ssnote

x

新規登録する

作品にスターを付けるにはユーザー登録が必要です! 今ならすぐに登録可能!

この作品は執筆を終了しています。

バカとテストと召喚獣 IFの世界

    • Good
    • 0

loupe をクリックすると、その人の書き込みとそれに関連した書き込みだけが表示されます。

▼一番下へ

表示を元に戻す

  1. 1 : : 2015/06/24(水) 17:39:56
    はじめまして。
    『竜』と申します。以後お見知りおきを。

    私は以前、ここSS noteでアレン・レンズとして
    進撃の巨人のssを書いていましたが、今は、
    ハーメルンというサイトで色々なSSを書いています。

    そのSSの宣伝として、ここで少しだけお話しを
    投稿していきたいと思います。

    続きは、ハーメルンのサイトに貼ってありますので、気になる方はそちらへよろしくお願いします。
  2. 2 : : 2015/06/24(水) 17:41:08
    第1章『エピソードオブ姫路瑞希』
  3. 4 : : 2015/06/24(水) 17:41:39
    第1問【出逢いは唐突に】
  4. 5 : : 2015/06/24(水) 17:41:47
    今日は『クラス振り分け試験』の当日。
    僕は朝早く起きたため、
    たまたま遠回りをして学校へ向かっていた。

    「ふわぁぁぁ……平和だなぁ」

    そう、平和だ。
    周りには僕の平和を壊す"モノ"はいない。
    歩きを止め欠伸をしながら伸びをする。

    そんな時だった。

    「なっ、何するのよ!やめて!!!!!」

    どこからか叫ぶ声がする。
    うん。こんな叫びも平和の内。
    ……………ん?
    なんかおかしい。

    「どこが平和だぁぁぁぁぁあああ!!!!!」

    どこかで事件が起こってる。
    別にヒーローとか、そんなのには興味ないし。
    誰かを助けてどうかするわけでもない。
    でも、僕は困ってる人をほかっておけないんだ。
    だから、僕は走り回った。

    「なんなのよ!あんた達は!」

    走り回る必要は無かったようだね。
    事件は直ぐ近くの路地裏で起きていた。
    よく見ると僕と同じ文月学園の制服を着ている女子が男3人に絡まれていた。

    「あれは…"秀吉"!?」

    被害者である女子の生徒は僕の友達だった。

    「いやぁ!お願いだからやめて!」

    やばい。素直にそう思った。
    明らかに加害者の男共は秀吉の身体が目的だった。
    お尻を撫で回したり。
    いやらしい目で見たり。
    服を脱がそうと……

    「させるかぁぁぁぁあ!!!!!!!!!!!!!!!」

    僕は全力で服を脱がそうとしていた
    クソ野郎をぶっ飛ばし、
    秀吉の手を掴んで奴らと距離をとった。

    「え!?きっ、君は!?」

    手を掴まれた秀吉は何がなんだか
    分かっていないようだった。
    いやぁ…それにしても…秀吉の手って
    すべすべで小さいなぁ。
    あれ?そう言えば
    僕のことがわからないのかな?

    「なんだてめぇ!何しやがる!」

    っと…そんな事思ってる場合じゃないや。

    「秀吉!ここは僕に任せて逃げて!」

    「は!?ちょっ、アタシは───「今日はクラス振り分け試験があるんだよ!?こんなことしてる場合じゃないでしょ!?」───それがなによ!」

    やれやれ。全く、なんでわかんないのかな?
    もしかして秀吉はバカなのかな?

    「僕達がこんな厳つい人達に勝てるわけない。そんな事もわからないの?こんな事で試験を受けられなくなったらどうするの!?大丈夫。僕なら秀吉を逃がして時間稼ぎをしてから直ぐに学校に向かうから!それとも秀吉はこんな事で『振り分け試験』をせずにFクラスに行くバカなの!?」

    「………わかった。」

    走って逃げる秀吉の足音が消える頃。
    抑えきれなかった僕の感情が表に現れた。

    「…………………おい」

    「あ゛?」

    「僕はお前達を絶対に許さない!!!!!」
  5. 7 : : 2015/06/24(水) 17:46:53
    第2問【Fクラス】
  6. 8 : : 2015/06/24(水) 17:47:00
    「いててっ」

    僕はあの後、
    あのクソ野郎共に袋叩きにあった。
    勿論、そんな簡単に勝てるとは思わなかったけど…くそっ…

    「…………勝ちたかったなぁ」

    「無理に決まってるじゃない」

    立ち上がろうとした僕の目の前には
    秀吉が立っていた。

    「な!秀吉!先にいけって言ったでしょ!?」

    「あんたを置いていける程…バカじゃないわ」

    そう言ってそっぽを向く秀吉。
    ああ…なんど見ても秀吉は可愛いなぁ…

    「あと………その……ありがと」

    秀吉は僕の顔を見て少しだけ顔を緩めた。
    可愛い。可愛い。どうしよう…。
    秀吉は男の子なのに…
    胸がドキドキして仕方が無い。

    「………可愛い」

    「………………へ?」

    思わず口に出してしまった。
    やっぱり秀吉は女の子じゃないかな?
    ほら、何度みても可愛らしい仕草。
    話し方……………………あれ?
    そう言えば…いつもと話し方が違う様な…。

    「ねぇ…秀吉?いつもと話し方…違うよね。どうしたの?」

    「秀吉じゃないわ」

    思考停止。
    秀吉じゃない?

    「アタシは秀吉じゃないの」

    「あはは。そんな冗談は僕には効かないよ?」

    「冗談なんかじゃないわ。アタシは優子。木下秀吉の双子の姉よ」

    「……………………………へ?」

    僕にはその言葉が理解出来なかった。

    「そんなことよりあんた身体中傷だらけで痣だらけ…血も凄く出てるし…大丈夫なの?」

    「このくらい平気平気!」

    僕は僕に出来るとびっきりの笑顔を見せた。
    あれ?秀吉の顔が赤い。
    あ…違った秀吉じゃないんだった。
    あれ?そう言えばなんて呼んだらいいんだろう?

    「えっと…その…なんて呼んだらいいですか?」

    「ゆ、優子でいいわよ」

    「わかった。僕は吉井明久。これからよろしくね優子さん」

    「うん。よろしくね。明久…くん」

    その時見せた優子さんの笑顔は…
    一生忘れられる事が出来ないだろう。
    顔はほんのり赤く、上目遣いをした
    少しも曇りのない最高の笑顔だった。

    ───────────────
    ──────────
    ─────
    「やっと学校についたね優子さん」

    「ええ、そうね」

    今頃、みんなは『振り分け試験』を
    受けている頃だろう。
    僕はともかく…
    優子さんが可哀想で仕方が無い。
    あんなクソ野郎共のせいで……

    「吉井!木下!」

    げっ…どこからか鉄人の声が聞こえる。

    「お前らこの大事な日に何…ち………こくを…って吉井!?なんだその傷や痣は!」

    あちゃー……手当てするの忘れてた

    「だっ、大丈夫か!?」

    「あはは、大丈夫ですよ鉄……西村先生」

    危ない危ない。
    鉄人と言ったらまた傷が増える所だったよ。

    「はっ、はやく保健室に!」

    「そんなことより…僕達…『振り分け試験』…受けられませんよね…」

    「…………ああ。何があったのかは知らんが…お前達は受けられる事ができん」

    「………そうですか」

    分かりきっていた事だ。
    だけど……だけど……優子さんだけでも
    『振り分け試験』を受けさせてあげたかった…

    「なぁ…吉井、木下」

    「なんですか?鉄人」

    「お前達に一体何があった」

    やっぱり気になるよね。
    でも…このことを鉄人に言ってもいいんだろうか…
    優子さんが傷ついたりはしないだろうか…

    「アタシが…強姦されそうになったんです」

    「ゆっ、優子さん!?」

    「いいのよ…本当の事を言わないと…学園側は納得しないでしょ?」

    確かにそうかもしれない…
    しれないけどさ…
    僕は優子さんが傷付くところは見たくないよ

    「それは本当なのか?」

    「はい。お尻を撫でられたり…胸を触られたりしました。でも、そんな時に明久君が助けてくれたんです。アタシだけでも先に学園に行けって…」

    「…………そうか。そんな辛い目にあったのか……悪いな…吉井、木下…お前達が辛い目にあったというのに…『振り分け試験』すらさせてやれなくて」

    「吉井…胸をはれ!クラスなんて関係ない!お前は文月学園の誇りだ!」

    「木下…強くなれ!辛い経験を活かすんだ!お前は俺達が守ってやる!」

    「2人共!Fクラスで頑張ってくれ!」
  7. 9 : : 2015/06/24(水) 17:48:15
    第3問【温もり】
  8. 10 : : 2015/06/24(水) 17:48:22
    あの日から数日。
    今日はクラス発表の日。
    勿論、僕はFクラス。
    分かりきっていた。

    「おはようございます。鉄…西村先生。」

    軽く頭を下げ挨拶をする僕。
    うん。僕は生徒の鏡だな。

    「…俺の気の所為で無ければ、鉄人と言いかけなかったか?」

    「ははっ、まさか」

    危ない危ない。
    危うく"鉄人"と呼ぶ所だった。

    「それより本題だ。ほら、受け取れ」

    鉄人は箱から封筒を取り出し、
    僕に差し出してくる。

    「ありがとうございます。」

    結果は分かっているため、正直必要なかった。

    「なぁ吉井」

    「はい。なんですか?」

    「俺は…勘違いしてたよ」

    「薮から棒にどうしたんです?」

    突然語り出す鉄人に少し驚きながら返事を返す。

    「俺はお前の事をテストの結果だけで評価していたんだ。教師失格だな。」

    何を言い出すかと思ったら…
    全く、無敵の鉄人も人間だったってことかな?

    「西村先生。自分を卑下するものじゃありませんよ。僕が駄目人間に変わりはありません。西村先生の目は間違ってませんよ」

    「…………ったく、お前も自分を卑下してるじゃないか…。それにしても…吉井に励まされるとは…」

    ボソボソと話し出す鉄人。
    全く聞き取れない。
    あーーー!気になるよーーーー!

    「聞こえませんよ?鉄人?」

    「バカはバカらしくFクラスに行ってこい!といったんだ!」

    こうして僕のFクラス生活が始まった。

    ───────────────
    ───────────
    ───────

    「あれは………優子さん?」

    バカでかい教室を羨む様に見ている優子さんを僕は見つけた。
    もしかして、悔しいのかな…。

    話しかけるか、話しかけないか迷った末、
    僕は話しかける方を選んだ。

    「優子さん」

    慌てて振り向く優子さん。
    何も見ていない。そう言いたそうだった。

    「どっ、どうしたの?明久君」

    「その…やっぱり悔しい?」

    「……………悔しくないと言えば嘘になるわ」

    やっぱりそうだよね。
    悔しくない訳がないよね。

    「けど………割り切っているつもりよ」

    そんな訳ない…割り切っているなら
    あんな目でこの教室を覗く訳が無い。
    僕にはわかる。
    優子さんは悔やんでる。

    そんな優子さんを見てると手に力が入る。
    身体が熱くなる。頭が痛くなる。胸も痛い。
    向けることの出来ない苛立ちをわかせ、
    身体全体が震えてくる。
    そんな時だった。

    僕の手に優しくて暖かい感触がした。
    優子さんが僕の手を握っている。
    直ぐにそう理解した。

    「明久君。ありがとう」

    「ちょっ!?優子さん!?」

    慌てて離そうとする僕の手を
    優子さんは離さない。

    「アタシは大丈夫だから。そんな顔しないで?」

    優子さんの優しい笑顔と優しい温もりに
    触れたこの瞬間は本当に幸せだった。
  9. 11 : : 2015/06/24(水) 17:50:00
    第4問【Fクラスは残酷】
  10. 12 : : 2015/06/24(水) 17:50:05
    僕は今、優子さんと一緒に
    Fクラスの前にいる。
    なぜ、早くクラスに入らないかというと
    少し不安だからだ。
    女の子と2人で登校しているなんて思われたら
    僕の命がいくつあっても足りない。

    「ねぇ。明久君?」

    「どうしたの?優子さん」

    「入らないの?」

    入れないんだよね。うん。

    「入ろうよ」

    優子さんさえいれば何もいらない!
    なんでこの数秒だけで
    僕をこんなドキドキさせられるのかな。

    よし。大丈夫な気がしてきた。
    女の子と一緒に登校したかといって
    袋叩きにあったりすることはないよね!
    何も心配することはない。信じよう。
    これから一緒に過ごすFクラスの仲間達を!

    そう思いながらドアを勢いよく開けながら

    ズドドドドドドドドドド(物が扉に刺さる音)

    閉めた。
    クラスの仲間達は級友を殺める事になんの躊躇もないんだね。なんだか悲しいよ僕。

    「何があったのよ。今」

    「さっ、さぁ…」

    言えないよ。
    優子さんと一緒にいるから
    僕の命が危ないなんて!

    「早く座れ。このうじ虫野郎」

    酷い!
    勢いよくドアが開いたと思ったら罵倒されたよね!?
    今!

    「聞こえないのか?あぁ?」

    いくらなんでも酷い!
    一体誰だ!こんな酷い事を言う奴は!

    「…………雄二?」

    彼は坂本雄二。僕の悪友だ。

    「いいから早く教室に入ったらどうだ?」

    「間違いなく殺されるよ!」

    「大丈夫だ。お前の身体は頑丈だからな。」

    「痛み付けられることは決まってるじゃないか!」

    「当たり前だろう?ってその傷はどうした。」

    やっぱり来たかその質問が!
    どうやって誤魔化そうかな

    「えっと…なんていうか…」

    僕は考える。

    「えっと」

    僕はもっと深く考える。

    「その」

    僕は海よりも深く考える。

    「えーっと」

    閃いた。

    「車に────「嘘だな」───まだ僕何も言ってないよぉ」

    「いいから言っちまえよ。本当の事を」

    「ごめん。それだけは言えない。」

    僕の口から言っていいようなことではない。
    バカな僕でもそれくらいはわかる。

    それにしても
    自分で自分にバカって言うのは辛いね。

    「アタシから言うわ」

    「駄目だ!優子さん!」

    「いいの。いつかは言わなければならないことになると思うし。アタシのことは…明久君が守ってくれるでしょ?」

    なんて綺麗な顔をするんだろう…
    それにしても友達を守ることくらい
    当たり前じゃないか!

    「うん。僕が出来る最大限の努力をするよ」

    「じゃあ…教室に入りましょう?」

    「………明久に一体何があったんだ?」

    いざ!尋常に勝負!
    心にそう誓い教室に入ろうとする。

    ズドドドドドドドドドドド(物が扉に刺さる音)





    …………………………無理かも知れない。
  11. 13 : : 2015/06/24(水) 17:51:46
    第5問【自己紹介前編】
  12. 14 : : 2015/06/24(水) 17:51:51
    「みんな酷いよぉ!」

    今、僕はFクラスのみんなの手によって
    縄で全身をぐるぐる巻きにされている。

    理由は簡単。
    女子と2人で教室に入って来たから。
    でもみんな盛大な勘違いをしてるよ!
    僕は優子さんと一緒に登校して来た訳じゃないんだ!
    そうだったらどれだけ嬉しいことか。

    「えーと何してるんです?」

    教室のドアの方向から覇気のない声が聞こえてきた。
    そこにはヨレヨレのシャツを貧相な身体に着た、いかにも冴えないオッサンがいた。

    助けてくれるかな。

    「席についてもらえますか?HRを始めたいので」

    目が合ったのに無視された。
    なんとか言ってよ!先生!

    「えー、おはようございます。2年F組の担任の福原慎です。よろしくお願いします。」

    福原先生は薄汚れた黒板に名前を書こうとして、やめた。

    と言うよりチョークすらない!?

    「皆さん設備に不備はありますか?あれば申し出て下さい」

    設備といっても机はない。
    あるのは畳と卓袱台それに座布団。
    なんて斬新な教室だろう。

    「せんせー、俺の座布団に綿がほとんど入ってません」

    「あー、はい。我慢してください」

    「先生、俺の卓袱台脚が折れてます」

    「あー、はい。我慢してください」

    クラスの生徒が次々に設備の不備を
    申し立てるが「はい。我慢してください」の一点張り。
    全く!はじめから直す気がないじゃないか!

    って卓袱台の脚が折れてたら勉強出来ないじゃないか!

    「冗談です。木工ボンドが支給されていますので、後で自分で直してください」

    福原先生。冗談とかも言うんだね。

    「では、自己紹介でも始めましょうか。そうですね廊下側の人からどうぞ。」

    福原先生に指名を受け、
    廊下側の1番前の生徒が立ち上がり、名前を告げる。

    「木下秀吉じゃ。演劇部に所属しておる。実は双子の姉もおるので間違えないようにしてもらいたいのじゃ。」

    あー!誰かと思えば秀吉じゃないか!
    優しい性格に可愛い容姿、引き込まれるような可憐な笑顔。歩くオアシスとは秀吉のことだよね。

    「と、いうわけじゃ!今年1年よろしく頼むぞい」

    優しく微笑みを作り自己紹介を終える秀吉。
    あぁぁぁぁ!!!!!可愛い!

    「…………土屋康太」

    おおっと、次の人の自己紹介が始まったようだ。
    おおっ!あれはムッツリーニじゃないか!
    趣味は盗撮、特技は盗聴といったエロの大王だ。

    それにしても、やっぱり学力最低クラスだけあって、男の子ばっかだよね。

    「木下優子です。先程自己紹介していた木下秀吉の双子の姉────」

    「はいはーい」

    まだ自己紹介も終わってないのに
    男子生徒の1人が手をあげる。

    「なんですか?」

    「なんであいつと一緒に登校していたんですか?」

    そう言って縛られた僕を指で指してくる男子生徒。
    それと同時に睨んでくるクラスの男子生徒達。


    その時の僕は…


    ………………………生きた心地がしなかった。
  13. 15 : : 2015/06/24(水) 17:53:03
    第6問【自己紹介後編】
  14. 16 : : 2015/06/24(水) 17:53:12
    「はいはーい」

    「なんですか?」

    「なんであいつと一緒に登校していたんですか?」

    そう言って縛られた僕を指で指してくる男子生徒。
    それと同時に睨んでくるクラスの男子生徒達。
    その睨んでくる男子生徒の1人が更なる質問をぶつけてきた。

    「あいつとどういう関係なんですか?」

    あ、確かにどういう関係なんだろ?
    知り合い?友達?親友?恋人はないとして
    なんて言えばいいんだろ?

    「明久君は…アタシの恩人よ」

    「アタシはね。『振り分け試験』の日に強姦されそうになったの。」

    本当に言っちゃうんだね優子さん……。

    「どういうことじゃ!姉上!」

    珍しく秀吉の言葉に怒りがこもってる
    そりゃぁそうだよね。お姉ちゃんが強姦にあったなんて知れば怒るよね。

    「どうもこうもないわ。言った通りなのよ。アタシは……お尻を…撫で回されたり、胸を…触られたり……したわ。でもアタ…シは…叫ぶことしか出……来……なかった。ついに……服を脱がされそうになって…私は目をつぶった。でもね……………、服を………脱がされることはな…かったわ。明久君が………助けてくれたから。」

    言葉を積み重ねる事に嗚咽と涙が溢れる
    優子さん。
    今にも、倒れそうな身体は
    なんとか壁に持たれかかって立っている状態だった。

    「優子さん」

    そんな優子さんを見てすることは決まってる。
    僕は優子さんの身体を支える。
    でも、支えることしか出来ない。
    僕は無力だ。

    ─────────────────
    ─────────────
    ─────────

    あれから何分経ったんだろうか。
    1分1秒がとてつもなく長い。
    そう感じるのはこの教室の空気が重たいからだろう。
    優子さんが泣き崩れてから
    この教室にいる人は誰一人として
    動く事が出来なかった。
    それどころか息をすることすら忘れてしまう事もあった。

    「(どうしたらいいんだ。)」

    まだ優子さんは泣き止まない。
    僕の服に力強くしがみつきながら泣いている。


    それにしても…
    優子さんが泣くところ初めてみた。
    今までに泣くべき場面は他にもあったはずだよね…
    けど…今まで涙を見せなかったんだ。
    これは…僕の勝手な想像だけど…
    優子さんはプライドが高い…
    だからこんなに沢山の人の前で涙を流すなんて…余程辛いはずなんだ。

    守ってあげたい。
    僕じゃ大して力になれないかもしれないけど…
    少しだけでも…

    「ねぇ。みんなにお願いがあるんだ」

    この重たい空気中で発言するのは少し大変だけど…優子さんの為だと思えば辛くない。

    「この話しは僕達だけの秘密にして欲しいんだ。」

    僕のお願いはFクラスの全員の無言の頷きで締め括られた。
  15. 17 : : 2015/06/24(水) 17:54:08
    第7問【宣戦布告】
  16. 18 : : 2015/06/24(水) 17:54:13
    「さて、皆に1つ聞きたい」

    優子さんが泣きやみ、
    更に数分がたってから自己紹介が再開された。

    僕の知り合いである
    「島田美波」、「姫路瑞希」をはじめとして
    次々と自己紹介を終え、ようやく
    最後の1人となった。

    その最後の生徒は僕の悪友「坂本雄二」。
    雄二は自己紹介をはじめたと思えば
    クラスの全員に質問を投げかけ始めた。

    「かび臭い教室。古く汚れた座布団。薄汚れた卓袱台。Aクラスは冷暖房完備の上、座席はリクライニングシートらしいが───」

    1呼吸をおき、静かに告げる雄二。

    「───不満はないか?」


    「「「大ありじゃあっ!!」」」


    2年F組の生徒の魂の叫び。
    うん。無駄に結束力があるね。たくましいよ。


    雄二が急にこんな事を言い出したのは
    理由がある。
    それは僕が言い出したから。
    「『試召戦争』を仕掛けないか」と……
    姫路さんと優子さんの為に。

    僕が言ったのはAクラス相手への戦争。
    普通ならFクラスがAに勝てるとは思わない。
    だから雄二が僕の提案をのんでくれた時は嬉しかった。
    無理かもしれないけどやらなきゃならないんだ。


    「このクラスには試験召喚戦争で勝つことのできる要素が揃っている」

    いきなり雄二が言い出した。
    根拠がある?僕らはFクラスだよ?
    勝つ根拠なんてどこにあるのさ。

    「おい、康太。畳に顔をつけて姫路のスカートを覗いてないで前に出てこい」

    「…………!!(ブンブン)」

    あ、流石だねムッツリーニ。
    凄い勢いで首を横に振って否定してるけど
    顔に畳の痕がついてるよ。

    「土屋康太。こいつはあの有名な寡黙なる性職者だ」

    「姫路のことは説明する必要もないだろう。皆だってその力はよく知ってるはずだ」

    「木下姉妹だっている」

    「わしは男じゃ!」

    全く、秀吉が女の子でなければ
    美波はどうなるのさ

    「ねぇ。なんか失礼なこと考えなかった?吉井」

    「なっ、なんのことかなぁ?」

    「当然俺は全力を尽くす」

    そう言えば雄二って頭よかったっけ

    「それに、吉井明久だっている」

    シーーーーーーン

    僕の名前をオチで使うな!
    うわぁぁぁ!この無言の雰囲気は辛───

    「「「うぉぉぉぉぉぉ!!!!!」」」

    なんか盛り上がってるぅぅぅぅ!?

    それにしても凄いメンツだね。
    神童の雄二
    Aクラス並の学力のある優子さんと姫路さん
    数学だけならBクラス並の島田さん
    寡黙なる性職者のムッツリーニ
    古典だけならAクラス並の秀吉

    凄い…本当にここはFクラスなのかな


    「皆、この境遇は大いに不満だろう?」

    「「「当然だ!!」」」

    「ならば全員ぺんを執れ!出陣の準備だ!」

    「「「おおーーっ!!」」」

    「俺達に必要なのは卓袱台ではない!Aクラスのシステムデスクだ!」

    『うおおーーっ!!』


    「よし明久。肩慣らしにDクラスと試召戦争をしたいと思う。宣戦布告してこい!」
  17. 21 : : 2015/06/28(日) 15:19:05
    第8問【作戦会議】
  18. 22 : : 2015/06/28(日) 15:19:10
    下位勢力の宣戦布告の使者ってたいてい酷い目に遭うよね。

    僕は雄二にそう聞いて

    大丈夫だ。と力強く断言された。
    だから信じたのに!
    何が友達を騙すような真似はしないだ!

    「僕は騙されたぁっ!」

    全力で教室に戻り、転がり込む僕。
    あ、危なかった!Dクラスの奴ら、
    物凄い勢いで掴みかかってきたよ!?
    僕に雄二が視線を向け、

    「やはりそうなったか」

    さも当然かのように言い放った。
    てめぇ、ぶち殺すぞ!

    「やはりってなんだよ!わかってたじゃないか!」

    「当然だろ。そんなことくらい予測出来なくて代表が務まるか」

    「少しは詫びろよ!」

    全く、雄二は僕のことをなんだと思ってるんだ!

    「大丈夫なの?明久君」

    ところどころ制服が破れている僕の有様を見て、駆け寄ってくれる優子さんと姫路さん。
    ああ、なんて優しいんだろう。
    美波もこの2人の半分の優しさがあれば…

    「あ、うん。大丈夫だよ?ほんの少しのかすり傷だよ。」

    「吉井、本当に大丈夫?」

    ああ、半分の優しさはあったみたいだね島田さん。

    「うん平気。心配してくれて────」

    「そう、良かった…。ウチが殴る余地はまだありそうね」

    「───だめ!もう死にそう!」

    うわぁぁぁん!!!
    半分どころか10分の1も優しさがなかったね島田さん!

    ────────────────
    ────────────
    ────────

    「さて、今回の戦争の作戦を伝えたい」

    僕達(僕、優子さん、ムッツリーニ、雄二、秀吉、島田さん、姫路さん)は屋上でご飯を食べながら(僕は塩と水だけ)明日行う試召戦争についての話をしていた。

    「雄二。1つ気になっていたんじゃが」

    「どうしてDクラスなのかでしょ?秀吉」

    「そうなのじゃ姉上。姉上は分かっているのかのう?」

    「クラスのモチベーションを上げる気じゃないかしら。」

    「そうだ。小物を倒しても対してモチベーションはあげられねぇ。だか、俺達の今の戦力で高いレベルの奴らを倒せるとも思えねぇ。だからDクラスなんだ。それに実践に慣れるためでもある。」

    「…………………?」

    うん。ムッツリーニは理解出来てないみたいたね。安心して僕もだから。

    「ま、要するにだ」

    「姫路と木下、それに明久に問題のない今、こいつらの学力を補充すらすれば間違いなくDクラスまでには勝てる。Aクラスが目標である以上はEクラスなんか攻めても意味がないってことだ」

    「よし、皆納得したか?」

    無言でみんな頷く。
    僕はまだ理解出来てないけど周りに合わせることにしよう。

    「そうか。それじゃ作戦を説明する」
  19. 23 : : 2015/06/28(日) 15:20:12
    第9問【補充試験】
  20. 24 : : 2015/06/28(日) 15:20:18
    カリカリカリカリカリ

    僕達Fクラスは今、Dクラスと試召戦争を行っている。
    その最中に姫路さんと優子さんと僕は回復試験を行っている。

    カリカリカリカリカリ

    それにしても…2人は凄い。
    さっきからペンが止まっていない。

    ピンポンパンポーーーーン

    ん?緊急放送?
    何かあったのかなぁ…

    『船越先生。船越先生。吉井明久君が体育館裏で待っています。生徒と教師の垣根を越えた、男と女の大事な話があるそうです────』

    ………………………………………。

    「はぁぁぁぁあああああ!!!!!????」

    なんて事を言うんだ!
    この声は須川君か!?
    相手はあの船越女史だよ?わかってる?
    婚期を逃してついには生徒に単位を盾に
    交際を迫るようになったあの船越女史だよ!?

    いつ僕が何をしたっていうんだ!
    僕の貞操が大変な事になってしまう!

    「あの…吉井君?今の放送…本当なんですか?」

    「そんなわけないよぉぉ!っていうか僕がここにいるんだからわかるでしょ!」

    「まさかあんたにそんな趣味があったとは…アタシも予想外よ」

    ちょっとぉ!優子さん!
    なんてことを言うんだ!
    僕にそんな悪趣味があるわけないじゃないか!

    「僕にはそんな趣味はないよぉぉぉ!!!」

    「へー、それじゃぁどんな人が好みなのよ」

    ん?どういう意味?
    僕には優子さんの質問の意味がわからないよ

    「???」

    「吉井君って…こういう質問をするといつもそういう反応しますよね」

    「そんなことより補充しなくてもいいの?」

    僕は素朴な疑問を問いかける。

    カリカリカリカリカリ

    はやっ!?再び問題解き始めるのに僕が疑問を問いかけてから1秒もしなかったよ!?
    それにしても…優子さんも姫路さんも
    なんだか綺麗だなぁ……。

    ─────────────────
    ────────────
    ───────

    カリカリカリカリカリ

    「テスト終わりです。」

    あ…福原先生いたんですね。

    「やっと終わったね。優子さん、姫路さん」

    「はい。それじゃあ私は坂本君に呼ばれてますので失礼しますね。」

    そう言い、教室から出ていく姫路さんを見守りつつ、僕は優子さんと会話をはじめる。

    「優子さんは確か…今回の作戦は参加しませんでしたよね?」

    「ええ。そうね。坂本君にそう言われたわ」

    「じゃあ、ゆっくりと歩くことにしようか」

    僕は自分にできる1番の笑顔をつくった。

    「ええ。それも悪くないわね。話したいこともあるし」

    「話したいこと?」

    なんだろ…まさか。愛の告白とか?
    あーーっ!!!どうしよう!!!
    僕には秀吉が!でも優子さんも可愛───

    「明久君。テスト全然解けてなかったわよね」

    やっぱり告白なんてあるわけないよねー。

    「テスト中にペンが止まってたし」

    「えーっと…うん。というかいつもあれくらいなんだ」

    僕はついこの間まであれでCクラス並の学力があると思ってたんだけどね。

    「これからアタシが勉強みてあげるわ」






    この試召戦争は無事、
    僕達Fクラスの勝利で幕を閉じた。
  21. 25 : : 2015/06/28(日) 15:21:14
    第10問【ラブレター】
  22. 26 : : 2015/06/28(日) 15:21:19
    今日、僕はいつもより1時間以上早く学校に来た。
    理由は優子さんと『勉強会』をする為だ。
    勉強会をすることになった経緯は前回の話の通りだから説明はしないよ?

    今ほど自分の馬鹿さが役に立ったと思ったことはないね。
    ………………だって!………………だって!
    あの美少女の優子さんと2人きりで勉強会だよ!?
    ああっ、生きていて良かった!

    そんな事を考えつつ僕はいつもと同じように下駄箱で上履きに履き替えようとして。
    上履きの上にある"謎の物体"に気付いた。

    形は四角。厚さは3ミリ程度。色はピンク。
    僕の間違いでなければ…そう。ラブレターだ。

    ────────────────パタン。

    あまりもの衝撃に下駄箱を閉めてしまった。
    だって、僕にラブレターなんて届くわけないじゃない!うん!そっか!僕の見間違いだね!
    よし!疑問も解き終わったことだし上履きに履き変えよう!

    ガチャ

    「えぇぇぇぇぇぇ!!!!???」

    みみみ、見間違いじゃなかった!!!?
    ななな、なんで僕の下駄箱に!!?
    よし、落ち着こう。深く深呼吸して…

    「すぅ〜〜はぁ〜〜すぅ〜〜はぁぁぁぁぁ!!!!!??」

    って落ち着けるかぁぁぁ!!!!!!
    ハッ!!?
    待てよ!?これは誰かの罠なのかもしれない!
    周りに不信な人は…………

    「────────────────いた。」

    あれは姫路さん?
    隠れてるつもりだろうけど…
    ピンク色の髪の毛が見えてるんだよね。うん。
    これぞ頭隠して髪隠さずだね。

    と言うことは
    このラブレターは姫路さんの?
    手紙の裏を見ても差し出し人の名前がないけど。

    ちょっと読んでみようかな?
    こんな所で読むのもあれだけど…仕方ないよね?だって、差し出し人が書いてないんだし。
    僕は手紙を開けようとして

    「こんな所で何してるのよ。明久君」

    開けずに隠した。

    「ななな、なんでもないよ!」

    タイミング悪すぎ!
    まさか優子さんが来るなんて

    「そう?それにしては挙動不審だけど」

    そりゃあ挙動不審にもなるよ!
    だってあそこに姫路さんが!!!!!
    ってあれ?いない。
    おかしいなぁ…さっきまで確かにいたのに…

    「そんなことよりはやく勉強やろう!ね?ね?」

    「う、うん」

    よし、これにて一点落着!
    少し強引な気もするけど気にしない!
    気にしない事が僕の良いところでもあるからね!

    姫路さんには悪いけど、姫路さんからの(?)ラブレターは後から読むとして…。
    今は、絶対的美少女である優子さんとの『勉強会』を楽しもう。
    よーし!俄然やる気が出てきたぞーー!
  23. 27 : : 2015/06/28(日) 15:22:29
    第11問【変わらないもの】
  24. 28 : : 2015/06/28(日) 15:22:35
    「あ、ここ間違ってるわよ?」

    「え?そうなの?」

    「うん。ここはほらXに12を代入して─────────」

    僕は今、優子さんと勉強をしている。
    クラスには僕と優子さん以外は誰もいない。
    それもそうだ、まだ学校が始まる時間より45分は早い。
    このクラスでそんな早くに学校に来る人は優子さんと姫路さんくらいだし…………。

    あれ?姫路さんは?僕は周りを見てみる。
    あれ?いない………。
    さっき確かに姫路さんらしき人を見たはずなんだけど………。

    トントン

    そんな事を考えながら周りを見ていたら優子さんに肩を軽く叩かれた。

    「あ!ごめんね優子さん!折角、勉強教えてくれてるのに────────」

    ムニッ

    振り向いた僕の頬に微かに痛い感触がした。
    直ぐにその感触が何かがわかった。
    優子さんの人差し指が僕の頬に当てられていたからだ。

    「明久君。聞いてた?」

    「……………ごめんなさい。」

    ムスッとした顔をする優子さん。
    ああ、可愛い………。流石だね木下姉妹!

    「ちゃんと聞かないと駄目じゃない。悪い子にはお仕置きよ?」

    え?ええっ!?
    一体僕は何をされるの!?
    関節が増えるの!?背骨が折れるの!?
    こんな考えしか出来ない僕って………辛いね。

    ムニムニムニムニ

    「いっ、いひゃっ!いひゃいよ〜〜!!!」

    頬を外に引っ張ったり上下させたりする優子さん。
    うん。美波と違ってやる事がソフトだよね。

    「ふふっ、明久君。変な顔してるわよ?」

    「誰がそんな顔にしたと思ってるの?」

    「アタシ」

    「じゃぁ!僕も優子さんにやろっかな〜♪」

    「明久君は女の子にそんなことするの?」

    ギクッ!!!
    それを言われると辛いです。

    「………………ごめんなさい」

    「あはは!アタシの勝ちね♪」

    むぅ…なんか納得いかないな〜。
    僕だけやられるのは不公平だよ!
    でもまぁ…いっか。
    優子さんのこんな笑顔が見れるなら。

    もし、僕の願いが叶えられるなら。
    僕がこの手で、優子さんを幸せにしてあげたいな。

    だから今、僕がやるべきことは……

    「よーーーし!まだまだ時間あるから、勉強教えてね。優子さん♪」

    「任せて!」


    変わらない平和を大切にしよう。










    ─────────その頃の姫路さんは

    「…………吉井君。あんなに楽しそう」

    やっぱり私じゃ駄目なのでしょうか……。
    吉井君に見向きもされないのでしょうか……。
    私って…そんなに魅力が………ううん。卑屈になっちゃだめですよね!
    私は私ですよね!

    それより吉井君…下駄箱に入れたラブレター。
    下駄箱に入れるの…勇気を出したんですよ?
    なんで………読んでくれないのでしょうか…

    「……………………………吉井君のバカ」
  25. 29 : : 2015/06/28(日) 15:24:13
    第12問【○○を壊すもの】
  26. 30 : : 2015/06/28(日) 15:24:19
    僕は忘れてる気がする…………。
    大切な"何か"を…………。
    一体なんだったっけ?
    うん。今日の事を思い出してみよう!

    1.朝早く学校に来て優子さんと勉強会をした。
    2.1限目からずっと補充テストを行っている。
    3.今はお昼でいつものメンバーとご飯をとっている。
    4.僕のご飯はソルトウォーター。
    5.何故か今日、姫路さんが冷たい。

    この中からだと姫路さんかな……?

    「吉井?どうしたの?」

    考え込んでいた僕の顔をのぞき込む島田さん。
    改めて島田さんを見ると…
    『背は高くて脚も綺麗』それに顔も『美少女』の部類に入るのにどこか女性として魅力にかけるのは何でなんだろ──────

    「───あぁ、胸か」

    「アンタの指を折るわ。小指から順に、全部綺麗に」

    マズイ。このままだと僕は間違いなく死ぬ。

    「そ、それよりもほら!Dクラスとなんで設備交換しなかったの?雄二」

    なんとか話しを変える僕。

    「あ、それウチも気になる」

    よかった。成功したみたいだ。

    「なんだお前ら。あんな設備で満足するのか?」

    「Fクラスの設備よりはマシじゃないかの?」

    うんうん。僕もそう思うよ。
    流石、秀吉だね。僕と一心同体だね!

    「忘れたのか?俺達の目標はあくまでもAクラスのはずだろう?」

    打倒Aクラス。
    それは僕と雄二の至るべき到達点。

    「でも、それならDクラスの設備をとってからでも倒しにいけるでしょ?」

    島田さんの言う通りだ。
    どうせ敵に回すならDクラスに攻めるなんていった回りくどい真似はせず、一気に攻めればいいのに。

    「それでFクラスの連中が満足して、離れていったらどうするつもりだ」

    「……………なるほど(コクン)」

    でも、設備を交換しないと
    試召戦争仕掛けた意味が無いよね?

    「もう一つ理由はある。それは次に倒す相手がBクラスだからだ」

    「詳しく説明して貰えないかしら?」

    「ああ、そうだな…秀吉」

    「なんじゃ?」

    「秀吉は部屋の温度が高くなって暑かったらどうする?」

    「そうじゃの…。エアコンを使うかの?」

    「ああ、そうだな」

    因みに僕はクーラーなんて使うと電気代が
    払えなくなっちゃうから扇風機だね!

    「じゃあ、康太。Dクラスのベランダには何が置いてある?」

    「…………Bクラスの室外機」

    「そうだ。それをあいつらに壊してもらう」

    でも、エアコンの室外機を壊して一体何をするつもりなんだろう?

    「エアコンも使えなかったらどうする?」

    窓を開けるよね?
    でもそれがなんなのさ!

    「いいかお前ら。今回の作戦を説明する。よく聞けよ。」

    この時の僕は、今日の朝に下駄箱で見た
    ピンク色のラブレターの存在を忘れていた。
  27. 33 : : 2015/08/14(金) 08:10:32
    第13問【ラブレターの送り主】
  28. 34 : : 2015/08/14(金) 08:10:38
    「坂本君は凄いわね」

    他の生徒達が帰った後、僕は優子さんと2人で勉強会をしていた。
    その最中で会話することは普通のことだよね。
    ただ、雄二の話しだと言うことが解せないけど……。

    「元神童だからね」

    優子さんが雄二の事を良く言うのは
    雄二の友達としては嬉しい気持ちもあるけど
    その反面、なんだか面白くない。
    そんな複雑な気持ちが渦巻いてる。
    だから僕は敢えて返事を淡白にした。

    「坂本君の作戦とDクラスを攻めた理由を聞いた時には、流石だと思ったわ」

    雄二がDクラスに攻めた理由は他にもあった。
    例えば、
    『クラスの皆を試召戦争に慣れさせる為』だとか
    例えば、
    『他のクラスにプレッシャーを与える為』だとか
    例えば、
    『勝つことで自信をつけて士気を上げる為』だとか
    雄二の考える事は他の人の一歩二歩は先に進んでいる。

    「ねぇ。優子さん」

    「何かしら。明久君」

    「………Aクラスに勝てるかな?」

    「ええ。きっと勝てるわよ」

    なんか気に入らない僕は、この会話を直ぐに終わらせることにした。
    その瞬間だった。後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。

    「吉井君」

    僕と優子さんが振り向いた先には姫路さんがいた。

    「あ、姫路さん。どうしたの?」

    「あ、あの!えーっと…その…今日の朝………下駄箱に…」

    『今日』『朝』『下駄箱』

    今、聞き取れたのはこの3つ。
    続きを聞こうにも当の本人は何を話してるのか良く分からない。
    耳を澄まし。全神経を耳に送る。

    するともう一つの単語が耳に入った。

    『手紙』

    つまり、この4つを組み合わせると…
    順番的に

    『今日』『朝』『下駄箱』『手紙』
    『今日の朝に下駄箱へ手紙を入れた』

    こんな感じだろうか?
    手紙?なんか……手紙に関する事があったようななかったような……。

    「ラブレターだ!!!!!!」

    やっと思い出した!
    今日、僕の下駄箱にラブレターが入っていたんだった。
    色々あったせいで忘れてた!
    まだ、読んでないし!

    「ラブレター?」

    僕の隣りでは優子さんが首をかしげていた。
    何があったか理解出来てないようだね。
    うん。僕にもわからないからそのはずだよ。
    でも、あれ?なんで姫路さんがそのことを?

    僕が持っている情報を全て組み合わせてみる。


    1、今日の朝、僕の下駄箱にはラブレターがあった。
    2、その事を姫路さんは知っている。
    3、『今日の朝に下駄箱へラブレターを入れた』と予測される文。

    あれ?つまり………

    「もしかして姫路さん………あのラブレターは姫路さんが?」

    「……………………(コクン)」

    今、確かに姫路さんの首が縦に動いた。


    その時、時は止まった。
    そう確信出来る程、その場の空気は重たかった。
  29. 35 : : 2015/08/14(金) 08:12:11
    第14問【気持ち】
  30. 36 : : 2015/08/14(金) 08:12:17
    僕達を纏う沈黙のオーラを取り払ったのは
    僕でも姫路さんでも優子さんでもなかった。

    「あれ?吉井?」

    島田さんが僕に声をかけてきたのだ。
    正直、助かったと思った。

    「し、島田さん!?」

    「何を慌ててるのよ。それより帰らないの?吉井と瑞希と木下さんは」

    「あ、うん!優子さんに勉強教えて貰ってるからね」

    姫路さんには悪いけど…
    島田さんの助け船に乗らせて貰うことにした。

    「わ、私は、もう帰りますね」

    ごめん。姫路さん…

    「あ、あの!吉井君!」

    「な、何かな?姫路さん」

    「返事…待ってますから!」

    「あ、瑞希待ってー!」

    そう言い残して走って行く姫路さんとその後をついていく島田さん。
    姫路さんの背中を見ると罪悪感で押し潰されそうだった。
    問題はそこだけでは無かった。
    空気がまた重くなって来た。

    「………………えと、優子さん…続きやる?」

    「………帰ろっか。明久君」

    「………うん」

    やっぱり……勉強どころじゃないよね……。

    ─────
    ───────────
    ──────────────────

    「ただいま」

    誰もいない家に挨拶をする。
    勿論、返事は返ってこない。
    だからいつもは、そんな挨拶なんてしないのに
    今日は何故か自然と口からこぼれた。

    コップを手に取り水道水を入れ、少しだけ口に運ぶ。
    いつもの水道水のはずなのにいつもより不味く感じた。

    「………マズ」

    残りの水を流してコップを軽くゆすいでから
    僕はラブレターを読むことにした。

    『吉井明久君へ。

    吉井君は突然の手紙で驚いているかもしれませんね。ごめんなさい。でも、どうしても伝えたい気持ちが───────────』











    読み始めてから10分程経っただろうか。
    僕はラブレターを読み終えた。
    正直、僕は自分にビックリしていた。
    だって………前の僕ならラブレターを貰ったなんて事があったら絶対に嬉しくて奇声すらあげてたと思うのに今の僕はそこまで嬉しいという気持ちがない。
    むしろ、苦痛でしかなかった。

    「………どうしたのかな。僕…」

    プルルルル プルルルル

    そんな時に僕の携帯が鳴った。
    出ないどこうかななんて思ったけど…
    『木下 秀吉』と名前が表示されてたから
    僕は電話に出ることにした。

    「秀吉?どうしたの?」

    『おお、明久!ちと話があるのじゃが、ええかの?』

    「うん。大丈夫だよ」

    『実はの…………姉上のことなんじゃが』

    優子さんの名前が出た瞬間、僕の胸が痛くなってきた。

    「優子さんが…どうしたの?」

    『うむ。それが、帰って来てから様子がおかしいのじゃ』

    様子が?やっぱり…僕のせいなのかな…。

    『"別に私は嫉妬なんてしていないわよ!"とか言っておったかの?』

    流石秀吉。
    優子さんの声真似上手いね〜。
    って嫉妬?何に嫉妬したんだろ?

    『それだけではないぞ!"明久君"とか"ラブレター"とか呟いておった!』

    あ、それはわかる。

    「それは僕、わかるかも」

    『教えてくれぬか?』

    「あ、うん。大したことじゃないけど…僕が姫路さんにラブレターを貰ったんだ」

    『へ?……………なんじゃとぉぉぉぉぉ!!!!!やっとわかったのじゃ!そう言う事だったのか!』

    え?何がわかったの?気になる。

    『なるほどのぉ…姉上が…まさか』

    秀吉の声がどんどん上機嫌になってきた。
    なんかいいことでもあったのかな?

    『明久よ。お主は姫路をどうする気かの?』

    「どうするも何も…僕もわからないんだ。」

    僕は秀吉に気持ちを打ち明けることにした。
  31. 37 : : 2015/08/14(金) 08:14:18
    第15問【初恋は叶わない幻】
  32. 38 : : 2015/08/14(金) 08:14:24
    僕は僕の今ある気持ちを洗いざらい秀吉に話した。

    「なるほどのぉ…。つまりお主はラブレターを貰って嬉しいというより、ラブレターを貰ってモヤモヤするのじゃな?」

    「うん。なんでなんだろうね…。僕の初恋は姫路さんでね。小学生の時から姫路さんの事が好きだったはずなんだ。」

    そう。僕は小学生の時から姫路さんが好きだった。
    『可愛いし、優しい』
    そんな単純な所から姫路さんへの恋が始まった。
    勿論、姫路さんの良いところはもっとある。
    でも小学生が好きになる理由なんてそんな細かいところなんて気にしない。僕もその1人だった。

    『ワシは、明久が姫路の事が好きだということは初耳じゃぞ!?』

    「うん。誰にも言ってないからね」

    『なぁ、明久よ。初恋は叶わないと言う都市伝説は知っておるかの?』

    「聞いたことあるよ」

    あれは小学何年生の時だったっけ?
    僕達の学校では告白ブームが来た。
    その波に乗った僕の友達が好きな人に告白したんだっけ。
    それで友達は振られて…泣きながら言ってたな。
    『明久。初恋は…叶わないんだな』って
    まぁ、それでも他の友達は初恋を叶えた人もいるし…なんとも言えないけどね。

    『あれはあながち嘘ではないのじゃ』

    「どういうこと?」

    『お主はどうやって姫路が好きだと思ったのじゃ?』

    「え?」

    どうやって?
    好きだと思ったら好き…。
    ただそれだけじゃないの?

    『好きだというのは無意識になるものじゃ。自分が誰かを好きになろうとしても好きにはなれん。じゃが、恋を知らぬ者はどうじゃ?』

    「恋を知らない?」

    『そうじゃ。恋を知らない者はな。恋を知ろうと無理矢理こじつけるのじゃ』

    「こじつける?」

    どういうこと?
    秀吉の言いたいことがさっぱりわからない。

    『要するに、好きな人を無理矢理つくろうとしてしまうのじゃ。』

    無理矢理…好きな人を作る?
    例えそうだとして…
    初恋は叶わないにどう繋がるの?

    『無理矢理に好きになった人とは長く続かん。だから直ぐに別れてしまったり、他の者に目がいくようになる。無論、付き合う前に振られてしまうかも知れぬが…。だから初恋は叶わないというのも間違っておらんと言える』

    『明久。お主は姫路をどこが好きになったのじゃ?』

    「そ、それは!優しいところとか、可愛いところとか!」

    『そんなのは誰にでも言える事じゃ。これはあくまでもワシの勝手な想像に過ぎぬが……。』


    『明久よ。本当はお主の初恋はもうとっくに終わっておるのではないか?だからお主は姫路からラブレターを貰っても、嬉しいと思わなくなったのではないか?本当は他に好きな人がおるのではいか?』

    「……………………」

    『お主は初恋と言う名の幻に騙されなくなったのかも知れぬな』
  33. 39 : : 2015/08/14(金) 08:16:49
    第16問【FFF団のおかげ】
  34. 40 : : 2015/08/14(金) 08:16:55
    僕達は今、Bクラスと試召戦争をしている。

    「いたぞ、Bクラスだ!」

    「高橋先生を連れているぞ!」

    正面を見ると向こうから10人程度
    ゆっくりとこっちに向かってきているのが見える。
    様子見かな?

    「生かして帰すなーっ!」

    物騒な台詞と共に戦いが始まる。

    総合科目
    『Bクラスのモブ×3』平均1800点
    VS
    『Fクラスのモブ×3』平均800点

    くそっ!圧倒的に部が悪い!
    僕達の点数は勿論Bクラスには勝てない。
    だからこそ人数で物を言わせるしかないのに!
    なんで雄二は攻撃隊に人数を増やしてくれないんだ!
    僕達は7つにグループをわけていた。

    まず、正面から攻めるグループ、明久隊と島田隊。
    この2つのグループの人数は7人ずつで、
    明久隊と島田隊が交代交代に攻めている。
    その後ろには姫路隊(7人)がいてもしものことがあっても対象をしてくれる。

    次に2階と4階からそれぞれ攻める、ムッツリーニ隊と秀吉隊。
    この2つのグループの人数は9人ずつで、
    その後ろには優子隊(7人)がいて、上手く人をローテーションしながら保ってるみたいだ。

    最後に雄二隊(6人)。
    Fクラス代表の雄二を守ってる。
    一応、クラスで平均的に高く点数が取れてる人がその役だけど…勿論、所詮Fクラス。
    Bクラスに比べれば全然点数が足らないんだよね。

    そんな説明をしてる間に僕のチームのメンバーが2人やられた。
    美波のチームも2人やられたみたいだ。
    対して、Bクラスの戦闘不能になった人は1人。
    やばいよ!このままじゃ負けちゃう!

    ピンポンパンポーーーーーン

    ん?なんかあったのかな?

    『緊急報告!緊急報告ぅぅぅぅ!!!!!Bクラス代表、根本恭二に彼女がいると言う事実が発覚!相手はCクラス代表の小山友香だそうだ!それだけでは無く、あろうことか愛妻弁当まで作ってもらっている!繰り返す!Bクラス代表根本恭二に彼女がいる事実が発覚!殺せぇ!!!殺せぇぇぇえええ!!!』

    この言葉をきっかけにさっきまで負けていた事が嘘のように逆転した。

    と言うのも、僕達Fクラスには『FFF団』というものがあるからだ。
    『FFF団』というのは、モテないFクラスの男共の醜い集団で女子と関わろうものなら問答無用で殺しにくるような集団だ。

    実のところ、僕はもうかれこれ6回異端審問会の容疑者になっている。
    理由がこれまた酷くて、
    いつも周りに木下秀吉という女の子といる
    いつも周りに木下優子という女の子といる
    いつも周りに姫路瑞希という女の子といる
    いつも周りに島田美波という女の子といる
    木下優子と仲がいい
    木下優子を優子さんと名前で呼んでいる
    といったことから異端審問会が開かれた。

    その度に僕は死にかけるけど…
    幸い僕の身体は頑丈だから死んでない。

    それにしても凄い。
    さっきまで押されてて負けそうだったのに
    たった4人の犠牲で8人を倒していた。
    これも全てFFF団のおかげなのかな?
  35. 41 : : 2015/08/14(金) 08:17:59
    第17問【告白の返事】
  36. 42 : : 2015/08/14(金) 08:18:04
    「戦死者は補習ぅぅ!!!!!」

    鉄人がそう言いながら15人くらいの生徒を担いで(?)歩いていった。
    やばいよ鉄人!普通の人間にはそんなこと出来ないよ!
    だって15人だよ!?
    僕なんて2人も運べるか不安なぐらいだよ!

    「吉井、私達は一旦帰るわよ!」

    「ん?なんで?」

    そんな状況を眺めてた僕のところに島田さんがやってきた。
    戻る?本陣で何かあったのかな?

    「Fクラスが大変だそうよ!」

    須川君と横溝君にここを任せて、僕と島田さんは1度教室へと引き返すことにした。

    ────────────────
    ───────────
    ──────

    「………うわ、これは酷い」

    「卑怯ね」

    教室に引き返した僕達を迎えたのは、傷だらけのちゃぶ台とへし折られたシャーペンや消しゴムだった。

    「酷い。これじゃ補給も出来ないじゃない!」

    「そうだね。地味だけど点数に影響が出るよね」

    それにしても、なんか根本君って器が小さいなぁ…。
    これじゃ小山さんも大変なんじゃかいかな?

    「あまり気にするな。明久。島田。修復には時間がかかるが、作戦に大きな支障はない。」

    「それはそうと、どうして雄二はここから離れたの?」

    普通なら教室にいるはずの雄二達が気付かない訳が無い。

    「四時までに決着がつかない時は明日の朝9時へ持ち越しっていう提案を受けてな、少し協定を結びに行ったんだ。」

    「あれ?もうあと5分で四時だよ?」

    「ああ、今日はここまでだな。皆を集めてくれ」

    「うん。わかった」

    「ああ、頼む。集めたら次の作戦を伝える。恐らく、俺らの相手はBクラスだけじゃないからな。出来るだけ先手をうちたい」

    そう言いながら口元をほころばせる雄二。
    きっといい考えがあるんだろう。
    やっぱり雄二は頼りになる。
    本人には言えないけど、僕は雄二のことは最高の相棒だと思うよ。

    ────────────────
    ───────────
    ──────

    みんなをFクラスに引き返す様に伝えた後、僕は姫路さんを階段へ呼んだ。
    理由はけりを付ける為だ。

    「姫路さん」

    「はっ、はい!」

    「…………告白の返事なんだけどね」

    ゴクリと唾を飲み込む姫路さん。
    それを合図に僕はまた話しかける。

    「僕は姫路さんのこと、好きだよ」

    「ほ、ほんとですか!?」

    嬉しそうに頬を緩める姫路さん。
    でも、ごめん。
    そうじゃないんだ。

    「でも、今僕の心にある姫路さんへの好きは恋じゃないんだ。」

    「え……」

    さっきまでの幸せそうな笑顔から一転して
    苦しそうな顔をする姫路さん。
    その顔を見ると、今にも「嘘だよ」って言って安心させてあげたいとも思うけど、僕はその思いを噛み殺して言葉を続ける。

    「僕はこの好きだという気持ちがずっと恋だって思ってた。だから僕は、小学生の時からずっと姫路さんのことを見てたんだ。けど、本当は違ったんだ。僕には好きな人が他にいる。それが本当の恋だって気付いたんだ。」

    「………それは、美波ちゃんですか?」

    今にも、死んでしまいそうな虫の様なか細い声でそう聞いてきた。
    それには答えてあげないといけない。そんな気がした。

    「…………違うよ」

    「じゃあ……………木下さんですか?」

    「……………」

    無言。それは肯定だと言ってるようなものだ。
    勿論それがわからない姫路さんじゃない。

    「…そう……ですか。…あの、吉井君。坂本君に伝言をお願いします。調子が悪いので保健室に行ってきますって」

    そう言って走って僕から離れていく姫路さん。
    走っていく姫路さんを見る限り、体調が悪いわけじゃないって僕にもわかる。



    僕は姫路の背中が見えなくなっても
    その場から動けなかった。
  37. 43 : : 2015/08/14(金) 08:19:45
    第18問【布石】
  38. 44 : : 2015/08/14(金) 08:19:51
    一晩が過ぎて、今から昨日の続きの試召戦争が始まった。
    昨日の協定で、停戦中は試召戦争に関する行動は一切禁止ということで

    Bクラス
    50人中 17人の戦死(補習中) 12人の補充テスト
    Fクラス
    50人中 9人の戦死(補習中) 5人の補充テスト

    ここから始まることになる。
    つまり、僕達が勝つためにはBクラスの補習と補充テストをしている人達が戻るまでに倒す必要がある。
    だから、僕達は先手をうつことにした。

    というのもBクラスの隣のDクラスに
    僕と美波とFクラスのメンバーの合計10人が隠れていて、
    Bクラスの近くの階段に
    優子さんと秀吉とFクラスのメンバーの合計10人が隠れている。
    窓から飛び入る為に屋上に
    ムッツリーニと大島先生。
    階段から敵を遠ざける為の部隊、須川君を始めとする計15人。

    要するに奇襲をすることになった。
    ただ、この作戦に姫路さんがいないのは作戦でもなんでもない。
    そう。昨日の僕のせいで、学校を休んでいるんだ。

    だから僕は姫路さんがやるはずだった役をやることになった。それはDクラスの場所からBクラスへ攻撃を仕掛けるもので、とても僕達じゃ相手にならない。だから僕は考えた。

    『僕の召喚獣は物理干渉が出来る』
    『ここはBクラスの隣りのDクラス』
    この2つから僕に思いついたのは壁を壊すことだった。
    壁を壊せば突然の出来事から慌てるBクラスに攻めいることが出来るからだ。

    ドォォォォン!!!

    ただ、普通に壁を壊すといって
    召喚許可を貰えるはずがない。
    だから僕は、島田さんと召喚バトルをしているという、カモフラージュをしながら壁を殴っている。

    ドォォォォン!!!

    「ぐーーーぅっ!」

    壁を殴りつけた召喚獣の痛みは
    僕にフィードバックする。

    「つぅ………っ!」

    再び僕の拳に痛みが響く。
    でも、こんなの大した痛みじゃない。
    優子さんと姫路さんにいい環境で勉強させてあげられるならこんな痛みなんて…。

    「吉井、時間がないわよ」

    島田さんが壁にかけてある時計を指さしている。
    作戦開始まであと3分。

    ──────────その頃、根本達は

    「暑いな…。なんでエアコンが効かないんだよ。おいお前ら、窓開けろ」

    「お、おう!」

    そう言い出したのは根本恭二。
    何故かエアコンが効かない。それもそうだろう。
    FクラスがDクラスの設備をとらない為の1つの条件として、
    『来るべき時がきたら、ベランダになるBクラスの室外機を壊せ』
    というのがあるからだ。
    そう、エアコンは壊れている。
    そうなれば窓を開けるという行動は自然なものとなる。


    これは布石。そう。Fクラスが勝つための布石なのだ。
  39. 45 : : 2015/08/14(金) 08:20:54
    第19問【秒針】
  40. 46 : : 2015/08/14(金) 08:21:00
    「吉井、そろそろよ」

    「うん。わかってる」

    周りに集まってる仲間達に目配せをする。
    皆は黙って頷く。

    「吉井君、島田さん。何をしようとしてるのですか?」

    状況のわからない遠藤先生が僕達を交互にみる。
    時間はジャスト15時、遠藤先生の疑問にも答えないとね!

    「だぁぁーーーっしゃぁーーーっ!!!!!」

    召喚獣に持てる全ての力を注ぎ込んで壁を攻撃する。

    ドゴォッ!!!!!!!!

    豪快な音と共に壁が崩れ落ちる。

    「んなっ!?」

    崩れた壁の向こうで、驚いた顔をしている根本君とその仲間達。
    その瞬間はまたとない好機。

    「くたばれ!根本恭二ーー!!!」

    そのまま、僕と島田さんの召喚獣が根本君へ攻める。
    向こうを向いて全力で逃げる根本君。
    絶対に倒してやる!

    「その勝負、Bクラス山本が受けます!」

    教室にいる根本君の近衛部隊が僕達の行く手をふさぐ。
    くそ!でも、大丈夫。これも作戦のうちだ!
    ムッツリーニ、頼む!

    ダン、ダンッ!

    屋上よりロープを使い降りてくるムッツリーニと大島先生。
    これはムッツリーニの運動神経と大島先生の並外れた行動力があるから出来る芸だ。

    「………Fクラス、土屋康太。Bクラス根本恭二に保健体育の──────」

    「Bクラスの真田由香。受けます!」

    くそっ、でもまだだ!
    優子さん、お願い!

    ガラガラガラ

    Bクラスのドアが開かれる。
    開かれた先には、高橋先生と…

    「Fクラス、木下優子。Bクラスの根本恭二に総合科目の勝負を申し込むわ。」

    僕達が皆で近衛部隊を引きつけたので
    丸裸になった根本恭二。
    もう、何処にも逃げる場所がない。

    「────試獣召喚!」

    優子さんの召喚獣が確かな手応えをもって
    敵を切り捨てる。

    こうして、僕達はBクラスに勝った。

    ───────────────
    ──────────
    ─────

    あの後、僕は勝ったということに感動をする暇もなく鉄人に捕まった。
    せめて、みんなと喜んでから指導して欲しかったよ。

    僕は帰る準備をする為にFクラスに戻ることにした。
    いつもなら騒がしいFクラスだけど、声どころかなんの音も聞こえない。それもそのはずだ。
    時間はもう19時をこえてる。
    もう、みんな帰ってるはず。


    静かな教室のドアを開けて周りを見渡す。
    やっぱり、誰もいない。
    帰る準備をはじめて、教室から出ようと立ち上がった時に聞き覚えのある声が聞こえた。

    「明久君」

    目線をあげると目の前に優子さんがいた。

    「優子さんどうしたの?」

    「一緒に帰らない?」

    確かに今、僕の恋が進む秒針が聞こえた
  41. 47 : : 2015/08/14(金) 08:22:05
    第20問【手のぬくもり】
  42. 48 : : 2015/08/14(金) 08:22:10
    真っ暗な空の下で僕と優子さんの2人。
    蛍光灯から出される淡い光を全身に浴びながら僕達は歩く。
    その光を浴びて出来る影が伸びて縮む。
    そんな光景を何回見ただろうか。

    「……………」

    「……………」

    文月学園を出てから僕は、
    いや僕達は一言も話せないでいた。
    重い空気が僕達を包んでいる。

    時々、蛍光灯に照らされた優子さんの顔を盗み見ると、いつもの余裕のある顔とは一変して余裕のない顔に見えた。

    もう直ぐでY路地が見える頃だ。
    帰る為にはそのY路地を僕は右、優子さんは左の道にいかなくてはならない。

    でも今は20時13分。
    とても優子さんを1人に出来る時間じゃなかった。

    だから僕は優子さんに『家まで送るよ』
    そう言おうとずっと試みていた。
    けど、言おうとしてるのに声がでなかった。
    一人で心の中で頭を抱えている時に、優子さんから声がかけられた。

    「…………ねぇ」

    「……なぁに?優子さん」

    優子さんから声をかけて貰ったからだろうか
    思ったより普通に声が出た。

    「明久君は……姫路さんの告白…どう返したの?」

    「きゅ、急にどうしたの?」

    「ねぇ…どうなの?」

    僕を上目遣いで見てくる優子さんの目には
    少しだけ涙の膜がはってあった。
    理由は僕にはわからない。けど、この答えが優子さんにとっては大切なのかもしれない。
    それなら、答えてあげないといけないよね…。

    「ごめんなさいって。返したよ」

    「………………そう…なんだ」

    優子さんの表情が緩やかになる。
    胸を撫で下ろし、声を出す優子さん。

    「…………よかったぁ」

    「何が良かったの?」

    「な、なんでもないわ」

    ちょっとあたふたする優子さん。
    本当に可愛いと思った。

    「そ、それじゃあ、アタシはこっちだから!」

    そう言って走っていこうとする優子さん。

    「あ、待って!」

    僕は優子さんの手をつかむ。

    「送ってくよ」

    「べ、別にいいわよ。家までもう直ぐだし」

    「それでも僕は女の子をこんな真っ暗な中1人にしたくないんだ。それも優子さんのような可愛い女の子なら尚更ね」

    「か、かか、かわっ」

    みるみるうちに顔が赤くなっていく優子さん。
    あれ?もしかして…怒らせるようなこと言ったかな。

    「ご、ごめんなさい!迷惑だった?」

    「………………………手」

    「………………へ?」

    「手を繋いでくれるなら………送ってくれても…いいわよ」

    そう言ってそっぽを向く優子さん。
    えっと…なんだか良く分からないけど…
    手を繋げばいいんだよね?

    って…手!?繋ぐ!?
    はぁぁぁぁぁあ!!!!???
    何それ!?なんのご褒美ですか!!!?

    「………繋がないの?」

    上目遣いで不安そうに見てくる優子さん。
    ありがとう。神さま。
    神さまはいい人だったんだね。

    「これでいいかな」

    「………うん」

    なんだか照れくさい気もするけど
    優子さんの優しい手の温もりを感じる。
    ただ、その事が嬉しくてたまらなかった。
  43. 49 : : 2015/08/14(金) 12:58:42
    第21問【欠席】
  44. 50 : : 2015/08/14(金) 12:58:45
    僕と優子さんが手を繋いだ日から
    土日を挟んで5日が経ったのに今日も姫路さんがいない。
    それは姫路さんが学校に来なくなって5日という意味でもあった。

    「今日も瑞希来てないの?」

    島田さんが心配そうに声を出した。

    「流石に心配じゃな。島田は連絡はとっておらんのか?」

    それに返事をする秀吉。

    「それが、いくらメールを送っても返事がこないのよ。電話しようにも繋がらないし…。」

    「……………家にいけばいい」

    「それが家がどこにあるのかわからないのよ」

    みんな心配してる。
    友達が急に来なくなっちゃったんだもんね。
    そりゃあ心配するよね。

    「それにしても…何があったのかのぉ…」

    「そうよね…。急に学校に来なくなるなんて…。それに先生達も来なくなった理由わからないんだよね?」

    「そのようね」

    ごめん。きっとその原因は僕にあるんだ。

    「………………おい。明久」

    それまでずっと黙っていた雄二が声を出した。

    「お前、理由がわかってるんじゃねぇのか?」

    「ほ、本当なの!?吉井!」

    「な、…ななな、なんでそう思うの?」

    雄二の質問に平静に答えようとしても声が上手く出ない。

    「お前の性格ならこんな時は誰よりも先頭に立って行動するだろ。でも今はそれどころか言葉を話さえもしない。普通に考えりゃ、お前が絡んでるとしか言えないだろ」

    流石だ。
    やっぱり雄二には敵わない…。

    「どうなのよ!吉井!」

    出来れば…言いたくなかったけど…
    やっぱり…言わないと駄目だよね…。
    僕は重い口を開く。

    「…………雄二の言う通りだよ」

    「姫路さんが学校に来なくなった理由は"きっと"僕にある」

    「どういうことよ!吉井!」

    島田さんが僕の胸ぐらを掴んだ。
    その華奢な腕のどこから湧き出るのかわからない…けど、今までで一番の力がその腕に込められていた。
    そのままの体制で睨む島田さんの顔は今まで僕が怒らせた時の顔よりも比べ物にならないくらいに怖かった。

    「ま、待つのじゃ。島田!争っても解決せぬぞ!」

    「………………ここは、話を聞くべき。」

    秀吉とムッツリーニが島田さんを説得する。
    それに納得したのかはわからないけど…島田さんの手は緩んだ。

    「それで、何があったのか話せるな?明久」

    静かに問いかけてくる雄二。
    格好は壁にもたれて腕を組むといういつものやる気のなさそうな格好だけど…
    いつもと違う真剣な顔と落ち着いた声から、雄二は本当に姫路さんを心配していることがわかった。

    周りを見渡すと、優子さんも島田さんも秀吉もムッツリーニもみんな真剣そのものだった。
    だから僕が、自分の都合とか気にして"言わない"なんて選択は出来るわけなかった。
  45. 51 : : 2015/08/14(金) 13:30:43
    第22問【欠席の理由①】
  46. 52 : : 2015/08/14(金) 13:30:47
    「ことの発端は一通のラブレターだったんだ」

    今、話し始めたのは僕だ。
    まだ確信はできてないけど…
    姫路さんが学校に来なくなった理由を僕の口から話している。

    「ある朝、いつもより早く学校に来た時、僕の下駄箱に手紙が入ってた。それは、明らかにラブレターだったんだ。でも、差し出し人が書いてなくてね。それに加えて色々とあったから読んでなかったんだ。」

    「それを優子さんといる時に、姫路さんに追求されたんだけど…その時に、島田さんが現れた。」

    正直、あの時は島田さんが来てくれて助かったと思った。

    「そっか、だからあの時『返事』がどうたら言ってたのね?」

    「うん。それでその後、家に帰ってから中身を初めて読んだんだ。」

    「………………(殺したいほど妬ましい…けど、そんなこと言える雰囲気じゃない)」

    「そして、わしに電話がかかってきたのじゃな?」

    秀吉の中では話しが繋がってきてるみたいだ。
    僕は頷いて話を続けた

    「その後にBクラスとの試召戦争があったよね。あの時に僕は返事をしたんだ。」

    「…………………断ったのか」

    雄二はまた、腕を組んで壁にもたれながら聞いてきた。

    「うん。断った」

    「…………成程、それが1日目だったのか」

    「そうだよ…ムッツリーニ。だから2日目に来なかったんだんだと思う」

    そう…それから姫路さんは学校に来なくなった…。僕のせいで…。

    「…………本当にそれが学校に来なくなった理由なのか?」

    何を言ってるんだ?雄二。
    それ以外に何があるんだよ。
    姫路さんは僕のせいで……。

    「………うちもそう思うわ」

    島田さんまで?
    2人ともどうしたんだ?

    「まだ他に隠してる事でもあるんじゃないのか?」

    「何も隠してないよ」

    「………そうか。明久がそこまで言うのならないのかもしれないな」

    もう僕は姫路さんとあったことは全部言った。
    何も隠してない。

    「おい木下。お前は何か知ってるんじゃないのか?今までずっと無言だったけど」

    は?優子さん?
    なんで優子さんがなんかしたみたいな言い方するんだよ!

    「……………知ってるわ」

    え?

    「あたしも、姫路さんが学校に来なくなった理由の1つかもしれないわ」

    何を言ってるんだ?

    「詳しく話せるか?」

    優子さんはこっちを一瞬だけ見た。
    その顔を戻すと同時に優子さんは口を開けた。

    「ええ。……かまわないわ」

    もう僕の頭で処理できる範囲を超えていた。
    姫路さんが学校に来なくなった理由が…
    まだあるっていうの?
    僕のせいだけじゃないっていうの?

    もう何がなんだかわからなかった。
    横を少しだけ見ると、島田さんもムッツリーニも僕と同じような顔をしてるそう思えた。
  47. 53 : : 2015/08/14(金) 13:32:24
    第23問【欠席の理由②】
  48. 54 : : 2015/08/14(金) 13:32:29
    ───────遡ること5日前(優子視点)

    あたしは明久君と手を繋いで家に帰っていた。
    ううん、送ってもらったって言った方がいいのかな?

    そんな夢のような時間はあっという間でもうあと200mで家に着くというところまで来ていた。

    さて、そろそろ手を離さないと…パパとママ、それに愚弟に見つかっちゃう。

    「明久君。ここまででいいわ」

    「え?でも…」

    心配そうな顔で困ったっていう声をあげている明久君。
    そんな彼を見てると、なんだかいじめたくなっちゃうような、困らせてみたくなるような…とにかくそんなあたしがいた。

    「もうあたしの家も近いし、この辺は明るいから大丈夫よ。それに、パパやママに愚弟に見られてもいいの?」

    ちょっとだけいたずらに笑ってみるあたし。
    なんだか意地悪をしているみたい。

    「あはは、それは少し困るかも」

    苦笑いをする明久君を見て、少しだけ
    『このまま帰ろうかな』なんて思ったりもしたけど、あの愚弟にからかわれるかもと思うと癪だからやめた。

    「それじゃ…またね。おやすみなさい明久君」

    「うん。気を付けてね。おやすみ優子さん」

    ふふっ、気をつける方は明久君じゃない。
    明久君の後ろ姿が見えなくなるまでその場で小さく手を振る。
    なんだか不思議な気持ちでいっぱいだった。
    そんな気持ちを抱えるのもつかの間で
    振り返ったあたしの目の前には、教室でみる女の子が立っていた。

    「………姫路さん」

    そう…。あたしは姫路さんに見られたのだ。

    「何を…してたんですか…」

    静かにそう声を漏らす姫路さん。
    あたしはそれに答えることは出来なかった。

    「……答えられませんか?…それなら質問を変えますね。……明久君と付き合ってるんですか?」

    違う。事実はそうだった。
    でも、あたしの中にいる何かが、そういうのを拒んだ。

    「……………そうよ」

    「!!?」

    姫路さんは目を大きく開け、口をおさえていた。
    今にも何か言いたげなその姿をみたあたしは、姫路さんが何かをいう前にこっちから質問をした。

    「あなたこそ、明久君のなんなのよ」

    「わ、私は……私は……」

    あたしはもう知っていた。
    姫路さんが明久君に振られたことを…。
    だから、だからあたしは、あたしと姫路さんとの差を、もっと大きくしようと思った。

    姫路さんが明久君を諦められる様に。

    「………さっき、あたしが明久君としてたことを教えてあげるわ」

    完膚無きまでに叩き潰す。
    それがあたし木下優子。
    あたしは絶対に明久君を誰かにも渡さない。
    例えあたしが、みんなから嫌われようとも…。
  49. 55 : : 2015/08/14(金) 13:34:18
    第24問【扱いと質問】
  50. 56 : : 2015/08/14(金) 13:34:22
    僕は何が起きているのか理解が出来なかった。

    優子さんが話しを始めようとしていたからそれに耳を傾けていた。
    そこまでは鮮明に覚えている。
    けどその後が曖昧で、急に隣りで音がすると思ったら突然の衝撃を頭に受け、そのまま横たわると共に意識を失った。

    多分、これであってるはずだ。
    因みにそんなことをする人は他にいない。
    そう、島田さんだ。
    困ったものだよね…全く。
    それに、なんでこんなことをしたのかはわからない。

    ただ、今の僕にわかることは………
    全身を硬く縛られ教室に1人で放置されていること。

    「誰か助けてぇぇぇえええええ!!!!!」

    全力で叫んでみた。
    叫んでから5秒…10秒…20秒………。
    誰も来ない…。

    まさか、みんな帰っちゃった…なんてことはないよね?
    あっはっはっはっ!まさかみんながそんなことする訳…………

    「………あるかも。」

    こうなったら、自分ではずすしかない!
    身体を適当にくねらせたり跳ねてみたりする。
    と、とれない……。
    こうなったら切るしかない!
    何処かに刃物は転がってないか!

    ん?…紙?
    僕のすぐ近くにある卓袱台の上に1枚の紙がおいてあった。

    「なになに?

    『明久へ

    悪いが俺達は帰る。
    木下優子と2人でよろしくしとけ。
    by雄二

    今のお前に撮る価値がないから帰ることにした。すまない。
    by康太

    明久よ。ワシは部活がある故、お主の面倒を見ることが出来ない。許して欲しいのじゃ。
    by秀吉

    吉井。惨たらしく死になさい。
    それと、無様に這いつくばりなさい。
    by美波様』

    ………島田さんは僕に恨みでもあるのかな?」

    「あ、明久君。起きたのね」

    「あ、うん。優子さんはこの縄を誰が縛ったか知ってる?」

    まず、今一番最初に聞きたいことを聞いてみた。

    「坂本君よ」

    よし。殺そう。
    次に、聞きたいことは…。

    「この縄はなんでずっと縛ってあるの?」

    「島田さんがペットのように連れ回せって言ってたわ」

    ああ、だから縄が犬のリードみたいになってるのか。
    改めて思うけど、僕って人間だよね?
    よし。次は

    「なんで優子さんは残ってくれたの?」

    「…………………内緒よ」

    そう言ってそっぽを向く優子さん。
    あれ?なんか聞いちゃ駄目だったかな?
    次は、

    「この縄解いてくれないかな…?」

    解いてくれないとまともに歩けないしね。

    「………………」

    え?まさか解いてくれないとか!?
    優子さんまで汚染されたの!?

    「………明久君をお散歩出来ると思ったのに」

    なんかボソボソと話している優子さん。
    全く聞き取れなかったけど、僕の社会的信用が危ないことだけはわかったよ。

    解き始めるまで時間はかかったけど、
    優子さんは縄を解いてくれた。
    僕はそれと同時に、一番気になっていたことを聞いた。

    「優子さんはみんなに何を話したの?」
  51. 57 : : 2015/08/14(金) 13:36:02
    第25問【答えてよ】
  52. 58 : : 2015/08/14(金) 13:36:07
    次の日の朝、教室に入ると姫路さんがいた。
    約1週間ぶりにみる顔からは、以前の様な優しい笑顔が消えていた。

    理由はまだ僕にはわからない。
    でも、理由なんて今はどうでもいいと思う。
    昨日の"あの話し"の後だから話し辛いけど
    とりあえず今はこういいたい。

    「お帰り。姫路さん」

    僕に出来る最高の笑顔で言う。
    いつもの姫路さんなら意味がわからなくても笑顔で『はい。ただいまです。吉井君』
    みたいな感じで返してくれる。
    だから、今回もそうだと信じてた。

    「………………何がですか?」

    返ってきた返事は、あまりにも違い過ぎた。
    予想外の出来事に僕は口を紡ぐ。
    声を出そうとしても、なんて言えばいいのかわからなかった。

    「う、ううん。なんでもないよ。ごめんね姫路さん」

    僕の返した言葉には返事が返ってこなかった。
    姫路さんはもう僕とは話したくないんだろうか。

    誰か…教えてよ。
    僕は、どうしたらいいの?

    ───────────遡って昨日の帰り道

    「それで、姫路さんと何があったの?」

    僕はまた優子さんと2人で下校をしていた。
    勿論、手は繋いでいない。

    「………全部は教えてあげられないわ」

    「……わかった。教えてくれるところだけでいいから、教えて欲しいな」

    本当は全部教えて欲しい。
    けど、無理矢理聞き出すのは違うと思うんだ。

    「あたしね、明久君と手を繋いで帰った後に姫路さんに会ったのよ」

    優子さんの口から出た言葉はとても衝撃的だった。

    「ひ、姫路さんに会った?でも、あの日は姫路さんは休んでいたよね」

    「ええ、そうね。でも確かに会ったわ。そして聞かれたの」

    「何を?」

    「手を繋いでいた事を」

    見られていた。
    僕と優子さんが手を繋いで帰っていたところを
    そう言っているんだよね……?

    「そして言われたわ。『明久君と付き合ってるんですか?』って」

    ………え?

    「あたしも驚いたわ。まさかいつも吉井君って呼んでるのに、あの時は明久君って言ったんだもん。」

    「それとね。もう一つ聞いたわ。」

    「ええ。これはまだ誰にも話してないわ。明久君に一番に言おうとおもって。」

    「もう一つ?」

    「姫路さんは………今月いっぱいで文月学園をやめてしまうかもしれないそうよ。」

    ………………は?
    文月学園をやめる?

    「姫路さんは……別の学校に編入するかもしれないそうよ」

    どういうこと?何があったの?
    わからない。僕にはわからないよ…。
    僕のせいなの?僕が…交際を断ったからなの?

    教えてよ。優子さん。
    教えてよ。姫路さん。

    誰か、お願い!答えてよ!!!
  53. 59 : : 2015/08/14(金) 13:37:59
    第26問【良いニュースと悪いニュース】
  54. 60 : : 2015/08/14(金) 13:38:02
    あの日からどれくらいの日が経っただろう。
    実はほんの数日だったかも知れない。
    でも、僕にとってはその数日は、物凄く長く感じた。

    雄二達は僕を気遣ってくれてるのか、いつもみたいな馬鹿なことはやっていない。
    先生達もこの異様な雰囲気に気付いたのか、気を使ってくれていた。

    「…………………はぁ」

    今日何度目のため息だろう…。
    窓の外を見ればどんよりとしていて暗い、今、この瞬間に雨が降ってもおかしくないだろう。

    目線を少しだけずらしてみる。
    その目線の先には、この事態の大元である姫路さんがいた。

    以前の様なあの慈愛に満ちた姿はもうない。
    あの優しい眼差しもない。
    ただあるのは、灰色になった目と周りに近づくなというオーラを放つ、ただ毎日を生きるだけの"モノ"となっていた。

    「………………僕は、どうしたらいいんだろう…。」

    僕はボソリと呟く。
    それとほぼ同時にポツリポツリと雨が降ってきた。

    「…………………降ってきた。」

    …………雨か……欝だなぁ…。
    この天気は、僕の心をより深く暗闇に落とした。

    ──────
    ───────────
    ──────────────────

    「なぁ、明久。」

    お昼休み。
    あの日から僕は外に出て1人でご飯を食べていた。(と言ってもソルトウォーターだけど)
    しかし、今日は雨だからそういう訳にもいかない。だからどこで食事(ソルトウォーター)にしようかと考えていたら、雄二に話しかけられた。

    「……なに?雄二」

    「お前に良いニュースと悪いニュースがある…どっちから聞く?」

    良いニュースと悪いニュースか……。
    どっちでもいいや。

    「………………良い方のニュースを…。」

    「良い方か……。姫路の転校の件だが、ある方法で白紙に戻す事が出来るかも知れない。」

    「どういうことなの!?詳しく教えて!」

    「まぁ、待てあくまで可能性だ。それに話は最後まで聞くもんだろ?」

    そうだね。そうだった。
    気持ちを落ち着かせなきゃ…。

    「続けるぞ。悪い方のニュースだが、もし、その方法で失敗すれば、姫路の転校は確実になる。それだけじゃない。恐らく、2度連絡すらとれなくなるだろう。」

    そんなの嫌に決まってるじゃないか!

    「………決断するのはお前だ。どうするんだ」

    会えなくなるのは嫌だ…。
    連絡がとれなくなるのも嫌だ…。
    けど!

    「はじめから諦めるなんて絶対に嫌だ!僕がなんとかする!姫路さんを助けるんだ!」

    僕は絶対に仲間を見捨てたりはしない!
    絶対に姫路さんを救うんだ!!!!!
  55. 61 : : 2015/08/14(金) 13:41:28
    第27問【頼りになる親友】
  56. 62 : : 2015/08/14(金) 13:41:32
    「おい、お前ら朗報だ。明久が元に戻った。」

    僕が立ち直ったその日の放課後。
    僕達はいつものメンバーで集まることにした。

    「おお!明久よ。心配したぞ!」

    「………………(コクコク)」

    いつもと変わらない会話。
    僕はこの雰囲気が好きだ。

    「心配かけてごめん。でも僕はこれで復活したから!もう大丈夫だよ!」

    …………でも、1つだけ…
    1つだけいつもと違うところがあった。

    「…………姫路さんと島田さんは?」

    「…………(フルフル)」

    「……居ないみたいね。」

    そっか…やっぱりそうだよね…。
    僕の発言のせいで静まり返ってしまった。
    しばしの無言…。

    その壁をぶち壊してくれたのはやはり雄二だった。

    「おい。俺はこんな雰囲気にするために明久を立ち直らせた訳じゃないんだ。お葬式みたいな顔をするんじゃねぇ。いいかお前ら、これから姫路瑞希奪還作戦を説明する。よく聞け。」

    ──────
    ────────────
    ───────────────────

    雄二の言い分はこうだ。

    姫路さんが転校する理由
    ・設備、環境が悪い
    ・老朽化した教室
    ・レベルの低いクラスメート

    ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
    ならば
    ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

    【Aクラスに勝てばいいじゃないか!】
    理由↓
    ・Aクラスと設備を替えることにより教室は超一級。
    ・Aクラスに勝てる程の人と勉強が出来ている。






    「ただ、2つだけ言っておく。まず一つ目だが、この戦いには姫路は出さない。」

    姫路さんを出さない!?

    「どういうことじゃ雄二!姫路を出さぬと言う事は戦力が著しく低下するとわかっておって言っておるのか!?」

    「ああ、勿論だ。姫路の親には俺達が出来る奴らだと理解して貰わなくてはならないからな。姫路が出てしまっては、勝っても姫路の実力だと思われてしまう。」

    「……………なるほど」

    「そして二つ目、俺達は5対5の一騎討ちで勝負をする。」

    「一騎討ち?」

    それじゃあAクラスの餌食になるんじゃ……。
    試召戦争を起こして不意打ちをした方が勝つ見込みはあるはずだよね?

    「何を企んでるの?坂本君」

    「さっきも言ったが、俺達は姫路の親に出来る奴だと思わせなくてはならない。つまりは、不意打ちをしたりしてまぐれで勝ったと言われては駄目だと言う事だ」

    「ふーん…よく考えてるのね」

    「それぐらいしないとクラスの代表は務まらんからな」

    やっぱり雄二は頼りになる。
    誰よりも早く沢山のことを考えてるんだね。
    決めた。僕は雄二についていく。
    この波に乗っかるよ!!!

    「さて、まずはメンバーを決めておくか」

    待ってろよ!Aクラス!!!
  57. 63 : : 2015/08/14(金) 13:42:58
    第28問【勝ちフラグ】
  58. 64 : : 2015/08/14(金) 13:43:03
    「まずは良い報告だ。明久が復活した」

    「おおっ!心配したぞ!」
    「お前が馬鹿やらねぇとつまんねぇんだよ!」

    クラスの壇上に立ち、クラスメート達に呼びかけているのは僕の親友の雄二。
    みんなは心配してくれてたみたいだね。
    心配かけてごめん。そしてありがとう。

    「さて、ここからが本題だが………明日、俺達FクラスはAクラスを倒す!」

    今日、僕たちはAクラスを倒す5人のメンバーを発表することになる。

    「試召戦争をするってことか?」
    「勝算はあるのか?」
    「姫路さんと木下さんがいるからあるかも」
    「けどAクラスだぞ?」
    「2人のレベルの人が沢山いるってことだろ?」
    「勝てっこない!」

    クラスメート達が思い思いのことを話している。
    確かに、普通にやり合えば負ける確率が99%。
    奇跡でも起きない限り勝てない。
    でも、こっちには雄二がいるんだ!
    雄二の策略と2人の実力があれば勝てる確率も、グンと上がる。

    そして、その雄二がこう決めたんだ。

    「今回の戦いは5対5の一騎討ちだ!」

    悪友であり親友でもある雄二が決めたことだ。
    僕達は雄二の決断を信じるんだ!

    ──────
    ───────────
    ─────────────────

    「一騎討ち?」

    「ああ。俺達Fクラスは試召戦争として、Aクラスに一騎討ちを申し込む」

    今回の宣戦布告は雄二を筆頭に、僕、優子さん、秀吉、ムッツリーニと主要のメンバーで来ていた。

    ………もしかしてだけど、毎回みんなで来てれば僕にあんな被害はなかったんじゃないの?

    「何が狙いなんだい?」

    現在、交渉のテーブルについているのは久保利光君。学年次席に座っている。

    「もちろん俺達の勝利が狙いだ」

    久保君が訝しむのも無理はない。Fクラスの僕達がAクラスに一騎討ちを挑むのだから。

    「確かに僕達にとってもメリットはある。けど、わざわざ君たちが僕達にメリットをくれる、なんてことはないはずだよ」

    「メリットか、強いて言うなら俺達には姫路と木下がいることだな。2人が居れば2勝は確実だ。だが、姫路は出さない。これは約束する。」

    「…………何故そこまでして……。」

    あくまでここまでは交渉の小手調べ。
    ここからが本番だ。

    「ところでAクラスはFクラス、Dクラス、Cクラス、Bクラスの4クラスと1度に戦う気はあるか?」

    腕を組み、顎に手を当てながら聞く雄二。

    「脅迫かい?」

    「人聞きが悪いな。ただのお願いだ。」

    気の所為かな?雄二が根本君みたいだ。
    なんか凄い悪役感でてるよ。

    「困ったな…確かに4クラスを同時に事を構える気はない…。だからといって僕だけでは決断出来ない。ここは霧島さんに………」

    「受けてもいい」

    どこからか了承の声が聞こえた。
    その声は静かな、でも凜としていた。
    その声の主は霧島さん。

    僕達Fクラスの勝ちフラグが現れた瞬間だった。
  59. 65 : : 2015/08/14(金) 13:45:04
    第29問【VS Aクラス前編】
  60. 66 : : 2015/08/14(金) 13:45:08
    「では、両名共準備はいいですか?」

    Aクラスの担任かつ学年主任の高橋先生が立会い人みたいだ。

    「ああ」
    「………問題ない」

    一騎討ちの会場はAクラス。
    こっちには不便がないからね。

    「それでは1人目の方どうぞ。」

    「私が出ます。科目は物理でお願いします」

    Aクラスからは佐藤美穂さん。
    僕達Fクラスからは、

    「木下、頼めるか?」

    い、いきなり優子さんを使うの!?

    「もちろん、任せなさい。」

    「いきます!試獣召喚!」

    「返り討ちにしてあげる!試獣召喚!」

    2人に似た召喚獣が、それぞれ武器を手に持って現れる。

    物理
    『Aクラス 佐藤美穂 389点』
    VS
    『Fクラス 木下優子 447点』

    いきなりレベル高っ!!!
    この後僕も戦うことになるんだよね!?
    戦いにくっ!

    「あなたも中々やるわね」

    「あなたこそ、なんでFクラスなんかにいるのか不思議ですよ。」

    その言葉と同時に攻撃を仕掛ける佐藤さん。
    優子さんはその攻撃をひらりと躱し、胴に攻撃をあてる。

    そんな感じで次々と攻撃をあて、優子さんは佐藤さんに勝利した。

    『Fクラス 木下優子 WIN』

    「ま、当然よね。」

    さすが優子さんだね。

    「では、次の方どうぞ」

    「次はワシが行こうかのぅ」

    「俺がいく」

    僕達Fクラスからは秀吉、
    相手のAクラスからは紺野洋平君(Aクラスのモブです)が出てきた。

    「なぁ、君は何が得意教科なんだ?」

    「なんでそんなことを教えなければならないのじゃ」

    「ふっ、君は可愛いからね。君の好きな教科を選択してあげるよ」

    ……………この人も秀吉の性別間違えてるね。
    まぁ……こっちは得するからいいんだけど。

    「………古典じゃ」

    「それじゃ高橋先生。古典でよろしくおねがいします。試獣召喚!」

    「試獣召喚じゃ!」

    古典
    『Aクラス 紺野洋平 238点』
    VS
    『Fクラス 木下秀吉 221点』

    「中々やるようじゃの」

    「君もとてもFクラスだとは思えない点数だよ」

    「古典だけじゃがの」

    「それでも凄いじゃん」

    話しながら戦う2人、秀吉はさっきからちょくちょくとダメージを受けているようだった。

    「何故じゃ!攻めることが出来ぬ!」

    「攻撃は最大の防御だからね、攻めて攻めて攻めまくることで君に反撃出来ないようにしてるのさ!」

    紺野君が言葉を言い終わると共に
    秀吉に最後の一撃が入った。

    『Aクラス 紺野洋平 WIN』

    「………すまぬ。負けてしまったのじゃ…。」

    「………気にするな。次は俺が行く。」

    落ち込む秀吉の肩をポンと叩き
    セリフを吐いて歩いていくムッツリーニ…。
    ああっ、かっこいいじゃないか!

    「…………………俺は負けない。」

    あ、惚れそう……。
  61. 67 : : 2015/08/14(金) 13:47:05
    第30問【VS Aクラス中編】
  62. 68 : : 2015/08/14(金) 13:47:10
    優子さんが勝ち、秀吉が負けた。
    それで1勝1負。勝負はここからだね。
    僕達Fクラスはムッツリーニが出る。
    相手は誰だろ?

    「じゃ、ボクが行こうかな」

    色の薄い髪をショートカットした、ボーイッシュな女の子が出て来た。誰だろう?見たことないけど………。

    「1年終わりに転校してきた工藤愛子です。よろしくね」

    なるほど。だから見たことなかったんだね。

    「教科は何にしますか?」

    高橋先生が2人に尋ねる。

    「……………保健体育」

    ムッツリーニの最強の武器。保健体育。
    凄いよね。保健体育だけなら学年1位なんだってさ。僕も1度でいいから学年1位をとってみたいよ……。
    あ、ワーストじゃなくてトップだからね!?

    「土屋君だっけ?保健体育得意なの?」

    転校生だからわからないのかな?
    ムッツリーニの実力を…。
    なんか凄く余裕そうだけど。

    「ボクも保健体育得意なんだよ?まぁ………君とは違って………実技でね♪」

    な、なんてことを言い出すんだ!
    思わず僕のピュアなハートが反応しそうになったじゃないか!

    「あれれ、吉井君だっけ?気になるの?保健体育……実技で教えてあげよっか?」

    「是非ともよろしくお願いします。(そそそそそ、そんな、そんな訳ないじゃないか!何を言い出すんだ!)」

    「……………吉井?」

    「……………明久君?」

    …………危ない。
    島田さんと優子さんが何故か怒ってる。

    あ……それもそうか…。そうだよね。
    姫路さんが大変な時にそんな馬鹿なこと考えてちゃ駄目だよね…。

    「そろそろ召喚を開始して下さい。」

    「はーい。試獣召喚っと♪」

    「……………試獣召喚」

    武器を持った召喚獣が現れた。
    ………工藤さんの武器デカくない!?
    だからあれだけ余裕そうだったわけだ!
    って、腕輪まであるし!

    「実践派と理論派、どっちが強いかな!」

    腕輪を光らせながら走る工藤さんの召喚獣。
    はっ、はやい!これはムッツリーニは逃げれない!

    「バイバイ。ムッツリーニくん!」

    くっ、これはよけられない!耐えろ!ムッツリーニの召喚獣!

    「……………加速」

    ムッツリーニが言葉を発したと同時にムッツリーニの召喚獣の腕輪が輝き、目にも止まらぬ勢いで工藤さんの召喚獣を攻撃した。

    「……………加速、終了」

    ボソリとムッツリーニが呟く。
    1呼吸おいて工藤さんの召喚獣は倒れた。

    な、な……なんで!?
    点数は!?

    『Aクラス 工藤愛子 446点』
    VS
    『Fクラス 土屋康太 572点』

    つ、強い!これがムッツリーニの実力とでも言うのか!

    「…………だから言った。俺は負けない、と。」
  63. 69 : : 2015/08/14(金) 13:49:31
    第31問【VS Aクラス中編2】
  64. 70 : : 2015/08/14(金) 13:49:37
    2勝1負。
    (1回戦目 佐藤さん VS 優子さん→優子さんの勝ち)
    (2回戦目 紺野くん VS 秀吉→紺野くんの勝ち)
    (3回戦目 工藤さん VS ムッツリーニ→ムッツリーニの勝ち)
    僕達はついにAクラスを追い詰めた。

    「次の方をお願いします。」

    高橋先生が淡々と作業を進める。
    自分のクラスが負けてるのに………
    後2つ、必ず勝つと思ってるのかな…。

    「私が行く」

    な、なんで!?
    なんで霧島さんが4回戦目に!?

    「いいのかい?最後を僕に任せて」

    「うん。まずはここで勝たないと意味ないから」

    …………良く分からないけど、
    ここで勝負が終わるのを恐れてるのかな?
    久保君の事を信じきれてないってことかな?
    もしそうなら……勝てるかも知れない!

    「こっちからは俺が行く。」

    「雄二!?」

    そう言って前に出たのは雄二。
    まって!僕を最後に出すつもり!?
    曲がりにも雄二が僕達の中で1番点数が高いんだよ!?
    ここは僕を囮にしたほうが!

    「明久。俺を信じろ」

    はっ!まさか!
    霧島さんを倒す秘策があるのか!?

    「翔子、お前に選択権をやる。好きな教科を選べ」

    「………雄二。何を企んでるの?」

    ふふふ、霧島さん。今に見てなよ。
    雄二は君を倒すことになるよ?きっとね

    「さぁな?それで、何にするんだ?」

    「…………総合教科」

    総合!?
    そうだ、その手があったんだ!Aクラスには!
    得意不得意関係なく実力がもろに出てしまう!
    どうするんだ!?雄二!

    「だそうだ。高橋先生」

    「わかりました。それではどうぞ」

    高橋先生が操作を行うと2人はそれぞれの召喚獣を呼び出して────一瞬で決着がついた。

    『Aクラス 霧島翔子 WIN』

    ……………は?
    雄二ぃぃぃ!!!?
    勝つんじゃなかったの!?

    「これで2勝2負。ま、こんなところか」

    何がだよ!
    負けて悔しくないのか!

    「最後の1人の方、どうぞ」

    それどころじゃない、ついにこの時が来た。
    AクラスとFクラスの試召戦争の決着がつく時が!

    「僕の番のようだね」

    Aクラスからは久保利光君。
    この学年の次席だと言われている。

    僕達Fクラスからは僕、吉井明久がでる。

    「それでは、教科を決めて下さい。」

    高橋先生から教科を決めるようにと催促がくる。
    僕がAクラスと戦える唯一の武器、
    それは『日本史』!
    元々日本史は得意だった。でも、今日は特別だ。
    毎日、優子さんに勉強を教えてもらった。
    その中でも1番長い時間勉強したのは日本史なんだ!
    だから、今日の僕は今までの僕とは違う!

    「高橋先生!日本史でお願いします!」

    僕は姫路さんの為にも絶対に勝つ!
  65. 71 : : 2015/08/14(金) 13:51:35
    第32問【VS Aクラス後編】
  66. 72 : : 2015/08/14(金) 13:51:40
    「高橋先生!日本史でお願いします!」

    僕が高橋先生に戦う教科を選択する。
    すると久保君が口を開いた。

    「待ってもらってもいいかな。僕は総合科目でいきたいんだ。」

    そりゃあそうだよね。
    ここで万が一僕に負けたらなんて考えると…
    Aクラスの人は総合科目が1番安心できるからね。
    そう考えていると、雄二が答えていた。

    「おいおい、待ってくれよ。選択権はこっちにあるはずだぜ?Aクラスはもう3つ選択してるが、俺達はまだ1つだ」

    ニヤリと不敵な笑みを浮かべる雄二。
    出てるよ!悪役感が凄く出てる!

    「だ、だが、1つはそちらの同意の元であって!」

    「だとしてもだ、Aクラスは2つ、俺達は1つだ。他に何か言うことはあるか?」

    だからさっき雄二は科目の選択を霧島にあげたのか!
    流石雄二だ…。こういうことを考えさせたら右にでるものはいない。

    「っ!……………し、仕方ない。ここは日本史でやることにしよう。」

    因みに僕の日本史の点数は雄二のどの科目の点数より高いからね?
    作戦を僕に説明して僕を囮にしてもよかったなんて考えないでね!

    「準備は出来ましたか?それでは召喚を開始して下さい。」

    「試獣召喚!」

    「試獣召喚!」

    僕と久保君の召喚獣が現れる。

    『Aクラス 久保利光 398点』
    VS
    『Fクラス 吉井明久 ???点』

    2人の召喚獣が互の召喚獣の元へと向かい。
    手元にある武器をふった。

    そして、それと同時に……………………
    ……………………1体の召喚獣が倒れた。













    しばしの沈黙。
    誰もが言葉を吐き出すことが出来なかった。
    そんな空気を破ったのは、高橋先生だった。


    「しょ、勝者。Fクラス 吉井明久。」





    「………………勝った?」

    僕は…本当に勝ったの?

    「……明久。良くやった」

    僕の肩に雄二の手が置かれる。
    それと同時に僕達Fクラスから歓喜の声が聞こえた。

    「よっしゃぁぁぁぁぁ!!!!!」
    「勝った!勝ったぞぉぉぉぉ!!!!!!」
    「これで、あの設備とおさらばだ!!!!」

    一人一人、思い思いのことを言う。
    その声は男だけの暑ぐるしい声なのに
    なんだか爽やかに聞こえた。

    「明久!よくやったのじゃ!」
    「………………ナイス(グッド)」
    「ま、褒めてあげるわ」

    仲間から祝いの言葉をもらいながら僕は何よりも先に姫路さんの元に向かった。

    「………………姫路さん。勝ったよ」

    「…………あ、ありがとうございますっ!吉井君!!!」

    姫路さんは僕の胸に飛び込んできた。
    僕の胸で泣いている姫路さんを見て、僕の胸はなんだか温かくなった。
  67. 73 : : 2015/08/14(金) 13:53:31
    第33問【任せて】
  68. 74 : : 2015/08/14(金) 13:53:41
    ─────────────遡って昨日

    「姫路さんっ!」

    僕達FクラスはAクラスに宣戦布告した。
    端的な目標は姫路さんを元に戻すこと……。
    でも、このまま勝っても姫路さんを戻すことは出来ない。
    だから、僕のやることは1つ、
    姫路さんを戻すために姫路さんがこんなふうになってしまった素をどうにかすること。
    そのために僕は姫路さんに話しかけた。

    「…………なんですか」

    無表情に淡々とした口調。
    前も言ったけど、以前のような姿はない。
    なんでこんなことになってしまったんだろう。
    あの女神のような姫路さんがここまでなってしまったんだ。
    それ程のことがあったんだろう。

    「なんか最近元気ないな〜っ思ってさ!」

    この場を和ませる為にも出来るだけ元気に話す。

    「…………それがなんですか」

    構うな。
    そう言いたそうだった。

    「心配なんだ、僕。姫路さんがさ。」

    どうやって聞き出せばいいんだろう…。
    僕は馬鹿だからわからない。
    そんなことは言い訳にしかならないのは知ってる。でも、本当に分からなかった。

    「…………………なぜです」

    「そんなの…好きだからに決まってるじゃないか」

    僕から咄嗟に出た言葉。
    勿論、友達としてという意味だけど、姫路さんには届いたみたいだ。
    ほら、だって、さっきまでびくともしなかった表情が戻ってきた。

    「………好き……ですか」

    「うん。だって、僕と姫路さんの仲じゃないか!」

    これはイケる!
    だってほら!どんどん姫路さんの表情が出てきた!

    「…………そうですか」

    えっ!?なんで!なんでまた無表情になるの!?
    失敗!?チャンスは今しかないのに!

    「…………姫路さん?」

    無言。静かな空気が流れる。
    30秒くらい経った時だろうか。
    姫路さんの重い口が開いた。

    「…………私、引っ越してしまうんです。」

    僕はついに、姫路さんの心を開いた。








    そこからは簡単だった。
    姫路さんの話しを引き出す。ただそれだけだった。
    姫路さんは所々で本音を漏らした。

    「引っ越したくない」
    「転校したくない」
    「みんなとずっと一緒にいたい」


    姫路さんがずっと無表情だった理由も分かった。
    『少しでも辛い思いをして欲しくないから、私を忘れて欲しいから』
    やっぱり姫路さんはいつまで経っても姫路さんだったんだ。
    自分よりも周りの人の為に動いてしまう。
    そんな姫路さんに怒りさえ覚えた。
    そして、それと同時にに自分が情けなくなった。
    気づいてあげられなかったこと、そして信じてあげられなかったこと。
    僕は自分が嫌いになりそうだった。








    「…………吉井君。……助けて下さい。」

    綺麗な顔を涙でぐしゃぐしゃにして必死に僕にしがみついてきた。
    もちろん僕はこう言う。



    「任せて!」
  69. 75 : : 2015/08/14(金) 13:55:07
    第34問【戻る日常】
  70. 76 : : 2015/08/14(金) 13:55:11
    ─────────────時は元に戻る

    僕の胸で泣き続ける姫路さん。
    僕は姫路さんの華奢な肩に手を持ち、話しかける。

    「姫路さん。お膳立ては済んだよ。」

    「………お膳……立て?」

    「うん。後は姫路さんが両親に気持ちを伝えるんだ。転校したくないってさ」

    みんなは覚えてる?
    姫路さんが転校するかもしれない理由を。

    まず1つ目の『設備、環境が悪い』は僕達Fクラスが勝った今、Aクラスの設備を使えるから大丈夫になった。

    次に2つ目の『老朽化した教室』
    これは今と同じ理由から大丈夫になった。

    最後の3つ目『レベルの低いクラスメート』
    これは僕達FクラスがAクラスに勝ったから、認めて貰えるはず。

    そう、僕達は姫路さんの両親に気持ちを伝える為に必要なお膳立てをしたんだ。

    「ここまでやったんだ。後は姫路さんが両親に気持ちを伝えるだけだよ。」

    ─────
    ───────────
    ──────────────────

    「うわぁぁぁっ!見てよ吉井!すっごい豪華よ!?」

    「ふふふ、落ち着きなよ島田さん。ここはこれから僕達の設備なんだよ?」

    「言動と行動がとことん合わんやつじゃな」

    皆さん、気付いたでしょうか?
    そう、僕達はついに最高の設備を手に入れたんだ!!!!

    「…………吉井君」

    「姫路さん。良かったね」

    「はいっ!これも全部皆さんのお蔭です!」

    姫路さんは両親の説得に成功した。
    少なくとも2年生の内に転校することはなくなった。
    姫路さん曰く『3年生もFクラスになったら転校』だそうだ。
    でも姫路さんなら大丈夫だよね。
    凄く頭もいいし。

    「あ、そうだ!お礼にと思って皆さんにクッキーを焼いてきたんです!召し上がってください」

    へぇ〜。姫路さん料理も出来るんだ。
    可愛くて優しくて家庭的なんて無敵じゃないかな?

    あれ?なんで島田さんと優子さんは親の敵を見るような目でこっちを見てくるんだろ?

    「へぇ、姫路が作ったのか。」

    ヒョイと1つを摘んで口に入れる雄二。
    それに便乗してムッツリーニと秀吉もクッキーを摘む。

    「どれどれ、相伴しようかのぉ」
    「………………(ヒョイ)」

    みんなずるいよ!
    僕も早く食べたいんだからね!

    バタン ガタガタガタガタ
    バタン ガタガタガタガタ
    バタン ガタガタガタガタ

    みんな一斉に顔から豪快に倒れ、
    小刻みに震えだした。

    ……………これはまずいんじゃないかな?

    「どうしたの?みんな」

    島田さんと優子さんがみんなを心配そうに見ている。
    何が起こったのか理解出来てないようだ。

    …………もしかして…姫路さんの料理って…。



    ポイズン・クッキング?
  71. 77 : : 2015/08/14(金) 13:57:20
    第35問【願いは片想い】
  72. 78 : : 2015/08/14(金) 13:57:25
    ───────────時間が過ぎ、帰り道

    ポイズン・クッキング…。
    あの威力は絶大だった。
    なぜ、僕がそんなこと言えるのかと言うと
    勿論、食べたからだ。
    理由?そんなの島田さんと優子さんに
    あんな人殺し料理を食べさせる訳にはいかない
    からに決まってるじゃないか!
    (勿論、僕が全部食べました)

    因みに、どれだけ威力があったかというと、
    まず口の中でこの世のものとは思えない味が広がります。次に意識を失います。そして三途の川を渡りかけ、1時間ほどしてなんのか意識を戻します。
    こんな感じで、僕達3人は生死をさまよった。
    そう言えば、死んだおじいちゃんも見えたなぁ。

    「吉井君?ぼーっとしてどうしたんですか?」

    「あ、少し考え事をしてたんだ。」

    「考え事ですか?」

    「うん。そんな大したことじゃないから気にしないで」

    本当は姫路さんの料理の恐ろしさを説明してたなんて言えないよね。

    「そうですか………。もし、何か悩み事があったら言ってくださいね?今度は私の番ですから」

    柔らかく微笑む姫路さん。
    ただいるだけで雰囲気が和むそんな優しいオーラを放っている。
    ああ、これでこそ姫路さんだ……。

    「うん。その時はよろしくね。姫路さん」

    「はいっ!!!」

    そうそう。
    言い忘れてたけど今日、僕は姫路さんと2人で帰っている。
    理由?……………うーん……わかんないや。
    いつの間にか一緒にいて一緒に帰ってからね。






    ちょっと無言が長くなった。
    そんな時、僕の頭の中をかけ巡ったことを口に出してみた。

    「……………………僕が貰ったラブレター」

    「僕に向けてくれたあの気持ちは、僕には勿体無いよ。」

    「………………………」

    僕の言葉に無言で聞いている姫路さん。

    「でも、………昔から僕のことを見てくれてたんだね。」

    「実はさ、僕も前までは姫路さんの事が好きだったんだ。」

    「やめてください」

    そう言われても構わずに続ける。
    だって、ここまで言ったんだ。最後まで言わないといけない…そんな気がしたんだ。

    「嬉しいよ。………それとごめんね。気付いてあげられなくて。」

    「やめてください!」

    姫路さんの語気が少しだけ荒くなる。

    「私はまだ諦めません!例え、一生吉井君の気持ちが私に傾いてくれなくても!私が好きでいる時はずっと恋は続くんです!」

    姫路さんの顔からは涙が流れてた。

    「だから!だからせめて!」

    1呼吸おいて静かに言葉を続ける姫路さん。

    「…………………片想いくらい……………させてください。」

    「それが…………私の願いです。」

    その時見せた姫路さんの顔は、
    一生忘れられない。
    だって、こんなにも切なく輝いているんだから。
  73. 79 : : 2015/08/14(金) 13:58:09
    遂に「エピソードオブ姫路瑞希」の終わりをむかえました。
    35話という長いようで短い物語でしたが、いかがだったでしょうか?お楽しみいただけていたら嬉しく思います。

    次は「エピソードオブ島田姉妹」を書いていきたいと思います。目標話数は「エピソードオブ姫路瑞希」と同じ35話、この物語の続きから始まります。
    是非、また読んで頂けると嬉しいです。

▲一番上へ

名前
#

名前は最大20文字までで、記号は([]_+-)が使えます。また、トリップを使用することができます。詳しくはガイドをご確認ください。
トリップを付けておくと、あなたの書き込みのみ表示などのオプションが有効になります。
執筆者の方は、偽防止のためにトリップを付けておくことを強くおすすめします。

本文

2000文字以内で投稿できます。

0

投稿時に確認ウィンドウを表示する

著者情報
sswriter_ryu

@sswriter_ryu

「バカとテストと召喚獣」カテゴリの最新記事
「バカとテストと召喚獣」SSの交流広場
バカとテストと召喚獣 交流広場