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Sieg-ジーク- The Bigining Of The Journey ~旅の幕開け~

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  1. 1 : : 2014/06/19(木) 22:35:18
    はじめまして! sugarです!
    ついに私の初投稿作品を連載させていただきます。
    キャラも世界もストーリーもオリジナルなので多少読みづらい場面もあると思われますが、しばらくの間お付き合いください!

    それでは、いよいよ始まります!
    「Sieg」をお楽しみください!
  2. 3 : : 2014/06/21(土) 08:58:06
    プロローグ  -この世界-



    これは、そう遠くない未来の、とある世界での物語である―



    瓦や板、茅葺《かやぶき》の屋根が立ち並ぶ、少し古風な雰囲気のとある国
    人々は働いて金を稼ぎ、休みの日は羽を伸ばして好きなことをし、何一つ変わったところはないように見える



    ―ある一点を除いては



    職場に行くときは空を飛び、仕事でのミスは過去に戻って無かったことにし、時間の流れを遅らせひたすら趣味に没頭する 
    この国、いや、この世界のあらゆる国で、ほとんどの人間が何かしらの「特殊能力」を持っているのであった
    それが一般化し、特殊能力を持つ事が人としての「ステータス」、「常識」となりつつあった



    そんな常識が続いていたある日、後にこの世界を大きく揺るがす出来事の始まりとなる、一つの出会いがあった
    それはまるで運命のように―
  3. 4 : : 2014/06/21(土) 15:29:23
    第一話  ―始まりの扉―


    ―郊外の小さな木製の建物にて


    ―トン、トン、トン、



    長い黒髪の女「すいませーん、御社、ジーク出版社様に入社希望の者ですが、社員募集はまだやっておられるでしょうか?」


    ―シーン、、、



    (誰もいないのかなぁ?)


    長い黒髪の女「すいませーん、どなたかいらっしゃいますでしょうか?」


    (誰も来ないなぁ、しょうがない、手紙でも書いて郵便受けに、、、)
    (って、郵便受けも無いじゃない!! 中に誰も居ないし、壁に貼ってある宣伝のチラシは雨か何かで濡れてグショグショで読みづらいし、この会社、本当にやる気あるのかしら?) 
    (いやいや、これから私が働く会社。こんなこと口に出したら一発でクビにされちゃう! そうだ!!扉に挟んでおこう!)


    ―ガラガラッ


    (キャッ、あ、開いちゃった・・・ 鍵も掛けて無いなんて、無用心ね、、、って、また余計なことを、、、)
    (でも、せっかくだし、中に入ってみようかな。悪いことだって事は解るけど、さすがにこれはおあいこよね。)


    (中は結構散らかってるわね。先が思いやられるわ・・・)


    ―パサッ、パサッ、


    (あれっ?今、何か本をめくるような音が・・・)
  4. 6 : : 2014/06/21(土) 18:31:39
    第二話  ―対極―



    長い黒髪の女はその音がした方へおそるおそる足音を消して近付いた


    ―パサッ、パサッ、


    (この部屋みたいね、音がしてるのは。もしかして、誰かいるのかしら)


    ―トン、トン、トン、


    長い黒髪の女「(小声で)失礼しまーす」


    女が部屋に入ると、窓際で少し高級感の漂う木製の椅子に座り新聞を読みながら、外の景色を眺める一人の短い白髪の人間の背中があった


    (男かなぁ?女かなぁ?若い?それとも・・・)


    短い白髪の人間「イケイケのお兄さんだよ」


    女「えっ!?どういうこと?何も言ってないのに、今確かに私の考えてたことが・・・」


    短い白髪の自称イケイケのお兄さん「今までここに来た入社希望者5人全員が俺の背中を見て最初、誰一人として俺が若い男だと解らなかった」


    (入社希望者結構少ないわね・・・)


    自称イケイケのお兄さん「今お前、『入社希望者少なっ』みたいなこと思っただろ」


    冷や汗の女「!!」


    イケイケのお兄さん「前の5人も同じようなことを考えていたからな。ここに来る奴が考えそうなことは大体解る。だが、お前は少し違う」


    混乱する女「えっ?」


    イケイケのお兄さん「お前はこの部屋に来た時、まず、俺が『男か女か』だとか『若いか年寄りか』を考えた。だが、前の5人は俺に会うなりいきなり、何も考えず俺に男か女か尋ねてきた」


    (それって正解なの?それとも・・・)


    真剣な声の男「さらに言うと、お前がこの会社に誰も居ないと思った時、手紙を書くだとか、その手紙を入れる場所が無いと気付いたとき、扉に挟んでおくだとか、しっかりした判断力と思考力を持つ一方で、扉が開いたとき、考えた末、悪とは知りつつも中に入ることを決意する好奇心と行動力も兼ね備えている。意外とこれらの力を揃えるのは難しいんだよ。現に前の5人は俺の指示が無いと一切動けなかった」


    男「だが一つ、気になることがある」
  5. 7 : : 2014/06/22(日) 01:09:49
    第三話  ―ジークとカッツェ―


    短い白髪の男「一つ気になることがある」


    黒い長髪の女「な、何でしょうか?」


    男「お前はドアが開いていないと思った時、電話をかけようとは思わなかったのか?」


    緊張する女「はい、失礼ながら私、御社の情報は二日前、私がこの国に来た時に知ったもので・・・」


    男「壁のチラシには気付かなかったか?電話番号が書いてあったはずだ」


    女「(ハッ、そういえばグショグショのチラシが外に、、、)すいません・・・」


    悟ったような顔の男「なるほどな、お前に足りないのは勘と観察力か」


    悩む女「(しまった!このままじゃマイナスイメージだわ!どうにかして挽回しなきゃ、、、)」


    男「でもまぁ、これだけの力を持った奴に会うのは何年振りだろう・・・」

                ・・・
    男「うん、お前は何となくアイツに似てるし。気に入った!!」


    (ちょっと待って!なんか勝手に話が進んでて訳が解んないよ!いきなり私を試すようなことをして、思考力があるだとか勘が無いだとか言い出すし、初対面でいきなり私を「お前」だなんて呼ぶなんて!普通、面接官とかだったら「あなた」とかって言うべきじゃないの?態度も何か偉そうだし、でも、なんだかんだで私の考えは読まれてるし、そもそも自分で自分のことをイケイケのお兄さんだなんて、よっぽどのナルシストじゃないと言えないわよ!っていうか、アイツって誰の事・・・)


    男「お前、名前は?」


    困惑する女「(えっ!またいきなり!)は、はい!わ、私の、な、名前は、カッツェです。カッツェ・シュヴァルツです!」


    笑顔の男「そうか、カッツェというのか」


    男「俺の名前はジーク。ジーク・ヴァイスだ。」


    ジーク「そして俺はこの会社の社長だ。カッツェ・シュヴァルツ。お前をこの会社の秘書として」


    ジーク「正式に採用する」
  6. 8 : : 2014/06/22(日) 13:59:01
    第四話  ―却人―


    カッツェ「さ、採用?」


    ジーク「そうだ、採用だ。おめでとう、カッツェ。この会社の記念すべき社員1号だ」


    カッツェ(う、嘘・・・えっ・・・だって・・・っていうか、この人が・・・社長・・・?)


    すると、初めてジークは立ち上がり、こちらに歩いて来た
    ずっと後ろ姿だった男の顔を、ようやく見ることができた
    新聞を読むときに掛けるのであろうメガネをそっと外しスーツのポケットに入れ、口にチョコプレッツェルを咥えながら、短い白髪を無造作にいじって近づいてくる


    ジーク「―ふぅん・・・」―ジロジロ


    カッツェ「な、何ですか!?あんまりジロジロ見ないでください!訴えますよ!」


    ジーク「最初ここに来た時、やる気が無いんじゃないかとか、無用心だとか、先が思いやられるとか思っただろ」


    カッツェ(ま、まただ!見抜かれてる!)―ギクッ!


    ジーク「前の5人にもそう言われた。別にあれは採用試験とかじゃないし、、、あの辺り面倒くさくて」


    カッツェ「あれくらい面倒くさがること無いでしょ!!玄関のカギなんて、襲われたらどうするんですか!!」


    ジーク「あぁ、別に大丈夫だ。金庫はあるが俺以外絶対開けられない。それに―」


    ジーク「俺は強い」


    ―ドキッ!


    カッツェ(え!?い、今の感覚何?ただの自慢のはずなのに、すごい威圧感・・!)


    ジーク「ところで・・・」


    カッツェ「は、はい!?何でしょう?」


    ジーク「特技はあるか?」


    カッツェ「と、特技ですか・・・ あっ!私、とっておきのがあります!見ててください!!―スゥーッ・・・」ニヤニヤ


    カッツェ「却人(キャット)!!」
  7. 9 : : 2014/06/23(月) 22:30:46
    第五話  ―二種類の能力者―


    カッツェ「却人!!」


    そう叫ぶと、カッツェの体は縮んでいき、膝ほどにまでなると、四つん這いになった


    ジーク「ほぅ・・・ふんふん・・・」


    つぶらな瞳には眼力が宿り、体には短い、黒い毛がびっしりと生える
    そして― 十秒もしない内にカッツェの姿は―


    ジーク「なるほど・・・能力者か」


    カッツェ「そう、これが私の特技であり、能力。私の能力は、世にも珍しい獣(ティーア)系の一つ、その名も『黒猫(キティ)』」


    ―パチパチパチパチ、、、


    ジーク「いい!凄くいい!あの獣系能力をここまで使いこなす奴はなかなか居ないのに、それが今、俺の目の前にいる!やはり俺の目に狂いは無かった!俺としたことが、思わず拍手をしてしまった」


    カッツェ(ちょくちょくナルシストが出て偉そうな・・・どんだけ自分大好きなの・・・)


    ジーク「解りきったことだとは思うが、一つ気になることがある」


    カッツェ「は、はい、何でしょうか?」


    ジーク「その能力は何か生死の境目を彷徨うような、、、例えば、どこか高い所から落ちた時に目覚めたものだろう?」


    カッツェ「え、ええ。そうですが・・・(まただ!何も言ってないはずなのに・・・実はこの人ものすごい人なのかも・・・)」


    ジーク「獣系能力の希少性、そしてその完成度からして、発能薬(フェイーヒ・カイト)による物で無い事は一目瞭然だ」


    カッツェ「フェイーヒ・カイト?」

                    ・・・・・
    ジーク「知らないのか・・・まぁ、あんなもの知らないほうがいい」


    カッツェ「そう言わず、教えてください!」


    ジーク「―はぁ、そうだった・・・お前の好奇心を見込んで採用したんだからな・・・いいか?世の中には二種類の能力者がいる。一つはカッツェのように何らかの出来事で能力を手にした能力者。そしてもう一つが・・・」


    カッツェ「も、もう一つが?」



    ジーク「人類最悪の発明、フェイーヒ・カイトによる能力者だ」
  8. 10 : : 2014/06/24(火) 22:35:32
    第六話  ―助長―


    カッツェ「その、『フェイーヒ・カイト』にはどんな問題があるのですか?そもそも、それって何なんですか?」


    ジーク「フェイーヒ・カイト― 簡単に言えば、『簡略化された兵器』だ」


    カッツェ「兵器?」


    ジーク「十年前、世界の経済が発展を遂げる中、突如巻き起こった原因不明の戦争『残酷な虐殺(グラオザーム・メツェライ)』は知ってるよな?」


    カッツェ「え?全く存じ上げません。今、初めて―」


    ―ガシッ


    突然、ジークがカッツェの首元を掴んだ


    ジーク「あれだけの被害者を出した戦争を知らないだと!ふざけた冗談を言うな!」


    今まであまり感情が表に出なかったジークが怒りをあらわにする

    カッツェ「そ、そんな、、、冗談ではありません・・・私、以前していた仕事のシステム上、外部からの情報が入り辛く、、、」


    ―フワッ


    続きを言おうとした時、首元が楽になったのを感じた


    ジーク「―すまない、少々感情的になり過ぎた・・・だが、外部からの情報が入らない仕事なんて― いや、やめておこう。もし本当にあるのなら口外できないだろう」


    ジーク「話に戻ろう、、、『グラオザーム・メツェライ』・・・誰が火種となり、何を目的としたのか未だに不明の戦争は二年間世界中を巻き込み、この世界のどこかではまだ傷跡が残っている・・・ ―深い、深い傷が・・・」


    ジーク「その戦争の最中開発された、前代未聞の『人間』を『兵器』にする薬、それが『フェイーヒ・カイト』だ」


    ジーク「たくさんの国が僅かな財産を振り絞り、幾万の国民を犠牲にしてフェイーヒ・カイトの大量生産に挑む中、唯一それに成功し数多の能力者を生み出したとある国は、瞬く間に他の国を制圧し、薬の開発よりたった二カ月で急速に世界は終戦を迎えた」


    カッツェ「たった二カ月!?」


    ジーク「終戦より三年、、、復興へ向け国々が必死に動き回る中、政府が発表した史上最悪の政策、『全人類能力者化計画』が発動した」


    ジーク「政府が安全と認めた『簡易版フェイーヒ・カイト』は、終戦のキッカケ― 畏怖の象徴として発表当時こそほとんどの人間が抵抗を示したが、僅かに能力者への『憧れ』を持っていた者の服用から徐々に普及し、国々の再起を2倍、、、いや、それ以上に早めた」


    カッツェ「今の所、問題は無さそうですが・・・」


    ジーク「フェイーヒ・カイト、及び政府の最大の過ち、、、それは、人間の『負』の部分の肥大化を助長したことだ」


    カッツェ「負の部分を、助長?」

  9. 11 : : 2014/06/27(金) 22:58:21
    第七話  ―全ての始まり―


    ジーク「フェイーヒ・カイトは人間に差別の壁を作った。高い、高い壁を」


    カッツェ「壁?」


    ジーク「簡易版とはいえ一錠十万円と値は張る。フェイーヒ・カイトが生み出され広まると、『貧富』の差はそのまま『能力者と非能力者』の差も生み出した」


    ジーク「貧しい者はより大きな迫害を受け、富む者は一般には知られないある方法で複数の能力を得てより金を手にする。優遇されるのは能力者ばかりだ」


    ジーク「そして、フェイーヒ・カイトは今、人間の『心』を殺そうとしている」


    ジーク「人間は何かしら他の人間と差、『個性(アイデンティティ)』を欲しがり、それを手に入れるには『努力』をするのが最善で最速の方法だった」


    ジーク「だが、フェイーヒ・カイトは個性を金で買えるようにしてしまった。この世界では、『個性』は『金』となった」


    ジーク「俺は・・・この世界が大嫌いだ」


    カッツェ「・・・」


    ジーク「―すまない・・・いきなりこんな暗い話になってしまった・・・」


    カッツェ(どうして、この人はこんなに全てを知ってるの・・・? どうして、この人はこんなに世界を嫌うの・・・? どうして、私はこんなに・・・)


    カッツェ(世界を変えたいの・・・?)


    カッツェ(もしも、私が全ての始まりになれるなら・・・)


    カッツェ「ジ、ジークさん・・・」


    ジーク「ん?何だ?」


    カッツェ「わ、私と、、、い、一緒に、、、私と一緒に、せ、―」


    カッツェ「世界を変えましょう」


    ―・・・


    ジーク(フン、こんな気分、いつ以来だろうか・・・「今日の出会いはまさしく運命なり」とは、言ったものだな・・・)


    ジーク「カッツェ」


    カッツェ「はい」


    ジーク「俺の事は―」


    ジーク「―社長と呼んでくれ」

  10. 12 : : 2014/06/28(土) 17:03:48
    第八話  ―ウム・シュリーセン―


    ―ジークとカッツェの出会いからおよそ一時間前―


    ここにもまた、新たな始まりを告げる風が吹いていた―


    艦長「―こちら第一艦船艦長、第一艦船艦長」


    艦長「間もなく本艦、到着致します。入港許可をお願いします―」


    司令塔「―こちら司令塔。了解。南の港より入港を許可する―」


    大海原を割くように進む一隻の艦船


    その船が目指す一つの巨大な島―


    ただでさえ周囲を全て海に囲まれ、侵入の困難なはずのこの島は、あろうことかさらに島の外周に高く分厚い壁を作り、東西南北の四つの港は常に固く門で閉ざされている


    そして、その高い壁や門よりも遥かに高い、天にも届く塔のような建物が一つ―


    ―ギギ―ッ、、、


    門が開き、一隻の艦船は壁の中へ吸い込まれる―


    ―既に島にはいくつもの艦船や帆船、中には巨大な城のような飛空艇や動力不明の純白の船、はたまた他の大陸からは何千里も離れたこの島まで到底辿りつけなさそうな、何の変哲も無いただの木のボートまで、大小、および材質様々な船がこの島に佇んでいる


    艦長「―第一艦船、ただいま入港完了しました」


    艦長とともに艦船の中からあの男と同じ白髪の男が姿を現し、数メートルはある高さの艦船から華麗に飛び降りる―


    雰囲気、立ち振る舞い、共にどこかあの男を彷彿とさせるが、片目をその髪で隠しているのが一つの違いである


    ―港には黒い制服を着た、この島の役人と思われる人間が真っ直ぐに並び、島の中央の高い建物へと続く一本の道を形成していた


    その黒い道の入り口に、不自然な白い制服の男が一人、白髪の男の前に立っている―


    白い制服の男「長い旅路をご苦労様です。ようこそ、ウム・シュリーセンへ」


    白髪の男「―さっさと用を済ませようか。あまりここにはいたくないんでね。どうも僕はこの空気が苦手でね―」


    白髪の男の声はあの男よりもやや優しく、柔らかい表情を浮かべている


    白い制服の男「―では、どうぞ」


    白は白を迷うことなく、島の中央にそびえ立つ高い建物へと導き、ガラスの様な物で作られた扉の前に立つ


    ―カオニンショウ、カンリョウ。セキュリティ、カイジョ。


    ―ウィーン、、、


    白髪の男「いつも思うんだけど、顔認証だけで大丈夫なの?それと、いい加減僕を名前で呼んでくれないか」


    白い制服の男「この島は部外者の侵入は不可能。無駄なシステムの削減は他の必要なシステムの管理や確保には欠かせません。それと、私はあまり名前に執着しない方なので」


    白髪の男「ふーん・・・ま、いいや。君たち『政府』の考える事は僕にはよく解らないよ」


    白い制服の男「もうすぐ会議が始まります。エレベーターで99階の『円卓の間』まで向かいます。急いで準備を」


    白髪の男「はいはい。君はホントにカタイね。僕は君に休暇をとることを勧めるよ」


    ウム・シュリーセン― 海と壁に囲まれたこの島は、『世界政府の本拠地』


    そしてこれから始まるのは、政府が認める世界の強豪達の集い、、、の、はずだった


    ―チーン、、、キュウジュウキュウカイデス。ウィー
    ン、、、


    白髪の男「なーんだ。みんな全然来て無いじゃん。ま、いつも通りか」


    円卓の間と呼ばれるそのフロアには、白髪の男を含め計七人と一つの大きく円い机、そしてその周りに十三脚の椅子、その内八つは空席である


    七人いる内の一人、黒い制服の、おそらくここの役人であろう人間が最奥の最も大きい椅子の横で白髪の男を待っている
    残りの椅子に座る五人は待ちくたびれた様子だ


    白髪の男「ふぅー。」


    白髪の男が椅子に座ると横の男が号令をかける


    黒い制服の男「―それでは、これより『円卓会議』を行う!」


  11. 13 : : 2014/06/28(土) 22:09:40
    第九話  ―円卓会議―


    白髪の男「こんなに空席だけど大丈夫?・・・ま、いつもの事だけど」


    会議に出席しているのは白髪の男を含め計六人


    椅子には、最奥の白髪の男が座る最も大きな椅子を「1」として時計回りに番号が振り分けられ、「13」の椅子だけが丁度「1」の椅子の前に配置されている


    「1」の席には白髪の男、「2」の席には茶色のジャケットを羽織った大柄で茶髪の男、「3」の席には青いセーラー服のメガネをかけた細身で黒髪の女、「4」の席にはオレンジの髪に緑のベストを着た細身の男が座っている


    「5」と「6」の席は空いており、「7」の席も空いているが、飲みかけの水が置いてあり先程まで誰かが居たようである


    「8」の席には白い髭の老いた男、「9」と「10」は空席で「11」の席には桃色の髪にサングラス、左手に扇子を持ち、派手な風貌の若い男、「12」も空席で、「13」の席は空席どころか今まで誰一人座った気配が無い


    そして、会議を取り仕切る役人が一人、計七人による会議となっている


    白髪の男「『7』の席はどうして空いているんだい?」


    「2」の席の男「帰ったぜ。お前がノロノロしてる間にな」


    「3」の席の女「ちょっと。余計なことを言わないの」


    白髪の男「おっと、これは失礼。でも、これ以上僕を嘲るようなら・・・」


    「4」の席の男「喧嘩は余所でやってくれないか。私は早くメンテナンスに戻りたい」


    「8」の席の老人「・・・」


    「11」の席の男「みんなそんなに早く帰りたきゃ、とっととやって、とっとと終わらせようじゃねぇか。俺も早くパーティの支度がしてぇんだ」


    役人「それでは、議題の方を発表をいたしましょう。本日の議題は、、、」


    役人「先日この『円卓』を辞退した『10』の席の新たな人材の選抜です」


    「2」の男「あいつの場合、ほとんど失脚に近いけどな」


    「3」の女「また・・・」


    「11」の男「別に誰だっていいし、居なくてもいいだろ。元々、今日みたいに全員揃う日なんて滅多にねぇし、『13』の席だってずっと空いたままじゃねぇか」


    役人「そ、それは・・・ この『円卓』創立以来伝わる『13番目の呪い』が原因であって・・・」


    「11」の男「あぁー無駄無駄!今日の会議ほど無駄なモンはねぇ。悪ぃが俺は帰らせてもらうぜ」


    「4」の男「私も同感だ。今日の所は退席させてもらう」


    役人「ちょ、ちょっと・・・」


    白髪の男「ちょっといいかい、君」


    役人「は、はい」


    白髪の男「前の会議でも言ったけど空いている席なら僕の部下で埋めると言ったはずだよ?」


    役人「はい、その件は存じておりますが、一つの組織、団体等からは一人のみというのが創立以来の規則でありまして・・・」


    白髪の男「はぁ・・・ホントに君達はアタマがカタイね。なんだったら今ある席全部僕の部下で埋めてあげてもいいんだよ?」


    「2」の男「おいおい、それって俺たちは『クビ』って事かよ!このバッジが解んねぇのか?」


    「2」、「3」、「4」の席、及びそこに座る者たちと役人の服についているバッジには、同じ瞳のマークが描かれている


    白髪の男「あなた達が政府代表の円卓出席者である事は重々承知してるよ。でも、言っちゃ悪いけど僕の部下は君達より強いし、何より、、、」


    白髪の男「僕は最強だ」


    白髪の男「―と、いうことで、僕も帰らせてもらうよ。それじゃ、バイバイ―」


    役人「そ、そんな、、、待ってください―」


    白髪の男が港に戻ると、既に飛空艇と木のボートが無くなっていた


    白髪の男「あーあ。つまんなかった。―それにしても、アイツ、ホントに俺と会うのも嫌みたいだな・・・」


    建物の横の滑走路から飛行機が飛び立つ頃、白髪の男も艦船に戻る
    その様子を建物の窓から眺める一人の影―


    ―100階 


    ?「―・・・今夜は眠れそうにないな・・・この世界が次に目覚める朝は、、、どんな朝だろうか―」



    ―この会議を境に、白髪の男は円卓に姿を見せなくなった
    政府は、世界はまだ、この男の恐ろしさを知らなかった―


  12. 14 : : 2014/06/28(土) 23:22:02
    第十話  ―昨夜の大火事―


    ―ジークとカッツェが出会って二日、カッツェは住み込みでジークの会社の秘書をしていた


    ―コンコン、、、


    ―ガチャリ


    カッツェ「おはようございます、社長」


    椅子に座り、ミルクティーを飲みながら新聞を読むジーク


    カッツェ「す、すいません、、、本来私が朝刊を届けるべきところを、、、」


    ジーク「俺がしたいことは全て俺でやる。それより、昨日渡した本は読んだか?」


    カッツェ「はい!あのミリオンセラー小説『白昼の夢』を、著者である社長の下で読ませて頂き、嬉しいです!」


    ジーク(まだ言葉が固いが、感情は素直だな・・・)


    カッツェ「でも、どうしてこんな素晴らしい本を書いた人が
    こんな汚い建物に・・・あっ」


    ジーク「・・・」ギロッ


    カッツェ「す、すいません・・・」


    ジーク「まぁ、昔は俺もそこそこ綺麗な所に住んではいたが、、、あそこの手品師を見てみろ」


    窓の外の、孤独に路上パフォーマンスを行う一人の手品師の姿は明らかに、木の建物が立ち並ぶこの町には似合わない格好だ


    ジーク「体を切り離す手品だそうだが、どうせ能力者だろう、と皆が興味を示さなくなった。小説や漫画に描かれる奇跡も、能力を使えば日常の風景。そうして時代に置いていかれて、この国に流れ着いたのさ」


    ジーク「―それより、昨日近くで火事があったそうだ」


    カッツェ「え、本当ですか!」


    ジーク「近く、といってもこの国のかなり北の端だ。ここは国のやや南寄りだから、俺も新聞を読むまで知らなかった」


    ジーク「ま、実を言うとカッツェが来る前にもこの国で何件か火事が起こっていてな・・・そして今回は花火師の家で炎上。被害は甚大だろう」


    カッツェ「様子を見に行きますか?」


    ジーク「―確かに、こう連続で火事が起こると何か共通点があるかもしれない。行ってみようか」


    カッツェ「それでは、、、『却人』!」


    ジーク「ちょっと待った」


    カッツェ「え?」


    ジーク「この国は、唯一他の国へ続く出入り口がある西エリア以外は、能力を持たず、能力を嫌ういわゆる『流れ者』が住んでいる。それに、無闇と必要以上に能力を使い、能力に頼るのは、人間としての本質を見失うようで嫌いだ」


    カッツェ「は、はい。了解しました」


    カッツェが能力を解除した時、ジークが何かに気づく
    カッツェの腕に火傷のような傷がある


    ジーク「腕のその傷はどうした?大丈夫か?」


    カッツェ「あ、この傷は以前就いていた仕事で負ったものです。お気づかいありがとうございます」


    ジーク「それでは、行こうか」


    ―ジークが住んでいるこの国は東西南北と中央の5つのエリアに分かれ、その内、他の国に続くいわゆる玄関口は西エリアのみ、残りの三方位からは国の周りの森や山に続くのみである

    やや外界から隔離されたこの国には犯罪が多発しているが、この連続の火事にジークはあることが頭をよぎっていた


    ジーク(炎、、、いや、まさか、、、まったく、嫌なことを思い出しちまう・・・)


    ―十年前
    ジーク「どうして、、、どうして燃えているんだ・・・ どうして燃えているんだ、この国は、、、この町は、、、」


    長い黒髪の人間が、燃える町を見て、そっと笑みを浮かべ、その場を立ち去ろうとするのを、ジークが目にした

    ジーク「お前か!?お前がやったのか?答えろ!お前なんだろ!返せ!俺の国を!町を!仲間を!」


    走り寄り体当たりをしたジークを長い黒髪の人間はひらりとかわす
    そして、炎の中へ消えていった―


    ジーク「ちきしょう・・・ちっきしょー!!!!!・・・―」


    ―ジーク(・・・考えすぎか、、、関係あるはずが・・・)


    そうこう考えていると、知らぬ間に体は焼き焦げた残骸の前に辿りついていた


    カッツェ「これはひどい・・・まるまる一軒燃え尽きてる・・・」


    ジーク「周りの家にも破損や燃焼の跡が目立つな・・・ん?これは機械用の破片か?それにネジも・・・」


    ―そしてそれは突然の出来事


    若い男「やいやいやい!見つけたぞ!」


    ジーク&カッツェ「ん?」

  13. 19 : : 2014/07/06(日) 03:35:30
    第十一話  ―晴れ、ときどき花火―


    若い男「やいやいやい、ようやく見つけたぞ!」


    ジーク&カッツェ「ん?」


    ジークとカッツェが振り返ると、炎のように逆立ったオレンジ色の髪の、草履を履いた若い男が怒りの表情をこちらへ浮かべていた


    オレンジの髪の男「犯人探しのついでに問屋まで火薬を補充しに行ったら、まさかこんなとこで出くわすとはなァ!突然家を燃やされ、大事な商売道具を台無しにされた恨み、晴らさせてもらうぜ! そこの白ェ髪のあんちゃん!ワシはそこの黒ェ髪の姉ちゃんに用があんだ!ケガしたくなかったらそこどきな!」


    ジーク「カッツェ、知り合いか?」


    カッツェ「いえ、あんな人知りません」


    オレンジの髪の男「とぼけたってムダじゃい!!食らいやがれ、こんちきしょうめ!」


    ジーク「おい!まだ俺動いてないぞ!」


    オレンジの髪の男「仕掛け玉、手投げ壱の型!『柳(やなぎ)』!」


    男が叫び、玉を天高く投げると、ジーク達の真上で破裂し、まさに柳の葉のように広がった炎が頭上に雨のように降り注ぐ―


    カッツェ「キャーーーーーーーーーーーー!!!!!!」


    ジーク「おいおい、正気か!? 逃げろカッツェ!」


    オレンジの髪の男「まだまだ終わらねェ!!遥か昔から十代続くこの店燃やしといて、タダじゃ済ませねェ!!」


    そう言うと男は、着ている作業着の様な服のポケットから、手の平大の金属の箱を取り出す


    カッツェ「何するつもりですか!?っていうか、さっきからのあなたの話から、私がこの家を燃やしたように言ってませんか?」


    オレンジの髪の男「まだシラ切るつもりか姉ちゃん!ワシはみたんじゃ!昨日の晩ワシが鉄クズ置き場から帰って来た時、手から炎を出す長くて黒ェ髪の人影をなァ!!」


    ジーク(―長くて黒髪!ま、まさか・・・)


    オレンジの髪の男「ここで会ったが百年目!!これで仕留めてやるから安心せェ!仕込みカラクリ―」


    男の手の箱が形を展開させると、巨大なバズーカが出現する


    オレンジの髪の男「破城砲、『虎の尾(とらのお)』!!」


    直線的に高速で放たれた弾は、炎の尾を引きながらカッツェを襲う


    カッツェ(―速いっ!この距離じゃ逃げられない!)


    ―ドカァーーーーーーーン!!!


    ―・・・


    カッツェ「―あ、あれ、い、生きてる・・・?」


    オレンジの髪の男「―ワシの弾正面から受け止めるたァ、やるじゃねえか、あんちゃん」


    ジーク「お前にもお前なりの事情があるんだろうが、俺にも俺の事情がある。こいつは俺の秘書であり、仲間だ」


    カッツェ(―・・・な、仲間・・・)


    オレンジの髪の男「あんちゃん、一体何者だ?」


    ジーク「それは俺のセリフだ」


    オレンジの髪の男「生意気な事言うじゃねェか。ワシの名はヴェルク。ヴェルク・フォイアーじゃ」


    ジーク「俺の名はジーク・ヴァイス。俺は―」


    ジーク「この世界を変える社長(おとこ)だ」

  14. 20 : : 2014/07/06(日) 17:35:39
    第十二話  ―紅白男合戦―


    ヴェルク「この世界を、変える?面白ェ事言うじゃねえか。ちぃと気にはなるが、今はそれどころじゃねェ。ワシはその姉ちゃんを許しとらん!!」


    ジーク「一つ気になることがある」


    ヴェルク「何の事じゃい」


    ジーク「お前は家を燃やしたのが、この女だと証明できるのか?」


    ヴェルク「何を言うかと思えば、証明も何も、さっきから言うとるじゃろ!ワシははっきり見たんじゃ!長くて黒ェ髪の人影をな!」


    ジーク「長くて黒い髪の人間など、この世界にはいくらでもいる。それに俺は、こいつが犯人ではない、アリバイを知っている」


    ヴェルク「んなモン、もしあんちゃんがそこの姉ちゃんとグルだったら、タダのウソってこともあるじゃねえか」


    ジーク「―確かに、お前の言うことも一理ある。だが、花火やを燃やした女が、あれ位の炎で、悲鳴をあげたりはしないだろう」


    ヴェルク「―どうやら、あんちゃんを倒さねェことには、そこの姉ちゃんには手ェ出せねェようだな。それに、ワシの花火を侮辱されといて、黙っちゃおけねェ」


    ヴェルク「あんちゃん、ワシと勝負じゃい!!あんちゃんが勝てば、あんちゃんを信じる。だが、ワシが勝てば、そこの姉ちゃんもあんちゃんもまとめてオサラバじゃ」


    ジーク「いいだろう。俺にも譲れないものがある。望むところだ!」


    カッツェ「社長!!」


    ジーク「大丈夫だ。心配無い。必ずお前の無実を証明する」


    ヴェルク「そうと決まれば、先手必勝!仕掛け玉、手投げ壱の型!『柳』!!」


    ジーク「チッ、さっきの厄介な奴か。遠距離で戦うのは厳しいか・・・ならば」


    ジーク「白猪(しらい)」


    地面を強く蹴り、猪の如く真っ直ぐに、一瞬でジークはヴェルクの正面に飛び込む

    そして左足を強く踏み込むと、握った右拳をヴェルクの腹へボウガンの弾の如く打ち込む


    ジーク「近距離ならどうだ!『白矢(しらや)』」


    ヴェルク「なるほど、いい判断じゃ。だが!ワシが近距離の対策をしてねェと思ったか!」


    ジーク「何!?」


    ヴェルク「『桜花七分咲き(おうかしちぶざき)』!!」
  15. 21 : : 2014/07/07(月) 16:15:19
    第十二話  ―バックファイア―


    ヴェルクはポケットから花火玉をいくつも取り出し、次々に点火するとそれらを全て、投げること無く、ただ自らの前に手放す

    ジーク「ま、まさか!」


    ヴェルク「そう!そのまさかじゃ!!」


    ―ドカーーーーーーーーーーーーーン!!!!


    爆発がさらに大きな爆発を生み、それによってより強大な爆風が辺りを巻き込む
    そして爆炎の中心から白髪の男が激しい勢いでカッツェの前を横切る


    カッツェ「社長ーーーーーーーーー!!!・・・そ、そんな・・・」


    ジーク「くっ、大丈夫だ。俺はこの位じゃ死なない。だが、何て無茶な野郎だ。まさか花火の爆風で体を吹き飛ばし距離をとるとは・・・あいつの方こそただじゃ済まないはずだぞ・・・いかれた考えだが」


    ジーク「中々面白いじゃないか」


    カッツェ「こ、この状況を楽しんでる!自分が死にかけたというのに!」


    ヴェルク「あんちゃん、なかなかやるじゃねぇか。この爆風を耐える男、ワシ以外じゃ初めてじゃ!だが!この距離はワシの得意とする距離!見とけ!仕掛け玉、手投げ弐の型!『蜂(はち)』!!」


    ジーク目掛け投げられた玉は途中破裂すると、幾つもの火花の塊が不規則に飛び回り、小さな爆発を繰り返しつつジークを襲う


    ジーク「また面倒なのが出たな・・・次の一撃で終わらせないと、このままでは俺が体力面で圧倒的に不利になる」


    ジーク「ここはこの技で切り抜け、距離をつめよう。『白百合(しらゆり)』」


    風に揺れる百合の花の如く、火花をかわすジーク
    次第に二人の距離が詰まる


    ヴェルク「それをかわしても、これがある!『桜花七分咲き』!!」


    ジーク「俺に同じ手は二度通じない!『白猪』!!」


    ジークは花火玉が点火され、ヴェルクの手から離れた瞬間、ヴェルクの正面に飛び込み、がっしりと強くヴェルクの胸倉を掴む


    ヴェルク「しまった!」


    ジーク「これで離れなくて済む!!」


    ―ドカーーーーーーーーーーーーーーン!!!!


    爆発とともにヴェルクは吹き飛ぶが、ジークは胸を掴んだままその手を離すこと無く、ヴェルクを捕えたまま、足を高く振り上げる


    ジーク「中々面白かった。だが、負けるわけにはいかない。これで終わりだ!」


    ジーク「『白鷹(しらたか)』!!」


    ズドンッッッッッ!!!


    ヴェルク「ぐおーーーーーーーーっ!!」


    ヒューーーーーーーーーーン!!!


    下から上へ、鷹が飛び立つように蹴り上げられたヴェルクは、勢いをそのままに落下し、地面に叩きつけられる


    ドンッッッッッッッ!!!!!!


    ヴェルク「ぐっ、、、効いたわい、、、まさか、こんな一撃を食らうとは、、、あんちゃん、なかなかやるじゃねェか、、、ぐふっ、こりゃァ、ワシの負けじゃな、、、」


    ジーク「―久しぶりに、いい戦いが出来た。礼を言う。ありがとう」


    ―ダッダッダッ、、、


    カッツェ「社長~~~~~~~!!!」グスッ


    ―ギュッ


    ジーク「何を泣いている。俺が勝つのは当然だ。―あんまり長く抱きつくなよ。恥ずかしい」


    ヴェルク「―こんなに気持ちいい勝負、した事なかったわい、、、約束どおり、あんちゃんを信じよう。悪い事したな、姉ちゃん」


    カッツェ「いえいえ!もう済んだことですし!とりあえず、一件落着ですね!」


    ジーク「―だな」


    ―ダッダッダッダッ、、、


    男「―ハァハァ、、、さっきからすごい爆音だが、何事だ!」


    ジーク「いや、ちょうど今解決した。何も問題ない」


    男「そうかい、、、だが、こっちはえらいことになってるぞ!南の方でまた火事が起こったんだ!!!」


    ジーク&カッツェ&ヴェルク「何!?」
  16. 24 : : 2014/07/08(火) 19:32:06
    第十三話  ―幸か不幸か―


    カッツェ「社長、もしかして、、、」


    ジーク「考えたくはないがな、、、」


    ヴェルク「―不安そうじゃが、あんちゃん、どうかしたのか?」


    ジーク「南には、、、俺の家、もといオフィスがある」


    ヴェルク「そうか、なら!ワシも一緒に行かせてくれ!もしかしたらワシの言う犯人がまだいるかもしれん!」


    ジーク「確かに、犯人の姿を知っている者が居るのは心強い、、、しかし、その体で動けるのか?」


    ヴェルク「なあに、これくらいの痛み軽いモンじゃ。―よいしょっと! なんにせよ、ワシもあんちゃん達も急がにゃならん。ここはワシの仕込みカラクリに任せとけ!」


    ヴェルク「いくぞ!『迫撃砲(はくげきほう)』!」


    ジーク「おいおい!弾ごと俺達を吹き飛ばす気か!」


    ヴェルク「ンな訳無かろう!早くこれに捕まるんじゃ!砲撃の反動でひとっ飛びじゃ!」


    カッツェ「なんて危険な・・・」


    ヴェルク「モタモタするなー!!いくぞ!」


    ―ズドォーーーーーーーーーーーーーン!!!!!



    ―ジークのオフィス前


    ―メラメラメラメラ、、、、、


    ジーク「―クッ、やはり・・・」


    カッツェ「そ、そんな・・・ひどい!ひどすぎる!」


    ヴェルク「ワシの家だけでなく、あんちゃん達の家まで・・・許せん!くらぁーーーー!!!居るなら出てこい!正々堂々ワシと勝負せい!」


    ジーク「―そうだ!こうしてはいられない!中に大切な物が!」


    ―ダッダッダッダッ、、、


    カッツェ「待ってください!社長!こんな火の中無茶です!」


    カッツェの叫びも虚しく、ジークは火の中へと消える―


    ヴェルク「こんな火の中、命知らずにも程があるじゃろ!」


    カッツェ「アンタが言うな!!!」


    ―しかし、わずか五分後、大量の荷物を抱えたジークが火を割って現れる


    カッツェ「社長!!ご無事でよかった!!てっきり髪の毛ごと真っ白な灰になって燃え尽きたかと・・・」


    ヴェルク「失礼なこと言う姉ちゃんじゃの・・・まあ、無事みたいでホッとしたわい。それより、その荷物はなんじゃ?」


    ジーク「―ハァハァ、、、なんとか全部持ち出せたか・・・確認しないと・・・」


    ジーク「あー、スーツ、名刺、携帯、っと、これは火でやられたか・・・靴、メガネ、手袋、ペン、手帳、今まで六年間ため込んだこの世界の資料、食料、、、」


    ジーク「―金庫、よし、全部あるな、完璧だ」


    カッツェ「完璧だ、って!自分の家燃えてるんですよ!完璧どころか問題だらけですよ!」


    ジーク「別に俺はこれだけあれば大丈夫だ」


    ヴェルク「心の読めねェ兄ちゃんじゃのゥ、あんちゃんは。そうじゃ!犯人はどこじゃ!すっかり忘れておった!」


    女「私、見ました。ここに火を点けた人を・・・」


    カッツェ「本当ですか!どんな格好でしたか!?」


    女「はっきりとは解りませんが、ちょうどあなたのような長い黒髪で、体が燃えていたので火の能力者かもしれないです。それと、こんなことをつぶやいていました。『これで目的は達成した』とか・・・男の人の声でした・・・」


    ヴェルク「目的じゃと!ワシの家もその目的のために燃やされたのか!許せん!ソイツはどこへ向かった!ワシの『超とっておきのカラクリ』で木端微塵にしてやる!」


    女「どこへ行ったかまでは解りませんが、『ウム・シュリーセン』がどうとか―」


    ジーク「ウム・シュリーセン!なぜその名が!」

  17. 25 : : 2014/07/08(火) 19:32:36
    ―続き



    ヴェルク「何なんじゃ?その、うむなんちゃらとは」


    ジーク「世界政府だ!この世界の海の中心に本部を構える最大の組織。その島の名が、『ウム・シュリーセン』」


    ヴェルク「まさか、政府が絡んどるのか!」


    ジーク「その可能性もあり得る。しかし、その名が出たということは、そいつもそこへ向かうだろう。・・・くっ、」


    ―バタリッ、、、


    ヴェルク「ああ、あんちゃん!そんな傷で、無茶するかr、、、」


    ―バタッ、、、


    カッツェ「アンタも人の事言ってられないですよ!―ごめんなさい。たくさん情報いただいてありがとうございます」


    女「いえいえ、それより、お二人のお体が、、、ひどい傷、、、西エリアにいい宿があったはずです。よかったら案内しますよ」


    カッツェ「ホントすみません・・・そういえば、どうしてここにいらしたんでしょうか?」


    女「私、ここで切り離しのパフォーマンスをさせていただいてる手品師でございます。今日もいつも通りここでパフォーマンスをしていたら、まさかこんなことに・・・私、止められなかった・・・」グスンッ


    カッツェ「気にしないでください。ですが、あの手品師さんでしたか。とりあえず、宿に向かいましょう。」


    手品師の女「―そ、そうですね。辺りも暗くなってきましたし、宿が満員になる前に行きましょう」


    ジークとヴェルクはそれぞれカッツェと手品師の女に担がれ宿へと向かう


    ―ウム・シュリーセン近海・東の海


    ―ユラ、ユラ、ユラ、、、


    一艘の木のボートが二人の人間を乗せて漂うように進む


    ?「もうすぐ着くか、シビア」


    ボートを漕いでいるのは、女ひとりで、もう一人はどうやら寝ているようだ


    シビア「はい、っていうか、普通こういう力作業は男がやってくださいよ」

          
    男「確かに、あそことウム・シュリーセンまではかなり距離があるしな。でも、知ってるだろ。俺の『体質』ではこのボートには触れない。さあ、もうすぐだ!ハイっ、イチ、ニッ、イチ、ニッ、・・・―」


    シビア「ったく、、、いつか絶対殺してやる・・・あっ、忘れてた」


    シビア「この人、殺せないんだった」
  18. 26 : : 2014/07/09(水) 20:45:58
    第十四話  ―夜八時、アートメンに集合―


    ジーク「―返せ!・・・返せ!・・・また・・・俺から・・・一体何なんだお前は!!・・・うああああああ!!―」


    カッツェ「社長!」


    ジーク「―ハッ!夢か・・・」


    カッツェ「大丈夫ですか?社長。かなりうなされてたみたいで、私、ずっと・・・ファー、、、眠れなくて、、、」


    ジーク「そうか、悪いことをした、、、ここはどこだ?」


    カッツェ「西エリアの宿です。あの女の人が部屋を用意してくれたんです。あの人、この前の手品師の人だったんですね」


    ジーク「俺は知ってたがな。そうだ、あの爆発危険男は?」


    ヴェルク「誰が爆発危険男じゃ。ワシはグッスリ眠れたぞ」


    カッツェ「二人ともグッスリというか、グッタリでしたけど、、、」


    ヴェルク「しかし、花火師とはいえ、二件の火事は心が詰まるわい。―そうじゃ!ゆっくりしてる場合じゃねェ!犯人じゃ!犯人を追わねば!」


    ジーク「まあ、待て。その前にやる事がある」


    ヴェルク「何だ?さっさと終わらせてくれ」


    ジーク「ヴェルク・フォイアーだったな、お前の名は」


    ヴェルク「そうじゃが・・・」


    ジーク「俺が社長である事は大体解っているだろう。だから、今ここに宣言する」


    カッツェ「ま、まさか・・・」


    ジーク「ヴェルク・フォイアー。お前をわが社の社員として採用する」


    カッツェ「やっぱり、、、まあ、いいですけど。社長がそうしたいなら」


    ヴェルク「・・・なんじゃ、そんなことか。でもワシは人の下に就くのが嫌いじゃ」


    カッツェ「えーーーーーーー!!!」


    ヴェルク「じゃが、あんちゃん、いや、ジーク。お前は別じゃ。いいじゃろう!このヴェルクの身、あんちゃんに預けよう!!」


    ジーク「ふっ、やっぱり面白いやつだ。俺の目に狂いは無かった」


    カッツェ「一時はどうなることかと、、、」


    ヴェルク「で、どうするんじゃ?ワシは火薬の補充をしたらいつでも出発できるぞ」


    ジーク「そうか・・・なら、集合は今日の夜八時、西エリアの玄関口、『アートメン』だ」


    カッツェ「え!?夜ですか!?明るいうちに行きましょうよ!」


    ジーク「俺も最後にこの国でやるべき事がある。それに、ちゃんとした理由もある」


    カッツェ「まあ、そういうことなら、、、」


    ヴェルク「そうと決まれば、ワシは先に行くぞ」


    ジーク「なら、俺もそろそろ出るか」


    カッツェ「ちょっと待ってください二人とも!」


    ジーク&ヴェルク「ん?」


    カッツェ「朝食がまだですよ!いいんですか!?」


    ジーク&ヴェルク「・・・」


    ジーク&ヴェルク「―食う!!」

  19. 27 : : 2014/07/09(水) 22:01:02
    第十五話  ―俺の夢―


    ―午前十時、宿を出て一時間
    ジーク、カッツェは西エリアの本屋へ、ヴェルクは火薬の補充とカラクリ用の金属片を求め町中を駆けずり回る


    ヴェルク「―ゼェゼェ、かなりの長旅になるじゃろう、アレがあればきっと役立つな、、、ジーク達も喜ぶじゃろう、、、」


    ―西エリア・本屋


    カッツェ「こんなところに来て、やるべきことってまさか、自分の本の自慢ですか」


    ジーク「そんなわけないだろ。これから行く町や国の地図や本を買う」


    カッツェ「こういう事は真面目なんだよなぁ・・・」


    本屋のおばちゃん「あんた、ジーク・ヴァイスだね。あんたの本、大好きだよ」


    ジーク「おお、やっぱりそうか!ありがとう、おばちゃん」


    本屋のおばちゃん「いやいや、この時代、能力もいいが、やっぱり本を読むのが一番楽しいね。また、アンタの新作、また読みたいねぇ・・・」


    ジーク「そうか、まあ、期待しといてくれ。じゃあ、この本全部、その新作のワクワク払いで」


    本屋のおばちゃん「はいはい、サービスしとくよ。その代わり、ワタシが死ぬまでに読ませておくれよ」


    ジーク「おいおい、縁起の悪いこと言うなよ。それじゃ、またいつか」


    カッツェ「まったく・・・調子のいいこと・・・」


    ―西エリア・宿の近く


    カッツェ「―で、どうするんですか?あんな約束しちゃって」


    ジーク「別にどうということはない。むしろ都合がいい」


    カッツェ「?」


    ジーク「どちらにせよ、俺は近いうちこの国を離れるつもりだった。俺の夢のためにな。ちょうどそんな時にカッツェやヴェルクに出会い、家が燃え、帰る場所を失った事はもはや運命さえ感じさせる」


    カッツェ「私には理解できませんが・・・それより、社長の夢って何ですか?」


    ジーク「俺の夢、それは」


    ジーク「世界一の自伝を書くことだ」


    カッツェ「・・・自伝?」


    ジーク「ワクワクを忘れたこの世界に、感動を与えられる、誰も真似できない最高のストーリーをな」


    カッツェ「いいこと言ってるような、ただのナルシストのような・・・」


    カッツェ「でも、ちょっと興味あります、私。その最高のストーリーに」


    ジーク「そうか。そうだ、カッツェには夢はあるか?」


    カッツェ「うーん・・・そう言われると、あるような、ないような、、、」


    ジーク「ま、そう焦らずとも、夢や目標なんてものは、自分の知らないうちに後から付いてくるものだ。だから、今はただ―」


    ジーク「俺についてこい」


    カッツェ「―・・・わかりました。私、カッツェ、秘書として、あなたの夢の果て、見届けさせていただきます」


    ジーク「・・・ほら、付いてきたろ、お前の目的」

  20. 28 : : 2014/07/10(木) 00:00:15
    ジーク格好いい!!
  21. 29 : : 2014/07/12(土) 19:26:03
    第十六話  ―The Biginning Of The Journey―


    ―午後八時、アートメン


    カッツェ「いよいよ、ですね」


    ジーク「ああ、もうすぐ始まる。俺たちの旅が。世話になったこの国にも、お別れだ」


    ジーク「・・・ヴェルクはまだか?」


    カッツェ「何かまた問題を起こしてなければいいですが・・・」


    ―ダッダッダッダッ、、、


    ジーク「ん?お、ヴェルクが来たぞ」


    カッツェ「もう、心配させて、、、遅いですよ!」


    ヴェルク「―ゼェゼェ、、、いやァ、すまんすまん、ちょっと探し物をしててな、、、これから長い旅がはじまるんじゃ、でかい花火の一発でも打ち上げときたいじゃろ!よいしょっ!」


    ―ズドンッ!!


    ジーク「はぁー、これまたでかい砲台だな、、、粋な事してくれるじゃないか」


    ヴェルク「中の花火玉も特大サイズじゃ!この一発が、歴史的な一発となるのじゃ!」


    カッツェ「・・・よく解りませんが、とりあえず最初はどこへ向かいますか?」


    ジーク「まずはここから一番近い、『トラウム』を目指す」


    カッツェ「トラウムといえば、あの食と道楽の国『トラウム』ですか?」


    ジーク「そうだ。よし、ヴェルク!花火の準備だ!」


    ヴェルク「あいよ!」


    ジーク「俺は世界一の自伝を書く為」


    カッツェ「私は社長の夢の果てを見届ける為」


    ヴェルク「ワシは炎を起こした男を追う為」


    ジーク「出発だーーーー!!!!行くぞーーーーー!!!」


    カッツェ&ヴェルク「おーーーーーーー!!!!!」


    ―ヒューーーーーーーーーー、、、、、


    ―ドォーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!


    ―こうして、ジーク達の旅が始まる
    大きく、眩しい花火が夜空を彩り、祝福の音を奏でる



    時代が、世界が今、大きく動こうとしている




  22. 30 : : 2014/07/12(土) 19:31:59
    どうも、sugarです!

    これをもちまして、Siegの第一章を終了いたします!

    次回より、新章「トラウム編」が始まります!

    食と道楽の国にて、ジーク達に何かが起こる!
    さらに、カッツェの過去が明らかに!?
    初の本格バトルもあるかも!

    ご期待ください!!
    ご愛読ありがとうございました!!


  23. 31 : : 2020/10/03(土) 09:08:38
    高身長イケメン偏差値70代の生まれた時からnote民とは格が違って、黒帯で力も強くて身体能力も高いが、noteに個人情報を公開して引退まで追い込まれたラーメンマンの冒険
    http://www.ssnote.net/archives/80410

    恋中騒動 提督 みかぱん 絶賛恋仲 神威団
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    http://www.ssnote.net/archives/85091

    害悪ユーザー空山
    http://www.ssnote.net/archives/81038

    【キャロル様教団】
    http://www.ssnote.net/archives/86972

    何故、登録ユーザーは自演をするのだろうか??
    コソコソ隠れて見てるのも知ってるぞ?
    http://www.ssnote.net/archives/86986

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