このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
この作品はオリジナルキャラクターを含みます。
死神を継ぐ者
- 東京喰種トーキョーグール
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                  - 1 : : 2017/05/08(月) 19:43:26
- 2012年10月✕日
 
 この日は後に買って隻眼の王となる男が半喰種になった日。
 
 そして、"白日庭"で最も『死神』に近いとされた半人間が捜査官に就任した日でもあった…
 
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                  - 2 : : 2017/05/08(月) 20:04:06
- 有馬「今日からはカナイも捜査官か。合格おめでとう。」
 朝比奈「ありがとうございます。…頑張ります。」
 有馬「"にわ"にいた頃からカナイの才能を群を抜いていた。期待しているよ。」
 朝比奈「勿体ないお言葉です…」
 僕は朝比奈叶(カナイ)
 喰種の父と人間の母の間に生まれるも、母は出産と同時に他界、以来喰種の男手一つで育てられた。
 しかし7歳の時居住していた17区に捜査官が到来、父は殺され僕は保護された。
 父は比較的温厚な喰種で人間とも上手くやっていた方だが、その関係を広げすぎたのが仇となって喰種と暴かれ、抵抗したが為に殺された。
 …悪い父親では無かった。
 が、あくまで喰種。
 そう受け止めて、白日庭で生きてきた。
 その後既に優秀な捜査官であり、同じ白日庭の出身だった有馬貴将特等捜査官に憧れアカデミーに入る。
 そこで成績1位を納め今、捜査官になったのだ。
 
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                  - 3 : : 2017/05/08(月) 20:25:06
- 局内を歩いていると、ある人を見かけた。
 
 そこで僕は挨拶した訳だが…
 
 
 呉緒「噂は聞いているよ。…亜門君と同様首席でアカデミーを卒業した期待の新人捜査官…」
 
 朝比奈「とんでもないです。」
 
 呉緒「君の場合は有馬くんの関係者で何やら"特殊"らしいから、パートナーがいないと聞いているが…」
 
 朝比奈「ええ、強いて言えば有馬さんと言うことになるのでしょうか。
 …本当に、恐れ多いことなのですが。」
 
 呉緒「まぁ、色々あるんだろうな…
 …そうだ、そんな特殊な君のクインケを見てみたい。」
 
 
 真戸呉緒上等捜査官、クインケ好きで有名だが早速本領発揮か。
 
 
 朝比奈「ここで…ですか?」
 
 呉緒「そうだ、無理にとは言わんがね」
 
 朝比奈「…構いませんが。」
 
 
 僕はクインケを取り出した。
 
 僕のクインケは2つの…
 
 
 呉緒「ほう…羽赫か。名は?」
 
 朝比奈「カンザキ1/2、改名してアルテミス。
 僕の要望でほぼ完全なハンドガン型にしてもらいました。羽赫の結晶を発射、Rc溶液をマガジンのように交換する仕組みとなっています。」
 
 呉緒「なかなか特殊だね。
 ハンドガンにQバレットではなくハンドガン型のクインケか…
 …興味深い、形を要望したと言っていたが内部設計は?地行くんかね。」
 
 朝比奈「協力して頂いて、一応2人で…」
 
 呉緒「素晴らしい!君とは仲良くできそうだ…
 よろしく頼むよ。」
 
 朝比奈「こちらこそ、これからよろしくお願いします。」
 
 
 真戸上等…悪い方の噂をよく耳にするが、僕にはそうは思えなかったな。
 
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                  - 4 : : 2017/05/08(月) 20:39:07
- まだ捜査対象が告げられていないので、有馬さんの仕事の手伝いを、と思い再び有馬さんの元へ。
 朝比奈「…有馬さんはモグラ叩き…24区の喰種掃討を担当されていますよね。」
 有馬「そうだよ。」
 朝比奈「僕はまだ、捜査対象を告げられていません…お手伝い出来ることはないでしょうか。」
 有馬「私の手伝いは構わない。
 捜査対象を告げられていないのは、今はフリーにしていていいと言う事なんじゃないかな。」
 朝比奈「では…1区や11区は平気でしょうから、その他地方の見回りをしようと思います。」
 有馬「行ってくるといい。」
 朝比奈「助言頂き、ありがとうございました。」
 "白い死神"などと呼ばれ、その人格を勘違いされることもある有馬さんだが…
 彼は冷たい、機械の様な人ではない。
 頼れる素晴らしい捜査官でありつつも、何処か抜けていて、何気に親近感を持てる様な…
 "にわ"にいたから…分かったことだ。
 
- 
                  - 5 : : 2017/05/08(月) 20:47:56
- あの後僕は4区に来ていた。
 朝比奈「任務が下されるまでのしばらく…ここで功績を上げようかな。」
 真戸上等に親近感に似た良いイメージを抱けたのは、何気に僕もクインケ好きだからかもしれない。
 より精進して、より強力な喰種を屠る。
 そこに、より強力なクインケだ。
 僕の人生設計はそんな感じの単純なものだが、複雑動機で動いている人間は何かあるとすぐ止まる。
 これぐらいの方がいいと、自分ながらに思っている。
 朝比奈「しかし…」
 治安が悪いと言っても流石に、そこら辺に喰種はいないか。
 朝比奈「はぁ…」
 燃え尽き症候群という奴か、いや、捜査対象を告げられていないのが問題か。
 …ならば、ここ4区で功績を上げて一気に階級を上げ、強力な捜査対象を告げられるようになればいい。
 僕は気を持ち直して、細い路地裏なんかを探索した。
 
- 
                  - 6 : : 2017/05/08(月) 21:10:24
- ???「共喰いで喰種の力が上がる…クソみたいな迷信かもしんねぇが、試すのには絶好の機会だな…」
 ???「ぐっ…」
 僕は見回りを続けて数時間、遂に喰種を見つけた。
 櫻井「なっ…?誰だ!」
 田邊「うっ…」
 朝比奈「喰種捜査官だ。…今ここで殺されたくなければ投降する事だ。コクリア行きで済むかもしれないぞ。」
 櫻井「クッソ…共喰いはなしか…」
 片方の喰種が、もう一方を置いて逃げた。
 共喰いと言っていたな、仲間割れをしていたのか。
 この場合、動けない片方は後回しだ。
 朝比奈「…」
 櫻井「なっ…?人間にしちゃ足が速いな!」
 僕達半人間は、赫子は出せない、傷治りも早くない、寿命は短い、でも…
 ただの人間よりは、強い。
 特に僕の場合は…
 櫻井「有り得ねぇ…追いつかれる!?」
 常人の8倍近い筋力、つまり単純に見れば喰種にも勝る。
 朝比奈「射程圏内だ、投降するか…?」
 上手く行き止まりに誘導出来た。
 …ここは応じるだろう。
 櫻井「ざっけんな!」
 朝比奈「…では投降はしないと」
 櫻井「当たり前だ!俺はそこらの喰種とは違って赫子を使える!
 お前のちゃちなQバレットなんか弾いてやるよ」
 朝比奈「…ほう、出してみろよ。」
 櫻井「ハヒヒャッ!後悔するぜえ!?」
 その喰種は赫子を出現させた。
 甲赫だ。
 俺は無言でクインケのトリーガーを弾いた。
 櫻井「あ…れ?」
 このクインケの特徴は、ハンドガンだったら少し高いくらいの連射性能と
 朝比奈「弾速。速いだろ?」
 櫻井「クッソ…」
 5000m/sを越える超高速で結晶を打ち出す、という事だ。
 弱点は、Rc溶液のロングマガジンを装備しても弾数が30発くらいだということ。
 だから。
 朝比奈「…コクリア送りは無しだ。
 欲しかったんだよね…甲赫。」
 櫻井「な…」
 俺は更に数発、撃ち込んだ。
 それでその喰種は倒れた。
 朝比奈「…死んだか」
 
- 
                  - 7 : : 2017/05/08(月) 21:17:53
- 朝比奈「こいつは…クインケだ。こっちは…ほっておいても死ぬな。溶液にして貰うとして…」
 僕はあえてトドメを、クインケで刺した。
 理由は…
 朝比奈「4区支部、こちら朝比奈三等。
 抵抗した"2体の"喰種を討伐。
 場所は4区3丁目3393の路地裏。
 死体の回収を頼めますか。」
 局員「了解しました。」
 手柄は大きく見せる。まぁ嘘はついていない。
 しばらくしてそれは来た。
 僕は適当な状況説明をして、要望を伝えた。
 そしてそれは叶うこととなった。
 
- 
                  - 8 : : 2017/05/08(月) 21:29:26
- 僕は連絡後も、様々な場所を捜索した。
 結果…
 吉時「1日で15体の喰種を…就任当日に…」
 朝比奈「勝手な行動をして、申し訳ございません。」
 吉時「いや…これは素晴らしい手柄だよ。
 ちゃんと、投降した喰種は捕獲で済ませているし。
 流石"有馬のペース"に付いていける男。」
 朝比奈「…それはどういう意味でしょうか。」
 吉時「両腕を別々に動かす"だけ"のことも、出来るのはお前達2人しかいないということさ。」
 朝比奈「またまた、ご謙遜を。」
 吉時「…そういう所が、だよ。
 まぁ朝比奈には昇任と新たなクインケを与えなくてはな。
 どうやらクインケの方は、既に案に意見したらしいが…はは、お前らしいな。」
 朝比奈「昇任ですか…?今日付けで捜査官になった僕に務まるでしょうか…」
 吉時「お前こそ、謙遜するな。
 特等でも1日にこんな活躍をするのは大規模な襲撃時くらいだ。」
 朝比奈「そんな…ありがとうございます。」
 吉時「新たなクインケには期待しておけ。
 いずれ有馬と肩を並べるかもな、お前は。」
 
- 
                  - 9 : : 2017/05/08(月) 21:44:13
- 数日間…僕はそのペースで見回りを続けていた。
 10月も終わりかけた頃。
 吉時「あなたを二等捜査官に任命する。
 本局長、和修吉時。」
 僕は…CCG上最速で二等捜査官に上がった。
 吉時「正直手柄的には既に、一等の上を行ってるのだがな。
 Sレート1体、Aレート3体、Bレート8体、
 無レート58体を…様々な区を回りながら討伐、捕獲した。
 次回の昇任式では無条件に一等だ。
 有馬レベルの戦闘力に、有馬以上の行動力。
 やるな…このまま特定の捜査は命ぜずに『見回り』をして貰うのもいいかもしれない。」
 朝比奈「ありがとうございます。」
 吉時「しかして…休みは取っているのか?」
 朝比奈「ええ、5時半起床11時半睡眠で6時間きちんと。
 3食も揃えておりますし…」
 吉時「お前は真面目だな、それと少し天然だ…」
 朝比奈「質問の意図がくみ取れず申し訳ございません…可能であれば本来の意味をお教え頂けないでしょうか。」
 吉時「…私が言いたかった『休み』は、自分の時間を持つことだよ。
 好きなことをする時間も大切だぞ。」
 朝比奈「僕にとってはこの、捜査官としての仕事こそが生きがいです。
 『これ』ほど打ち込めるものは他にありません…ご心配には及びません。」
 吉時「そうか…無理はするなよ。」
 
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                  - 10 : : 2017/05/08(月) 21:53:44
- 朝比奈「真戸上等、笛口の件…お疲れ様でした。」
 呉緒「両方共いい赫子を持っていた…私の主力クインケになるだろう。」
 朝比奈「それは良かったですね!確か…鱗赫と甲赫でしたか。
 攻守のバランスも向上される…いい時期に、素晴らしい仕事をなされましたね。」
 呉緒「ハハ、君はなんだかんだ世渡りが上手そうだな。」
 
- 
                  - 11 : : 2017/05/08(月) 22:44:35
- 朝比奈「亜門一等、ラビットの捜査はどうですか。」
 亜門「君のようには行かないよ…もう、すぐ追い越されてしまいそうだ。
 俺は…色々な人にかってもらっているが、何も出来ていない…」
 亜門一等は、追随を許さないほどの情熱と、決して曲がらない信念を持つことで、いい方の噂が絶えない捜査官だ。
 実際に、僕もそう感じる。
 仕事に対しても私事に関しても常にやる気に満ち溢れている素晴らしい人だ。
 そんな人が僕の名を上げて、追い越されてしまう、なんて。
 出世に重きを置いていないのは分かるのだか、それ以外にも複雑な想いを感じた。
 朝比奈「…あなたのクインケ操術や身体能力は素晴らしく…いえ、類を見ないほどのものがあります。
 …そしてその熱い、心の炎はどんどん燃え移って、周りの方にまで闘志を漲らせるような…
 そんな力と勢いが、あなたにはあるんですよ。
 自信を持って捜査を進めて下さい、お身体に触らない程度に…で。」
 亜門「ありがとう。でもやはり君には敵わない気がするよ…何かね。諦めとは違うのだが…
 君は、有馬さんに似た部分とそうじゃない部分があると思っている。
 俺が今この自分でも知れない『なにか』を感じているのは…どっちにだろうか。」
 朝比奈「分かり兼ねます…難しいですね、こういうのは。」
 亜門「喰種を取り締まっていた方が性に合うだろうな、ただ人と関わるのが苦手には見えないが。」
 朝比奈「…父の影響でしょう。
 色々な面で、様々な影響を受けましたよ。」
 亜門「…そうか。」
 亜門さんも、親のことで複雑な事があると聞いていたな、失敗した…
 僕はそれ以上、その話題には触れなかった。
 
- 
                  - 12 : : 2017/05/08(月) 22:50:04
- 永遠に続くものなどないと、分かっていても。
 ずっとそこにあれば人は、『明日もある』と思ってしまうのだ。
 分かっていたはずが、身をもって何度も経験してきたはずが、
 それでも…重すぎた。
 
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                  - 13 : : 2017/05/08(月) 22:56:01
- 吉時「折角お前が昇任したばかりだと言うのにな…」
 朝比奈「…僕は自由に動けたんです…僕も20区に行っていれば…」
 篠原「お前の責任ではないよ。いや…ここにいる誰の責任でもない。」
 亜門「…俺の……責任ですよ。」
 朝比奈「…」
 今日は11月16日。
 真戸呉緒上等捜査官の…告別式だ。
 その場では、様々なことが語られた。
 そして…真戸さんをよく思っていた人、そうでない人の差が、残酷な程理解出来た場でもあった…
 
- 
                  - 14 : : 2017/05/08(月) 23:11:48
- 大食い、美食家、ラビット…
 最近色々なことが起きている20区に、僕も出向いていた。
 僕は1週間ほど前、式はなしだったが正式に一等捜査官になった。
 その矢先だ、僕は個人の無力さを実感した。
 でも、僕は未だ単独。
 それはそれで役割なのだから、果たすだけだが。
 局員「今日は20区にいらしたんですね。」
 朝比奈「せっかく自由に動ける身です、役立たないと…」
 局員「充分役に立っておられますよ。
 局内ではもう1人の有馬なんて、
 喰種間ではデスガンなんて呼ばれているそうですよ。」
 朝比奈「デスガン?
 何かのアニメで聞いたような名ですね…
 はは、まぁどうでもよいのですが。
 それにしてもデス"ガン"か…」
 局員「どうされました…?」
 朝比奈「いえ…実は制作を依頼しているクインケがありまして、それが今度は甲赫なんですよ。」
 局員「流石は、討伐した喰種の数、捕らえた数共に期間内で見ると1位の朝比奈一等。
 これまでの総合でもその数はかなりのものとか…
 クインケに出来る材料が、沢山ある訳ですね?」
 朝比奈「…まぁ、ええ。それと鱗赫と尾赫を使った鎧型クインケの開発も、地行博士と行っています…
 まぁ、僕が言いたかったのは、どうでもいいことですが…
 それらが完成した時、僕の呼び名はどうなるのかな、と。」
 局員「そりゃあ、『死神』じゃないですか?」
 朝比奈「そんな、恐れ多いですよ…」
 死神か、その場合は白くはないから、ただの死神だろうな。
 
- 
                  - 15 : : 2017/05/08(月) 23:38:59
- 情報集めは昔から、酒場や喫茶と決まっていますのだ。
 芳村「なにかございましたか、あなたは…捜査官の方ですね?」
 朝比奈「ええ…」
 僕は比較的治安が良くて時間帯的にもすることがあまり無かったので、あんていくと言う喫茶に来てみた。
 なかなかいい雰囲気だが…なにか…なんだろう。
 僕はそこの従業員や店長、一部の客になにかを覚えながらも、ここに来た目的を話した。
 朝比奈「この区の…ラビットって知ってます?」
 芳村「ええ、なんでも捜査官の方を…」
 朝比奈「…なかなか厄介な喰種でしてね。
 これの尻尾が掴めなくて困っている訳ですよ…
 なにか、聞きませんでした?
 些細な事でも構いません、連絡する程でもない被害とか、目撃情報とか…」
 芳村「すみませんが、何も…
 こちら知っていることと言えば、素早いくらいしか」
 朝比奈「ええ…羽赫って言うんですけどね、
 ああ…そもそも赫子ってご存知ですか?」
 情報を知らない人に話しても意味が無いのでは、と思うかもしれないが、これでここの店長は店内の喰種関連の話により耳を傾けやすくなる。
 
 それでしばらくしてもう1度来てみたりするのも、1種のやり方だ。
 芳村「ええ…喰種の爪というやつですか。種類が別れるのですか…
 どんな形か知らないもので、てっきり爪のようなのだと思ってましたが…
 羽かく?
 かくの字は分かりかねますが羽のようなのですか?」
 朝比奈「ええ…ラビットの羽赫というのは、攻撃距離や単純な瞬発力、スピードに長けるのですよ。
 遠距離から攻撃が可能な上素早いので、
 目撃出来ても、逃げられやすいのです。
 そして…確かに羽のようだ。」
 芳村「なるほど…飛べたりするのですか?」
 朝比奈「いえ…個体差で能力の差はありますが、飛ぶものは見たことがない…
 あくまで羽型と言った具合で。
 …まぁ、なにかありましたら本当に些細な事でも。
 …また来ますね、いえ、
 仕事の件を抜きにしてもまた来たいんです…店長さん本当にいい腕をお持ちですし。豆も良いですね。
 捜査官でなければ、こういう職場もいいです…毎日が楽しそうで。」
 芳村「色々なお客様と関われて楽しいですよ。」
 朝比奈「なるほど…
 ではごちそうさまでした、会計…これでいいですよね?」
 芳村「ええ確かに。
 ありがとうございました。
 またのお越しをお待ちしております。
 …お仕事頑張ってください。」
 
- 
                  - 16 : : 2017/05/09(火) 06:40:06
- 喰種「お前は…噂のデスガンか。」
 朝比奈「投降しろ、さもなくば今までの奴らのと同様に殺す。
 僕の噂は聞くんだろう…?」
 喰種「…チッ、今ここで死ぬよりかはましか…」
 そう、こういう喰種もたまにいる。
 相対的に
 朝比奈「投降しろ、さもなくばお前を殺す。」
 喰種「お前こそ、俺を知らないのか?
 俺はS+レートカンダチ。」
 朝比奈「聞くよ…Qバレットも羽赫のクインケも切って撃ち落としやがるって…
 もう1件くらいなにかやらかせばお前はSSレートだ。」
 カンダチ「ほう…分かってんなぁ…
 ま、俺は投降されても殺すけどな!
 しかも? 女しか食わないポリシーなんで、殺すだけだ!!クハハハッ!!!」
 こういうのもいる。
 と言うか実はこいつ既にSSレートである。
 本人が知らないだけで繰り上がっている。
 朝比奈「S+レート?
 はっ、笑わせる。
 僕はSS+レートを倒したことがあるし(大嘘)、そもそも今日持ってきたのは羽赫のこれだけじゃない(本当)」
 カンダチ「はぁ?」
 僕は高速で…甲赫:サクライ1/2…改めオートクレールとデュランダルを取り出した。
 朝比奈「…使うのはお前が初めてだ。」
 僕は一気に間合いを詰めて早速切りかかった。
 カンダチ「クッ…」
 朝比奈「かわすか、やるな。」
 カンダチの甲赫と僕のクインケがぶつかり合う。
 カンダチ「…!?」
 そろそろ違和感を感じ始めたか。
 カンダチ「クインケって普通…そろそろ折れるだろ…」
 コイツは喰種の中でも強い筋力が相まって相手のクインケを壊してしまう強力な一撃が厄介な甲赫の喰種だ。
 しかしながら、このクインケは持ち手に溶液を注入出来る。
 それによってひび割れなんかが勝手に直るのだ。
 さらに、切った喰種の血のRc細胞を吸収することで硬くなる…この時もひび割れなんかが直る、特殊なクインケだ。
 まぁ…ある程度常に喰種を討伐しないと成り立たないクインケではあるが…
 ある程度の細身の割に、クインケの中でも相当な強度と切れ味を誇っている。
 朝比奈「そうだな…次はあれに合わせてみるか、要所要所にお前の甲赫貼り付けて…いいな、凄くいい。」
 カンダチ「楽しんでやがるのか…!?」
 朝比奈「なにか目的無かったら…こんなこと、やってられないんだよ僕だって。」
 カンダチ「は…」
 僕はカンダチの頭を切り落とした。
 朝比奈「余裕…」
 僕はカンダチの服で刀を拭き上げた。
 朝比奈「よしっと。」
 朝比奈「本部、こちら朝比奈一等。」
 局員「こちら本部。
 …あなたほどいい報告ばかりの捜査官はいませんから名前を聞いて少し安堵さえ覚えますよ…今回はどうなされました?」
 朝比奈「先程送った喰種の他に、もう一体…
 カンダチを討伐しました。
 生け捕りには出来ませんでした…すみません。」
 局員「投降に応じなかったのなら構いません。
 では今から局員を送って死体を回収させる…
 いつも通りで構いませんね?」
 朝比奈「ええ。いつもすみません…」
 局員「何を言ってるんですか、素晴らしい活躍ですよ。」
 朝比奈「ありがとうございます…では。」
 局員「はい。」
 電話を切って、次だ。
 朝比奈「もしもし?」
 地行「おお、また君かい?最近君のおかげで毎日楽しいよ。」
 朝比奈「それは…良かったです。
 今回は甲赫、尾赫と鱗赫のキメラアーマークインケがあったでしょう、あれに合わせてみたいのですが。」
 地行「いいだろう。
 君が討伐した喰種の殆どは、何気に君以外のクインケにさせて貰ってるしね。
 有難いよ…君のおかげでクインケの数が大幅に上がり、また喰種の数が大幅に減ってるんだ。
 もはや個人の力を越えたような活躍だ。」
 朝比奈「お役に立てているなら光栄です…」
 
- 
                  - 17 : : 2017/05/09(火) 06:47:09
- 地行「来たね…デザインは君のもの通りにやっている。前回の問題点だが、ここを…」
 朝比奈「なるほど、崩壊フェイズを過程した後で…流石ですね。」
 地行「いやいや…こっちも君のアルテミスの設計には驚かされたよ。本業にしないかと誘ったね。」
 朝比奈「はは、3ヶ月前くらいでしたか。」
 地行「ああ…そして10月正式に就任、同月早速昇任。今月も様々な活躍をしてまたも昇任、CCG史上最速…」
 朝比奈「そんな…大したことはしていません。」
 地行「君が大したことをしていないのなら、あの有馬くんでさえ怠惰になってしまうよ、自信を持つといい。
 …今回はとうとうSSか…もう、上等待ったなしだね。」
 
- 
                  - 18 : : 2017/05/09(火) 06:55:32
- 吉時「ハハハ…もう笑けてさえくるな、君の活躍が凄まじ過ぎて…
 任せられるよ、もう1人の有馬…有馬の後継者をね。」
 
 朝比奈「有り難きお言葉…それに恥じぬよう精進します。」
 
 吉時「今以上何をしなくても恥じぬだろうさ。
 今回は…とうとうSSレートをやったか。
 こりゃ次の昇任は飛び級か?」
 
 朝比奈「前例が無いことを僕なんかになされなくても…」
 
 吉時「いや、SSレート配置ってのは複数の"特等捜査官"で対処に当たる必要がある喰種の事だ。
 君はそれを一等の身で1人でやってのけた…特等でもおかしくないんだぞ。
 むしろ、もっとぶつかってきて昇任をねだりたまえ。」
 
 朝比奈「ハハハ…では、和修局長のお考えにお任せします。」
 
 吉時「就任数ヶ月で特等になったら…面白いな?」
 
 朝比奈「まだ経験不足が過ぎますよ…」
 
- 
                  - 19 : : 2017/05/09(火) 07:07:11
- 亜門「昇任式なしにもどんどん精進…流石ですね。」
 
 朝比奈「やめてください敬語なんて!
 今まで通りで構いません…」
 
 亜門「しかし…俺は一等、あなたは上等…
 あなたがよくても、周りの目もありますし。」
 
 朝比奈「本当に…いいんですよ。と言うかじゃあ…上等命令だ、タメ口使え。」
 
 亜門「は、はぁ…かしこまり…分かったよ。」
 
 朝比奈「初めて使いました…」
 
 亜門「ではせめて君もタメ口で…だな」
 
 朝比奈「上等権限で却下する。」
 
 亜門「ハハハ…」
 
- 
                  - 20 : : 2017/05/11(木) 20:09:00
- 朝比奈「アオギリ襲撃?」
 吉時「そうだ、居場所が特定出来てな…
 明日には捜査官全員に告げるつもりだ。」
 朝比奈「有馬特等に告げるのは分かります…僕にまで先に告げたのは何故でしょうか。」
 有馬「…」
 吉時「私の中でお前は有馬と同じくらい特別で…気に入ってると言うことさ。」
 朝比奈「有馬特等は地下…ですよね?」
 吉時「そうだ。流石だな…大幅にCCGが動くから有馬には逆にいつも通りに動いて地下喰種を抑えさせないと逆にやられるかもしれないしな。」
 朝比奈「…して、僕は?」
 吉時「お前にも特殊な任務を与えるようと思う…お前くらいにしか出来ないことだ。」
 朝比奈「そんな…いえ、どんな内容でもやり切らせて頂きますが。」
 吉時「頼もしいな、お前に頼みたいのはコクリアの防衛だ。」
 朝比奈「コクリア…ですか、なるほど…」
 吉時「どさくさ紛れにコクリアを襲ってきた場合の第1防衛ラインとなってもらいたい。
 …そして本隊への連絡も。」
 朝比奈「"第1"…ですか。」
 吉時「危険な…危険すぎる任務だ。
 やり切った場合の報酬は弾むが…拒否権はあるぞ。」
 朝比奈「フフ、局長にそう言われて引き下がれる捜査官などいませんよ。
 …やらせて頂きます。
 命に替えても、コクリアを守り抜きます。」
 吉時「…ありがとう。」
 
- 
                  - 21 : : 2017/05/11(木) 20:33:16
- 朝比奈「…また遺書か。前のなぞればいいか。」
 僕はそれを実行した。
 朝比奈「…よしっと、明後日か…」
 その時、地行博士から連絡が入った。
 朝比奈「もしもし?」
 地行「今から来てくれないか、出来たんだ!」
 朝比奈「僕の…アーマークインケですか?」
 地行「特等方に『アラタ』って言うのも作ったんだけど…
 ハハ、これは正直、その上を行くよ。」
 朝比奈「それ…不味いんじゃ。」
 地行「いいんだよ、君が討伐した喰種達なんだから。」
 朝比奈「そんなもんですかね…」
 僕は何だかんだとても楽しみに本局に向かった。
 地行「いやー、間に合って良かったよ。」
 朝比奈「ありがとうございます…死ぬところでした。」
 冗談混じりに言った。
 冗談"混じり"…つまり大半本気。
 正直局長…僕だけに防衛ラインを任せて何とかなると思っているのか、と。
 C〜S+まではなんとかなろう。
 SS〜はなんとも、SSSなんかもうどうにもならない…が、出てこない保証はないのに。
 地行「聞いてるよ…過酷な任務だってね。
 でもそれを…」
 朝比奈「仮にこなせれば…準特等になれますかね。」
 地行「いや、特等にせざるを得ないさ。」
 朝比奈「しかし準特等特等は昇任に必ず式を通さないと行けませんよね。
 その下でしたら僕の様な事例もありますが。」
 地行「それだって…4ヶ月後には特等という事だよ。」
 朝比奈「…それを励みに頑張りますかね。」
 
- 
                  - 22 : : 2017/05/11(木) 20:45:29
- 作戦当日…と言っても。
 朝比奈「暇だな…」
 まぁそれはそうで、だって命の危険とか言ってもあれはただの仮定なのだから。
 朝比奈「このクインケ…恐ろしいほど体に馴染む。まるで…」
 まるで…喰種になったみたいに。
 このアーマークインケ…『クロガネ』のおかげで体にエネルギーが滾る。
 しかもなにか…頭や五感も冴えて、逆にそれが恐ろしかった。
 その時連絡が。
 朝比奈「はい!こちら朝比奈上等!」
 吉時「ああ、すまない…本隊の作戦が始まったので連絡しただけだ。」
 朝比奈「あ…はぁ…すみません…」
 吉時「いや、タイミングと言うか…メールにすれば良かったな。」
 朝比奈「いやぁ、アハハ…」
 本当ですよ局長。
 こちとらストレスで死にそうなほど張り詰めて待機しているのに。
 
- 
                  - 23 : : 2017/05/11(木) 20:58:58
- 本隊の作戦も9割がた終わった頃。
 朝比奈「ん…」
 物音が聞こえる、足音か?これは…
 このクインケ、本当に恐ろしい。
 地行博士監修だから大丈夫だろうけど…
 喰種になったり、しないだろうな。
 朝比奈「…こちら朝比奈上等。」
 吉時「どうした朝比奈。」
 朝比奈「こちらもこちらで対処させていただきますが…増援は下さいね。」
 吉時「来たのか…」
 朝比奈「遺書には書きませんでしたが、もしもの時はこのクインケ、有馬特等に継いで頂きたい。
 …では。」
 吉時「また。」
 『また』か、それが果たして来るのか来ないのか。
 まぁ僕の活躍次第か?
 ???「おやぁ?キミ1人?」
 朝比奈「そうだよ。それで充分。」
 ???「本当に?」
 正面にいた包帯巻きのフードの女は次の瞬間…
 エト「本当かなぁ」
 僕の横にいた。
 朝比奈「うん」
 それを…
 エト「はっ…あれ?」
 オートクレールで突き刺していた。
 タタラ「エトッ!」
 エト「大丈夫…」
 冴える冴える。
 感覚が。
 朝比奈「そっちこそ…本当か?」
 僕は顔下半分のハーフマスクの男に振り向いた。
 朝比奈「お前にも言ってるんだよ?」
 タタラ「何っ…あ…」
 腰のホルダーに付けたアルテミスをそのまま発射していたこと…
 朝比奈「やはり、気づいてなかったね?」
 他の雑魚は第2ラインに任せてもいい。
 僕の仕事は…
 朝比奈「お前ら2人、僕が止める。」
 
- 
                  - 24 : : 2017/05/11(木) 21:12:50
- 僕はその2人に、優勢でいた。
 しかし…
 こいつら赫子を出してこない。
 朝比奈「舐めやがって…」
 タタラ「俺はいいとして…エトは…ね。」
 エト「そうだね、こんなところで目撃情報出ちゃうと…」
 朝比奈「こんなところ?はっ、出さないとどうしようもないようにしてやる。」
 僕はクロガネを筋力代わりに急接近した。
 エト「キミもなかなか早いね…」
 朝比奈「なかなかだと?」
 僕は女の腕を見せびらかしながら言った。
 朝比奈「そういうのは自分より下のヤツに使えんだよ。
 格上に使うな。」
 出来るだけ虚勢を張っていなければいられなかった。
 でもその虚勢はクロガネを纏った自身の驚異的な力から来る高揚感と相まって本物になる。
 エト「クッ…」
 タタラ「少し時間を稼いで…俺が…」
 エト「なるほどね。」
 朝比奈「何するつもりだ?」
 目先でやっと赫子を出し始めた男にアルテミスの結晶弾丸を打ち込んで言った。
 しかしその姿を見て、意味が分かった。
 朝比奈「赫者かよ…」
 エト「サヨナラ、キャハハッ!!」
 振り向いた逆の、後ろから吹き飛ばされた。
 赫者になっていく姿を見て思わず固まり、つまり『よそ見』をしていた。
 だから気が付かなかった。
 攻撃に、じゃない。
 朝比奈「なるほどね…時間稼ぎとか言ってたのフェイントかよ…そんなに時間かかってないし、まず…」
 エト「モヂモヂモヂ、キャハハハハハハ!!!」
 朝比奈「…2体ともかよ。」
 タタラ「ホウジ…ほじほじほじほじ」
 朝比奈「赫者(キチガイ)共」
 
- 
                  - 25 : : 2017/05/11(木) 21:23:32
- 朝比奈「しかも昔の資料に似たのいたなぁ…似ただけの別人だといいけど。」
 エト「そうだね!そうだといいね!!ヒャハハハハハハ」
 信じたくもない。
 SSレート赤舌蓮の首領の弟、
 そして同じSSレートのタタラに…
 …SSSレート『隻眼の梟』
 朝比奈「さっき…向こうに出たって言ってたのに…随分足が速いな。」
 エト「あんよがじょーず!あんよがじょーすだから!!」
 そんなキチガイじみた発言には目も…いや、耳もくれずに攻撃を加えていく。
 …二体同時にだ。
 朝比奈「意外と行ける!流石僕!!」
 またも虚勢を張りながら。
 それを本物にするために戦う。
 梟の雨の様な攻撃さえも凌いで、タタラの炎をも凌いで…
 何本もあるブレードをかわしながら思ったこと。
 朝比奈「やっぱ…なんでだか知らんけど僕を殺したいみたいだな局長…」
 タタラの赫子の口をデュランダルで刺しながらに独り言を吐いた。
 朝比奈「…だったら、死んでたまるか。」
 
- 
                  - 26 : : 2017/05/11(木) 21:37:24
- エト「タタラ…?」
 朝比奈「…これでキチガイが少し治ったか?」
 今、僕の足元には…
 エト「クッ…ソが!!」
 タタラの首が転がっている。
 朝比奈「次はお前だよ!!」
 僕は何処で溜め込んでいた、自分でさえもよく分からない怒りを梟にぶつけた。
 朝比奈「なかなか壊れないストレス発散アイテム…ゲット。」
 エト「キチガイ野郎…」
 僕は順々にブレードをもぎ取っていった。
 朝比奈「脆いんだよ!こんな赫子!!」
 そして遂に、梟の頭を取っ…
 エト「あっぶないな…」
 しかし梟の本体は体をかがめていた。
 朝比奈「顔見せろ!」
 エト「…ごめんだね。」
 その後もしばらく、僕は優勢に戦いを進めていた…が。
 黒磐「大丈夫か!?」
 増援の到着と共に逃げられた。
 朝比奈「あっ!クッソおい!!
 …あ、はい。大丈夫ですよ。」
 篠原「…今のって。」
 朝比奈「はい、『隻眼の梟』かと。
 最初は人型の赫者だったのですが、あんなバケモノに…」
 篠原「お前の足元の…それは?」
 朝比奈「タタラです。それと…梟の腕。
 5本ですね。赫包も2個やりました。」
 篠原「…有馬を思い出すな。」
 結局、第2ラインで他の雑兵は食い止められコクリアの被害はゼロだった。
 僕達は…勝利した。
 
- 
                  - 27 : : 2017/05/12(金) 07:24:21
- 2013年4月
 朝比奈「…特等…か。」
 イマイチ実感が…と言うかなんだろう、この感じ…
 篠原「…大丈夫か?」
 急に声がかけられた。大丈夫?1体何が。
 朝比奈「…?僕がどうかしました?篠原さん。」
 篠原「顔色が良くないぞ、あの…コクリア襲撃以来から感じていたが今日は特に酷い。」
 朝比奈「そうですかね…心当たりがありません…」
 篠原「いや、分かってるだろ。
 お前仕事しすぎだ…悪いことじゃないが、もう少し気を緩めろ…」
 しすぎ?
 この仕事にやりすぎなんて絶対…ない。
 朝比奈「平気ですよ。
 僕は…有馬さんを越えないといけないんだ。」
 篠原「本当に…それが目的か?」
 朝比奈「…どういうことですか。」
 篠原「今のお前はただ、行き場の無くなった気持ちを喰種にぶつけてるようにしか見えない。」
 朝比奈「…ちゃんと、投降に応じた喰種はコクリア送りにしてるでしょう。
 …それに、相手は喰種ですよ。」
 篠原「…」
 僕はこのCCGで、最も多くの喰種を駆逐した捜査官だ。
 戦闘技術では及ばないものの有馬さんよりもその数は上…
 僕は、活躍している。
 朝比奈「白日の奴らの為にももっと…やらないと。
 …お気遣いありがとうございした、
 …さようなら。」
 
- 
                  - 28 : : 2017/05/12(金) 08:55:07
- 本局を出ていつも通り仕事に取り掛かろうとしたある時、またも急に声がかけられた。
 有馬「カナイ。」
 朝比奈「…珍しいですね。どうされました?」
 有馬「…カナイは、昔の私に似ている。」
 朝比奈「…」
 有馬「少し話をしよう。落ち着いた所で…」
 朝比奈「いよいよ珍しい…構いませんよ、寧ろ光栄です…」
 僕は有馬さんに連れられて、退廃的な雰囲気のマンションに…いや、もつこれは廃墟か。
 朝比奈「…」
 有馬「落ち着くだろうここは…」
 確かに、人1人の姿もないし道路も遠いから本当に…何も聞こえない。
 崩れたコンクリートが影を作っていて、隣の木から漏れた光が時々僕達を照らす。
 有馬「お前と同じくらいの頃…私は学生をやっていたが、よくここに来たよ。」
 朝比奈「…」
 有馬「一緒だった…半人間であった私は…志願したわけでもなく捜査官になっていた。
 いつの間にかな。」
 朝比奈「…僕は……この仕事に不満なんて…」
 有馬「…私もどうせなったのだからと色々やったよ…やり切って、ずっとこうしていれば気持ちはついて来るものだと思っていた。」
 有馬「…増えたのは虚無感だけだった。
 振り返ると後ろには『死』しかなくて、
 私は機械的に、今まで来た道を歩むしか無くなっていた。」
 朝比奈「…」
 有馬「…でも、そんな私にもまだ他の道があったんだ。」
 朝比奈「!」
 有馬「あれは…もうかなり昔の…まだこの髪が黒かった時のことだ。
 ちょうど…今のカナイくらいかもな。」
 有馬「いつも通り仕事をしていた時のこと…
 私はある、半喰種に会った。」
 有馬「戦い…勝利した。
 その時彼女は私に言ったんだ。
 『このクソったれ世界を滅茶苦茶に直してやりたい』と。」
 朝比奈「…滅茶苦茶に…ですか。
 …いいですね、それは。」
 有馬「フッ…あの時の私と同じ返事をするなんてな…
 諦めていた私と諦めていなかった彼女。
 驚いたよ、半人間と半喰種が…
 いや、人間と喰種が"同じこと"を考えていたのだから。」
 朝比奈「同じこと…ですか。」
 有馬「私が生きている間には見れないとしても…せめてカナイには見て欲しいよ。
 滅茶苦茶に直った素晴らしい世界を。」
 朝比奈「…」
 有馬「ここなんだよ、私と彼女…エトが戦ったのは…」
 朝比奈「!…そうだったんですか…
 …それで、何度もここに来たんですね。」
 有馬「カナイがタタラを殺してしまったから"途中から"本気になってしまっただろうが…
 どうだった?」
 朝比奈「確かに…あそこまでは手加減されてたようにも思えました。
 あなたが…関係していましたか。」
 有馬「…隻眼の王…聞いたことはあるだろう。」
 朝比奈「ええ。」
 有馬「あれは『私を倒した喰種』に与えようと思っている称号みたいなものだ…」
 朝比奈「…有馬貴将を倒した喰種がいれば、
 …喰種達の希望になる、ということですか。
 …あなたは、自分の命にかえて喰種に希望と団結を与えようと言うのですか…?」
 有馬「協力してくれないか?
 彼女達始めの喰種が外から、
 私達が中から…」
 朝比奈「今の世界を壊そうと。」
 有馬「…そんなところだ。」
 朝比奈「…いいですよ、あなたが決めたのなら…
 元々あなたに憧れて始めた様なものです、
 ついていきます。」
 有馬「ありがとう。」
 吹いた風が木々を揺らして、太陽が煌々と僕を照らした。
 その風に僕の前髪も揺られて、それがとても眩しくなった。
 僕は…目が覚めた様な気持ちがした。
 
- 
                  - 29 : : 2017/05/12(金) 09:06:25
- それから、止まったように長く感じていた時間はとても早くすぎるようになった。
 朝比奈「…梟、討伐ですか。」
 吉時「そうだ。…有馬、お前には地下を担当してもらいたい。薄々気づいているだろう?」
 有馬「…梟は二体いると」
 吉時「そうだ、お前には片方を…」
 有馬「地下で食い止める、もしくは討伐すると」
 吉時「そうだ。」
 有馬「分かりました。」
 その時、有馬さんの口が少し…上がった。
 この期に笑ったんだ。
 …理由は分かっていた。
 僕も少し笑った。
 吉時「朝比奈には…封鎖網を回って外からの戦力を止めて貰いたい。」
 朝比奈「了解しました。」
 陰で…さっきよりも笑った。
 
- 
                  - 30 : : 2017/05/12(金) 09:21:39
- 2013年9月2日
 ???「通して下さい。」
 朝比奈「…お前は。」
 ???「…ダメですか?」
 朝比奈「良いよ…僕はね。
 亜門には気をつけろ?
 新しいクインケ手に入れたとか入れてないとか。」
 ???「ありがとうございます…名前を聞いてもいいですか。」
 朝比奈「朝比奈叶、半人間。
 …つまりは半喰種の出来損ない…
 ある意味お前の仲間。」
 ???「そうでしたか、僕は…あなたになら名乗れる。
 金木研、元人間の半喰種です。」
 朝比奈「…お前が金木か…」
 有馬さんが目をつけていたな、
 隻眼の王候補、の。
 金木「では行かせて頂きます。」
 朝比奈「…どうぞ。」
 
- 
                  - 31 : : 2017/05/12(金) 09:27:03
- ???「通してください。
 ここを1人喰種が通ったでしょう。
 …眼帯マスクの青年…
 僕は彼を追いかけています。
 教えてくれたら…命は助けますよ。」
 朝比奈「…へぇ。今日は面白いな…」
 ???「質問に答えて下さい。
 でなければあなたを殺す。」
 朝比奈「SSレートjailにSSレートムカデ…
 どっちも殺してもよかったが気まぐれみたいなもんだ。
 …通りな。
 アイツは梟の元へ行った。」
 リオ「!?
 …あ、ありがとうございます…」
 朝比奈「恐らくまだ足止め食らってるから…助けてやれ。
 間違っても殺すなよ、あの人は大事な先輩だ…」
 リオ「分かりました。
 合流したら彼にも伝えますよ。」
 朝比奈「…そうしてくれ。」
 
- 
                  - 32 : : 2017/05/12(金) 09:34:47
- ???「…やりたい放題ですね。有馬さんの影響ですか。
 …あなたも話を聞いたんですね、朝比奈さん。」
 朝比奈「0番隊か…あれでいいんでしょ?」
 0番隊隊員「構いませんが…」
 朝比奈「…全員通してる訳じゃないから、安心して。」
 0番隊隊員「…もうすぐ、隻眼の梟が不殺の梟の元へ。
 …ただ有馬さんが… 」
 朝比奈「到着してないのか…
 エトも演技とはいえ何もしない訳にはいかないからね、篠原さん達が危ないか。」
 0番隊隊員「ええ…何でも例の隻眼…ムカデが。」
 朝比奈「僕が通したのが不味かったか?
 …分かった、連絡に来たんだろう?もう帰っていいよ。
 僕は…エトと一芝居うってくる。」
 0番隊隊員「お願いします…」
 
- 
                  - 33 : : 2017/05/12(金) 09:44:38
- 朝比奈「自己判断でここに来ました、有馬さんももうすぐ来ると思いますが…」
 田中丸「…朝比奈ボーイ。」
 鉢川「朝比奈か…」
 エト「キャハハハハハハッ!」
 予定が違ってすまないね。
 僕はそんな想いをあくまで胸にしまってエト…隻眼の梟と演技ながらにほとんど本気で戦った。
 田中丸「回避しながら攻撃とは…迅いのだね」
 鉢川「援射やめろ!足引っ張んな!!」
 見守る捜査官達、そこで…
 捜査官「なっ…梟を…」
 捜査官「喰った!?」
 朝比奈「……よし。」
 誰にも聞こえない小声で呟いた。
 ここまで予定通りだ。
 僕はすぐさま…いや、あえてひとコンマ置いたあと追いかけた。
 エト「キャハハハハハハッ!ハハハハハハッ」
 僕は最後にアルテミスを撃つがもう射程外…
 念のため有馬さんの予定を聞きていてよかった。
 …僕がそれを再現出来るとは、自分自身驚いたが。
 
- 
                  - 34 : : 2017/05/12(金) 09:49:13
- 朝比奈「その2人を…育てるんですね。」
 有馬「そうだ…私の代わりに、すまないな。」
 朝比奈「いえ…しかし片方は生粋の喰種。
 CCGにはなんと…?」
 有馬「赫包が多すぎて…とでも言うさ。」
 朝比奈「僕も助言しますよ。」
 有馬「我々なら…説得できるだろうからな。
 よろしく頼む。」
 朝比奈「…ええ。」
 
- 
                  - 35 : : 2017/05/12(金) 10:01:00
- 2015年9月。
 
 有馬さんは左目に加え、右目の視力も著しく低下していた。
 
 
 ???「こんにちは、朝比奈特等捜査官。」
 
 ???「こんにちは。」
 
 朝比奈「君達は…」
 
 ???「明日の作戦を合同でやると聞いたのでご挨拶を。」
 
 朝比奈「ああ、そうだったな。
 …上手くまとまってる?クインクス。」
 
 佐々木「それが…なかなか。
 凜太朗だけは、上手く行ってますよ。」
 
 凜太朗「はは、いやー…瓜江さん達だって別に…」
 
 
 佐々木琲世に佐々木凜太朗。
 
 兄弟"設定"の彼らは元、
 金木研と凜央(リオ)…
 さらに言えばムカデとjailだ。
 
 
 朝比奈「特殊な班だから周りの批判も多いだろうけど…めげないで。
 僕や…有馬さん、暁さんとか他にも色々…
 応援している人は沢山いるから。」
 
 佐々木「ありがとうございます…」
 
 
 どちらもRc抑制剤の適度な投与で何とかなっていると言った具合だった。
 
- 
                  - 36 : : 2017/05/12(金) 10:33:29
- 暁「やぁ」
 朝比奈「…階級関係なく話してくれるあなたは気楽でいいです…」
 暁「琲世と話していたな、どんな内容だ?」
 朝比奈「…頑張れよと、批判が多いでしょう、彼ら…」
 暁「私もな…」
 朝比奈「それは許せませんね…僕から言ってやりましょうか?」
 暁「いや…気にしないことにするよ。」
 朝比奈「そうですか……
 暁さん。」
 暁「どうした?」
 朝比奈「凜太朗とも、お知り合いだったんですか?…初対面には見えなかった。」
 暁「ああ、あいつが"喰種"だった時の事だがな。」
 朝比奈「…そうでしたか。」
 暁「お前こそ、2人に会っていたのではないか?」
 朝比奈「ええ…どこでとは言えませんが…」
 暁「そうか、まぁ構わない。」
 言ったらご時世的に不味いだろう…
 朝比奈「…仕事終わったら、飲みにでも行きません?あ、いえ…どこでもいいんですけど。」
 暁「酒はやめておくよ…昔…ある奴に止められてな。」
 朝比奈「そうですか…」
 その相手が誰だか、ほとんど分かっていたので聞かなかった。
 暁「それ以外は構わない。…特等のお誘いを断ったとあればいよいよ評価が危ういしな。」
 朝比奈「そんなことは…はは、ありがとうございます。」
 僕は以前に比べて気を抜いていると思う。
 それで、色々気づけたことがあった。
 
- 
                  - 37 : : 2017/05/12(金) 12:29:54
- 暁「飲もうかな…」
 朝比奈「どうぞお好きに、その場合の介抱はしますよ。」
 暁「やはりやめておくか…」
 朝比奈「あ、あれ。そんなに信用ありません?」
 暁「いや…"また"迷惑をかけてしまってはなと思ったまでだ。」
 朝比奈「あぁ…すみません…」
 暁「…美味しいな、このサンドウィッチ…」
 朝比奈「そうですね。隠し味に…」
 その時暁さんが目を見開いた。
 朝比奈「どうされました…?」
 暁「いや…今日は色々、デジャヴが多くてな…」
 朝比奈「そう…ですか…」
 朝比奈「やっぱり飲みません?」
 暁「…」
 やっぱり飲まないか、と思ったその時。
 暁「グイッ」
 朝比奈「!」
 暁さんは勢いよく僕のワインを飲んだ。
 
- 
                  - 38 : : 2017/05/13(土) 06:12:49
- 朝比奈「えっ…ちょっ…」
 お構い無しに僕のワインを飲み干す暁さん。
 朝比奈「ま、まぁ…まぁ構いませんけど…お」
 同じグラスだぞ、少し気にしたりしないのか。
 暁「もう一杯…」
 オーナー「かしこまりました。」
 暁さんはその後もペースを上げて…
 …僕は止めなくていいのだろうか。
 朝比奈「あの…もうそろそろ…」
 暁「金にゃらだしゅじょ…」
 朝比奈「!?」
 噂以上の弱さじゃないか。
 暁「なっ…なにをするのら!!」
 僕は暁さんを後ろから…担ぎ上げるような形をとった。
 朝比奈「ほら、もう帰りますよー。」
 暁「わたひは…わたひはへいきなのら…」
 暁さんを自宅へ送った後僕は二日酔いにならないように薬だのを買い揃えて、半ば無理矢理飲ませた。
 暁「スー…スー…」
 暁さんの呼吸のペースが落ち着いて、でもまだ不安だったのでその場にいた。
 …結局、日が昇るまで。
 暁「男と言うのは…なんかしてないといられないのか?」
 朝比奈「いやー…腕立て伏せよりはマシだと思いますよ?」
 僕がやっていたのは…
 暁「ま、まぁ…大事なことだが…」
 朝比奈「ええ。」
 クインケの手入れ。
 だってやることないし。
 暁「すまないな…またやってしまった。」
 朝比奈「飲みはじめたころは今日は大丈夫とか言ってましたけど…はは、全然駄目じゃないですか。」
 暁「…ありがとな…」
 朝比奈「あっ、ずるい…そう言われて許せない男っているんですかねぇ…
 CCGの厄介者だなんて、僕CCGの聖母だと思ってるんですよ暁さんのこと。(見た目は)」
 暁「からかっているのか?そうでないならセクハラだぞ。」
 朝比奈「えっ…」
 暁「冗談だ、笑ってくれ。
 …アイツにもそういうのが少しあっても良かったのにな…
 色々な意味で堅すぎた。」
 朝比奈「…ですね。」
 僕達はそのまま談笑を続けて、CCGには一緒に向かった。
 
- 
                  - 39 : : 2017/05/13(土) 06:27:56
- 朝比奈「早いね琲世くん…」
 佐々木「色々…知ってます?トルソー…」
 朝比奈「知ってるよ、大分手こずってるんだってね。」
 佐々木「ええ…」
 朝比奈「僕が…やってあげようか?
 CCGただ1人の完全フリーだから動けるよ。」
 佐々木「いえそんな…いや、有難いんですけどね?
 頼り切る訳には…」
 そこで琲世の耳元に近寄り、呟いた。
 朝比奈「元有馬さんのユキムラを貸してくれるのが条件、それで倒しちゃえば…さ。
 対価はトルソーの討伐戦績の譲渡…
 どう?」
 佐々木「ダメですよ、そんな…」
 朝比奈「…じゃあ僕は戻るよ、いいんだね?」
 佐々木「うぅ…」
 朝比奈「…大丈夫、クインクスは優秀だから。
 ちゃんとまとめ切れば必ず…行ける。」
 佐々木「ありがとうございます…」
 朝比奈「もしもの事があれば呼んで。
 どこにいても駆けつける。
 …勿論内緒でね。
 まぁその場合はトルソーはぶっ殺しちゃうけど…いいね?」
 佐々木「は、はぁ…ありがとうございます。」
 朝比奈「じゃあ。」
 
- 
                  - 40 : : 2017/05/13(土) 06:40:34
- 僕の特等権限として認められているものはいくつかある。
 その中で僕がよく使うのは…
 一つ目は完全自由捜査。
 僕は任務が与えられていない時はどんな喰種の対処に当たっても問題ない。
 そしてパートナーはなし。
 二つ目はラボの自由使用。
 地行博士と同等の権限を持っているので逆に依頼を受けたりも出来る。
 三つ目は…動く範囲の広い僕の足となる…これだ。
 朝比奈「緊急車両と同等の権限…
 信号も速度制限も車線さえも関係なし。
 何よりこいつだよな…」
 カワサキニンジャH2R
 公道では走らせられないこれも僕の権限があれば普段乗りに使える。
 更にバイクを降りたら、アーマークインケがあるので壁なんかも登れるし…
 ランニング感覚で80kmは出る。
 現場に最速で着けるのはそういった理由だ。
 朝比奈「…職権乱用なんだろうけど。」
 …実績があるから、なんとかなっている。
 
- 
                  - 41 : : 2017/05/29(月) 06:26:28
- 朝比奈「ハイ、とうちゃく…」
 ???「!!?」
 ???「…ほっ」
 朝比奈「殺していい?」
 佐々木「喰種対策法に…」
 朝比奈「あ、いいのね。」
 佐々木「いや…ちょ!」
 琲世は温すぎる、局内でもここまで喰種を殺さないように戦っているのはこいつくらいのものだ。しかし…
 朝比奈「残念だったな…」
 僕は違う。
 カンザキ1/2の片方を連射、片方を1個目のトリガーだけ引いてチャージする。
 チャージが完了したら撃ち込む…しかしこれは避けられた。
 相変わらず連射は続けながらカンザキ1/2を腰にマウントし、代わりにサクライ1/2を取り出して斬りかかった。
 流石に予想外だったかこれはモロに当たった。
 今度は両方サクライに持ち替えて2本の刀で切り刻んでゆく。
 よけられそうな間合いの時はギミック1で刀身を伸ばし、更にしなやかになった刃で対抗。
 ギミック2や3は使うことのないままだ。
 …結果。
 佐々木「色々…聞くこととか…」
 朝比奈「こんなキチガイみたいなのに?…いいよ、特等権限で許可。」
 赫子痕と同様…クインケも跡が残るので今更仕方ない、僕はその場、琲世と2人で回収班を待った。
 …僕はこの時、1人の喰種を殺しただけでなく、知らないうちに六月の運命も変えていたのだった。
 
- 
                  - 42 : : 2017/05/29(月) 06:39:17
- 「読みが当たったな…」
 その後数時間後、自宅にて…
 僕はパソコンと向き合って笑っていた。
 何故か?
 いつも通り株に勝ったからだ。
 特等の給料もあってかなり儲けられているので生活は余裕だった。
 欲しい家、車、バイク、自転車、時計…大体揃っている。
 …独り身なのがたまにキズだけど。
 僕の"せい"で喰種は以前に比べ姿を現さなくなり、というかそもそも絶対数が減ったと思う。
 もともとそこまでいない"喰種"を千数百体は殺してきた。
 もしかしたら全滅できるかもしれない。
 自分で自分の冗談に笑いながら、その"おかげ"で家でこうしている事に自分で自分に感謝しながら…
 僕はベッドに入った。
 
- 
                  - 43 : : 2017/05/29(月) 06:45:23
- しかしそれはわずか数十分で遮られることになる。
 部屋に鳴り響く携帯の着信音。
 僕はすぐさまそれに応答する。
 「はいもしもし。」
 画面を見たので勿論相手は分かっている…
 「どうされましたか局長。」
 「今から来れるか?特等を集めている。
 …今24区が不味いことになってな…」
 「24区?有馬さんは?」
 「…逆だ、有馬以外全滅したんだ。」
 「モグラ叩きが!?」
 「…とりあえず来てくれ。」
 「…分かりました。」
 
- 
                  - 44 : : 2017/05/29(月) 06:56:59
- 吉時「…どうだ有馬、お前から見てレートは。」
 有馬「…隻眼の梟よりも強い戦闘力を所持していたと考えます… 」
 吉時「…SSSか。」
 一同は驚いた。
 吉時「それで…どこにモグラ叩きを突破した後どこへ行ったか、説明をもう一度してくれ。」
 有馬「はい…奴はモグラ叩きを正面突破、V14から地上に出ました。
 直ぐに追いかけましたが逃しました。」
 朝比奈「有馬さんが逃がすとは…確かに不味いですね。」
 有馬「…」
 顔を見れば分かる、演技じゃない…
 田中丸「ンン…少し…いや、かなり不味いねぇ…」
 安浦「そうですね、隻眼の梟以上の戦力を持つ喰種が何処にいるか分からないとなると…」
 その時その場全員の携帯が鳴った。
 場の雰囲気で携帯を取り出すのをほとんどが躊躇ったが、僕と有馬さんと局長だけは普通に見た。
 「…!」
 3人が顔を合わせ、アイコンタクトで局長が他に告げる。
 吉時「…23区支部が…コクリアが…」
 吉時「壊滅した。」
 
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               喰種側の人間
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