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勇者「世界の半分をもらえばよかった」

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  1. 1 : : 2016/07/19(火) 02:06:08

    こんばんは。

    こちらはずっとネカマだと思っていたみーしゃさん主催の†夏花杯†自由創作部門に投稿するssとなります(みーしゃさんごめんなさい)


    前作を読まれた方はこいつ企画しかやらないな!?って思っているでしょうが、どうやらそうみたいです。


    その他企画や参加者様について詳しくはこちらへ
    http://www.ssnote.net/groups/835


    世界観はドラクエが近いように見えますが若干違うようなそんな感じだと思ってください。

    名前負けしないように頑張ります。


    それではいきましょう

  2. 2 : : 2016/07/19(火) 02:09:26

    【宿屋】

    チュンチュン……

    勇者「ふぁーあ……朝か……」

    勇者「太陽が昇ってら…暗黒の雲が晴れたってことは魔王を倒した証拠…」

    勇者「本当に…勝ったんだな……」

    勇者「っと、余韻に浸ってても仕方ない。さっさと支度して出るか」

    ガチャッ

    魔法使い「あっ、起きた?おはよう」

    勇者「おはよう。相変わらず早起きだな」

    魔法使い「えへへ、なんだか寝付けなくて」

    勇者「興奮が冷めないってか。まぁ気持ちはわかるぜ」

    魔法使い「嘘つき。大きい欠伸して。緊張が解けてほっとしてるんじゃない?」

    勇者「バレた?なんかなー、やったぞ!うおお!ってより、やっと終わった!って感じ。例えるなら夏休みの宿題」

    魔法使い「あぁ、溜め込むタイプ?それにしても嫌な例えだね」クスッ

    勇者「的確だと思うぞ。目標がめんどうだったことも、な」

    魔法使い「確かに。倒したと思ったら巨大化して復活なんて思いもしなかったよ」

    勇者「あん時ばっかりは大人しく世界の半分をもらえばよかった、って思ったな」

    魔法使い「僕もMPカラカラでね、攻撃を何度も受け止めて時間を稼いでくれた戦士には頭が上がらないよ」

    勇者「その戦士は?」

    魔法使い「まだ寝てるんじゃない?」 

    ガチャッ

    僧侶「おはよ~」

    勇者「おっ、おはよう」
  3. 3 : : 2016/07/19(火) 02:10:20

    僧侶「どうした~?世界に平和が戻ったってのに、元気ないぞ!」

    勇者「お前こそよくそんな元気あるな……俺なんかもうクタクタだよ」

    魔法使い「勇者、頑張ってたからねぇ。生命エネルギーを放つ呪文?あれ凄かったし」

    勇者「あんなん二度とやりたくないな。一晩経ってもこのありさまだよ」

    僧侶「いいんじゃない?もう撃つこともないし」

    魔法使い「そう!もう杖術の練習も、魔法の暗記も、魔物の勉強も必要ない!」

    僧侶「おぉ、神よ感謝します。末長くこの平和が続きますように…」

    勇者「気楽な奴等だなぁ。どうする?魔王が最期に言ってたみたいに第2第3の魔王が現れたら」

    魔法使い「ちょっと!縁起でもないこと言わない!魔王は昨日倒したの!!」

    僧侶「あとは王様から報酬をもらって、私達の旅はおしまい!」

    勇者「…俺達の旅、か」

    僧侶「そっ。MPカラッカラで移動魔法使えなかったからとりあえずこの宿に泊まったけど、もう回復したわよね?」

    魔法使い「うん。バッチリ」

    僧侶「じゃ、あとは戦士が起きるのを待つだけね」

    勇者「……なぁ、聞いていいか?この旅が終わって、お前らこれからどうするんだ?」

    魔法使い「? どうするって?そりゃ寂しくなるよ」

    勇者「そうじゃなくて…どうやって暮らしていくか、って話だよ!」

    魔法使い「前みたいに魔物倒してお金貰えばよくない?」

    勇者「はぁ…どうして俺のパーティーの魔法使いは賢くないんだ…。魔王を倒したから、もうこの世界に魔物はいないんだよ…」

    魔法使い「あっ!そっか!」

    勇者「で、どうするんだ?」

    魔法使い「うーん、僕はお師匠様のとこ訪ねてみるよ!お師匠様も、旅が終わったら戻って来いって言ってたし!」

    勇者「僧侶は?」
  4. 4 : : 2016/07/19(火) 02:10:40

    僧侶「私は孤児院に戻るわ!皆に元気な顔を見せてあげなきゃ!」

    勇者「そうか。そうだよな…」

    魔法使い「ねぇ、勇者は!?」

    勇者「!」

    僧侶「!」

    魔法使い「勇者はどうするの!?」

    勇者「…俺は……」

    僧侶「魔法使い、勇者は…」

    ガチャッ

    戦士「おーう。朝だぞ~起きろ~」

    魔法使い「もう皆起きてるんだけど……」

    戦士「おっ、なんだよ俺に文句言ってんのか!?」

    魔法使い「昨日の勇姿が嘘みたいな堕落っぷり……」ハァ

    勇者「ったく……よくこんなパーティーであの狡猾な魔王を倒せたもんだぜ」

    戦士「おう。さっさと報酬貰いに行こうぜ」

    勇者「お前を待ってたんだよ!?」

    魔法使い「あ、で、さっき僧侶なんか言いかけてなかった?」

    僧侶「……後で話すわ」

    魔法使い「? そう」

    戦士「っしゃ。とっととここを出て城に行こうや」

    魔法使い「はーい」カッ‼
  5. 5 : : 2016/07/19(火) 02:11:22

    ヒューン……


    ━━━━━━━━━━


    【城下街】

    魔法使い「はいとうちゃ~く」

    町人A「おぉ!勇者様御一行だ!」

    町人B「お帰りなさい!そしてありがとう!」

    ザワザワ!

    僧侶「あっという間にこの人だかり。私たちったら有名人…」ウットリ

    魔法使い「嬉しいなぁ…僕達本当に世界を救えたんだね…!」ジーン

    戦士「けっ、さっさと報酬をもらいてーんだがな」

    勇者「さぁさ、道を開けてくれ。王様に会いたいんだ」

    町人C「男女の温度差激しいなぁ…」ヒソヒソ

    町人D「見ろよ……もう城に入ってったぜ……。俺達も待ってたのによ、結局平和とかなんとかじゃなくて金なんだな」ヒソヒソ


    ━━━━━━━━━━


    【城/王の間】


    王「おぉ、よく来た勇者達よ!」

    勇者「王様、早速ですが報酬の件を……」

    魔法使い(……?あれ、勇者が真っ先にその話?)

    王「ホホ、急ぎなさるな。わかっておる。並々ならぬ勇気を持って、この世界の暗雲を晴らしたお主らに敬意を表してありたっけの報酬を送ろう」

    戦士「っしゃ!報われるぜ!」

    王「うむ。これじゃ!」ピッ

    パカッ‼

    戦士「!?」

    魔法使い「床が割れた!?」

    僧侶「嘘……!?嫌!」

    勇者「王様……お前!」

    王様「ありったけの報酬をな!」

    勇者「お前ええぇーーーーーッ!!」

    …………ドサッ
  6. 6 : : 2016/07/19(火) 02:11:57

    ━━━━━━━━━━


    勇者「…………ッ」

    魔法使い「あ、目覚めた?皆!勇者が目を覚ましたよ!」

    僧侶「お、やっほやっほー」

    戦士「……」

    勇者「……ここは?まだ目がボヤけてて、よく見えない……」

    僧侶「ここは地下牢だね。まとめて捕まっちゃったよ。ほら」ジャラ

    勇者「手錠…?俺達…なんで……!」

    僧侶「さぁ」

    魔法使い「ずっと試してるんだけど、魔法も使えないみたい……」

    戦士「処刑だろ。処刑。俺らが世界を支配してた魔王を倒したってことは、今や世界で一番強いのは俺達だからな」

    魔法使い「おぉ!戦士あったまいい!」

    勇者「いや、そりゃあないよ。殺す目的ならすでに殺されてるさ」

    魔法使い「おぉ……確かに。僕前言撤回するね」

    戦士「お前に言われたかねぇよ!」

    魔法使い(……にしても、やっぱり勇者はこんなときでも冷静だ。王様の前ではどうしてあんなに焦ってたんだろう……?)

    僧侶「おお、神よ……我々をお守りください」

    戦士「おい、神はいいからよ、勇者、どうすんだ?」

    僧侶「神はいいからってなによ!神罰が下るわよ!」

    戦士「もう下ってんだろ…。神は世界を救う英雄に神罰を下すのか?」

    僧侶「うぐっ!!」グサッ

    魔法使い(あ、これはキツい……)
  7. 7 : : 2016/07/19(火) 02:47:38

    僧侶「ううう……神父様、私が信じた神様はいないのですか……?」

    勇者「いるさ。だって俺達の魔法は……」


    ガシャアン!!


    兵士「おい、出ろ」

    魔法使い「ハァ、せめてお嫁には行きたかった」

    戦士「納得出来るか…俺は最後まで抵抗するぜ!」

    僧侶「ねぇ、勇者、続き聞かせて」

    勇者「待ってろ。すぐ聞かせてやる」

  8. 8 : : 2016/07/19(火) 14:26:11

    【王の間】


    国王「待っておったぞ勇者達よ」


    戦士「んだと!?ぶっ殺……!!」ジャラ‼

    魔法使い「手錠があるから無理だよ……」


    勇者「王様、理解出来ません」

    国王「まぁそうだろう。今から説明する」


    国王「お主らの処分が決まった」


    全員「!」

    戦士「処分だと!?人を道具みたいに言いやがって!!」

    国王「話を最後まで聞け。処分は2択、我が国で永遠に奴隷として暮らすか、今処刑されるかじゃ」


    ジャキン‼


    僧侶「ひっ!?囲まれてる!?」

    勇者「……それがお前のやり方か!」ギリッ


    国王「わかっているはずじゃ。お主らは強くなりすぎた」

    国王「誰もが手を焼き、世界を征服寸前まで追い詰めた魔王を倒したお主らを、この世界の誰が倒せる?」

    国王「お主らの反逆を、国の誰もが恐れておるのだよ」


    僧侶「お言葉ですが国王!民は私達を快く出迎えてくださりました!」


    国王「黙れ!」

    僧侶「!」

    僧侶(国王……震えてる)


    戦士「あぁそうかよ……!道具みてえだと思ったら道具だったとはなァ!!」

    戦士「殺す!!お前ら全員俺が殺してやる!!かかってこいよオラァ!!」

    勇者「やめろ、戦士」

    戦士「あぁ!?お前だってキレてんだろ!?」

    勇者「キレてた、だ。事情が変わった」

    戦士「!?」


    勇者「王様、聞いてください」

    国王「……」
  9. 9 : : 2016/07/20(水) 18:42:29

    勇者「俺達の武器は対魔物用に作られた物であり、対人は想定されていません」

    国王「ふん、知っておるわ」

    勇者「そしてそれは、魔法も同じなのです」 

    国王「!」
     
    勇者「魔法は神様からの祝福であり、闇の魔物に対抗する光の剣。人に向けて放てるのは修行を積んだ僧が扱う回復魔法のみです」

    僧侶(! これが続き……勇者が言いたかったこと!)

    勇者「さらに、俺達の鍛えてきた武術も精神も全て、対魔物用のもの。俺達はこの世界の平和のために戦い、ついに打ち克つことが出来ました」

    勇者「国王、この仕打ちはあんまりだとは思いませんか」


    国王「ふん、綺麗事を」

    国王「貴様が真っ先に褒美を欲した時点で!それは通じぬ!」

    勇者「国王!それは!」

    国王「黙れ!やはり貴様らは処刑───!」


    戦士「待て!!」

    国王「!」
  10. 10 : : 2016/07/21(木) 14:09:57


    戦士「お前らがそういうつもりならよ……俺だって考えがあんぞオラァ!!」

    ブワッ!!

    兵士a「なんだ…この禍々しい魔力!」

    兵士b「俺達を包んで……ぐっ!苦し……い……!」


    勇者「! やめろ!」

    魔法使い「ダメ!戦士!その魔法は……!!」

    戦士「うるせぇ!!俺達はなんのために!あんな辛い旅をしてきたっていうんだよ!!」


    ゴォッ‼


    国王「な、何事だ……これは……」

    戦士「これはお前ら(・・・)に使う魔法だよ……城でぬくぬくと暮らしてたお前らは知らないだろうけどなぁ!」

    僧侶「やめなさい!私達が折角根絶したその力を貴方が使わないで!!」

    勇者「そうだ!闇魔法は邪悪から生まれた魔物のみが使える魔法……!!」

    戦士「その人間が敵なんだよ!!いい加減わかれよぉ!!」

    兵士a「がっ……はっ……」

    国王「や、やめろ……褒美はなんでもやる……だから……」

    戦士「じゃあ褒美に!てめぇの命をよこせよぉおおおおッーーーー!!!!」

    勇者「やめろ!!戦士!!!」

    戦士「だから!やめッ……」ガクッ

    国王「……?」

    勇者「……闇魔法は神の祝福から得られるものではない。自分の身を犠牲にして放つ禁忌」

    勇者「いくら一晩休もうが、魔王の猛攻を最前線で受け止め続けて、そのうえ今日こんなことがあったら……」

    国王「た、助かったのか……?」

    兵士a・b「はぁ、はぁ……」

    勇者「……国王、私達は失望しました。もうここに来ることはないでしょう」

    国王「!」

    勇者「そうだ、ひとつ言い忘れていたことがありました。回復魔法以外にも、私達が使える、人間を対象にした魔法が例外的に存在することを」

    魔法使い「……移動魔法、詠唱」

    ヒュオオオオ……

    国王「ま、待て!褒美なら──」

    勇者「二度と姿を見せないこと。それで結構です」

    魔法使い「それではさようなら!」

    ヒュンッ‼


    兵士a「消えた……」

    国王「ぬぅっ……」


    国王(化物共が……このままで終わるとは思わないことだな……!!)
  11. 11 : : 2016/07/21(木) 14:14:49


    ━━━━━━━━━━

    【隠れ家的ログハウス】

    魔法使い「ふぅ、まさか、いつか使った拠点に帰ってくることになるとはね」

    勇者「あぁ……だが助かったよ。ありがとう」

    魔法使い「いいのいいの!僕らは一蓮托生さ!」

    僧侶「それにしても、私達、これからどうすれば……」


    戦士「うッ……ぐァ……!!」


    僧侶「戦士!」

    魔法使い「酷い熱……それに、傷が浮かび上がって……!」

    勇者「……傷じゃない。これは……」

    魔法使い「勇者……?」

    勇者「いや、大丈夫。早く家の中に運ぼう」


    ーーーーーーーーーー


    僧侶「とりあえず回復魔法をかけておいたけど……」

    魔法使い「大丈夫かな……」

    勇者「大丈夫。それより、今後のことを考えよう」
  12. 12 : : 2016/07/21(木) 14:48:48

    僧侶「今朝も言ったけど、孤児院に戻るわよ」

    魔法使い「僕は、やっぱりお師匠様のところに向かおうと思ってたけど……」

    魔法使い「今朝と同じ質問でごめん。勇者はどうするの?」

    勇者「俺は……」

    勇者「……なんとかなるさ」

    僧侶「何もないの!?」

    勇者「なんとかなるって!大丈夫!」

    僧侶「えぇー……。ま、困ったら孤児院においで!」

    勇者「おう、ありがとう」

    魔法使い「一蓮托生って言ったばっかりなのに、ごめんね……」

    勇者「いいっていいって!俺達の掴み取った平和な世界だ。満喫しないでどうする!」

    魔法使い「そうだよね!旅の途中に寄った色んな村や町もあるし、皆勇者に感謝してるよ!」

    魔法使い(けど……)

    勇者「……もし国王が来ることを心配してるなら大丈夫」

    魔法使い「!」

    勇者「魔法が使えない牢屋から俺達を出してまで処刑を言い渡したんだ。プライドが高いだけの無能なんて怖くもなんともない。魔物のリーダーでもいただろ?」

    魔法使い「うん、そうだよね……」

    魔法使い(違うよ勇者……僕が心配してるのは……)

    魔法使い(あなたが、真っ先に褒美の話を持ちかけた理由なんだよ……)
  13. 13 : : 2016/07/22(金) 01:01:51

    僧侶「……それじゃ、私はそろそろ孤児院に戻るよ」

    勇者「あぁ、元気でな」

    魔法使い「兵士が来たりしないかな?大丈夫かな?」

    僧侶「そんときは私が追っ払ってやる!エゴだけど、平和な世界は、私もお世話になったあの孤児院で過ごすって決めてるんだから!」

    魔法使い「うん……そっか!じゃあ僕もお師匠様の元へ帰る途中、送っていくことにするよ!」

    僧侶「やった!もう魔法使いちゃん大好き!」

    魔法使い「それで、勇者と戦士は……」

    勇者「あぁ、大丈夫さ。臭い言葉だけど、離れててもずっと一緒だぜ」

    魔法使い「……うん!すぐ会いに来るから!」

    僧侶「ありがとな!本当にありがとな!!」

    魔法使い「さようなら!」グスッ

    勇者「こちらこそ。最高のパーティーだった!」


    ヒュンッ‼


    勇者「……行っちゃったか」

    勇者「いいよな、帰るところがある奴等は……いや、僻んじゃいないさ。それが正しいし、そうするべきなんだ」


    ガチャッ


    戦士「うっ……ぐっ……!!」

    勇者「戦士……」

  14. 14 : : 2016/07/23(土) 12:56:41

    勇者「お前の体を蝕んでるのは傷じゃあない……闇魔法を使った代償だ……」

    勇者「お前の体は、少しずつ……」

    戦士「……ヘッ!んなこたぁわかってんだよ!」

    勇者「!」

    戦士「僧侶と魔法使いは帰ったのか……痛ッ!だが……それでいい」

    勇者「お前、俺達を逃がすために……」

    戦士「最前線で盾にならなくて、なんのための戦士だよ……!」

    勇者「……お前のおかげで、移動魔法を詠唱する隙が生まれた」

    勇者「本当にありがとう」

    戦士「気にすんな……それヨり……」

    勇者「あぁ。お前はもう……」

    戦士「アぁ……ソうダ…よな……」

    ギチギチ……

    勇者(闇魔法の代償は……人間の姿をここまで惨たらしく変えるのか……!)

    戦士「セメテ……オマエノテデ……」

    勇者(このままじゃ、こいつは魔物に……)

    勇者「……もちろんだ、戦士」

    勇者「出会った日から今日まで、本当にありがとう」

    戦士「ウゥ……ガァ……‼」

    戦士「ガルルルァァアアアア!!」

    勇者「だから今は、一足先に行ってくれ」スッ……

    ザクッ!!

    戦士「ガッ……!!」

    ドサッ…

    勇者「来世では、お前にも平和な世界を……」
  15. 15 : : 2016/07/23(土) 18:51:10


    3日後


    魔法使い「ふぅ……お師匠様、頼まれていた薬草積んでおきますね」

    師匠「うむ、ご苦労だったな」

    魔法使い「魔物はいなくなっても、魔法学は廃れないですね……」

    師匠「当たり前じゃ!魔法は万物の基礎だと何度も教えておる!」

    師匠「魔法は人々の生活を豊かにするために必要不可欠じゃ!まさか、科学なんていう迷信を信じておるんじゃ……」

    魔法使い「違います!ただ……」

    魔法使い「勇者……今頃どうしてるかな」

    師匠「ほほ、そういうことか」ニヤニヤ

    魔法使い「! もうっ、からかわないでください!」アタフタ

    師匠「行くがいい。丁度区切りもついたじゃろ」

    魔法使い「え、いいんですか!?」

    師匠「うむうむ。なんなら助けてやりなさい。魔法の基礎があるのなら、ワシが弟子にしてやらんこともない」

    魔法使い「やった……!!行ってきます!!」

  16. 16 : : 2016/07/23(土) 19:41:13

    同時刻


    女児「お姉ちゃん!次私とおままごとー!」

    男児「えー!僕とかけっこ!」

    僧侶「うーん……じゃあかけっこするおままごと!」

    老婆「ホッホッ、いつもご苦労さんだね」

    僧侶「おばあちゃん!……ううん、今の私がいるのは、この孤児院のおかげだもん!世界が平和になったんだから、後は一生恩返し!」

    老婆「あの魔王を倒しただけで一生もんの恩返しじゃて……本当、いい子に育ってくれてよかった」

    老婆「あんたは、私の宝物だよ…!」

    僧侶「おばあちゃん…!」グスッ

    男児「あー!泣いてる!」

    女児「泣き虫ー!泣き虫ー!」

    僧侶「こら!お姉ちゃんは泣いていいの!」

    老婆「ところで、旦那は見つかったかい?」

    僧侶「……」

    僧侶「……え?」

    老婆「言ったはずだよ……この孤児院を続けていけるだけの旦那を捕まえてきなって!」

    僧侶「それは……」

    女児「あー!ほっぺたが泣いてる!」

    男児「ばか!あれは汗って言うんだよ!」

    女児「じゃあ顔が真っ青なのはー?」

    男児「青鬼って言うんだよ!」

    女児「すごーい!」キャッキャッ

    老婆「コラァ!!早く男捕まえてきな!!捕まえてくるまで帰ってくることは許さないよ!!」

    僧侶「ひィ!?い、いってきまーす!!」

    タッタッタッ……

    男児「あーあ、一人でかけっこしてる」

    女児「ねぇ、お姉ちゃんどうしたの?」

    老婆「こうでもしないと行かないからね。勇者とかいう男がどんな男か知らないけど、あの子を幸せにしてやっておくれよ……」

    女児「あー、お婆ちゃんも泣いてるー!」

    老婆「こら!お姉ちゃんとお呼び!」



  17. 17 : : 2016/07/23(土) 19:57:23


    ━━━━━━━━━━

    さらに2日後


    勇者「え……一件もなし、ですか?」

    町人「あんたが勇者なのはわかった……世界を救ってくれたことも感謝してる。でもな、今時剣術なんてなんの役にも立ちはしない」

    勇者「そんな!兵士の募集もですか!?」

    町人「あぁ。どこも困ってなさそうだな」

    勇者「っ……」

    町人「それと、持ってきたこの武器と盾。伝説の剣と伝説の盾……だったか?こんなもんどこも欲しがりゃしないぞ」

    町人「魔物もいないのに、対魔物用の武器なんかが何になる?魔王の衣ってのは誰が着てるんだい?」

    勇者「……」

    町人「さ、もういいだろう。他を当たりな」

    勇者「そんな……もうここしか……」

    町人「なぁに言ってんだ!国王からたんまり金をもらったんだろ!?」


    バタン‼


    勇者「……」

    勇者「魔王のいない世界に…勇者は必要ないってことか」

    勇者「ははっ、わかってたじゃねぇか……だから俺は国王に、真っ先に報酬の件を尋ねたんだ……」

    勇者「じゃあ、剣も盾ももういらねぇな」

    カランカラン‼

    勇者「あばよ……。っと、さて、これからどこに行くか……」

  18. 18 : : 2016/07/23(土) 20:10:34


    国王「行くなら天国はどうだ?随分快適らしいぞ」

    勇者「──!」

    ザッ‼

    勇者(……囲まれてるな) 

    国王「あれからというもの、ずっとお前を探していたよ。元気がなさそうで何よりだ」

    勇者「今さらなんだってんだ。俺はもうお前らなんかどうでもいいんだ。一人にしてくれ」

    国王「そんなこと言うなよ勇者……お前の仲間を連れてきてやったんだから」

    ドサッ

    ドサッ

    勇者「……!!」

    国王「久しぶりの再会じゃないか?ほら、楽しめよ」

    国王「話せるならな!歩けるならな!ほら!!折角の再会だってのにだぁれも喋りやしねぇ!!」

    勇者「魔法使い……僧侶……?」

    国王「……あぁ、そうか。東洋には死人に口なしとかいう言葉があったけな」

    国王「さぁ、この勇者を連れていけ!!死人と話せる世界へなぁ!!」

    勇者「てめえぇッーーーーー!!!!」


  19. 19 : : 2016/07/23(土) 20:16:55

    ガッ‼

    勇者(!! 動けな……!!)

    国王「勇者の目から見て、どうじゃろうか?ここにいる兵士全28名…」

    国王「全員、闇魔法を習得している」

    勇者「!?」

    兵士a「へへっ、おい。もう戦士はいねぇのか」

    兵士b「あいつはセンスがなかったのさ!俺達はここまで自由に使えるって言うのになぁ!!」 

    勇者「てめぇら……!!」

    国王「素晴らしい力だ……全てが思いのまま」

    国王「しかも、誰でも使えるときた!!こうなれば、もう怖いものはない!!」

    国王「私は一国の王をやめ!!世界の王となるのだ!!!」

    勇者「……っ」
     
  20. 20 : : 2016/07/23(土) 20:21:48


    勇者(もしも……あのとき世界の半分を貰ってたら……!)

    勇者(戦士も、僧侶も、魔法使いも)

    勇者(皆生きてた……皆、今まで通り暮らせていた!)

    勇者(そうだ!俺は間違ってたんだ!ずっと!俺は、あのとき──)

  21. 21 : : 2016/07/23(土) 20:22:04






    勇者『気楽な奴等だなぁ。どうする?魔王が最期に言ってたみたいに第2第3の魔王が現れたら』





  22. 22 : : 2016/07/23(土) 20:26:02


    国王「世界の王となる!その1歩は!!」

    国王「貴様を殺すことから始めよう!!」

    ゴォッ……‼

    勇者(こいつまで闇魔法を……!!)

    国王「ハハハハハ!!ハハハハハ!!」

    勇者(あぁ、通りで…)

    勇者(惨たらしい見た目してると思ったぜ…)

    勇者(そして、やっとわかった……)

    勇者(闇魔法を使った奴は、漏れなく魔物に変化していく……)

    勇者(第2第3の魔王。そんな発想が出てくるお前は、もしかして……)

    勇者(……俺と同じだったんじゃないかな)


  23. 23 : : 2016/07/23(土) 20:28:49


    この日、第2の魔王が覚醒し

    勇者は伝説の剣と盾を用いることなく魔王を討伐することに成功した。


    直後、姿を現した第3の魔王は

    一瞬にしてその場を制圧し、瞬く間に世界を再び暗雲で包み込んだ。


    伝説の剣も、伝説の盾もない人間達は

    勇者の復活を信じ、ただただ平和を祈り続けた。


    勇者の行方は、誰も知らない。

    世界の行方も、誰も知らない。


  24. 24 : : 2016/07/23(土) 20:29:33






    勇者「世界の半分をもらえばよかった」

    END.





  25. 25 : : 2016/07/23(土) 20:32:23


    終わりです。
    夏花杯はどうやら恋愛や小説形式がトレンドらしく、トレンドに逆らった作品になってしまいましたが短編ということもあり気持ちに負けず完成させることが出来ました。

    企画に誘ってくださった、発案者のみーしゃさん、元運営兼参加者の木星さん、そしてその他運営の方々に感謝です。

    ここまで読んでくださってありがとうございました!お疲れさまでした。


  26. 26 : : 2017/07/23(日) 20:09:39
    素晴らしい作品でした。
    国王は恩知らずの外道(ボソッ
  27. 27 : : 2017/07/23(日) 20:32:20
    >>26
    こういう未来もあるのかもしれないと思いながら書きました
    読んでくださってありがとうございます
  28. 28 : : 2017/07/23(日) 22:02:33
    発想がとても面白かったです!
    グッドさせていただきました
  29. 29 : : 2017/07/23(日) 23:36:32
    >>28
    ありがとうございます!
    発想が全てなssなのでそう言ってくださると全肯定された気持ちになれます(笑)
  30. 30 : : 2020/09/29(火) 12:48:55
    高身長イケメン偏差値70代の生まれた時からnote民とは格が違って、黒帯で力も強くて身体能力も高いが、noteに個人情報を公開して引退まで追い込まれたラーメンマンの冒険
    http://www.ssnote.net/archives/80410

    恋中騒動 提督 みかぱん 絶賛恋仲 神威団
    http://www.ssnote.net/archives/86931

    害悪ユーザーカグラ
    http://www.ssnote.net/archives/78041

    害悪ユーザースルメ わたあめ
    http://www.ssnote.net/archives/78042

    害悪ユーザーエルドカエサル (カエサル)
    http://www.ssnote.net/archives/80906

    害悪ユーザー提督、にゃる、墓場
    http://www.ssnote.net/archives/81672

    害悪ユーザー墓場、提督の別アカ
    http://www.ssnote.net/archives/81774

    害悪ユーザー筋力
    http://www.ssnote.net/archives/84057

    害悪ユーザースルメ、カグラ、提督謝罪
    http://www.ssnote.net/archives/85091

    害悪ユーザー空山
    http://www.ssnote.net/archives/81038

    【キャロル様教団】
    http://www.ssnote.net/archives/86972

    何故、登録ユーザーは自演をするのだろうか??
    コソコソ隠れて見てるのも知ってるぞ?
    http://www.ssnote.net/archives/86986

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namazun

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