この作品は執筆を終了しています。
君が泣いている夢を見たから-アルアニ-
- 進撃の巨人 × 恋愛
- 3993
- 68
- 
                  - 1 : : 2015/03/08(日) 00:46:51
- 8作目です。 
 
 冬がくれた予感-エレアニ・ベルアニ・エレヒス・104期-
 (http://www.ssnote.net/archives/31762)
 の続きでアルアニルートになります。
 
 誤字や脱字などあればご指摘お願いします。
 
- 
                  - 2 : : 2015/03/08(日) 00:50:35
- 
 
 あの頃は確かに両想いだった。
 
 
 『アンタ、弱いくせに根性あるからね』
 
 『アニってさ……実は結構優しいよね』
 
 よく知って、認めあって。
 
 『アニがこの話に乗ってくれなかったら、アニは僕にとって悪い人になるね』
 
 『私が賭けたのは……ここからだから』
 
 でも、お互いにその道を捨てた。
 
 恋をする青年アルミン・アルレルトではなく。
 
 心臓を捧げると誓った兵士として。
 
 自分じゃなく、人類の為に。
 
- 
                  - 6 : : 2015/03/08(日) 14:09:24
- アニが女型の巨人だと気付いたときは、自分の頭が嫌になった。
 知りたくないことまでわかってしまう、この頭に。
 そしてこの世界に生まれて、再び自分の頭が嫌になった。
 僕の親友が彼女を追いかけていると、気付いたときに。
 
- 
                  - 8 : : 2015/03/08(日) 15:35:01
- 「エレン、大丈夫?」
 「あ……る、みん……」
 エレンはとても苦しそうに、こちらへ手を伸ばした。
 「はい、これ水」
 「ん……ぷはっ」
 「また“例の夢”見たの?」
 少し落ち着いた彼に投げかける質問。
 悪夢にうなされるときは決まってこうだ。
 
- 
                  - 11 : : 2015/03/08(日) 16:45:43
- 「……あぁ。悪いな、迷惑かけて」
 「ううん、そんなことないよ。エレンは“あの世界”で誰よりも色々なものを背負ってくれてたんだから」
 彼女への想いがこれだけありながらも、自覚しないほどに重くのしかかっていた“人類の希望”
 そして巨人への憎悪。
 エレン……まるで『昔』の僕を見ているようだ。
 僕が彼女を切り捨て、激しく後悔した2000年前を……。
 
- 
                  - 14 : : 2015/03/08(日) 22:44:57
- *
 「アニ、もう全て終わったんだよ。君やライナー、ベルトルトの事情も全て知った」
 アニが結晶化してからしばらくして、人類と巨人の戦い……いや、人同士の戦いに決着がついた。
 それでもなお、彼女はこの結晶から出てこない。
 「皆、許しあったよ。だから出てきてよ、アニ。それで今度こそ……」
 -結婚して、一緒に暮らそう
 と言いかけたが言えなかった。
 彼女を追い詰めて、こんな姿にさせたのは誰だ。
 僕にそんなこと言う資格なんてあるのか。
 
- 
                  - 15 : : 2015/03/09(月) 00:04:53
- 「やあアニ。僕もすっかりおじいちゃんだよ」
 兵士の間は休みの時、兵団を抜けてからは月に1回、必ずアニのもとへ訪れた。
 全て終わってからも地下深くに収容されている彼女のところへ。
 「最近物忘れが酷くて、エレンに怒られちゃった。兵士時代からは考えられないよね」
 どんなことを忘れようとも、君のことを忘れたことはないよ。
 結晶の中で綺麗に光るブロンドの髪。
 もうしばらく見てないけれど、この結晶と同じ色をしたアイスブルーの瞳。
 今やもう遥か昔の小さな日常。
 
- 
                  - 16 : : 2015/03/09(月) 14:01:29
- 「あの頃の僕は無知で、若かったなあ。」
 
 『いつか、別れるとしても、それでも僕は、この出会いに感謝しよう』
 
 『僕は後悔しない』
 
 なんて、本気で思ってた。
 
 「何で泣いてるの? アニ」
 
 君と離れるのを選んだことに後悔して
 
 こんなに悩んで苦しいくらいなら出会わなければよかったなんて思って。
 
 
 
 
 「また聞かせてよ。あの時みたいに、***って……」
 
 
 
 
- 
                  - 19 : : 2015/03/09(月) 20:35:15
 結局、涙を流したまま結晶から出てこなかったアニと
 生涯パートナーを持つことがなかった僕は
 同時に息を引き取った。
 
- 
                  - 20 : : 2015/03/09(月) 23:09:07
- 朝、携帯から鳴り響くアラーム音で目を覚ました。
 ふと顔に違和感を感じる。
 「……涙?」
 そして思い出した。
 「アニ……」
 
- 
                  - 21 : : 2015/03/09(月) 23:43:45
- エレンに影響されたのかな。
 彼女の夢を見た。
 もう未練は断ち切ったと思っていたのに。
 まずこの世界にいるかどうかもわからないし、仮にいたとしても会えないだろう。
 だから、僕はただひたすらエレンを見守るだけで。
 会えないと思っていたから
 
- 
                  - 22 : : 2015/03/10(火) 16:26:59
- 「え? うん、わかった、すぐ行くね」
 エレンからの緊急要請で僕はとある公園へ向かった。
 「お待たせ」
 冬の寒いベンチに座る3人のもとへ走る。
 
- 
                  - 23 : : 2015/03/10(火) 22:12:17
- ああ、本当に彼女だ。
 女型の巨人になってから、もう一生見ることはないと思っていたこの瞳。
 紛れもなく、彼女だ。
 「詳しく話を聞かせて?」
 
- 
                  - 24 : : 2015/03/10(火) 22:26:52
- 話を簡単にまとめるとこうだ。
 偶然か、運命か、エレンとアニは出逢った。
 そしてエレンは想いを伝え、キスをした。
 でもアニには恋人がいる。
 ベルトルトという、恋人が。
 
- 
                  - 25 : : 2015/03/10(火) 22:42:01
 アニ、よかったね。
 君も幸せになれたんだ。
 僕は心から祝福するよ。
 
- 
                  - 26 : : 2015/03/10(火) 23:21:26
- エレン、ごめんね。
 きっとこの状況だと勝ち目はない。
 彼女の為にも身を引くことが望ましいと思うよ。
 「じゃあまた今度、頭を整理して冷静な状態で話し合おう」
 この場にいる全員がまだ状況を把握しきれていない中で、結論を出すのは危険だと判断した僕は再び集まることを提案した。
 もとより信頼をおいてくれているエレンと、『前』から自分の意志がないと言っていたベルトルトはもちろんのこと
 アニもこの案に同意してくれた。
 
- 
                  - 27 : : 2015/03/11(水) 00:03:40
 皆、ごめん。
 もう一度だけ、またアニに会いたいなんていう僕の勝手なわがままで。
 
- 
                  - 30 : : 2015/03/11(水) 21:14:12
 皆、ごめん。
 もう一度だけ、またアニに会いたいなんていう僕の勝手なわがままで。
 
- 
                  - 31 : : 2015/03/11(水) 21:33:11
- けれどわがままはこれだけでは終わらなかった。
 「アニ、今日だけでもミカサかヒストリア……クリスタって言ったほうがわかりやすいかな? どっちかの家に泊まるのはどう?」
 もう未練なんてない、なんてただの思い違いだ。
 「彼女達なら泊めてくれると思うし、アニの為にも……」
 ここまでしてアニを引き止めるなんて僕はどうかしてる。
 君の為、なんていいながら、自分のエゴだ。
 「うん、わかった……そうする。 ベルトルト、ライナーに言っておいて」
 
- 
                  - 32 : : 2015/03/11(水) 21:55:30
 ごめんなさい。
 「クリスタが泊めてくれるって。彼女の家まで案内するよ」
 ただ、僕が君といたいだけ。
 
- 
                  - 33 : : 2015/03/12(木) 01:21:21
- 「……まさか、この世界で会えるなんてね」
 会話に困った僕はこんなことを口走ってしまった。
 いけないことだっただろうか、と彼女の顔を伺う。
 「そうだね。そっちにもそんなにいるなんて思わなかったよ」
 よかった。
 大丈夫そうだ。
 
- 
                  - 34 : : 2015/03/12(木) 20:53:57
 「アニ、はさ。どうするの」
 馬鹿。
 僕のバカ!
 たった今言っていいのか悪いのかって葛藤したばかりじゃないか!
 それなのに、今度は完全にアウトな話題だよ!!
 やっぱり、アニは戸惑っていた。
 
- 
                  - 35 : : 2015/03/12(木) 21:05:37
- 
 「あんたはさ、『昔』のこと覚えてる?」
 
 意外にも、僕の予想とは全く違う言葉が返ってきた。
 
 「うん、まあ。運良く、最後まで生きてたしね」
 
 彼女の前で死んだ話はやめておこう。
 
 恥ずかしいにも程がある。
 
- 
                  - 36 : : 2015/03/12(木) 21:50:15
- 「私もある意味、最後まで生きてたんだよね」
 ……嫌な予感がする。
 これは、冬がくれた悪寒だと信じてる。
 寒いだけだ。うん。
 
- 
                  - 37 : : 2015/03/13(金) 23:26:06
- 「結晶化してからも記憶があってさ。あんた、私に話しかけてくれてたよね」
 やめてくれ。
 「で、最後は私の前で―――!」
 彼女が全てを言い切る前に、僕はアニを抱きしめた。
 何を言っているかわからないと思うけど、僕も正直わからない。
 どうしてこんな行動に出たのか。
 「アルミン……どうして」
 
- 
                  - 40 : : 2015/03/14(土) 23:03:51
 「……君が泣いている夢を見たから」
 
- 
                  - 41 : : 2015/03/15(日) 13:57:28
- アニは僕の家にいた。
 「ヒストリアにはエレンとのこともあるし、話がまとまらないうちは知らない方がいいと思って」
 こんな簡単なこと最初から気付いていたけど、彼女を2人から離すのにはこの口実が一番いいと思ったんだ。
 やっぱり僕は黒い……んだろうな。
 
- 
                  - 42 : : 2015/03/15(日) 14:45:40
- 「ごめんね、ミカサもエレンのことになると……」
 「ああ、相変わらずなんだね」
 アニは初めて笑った。
 笑ったというにはまだ足りないかもしれない、けど。
 「やっぱり、アニの笑った顔は素敵だね」
 言わずにはいられなかった。
 
- 
                  - 43 : : 2015/03/15(日) 15:53:26
- 「なに、あんたも口説こうって?」
 今度は鼻で笑うものとは違い、頬が少しだけ緩んだ。
 「そうだよ」
 僕の馬鹿野郎、さっきから何言ってんだ。
 また彼女を困らせて、親友を傷つけて、かつての仲間のことを考えないで。
 
- 
                  - 44 : : 2015/03/15(日) 18:16:02
- 「……そうなんだ。こんな状況なのに口説くんだ」
 彼女の顔を見れない。
 「ねえアルミン。私も夢を見ることがあるんだ」
 唐突に名前を呼んでくれたアニに驚いた。
 「夢の続き、見せてよ」
 「アニ……」
 
- 
                  - 45 : : 2015/03/15(日) 21:33:50
- 彼女が差し出してきた手。
 その美しく透き通るような白い手に、ゆっくり唇を落とす。
 そのまま腕に、肩に、首筋に、頬に。
 今すぐ消えてなくなってしまいそうな彼女を優しく、壊れものを扱うよう。
 ほんの少しの静寂。
 お互いにお互いを見つめる。
 そして当然の流れで重ね合う。
 
- 
                  - 46 : : 2015/03/15(日) 22:06:39
 ただ、それ以上はせず抱き合うだけだった。
 
- 
                  - 47 : : 2015/03/16(月) 00:21:26
- この後、僕たちがどうしたかはっきりとは覚えていない。
 抱き合って眠って別れてから、彼女と一度も会っていない。
 それどころか連絡すらとっていない。
 エレンは何度か携帯電話でやり取りしているらしく、その度に一喜一憂していた。
 そしてあの日のことは誰にも言っていない。
 
- 
                  - 48 : : 2015/03/16(月) 12:52:31
- 同じマンション内にあるエレンの家でゲームをしていた。
 なんとエレンは携帯の通知がきただけでやっていたゲームを中断させる。
 「アニがアルミンの部屋で話し合いたいって言ってるんだが……」
 「ああ、いいよ。いつでも」
 「よっしゃ! ……あ、返信早い! うお、明日でもいいかだって」
 「構わないよ」
 「本当、いつもありがとうな」
 急いで部屋を片付けて芳香剤置いて……と頭の中は掃除でいっぱいだ。
 
- 
                  - 49 : : 2015/03/16(月) 18:37:41
- 「あれ、ベルトルトは来ないらしい」
 「まあ、どちらかは確実に居にくくなるしね……」
 「そう、だよな……」
 エレンの顔が強ばる。
 「信じるしかないよ。どっちに転んだってそれがアニの選択だから」
 まるで自分に言い聞かせてるように。
 
- 
                  - 50 : : 2015/03/16(月) 19:04:06
- 当日、エレンは落ち着かない様子で僕の部屋に来た。
 「へ、変なとこないか?」
 「うん、大丈夫だよ。落ち着いてエレンこの質問7回目だよ」
 インターホンが鳴る。
 「僕が出てくるよ。そのまま適当に外にいるから話し終わったら電話して」
 「お、おう……」
 「アニ、入って」
 「ありがとう」
 2000年前なら無言、よくてもどうも、だったろうな。
 わかっていたことだけど、彼女も変わったんだ。
 
- 
                  - 51 : : 2015/03/16(月) 19:37:49
- 「……どこかいくの?」
 
 「うん。2人の方が話しやすいかと思って。終わったらエレンに電話して貰うことになってるから」
 
 一方的にじゃあ、と告げて家を出た。
 
 たったこれだけの会話なのにひどく心臓がうるさい。
 
 エレンが選ばれない可能性の方が高い……けど、お祝いの言葉と慰めの言葉両方考えておこう。
 
- 
                  - 54 : : 2015/03/17(火) 12:36:35
- それからしばらくして電話がかかってきた。
 「うん、わかった戻るね」
 ああこの声は……エレン、泣いたな。
 つまり、そういうことだ。
 アニはベルトルトを選んだ。
 
- 
                  - 55 : : 2015/03/17(火) 16:44:17
- 「ただいま……ってあれ」
 玄関に彼女の靴があった。
 もうとっくにいないと思ってたのに。
 そして、エレンの靴がなかった。
 「おかえり」
 出迎えたのは間違いなくアニで。
 
- 
                  - 56 : : 2015/03/17(火) 17:52:43
- 「え、」
 「エレンなら帰ったよ。アルミン、あんたに話がある」
 「え、っと……」
 「私、エレンに告白された」
 ずっとエレンが言っていたことだから、なんの驚きもない。
 「そして振った」
 ここまでは、だ。
 「でね、ベルトルトとも別れたんだ」
 驚きすぎて声が出なかった。
 
- 
                  - 59 : : 2015/03/17(火) 20:27:02
- それじゃあ……
 「アルミン。あんたが「待って!」
 今度ばかりは頭の回転の良さに感謝した。
 
- 
                  - 60 : : 2015/03/17(火) 21:58:50
 「アニ、君が好きだ。ずっと、ずっと前から、愛してる」
 僕は靴を脱ぐことすら忘れてアニに抱きついた。
 「……夢の続きをくれたのは、あんただけだったよ」
 
- 
                  - 63 : : 2015/03/18(水) 21:13:56
 このあと、それはもう色々なことが起こった。
 その原因は主にミカサとライナーなのは黙っておく。
 でも、結果的に僕はアニと結婚した。
 
- 
                  - 66 : : 2015/03/19(木) 18:50:11
- 
 
 『アニ……都合のいい話をしようか』
 
 訓練兵時代、星空の下で僕とアニは逢瀬をしていた。
 
 逢瀬といっても、決して付き合っているわけじゃないけれど。
 
 『まずはアニに好きって言って』
 
 ただの男の妄想。
 
 『あんたと付き合って』
 
 ただの乙女の夢。
 
 
 
 「結婚しよう 」
 
 
 
 〔あの時みたいなプロポーズ〕
 
 -Another route?-
 
- 
                  - 67 : : 2015/03/19(木) 19:01:58
- ここまで読んでいただきありがとうございます。
 他の作品と比べて書き終わるのが遅くなってしましました(´・ω・)
 期待、お気に入り感謝です!
 これからもよろしくお願いします。
 
- 
                  - 68 : : 2017/12/11(月) 22:55:30
- いい話!!
 
- 著者情報
- この作品はシリーズ作品です
- 
                2000年後の記憶 シリーズ 
- 「進撃の巨人 × 恋愛」カテゴリの最新記事
- 「進撃の巨人」SSの交流広場
- 進撃の巨人 交流広場
- 「恋愛」SSの交流広場
- 恋愛 交流広場
 をクリックすると、その人の書き込みとそれに関連した書き込みだけが表示されます。
                をクリックすると、その人の書き込みとそれに関連した書き込みだけが表示されます。
               咲*
咲*