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指輪の秘密-アニ誕・ライナー・ベルトルト-

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  1. 1 : : 2015/03/21(土) 21:43:18
    19作目です。

    アニの誕生日を祝うライナーとベルトルトのお話です。

    1ヶ月ぶりの『2000年の記憶』シリーズ(http://www.ssnote.net/series/1973
    ですが、実はアニの誕生日を祝うためにこちらで執筆を始めました。

    こちらのシリーズを先に読んで頂いた方がお話がわかるかと思います。


    誤字や脱字などあればご指摘お願いします。
  2. 2 : : 2015/03/21(土) 21:45:58
    *〔年相応の女の子が年頃の娘になる話〕


    「よし、報告はこれくらいだな」

    消灯時間を過ぎた深夜。
    ライナー、ベルトルト、アニは倉庫で密会をしていた。

    「私が最初に戻るよ」

    アニは腰をあげる。

    「気をつけてね」

    名残惜しそうにベルトルトが視線を上げた。

    「ん。あんたらもバレないようにね……いや、バレても平気か」

    「待て、それはどういう意味だ」

    「2人はデキてるんでしょ? 訓練所内では有名な話だよ」

    座っている大男2人を見下ろし淡々と告げる。

    「違う、違うよアニ誤解だ……!」

    「俺らがホモなわけないだろ!? 信じてくれよ!!」

    珍しく慌てる2人を見てアニは少しだけ面白い、と感じた。

    「ふ、わかってるよ。それじゃ」
  3. 5 : : 2015/03/21(土) 22:51:59
    「……酷い噂だ」

    「そう落ち込むなってベルトルト。気持ちは同じだ……」

    残った2人は慰め合っていた。

    「最近、僕達に対する当たりが強くなってる気がする……」

    「反抗期か?」

    その言葉にベルトルトはくすりと笑う。

    「“年頃の娘”って感じだよね、父さん」

    「父さんっていうな! ……ってことはお前が母さん?」

    「やめてよ! そういうこと言ってるからホモ扱いされるんだ!」
  4. 6 : : 2015/03/21(土) 23:24:30
    「あ、悪い……そ、それより、アニも行ったことだし考えようぜ」

    ようやく本題を思い出したライナーとベルトルトは考え込む。

    「全く……もうすぐアニの誕生日、だね。今年のプレゼントはどうしようか」

    「今までは好きなもん渡せたんだが……」

    運良く誕生日にあたる日が休みで堂々とプレゼントを渡せていた例年と違い、今年は普段となんの変わりもない訓練の日だ。
  5. 7 : : 2015/03/21(土) 23:29:50
    「当日祝いたいけど、僕らの関係を悟られるわけにはいかない……」

    「まあ祝うのは前日ここに呼び出せば当日を迎えられるとして、何を渡すかだよな」

    「大きいものをあげたら、そのあと部屋に戻るのが大変だよね」

    「小さくて喜んでもらえるものかぁ……」

    ふと、ベルトルトが顔を明るくした。

    「あ! アニは甘いものが好きだったよね」

    「あいつなら貴重になった甘いもの私なんかが貰っていい物じゃない、とか言いそうだよな」

    その提案をやんわりと却下する。

    「うーん、確かに。昔はちょっと臆病なところもあったけど、明るかったよね……あの満面の笑み」

    好きなんだけどなぁ、と小さく呟いた。
  6. 8 : : 2015/03/21(土) 23:38:45
    「今も鼻で笑うぞ。そういえばアニが小さい頃、痛いのを嫌がってなかなか手を噛めなかったからって指輪の形をした飴をあげたよな」

    「2人で頑張って家の手伝いしてお小遣い貯めたよね」

    「そしたら『最近遊んでくれない……2人はアニのこと嫌いになったの? 傷つくよ……』って泣き出してな」

    若干アニの幼少期を意識した声真似を似てない、とベルトルトが思ったのは秘密だ。

    「ああ、自分の事アニって呼んでるのも可愛かったね」

    「しかも飴を舐めたんだよな。噛まなかったから意味がないっていう」

    「でもあの指輪をはめる時のアニ、すっごい幸せそうだった。今でもあの笑顔は鮮明に思い出せるよ」
  7. 9 : : 2015/03/21(土) 23:45:16
    「なんつーか、俺らの『お姫様』だよな」

    「はは、そうさせたのはアニのお父さんと僕らだけどね」

    ライナーは思いついたように手を叩いた。

    「……なあ、 ベルトルト。指輪リベンジしないか?」

    「指輪リベンジ?」

    「もう飴じゃなくても手は噛めると思うが、噛めなくなったときとかに使えそうな……こういう感じの」

    任務のことについて記すために持ち歩いているメモをとり、ペンを走らせる。

    「いいね……これなら材料さえあれば僕達で加工できる。それに高価なものでも受け取ってもらえそうだね!」

    「よし、次の休日は指輪を買いに行くぞ!」

    今度こそ通された提案を元に、小さなプレゼントを贈る企画が始まった。
  8. 10 : : 2015/03/21(土) 23:56:30
    「これで俺からの報告も終わりだ」

    消灯時間を過ぎた深夜。
    ライナー、ベルトルト、アニは倉庫で密会をしている。

    「じゃ、いつも通り私から戻るよ」

    そして腰を上げようとしたアニの腕をライナーが掴む。

    「アニ、待ってくれ」

    「……なんだい?」

    「ちょっと話があるんだが」

    アニは不審そうに目を細めた。

    「……任務に関係ないなら手短に済ませてよ」

    「あと3分半くらい……だな」
  9. 11 : : 2015/03/21(土) 23:56:55
    「は? なんでそんな半端なの?」

    口に出したつもりのない言葉を拾われてしまいライナーは焦る。

    「あーーーほ、ほら! 日付が変わる直前『か弱い乙女』は外にいない方がいいっていうしさ!?」

    すかさず事を感じとったベルトルトはフォローに入った。

    「そ、そうだ。それにたまには任務以外の話もいいだろ?」

    「昔とは違ってなかなか話せないし、ね?」

    必死の訴えに負け、中途半端に持ち上がっていた腰を床に戻した。

    「……そう。じゃあ話して」
  10. 12 : : 2015/03/21(土) 23:58:23
    「あーーーこ、今夜は星が綺麗……だな」

    「今屋内だから見えないし外にいた時も見なかったから何とも言えないね」

    「あーーーも、もうすぐ早咲のチューリップが咲きそうだよ!」

    「あ、そう」

    「うっ……」

    いざ話して、と言われてもなにも用意していない彼らにそんな話術はなく、すぐに会話は途絶えた。

    「はあ……今日のあんた達、変だよ。私に何を隠してるの? まったく……傷つくよ」

    「……ぶっ!」

    いつかの彼女と全く同じ言葉を、あのときと全く同じ時期に繰り出したことに耐え切れずライナーが吹き出す。

    「何が面白いわけ?」

    不機嫌そうに眉間に皺を寄せたアニを横目に、ベルトルトも堪らず笑いを漏らした。

    「ふふ、指輪リベンジに相応しいセリフだね」

    「は?」
  11. 13 : : 2015/03/21(土) 23:59:24
    「10、9、8、7」

    「……え?」

    突然始まったカウントダウンに戸惑う。

    「6、5、4、3」

    「ち、ちょっと」

    そのカウントが減るにつれて、何が起こるのかわからないアニは体を小さくさせていた。

    「「2、1」」
  12. 14 : : 2015/03/22(日) 00:00:00


    『アニ、誕生日おめでとう!』


  13. 17 : : 2015/03/22(日) 01:00:07
    「あ……!」

    合点がいった、という思いと同時に、思わず歓喜の声が出ていた。

    「はい、これプレゼント」

    そういってベルトルトの大きな両手に乗せられた小さな3つのリング。

    「これを、隠してたの……?」

    「まあな! 3つともデザインは違うが、3人お揃いの指輪だ」
  14. 18 : : 2015/03/22(日) 11:29:46
    「指輪なんて高価なもの、私なんかがつけていいものじゃない……」

    あまりにも予想通りすぎる言葉にまた、ライナーは吹き出しそうになったが今度は我慢できた。

    「そういうと思ってな。これには細工がしてあるんだ、ほら」

    カチ、という音と共に出現した鋭いトゲ。

    「なに? これ」

    「これで自傷行為ができる。もし、万が一、何かあった時のために、ね?」

    「これなら文句ないだろ?」

    ベルトルトは不安そうに、ライナーは自信満々にアニの顔色を伺った。

    「……うん! ライナー、ベルトルト……っ!」

    アニの目は潤んでいた。
  15. 19 : : 2015/03/22(日) 12:16:32
    「おいおい、まだ泣くなよ。見てみろ、指輪の内側」

    そこには[B.Annie.R]と掘られた文字がある。

    「これって……名前?」

    「うん、関係がバレる可能性もあるからアニの指輪にしか彫れなかったんだけど……僕らが君を守るよって意味を込めて」

    「ここではお前を1人にさせちまったが、いつでも俺らはお前の味方だ」

    今度は2人とも、自信満々だった。

    「僕達の『お姫様』だからね」


    「2人とも……ありがとう!」


  16. 22 : : 2015/03/22(日) 15:24:50
    朝の男子寮では、もうほとんどの男子訓練兵が起きていた。

    「ベルトルト、にやけすぎだぞ」

    「だって、だってアニのあの笑顔……満面の笑み……反則じゃないか……!」

    昨晩行われた小さな誕生日会で、久しぶりに笑ったアニを思い出してベルトルトはニヤニヤしていた。

    「あ、こら名前だしたら……」

    「おい、ベルトルト! アニを笑わせたのか……!?」

    「こうなるだろ……」

    後ろにいたらしいジャンに会話を聞かれていたようで、静かな朝に大きな声で反応された。

    「嘘だろ!? サシャと頑張って笑わせようとして、ようやく微笑むくらいだったのに……!」

    前を歩いていたコニーもその大きな声に気付いて振り返る。

    「満面の笑みなんてすごいね、でもどうして?」

    ジャンと一緒にいたマルコも珍しい、とその経緯に興味を示す。
  17. 25 : : 2015/03/22(日) 18:54:47
    「あーーーほ、ほら! 深夜にたまたま会ってさ! 今日が誕生日だっていうからさ、ね、ライナー!?」

    「あ、ああ! だからおめでとう、と祝ってやったら礼を言われてな! そのときだ! うん!」

    「へえー今日誕生日なのか。俺と近いな!」

    焦ってジャン以上の大声を出した2人は、ジャンとマルコのさらに後ろにいたエレンとアルミンにもその声が届いていた。

    「アニが夜にふらつくのはなんとなく想像つくが、深夜に男2人で部屋を抜け出して……やっぱり本物だったんだな」

    ジャンは引きつった顔でライナーとベルトルトから距離をとった。

    「違うぞ!? そういうことじゃない!!」

    「違うからね、違うからね?」

    その慌てぶりは余計怪しいなどと言われながら朝はどんどん騒がしくなっていく。
  18. 26 : : 2015/03/22(日) 19:31:12
    「ねえ、3月生まれが2人いることだしさ、サプライズパーティーでも開かない?」

    アルミンから出された案に周りは肯定の反応をみせる。

    2人以外は。

    「ま、まて」

    「元々エレンのお祝いしようってミカサと話してたしさ!」

    ライナーを押し切ってアルミンは話を続けた。

    「いいな、他の女子にも話して協力してもらおうぜ!」

    コニーも楽しそう、と目を輝かせる。
  19. 29 : : 2015/03/22(日) 21:06:27
    「ちょうど死に急ぎ野郎とアニの誕生日の間、26日から春季休暇だしな」

    日にちを計算したジャンもこれはいいと頷く。

    「俺はもう既にサプライズじゃないんだけど」

    「まあまあ、主役の1人にも協力してもらえたらサプライズの幅も広がるよ!」

    「そうだな、頑張るぞ! って、なんでジャンは俺の誕生日知ってるんだ……?」

    少し不満そうなエレンだが、マルコのおかげか楽しみの方が上回りやる気だ。

    「うるせぇ……ミカサが言ってたんだよ……羨ましい!!」
  20. 30 : : 2015/03/22(日) 21:38:38
    「そこの2人ちゃんと聞いて! アニは普段遅めに朝食を食べに来る、早く食堂に行って女子達にも話す必要があると思う!」

    「よし、行くぞー!!」

    「皆でどんなサプライズにするか考えよう!」

    アルミン、コニー、マルコの言葉により士気は最高潮に達した。

    「え、ライナー……」

    「すまん、この盛り上がりようじゃもう手遅れだ……諦めよう」

    「なんかごめん……」

    2人以外は。
  21. 31 : : 2015/03/22(日) 22:03:25
    朝の女子寮では、もうほとんどの訓練兵が起きていた。

    「今日はただの『飾り』としてこの指輪をつけてもいい、よね……ふふ、なんだか本当にお姫様になった気分」

    指輪をつけたアニの顔は緩みきっていた。

    「おはよ、アニ! ご飯食べに行こ!」

    予期せぬ同期の登場で少し……いやかなり焦る。

    「! ミーナ……もう出れるよ」

    「どうしたの? 焦っちゃってー! まさか私に隠し事!?」

    「くだらないこと言ってないでさっさと行くよ」

    「もう、アニったら! からかっただけなのにぃー」
  22. 32 : : 2015/03/22(日) 22:33:24
    食堂では先に来ていた人たちがドアの前に集まっていた。

    そんなことも露知らず、ドアを開ける。

    『お誕生日おめでとう!』

    「……は?」

    「やだ、誕生日だったの!? 早く言ってよー! おめでとう、アニ」

    「……ど、どうも?」
  23. 33 : : 2015/03/22(日) 22:50:20
    「やっぱ突然言うだけじゃ満面の笑みとはいかねえよなー」

    「どちらかというと困惑してましたね……ですが、ネタはたくさんあります!」

    コニーとサシャは再び、お笑いの準備をするためにネタ帳からネタを厳選していた。
  24. 34 : : 2015/03/22(日) 23:21:40
    「肌は白いから……やっぱりオレンジ系よりピンク系の方が映えそうだよね」

    「あいつなんも持ってなさそうだもんなぁ。フルセット用意することになるぞ」

    クリスタと……珍しくユミルも、久しぶりのお祭りムードに明るく笑っていた。
  25. 35 : : 2015/03/22(日) 23:36:18
    「ライナーあれ! あの指輪してる!」

    「本当だ……ってやべ、あいつこっち見てるぞ」

    嬉しそうに小さくはしゃぐベルトルトにつられてアニを見たが、向こうもライナーたちを見ていることに気がつき様子を伺う。
  26. 36 : : 2015/03/22(日) 23:59:21
    「誕生日のこと誰にも言ってないはずなんだけど……あのゴリラとのっぽの仕業か」

    「ふふ、でも今日だけは感謝してあげる」


    「ベルトルト! あいつ、こっちに向かって笑ったぞ!」

    「幸せだ……はあ、僕はもう……」

    「ベルトルトォ!」
  27. 37 : : 2015/03/23(月) 00:00:01

    「身長ばっかり伸びるあいつらにちょっとムカついてたけど……少しは優しくしてやろうかな」

    「って、あの2人は何をしてるの……? 心配しなくても指輪の秘密は守るよ」


    〔Happy Birthday Annie!!〕

    -END-
  28. 38 : : 2015/03/23(月) 00:15:05
    閲覧ありがとうございます!


    地味に遅刻してしまったのが心残りですが(´・ω・`)

    アニの誕生日ぴったりにおめでとう投稿できたのはよかったです!

    本当にアニの誕生日お祝いSSを書くために、1月から執筆をはじめたのでひと仕事終わった感じがします・・・w

    本編でも未だに出てこないアニちゃんですが、きっと色々な事情があって苦労しながらも壁内人類へ攻撃したんだと思ってます。
    いつか教えてね、アニちゃん!!

    お誕生日おめでとうございました。
  29. 39 : : 2015/03/23(月) 18:13:39
    アニ誕生日おめでとう!!
    とってもいい作品でした!
  30. 40 : : 2015/03/23(月) 21:51:29
    >>39
    雛莉華さん

    ありがとうございます!
    お互いにアニの誕生日をお祝いできてよかったです(*´∀`)
  31. 41 : : 2015/05/10(日) 06:36:08

    何か本当にありそう。
  32. 42 : : 2015/05/10(日) 09:44:26
    >>41
    とあさん

    なるべく原作寄りでお話を考えていたので、そういってもらえて嬉しいです♪
    乙ありですっ

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著者情報
Liebeschon1104

咲*

@Liebeschon1104

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2000年の記憶 シリーズ

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