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猫狂い

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  1. 1 : : 2019/08/25(日) 13:07:54
    私の手のひらに、生暖かい体温が伝わり、それに続くようにフワフワと温もりのある毛皮が私の手を優しく包む。
  2. 2 : : 2019/08/25(日) 13:08:29
    それに続くようにフワフワと温もりのある毛皮が私の手を優しく包む。そして次に聞こえてくるのは、愛らしい「にゃー」と甘えるような鳴き声、次に私の眼球が眼前にあるものを、脳に伝えようと酷使され、目の白い部分に赤いスジが現れ、私の黒い瞳が激しくおよぐ。そして眼前にあるものが脳に伝わり、認識した瞬間、私は恍惚とした笑み浮かびあげた。ふにゃふにゃと、顔にある全ての表情筋が脱力し、もはや気持ち悪い笑み以外の表情が作れないのでは無いかと危惧せざるおえないほどに、私の顔は歪みきっていた。
  3. 3 : : 2019/08/25(日) 13:09:31
    ピンと、切っ先から最後までしっかりと背筋を伸ばした三角の形をした二つの耳。その二つの耳は、丸っこい球体のような顔の頭部に、やや間をつけて、鬼のツノのように生えていた。まるで山の上に、さらに気高い山が二つ伸びてきたような印象を受ける。それがまた愛らしいのだ、ほら、二つの耳がピクピク動いている、ああ可愛い。私はたまらず、地面に置いていた白いビニール袋から缶を取り出し、開けた。すると目の前にいた小動物の数々はびくりと体を跳ねあげて缶の方へと顔を向けるのだ。鼻をピクピクとひくつかせながら、四足歩行でのそりのそりと、缶に向かって群がる小動物。皆一斉に缶に食らいつく。私は皆に「まだあるからね」と子供をあやすように次々と缶を開けて地面に並べた。するとみんな仲良く分け合って、にゃーにゃー鳴きながら餌にありついた。ああ可愛い、尻尾をふるふると振って全身で喜びを表している。やはりだ、やはりこの世においてこの小動物よりも可愛いのはいない、この世において最も可愛い動物は即ち、猫である。異論は認めない。速攻その異論が綴られた紙をくしゃくしゃに握りしめて、灯油をまぶし、燃やしてくれよう。私は本気である。ああ、どうして猫はこんなに愛らしいのだろう、そう私は思った。
     「猫ちゃんはどうしてそんにゃに可愛いんでちゅか?」猫に問うても、その柔らかい肉球で顔面を打たれるだけで、答えなど帰ってこない。
  4. 4 : : 2019/08/25(日) 13:10:25
    はやっ
  5. 5 : : 2019/08/25(日) 13:16:47
    ならばと私は勝手に何故が可愛いのかとう理由を、自分の愚案を締結させることにする。そしてこの考えは全人類に定着させるべきだろう。では、なぜ猫がこんなに可愛いのか、理由は単純、神が人類を猫好きにさせたからだ
     猫が神によって、愛らしいものだと位置づけ、定着させたからである。まず神は七日間で世界を創造されたが、実質的には六日間で世界をお造りになられた。最後の7日に神は休んだのである。そしてその時神は考えた。人間には愛が足りぬと、しかし、もう出来上がった人間という器に愛を注ぐことは不可能で、一から作り直さなければならないのだ。それに気がついた神は面倒だと思い、なればこそ人間に愛を芽生えさせた方が早いのでは無いかと、神はお考えになられた。そこで神は鼻くそをほじくりながら、人間が可愛いと感じる要素をふんだんに食い込んだ存在を作り出されたのである。そして神はそれを楽園へと遣わし、人間に慈しみと愛を芽生えさせる使命を帯び、この世に降臨なされた。故に、猫=神の使い=猫なのだ。つまり猫は天使、異論は認めない。異論を言ったものは即座に粛清し、その考えに賛同する者たちを弾圧してやる。猫を慈しめ、崇拝をしろ、猫を聖として崇め、来る日もきたる日も、何があろうとも、毎晩寝る前に猫のことを思い出し、その愛らしさを心に留めながら眠れ。お前の人生、お前らの人生は全て猫によって幸せになるのだ。崇拝せよ、崇拝だ、崇拝。
  6. 6 : : 2019/08/25(日) 13:24:56
     そうだ決めたぞ、今度皆で一人一人ネコの格好をし、夜の東京を隊列を組み、全員でキャンドルに火を灯したものを持ちながら「猫ちゃんかわいい」と唱えながら行軍をしようでは無いか。まてよ、私に友人はいただろうか? いない、小学校を卒業してからできた記憶がない。私には猫の素晴らしさを共に分かち、語りあえるような存在がいない。ならばこそその時にネコの素晴らしさを唱えながら行進をする時、そこにいるのはただ私一人、つまりだ、一人でキャンドルを持ちながらネコネコと喚く狂人そのものではないか。まじまじと見られるどころか、何あの人キモいんですけどなどと耳打ちしながら不信感を募らせる傍観する人々もいない。ただ、存在などしなかったように、見えないように認識しないように、皆私から目を逸らし通り過ぎて行く、そしてただ一人、そう警官だけが私のことを認識し、そして捕らえるのだ。やめよう、行進をするのはやめよう。友達を作ってからにするのが一番だ、かといって友達を作れるかどうかは誰にもわからない。自分でさえも確証し得ないこと。
  7. 7 : : 2019/08/25(日) 13:34:22
    「辛い、生きるのが辛い。生きるのが辛いよぉ〜猫ちゃあん」
     私は言いながら、美味しそうに餌にありつく猫を両腕で掴んで、自分の顔の元まで近づけた。「猫たんはいいでちゅね、ぼけーっとのほほんとしてるだけで、コミュニケーションが計れるし、みんなをはっぴはっぴーにできちゃう」
     猫はお目目をパチクリさせながら、呆然としている。そんな猫に私は「羨ましいよぉ」と嘆きながら、猫のぽっぺたに自分の頬を擦り付けた。猫は鳴きながら、そのプニプニとした柔らかい肉球で、私の頭部をバシバシと殴るように叩き、抵抗をする。全く痛くないので、余計に愛らしく思えて、私の顔面がふにゃふにゃに、スライムのように緩む。暫く擦り付け続けると、私は顔から猫を離して、思い詰めたように、猫から視線を逸らした。「羨ましいよ、本当」ポツリと、言葉を漏らす。どうやったら頼れる友人を持てるようになるのだろうか。やはり共通の話題が必要なんだろうけれど、私の唯一もてる共通の話題といえば、猫だけである。しかもこれで友達作りをしようにも「お前、その格好で猫好きかよ気持ち悪い」と言われることは目に見えている。ならば、猫以外の話題は無いだろうか、自分に問う、回答はある、答えは無い、共通の話題は無い。これが答えである。私は肩を落とし、顔を下に逸らした。
  8. 8 : : 2019/08/25(日) 13:42:34
    面白い!男がどのように成長するか期待。
  9. 9 : : 2019/08/25(日) 13:49:36
    そういえば、爪の垢を煎じて飲むという言葉がある。つまり猫が煌々と放つ神由来の成分を摂取すれば私は友人どころか、猫のように人々に崇められるのでは無いか、そう頭の中でこの考えが過ったのだ。私の目がかっと見開き、私の黒い瞳が点となり、目の白い部分が目を支配する。そして黒い瞳が、小蝿のように白い瞳を縦横無尽に駆け回る。深く、不規則に行われる私の呼吸。私は次第に、逸らしていた視線を恐る恐る自分が掴んでいる猫に向けて、捉える。そして私は思わず、笑みをこぼすのだ。唇が、頬を凌駕し裂けてしまうんじゃないかと思うほどに、私の口角は鋭く広がり、天を貫かんとする。次第に笑いが込み上げてくる。「けっけっけ」と、同調するように肩を跳ね上げて笑う。次第に私の笑いは、酷さを増すばかりで、猫に対する愛情を胸に抱きながら、私は眼前にいるその猫を、天へ、空へと差しむけるように、高く持ちあげると、笑いは最長天に達し、奇声へと変貌を遂げた。「あひゃひゃひゃひゃ!猫ぉ!!!」
  10. 10 : : 2019/08/25(日) 14:03:06
    誤字
    最長天→最高潮
  11. 11 : : 2019/08/25(日) 16:44:06
    私は奇声を上げながら、ゆっくりと、ゆっくりと、天へ持ち上げられた猫を、自分の顔へとおろして行く。そして猫の腹部が私の顔へと充てがわれると、私はその瞬間、猫の腹部で思いっきり、深呼吸をした。
     喚く猫の悲鳴、そんなことなど御構い無しに、公然と、恍惚した表情を浮かべながら、猫の腹部を啜る。その姿はまるでワインを嗜む貴族の坊ちゃんのよう。が、現実はそうそう美しいものなどでは無かった。人気もなく、人も寄り付かないような薄暗い路地裏の中、猫の大群が密会している中に突如現れたこの男は猫に餌を餌付けし、そして、その見窄らしい骸骨のような見た目など御構い無しに猫と戯れている危険人物なのだ。さっさと警察に捕まってしまえ。自体は刻々と悪化して行く、深く呼吸するように、猫を啜っていた息遣いは次第に、ひまわりの種を貪るハムスターのように、一定の区切りをつけ息を吸うのだ。素早く、小刻みに、目にも留まらぬような小刻みな息遣い。聞いているだけで虫酸が走るような、気持ち悪い息遣い。ついに耐えかねた猫は、悲痛な悲鳴をあげ、その柔らかい肉球を持った拳を振り上げる。瞬間、猫の指先から爪を出し、頭部に狙いをつけ、引っ掻く。なお、それでも息を吸い続けるのをやめはしなかった。頭部から冷や汗のように、傷跡から血が流れるも、満足げな笑みを浮かべながら啜り続ける。猫は困惑した、猫は怖気付いた。そして精一杯の悲鳴と、警戒の声をあげ、今過ぎにでもこの狂人から逃れまいと、猫は体を激しく動かし抵抗を始める。まずは手出だ、手を引っ掻き、それでもダメなら顔面を、猫は涙をこぼしながら、必死に抗う。死ぬ、このままでは死ぬ、心が死ぬと猫は悟ったのである。全身がむず痒くなるのを猫は感じた。思いっきり腹部をすすられているのもあるが、しかしこのむず痒さは本能的に危機を知らせるために発せられた電気信号のものであった。故に、私の全五感が抗え、生き延びよと訴えかけているのだ。
     逃げねば、逃げねば、この感情だけが猫を突き動かす。猫は願った。あまりの機器的状況に、願うという概念が無かった猫に神が舞い降り、猫は願うという概念が構築されたのだ。そして願う猫に対し、猫の神は微笑んだ。嘘だろ、見捨てるのか。違った、救いの手を差し伸べたのである。その時、抗う続ける猫は、うまい具合に掴まれた両腕腕から滑り落ちたのだ。これ見よがしに猫はすぐさま路地裏の出口に一目散に駆け抜けた。
  12. 12 : : 2019/08/26(月) 05:10:17
    尻尾を丸めながら走り抜ける猫の姿、私は涙をこぼしながら、手を伸ばして掴もうとするが、届かない、体を前のめりにしたところで現状は何も変わらず、猫の後ろ姿は消えて行く。その時私は思った。尻尾を丸めた姿も可愛いと。しかしこんな風に恍惚としている暇はない。私は猫エキス、猫成分を摂取せねばならない。周りをキョロキョロと見回し、次の糧となる猫を探るのだ。一匹の猫と目があった。その猫は餌にありついている最中だったが、何事かと顔を上げた時、私と目があったのだ。私はすかさずその猫に飛び込むように、すがりついた。が、しかし、私が掴んだのは空であり、そのまま硬い地面へと滑り落ちる。思わず瞑ってしまった瞳を開けて、前を望めば、同様に逃げ行く猫の後ろ姿が私の瞳に焼き付いた。
     何故だ、何故逃げる。神の使いであろう猫が、必死に懇願をし、自らの運命をより良い方向へと向かわせるために頑張っているというのに、私のような見窄らしい男が、貴君の成分を摂取するということが不満であるか。私はそのままめげてしまえばいいような心を鼓舞し、立ち上がる。そして手ぐすねを引くように、ジリジリと、餌にありつく猫たちの背後を取った。ぐるぐると、喉を鳴らし、口のえくぼあたりから蒸気を左右に撒き散らし、世闇の中、丸い双眸を輝かせている私の姿はもはや人間のものでは無い。眼前に獣がいるというのに、その獣より獣らしい姿はむしろ人間であることを失敗した情け無い男の姿そのもの。阿呆と言い切っても罪にならず、むしろ祝福され、よくやったと褒め称えられることだろう。
  13. 13 : : 2019/08/26(月) 14:06:42
    人間もどきが猫たちの背後に忍び寄る。猫たちは、今時こんな鉄筋コンクリートのジャングルで、獣に襲われることなど余地もしていなかった。そして今まさに、この私が猫たちに襲いかかるのも誰も余地ができようか。ギラリと光を帯びる八重歯、喉が唸りをあげる。右足に力を入れ、そして私は飛んだ。ライオンのような咆哮を上げ、幼気な猫の大群に飛びかかった。お前はそれでも人間か、サバンナでネズミに飛びかかるネコ科の片鱗が垣間見えてくる。こうなってしまってはもはや手のつけようがない。精神科の先生が許しを請い、全裸で逃げ出すくらいにもはやどうしようもないほどに、頭のネジはぶっ飛んでいた。
  14. 14 : : 2019/08/26(月) 14:12:47
    やべえミスった
    編集パスワードも忘れた
    絶望しかない
  15. 15 : : 2019/08/26(月) 14:43:18
    何回も、何回も、覚えてるパスワードを入力しても、間違いですと表示されるんじゃ...
  16. 16 : : 2019/08/26(月) 14:44:21
     何事か、こんな東京のど真ん中で、獣のような呻き声が聞こえるのは、何代も前のご先祖様の伝承でしか聞いたことがない。猫たちは思いながら奇声が聞こえてくる背後を振り向いた。見えたのは餌を撒き散らしに来る、幸が薄い顔の男である。目は充血し、もはや赤眼とかしている。口の周りは滝のようによだれがほとばしり、そして、空を舞っていた。その男は空を飛び、猫たちを狙ったように飛びかかってきたのである。頭の中で行われる情報処理で、危機的状況であると認識するよりも早く、本能的に体が路地裏から脱出することを求めた。たまらず猫たちは全力で、薄暗い陰気な路地裏から、光の刺す大通りへと駆け抜けて行く。
     それと同時に哮り狂った頭のおかしい奴が地面に着地すると、鈍い音が響き渡り、砂埃が舞った。いい歳した大人がそんな風に暴れるから、きっと地面に叩きつけられて踠き苦しんでいるのだろう。砂埃の中から唸りを上げる男の影が見える。阿保だなと、思いながら足を止めて、見守る猫が一匹、呆気にとられていると、埃の陰からヌッと腕が伸びてきて、そのおぞましい手が猫を掴んだ。
     ああ猫だ、猫だ、私は恍惚とした表情を浮かべながら、猫を腹を再び嗅ぎまくった。今度の猫は野性味がある匂いで、思わず嗚咽をあげ、むせ返ってしまう。「くっさ!ああでもかわいい。いいよ、いいよ、君はどこのサバンナ出身だい?」問うた後、私はあまりの異臭に再び咳き混んで、その場で膝まづいた。その拍子で猫を掴んでいた手が緩み、隙をついた猫が逃げていった。また猫が私の場から離れて行く、私のことが嫌いなのか、思わず涙が溢れそうになってくる。だが、ここでめげてはこの先社会では生きてはいけない。諦めず私は立ち上がって、猫を追いかけた。
     「次はお前か⁉︎お前か⁉︎お前だな‼︎」
     ブロック塀で囲まれた路地裏の隅に、身を丸めて、ビクビクと震えながら引きこもる猫に、指を指しながら問いかける。返事はない。ヤケクソである、私は奇声をあげた。
  17. 17 : : 2019/08/26(月) 14:47:09
    「あっひゃっひゃっひゃっひゃ!」
     陰々滅々たる隘路道の路地裏で、情けない、声に芯がない、見っともない呻き声が響き渡る。この路地裏は都内の発展した地域に、突如ポカンと現れたように存在する入り口に入ったところにある猫たちの秘密の花園。こんな人が寄り付きたがらないようなところに一人、薄汚い軍服のようなコートを纏い、そして栄養失調気味なのか、痩せこけた体の私が喚いている。もはや人間としての尊厳どころか、あり様すら己から投げ捨ててしまっている。厳しい社会で生きていく上では、逆に必要とされるところがあるが、しかし、もはや厳しい社会で生きて行く内に必要とされるであろう精神面の強さ、恥を恥だとは思わないその強い心、それら全てが悪い方向に成長してしまった。
  18. 18 : : 2019/08/26(月) 14:50:03
    必要とされる要素を兼ね備え、かつそれらをいい方向へと転用することのできるものが有能とするならば、私の様に、己の人生に今後利益を生ませるどころか、この先の人生お先真っ暗な方へと進路を決め、突き進む変わり者はチンパンジー界の王様である。大変不名誉だ。きっとその王様は森を荒らす人間たちにクソを投げつけ、追い払った英雄に違いない。
     どこでどう違ってしまったのだろうか、必要とされるものは同じだというのに、情けない。
     路地裏で絶え間なく鳴り続ける猫の悲鳴、路地裏を見渡せば、猫たちは逃げ惑っていた。あるものはブロック塀を乗り越えて逃げようとするもの、逃げる仲間を道ずれにしようと体をぶつけて吹っ飛ばそうとするもの、もはや意地汚い人間のそれである。
  19. 19 : : 2019/08/26(月) 14:56:01
    私は猫に言葉を投げかける、怯えさせないように、優しい口調で、大きすぎない声量で、落ち着かせる様に猫に話しかけるのだ。
     「猫ちゃん、人間とのコミュニケーションって難しいよ」一歩一歩確実に、私は疎らに点在する猫たちへにじり寄る。が、しかし、上手いこと前に進めない。可笑しくて、可笑しくて堪らず、笑いがこみ上げてくる。必死に堪えてみせるが、しかし、どうもにも耐えられず、引き笑いが始まり、笑うたびに、肩が跳ね上がってった。そして私は笑いながら叫ぶ。
     「だからね君と練習をさせておくれ」
     私は喚き散らし、笑いながら薄暗い路地裏を駆け抜け、猫たちを追いかけ回した。猫たちはニャーニャー悲鳴をあげながら逃げ惑うが、それを逃さまいと私は追う。が、自分が置いた猫缶に私は足を引っ掛け、すっ転んだ。缶ごときで足を取られてコケるなど、もはやお前はそれで自立して立つ二足歩行動物、人間であるか。否、それは否、もはや頭のネジがどこかへ吹っ飛んだ人など、人ではない。おぞましい悪意の体現者である。
     だから私の元から猫が離れて行くのか、だから猫は私と対話をしようとせず、この路地裏から居なくなってゆくのか。眼前向こうにある路地裏の出口に、猫たちが溢れんばかりに駆け抜け、そして次々と、また一匹、一匹と、猫が姿を貸していく姿が見える。
     それ以前にこの私は動物とすら対話ができていないというのに、人間と対話が計れるものか。お前は所詮猫にとっては、餌をくれる薄汚い人間に過ぎない。

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