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『待つ人の話』

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  1. 1 : : 2013/12/11(水) 20:26:57
    テストが終わった(掛詞)ので新しいのを書きます!

    エルドさんとエルドの恋人さんの話です。

    彼女さんの名前がわからないので勝手につけさせていただきました。
    ご了承くださいm(_ _)m
  2. 2 : : 2013/12/11(水) 20:28:44

    〜壁外調査2ヶ月前〜

    私、サラ・クラリスはエルド・ジンの家族とともに暮らしている。

    私に家族はいない。
    私が小さい頃に、死んだらしい。

    そのとき助けてくれたのがエルドたち一家だった。

    当時のことはあまり覚えていないけど、エルドが私の手をひいて歩いてくれたのは鮮明に記憶している。

    現在、私と彼は交際している。
    今日は彼が久々の休暇で帰ってくる日だ。…にしても少し遅い。


    ガチャ


    エルド『ただいまー』

    サラ『おかえりなさい、久しぶりね。ご飯もうすぐできるよ』

    エルド母『今日休暇ってことは…もしかして、もうすぐ壁外調査かしら…?』

    エルド『ん?ああ、そうだよ2ヶ月後ぐらいかな。今回が調査前最後の休暇』

    サラ『気をつけてね、絶対に生きて帰ってきて』
  3. 3 : : 2013/12/11(水) 20:32:55

    エルド『大丈夫、兵長と同じ位置での遠征だからな』

    サラ『兵長って…リヴァイ兵長?』

    エルド『ああ、だから大丈夫だ』


    優しいエルドの笑顔。
    私は彼の笑顔が大好きだ。


    エルド『そうだ、サラ』


    そういってエルドは私に耳打ちした


    エルド『今夜部屋に来てくれ』

    ーーーーーーーーーーーーーーーー

    部屋に入ると、エルドが待っていた。

    エルドを抱きしめる


    サラ『…生きて帰ってきてくれて、ありがとう』


    休暇のたびに言う、ありがとうと。
  4. 7 : : 2013/12/11(水) 23:20:41

    するとエルドは跪き、ポケットから小さな箱を取り出した。


    エルド『俺調査兵団だし、いつ死ぬかわからない。死ぬ気はないけど、それはわかるよな…?』


    交際を始める時にも言われた言葉だ。
    胸に突き刺さるエルドの言葉
    でも彼の言っていることは正しい…


    エルド『もしかしたらお前を1人にしてしまうかもしれない。もちろんそんなことはしないつもりだ…確証のないことを言っているのもわかってる。けど、こんな俺でよければ…サラ』


    エルドが箱を開ける
    中には、指輪が入っていた。
    これを取りに行っていたから、遅かったのか。


    エルド『愛してる。壁外調査から帰ったら、結婚しよう』


    嬉しくて、嬉しくて、涙が止まらなかった。


    サラ『よろしく…お願いしますっ…』ポロポロ…
  5. 8 : : 2013/12/11(水) 23:25:37

    たとえ先の見えない未来しかなくても、ずっと隣にいたい。

    約束という言葉が、調査兵団の兵士にとってどれだけ重くて辛いものであっても。

    彼の言葉を

    あの日引いてくれた手を

    わたしは、信じる。

  6. 12 : : 2013/12/12(木) 22:48:21
    〜翌日〜

    サラ『ストヘス区?』

    エルド『そうだ、ちょっとしたデートでもどうかと思って。ほら、シーナの方はほとんど行かないだろ?』


    エルドの突然の誘いに戸惑う

    一緒に出かけられるのは嬉しいのだが、ストヘス区まで行くのには少し時間がかかる。たとえ着いたとしても、居れるのは数時間程だろう。


    エルド『気が乗らないならいいんだが…最近まともに会えてなかったし、この休暇が終わったら…』


    壁外調査、だ。


    サラ『…どこかいいところ知ってるの?』
  7. 13 : : 2013/12/12(木) 23:05:27
    ーーーーーーーーーーーーーーーー

    ストヘス区に着いたのはそれから数時間後のこと。

    馬車の中は少し疲れたけれど、エルドとの久々の外出ということもあってさほど苦ではなかった。


    エルド『おー…やっぱうちの区と違うな』

    サラ『そうね…どうするの?』

    エルド『んー、とりあえず飯でも食うか。もう昼過ぎだし』

    サラ『ええ、そうしましょうか』


    エルドが私の手を取り歩きだす。

    いつか見た背中と同じ

    エルドが手を引いてくれるだけで、安心感が芽生える。

    …あの時、エルドなんて言ったんだっけ。


    エルド『サラ?』

    サラ『ん、なんでもない。大丈夫』


    小さい頃の記憶なんて、早々思い出せるものではないと割り切る…仕方がない。

    でも、思い出したい記憶が思い出せないのは少し歯がゆい…

    大事なことを、忘れてるんじゃないかって思ってしまう。
  8. 14 : : 2013/12/12(木) 23:20:10
    ーーーーーーーーーーーーーーーー

    エルド『うまかったな』

    サラ『ええ!今度料理の参考にしようかな』

    私たちが食べたところは、比較的入りやすい値段のレストランだった。

    それでも、私たちの住む地区の料理とは全く違うものがでてきて、しかもそれらは全て美味しかった。


    エルド『お、楽しみにしてるぞ』


    エルドが笑う


    ずっとこの笑顔を見ていたい。


    でも…彼は、調査兵団の兵士
    いや、後ろ向きに考えちゃダメだ。


    エルドは必ず帰る


    そんなやりとりを頭の中で繰り返しながら歩いていると、角に花屋が見えた。


    エルド『あの花は…!ちょっと待っててくれ』


    数分後、戻ってきたエルドは小さな鉢植えを抱えていた。
    オレンジ、ピンク、白、黄色の小さな花が植わっている。


    エルド『これ、家に飾らないか』

    サラ『いいけど…どうしたの急に』

    エルド『…あー。綺麗だと思ってな』


    エルドが頭をかく。


    サラ『ありがとう、大事に育てるね』

    エルド『ああ。じゃあ次どうする?』

    サラ『そうね、次は…』
  9. 16 : : 2013/12/13(金) 23:34:59
    ーーーーーーーーーーーーーーーー

    楽しい時間は、あっという間に過ぎる。

    家に着いたのは、もう夜遅かった。


    サラ『エルド、今日は楽しかった。ありがとう…!』

    エルド『喜んでもらえてよかった、俺も楽しかったよ』


    エルドから受け取った鉢植えを棚へ飾る。

    後ろから抱きしめられる感触


    サラ『エルド?』

    エルド『…今夜は、一緒に過ごしたい』


    驚き、振り返る。
    エルドの優しい目が私を見つめる。


    サラ『…私も』


    そのままエルドの部屋へ向かった。
  10. 17 : : 2013/12/13(金) 23:52:08
    〜翌日〜

    明日エルドはここを発つ。
    今日が最後の休暇だ。


    サラ『料理、張り切っちゃった』

    エルド『お、うまそうだ』


    いつものように優しい彼の笑顔


    エルド『サラ…』


    愛おしそうに呼んでくれる声


    エルド『!?どうした?』

    サラ『え…?』


    気がつけば、涙がでていた。


    笑顔で送り出そうと思ってたのに。


    無理だった。

    毎回泣くのを堪えてた。

    でも今日は、堪えきれなかった…


    サラ『エルド…死なないで』


    怖かった、喜びが待ってるからこそ…
    失うのが怖かった。

    1番怖いのは、エルドのはずなのに…


    サラ『お願いエルド…絶対に死なないで…必ず帰ってきて…私を、1人にしないで…』

    エルド『サラ』


    エルドに抱きしめられる


    エルド『俺は死なない。約束するよ、必ず帰る。信じて待っていてくれ』

    サラ『…わかった、待ってるね』


    そう言って指輪をはずし、チェーンを通してネックレスを作る。


    サラ『無事に帰ってこれるように、お守り…。帰ってきたら、またプロポーズしてね』


    精一杯の笑顔を作る

    きっと、笑顔でも涙でぐちゃぐちゃなんだろうな、私の顔。


    エルド『ああ、何度だってしてやる』


    いつもの笑顔をみせてくれた。

    私の不安を拭うように、キスしてくれた。


    そして翌日、エルドは兵団の元へ帰っていった。
  11. 18 : : 2013/12/14(土) 00:01:45
    〜1ヶ月後〜

    エルドから手紙が届いた。

    _________________________________

    愛するサラへ


    久しぶりだな
    話したいことはたくさんあるが、それは次の休暇までとっておくことにするよ。
    せっかくだから、直接話したいしな。

    まず近況を報告すると、リヴァイ班に新兵が入った。
    そいつ…エレンって言うんだが少し特殊でな。ここでは言えないけど、いつか人類の希望になるやつだ。
    俺らの任務も、エレンを守ることに変わった。気合いを入れ直して頑張るよ。

    今期の調査兵団には新兵がたくさん入った、俺らの頃からは考えられないくらい。

    班のやつらもみんな元気だ。オルオは相変わらず舌噛んでるし、ペトラも女1人なのに頑張ってる。グンタは最近兵長の自主練につきあってたりしてたな。兵長は、変わらずだ。本当に強い方だよ。

    そっちはどうだ?
    体調とか崩してないといいんだが…
    俺は大丈夫だから心配はするな。

    それじゃあ、今回はこのへんで。
    次の手紙は壁外調査のあとに書くよ。
    母さんによろしくな。

    愛してる


    エルド・ジン

    _________________________________


    すぐにペンを取り、返事を書く
  12. 19 : : 2013/12/14(土) 00:09:07
    _________________________________

    エルドへ

    手紙ありがとう。
    みなさん元気そうでよかった…
    もちろん、エルドもね。

    前に食べたレストランのご飯覚えてる?ついにあの味に近い味が作れるようになりました。
    次の休暇までには、完璧にしておくから楽しみにしていて。

    その新兵の子のことは噂で聞きました。…大変な任務だと思うけど、頑張ってね。無理はしないでください。

    それから…あの鉢植えの花も元気です。なんか懐かしい感じがする花だなって勝手に思ってるんだ…エルドはあの花どこで知ったの?

    1ヶ月後の返事楽しみにしてるね。

    愛してます


    サラ・クラリス

    _________________________________
  13. 21 : : 2013/12/15(日) 00:18:41

    〜第57回壁外調査当日〜

    鐘の音が響く。
    これから調査兵団が街を発つようだ。
    道へ出て、見送りに行く。


    モブ『エルヴィン団長!巨人を蹴散らしてきてください!』

    モブ『期待しています!』


    そして、エルドの姿を見つけた。
    2ヶ月ぶりに見る彼は、全く変わっていない。
    彼は私に気づいている様子はない。


    サラ『エルド!』


    かなり遠い位置からだが声をかける。エルド本人は気がつかなかったが、隣にいた人…グンタさんが気がつき、エルドを呼んだ。

    すると彼が振り向き、笑って手を振った。

    そして服の内側から出したのは婚約指輪のネックレスだった。


    太陽の光で煌めく指輪


    ペトラさんとオルオさんが冷やかしている…オルオさんは舌を噛んでしまった。新入りなのか、1人ついていけてない子もいる。彼がエレンだろうか。

    班員のみなさんは、以前からエルドが手紙で報告してくれていた通りの外見、挙動だったのですぐに誰が誰だかわかった。


    エルドがもう一度振り返る


    必ず帰る。
    そう言っている気がした。
  14. 22 : : 2013/12/15(日) 00:20:54
    ーーーーーーーーーーーーーーーー

    エルドと手をつないで歩く

    歩く先は真っ暗で何も見えない

    どこへむかってるの?と尋ねても

    あの優しい笑顔を向けてくるだけ


    そのうち手が離れて

    どうしたの?と尋ねると

    彼は寂しそうな笑顔を向け、何か呟き私から離れていく


    どんどん彼との距離が離れて

    どんどんあの背中が小さくなって

    必死に名前を呼んでも振り返ることはなくて

    そのうち、彼は見えなくなってしまった

    あの時、彼が呟いたのは…


    『すまない』


    ーーーーーーーーーーーーーーーー
  15. 23 : : 2013/12/15(日) 00:24:02
    上の>>22名無しはは私ですm(_ _)m
  16. 24 : : 2013/12/15(日) 00:24:10

    サラ『ーーーーーっ!?』


    うたた寝をしていたようだ。

    夢を見た。
    エルドがいなくなってしまう夢
    それに、最後のあの言葉…


    サラ『…っ』


    立ち上がると目眩と吐き気に襲われた。
    体調が悪いからあんな夢を見たんだろう。
    医者に見てもらいに行こう。

    ーーーーーーーーーーーーーーーー
  17. 25 : : 2013/12/15(日) 00:28:31

    医者から帰って来た私の耳に響く鐘の音。
    この音は…


    エルド母『エルドが戻ってくるらしいよ』


    気分は相変わらず悪い。
    医者から原因は伝えられている。

    でも、それ以外にも…


    サラ『そう…』


    胸騒ぎがする。

    なぜだろう。


    そしてその日エルドは帰ってこなかった。


    ベットに入り考える、まさかと。
    いや、きっとなにか用事があったんだろう。そう言い聞かせる。

    きっとあの日みたいに、何か用事があったんだ。

    明日になれば、ひょっこり帰ってくる…そうに違いない。

    遅くなってごめんって、笑ってくれるに違いない。

    絶対そうだ。
  18. 27 : : 2013/12/15(日) 22:57:51
    〜翌日〜

    コンコン


    昼過ぎのこと、ドアがノックされた。


    エルド母『エルドかい?帰ったの…』ガチャ


    リヴァイ『…はじめまして。調査兵団、兵士長のリヴァイです。忙しい中申し訳ありません』


    エルドでは、なかった。


    エルドから聞いていたリヴァイ兵長は…思ったよりも小柄。この人が人類最強…


    エルド母『これは…エルドがお世話になってます。ところで、うちなんかに何のようでしょう…?』

    リヴァイ『エルドのことで、話が』


    リヴァイ『…エルドは、死にました』


    空気が、凍りついた。
    嘘だ。そんなの。
    ウソダ。


    エルド母『…本当、なんですか』

    リヴァイ『直接、確認しました』


    そう言って1枚の紙を出す。


    【死亡】


    その文字だけ、はっきり見えた。

    泣き崩れるエルドのお母さん。
    淡々と告げる兵長の目には何も映ってないかのようだった。


    突如暗転する視界

    ーーーーーーーーーーーーーーーー

    目が覚めると、リヴァイ兵長が近くに座っていた。


    リヴァイ『…エルドの、婚約者か』

    サラ『はい…サラ・クラリスです』

    リヴァイ『…妊娠しているらしいな』


    そう、私は妊娠していた。
    吐き気も、妊娠が原因だった。
    医者に告げられた時は嬉しかった。
    エルドにこの喜びを、どう伝えようか考えていた。

    それなのに


    エルドは、帰ってこない


    サラ『お義母さんから聞いたんですか』

    リヴァイ『ああ』


    しばしの沈黙


    リヴァイ『…一部になってしまったが…エルドの遺体は連れて帰ることができた。明後日までに…確認、を頼む』

    サラ『…はい』

    ーーーーーーーーーーーーーーーー
  19. 28 : : 2013/12/15(日) 23:00:55

    ーーーーーーーーーーーーーーーー

    エルド『今すぐそのうなじを』


    グチュッ


    ペトラ『エルドぉ!!!!!』


    エルド(…俺、女型に喰われ)


    女型『…』ペッ…


    エルド(くそ…。へいちょ…う、すみません。サラ、あいし、てる。やく、そく…まもれ、な…)

    ーーーーーーーーーーーーーーーー
  20. 29 : : 2013/12/15(日) 23:08:06

    〜翌日〜

    エルドの遺体を確認しにいった。

    下半身が、なくなっていて、血まみれだったけど、確かにエルドだった。

    もう、抱きしめてくれない。
    もう、目を覚まさない。
    もう、あの笑顔は見られない。


    サラ『必ず、帰るって…約束したじゃない…エ、ルド…』


    涙があふれる


    服の内側には指輪のネックレスがかかったままだ。

    ネックレスを取り、エルドに触れる。

    すると何かが手にあたった。

    手紙だった、エルドから私への…

    _________________________________

    愛するサラへ


    この手紙を読んでいる××うことは、俺は死んだんだな。
    この手紙だけは、読ませ××××った。

    俺は人類に心臓を捧げ××××から、死ぬことは覚悟の×××た。
    もちろん××つも×なんてなかった。

    心臓以外は全てお前××××。
    お前に会えなくなるのが、死ぬことよりも辛い。

    あの××覚×ているか?
    お前は1人で×××××××。
    守ってやりたい、×の一心だった。
    俺はあの時××、ずっと××が好きだった。

    鉢植えのあの花は、その時に渡×た花だよ。
    やっぱり覚えてな××たな…仕方ないが。

    壁外調査から帰ったら×婚する×××う約束、必ず×××ていう約×、1人にし××××いう約束、守れなくてすまない。
    もしまだその気があるのなら…×の引き出しにあるものを×××××。

    こんな俺と一緒にいてくれて、××がとう。
    俺を××てくれてあり×××。
    愛してる。いつまでも、おまえのそばに。


    850年 ×月××日 エルド・ジン

    _________________________________

    所々血まみれで読めないけど、最後の部分だけは鮮明に読めた。

    そして思い出した。
    鉢植えのあの花は、私の両親が死んだ日、エルドからもらったものと同じものだ…
  21. 30 : : 2013/12/15(日) 23:17:49
    ーーーーーーーーーーーーーーーー

    〜数年前〜

    サラ『お父さん、お母さん…なんで死んだの…。1人に、しないで…』

    エルド『サラ、俺ん家にこい』

    サラ『え…?』

    エルド『父さん達にはもう言ってある。一緒に暮らすんだ』

    サラ『一緒に…?』

    エルド『ああ、お前は1人じゃないぞ。俺がずっとそばにいるから』

    サラ『エルド…』

    エルド『あと、これやる』

    サラ『綺麗…』

    エルド『だろ?それ、【あなたを守る】って言う意味なんだ』

    サラ『…』

    エルド『俺が守ってやるよ。絶対1人にしない、約束だ。…ほら帰るぞ』グイッ

    サラ『うん…!』

    ーーーーーーーーーーーーーーーー

    もう、エルドはいないんだ…


    サラ『エルドぉっ…私も…愛してる…よっ…』ポロポロ…


    ??『…サラか』


    振り返ると、そこにはリヴァイ兵長が。


    リヴァイ『それは…?』

    サラ『婚約指輪と、手紙…エルドが…持っていたものです。兵長…エルドの…ペトラさん、オルオさん、グンタさんの死は…無駄、になってしまうんですか…それとも…』


    グンタさん、ペトラさんは遺体すら帰ってこなかった。


    リヴァイ『無駄なんかじゃない…俺がさせない。あいつらの残した意思が、俺に力を与える』

    リヴァイ『サラ、俺はエルドの代わりにはなれない。でも、約束する』


    リヴァイ『俺は必ず、巨人を絶滅させる。あいつらの死を、無駄になんかしない』


    約束、この言葉は重い。
    守られなかった約束を知っているからこそ、わかることだ。


    決意のこもった兵長の目は、わずかに潤んでいるような気がした。


    でも決して、その瞳から涙が零れることはなかった。
  22. 32 : : 2013/12/16(月) 22:16:41
    帰ってから、エルドの部屋の引き出しという引き出しを開けた。

    すると机の引き出しの裏から一枚の紙がでてきた。

    婚姻届だった。エルドのサイン入りの…


    サラ『エルド…』


    壁外調査から帰ったら出そうと思ってたのだろうか。
    私は迷わずペンをとった。


    〜2日後〜

    私は再びストヘス区にいた。

    エルドとの、最後の休暇で訪れた街

    しかし、その面影は何処にも残っていなかった。
    家という家は破壊され、あちこちに衝撃波の跡が残り、血痕がついていた…あのレストランにも。

    そして、通りすがりに聞いた。

    今回の壁外調査を…かのリヴァイ班を含めた調査兵団を壊滅に追い込んだ巨人がここに現れたことを

    その巨人は知性のある巨人…人が化けたものであることを

    調査兵団が中身を捕獲したことを


    しかし情報を聞き出すのは困難であることを


    足早にその場を去る。

    エルドたちの死は、やはり無駄となってしまうのか

    涙が止まらない



    『約束する。俺は必ず、巨人を絶滅させる。あいつらの死を、無駄になんかしない』



    ふと思い出したのは、リヴァイ兵長の言葉

    彼は、一体何年間、何人の命を背負ってきたのだろう?

    一体何人の人に誓い、約束してきたのだろう?
  23. 33 : : 2013/12/16(月) 22:34:37

    〜××年後〜

    エルヴィン『そっちに一体逃げたぞ!!リヴァイ!』

    エレン『行っけぇ!兵長!!!!』


    ザシュッ


    削ぎ落とされたうなじが空を舞う


    最後の巨人が今、人類最強の手によって死んだ。
    巨人は絶滅したのだ。


    響き渡る勝利の雄叫び


    人類最強と呼ばれた男はいつものように、ブレードについた血をハンカチで拭う。


    エルヴィン『リヴァイ、今までよくやってくれた…礼を言う』

    エレン『兵長…俺たち、勝ったんですね…!』グスン

    リヴァイ『…今日は好きなだけ泣いていいぞエレン。エルヴィン、礼なら俺が最後の巨人にとどめを刺すまでに死んだ奴らに言え』

    リヴァイ『前リヴァイ班…グンタ、エルド、ペトラ、オルオ。他にも大勢の奴らが死んだ…ここに到達するために払った犠牲は大きい…大きすぎた』

    エレン『…俺が』

    リヴァイ『お前のせいじゃねえ。言っただろう、結果は誰にもわからないと』

    リヴァイ『…あのいつまでも起きねぇクソ眼鏡は、目が覚めて巨人がいないと知ったらなんて顔するんだろうな』


    リヴァイの数少ない友人の一人であるハンジ・ゾエ。
    彼女は1年前巨人によって木に叩きつけられ頭部を強打。
    意識を失い、以来1度も目を覚まさないままだ。


    リヴァイ『エレンよ、お前の友人の無事は確認したのか』

    エレン『はい、生きてます!』

    リヴァイ『そうか』

    エルヴィン『…とりあえず、お前は休め。幸いにもここは壁に近い。今から行けば、夕方には着くだろう。リヴァイ班はキルシュタインに仕切ってもらう』

    リヴァイ『…了解だ』

    ーーーーーーーーーーーーーーーー

    壁内へ帰る途中、ふとリヴァイは馬を止めた。


    大きな夕陽が沈みかけている


    リヴァイ『なぁお前ら…俺は、お前らの望む世界を作れただろうか』


    人類最強の目には、かつての部下4人の笑顔がが見えていた。


    あの日は決して流さなかった涙が、とめどなく溢れていた。
  24. 34 : : 2013/12/16(月) 22:43:48
    すみません、>>33からサラ視点ではなく地の文的なのに変わっています。しばらく続くのでご了承くださいorz
  25. 35 : : 2013/12/16(月) 22:43:59

    壁に着いたのは、夜になった頃だった。
    リヴァイは、ある家の扉を叩く。

    ??『…リヴァイ兵長』

    リヴァイ『お久しぶりです、ラルさん』


    数十分後、また別の家の扉を叩く。


    ??『兵長、ご無事でよかった』

    リヴァイ『ありがとうございます、ボサドさん』


    さらに数分後、彼は墓石の前にいた。


    リヴァイ『シュルツさん、報告があります』


    最後の家に来た頃には、もう遅い時間だった。
    しかし、今日でなくてはならない。


    コンコン


    ??『どちら様でしょうか』

    リヴァイ『調査兵団兵士長のリヴァイです』


    開かれた扉のむこうには、あの日より大人びたサラが立っていた。


    サラ『兵長…お久しぶりです。どうされました?』

    リヴァイ『ああ、その前に…エルドの母親は?』

    サラ『2年前に…死にました』

    リヴァイ『そうか…。報告がある』

    リヴァイ『今日、最後の巨人が死んだ』


    サラのきょとんとした顔。
    その顔が徐々に変わり
    そして、目から涙が溢れる。
  26. 36 : : 2013/12/16(月) 22:56:56

    サラ『じゃあ…約束守ってくださったんですね』

    リヴァイ『当たり前だ』

    サラ『…本当にありがとうございました』


    サラは知っていた。

    約束という言葉の重みを


    ??『母さん、その人誰?』


    奥から別の声が問いかける


    サラ『先輩の顔も覚えてないの…?』

    リヴァイ『いや…会ったことないからじゃないか?』

    ??『せ、先輩!?失礼しました!』ガタッ


    ??『×××期、訓練兵団所属!エルザ・ジンです!』バッ


    家の奥から出てきたのはエルドによく似た、彼らの息子だった。
    髪だけは2人の色を混ぜたような綺麗な茶色だった。

    リヴァイ『エルザ、か…良い名だ』

    エルザ『ありがとうございます!』

    リヴァイ『俺は調査兵団特別作戦班のリヴァイだ』

    エルザ『リヴァっ…ええええ!な、なんで兵長がここに!』

    サラ『父さんが…リヴァイ班だったからよ。前に言わなかった?』

    エルザ『…言ってた。ごめん、忘れるなんて…!よし、俺もいつか父さんみたいになるぞ』

    リヴァイ『おいエルザ。意気込んでるところ悪いが巨人は絶滅したぞ』

    サラ『兵長はその報告に来てくださったのよ』

    エルザ『じゃあ、壁の外に出られるんですか!?』

    リヴァイ『ああ、近いうちにな』

    エルザ『ありがとうございます!』


    リヴァイははっとした。

    エルザの笑顔が、あまりにもエルドの笑顔に似すぎていたのだ。


    サラ『…似ているでしょう?』

    リヴァイ『ああ…驚くほどな。邪魔した、まだ後処理があるから俺は行く』

    エルザ『またいらしてください!』

    サラ『こらエルザ。…兵長!』


    振り返ったリヴァイの目には


    サラ『ありがとうございました』


    幸せそうな『3人家族』が見えた。
  27. 37 : : 2013/12/16(月) 23:18:17
    ここから先、またサラ視点に戻ります
  28. 38 : : 2013/12/16(月) 23:20:03
    〜3年後〜

    巨人が絶滅した日から3年後、我が家は引越しの準備に追われていた。

    ついに人々は、壁の外で暮らすことを許されたのだ。


    サラ『エルド…壁の外を、一緒に見たかった』


    指輪のネックレスを撫でる。
    あの日枯れたはずの涙が零れた。


    サラ『……!?』バッ


    突然後ろから抱きしめられるような感触に驚き振り返る。

    しかし、後ろには誰もいなかった。


    エルザ『母さん!これが玄関先に置いてあったよ!』


    そう言ってエルザが封筒を持ってきた。

    表には『サラ』とだけ書いてある。


    中には、血がこびりついた、自由の翼のワッペンが入っていた。


    エルザ『それ、調査兵団のやつだよね。リヴァイ兵長のかなあ』

    サラ『…!』


    もう一度よくみると、手紙のようなものが…


    『愛してる。いつまでも、おまえのそばに』


    あの手紙は、誰にも見せたことがない。


    サラ『…エルド』

    エルザ『んーでもリヴァイ兵長潔癖症だしなぁ…こんな血まみれのは違う…って、母さん、聞いてる?』

    サラ『…聞いてるわよ』


    そう言いながらエルドのネックレスを首にかける。


    空を見ると、4羽の鳥が壁の向こうへ飛んで行くのが見えた。


    彼らは待ち望んでいたのだろう。
    自由に壁の外へ出れる日を…



    〜完〜
  29. 39 : : 2013/12/16(月) 23:22:36
    ここから先とか言っときながら1個に収まった←

    前回はかなり長くなってしまったので今回はそこ気をつけて書いてみました。

    おまけ編としてハンジさんとリヴァイ兵長の後日談的なのを用意してあります。
    希望があれば載せたいと思います。

    ここまで読んでくださりありがとうございました!


    ジャン↑
  30. 46 : : 2015/03/12(木) 00:08:00
    彩華のSSに対するコメントはこちらへお願いします!

    http://www.ssnote.net/groups/1306/archives/1

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