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鬼神演舞其之弐 同居者編

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  1. 1 : : 2014/04/03(木) 15:51:35
    何とか2話目に繋がった・・・・・・・・・・・・果てるゼ★

    兆候編からの続きです。
    正式タイトルはまだ決めていません!
    またおいおい決定していきます。

    この編から捏造(と言う名のオリジナル設定)が
    出現してきます!

    では楽しみにしてて下さい!

  2. 2 : : 2014/04/03(木) 16:19:15
    イリスしっかりしろ、イリス!!
         クソ! コイツ正気失ってやがる
     イリス、俺だコウタだよ! イリス!!
    リーダー気をしっかり! 
             コウタソイツを抑えろ
     何をするつもりですか!?
        大人しくしてもらうだけ、だっ!!

          
    やっと静かになったか・・・・・・・・・・・・
          イリス、どうしたんだ?
     私にも分かりません・・・・・・でも 
           ・・・・・・・・・・・・でも、何だ?
      これじゃあ、どっちが私達の驚異なのか
     まあな、それは言えている。
      このバケモノを
      素手でバラバラにしちまったんだしな
     なあ、はなしこんでないで
     ハヤくヘリニのロウゼ、ムズカシ・・・・・・
     ・・・ハ・・・・・・グラニ・・・ッテカラ・・・・・・
      


          
  3. 3 : : 2014/04/03(木) 16:38:06
    面白すぎ!
    早く続きが見たい!
    期待
  4. 4 : : 2014/04/03(木) 16:39:20
    目の前には白が一面に広がっていた。

    「・・・・・・・・・・・・ココ、ハ?」

    体を起こそうとしても、うまく動かない。

    「やあ、起きたかい?」

    「え」

    聞き慣れた声だ。

    その方を向くと、やはり、だ。

    「意識はしっかりしているみたいだね。
    僕が誰だか分かるかな?」

    「さかき・・・・・・はか、せ?」

    「その通り! 記憶は大丈夫みたいだね。
    ・・・・・・まだ眠気が残っているのかな?」

    「なんか、頭が クラクラ、します」

    頭の中にモヤがかかった感じがして、
    眠たい、と言う考えが集中でない。

    「ふむ、そうか」

    「あの・・・・・・ここ、は?」

    「前までシオちゃんがいた部屋、
    って言ったら、分かるかな?」

    言われてみれば、落書きの後や、
    新しく張り替えられて
    そこだけ不自然に目立つ壁、
    など、確かに面影が残っていた。

    「・・・・・・・・・・・・何で、ここに?」

    「君は、ちょっとした事情でね、
    しばらくの間ここに
    隔離されることになったんだ」

    「事情、ですか?」

    事情って、何だろ?

    すると、榊博士が後ろから、
    医療用カートを引っ張ってきた。

    「これが何か、分かるかい?」

    その上には、2つに分解した
    アーティフィシャルCNSが鎮座していた。

    「僕たちがつけてる・・・・・・
    ・・・・・・腕輪、ですよね?」

    「正解だ。
    そしてこれは、君が着けていた、腕輪だ」

    「は?」

    僕は頭の中が真っ白になった。
  5. 5 : : 2014/04/03(木) 16:57:52
    「僕の、腕輪・・・・・・?
    そんなはずは、だって・・・・・・!!」

    そう言って、右腕をあげようとした
    ときだった。

    動かそうとした、何かが喰い込んで
    全身を固定した。

    「っ、これは!?」

    「君は今、ヒトと荒神の中間点を
    さまよっている、
    非常に不安定な状態なんだ。
    今、急いで新しい腕輪を作ってるから、
    それまでの我慢だ」

    「我慢って・・・・・・まず他の皆は!?」

    「皆、重傷だったけれど大丈夫。
    命に別状はないよ。皆医務室で寝てる」

    そっか、良かった・・・・・・

    僕は、途中からの記憶が
    かなり曖昧になっていたから、
    皆がどうなったのか知らないままなのだ。

    「・・・・・・・・・・・・それで、何がどうなって
    こんな事になったんですか?」

    「分からない」

    「え」

    何を言っているだ、この人は?
    分からないって、え、どう言うこと?

    「まず、事の始まりからして
    不明なことばかりなんだ。
    結果から逆算して原因を探ろうとして
    それには限度があってね。
    例えば、君の腕輪が外れた理由だけど、
    何らかの理由で結合がゆるんで、
    そのままさっきの任務で
    無茶をした結果外れた。
    さて、何らかの理由って? って話だよ」

    「・・・・・・・・・・・・」

    「まぁ、ソーマ君が少し前に
    話してくれた事が鍵となって、
    それなりの仮説は立てられたんだけどね」

    「仮説?」
  6. 6 : : 2014/04/03(木) 16:59:04
    >>3
    有り難うございます!

  7. 7 : : 2014/04/03(木) 20:00:25
    「そう、仮説だ。
    最近君が発する雰囲気が
    ソーマ君に似てきている、
    って言われてね、本人から。
    最初はどう言うことかよくわからから
    詳しくは訊かなかったんだけど、
    今回の件で思い当たる節が出てきたんだ」

    榊博士は一呼吸おいて説明を始めた。

    「さて、これまでに君は何回
    際立って危ないことをしてきたかな?」

    え、そんな事・・・・・・・・・・・・えぇと、確か

    「大きいのは2回、位だと思います。
    細かいのを入れたら
    もっと増えるけど・・・・・・」

    「うん、じゃあ大きい方って言うのは
    具体的に言うと何かな?」

    「リンドウさんの神機を握ったときと、
    コウタをハンニバルから庇ったときです」

    「そう、それだよ!」

    突然のことに、僕は
    どう反応したらいいのか
    分からなくなった。

    そんな僕にお構いなしに、
    榊博士は続ける。

    「君はリンドウ君の神機と無理矢理
    接続したはずなのに、生きている。
    今までの考え方では、全く
    意味不明だったんだ。
    そこで、ソーマ君の話が加わった。
    彼と似た雰囲気を放つ、即ち
    通常の神機使いよりも荒神に近い存在」

    僕はもう、この人が何語を話している
    のかが分からなくなりかけていた。

    「君は、半荒神化した状態で
    奇跡的に生き延びている。
    いや、もっと現実的なことを言うと、
    君に埋め込んだオラクル細胞が
    あの時の拍子で変異してしまったのでは?
    それが僕の立てた仮説だよ」

    「・・・・・・・・・・・・はい」

    「いまいち理解していないようだね・・・・・・」

    「勉強とかは苦手なんですよ・・・・・・」

    「ハハハ、それは仕方ないね。
    じゃあ、もう少し噛み砕いて説明するよ。
    まず、君たち神機使いは、
    選ばれたとき最初に何をされたかな?」

    「神機を握って、そのまま
    そこにある腕輪をガチョンって
    填められました。痛かったです」

    「そう、腕輪ことアーティフィシャルCNS
    の装着だね。
    さて、この腕輪の仕事は
    大まかにいって2つある。
    神機の変形司令塔としての役割と、
    適合者の荒神化を防ぐ役割だね」

    「・・・・・・・・・・・・P53偏食因子」

    「そう、その腕輪からは君たちに適合した
    P53偏食因子が定期的に分泌されているね」

    ここのあたりは、神機使いとして
    当たり前の知識だから、僕でも分かる。

    「少し話は変わって、荒神を倒すための
    神機だけど、これらも言ってしまえば
    一種の荒神だ。
    つまり、オラクル細胞で構成されている
    わけだから、生身の人間が不用意に
    さわったら食べられかねない。
    だけど、さっきも言ったとおり
    神機も荒神だから、偏食傾向がある。
    その内の1つが
    さっきも言ったP53偏食因子だ。」
  8. 8 : : 2014/04/03(木) 21:55:46
    何でこの人は書類仕事を
    やっている時よりも、
    今みたいな時の方が
    活き活きしているんだろ、
    僕は心の隅でそう思った。

    「もとを正せば、神機もそれぞれ
    違う種類の荒神みたいなものでね、
    それぞれ偏食傾向が異なるんだ。
    その中で奇跡的に合致しているのが
    P53偏食因子だ。
    だから、自分に適合していない神機と
    接続してしまうと偏食因子以外の面で
    食べられちゃう、だから侵食されて
    しまうんだ。
    ちょうど、野菜スープの中でニンジン以外は全部食べられる、
    みたいな感じだね」

    「最後の説明で凄く分かり易くなりました」

    「そうかな?
    じゃあ続けるよ。
    さて、ここで君の話だ。
    ボクの仮説でいくと、君は
    半荒神化した状態で神機を扱っていた。
    つまり、君の神機にとって君自身は
    食べられるか食べられないか
    分からない存在になってしまったんだ。
    原因は変異したオラクル細胞と
    P53偏食因子だ。
    それが原因で、CNSからの指示が神機に
    上手く伝わらず戦闘成績の低下を招いた。
    つまり、君の変異した偏食因子と
    神機のオラクル細胞がケンカしていたんだ」

    「そう言う、ことだったんだ・・・・・・」

    「そして、終いには君の腕輪も
    変異したオラクル細胞とケンカした末に
    打ち勝てず解除されてしまった。
    だから、ココに君の腕輪がある」

    「・・・・・・じゃあ、
    今の神機の適性は外れても
    神機使いを引退する必要は
    無いんですか!?」

    「もちろんさ!」

    よかったぁ、僕は心の底からそう思った。
  9. 9 : : 2014/04/03(木) 23:05:29

    「・・・・・・まあ、それもあくまで仮説。
    イフの話だ。
    つまり、証明できる事象が用意できないと、
    この話はどこまで行っても机上の空論だ」

    そう言いながら、博士は後ろを向いて、
    何かを始めた。

    「・・・・・・・・・・・・博士?」

    ボクは不安になって、
    情けない語調で尋ねた。

    「何を・・・・・・しているんですか?」

    「それはね・・・・・・・・・・・・」

    博士が背筋を伸ばして、
    僕の方に向き直った。

    「僕が立てたの仮説の証明さ!
    君の血液と皮膚を少しずつもらうんだよ」

    サラッととんでもないこと
    を言ってませんか、博士ちょっとぉ!?

    僕は青ざめた。

    榊博士は通常時はまだマトモな
    振る舞いをするけど、
    何か好奇心を掻き立てる事情が出来たら
    それにのめり込んでしまう人物である、
    と言うことを僕はすっかり忘れていた。

    「あのぉ、博士・・・・・・恐いです」

    「あれ、イリス君は
    先端恐怖症だったかな?」

    「違いますけどっ! 
    博士の雰囲気が恐いんですっ!!」

    「アハハ、安心しなよ。
    少しチクッとするだけだから」

    いやいや、そう言う問題じゃ
    なくてですね博士、
    貴方から滲み出ている
    マッドサイエンティストなオーラが
    凄まじく恐いんですよぉ・・・・・・

    光源を背にして立っていたら、
    博士の顔が影で薄暗くなっていた。

    恐い、恐すぎる。

    僕は正直、この忌々しい拘束を
     引き千切って今すぐここから
    抜け出したい気持ちに駆られた。

    体はそうしようと、必死になって
    いるのだけど、
    拘束がなかなか解けない。

    「それはシオちゃんが暴れても
    大丈夫なように、
    僕が1から設計したものだから、
    ちょっとやそっとじゃビクともしないよ」

    それを訊いた瞬間、僕は諦めて、
    大人しくされるがままになっておこう、
    とその思いを態度で示した。



             プスリ
  10. 10 : : 2014/04/03(木) 23:26:10
    痛かった。

    そして何より、
    博士のあの雰囲気が恐かった。

    僕の右腕には2ヶ所に
    小さな絆創膏が貼られている。

    上腕にあるのが注射痕を、
    前腕にあるのが皮膚を打ち抜いた痕を、
    それぞれ隠していた。

    すぐに結果を出すからそれまで我慢しててね。

    博士はそう言って部屋もとい隔離棟を
    後にしたのが、僕の体内時計さえ
    狂っていなければ、5時間弱ほど前の話だ。

    1人でこんなところに閉じ込められる
    なんて、全くいつぶりだろうか?

    せめて誰かいてくれたらなぁ、
    僕はそう思わずにはいられなかった。

    それだけ、孤独というものは
    暇で寂しいのだ。

    「はぁぁ・・・・・・・・・・・・」

    体の底から沸き上がってきた感情を
    ため息として体外に排出する。 

    その行為も、さっきの分で
    何回目になるっけ?

    そんな事を考える傍ら、
    僕はいつもと違う右手首の感覚に
    変なストレスを感じていた。

    何か、足りない。

    いつもは邪魔だと思っていた代物だけど、
    いざ外してみると、何ともまあ心許ない。

    僕が神機使いになる前の状態に
    逆戻りしたような、
    無力というか虚無感に似た
    奇妙な感覚にとらわれる。

    誰か来てくれないかな・・・・・・・・・・・・
  11. 11 : : 2014/04/03(木) 23:46:30
    ここらヘんでお休みなさい!

    にしても読んでる人少ないなぁ・・・・・・・・・・・・
    どうやったら集まるんだろ・・・・・・・・・・・・(泣)

    コメントよろしくです、では!!
  12. 12 : : 2014/04/04(金) 08:47:29
    気が付いたら続編でてた!w
    期待です
  13. 13 : : 2014/04/04(金) 09:50:36
    >>12
    °・(ノД`)・°・アリガトウッ!! ボクガンバルヨ!!
  14. 14 : : 2014/04/04(金) 10:07:33
    そう言えば、僕の右腕の姿って
    どうなってるんだろ?

    僕は、出し抜けにそんな疑問にとらわれた。

    ・・・・・・とらわれてばっかりな気がする。

    まあ、そこはおいておくとして、
    疑問にとらわれちゃった。

    何故なら、かつてリンドウさんが
    荒神化しかけた結果として
    あの真っ黒でトゲトゲした右腕に
    変わったのだから、
    僕も何か変化しているんじゃ? 
    と思い至ったのだ。

    何せ、僕は半荒神化しているらしいから。

    気になるなぁ・・・・・・・・・・・・凄く気になる。
    気になって仕方がない。

    そそう思って、
    僕は右腕の現状を確認する、
    ただそれだけのために
    シオ専用拘束具に捕まった体を
    必死によじりまわした。

    荒神素材で出来ていそうな
    強靭な拘束ベルトを
    ギチギチガチャガチャ言わせながら、
    僕の頭の中で思い付く限りの、
    全ての脱出方法を試みていった。


    結果・・・・・・・・・・・・ことごとく失敗。

    地味に細く作られたベルトが
    金具ごと喰い込んで、
    ただ痛い思いをするだけだった。

    検査着という、ほぼ布一枚の
    状態だったから、
    尚更ダイレクトに痛い。

    完全に固定されて、逃げ出すことはおろか
    腕の一本も抜けない、
    と言うことを悟った僕は暴れるのをやめた。

    体中に変なアザが出来ていそう、
    僕はくたびれた思考回路でそう思った。
  15. 15 : : 2014/04/04(金) 15:32:20
    ふむ・・・・・・・・・・・・実に興味深い現象だ。

    僕の仮説は、どうやら当たりらしい。

    少し外れたのは、体内でのバランスが
    こちらの予想以上に安定していることだ。

    さっきイリス君の様子を見たが外見上、
    特に際立った変化は認められなかった。

    右前腕の色素変異をのぞいて、ね。

    精神状態も安定していて、
    ソーマ君達の報告がウソのようだ。

    任務中、最後になって更に新型の
    急襲を受けイリス君が重傷を負った。
    アリサ君がリンクエイドに行こうとした時
    彼が起きあがったのだが、正気を失っていた。
    そのまま彼は、暴走したかのように暴れ、
    ほとんど素手で、その新種を無力化。
    コアはソーマ君が無事回収した。

    それが、緊急デブリーフィングでの
    第1部隊の報告だ。

    ただ気がかりなのが、暴れているとき、
    どうかしたら荒神だけじゃなく
    仲間も攻撃した、と言うことらしい。

    彼らの重傷も、それに由来するところが
    ない訳じゃない。

    それに、彼のオラクル細胞の様子も
    さっき観察したけれど、
    確かに変異していた、と言うのもある。

    偏食因子もろとも、だ。

    アレは、既存の神機使い達が
    持ち合わせている
    オラクル細胞や偏食因子とは少し違った、
    特殊なものに変わっている。

    まず、何よりも大きな特徴は、
    僕自身予想外と言った、
    イリス君本人の細胞と、
    変異したオラクル細胞が
    上手く共存しているところだ。

    その仲立ちとなっているのが、変異した
    偏食因子・・・・・・・・・・・・

    P53i偏食因子、とでも言うべきかな。

    この3つが、イリス君の体内で
    絶妙なバランスを保っている。

    変異した偏食因子が
    自動分泌されているのが
    一番の原因だろう。

    が、確かにこれだと、第1、2世代型と
    問わず、P53偏食因子を偏食抑制剤とおかれた
    神機を、彼が上手く使えるわけがない。

    かと言って、ソーマ君のと同じタイプの
    神機も、まあ適合しないだろう。

    言い方は悪いけど、イリス君は
    異端的な神機使いになってしまった、
    と言うことだ。


    だけど、いくら安定しているとは言え、
    第三者からの管理は必要なわけだ。

    早く、彼に適合した腕輪を
    用意してあげなくちゃね・・・・・・・・・・・・
  16. 16 : : 2014/04/04(金) 16:04:32
    榊博士から僕の皮膚と血液を
    少しずつ拝借された日から、
    今日で3日目になる。

    相変わらず、この楽しくない部屋に
    隔離されている。

    それでも、僕の体内事情の安定が
    確認されたことで、
    拘束は解いてもらったのが、
    昨日の昼前の話。

    お見舞いは来ない。

    それにしても、
    僕の右腕の変わりっぷりには
    思わず情けない声で
    悲鳴を上げてしまった。

    僕の前腕部が真っ黒になっていたのだ。

    腕輪が外れちゃったから
    少し侵食されたのだろうか?

    そんなに気にすることはない、
    と言われたけど・・・・・・・・・・・・

    博士が言うには、今日か明日にでも
    腕輪の方は完成する、と言う話だった。

    だから、それまでの我慢だ。

    僕は、検査台に腰かけて、
    両手の全ての指先をくっつけて、
    親指から順にクルクルと回すという
    手遊びをしていた。

    ・・・・・・・・・・・・暇なのだ。

    このままだと、暇すぎるストレスで
    頭がオカシくなるんじゃないだろうか、
    僕はそう思った。
  17. 17 : : 2014/04/04(金) 20:17:52
    更に待つこと数時間、
    8時間から10時間弱ほどだと思うけど、
    やっと僕に娯楽が届いた。

    それは、束になった
    薄茶色のハガキとボールペンだ。

    届けてくれたのは、アナグラの職員の人で、
    僕の無罪隔離の状況を知っている人達からの
    厚意らしい。

    渡し方は、流石に
    直接とはいかなかったけど。

    それでも、
    ありがたや、ありがたや、
    僕はそう思わずにはいられなかった。

    「・・・・・・・・・・・・~♪」

    僕は鼻歌を歌いながら、誰に手紙を送るか、
    頭の中で宛先リストを作成した。

    「・・・・・・コジインノセンセイト・・・・・・ハルミクン・・・・・・
    ヘーネチャン・・・・・・ミーシャクン、ヨセフクン・・・・・・
    イーニャチャン・・・・・・アトハ・・・・・・」

    僕は思い付く限りの宛先の名前を、
    ハガキ一枚ごとに
    ローマ字の筆記体で書き込んでいった。

    その名前は全て、
    世界中に散らばっていった
    僕の孤児院時代の家族だ。

    「皆、元気にしてるのかなぁ・・・・・・」

    そう思いながら、
    僕は一枚目に手をつけた。
  18. 18 : : 2014/04/04(金) 21:44:38
    あなたは、神ですか!
    文章力が高すぎです。
    面白くてたまりません。
    期待!
  19. 19 : : 2014/04/04(金) 22:20:20
    >>18
    そんな、神だなんて大袈裟な(笑)
    誉めて出てくるのは文章だけですよぅ!
    でも、有り難う御座います!!
    がんばります!!
  20. 20 : : 2014/04/05(土) 02:29:38
    手紙の宛先の件数は
    結果的に10件になった。

    孤児院時代の家族と、
    春海君とヘーネちゃんの両家族だ。

    その10枚の手紙を書いた直後だった。

    対荒神装甲で出来た
    スライド式のドアが開いた。

    「や」

    入ってきたのは、白衣に身を包んだ
    リッカちゃんだった・・・・・・・・・・・・えっ!?

    「白衣!?」

    「私が着たら変かな?」

    変じゃないけど、いやむしろ新鮮で
    良い感じだけど!

    「いや、そうじゃないけど、何があって
    それを着てるの!?」

    いつものリッカちゃんは
    タンクトップとブカブカのツナギだった
    と思うんだ、僕は。

    「君の新しいCNSの制作の手伝いでね、
    いつも格好じゃ流石にアレだから」

    アレって何?

    「あぁ、そうなんだ」

    でも、深く訊いたら
    どこかで地雷を踏みそうだから、
    やめておく。

    「あ、そうそう忘れるところだった!
    君を呼びに来たんだよ!」

    「へ?」

    呼びに来たって、
    僕はここに隔離されてるんだけど?

    何で出してもらえるの?

    「腕輪の方がさっき完成したから
    連れて来てってね、
    榊博士に頼まれて来たんだ」

    「もう出来たの!?」

    確かに、榊博士は
    出来れば今日中にでも、
    とは言ってたけど、時間からして
    明日になる思っていたのだ、僕は。

    「私達技術班の実力を
    甘く見ない方が良いよ?
    キミ達の神機は勿論、CNSやその他の
    実戦装備の研究開発は、
    全部私達の仕事なんだ。
    CNSの一つや二つ軽いもんだよ」

    そう言って、彼女は誇らしげに
    胸を反らした。

    「あ、でもこれは着けててね」

    そう言うと、彼女は問答無用とばかりに、
    僕と両手首を特殊手錠で固めた。

    「・・・・・・・・・・・・これは?」

    「念のため、と言うか気休め、かな。
    ほら、今のキミのことはあまり
    詳しく知られてないから、
    不安がる人も結構いるんだ」

    あぁ、成る程ね。

    そして、僕はさっき気づいた。

    リッカちゃんの目の下に
    クッキリと出来た隈の存在に。

    「・・・・・・徹夜明け?」

    「んー、そんな感じだね。
    榊博士からキミのオラクルサンプルと
    偏食因子を急に渡されて、
    『このデータに合わせてすぐに
    イリス君の腕輪を作って!』って
    頼まれた時は
    正直何がなんだか分からなかったよ。
    キミの神機のことで手一杯だったからね」

    「・・・・・・・・・・・・心配かけた?」

    「そりゃあ、盛大に、ね」

    「何か・・・・・・ゴメン」

    「生きて帰ってきてるから許してあげる。
    でも無茶はしちゃ駄目だよ、絶対に」

    彼女はそう言って、
    人差し指を僕の鼻先にグッとたてた。
  21. 21 : : 2014/04/05(土) 10:27:19
    僕はリッカちゃんに連れられて、
    所定の部屋へと歩いていた。

    多分、最初に僕が腕輪をはめられた、
    あの薄暗いところだと思う。

    さて、そんな僕だが、
    特殊手錠をかけられて、そこからのびた
    ワイヤーに引っ張られて歩いている。

    引いているのはリッカちゃんで、
    その姿は、色々と彷彿させるらしい。

    「ネェ、イリスクンッテ、アアイウノガシュミダッタノ!?」

    「ワタシタチノイリスヒメガァ・・・・・・
    デモ、イガイトエニナッテルヨネ?」

    「ソウダヨネェ・・・・・・・・・・・・アレモアレデイイカモ」

    主に女性職員からの妖しい視線が、
    僕の背中にプスリプスリと突き刺さる。

    「リッカちゃん」

    「ん?」

    「皆の僕を見る目が、
    明らかにヘンなんだけど・・・・・・」

    「仕方ないよ、我慢して」

    「そんなぁ・・・・・・」

    「じゃあ、自己暗示でもかけてみる?
    僕はリッカちゃんのドレイだ、って」

    「冗談でしょ」

    「私はそれでも良いよ?
    キミのことは気に入ってるしね。
    ・・・・・・色んな意味で」

    ん? 何ヲ言ッテイルンダコノ子ハ?
    「私はそれでも良いよ?」
    いやいや、それは冗談でしょう!?

    「僕にマゾヒズムは期待しないでね?
    僕にそんな趣味はないから」

    周囲で聞き耳を立てている、
    主に女性陣の誤解を招かないように、
    僕はキッパリと否定した。

    「ネェ、アレッテ・・・・・・・・・・・・」

    「マサカノ・・・・・・・・・・・・」

    「「実はそうだけど
    恥ずかしいから言わないっていう
    新手のツンデレってヤツ!?」」

    違うよぉ、ツンデレじゃないよぉ・・・・・・

    僕はなんだか泣きそうになった。
  22. 22 : : 2014/04/05(土) 10:52:33
    そんな、誤解と好奇と、何かしらの
    イカガワシい視線に晒されながら
    歩くこと、約5分、
    僕らは目的の場所に到着した。

    「・・・・・・・・・・・・」

    僕は沈みきっていた。

    色んな誤解と誤情報が、あの場にいた
    何人かの女性職員の人達の口から、
    ところどころを良い感じに脚色されて
    アナグラ全体に届き回るんだろうな、
    と考えてしまっのだ。

    僕自身、女性による情報伝達速度の速さが
    一体どれほどのものであるか、
    と言うことを身をもって知っている。

    ・・・・・・・・・・・・小さい頃、それで
    ヒドい目に遭ったことがあるから。

    噂って、何日で鎮まるんだっけ・・・・・・?

    僕はかつての諺を、大真面目に
    思い出そうとしていた。

    「どうかした?」

    「今後のことが不安になった」

    「あぁ・・・・・・それは、どうしようもないね。
    自然におさまるのを待とっか」

    やっぱりそうなるよね、僕は心の中で
    半泣きになりながら思った。

    「じゃ、この部屋に入って」

    やっぱりこの部屋になるのか、
    僕はそう思いながら、
    懐かしむようにその部屋のドアを見つめた。

    《関係者以外立ち入り禁止》
    の警告テープがやけに目立つ。

    「後の指示は、中に入ってから
    こっちの方ででするよ」

    「・・・・・・分かった」

    それでも、さっきのことを
    ズルズルと引きずっていた僕は
    半ば拗ねたような声で返事をして、
    その部屋の中に入った。

    入る直前になって、僕は立ち止まり、
    リッカちゃんへ方を振り向いた。

    「どうしたの?」

    「・・・・・・・・・・・・やっぱり、痛いかな?」

    「・・・・・・・・・・・・多分ね」

    僕のメンタルは見事に撃沈された。
  23. 23 : : 2014/04/05(土) 19:53:52
    やはり、部屋の中は
    必要以上に広いままだった。

    最初に、僕が適合試験を受けに来たときと
    ほとんど変わらない。

    変わったところと言えば、
    中央にある検査台の周りに設置された
    ヘンな機械類と、周りに配置された
    ゲンさんと、リンドウさんくらいだ。

    なんだか語弊があった。

    いくつかの点で豹変していた、
    の方が正しいみたいだ。

    「あのぉ、何で
    リンドウさんとゲンさんが?
    しかも何故にリンドウさんは
    さも当たり前のように
    神機を持ってるんですか?」

    「珍しく榊のクソ坊主に
    呼ばれたと思ったら、
    ここで待機してほしいって言われてな」

    「んで、俺らがここにいるってわけだ。
    俺が神機担いでんのも、
    榊しぶちょー直々の指示だ」

    榊博士直々の指示?
    何のために?

    次々と疑問点が沸いて出てくる。

    すると、壁のスピーカーから
    ガガっとノイズが聞こえた。

    『そう、彼らがここにいるのは
    僕が頼んだからなんだ』

    不必要に拡大された榊博士の声が、
    部屋中をふるわせた。

    「うるせぇぞ榊っ!!」

    ゲンさんが耳をふさぎながら怒鳴った。

    そな顔はもう、泣く子も黙る、を
    見事に体現した形相だった。

    『ゴメンゴメン、音量を最大にしていたよ。
    これくらいで大丈夫かな?』

    さっきよりも格段に抑えられた音量で
    榊博士は確認をとってきた。

    僕も含めて、皆が頷いた。

    「ったく・・・・・・・・・・・・
    それにしても、いい加減
    命令したって言えねぇのか、
    えぇ、榊支部長よ?」

    『ハハハ、僕はそう言う堅苦しい言い方が
    どうにも苦手なんですよ、ゲンさん』

    元軍人らしいゲンさんの意見に、
    榊博士はいつもよりも弱腰だ。

    「で? 俺達がここに呼ばれた理由も、
    そろそろ教えてくれても
    良いんじゃねぇか?」

    助け船とばかりに、
    リンドウさんが話題の転換をしてきた。

    『そうだね、全員揃ったことだし。
    リンドウ君とゲンさんを呼び出して
    ソコに待機させた理由だけど、
    今からイリス君に
    新しい腕輪を着けるわけだけど、
    その時のもしもの時のための
    待機要員ってところかな?』

    「もしもの時ってぇのは何だ?
    濁した言い方をするな」

    少しイラッとした口調でゲンさんが訊いた。

    「俺でも分かるよう説明してくれ」

    リンドウさんも、それに続く。

    『うぅ~ん、そうだね。
    少し端折るけど・・・・・・・・・・・・。
    まず、今のイリス君のことだけど、彼は今、
    体内で特殊なオラクル細胞と偏食因子が
    共存しているんだ。
    だけど、何らかの要因でそれが暴走して
    イリス君が暴れ出すときがある。
    リンドウ君達には、その時の鎮静化を
    任せたいんだけど、良いかな?』

    「しぶちょーのご命令とあらば」

    『悪いね』

    僕は、リンドウさん達のやりとりを
    聞いている中で、
    訳の分からない言葉を聞いた。

    「・・・・・・・・・・・・暴走・・・・・・?」

    いったい何のことだ? 僕はそう思った。

    『ん、あぁ、君は
    何も覚えていないんだったね。
    イリス君には後で詳しく説明するよ。
    今はまず、腕輪の装着が先だ』

    僕の顔に出ていたらいしい。

    「・・・・・・分かり、ました」

    腑に落ちないものを感じつつも、
    僕は検査台そう返事をして、
    検査台の方へ歩いた。
  24. 24 : : 2014/04/05(土) 21:55:54
    いや、あなたは神です!
    続きが気になります。
    これからも頑張ってください!
  25. 25 : : 2014/04/05(土) 22:05:39
    >>24
    いやぁ~、有り難う御座います
    光栄です(*´д`*)テレテレ
  26. 26 : : 2014/04/05(土) 23:53:29
    「・・・・・・・・・・・・あのぉ」

    『何だい?』

    「痛くなくなる自己暗示とか知ってます?」

    「イリス、手前ぇも男なら
    それくらい我慢しろ!」

    泣き言を吐いて、
    ゲンさんの檄が飛んできた。

    僕は思わず肩をビクッと竦めてしまった。

    「まぁ、泣くほど痛ぇってのは、
    分からないでも無いけどな。
    ・・・・・・イリス」

    「はい?」

    「上官命令だ。
    ・・・・・・・・・・・・我慢しろ」

    出た、たまにあるリンドウさんの横暴命令!

    「リンドウさんヒドくないですか、それ」

    「ひどさなら、そこのオッサンの方が
    よっぽど悪質だ」

    「・・・・・・聞こえてるぞクソ坊主」

    ゲンさんの凄みのある声が響いた。

    「おぉ、おっかねぇ」

    リンドウさんは、それに
    おどけたように肩を竦めた。

    『それじゃあ、始めようか。
    さ、そこに横になって
    プレス機に右腕をのせて』

    僕は、ガチガチになりながら
    言われた通りに動いた。

    「・・・・・・・・・・・・のせました」

    『よし、いつでも始められるから、
    良くなったら言ってね』

    「はいぃ・・・・・・」

    そのまま僕は目をつぶって、
    何回か深呼吸をした。

    心拍数が明らかに上がっている。

    ある意味、
    最初の時よりも緊張しているかも知れない、
    僕はそう思った。

    「早いとこ腹括れボウズ。
    この手の緊張は後々に回すほど酷くなる」

    ゲンさんが、意外なほどに穏やかな声で
    言って、僕の覚悟をを促した。

    確かにこう言うものは
    さっさと終わらせるに限る、
    と言うのは僕も理解している。

    更に3回、深呼吸をする。

    「・・・・・・・・・・・・覚悟・・・・・・完了・・・・・・!!」

    『うん、懐かしいセリフと共に始めるよ!
    痛いのは我慢してね』

    装着機起動時警告用のブザー音が響いた。

  27. 27 : : 2014/04/06(日) 01:17:58

    《コレヨリアームドインプラントノ
    被験者ヘノ接続開始ヲシマス》

    無機質な音声がした直後、
    プレス機が僕の腕を挟んだ。

    刹那


    「っ、ぎ、ぅぐぅうぅぁぁあああ゙あ゙!!」


    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

    『イリス君、大丈夫かい!?』

    「・・・・・・・・・・・・」

    「おい、いざって時はお前が牽制しろ。
    眠らせるのは俺がする」

    「コイツで人を斬るつもりは毛頭ねぇよ。
    そんときゃアンタに任せるぜ、大尉殿」

    「ふん、言ってろ・・・・・・・・・・・・構えろ」

    「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

    どうなったんだ?

    イリス君のバイタル値のデータ転送が
    全部切れた。

    最後に確認したデータとしては
    特に目立った点はなかったんだけど・・・・・・

    こちらから見える限りでは
    特に彼自身に目立った外傷とかも
    確認できないんだけど。

    念のためだ、しかたない。

    「リンドウ君、百田大尉。
    警戒して」

    ・・・・・・彼らは実力的に見ても充分に
    信頼が置けるんだけど・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    念には念を押しておこう。

    「・・・・・・あぁ、僕だよ、そう。
    結果が分からない状態になった。
    ・・・・・・・・・・・・念のため準備をしておいて」


    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

    ここは・・・・・・どこだ?

    何も見えない・・・・・・じゃない真っ暗なのか?

    僕はどうなったんだ!?

    腕輪を装着される直前のことまでは
    覚えているけど、
    それからどうなった!?

    「・・・・・・コワシテヤル」

    「っ!? 誰だ!?」

    「・・・・・・コワシテヤル、クッテヤル、
    ジャマナモノハゼンブケシテヤル」

    「誰なんだ、どこにいる!?」

    「サアナ、サガセバワカル」

    「はぁ!?」

    「ホラ、ココニイルジャナイカ」

    「どこ!? 君は何者なんだ!?」

    「・・・・・・カンガエロ」

    「考えろって・・・・・・まずここはどこだ!?」

    「オマエノナカ、オレノナカ」

    「訳分かんないんだけど?」

    「ホンキデイッテイルノカ?」

    「?」

    「オマエハオレヲシッテイル。
    ナゼナラオマエハオレノアルジ。
    オレハオマエノアルジ。
    イツモ、ドコデモキョウゾンシテイルカラ」

    「何のことを言っているのかな?」

    「ワカラナイノカ・・・・・・
    イヤ、タシカニワカラナイカ。
    シカタナイ、ソコデミテイロ。
    ソシタラ、オレノイウコトモスグニワカル」

    「何をするつもり?」

          ・・・・
    「イッタン、モラウゾ」
  28. 28 : : 2014/04/06(日) 01:25:57
    自己満足的に面白くなってきたぁ!!
    けど、いい加減眠いからお休み!!

    それにしても、
    誰か読んでくれてる(´・ω・`)?

    やっぱり人が少ないと不安です(^^;)
  29. 29 : : 2014/04/06(日) 13:52:39
    真っ暗な世界に光が射し込んできた。

    目が開いたのだ。

    視界はボヤケて、
    微妙にピントが合っていない。

    僕の視界に入ってくる景色は
    ことごとく人間的感性を
    根刮ぎ取り去ったような、心無き白黒。

    そこに、色という情報はたった2種類しか
    存在しなかった。

    (あ・・・・・・れ?)

    僕は体を起こそうとした、のだが
    体が動かない。

    まるで、僕の言うことを
    頑なに拒んでいるような感じがする。

    すると、僕の目線が
    徐々に高くなっていった。

    上半身が起きた、らしい。

    自分の体なのに自分の感覚が働かない、
    と言う奇妙な感覚だ。

    自分で動かしている気がしない。

    ・・・・・・アタリマエダ、コノカラダハ
    イマハオレノモノダ。
    オレガオレノイシデウゴカシテイルンダ。
    オマエハミテイロトイッタダロウ・・・・・・?

    頭の中に声が響いた。

    僕はその声を聞いたことがある、いや
    目が覚める前に会話した相手の声だ。

    (ちょ、待って。君は何者なんだ!?
    あれはタチの悪い夢じゃなかったの!?)

    ・・・・・・ユメ、カ。
    キラクナカンガエカタヲスルノダナ、
    ニンゲントイウイキモノハ。
    イツマデタッテモ、ソノニンゲンラシイ
    カンカクハトリコメナカッタナ・・・・・・

    会話が、できる。
    僕の思考がそのまま言葉になっているのだ。

    (取り込めなかったって、
    君はいったい何を言っているの?)

    ・・・・・・ソノママノイミダ。
    オレタチガイクラタベテモ
    トリコメナカッタモノヲ、
    ニンゲンハモチツヅケテイル、
    ソレダケノコトダ・・・・・・

    (君は・・・・・・荒神、なのか?)

    ・・・・・・ソウイエバソンナフウニ
    イッテイルナ、オマエタチニンゲンハ。
    ダガ、ザンネンダッタナ。
    オレハ、ホカノヤツラトハチガウ。
    シュルイモ、タチバモナニモカモ・・・・・・

    (じゃあ君は何者だ?)

    すると、声は考える風に黙った。

    目を閉じたのだろう、
    また周りが真っ暗になった。

    ・・・・・・オマエノアルジデアリ、
    オマエノシモベデモアル・・・・・・

    考えに考え抜いた末の回答だ、
    その声はそんな雰囲気を含めて答えた。

    (僕の主で、下部って・・・・・・)

    ・・・・・・イツノヒダッタカ、オマエノ
    グコウガオレヲソウサセタ。
    オレトイウシモベニ、
    オマエハチカラヲアタエタ。
    ダカラ、イマハアルジニモナレル。
    カギラレタジョウキョウノナカデナ・・・・・・

    (君は・・・・・・もう1人の僕、とか、
    そんなのかな?)

    ・・・・・・チガウナ、マッタクチガウ。
    オレハオレ、オマエハオマエ。
    ムリヤリオナジニクカイノナカニ
    イッショニツメコマレタ・・・・・・

    (ますます、君が何者なのかが
    分からなくなったや)

    ・・・・・・イマニワカルサ。
    オレノミテルセカイヲミタラ、ナ。
    ダカラ、イマハダマッテミテイロ。
    オワッタラカエシテヤル・・・・・・

    (え、何、どう言うこと!?
    何をしようとしているんだっ!?)

    ・・・・・・ホラ、クルゾ・・・・・・

    視界が開いた。

    視界の真ん中に捉えられたものは、
    やけにハッキリと映るリンドウさんだった。
  30. 30 : : 2014/04/06(日) 21:52:49
    「おい、イリス・・・・・・?」

    リンドウさんが、神機の構えを少し解いて
    呼びかけてくる声が聞こえる。

    だけど、僕は
    それに返事をする術を持たない。

    何故なら、今、僕の体の主導権を握って
    いるのが、得体の知れない声の主だからだ。

    (リンドウさん、逃げて!!)

    その思いを、心で、いや僕の中で叫ぶ。

    だが、それが聞こえるはずもなく。

    「・・・・・・・・・・・・リンドウ、構えろ。
    アイツは・・・・・・イリスじゃない」

    ゲンさんが、探り見抜くような眼で
    僕を睨みながら言った。

    「薄々そんな感じはしてたさ・・・・・・
    コイツはヤバい奴の雰囲気だ」

    リンドウさんが、神機の剣先を僕に据えた。

    「・・・・・・・・・・・・グ」

    まずい、コイツが暴れ出す、
    そう感じた瞬間だった。

    「ぅグァァァァああ゙あ゙あ゙!!!」

    刹那、僕の体が跳ねるように動き、
    暴走を始めた。

    リンドウさんが僕に向かって撃ってくるが、
    僕の体はそれを軽く避け、弾き、いなし、
    その中でリンドウさんを敵と見なして
    本格的な活動を始めた。

    「ガァァアア゙ア゙!!」

    「ちっくしょ、早ぇな!」

    「リンドウ、コッチに誘導できるか!?」

    「っ、ソイツはキツい注文だ・・・・・・!!?」

    鈍く、耳障りな金属音が響いた。

    「っ、コイツっ神機を狙ってやがる!」

    「ガァッ! ガァッ! ッガアア!」

    僕の体は、リンドウさんの神機を、
    集中して攻撃し始めた。

    「・・・・・・・・・・・・くっそ、
    皆目ぇ閉じろっ!!」

    リンドウさんが、腕を振り下ろした。

    そして、一瞬後、僕は何も見えなくなった。

    (スタングレネード・・・・・・!)

    ・・・・・・カシコイナ、コノニンゲン。
    イヤ、ニンゲンジャナイナ。
    ハンパモノ、トイッタトコロカ・・・・・・

    (何をするつもりだ)

    ・・・・・・ジャマナヤツヲ、ケス・・・・・・

    (ふざけるなっ!!)

    僕の叫びを聞こえないものとして、
    この声の主は再び動き出した。

    「グォォオオアアアア゙ア゙ア゙!!!」

    轟叫が響いた。
  31. 31 : : 2014/04/06(日) 22:51:26
    明日か明後日には、
    第二編も終わる予定でッス!
    第三編のプロットも完成したんで、
    みなさん、これからも宜しく、
    楽しみにしてテ下さいっ!!
  32. 32 : : 2014/04/07(月) 14:32:16

    僕の中にいるコイツは、
    完全にリンドウさんとその神機を
    敵と認識していた。

    ボヤケる視界の中、この2つだけが
    ピンぼけせずにで映る。

    ゲンさんも、ややハッキリとした像を
    結んで僕の視界に入る。

    「おいリンドウ、何やってる!」

    「っ、コイツが、さっきよりっ、
    早ぇんだ、よっ!!」

    リンドウさんが苦戦する姿が、
    僕の目の前で捉えられている。

    僕の体は、リンドウさんだろうが
    神機だろうが、
    お構いなしに攻撃を続ける。

    「こっのおぉぉぉ!!」

    ここにきて、初めてリンドウさんが
    僕に向けて神機を振った。

    「リンドウっ!!」

    ゲンさんが怒鳴った。

    「不用意に神機を振り回すなっ!!
    イリスを殺す気か!?」

    「なぁに、当たりゃしねぇよ。
    にしても厄介だな・・・・・・
    おいオッサン、コイツに神機は
    ほとんど意味がねぇみたいだ。
    アンタがやらねぇと、神機がやられる」

    そう言って、リンドウさんは
    自分の神機に僅かに視線を向けた。

    所々の刃こぼれしているのが、僕にも見えた。

    「ったく、そのオッサンを
    働かせようってか?」

    「俺は、殴る蹴るってのは得意じゃねぇんだ」

    「仕方ねぇな・・・・・・リンドウ、
    もしもの時は、コイツを殺すつもりでいろ」

    「はっ、自分で言っといてソレかよ」

    「そんくらいの心構えでって事だ。
    峰打ちくらいは出来るだろ?」

    「ギリギリ、な」

    リンドウさんが、据えた眼をして構える。


    (いい加減鎮まれ!!)

    僕は、叫び訴えた。

    ・・・・・・ムリダナ。
    オレガコノカラダノアルジノアイダハ、
    コノカラダヲムリョクカサレルカ、
    イッテイジカンケイカシナイト、
    オマエニカエスコトガデキナイ・・・・・・

    だけど、それに対してコイツは
    理詰めでソレを拒絶する。

    (そんな・・・・・・)

    ・・・・・・ソシテ、イマコノママ
    セメルノヲヲヤメタトシテ、
    モシモアノハンパモノガ
    コノミヲキッタトキ、
    ホロブノハオレタチダ、
    トイウコトヲワスレルナ・・・・・・

    (・・・・・・くそぉっ!!)

    僕は毒づいた。

    ソレしかできないことが、
    剰りにも腹立たしく、耐え難かった。

    自分の体なのに、自分の意志から懸け離れて
    どこの誰とも分からない奴に操られる。

    屈辱だった。
  33. 33 : : 2014/04/07(月) 23:18:54
    僕の中のコイツは、完全に
    リンドウさんとその神機を
    敵と認識していた。

    白黒でピントがずれたの視界の中で、
    その2つがハッキリとした像を結んでいる。

    ゲンさんも、比較的ピントが合っている。

    (何故暴れるんだ!?)

    僕は叫んだ。

    ・・・・・・テキガメノマエニイテ、
    ソレデモタタカワナイリユウガ
    オマエニハアルノカ?・・・・・・

    (っ!)

    常に戦場に身を置く立場からして、
    その意見を真っ向から否定する術を、
    僕が持っているはずもなく、
    何も言い返せない。

    その沈黙が、肯定と見なされる。

    ・・・・・・ホラ、ムコウダッテ
    ソノキラシイゾ?・・・・・・

    僕の体は、正面に
    リンドウさんとゲンさんを捉えていた。

    姿勢は、攻撃的な前傾姿勢。

    僕にも伝わるコイツの意思、
    それは剰りにも分かりやすい敵意と殺意。

    それは、ゲンさんも気付いていた。

    「・・・・・・リンドウ、お前は
    コイツと距離を置いて戦え。
    コイツの相手は俺が引き継ぐ。
    お前はこのクソガキを牽制して、
    俺の所まで誘導しろ」

    「射撃はどうにも苦手なんだが・・・・・・
    そうも言ってられねぇしな」

    「お前のタイミングでやれ。
    俺はいつでも行ける」

    「・・・・・・りょーかい」

    そう言うと、リンドウさんは
    その場を動かずに神機を
    銃形態にスイッチした。

    銃口が、僕を捉えて離さない。

    刹那、銃口が火を吐きだした。

    と、同時に僕の足下で火花が散る。

    金属摩擦特有の、
    甲高い耳障りな音が更に続く。

    僕の体は、銃身の向きに合わせて
    舞うように動く。

    そのとき、僕は気付いた。

    ゲンさんが視界から外れている。

    だが、コイツはそれに気付いていない。

    敵と認識していなかったせいだろう。

    僕の体は踊り続ける。

    だが、その踊りの主導権を握っているのは
    コイツじゃなく、
    リンドウさんになっていた。

    壁に、床に、火花が散り、
    何発かは僕の腕や横腹を掠めた。

    痛覚まで乖離されていることに、
    皮肉ながら感謝した。


    そして、踊りが、強制的に終わりを告げた。

    「よくやったリンドウ!
    ここからは俺の仕事だっ!!!」

    視界が急に横ぶれを起こし、
    僕の体が横に吹き飛ばされた。

  34. 34 : : 2014/04/12(土) 01:13:34
    「ふん、手前ぇは体の使い方を
    まるで知らねぇらしいな」

    天地がひっくり返った
    視界の中におさまるゲンさんが、
    呆れた風を漂わせつつ威圧的に言った。

    「俺が稽古付けてやったクソガキは、
    もっと体の使い方を知ってたんだが・・・・・・
    お前、何モンだ?」

    ゲンさんは、そう言って
    拳を固め直して構えた。

    半ば隻腕の状態とはいえ、
    やはり元軍人だけあり、
    動きや構えに隙が少ない。

    コイツは、何をされたのか
    全く理解していないようで、
    一向に動こうとしない。

    体中の痛みが、ボクになだれ込み、
    苦痛を叫び訴えてくる。

    もしや、と思って
    自分で体が動かせるかを確認してみる。

    結果は駄目であったが、
    声は出せることがわかった。

    「ゲンさん!!」

    「イリス! お前か!?」

    「はい、そうですっイリスです!
    用件だけ手短に伝えます!
    僕は自分で体を動かせません、
    だから早くゲンさんが
    僕を落として下さい!!」

    言うだけ言うと、コイツが起きた。

    ・・・・・・ナニヲシテイル!?
    アルジハオレダ、オマエジャナイ!!・・・・・・

    (ふざけんな! お前が寝てるんだから
    俺が取り戻そうとするのは自然だろ!!)

    ・・・・・・カラダノシュドウケンヲニギッテイルノガ
    ドチラナノカヲワスレタカ?・・・・・・

    「っ、ちっくしょ、戻ってきた・・・・・・ぐっ、
    ゲンさん早く!!!」

    ある種の殺意にも似た感情を持ちながら、
    僕はゲンさんに向かって怒鳴った。

    「分かった、さっさと済ませちまおう」

    ・・・・・・オマエハダマッテミテイロ・・・・・・

    その瞬間、僕の体の感覚がまた消えた。

    だが、すでに遅く。

    ゲンさんが、僕の体の後ろに回り込んで、
    ボクの肩を極めた。

    刹那、嫌な濁音が肩から響く。

    そしてそのまま、空いた方の腕を
    ボクの首に絡ませ静脈と気道を絞める。

    苦しさこそ感じないが、
    僕の視界が徐々にボヤケてきた。

    もうそろそろ落ちるな、
    ボクがそう思ったときだった。

    「ぐ、ぎぃぃ、ぅがぁあああああ!!!!」

    やられてたまるものかと言わんばかりに、
    コイツが暴れ出した。

    「っ、こンの野郎・・・・・・!」

    ゲンさんが毒づいた瞬間、
    ボクの体はゲンさんの拘束を解いて
    彼を投げ飛ばした。

    ゲンさんが壁に叩きつけられ、
    膝を突いてむせる。

    「こぉんの野郎ぉぉおおお!!」

    リンドウさんが、神機を振りかざして
    僕に向かってくる。

    僕がリンドウさんの間合いに入った瞬間、
    神機が振り下ろされた。

    「がぁっ!!」

    それに一閃、僕の中のコイツが
    リンドウさんの仁喜に蹴りを見舞った。

    神機は弾き飛ばされ、
    回転しながら飛び、壁に突き刺さった。

    がら空きになったリンドウさんの胴に、
    僕の体は更に追撃の突きを見舞う。

    「なっ!?」

    リンドウさんもまた吹き飛ばされ、
    壁に背中を打ち付けて倒れ込んだ。

    起き上がる気配は、無い。

    「シャアァァ・・・・・・!!」

    「このっ、大人しくしやがれっ!」

    ゲンさんが僕を羽交い締めにし、
    今度こそ僕の体を固定した。

    「クソォッ、誰でも良いから
    早くコイツを黙らせろぉっ!!!」

    ゲンさんが怒鳴った。

    その瞬間だった。
  35. 35 : : 2014/04/12(土) 02:43:22
    スライド式の対爆ドアが開き、
    小柄な陰が走った。

    「イリス君、ゴメンねっ!!」

    その声が聞こえた瞬間、
    僕の体がくの字に折れたのを感じた。

    遅れて、腹に鈍い衝撃と痛み。

    コイツの支配が弛んだらしい。

    崩れ落ち、膝を突いていったん止まる。

    膝を突いた衝撃で、頭が下がった瞬間、
    更にうなじに強い衝撃が走った。

    正常だった視界が、
    だんだん揺らぎ始める。

    白黒だった世界が、
    途端に色を取り戻し始める。

    そしてすぐに、
    僕の視界が橋の方から黒く滲んできた。

    「っ・・・・・・・・・・・・」

    声は、出ない。

    後頭部に残る鈍痛が、
    思考を引き裂く。

    コイツは引っ込んで眠ったみたいだ。

    何も言ってこないし、
    僕の体を無理矢理
    どうこうしようともしない。

    「ゴメンね、手荒なことしちゃって。
    ・・・・・・・・・・・・起きたらまた謝るから、
    それまでは大人しくしててね」

    聞き慣れた声を遠くに感じながら、
    僕は奈落に引きずり込まれる。

    どうにか、眼球だけを動かして
    声のする方を見る。

    そこには、特大のスパナを担いだ
    リッカちゃんの姿があった。

    その表情は、視界が歪んで
    しっかりとは分からなかったけど、
    慌てた、みたいな雰囲気があった。

    その慌てが、何の感情に由来するのかは
    分からないけど。

    触れれば破れそうなほどに薄らいだ意識の中、
    僕は思った。

    (リッカちゃんなら・・・・・・ま、いっかぁ・・・・・・)

    そして、僕は落ちた。
  36. 36 : : 2014/04/12(土) 02:44:41


            ~END~
  37. 37 : : 2014/04/12(土) 02:46:18
    はいっ、第二章終わりましたっ!!

    読んで下さった皆様、
    心より感謝申し上げます!!

    コメント、アドバイスなどあれば
    オネガイシャスッ!!
  38. 38 : : 2014/04/12(土) 02:46:20
    書き方がうまいですね!
    面白かったです
  39. 39 : : 2014/04/12(土) 02:51:51
    >>38 有り難う御座います!。゚(゚´Д`゚)゚。

    ソウイエバ、謝らねば!

    春休み明けテスト、なるものの存在で
    投稿がストップしちゃって、
    >>31 の実行が出来てませんでした。
    誠に申し訳ございませんでした。
  40. 40 : : 2014/04/12(土) 09:13:57
    http://www.ssnote.net/archives/14505
     ⇧
    第三編です!
    皆、読んでくれると凄く嬉しい

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suemoto1225T90

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