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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品はオリジナルキャラクターを含みます。

ソードアート・オンライン 〜黒の剣士と絶剣の物語〜

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  1. 1 : : 2016/11/13(日) 13:04:27
    今日から投稿を始めます。Yいとです!
    初投稿です。投稿は間が空くかもしれませんが、出来るだけ頑張ります。

    注意点
    「多少のキャラ崩壊、設定の崩壊
    誤字、脱字があるかもしれません。」

    キャラ設定
    キリト(桐ヶ谷 和人) …主人公
    ユウキ(紺野 木綿季)…ヒロイン
    アスナ(結城 明日奈)
    リーファ(桐ヶ谷 直葉)
    シリカ(綾乃 圭子)
    リズベット(篠崎 里香)
    シノン(朝田 詩乃)
    クライン(壷井 遼太郎)
    エギル(アンドリュー・ギルバート・ミルズ)
    その他SAOキャラ

    話の設定
    「この話はSAOからでユウキもSAO に最初からログインしているという設定で
    紺野家は全員生きています。」
  2. 2 : : 2016/11/13(日) 14:41:47
    俺はナーヴギアをかぶり、 ベッドに横になり、とあるコマンドを叫ぶ
    「リンクスタート!」
    俺はソードアート・オンラインの世界にダイブした。

    クライン「とりゃっ…うおっ…ぐへっ!」
    クラインは青イノシシ、フレンジーボアに吹き飛ばされていた。
    ユウキ「はあぁぁぁー!」
    一方のユウキは片手剣用ソードスキル「スラント」でイノシシをポリゴンに四散させた。
    この二人はVRの世界自体が初めてのようで、俺にいろいろとレクチャーをしてくれと頼んできたのだ。
    クラインはまだまだだが、ユウキはもうソードスキルを使いこなしている。

    クライン「ユウキちゃんはすごいな〜VR世界が初めてとは思えないぜ。」
    キリト「ああ、本当にすごいな。 クラインも頑張れよ。あのイノシシスライムぐらいの強さだぞ。」
    クライン「ええ!マジで!俺はてっきり中ボスくらいのやつだと思ったぜ。」
    キリト「なわけないだろ。」

    ユウキはある程度モンスターをかってから帰ってきた。

    ユウキ「おーい、キリト〜、僕はだいたいコツはつかめたよ。」
    キリト「ユウキはすごいな〜。」
    ユウキ「キリトが教えるのがうまいからだよ。」
    クライン「俺はもうすぐ飯だから一回落ちるわ。」
    キリト「何かあったら連絡してくれ。」

    俺はクラインとユウキとフレンド登録をする。

    クライン「じゃあまたね、キリト、ユウキちゃん。」
    キリト「おう、またな。」
    ユウキ「またね〜。」

    クラインはメニューウインドウを開いてログアウトしようとして頓京な声を上げた。



  3. 3 : : 2016/11/13(日) 15:49:35
    クライン「あれ?ログアウトボタンがねえ。」
    キリト「なに言ってんだよ、ちゃんと見ろよ…。」
    クライン「…ねえだろ?」
    キリト「ああ、ないな。ユウキはどうだ?」
    ユウキ「うん、僕もないよ。」
    クライン「おいおい、マジかよ。俺5時半にピザの宅配を頼んでんだぞ。」
    キリト「ま、サービス開始初日だしこんなバグもあるだろ。」

    すると突然、リンゴーン、リンゴーンと鐘の音がして光の柱に包まれた。
    これは《転移》だ。

    俺たちは《始まりの街》の中央広場に転移された。
    俺たち三人は周囲にぎっしりとひしめく人波を見回した。
    数秒の間は皆黙って周囲を見回していたが、
    次第にざわざわとそこかしこに発生しボリュームを上げていく。
    「どうなってんだよ。」「これでログアウトできるのか?」「GMはやくでてこいよ。」

    クライン「一体どうなってんだよ。」
    ユウキ「本当にどうしたのかなぁ?」
    キリト「まあ、たぶん大丈夫だろ。」

    すると不意に誰かが叫んだ。

    「あ……上をみろ!」

    俺とクラインとユウキは、反射的に空を見上げた。
    そこには異様な光景が広がっていた。
    空が真っ赤に染まっていき、出現したのは真紅のフード付きローブをまとった巨大な男の姿だった。
    「プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ、私の名前は茅場晶彦。
    今この世界を唯一コントロール出来る人間だ。プレイヤーの諸君はすでにメニューウインドウに
    ログアウトボタンがないのにきずいていると思うが、それが本来の仕様だ。
    外部の人間の手によりナーヴギアを外された場合、諸君の脳を破壊し生命活動を停止させる。
    クライン「なに言ってんだよ、アイツそんなのできるわけねえだろ!」
    キリト「いやできるかもしれない」
    ユウキ「そんな!」
    「またヒットポイントがゼロになった場合にも、同じように脳が破壊される。
    君たちプレイヤーが脱出する方法はアインクラッド最上部、第100層にたどり着き、
    そこにまちかまえる最終ボスを倒しゲームをクリアすれば良い。」
    クライン「クリア…第100層だと!そんなの無理に決まってるだろうが!」

    赤ローブは一切の感情を削ぎ落とした声で告げた。
  4. 4 : : 2016/11/13(日) 15:56:09
    「最後にプレイヤー諸君にとってこの世界が唯一の現実であるという証拠を見せよう。
    アイテムストレージに、私からのプレゼントがある確認してくれ給え。」

    俺はアイテムストレージに入っていたそれをオブジェクト化した。
    それは《手鏡》だった。特に何の変哲もない手鏡だった。

  5. 5 : : 2016/11/13(日) 16:25:23
    クライン「何だこりゃ?」
    ユウキ「手鏡…だよね?」

    すると突然、クラインやユウキ、周囲のアバターが光に包まれた。
    とほぼ同時に俺のアバターを光に包まれたが光は3秒ほどできえた。
    なにも変わってない? いや目の前にいたのは、見慣れたクラインやユウキのではなかった。

    キリト「お前誰だよ。」
    ???「お前こそ誰だよ。」
    ???「あれ?お兄さんたち誰?」
    キリト「もしかして、クラインか!てことはお前はユウキか!」
    クライン「お前がキリトか!」
    ユウキ「ええ!キリト!」

    この二人が見つかったので、俺は茅場に言われたことを思い出し二人にこれからのことを提案する。

    キリト「いいか。茅場の言った言葉が正しければ自分を強化しなくちゃならない、
    おそらくこの街の周りはみんながモンスターを狩りまくってダメだ、俺は次の街にいく
    ユウキ、クライン一緒に来い!」
    クライン「悪いキリト、俺はMMOで知り合った仲間がいるんだ、
    きっとあいつらも不安でいっぱいだと思う、あいつらをおいてはいけない。」
    ユウキ「僕はキリトについていくよ。」

    俺は息を詰め、唇を噛んだ。
    この男はー陽気で人好きのする。きっとこの男は、友達をおいてはいけないのだ。

    キリト「…わかった。ユウキ行くぞ。」
    ユウキ「うん、わかった。」
  6. 6 : : 2016/11/13(日) 16:31:16
    こんな感じどうでしょうか?
    小説を書くのは初めてなのとても難しいですい。
    至らぬ点をあると思いますがご了承ください。
  7. 7 : : 2016/11/13(日) 17:13:54
    僕は受験生なので、投稿が遅れるかもしれませんが、その時はすいません。
  8. 8 : : 2016/11/13(日) 18:01:03
    クライン「キリト!おいキリトよ! おめぇ、案外かわいい顔してやがんな!結構好みだぜオレ‼︎」
    キリト「お前もその野武士ズラのほうが十倍似合ってるよ!」

    そしてこの世界で初めてできた一人の友人に背を向けたまま、まっすぐ、ひたすらに歩きつずけた。

    ユウキ「キリト…良かったの?」
    キリト「……ああ。」

    胸を塞ぐような奇妙な感情を歯をくいしばって呑み下し、俺達は駆け出した。
  9. 9 : : 2016/11/13(日) 21:48:41
    ゲーム開始から一ヶ月で二千人が死んだ。
    プレイヤーは、大きく分けて四つのグループに分かれた。

    一つ目のグループは全体の約半分を占めたのが外部からの救助を待ったもの達だ。
    しかし《コル》がなくなり宿に泊まれなくなったので、何らかの行動を起こさざるをえなくなった。

    二つ目のグループは全体の約3割を協力して前向きにサバイバルをしようとした集団だった。
    のちに《軍》と呼ばれるようになった。

    三つ目のグループは最初に無計画に《コル》を使い果たし食い詰めた者達だ。
    のちに《軍》に入った者が、多くいた。

    四つ目のグループはその他の者達だ。プレイヤー達が作った集団が50ほどあり《ギルド》と呼ばれた。
    ほかに職人になった人たちもいた。

    その他の100人は《ソロプレイヤー》と呼ばれた者達だ。

    俺たちは二人はどのグループにも属さずにコンビを組んでいた。
    そして今日第一層のボス攻略会議が開かれる。

    ユウキ「ねえ、キリト今日は第一層のボス攻略会議が開かれるんだよね?」
    キリト「ああ…じゃあ行くか。」
    ユウキ「うん!」

    今日の会議はディアベルという片手剣使いの青年が呼びかけたそうだ。

    ディアベル「みんな今日は、俺の呼びかけに応じてくれてありがとう。
    俺はディアベル職業は、…気持ち的に騎士やってます!」

    周囲の人達が笑っている。会場が盛り上がった。

    ディアベル「今日俺たちのパーティーがボス部屋を発見した。
    俺たちで第一層のボスを倒し、ゲームをクリアできると、みんなに希望を待たせるんだ。」
  10. 10 : : 2016/11/13(日) 22:34:04
    ディアベル「今日配布されたガイドブックによると、ボスの名前は《イルファング・ザ・コボルトロード》
    それと取り巻きに《ルインコボルト・センチネル》がいる。ここまでで、発言あるか。」
    ???「ちょー待ってんかー。わいはキバオウちゅーもんや」
    キバオウ「ボスと戦う前に言わせてもらいたいことがある。
    こん中に、今までで死んだ二千人に詫び入れないあかんやつがおるはずや。」
    キバオウ「元βテスターは、ビキナーを見捨てて街を出たんや、こん中にもおるはずや、ででこいや。」

    俺は反射的に身をちじめてしまった。それは俺もβテスターだからだ。
    ユウキ以外のビキナーを見捨てた卑怯者だ。

    ユウキ「キリトどうしたの?何かあったの?」

    俺はこの問いにどう答えたらいいか迷ってしまった。
    ユウキに本当のことを言ってしまって大丈夫なのか?そう思ったが正直に話した。

    キリト「ユウキ、実は俺βテスターなんだ。」

    ユウキは少し驚いたような顔をしたが、すぐにニッコリと笑った。

    ユウキ「何だ、そんなことか。僕はキリトが怖い顔してたからもっと深刻なことだと思ったよ。
    僕はそんなくらいのことでキリトを見捨てたりしないよ。
    僕はキリトがいなかったら今生きていたか、わからないしね。僕は何があってもキリトの味方だから。」
    キリト「ありがとう、ユウキ」

    俺は心のそこからホッとした今一人になってしまうのはかなり、辛いと思ったからだ。

    ???「発言いいか」

    と黒人の巨漢の男が言った

    キバオウ「なんやあんた」
    エギル「俺はエギルだ。あんたこのガイドブック、誰が配っているか知っているか?」
    キバオウ「いいや。」
    エギル「このガイドブックは元βテスターの奴らが配ってんだ。それでも何かあるか?」
    キバオウ「うぐっ…わかった、続けてくれ」
    ディアベル「じゃあ、最大最大6人のパーティーを組んでくれ。」

    えっ…

    ユウキ「キリトよろしくね。」
    キリト「おう、よろしくな。」

    やばいこのままじゃ危険すぎる。さすがにたった二人のパーティーじゃあ危険すぎる
    その時ローブを着た一人のプレイヤーを見つけた。

    キリト「あんたもあぶれたのか?」
    ???「違う。わたしはああやって仲良くしているのが嫌いなだけ」
    キリト「…そっか、まあひとまずよろしくな。俺はキリトだ。あんたは?」
    アスナ「…よろしく」
    ユウキ「僕はユウキだよ。よろしくね。」

    そうやって俺たちは三人でパーティーを組んだ。
  11. 11 : : 2016/11/13(日) 23:22:37
    その夜、俺たち二人はベンチに腰掛けて、黒いパンを食べていた。

    ユウキ「はあー、さすがにこのパンばっかり食べてると、嫌になってくるね。味もないし。」
    キリト「確かにな。そうだ、ユウキこれをパンにつけてみな。」

    俺はアイテムストレージから、とあるアイテムをオブジェクト化した。

    ユウキ「何これ?」
    キリト「クリームだよ、つけてみろよ。」

    ユウキはパンにクリームをつけてパンを一口食べると、一気に食べきった。

    ユウキ「う〜〜ん、おいしいよキリト、でも、どうしたのこれ?」
    キリト「クエストの報酬でもらったんだよ。」
    ユウキ「そうなんだ〜。あ、そうだ、キリトこれもらってもいい?」
    キリト「ああ、別にいいぞ。」
    ユウキ「実はね、今日会議の時にあったアスナを見つけたの。」

    そう言ってユウキは右側にあるベンチを指差した。
    そこには、一人でパンを食べているアスナがいた。

    ユウキ「ほら、あそこ。」
    キリト「ああ、ほんとだな。」
    ユウキ「だからねこのクリームをあげようと思って。」
    ユウキ「アスナ、こんばんわ。隣いい?」
    アスナ「ええ、勝手にすれば。」

    ちょっと言葉がきついな。

    ユウキ「アスナ、そのパンにこれつけてみて。」
    アスナ「えっ、ああ、うん…」

    アスナはパンにクリームをつけてパンを一口食べると、一気に食べきった。ユウキとそっくりだ。

    ユウキ「おいしいでしょ?」
    アスナ「……ええ、でもこんなものどこで手に入れたの?」
    キリト「この前やったクエストの報酬でもらったんだよ。」
    アスナ「そう、わたし最近は現実世界に戻ることしか
    考えていなかったから、ご飯になんて気を使っていなかったわ。」
    ユウキ「でも良かった。アスナに喜んでもらえて。そういえばアスナ今日一緒の宿に止まらない?」
    アスナ「別にいいけど。」
    ユウキ「やったー!あっ、キリトもいいよね?」
    キリト「ああ、いいぞ。」
    ユウキ「やったー!じゃあはやく行こ!」
    キリト「ああ。」
    アスナ「ええ。」

    そうしておれたちは、宿屋に向かった。
  12. 12 : : 2016/11/14(月) 00:00:39
    翌日
    俺たちは第一層のボス部屋の前にいた。

    ディアベル「みんな、今日集まってくれてありがとう。
    俺から言えることは一つだけだ。ーー勝つぞ!!」
    キリト「ユウキ、アスナも絶対に死ぬなよ。」
    ユウキ「うん!。」
    アスナ「ええ。」

    そして俺たちはボス部屋に突撃する。

    ボスの部屋は細長い廊下のような構造になっていた。
    すると天井から《イルファング・ザ・コボルトロード》が姿を現した。
    そして、その前に《ルインコボルト・センチネル》が出現した。

    キリト「ユウキ、アスナこっちだ!打ち合わせ通りに行くぞ!」
    キリト「はあぁぁー!」
    俺は片手剣用ソードスキル《スラント》を発動させた。この攻撃で《センチネル》が体勢を崩す。

    ユウキ「やあぁぁぁー!」

    体勢を崩した《センチネル》にユウキが、片手剣用ソードスキル《バーチカル・アーク》を発動させる。

    アスナ「やあぁぁー!」

    続いてアスナが、細剣用ソードスキル《リニアー》を発動させる。
    《センチネル》は一気にHPを7割まで、減少させる。

    キリト「よし、、この調子で行くぞ!」
    ユウキ「うん!」
    アスナ「ええ!」

    そして俺たちは順調に《センチネル》を倒していった。
  13. 13 : : 2016/11/14(月) 18:07:25
    戦いは、かなり有利に進んでいた。未だに死者はいない。
    俺たちは、順調に《センチネル》を倒していった。《コボルトロード》の体力も、残り一本になった。
    俺は妙な違和感を感じた。その違和感の正体はすぐにわかった。
    《コボルトロード》が腰に構えていたのが、タルアールではなく、野太刀だったのだ。

    ディアベル「よし、俺が前に出る!」
    キリト「だめだ!全力で後ろに飛べ!!」

    ディアベルは後ろには飛ばずに、刀用ソードスキル《施車》を発動させた。
    そしてそのあとに《コボルトロード》の追撃でディアベルのHPは、
    イエローからレッドとどんどん減少するしていく。
    俺はなぜディアベルがこんなことをしたのか、わからなかった。
    ディアベルはもしかしてβテスターだったのか?まさかラストアッタクボーナスを…。

    キリト「ディアベル‼︎」
    ユウキ「ディアベルさん‼︎」
    キバオウ「ディアベルはん‼︎」

    俺たちはディアベルに駆け寄る。

    ディアベル「キリト…さん…ユウキ、さん、…ボ…ボスを…た、倒して…ください。」
    キリト「ああ、必ず倒す。」
    ユウキ「うん、絶対に倒すよ。」
    キバオウ「なんでや、なんで、あんたが死んどんや!」
    キリト「おい!まだボスは生きているんだぞ!」
    キバオウ「なんやて。」
    ユウキ「そうだよ。まだ戦いは終わってないんだよ。」
    キバオウ「そ、そうやな。あんたらどうすんや?」
    キリト「俺はボスの、ラストアッタクボーナスを取りに行く。」
    ユウキ「僕はキリトについていくよ。」
    アスナ「わたしもついていくわ。」
    キリト「よし、行くぞ!」
    ユウキ「うん!」
    アスナ「ええ!」

    その直後に《コボルトロード》が刀用ソードスキル《辻風》の構えに入っていた。

    キリト「ユウキ、アスナ避けろ‼︎」

    直後に居合切りの斬撃がとんできた。
    二人とも上手く避けたが、アスナのローブに斬撃が擦り、ポリゴンとなって四散した。
  14. 14 : : 2016/11/14(月) 22:24:24
    ローブの中からとても、綺麗な顔立ちの美少女が出てきた。
    俺たち以外のプレイヤーは、アスナをみて、静かになっていた。

    キリト「ユウキ、アスナいくぞ!」
    ユウキ「うん!」
    アスナ「ええ!」

    俺とユウキは片手剣用ソードスキル《バーチカル・アーク》を放ち、
    アスナは細剣用ソードスキル《リニアー》を放った。
    《コボルトロード》の体力が残り少しになり、俺はもう一度《バーチカル・アーク》を放つ。

    キリト「はあぁぁぁぁぁー‼︎」

    この攻撃により、《コボルトロード》のHPはゼロになり、亀裂が入っていく。
    そして、《コボルトロード》は、ポリゴンとなって四散した。
    それにつられるように後ろにいた《センチネル》もポリゴンとなって四散した。
    デスゲーム開始から約一カ月でようやく、第一層がクリアされた。

    キリト「やっと終わったのか?」
    ユウキ
  15. 15 : : 2016/11/14(月) 23:08:13
    ユウキ「キリト、やったね!」
    アスナ「お疲れ様。」

    すると後ろから、突然キバオウの声が聞こえた。

    キバオウ「なんでや…なんでディアベルはんを見殺しにしたんや‼︎」
    キリト「見殺し…?」
    キバオウ「そうや、お前ボスの使う技をしっとったやんけ!
    その情報があったら、ディアベルはんは死なずに済んだはずや!」

    すると後ろにいたアスナとユウキが口を開いた。

    アスナ「あなたね…」
    ユウキ「キバオウさん…」

    俺は二人が前に行こうとするのを右手で制した。

    キリト「元βテスターだって?俺をあんな奴らと一緒にしないでくれ。
    あのβテストにいた奴らは、ほとんどがレベリングの仕方も知らない、初心者だったよ。
    俺がボスの使うソードスキルを知っていたのは、
    ずっと上の層で刀系のソードスキルを使うモンスターと戦ってきたからだよ。」
    キバオウ「そんなの元βテスターとか比べものにならんやないか…
    そんなのもう…チートや…チーターやないか!」
    「そうだ!ベータにチーターで《ビーター》や!
    キリト「《ビーター》か…。いい名だな。
    そうだ!俺は《ビーター》だ。元βテスターなどと一緒にしないでくれ。」

    これでビーターは、大して怒りなどを買うことはないだろう。
    俺は、ラストアッタクボーナスの
    《コード・オブ・ミッドナイト》を装備して一人で第二層に向かおうとした。
    その時、不意にユウキの言葉を思い出した。

    ユウキ『僕はどんなことがあってもキリトの味方だからね。』

    俺はユウキの元に歩み寄る。

    キリト「ユウキはこれからどうするんだ?」
    ユウキ「僕はどんな時もキリトについていくよ!」

    ユウキは先ほどモンスターからドロップした《コード・オブ・シャドウナイト》を装備した。

    キリト「ユウキ…本当にいいのか?俺がこれから歩く道は真っ暗だぞ。」
    ユウキ「うん、大丈夫だよ。僕はどんな時も絶対にキリトについていくから。」
    アスナ「キリトくん、ユウキちゃんあのね…えっとね、
    わたしとの関係は、ずっと切らないで欲しいんだ。だからその…フレンド登録してくれない?」
    キリト「ああ」
    ユウキ「うん!、わかった。」

    俺たちはアスナと、フレンド登録をする。
    そして俺たちは、第二層に向かった。

    キリト「ごめんな。こんなことに巻き込んじゃって。」
    ユウキ「大丈夫だよ。僕はずっとキリトについていくって決めたから。
    キリト「ありがとう。」

    そうして、俺たちは、進んでいった。
  16. 16 : : 2016/11/15(火) 17:45:30
    《第十一層・タフト》
    ダッカー「我ら、月夜の黒猫団に乾杯!」
    「乾杯!」
    ダッカー「んでもって、命の恩人キリトさんに乾杯!」
    「乾杯!」
    キリト「か…乾杯。」
    「ありがとう。」「助かったよ。」「サンキュなー。」
    サチ「ありがとう。本当にありがとう。」
    キリト「いや、そんな…。」
    サチ「すごい怖かったから。助けに来てくれた時、本当に嬉しかった。」
    キリト「あ、あ…うん。」
    ケイタ「あの〜キリトさん。大変失礼だと思うんですけど、レベルっていくつぐらいなんですか?」
    キリト「……20ぐらい。」
    ケイタ「へえ〜。俺たちとあまり変わらないのに、ソロなんて、すごいですね〜。」
    キリト「あ、ケイタ実は俺コンビを組んでいる奴がいるんだ。あとケイタ、敬語はやめにしよう。」
    ケイタ「そう、そうか。
    じゃあさ急にこんなこと言ってなんだけど、よかったらうちのギルドに入ってくれないか?」
    キリト「ちょっと、コンビ組んでる奴にメッセージ飛ばしてみる。」
    ケイタ「うん、わかった。」

    俺は、ユウキにメッセージを飛ばしてみる。


  17. 17 : : 2016/11/15(火) 17:50:23
    すみません。
    いろいろユーザーが変わったりしてますが
    これは全部僕のユーザーでいろいろあってこんなことになってますが大丈夫です。
  18. 18 : : 2016/11/16(水) 23:01:26
    数分後、ユウキから返信が来た。

    『ギルドには入ってもいいけど、詳しいこととかはキリトが決めていいよ。』

    ケイタ「どうだった?」
    キリト「えっと…OKだって。」
    ケイタ「じゃあ。」
    キリト「ああ、これからよろしく。」
    「よろしく!」

    フィールドでは、俺はひたすら防御に徹し、パーティーメンバーに止めを刺させた。
    そしてダンジョンの安全地帯でサチの手ずくり弁当を食べながら、ケイタは俺に夢を語った。

    ケイタ「俺らは今は、血盟騎士団とか聖龍連合に任せっぱなしだけどさ…。
    ねえキリト、彼らと僕たちは何が違うんだろうな〜。」
    キリト「うーん、やっぱり情報量かな。あいつらはいい狩場とか
    強い武器が手に入るクエストとかの情報を独占してるからさ。」
    ケイタ「そりゃ……それもあるけど僕は意志力だと思うんだ。
    仲間を守り、そして全プレイヤーを守ろうっていう意志の強さっていうかな。
    だからさ……このまま頑張れば、いつかは彼らに追いつけるって、そう思うんだよ。」
    キリト「そうか……そうだな。」

    それから月夜の黒猫団の戦力強化は特筆すべきスピードだったと言える。
    しかし、サチの盾剣士転向計画だけははばかしくなかった。
    サチどちらかといえば、おとなしい、怖がりな性格でとても前衛に向いているとは思えなかった。
    そんなある夜、サチの姿が消えた。
  19. 19 : : 2016/11/16(水) 23:24:35
    ケイタ以下のメンバーは大騒ぎとなり、すぐさま皆で探しに行くことになった。
    俺は一人迷宮区以外の場所を探した。
    サチは主街区の外れの水路にいた。

    キリト「……サチ。」
    サチ「キリト。どうしてこんなとこが分かったの?」
    キリト「カンかな。」
    サチ「そっか………。」
    キリト「みんな心配してるよ。早く帰ろう。」
    サチ「ねぇ、キリト、一緒にどっかにげよ。」
    キリト「逃げるって…何から?」
    サチ「この街から。黒猫団のみんなから。モンスターから。……SAOから。」
    キリト「それは…心中しようってこと?」
    サチ「ふふ…どれもいいかもね。……ううん、ごめん、嘘。
    死ぬ勇気があったらこんな街の圏内になんていないよね。……立ってないで座ったら。」

    おれはサチの隣に腰を下ろす。

    サチ「わたし、死ぬのが怖い。怖くて、このころあんまり眠れないの。」
  20. 20 : : 2016/11/18(金) 21:28:03
    やがてサチがポツリと呟いた。

    サチ「ねぇ、なんでこんなことになっちゃたの?なんでゲームから出られないの?
    なんでゲームなのに本当に死ななきゃいけないの?
    あの茅場って人は、こんなことして、なんの得があるの?こんなことに、なんの意味があるの?」
    キリト「多分、意味なんてない……誰も得なんてしないんだ。
    この世界ができたときにはもう、大事なことはみんな終わっちゃったんだ。」

    おれはサチにひどいウソをついてしまった。
    なぜなら、おれは自分の強さを隠して黒猫団に入っているからだ。
    おれが発した言葉は、嘘で塗り固められた一言だった。

    キリト「……君は死なないよ。」
    サチ「なんでそんなことが言えるの?」
    キリト「黒猫団は十分に強いギルドだ。
    マージンも十分にとっているからあのギルドにいる限り君は安全だ。」
    サチ「…ほんとに?ほんとに私は死なずに済むの?いつか現実に戻れるの?」
    キリト「ああ……君は死なない。いつかきっと、このゲームがクリアされるまで。」

    説得力などのかけらもない、薄っぺらい言葉だった。
    だが、それでも、サチはおれの近くににじり寄り、おれの左肩に顔を当てて、少しだけ泣いた。
  21. 21 : : 2016/11/18(金) 21:30:27
    すいません。ユウキをあまり出せていなくて。
    もうすぐしたら出すので。
    ほんとにすいません。
  22. 22 : : 2016/11/20(日) 22:32:01
    しばらくしてからケイタにメッセージを飛ばして宿屋に戻った。
    その後、サチを部屋で休ませケイタたちに告げた。
    サチが盾剣士に転向するには時間がかかること、できれば槍戦士のまま戦わせたほうがいいということ。
    ケイタたちは俺とサチの間に、どんなやり取りがあったか
    気になったようだが、快くこの提案を受け入れてくれた。
    翌日の夜から、サチは夜が更けると俺の部屋にやってきて眠るようになった。
    サチはおれの近くで、君は死なない、という言葉を聞くとどうにか眠れるのだと言った。

    あの地下水路の夜から約一カ月ほどたったある日、
    ケイタは目標に達したギルド資金を持って不動産仲介プレイヤーの元に出かけていた。

    テツオ「なあ、ケイタが帰ってくるまでに、迷宮区で金を稼いで新しい家具を買う全部揃えて驚かそうぜ。」

    その日俺たちは、最前線の三つしたの層の迷宮区にいた。
    そこは、稼ぎはいいがトラップ多発地帯と言うことも知っていた。
    一時間ほどで目標金額になり帰って買い物をしようと言う時になってダッカーが宝箱を見つけた。
    俺は、その宝箱は放置することを提案したが、理由を聞かれた時口ごもってしまった。
    宝箱を開けた瞬間アラームトラップがけたたましくなった。
    3つあった扉からどんどんモンスターが押し寄せてきた。

    キリト「全員転移結晶で脱出しろ‼︎」
    ダッカー「転移!おい!どうなってんだよ!」
    キリト「まさか…!」

    このエリアは転移結晶無効化エリアだったのだ。
    最初に死んだのはダッカーだった。次にテツオが死に、ササマルが死んだ。
    俺は完全に恐慌し、それまで封印し、それまで制限してきた上位のソードスキルを滅茶苦茶に発動させた。
    だか数があまりにも多くモンスターは増えつずける一方だ。
    サチはモンスターの波にのまれHPを失うその瞬間、俺に向かって右手を伸ばして、何かを言おうと口を開いたが、見開かれたその瞳に浮かんでいたのは、すがりつくような痛々しい瞳だった。

    どうやって生き残ったかは覚えていない。
    俺は何も考えることができず一人呆然と宿屋に戻った。

    新しいギルドハウスで俺たちの帰りを待っていたケイタに全てを話した。
    四人がなぜ死に、俺がなぜ生き残ったのか。
    その全てを知ると、あらゆる表情を失った目で俺を見て、ただ一言こういった。

    「ービーターのお前なんかが、俺たちに関わる資格なんてなかったんだー」
    彼はその足でアインクラッド外周部え向かい、
    追いかけた俺の目の前で、何のためらいもなく柵を乗り越え無限の虚空へ消えていった。
  23. 23 : : 2016/11/20(日) 23:13:12
    《第27層》
    ユウキ「………キリト」

    僕は部屋の中でポツリと、つぶやいた。最近キリトは《月夜の黒猫団》の手伝いをしている。

    ユウキ「………キリト、早く会いたいよ。」

    僕は部屋を出て、主街区をぶらぶらしていた。
    すると転移門からキリトが現れた。僕はキリトのあんな姿見たことがなかった。
    今にも倒れてしまいそうで、僕はすぐにキリトに駆け寄った。

    俺は久しぶりに最前線に戻ったが、何もする気が起こらない。
    今すぐにでもベットに入りたかった。すると向こうの方から、ユウキがこちらに駆け寄ってくるのが見えた。

    ユウキ「キリト!」
    キリト「………」
    ユウキ「…キリト?」
    キリト「黙れ‼︎‼︎…………ごめん」

    俺はつい声をあげてしまった。ユウキは何もしていないのに。

    ユウキ「キリト、大丈夫?何かあったの?」
    キリト「………」

    ユウキは優しく俺に話しかけた。でも、俺は何も話す気にはなれなかった。

    ユウキ「…キリトが話したくないなら別に無理に話さなくてもいいよ。」
    キリト「………ああ。」
    ユウキ「今日はうちにおいで。」
    キリト「あっ、ああ…」

    ユウキ俺は少し抵抗を感じたが、一緒にいてくれる人がいれば安心できる。

    キリト「ユウキ。」
    ユウキ「んっ、どしたの?」
    キリト「ありがとな。」
    ユウキ「いいよ、今のキリトを放ってはおけないよ。」

    そして俺たちは、宿に向かった。
  24. 24 : : 2016/11/21(月) 00:06:26
    《第49層 ミュージェン》
    アルゴ「最近無茶なレベル上げをしてるソーだな。」
    キリト「新しい情報が入ったのか?」
    アルゴ「金を取れるようなもんはないなー」
    キリト「情報屋の名が泣くぜ。」
    アルゴ「βテストにもなかった初めてのイベントダ。情報の取りようがネエよ。
    クリスマスイブ、つまり今日の深夜にイベントボスの《背教者 ニコラス》が、出現する。
    あるもみの木の下にな。有力ギルドの連中も血眼になって探してるぞ。…………お前目星はついてんだろ。」
    キリト「さあな。」
    アルゴ「おまえマジにソロで挑む気か?」
    キリト「……………」

    おそらく、俺はソロでこの戦いに挑めば死ぬだろう。
    誰の目にもも止まることもなく。何の意味も成さずに。
    俺が俺の想い上がりが君たちを殺した。俺がレベルを隠していなければ。
    もし俺がニコラスを倒すことができれば、サチの魂は戻り、彼女の最後の言葉を聞くことができる。
    ユウキには悪いが、俺はやる。

    キリト「……!」
    クライン「よう。」
    キリト「つけてたのか?」
    クライン「まあな。蘇生アイテム狙いか?」
    キリト「ああ」
    クライン「ガセネタかもしれねえアイテムに命かけてんじゃねえよ。このデスゲームはマジなんだよ。
    ヒットポイントがゼロになった瞬間現実の俺たちの体も…、」
    キリト「黙れよ。」

    斬ろうか。俺は本気でそう思った。
    しかし、クラインたちの後ろにたくさんの人影が現れた。

    キリト「おまえもつけられたな、クライン」
    クライン「そうみていだな。」
    風林火山メンバー「げっ、こいつら聖龍連合かよ。」
    クライン「いけっ‼︎キリト!ここは俺たちが食い止める!」
    キリト「クライン…」

    俺はそのまま目的のもみの木まで走った。


  25. 25 : : 2016/11/21(月) 07:29:27
    宿屋
    ユウキ「…キリト」

    キリトは最近夜遅くに、毎日どこかに出かけている。
    キリトは僕が知らないとでも思っているのかな?
    キリトは最近ずっと、悩んでいるみたいだし、本当に大丈夫かな?
    キリトは何でも一人で抱え込んじゃうから、本当に心配だよ。


    俺はもみの木の下に来ていた。それとほぼ同時に鐘がなった。
    そして《背教者 ニコラス》が現れた。
    ニコラスは何かを言おうと口を動かしたが俺はそれを遮るようにつぶやいた。

    キリト「うるせえよ」
  26. 26 : : 2016/11/21(月) 18:39:56
    クライン「はあ…。おっ!キリト!」

    俺はクラインに蘇生アイテムを渡した。

    クライン「おっ、おい。」
    キリト「それが蘇生アイテムだ。」
    クライン「えっと、なになに多少のプレイヤーの名前を…なっ!」
    キリト「次におまえの前で死んだ奴に使ってくれ。」

    俺はその場から立ち去ろうとした。だが、クラインが俺の歩みを止めた。

    クライン「キリト、キリトよお、おめえは最後まで生きのこれよお、いや生きろよお。」

    クラインは涙ながらにそういった。だが俺は特に感じることもなく、つぶやいた。

    キリト「………じゃあな。」

    俺は宿屋で机に何も考えずに突っ伏していた。
    すると、その静寂を割くように聞きなれないアラームオンがなった。
    部屋を見回したがアラームオンの発生源らしきものは見当たらなっかった。
    しかし、ようやくメニューウインドウを開くこと促すマーカーがあることに気づいた。俺は指を振った。
    光っていたのは、アイテムウインドウの、サチとの共通タブだった。
    そこには何か時限起動アイテムが入っていたのだ。
    一覧をスクロールし見つけたのは、タイマー起動のメッセージクリスタルだった。
    俺はそれを取り出し机の上に置いた。
    明滅するクリスタルをクリックすると、懐かしい、サチの声が聞こえた。
  27. 27 : : 2016/11/21(月) 20:37:06
    すいません訂正があります。

    キリト「それが蘇生アイテムだ。」
    クライン「えっとなになに対象のプレイヤーの名前を…なっ!」

    のところの「対象」が、「多少」になっていました。すいませんでした。
  28. 28 : : 2016/11/21(月) 22:38:38
    メリクリスマス、キリト。
    君がこれを聞いている頃、私はもう死んでいると思います。
    もし生きていたら、クリスマスの前の日にこのクリスタルを取り出して、自分の口で言うつもりだからです。

    えっと……、最初に、何でこんなメッセージを録音したのか、説明するね。
    私は、たぶん、あんまり長い間生き延びられないと思います。もちろん、キリトを含めた黒猫団の力が足りないとか、そんなこと考えてるわけじゃないよ。キリトはすごく強いし他のみんなも強くなってるからね。
    私ねほんとのこというと始まりの街から出たくなかったの、フィールドに出るのが怖かったの。
    だからね、こんな中途半端な気持ちでいたら死んじゃうと思うんだ。
    だからね、もし私が死んじゃったら、それは私の本人の問題なんです。
    キリトはあの夜から、毎晩、毎晩、大丈夫って言ってくれたよね。
    だから、もし私が死んだら、きっとすごく自分を責めるでしょう。だから、これを録音することにしたの。
    それと、私、ほんとは、キリトがどれだけ強いか知ってるんです。
    キリトが本当のレベルを隠して私たちと一緒に戦ってくれるのか、一生懸命考えたけどよくわかりませんでした。でもね私、本当はキリトがとっても強いって知って、嬉しかった。すごく安心できたの。
    もし私が死んでも、キリトは生き残ってね。生きてこの世界の最後を見届けてね。
    この世界ができた意味、弱っちい私がこの世界に来た意味、そして、君と私が出会った意味を見つけてください。それが私の願いです。
    だいぶ時間、余っちゃたね。じゃあせっかくだしクリスマスだし歌を歌うね。
    《赤鼻のトナカイ》って歌にするね。じゃあ歌うよ。

    真っ赤なお花の トナカイさんは
    いつもみんなの 笑い者

    でも その年の クリスマスの日
    サンタのおじさんは 言いました

    暗い夜道は ピカピカの おまえの鼻が 役に立つのさ
    いつも泣いてた トナカイさんは 今宵こそはと 喜びました

    私にとって、君は、暗い夜道の向こうでいつも私を照らしてくれた星みたいなものだったよ。
    じゃあね、キリト、君と会えて、一緒にいられて、ほんとによかった。

    ありがとう。
    さようなら。

  29. 29 : : 2016/11/21(月) 22:54:37
    ユウキ「………よしっ!」

    僕はキリトにいる宿に向かった。
    主街区でキリトがとても落ち込んでいたからついてきていたのだ。


    コンコン

    急にノックの音が聞こえた。
    こんな時に誰だ。

    ガチャ

    キリト「誰だってユウキ!」
    ユウキ「キリト!また一人で何でも抱え込んで!」
    キリト「ご、ごめん。」
    ユウキ「キリト…何があったか話してくれる?」
    キリト「………ああ。」
    ユウキ「無理はしなくてもいいよ。」
    キリト「いや、大丈夫だ。」

    俺は黒猫団のこと、そして、そのメンバーのサチの話をした。

    ユウキ「………キリト、僕はこれからもずっと一緒にいて、
    キリトのこと支えるからだから、ひとりで全部抱え込まずに相談してね。」
    キリト「ああ、ありがとう、ユウキ。」
    ユウキ「じゃあ、帰ろう。」
    キリト「ああ。」
  30. 30 : : 2016/11/22(火) 21:02:13
    シリカ「お願いだよ……あたしをひとりにしないでよ………ピナ……。」

    シリカはアインクラッドでは珍しい《ビーストテイマー》だ。だったというべきか。
    テイマーの証である使い魔はもういないのだから。
    シリカは途方もなく、幸運だったと言える。
    何の予備知識もなく、気まぐれで降り立った層の理由もなく、踏み込んだ森で、
    初めて遭遇したモンスターが攻撃せずに近寄ってきて、前日になんとはなしに買った袋入りのナッツをあげるとたまたま、そのモンスターの好物だったというわけだ。
    種族名《フェザーリドラ》全身をふわふわしたペールブルーの綿毛で包まれた小さなドラゴンは、
    そもそもが滅多に現れないレアモンスターだった。テイムに成功したのはシリカが初めてだった。
    シリカはその小竜に《ピナ》となずけた。
    ピナは戦闘力はさほど高くないが、索敵能力や、少量ながらヒール能力などの特殊能力を持っていた。
    シリカはたちまち人気となり、アイドルを求めるパーティーからの勧誘は引きも切らず、
    そんな状況で13歳のシリカが多少舞い上がってしまったのも当然なのかもしれない。
    だが、結局はその慢心が、どれほど悔やんでも取り返しのつかない過ちを犯させることになった。
  31. 31 : : 2016/11/23(水) 16:47:44
    きっかけはささいな口論だった。
    シリカは二週間前に誘われたパーティーに加わって35層北部の通称《迷いの森》で冒険をしていた。
    シリカの参加した六人パーティーは手練れ揃いで、かなりのコルとアイテムを稼いだ。
    みんなの回復ポーションがあらかたなくなったので冒険を切り上げることにして、主街区に戻ろうとした時、
    長身の長槍を装備したもう一人の女性プレイヤーが、牽制のつもりか、シリカにいった。

    ロザリオ「帰還後のアイテム分配なんだけど、あんたはそのトカゲが回復してくれるだから、
    ヒールクリスタルなんて必要ないでしょ?」
    ピナ「キュル!」
    シリカ「そう言う貴方こそろくに前線に出ないのに、クリスタルが必要なんですか?」
    ロザリオ「もちろんよ。
    お子ちゃまアイドルにシリカちゃんみたいに男たちが回復してくれるわけじゃないもの。」
    ピナ「キュル!」
    シリカ「んん!」
    パーティーメンバー「お、おい、二人とも。」
    シリカ「わかりました。アイテムなんていらないです。あなたとはもう絶対に組まない!
    私を欲しいパーティーはいくらでもあるんですから!」
    パーティーメンバー「ちょ、ちょっと。シリカちゃん。」

    シリカにとって迷いの森はモンスターはそれほど強敵ではなかったーはずだった。
    道にさえ迷わなければ。

    シリカは三体のドランクエイプに囲まれていた、シリカは先頭のドランクエイプに短剣用ソードスキル《ラピッドバイド》を命中させ、短剣の身上である高速連続技に持ち込み圧倒する。
    そして短剣用ソードスキル《ファッドエッジ》を放ち、とどめを刺そうとする。
    しかし、一瞬の隙をついて目標の右後方から新たな敵がスイッチして来た。
    シリカは仕方なく、前にスイッチして来たモンスターにターゲットに切り替えた。
    それからもう一度、体勢を整えようとした時驚愕の事態が起きた。
    先ほどHPをほとんど減らしたモンスターが一気にHPを回復させていたのだ。
    シリカはもう一度短剣用ソードスキル《ラピッドバイド》を発動させ、後少しの時にもう一匹がスイッチして来た。その時には、一匹目のHPはフルヒールしていた。
    このままじゃらちがあかない。そう焦った時モンスターの攻撃が直撃した。HPが3割ほど減った。
    シリカは今回復アイテムを持っていない、ピナがHPを回復してくれるが、それは1割ほどしか回復しないしそうそう連発できるものではない。シリカは人生で初めて、死の恐怖を感じた。
    そうしているうちに、もう一度ドランクエイプの攻撃を食らってしまった。
    自分の装備していた短剣が飛ばされる。
    後一撃、攻撃を食らえば死ぬそう分かってはいるが、恐怖のあまり足が全く動かないそしてドランクエイプの攻撃が襲いかかったその寸前、空中で棍棒の前に飛び込んだ小さな影があった。重い衝撃音。エフェクト光とともに、水色の羽毛がパッと飛び散り、ささやかなHPバーが左端まで減少した。
    地面に叩きつけられたピナは、首を上げシリカを見つめて、一声小さく「きゅる……」と鳴いて直後ポリゴンとなって消えた。一枚の長い尾羽根だけを残して。

    シリカ「お願いだよ……あたしをひとりにしないでよ、……ピナ……。」

    シリカの中で何かが切れた。シリカは叫び声をあげながらピナ殺した敵に斬りかかった。


    キリトはユウキと二人で迷いの森にいた。とある用事があったからだ。
    すると近くで女の子が三体のドランクエイプに襲われていた。

    キリト「…ユウキ。」
    ユウキ「うん。」

    俺たちは剣を抜き少女を囲んでいるドランクエイプに斬りかかった。
  32. 32 : : 2016/11/23(水) 23:31:02
    シリカはドランクエイプを倒したがHPはすでに赤の危険領域に入っていたが、それすら意識しなかった。
    死の恐怖すらも忘れ、無謀な突撃をしようとした時、二匹のドランクエイプを二本の純白の光が薙いだ。
    一瞬で猿たちの体が雄叫びをあげながらポリゴンとなって砕け散った。
    呆然としているシリカは、ポリゴンの後ろに二人のプレイヤーが立っていた。一人は全身を黒い装備で統一している男性プレイヤー。もう一人は紫色の長い髪に隣の男性プレイヤーと似たように黒っぽい装備で身を包んだ女性プレイヤーだ。

    キリト「……ごめん、君の友達、助けられなかった……」
    ユウキ「…ごめんね、助けられなくて……。」
    シリカ「……いいえ………あたしが………バカだったんです……。
    ありがとうございます……助けてくてれて……。」
    キリト「…その羽根アイテム名は設定されてるか?」

    その少女は泣きながら羽根をクリックした。アイテム名は《ピナの心》。
    少女はそれを見てまた泣き出した。

    キリト「泣かないで、《ピナの心》が残っていれば蘇生の可能性がある。」
    シリカ「本当ですか!」
    キリト「47層のに《思い出の丘》っていうフィールドダンジョンがある。
    そこのてっぺんにある花が使い魔蘇生用のアイテムらしい。」
    シリカ「ああ、はっ、47層…」

    そうこの子にとって35層より12も上の47層は安全圏とは言えない。

    キリト「実費だけもらえれば俺が入ってきてもいいけど、そこの花本人がいないと咲かないらしいんだ。」
    シリカ「そうですか…情報だけでもありがたいです。頑張ってレベル上げすればいてか……」
    ユウキ「それじゃあだめなんだよ。使い魔を蘇生できるのは死んでから3日以内だから。」
    シリカ「そんな!」

    シリカは再び絶望した。自分の無力さ、愚かさその全てが悔しくて自然と涙が出てくる。
    するとシリカの目の前にトレードウインドウが出現する。

    シリカ「これは…」
    キリト「それで5、6レベルくらい上がると思う。俺とユウキも一緒に行けばなんとかなるだろう。
    シリカ「えっ………」

    シリカはなんで自分にこんなことまでしているのか気になり、おずおずといった。

    シリカ「なんで……そこまでしてくれるんですか?」
    ユウキ「そうだよ…キリトちょっと珍しいよね。なんで?」
    キリト「えっ、えっとー笑わない?」
    シリカ「笑いません。」
    ユウキ「笑わないよ。」
    キリト「………えっと、君が妹に似てるから。」

    あまりにもベタベタなその答えにユウキも、シリカも噴き出した。
    二人は慌てて口を押さえるが、こみ上げてくる笑いをこらえることができない。

    キリト「わっ、笑わないって言ったのに…」

    男は傷ついた表情で肩を落とし、いじけたように俯いた。

  33. 33 : : 2016/11/24(木) 23:24:38
    シリカ「あ、あの、私シリカって言います。」
    キリト「俺はキリト。しばらくの間よろしくな。」
    ユウキ「僕はユウキだよ。よろしくね、シリカちゃん!」
    シリカ「はい!よろしくお願いします!」

    俺たちは握手を交わし主街区に戻った。
    《第35層 ミーシェ》

    宿に向かっている時シリカのファンらしき、二人組が話しかけてきた。

    男性プレイヤーA「お、シリカちゃん帰ってきたんだね!」
    男性プレイヤーB「今度パーティー組もうよ。好きなとこ連れて行ってあげるからさ。」
    シリカ「あ、えっと…」

    シリカは俺の腕に抱きついてきた。俺は結構戸惑った。
    なぜなら、ユウキが怒っているからだ。
    シリカも気が付いたのか、すぐに手を離した。

    シリカ「今はこの人たちとパーティーを組んでいるんで…」

    男性プレイヤーの二人組が俺を睨んだ後、そのまま帰って行った。

    キリト「君のファンか?人気者だな。」
    シリカ「いえ…、マスコット代わりに誘われてるだけですよ、きっと。
    それなのに龍使いシリカなんて呼ばれて浮かれて……それで…」
    キリト「大丈夫。きっと間に合うよ。」

    シリカは晴れやかな顔をした。

    シリカ「はい!そういえばキリトさんと、ユウキさんホームはどこなんですか?」
    キリト「ユウキと同じ50層だけど、面倒だしここの泊まろう。」
    ユウキ「うん!それがいいね!」
    シリカ「ここチーズケーキが結構いけるんですよ。」
    ユウキ「本当!じゃあ、後で一緒に食べようね!」
    シリカ「はい!」

    宿に入ろうとした時、赤髪の女性プレイヤーが話しかけてきた。

    ロザリオ「あら〜。シリカじゃない。森から脱出できたんだ?よかったわね〜。」
    キリト「どうかした?」
    シリカ「いえ…別に…」
    ロザリオ「あら?あのトカゲどうしちゃったの?もしかして?」
    シリカ「ピナは死にました。でも、絶対に生き返らせます!」
    ロザリオ「へえ〜。ってことは、思い出の丘に行く気なんだ?でもあんたのレベルで攻略できんの?」
    キリト「できるさ。そんなに高い難易度じゃない。」
    ロザリオ「あんたもその子に垂らし込まれた口?見たとこそんなに強そうじゃないけど。」
    ユウキ「おばさん…キリトはすっごく強いんだよ…行こ。」
    キリト「お、おう。」
    ロザリオ「………」
  34. 34 : : 2016/11/25(金) 18:51:29
    来週の水曜日まで期末テストがあるので、その間投稿ができないかもしれませんがご了承ください。
  35. 35 : : 2016/11/27(日) 23:43:43
    俺たちは、《風見鶏亭》の一階は広いレストランになっている。
    そこの奥の席にユウキとシリカを座らせ、キリトはNPCの立つフロントに歩いて行った。
    チェックインをしに行ったのだ。

    シリカ「…あの、ユウキさんたちってなんで、迷いの森に居たんですか?」
    ユウキ「えっと、ちょっと用事があってね」
    シリカ「そうなんですか…。ユウキさんとキリトさんってどんな関係なんですか?」
    ユウキ「うーん…なんて言うんだろう?キリトは僕の命の恩人で、今はコンビを組んでいるんだ」
    シリカ「そうなんですね…。……私はてっきり、恋人なのかなって」
    キリト「おーい、チェックインは済ませてきたぞ〜」
    シリカ「あっ、はい。ありがとうございます」
    ユウキ『僕って、キリトの恋人に見えるのかな?』
    キリト「じゃあ食事にしようか」

    ちょうどその時、ウェイターがスープを持ってきてくれた。
    パーティー結成を祝して、というキリトの声にこちんとカップを合わせ、三人は赤色のスープをすすった。

    シリカ、ユウキ「…おいしい!」
    キリト「そうだな。」

    やがてカップが空になり、シリカはポツリとつぶやいた。

    シリカ「…なんで……あんな意地悪言うのかな……」
    キリト「シリカは、MMOはSAOが初めて?」
    シリカ「はい」
    キリト「そうか。ーどんなオンラインゲームでも人格が変わる奴は多い。
    善人になるやつ、悪人になるやつもいるプレイヤーキル、つまり殺人を犯すやつだっている」
    シリカ「人殺しなんて!」
    ユウキ「ひどい!」
    キリト「従来のゲームなら悪を気取って楽しむこともできた。でもソードアート・オンラインは違う」
    シリカ、ユウキ「……」
    キリト「このゲームは遊びじゃないんだ。」
    シリカ「……キリトさん…」
    キリト「はっ、すまない…」

    私はキリトさんが深い懊悩を抱えているのだと悟った。」

    シリカ「キリトさんはいい人です!私を助けてくれたもん!」

    私はキリトさんの手を取りそういった。キリトさんは驚いたような顔をした。

    キリト「俺が慰められちゃったな。ありがとう、シリカ」

    その途端、私は胸の奥の方がズキン、と激しく痛むのを感じた。
    訳もなく心臓の鼓動が早くなる。顔が赤くなる。
    私は手を離し両手で胸をぎゅっと押さえた。でも、深い疼きは一向に消えない。

    キリト「ど、どうかしたのか?」

    テーブル越しに身を乗り出してくるキリトにぶんぶん首を振りながら、どうにか笑顔を作った。

    シリカ「な、なんでもないです!あたし、お腹すいちゃった」
    ユウキ『キリトは鈍感だなぁ。シリカちゃんはキリトのことが好きになったんだよ。』

    シリカの気持ちにはすぐ気がついたユウキだが、自分の気持ちに気ずくのは、まだまだ先のこと。

    それから俺たちは、シチューと黒パン、デザートにチーズケーキを食べ終えた頃には夜の8時を回っていた。
    明日の47層攻略に備えて早く寝ることにした。
    キリトが撮った部屋は偶然にも隣の部屋だった。
    ユウキさんはキリトさんと同じ部屋なんだ…。
    シリカはキリトからもらった武器を使えるよう練習をしたが、
    胸の奥にズキズキするものがいて、なかなかうまくいかない。
    どうにか扱えるようになってから、武装を解除し下着姿でベッドにはいるが全く寝付けなかった。
    もう少しお話ししたいな。
    ふとそう思った時ノックの音が響いた。

    キリト「まだ起きてる?」
    シリカ「キ、キリトさん!」
    キリトさん「47層の説明を忘れてたんだけど、明日にしようか?」
    シリカ「大丈夫です!私も聞きたいと思ってたところで、」

    シリカはドアを開ける寸前自分の姿を思い出した。
    シリカはキリトの部屋にいた。

    シリカ『危なかったぁ』

    ユウキ「シリカちゃんどうかしたの?もしかしてキリトが何かしたの?」
    シリカ「い、いや!キリトさんは何も!本当になんでもないです!」
    ユウキ「よかった」
    キリト「シリカ、説明するよ」
    シリカ「はっ、はい。キリトさんそのアイテムはなんですか?」
    キリト「《ミラージュスフィア》っていうんだ。」
    キリトがアイテムをクリックすると、青く光る球体が出現した。

    シリカ、ユウキ「うわあ……!」
    キリト「ここが主街区だよ。こっちが思い出の丘。
    この道を通るんだけど、ここには厄介なモンスターがいて。」

    キリトは淀みのない口調で説明をしてくれた。
    その落ち着いた声を聞いているだけで、ほんわりと柔らかい気分になってくる。

    キリト「この橋を通ると、もう丘が見え………」
    シリカ「……?」
    ユウキ「しっ………」

    突然、キリトの体が動いた。稲妻のようなスピードでドアを開ける。

  36. 36 : : 2016/11/27(日) 23:50:18
    キリト「誰だ……!」
    シリカ「な、何……!」

    私は慌ててキリトの陰から廊下を見る。
    そこには階段を素早く降りていく影があった。

    ユウキ「聞かれてたみたいだね」
    キリト「そうみたいだな」
    シリカ「えっ………でもドア越しじゃ声は聞こえないんじゃ…」
    キリト「いや、聞き耳スキルが高いとその限りじゃないんだ」

    キリトはドアを閉めながら言った。

    シリカ「でもなんで立ち聞きなんか……」
    キリト「きっと、すぐにわかるさ。メッセージ打つから待っててくれ」

    俺はメッセージを打ち終わり、振り返るとユウキとシリカが気持ちよさそうに眠っていた。

    キリト「俺は床で寝るか」

    そうして俺も眠りについた。
  37. 37 : : 2016/11/29(火) 23:01:31
    耳元で奏でられるのはチャイムの音だ。
    シリカはゆっくりとまぶたをあげ、起き上がろうとした。
    が、体が動かない自分の隣を見るとシリカに抱きつくようにして一人の女プレイヤーが寝ていた。
    この人の名前はユウキ、昨日知り合ったプレイヤーだ。

    シリカ「ユウキさん、起きてください。朝ですよ」
    ユウキ「むにゃ…あれ、なんでシリカちゃんがいるの?」
    シリカ「いいから、離してくださいよ」
    ユウキ「だってシリカちゃんあったかくて気持ちいいんだもん♪」
    シリカ「もう、ユウキさんた…」
    ユウキ「どしたの?」

    シリカはベットにもたれかかるようにして寝ている影を見て、驚いた。
    そう私たちはキリトさんの部屋で寝ていたのだ。

    シリカ「ユウキさん、私たちキリトさんの部屋で寝てたみたい」
    ユウキ「ええ!あっ本当だ。キリト寝てる」
    シリカ「わ、わたしキリトさんの部屋で寝てたんだ。」

    シリカはだんだん顔が赤くなってきた。シリカは両手を顔で覆って身悶える。

    シリカ「キ、キリトさん、朝ですよ〜」

    キリトは目を開けて、シリカの顔を数秒ほど見つめ、すぐに慌てたような表情をした。

    キリト「あ………。ご、ごめん起こそうかと思っていたけど、
    二人ともあんまり気持ちよさそうんに寝てたから」
    ユウキ「ごめんねキリト」
    シリカ「ごめんなさい」
    キリト「別にいいよ。とりあえずおはよう」
    ユウキ「おはよう!」
    シリカ「おはようございます」

    三人は顔を見合わせ笑った。
  38. 38 : : 2016/12/01(木) 22:16:50
    俺たちは一階に降り、《思い出の丘》挑戦に向けてしっかりと朝食をとってから
    隣の道具屋でポーション類の補充を済ませ三人はゲート広場へと向かった。
    青く光る転送空間に飛び込もうとしてシリカが足を止めた。

    シリカ「あ……。あたし、47層の町の名前、知らないや……」
    キリト「いいよ、俺が指定するから」

    恐縮しながらその手を握る。ユウキもなぜか手を握った。

    キリト「転移!フローリア!」

    キリトの声と同時にまばゆい光が広がり三人を包み込んだ。
  39. 39 : : 2016/12/02(金) 23:21:27
    シリカ「うわあ……!」
    ユウキ「綺麗だね!」
    キリト「そうだな、この層は《フラワーガーデン》って呼ばれてて、街だけじゃなくてフロア全体が花だらけなんだ。時間があったら、北の端にある《巨大花の森》にもいけるんだけどな」
    シリカ「それはまたのお楽しみにします」
    ユウキ「じゃあ、フィールドに行こう!」
    キリト「そうだな」
  40. 40 : : 2016/12/06(火) 21:36:22
    しばらく投稿できなくてすいませんでした。もうすぐ再開します。
  41. 41 : : 2016/12/07(水) 20:29:58
    シリカ「あの……キリトさん、妹さんのこと、聞いてもいいですか?」
    ユウキ「僕も聞きたい!」
    キリト「どしたんだよ急に」
    シリカ「あたしに似てるって言ってたじゃないですか。それで、気になっちゃって」
    キリト「……仲はあまりよくなかったな…妹って言ってたけど、実は従妹なんだ。事情があって、生まれてからずっと、一緒だったから向こうは知らないと思う。でも、そのせいかな……俺の方距離を作っていて家で顔をあわせるのも避けてた。」

    かすかな嘆息。

    キリト「祖父が厳しい人でね。俺と妹は、俺が8歳の時に無理やり近所の剣道場に通わさせられたんだけど、俺はどうにも馴染めたくて二年で辞めちゃったんだ。じいさんにそりゃあ殴られて……。
    そしたら妹が大泣きしながら、自分が二人分頑張るから叩かないで、って俺を庇ってさ。
    それから俺はコンピュータにハマっちゃって、その間も妹は本当に真剣に剣道に打ち込んで、祖父が亡くなる前には全国のいいところに行くようになったんだ。じいさんも満足だったろうな……。
    だから、俺はずっと彼女に引け目を感じてた。本当はあいつも他にやりたいことがあったんじゃないか、俺を恨んでるんじゃないかって。そう思うと、つい余計に避けちゃって……そのまま、ここに来てしまったんだ」

    キリトは言葉を止めると、そっとシリカの頭を見下ろした。

    キリト「だから、君を助けたくなったのは、俺の勝手な自己満足かもしれない。
    妹への罪滅ぼしをしてる気になってるのかもしれないな。ごめんな」

    シリカは一人っ子だったがなぜか、キリトの妹の気持ちは良くわかるような気がした。
    ユウキは姉がいるので妹の気持ちは良くわかる。

    シリカ「……妹さん、キリトさんを恨んでなんかいないと思います。何でも、
    好きじゃないのに頑張れることなんかありませんよ。きっと、剣道、本当に好きなんですよ」

    一生懸命言葉を探しながらシリカが言うと、キリトはにっこり微笑んだ。

    キリト「君には慰められてばっかりだな。……そうかな……。そうだといいな。
    …さて……いよいよ冒険開始なわけだけど……」
    ユウキ「うん」
    シリカ「はい」
    キリト「フィールドでは何が起こる変わらない、
    俺が離脱しろって言ったらどこの町でもいいから飛ぶんだ。俺のことは気にしなくていい」
    シリカ「で、でも……」
    キリト「約束してくれ。俺は……一度パーティーをを全滅させてるんだ。二度と同じ間違いはしたくない」
    ユウキ「わかった」

    シリカはキリトの表情があまりにも真剣で、頷くしかなかった。
    キリトはシリカを安心させるようニッと笑い、言った。

    キリト「じゃあ、行こう!」
    シリカ「はい!」
    ユウキ「うん!」

    腰に装備した短剣の感触を確かめながら、シリカは心の中で決意していた。
    少なくとも、昨日みたいなパニックに陥るような 真似だけはしない、自分に出せる全力で戦うんだ、と。
  42. 42 : : 2016/12/08(木) 23:00:42
    __しかし。

    シリカ「ぎゃ、ぎゃああああ⁉︎何これ__⁉︎き、気持ちワル__‼︎ や、やあああ‼︎来ないで___」

    背の高い草むらを掻き分けて出現したのは、いわゆる《歩く花》だ。
    シリカはその姿を見て生理的嫌悪を催させた。

    シリカ「やだってば__」
    キリト「だ、大丈夫だよ。そいつすごく弱いから」
    ユウキ「シリカちゃん頑張れー‼︎」
    シリカ「だ、だって、気持ち悪いんですううう__」
    キリト「この先はもっと気持ち悪い奴もいるから、そんなので気持ち悪がっていたから大変だぞー」
    シリカ「キエーーー‼︎」

    キリトの言葉に鳥肌が立って、悲鳴をあげて、滅茶苦茶に繰り出したソードスキルは当然ながら、空を切った。技後硬直時間にモンスターのツタがシリカの両足をつかんで思いっきり持ち上げた。

    シリカ「わ⁉︎わわわ⁉︎」

    中ずりになったシリカのスカートがずりずりと落ちていく。慌てて左手でスカートを押さえた。ツタを切ろうとするが、不安定な体勢のためうまくいかない。顔を真っ赤にしながら、シリカは叫んだ。

    シリカ「ユ、ユウキさん助けて!」
    ユウキ「キリトはみちゃダメ‼︎」
    キリト「わかってるよ」

    ユウキはシリカをつかんでいるツタを切り落とした。

    ユウキ「シリカちゃん!止めを‼︎」
    シリカ「は、はい!」

    シリカはモンスターの首根っこのあたりに向かってソードスキルを放つ。今度は見事に命中しモンスターの巨大な頭が、ごとり、と落ちると同時に全体もポリゴンとなって四散した。
    すたん、と華麗に着地したシリカは後ろを振り返りキリトに尋ねた。

    シリカ「………みました?」

    キリトは左手で顔を隠しながら、シリカを見下ろし言った。

    キリト「………見てない」
    ユウキ「………本当に?」
    キリト「………ああ」
    ユウキ「シリカちゃん、次から気をつけてね」
    シリカ「はい…」
    キリト「二人とも後ろ‼︎」
    ユウキ、シリカ「えっ?」

    そのあと二人はイソギンチャク型モンスターの粘液まみれの触手にぐるぐる巻きにされた。


    キリト「二人とも気をつけろよ」
    ユウキ、シリカ「はい…」

    二人は一時はパニックになり、
    キリトもその二人の姿をなるべく見ないようにして、どうにか二人を助け出した。

    キリト「じゃあ、行くぞ」
    ユウキ、シリカ「はい…」

    二人は少しの間さっきのこともあり、また触手まみれにされそうなこともあったが、
    5、6体目ぐらいになると、もうその姿に慣れたのかスムーズに進めるようになった。
    赤れんがの道をひたすら進むと小川に架かった橋があり、その奥に日時は小高い丘が見えてきた。道はその丘を巻いて頂上までつずいているようだ。

    キリト「あれが《思い出の丘》だよーここはモンスターの量が多いから気をつけて行こう!」
    シリカ「はい!」
    ユウキ「うん!」

    モンスターを倒しながらシリカはなぜ、キリトやユウキのようなハイレベルプレイヤーが迷いの森にいたのかわからなかった。特にレアアイテムがあるわけではないのに。この冒険が終わったら聞いてみよう。
    そのまま、モンスターと戦いながら登っていくとついに丘の頂上に辿りついた。

    ユウキ「とうとう着いたね」
    キリト「そうだな」
    シリカ「ここに、あの花が……?」
    キリト「ああ。真ん中あたりに岩があってそのてっぺんに……」

    シリカは大きな岩の元へ向かった。
  43. 43 : : 2016/12/09(金) 23:01:24
    シリカ「え……。ない……ないよ、キリトさん!」

    岩の上には短い草だけが生えており、ほかには何もなかった。

    キリト「そんなはずは……。__いや、ほら、見てごらん」
    シリカ、ユウキ「あ………」

    岩の上にある柔らかそうな草の間から一本の目が生えてきていた。やがて、その目はたちまち太くなり、先端に大きな蕾をつけた。そして、つぼみの先端がほころんで__しゃらんと、鈴の音を鳴らしてつぼみが開いた。光の粒が宙に舞った。
    シリカは花にそっと右手を伸ばした。絹糸のように細い茎に触れた途端、それは氷のように中ほどから砕け、シリカの手の中には光る花だけが残った。息を詰め、そっとその表面を触れてみる。
    ネームウインドウが音もなく開く。《プネウマの花》__。

    シリカ「これでピナを生き返らせるんですね……」
    キリト「ああ。心アイテムに、その花の中に溜まっている雫を振り掛ければいい。だがここは強いモンスターが多いから、街に帰ってからの方がいいだろうな。もうちょっと我慢して、急いで戻ろう」
    ユウキ「そうだね。じゃあ帰ろう!」
    シリカ「はい!」

    帰るときにはほとんどモンスターに出くわすことはなく、もう直ぐ街に着く。

    シリカ『もう直ぐしたらいいまたピナに会える__』

    そう思いながら小川にかかる橋を渡ろうとした時。
    不意に後ろからキリトに掴まれた。ドキンとして後ろを振り返ると、キリトとユウキは厳しい顔をしていた。
    二人は橋の向こうの両脇にしげる木立の方を睨み据えていた。
    二人のの口からひときわ張った低い声が発せられた。

    キリト「___そこで待ち伏せしてる奴、出てこいよ」
    ユウキ「おとなしく出てきたほうがいいよ」
    シリカ「え…………⁉︎」
  44. 44 : : 2016/12/10(土) 23:38:45
    シリカは慌てて木立に目を凝らした。だが人影は見えない。
    緊迫した数秒が過ぎたあと、不意にがさりと木の葉が動いた。
    プレイヤーを示すカーソルが表示される。色はグリーン。犯罪者ではない。
    橋の向こうから現れたのは、驚いたことに、シリカの知っている顔だった。

    シリカ「ろ…ロザリアさん⁉︎なんでこんなところに⁉︎」
    ロザリア「アタシのハイディングを見破るなんて、なかなか高い索敵スキルね、剣士さん。侮ってたかしら」

    それでシリカに視線を移す。

    ロザリア「その様子だと、首尾よく《プネウマの花》をゲットしたみたいね。おめでとシリカちゃん」

    ロザリアの真意が掴めず、シリカは数歩後ずさった。なんとも言えないが嫌な気配を感じる。
    1秒後、シリカの直感を裏切らないロザリアの言葉が続き、シリカを絶句させた。

    ロザリア「じゃ、早速その花を渡してちょうだい」
    シリカ「……⁉︎な……何を言ってるの……」

    その時今まで無言だったキリトとユウキが進み出て、口を開いた。

    ユウキ「そうはいかないよ、ロザリアさん」
    キリト「いや__犯罪者ギルド《タイタンズハンド》のリーダーさん、といったほうがいいかな」
    シリカ「え……でも……だって……ロザリアさんは、グリーン……」
    キリト「オレンジギルドといっても、全員が犯罪者カラーじゃない場合も多いんだ。グリーンのメンバーが街で獲物をみつくろい、パーティーに紛れ込んで、待ち伏せポイントに誘導する。昨夜俺たちの話を盗聴してたのもあいつらの仲間だよ」
    シリカ「そ……そんな……。じゃ……じゃあ、この二週間、一緒のパーティーにいたのは」
    ロザリア「そうよォ。あのパーティーの戦力を評価をすんのと同時に、冒険でたっぷりお金がたまって、おいしくなるのを待ってたの。本当なら今日にもヤッちゃう予定だったんだけどね」

    シリカの顔を見つめながら、ちろりと舌で唇を舐める。

    ロザリア「一番楽しみ獲物だったあんたがぬけちゃうから、どうしようかと思ってたら、なんかレアアイテム取りに行くっていうじゃない。《プネウマの花》って今が旬だから、とってもいい相場なのよね。やっぱり情報収集は大事よねー」

    そこで言葉を切り、キリトとユウキに視線を向け肩をすくめた。

    ロザリア「でもそこの二人、そこまでわかってながらノコノコその子に付き合うなんて馬鹿なの?」

    ロザリアの侮辱にシリカは視界が赤くなるほどの憤りを感じた。短剣を抜こうと腕を動かしかけたところで、肩をぐっと掴まれる。

    キリト「いいや、俺もあんたを探してたのさ、ロザリアさん」
  45. 45 : : 2016/12/11(日) 07:59:55
    いやー、いつか私もSAO編頑張ろうかな…?読んでで飽きないですもんね。
    お互い頑張りましょう!
  46. 46 : : 2016/12/11(日) 16:58:01
    そうですね!これからも頑張っていきましょう!
  47. 47 : : 2016/12/11(日) 18:39:24
    ロザリア「__どういうことかしら?」
    キリト「あんた、10日前に、38層で《シルバーフラグス》 っていうギルドを襲ったな。
    メンバー四人が殺されて、リーダーだけが脱出した」
    ロザリア「……ああ、あの貧乏な連中ね」

    眉ひとつ動かすことなく、ロザリアが頷く。

    キリト「リーダーだった男はな、毎日朝から晩まで、最前線のゲート広場で泣きながら仇討ちをしてくれる奴を探してたよ。でもその男は、依頼を引き受けた俺に向かって、あんたらを殺してくれとは言わなかった。
    黒鉄宮の牢獄に入れてくれと、そう言ったよ。__あんたに、奴の気持ちが解るか?」
    ロザリア「解んないわよ」

    面倒そうにロザリアは答えた。

    ロザリア「何よ、マジになっちゃって、馬鹿みたい。ここで人を殺したって、本当のその人が死ぬ証拠なんてないし。そんなんで、現実に戻った時罪になるわけないわよ。だいたい戻れるかどうかもわかんないのにさ、正義とか法律とか、笑っちゃうわよね。アタシそういう奴が一番嫌い。この世界に妙な理屈持ち込む奴がね」

    ロザリアの目が凶暴そうな光を帯びる。

    ロザリア「で、あんた、その死に損ないのいうこと間に受けて、アタシら探してたわけだ。ヒマな人だねー。
    ま、あんたの撒いたエサにまんまと釣らちゃったのは認めるけど……でもさぁ、たった三人でどうにかなると思ってんの……?」

    すると道の両脇の木立が激しく揺れ次々と人影が現れた。ほとんどがオレンジ色のカーソルのプレイヤーだった。__10。待ち伏せにきずかず、まっすぐ橋を渡っていれば囲まれていただろう。

    シリカ「き、キリトさん……人数が多すぎます、脱出しないと……!」
    キリト「だいじょうぶ。俺が逃げろ、と言うまでは、結晶を用意して見てればいいよ。ユウキもな」
    ユウキ「わかった」
    シリカ「で、でも……!」
    ユウキ「シリカちゃん、だいじょうぶだよ。キリトを信じて」
    シリカ「……はい」

    不意に、賊の1人が呟くように言った。

    オレンジプレイヤーA「その格好……盾無しの片手剣……。___《黒の剣士》……?」
    シリカ「え……」

    シリカは驚愕した。確かにこの2人は強かったがまさか《攻略組》とは夢にも思っていなかったからだ。
    賊は急激に顔を蒼白にしながら、数歩後ずさった。

    オレンジプレイヤーA「や、やばいよ、ロザリアさん。こいつ……ビーター上がりの……。も、もう1人は……《黒の剣士》の付き添いの、《絶剣》……、こ、攻略組だ……。」
    ロザリア「こ、攻略組がこんなところをウロウロしてるわけないじゃない!どうせ、名前を名乗ってビビらせようってコスプレ野郎に決まってる。それに___もし本当に《黒の剣士》だったとしても、この人数でかかれば1人ぐらい余裕だわよ!」

    その声に勢いづいたように、オレンジプレイヤーの皆先頭に立つ大柄な斧使いも叫んだ。

    オレンジプレイヤーB「そ、そうだ!攻略組なら、すげぇ金とかアイテム持ってんだぜ!オイシイ獲物じゃんかよ!」

    口々に同意の言葉をわめきながら、賊達は一斉に抜剣した。無数の金属がギラリと凶悪な光を放つ。

    シリカ「キリトさん……無理だよ、逃げようよ‼︎ユウキさんも‼︎」
    ユウキ「だいじょうぶだから、キリトは絶対にだいじょうぶだから!」

    キリトに向かって必死に叫んだが、キリトは武器も抜こうとしない。
    その動きを諦めと取ったか、ロザリアともう1人のグリーンを除く九人の男たちは武器を構えると、
    猛り狂ったように笑みを浮かべ我先にと走り出した。短い橋をドカドカと駆け抜け____

    オレンジプレイヤーA「オラァァァ‼︎」
    オレンジプレイヤーC「死ねやァァァ‼︎」

    俯いて立ち尽くすキリトを半円形に取り囲むと、剣や槍の切っ先を次々にキリトの体へと叩き込んだ。
    同時に9発の斬撃を受け、キリトの体がぐらぐらと揺れた。

    シリカ「いやあああ‼︎」

    シリカは両手で顔を覆いながら絶叫した。

    シリカ「やめて!やめてよ‼︎キリトさんが、し……死んじゃう‼︎

    だが男たちは暴力に酔ったように、手を休めることなくキリトに向かって武器を叩き込みつずける。
    シリカはこれ以上は見ていられないとキリトに駆け寄ろうとした時あることに気がつき、動きを止めた。
    キリトのHPバーが減っていない。
    いや、正確には、絶え間ない攻撃を受けることでほんの数ドットずつわずかに減少するのだが、数秒立つと右端まで回復してしまうのだ。やがて男たちも目の前の黒の剣士が一向に倒れる様子が無いことに気づき、
    戸惑いの表情を浮かべた。
  48. 48 : : 2016/12/11(日) 22:15:04
    ロザリア「あんたら何やってんだ‼︎さっさと殺しな‼︎」

    苛立ちを含んだロザリアの命令に、数秒間に渡って斬撃が雨のように降り注ぐが、やはり状況は変わらない。

    オレンジプレイヤーD「お……おい、どうなってんだよコイツ……」

    異常なものを見るように賊の1人が、腕を止め数歩下がった。
    それに続くように、残りの八人も攻撃を中止し、距離をとる。
    しんとした沈黙が周囲を覆った。その中央で、ゆっくりとキリトが顔を上げた。静かな声が流れた。

    キリト「____10秒あたり400ってとこか。それがあんたら九人が俺に与えるダメージの総量だ。俺のレベルは78、ヒットポイントは14500……さらに戦闘時回復スキルによる自動回復が10秒で600ポイントある。何時間攻撃しても俺は倒せないよ」
    ユウキ「ねっ、だいじょうぶって言ったでしょ」
    シリカ「そ、そうですね……」
    男たちは驚愕したように口を開け、立ち尽くしていた。

    オレンジプレイヤーA「そんなの………そんなのアリかよ……。ムチャクチャじゃねえかよ……」
    キリト「そうだ。たかが数字が増えるだけで、そこまで無茶な差がつくんだ。それがレベル制MMOの理不尽さというものなんだよ!」

    男たちは恐怖を抱き、後ずさった。

    ロザリア「チッ、転移____」

    だがその言葉が終わらないうちに、ぶん、
    と空気が震えたと思った途端、ロザリアのすぐ前にキリトが立っていた。

    ロザリア「ひっ………。い、言っとくけどグリーンのアタシを傷つければあんたはオレンジに、」
    キリト「言っとくが俺はコンビだ。1日2日オレンジになるぐらいどうってこと無いぞ。…コリドーオープン!」

    オレンジプレイヤーD「畜生……」

    残りのオレンジプレイヤーもある者は毒づきながら、ある者は無言で光の中に消えていく。
    キリトはロザリアの襟首を掴み回廊の方へ歩いていく。

    ロザリア「ちょっと、やめて、やめてよ!許してよ!ねえ!……そ、そうだ、あんた、私と組まない?
    あんたの腕があれば、どんなギルドだって……」

    セリフは最後まで続かなかった。キリトは力任せにロザリアを頭からコリドーに放り込み、
    その姿が掻き消えた直後、回廊そのものも一瞬まばゆく光って消滅した。

    キリト「ごめんな、シリカ。君を囮にするようになっちゃって。俺のこと、言おうと思ってたんだけど……君に怖がられると思って、言えなかった」
    ユウキ「本当にごめんね」
    シリカ「い、いえ」

    35層、風見鶏亭

    三人は二階の部屋にいた。

    シリカ「キリトさん、ユウキさん……行っちゃうんですか……?」
    キリト「……ああ…いつかも前線から離れちゃったからな。すぐに戻らないと……」
    ユウキ「…そうだね、ずっとは、離れていられないしね…」
    シリカ「……そう、ですよね……。あ、あたし……」
    キリト「レベルなんてただに数字だよ。この世界での強さ単なる幻想に過ぎない。そんなものよりもっと大事なものがある。だから、次は現実世界で会おう。そうしたら、また同じように友達になろう」
    シリカ「はい。きっと__きっと」
    ユウキ『なんか僕は蚊帳の外だなー』
    ユウキ「さあ、ピナを呼び戻してあげようよ!」
    キリト「そ、そうだな」
    シリカ「はい!」

    シリカはメニューウインドウを開き《ピナの心》と《プネウマの花》を実体化させる。

    キリト「その中に溜まっている雫を、羽根にふりかけるんだ。それでピナは生き返る」
    シリカ「解りました……」

    水色の長い羽を見つめながら、シリカは心の中で囁き掛けた。
    ピナ……いっぱい、いっぱいお話ししてあげるからね。今日のすごい冒険の話を……ピナを助けてくれた、あたしのたった1日だけのお兄ちゃんの話を。
    両目に涙を浮かべながら、シリカは右手の花をそっと羽根に向かって傾けた。


  49. 49 : : 2016/12/12(月) 22:43:28
    僕も受験生なんですが大変ですよね
    期待です
  50. 50 : : 2016/12/13(火) 22:13:10
    ありがとうございます!
    これからも頑張って行くのでよろしくお願いします!
  51. 51 : : 2016/12/13(火) 23:27:41
    ユウキ「ねえ、キリト」
    キリト「どうしたんだ?ユウキ」
    ユウキ「えっとね、前にアスナとフィールドに行った時に温泉を見つけたんだけどさ一緒に来てくれない?」
    キリト「わかった。俺が見張りをするから2人で入ったらいいよ」
    ユウキ「ほんと!ありがとう!キリト!」

    ユウキは目をキラキラさせて喜んでいた。

    キリト『なんか、すごく可愛らしいな』
    ユウキ「?どしたの?」
    キリト「い、いや何でもないよ。アスナには連絡したのか?」
    ユウキ「うん、もうしたよ。もうすぐ来るって」
    アスナ「ユウキちゃん〜!キリトくん〜!」
    キリト「お、来たみたいだな。じゃ行くか」
    ユウキ「うん」


    キリト「うわ〜、すごいな!」
    ユウキ「でしょ!まだあんまり知られてないみたいだからね」
    アスナ「じゃあ、早速入ろう!ユウキちゃん!」
    ユウキ「そうだね!あ、キリト、絶対覗かないでね!」
    キリト「わ、分かってるよ」
    アスナ「見張りはよろしくね、キリトくん!」
    キリト「おう、ふたりで楽しんでこいよ」
    ユウキ「ありがとう!キ〜リト!」


    キリト『ふう、アイテム整理も大体終わったな。それにしても、ふたりともほんとに仲良いよな』

    そんなことを考えていると、不意にふたりの叫び声が聞こえた。

    ユウキ「きゃあ!」
    アスナ「キリトくん、助けてー!」
    キリト「なに!今行くぞ!」
    キリト『いったいなにがあったんだ!俺の索敵スキルで気づけないってことは、相当隠蔽スキルの高い奴か、それよりもふたりとも、無事でいてくれよ!」
    キリト「ユウキ!アスナ!大丈夫か!ってうわ!」

    そこにはあられもない姿のユウキがいた。体にはバスタオルを巻いてはいるのだが、ほとんど取れかけているのだ。

    ユウキ「///み、見ないでーー‼︎」
    キリト「げふっ!」

    キリトはユウキに洗面器のような物を投げつけられていた。


    キリト「つまり、アスナが俺を驚かそうとしてやったのか?」
    アスナ「…うん。ごめんね、ユウキも、もうこんなことしないから、許して〜!」
    ユウキ「………わかったよ」
    キリト「じゃあ帰るか」
    ユウキ「うん。そうだね!帰ろう!」
    アスナ「わかった」



    この日を境にユウキは、キリトと目があったり、触れたりするとす胸のあたりが苦しくなって、何だか顔が赤くなる。

    ユウキ『何なんだろ。この胸のモヤモヤは』

    ユウキがこの気持ちを『恋』と知るのは、もう少し先の話になる。


  52. 52 : : 2016/12/18(日) 00:07:34
    第48層《リンダース》
    リズベット「ふー、これでよし!」
    ユウキ「ありがとうリズ!」

    そういってユウキは代金を渡す。

    リズベット「まーいどそういえば今日は攻略にはいかないの?」
    ユウキ「うん、今日はあの、僕とずっとコンビ組んでる人いるでしょ?あの人と一緒に出かけるから」
    リズベット「ふーん。その人のまた今度うちに連れてきてよね。いろいろ聞いてみたいことあるし、ユウキの事どう思ってるのとか」
    ユウキ「?」
    リズベット「ユウキはその人のことどう思ってるの?」
    ユウキ「うーん、なんだかね、今までは僕を救ってくれた人、僕のことをすごく気遣ってくれる優しい人とかって思ってたんだけど、最近一緒にいたり、目があったりすると、胸のあたりが苦しくなって、体が熱くなるの。でもこのモヤモヤがなんなのかわからないの。リズは何かわかる?」
    リズベット『それって、ユウキはその人に恋してるはよね』
    リズベット「さあなんだろうね〜。」

    その時、町の鐘がなった。

    ユウキ「あ、そろそろ行くね!」
    リズベット「うん、じゃあまたね!……いいなぁ」
  53. 53 : : 2016/12/20(火) 15:47:30
    最近投稿できなくすいません。また投稿を再開しますのでこれからもよろしくお願いします。
  54. 54 : : 2016/12/20(火) 23:49:36
    その男が店にやってきたのは、翌日の午後のことだった。

    リズベット「まあまあかな」

    私はオーダーメイドの注文を片付けていた。その時店のベルが鳴った。

    リズベット「接客も仕事のうち!……よし!」

    私は扉を開け、元気よくあいさつをした。

    リズベット「リズベット武具店へようこそ!」
    ???「あ、えっと…オーダーメイドを頼みたいんだけど……」

    その男は一見したところ、それほど高レベルのプレイヤーには見えなかった。
    年は私より少し上だろうか。黒い髪に、同じく黒い簡素なシャツとズボン、ブーツ。武装は背中の片手剣一つきりだ。私の店の品揃えは、要求ステータスの高い武器がほとんどなので男のレベルが足りるか正直心配になったが、顔には出さなかった。

    リズベット「今ちょっと金属の相場が上がっておりまして、多少お高くなると思うんですが……」
    ???「予算は気にしなくていいから、今作れる最高の剣を作ってほしんだ。
    リズベット「………………」

    私はしばし呆然と男の顔を眺めたが、やがてどうにか口を開いた。

    リズベット「……と言われても…具体的にプロパティの目標値とか出して貰わないと……」
    ???「それもそうか、じゃあ…この剣と同等以上の性能、ってとこでどうかな」

    男から剣を受け取った瞬間___重い‼︎
    あまりの重さに危うく剣を落としそうになった。ひとまず刀身を抜き、指先でクリックする。

    ポップアップメニューのカテゴリには《ロングソード/ワンハンド》、固有名《エリシュデータ》。
    製作者の銘、なし。ということはこの剣はモンスタードロップの剣。
    しかも、モンスタードロップの中でも、かなりのレアアイテムだ。

    ???「…作れそうか?」

    あたしは店にある最高傑作の剣を取り渡した。

    リズベット「これが今うちにある最高傑作の剣よ。多分、そっちの剣に劣ることはないと思うけど」

    男は私が渡した剣を受け取り、二、三回ヒュンヒュンと振り、首を傾げた。

    ???「少し軽いかな?」
    リズベット「使った金属がスピード系の奴だから……」
    ???「うーん…ちょっと、試してみてもいいか?」
    リズベット「試すって?」
    ???「耐久力をさ」
    男は自分の剣を抜くと、店のカウンターの上にごとりと横たえた。
    その前にすっくと立ち、右手に握ったあたしの剣をゆっくりと振り被る____。

    リズベット「ちょ、ちょっと、そんなことしたらあんたの剣が折れちゃうわよ‼︎」
    ???「まあ、その時はその時さ‼︎」

    瞬きをする間もなく剣と剣が衝突、衝撃音が店中をビリビリと震わせる。
    炸裂した閃光のあまりのまばゆさに、あたしが目を細めて一歩後ずさった、その瞬間。
    刀身が見事に真ん中からへし折れ、吹き飛んだ。____私の最高傑作の。

    リズベット「うぎゃああああ‼︎」

    あたしは悲鳴をあげると男の右手に飛びついた。
    残った剣の下半分をもぎ取り、必死にためつすがつめつ、……修復、不可能。
    と判断し、がくりと肩を落とした直後、半分になった剣がポリゴンの破片を撒き散らして消滅した。

    リズベット「な……な……なんてことすんのよ‼︎」
    ???「すまない!まさか当てた方が折れるなんて」

    かちーーんと来た。

    リズベット「それはつまり、あたしの作った剣が思ってたより弱っちかったって意味⁉︎」
    ???「えー、あー、うむーまあ、そうだ」
    リズベット「あっ‼︎開き直った‼︎いー言っておきますけどね!
    材料さえあればあんたの剣なんかポキポキ折れちゃうくらいのをいくらでも鍛えられるんですからね!」
    ???「ほほう、それは是非お願いしたいね〜、これがポキポキ折れる奴をね」
    リズベット「そこまで言ったからには全部付き合ってもらうわよ!金属取りに行くとこからね!」
    ???「そりゃ構わないけど、俺一人の方がいいんじゃないのか?足手まといは御免だぜ」
    リズベット「むきーっ‼︎」
    リズベット「ば、バカにしないでよね!これでもマスターメイサーなんですからね!」
    ???「ほほーお。そういうことなら腕前を拝見させてもらおうかな」
    キリト「えっと、俺の名前はキリト。剣ができるまでの間よろしく」

    あたしは腕を組み、顔をふいっとそらせていった。

    リズベット「よろしく、キリト」
    キリト「うわ、いきなり呼び捨てかよ、まあいいけどさ、リズベット」
    リズベット「むか‼︎」
    ______パーティーを組むにしては、最悪な第一印象だった。

  55. 55 : : 2016/12/29(木) 19:22:37
    もう直ぐ今年も終わりですね。最近は忙しくて投稿が出来ずすいません。
    来年ぐらいからまた、投稿を始めるので。
    ひとまず良いお年を!
  56. 56 : : 2017/01/08(日) 23:47:58
    すいません最近は受験勉強とかいろいろ忙しく投稿をしたいのですがなかなかできません。
    本当にすいません。できる限りやっていくのでこれからもよろしくお願いします。
  57. 57 : : 2017/01/12(木) 18:46:52
    《その金属》の噂が鍛冶屋の間に流れたのは10日ほど前のことだった。
    そのクエストは55層の片隅にある小さな村で発見されたのだ。
    その村のNPC曰く、西の山には白竜が棲んでいる。竜は毎日餌として水晶を齧り、腹で精製して貴重な金属を溜め込んでいる。明らかに武具素材アイテムの入手クエストだ。早速大人数の攻略パーティーが組まれ、山の白竜はあっけなく討伐された。__しかし、何もドロップしなかった。何か見落としているのか、それから何体ものドラゴンが殺されたが金属を手にするパーティーはでなかった。

    あたしがその話をすると、キリトは「ああ」と軽く頷いた。

    キリト「その話、俺も聞いたな。確かに素材アイテムとしては有望っぽいな。でも全然出ないんだろ?
    今更俺たちが行っておいそれとゲットできるのか?」
    リズベット「いろんな噂の中に《パーティーにマスタースミスがいないとダメなんじゃないか》って言うのがあるのよ。鍛冶屋で戦闘スキル上げている人ってそうはいないからね」
    キリト「なるほどな、試す価値はあるかもな。_____ま、今そういうことなら早速行こうぜ」
    リズベット「…………」

    私はほとほと呆れてキリトの顔を見る。

    リズベット「そんな脳天気っぷりでよく今まで生き残って来れたわね。
    ゴブリン狩りに行くんじゃないのよ。それなりにパーティー整えないと……」
    キリト「でもそうすると、もしお目当ての物が出ても最悪くじ引きだろ?そのドラゴンだって何層のやつって言ってたっけ?」
    リズベット「………55層」
    キリト「んー、まあ、俺一人でどうにかなるだろ。リズベットは陰から見てればいいよ」
    リズベット「………よっぽどの凄腕か、よっぽどのバカチンね、あんた。まあ泣いて転移脱出するのを見るのも面白そうだからあたしは構わないけどね」
  58. 58 : : 2017/01/12(木) 22:25:31
    《55層・西の山》

    リズベット「びえっくし‼︎」
    キリト「……余分な服とかないのか?」
    リズベット「………ない」

    するとキリトはウインドウを操作し、大きな黒革のマントをオブジェクト化させてあたしの頭にばふっと放ってきた。

    リズベット「……あんたは大丈夫なの?」
    キリト「鍛え方が違うからな」
    リズベット「ったくいちいちムカつくわね!」
  59. 59 : : 2017/01/13(金) 20:34:24
    受験頑張ってください!今後も期待してます。
  60. 60 : : 2017/01/16(月) 22:53:38
    Sheltisさんありがとうございます!自分もできる限り投稿はしていきます!
  61. 61 : : 2017/01/17(火) 23:43:49
    キリト「………まさかフラグ立てでこんな時間食うとはなあ……」
    リズベット「まったくね……」

    あたしたちは雪山にある小さな村で、村の長である白ひげ豊かなNPCを発見し、話を聞くことには成功したのだけれど、その話というのが長の幼少時代から始まり、青年期、熟年期の苦労話を経て、唐突にそういえば西の山には、ドラゴンが、という経過を辿るとてつもない代物で、全部終わった頃には村はすっかり夕景に包まれていた。

    リズベット「どうする?明日また出直す?」
    キリトリズベットうーん、でもドラゴンは夜行性とも言ってたしなあ」
    リズベット「そうね、行っちゃおうかあんたが泣きべそかくとこ早く見たいしね」
    キリト「そっちこそ俺の華麗な剣捌きをみて腰抜かすなよ」

    見合わせた顔を二人してフンと背ける。でも、なんだか、キリトと憎まれ口の応酬をするのにちょっとワクワクし始めているような___。あたしは ぶんぶんと頭を振って益体もない思考をリセットし、ザクザクと雪を踏みしめて歩き始めた。
    遠くからは険峻と見えた竜の棲む山も、踏み込んで見ればさして苦労もせず登ることができた。
    雪道を登ること数十分、一際切り立った氷壁を回り込むと、そこがもう山頂だった。
    上層の底部がすぐ近くに見える。そこかしこに、雪を突き破って巨大なクリスタルの柱が伸びている。
    残照の紫光が乱反射して虹色に輝くその光景は幻想的の一言だ。

    リズベット「わあ………!」

    思わず歓声をあげて走り出そうとしたあたしの襟首を、キリトがガシッと掴んだ。

    リズベット「ふぐ!……なにすんのよ!」
    キリト「おい、転移結晶の準備しとけよ」

    その表情はやけに真剣で、あたしは思わず素直に頷いていた

    キリト「それから、ここからは危険だから俺一人でやる。リズはドラゴンが出たらその辺の水晶の陰に隠れるんだ。絶対顔を出すなよ」
    リズベット「……なによ、あたしだってそこそこレベル高いんだから、手伝うわよ」
    キリト「だめだ!」

    キリトの黒い瞳が、まっすぐ私の眼を射た。その途端、この人は真剣にあたしの身を案じているのだ。ということが解って息を詰めて立ち尽くしてしまった。なにも言い返せず、再びこくりと頷く。
    キリトはにっと笑うとあたしの頭に手をぽんと手を置き、「じゃあ、行こうか」と言った。
    あたしはコクコクと頭を振ることしかできない。
    それから少し歩くと、すぐに山頂の中央に到達した。ざっと見まわしたところ、ドラゴンの姿はまだないようだった。しかしその代わりに、水晶柱にぐるりと取り囲まれた空間には___

    リズベット「うわあ……」

    ぽっかりと穴が開いていた。直径は10メートルもあるだろうか。壁面は氷に覆われてツルツルと輝き、垂直にどこまでも伸びている。奥は闇に覆われてまるで見えない。

    キリト「こりゃあ深いな……」

    キリトがつま先で小さな水晶のかけらを蹴飛ばした。穴に落下したそれは、きらりと光ってすぐに見えなぬなり、そのままなんの音も返して来なかった。

    キリト「……落ちるなよ」
    リズベット「落ちないわよ!」

    唇を尖らして言い返した瞬間、最後の残照で藍色に染め上げられた空気を切り裂いて、猛禽を思わせる高い雄叫びが氷の山頂に響き渡った。

    キリト「その陰に入れ‼︎」

    キリトが有無を言わせぬ口調で、手近なの大きな水晶柱を指した。あたしは慌てて従いながら、キリトの背中に向かってまくし立てた。

    リズベット「ええと、ドラゴンの攻撃パターンは、左右の鉤爪と、氷ブレスと、突風攻撃だって!……き、気をつけてね!」

    最後の部分を早口で付け加えると、キリトは背を向けたまま気障な仕草で親指を立てた左拳を振った。ほとんど同時にその前方の空間が揺らぎ、にじみだすように巨大なオブジェクトの演出が始まった。
  62. 62 : : 2017/01/28(土) 22:34:26
    ユウキ「キリト、なかなか帰ってこないなぁ…。どこ行ったのかぁ?」

    ユウキは宿屋でキリトの帰りを待っていた。
    特にすることもなくベットに寝転がっていた。
    するとメールが届いたことを知らせる紫のウインドウが表示された。

    ユウキ「あっ!キリトからだ!」

    そのメールの内容は、
    『今から55層の武器素材アイテムの入手クエストに行くから。あとリズベットっていう子と一緒だから』

    ユウキ「えっ!リズと一緒なの!気になるなぁ……。こっそり行ってみよ」

    ということでユウキは早速キリトたちのもとへ向かった。


    55層《西の山》

    姿を現したのは、氷のように輝く鱗を持った白竜だった。
    巨大な翼を緩やかにはためかせ、宙にホバリングしている。
    恐ろしい__というよりは美しいという表現がふさわしい姿だった。
    キリトが落ち着いた動作で背に手をやり、漆黒の片手剣を音高く抜き放った。すると、それが合図ででもあったかのように、ドラゴンが大きくその顎門を開き__硬質のサウンドエフェクトと共に、白く輝く期待の奔流を吐き出した。

    リズベット「ブレスよ!避けて!」

    しかしキリトは仁王立ちのまま動かない。すると、右手の縦に構えた剣を中心に風車のように回転し始めた。
    すぐに刀身が見えないほど回転が速まり、まるで光の円盾のように見える。そこに向かって、氷のブレスが襲いかかった。しかし、キリトの剣が作り出したシールドに打ち当たり拡散し蒸発していく。
    しかし、完全にはブレスを防げなかったようでHPバーがじわじわと減っていくが数秒経つと回復してしまう。超高レベル戦闘スキルの《バトルフィーリング》だと思われる。__けれど、あれはスキルを上昇させるのに戦闘で大ダメージを受け続ける必要があるので、安全に修行するのは不可能と言われている。

    いったい___ないものなの………?


    その頃ユウキは55層主街区にいた。

    ユウキ「二人は西の山のクエストに行ったんだよね」

    それにしてもボクもなんでこんなに必死なんだろ?そうは思ったが今は考えないことにした。

    ユウキ『まあひとまず、キリトに会ってから考えよう』

    そう思いながらユウキは西の山に向かった。
  63. 63 : : 2017/01/28(土) 22:36:07
    最近投稿できなくてすいません。
    一先ず受験が終わるまではこんな感じになってしまうかもしれませんが、これからもよろしくお願いします。
  64. 64 : : 2017/02/14(火) 07:23:32
    期待です!
  65. 65 : : 2017/03/20(月) 22:29:21
    期待です
  66. 66 : : 2017/03/31(金) 22:36:16
    本当にしばらく投稿できずすいませでした。
    もう直ぐ再開します。
  67. 67 : : 2017/03/31(金) 22:47:38
    その後もキリトダメージを受けることもなく、ドラゴンのHPを残り1割まで削った。あたしはもう終わるだろうと結晶から顔を出した。

    キリト「おい!まだ出てくるな!」
    リズベット「何よ。もう終わりじゃない…」

    その時ドラゴンが目を光らせ、空高く飛び上がり羽を羽ばたかせた。

    リズベット「えっ…」

    あたしの体はあの穴の上にあった。

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