄い管理表をしばらくじっと見つめた。
  36. 36 : : 2014/01/02(木) 15:50:42
    ミカサとジャンは、病室のエレンの所に顔を出していた。


    ミカサ「エレン、具合はいいの?」


    エレン「ああ…心配かけたな、ミカサ」

    ジャン「なぁ、お前らほんとにアニに助けられたのか?」

    エレン「あれは…間違いなく、アニだ」

    ジャン「アニが何をしたいのか、さっぱり分からなくなったなぁ…」

    エレン「団長たちは何て言ってるんだ?」

    ミカサ「アニの脱獄には共犯者がいると考えている。アルミンも同じ考えのよう」

    エレン「アニを地上に送りたい奴が壁の中にいたってのか…」

    ミカサ「そうなる。その者は見張りの憲兵とすり替わって、地下牢獄に潜りこんだと」

    ジャン「だがリヴァイ兵長たちは、アニに関して俺たちの方から積極的に仕掛けるつもりはあんまりなさそうだ」

    エレン「えっ、何でだよ?」

    ジャン「今のアニの目的がお前じゃねぇからな。闇雲に捜索して兵士をすり減らすより、アニの出方を待つつもりなんだろう」

    ミカサ「アニが何をしたいのか分からない以上、対策は取れない。それより今はライナー、ベルトルトからエレンを守ることが優先」

    エレン「…俺たちのこれからの行動は?」

    ミカサ「団長とチ…兵長の指示を待つ」

    ジャン「エレン、お前はアニに関して心当たりねぇんだよな?」

    エレン「…ねぇ」

    ジャン「じゃ、これ以上考えるな。俺たちもそうするしかねぇんだし」

    ミカサ「ジャンの言う通り。今は治療に専念しよう、エレン」


    その時、病室の扉が開いた。
  37. 37 : : 2014/01/02(木) 17:17:43
    アルミン「みんなやっぱりここだったね」

    エレン「アルミン!」

    ミカサ「アルミン、おかえり」

    アルミン「ただいま。エレン、起きてて大丈夫なの?」

    エレン「平気だ。アルミン、お前がいなかったら俺はもう死んでたな」

    アルミン「僕は何もできなかったよ。実際助けてくれたのは…」

    アルミンはハッとして口をつぐんだ。4人の間に重たい空気が流れた。

    ジャン「…アルミン、お前、いろいろ見てきたんだろ?何か分かったこととか…あったのか?」

    アルミンに注目が集まる。

    アルミン「…僕たちの直接的な知り合いはいなかった。アニが脱獄した日は、関係者以外の出入りも特になかった…ただ…」

    ジャン「?…何だよ?言えよ」

    ミカサ「アルミン、あなたの考えを聞かせて」

    エレン「…アルミン」

    アルミンは3人の仲間の目を一人ずつ見つめ、考えこむように目を伏せた。

    アルミン「…考えすぎかもしれないけど、気になった人が一人いた」

    エレン「それは…誰なんだ?」


    アルミン「…憲兵団師団長、ナイル・ドークだ」
  38. 38 : : 2014/01/02(木) 18:00:36
    だんだん終わりに近づいたかと思います!

    結末はちょっとどうしようか揺らいでますw
  39. 39 : : 2014/01/02(木) 18:03:13
    リヴァイとハンジは憲兵団支部の一室を借り、アニ脱獄に関する経緯と対処、エレンたちの奪還と保護処遇について報告書をまとめていた。


    ハンジ「リヴァイ」

    リヴァイ「手を動かせ…口じゃなくな」

    ハンジ「私もうダメ」

    リヴァイ「音を上げるのが早ぇぞ…始めたばっかりだろ」

    ハンジ「…」

    リヴァイ「…」

    ハンジ「リヴァイ」

    リヴァイ「…」

    ハンジ「今の会話、外から聞いたらちょっとエッチだったかもね」

    リヴァイ「クソメガネてめぇは真面目にやる気あんのかッッ!!あァ!?」


    エルヴィン「…何遊んでるんだお前たちは」


    ハンジ「おやエルヴィンいつの間に」

    リヴァイ「遊んでねぇ!!」

    ハンジ「リヴァイが全然楽しくなくてさー」

    リヴァイ「ふざけんな!!」

    エルヴィン「…まあ、はやく終わらせよう…君たち二人だけだと進まない気がする」

    エルヴィンはやれやれと手伝い始めた。
  40. 40 : : 2014/01/02(木) 19:17:59
    ハンジ「やっぱりエルヴィンがいると捗る捗る」

    リヴァイ「…」


    エルヴィン「そう言えば、アルミンが喜んでいたよ、リヴァイ」

    リヴァイ「なぜだ」

    エルヴィン「君に信頼されて発言の場を与えられたのが、よほど嬉しかったようだ。感激ですと伝言を預かった」

    リヴァイ「…ふん…そんなもん自分で言いに来い…」

    ハンジ「しっかし今日のリヴァイはよくアルミンに突っかかってたねー、アルミンのこと好きなんじゃないのー?リヴァイ?」

    リヴァイ「てめぇ…さっきから聞いてりゃあ…」

    エルヴィン「ハンジ、リヴァイをからかうのはやめなさい。それじゃまるでアルミンに妬いているようにしか見えん」


    ハンジ「エルヴィン…気色悪いこと言わないでくれ…」


    リヴァイ「…エルヴィン、よく聞いて考えを改めてほしいんだが…俺は男をそういう目で見るような趣味はねぇし、やっぱりハンジはクソメガネだ…」


    ハンジ「ひでぇ」


    エルヴィン「…お前たち面白すぎるな」


    ハンジ「やっぱりー、エルヴィンにはー、勝てる気がー、しなーいー」

    リヴァイ「歌うんじゃねぇうるせぇな…」

    エルヴィン「リヴァイのおかげで、彼らの今のところの考えを知ることができたんだ。よかったよ」

    ハンジ「なんかもうリヴァイが口を開くと怖いから、今度から前振りしてくれよ。喋りますよーって」

    リヴァイ「バカ言え…」


    エルヴィン「…ところで、今日の監視はリヴァイに頼みたいんだが」

    リヴァイ「ああ、問題ない」

    ハンジ「あの二人、大きいけど大丈夫?」

    リヴァイ「…喧嘩売ってんのかクソメガネ…」

    ハンジ「はーい!報告書終わりました!皆さんお開きにしましょう!」
  41. 41 : : 2014/01/02(木) 20:21:24
    イライラしながら部屋を出た後、リヴァイは地下牢獄への階段を下った。


    コツ…コツ…コツ…コツ…


    しばらく歩いた所で、ある牢獄の前に銃を備えた一人の影が見えた。

    リヴァイはその影に近づいていく。


    リヴァイ「待たせたな…ナイル」


    ナイル「…やっと監視交代か」
  42. 42 : : 2014/01/02(木) 21:21:20
    リヴァイ「ああ。夜は俺が見張る」


    ナイル「何度も言うが…お前らのやってることは、王政への反逆行為だ。露呈すればどうなるか分からんぞ?」


    リヴァイ「お前ら、じゃなくて、俺ら、の間違いだな…お前ももう引き返せない所まで来てんだ、覚悟を決めろ」


    ナイル「だから…最初から中央の許可を得ろと…」


    リヴァイ「そんな手続き踏んでたんじゃあ、今頃はこいつらに王都も市民もぶっ潰されてる最中だろうな」


    ナイルの小さい唸り声が地下に響いた。


    ナイル「…分かっている。念を押してやってるだけだ。生半可な意識でやってもらっちゃあ、俺も兵士としての信条が許さない」


    リヴァイはナイルの言葉に目を光らせた。


    リヴァイ「ほう…悪くない…」


    ナイル「…頼むから、さっさと終わらせろよ。エルヴィンにも伝えておけ」


    ナイルが去って行った後、リヴァイは牢獄の中の二人の影に静かに歩み寄った。


    リヴァイ「…昼間はナイルの野郎と楽しくやれたか?なぁ…お前ら…」


    リヴァイ「ライナー、ベルトルトよ…」


    ライナー「…」

    ベルトルト「…」
  43. 43 : : 2014/01/02(木) 22:14:45
    その頃、アルミン、ミカサ、ジャンの3人は食堂にいた。

    アルミン「憲兵団の食堂大きい…」

    ミカサ「きれい…」

    ジャン「うめぇ…」

    アルミン「やっぱり憲兵団って潤沢なんだね…」

    ミカサ「エレンは病院の冷たい食事…一緒に食べられればいいのだけれど…」

    アルミン「エレンもまた連れて来られるよ、きっと」

    ジャン「うらやましい」


    人がだんだん増えて、賑やかになってきた。


    アルミンは昼間のエレンの病室での自分の疑問をぼんやり思い返していた。


    アルミン(ナイル・ドーク、憲兵団師団長…)


    アルミン(ジャンいわく、アニ捕獲作戦の折、王都にてアニが暴走、市民らに大きな被害を与えた際、作戦の最高責任者であるエルヴィン団長の鼻先に銃口を向けた人物…)


    アルミン(エルヴィン団長に対する言動から、二人は同期とか、それなりにお互いを知っている間柄だというのがジャンの見立てだ)


    アルミン(ナイル師団長はその時、エルヴィン団長の主張を受け入れ、見逃したらしいし)


    アルミン(師団長は何人かいる役職だから、ジャンのその推察は参考になる…)


    アルミン(エレンの審議会では憲兵団代表をしていたから、名前に気づいたけど)


    アルミン(師団長の中でも有能な人物には違いない…)


    アルミン(師団長クラスの憲兵団員が、アニのいた牢獄に出向いた記録は他にないのに…)


    アルミン(なぜ…アニ脱獄のその日に限って…)


    アルミン(…ナイル師団長の入退室記録があったのか?)
  44. 44 : : 2014/01/02(木) 22:47:25
    アルミン(考えすぎか…?いや…)


    ミカサ「…ミン…アルミン」


    アルミン「えっ?!」

    ジャン「お前、大丈夫か?だいぶぼーっとしてたぞ?」

    ミカサ「アルミンはきっと疲れている。はやく休んだ方がいい」

    アルミン「…あ、ごめんごめん」

    ジャン「…もしかして、また昼間の話のことか?」

    アルミン「えっ…」

    ジャン「顔に書いてあるぞ」

    ミカサ「アルミン、あなたがナイル師団長の名前を見つけたのはさすがだと思う。けれど、憲兵団の師団長がアニに協力するとはとても思えない」

    ジャン「まあ、ちょっとなぁ。やっぱり偶然じゃねぇのか」


    アルミンはナイルについての考えを、まだ半分程しか打ち明けていなかった。


    アルミン(もし…)


    アルミン(もし、僕が今、エルヴィン団長がナイル師団長と繋がってるんじゃないか、なんて話したら…)


    アルミン(二人はどう思うだろう…)


    アルミン(事実、全て僕の空想にすぎないことだし…)


    アルミン「…そうだよね、ナイル師団長がアニを逃がすために当直兵士を連れ去ったりするなんて、現実的じゃないね。何の利点もないのに、そんなこと、するわけないか」
  45. 45 : : 2014/01/02(木) 23:15:13
    ミカサを部屋まで送り、アルミンとジャンは自分たちの部屋へと歩き出す。ジャンが伸びをすると、彼の身体がパキパキと鳴った。


    ジャン「あー…疲れたな…」

    アルミン「今日はよく眠れそうだね」

    ジャン「そういや、ライナーとベルトルトの奴ら、どうなったんだろな」

    ジャンが今ここで二人のことを思い出したことに、アルミンは心底驚いた。

    アルミン「ジャンたちは最後まで見てないの?」

    ジャン「ああ、俺とミカサは、団長にエレンを探せって言われて離脱した。お前らけっこう飛ばされてたのな」

    アルミン「ふーん…でも僕らの所に来たとき、リヴァイ兵長も一緒だったよね?」

    ジャン「リヴァイ兵長は、なんかたまたま後から合流した感じだな。どこから来たんですかって思ったぜ」

    アルミン「へぇ…ライナーとベルトルトのこと、団長たちに聞いてみれば良かったね」

    ジャン「だな。アニがインパクト強すぎて、すっかり忘れてたぜ」

    そうこうしてるうちに、二人は部屋の前へと到着した。
  46. 46 : : 2014/01/02(木) 23:51:55
    ジャン「なぁ、アルミン」

    アルミン「何?ジャン」


    アルミンはなぜかたくさんある鍵束から部屋の鍵を見つけ出すのに苦戦している。

    アルミン「ジャンもそれっぽいの探してよ」


    ジャン「アルミンが疑ってんのって、ほんとはナイル師団長じゃねぇだろ」


    アルミン「えっ!?」


    アルミンは驚きのあまり鍵束を床に撒き散らした。


    ジャン「やっぱりな。俺でも、ナイル師団長が主犯でそんなことできるタイプの人間じゃねぇことくらい分かるんだぞ?アルミンが分かんねぇわけねぇだろ」


    アルミン「ジャン…!」


    ジャン「ナイル師団長は正義感の塊だからな、市民と王都を守るためなら、けっこうなリスクも厭わないだろう」


    アルミンは呆然とジャンを見ていた。


    ジャン「そのナイル師団長がアニの脱獄を手助けするほど、説得力のある人間が主犯だ」


    ジャン「お前が考えてる主犯は、エルヴィン団長なんだろ」


    アルミン「…ジャン、全くその通りだ…」


    ジャンはアルミンが目を丸くしているのを見て、呆れたように苦笑する。


    ジャン「じゃあ、行こうぜ」


    アルミン「えっ…どこへ…?」


    ジャン「ライナーやベルトルトがどうなったのか…いや、あいつらをどうしたのか、聞きたいだろ?」


    ジャン「エルヴィン団長によ…」
  47. 47 : : 2014/01/03(金) 00:13:31
    終盤戦!!

    皆さんほんとおつかれさまです…アセアセ
  48. 48 : : 2014/01/03(金) 00:15:55
    エレンはミカサたちが帰った後、急に睡魔に襲われ、そのまま眠りに就いた。


    エレン「うっ…」


    エレンが怪我の痛みで目を覚ますと、外は既に暗くなっている。


    エレン「もうこんな時間かよ…」

    ハンジ「すっかり夜だねー!寒い寒い!」

    エレン「うわあああッッ?!!…ハ、ハンジさん…?!!」

    ハンジ「ハンジさんだよ」

    エレン「な、なんでここに、ハンジさんが…」

    ハンジ「こんな肌寒い夜はさ、人肌恋しいじゃん?」

    エレン「ひいっ…!?」

    エレンのあまりのビクつきように、ハンジは半分満足、半分ショックを感じながら笑った。

    ハンジ「いやだなぁ、君の監視に決まってるよ。ここ地下じゃないし、一応ってことでエルヴィンに派遣されてやってきましたー!」

    エレン「あ…そっか!なるほど…」

    エレンは心からホッとして、緊張を解いた。

    ハンジ「君は私に構わず寝てていいからね。私はやることがあるから」

    ハンジは、病室の机にいつの間にか持ち込まれた書類の山を指差した。

    エレン「始末書ですか?」

    ハンジ「うわっ、始末書とはひどい、始末書だけど」

    エレン「結局始末書なんですか」

    ハンジ「リヴァイに早く出さないと、今度こそ埋められちゃうんだ…」

    エレン「あの、明日はもしかして兵長が見張りとか…」

    ハンジ「どうだろうね、でもリヴァイに見られてたら絶対眠れないね」
  49. 49 : : 2014/01/03(金) 00:46:16
    数十分後、眠れないエレンをよそに、見張りのハンジは寝息を立てていた。


    エレン(ハンジさん、書類まだあんなにあるのに…)


    エレン(ミカサたち、何してんだろうな)


    エレン(訓練兵時代は、よく消灯時間までトランプしたっけ…)

    エレン(ミカサは運も強くて)

    エレン(アルミンはなぜかいつもぎりぎりまで勝ち上がれない)

    エレン(ジャンはミカサばっかり見てて気持ち悪いし)

    エレン(コニーやサシャは勘が鋭かったな)

    エレン(マルコはジャンがぼんやりしてるのを注意する役で)

    エレン(ユミルとクリスタはいつも二人一組)

    エレン(ライナーは…)


    エレン「ライナー、お前は気が利いて、いつの間にかトランプ切ってくれてたよな」

    エレン「みんなにしてやってたトランプ占い、すげぇ当たるって噂だったぜ?ベルトルト」


    エレンの心の声はいつしか口をついて出ていた。


    エレン「…」


    エレン「アニ、お前、全然トランプ知らないから、クリスタにこっそり教わってたんだってな?」


    エレン「アニ…」


    エレン「アニ、今どこで何してんだよお前…」


    エレン「…アニ…」


    アニ「…何だい、エレン」


    エレン「!?」


    エレンが声のした方を向くと、アニが薄暗がりの中、窓辺に寄りかかって立っていた。
  50. 50 : : 2014/01/03(金) 01:46:03
    エルヴィン団長は部屋にはいなかった。


    ジャン「まあ、そうそううまく会える人ではないよな…」

    アルミン「団長だもんね…きっとこの時間も仕事なんだよ」

    ジャン「拍子抜けしたな」

    アルミン「…ジャン」

    ジャン「ん?」

    アルミン「リヴァイ兵長のとこにも行ってみない?」

    ジャン「マジかよ…」

    アルミン「あの二人、一緒にいそうな気がするんだ」

    ジャン「リヴァイ兵長はさすがにハードル高くないか…」

    アルミン「僕はエルヴィン団長より、リヴァイ兵長の方が、推しに弱い気がするんだ」

    ジャン「いや分からねぇな…アニを逃がしましたか?って言った瞬間抹殺されそうなんだが」

    アルミン「じゃあ、ちょっと部屋の中の様子を探るだけ。ね?」

    ジャン「うわぁ…死にたくねぇよぉ…ミカサぁ…」


    アルミンとジャンは、リヴァイの部屋の前で聞き耳を立てている。


    アルミン「何も聞こえない…」

    ジャン「留守じゃねぇのか?」


    モブリット「君たち…何してるの?」


    アルミン「わあああッッ!?」

    ジャン「す、すみませんでしたァァァ!!」

    モブリット「えっ!?何?えっ!?」


    逃げようとするアルミンとジャンを捕まえるモブリット。


    モブリット「なんか…そんなに怖がられた経験なくて今とてもショックなんだけど…リヴァイ兵長なら留守だよ?」


    アルミン「あっ…やっぱり…」

    ジャン「ですよねー!!よかったー!!」


    モブリット「…?…急ぎの用なら、たぶん地下にいらっしゃると思うから、その辺りに行ってみたらいいよ」


    アルミン「ち、地下…?」

    ジャン「なぜそんな面倒な所へ…」


    モブリット「分からないけど、司祭を収容して帰る途中で、地下の入口の方に行くのをお見かけしたから…」


    モブリット「てっきりエレンがそこにいるのかって思ってたんだけど、違うの?」


    ジャン「エレンは今びょ…」


    アルミン「あ、ありがとうございました!モブリットさん!きっとエレンです!ジャン、行くよ!!」


    モブリット「き、気をつけてね…」


    アルミンとジャンは脱兎のごとく駆けていった。


    モブリット(あんなにビクビクされるなんて…ちょっとほんとに悲しいかも…)
  51. 51 : : 2014/01/03(金) 02:33:52
    リヴァイは牢獄の目の前の椅子に腰を下ろし、何か喋るでもなく、ただライナーとベルトルトを観察していた。


    ライナー「…」

    ベルトルト「…」

    リヴァイ「…」

    リヴァイ「…おい」

    ライナー「!!」

    ベルトルト「!!」

    リヴァイ「…お前ら、寒くはねぇか?」

    ライナー「…?」

    ベルトルト「…?」

    リヴァイ「おい…どうなんだ?…ったく、今日は冷えこみやがる…」

    ライナー「…で、では毛布をいただけたら…」

    ベルトルト「う…嬉しいです…」

    リヴァイ「ちっ…ちょっと待ってろ…」

    5分後、ライナー、ベルトルトがそれぞれ与えられた毛布にくるまっていた。

    ライナー(…人って…)

    ベルトルト(…あったかいな…)
  52. 52 : : 2014/01/03(金) 03:30:34
    エレンはぼーっとアニをみつめていた。


    アニ「あんた…人の顔そんなふうにじろじろ見るんじゃないよ」


    エレン「…なんで…アニ…」


    アニ「なんでここに来たかって?」


    アニは窓枠から飛び降り、スタスタとエレンのベッドに近寄った。
    よく見ると、立体起動装置を着けている。


    アニ「…あんたをまた、連れ去りに来たの。それから」


    アニはベッドに上がりこみ、エレンに顔を近づけた。


    エレン「…っ!?」


    アニ「…少しは女の子の気持ち、勉強できたかい?エレン」


    エレン「なっ…何言って…えっ?」


    いつの間にか、エレンの両手首が縛られている。


    エレン「おい!これほどけよ!!」


    アニ「…全くうるさいよ。少しは雰囲気とか…気にすることあるだろう?」


    エレン「アニ!!話を聞…」


    アニの唇が、エレンの口を塞いだ。


    エレン「!?」


    アニ「…これが最後。よく覚えといてよ…」


    アニはエレンの両腕の間に自分の頭を通し、エレンを背負った。


    エレン「お、おい!どこ連れて行く気だっ!?」


    アニ「二人乗りは危ないから、落ちないようにね…エレン。死んじゃうから」


    アニはエレンを背負ったまま、立体起動装置のアンカーを発射して窓から飛び出した。


    病室はしばらく音もなかったが、やがてハンジがむっくり体を起こした。

    ハンジ「よし…行ったか」
  53. 53 : : 2014/01/03(金) 04:27:28
    エルヴィンはナイルの部屋を訪れていた。二人は椅子に座って対座してお茶をすすっている。


    ナイル「お前がこの部屋に来ると、あんまりいいことないんだよな…」


    エルヴィン「俺は今年厄年ではないが…」


    ナイル「…昔からそうだという意味だ」


    ナイルの顔は、いつも以上にやつれて見える。


    ナイル「それで?今から行くのか?」


    エルヴィン「ああ。全て今夜、決着する」


    ナイル「よくここまで何事もなく進んだな…あんな当座の思いつきで…」


    エルヴィン「あの時ナイルがいなければ、きっと今頃は大惨事だ。礼を言うよ、ナイル」


    ナイル「…俺は市民と王都の安全と秩序が乱されなければそれでいい。分かってるな?」


    エルヴィン「必ず成功させる」


    ナイルはエルヴィンの目を見て、小さな溜め息をついた。


    ナイル「…これは忠告なんだが…お前は団長として、もっと確実性のある策を取るべきだ。こんな…博打のような策ばかりでは、誰もついては来んぞ?」


    エルヴィン「…最善策に講じていては、奴らを凌ぐことはできない…俺はそれをこの間の女型捕獲作戦で思い知らされたんだ、ナイル」


    ナイル「…お前は…どんどん危ない刃になっていくな、エルヴィン」


    ナイルはコーヒーカップをゆっくり回す。


    ナイル「何を考えているのか…いつも見えないように隠し持っている」


    エルヴィン「…ナイル。アニ・レオンハートの顔は覚えているな?」


    ナイル「…もちろんだ」


    エルヴィン「今夜彼女が地下に入ったら、絶対に地上に逃がさないようにしてくれ」


    ナイル「…約束する」


    エルヴィン「非常にありがたい返事だ」


    ナイルはのそっと立ち上がった。


    ナイル「俺はそろそろ準備に取りかかる。お前も抜かりなくやってくれ」


    エルヴィン「…ナイル、君に敬意を」
  54. 54 : : 2014/01/03(金) 05:13:30
    アルミンとジャンは、地下への入口付近で考えをまとめようとしていた。


    ジャン「リヴァイ兵長に会えたとして…」


    アルミン「なんて話し出せばいいのかな…」


    ジャン「ここまでの俺らの推測によると、確実にアニの脱獄に関わってるのは…」


    アルミン「エルヴィン団長、ナイル師団長、リヴァイ兵長…」


    ジャン「エルヴィン団長が憲兵団のナイル師団長を引き入れて、何らかの手引きをさせてアニを解放し…」


    アルミン「どうやったかは分からないけど、見返りとして、ライナーとベルトルトを手に入れることに成功した…」


    ジャン「今、ライナーとベルトルトが地下に捕らえられている…」


    アルミン「リヴァイ兵長は現在、二人を監視中…」


    ジャン「俺たちに、アニ解放・ライナー、ベルトルト捕獲作戦を通達しなかったのは、女型捕獲作戦の時と同じ理由だな」


    アルミン「僕たちの中にライナーら側の人間が残っていた場合、きっとライナー、ベルトルトの捕獲を阻んでくる」


    ジャン「間違いねぇな」


    アルミン「でも、これからどう進めるんだろう…」


    ジャン「そもそも、何でアニは手放して、ライナーとベルトルトを手に入れたんだ?」


    アルミン「…壁を破壊する脅威となる二人だから、かな」


    ジャン「なるほどな」


    アルミン「団長たちにとって、次に対策すべき危機は…」


    ジャン「…アニが、ライナーたちを助けに来るかも?」


    アルミン「…ジャン!きっとそれだ…!!」
  55. 55 : : 2014/01/03(金) 09:52:20
    アニは地下への入口のひとつを覗きこんだ。


    エレン「アニ…もう少し優しく飛んでくれ…骨が…」

    アニ「男が泣き言言ってんじゃないよ…」

    エレン「なあ、アニ…」

    アニ「何」

    エレン「何であの時、俺をさらわなかったんだ…?」

    アニ「…ああ、あんたがアルミンと一緒に巨人に喰われそうになってた時ね」

    エレン「あの時さらってれば、内地まで出向くような面倒しなくてもよかったんじゃねぇか…?」

    アニ「あの時は、私の最優先の目的はあんたじゃなかったの」

    アニ「もちろんあんたに死んでもらうわけにはいかないから、とりあえず目の前の雑魚をつぶしてあげただけ…アルミンもいたしね」

    アニ「馬が3頭あんたたちの方に走ってくるのが見えたから、あとはその人たちに丸投げしちゃったけど」

    エレン「そうかよ…」

    アニ「ちなみに今も最優先はあんたじゃない。あんたは2番目」

    エレン「じゃあ放せよ」

    アニ「だめ。あんたはこれから私が使うの」

    エレン「この中に入るのか…?」

    アニ「目的がこの中だからね、じめじめした所は苦手だけどさ…まぁあんたもか」

    エレン「目的って何だよ?」

    アニ「…見ればあんたも…よく知ってると思うけど?」

    エレンを背負ったアニは、地下入口に潜入していった。
  56. 56 : : 2014/01/03(金) 11:25:18
    エルヴィンは地下でリヴァイと合流していた。

    エルヴィン「リヴァイ、ご苦労」

    リヴァイ「…ああ」

    エルヴィン「二人の様子は?」

    リヴァイ「見ての通り頑丈そうな奴らだ、問題ない。クソ寒いから毛布は与えたが」

    エルヴィン「うむ、それはよかった」

    リヴァイ「それから、お前らのしたいことは何だと訊いた」

    エルヴィン「誰かにも同じことを訊いていたな」

    リヴァイ「二人とも、凍える人間に暖かい毛布をかけてやりたいんだそうだ」

    エルヴィン「うまく躾たな」

    リヴァイ「そして、ライナーは追加で、結婚したい、と言っていた」

    エルヴィン「素晴らしいな」

    リヴァイ「ああ…悪くない」
  57. 57 : : 2014/01/03(金) 12:20:56
    アルミンとジャンは近くの茂みに身を潜めている。


    ジャン「…危なかったな」

    アルミン「ジャンがはやく気づいてくれて助かったよ」

    ジャン「けど、この憲兵の集まりは何だ?」

    アルミン「…あ!ナイル師団長…!」

    ジャン「師団長が話し始めたな…おい!地下入口を全て封鎖するつもりだってよ!?」

    アルミン「封鎖されたら入ることはできないね…」

    ミカサ「…アルミン、ジャン。こんな所で何しているの?」

    ジャン「うわッッ!?ミカサ!?」

    アルミン「ジャン静かに!!…ミカサ、何でここへ?」

    ミカサ「ちょうどアルミンたちが隠れるのが部屋から見えた」

    ジャン「いいタイミングだな」

    ミカサ「それに…」

    アルミン「…?」

    ミカサ「エレンの気配を感じた…」

    ジャン「エレンがこの辺りに…!?」

    アルミン「もしかして…地下…?」

    ミカサ「そうかもしれない」

    ジャン「どうするよ…もうじき憲兵が地下入口を全部封鎖しちまうぞ?」

    ミカサ「エレンがいる。私は行かなければ」

    アルミン「…入口を封鎖するのは、中のライナーたちを地上に出さないためだけじゃない…今更こんな厳戒体制を取るのは…」


    アルミン「…新たな敵を誘い込むことに成功したからだ」

    ジャン「…!アニか…!!」

    ミカサ「…!!」
  58. 58 : : 2014/01/03(金) 12:38:30
    アルミン「アニはおそらく、エレンと一緒だ…」

    ミカサ「エレンを、また連れ去ったの…?」

    ジャン「エレンはもう狙わねぇんじゃなかったのかよ!?」

    アルミン「前と今で…アニがエレンを必要とする理由が、少し違うのかも…」

    ジャン「…理由?」


    アルミン「今のアニの目的と、‘‘アニたち’’の目的は違うんだ…」


    アルミン「前のアニの目的は、‘‘アニたち’’の目的でもあった…」


    アルミン「今エレンを奪ったのは…おそらくアニ個人が別の目的を果たすためだ」


    ジャン「…ライナーとベルトルト…!!」


    ミカサ「ライナーたちがここに…?」


    アルミン「うん…アニはライナーとベルトルトを奪還するために、エレンを利用するつもりだと思う」


    ジャン「クッソマジかよ…リヴァイ兵長やこの憲兵らをどうやって振り切るつもりだ…」


    アルミン「僕たちはエレンを殺せないから、盾にする気かも…」


    ジャン「人質ってことか…!」


    ミカサ「…なら、エレンを助けるだけ」


    ミカサが地下入口に潜りこんだ。


    アルミン「ミカサ!!」

    ジャン「おい!!…ああ、もう!!どうしてこうなるッッ!!」


    アルミンとジャンはミカサの後を追った。
  59. 59 : : 2014/01/03(金) 14:01:41
    憲兵団支部の裏手、人目につきにくい広場で、ナイルは集めた憲兵に指示を与えていた。


    ナイル「これより行う任務は、我らが市民と王都の安寧秩序のために、遂行するものである!」


    ナイル「ここに集めた君たちは、私が秘密裏に厳選した精鋭だ」


    ナイル「君たちには今夜、地下への出入口を死守してもらう」


    ナイル「私が任務を解くまで、中の者を地上に決して出させないでくれ。如何なる身分の者であっても、容赦せず封じ込めろ」


    マルロ「…!!」


    そこへ、ハンジが走ってやってきた。


    ハンジ「ナイル。今、入った」


    ナイルは黙って頷いた。


    ナイル「任務内容は以上だ。直ちに持ち場に!」


    ナイル「失敗は断じて許されない!気を引きしめてかかれ!心臓を捧げよ!!」



    一同「はっ!!!」
  60. 60 : : 2014/01/03(金) 15:20:27
    エルヴィンとリヴァイはまだ、ライナー、ベルトルトの牢獄の前に立って監視を続けている。


    リヴァイ「…こいつらは、全くに日光当たらなくても死ぬことはねぇんだよな?」

    エルヴィン「半人半巨人だから、そのはずだ。衰弱はするだろうが…」

    リヴァイ「そうか…」


    エルヴィン「君たち、悪く思わないでくれ。我々は壁内に潜む巨人たちを、一匹残らず追い詰めなければならないのだ」


    リヴァイ「…」


    エルヴィン「君たちは、我々がアニを解放する代わりに、君たちが我々の元に下るという条件を飲んでくれた」


    リヴァイ「…おかげでお前らを完膚なきまでにやり込める手間が省けた」


    エルヴィン「正直君たちを力ずくで捕らえられるほど、我々に戦力は残されていなかった」


    リヴァイ「…エレンを回収することで精一杯だったからな。大人しく内地までついて来てくれるとは、ありがてぇ限りだ」


    エルヴィン「君たちが話の通じる人間で助かった。君たちの身柄はこのまま極秘に調査兵団が預かる。安心してくれ」


    リヴァイ「せいぜい一生を懸けて人類へ罪滅ぼしすることだな」
  61. 61 : : 2014/01/03(金) 15:43:59
    ライナーとベルトルトは黙って俯いている。


    ライナー(…エルヴィン団長も、リヴァイ兵長も、アニが我々を奪還しにやって来るという可能性くらい見抜いているはずだ…)


    ベルトルト(…アニは助けに来る。だからこそ僕らは条件をのんだんだ…)


    ライナー(エルヴィン団長のことだ…どうにか上手くアニも捕まえる気だろう…)


    ベルトルト(壁を破壊する脅威である僕らを捕らえることを選んだことを、きっと後悔する…)


    ライナー(アニの出方次第だな…)


    ベルトルト(僕たちは揃って、故郷に帰る…今夜、必ず)


    エルヴィン(…私がいずれアニも再び捕獲するつもりで自分たちに条件を持ち掛けたことは、彼らも勘づいているだろう…)


    リヴァイ(こいつらが自分たち自身を、アニをここへ誘き寄せるカモだと認識しているかどうかは分からねぇが…)


    エルヴィン(こちらの誘いに乗ったということは、何らかの突破口があるのかもしれん…あらゆる可能性を想定したつもりだが、油断はならない)


    リヴァイ(今夜お前たち仲間3人をの面を、きれいに揃えてやる…アニとてめぇらのために死んでいったあいつらの思いに、俺は必ず応える…)


    その時、ランプのオレンジの光の中を、黒い影がサッと通り過ぎた。
  62. 62 : : 2014/01/03(金) 16:53:19
    ライナー(…来たか…?)

    ベルトルト(アニ…!)

    エルヴィン(…)

    リヴァイ(早かったな…)


    リヴァイは立体起動装置の刃のグリップに静かに手をかける。


    アニ「…そんな恐い顔しないでくれる?兵長さん…」


    暗がりの中からアニが現れた。エレンを背負って。


    ベルトルト「アニ…!」

    ライナー「…」

    エレン「エルヴィン団長…!リヴァイ兵長!!」

    リヴァイ「ちっ…やっぱりエレンを連れてきやがったな…」


    エルヴィン(…やはりな…となると…)


    アニ「さっそくなんだけど」


    アニはエレンの顔を手で撫でた。


    アニ「エレンと、ライナー、ベルトルトを交換してほしい」


    エレン「ライナーとベルトルト…!?」


    エルヴィン「…従わない場合、どうなる?」


    アニ「…エレンはあたしと遠くに行く…ちゃんと教育はしてあげるよ…暴れん坊だからね」

    エレン「…っ!!」
  63. 63 : : 2014/01/03(金) 18:05:04
    リヴァイ「…おいエレンてめぇ…女に好き勝手されて喜んでんじゃねぇ、気持ち悪い」


    エレン「ちっ…違いますよっ!!」


    アニ「だから、恐い顔やめてって言ってるでしょ…」


    アニ「あの時は凄かったね、兵長さん…?あんた責めが強くて、あたし…全然動けなかった…」


    ライナー(アニ、お前はリヴァイ兵長と何があったんだ)

    ベルトルト(…ア、アニ?)


    リヴァイ「…はっ。そういや、そんなこともあったな…アニ。お前…いい身体しててなかなか責め甲斐があった」


    エレン「…へ、兵長?」


    アニ「照れるね…あんたの迫ってくる表情だって、あたし思わず震えちゃったよ…」


    リヴァイ「そうか…俺はそっちの方がゾクゾクするが」


    ライナー(リヴァイ兵長…やっぱりサディスティックなんだな…)

    ベルトルト(なんかすごく悔しいのはなぜ)

    エレン(もう二人口閉じてー)

    エルヴィン(いつまで続くんだこれ)


    アニ「言ってくれるね…兵長さん。でも、今度はあたしが追い詰めたいんだ…」


    アニはジリッとリヴァイとエルヴィンの方にわずかに歩み寄る。


    リヴァイ「ほう…悪くない…」


    リヴァイもジャキっとわずかに刃を抜く。
  64. 64 : : 2014/01/03(金) 18:12:13
    「だーからー!リヴァイは会話がエロいんだよ恥ずかしい!!」


    アニ「?!」


    ハンジが後ろから銃口をアニの頭に向けて立っていた。


    アニ「…あんた、たしかエレンの部屋で狸寝入りしてたね…」


    ハンジ「そのようだね、キツネちゃん」


    アニ(…あんな簡単に連れ出せるわけないとは思ってたけど…やっぱりこいつらの狙いはここまで誘き寄せることだったようだ…)


    リヴァイ「遅ぇんだよ…クソでも長引いたか?」


    ハンジ「もう、なんで私にはアニみたいにエロバナできないのさー?」


    リヴァイ「…さっきのは女型のアニを切り刻んだ時の話だろうが」


    ライナー(そうなのか)

    ベルトルト(アニはまだ清かった)

    エレン(紛らわしい)

    エルヴィン(リヴァイの性癖が露呈してしまったどうしようあいつ兵士長なのに)


    ハンジ「まあいいや…じゃアニ、ごめんねーまた牢獄入って?」


    アニ「…嫌だと言ったら?」


    ハンジ「死ぬだろうね」
  65. 65 : : 2014/01/03(金) 20:27:43
    ハンジは拳銃の安全装置を解除する。アニはその音を聞いて溜め息をもらした。


    アニ「…最初から殺す気でかかってきてもらわないとダメだよ…」


    アニ「…リヴァイ兵長みたいにさ…!!」


    ハンジ「!?」


    アニは目にも留まらぬ速さでハンジの拳銃を蹴り飛ばし、床になぎ倒した。


    ハンジ「ッッ…!!」


    エルヴィン「ハンジ!!」


    とほぼ同時に、リヴァイの刃がアニの頬を掠めた。

    アニはエレンにハンジの拳銃を向ける。


    アニ「早くライナーとベルトルトを」


    リヴァイ「…」


    アニの頬のかすり傷から血がつーっと伝った。


    リヴァイ「大人しくしてねぇから、顔に傷つけちまったじゃねぇか…」


    アニ「…兵士長にしとくにはもったいないくらいの気障男だね」


    エルヴィン「アニ、エレンを下ろせ。ライナーたちを引き渡す」


    リヴァイ「…」


    エルヴィンはライナーとベルトルトを牢獄から出し、それぞれのズボンのポケットに手錠の鍵を入れた。


    アニ「エレンは私が殺さなくても、もうだいぶ瀕死だけどね…」


    アニはエレンをそっと床に下ろした。


    エレン「…っうッッ…」


    アニ「その怪我で、よくここまでもってくれたよ…二人とも、はぐれないようについて来な」


    アニ、ライナー、ベルトルトは走り去った。
  66. 66 : : 2014/01/03(金) 20:43:14
    エルヴィン「エレン!大丈夫か!?」

    エレン「なんかもう、全身痛いです…」

    エルヴィン「とにかく君は医務室へ行かねば…リヴァイ、私はエレンを運んで行く」

    リヴァイ「頼む。俺は奴らを追う。ナイル…踏ん張れよ…」


    リヴァイは途中、横たわって呻いているハンジの側にひざまずいた。

    リヴァイ「おい、ハンジ」

    ハンジ「…痛い」

    リヴァイ「ひでぇ面しやがって…どんな技喰らったんだ…」

    ハンジ「ごめんリヴァイ逃がした…」

    リヴァイ「…まだ決着はついてねぇ、必ず仕留める」

    ハンジ「リヴァイ…」

    リヴァイ「…後で俺が迎えに来てやる。それまでしっかり息してろ」


    リヴァイは回廊を走った。

    リヴァイ(クソメガネを一撃で黙らせる妙技…必ず吐かせてから殺す!)
  67. 67 : : 2014/01/03(金) 21:38:01
    アルミン、ミカサ、ジャンは薄暗い回廊をあてどもなく進んでいた。


    ジャン「クソっ…死に急ぎ野郎どこに連れてかれたんだよ…」

    ミカサ「…エレンの気配が強くなってきた…近づいている」

    アルミン「ミカサすごい…ん?」


    3人の進む方角から複数の足音が接近してくる。


    アルミン「隠れた方がいいのか…?」

    ミカサ「…誰」

    ジャン「…おいおい…あれって…」


    アニ、ライナー、ベルトルトだ。
  68. 68 : : 2014/01/03(金) 21:43:59
    ジャン「まさか逃げられたのかよ!?」

    アルミン「何とか説得して食い止めなきゃ…」

    ミカサ「…いいえ、アルミン。説得の必要はない…」


    ミカサは走り出した。


    ジャン「おい!待てって!?」


    ミカサ「アニ…あなたはエレンを…」


    アニ「…!?ミカサ?」


    ガッッッッッ!!!


    ミカサのストレートとアニのキックが衝突した。


    ミカサ「…エレンをどこへやったの?」

    アニ「あんた…何でいつもそう邪魔ばかり…」

    ライナー「アニ!かがめ!」

    ミカサ「!?」


    ライナーの足がミカサの鼻先を掠めた。


    アニ「頼むよミカサ…どいて…!!」

    ミカサ「…っ!!」


    再びアニのキックを避けたミカサ。


    アルミン「ミカサ!!…うわぁっ!?」


    ベルトルトがアルミンを取り押さえた。


    アニ「どいてくれれば…フッ!!」

    ミカサ「っ…!!」


    アニの攻撃が降り注ぐ。


    アニ「あんたも怪我しないで済むのに!!」


    そこへライナーも加わる。


    ライナー「許せよ…ミカサ…!!」

    ミカサ「!?」


    ジャン「ふざけんなこのクソがぁッッ!!」


    ジャンがライナーを殴りとばした。


    ライナー「うっ…!!」

    ジャン「ミカサに何しやがんだてめぇ!!」


    アニ「余所見しない…」


    ミカサ「っ…!?」


    ジャン「ミカサ!!」
  69. 69 : : 2014/01/03(金) 23:23:53
    「…遅い」

    アニ「!?」


    リヴァイがアニを壁に叩きつけた。


    アニ「…ッッ!!」


    ミカサ「…リヴァイ兵長…!」


    リヴァイはアニの首を掴んで壁に押し付ける。


    リヴァイ「…おい、お前らのは何だ、そりゃあ…ケンカごっこか?互いに馴染みすぎると躊躇するのか?」


    リヴァイ「殺す気でいかねぇなら最初からやるんじゃねぇ。自分で言ってただろうが…」


    リヴァイは刃を抜いた。


    リヴァイ「俺は今ここで、こいつを殺してもいいと考えている…」


    リヴァイ「お前たちの中で、自分はこいつの‘‘友人’’だ、ってやつは…」


    リヴァイ「俺に掴みかかろうが、説得しようが、好きにすりゃあいい…まとめて相手してやる」


    リヴァイ「自分はこいつとは関係ねぇ、と思ってるやつは…」


    リヴァイ「さっさと帰れ。クソして寝ろ…」


    リヴァイ「で?こいつの‘‘友人’’はどいつだ?」


    その場の誰も、動くことができなかった。
  70. 70 : : 2014/01/04(土) 01:34:48
    数日後。


    ジャンはエルヴィンの部屋を訪れていた。

    今はモブリットが、しばらく動くことのできないハンジの代わりに仕事をこなしている。
    そしてジャンは、かつてのモブリットの雑務の代行を務めていた。


    ジャン「エルヴィン団長、失礼します。モブリットさんからの書類です」


    エルヴィン「ああ、ご苦労。モブリットは仕事が速くて素晴らしいな」


    ジャン「はい。モブリットさんは優しく、優秀な先輩だとここ数日で分かりました」


    その時、また扉が開いた。


    ナイル「エルヴィン、いるか?」


    エルヴィン「ナイルじゃないか。遠く内地から、どうしたんだ」


    ナイル「監察中の例の新兵について、政府からの伝達だ…そこにいるのは、いつかの替え玉青年か…」


    ジャン「…ジャン・キルシュタインです」


    ナイル「そうだった、キルシュタインだ。覚えている。あまり似ていなかったな、あれは」


    エルヴィン「ははっ、そんなこともあったな」


    ナイル「笑い事か?可哀想に」


    エルヴィン「まあまあ、せっかくだから、お茶でも淹れるよ。ジャンも一緒にどうだ」


    ジャン「はっ、喜んで!ではお茶を淹れてきます」
  71. 71 : : 2014/01/04(土) 02:59:59
    3人の刈り上げ頭が、お茶を啜る。


    ナイル「ほう。キルシュタインはもともと憲兵団志望だったのか」

    エルヴィン「ジャンは成績上位10名の中の一人だ」

    ナイル「優秀な部下となっていたかもしれないのか、悔やまれるな」

    ジャン「自分はまだまだ…」


    エルヴィンとナイルに関して、ジャンには気になることがあった。それはアルミンとの共通の関心事だった。


    ジャン「エルヴィン団長、ナイル師団長。お聞きしてもよろしいですか?」

    エルヴィン「何だね」

    ジャン「その、アニ脱獄に関してなのですが」

    エルヴィン「ほう」

    ジャン「アニの脱獄の手引きに、エルヴィン団長とナイル師団長が関与しておられた事実は…」


    ジャンの言葉を聞いたとたん、ナイルはむせかえった。


    ナイル「エルヴィン!あれについては誰にも口外するなと言っただろう…」

    エルヴィン「私は誰かに口外した覚えはないのだが…」

    ジャン「いえ、誰かに聞いたとかではなく、その、同期のアルミン・アルレルトとの推理といいますか…」

    エルヴィン「ああ、アルミンか。やっぱりバレていたんだね…」

    ナイル「やっぱりじゃないだろう…」

    ジャン「す、すみません…」

    ナイル「いや、もういいんだ。済んだことだ」

    エルヴィン「それで、君たちの推理はどこまで進んだのかな」
  72. 72 : : 2014/01/04(土) 06:39:58
    ジャン「ライナーとベルトルトをこちらに拘束する代わりに、アニを釈放する…と、ライナーたちに持ち掛けた、くらいしか…」


    エルヴィン「うむ。それはその通り、正しいよ」


    ジャン「では、アニにはどのように持ち掛けたのでしょうか?」


    ジャン「ライナーとベルトルトを拘束する代わりにアニを釈放する、なんて言っても、アニが承諾するとは思えないのですが…」


    ナイル「…キルシュタイン。その答えを聞いたら、君は上司に失望するかもしれない」


    ジャン「えっ?」
  73. 73 : : 2014/01/04(土) 06:45:33
    エルヴィン「私はアニに、《ライナーたちを既に拘束した》と言ったんだ」


    ジャン「既に?ライナーたちはその頃はまだ…」


    ナイル「ああ。こいつは本当に困る…嫌な奴だよ…」


    エルヴィン「さらに私は《ライナーとベルトルトから、エレンを手放す代わりに君を釈放しろと持ち掛けられている》とアニに伝えた」


    ジャン「これも…」


    ナイル「無論、ハッタリだ」


    エルヴィン「アニが水晶化を解いたとき私は、壁の破壊の脅威であるライナーとベルトルトの二人を捕獲するチャンスかもしれない、と思った」


    ジャン「えっ…と、アニが水晶化を解いたのはいつのタイミングでしょうか?」


    エルヴィン「エレン奪回作戦へ出発する直前だ。私は運良く、その瞬間に立ち会えたんだ」


    ナイル「ほんとにお前の運はおそろしい」


    エルヴィン「その後が難しかった。ライナーとベルトルトの身柄をアニに伝えた通りにしておかなくてはならないからな」


    ジャン「もしライナーとベルトルトが、アニと自分たちの身柄の交換に応じなかったらどうするつもりで…」


    エルヴィン「その時は、従来の作戦通り、エレンを奪回して逃げるだけさ。アニには、なかった話にしてもらえばいい」
  74. 74 : : 2014/01/04(土) 09:24:21
    ジャン「ライナーとベルトルトを力で捕獲できるほどの兵力はありませんしね…」


    エルヴィン「ああ、エレンを死守するので精一杯だ」


    ナイル「全て逆なんだよ、やることが。時系列を整理すると…」


    ナイルは紙にすらすらと書き出す。


    エレン、ライ&ベルにさらわれる

    アニ、目を覚ます

    エルヴィン、アニに
    ①ライ&ベルは既に拘束した
    ②ライ&ベルから、エレンを手放す代わりに君を釈放しろと持ち掛けられている
    とハッタリ。

    エレン奪回作戦へ出発

    エルヴィン、ライ&ベルに
    ライ&ベルを拘束する代わりにアニを釈放する
    と持ち掛ける

    ライ&ベル承諾、捕獲

    リヴァイがエレンを回収

    アニ釈放


    エルヴィン「とても分かりやすいな、ナイル」

    ジャン「ナイル師団長、素晴らしい…」

    ナイル「エルヴィン、お前の思い付きが分かりにくすぎるんだ…」
  75. 75 : : 2014/01/04(土) 09:27:24
    ジャン「しかし、ライナーとベルトルトはよく、アニと自分たちの身柄の交換に応じましたね」


    エルヴィン「私も正直、ここが一番自信がなかった。一人に対して二人。しかもエレンもこちらに回収される」


    ナイル「巨人の大群に喰われている中、助かりそうな話があれば乗っかりたくもなるんじゃないのか」


    エルヴィン「この話をあの戦地で持ち掛けた時、揺らぎが大きかったのはベルトルトの方だった。何故だか知らないが…」


    ジャン「…ベルトルトはおそらく、アニに好意があります。それも影響したかもしれません」


    エルヴィン「それは…少し胸が痛いな」


    ナイル「…まあ、自分がもしブラウンとフーバーの立場だとして、仲間が助かると言われたら…俺だって応じるだろう。どんな大義名分があろうが…結局は、そこなんじゃないのか」


    ジャン「仲間…」


    エルヴィン「…異論ない」


    3人はしばらく、それぞれの思いを反芻した。
  76. 76 : : 2014/01/04(土) 11:58:55
    ジャン「ところで、ナイル師団長」

    ナイル「ん?」

    ジャン「ナイル師団長はどのようにして、アニを地上に出すことができたのでしょうか?」


    するとエルヴィンが少しばつの悪そうな顔になった。


    エルヴィン「あれは…」


    ナイル「あれはな。あの日実はエルヴィンが別の策略を実行する予定で、俺はそれを手引きしてやるためにアニの地下牢獄に下りていたんだ」


    ジャン「別の策略?」


    エルヴィン「いやいや、もうそれは白紙になったし、忘れるべきものだ、うん」


    ジャン「だ、団長…?」


    ナイル「エルヴィンがいつやって来るか分からなかったもんだから、その日はわざわざ俺が当直をして、一日アニの地下牢獄で待機していた」


    ジャン「えっ…?しかし、当直兵士の名前は、ナイル師団長ではなかったそうですが…。入退室記録しかなかったという話で…」
  77. 77 : : 2014/01/04(土) 13:07:12
    ナイル「よく見てるな。通常監視当直は一般兵士がするものだ。私のような身分の兵士が当直をすると、大変怪しまれる」


    ジャン「そうでしょうね」


    ナイル「そのため、俺は変装してナイル・ドークであることを隠し、一般兵士を装って当直交替や受付を行った」


    エルヴィン「ナイルは本当に変装がうまい」


    ナイル「大変だった」


    ジャン「実はけっこう気合い入ってますか師団長」


    ナイル「だから当然、その日の当直兵士なんて実在しない。よって、探しても見つかるわけがない」


    エルヴィン「ちなみに偽名も、いい具合にそれらしい名前を考えてくれる」


    ジャン「実はノリノリですか師団長」
  78. 78 : : 2014/01/04(土) 13:09:42
    ナイル「エルヴィンが来るまでは順調だったんだが、こいつが来て一気に慌ただしくなった」


    ナイル「まず、エレン・イェーガーがさらわれたとの伝達が入った」


    エルヴィン「その時はすぐに調査兵団本部に戻り、出兵体制を組もうと考えていた」


    ナイル「だがそうは問屋がおろさなかった。アニ・レオンハートの結晶化が解けた」


    エルヴィン「その目撃者が私とナイル、それからリヴァイだけだったというのが、また都合が良かった」


    ジャン「リヴァイ兵長も?」


    ナイル「俺はアニ・レオンハートが水晶体から転がり出てきたんで、その他上官と、応援の兵士を呼んで来ようとしたんだが…」


    エルヴィン「…私が引き留めた」


    ジャン「…!」
  79. 79 : : 2014/01/04(土) 13:16:23
    うわお
  80. 80 : : 2014/01/04(土) 13:41:50
    エルヴィン「さっきも話したように、私は彼女を利用してエレン、そしてライナーとベルトルトを捕獲することを思いついた」


    ジャン「…なぜ、それを秘密裏に進めようとしたんです?」


    エルヴィン「憲兵団および駐屯兵団、そして王政の許可を得ている時間がなかった。もう、既にライナーたちはエレンを連れ去ってしまっていた。まさに一刻を争った」


    ナイル「…また女型の時のように、エルヴィンの独断専行となる。ここで失敗すればこいつの命はもう無いに等しかった」


    エルヴィン「それでも、私はやるしかないと、この契機を逃す手はないという確信があった」


    ジャン「確信…」


    エルヴィン「この契機を活かすために、どんな可能性があるかを考えた…それが、アニを釈放することを条件に、ライナーとベルトルトに我々に拘束されるよう持ち掛けることだった」
  81. 81 : : 2014/01/04(土) 13:44:31
    >79 るーじゅんさん

    長いのに読んでくれてありがとう…
    ナミダ
    もうすぐ終わりですっ!
  82. 82 : : 2014/01/04(土) 13:49:26
    ナイル「無論俺は止めた。そんな博打のような策のために、アニ・レオンハートを野放しにして、市民を危険にさらすことはできない」


    エルヴィン「…だが、そこにアニを拘束している限り、ライナーたちは必ずアニを救いにやって来る」


    ジャン「アニを…救いに…」


    ナイル「…ブラウンとフーバーの巨人化の生態に不明な点が多い以上、もし奴らが王都に襲撃に来てしまえば、我々の勝算はほとんど無いとエルヴィンは言った…」


    エルヴィン「アニだけなら、我々にも対策は講じられる。リヴァイも彼女との交戦経験がある」


    ナイル「…俺は乗り気がしなかったが、レオンハートの釈放を日没まで決行しないことを条件に、エルヴィンの新しい策に手を貸すことを承諾した」


    エルヴィン「日没までには、調査兵団がライナーとベルトルトの捕獲に成功したか、失敗したか、ナイルに伝達することができると思われた」


    ジャン「師団長…」
  83. 83 : : 2014/01/04(土) 15:10:56
    ナイル「夕方近く、俺のもとに調査兵団がブラウンとフーバーの身柄を確保したとの伝達が入った。また、リヴァイがイェーガーを回収したこともだ」


    ナイル「私は約束通り、アニを釈放するために、ハンジ・ゾエを呼んだ」


    ナイル「ハンジに憲兵団の制服を着てもらい、木箱を複数持ってこさせ、偽名でハンジを受付に記録」


    ナイル「その木箱の中のひとつにアニを入れ、私はハンジに退獄の許可を与えた」


    ナイル「…以上が、私がエルヴィンにしてやった手引きだ。納得したか、キルシュタイン」
  84. 84 : : 2014/01/04(土) 15:13:07
    ジャンは何も言えずに、ただエルヴィンとナイルの二人を見ていた。


    エルヴィン「ジャン、このことは出来るだけ言い触らさないように…アルミンは別だが」


    ジャン「は、はい…」


    ジャンは頭の中を整理していたが、エルヴィンとナイルの茶を啜るタイミングが重なったのを見た瞬間、急にフフッと吹き出した。


    ナイル「何だ…?キルシュタイン…?」


    エルヴィン「今何か…面白かったか?」


    ジャン「いえ、失礼しました。あの、お二人は…」


    エルヴィン「…?」

    ナイル「…?」


    ジャン「お二人は、実は深い信頼をお持ちなんですね。お互いに」


    エルヴィンは困ったように笑い、ナイルはあからさまに苦々しい表情を浮かべた。


    エルヴィン「…何と言うべきか」


    ナイル「仕方なくだ…こいつは目を離すとすぐ死に急ぐ…」


    あまり素直でない目の前の友人同士の上司たちに、ジャンはニヤニヤを隠すのに必死であった。
  85. 85 : : 2014/01/04(土) 16:13:23
    地下牢獄では再び、ライナー、ベルトルト、そしてアニが拘束されていた。


    ベルトルト「また、捕まっちゃったね…」

    アニ「…ベルトルト、ごめん」

    ライナー「まあ、アニが来てくれたおかげで、また3人揃ったじゃないか…俺は、もうこれでよかったって気もする」

    ベルトルト「僕も、アニは絶対に来てくれるって思ってた」

    アニ「…」

    ライナー「あれだな、リヴァイ兵長と渡り合うなんて、さすがとしか言いようがないな」

    ベルトルト「ちょっと見物だったよね」

    アニ「…あれはリヴァイ兵長の悪ノリ…結局負けちゃったしね」


    アニはリヴァイ兵長が自分を壁に押し付けていた時のことを思い出していた。


    アニ「…ねぇ、聞いていい?」


    ライナー「何だ?」


    アニ「どうして二人は、エルヴィン団長の条件をのんだの」


    3人の間に沈黙が訪れた。


    ベルトルト「…それは…リヴァイ兵長が《友人はどいつだ?》って言った時の、みんなの気持ちと一緒かな…」


    アニ「…?」


    ライナー「…友人以外は帰れ、なんて言われて、帰れるわけないじゃないか…」


    ベルトルト「みんな、帰らなかったよね」


    アニ「…ふん」


    ライナー「また脱獄して、会いにいこうぜ。あいつらに」


    ベルトルト「そうだよ、アニ。次はどうやって故郷に帰ろうかなぁ」


    アニ「…」


    地下で、リヴァイに困惑しながらも、一歩足りと退かなかったかつての仲間の固い決意の表情を、アニは自分の心の平和な部分に仕舞いこんだ。
  86. 86 : : 2014/01/04(土) 17:07:33
    リヴァイはハンジの病室に見舞いに来ている。


    ハンジ「リヴァイひどい…迎えに来てくれるって言ったのに…」

    リヴァイ「…まだそれを言うのか」

    ハンジ「…なんでモブリットが来るんだよぉ…」

    リヴァイ「…そこに、モブリットがいたからだろ」

    ハンジ「なんかうざい…」

    リヴァイ「はやく助けてやった方がいいと判断したんだ…あそこはクソ寒かったしな」

    ハンジ「だからモブリットに頼んだの?」

    リヴァイ「ああ…俺はアニたちを捕まえてたからな。何回も説明しただろ…」

    ハンジ「うぅ…」

    リヴァイ「それにお前、そんなこと言ってたらモブリット泣くぞ…」

    ハンジ「リヴァイひどい…」

    リヴァイ「…寝ろ。俺は帰る」


    ハンジはリヴァイが帰った後、地下の回廊で倒れていた自分を助けに来たモブリットの言葉を思い出した。


    《すみません、分隊長…リヴァイ兵長でなくて…すみません…》


    モブリットは、いつも気丈に振る舞っているハンジが、内面ではリヴァイを最も信頼し、認めていることを知っていた。


    ハンジは突然、開いた窓に向かって大声で叫んだ。


    ハンジ「モブリットォォォ!!!君も!!リヴァイも!!同じ!!私の大事な親友だァァァッッ!!」


    看護師「ハンジさん!ここは病院です!!」


    ハンジ「あとエルヴィンもォォォ!!ナイルはちょっと考え中ゥゥゥ!!」


    看護師「…眠らせましょうか?」


    ハンジ「あ、すんません」



    リヴァイはハンジの叫び声を聞いて、眉間にシワを寄せた。


    リヴァイ「…ナイルは考え中かよクソメガネ」

    リヴァイ「…まあ、あいつ面白くはないしな」

    リヴァイ「手間のかかる友人を持っちまったな…エルヴィン」



    ナイル「…ヘックショッ!!」

    エルヴィン「…ックシュン!!」

    ジャン「風邪ですか?」



    リヴァイは冷たい風に思わず目を細めた。


    リヴァイ「…ちゃんと毛布被って寝ろよ、ハンジ」
  87. 87 : : 2014/01/04(土) 18:10:24
    エレンがハッと目を覚ますと、馴染み深い顔が自分を覗き込んでいるのに気づいた。


    アルミン「エレン!!」

    ミカサ「エレン…」

    エレン「お前ら…うっ…」

    ミカサ「まだ動いてはいけない」

    エレン「ここは…」

    アルミン「病院だよ。エレンはずっと寝ていたね」

    エレン「…病院…あっ!!おい、アニたちは!?」

    ミカサ「リヴァイ兵長が捕まえて、今、地下に」

    エレン「そうなのか…」


    エレンは目を伏せた。


    アルミン「アニたちのこれからは、まだ決まってないけど…」


    エレン「…なんか、長かったな」


    心なしか、エレンの声はいつもより弱々しい。


    ミカサ「…うん」


    エレン「二人とも、ありがとな…」

    エレン「お前らがずっと側にいてくれるから、俺は今でもこうして生きてる」


    ミカサ「一緒にいるのは当然のこと」


    エレン「けど…俺といると、お前らすげぇ危ない目に遭っちまうから…」


    アルミン「エレン…」


    エレン「…俺…怖ぇんだ。お前らが怪我したら、俺のせいで死んじまったら…」


    エレン「お前らがいなくなった時、戦える自分が想像つかねぇ…」


    エレンは二人から顔を背けた。


    ミカサ「…エレン、私たちの誰も、いなくなったりはしない」


    アルミン「そうだよ、エレン」


    エレン「…俺、まだ母さんが喰われる夢見るんだ」


    エレン「母さんが喰われて、奴はミカサやアルミンも喰おうとする…最後の最後に…お前らを…」


    ミカサ「…」

    アルミン「…」


    エレン「俺は夢の中でも、やっぱり何もできなくて…」


    エレン「気づいたら、自分で自分の手を噛んでて、その痛みで目が覚める」


    エレン「いっそ一人で戦うべきだと何度も考えた」


    エレン「俺のせいで、もうたくさんの人が死んだ…強力な戦力としても取り返しのつかない人々を殺してしまった…」


    エレン「俺の判断で死んでしまった人もいて…」


    エレン「だからさ…お前らには言っとく。死にたくないと思ったらすぐに、俺の前から去ってくれ」


    エレン「みんな死にたくないのに死んでいった…それを思うと…」


    エレン「今更こんな自分勝手なこと、お前らにしか言えねぇからさ…」


    エレン「頼む…」


    エレンは目をぐっと閉じた。するとそこからボロボロと涙が零れた。
  88. 88 : : 2014/01/04(土) 20:05:18
    アルミン「エレン、聞いて。伝えたいことがあるんだ」


    アルミンの言葉に、エレンはハッとした。


    アルミン「エレンの言うように、ほとんどの人は死にたくないと思って死んでいっただろうと思う」


    ミカサ「…」


    アルミン「僕だって、できればまだ死にたくはないけど」


    アルミン「…けど、それってエレンが決めたことじゃないだろう?」


    アルミン「自分がいつ死ぬかなんて、誰にも分からないよ…」


    エレン「…アルミン」


    アルミン「仲間が何を思って死んでいったのか、想像できないのは辛いけど…」


    アルミン「だけど…死んでいった人が、エレンを恨んで死んだなんて、考えなくていい」


    アルミン「…少なくともエレン、君が君自身のせいにする必要はない」


    アルミン「君は…人類の勝利の鍵だって周りに言われて、何とかしなきゃって焦って、忘れちゃったかもしれないけど…」


    アルミン「みんなエレンを仲間だと信じていたから、戦ったんだよ。自分自身の選択で」


    アルミン「エレン、僕が巨人に食べられそうになった時、誰よりも早く助けに来てくれただろう?」


    アルミン「僕もその時もし君が死んでしまったら、今のエレンと同じ思いを抱えているかもしれない」


    アルミン「けれど、あの時僕を助けたのは、それは、エレンの意思だろう?」


    アルミン「僕は、今、君を守るために戦えるようになって、よくそれが分かった」


    エレン「…アルミン…」


    アルミン「エレン、君が僕に教えてくれたんじゃないか」


    アルミン「思い出して。僕たちは誰かのために死ぬんじゃなく…自分の意思のために死ぬんだ、エレン」


    エレン「…」


    ミカサ「エレン…」


    アルミン「だから僕は、君の大切な友人である僕でありたい。そんな僕自身の意思を守りたい…」


    アルミン「エレン、これからもずっと、僕を君の友人でいさせてほしい」


    エレンは、アルミンと二人、巨人に追い詰められた時にも、彼が自分の側を離れず、自分の名前を何度も叫んでくれたことを思い出した。


    家族ではないが他人でもなく、自分を信じてくれ、相手を信じる奇跡。


    それは彼らが幼い頃からずっと続いていて、彼らを守り抜いてきたものだった。


    それさえあれば。


    エレンはアルミンとミカサの顔をもう一度見つめ、ごしごしと自分の涙を拭いた。


    そして、その日初めての笑顔で答えた。


    エレン「俺だって、同じに決まってんだろ!」



    彼らの世界は、彼らのために、もう進撃の足を止めることはない。
  89. 89 : : 2014/01/04(土) 20:29:02
    【エレン×アルミンver.】終了です!


    今回も…自己満足ssでしたァァァッッ!!←キースしゃん


    (とりあえずナイルさんが書きたかっただけとか)

    (気障野郎リヴァイを全面推ししたかっただけとか)

    (エロいアニが書きたかっただけとか)

    (諸葛孔明アルミンが書きたかっただけとか)

    (とりあえずエルヴィン×ナイルでおっさんがんばれとか)

    (実はリヴァイ×アニが好きとか)


    ジャンの良さは前作でチラッと出したんで、今回も出したかったんですが出しきれず無念…ごめんねジャン…ナミダメ



    根気強くお付き合いくださいました皆様に、敬意を!!
  90. 90 : : 2014/01/04(土) 21:46:21
    次回予告
    シリーズ第5弾【リコ×???】

    リヴァイかエレン、もし需要あればハンネスさんにしますw

    しばしお待ちを!!
  91. 91 : : 2014/01/05(日) 00:09:59
    ジャンリコがいいなぁ
  92. 92 : : 2014/01/05(日) 00:49:15
    >91 名無しさん さん

    ジャンリコ!!!

    すばらしい、ありがとうございます。ときめきました、書きます!
  93. 93 : : 2014/01/05(日) 01:41:26
    アブシャホルテセーネ!!
  94. 94 : : 2014/01/05(日) 01:46:12
    >93

    なっ!?

    誰か通訳を…!!←
  95. 95 : : 2014/01/05(日) 09:15:08
    この文章は....

    あなたは作家ですか?
  96. 96 : : 2014/01/05(日) 12:04:52
    >95
    ひぃぃぃ作家さまではごさいませんが、ありがとうございますっ、畏れ多いです…
  97. 97 : : 2014/01/05(日) 12:15:39
    話がしっかりしてて面白かった!
  98. 98 : : 2014/01/05(日) 13:07:41
    >97
    登場させた人物の数ほど話が長くなる、自分の悪い癖であります!!アセアセ

    ありがとうございましたッッ!!
  99. 99 : : 2014/01/16(木) 15:50:05
    面白い!
    続きのシリーズ期待
  100. 100 : : 2014/08/14(木) 20:13:42
    久しぶりに読み返しました。
    お話の展開もテンポも台詞回しも、全部がさすがのクオリティですね。

    アルミンの長台詞も感動的でした。
    旅から戻って執筆活動を再開される日を心待ちにしています。
  101. 101 : : 2020/10/26(月) 23:13:01
    http://www.ssnote.net/users/homo
    ↑害悪登録ユーザー・提督のアカウント⚠️

    http://www.ssnote.net/groups/2536/archives/8
    ↑⚠️神威団・恋中騒動⚠️
    ⚠️提督とみかぱん謝罪⚠️

    ⚠️害悪登録ユーザー提督・にゃる・墓場⚠️
    ⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️
    10 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:30:50 このユーザーのレスのみ表示する
    みかぱん氏に代わり私が謝罪させていただきます
    今回は誠にすみませんでした。


    13 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:59:46 このユーザーのレスのみ表示する
    >>12
    みかぱん氏がしくんだことに対しての謝罪でしたので
    現在みかぱん氏は謹慎中であり、代わりに謝罪をさせていただきました

    私自身の謝罪を忘れていました。すいません

    改めまして、今回は多大なるご迷惑をおかけし、誠にすみませんでした。
    今回の事に対し、カムイ団を解散したのも貴方への謝罪を含めてです
    あなたの心に深い傷を負わせてしまった事、本当にすみませんでした
    SS活動、頑張ってください。応援できるという立場ではございませんが、貴方のSSを陰ながら応援しています
    本当に今回はすみませんでした。




    ⚠️提督のサブ垢・墓場⚠️

    http://www.ssnote.net/users/taiyouakiyosi

    ⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️

    56 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:53:40 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ごめんなさい。


    58 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:54:10 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ずっとここ見てました。
    怖くて怖くてたまらないんです。


    61 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:55:00 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    今までにしたことは謝りますし、近々このサイトからも消える予定なんです。
    お願いです、やめてください。


    65 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:56:26 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    元はといえば私の責任なんです。
    お願いです、許してください


    67 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    アカウントは消します。サブ垢もです。
    もう金輪際このサイトには関わりませんし、貴方に対しても何もいたしません。
    どうかお許しください…


    68 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:42 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    これは嘘じゃないです。
    本当にお願いします…



    79 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:01:54 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ホントにやめてください…お願いします…


    85 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:04:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    それに関しては本当に申し訳ありません。
    若気の至りで、謎の万能感がそのころにはあったんです。
    お願いですから今回だけはお慈悲をください


    89 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:05:34 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    もう二度としませんから…
    お願いです、許してください…

    5 : 墓場 : 2018/12/02(日) 10:28:43 このユーザーのレスのみ表示する
    ストレス発散とは言え、他ユーザーを巻き込みストレス発散に利用したこと、それに加えて荒らしをしてしまったこと、皆様にご迷惑をおかけししたことを謝罪します。
    本当に申し訳ございませんでした。
    元はと言えば、私が方々に火種を撒き散らしたのが原因であり、自制の効かない状態であったのは否定できません。
    私としましては、今後このようなことがないようにアカウントを消し、そのままこのnoteを去ろうと思います。
    今までご迷惑をおかけした皆様、改めまして誠に申し訳ございませんでした。

▲一番上へ

名前
#

名前は最大20文字までで、記号は([]_+-)が使えます。また、トリップを使用することができます。詳しくはガイドをご確認ください。
トリップを付けておくと、あなたの書き込みのみ表示などのオプションが有効になります。
執筆者の方は、偽防止のためにトリップを付けておくことを強くおすすめします。

本文

2000文字以内で投稿できます。

0

投稿時に確認ウィンドウを表示する

著者情報
chi_i_bi

Art

@chi_i_bi

この作品はシリーズ作品です

Series進撃の何か伝えたい人々 シリーズ

「進撃の巨人」カテゴリの最新記事
「進撃の巨人」SSの交流広場
進撃の巨人 交流広場