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アニ「水面にたゆたう月の様に」ハンジ

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  1. 1 : : 2014/08/16(土) 20:32:37
    アニ「水面にたゆたう月の様に」ハンジ

    まだ少女であるアニが背負った宿命

    調査兵団という立場で彼女を追うハンジ

    何が正義で、何が悪か

    二人の決意と葛藤を、私から二人へ、あたうる限りの愛を込めて、書きます

    シリアス、ネタバレは単行本

    アニメDVD

    よろしくお願いいたします
  2. 2 : : 2014/08/16(土) 20:32:59
    憲兵団に配属されてから、日々任務に明け暮れていた

    思った以上に腐っていた、エリート集団

    立場が上に行けば行くほど、腐るのだ

    昼間から酒にギャンブル
    娯楽に明け暮れて、馬鹿みたいな上官達

    人間って、何なんだろうね

    辛く厳しい訓練兵を、やっとの思いで卒業して、待っているのは堕落した組織

    長く壁の中で燻っていた人間たちの世界は腐りきっと、膿がたまっているんだろう

    外に目を向けようとはしない、シーナ内地の人々、憲兵団組織、王政府…

    私は…自らに課せられた使命のために、ここにいる

    上官が腐っていようが、関係ない

    ただ与えられた使命と、任務を淡々とこなすだけ

    来るべき日が、来るまでは…
  3. 3 : : 2014/08/16(土) 22:52:42
    今日も腐った上官に言い付けられて、任務に出向く

    でも少し、気分がいい

    今日の任務は、シーナ内地突端地区であるストヘス区の、幼稚舎の遠足の護衛

    内地での遠足に、護衛が必要だとは思えないけど…最近は内地だろうが治安が良くない

    貴族の子女が通う幼稚舎にとって、万が一があってはならない

    そこで、憲兵の出番だ

    憲兵さえいれば、そうそう悪人も手を出してはこない

    私は子どもが好きだ
    だって、純粋で無垢だから

    見ていると、心が和む
    少しだけど、重い心が軽くなる気がする


    私が成さなければならない事の重み

    押し潰されそうになりながら、それでも成し遂げなければならない

    私には選択肢が無い

    やらなければならない

    例えどんな犠牲を払っても

  4. 4 : : 2014/08/16(土) 23:17:40
    ***

    エレンという、知性を持った巨人になれる存在

    彼の力で、人類は初めて巨人から領土を奪い返した

    彼は人類の希望の光

    調査兵団では、皆の意見がそこに集約されていた

    彼を守る事が全て

    彼の巨人化を調べる事が、必ず未来に繋がる架け橋となる

    私たちはそう信じて、日々研究に、任務に、作戦立案に明け暮れていた


    そんな折、調査兵団本部の中庭に住んでいた…ソニーとビーンが、何者かの手によって、うなじを削がれて殺された

    私はショックに打ちひしがれていた

    何故なら、まだまだ彼らと共に過ごしたかったから

    彼らから、なんらかのヒントを…巨人の秘密を…知ることが出来たかもしれないから

    そして、私は彼らの瞳が、私に何かを訴えているように、見えたから

    私はそれを理解したかった

    周りには理解されなくても…
  5. 6 : : 2014/08/16(土) 23:44:41
    「分隊長…今日はもう遅いです。お休み下さい」

    ソニーとビーンの死について、時間を忘れて思考を巡らせていると、心配そうな声が、背後からかかった

    私が振り返ると、言葉通り心配そうな表情をしたモブリットが、そこにいた

    彼はずっと、私の後ろに立って、まるで空気の様に控えていた

    「ああ、もう少し…彼らの死を無駄にはしたくないんだ」

    私はそう言うと、また視線を机に向けた

    「分隊長…」
    モブリットがため息をついたのはわかった

    彼は心配性だ

    二、三日寝なくても、人は死なないのに

    寝ろ寝ろと言ってくる

    「君は寝なきゃだめだよ、モブリット」
    私は振り向きもせずに言葉を発した

    「分隊長、まだショックは癒えませんか…」

    モブリットの言葉に、私は立ち上がって、彼の顔に矢のような視線をあてた

    「癒えるわけないだろ…?君は飼い犬が殺されたら、二三日で心が癒えるかい?子どもが死んだら、二三日で心が軽くなるかい?想像してみなよ。君はわかってない…」

    私は嘆息をもらした

    「分隊長…これを」

    そんな私に、モブリットが二枚の紙を手渡した

    私はそれを見て、目を見開いた

    「…モブリット、君は…」

    「すみません、俺にはやっぱり、分隊長の気持ちが理解できません…しかし、これくらいなら、俺にも出来ますから」

    私は彼のその言葉に、目を伏せた

    彼が私に渡した紙には、ソニーとビーンの似顔絵が描かれていた

    瞳の表情をそのままに…まるで今にも動き出しそうな絵だった

    「ねえモブリット。この子達の目は…何かを訴えているように、見えないかい?」

    私の絞り出すような言葉に、モブリットは首を振る

    「すみません…恐ろしいが先について、そこまで観察するに至りませんでした」

    素直な言葉だ

    モブリットは私の無茶を止めるのに精一杯なのだから、ソニーとビーンが何かを訴えているなど、考えている余地など無かったはずなのだから

    「モブリット、ありがとう。君の気持ち、ソニーとビーンも喜んでいるよ、きっと」

    私は彼に、笑顔を見せた

    ソニーとビーンが死んで以来の、笑顔だった
  6. 8 : : 2014/08/17(日) 08:10:25
    「モブリット…知ってるかい?エルヴィンが、あの現場で…若い子達にいろいろ聞いて回っていたのを」

    私の問いに、モブリットは頷いた

    「はい、君には何が見える?敵はなんだと思う?と聞かれました」

    「そうらしいね…私もその時は冷静じゃなかったから考えが至らなかったけど…あれもエルヴィンの作戦なのかな」

    私の言葉を耳にして、モブリットはまた頷く

    「はい、そうだと思います。考えている内容までは俺にはわかりませんが」

    「…ちなみに、君は答えられたの?」
    私はモブリットの目をじっと見詰めて言った

    モブリットは、その真っ直ぐな眼差しを、しっかり受け止める

    「はい。敵は兵士の中にいると、答えました。巨人を殺した犯人は、我々に巨人について知ってほしくない相手が送り込んだ、スパイではないかと…」

    モブリットの言葉に、私はまた笑顔を見せ、そして彼の頭をがしがしと撫でた

    「さすがはモブリット。私が何も言わなくても、分かっているんだね、偉い偉い」

    「…分隊長、俺を子ども扱いはお止め下さい。それに、それくらいはわかりますよ」

    モブリットは頭を撫でられながら、顔をしかめた

    私は楽しくなって、はははは、と笑う

    「いやあすまないね。可愛い部下だからついつい…そうだよね、君にも、わかるよね。だって…長い間一緒に闘っているんだから…」

    「…可愛い…?」
    モブリットはますます顔を歪ませた

    「あら?なんか不満かい?モブリット」
    私はおもむろに、モブリットの頬をつまんで引っ張った

    「いたっ!!分隊長、俺をストレスの捌け口にするのはお止め下さい!!」

    「あっ、ばれた!!だって面白いんだもん…ははは、変な顔!」

    「ぶっ分隊長!!」

    この子はわかっている
    わざわざ伝えなくても、私の考えにちゃんと着いてきてくれる

    そんな存在が、私に前進する勇気をくれていた

    「ねえモブリット…。まだまだ、先は真っ暗だね」

    「はい、ですが…着実に前進しているように感じます。我々が前に進むことを諦めない限り、希望はあります」

    モブリットの力強い言葉に、私は彼がたいまつの様な存在だとふと思う

    目立つ光ではない、目立つ行動をするわけではない、だが、闇を歩くには必ず必要な物

    真っ暗闇を照らす光、時には道を知らせてくれる、地味だが確かに有用な、暖かい存在だと…



  7. 9 : : 2014/08/17(日) 09:20:46
    ***

    「ほらほらチビちゃんたち~そっちはだめだよ~こっちこっち!!」

    私は園児達のトイレの見張りをしながら、ちらりと同僚を見た

    朝は散々、ガキの世話なんか嫌だと喚いていたはずのヒッチは、一転、可愛らしい声で園児達の世話をやいていた

    楽しそうに顔を綻ばせて

    彼女は同室で、任務も一緒になる事が多いが、憎まれ口を聞きながらも、きちんとする時はする、愛すべき人柄だ

    今も、とても楽しそうだ

    私もいつもの任務よりは、数倍楽しい

    子どもの笑顔は眩しい

    私の子どもの頃は…こんなにあどけない笑顔を見せていたのだろうか

    記憶にまったく、無かった

    この眩しい笑顔を、私はこの手で、踏みにじる時が来るのかもしれない

    望む望まざるは関係ない

    やれと言われれば、やらなければならない

    子ども達の笑顔を眺めながら、きりきりと音を立てる様に痛む胸を、押さえた
  8. 10 : : 2014/08/17(日) 12:09:38
    「…お姉ちゃん、大丈夫?痛いの?」
    突然、兵服の裾を引っ張る感覚で、私は我に返る

    視線を声の方に移動させると、小さな男の子が、私をじっと見詰めていた…心配そうな顔をして

    「…大丈夫、何ともないよ」

    私はヒッチの様に笑顔を見せようとして、失敗した

    多分かなり不自然な笑顔になったと思う

    私の顔を見ていた少年は、案の定少し驚いたように、目を見開いた

    「でも、顔が…元気なさそうだよ。憲兵さん」

    尚も心配そうに、私の顔を覗く少年に、私はそっと手を伸ばす

    「大丈夫だよ。少し、喉が乾いただけ」
    そう言って、少年の頭を撫でた

    「喉が乾いたのか!!水、持ってきてあげるね、憲兵さん!!」

    「水は持ってるよ…あっ…」
    少年は、私の言葉を聞く前に、駆け出してしまった

    しばらくすると、少年が、水をなみなみと注いだコップをゆっくり運んできた

    溢さないように、細心の注意を払いながら

    その真剣な姿が可愛らしくて、私は自然に笑顔になった
  9. 13 : : 2014/08/17(日) 22:03:10
    「お姉ちゃんも、一緒に遊ぼうよ!!」
    男の子はそう言って、私の手をにぎりしめた

    そして、ぐいぐい園児達の輪の中に入っていく

    「わー、憲兵のお姉ちゃん遊ぼう!!」

    「僕とも遊んでよ~」

    あっという間に子ども達に群がってこられて、私は思わず面食らう

    だけど、子ども達はきらきらした表情を見ていると、重くのし掛かる現実を、一時だが忘れる事が出来た

    私は群がる子ども達と、視線を合わせるべく跪く

    「いいよ、何して遊ぶ?」

    私の言葉に、子ども達はわいわい騒ぎ出す

    鬼ごっこ、かくれんぼ、縄跳び…

    子ども達と戯れていると、故郷を思い出す

    訓練に日々明け暮れながらも、里の子ども達の世話をやいていた事を

    父親との訓練ばかりの日常で、唯一の楽しみだといえた、幼い子達との交流を…

    「アニ、あんたも来たの?縄跳びの端を持って、一緒に回してよ!!」

    その時、ヒッチが突然私に縄跳びを渡した

    長い縄の両端を私たちが持って、ぐるぐると回していく

    そこに、タイミングを見計らって子ども達が入っていく

    子ども達は歓声をあげながら、皆で仲良く遊んだ

    あどけなく、純粋で無垢な笑顔

    心が拒絶をしても、私はやり遂げなければならない

    この純粋で無垢な笑顔を、壊す悪魔になったとしても…


  10. 14 : : 2014/08/17(日) 22:28:35
    その日の夜

    「はぁ~ガキんちょの世話疲れたよね~。あんたは何だかんだで楽しそうだったけどさあ」

    ヒッチがベッドに突っ伏しながら、ため息混じりに呟いた

    私もベッドに腰をかけ、ヒッチにちらりと視線を向ける

    「あんたも…楽しそうだったけど?」
    私がそう言葉を発すると、ヒッチが首を振った

    「楽しいわけないでしょ!?営業用スマイルってやつだよ。あそこの園児達は皆、貴族や有力商人の子だよ?コネを作るにこした事無いし」

    「…そう」
    私は興味無さげに頷いた

    すると、ヒッチがキッと私を睨み付ける

    「あんたはいつもそうやって、まともに私の話に受け答えしないでしょ!?失礼な奴~!少しくらい会話を盛り上げてよね!?自分の事もなにも言わないしさあ!!」

    ヒッチは私にそう言うと、不満そうに口を尖らせた

    私はまた、ちらりと彼女に視線を送る

    「…ごめん、そんなつもり無かったよ。でも、ヒッチが笑っていたのは…可愛いと思ったよ」

    私が小さい声で言った言葉に、ヒッチは目を丸くした

    「な、なんだよ急に、可愛いとか言わないでよね!?ばーか!!」

    憎まれ口を叩きながらも、ヒッチの頬はほんのり赤く染まっていた

    私があんな役割を担っていなかったら

    彼女と同じ、ただの人だったら…

    彼女に何でも話せたかもしれない

    彼女と本当の友達になれたかもしれない

    でも今の私には、それを望むことは、不可能だった

  11. 18 : : 2014/08/18(月) 09:52:35
    ***

    「モブリット、次の壁外遠征は…何時も以上に沢山、犠牲が出そう…だよね」

    エルヴィンの部屋での幹部会議から戻って早々、私は執務机にどさっと腰を下ろし、ため息をついた

    「そうですね。何せ配属して一月の新兵を作戦に加えるというのですから…彼らは、策敵陣形を機能させるだけで、精一杯な状態でしょうし…」

    モブリットは、不安げな表情を見せていた

    「エルヴィンは、あの新兵加入前の演説から、仕組んでいたんだよね…本当に、食えない、恐ろしい男だよ。敵に回せばね」

    「裏切り者の、あぶり出し…ですか。そうですね…。今回の作戦も、それに通づる物でもありますしね」

    幹部会議で話された事は、最重要機密で、箝口令が敷かれていた

    スパイには成り得ない、真に信頼できる兵士達だけに、その作戦の真意が伝えられた

    兵士達の中に裏切り者がいる

    ソニーとビーンを殺した犯人がいる

    エルヴィンの構想は、過去に遡る

    五年前、シガンシナ区を巨人に蹂躙された時、特別な巨人が、シガンシナ区の外壁と内壁を、続けざまに破壊し、ウォールマリアはいとも容易く突破された

    そして、つい先にあったトロスト区襲撃も、トロスト区外壁は壊された物の、内壁は壊される事はなかった

    それは非常に不自然な事であった

    巨人はウォールローゼを突破する事を目的としているのであれば、シガンシナの時と同様、特別な巨人が外壁に続いて内壁もすぐさま破壊するはずだからだ

    外壁を破壊した後に、何らかの重大な事があり、巨人側が作戦を変えざるを得なかったとしか、考えられなかった

    そのタイミングで起こった重大な事…それが、エレンの巨人化だった

    エルヴィンは、巨人側がエレンを狙っているのではないかと推測した

    今回の作戦は、エレンを囮に、特別な巨人を捕獲するという大胆な物だった

    作戦内容が内容だけに、信頼できる兵以外には、ただの遠征だとしか伝えられなかったのであった

    そして、その信頼できる兵の中に、ハンジとモブリットも入っていたのであった
  12. 22 : : 2014/08/18(月) 16:05:47
    「団長が、犠牲を払ってでもやらなければならないとお考えならば…我々はそれに従うしかありません。何せ、今回の遠征で何らかの成果を挙げなければ、調査兵団自体の存続が、危うくなりますからね…」

    モブリットの言葉に、私は頷く

    「そうだよね…。しかし、何かさ…私たちっていっつも崖っぷちにいる様な気がするよ。君はそう思わない?」

    私はそう言って、ため息をついた

    我々調査兵団は、人類のために巨人の領域に赴き、危険を省みず戦い、巨人に対して、何らかの突破口を得ようと動いていた

    それなのに、世論も王政府も、調査兵団を存続の危機に立たせたい様にしかみえない

    いったい何故なのか…私には理解できなかった

    「崖っぷちは…我々だけではありません。人類全てが、崖っぷちに立たされているのではないでしょうか。差し当たり、我々が非難の矢面に立たされているだけで…」

    「ああ、我々に注目させているだけなのかもしれないね。そして…人々は目を瞑っているんだ…いつ巨人どもに蹂躙されるか分からない不安から…壁外から…」

    私はふぅ、と息をついた

    私の進む道が正しいのかはわからない

    だが、平和に暮らせる世界にするために、私は諦めずに進みたい

    子ども達が子どもらしく、元気に、なんの不安もなく、過ごしていける世界にするために…

    そのためにはまず、巨人を知らねばならない

    特別な巨人を捕獲して、情報を得なければならない

    エレンも特別な巨人ではあるが、彼は覚醒したばかりで、何もわからないみたいであった

    エレンが我々の、最初で最後の切り札なのかもしれないなと、私はふと思った


  13. 23 : : 2014/08/18(月) 18:25:12
    「私達には、与えられた重要な役割があるね。明日からは文字通り奔走…しなきゃだよ、モブリット」

    私はエルヴィンから指示された物が記された書を、兵服の内ポケットから取り出しながら言った

    「はい。捕獲用機材の事ですね。責任重大ですが…頑張らなければいけませんね」

    モブリットはそう言うと、力強く頷いた

    私はそんな、頼もしい副官の頭をがしがしと撫でる

    「偉いぞ、モブリット。あとはエレンの研究もしなくちゃね。ほんと、寝る暇がまた無いよ…」

    私がふぅと息をつくと、モブリットは首をブンブン振った

    「寝る暇はあります。作ります。ですからきちんと寝て下さい、分隊長」

    「えー、寝る時間が惜しいんだけどなあ…」
    私は頬を膨らませた

    するとモブリットは、真剣な眼差しを私に向けて、静かに言葉を発する

    「きちんと睡眠をとらなければ、いいアイデアも浮かびませんよ。頭が死んでしまいます。肌にも良くないですし…今日はもうおやすみ下さい」

    「肌って…まあいいか。わかったよ、今日は寝よう」

    「毎日寝て下さい、分隊長」

    諭す様に言ってくるモブリットに、私は苦笑する

    「はいはい、わかりました」

    「いい返事とは言いがたいですが…よろしくお願いしますね」

    モブリットは肩を竦めてそう言ったのだった
  14. 24 : : 2014/08/18(月) 22:43:47
    「君も…今日はもう休みなよ?」

    私はモブリットに、半強制的に寝間着に着替えさせられ、ベッドに押し込められた後、布団から顔を出してそう言った

    「はい、もう休みます。あなたが寝たのを確認したら…」

    モブリットは、ベッドから少し離れた位置に立って、静かな口調で言った

    「えっ!?何だよそれ…」
    私は副官の言葉に狼狽える

    「先日ベッドに入られたのを確認したはずでしたのに、結局次の日まで起きていらっしゃいましたよね。今日は寝て頂かないと、明日からの任務に差し支えますから」

    モブリットは、労るような眼差しを私に向けていた

    「寝るまでそこで突っ立って見張ってるの?余計に眠れないよ、モブリット」

    私は口を尖らせた

    じっと見られてて眠れるわけないじゃないか…

    「余計に眠れませんか…それは…」
    モブリットは口ごもった

    「モブリット、もしかして人肌でも恋しいの?こっちで一緒に寝るかい?」

    私は何となく意地悪を言いたくなって、そう口走った

    するとモブリットは、真剣な眼差しを私に向けて、静かに言葉を発する

    「からかわないで下さい、分隊長」

    「……ごめんモブリット。こっちに来て、寝るまで見張ってて?手…繋いで…」

    私が布団の端から手を出してひらひらさせると、モブリットはベッドの側の椅子に腰を下ろして、私の手を握った

    「これで、いいですか?分隊長」
    少し鼻に掛かる低い声が、優しげな声色で、言葉を紡ぎだす

    彼の、包み込む様な温かく柔らかな眼差しと、声とが相まって、私の心をほぐして行く

    自然に瞼が落ちた

    「ああ、ありがとう。おやすみ、モブリット…」

    「おやすみなさい、分隊長…」

    束の間の休息

    少しくらいは、甘えてもいいよね…

    明日からはまた必死で、運命に、抗い続ける日々が続くのだから
  15. 29 : : 2014/08/19(火) 14:03:08
    ***

    憲兵団での生活は、刺激があるものではないけど、悪いものでもなかった

    同室のヒッチは、毒のある言葉ばかり言っているみたいだけど、本当は良く気の付く、女の子らしい子だ

    人に甘えるのが上手い
    いい男が好き
    お洒落が好き
    普通の、年頃の女の子だ

    私は彼女とは正反対だ

    人に甘えるなんて、やり方がわからない
    男の事を考える余裕がない
    お洒落なんかしない

    …ただ、お気に入りのパーカーだけは、拘りを持っていた

    ヒッチに言わせると、パーカーなんてお洒落のうちに入らないらしいけど

    同室になってからしばらくは、非番の度に外出に誘われていたけど、行けなかった

    非番は非番で、私にはやる事があった

    あちら側と、連絡をとらなければいけない

    与えられた役目を果たすために

    本当は…彼女と一緒に、出かけたかった
    例えそれが、一時だけの友情であったとしても

    そして今日も、私の元に密書が届く

    次回の調査兵団の壁外遠征に、新兵が投入されるという

    ついに、私の出番がやってきた

    私に与えられた役目…エレンの拉致

    これがすめば、私は帰る事が出来る

    壁の外へ…故郷へ

    どんな犠牲を払っても、やり遂げなければならない

    胸の痛みは、気のせいに違いない

    唇をぐっと噛んで、堪えるしかない

  16. 30 : : 2014/08/19(火) 16:03:09
    故郷へ帰りたいという気持ちは、他のどの欲求よりも深い

    私はただそれだけのために、必死で生きてきた

    ここには、私を本当に理解してくれる人はいない

    私を唯一愛してくれた、父はいない

    幼い頃はよく、手を繋いでくれた父
    肩車をしてくれた父

    だけど、そんな平和な日常は唐突に終わりを告げた

    人が変わった様に、私に厳しく武芸を仕込むようになった父

    優しかった父は、訓練中もそれ以外も、私に厳しく接した…小さかった私には、そんな父が鬼の様に見えた

    泣いても叫んでも、父は訓練の手を抜きはしない
    むしろ貧弱だと罵られ、蹴りあげられた

    それでも私は、父を愛していた

    父は私を愛せなくなったのかもしれないと、心の中で思いながらも

    それが杞憂だったと知るのは、父との別れ際だった

    間違っていたと、私に泣きついてきた父

    全てが、私の敵になっても、自分だけはずっと味方でいると言ってくれた父

    私は、戦い方など知りたくなかった

    ただ普通に生きたかった…でももうそれは叶わない

    それならせめて、父が叩き込んでくれた力で、目的を果たし、故郷へ帰ろう

    私はそう心に決めていた
  17. 31 : : 2014/08/19(火) 17:15:13
    「ねえ、前から思ってたんだけどさあ…その指輪、いつもしてるよねえ。勤務中もさあ。誰かに貰ったの?」

    一日の終わり、ベッドに寝そべりながら、ヒッチが聞いてきた

    私はというと…散らかった部屋の片付けをしていた

    とはいえ、今日片付けても、また一日たてば部屋は大暴れ…ヒッチは散らかす名人らしい

    放っておくと、ごみ箱の様な部屋になるから、定期的に掃除と片付けをしていた

    …こういう所は、私の方が女らしいのか、それともヒッチが酷すぎて私が普通なのか…

    ともあれ、質問に答えなければ、また機嫌を悪くする

    私は彼女に数日後、重大な借りを作らなければならない

    だから、ここは迅速に答えておく
    「これかい?自分で買ったんだ。誰かに貰ったんじゃないよ」

    私は肩を竦めてそう言った

    「そっかあ!!あんた結構美人だからさ、もてると思うし、誰かに貰ったのかなってね。しっかし、自分で買うにしても、無骨な指輪だね、それ。変な趣味」

    「よく言われるよ。趣味が悪いって」

    私はヒッチにちらりと視線をやりながら、小さな声で言った

    「まあ、センスは無いね~。美人のくせに愛想はないし…。にこにこしてれば、そんな指輪よりもっと素敵で、高価な指輪貢いでくれる男なんて、山ほどいるのにさあ…」

    ヒッチがため息を漏らした

    「そういうのは、ヒッチに任せるよ。私は笑い方知らないし…」

    私の言葉に、ヒッチが人差し指でびしっと私を指差して、口を開く

    「ちょっと!笑い方知らないって嘘つくなよ!?幼稚舎のガキ相手に笑ってたじゃん?あれを男にやればいいんだよ」

    ヒッチはふん、と鼻を鳴らした

    「笑ってた?…私」

    「何ぼけてんの!?笑ってたよ。いいもん持ってるんだから、使えよな~」

    ヒッチの言葉に、私は頷く

    「ああ、機会があったらそうするよ」
    …そんな機会は、もう私には与えられはしないだろうけどね…
  18. 32 : : 2014/08/19(火) 17:53:33
    ***

    エルヴィンから作戦を言い渡されてから二週間、私たちはエレンの巨人化実験に、捕獲用機材の作成に奔走した

    結果、捕獲用機材に関しては想像通りの物が出来て、徹夜をした甲斐があった

    エレンに関しては、こちらもいろいろと解った事があった

    巨人化の方法が、掴めてきたのだ

    当初は自傷行為が引き金となるとおもわれていたのだが、それは違った

    それだけでは巨人化しなかったのだ

    エレンが初めて巨人化した時には、巨人の胃袋の中だったと言う

    二回目は、アルミンとミカサを砲撃から守るため

    三回目は、岩で扉に空いた穴を塞ぐため

    そして、実験では、なんど手を噛みきっても巨人化しなかったのに、ふとした行動で、手だけが巨人化した

    あれは、興奮するしかない状況だった

    エレンは、落としたティースプーンを拾うという行動で巨人化したのだ

    巨人化するには、自傷行為プラス、本人の意思が必要だと結論付けた

    これで、エレンを壁外へ連れていき、万が一何かがあったら、自ら巨人化して戦う術を持てる事になった


  19. 33 : : 2014/08/19(火) 18:30:44
    「うん。滾る報告書が出来たねえ、へっへっへ」
    私は満足げに、分厚い実験報告書を捲りながら言った

    「分隊長、顔がこわいです…はぁ…」

    「失礼だな、君は!!」

    私は、ため息混じりに人の顔にけちをつけるモブリットに、鋭い視線を向けた

    「笑い方も怪しいですし…実に素直な感想なんですが…。とにかく良かったです。何とか壁外遠征に間に合ったようで…」

    モブリットはこめかみを指で押さえながら、呟くように言った

    日に日に元気を無くしているモブリット

    当たり前だ、三日寝てない

    わたしも同じ状況で、約72時間彼と行動を共にしていたが…勿論トイレ以外

    私はある種の興奮状態のためなのか、アドレナリンが大量に分泌されて、疲れを感じない

    彼は普通の状態で私に付き合っているのだから、元気を無くして当然だ

    それでも、実験中は疲れを見せない…立派な副官だ

    「君もよく頑張ってくれたね、モブリット。ご褒美だ、一緒に寝よう」

    私がそう言って手を差しのべると、モブリットは心底迷惑そうな顔をする

    「こんなに疲れている時に、更に疲れさせる冗談はお止めください、分隊長…はぁ…」

    どうしてこの人はこうなんだ…とでも言いたげな様子で、モブリットはまたため息をついた

    「冗談じゃないよ?ほらほら」

    私はベッドに腰を下ろして、手をひらひらと誘うように動かす

    するとモブリットは、あろう事か、巨人の似顔絵ファイルを私に投げつけてきた

    「巨人がお好きなんですから、彼らと寝て下さい!!俺は一人でゆっくり寝ますから!!」
    モブリットはそう言い捨てて、くるりと踵を返した

    「モブリット、私は巨人が好きだけど、一緒に寝るのは人がいいよ!!」
    私は彼の後ろ姿に向かって、そう叫んだ

    すると、部屋の扉のノブに手を掛けた彼の動きが、ピタッと止まった

    しばらくすると、モブリットの声が、微かに私の耳に届く

    「ならば、もう少し疲れていない時…せめて一徹目くらいの時に、誘って下さい、分隊長…」

    振り返りもせずにそう言うと、モブリットは部屋を出ていった

    肩を落としながら部屋を出たモブリットの後ろ姿に、私は

    「今日は本気で誘ったんだけどなあ…」
    と、独りごちたのであった
  20. 36 : : 2014/08/19(火) 23:03:34
    「ふぅ…壁外遠征かあ…巨人は、エレンに釣られて出てくるのかなぁ…」

    モブリットが部屋を出て行ってから、何となく手持ちぶさたになった私は、ベッドに寝転がって、思案に暮れた

    エレンの様な人が巨人になる事象に遭遇し、私にはある考えが頭に浮かんでいた

    もしかして、巨人は人なのではないかという事だ

    何らかの要因で、人が巨人になったのか、それが事実なのかもまだわからない

    ただ、そう考えると、巨人の質量が見た目よりもあり得ないほど軽い事との辻褄があうのだ

    その考えは、想像すると恐ろしい

    私たちは、巨人を倒していると思いながら、実は人を殺しているのかもしれない

    エルヴィンも、その考えを持っているのではないかと、私は思った

    その理由は、エルヴィン自身が考案した長距離策敵陣形だ

    あれは、巨人との戦いをなるべく避け、より遠くへ安全に遠征が出来るようにと考えられたものだ

    だが、見方を返ると、巨人を出来るだけ『倒したくない』から、考案したのではないか?

    …いや、さすがにそれは考えすぎか…

    ただ、私が考え付いている事には、エルヴィンは考え及んでいる事が常だ

    また、何らかの確証が得られたなら、話し合う必要があるだろう

    今はまだ、自分の考えとして、胸に留めておくつもりだ

    「モブリットに話してみるかな…。しかし、怒ってるんだろうなあ…」
    顔も見ずに部屋を出ていった副官に、ふと思いを馳せて、苦笑した

    「おっと…今日は寝よう…またモブリットに怒られるよ…」
    私はぼそっと呟いて、目を閉じた

    考えたいことは山ほどあるけど、今日の所は寝てあげる…モブリットに免じてね…
  21. 39 : : 2014/08/20(水) 09:50:51
    ***

    明日はついに第57回壁外遠征

    私が成さねばならない重要な事を実践する日

    今日はおあつらえ向きに、非番だった
    とは言え、何処に行く宛もない

    私は兵服を着用して、ベッドに座って待っていた

    ヒッチはシャワーを浴びている
    今日は彼女も非番だ

    彼女は非番の日には、念入りにシャワーをあび、可愛いワンピースに身を包み、化粧を施して、王都へ出掛ける

    私はそんな彼女に、どうしても頼みたい事があった

    シャワーから上がり、化粧台に腰を下ろす彼女に、鏡越しに声を掛ける

    「明日の区内巡回だけど、病欠ってことにしておいて貰えない?」

    「別にいいけどさ、なんで?」
    私の問いに、ヒッチは不思議そうな顔をして、首を傾げる

    私がサボりなど、今まで無かったからだと思う

    「ちょっとした野暮用があってね」

    「今日済ませればいいじゃん。非番なんだしさ」
    私の言葉に、ヒッチはますます首を傾げる

    「向こうにも都合ってものがあってね」
    私は肩を竦めた

    「じゃあ、ひとつ貸しってことで」

    ヒッチの言葉に、私は頷いた

    それから、男に会いに行くんだとかしつこく詮索されたけど、それとなくかわした

    そして、アリバイ作りの代わりに、ヒッチは自分の仕事…人探しを私に押し付けて出ていった

    ああ、今日は人探しで一日潰れるだろうな

    何もやることが無いよりも、何かやっている方が気が紛れるからいいんだけどね…
  22. 40 : : 2014/08/20(水) 10:09:35
    家出人探しは凄く手間が掛かった

    コデロインという、違法薬物がからんだ事件…だったのだ

    ただの家出ではなかった

    任務を一段落させて部屋に戻ると、ヒッチは幸せそうにすやすやと寝息を立てていた

    疲れた体に熱いシャワーを浴びせ、ベッドに潜り込む

    明日は朝早い

    もうここには戻らないかもしれない…成すべき事を成せば

    失敗すれば、また戻るのだが

    何としても、成功させる
    何としても、故郷へ帰る
    たとえどんなに犠牲を払っても…

    私はただ一人の理解者である父と、懐かしい故郷に思いを馳せて、涙をぐっと堪えて、ベッドに潜り込んだ

    私は、やるしかないんだ…
  23. 41 : : 2014/08/20(水) 10:42:56
    翌朝、まだ日が上っていない間に、私は壁外へ足を運ぶ

    エレンを拉致するために、先回りをするのだ

    巨人化し、暗闇の中を駆け抜ける

    手頃な巨大樹を見つけ、巨人化を解いてその枝に乗り、調査兵団が来るのを待つ

    夜が明ければ、彼らはやってくるはずだ

    私は辺りを気にしながら、遠くへ目を馳せる

    故郷はもっと先にある

    必ず帰る…エレンを連れて

    私は頷き、目を伏せた
  24. 42 : : 2014/08/20(水) 13:50:34
    しばらく待っていると、遥か向こう、ウォールローゼ方面から、調査兵団がこちらに向かってきているのが確認できた

    エレンは右翼側にいるらしい
    それは、仲間のライナーから情報を得ていた

    多分新兵は策敵には回されないだろう

    私はまずは右翼側策敵を狙って、そこからエレンがいるであろう、右翼支援の列に突っ込むつもりでいた

    兵団の右翼側に向かって走りながら、雄叫びを挙げる

    すると、辺りから多数の巨人が現れて、私を追い抜いて調査兵団に襲いかかって行く

    私はそれを横目で見ながら、更に陣形の内部に食い込む

    エレンはどこだ…ライナーの情報では、この辺りのはず…

    その時、私に二人の調査兵が襲いかかってきた

    一人は女性…なのか、髪が長い
    いや、男の様だ

    もう一人は白いバンダナをつけている、ベテラン兵らしい風貌だ

    二人は見事なコンビネーションを見せて、私を狩ろうとする

    素晴らしい技術…さすがは調査兵団

    でも…でも

    私はここで倒されるわけにはいかない

    華麗なワイヤーアクションで私の体に取りつき、飛んできた長髪の男の体を握りつぶす

    そして、項に狙いを定めてアンカーを出したバンダナの男のワイヤーを、引っ張り地面に叩きつけた

    『ごめん…なさい』
    私は思わず呟いた

    だけどここで止まれない

    エレンを探し、視線を移動させたその時、こちらを見ている兵がいた

    馬を二頭つれている

    新兵だ…あれがエレンか?
    フードを被っているからわからない…

    私は舌打ちをし、逃げる新兵を追った


  25. 43 : : 2014/08/20(水) 15:12:31
    その新兵らしき人物は、馬を一頭逃がした

    私はその隙をついて、その兵の行く手を遮るべく、足を踏みつける

    ズドン!!という音と共に、兵は落馬をして地面に転がった

    エレンなのか…?

    私はその兵か被るフードをそっと摘まんでめくった

    顔を確認する

    『アルミン…』

    彼はエレンではなかった

    恐怖に慄いていた

    私は立ち上がり、踵を返した

    アルミンには用はない…私が用があるのはエレンなんだから

    他の兵士のように、アルミンも殺すべきだと思ったが、どうしてもできなかった

    私はふう、と息を吐いて、また駆け出す

    最早何処にエレンがいるのかわからないが、しらみ潰しに当たるしかない

    そう思いながら、ただひたすら走り続ける

  26. 44 : : 2014/08/20(水) 15:26:48
    しばらくスピードを緩めて走っていると、後方からなにかが追ってきた

    フードを深く被った、三人の兵だ

    私の目的が何かを知っているのか

    三人は、時間差で私に攻撃を仕掛けてきた

    私は近付いてきていた兵の馬をつかんで、放り投げた

    乗っていた兵は落馬をする

    『 アルミン…』

    なるほど、三人で足止めしようとしているのか

    もう一人が、アルミンと叫びながら突っ込んでくる

    牽制に、拳を軽く振る

    兵はぎりぎりの所で避けた

    『これは、ジャン…』
    ジャンは隙だらけの状態で、私の背中にアンカーを射出する

    絶望的な顔で私を見ていた

    私は冷たい目を彼に向けた、その時

    「ジャン!!仇を取ってくれ!!右翼側で本当に死に急いでしまった、死に急ぎ野郎の仇だ!!」

    アルミンの叫びが、私の耳に飛び込んできた

    な、なんだって…
    死んだの…?もしや私が呼んだ巨人のせいか?

    「そいつに殺された!!僕の親友をこいつが踏み潰したんだ!!足の裏にこびりついてるのを見た!!」

    ま、まさかそんな事、ありえない

    踏み潰した覚えなんか…でも、もしかしたら気がつかないうちに…

    その時、私の項にアンカーが刺さる

    その主は、ライナー

    私は彼の動きを目で追った

    そして、徐に拳で彼の体をつかんで握りつぶす…ふりをした

    ライナーは、ブレードの刃で、私の手に文字を書いた

    そして、回転斬りで脱出していく

    私はその伝言をじっと見つめる

    『なるほど、中央後列か…』
    私はエレンの元へ、また駆け出した
  27. 45 : : 2014/08/20(水) 15:41:47
    私はただひたすら、エレンの影を追った

    エレンさえ手に入れれば、もう用はない…

    その目的のために、何人もの勇敢な調査兵を、文字通り踏みにじった

    圧倒的な力の差に、楽しくなりかけた自分に愕然とする

    家族がいたであろう、子どもがいたであろう、恋人がいたであろう、そんな人達を、殺したのに

    私は、私は…

    私ではなくなる様な感覚…戦士としての感覚に心を占拠されはじめている事に気が付く

    そうだ…それが本来の私だ

    血も涙もない戦士

    私は戦士なんだ

    鋭い目を前に向けて、また走り出す

    目の前に森が広がっている

    私は迷うことなく、森に侵入した
  28. 46 : : 2014/08/20(水) 15:59:22
    ***

    巨大樹の森

    この森はそう呼ばれていた

    各地に点在している巨大樹の森の中でも、ここは一際規模が大きい事で知られている

    「モブリット、ケイジ、機材のセッティングは大丈夫かい?」

    私の言葉に、彼らが頷く

    「はい、滞りなく完了しました、分隊長」
    ケイジはそう言うと、エルヴィンの元へ報告に向かった

    「分隊長…嫌な空気…ですね」
    モブリットは何かを感じ取ったのだろうか…

    情けない顔をして、背中をぶるっと震わせた

    「そうかい?私には森の新鮮な空気としか感じないけど。君はびびりすぎだよ。しゃんとしなさい!!」

    そう言って、ポーンと彼の背中を叩いた


    「は、はい、分隊長。すみません…」

    分かってる、モブリットが何故顔を青ざめさせているか

    目標を此処へおびき寄せるために、今も身を挺して戦っている部下達を思っているのだ

    どうやらソレは、右前方から陣形を崩しつつ進んで来ていたらしい

    女の型を成していたとの情報だ

    「モブリット、前を向きなさい。目を背けちゃいけないよ…身を挺して戦っている彼らの為にも、私たちは私たちの成すべき事をするんだ」

    私の言葉に、モブリットは目を見開き、やがて力強く頷いた

    「はい、分隊長」

    まだ、戦いの音は聞こえてこない

    女型が来るまで、私たちは息を潜めて、待つのみ

  29. 47 : : 2014/08/20(水) 16:28:13
    ***

    私の進路を邪魔する兵達を蹴散らしながら、突き進む

    私は戦士、もう迷わない

    どんな犠牲を払ってでも、エレンを奪って私は帰る

    しばらく突き進むと、目の前に六人の調査兵がいた

    その真ん中に、まるで守られているかの様に…エレンがいた

    『エレン!』
    私は思わず叫び、一層速度を上げる

    先頭を行く兵が、何やら叫びながら、振り向かずに逃げる

    エレンは時おり、こちらを伺っていた

    その間にも、横合いから調査兵が私の動きを封じるべく、アンカーを飛ばす

    私はそれを悉く蹴散らした

    エレンは仲間に何かを叫んでいるようだったが、それは聞き取れなかった

    私は、また速度を上げる

    エレンまであと少し、あと少しで手が届く…

    そんな矢先だった

    「撃て!!」

    怒号の様な声と共に、すさまじい音が響く

    そして私の体に、無数のワイヤーが四方から突き刺さった

    私は、身動きが取れなくなった
  30. 48 : : 2014/08/20(水) 16:40:26
    私は項を守りながら、体を必死で捻り、ワイヤーを外そうと試みた

    そんな私の腰の辺りに、更にワイヤーが、放たれる

    「これでどう?身じろぎ一つ出来ないよ。多分一生…」

    そんな愉しげにすら聞こえる声が、私の耳に届く

    冗談じゃない…私はこんなところで…

    私は項をしっかり守る

    何故なら、二人の手練れであろう兵士が、私の項目掛けて、何度も回転斬りを仕掛けてきていたからだ

    私は負けるわけにはいかない

    やつらの刃が無くなるのが先か
    私の硬化能力が無くなるのが先か…

    根比べの様相を挺してきた

    だが、私にはまだ、切り札があった

    いざという時のための、切り札が

  31. 49 : : 2014/08/20(水) 17:11:33
    しばらくすると、諦めたのだろうか…
    二人の兵士は、項への攻撃をやめた

    すると、何者かが私の頭の上で言葉を発する

    「オイ、いい加減出てきてくれないか?こっちはそんなに暇じゃないんだが」
    冷たく、ぞっとする様な声

    「お前は確か…色々なやり方で俺の部下を倒していたが、あれは楽しかったりするのか?」

    楽しい、そうだ、圧倒的な力でねじ伏せて、楽しかったんだ…そう言い聞かせる

    でもやっぱり…楽しくなんか、ない

    私は戦士には、なりきれない

    「そうだ、一つ聞きたいことがあった」

    私の感情の揺れをを遮るように、兵が静かに言葉を発した

    「お前の手足は切断しても大丈夫か?また生えてくるんだろ?お前自身の本体の方だ」

    私は愕然とした

    怖い…漠然とそう感じた

    「死なれたら、困るからな」

    その言葉を聞いた瞬間、私は最後の切り札を使う決意をした

    かなり体力を失うが仕方がない…このままいれば、私は…

    大きく息を吸い込み、そして

    「ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
    特別な力を持つ声を発する

    森の外にまで響き渡る叫びを…



  32. 50 : : 2014/08/20(水) 17:32:24
    ***

    つんざく様な叫び声に、私は思わず耳を塞いだ

    なんという声量だ…びっくりした

    「断末魔…ってやつですかね…?迷惑な…」

    モブリットが私の隣で耳を塞ぎながら呟いた

    「わかんないね…何なんだろ…」
    私は何か嫌な予感がして、女型を見た

    すると、ミケがエルヴィンに何かを話しかける

    そしてその私の嫌な予感が的中する

    全方角からまるで餌に群がる様に、巨人が押し寄せてきたのだ

    餌とは…まさか…

    「全員戦闘開始!!女型の巨人を死守せよ!!」

    エルヴィンの号令と同時に、私たちは死に物狂いで、女型に取りつきその体を食らう巨人どもを、駆逐しまくった

    やってもやっても終わらない戦いに、息を切らし、それでも必死で女型を守る

    情報を、ここで失うわけにはいかない

    だが、エルヴィンの次の号令で、その機会が絶たれた事を知る

    「総員撤退!!巨人達が女型の巨人の残骸に集中している間に馬に乗り移れ!!」

    私たちは、また敗北した

    女型を取り逃がし、沢山の犠牲を払いながら、何の成果も…

    いや、今はまだ後悔するべき時じゃない

    私は馬に飛び乗り、その場を後にする

    ちらりと横を見ると、憔悴しきったモブリットが馬に乗った所だった

    「モブリット、行くよ」

    「………はい、分隊長」

    私たちは身体を傷だらけにしながら、心にまで傷を追って…カラネス区への帰路に着くべく、森の外に出る




  33. 51 : : 2014/08/20(水) 17:48:33
    ***

    私は人に戻った

    呼び寄せた巨人どもに自分の身体を食わせて、その間に人に戻ってこっそり抜け出したのだ

    事前に調査兵の服と、立体機動装置は着用していた

    調査兵に紛れて行動ができる

    (エレンは…何処に)
    私は目を皿にしてエレンを探す

    立体機動で森を飛び回りながら…

    すると、横合いから声と、立体機動の音がした

    私は確信する…見つけた

    そっと声のする方に近寄り、スナップブレードで容赦なく、兵士の一人の首を切る

    私は完全に戦士になった
    どんな犠牲も、厭わないんだ

    指にはめた、武骨なリングの仕掛けを外す

    そしてそれで指をざっくり切った時

    私はまた、女型に戻った

    エレンを奪うため…私はまだ諦めない


  34. 52 : : 2014/08/20(水) 19:33:21
    エレンは直ぐに見つけた…だが、邪魔する兵がやはりいた

    兵士が三人がかりで、私に襲いかかってくる

    その動き、そのコンビネーション

    一瞬で、ただ者ではない、精鋭だと言うことがわかった

    ただ、私には精鋭だろうがなんだろうが、関係ない

    エレンを奪い、故郷へ帰る

    そのためなら、何でもするし、誰にも負けない、負けるわけにはいかない

    三人の兵士は、私から視角を奪い、身体中の筋肉を削ぎ落とす

    そして、私の腕がだらりと垂れ下がった時

    首を狙ってきた兵士が、私に突撃してくるのが見えた

    優先的に治した、片目のおかげで…

    私は無慈悲に、その兵士の身体を、かじり捨てる

    視線を前に向ける…隙だらけの格好で呆然とする女を、踏み潰す

    そして性懲りもなく、項へ攻撃をしてくる男も、蹴散らした


    もう、何人殺したかしれない

    沢山の兵士を殺した

    こいつらは私の邪魔をした、当然の報いだ

    でも、やはり心が痛い…
    心が悲鳴を上げている

    それでも私は、前を見据える

    あと少し、あと少しだから…
  35. 53 : : 2014/08/20(水) 22:03:40
    エレンはついに、巨人化した

    雄叫びをあげて、私に飛びかかる

    激しい蹴りと拳の応酬…倒し倒されの取っ組み合い

    訓練兵時代を思い出す

    思えば初めてエレンを蹴り飛ばした時、彼は弱かった

    いとも簡単に、捻る事が出来た

    彼は私に完膚なきまでにやられたのに、それに対して卑屈にならず、むしろ私に教えを請うた

    父譲りの足技、格闘術を誉められたのが嬉しくて、私は様々な格闘術を彼に教えた…身をもって…染み込ませてやった

    そうして強くなる事に人一倍執着していたエレンは、強くなった

    巨人化して、やりあっていればわかる

    油断は出来ない

    私は決心した…

    いつものファイティングポーズ…猫背気味に背を曲げ、腹筋を引き締め、肘を曲げ、拳を顔の前で握る

    その瞬間

    エレンはじっと私を見つめた

    勘づいたか…

    だがもう後には引けない

    あんたには、負けるわけにはいかないんだから…
  36. 54 : : 2014/08/21(木) 08:11:33
    ***

    「女型は…巨人達に食い尽くされた訳では無いんですね…」

    巨大樹の森を西に抜け、帰還するために兵を集めている最中、モブリットは思い出した様に言葉を発した

    「ああ、エルヴィンの話を聞いていたんだね。巨人化を自ら解く事が出来るのであれば、食わせている間に逃げる事も可能だろう。兵士に紛れて…」

    「エレンは、まだ戻りませんか…」

    モブリットの不安そうな声に、私は肩を竦める

    「大丈夫だって。リヴァイが行ったんだ、戻ってくるよ。私達は私達で出来る事をしよう。残っている兵を集めて、遺体と遺品の、回収だ」

    「…はい、分隊長」

    何とも悲しげな表情のモブリットを引き連れて、遺体回収にあたる

    今回はいつも以上に犠牲者が出ている

    待っている家族に、少しでも彼らの生きた証を持ち帰ってやりたかった

    「さ、君がそんな顔をしていたら、部下が不安がるよ?しゃんとしなさい」

    そう言う私の顔を、じっと見つめるモブリット

    何か付いているのかと聞きそうになったが、止めた

    不安と焦燥が入り交じった様な彼の表情

    心の中で思うことは多分同じだ

    多大な犠牲をはらみながら、目的を達成出来なかった

    機材にも莫大な費用がかさんでいる

    調査兵団へ資金援助していた、物好きなパトロンも、さすがに愛想をつかすだろう

    「モブリット、大丈夫だよ、多分…何とかなるさ」

    私は彼の頭を優しく撫でた

    「はい、分隊長…」
    モブリットは肩で息をすると、ゆっくり頷いた
  37. 57 : : 2014/08/21(木) 20:54:29
    ***

    私は、いつもの慣れ親しんだポーズから、どうやら私に感付いた様子のエレンの顔面に、右足を飛ばす

    エレンの頭を蹴り飛ばし、項を食い破る

    すると、ずるっとエレンの本体が顔を出した

    …やっと、手繰りよせた

    私が、いや、私達が故郷へ帰るための、切り札

    私はエレンを口に含んだ

    これで、故郷へ帰れる

    長かった、本当に、長かった

    いろいろ犠牲にしたけど、後悔なんかしない

    私は、帰るんだ

    皆で一緒に…帰るんだ

    私は立ち上がり、また駆け始める…早く安全な場所へ行かなければ

    かなり体力を消耗した

    何処かで休んで、夜を待とう

    そう思った瞬間だった

    …ぞっとするような殺気を、背後から感じた
  38. 58 : : 2014/08/21(木) 21:09:04
    「エレンを…返せぇぇぇ!!」

    殺気は叫び声と共に、私に急接近した

    そう思った瞬間、私は背中をザクザクザクッと削がれた

    後ろを振り返った時、丸で鬼のような形相で私を睨み付ける女が見えた

    『ミカサ…』

    対人格闘で、私と相討ちになった、人間離れした女

    恐ろしい程の戦闘力をもつ、人間

    だが私は今は巨人だ

    ミカサにも負けはしない

    私は気にせずまた走り出す

    その間、足腰腕、あらゆる箇所を削がれるが、気にしている暇はない

    自然治癒に任せておけばいい

    「返せぇぇぇ!!」

    ミカサは項を狙ってきた
    私は瞬時に弱点を硬化させる

    そんななまくらでは、私の項は削げないよ…

    しかし、戦士としては、やられてばかりも面白くない
    拳で反撃をしてみた

    辛うじてそれを避けるミカサ

    尋常ならない運動能力だ
    だが、所詮は人間

    私はミカサに構わず、その場を後にした

    今はミカサに構っている暇はない

    早く、故郷へ…
  39. 59 : : 2014/08/21(木) 21:55:24
    しばらく走っていると、また背後からねずみが這い寄る気配に気がつく

    『二つ…』

    私はぼそっと呟いた

    どうやらミカサにあと一人、仲間が加わったらしい

    私から一定の間隔を保って、ついてくる

    小賢しい…

    人間が二人がかりで、私をどうにか出来るはずがないのに

    さっきも、手練れ三人を手玉にとった、私だよ?

    舐めないで欲しい…

    違う…私はもう、無駄な殺生は、したくはないんだ…

    だから、もう追ってこないで欲しい…

    お願いだから…

  40. 60 : : 2014/08/21(木) 22:27:32
    また、私の心に迷いが出た

    だめだ、ここまでの苦労を無にしてはいけない

    私は、戦士

    そう思い直したその時…

    ミカサが私の目の前に踊り出た

    私を睨み付けながら、隙を伺うかの様に

    『しつこい女は、嫌われるよ…ねえ、エレン』
    私は独り言を呟いた、その時

    私の後方の死角に、ねずみが一匹入り込む

    気が付かないと思うのか?

    なめるんじゃ、ないよ

    『フッ!!』

    私は振り向き様に拳をねずみに放つ

    だが、そのねずみは…

    「ハァッ!!」

    と言う掛け声と共に、繰り出しかけた私の拳を、回転切りで切り裂いていく
    …人間離れした、凄いスピードで

    そしてその勢いのまま、私の顔面に突っ込んできた

    避ける暇も無い

    刃を両目に突き刺され、抉るように裂かれる

    『み、見えない…』

    両目に違和感…ブレードの刃を両目に残したらしい

    これでは回復もままならない

    何て頭の切れる、そして強い人間

    そうか、こいつは…リヴァイ兵士長か

    人類最強の男

    身体中の筋肉を、どんどん削ぎ落とされ、ついに立っていられなくなった

    だめだ、硬化で防ぐ暇がない…

    ついに両腕の腱を削がれるが、辛うじて左はまだ生きている様だ

    その時、項にアンカーが刺さった感覚を確かに感じる

    項の硬化は、間に合わない

    私は左拳を、背後から翔んでくる気配に飛ばす

    ドカッ…と私の裏拳に人間が当たる感触…いや、違う

    脚で、蹴られた…?!

    何が起こったか分からず、私はただ、エレンを死守するために、歯をぐっと噛み締めた

    エレンだけは、渡さない!!

  41. 61 : : 2014/08/21(木) 22:54:41
    私が歯を噛み締めた瞬間だった

    私の顔の左側を、斬撃が襲う

    それは、顎の筋肉を削ぎながら、右へと抜けていった

    『だ、だめ…口が…』

    顎の筋肉を削がれれば、口を閉じていられない

    私の口は、だらしなくぱっくり、開いてしまう

    その口の中にいたエレン

    死守しなければならない、私の切り札

    裏拳を受け止め、そのまま顎の筋肉を削いだ…リヴァイ兵士長は

    呆然とする私から、そんなエレンを奪っていった


    エレンは行ってしまった

    私の手の届かない所へ…

    あと、あと一歩だったのに…

    エレンを連れていかれてしまった

    『私は、結局何も、成せなかった』

    沢山の人を踏みにじり、殺してきた

    エレンを奪う、ただそれだけのために

    数えきれない程の人を、殺した

    心が揺れながらも、私は私の成すべき事のために…

    だけど、何も成せなかった

    無意味だった…

    ただ、無意味に人を殺めただけだった

    私は…私は…

    『帰りたい…父さん…』

    いつの間にか、涙が溢れて、止まらなくなっていた
  42. 62 : : 2014/08/22(金) 00:38:17
    ***

    第57回壁外遠征は、多大な犠牲をはらみながら、成果を得ることが出来ずに幕を下ろした

    調査兵達は皆、満身創痍だった

    カラネス区の調査兵団支部に、生き残った兵達と共に帰還した私が、割り当てられた部屋に戻ったのは、帰還して10時間は経過した、真夜中だった

    「モブリット、大丈夫かい…?」

    疲れからか、脚をふらつかせながら、それでも休もうとはせず、ずっと私の側で補佐をし続けていたモブリット

    顔色が悪いのは、疲れからだけでは無いだろうが…

    「…はい、分隊長。大丈夫です」
    モブリットはそう言うと、笑おうとして、失敗したような顔をした

    変な顔…だと言おうとしたが、やめた

    笑おうとしたのが、私のためだと分かっていたからだ

    「今回は、いつも以上に疲れたね…いろいろと…討伐数なんて、数える暇もなかったよ」

    私はふぅと息をついた

    「分隊長にお怪我が無くて、本当に良かったです…」
    モブリットも、息をついた

    「君は…心配性だからなあ。私の事に関しては特に…かな?」
    私の言葉に、モブリットは目を見開いた

    「…分隊長が、無茶をし過ぎるからじゃないですか」

    モブリットは口を尖らせた
    だけど、頬がほんのり紅く染まったのは隠せなかった

    「ああ、そうだね。君がいてくれるから、無茶が出来るよ」

    私はそう言って、モブリットに微笑みかけ、傷だらけの彼の頬に手で触れた

    「あ、あまり…無茶をなさらないで下さいね…分隊長。俺の命がいくらあっても、足りませんから…」

    「モブリットが早死にしたらいけないし、善処するよ。なるべくね」

    そう言って、モブリットの頬を撫でると、彼が身体をびくっと震わせたのがわかった

    「分隊長、あの…」

    「モブリット、今夜は側にいてくれるよね?」

    私のその言葉に、モブリットは後ずさる

    「えっ…分隊長、あの…」

    「嫌なら、いいよ」

    私はモブリットからくるりと体ごと、視線を外した

    今日は一人でいたくなかった

    何もかも、忘れたかった

    全ての歯車が上手く噛み合わない、この状況

    目の前で散った、沢山の兵士達

    負け続けている自分

    全てをリセットしたかった

    リスタートするための、リセットを…
  43. 63 : : 2014/08/22(金) 12:04:24
    「分隊長…」
    モブリットはそう呟くと、遠慮がちに、後ろから私の身体に腕を回した

    彼は私の首筋に顔を埋めて、じっとしていた

    私を抱いている腕は、微かに震えていた

    「ん?なんだい…もしかして…臭うの?」

    首筋に当たる彼の吐息がくすぐったくて、つい雰囲気を白けさせる様な事を言ってしまった

    いつもの悪い、癖だ
    これのせいで、彼と過ごした数年間のうち、何度もあった機会を、全て逃してきた

    「はい、少し…ですがそれは自分も、同じなんで」

    耳を直接触れられているわけではないのに、彼の言葉と共に発せられる、ほんの微かな吐息によって、感覚が敏感になっていく

    「モブリットの匂いはいいよ。何だか落ち着くしね…」

    私のその言葉に、モブリットの私を抱く腕の力が、ぐっと強くなった
  44. 64 : : 2014/08/22(金) 13:02:30
    「…あなたは、誰にも代えがたい人です。人類にとっても、そして…俺に、とっても」

    なぜ突然そんな事を言い出したのか、私にはわからなかった

    後ろから抱かれているから、モブリットの表情も確認出来ない

    「それは…そう言って貰えるのは有りがたいけど…どう言う意味?」
    私の言葉に、モブリットはまた、私の耳元で答える

    「…人類の希望の様なあなたを、俺がどうこうするのは、不相応にしか思えないんです」

    「それを言うなら、君だって誰にも代えがたい人だよ?」
    私は首を捻って、彼の顔を伺いながら言葉を発した

    モブリットは私の言葉に、顔を上げる

    彼の瞳は、何処となく寂しげな色合いを見せていた

    「俺の、代わりなら何処にでも…」

    モブリットのその絞り出すような言葉に、私は弾かれた様に身を翻した

    そして、半ば強引に彼の唇を奪う

    「!?」
    モブリットは、驚き目を見開いた

    私は構わず、散々彼の唇を貪った後、仕上げにカリッと彼の唇を噛んで、離した

    「…言ってはいけない事を言ったから、お仕置きだ、モブリット」

    思いきり噛んでやったからか、モブリットの唇から血が滲んでいた

    「はい、すみません…分隊長」

    項垂れるモブリットの頬を、私はそっと撫でる

    「君の代わりだっていないんだよ、分かったかい?私だって、君がいなきゃいろいろ困るんだからね」

    「はい、分隊長…」
    モブリットは私の言葉に、瞳を潤ませた

    「よし、いい子だ。さて、差し当たって、私は相当まいっているんだ、わかるよね、君なら…だから…」

    私は困った様な表情をモブリットに見せた
    すると、彼はこくりと頷いた

    「はい、分隊長。俺で良ければ…いつでも…」

    「さすがだね、君は物わかりが良くて助かるよ。…巨人の実験中以外は…」

    私がそう言うと、モブリットは私を抱き寄せた

    「……これが済んだら、ちゃんと分隊長に戻って下さいね」

    やっぱりモブリットは分かっていた

    私が何を思っているかを

    一時だけ、重圧から解放されたいという事を

    「ああ、ごめんね。今だけ忘れさせて…」

    私に忠実なモブリットは、私の言葉に忠実に行動する

    優しく柔らかく、時に強く

    私は彼に、何の不安も躊躇も無く身を委ねたのだった
  45. 65 : : 2014/08/22(金) 13:49:51
    「あのね、リヴァイから聞いたんだけどさ…」

    事を終えた後のピロートークに、他の男の名前を出したのは、別に嫉妬を買いたい訳でも、何も考えていないわけでもない

    私はモブリットとの約束を守ったのだ
    …分隊長に戻るという約束を

    「はい、分隊長」

    行為の最中にはハンジさんハンジさんと言っていた彼もまた、副官としての顔に戻っていた

    「リヴァイがさ、女型が涙を流していたと言ってたんだ。君は…巨人が泣いたのを見たことがあるかい?」

    「………いいえ、ありませんね。いつもにやけているか、怒っているか…そんな表情が多いようには見えました」

    「だよね…」

    私は思案を燻らせた

    彼が抱いてくれたお陰で、何か吹っ切れた様な気がした

    全てリセットされたわけではない

    ただ、彼との絆がより強固になった事が、私に安心感を与えていた

    「女型だけに、中身は女なんだろうね…私と同じ。もしかしたら私よりずっと繊細で、女らしいのかもしれないね」

    モブリットは何も言わなかったが、私の耳にそっと手で触れた

    まだ感覚が敏感だからか、少し触れられただけなのに、反応してしまう

    モブリットはそんな私の様子を観察して、微笑む…私も女らしいのだと言いたいのか

    分隊長に戻れと言ったのはモブリットなのに…

    「泣くというのはさ、何か悲しいことがあった時か、嬉しい時か、感動した時…女型は、悲しかったのかな」

    「人間の感情で考えれば、多分悲しかったんだろうと思います。エレンを、どうしても奪いたかった様ですしね。巨人に感情があれば、の話ですが」

    モブリットの言葉に、私は頷き、彼に私の考えを話す

    「私はね、巨人は…人間なんじゃないかと思うんだ。人間が何らかの要因で巨人にされたのか、自らなったのか…定かではないし、根拠も薄いから、まだ誰にも話していないんだけどね」

    モブリットは私の言葉に、目を見開いた

    そして、ふぅと息をつく

    「もしそうだとしたら、俺達は…」

    「うん、人殺しをしている事になる。だとすれば、女型や巨人たちがやった殺人と、私たちがやっている巨人狩りは…同じになってしまうね」

    私は肩を竦めた

    モブリットは顔を青ざめさせた
    だが、弱音を吐くことはなく、真摯な眼差しで、私を見つめた

    「もしそうだとしても、いや、だからこそ、迅速に、巨人の秘密を解き明かさねばなりませんね」

    「ああ、さすがモブリット。躊躇している暇なんか無いもんね。損して得を取るじゃないけど…今回だって作戦は失敗したし、崖っぷちの崖っぷちに立たされちゃったけど、いくつか成果はあったしね…女型が泣いたとか、叫び声とか…」

    私は力強く頷いた

    「そうですね、少しずつ、解き明かされるはずです。諦めなければ」

    「やるしかないね。しかし、女型の涙かあ…彼女に同情するわけじゃないが、たった一人で戦って頼る仲間もいない中でさ…凄い、精神力だと思う」

    モブリットは私の言葉に、苦笑した

    「巨人の事を気にかけるなんて、あなたらしいですね、分隊長。女型の中の女性にも、戦うべき理由があったんでしょうね。それを果たせなかったがための、涙かもしれません」

    「やっぱり…女型を捕獲して、話をしたいな、モブリット」

    私はモブリットに、ねだるように上目使いをしてみせた

    「俺にねだられても…ですが、巨人に寛容なあなたになら、それが可能かもしれませんね」

    「だと良いなあ…」

    女型の捕獲

    私はその機会を、案外早く手に入れる事になる
  46. 66 : : 2014/08/22(金) 23:08:59
    ***

    夜半過ぎ、私はやっとストヘス区の兵舎に帰ってこれた

    何時ものように疲れた身体に、熱いシャワーを浴びせて、寝間着に着替える

    …また、戻ってきてしまった

    呑気な寝息を立てているヒッチにちらりと目をやりながら、はぁとため息をついた

    エレンを奪えなかった

    あと少しの所で…ミカサとリヴァイにやられた

    いや、リヴァイにやられたんだ

    あの男一人に、完膚なきまでにやられたんだ

    沢山の人を殺めた
    この手で、いとも簡単に…

    人はなんと脆いんだろう
    何故そんな脆い命を、巨人なんかにぶつけるんだろう


    沢山人を殺めながら、結局目的を達成出来なかった自分に、苛立ちがつのる

    また、チャンスは訪れるだろうか

    その時には必ず、私はエレンを奪って故郷へ帰るんだ…

    私は窓の外をのぞいた
    星空が綺麗だった

    故郷の星空も、ここの星空も、同じくらい綺麗だ

    私は目を閉じた

    殺してしまった人への、祈り

    許される事ではないのは、分かっている

    でも、私にはこうするしか、道はなかった

    ごめんなさい…

    ごめんなさい…
  47. 67 : : 2014/08/23(土) 10:34:18
    ***

    「モブリット、王都召還が迫ってきたね…あっという間だ」

    巨大樹の森での戦いから数日、遠征の成果を見せられなかった調査兵団は、窮地に立たされていた

    エルヴィンら幹部の王都召還と、エレンの引き渡しが決まったのだ

    ただ、黙ってその時を待っている訳ではなかった

    エルヴィンは、104期の立案した作戦を採用し、一部改編して、それを実行する事を兵団員に暗に伝えた

    兵の配置など、細部の運用を不眠不休で考え、それを兵団全体に伝えたのは、王都召還前日だった

    エルヴィンとリヴァイとエレンは、既にカラネス区の駐屯兵団によって拘束された

    そこから、ストヘス区を通り、王都に召還されるのだ

    「ぎりぎり、間に合いましたね…起死回生の作戦、成功すると良いのですが…」

    モブリットは疲れた顔をして、息をついた

    「ほんとだね。よくあんな作戦考え付いたものだよ。作戦立案はアルミン…だっけ。彼は相当頭が切れるね。トロスト区奪還作戦もだろ?」

    私は作戦指示書に目を通しながら、ベッドに腰を下ろした

    「はい、そうですね。調査兵団にとって、貴重な戦力ですね、彼も。…しかし…女型の正体が…」

    「エレン達の同期、なんだってね。想像していたより、ずっと若い子だったよ…」

    私はため息をついた

    その若い子を引きずり出して、情報を得なければならない…何としても

    そのための、作戦だった

    「しかも、ストヘス区内での作戦実行…第一次作戦だけで済めばいいんですが、もし第二次第三次にまで移行すれば…」

    「それはいま、考えないでおこう。考えると、躊躇してしまう」

    私の言葉に、モブリットはゆっくり頷く

    「はい、分隊長」

    「明日は…捕獲できたらいいんだけどね。なるべく穏便に…」
    私は窓の外に目をやりながら、小さな声で呟いた


  48. 68 : : 2014/08/23(土) 17:05:54
    ***

    静かな夜

    ストヘス区は、シーナの内側だけあって、皆巨人の脅威など露知らずといった体で、ゆったりとした時間が流れていた

    内地に住むことは、一種のステイタス
    殆どの人が、シーナ内地に住みたがった

    安全なこの場所に

    だから、それが偽りの平和だと誰も信じないし、考えもしない

    巨人に襲われるのは、次はローゼ
    自分達は関係ない、そう思い込んでいる、おめでたい人々

    ローゼが突破されれば、シーナもろとも人類は終わるというのに

    罪深き人々
    自分の保身しか考えないような人々

    それでも彼らは人だ

    どうしようもなく汚れていても、人だ

    私はいつか、この壁の中の人々を死に追いやるんだろう

    いいんだ、私は私に与えられた役目を果すだけなんだから
  49. 69 : : 2014/08/23(土) 17:13:50
    だけど…あの幼稚舎の可愛らしい小さな子ども達も、私は殺せるの…?

    あどけなく、素直で優しい子ども達も

    何の罪も無い子ども達も、犠牲にしてしまう

    私に…そんな事が出来るの?


    殺したくなんか、無い
    本当は誰も、傷付けたくない…それなのに

    私はやらなきゃいけないんだ…

    私はもう、殺人鬼だ

    もう、後戻りなんか出来ないのに、後悔なんか出来ないのに…

    今の私には、もう道は選べないんだから

    それならいっそ、自分の中の一欠片の優しい心を、かなぐり捨てよう


  50. 70 : : 2014/08/23(土) 17:21:05
    窓の外には、月が優しげに光っていた

    その月は、庭にある池に、その姿を映し出していた

    まるで、水鏡の様な神秘的で美しい情景

    私は、次に生まれ変わるなら、人にも、巨人にもなりたくない

    夜空に優しげに浮かぶ、月になりたい

    いや、それは大それた望みだ

    私は人を沢山殺めているのに、空に上がれるはずがない

    それなら…せめて

    池の水面に映る、月になりたい

    儚げに、水面にたゆたう月の様に

    ひっそりと穏やかに

    人知れず、生きていたい

    何の罪も、犯すことなく、ただたゆたっていたい…永遠に
  51. 71 : : 2014/08/23(土) 17:33:42
    ***

    王都召還は、シーナ内地ストヘス区における女型巨人との戦闘によって、立ち消えとなった

    女型巨人…アニとエレンの戦いは、熾烈を極めた

    作戦の結果、女型巨人を追い詰めたものの、女型は間際に自らの本体を硬質の水晶体の様な物で覆い、眠りについてしまった

    ストヘス区での作戦における被害は、人的物的ともに甚大であったのに対し、女型巨人…アニからなんの情報も得ることが叶わず、調査兵団は首の皮一枚繋がったものの、相変わらずの崖っぷち状態であった

    水晶体で体を覆ったアニは、ストヘス区の地下深くに、厳重に安置された

    その地下に、三つの人影があった

    私と、モブリットと、そしてアニの同期であるエレンであった


  52. 72 : : 2014/08/23(土) 17:43:58
    「エレン…アニってどんな子だったの?凄く…綺麗な子だよね」

    私は隣でじっと水晶体を見つめるエレンに声をかけた

    エレンは静かに口を開く
    「…無愛想で、いつも無気力でした。でも、対人格闘を披露する時だけは、いきいきとしていました」

    「対人格闘…どうやら父親に教え込まれていたらしいね」

    「はい、俺も、訓練兵時代にはアニに沢山蹴られて…教え込まれていました。体で…かなり、痛かったですし、強かった…です」

    エレンは項垂れた

    女型が、自分の先輩たちを殺した女型がアニだと言うことを、理解はしているものの相当ショックだった様で、まだ引きずっていた

    「こんなに小さな体で、強かったんだね…」

    私は水晶体に歩みより、アニをじっと見つめた

    眠り姫になったアニは、キスで目が覚めるだろうか…

    そう思い、そっと唇を寄せてみる…
    勿論状況は何もかわらなかった

    「エレン、ありがとう。もう戻って休んでいて構わないよ」

    そう背後で言ったのは、モブリットだった

    「……はい、アニを、よろしくお願いいたします…ハンジさん」

    「ああ、任せて。悪いようにはしないから」

    私はそう言って、また水晶体に触れた

    ひんやりと、冷たかった



  53. 73 : : 2014/08/23(土) 17:51:26
    「ねえモブリット…アニは綺麗だよね…こんな子が、あの女型だなんてね…」

    私はため息混じりに呟いた

    「はい。そういえばさっきキスしていたでしょう?そんな事で目が覚めるはずないでしょうが…」
    モブリットは肩を竦めた

    「分かんないじゃないか…もしかしたら、王子さまのキスが必要だったのかな…エレンに頼めば良かった」

    「そんな無駄な事をエレンにさせないで下さいよ…」
    モブリットは首を振った

    「でもさ…起きてもらわなきゃ、困るんだよ…」
    私は水晶体をこんこんと叩きながら、呻くような声で言った


  54. 74 : : 2014/08/23(土) 18:01:47
    「ねえ、アニ…悪い様には絶対しないからさ、私を信じて、いつか出てきてよ…」

    涙を流しながら、自らを水晶体で覆ってしまった少女に、私は声をかけた

    彼女には彼女の立場が、成せばならない事があったんだろう

    勿論、だからといって沢山の人を殺めた罪は消えはしない

    だが、それは、私達だってある意味同罪なんだ

    五年前の口べらしもそうだ

    自分が生きるために、人を犠牲にした
    生きている人類全て、人を殺めている様なものなんだ

    「私はきっと、君たちの力になれる。必ずだ。だから…出てきてよ、お願いだから」

    私は朧月の様な美しく儚い少女に、優しく言葉をかけた

    「出てきたら、辛かった事、聞くよ?私は変人だから、巨人を愛でていたし…君とも話がしたい…」
  55. 75 : : 2014/08/23(土) 18:04:36
    ねえ、アニ

    いつか必ず、そこから出てくるんだよ

    私達が、その時までに

    きっとこの世界を、もう少しまともな物に、変えていくから

    待っていて、私は諦めない

    君をそこから出してあげる事も、この世界に自由を取り戻す事も

    そして、君がその年齢らしく楽しく笑顔で暮らせる世界にする事も

    決してあきらめないから

    ―完―
  56. 76 : : 2014/08/23(土) 18:32:17
    おもしろかったです!感動しました。
  57. 77 : : 2014/08/23(土) 18:45:51
    >海人さん☆
    読んで頂きありがとうございます!!
    嬉しいです(*´ω`*)
  58. 78 : : 2014/08/23(土) 18:56:49
    この漫画は正義も悪もないような物語ですからね(泣)アニ達にしたら自分達の正義を、エレン達にしたら自分達の正義を……
    良いも悪いもないのが辛いのかもしれませんね(泣)
    読んでいてアニの気持ちも勿論ですが、ハンジさんの優しい所も感じ取れました!!
    素敵な御話を読ませて頂きありがとうございます!!次も期待しています!!
  59. 79 : : 2014/08/23(土) 19:00:28
    >EreAni師匠☆
    読んで頂きありがとうございます!!
    そうなんです、まさにそこ、アニも、エレンも、自分達の立場での正義に向かっているだけなんですよね
    アニは心が優しい子だから、いつも謝っていたり…本当に辛かったと思う
    心を鬼にしきれなかったんだと思う…
    アニが静かに暮らせる世界になってほしいね…(ノ_・,)
  60. 80 : : 2014/08/23(土) 19:43:10
    執筆お疲れ様です!!
    アニとハンジさん、二人の視点でのお話とても分かりやすかったです!
    アニにとっては自分がやらなければならない使命がありハンジさんにとってはそれを阻止しなければならないと、、
    複雑な気持ちですね
    素敵なお話ありがとうございました♪
  61. 81 : : 2014/08/23(土) 21:09:14
    >はんちゃん☆
    読んでくれてありがとうございます♪
    アニにはアニの立場での正義というか、やるべき事があって、沢山苦しんでいたと思うんです

    ベルトルトも、ライナーも
    最後はみんな笑顔になってほしいです(ノ_・,)
  62. 82 : : 2014/08/23(土) 21:29:35
    執筆お疲れ様でした!

    前に読ませて頂いたミカサのシリアスの話もそうですが、キャラの心情が原作を読んでいるみたいで素晴らしいです。

    ハンジさんにはモブリットや他の仲間がいましたが、アニは独りでこの作戦をしていたんだなと気付かされました(ライナーたちもいましたがいつも傍にいるわけではないし)。

    いつも楽しくて素晴らしい作品をありがとうございます。
    次回作も期待してますよ~。





  63. 83 : : 2014/08/23(土) 22:05:56
    >キミドリさん☆
    読んで頂きありがとうございますm(__)m
    キャラの気持ちになって書いていた甲斐があります♪嬉しいお言葉です(*´ω`*)
    そうなんです、ハンジさんには仲間が沢山いますが、アニは一人のような状況です
    辛かっただろうなと、思うのです…
    勿体ないお言葉、ほんとに嬉しいです(*´ω`*)
    ありがとうございましたm(__)m
  64. 84 : : 2014/08/25(月) 11:24:34
    めっちゃ素晴らしかったです!
    お疲れ様でした
  65. 85 : : 2014/08/25(月) 11:33:51
    >アニファンさん☆
    読んで下さってありがとうございます♪
    アニファンの方に受け入れてもらえて、本当に嬉しいです(*´ω`*)
    とても励みになりました!!

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fransowa

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