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蛍④

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  1. 1 : : 2016/04/10(日) 16:47:12
    オリジナル設定多数。
    キャラ崩壊・・・在ります。

    そろそろ終わりに・・・なれたらいいな~。

    下手くそですが・・上記をご理解の上、お付き合い頂きます様お願い申し上げます。


    過去スレ


    http://www.ssnote.net/archives/44134

    蛍②
    http://www.ssnote.net/archives/44186

    蛍③
    http://www.ssnote.net/archives/44614
  2. 2 : : 2016/04/18(月) 21:27:18

    散々泣きに泣いた隼鷹だったが、ひとしきり泣き終わるとそのまま突堤の壁にもたれて眠ってしまった。

    何度起こしても起きようとせず、仕方ないのでそのまま寝かせる事にした。


    鎮守府敷地内だし、今は夏の夜。
    蒸し暑さこそあれ寒くて風邪を引くという事は無い。


    夜も大分進み、おそらく真夜中だろう。

    対岸に見えていた江田島の民家の明かりも、先ほどとは打って変って少なくなった。


    車の通りも少なくなったせいか、波の音以外は殆ど聞こえない。



    長門は一升瓶を抱えたまますやすや眠る隼鷹を背中に、一人月を見上げていた。
    ふと後ろから足音が聞こえる。



    「此処に居たのか・・・」


    野太い男の声が長門に掛けられる。


    「提督・・・」


    長門は立ち上がり、敬礼をしようとする。
    彼はそれを敬礼不要と手で制した。

  3. 3 : : 2016/04/18(月) 21:28:17

    「ああ・・・良い、気にするな。・・・それより・・隼鷹は何をやっておるのだ?」


    「は・・彼女は・・その・・私のことを気にしておりまして・・・」



    長門が口ごもるように説明しようとする。
    提督はなんとなく状況を察したように帽子を取り、頭を掻いた。



    「ああ・・・なんとなく判った。大方飲みすぎだろう?」

    「は、はぁ・・・面目次第も無い・・」

    「なんだ・・先客が居たとはな・・・私も一杯やろうと持ってきたのだが・・」


    提督は手に持っていた一升瓶を目の前に出した。



    「提督さえよろしければ、付き合いましょう」

    「あはは・・そうしてもらえると助かる」



    提督はそういうと湯飲みを長門に渡す。

    長門はそれを受け取ると、提督がそこに酒を注いだ。
    長門も返杯をする。


    カツンと陶器同士を当てる音が夜に響くと、二人は一気に湯飲みを呷った。




    「長門よ、腹を割って話したい。やはり・・・心は変わらんか?」

    「・・・」


    「正直、戦闘は小康を保っているとは言え、わが国の防衛には貴様の力が必要だ」


    「・・・」


    長門は無言で湯飲みを見つめている。
    提督は溜め息を吐くと胡坐をかき、月を見上げた。
  4. 4 : : 2016/04/18(月) 21:29:32

    「大川が死んで、もう大分経つな・・・」



    提督は手酌で湯飲みに酒を注ぐと、月に杯を掲げた


    「アイツは防衛大学の後輩でな・・・学生時分は良く寮を抜け出して飲み歩いたりしたもんだ。後で見つかって大目玉食らうことなんてしょっちゅうさ。アイツ酒が弱くてな~・・・すぐに潰れちまうんだよ」


    掲げた杯を一気に飲み干しながら提督は言う。

    厳つい顔に命一杯の笑顔を浮かべ、楽しそうに思い出を肴に酒を飲んでいた。
    長門は湯飲みを両手で包み込むように持つと、提督の思い出話に耳を傾けていた。


    大川とは長い時間一緒にすごしたが、彼はあまり過去を語ってくれなかった。
    今まで知りえなかった事を聞き、長門は少し嬉しくなった。



    「大川はな・・海上自衛隊の航空部隊に居たんだが・・・元々パイロットとしての腕がずば抜けていてな・・・航空自衛隊に出向になったりと・・・・当時は深海棲艦が出没し始めて、日本も自衛隊が軍に格上げになるって言うんで上へ下への大騒ぎな頃でな・・・」


    長門に酒を注ぎながら提督は続ける。


    「海上自衛隊が日本国国防海軍へと昇格になり、海軍に戦闘機部隊を創設する際にアイツはこっちに戻ってきたんだ。当時は米国から調達したF35を使っていたんだがな・・・まぁ~・・・見事な操縦だった。深海棲艦の奴らをバタバタと・・・その辺は貴様の方が詳しいだろう?」



    提督は手酌で湯飲みに酒を注ぎ、一気に飲み干す。
    長門もそれに吊られるように杯を開ける。



    波の音が響き渡る中、隼鷹の寝息がやたらと大きく聞こえた。
    提督と長門は背中の隼鷹を見やると、クスっと微笑む。
  5. 5 : : 2016/04/18(月) 21:32:19
    「それからいずも型が空母に改装される話が出て、当時空軍で開発中だった今のF3・・・当時は心神だったか・・の艦上機型の開発、テストと・・・そうこうしているうちに当時の海軍幕僚監部の幕僚長がアイツの人柄を見抜いてな・・・艦娘達の信頼も厚かったし、一番艦娘が多く運用されていたこの呉の提督にと・・・まぁ結果としてそれは大当たりだったわけだが」


    提督の話を聞いているうちに、更に後ろから足音が聞こえる。


    「あらあら・・・こんなところに居たの?長門、提督・・・お邪魔だったかしら?」


    陸奥が一升瓶を片手に同じく湯飲みを持って参上してきた。
    その後ろには武蔵、大和、加賀、赤城・・・金剛4姉妹と・・・
    皆二ヵ月後の9月でそれぞれが各鎮守府に移籍が決まっている面々だ。

    皆、それぞれにそれぞれの別れを惜しんでいるのだ。


    「ヘーイ提督ぅ~!お酒の肴、持ってきたヨォ~!!」


    金剛が元気にさきイカやらあぶり焼きスルメソーメンやら・・・様々なコンビニおつまみを開ける。


    突堤の上ではささやかな宴が始ろうとしていた。


    真夜中の満月を明かりに、皆が皆一様に持ち寄った酒に肴・・・湿っぽくなる事のないよう、皆笑っていた。

    思い出話に花が咲いた。


    隼鷹に言われたミッドウェー作戦前の突堤での出来事を問いただしたところ、皆に含み笑いされ、隼鷹の情報の裏が取れてしまった。


    長門は肩を震わせて黙りこんだ。
    その顔がおかしくて皆で噴出してしまった。



    提督も皆もよく笑った。
    瞳の際に雫を輝かせるくらいに笑い合った。




    酒も大分進み、隼鷹がむにゃむにゃと寝返りを打つ頃、提督は突然こんな話を言い出した。



    「そういえば長門、知っていたか?随分前に本人から聞いた事があるんだがな・・・」


    提督はそういうと目の前にあったペッパービーフを頬張った。


    「大川の曽祖父はな・・・かつての戦艦長門で零式観測機のパイロットをしていたそうだ。相当の腕っこきだったらしくてな・・」



    その言葉を聴いた瞬間、長門が驚いた顔で提督を見つめる。
    彼女はあの日の事を思い出し、何故自分があんな事を叫んだのか、やっと理解が出来た。
  6. 6 : : 2016/04/23(土) 23:46:47

    酷い戦場だった。
    戦場に綺麗も汚いも、酷いも酷くないも無いのは判っている。



    それでも海の戦場であれば、そこには武士(もののふ)としての魂とか、騎士としての魂とか・・・なんかしらの人の道とでもいうのだろうか?


    命のやり取りの中にも、そういった筋道みたいなものがあるものだと、海に生きるものはそういうものだと、ずっと信じていた。


    あの戦いにはそんなものは存在しなかった。
    ただ奪い合うだけの、互いの生存をかけただけの無機質な世界。


    不自然なまでのそう、言うなれば『殺戮』という言葉が罷り通る様な、そんな酷さというか、醜さを孕んでいた。


    鋼鉄の艦が、紙くずのように燃え上がり、人間のパーツが天高く飛び散った。
    爆発に巻き込まれると、人は『首』と付いた部位から捥げ、消し飛び、四散する。


    甲板上に居る機銃要員は直撃を食らい、内臓と脳漿を甲板上にぶちまけ、鋼板にこびり付き絶命する。
    そこには叫び声を上げる猶予すら与えられず、者が物へと瞬時に形を変えた。



    戦闘は昼夜を問わず続き、何時果てるとも無く続くその爆音と振動と雄叫びや絶叫に心を苛まれ、蝕まれ、最後には何も感じなくなる。

    人間や艦娘、深海棲艦ですら疲れ果て、何のために戦っているのか、その意味すら思い出すことも出来ないくらいに衰弱していた。

    それがミッドウェー諸島敵本拠地壊滅作戦の本当の姿だったと思う。



  7. 7 : : 2016/05/01(日) 20:57:45



    太平洋地域の各国から集まった艦娘、イージス艦、護衛艦、あらゆる戦闘艦艇、艦載機がミッドウェーに集まった。


    作戦要綱に則り、米海軍と日本海軍が中心となって東と西からの挟み撃ちでの進撃だった。


    最低限の戦力を国に残し、日本各地の鎮守府から出撃した艦艇、艦娘達はミッドウェーを目指した。

    可能な限り無駄な戦闘は避けたかったが、相手もこちらの作戦行動に気付いたのだろう。


    同島を目指す前に幾多の戦闘が起こった。





    何隻もの艦艇が犠牲となり、幾人もの艦娘も大破や轟沈をし・・・

    ミッドウェー環礁に近づく頃には、深海棲艦側も人間側もすでに戦力の限界に達していた。








    航空母艦『かが』の艦橋から見える島影には、もうすでに何千発という砲弾が打ち込まれている。


    今は米海軍が南側のサンド島の敵本拠地に向かって艦砲射撃の真っ最中、日本艦隊は現在北側のサンド小島側から環礁内に陣を構え、イースタン島に向かって艦砲射撃を行っていた。



    島の形状さえ変わってしまっているのではないかと思わせるほどの爆煙が上がり、着弾と同時に赤い火柱が上がる様が夕闇に映えた。


    敵はサンド島、イースタン島の本拠地内に篭り、持久戦の様相を呈してきた。

  8. 8 : : 2016/05/01(日) 20:58:55


    この島に近づくためにどれだけの犠牲が払われたのか?

    そんな事を考える余裕なんてとっくの昔に無くなり、今は死んでしまった戦友、轟沈してしまった艦娘達の無念さを晴らすためだけに戦っている。



    すでに引くに引けない状況だった。



    下の格納庫には、小破、中破している艦娘達が、明石や夕張の手により応急修理を施され、『かが』内に急遽作られた入渠施設には残り少な


    くなった高速修復剤を満たし、大破してしまっている艦娘がその液体の中に浸かっていた。


    乗組員も、戦闘要員も、艦娘達も無事な者の数は少なくなり、皆疲弊しきっていた。


    血の滲む包帯の隙間からうめき声が漏れる。
    艦内の医療室に入りきらない怪我人が廊下に溢れていた。


    ヘルメットを目深に被り、タバコを咥えたままうずくまり、じっと砲撃の音に耐える者が居る。

    その横で照明弾に照らされた家族の写真を眺めながら、溜め息を吐く戦闘要員の姿もあった。



    航空母艦『かが』には現在、大川の戦闘機中隊以外の機体は格納されていない。
    空いたスペースは艦娘と怪我人のために急ごしらえの応急修理、入渠施設や医療施設に当てていた。


    元々護衛艦の時から単独戦闘を想定されていない『かが』は自衛用の機銃やCIWS以外は装備されていない。


    たっぷりとは行かないまでも余剰スペースは在り、しかも戦闘機中隊程度しか搭載されていなければ、格納庫はガラガラ。


    その分を艦娘達の補給、応急修理、入渠のできる場所や人間側の医療施設としていた。
  9. 9 : : 2016/05/01(日) 20:59:42

    大川は艦橋の屋上、レーダードームの脇の手すりに肘を付き、漫然とイースタン島を眺めていた。


    先ほど島からの脱出を図ろうとしたのか、それとも艦砲射撃する我が艦隊の殲滅を意図したのか・・・深海棲艦の小規模な艦隊が出てきたらしいとの報告があった。



    今頃は川内を旗艦とする第3水雷戦隊と、我が海軍の第14護衛艦隊が飛び出てきた深海棲艦を夜戦で迎え撃っているだろう。

    川内も・・・きっと不思議な気分かもしれない。
    第14護衛艦隊には護衛艦『せんだい』が居るのだから。



    普段は夜戦夜戦と騒ぎたて、周りが辟易するほどだったが、ついにお望みの夜戦が出来ているのだから・・・


    そうは思っても危険極まりない戦闘であるには変わりなく、今は貴重な戦力を失うわけには行かない。

    彼は呆けるようにその光を眺めながら、艦隊の、艦娘の皆の無事を祈っていた。
  10. 10 : : 2016/05/01(日) 21:01:06



    島で、その沖合いで炎が上がるたびに、その中に何十、何百の命が散っているかもしれない。


    こうして外野から眺めている分には・・・綺麗なのに。

    きっと外野から眺めているから綺麗に感じているのであって、しかしそこに命の瀬戸際が常に存在し・・・・


    自分が今居るところも戦場で、一発流れ弾が飛んでくれば自らもその瀬戸際に立たされる。
    もっと運が悪ければそんな事を考える時間すら与えられず、一瞬で無に帰する。



    しかし今そういう状況をこうして傍観しているのは、きっと心が麻痺しておかしくなってしまっているからだ。


    数十km先のあの炎の光がさしづめ蛍の光のように綺麗に見えても・・・


    それはその中に瀬戸際が常に存在する事を知っているから余計にそう感じているのだろう。

    そこに命の儚さを見るからそう思うのだろう。







    そう、『蛍』の灯す光は命そのもの--------






















    「提督・・・こちらに居ましたか」


    タラップを誰かが上がってくる物音にも気付けなかった位、物思いに耽っていたのだろう。

    突然かけられた声に驚きながら大川は後ろを振り返った。


    「ああ・・・長門さん」


    声を掛けてきた主を見ると、大川ははにかむ様な笑顔を見せた。


    この作戦が始る一月ほど前、大川は長門を突堤の上で抱きしめながら、ポケットに忍ばせていた大事なものを渡そうと決意していた。

    しかし、決意を固めた瞬間、金剛や陸奥たちが二人を探しにその突堤まで来ていた。


    かけられた声に驚き、大川はそれ以上のことが出来なかった。


    その時以来、お互いがお互いを意識してしまい、なんとなくギクシャクした関係になってしまった。

    長門も大川も、そういったことには不器用な者同士、作戦前の忙しさも相まって結局、お互いが心の内を伝えきることなく作戦へと突入していった。


  11. 11 : : 2016/05/01(日) 21:02:32


    「明日、0830に日米海兵隊によるサンド島、イースタン島への上陸作戦が開始されます。我々第一艦隊、第二艦隊も同時刻に出てくるであろう敵艦隊に対し突撃を開始します」


    長門は気をつけの姿勢のまま彼に報告する。


    本当はもっと言いたいこともあったのだろう。
    しかし明日の決戦を前に、そんな個人的なことを言えるような心境にはなれない。


    長門は報告が終わると、瞳を伏せた。



    「了解しました。明日はおそらく本作戦で一番の大戦となるでしょう。ボーキサイトも備蓄が大分減り、機動艦隊の艦載機の補充が難しくなってきました」


    大川は長門の姿を見て、少し胸が痛くなった。
    これを言えば、きっと彼女は・・・


    「今まで、艦娘の皆さんが頑張ってくれて、僕は飛ばずに済んでいました。が、明日はそうも行きません。僕も飛びます」


    大川の口からその言葉が零れた瞬間、長門は顔を上げ、彼を見つめる。
    一番聞きたくない言葉だったからだ。


    しかもそれを止める術も無い。


    何故ならそのことは海軍幕僚監部も承認済みの話で、一部の人間はそれを望んでいるからだ。




  12. 12 : : 2016/05/08(日) 09:45:51
    遠雷のような砲撃音が海上に響き渡る。


    遠くで真っ赤に焼けた砲弾が暗闇の中を飛び交っている。

    ミサイルが護衛艦の甲板上に設置されているVLS(垂直発射装置)から炎を溢れさせながら何発も垂直に飛び出してゆく。


    それらが島に着弾する度に閃光が走り、轟音と共に赤暗く火柱を立ち上がらせる。


    探照灯が海面を行き交い、打ち出された砲弾が、魚雷が敵艦に命中するたびに火柱が上がり閃光が走る。

    島を攻撃している艦隊が打ち出した照明弾が辺りを照らし出した。



    交戦中の艦隊が一気に照らし出され、その光は、艦橋屋上の二人を同時に照らし出した。



    長門は眉間に皺を寄せ、切ない瞳で大川を見つめていた。
    大川はそれを直視することが出来ず、瞳を伏せた。



    「長門さんは第二艦隊の旗艦でしたね・・・」


    大川は帽子を深く被りなおすと首を巡らせ、遠方に瞬く光に目を移した。
    相変わらず遠雷と閃光の繰り返される中、また照明弾が上がった。



  13. 13 : : 2016/05/08(日) 09:46:26
    大川は可能な限り鉄面皮を通そうとした。


    自分の思いに嘘を付いてでも、今は完遂せねばならない作戦があった。
    あと少し・・・あと少しでそれも終了する。


    これ以上の犠牲は出したくも無い。


    今まで皆の努力のお陰で自分はこの『かが』のCICで安穏としていられた。
    しかし明日はこの作戦の総仕上げでもある海兵隊の上陸作戦と艦隊戦。


    やはり犠牲も無く全てを終わらす事などできやしない。
    だから・・・少しでも・・・


    そう思えば今は自らの思いを沈め、全てに集中しなければならない。


    自分自身も同じ比重の中に命を置き--------



    しかし今、彼女を目の前にしてそれを通せるのだろうか?
    明日をも知れない風前の灯火のような心に触れ、自分の思いを沈める事が出来るのだろうか?

    出来る事なら、今すぐ彼女を抱きしめて、この胸の中のすべてをぶちまけてしまいたい。


    そう、今が作戦の最中でないのなら・・・・




    気が付くと大川は見詰め合う互いの距離を縮めていた。
    長門は退くでもなく、近づいてくる大川に自らも近づいていった。
  14. 14 : : 2016/05/08(日) 09:47:14
    突堤であんな事を言われた時、胸が張り裂けんばかりに動悸した。
    抱きしめられた時、頭が真っ白になった。



    しかし彼の体温を感じ、彼の鼓動を聞いた時、心が安らいだ。
    ずっとこのまま居たい・・・そう思った。


    あの時は自分が弱くなってしまったのかと思った。

    かつては連合艦隊の旗艦を勤め、常に戦いに身を置き、当時世界最大の艦載砲を持つ、『ビック7』と呼ばれた戦艦群の中の一隻・・・


    自分にはその矜持があり、誰よりも強く、誰よりも勇敢でなければならないと自分を縛り続けた。


    しかし彼に出会い、すべてが変わってしまった。
    在るがままに振る舞い、決して偉ぶる事も無く、自然と皆の中心に居た。


    新米の提督だった頃はなれない仕事に失敗も多かった。
    失敗を取り戻すため人知れず行っていた努力。


    翌日にやると嘘の段取りをし、私を帰した後ずっと執務室の明かりが消えなかった事。
    気になって何度と無く夜中に差し入れに行き、結局仕事を手伝ったりしていた事。


    長い間秘書艦を勤めていて・・・よく知っている。


    得体の知れない艦娘という存在を疎む人間が多い中、彼は同じ目線で接し、常に皆を気遣っていた。

    何事にも前向きに取り組み、戦においては勇猛であった彼・・・・
  15. 15 : : 2016/05/08(日) 09:48:32

    一見完璧そうに見える彼でもやはり欠点はある。


    机の上は常に散らかっていて、忙しさに感けて片づけをしない。
    部屋も散らかりっぱなし・・・
    何度と無く小言を言い、片づけが終わるまで目を離さずに居た事も茶飯事だった。


    行動も大雑把なところが多く、アイディアは良くても肝心なところで抜けている。

    めんどくさがり屋の癖に好きなことや仕事や人に対しては繊細・・・


    そんな自分には無い、在るがままに生き、その全てを守ろうと懸命な彼の姿に引かれたのかもしれない。

    だからあの時、突堤であの言葉を聴いたとき、抱きしめられた時、あれほどの動悸を覚えたのだろう。



    私は知っている。
    かつて艦だった頃、彼は・・・・



    長門は近づいてくる大川の瞳を見つめながら、最後に出た記憶の出所を探していた。

    最後に思い出したことは明らかにここ数年の彼の姿ではない。


    しかしその事も、彼の温もりに包まれた瞬間、霧散して消えてしまった。




    「長門さん・・・明日は上のことは気にしないで。僕が完璧に守ります。だから・・・無理しないで下さいね」


    大川は長門を抱きしめると耳元に囁いた


    「はい・・・どうか提督も・・・無理をなさらずに・・・必ず戻ってきて・・・」



    互いは抱きしめあったまま見つめあうと、吸い込まれるように唇を重ねた。



    長門は大川の肩に頭を持たれかけ、飛び交う戦場の光を空ろな瞳で眺めていた。
    着弾の閃光が煌くたびに、彼女はそれを蛍の灯す命の光のように感じていた。






  16. 16 : : 2016/05/15(日) 20:58:42




    明、0800

    作戦行動を早め、各部隊が動き出した。



    後にノルマンディー上陸作戦のオハマビーチ、米国のフィリピン奪還作戦、ガダルカナル島の戦い、沖縄戦等と並ぶ激戦と言われた戦いの幕開けだった。



    「周りは敵だらけで、相手は皆死に物狂い。最早『艦隊戦』と呼べるものではなかった」
    長門は当時を振り返り、そう回想している。




    上陸を阻む目的も何も、おそらくその時の文字通り総戦力を出したのだろう。
    深海棲艦の艦隊は隊列も組まず真直ぐにこちらに向かってきた。


    それと同時にありったけの艦載機を発艦。


    彼我の距離は一気に詰まり、完全に乱戦だった。
    通常、第二艦隊は主力である第一艦隊のお膳立て、つまりは露払いの役目を担う。


    殆どの雑魚は第二艦隊が片付けるのがセオリーだったが今回ばかりはそうも行かなかった。
    艦隊線もへったくれも無い、正に乱戦。



    殆どが零距離射撃の様相を呈し、長門や陸奥、その他戦艦にとってはあまりにショートレンジの為苦しい戦いになった。

    何本もの水柱が近距離に乱立し、只でさえ目視による砲撃をせねばならない状況をより悪化させた。


    深海棲艦も艦娘も通常の戦闘艦艇も次々と海底に没し、上空から被弾した航空機が雨霰の様に降ってくる。
    撃墜された機体も、その戦闘力を無くしてもこういう状況では脅威となり無駄に水柱数を増やすだけだった。



    日本艦隊の上空は赤城、加賀その他各航空母艦から発艦した艦載機に加え、護衛空母『かが』から発艦している大川率いる戦闘機中隊も加わり制空権確保に奮闘していた。




    大川は目の前の敵艦載機を機銃で撃墜すると、後ろを振り返り自分が後ろを取られていないか確認する。
    自分が担当する空域の敵艦載機を確認するが、大方片付いている状態だった。
    戦闘が始ってもう大分経った。



    何度か入れ替わりで補給に戻り、また発艦しての繰り返しだったが、疲れは感じなかった。

    この作戦が始る前、岩国に所属している教導部隊当時の教え子であるトップエースに、感を取り戻すためみっちりと飛行訓練や模擬戦闘を付き合ってもらった成果が出ているのだろう。
  17. 17 : : 2016/05/15(日) 20:59:36

    今、護衛空母『かが』の艦上で指揮を執ってくれている山瀬一佐もかつての後輩だ。

    着艦し、補給を受けるたびに彼に第二艦隊の様子を聞いていたが、乱戦模様の中、長門が奮戦し戦果を上げている旨の話を聞いていたのでその辺も安心している。


    さすが・・・殴り合いなら任せろと豪語していただけの事は在る。
    昨日の夜とは大違い・・・しかしそんな事を本人の前で言ったら殺されるな・・・・

    大川はちょうど第二艦隊の上空の制空権確保中に下を見下ろしながら考えていた。



    海兵隊の上陸作戦も順調に進み、敵基地と思われる施設の破壊工作、占領などもほぼ八割近くが終了していると報告があった。


    もう一息・・・大川は上空制圧しながらそう思っていた。
    上空には敵戦闘機、攻撃機、爆撃機の姿は無く、周りを飛んでいるのはほぼ味方。

    レーダー上にも味方ばかりが映っていた。



    しかし怖いのは今。
    この瞬間、油断が生まれ敵に漬け込まれる。


    『全隊に通達。戦闘が小康状態である今が一番怖い。各見張りを厳とされたし』



    大川が全艦艇、艦娘に通信を送った矢先だった。
    雑音が入る無線に、絶叫に近い悪夢が流れ込んできた。
  18. 18 : : 2016/05/21(土) 20:41:41
    『・・だい・・か・・・きか・・・長門被弾!!』


    長門が被弾したという報告が大川の耳に飛び込んだ。
    あまりの絶叫にマイクが音を拾いきれず、音が割れて聞き取れない部分すらあった。


    しかし長門が被弾したという情報だけはやたらとはっきりと大川の耳に届いた。
    大川は眼下に見える第二艦隊の姿を良く見ようと高度を下げ、機体を傾ける。


    『長門被弾炎上中!右に傾斜!消火急いで!』

    『長門さん!!長門さん!!』


    同じ艦隊の高雄が詳細を報告し、酒匂は叫んでいる。


    『長門さんの援護急いで!!回収準備!』

    『了解した!』


    様々な通信が飛び交う中、大川は長門の姿を探す。
    炎上する艦娘・・・姿はすぐに見つけることが出来た。
    ほぼ真下に近い。


    被弾し、両脇に伸びている砲塔からは煙が上がり、背部の動力炉からわずかながら火の手が見える。

    近くには駆逐艦の------



    『KG-1より駆逐艦長月、皐月へ!長門の救助を頼む!至急だ!』


    大川が長月、皐月に連絡を取る。
    皐月、長月が復唱し、長門に向かって全力で走り出した。
    二人は長門に取り付き、応急修理に入った。

    『長門!しっかりしろ!!』

    皐月が叫ぶ。

    『長門型!意識をしっかり持て!』

    長月が火災の起きている艤装に手をかけながら大声えで呼びかけた。



    『!!戦艦レ級目の前、長門に接近中!長月、皐月!急いで!!!』


    誰かが大声で叫ぶ。
    大川は首を巡らし、辺りを見回す。


    程なくしてゆっくりと長門や長月、皐月に近づく影を発見した。
    心臓が激しく動悸し、眉間に皺が寄る。

    大川はすぐさま操縦桿を引き、機体をレ級へと向けた。
    高速での旋回のため、翼端から雲が棚引く。
    体に強いGがかかってもお構いなしだった。



    上空から見るレ級は、ちっぽけに見える。


    しかし尾に付けられている砲を長門に向け、ゆっくりと彼女に近づいている。
    レ級も損傷しているのだろう。
    うっすらと煙を上げ、傾きながらも長門に向けた砲を動かしもせず近づいている。



    戦艦相手ではひとたまりも無い。
    高雄や愛宕、その他の戦艦、重巡は少し離れすぎていて完全に間に合いそうに無い。
    砲撃準備に入っているが、おそらく間に合わないだろう。
    それにあそこまで彼我の距離が近ければ、長門に当たってしまう可能性もある。



    『長門~!!!』


    大川は叫ぶと機体を背面にし、そのまま眼下のレ級に軸線を合わせる。
    急な機動に翼端や機体そのものからは雲が棚引き、空に白い線を残した。
    エンジン内に在る圧縮タービンが3万回転以上に回り、キーンという甲高い音を奏で始める。

    アフターバーナーを点火させると、最後尾のジェットノズルから青白い炎を吐き出す。


    完全に真正面のHUDの照準にレ級を合わせると機体を通常の状態に半回転させ、そのままエンジン全開で突っ込んで行った。

  19. 19 : : 2016/05/21(土) 20:42:54

    慢心していたつもりは無い。
    早く戦闘を終わらせたかった。



    昨夜、出撃の報告を提督にしようと彼を探した。
    山瀬一佐から艦橋の上に居るはずだと聞かされ、彼に明日の出撃を報告した。



    本当は聞きたかった。
    彼の真意を。



    あの日、突堤で私を抱きしめた彼の胸の内を。
    あれからお互いに忙しく、聞きそびれてしまっていた。



    この作戦が始ってからというもの、何度も死が身近に感じた。
    怖いと思ったことは無い。



    しかし何かを残したまま逝くのは嫌だった。



    だから彼に真意を求め、私も心を打ち明けようと思っていた。
    作戦中に不謹慎かも知れない。


    しかし、彼の出撃を聞いた時、私はそのことに動揺してしまった。
    一番恐れていた事が来てしまったのだ。



    確かに戦闘は激化し、やっとミッドウェー本島に来る事が出来た状況だった。
    多大な犠牲を出し、最後の詰めに差し掛かっていた。



    此処まで艦娘全員の意思として、提督の出撃だけは避けたいと必死に戦った。
    このまま行けば彼が出撃する必要は無い、そう信じていた。


    しかし、山瀬一佐に聞かされていた事実。
    海軍幕僚監部、その幕僚長が彼の存在を消したがっていたという事実。




    『長門!しっかりしろ!』




    それを知っていたから・・・
    あの時、動揺を隠す事が出来なかった。



    貴方が抱きしめてくれた時、貴方と口付けを交わしたとき。
    貴方が耳元に囁いた言葉。


    私も同じ事を願い、そして貴方に伝えた言葉・・・



    このまま戦闘が終わってくれれば、彼は死なずに済む。
    このまま何も無く終わってくれれば・・・。


    慢心したつもりは無い。
    早く戦いを終わらせたかった。


    『長門型!意識をしっかり持て!』


    誰か・・・誰かが私を呼んでいる・・・



  20. 20 : : 2016/05/21(土) 20:45:18

    長門は我に返った。


    気が付けば水面に肩膝を付き、視界が朦朧としていた。
    額から温い何かが頬を伝う。

    おそらく血が流れているのだろう。
    顎から零れ落ちた血がぽたぽたと水面に落ちると、絵の具を水に落としたように波に揺られながら徐々に広がってゆく。
    最後は薄いもやとなって消えていった。


    長門はそれをモニタ越しの映像で見ている様に感じていた。



    そうか私は・・・被雷して・・・。


    油断した。
    迂闊だった。


    この私とも在ろうものが・・・。




    艤装から煙が上がる。
    体に力が上手く力が入らない。



    おそらく動力炉に何らかの損傷があるのだろう。
    長門は急いで眼前に小型の3Dモニターを表示させると、被害確認をした。

    画面上に体の損傷部分と艤装の損傷部分が映し出される。


    「敵の雷撃と砲撃で被弾、現在動力炉で小規模な火災、復旧作業中だ!」


    長門が確認する前に応急修理中の長月が長門に声を掛ける。


    ああ・・・さっき私を呼んでいたのは長月か・・・


    「シールドで守られてるけど生体部分にも損傷があるから・・・」

    皐月が長門に声を掛けた。



    『!!戦艦レ級目の前、長門に接近中!長月、皐月!急いで!!!』


    皐月が長門に声を掛けたのと、通信で絶叫に近い連絡が入ったのは同時だった。
    三人は前方を見る。


    そこには損傷し、左に傾斜しながらも尚こちらを威嚇するように眼を見開き、尾に装備されている数門の砲を向け近づいてくるレ級の姿があった。




    心臓が拍動し、長月が生唾を飲み込む音がやたらと大きく聞こえる。

    長門は大破に近く、駆逐艦二人はとてもじゃないが戦艦に立ち向かい事なんて出来ない。
    しかし、今長門をおいてゆくことなんて出来るわけも無い。

    今この状況を狙われればひとたまりも無い。



    「長月・・・皐月・・・私を置いてゆけ」

    「そんなこと出来るわけ無いだろう長門型!今高雄たちがこっちに向かっている」

    「私達が時間を稼ぐ。微速でも良い。少しでも離れて」


    長月と皐月は長門の前に立ち、装備を確認する。
    連装砲のグリップを握りなおすと、機関を最大にしようとした。


    しかし、長門が二人の肩に手を置き、必死に立ち上がる。
    二人は長門を振り返った。

    長門はよろよろと立ち上がると、二人の前に歩み出る。
    辛うじて動く1番砲塔と3番砲塔をレ級に向けて旋回させる。

    普段の旋回よりも遅く、通常の作動音ではない異常な駆動音を響かせ砲を向けると、長門は長月と皐月に笑いかけた。
  21. 21 : : 2016/05/22(日) 13:03:14

    「行け・・・長月、皐月。私は大丈夫だ」

    「長門型・・・私達も共に戦う!」


    長月が長門の横に歩み出て、皐月もそれに従う。
    長門は溜め息を吐きながらその紅い瞳をレ級へと向けた。




    『・・・ナゼ・・・?』



    長門がレ級へと瞳を向けた瞬間、頭の中に突然声が響いた。
    まだ遠い距離に居るはずのレ級が、なんだか目の前でこちらを睨みつけるような圧迫感を感じる。

    長月も皐月も同じように声が聞こえているのだろう。
    眼を見開きレ級を見つめていた。




    『ナゼ人間ノ みカタを・・・スル ノカ?』




    頭に直接響くその声は通信とも違う類のものなのだろう。
    三人以外にはおそらく聞こえてないように思えた。


    なんだか周りを漂う時間というか・・・そういったものがゆっくり流れている気がする。
    長門はレ級から視線を外す事が出来なくなっていた。




    『キサマラモ、我ワレと同ジ物ダろウ?』




    長月、皐月が抗議の声を上げようとする。
    長門はそれを制した。


    長門の額から、肩から、血が流れ出している。
    指先を伝い、海面に落ちた血はもやとなり広がり、溶け込んでゆく。
    顎を伝い、胸元へと流れるその血は赤い筋となって固まってゆく。



    『人間ハ・・・ニンゲンハ言ワバ病原菌ダ・・・大地ヲ犯し、資源ト称シソノ命ヲ吸い上ゲ・・・様々ナ命を奪イ・・コノ星のシステムそノもノヲ壊ソウトシテイル・・・』



    三人は凍りついた。
    あの深海棲艦・・・レ級は何を言っている?
    この星・・?
    システム・・?


    それではまるで・・・




    『我々は、お前ラの言葉で言エバ、免疫だ・・・病巣ヲ見ツケ、原因デアル病原菌をコロス・・・人間は病原菌ナノダヨ・・・』

    「違う・・・」



    禍々しい空気を纏い、もう数十メートル先にまで迫っているレ級に向かって長門が呟いた。
    力なく、だがはっきりとした意思を持って、レ級の言葉を否定する。


    「確かに人はどうしようもない生き物だ・・・先の大戦、お前も知っているだろう?あれだけ多くの血を流し、人の命そのものを兵器として扱う所業までして・・・・結局手に入ったものなんて何も無かった。逆に全てを失ったんだ・・・」



    長門は腕をレ級に向けてあげると、その手を握り締めた。



    「私は・・・守れなかった。何一つ。そう・・・彼も同じだ。特攻なんて人の命を軽んずる作戦とも言えない事に加担せねばならなかった彼の心中は・・・私には計り知れない。でもそうでもして守らなければならなかった・・・その思いは・・」


    腕を下ろし、こぶしを硬く握りなおす長門。


    彼女は自分が涙を流している事に気が付いた。

    先ほど流れた血の温もりとは違う、頬を伝う思い------
    言葉として発せられる前にその思いは雫となって波間に漂った。



    「お前の言うとおり、人間は愚かだ。弱い存在が為、群を成し生き残り、また群れる事でその力を見誤り、全てを飲み込もうとする・・・何度も同じ事を繰り返し・・・殺戮の歴史に暇が無い。」


    長門は寂しそうに瞳を伏せると、もう一度レ級に視線を戻す。



    「だが私はそれでも・・・信じたい・・・信じたいんだ・・・・。貴様が見ていないだろう・・・人間の心の中を・・・」



    長門は最後にそう呟くと、レ級に微笑んで見せた。
    長月、皐月は彼女の微笑を見上げ、無言で頷いた。



    長門の脳裏にはあの優しい笑顔が浮かぶ。

    茶色の飛行服を纏い、皮製の飛行帽、カタパルトから射出される零式観測機・・・・
    飛行機に乗り込むときの屈託無い笑顔・・・

    白い第二種軍装に身を包み、執務机の後ろの窓から外を眺める。
    秘書艦である自分の方を向く時に見せてくれた屈託の無い笑顔・・・

    その笑顔が重なり、一つになった時、長門はハッとした。



    彼に持っていた思い。
    彼に感じていた親近感。


    抱きしめられた時の・・・温もり。


    それは・・・


    『・・・笑止・・・ショセン世迷言・・・』


    レ級はニヤリと哂うと砲を構える。


    長門はレ級を睨みつけ、長月、皐月を抱える。
    少しでも砲弾が当たらないように二人を庇った。
  22. 22 : : 2016/05/29(日) 16:52:44

    レ級の砲が火を噴く。

    轟音と共に打ち出された砲弾は、しかし長門たちには当たらず、巨大な水柱を彼女たちの周りに乱立させた。


    レ級も損傷しているのだろう。
    自身も傾きながらの砲撃なのでこの近距離でも狙い通りに飛ばないらしい。


    長門は眼をそらすことなく長月、皐月を守り続ける。
    レ級は次弾の装填を急いでいた。





    しかし次の瞬間-----




    目の前のレ級の周りに細かい水柱が乱立し、レ級そのものに多数の命中弾が炸裂していた。
    レ級に着弾した弾丸は火花を上げ四散し、まるで花火の炸裂を見ているようだった。


    幾らシールドで守られているとはいえこれほどの命中弾の数ともなればそれなりのダメージとなろう。

    元々手負いだったレ級は顔面を守るように腕を上げると忌々しそうに空を見上げた。


    長門は突然の出来事に戸惑ったが、 頭上を擦過し、そのまま急上昇してゆくF3艦上戦闘機を目視した。




    『長門さん!大丈夫ですか!?長月さん、皐月さん!今のうちに3人で脱出を!次はASM-2を使います!』



    大川からの通信が入る。
    三人は旋回しながらまた上空からレ級に向かい照準軸線をあわせようとしているF3を見上げていた。



    93式空対艦誘導弾。
    別称はASM-2。
    航空機で運用される空対艦ミサイルだ。

    対艦ミサイルは文字通り艦に向けて発射されるミサイルで、一発で戦闘艇を無力化するだけの威力と航続距離を要求される。

    もちろん航空機にそんな大きなものは積めないので大きさは限られてしまうが、当たり所が悪ければ艦艇を行動不能に追い込むことも出来る。

    前述でも述べたとおりミサイルの中では大きなものの部類になるため、ステルス性を重視するF3には本来不向きなミサイルだが、最後の補給の際に航空戦力の撃滅を確認していた大川が以後の戦闘は敵艦娘を相手にすることになりそうという考えの下、急遽翼下のパイロンに二発装備させていた。




    レ級は突然の機銃掃射で負ったダメージに頭を振ると、それまで長門に向けていた尾の砲をF3に向け始めた。


    レ級の瞳がぎらついている。
    その憎しみのこもった瞳に長月、皐月は戦慄する。

    長門は異様なほどの殺気を直感的に感じていた。



    F3が陽光に機体を煌かせ軸線をレ級にあわせる。


    コックピットの大川はHUD(ヘッドアップディスプレイ)に映し出される米粒程のレ級にミサイルロックが掛かった事を確認すると操縦桿のトリガーに指を掛ける。


    レ級が高空からつっこんでくるF3に砲口をあわせる。
    尾の対空機銃や高射砲が火を噴き、曳光弾の群れがF3に襲い掛かる。



    F3からASM-2(93式空対艦誘導弾)が2発同時に発射されるとの、レ級の尾に装備された主砲が轟音と共に火を噴いたのはほぼ同時だった。
  23. 23 : : 2016/06/05(日) 10:31:46
    新しいスレです

    http://www.ssnote.net/archives/46335

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