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お姉ちゃん

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  1. 1 : : 2015/11/29(日) 21:26:28
    僕は福田 旭



    小学校2年生です



    去年の春頃からいじめられるようになりました



    僕にはお姉ちゃんがいます



    お姉ちゃんは僕より3歳年上の、小学5年生です



    お姉ちゃんは誰にでも同じように優しくて、いじめられっ子の僕を助けてくれます



    僕はそんなお姉ちゃんが大好きです










    「おい、旭が来たぞ!」

    「お前気持ち悪いんだよ!」

    「学校来るな!」



    消しゴムを投げつけられました
    皆が僕を仲間はずれにします



    でも僕は寂しくありません
    だって僕にはお姉ちゃんがいるから
    どんなに悲しいことがあっても、お姉ちゃんは傍にいてくれます
  2. 2 : : 2015/11/30(月) 18:16:32
    お姉ちゃんは泣きません



    僕を守ってくれるせいで男の子に髪の毛を引っ張られたり、壁にぶつけられたりします



    だけどお姉ちゃんは一度も泣きませんでした
    怒りもしませんでした



    いつものように、穏やかな笑顔でただ耐えています



    そんなお姉ちゃんは、僕にとって本当に頼もしいです



    それからもずっと、お姉ちゃんは僕を守ってくれました



    雨が降ったら二人で一つの傘に入って

    忘れ物をして怒られたら、こっそり二人で笑いあって

    それだけで僕は幸せでした



    そんな僕たちを、みんなは気持ち悪いと言います



    辛くて悲しかったけど、お姉ちゃんが泣かなかったから僕も我慢しました
  3. 3 : : 2015/11/30(月) 22:20:42


























  4. 4 : : 2015/11/30(月) 22:21:16
    あれから月日は過ぎ、僕は小学6年生になりました



    相変わらずお姉ちゃんと一緒です
    相変わらずいじめられています



    だけど、一つだけ違うことが



    僕は恋をしました



    それは同じクラスの美紀ちゃん
    美紀ちゃんは転校生で、先月転校してきたばかりです



    いじめられている僕を、初めて庇ってくれた友達でした



    お姉ちゃん以外に守られるのは初めてで、男の子相手に怖気づかない美紀ちゃんがかっこいいと思いました



    僕がお姉ちゃんの次に憧れる人です



    美紀ちゃんは僕とたくさん話をしてくれます
    お姉ちゃんのことも悪く言いません




    少しだけ、気を遣っている様子はあるけれど…
  5. 5 : : 2015/12/01(火) 05:57:11
    美紀ちゃんはみんなの人気者です



    運動も勉強も得意で、裏表のない性格
    いつも人の真ん中にいます



    そんな美紀ちゃんに、今日告白しようと思う



    僕みたいないじめられっ子と付き合ってくれるとは思ってない



    ただ、好きだという気持ちと、いつも守ってくれてありがとう…と、感謝を伝えたいから



    旭「美紀ちゃん…」



    美紀「どうしたの?」



    旭「あのね…その……」



    美紀「………」



    旭「きっ、今日の放課後!時間あるかな!?」



    美紀「!」



    僕が珍しく大きな声を出したから、みんな驚いている



    美紀「どこに行けばいい?」



    旭「図書室」



    美紀「わかった」
  6. 6 : : 2015/12/01(火) 18:23:42
    放課後になった



    僕は先に図書室で待っていることにした



    もちろんお姉ちゃんも一緒



    美紀「来たよっ」



    旭「!」



    いよいよだ…



    緊張する
    手に汗をかくし、喉も乾いてきた



    だけど僕は言うんだ
    お姉ちゃんも微笑んでくれてる



    旭「美紀ちゃん、僕、君のことが…っ好きなんだ!」



    美紀「え…?」



    旭「僕は1年の頃からいじめられてて、だけど、美紀ちゃんが初めてだったんだ!僕のことを守ってくれたのは!」



    美紀「旭くん…」



    旭「美紀ちゃんが助けてくれるまでは、ずっとお姉ちゃんに守ってもらってた…。」



    美紀「……………」



    旭「ううん、今も、こうして傍にいてくれないと好きな人に告白することもできない」



    美紀「ねえ…それ、本気?」



    旭「本気だよ!僕は本当に美紀ちゃんが」



    美紀「違うよ」



    旭「え?」



    美紀「それ……」



    僕の胸元を指さした



    美紀「本気で……」








































    その“人形”がお姉さんだと思ってるの?
  7. 7 : : 2015/12/01(火) 18:24:38
    期待です!
  8. 8 : : 2015/12/01(火) 20:35:41
    直方正典さん
    期待ありがとうございます!
  9. 9 : : 2015/12/01(火) 20:37:31

    旭「人……形…?」



    僕の腕の中にはお姉ちゃんがいるだけです
    いつもと変わらない優しい笑顔で見守ってくれているだけなんです



    旭「人形なんかじゃないよ…!どうしてそんなこと言うの!?」



    美紀「旭くん…」



    旭「お姉ちゃんはずっと僕を守ってくれたんだよ!?今だってほら!傍にいてくれてる!」



    人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形



    美紀ちゃんの言葉が頭を回ります
    パニックになって、何もわからなくなりました



    旭「お姉ちゃんスタイルいいでしょ!どんな服も似合うんだよ!だけど少食だからちょっと心配なんだ!あっ!そうだよ!美紀ちゃんに紹介してなかったよね!だから勘違いしちゃったんだね!だってお姉ちゃん寡黙だから!あのね!僕のお姉ちゃ」



    美紀「旭くん!」



    旭「!」



    美紀ちゃんが声を荒らげました
    とても悲しそうな目で僕を見ています



    美紀「違うよ、旭くん…。それはお姉さんなんかじゃない。ただの人形だよ」



    旭「だから違うってば!お姉ちゃんが人形だって言うなら本当のお姉ちゃんはどこにいるの!?ねえ!?死んじゃったと…で、も………」



    美紀「…?」



    死んじゃった……?



    旭「何それ…違う、全然違うよ……」



    美紀「大丈夫?どうしたの?」



    旭「…っ!あぁああぁぁぁぁ!!」



    美紀「旭くん!?」



    美紀ちゃんを置いて逃げ出してしまいました



    胸のあたりが苦しくて、息が詰まる



    一瞬でもあんな考えが浮かんだことが許せませんでした



    だけど分からない
    何故こんなにも否定したいのか



    お姉ちゃんは生きているんです
    今も僕の腕の中で僕を見あげているんです



    それは本当の……






    心が大きく揺らいでいる気がする



    踏み込んではいけない方向へと進んでいる気がします
  10. 10 : : 2015/12/02(水) 06:24:16
    夜、僕は晩御飯も食べずに布団に入りました



    横を見ると、お姉ちゃんが



    安心していいよ



    と、僕を見つめています



    それなのに…今日はいつもの笑顔に不安を覚えた












    その夜、夢を見ました



    お姉ちゃんと僕が、真っ白で何も無い、どこまで続いているのかも分からない部屋にいました



    夢の中のお姉ちゃんは、泣いています
    何かを大声で叫んでいるのに、目の前にいる僕には何も聞こえない



    お姉ちゃんの涙なんて、随分と久しぶりに見た






    5年前のあの日以来







    そうだ…
    5年前、お姉ちゃんは………
  11. 11 : : 2015/12/02(水) 18:40:31
    僕を抱きしめ、泣きじゃくりながら何かを叫ぶお姉ちゃん



    これが本当のお姉ちゃん



    お姉ちゃんは僕のそばにいるんだと思いたかった



    だから自分を騙して、人形をお姉ちゃんだと思い込んだ



    死んだなんて、認めたくなかった






    だってお姉ちゃんは…僕のせいで死んだから


  12. 12 : : 2015/12/02(水) 18:42:24
    五年前の台風の日



    その日は午後から自宅待機で、みんな家に帰った



    だけど僕は学校に忘れ物をして、それを取りに行こうとした



    お母さんやお父さん、そしてお姉ちゃんも、僕を止めた



    だけど僕は学校が休みということに舞い上がっていたし、明日提出の宿題があるからと飛び出した



    少しの風くらいなんてことない
    そう思っていた



    それが大きな間違いだと分からずに



    学校へ行く途中、大きな川がある
    少し雨が降っただけであっという間に流れが速くなる



    その上を通る橋を渡っていた時



    旭「うわ…すごい水だな」



    僕は橋の欄干から川をのぞき込んでいた
    すると、これまでにない突風が吹いた



    旭「うわぁっ!?」



    小さくて軽かった僕は簡単に吹き飛ばされて、川に落ちた



    旭「助けっ……!だ…だれ………」



    こんな台風の日に外に出る人なんていない
    僕は川の中でただもがいていた



    そんな抵抗もむなしく、どんどん流されて、体力もなくなって、息も苦しくなった



    気を失いかけたその時、声が聞こえた






    「旭!」






    その後のことはよく覚えていない



    気がつくと布団で寝ていて、お父さんとお母さんが泣いていた



    目を覚ました僕を抱きしめて、




    「あなただけでも生きていてくれてよかった!無理矢理でも止めれば…っごめんね…!」




    そう言った










    それからだ



    僕が人形をお姉ちゃんだと思い込むようになったのは
  13. 13 : : 2015/12/02(水) 21:51:40
    僕の軽率な行動で、お姉ちゃんが死んだ





    もうどこにもいない





    もう…帰ってこない








    全てを思い出し、僕も泣いた



    本当のお姉ちゃんと二人で、音のない世界でたくさん泣いた



    まるであの日の川の中みたいだった



    水の中で苦しくて、何も聞こえなくて、怖かった



    お姉ちゃんはもっと苦しくて辛い思いをした



    それなのに僕は現実から逃げて、お姉ちゃんの幻にすがった



    そうだ



    お姉ちゃんは生きていた



    腹が立った時は怒って、楽しい時は笑って、悲しい時は…泣いていた




    人形なんかじゃない
    お姉ちゃんは、暖かかった

  14. 14 : : 2015/12/03(木) 18:04:23
    次の日、僕は人形を押し入れにしまった



    旭「今までありがとう。君も、ずっと他人の面影を重ねられて辛かったよね。本当にごめんなさい」



    そう言って押し入れの扉を占めた僕を見て、お父さんとお母さんは泣いていた








    学校に行くと、人形を持ってない僕にみんなが驚いていた




    「お姉ちゃんはどうしたんだよ?」




    いつも僕をからかってくる男の子が、ニヤニヤしながら聞いた



    旭「僕のお姉ちゃんはもうどこにもいないから。逃げるのはやめにしたんだ」



    何でもないように言うと、みんな気まずそうな顔をして、それから



    「ごめん…」



    と言った



    旭「僕が悪かったんだ。だけどお姉ちゃんはきっと許してくれると思う。誰よりも優しかったから。だから僕はもう前を向くよ」



    教室が静まり返った
    みんなが俯いていた



    美紀「旭くん」



    旭「美紀ちゃん…昨日はごめんね。僕が呼んだのに…」



    美紀「お姉さんのこと、もういいの?」



    旭「うん」



    美紀「そっか。なら、これからはお姉さんの代わりに私が守ってあげないとね?」



    旭「え?それって…」



    美紀「私も好きだよ、旭くん!」



    旭「…!あ、ありがとう!だけど違うよ」



    美紀「?」



    旭「これからは、僕が美紀ちゃんを守るから!」





    この一言で教室が拍手と口笛の嵐になったことは言うまでもない
  15. 15 : : 2015/12/03(木) 18:05:40





























    お姉ちゃん、天国で見てくれてる?



    長い時間がかかっちゃったけど、僕、少しは成長できたかな?





    学校が終わったらお墓参りに行くよ



    5年も経ってるのに初めていくなんてね…



    今までの分もたくさん話すよ



    あの頃みたいに、笑って聞いてほしいな








    〜END〜

  16. 16 : : 2015/12/03(木) 18:06:40
    以上で終了になります
    閲覧、コメントありがとうございましたm(_ _)m

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Nyuuyokuzai

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