このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
この作品はオリジナルキャラクターを含みます。
鬼滅の刃 〜哀傷ノ刄〜 【 罪 】①
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                  - 1 : : 2021/02/09(火) 18:18:49
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 〜まえがき〜 2021.02.09
 
 皆さん、こんにちは。空山です。
 
 この度、●新生note民の楽園●(http://www.ssnote.net/groups/2677)にて合作計画が持ち上がり、その中の一貫として今回私、筋力氏(http://www.ssnote.net/users/power)とさとりー氏を(http://www.ssnote.net/users/mzb3zabdgy)始めとした複数人で大人気漫画、アニメ『鬼滅の刃』の創作作品を書いていくことになりました。
 
 原作とは全く違うもうひとつの『鬼滅の刃』。
 更に残酷で、無慈悲な世界のなかにおけるもうひとつの炭治郎の戦いを私たちで描いていきます。
 
 地の文メインの創作となりますので、ご了承ください。
 
 それぞれの作家さんの良い所を出し合いつつ、尚且つグループにて推敲した文を投稿していくため、極力読んでいて気にならない内容を目指して執筆していきます。
 
 また、執筆は私たち以外にも他の方の意欲ある方の執筆もお待ちしております。前述のグループへ是非その方はご参加ください。
 
 それでは長くなりましたが、投稿して参ります。
 
 この偉大な作品の創作をさせて頂ける事を吾峠呼世晴先生に感謝しつつ、執筆していきたいと思いますので、よろしくお願いします。
 
 
 空山 零句
 
 
 
 ちなみに本編における意見、裏話はこちらのスレで受け付けています。
 鬼滅合作【大正コソコソ話・意見募集・コメント(http://www.ssnote.net/archives/88049)にて、どうぞ。
 
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                  - 2 : : 2021/02/09(火) 18:26:07
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 ※
 
 ー序章ー
 
 守りたいものが消えた世界で、人はどう生き、何を求めるのだろう。
 
 俺は、ふと、そんな事を思う。
 
 「炭治郎………─────よく、やった」
 
 紅い天狗の面。鱗滝左近次さんは、そういって血塗れの俺の紅黒い髪をくしゃりと、撫でる。
 しわがれた優しくも、厳かな声と、シワだらけの手で鱗滝さんは俺の頭を撫でてくる。鱗滝さんの声は、震えているようだ。何かに、うちしがれているかのよう。
 
 「……もう、大丈夫です、から。鱗滝さん」
 
 声の奥が震えている。
 俺が、手にかけたもの。俺が、守ろうと思っていたもの。守らなければならなかったもの。
 
 刀が、重い。
 
 ただの長男で、ただの炭焼きでしか無かった筈の俺の掌は血豆が幾つもでき、それが潰れて皮ばかりが厚くその身を硬くしていた。
 
 刀が、重い。滴っている。
 
 だけど、そんなものはとうに痛くない。何かが、壊れる音がした。
 
 刀が、重い。命を、叩き斬ったのだ。
 
 もう、戻らない。幸せが壊れる時は、
 
 ───刀の先には、血が滴っていて、その血は、
 
 いつも、一瞬。そして、
 
 ───「鬼」となってしまった、最愛の妹の、ものだ。
 俺は、斬り殺したのだ。
 守ると誓ったのに。
 冨岡さんに、救われた命を。埋葬した竹雄、花子、茂、六太、母ちゃんに、父さんに誓ったのに。
 
 そして────血の、においがする。
 
 その日から、俺は戦うと誓った。
 
 
 
 俺が、この世から一匹残らず全ての鬼を、滅殺すると。
 
 
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                  - 3 : : 2021/02/09(火) 18:31:04
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 原作 : 吾峠呼世晴 「鬼滅の刃」
 (週刊少年ジャンプ 連載)
 
 
 
 
 
 
 小説 : 空山 零句
 
 筋力
 
 さとりー
 
 
 
 ストーリー構成 脚本 : 空山 零句
 
 
 
 
 編集協力 : 進撃のMGS
 Rekka
 SSnote 未登録ユーザー
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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 哀傷 /
 【名詞】あいーしょう[シヤウ]。
 
 (壱)心に深く感じて物思いに沈むこと。
 (弐)人の死を、悲しみ嘆くこと。または、そのさま。
 
 出典 / wedio国語辞書 デジタル大辞泉
 
 
 
 
 
 
 ※ この物語はあくまで二次創作の範囲内となり、版権元、出版社様とは一切関係ありません。またこの物語は実際の団体、著作人物等においても一切関係はございません。
 
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                  - 5 : : 2021/02/09(火) 18:37:55
 
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                  - 6 : : 2021/02/09(火) 18:38:44
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 鬼滅の刃 〜哀傷 ノ刄 〜
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 第壱話 「罪」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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                  - 7 : : 2021/02/09(火) 18:39:58
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 ◇
 
 凍てつく、空気。
 肌に貼りつくそれには、優しさの欠片など一寸の欠片もありはしない。大気もまた、酷く薄く、朧気 な霧が漆黒の森を包み込んでいる。
 ヒュン、と風を裂く音が響く。
 鼓膜に届くそれは「刃」の音だ。
 
 「っはぁっ、はぁ、はっ、……!!」
 
 振りかぶる。
 
 「ァアッ、ふっ、はぁ、がっァ!!」
 
 振りかぶる。
 
 重い。左手に握られた柄 と柄頭 。そして、右手にも硬く、硬く握られたそれを振りかぶっていく。その瞬間、太い息を吐き出す。瞼 を強く開き、斬り伏せる心象を視界に浮かばせながら。
 
 だけどこれで、一体俺は何を斬るのだろう。
 
 何を、殺めるのだろうか。そんな考えが俺の脳を巡った時、硬く張った腕が硬直した。
 
 瞬間、極端に狭まっていた視界が少しづつ、少しづつ開けていくみたいだ。
 
 これは、何回目だ。いや、考えなくても分かる。少なくとも七分前の時点で三千二百を超えていたはずだ。途中から、脳が酸欠を起こす様な勢いで速度を上げたからそれ以降からは分からない。思い出せない。────何故そんな事も、俺は分からないんだ?
 これで三千五百回目か?
 いや。俺は、少なくとも三千回以上は素振りをしたのはまちがいないんだ。
 
 そう気がついた所で、ビキッ、と。なにか不自然な音が、した。そしていやな「匂い」がした。あぁ、これは知っている。
 
 「…………っぁ、ぁがっあああっ!!」
 
 これは、血の、匂いだ。
 
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                  - 8 : : 2021/02/09(火) 18:40:33
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 同時に。
 「っ!!? っぐ、ごっほ、がはっ、がはっ、ゼェッ、ゼェッ………っはぁ……!!?」
 まず左手と、右手に握られていた白い柄がこぼれ落ちる。握って、いられない。灰色の鍔が石に当たって落ちたからか、甲高い音が辺りに響音していく。そして次の瞬間。
 俺は両膝、右肘を着いて過呼吸になった。
 「はぁっぁっはっ、はっはっぁっはぁ、はっっァはっ、ぐっ…………ゔっ……ごふっ、ガッハっ!!!」
 罰だ。
 「ゔっが、っはァァはっはっはっぁッ!! はっ、はっァっはあっ、 ハァハぁっ………!!」
 これはきっと、罰なのかもしれない。
 苦しい。苦しい、肺が内側から破れかねない勢いで身をよじらせている眼球が限界のげんかいまで開かれている右指は土を抉り指先に酸素が行かなくなって真っ赤に染まっている脂汗が止まらない止まらない止まらないとまらない。
 やがて倒れ込んだ。
 頬にまとわりついた土くれが左唇に当たって、ジャリジャリとしたものが舌に伝わる。────ねずこ。
 
 『お兄ちゃん!』
 …………ねず、こ。
 過呼吸だけじゃない。腕が、動かない。痛い。全く動かしているつもりなんてないのに、両腕と、両手が凄まじい速度で痙攣をしているのが上に向けた眼球から理解出来た。
 つい数日前まで俺は千五百回を超えた辺りまでしか素振りが出来なかった。それですら、腕がもげそうになっていたんだ。
 だけど「あの日」から、俺の中で、何かが、壊れた。
 気が付けば、視界が両方とも数十度は狭まる程に素振りと、地獄の様な訓練を俺は俺自身に課し続けた。
 毎日の様に素振りを二千回以上行った。
 たった一週で週で肺がおかしくなりそうだった狭霧山の登山、下山を三週以上行った。
 
 
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                  - 9 : : 2021/02/09(火) 18:41:03
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 息止め。柔軟。基礎体力の向上のための筋力増強訓練。
 半年前、鱗滝さんに教わっていた鍛錬を、二倍。足りない。三倍。足りない。四倍に増やした。足りない。足りなかった。毎日、毎日、進んだ。進み続けた。
 「…………………………………」
 痙攣した左右の掌が、血に塗れている。そういえば堕ちた刀の柄が嫌に滑りが良かった。あれは、そういうことか。
 呼吸が、酸素が足りず、追い付かない。骨と筋肉は、限界を超えているのかもしれない。既に千切れたのか、もはや手も、足も、感覚が消えていく。
 
 『お兄ちゃんっ!』
 禰豆子の、やさしい囁きが脳にこだます。辞めてくれ。頼む。
 収縮しては、震え続ける両手の向こうの黒い林が、ぼんやりと滲んでいく。
 血の、匂いがする。両手の血の匂いなんだろうか。
 いや。あるいは、あの日頬に飛び散った血肉の、匂い?
 あるいは、皆が殺された、あの冬の日の匂いか。
 
 『炭治郎…………』
 炭治郎、と誰かが名前を呼んでくれている。
 起きなければ。起きて、戦え。戦え、戦え。誰が、呼んでいるのだろう。でも、やがて滲んだ輪郭は少しずつ、降りてくる闇に包まれていく。
 聞き覚えのあるやさしい声。これは、母ちゃんのこえなのかな。それとも、茂。花子。六太。竹雄。父さん。それとも………また、禰豆子の、こえ?
 ごめんね。
 だれかが、そういったのを最後に、俺はぶつりと意識が途絶えた。
 
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                  - 11 : : 2021/02/12(金) 04:28:41
 遠くで、また誰かの声がする。
 ……ねぇ。おきて。
 聞こえてることを伝えたくて、俺は目を開こうとする。でも、自分でも驚くほど瞼はひどく重い。
 起きて。……ねぇ、
 それでも、その先にあるものを見たくて、薄らと目を見開こうとする。
 「お兄ちゃん。起きて」
 「─────────ッッ、!!」
 瞬間。
 跳ね上がった。そうして俺は右手を掌底して立ち上がり、一瞬の内に開けた視界に写った柄を右手で握ってみせ、白刃も構える。その、「頸」の先に。
 「…………………………っ、フゥ、フッ……」
 肺が、心臓が、著しく脈打っているのが分かる。呼吸もまた乱れ、眼球はその刃の先にのみ向いていく。目の前には禰豆子が居た。
 六太を背中に背負って、「行ってらっしゃい」と優しい微笑みを浮かべていた頭巾を被った妹の姿。「人間だった頃」の、たった一人の妹の姿。いいや、そんなはずがない。
 禰豆子に化けた、鬼だ。鬼は、人に化ける。そうだ、そうに決まっている。死ね。殺す。死ね、殺さなければ。禰豆子を、侮辱するな。鬼、鬼ならば、殺さなければ。俺は、俺が、必ず殺さな
 「落ち着いて。炭治郎」
 「………ハッ!?」
 だけど、そこにいたのは、禰豆子じゃなかった。
 名いっぱいに開かれた眼球はここぞと言わんばかりに目尻と一緒に痙攣して、幻覚を正しく認識し始めていく。
 「…………目は、覚めたみたいだね。炭治郎」
 凛と、透き通るような声だ。例えるなら水面のそれかもしれない。そこに居たのは禰豆子じゃない。
 名前も知らない、黒髪の女の子。肩まで届くか届かないか程の跳ねっ気がある黒髪が揺れる。
 月夜がその子を照らしていて、彼女の髪も、瞳も、仄かに薄青く光っていた。その目元は何処か儚く、優しげに俺を見つめてくる。
 「……大丈夫。もう、怯えないで。私は鬼じゃないよ」
 そう言って左耳より少し上の辺りの「狐面」にその子は触れて、静かに微笑んだ。
 
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                  - 12 : : 2021/02/12(金) 04:36:11
 「…………………………きみ、は、誰?」
 その子の首元へ向けていた刀を下ろし、俺はそうして問う。だけどその瞬間、また、「変な匂い」がした。「……ッ!? ぐ、ッァ!!」
 「炭治郎!」
 俺はまた刀を落とし、崩れ込む。情けない事に、その子の膝元に倒れ込んでしまった。
 「……炭治郎、呼吸をして。深呼吸。息を整えるの」
 どうして、この子は俺の名前を知っているのだろう。俺は、この子の事を知らない。なのに、何で。
 そんな事を思うけど、それすら脳から吹き飛ぶ程の痛みがまた、手と腕と脚と、全身から刺すように走った。何も考えられず、思わず声すらも上げれなくなる。
 「呼吸して。深呼吸」
 その子はまた同じことを言う。耳元に届く声に藁にも縋るような気持ちで従った。「………ふぅ………っは、……はっ、はぁ」
 「そう、良い子だよ。炭治郎」
 やがて、また気が遠のく。ぼやける意識の中で、頭を優しく撫でてくれる感触だけが、残りながら。
 
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                  - 13 : : 2021/02/12(金) 14:13:26
- 壊れてんなぁ炭治郎……期待
 
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                  - 14 : : 2022/02/24(木) 17:24:22
- 期待しています
 
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                  - 16 : : 2022/02/25(金) 01:55:24
- 空山には悪いけどこの作品は永遠に完結しない気するわ
 
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                  - 17 : : 2023/03/05(日) 03:24:37
- >>16
 かなり前のレスだけど激しく同意
 たぶん他の登録ユーザーに空山と同レベルのss書くのは難しいだろうし(煽り抜きにして)、もう集まれないようならば、空山個人のssとして構築した方が面白くなりそうなんだよな。
 
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                  - 18 : : 2023/03/05(日) 03:31:33
- >>13
 期待してるからこそ続けて欲しいんだよな
 この序盤の話もほぼ空山個人の力なんじゃないかな
 
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