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鎮守府で一番の艦娘

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  1. 1 : : 2014/08/25(月) 09:24:49
    これは那珂と木曾のお話です。

    二人が仲良くしてたら良いな…という私の勝手な想像です。

    キャラ崩壊があるかもしれません。苦手な方は見ない方がよろしいかと思われます。

    それでも良い、という方は読んでいって下さい。
  2. 2 : : 2014/08/25(月) 10:05:09
    「遠征終了、と……」

    那珂は報告書を片手に提督の元へと向かっていた。

    「那珂。」

    急に自分の名前を呼ばれる。勢い良く振り返ってみると、そこには木曾が立っていた。

    「遠征お疲れ様。」

    「木曾ちゃんも遠征お疲れ様。いつもサポートしてくれてありがとね。」

    「お前が頑張ってるのに俺が頑張らなくてどうするんだよ。」

    「それもそうだね。」

    那珂は笑みを溢し、報告書を膝の辺りに持ってきてから、木曾に近くのベンチに腰掛けるように促す。

    「……遂に遠征要員も俺ら二人だけになっちまったな。」

    ベンチに座り少し談笑していた所にそのような話を持ちかけられ、少し驚く。

    「ん~…そうだね…響ちゃんとか夕立ちゃんとか時雨ちゃんとか、出撃頑張ってるかな?」

    「響は今はヴェールヌイになって、残りの二人も改二だろ?」

    仲間の成長は喜ぶべきなのだろうが、寂しい気持ちもあった。

    「……ねえ、木曾ちゃんは、さ…」

    「お気に入りの印って、知ってる?」

    「?……ああ、あのハート型の…」

    なんとなく話題を反らしたくなり、別の話題を持ってくる。

    少し不自然ではあるが彼女はさほど気にも止めていない様子なので別に良いだろう。

    「あれって、さ…私達には付いてないよね…」

    「……ん」

    「那珂ちゃん、提督に嫌われたのかな……」

    こういう話をしたかった訳ではないのに、口は止まらず喋り続ける。

    「そんなわけないだろ」

    返答をもらおうと思っていたのではないため、その言葉に驚いてしまう。

    「え……?」

    「お前は仕事も真面目にやってるし、普段から色々頑張ってるのに、嫌われる訳ないだろ?それで嫌われるようなら、俺があいつを撃つ。」

    真剣な表情の彼女に、それは駄目だよ、と軽く笑いかけて、そう言えば報告書を提出していなかったな、と思い出し、ベンチから立ち上がる。

    「相談にのってくれてありがとう、そろそろ行くね。」

    「あ、那珂」

    「?」

    「その…自分が嫌われてるとかあまり考えるなよ。少なくとも、俺はお前の味方だから。」

    「辛い事があったら言ってくれ。その時は、俺がお前の側にいる。」

    木曾ちゃんの言葉は嬉しくて、これ以上ないくらい安心することができた。

    「うん、ありがとう!また明日も遠征頑張ろうね!」

    「ああ、約束だ」







    その時の私は知らなかった。

    木曾ちゃんは、私の知らない時に出撃していたことを。
  3. 3 : : 2014/08/25(月) 10:42:51








    「あれ?木曾ちゃんは…?」

    いつもなら遠征に行くはずの彼女の姿が見えず、不安になる。

    「あ、あの…!今日は電達がご一緒するのです。………その、嫌…だったのですか?」

    「あ、ううん!そんなことないよ!遠征頑張ろっか!」

    「はいなのです!」

    自分の発言で駆逐艦の子達を落ち込ませるわけにはいかない。軽く頬を叩いて気をしめなおした。







    「提督!遠征終了したよ!なんと大成功した…」

    「…っ!?」

    「那珂…?」

    提督の所へ行くと、隣には木曾ちゃんがいた。マントを羽織り、スカートはプリーツスカートになっている。

    いつの間に、改二に…?

    「……那珂…これは………」

    「……!」

    言い訳なんて聞きたくない。そんな思いでいっぱいになって、部屋を飛び出す。

    「那珂!」

    後ろから木曾ちゃんの声が聞こえる。嫌だ、嫌だ、嫌だ。その続きは言わないで。

    差を、感じてしまうから。




    「…………」

    見てしまった。木曾ちゃんの首元にある物。

    知りたくなかった。知らない方が良かった。

    それに、木曾ちゃんのいたあの位置………

    木曾ちゃん、秘書艦になったんだ…

    「馬鹿……」

    辛い時は、側にいるって言ったのに。

    嘘つき。







    カーン…カーン…

    「…?」

    ここ…どこだ?

    部屋でもないし、なんだか嫌な音が響いている。

    目を凝らすと、那珂の後ろ姿が見えた。

    「那珂…?」

    名前を呼んだ途端、那珂が振り返る。

    「嘘つき」

    「側にいるって、言ったのに……」

    「また明日も遠征頑張ろう、って言ったのに…」


    「…違っ!」

    「クマァー!?」

    ……あれ?さっきまでのは……夢か?

    「木曾!いきなり叫ばないでほしいクマー!」

    「…あ、ごめん……」

    「まー許してあげなよ球磨姉。木曾だってわざとじゃないんだしさ。」

    「…わかったキソ」

    おいこら語尾。なんだよキソって。俺は動物じゃねえよ。

    「木曾、汗かいてるにゃ。大丈夫かにゃ?」

    「ん、大丈夫…」

    「顔色悪いみたいだけど…今日は休んだら?私が提督に言ってくるわよ?」

    そういって姉ちゃんは魚雷を撃つ真似をする。正直冗談で済みそうにないからやめてほしい。

    「本当に大丈夫だから…行って来る。」

    「ん~…気をつけてね~」





    「よっ」

    「あ、木曾。腹減った」

    「またか…お前はそろそろ自分で作れるようになったらどうだ?」

    こいつも一応「提督」という立場の為、正直それ位はできる気がする。

    「ま、とりあえずカレー作って来るから待ってろ。」

    「ん。ありがとな。」

    俺が部屋を出た後、大淀さんとすれちがった。何かあるのだろうか…?

    「提督。」

    「ん?大淀か。どうした?」



    「艦隊規模が大きくなり過ぎたので、不要な艦を2隻処分してください」
  4. 4 : : 2014/08/27(水) 00:55:29










    「なあ、お前はそろそろ真面目に仕事したらどうだ?」

    「そんなこと言われてもな…今は木曾の作ってくれたカレー食べるので忙しい…あと5時間待て。」

    「……」

    「待て、俺が悪かった。だから無言で人指し指を向けるのはやめてくれ。目潰ししようとするな。」

    目潰しが駄目なら今度は魚雷でも撃ってみるか…

    そんな事を考えていると、書類の束が視界に入った。

    「お前…こんなに仕事を放置して…」

    半ば呆れながらも、いつもの癖で書類を手に取る。

    「さりげなく仕事を手伝ってくれる木曾はやっぱり優しいな。」

    「………」

    あまり優しいとは言われ慣れてないためか、少し顔が赤くなるのが自分でも分かる。

    兎に角柄にもなく照れているのがばれないように視線を書類に移す。

    「……ん。何々……『艦隊規模が大きくなり過ぎたので…』……え?」

    書類の下の方には「那珂」という文字に赤いペンで丸印が付けられている。

    これがどんな意味を示しているのか位、俺にも分かった。

    「……那珂っ……!」

    一歩一歩が遅く感じる中、書類を片手に部屋を飛び出す。

    後ろからあいつの驚いたような声が聞こえるが、そんなことに一々構っていられない。

    早く、行かないと………








    カーン…カーン……

    嫌な音が聞こえる。慌てて資材を確認しに行くと、時間で増える量とは別に、燃料が2、弾薬が4、鋼材が11増えている。

    『それじゃあ那珂ちゃんの持ち歌、【恋の2-4-11】いっきまーす!』

    いつも那珂が歌っていた歌。

    なんでそんな曲名なのかがよく分からなくて、一回本人に確認した時がある。

    『実は、さ…初期装備を付けたまま解体した時に増える資材の量、なんだ……』

    那珂は困ったように笑って答えていたが、あの時の声は震えていた。

    「那珂……?」

    遅かった。

    あと少し、早く着いていれば。

    カレーを作る時、考え事をしていなければ。

    救えたかも、しれないのに。

    「ばか……」

    また那珂と遠征に行きたかった。

    二人で笑い合って話をしたかった。

    こんなことになるなら、もっと話したりするべきだった。

    「俺の…馬鹿………」
  5. 5 : : 2014/08/27(水) 01:13:15





    部屋に着くと、姉ちゃん達が急にこっちに来た。

    「木曾!那珂から手紙だクマー」

    「一体何があったのさ~」

    「アイドルは誰のものにもならないにゃ?」

    「時と場合によるんじゃないかしら。」

    姉ちゃん達は何故か盛り上がっているが、構わずにありがとう、とだけ言って手紙を受けとる。

    「で、どんな内容なの?」

    北上姉が便箋を見て言う。

    「ごめん……姉ちゃん…」

    「今は…………一人にしてくれないか…」

    「………わかったクマ。」

    「皆!間宮アイス食べに行くクマ!」

    球磨姉の後ろから皆がついていく。

    部屋から出ていったのを確認すると、手紙に視線を落とす。

    『木曾ちゃんへ

    えへへ…解体される事になっちゃった…

    遠征、頑張ったつもりだったんだけどなあ…

    やっぱり那珂ちゃんじゃ提督の役に立てなかったのかな?

    あ、湿っぽい話してごめんね。



    解体されても、きっとまた木曾ちゃんと会えるって信じてるから。

    だから、その時までにこの鎮守府で一番の艦娘になってね。

    那珂より』


    「馬鹿野郎…」

    視界がぼやけてあまりよく見えない。

    温かい物が頬を伝う感触がして、ふと手をあてると、濡れているのがわかった。

    「一番には、お前しかなれねえんだよ……」

    「馬鹿野郎……馬鹿野郎…」

    涙が落ちる。








    いつかまた、那珂に会える事を夢見て。


    俺は今日も戦い続ける。
  6. 6 : : 2014/11/13(木) 21:56:53
    バカヤロウもう解体できないじゃねーかww

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