「あ、気がついた!?」

俺の目の前にいきなりぬいぐるみが現れた。
なんなんだこいつは。

「え、あの、どうしたの?」

ぬいぐるみが俺に問いかける。

「いやどうしたもこうしたもないだろ。いきなり現れて。しかもそれがぬいぐるみ!」

ぬいぐるみは不機嫌そうな顔で俺をじーとみつめて一言。

「ぬいぐるみじゃない。」

「じゃあなんだってんだ」

「私は乃愛」

「なんだそれ。妙に人間じみた名前だな」

「そりゃあ人間だもの」

人間…?こいつが!?
いや、ないだろ。

「ところでここはどこなんだ?」

辺りを見回すとなんだかデパートの一角のようである。
右には本屋?左には雑貨屋…かな。

「さぁ分からないよ」

「とりあえず外行こうぜ」

俺は立ち上がり歩き出す。乃愛も俺にあわせて後ろを歩く。

「うわ…」

つい声に出してしまう。

「暗っ」

もう夜なのだろうか。
しかし、ここは本当にどこなんだろう。
俺のいた町ではない。
街灯がチカチカと光る。
街灯の明るさがあっても全然薄暗い。