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舞園「幸運の私とアイドルの彼」(非)日常編

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  1. 1 : : 2014/01/16(木) 21:19:23
    スレタイまんまの苗舞です

    苗木クンのキャラが定番のごとく崩壊しているのは愛です(
  2. 2 : : 2014/01/16(木) 21:19:44
    ここは私立希望ヶ峰学園。国の将来を担う才能を持った高校生が集う、超がいくつも付くような学園

    …だったはずなんですが


    「どういうことだ!入り口が塞がれてしまっているではないか!」

    「えっ!?お家に帰れないのぉ…?」

    「おかしい…一体どうなっているんだ」


    慌てふためく【超高校級】の新入生たち。


    「じゃあつまり…ボクたちは閉じ込められたってことかな?」

    舞園「そんな……」


    その中で、【超高校級の幸運】として招かれた私───舞園さやかもうろたえています。
  3. 3 : : 2014/01/16(木) 21:20:49
    「み、みんな!取りあえず自己紹介しない?このままじゃお互い、どう呼べば良いかも分かんないしさ」


    集まった男子の中でも一際小柄な彼が呼びかけます。


    「…そうですわね。じゃあお願いしますわ」

    「え、ボクから!?」

    「言い出しっぺの法則というヤツですな!」

    「ちょっと恥ずかしいけど…まあ確かにその通りだよね」


    ハハハ、と人の良さそうな笑い声を彼は漏らし、周りをくるりと見渡すと


    「えー、コホン。…初めまして、【超高校級のアイドル】の苗木 誠です」

    苗木「よろしくね」ニコッ


    彼───苗木くんは、無邪気な笑顔を浮かべました。
  4. 4 : : 2014/01/16(木) 21:24:23
    アイドル苗木!期待です!頑張ってください〜!
  5. 5 : : 2014/01/16(木) 22:04:28
    幸運の舞園さんがどうなるか楽しみです!
    期待です!
  6. 6 : : 2014/01/16(木) 22:30:05
    >>4 >>5
    ありがとうございます!頑張っていこうと思います^^
  7. 7 : : 2014/01/16(木) 22:30:16
    自己紹介といっても、皆さんの事はだいたいスレッドで確認しているんですが…


    苗木「ねえ?」チョンチョン


    上の空な私の肩を苗木くんがつつきます。


    舞園「あっ!えっと、舞園さやかです。一応【超高校級の幸運】ってことになってるんですけど…」

    苗木「幸運!?」


    聞き慣れないフレーズに、苗木くんの顔がぱっと輝きました。


    舞園「変な話ですよね。私なんて本当に平凡なだけの高校生なのに、抽選で当たるなんて……」

    苗木「ううん、そんなことない!凄いよ舞園さん!」


    まるで自分のことのようにはしゃぐ苗木くん。

    …でも、この様子だと……。私のことは覚えていないですよね。
  8. 8 : : 2014/01/17(金) 00:02:14
    立場が違うのも面白そうですね!
    今後どうなるか期待です!
  9. 9 : : 2014/01/17(金) 08:01:24
    いいですねぇ
    期待してます‼︎
  10. 10 : : 2014/01/17(金) 23:31:38
    >>8 >>9
    ありがとうございます!
  11. 11 : : 2014/01/17(金) 23:31:48
    【超高校級のアイドル】の苗木くん

    華奢で愛らしい笑顔の反面、爽やかで力強いヴォーカルが評判の最先端を行くアイドルで、少し気弱ながらも決めるときはビシッと決める。

    それが彼の魅力です。


    苗木「ん~…。ねぇ、舞園さんってさ……」

    舞園「えっ?」

    石丸「おい君たち!今は自己紹介の時間であって、雑談などしている場合ではないのだぞ」

    苗木「そっか…ゴメン。舞園さん、また後でね」


    彼は残念そうにそう言うと、小さく手を振りました。。


    舞園「苗木くんが、私に話したいこと?」


    結局そればかりが気になって 、そのあとの自己紹介を集中して聞く事が出来ませんでした…。
  12. 12 : : 2014/01/18(土) 12:44:04
    幸運の舞園さんは想像つかないですね!それも閉じこめられてからとは…やはり発想が違いますねw
    期待です。
  13. 13 : : 2014/01/18(土) 19:06:21
    >>12
    ありがとうございます!
    幸運の舞園ちゃんというかアイドルの苗木クンの発想が先だったのはここだけの話…
  14. 14 : : 2014/01/18(土) 19:06:29
    それから…語るには割とショッキングな現象の連発……


    モノクマ「共同生活の期限はありません」


    突如現れた白黒のクマのぬいぐるみ…モノクマさん。


    モノクマ「うぷぷ、家に帰りたいって?それなら簡単!…誰か殺っちゃえばいいんですよー!!」


    そのような事を言って、どこかへ消えてしまったのです。

  15. 15 : : 2014/01/18(土) 19:07:14
    =食堂=

    舞園「…特に大きな手がかりはありませんでしたね……」

    苗木「…そうだね」


    辺りの探索を終えた私と苗木くんは、みんなとの集合場所である食堂で2人、お話ししていました。


    苗木「あっ、そういえば舞園さん。さっきボクがちょっと言ってたけど…お話ししてもいいかな?」

    舞園「大丈夫ですよ。何ですか?」

    苗木「良かった。ありがとう!」


    持ち前のアイドルスマイル。
    無意識に肩が跳ね上がります。


    苗木「舞園さんって六中だよね。ほら、根黒六中!」

    舞園「そ、そうですけど…」

    苗木「やっぱり!ボクも一緒!」

    舞園「ええ、それは覚えてますよ。苗木くんは有名人でしたから……」

    舞園「むしろ苗木くんが私のことを覚えていてくれた方が驚きですよ!」

    苗木「当たり前だよ!だっておんなじ中学校だもん」


    でも同じ中学校といっても、同じクラスになった事はありません。…どうして私のことを……


    苗木「それはね、ボクの方が舞園さんの事をちょくちょく見てたからだよ」

    舞園「えっ!?どうして考えてたことが…」

    苗木「実は言ってなかったけど、ボクってエスパーなんだ」

    舞園「ええっ!?」

    苗木「ははっ、冗談冗談!ただの勘だよ」

    舞園「鋭すぎますよ…」
  16. 16 : : 2014/01/18(土) 19:08:29
    苗木「あーあ。再開の場所がこんな学園じゃなくて…アイドルのオーディション会場とかだったら良かったのに」

    舞園「具体的ですね…。それにオーディション会場って、私みたいな普通の女子高生がアイドルになれるわけないじゃないですか」

    苗木「えっ、そんなことないと思うよ?」


    きょとんと、あどけない表情を見せる苗木くん。


    苗木「中学生の時、舞園さんってよく歌ってたよね?」

    舞園「…そうでしたっけ?」

    苗木「歌うって言っても人前じゃなくてさ…こう、無意識に口ずさむ感じ」

    舞園「!?」///

    舞園(そういえば何気なく小声で歌ってたっけ……!)

    苗木「すれ違ったとき、聞こえたんだ。キミはもう覚えていないかも知れないけど、綾香の『三日月』…とっても綺麗な声だった」

    舞園(し、しかも苗木くんに聞かれてた!?…恥ずかしすぎる!!あの時の自分爆発すればいいのに!!)
  17. 17 : : 2014/01/18(土) 20:03:37
    舞園「えっと、すいませんでした!」///ペコッ

    苗木「えっ、何で謝るの!?」

    舞園「だって私なんかの歌が…えっと……」アセアセ

    舞園(おおお落ち着かないと…!でも……!!)

    苗木「あはっ、舞園さんって変わってるなぁ」

    舞園「私が変わってる!?」

    舞園(ああ、もうダメです……)シュン

    苗木「だってボクは褒めたはずなのに、舞園が謝るんだもん」クスクス

    苗木「あの曲高低が激しいから難しいはずなのにほとんどブレがなかったし、キミの声も素敵だった。…思わず聞き惚れちゃったよ」

    舞園「き、聞き惚れ……」


    ああ、私何でこんなに慌ててるんだろう……

  18. 18 : : 2014/01/19(日) 17:49:50
    苗木「…とにかく、それから舞園さんのことが気になってしょうがなかったんだ。だからこうして再会して話せるのがボクは嬉しい!」

    舞園「大げさですよ…」

    苗木「そんな事ないって!」ギュッ

    舞園「っ!!」///


    さっきからずっと俯いている私の手を苗木くんがそっと握ります。


    舞園「だ、ダメですよ!苗木くんはアイドルなんだから、私みたいな一般人と簡単に手を繋いじゃ…」

    苗木「もう、そんな事務所の人みたいなこと言わないでよ。アイドルってそんなに触れがたい生き物なの?…それとも、ボクと手を繋ぐのはイヤだった?」


    苗木くんがこちらを寂しそうな目で見ました。

    …その視線に、思わず息を呑みます。

  19. 19 : : 2014/01/19(日) 17:57:09
    苗木くんは元はグループで活動する、5人組のアイドルのメインヴォーカル。

    でも問題が起きて、メンバーはバラバラに。厳しい芸能界を生き残ったのはメンバーの中でも苗木くんだけ。

    …そんな週刊誌で見た彼の事情が、ふと頭の中をよぎります。


    舞園「…そんな事ないです。苗木くんと手を繋いで、別に悪い気なんてしません。…むしろ嬉しいぐらいですよ」

    苗木「本当!?…良かったぁ」


    私が笑うと、苗木くんも安心したように笑いました。
  20. 20 : : 2014/01/19(日) 19:35:35
    舞園「あの…苗木くん…。もう手は離しても……」

    苗木「そんな…もうちょっとだけいいでしょ?」

    舞園「えっと……」

    苗木「………………」ジッ

    舞園「…いいですよ」

    苗木「ありがと♪」ニコッ


    ニコニコ、ニコニコと苗木くんは微笑んでいます。

    …何だろう。少しあざとい感じが、テレビで見る彼とは別人のような印象を与えました。

    舞園「もうすぐ7時…みんなとの約束の時間ですね」

    苗木「誰が1番乗りかな~。石丸クンとかかな~」

    舞園「確かに…。彼、5分前行動が基本そう」


    …ガチャッ


    そう何気なく雑談していたとき、食堂のドアが唐突に開き……現れたのは意外な人でした。


    霧切「あら、2人とも早いのね」
  21. 21 : : 2014/01/21(火) 18:29:13
    苗木「…っ、霧切さん!?」ガタッ


    何をそんなに驚くことがあったのか、苗木くんは椅子から立ち上がります。


    霧切「あら、どうしたの?」

    苗木「いや…、キミが一番乗りなんて思ってもみなかったから…ははは」


    苦笑いをこぼしながら、苗木くんは再び座り込みました。


    霧切「…まるで私のこと、知ってるような口振りね」

    苗木「直感だよ。僕ってエスパーなんだ」

    霧切「ふぅん。面白い冗談ね」


    別段面白そうとは思ってないような表情で霧切さんは言いました。


    苗木「………………」
  22. 22 : : 2014/01/24(金) 23:38:13
    石丸「寄宿舎には全員分の個室があったぞ」

    江ノ島「部屋は防音ね…あたしと不二咲で確認したから間違いねーわ」

    苗木「食料はきちんと揃えられてたよ。飢え死にの可能性は無さそうだ」

    霧切「ここは本当に希望ヶ峰学園のようね。色々おかしな改築は入ってるみたいだけど」

    大和田「入り口はガッチガチに固められてやがったぜ…」

    十神「黒幕に繋がる手がかりは無し…か」

    セレス「うふふ。これではっきり分かりましたね」

    セレス「逃げ場のない空間に、閉じ込められたということが……」


    セレスさんの言葉で、その場に重苦しい沈黙が流れます。


    セレス「こうなれば出来ることは一つだけ。…適応ですわ」

    舞園「適応……」


    それは脱出を諦めて、一生ここで暮らすことを受け入れるということ……

    苗木「えっ…!?出来るわけないよそんなこと!!」

    十神「なら殺すか?」

    苗木「ぐっ…!?」

    朝日奈「ちょっとあんた何言ってんの!?」

    十神「それがここのルールだ。何もおかしなことはない。…そうだろう?苗木」

    苗木「そう…だけど……。殺すなんて出来ないよ……」

    舞園(苗木くん……)

    悔しさが滲むような、思い詰めた横顔。


    舞園「苗木くん、大丈夫ですよ!きっと脱出口が見つかりますって!」


    平凡なだけの私は、こんな根拠も責任もない励まししかしてあげられませんでした……。
  23. 23 : : 2014/01/25(土) 16:47:31
    支援します!.。゚+.(・∀・)゚+.゚
  24. 24 : : 2014/01/25(土) 21:05:40
    >>23
    ありがとうございます!
  25. 25 : : 2014/01/25(土) 21:05:47
    翌日

    =食堂=


    今日から朝はみんなで食堂に集まって朝食を摂ることになりました。

    皆さんは自分の好みで食材を調理し、思い思いに食べています。


    苗木「………………」

    舞園「苗木くん、食べないと元気が出ませんよ?」

    苗木「…そうだよね。ごめん」

    舞園「そんな…謝る必要はないですよ!」

    苗木「いやボク、気も身体も弱くて…男のクセに情けないな」


    決してテレビでは見ることのない、疲れきった笑顔。…この状況でも笑っていられるのは職業病でしょうか。

    落ち込んでいる彼を励まそうと口を開きかけたとき


    霧切「ねえ」


    透き通っていて、愛想のない声がかけられました。


    霧切「前、いいかしら」

    苗木「霧切さん……」

    苗木くんは霧切さんを見たとたん、肩をきゅっとすくめてしまいました。


    苗木「いいよ、どうぞ」

    霧切「…どうも」


    見下ろす冷たい霧切さんの視線と、見上げる怯えた苗木くんの視線。


    舞園「………………」


    昨日のやり取りといい、今といい、この2人にはどんな関係があるのでしょうか。

    そんなことを考えながら、私は自分のご飯を食べました。
  26. 26 : : 2014/01/26(日) 20:43:26
    苗木「舞園さん、今日は時間ある?」

    舞園「ええ、大丈夫ですよ。どうかしましたか?」

    苗木「良ければこのあと、一緒に過ごさない?」


    【超高校級のアイドル】からのお誘い
    …この魔力に勝るものなどそうそうありません。

    舞園「もちろん!喜んで!」

    苗木「良かった」ニコッ


    やっと苗木くんの顔に笑みが戻ります。

    「じゃあ急いで片付けちゃうから」と苗木くんは食器を持って厨房に入っていきました。


    舞園「はあ……」

    胸のドキドキを抑えようと溜め息をつきます。

    少し意識しすぎかもしれませんが、この学園に来て苗木くんと接触することが増え、緊張しっぱなしです。

    『舞園さんのことが気になってしょうがなかったんだ…』

    舞園「~っ!!」///

    あのやり取りは思い出すだけで恥ずかしい!!


    霧切「あの、舞園さん?」

    舞園「えっ?…あっ、霧切さんすいません。何ですか?」

    霧切「別に…。何だか顔が赤かったから」

    舞園「そ、そうですか…?」

    霧切「そうよ」

    そう言いながら霧切さんはコーヒーをすすりました。

    霧切「…苗木君でしょ?」

    舞園「……えっと///」カアァ

    霧切「気を付けなさい」

    舞園「えっ?」


    訊き返そうとしますが、霧切さんは立ち上がって、さっさと厨房へ入ってしまいました。

    舞園「…何だったんだろう」

    『気を付けなさい』って…一体何に?
    …まさか苗木くんじゃないですよね。


    苗木「舞園さん、お待たせ」

    霧切さんと入れ替わるように、小走りで苗木くんが戻ってきました。

    苗木「じゃ、行こっか」

    舞園「はい!」

    …まあ、詳しいことは後で訊けばいいですよね。
  27. 27 : : 2014/01/27(月) 02:01:54

    ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇

    =体育館前=


    苗木「うわ。…この模擬刀は使えないな」

    舞園「手が汚れちゃいますね……」


    苗木くんが提案したのは『護身用の武器探し』
    …でも防衛に使えそうなものなんてほとんどありません。


    苗木「はぁ…。まあ男だし、自分の身ぐらい自分で守れよって感じか」


    苗木くんは溜め息をついて、その場にへたり込みました。


    苗木「やめよっかこんな事。お話ししようよ!」ニコッ

    舞園「いいですよ。…見つからないものを探しても気が滅入るだけですもんね」


    私の言葉に、満面の笑みでうんうんと頷く苗木くん。

    年相応とは言い難い幼い表情や仕草に、鼓動が跳ね上がります。


    苗木「…ねえ、舞園さん。舞園さんって夢はある?」

    舞園「夢ですか…。苗木くんはあるんですか?」

    苗木「うん、あるよ。…ボクの夢はアイドルだ」
  28. 28 : : 2014/01/27(月) 02:02:51
    舞園「それなら苗木くんはもうその夢を叶えてるんですね!凄いです!」

    苗木「イヤ…、ボクなんてまだまだだよ」

    苗木「ボクは昔から何かと弱かったんだ。気も、身体もね。…妹の方がまだたくましかったよ」

    苗木「何につけても自信のないボクの、唯一の取り柄が歌だった。ステージで歌っているときだけが、ボクがボクらしくいられる唯一の時間だった……」


    苗木くんは淡々と自虐的な言葉を吐き出します。


    苗木「それを守るためなら、ボクは今までどんな事でもやってきた。…どんなにイヤな事でも…ね……」

    苗木「あの世界では息継ぎなしで水中を泳ぎ続けないといけないようなモノなんだ。…こうしている間にも、みんなの中からボクという存在が薄れていってるかも知れない……」
    苗木「ボクには…こんな事をしているヒマはないのに……っ!!」


    舞園「苗木くん……」


    その顔に笑みはありません。
    仮面が剥がれ、その下の怯えや恐怖が剥き出しになった顔……


    苗木「出してくれ!ボクを今すぐここから出せよっ!!」
  29. 29 : : 2014/01/27(月) 02:04:07
    一行空けるの忘れるとか…_| ̄|○
    すいません
  30. 30 : : 2014/01/27(月) 21:31:37
    …それはこの学園に来てから初めて聞いた、包み隠すことなく感情を露わにする彼の心の叫びでした。


    苗木「…ゴメン。舞園さんに愚痴っても何も変わらないのにね」シュン


    ピリピリした雰囲気が抜け、うなだれる苗木くん。


    舞園「気にしないでください。この状況なら誰だって文句ぐらい言いたくなりますよ」


    苗木「イヤ、でも……」

    舞園「もう。大丈夫ですよ」


    昨日苗木くんが私にしたように、今度は私が手を握ります。

    ぴく、と苗木くんの肩が揺れましたが……


    苗木「舞園さん……。ありがとう」ニコ


    そう、泣き出しそうなくしゃくしゃの笑顔で応えてくれました。


    舞園「苗木くん…」


    よそ行きの仮面の下の笑顔……

    その笑顔が見れたのが嬉しくて、私の頬も自然と緩んだのです。
  31. 31 : : 2014/01/29(水) 22:14:38

    ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


    それからしばらくお喋りした後、苗木くんは自分のお部屋へと帰っていきました。


    舞園「どうしよう…まだ時間はあるんですよね」


    そう言ったとたん、話を聞きたい人がいたことを思い出しました。


    舞園「そうだ。霧切さん……」


    …あの言葉の意味、ちゃんと確かめないといけないですよね。





    =玄関ホール=


    霧切「私は学園の調査で歩き回らないといけないの。…それについて行く形でいいなら一向に構わないけど」コンコン


    …私の方を見向きもしないで、壁をノックしながら彼女は言いました。


    舞園「それで全然いいですよ。…でも何してるんですか?」

    霧切「壁の裏に空洞か何かないかを探しているの。…もし何かあれば音が変わるはずよ」コンコン

    舞園「なるほど…。凄く地道ですね」

    霧切「確かにね。でもこの学園についてはあらかた調べきってしまったから、こうでもしないと手がかりなんてないわ」コンコン

    霧切「…それで?私とこんな事を話しに来た訳じゃないでしょう?」

    舞園「はい…。あの、今朝の事なんですけど……」

    霧切「?……私が何か言ったかしら」

    舞園「もう、食堂で霧切さんが『気を付けなさい』って言ったじゃないですか!」

    霧切「…ああ」


    本当に忘れていて今思い出したように、霧切さんは相槌を打ち、こちらを振り返ります。


    霧切「言葉通りの意味よ。『苗木 誠に気を付けなさい』ってこと」
  32. 32 : : 2014/01/29(水) 22:58:55
    舞園「…えっと、その理由は……」

    霧切「ないわよ。ただの勘」

    舞園「勘って…。そんな事で苗木くんを警戒しろって断言するんですか?」

    霧切「もちろん勘だけじゃないわ」

    霧切「…彼が元は5人組のユニットグループだった事は知っているでしょう?グループが解散した後、苗木君以外のメンバーがどうなったか知っているかしら」

    舞園「えっと…。確か芸能界から撤退して、それぞれの道を……」

    霧切「死んだわ」

    舞園「……え?」


    その非日常的な言葉は、まるで何でもないような事のように霧切さんの口から滑り出しました。


    霧切「撤退する前に4人全員よ。しかもマスメディアはこの事実を伏せている。おかしいと思うでしょ?」

    舞園「ちょっ…、ちょっと待ってくださいよ!何で霧切さんがそんな事を……」

    霧切「…話すことは出来る。でも、聞きたいなら約束して」

    霧切「私と話したことは苗木君には内緒。…絶対よ」


    『苗木くんには絶対内緒』

    ドクン、ドクンと熱いものが体中を巡ります。

    ───聞いてはいけない、聞いたら後悔する。

    それなのに…

    舞園「はい…。分かりました」


    それ以上に、好奇心が私を駆り立てました。
  33. 33 : : 2014/01/30(木) 07:22:57
    期待してます
  34. 34 : : 2014/01/30(木) 07:46:09
    >>33
    ありがとうございます!
  35. 35 : : 2014/01/30(木) 07:46:17
    霧切「私の才能、まだ言ってなかったわね」


    私が答えたので、霧切さんは話を進めていきます。


    霧切「私は【超高校級の探偵】…特に殺人事件を得意分野にしているの」

    舞園「【超高校級の探偵】……」


    それは彼女が殺人事件のスペシャリストであることを意味していました。

    そして、そんな霧切さんが語る『死』というのは……

    …嫌な予感しかしません。


    舞園「…霧切さんはどうして公にされてない事実を知っているんですか?」

    霧切「薄々気付いてるでしょう。…私がその事を秘密裏に調べているからよ」


    恐る恐る尋ねた私に、霧切さんはぴしゃりと言いました。


    霧切「巧く集団自殺に見せられていたけど…あれは他殺よ。間違いなくね」
  36. 36 : : 2014/01/30(木) 20:47:28
    舞園「他殺……」


    苗木くん以外が…何者かに殺された。


    霧切「不自然よね。とても不自然だわ」

    舞園「まさか霧切さんは苗木くんが……」

    霧切「あくまで可能性よ」


    …それは苗木くんが怪しいと言っている様なものです。


    舞園「…でも、私には信じられません……」


    だってさっき見た顔は…、仮面を脱いだあの顔は……


    霧切「何を信じるかはあなたに任せるわ」


    霧切さんはクールに言い放つとくるりと背を向けて、壁のノックを再開しました。


    舞園「……………」ペコッ


    コンコンという音が『もう話せることはない』と主張しています。


    なので私は一礼して、寄宿舎へと帰ることにしました。
  37. 37 : : 2014/01/30(木) 22:16:21
    =寄宿舎=


    桑田「おっ、舞園ちゃん」

    苗木「舞園さーん!」


    寄宿舎に入ってすぐ、後ろから声をかけられました。


    舞園「こんにちは。2人で何していたんですか?」

    苗木「えっとね、ボクが桑田クンにキャッチボールしようってお願いしたんだ」

    桑田「そんで倉庫から道具引っ張り出して、体育館でテキトーに投げてたんだよ」

    苗木「桑田クン凄かったよ!飛んできたボールが重くて驚いちゃった」

    桑田「へへっ、だろ?伊達に【超高校級の野球選手】やってねーぜ」


    はしゃぐ苗木くんと自慢気な桑田くん。

    身長差のせいか兄弟の様なその光景は、見ているこちらが和みます。


    桑田「んで、舞園ちゃんは何してたんだ?」

    舞園「えっと、私は霧切さんと……」


    そこまで言って、私はハッと口を押さえました。

    でも、時すでに遅しだったらしく


    苗木「…霧切さん?」


    ゾッとするほど冷たい声と表情。


    桑田「ん?苗木、霧切がどうかしたのかよ」

    苗木「ううん、別に」ニコッ


    でも桑田くんに向き直ったときはすでに元の人懐っこい笑みでした。


    苗木「ねえ舞園さん、後でボクのお部屋に来てくれないかな?」ニコニコ


    その笑みのまま、苗木くんはあどけなく小首を傾げて私に尋ねます。


    舞園「はい…。構いませんよ」


    …選択の余地なんてありませんでした。


    苗木「ありがと♪」
  38. 38 : : 2014/01/31(金) 21:06:32
    苗木からほのかに漂うヤンデレ臭
  39. 39 : : 2014/02/01(土) 01:48:34
    >>38
    加速します←
  40. 40 : : 2014/02/01(土) 01:48:43

    バタン


    =in ナエギ room=


    苗木「さ、適当に座って」ヌギヌギ

    舞園「えっ?苗木くん!?」

    苗木「?」キョトン


    苗木くんはジャケットを脱いで、パーカーのチャックを胸元まで下ろしました。


    苗木「あっ、もしかしてボクと話すのイヤだった?」

    舞園「い、いえ…そんな事ないですけど!!(着眼点が謎すぎる!!)」

    苗木「…本当?」ジーッ


    不安げにこちらを見つめる苗木くん。


    舞園「って言うか顔近すぎますよ!」

    苗木「ね、ねえ舞園さん落ち着こうよ……」


    私が何か言う度に苗木くんはビクビクしています。

    …まるで私を気遣うというより、私の機嫌を損ねることを怖がってるみたいに。


    苗木「我慢しないで…。キミに嫌われるのだけは絶対にイヤだから」

    苗木「ボクは……」


    何か言いかけたのを止めて、苗木くんは黙ってしまいました。


    苗木「はぁ…!はぁ……!」


    その代わり苦しそうに息を荒げて、ベッドに倒れ込んでしまったのです。


    舞園「苗木くん、大丈夫ですか!?」

    苗木「ご、ゴメン…。キミと話すと緊張しちゃうんだ……。ステージで歌うのは何とも思わないのに、おかしいよね……はは」


    無理やり笑顔を浮かべて、体を震わせて…それでもその目は私をじっと捉えています。
  41. 41 : : 2014/02/11(火) 23:20:04
    舞園「…どうして……」


    正直、分かりません。

    大衆の前でステージで踊りながら歌うより、私と話した方が緊張する理由が…


    苗木「…正直になっちゃうとね、キミが好きなんだ」

    舞園「えっ…?」

    苗木「いくらラブコール送っても返事してくれないから言うよ。ボクは、キミが好きだ」


    苗木君はそう言って起きあがると、私の手を掴みます。


    苗木「初めてキミを見たときから…キミの声を聴いたときから好きだった。もちろん恋愛感情でね」

    舞園「そ、そんな……ひっ!?」

    苗木「ああ、一度触れてみたかったんだ。すっごくいい匂いがする……クセになりそう」スリスリ


    苗木君はそう言いながら、私の掌に頬をすり寄せています。


    舞園「な、苗木君……」


    あれ…?

    私も苗木君が好きなはずなのに…素直に喜べないのは何ででしょう?


    苗木「…ゴメンゴメン」パッ

    舞園「苗木君…あの……」

    苗木「大丈夫、返事は待つからさ。…ただ、なるべく早いと嬉しいかなぁ」ニコッ

    舞園「…はい」

    苗木「時間取っちゃってゴメンね?もうこんな時間だし、シャワー浴びた方がいいよ」


    苗木君はそう言って、私を慣れた手つきで出口までエスコートしました。


    苗木「じゃ、舞園さんバイバイ♪」


    バタン



    舞園「はぁ……」


    苗木君から解放されると同時に溜め息がこぼれます。

    それは疲弊と安堵…やっと逃れられたという溜め息。


    舞園「取りあえず、部屋に行こう……」
  42. 42 : : 2014/02/13(木) 00:26:49
    ーin マイゾノ roomー


    ───怖かった。

    それが率直な感想でした。


    舞園「はぁ……」


    シャワーを浴びた後、濡れた髪を拭いながらまた深い溜め息をつきます。


    『ボクは、キミが好きだ』

    まっすぐで真剣な瞳。その直後に…あんな事を言われたら……


    舞園「苗木君……」


    『苗木誠に気を付けなさい』

    霧切さんの忠告がフラッシュバックします

    彼は本当に…霧切さんが言うとおりの人なのかも。


    舞園「…少し気を付けた方がいいですよね」






    ───それが悲劇の始まりでした。


    このときの私はまだ知らなかったのです。


    私が魅入られてしまったのは流行の最先端を行くアイドルじゃなく、可愛らしい仮面を被った悪魔だったことに……
  43. 43 : : 2014/02/14(金) 22:29:55

    翌日

    =食堂=


    桑田「舞園ちゃんおはよっす!」

    苗木「舞園さん!」パアッ


    舞園「桑田君に苗木君…おはようございます」


    昨日、寄宿舎で会ったのと同じ組み合わせ
    2人は並んで朝食を摂っていました。


    舞園「昨日といい…仲良しなんですね、2人とも」

    苗木「でしょ?」

    桑田「なっ…、ちっげーよ男に懐かれても嬉しくねぇし!」

    苗木「じゃあ桑田クン、ボクのこと嫌い?」

    桑田「いや、嫌いじゃねーけどよ…でもお前はいつかライバルになんだし」

    舞園「ライバル?どうしてアイドルと野球選手がライバルに……」

    桑田「あー、俺もう野球やんねーから。ミュージシャンの方がデビルカッケーっしょ!!」

    苗木「もったいないと思うけどなぁ」

    桑田「やりてーことやんのが一番だろ。苗木、こっから出たらメンバーとか事務所、紹介してくれよな!」

    苗木「…うん」アハハ


    何を言っても無駄だと思ったのか、苗木君はただ苦笑いを浮かべています。


    苗木「そうだ、舞園さん。昨日のこと考えてくれた?」

    桑田「ブフォオ!!」
  44. 44 : : 2014/02/16(日) 13:22:07
    桑田「苗木お前舞園ちゃんと何話してたんだよっ!?」

    苗木「プロポーズだよ。『ボクはキミが好きです』って」

    桑田「なああああああーーーっ!!?」

    舞園「えっと苗木君その事なんですけど……」

    苗木「うんうん」


    苗木君は突っかかってくる桑田君をかわしながら期待に満ちた眼差しをこちらに向けています。


    舞園「私、こういうの経験したことなくて、正直どうすればいいか分かんないです」

    舞園「だから…もう少しあなたと過ごしてから判断しても良いですか?」

    苗木「ウソ!?舞園さん告白されたことないの!?」


    …苗木君は返事うんぬんよりそっちの方が気に留まったみたいです。


    苗木「舞園さん可愛いから意外だなぁ…」

    舞園「いえいえっ、そんなことないですよっ!!」

    苗木「うーん、でもまあよかったよ」


    そう言って苗木君はクスッと微笑みます。


    桑田「んだよその笑いはよ」

    苗木「…ん、何でもなーい」

    桑田「もしややましい事なのか!?」

    苗木「秘密~」クスクス


    ふざけあいながら楽しそうに笑う2人。


    苗木「あ、ねえねえ舞園さn霧切「おはよう、苗木君」

    苗木「わっ!?…脅かさないでよ霧切さん……」

    霧切「そんなつもりは無かったの。驚いたなら謝るわ」

    苗木「イヤ…別にいいけどさ」
  45. 45 : : 2014/02/17(月) 00:46:38
    霧切「突然で悪いけど苗木君、今日はまず私に付き合ってくれないかしら」

    苗木「えぇ……」


    霧切さんの提案に、苗木君は露骨に顔をしかめます。

    でも、霧切さんにはアイドルのワガママは通用しないようで


    霧切「…言い方が悪かったわ。今日はまず私に付き合いなさい」グイッ

    苗木「えええ!?ちょっと、霧切さん!?」ガタッ


    苗木君は抵抗する間もなく霧切さんに引きずられていってしまいました。


    桑田「いや~、しっかし参ったな。苗木は霧切狙いだと思ってたのによ……」

    桑田「舞園ちゃんどうするワケ?アイツの告白受けちゃうん?」

    舞園「さっきも言いましたけど…今はまだ分かりません」


    苗木君は一見、人懐っこくて誰とでも仲良くなれる可愛らしい男子です。

    でも奥底に何か壊れやすいモノを抱えていて…彼と付き合う事はそれを一緒に受け入れないといけないということ…みたいな。

    上手くは言えないけど、とにかく怖い。


    舞園「桑田君は…苗木君のこと、どう思いますか?」
  46. 46 : : 2014/02/20(木) 08:41:56
    まさか…絶望エンド?

    あと、支援っす!!
  47. 47 : : 2014/02/28(金) 00:03:33
    >>46
    秘密ですw支援ありがとうございます!
  48. 48 : : 2014/02/28(金) 00:03:39
    桑田「苗木?…うんまあフツーの男子って感じだな」

    桑田「あ、でもどっかかわいこぶってる気もすんな!これだからアイドルってヤツはよ~……」

    舞園「…その割には仲良しに見えましたけど」

    桑田「いや~…実はあいつ、オレの才能理解してくれてんだよ!」


    ~回想~

    苗木『へえ!桑田クンはミュージシャンになりたいのか~』

    苗木『桑田クン声かっこいいし夢じゃないよ!ボクも応援する!頑張ってねっ!』ニコッ

    ~~~


    桑田「前言撤回、いいヤツだよやっぱ!」

    舞園(絶対乗せられてますねコレ)


    だいたい、苗木君さっきは「もったいない」って言ってたじゃないですか……。

    お調子者の桑田君は気が付いてないんでしょうか。
  49. 49 : : 2014/02/28(金) 00:10:16

    ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇

    =in キリギリ room=


    霧切「しらばっくれるのもいい加減にしなさい」

    苗木「だからボクは知らないよ。…みんなを殺したのは誰かなんてさ」


    苗木と霧切。

    【超高校級のアイドル】と【超高校級の探偵】

    相見える2人の視線は、お互いの腹を探り合うかのように鋭い。


    苗木「どうせ『ジェノサイダー翔』とかじゃないの?みんなかっこよかったし」

    霧切「苗木君。ここにはあなたを縛り付けるメディアやディレクター、スポンサーもいないわ。演じる必要なんて無いのよ」

    苗木「でもキミがいる。キミは彼らとは違うとでも?」

    霧切「………………」

    苗木「さすがにギャラリーの前でプライベートは晒せないよ」


    苗木はべえっと舌を出し、クスクスと嗤う。


    苗木「証拠がなけりゃ言いがかり。それぐらいの苦情なんて今までごまんと捌いてきたんだよ。イヤな事だって何だってやってきたさ」

    霧切「…分かったわ。もうしつこくこの件については追求しない。こんな軟禁状態じゃ追い詰めても仕方ないもの」

    苗木「だーかーらー、ボクは何もしてないって。…でもありがとう、霧切さん」ニコ

    霧切「その代わり、ここでは妙な気を起こさない事ね」

    苗木「人の恋路を邪魔しないでよ。それとも舞園さんとそういう関係なの?」

    霧切「馬鹿なこと言わないで。私はあなたの被害者を増やしたくないだけ」

    苗木「あはっ、言ってくれるね。ボクは人殺しなんかじゃないって。ただ彼女をボクのモノにしたいんだよ───」

    霧切「………………」


    ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
  50. 50 : : 2014/03/02(日) 13:37:46

    =寄宿舎:廊下=


    結局、午前中は桑田君とお話しをして過ごしました。

    舞園(かなり盛り上がれましたし…何だか彼とは初めて会った気がしないんですよね)


    そんなことを考えながらぼーっと歩いていると…

    舞園(あれ…苗木君?)


    霧切さんのお部屋から出てきた男の子は間違いなく苗木君です。


    苗木「あ、舞園さん」


    私に気が付いた苗木君が手を振り、こちらに歩み寄ってきました。


    舞園「苗木君、霧切さんと何のお話をしてたんですか?」

    苗木「あ、ああ。単なる世間話だよ。気にしないで。そんなことより舞園さんは何してたの?」

    舞園「私は食堂でボーッとしてましたよ」

    苗木「そっか。それなら良かった!」ニコッ


    …やっぱり、桑田君といたことは黙ってた方がいいですよね。


    苗木「ボクこれから倉庫に行くんだけど…舞園さんもどう?」

    舞園「倉庫?」

    苗木「うん。あそこって便利な物がたくさんあるんだよ」

    舞園「そうなんですか!…じゃあちょっと行ってみようかな」

    苗木「行ってみよう行ってみよう!」
  51. 51 : : 2014/03/02(日) 13:39:01

    =倉庫=

    苗木「あったあった」


    苗木君は棚からひょいっと小さな箱を取り出します。


    舞園「それ何ですか?」

    苗木「目覚まし時計だよ。ボクって朝弱くてさ……」


    「我ながらイヤな体質だよ」と困ったように苗木君は笑いました。


    苗木「舞園さんも持って行けば?手近なところに時計があると便利だよ」

    舞園「そうですね…じゃあそうしましょうか」

    苗木「それがいいよ!じゃあ、はい」スッ

    舞園「ありがとうございます」


    苗木君が同じ棚から箱を手渡してくれました。中にはピンク色の小さなアナログ時計が収められています。


    苗木「…そうだ!舞園さん午後はヒマ?」

    舞園(やっぱり…そうなりますよね)

    苗木「出来れば断らないでほしいなあ。…キミにだけ、見せたいモノがあるんだよ」

    舞園「…っ。ええ、大丈夫ですよ」


    まるで見透かされたような言葉にヒヤヒヤしながら、私はそのお願いを了承しました。
  52. 52 : : 2014/03/02(日) 14:57:22
    面白い
    期待します
  53. 53 : : 2014/03/02(日) 20:31:05
    続きキターーー!

    苗木が殺人犯かどうかは今は分かんないけど苗木は(ハートの)窃盗犯だなw
  54. 54 : : 2014/03/03(月) 01:59:03
    >>52
    ありがとうございます!期待に応えられるように頑張ります

    >>53
    ハートの窃盗犯wwwまあ確かに私にとってはそうですね←
  55. 55 : : 2014/03/03(月) 01:59:22

    =in ナエギ room=


    舞園「お邪魔します……」

    苗木「ゴメンね。ちょっと散らかってるけどどうぞ」


    確かに、昨日は見なかった紙の束があちこちに積んであります。それに……


    舞園「これは…キーボード?」

    苗木「そうだよ。マット状でくるくるって巻いて収納出来るやつ」


    苗木君がマットにプリントされたピアノの白鍵を叩くと、ポロンとドのシンセサイザが鳴りました。


    苗木「最近、作詞とか作曲をやってみるんだけど…難しいんだよな~」

    舞園「あっ。じゃあ私に見せたいものって……」

    苗木「そう、ボクの歌!…まあ見せたいっていうか聴かせたい…だったね」

    苗木「ホントは恥ずかしいんだけど…キミにだけは聴いて欲しいんだ」


    照れたように目を泳がせながら頬を掻く苗木君。


    苗木「…と言ってもヘタクソなんだけどね……」

    舞園「大丈夫ですよ!ぜひ聴かせてください!」

    苗木「あはは、ありがとう。じゃあ……」スウッ


    息を吸う音。

    ふわりと柔らかい表情で、苗木君は歌い出しました。
  56. 56 : : 2014/03/03(月) 02:00:59

    キミはほら、そんなにも綺麗だから
    ボクはほら、こんなにも弱いから

    この想いはボクを少しずつ狂わせていく…


    舞園(バラードだ……)

    苗木君の爽やかでよく通る声が、悲しい旋律を歌い上げていきます。


    …キミの気を惹きたくて今日はキミのお人形を壊した

    ゴメンね。見つからないパーツはボクが深く深くしまい込んでしまったから

    アテもなくキミはただフラフラと、お人形を壊した人を探してる


    どうして?キミに寄り添っていたのはいつもボクなのに。昨日の夜の鐘、一緒に聴いたのもボクでしょう?


    キミを慰めて同じ人を探す。「ありがとう」ってその笑顔が辛すぎて、ボクは「どういたしまして」とただ微笑み返すんだ…


    本当に辛そうに、丁寧に歌う苗木君。

    舞園(苗木君、本気で歌が好きなんだなぁ……)

    一気に最高潮。曲はサビに移ります。
  57. 57 : : 2014/03/03(月) 02:04:00

    この世界にキミと2人きりになれたらどんなに幸せだろう。叶わない夢。でも諦められない夢。

    キミに贈ろう、ボクの覚悟を。

    プレゼントのリボンほどいたとき、霧は散って、ボクはキミにこの手を差し出す。

    一緒に行こう。キミがいれば何も怖くない……


    苗木「…ふぅ」

    舞園「わぁ…、とっても幻想的で素敵です!」パチパチ


    惜しむことなく、苗木君に対する不安も忘れて、私は拍手を送ります。


    苗木「そうかな?ちょっとカッコつけすぎちゃった気がするけど……」

    舞園「そんな事ないです!ロマンチックで私は好きですよ」

    苗木「キミにそう言ってもらえると嬉しいよ…ありがとう」


    苗木君は微笑んで、ベッドにゴロンと横たわりました。


    苗木「はぁ、熱い……。緊張で蒸発しそうだったよ」

    舞園「お疲れ様でした」パタパタ


    布団であおいであげると、栗色の髪がそよぎ、彼は気持ちよさそうに目を細めていました。
  58. 58 : : 2014/03/06(木) 00:25:24

    苗木「あのね、舞園さん」


    苗木君は寝ころんだまま私を見上げます。


    苗木「ボク、この状況に巻き込まれてからずっと気分が沈んでたんだ。そのせいでキミを不愉快にしちゃってたよね。…ゴメン」

    舞園「いえいえ!昨日も言いましたけど、この状況なら誰だってそうなりますよ。気にしないでください」

    苗木「でもみんなを笑顔にするのがアイドルなのにね…。はは、【超高校級のアイドル】失格だよボクは」

    舞園「苗木君……」

    舞園(やっぱり…。彼はただ頑張りやで、疲れて気が滅入ってるだけなんだ)

    舞園(本当は真面目で温厚で…とっても優しい人なんですね)


    舞園「大丈夫です、私はいつでも苗木君のファンですから!」

    苗木「舞園さん……」

    舞園「苗木君、昨日のお返事なんですけど…」


    私は、彼を信じてみることにしました。

    私が彼の傍にいて、それで彼の気持ちが少しでも安らいでくれるなら……


    舞園「私みたいな人間でいいなら…こちらこそよろしくお願いします」
  59. 59 : : 2014/03/07(金) 01:06:25

    苗木君はぽかんとした表情でこちらを見ます。

    そして次の瞬間、その顔は泣き出しそうに歪みます。


    苗木「本当に?ウソじゃないよね…?」

    舞園「こんなときに嘘なんて言いませんよ」

    苗木「そう…だよね。あはは……」


    苗木君は起き上がって、私をじっと見つめました。


    苗木「ありがとう。…キミには感謝することばかりだ」

    舞園「いえ…、私も苗木君とつ、付き合えるなんて夢みたい……」


    恥ずかしくなって目をそらすと、彼は私の顎を撫で上げ……たりはせず


    苗木「ボクの方こそ…夢みたいだよ」


    震える声が聞こえてきました。
  60. 60 : : 2014/03/07(金) 02:55:30

    =in マイゾノ room=


    舞園「♪」


    あの後、苗木君と一緒にデュエットして遊んだり、夕食を一緒に食べた後、私は部屋に戻り、シャワーを浴びました。

    昨日のように不気味な彼はいなくて…目の前にいたのは、誰もが知ってる優しい彼。


    舞園(やっぱり…彼は疲れてただけ。きっとそう)


    ベッドには苗木君に渡してもらった時計が置いてあります。


    舞園「目覚まし、きちんとかけておかなきゃ」


    私は目覚ましの設定を、朝食会の10分前にしました。
  61. 61 : : 2014/03/07(金) 03:25:19

    =in ナエギ room=

    ピンポーン ピンポーン


    苗木「はーい」ガチャッ

    霧切「苗木君…。舞園さんと居たわね」

    苗木「そうだけど、何か文句ある?」

    霧切「ありありよ」


    険しい表情で、霧切は苗木を睨みつける。


    霧切「もう被害は広げさせない」

    苗木「またその話?ボク犯人じゃないって言ってるじゃん」

    霧切「可能性が皆無じゃない限り、私はあなたを疑い続けるわ」

    苗木「ご勝手に。用はそれだけ?」

    霧切「ええそうよ。邪魔して悪かったわね」

    苗木「気にしないで。それじゃあ」


    バタン!

    扉が乱暴に閉められた。


    苗木「うーん、可愛いけどボクを疑うとは心外な。…あ、イイ事考えた」


    そうつぶやいて、苗木は備え付けの机の引き出しを開ける。

    その中に収められているのは工具セット。モノクマが殺人用にとわざわざ用意した物だ。


    苗木「おーい、モノクマ!」

    モノクマ「ほいほい!何ですかな?」ピョコン

    苗木「ねえ、オイシイ話があるんだけど乗ってくれない?絶対キミに損させない。約束するよ」

    モノクマ「うぷぷ、クマを買収出来るとでも?そんなセコい真似は出来ませんよー!」

    苗木「まあまあ、話だけでも聞いてよ。…これをドラマにしたら全員吐き気もよおして絶望しちゃうぐらいのシナリオがあるんだ」

    モノクマ「ほう、絶望とな……」


    『絶望』という言葉に食いつくモノクマ。


    苗木「…あはっ、これでずっと一緒だよ。飛び込んで来てくれたからには絶対逃がさないからね……」


    ねえ、舞園さん?…と、

    苗木は下卑た笑みで唇に舌を這わせた。
  62. 62 : : 2014/03/09(日) 15:35:07

    -翌日-

    =食堂=

    モノクマ「…というわけで、動機を用意しましたんでオマエラ自由に探してきなよ!じゃーねー!」


    モノクマさんから突然言い渡された「動機」の存在。

    ざわざわと食堂内が騒がしくなります。


    大和田「おい、苗木。お前が探してきてくれよ!」

    苗木「えぇ…。どうしてボクが……」

    大和田「だってお前が一番出口に近いとこにいるじゃねえか」

    大和田「それとも何だ?オレの頼みが聞けないってか?」バキバキ

    苗木「ひっ…!?」ビクッ

    霧切「待って。…私が行くわ」

    大和田「おお、マジか!助かるぜ!」


    なにやら不穏な空気の中、霧切さんが名乗り出ました。
    大和田君はぱっと笑顔になり親指を立てますが…


    苗木「………………」


    苗木君は感謝の意を述べることなく、むしろ睨みつけるように霧切さんを見つめます。
  63. 63 : : 2014/03/09(日) 16:05:47
    霧切「舞園さん、悪いけど一緒に来てくれないかしら」

    舞園「わ、私もですk苗木「ねえ、何で舞園さんもなの?」


    …私が疑問に思った事を、私の声を遮るように苗木君が口にします。


    舞園「苗木君……」

    苗木「キミは黙ってて」

    舞園「…っ」


    鋭く、冷たい苗木君の視線。


    舞園(苗木君……)

    苗木「霧切さん、キミが何をするのも自由だけど舞園さんはぞうじゃないでしょ?違う?」

    霧切「それは舞園さんの意思によるわ。ねえ、舞園さん。あなたはどうしたい?」

    舞園「え?えっと……」

    舞園(そ、そんな事言われても……)


    私の頭の中はパニック状態。


    舞園(きっと霧切さんと行くって言えば苗木君は怒るだろうし…。でもここで断ったら霧切さんにも迷惑が……)

    舞園(私には、選べない……)

    霧切「…分かった。もういいわ」スタスタ


    その様子を見かねたのか、とうとう霧切さんは一人で行ってしまいました。

    私に残ったのは…


    苗木「舞園さん……」


    何か咎めるような、苗木君の視線だけ。

    …そのとき、何も選ばない事が最悪の選択だったんだと、私は今さらながらも思ったのです。

  64. 64 : : 2014/03/09(日) 16:09:19
    あれ、ログインしてたはずなのに…
    >>63は自分です
  65. 65 : : 2014/03/09(日) 22:56:29
    まさか窃盗だけじゃなくて本当に殺人も…?

    (ごめんなさい。しつこいですよね?)
  66. 66 : : 2014/03/10(月) 23:17:13
    続きが気になるぅ
  67. 67 : : 2014/03/12(水) 21:02:31
    >>65
    大丈夫ですよ!苗木クンが何かやらかしているかは秘密です

    >>66
    更新がトロくてすいません…。完結出来るように頑張りますね
  68. 68 : : 2014/03/12(水) 21:02:45

    =視聴覚室=


    苗木「動機…ねぇ……」マジマジ


    苗木君は興味津々といった様子で手にしたDVDを見つめました。

    他の皆さんも…もちろん私も、自分の名前のラベルの貼られたディスクを持って席につきます。


    ウィンという無機質な音と共にディスクが吸い込まれ…、ディスプレイに光が灯りました。


    舞園(あっ…!)


    そこに映し出されたのは…


    『あ、映ってる~?おーい』


    舞園(みんな……!)


    間違いなく、そこに映し出されていたのは私の級友たち。


    ずいぶん久しぶりに感じるみんなの声。頬が自然と緩みます。


    『さやか、あんたが希望ヶ峰学園なんてスゲーじゃん!』

    『アタシたちも嬉しいよ!頑張れー!』

    『が、頑張ってね!さやかちゃん!』


    ザ…ザザー……


    舞園(えっ…?)


    そんな幸せな映像は、不快なノイズと砂嵐に唐突にさらわれてしまいました。
  69. 69 : : 2014/03/12(水) 21:05:22

    モノクマ『級友の希望ヶ峰学園への入学を快く祝う舞園さんのお友達。友情とは麗しいものですねぇ』


    なんだかバカにしたようなモノクマさんの声。

    画面は再び乱れて…そして明るく……


    舞園「!?」


    そこにみんなの姿はありませんでした。

    代わりにあったのは、荒廃した教室という背景と……


    舞園(何これ……っ!?)ガタッ


    おびただしくあちこちに飾られた真っ赤な血痕。

    私は思わず立ち上がります。


    モノクマ『ありゃりゃ?ここで問題です。皆さんはどこに行ってしまったんでしょうか…ここで何があったんでしょうか?』


    『正解は卒業の後で!!』


    舞園「な、何これ……」


    思っていた事を口に出して…、そして思考回路は、まるでレールの上を滑るように一つの答えを導き出しました。


    舞園「出なきゃ…。ここから出て、みんなの無事を……」

    苗木「うわあああああああっ!!?」

    舞園「!?…苗木君……?」


    私の隣に座っていた苗木君の悲鳴で我に返ります。
  70. 70 : : 2014/03/12(水) 21:10:28

    苗木「あ、イヤ…何でもないよ……」


    絶対何かある苦笑いで彼はフラフラと立ち上がります。


    舞園「苗木君……」

    苗木「来ないでくれ!」

    舞園「…っ!」ビクッ

    苗木「!?…ゴメン。でもボクに、気持ちを整理させる時間をくれ……」


    そう言って、彼は出て行ってしまいました。


    石丸「おい、勝手な行動は慎みたまえ!」

    セレス「…行ってしまいましたね」

    舞園「もうお開きでいいんじゃないですか?…このままここにいても気分が沈むだけですし……」
  71. 71 : : 2014/03/12(水) 21:11:42

    =男子トイレ=


    苗木「げぼっ…!うごあ゙…っ!!」

    モノクマ「あら苗木クンじゃない!顔色悪いけど、どしたの?」

    苗木「モノクマ……」


    苗木はなんだか恨めしいジト目でモノクマを見下す。


    苗木「いくらねつ造でもひどいよアレ……。思わず吐いちゃっただったろ……?」

    モノクマ「にゃぽ?アレはねつ造なんかじゃないよ?っていうかアイドルが吐くとか言ったらダメじゃない?」

    苗木「吐くぐらいイイじゃん、生理現象だし……。それにねつ造じゃないなら映像のアイツ誰だよ」


    ハッキリと覚えている。…いや、忘れたくても忘れられない。

    それぐらいに、苗木にとってあの映像はショッキングだった。


    モノクマ「うぷぷ。映像にも出てきたでしょ?正解は卒業のあとあと!」

    苗木「そんな…、卒業する気失せちゃうよ」

    きゅっと肩をすくめ、文句を言う苗木。


    苗木「それなら直接、彼女に聞いた方が早いし」ニコ



    例え吐瀉物を処理しながらでも、意味ありげな笑みが画になるのは、さすが【超高校級のアイドル】といったところか。


    モノクマ「それは困っちゃうんだけどなぁ」

    モノクマ「…しょーがない、キミには特別にサービスしてあげるよ」

    苗木「サービス?」


    モノクマは洗面台に飛び乗ると、苗木にそっと耳打ちする。


    苗木「…うん。あははっ、悪くないね」


    それを聞いた苗木は、さっきまでの顔色の悪さが嘘のように、頬を染めて笑った。
  72. 72 : : 2014/03/18(火) 00:38:53
    続き頑張って書いてください
  73. 73 : : 2014/03/18(火) 00:40:05
    この期の展開がきになるんですよ(ノ´∀`*)
  74. 74 : : 2014/03/31(月) 12:03:40
    ひたすら待ってるぜ
    頑張って!
    してないと思うけど、無理はしないでね
  75. 75 : : 2014/04/01(火) 00:49:18
    >>72 >>73
    気になりますかありがとうございます!
    ものすごい亀更新ですが頑張ります

    >>74
    本当に全く無理してないですw(
    なるべく更新速度上げれるように頑張りますね!
  76. 76 : : 2014/04/01(火) 00:49:28

    =食堂=


    あの後、皆さんは解散。


    舞園(苗木君、大丈夫かな……)


    私はコーヒーを淹れながら、ぼんやりと彼の心配をしていました。

    …だって苗木君があんなに取り乱すなんて……


    また不安になって、心が落ち着かなくなってるのかもしれません。


    舞園(励ましに行ってあげないと……)


    そう思っていると、コツコツと足音が聞こえてきました。


    舞園「あ、霧切さん……」

    霧切「…どうしたの?私の顔に何か付いてるかしら」

    舞園「いえ、違いますよ。霧切さんはどうしてここに?」

    霧切「捜査をしてたらモノクマがちょっかいを出してきたのよ。それで集中力が切れてしまったから、コーヒーでも飲もうと思って」

    舞園「なら私が今淹れたものがありますよ。4人分ですし、一緒にどうですか?」

    霧切「4人分?」


    霧切さんがきょとんとして訊き返します。


    舞園「苗木君と飲もうかなって思いまして…。1人2杯ずつ飲めるように用意してたんです」

    霧切「彼、コーヒーは飲めないわよ。いつか見たゴシップ紙にそう書いてあったはず」

    舞園「えっ、そうなんですか!?」

    舞園(ああ、やっちゃったなぁ~……)

    舞園「さすがに1人じゃ飲み切れませんし…。霧切さん、一緒に飲んでください」

    霧切「そうね。じゃあお言葉に甘えて」

    霧切「…それにあなたには、話したいことがあるわ」
  77. 77 : : 2014/04/07(月) 00:23:34

    舞園「それで───、話したいことってなんですか?」


    食堂のテーブルを挟んで向かい合わせに席に着くと、私は霧切さんに尋ねます。

    霧切さんはその問いに一瞬だけ眉をひそめると、咎めるような視線でこちらを見据えました。


    霧切「前に警告したでしょう?『苗木誠に気をつけろ』って」

    霧切「彼はとても危険なの。死神の足音が、彼の周りだとよく聞こえる……」

    舞園「死神の足音?」

    霧切「虫の知らせみたいなものね。私は身の回りに起きる事件を、なんとなく予感出来るの」


    そう言って彼女は、コーヒーを一口すすりました。


    霧切「あら、美味しいわね」

    舞園「そうですか?」

    霧切「私は好きよ。毎日飲みたいぐらい」


    険しかった霧切さんの表情がふっと緩みます。

    でも、それもほんの少しだけ。


    霧切「とにかく、苗木君にはあまり関わらない方がいいわ」

    苗木「え、何でそんなこと言うのひどいなあ。人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られて地獄行きだよ」

    霧切「!?」

    舞園「苗木君っ…!?」
  78. 78 : : 2014/04/08(火) 09:50:41

    苗木「やあ、舞園さんに霧切さん。2人揃ってお茶会?いいね」


    さっきまでの取り乱した様子は一切なく、明るい笑顔を浮かべている苗木君。

    その手には大きなバッグが握られています。


    霧切「そんなところね。…で、あなたは何をしに来たの」

    苗木「そんなに睨まないでよ。ボクはただ、小腹が空いたから何か食べる物を探しにきただけだから」


    困ったように頬を掻きながら、苗木君は笑みを浮かべました。


    苗木「やっぱりいつまでも落ち込んでる場合じゃないと思って、気分転換にちょっと体を動かしてたんだ」


    そう言うと彼はバッグからジャージの袖を引っ張り出します。


    舞園「よかった。もう大丈夫みたいですね」

    苗木「うん、心配かけてゴメン」


    私は彼の笑顔を見て、自然と胸をなで下ろしてました。


    舞園(霧切さんはああ言いますけど…。やっぱり苗木君は、そんなに危険な人には見えません)


    苗木「コーヒーか。ボクは苦手だけど、舞園さんが淹れてくれたのなら、ちょっと飲んでみたいな」

    苗木「ねえ、明日の朝にごちそうしてくれない?霧切さんも一緒に…ね?」

    舞園「いいですね。じゃあ、明日の朝食会のときに」


    苗木君は嬉しそうに「うんうん!」と首を縦に振りました。
  79. 79 : : 2014/04/08(火) 19:11:54

    苗木「じゃあ、ボクは疲れたから何か食べてから部屋に帰って寝るよ」

    舞園「そうですか…。苗木君、おやすみなさい」

    苗木「うん!明日、楽しみにしてるね」


    苗木君は小さく手を振り、厨房の方に行ってしまいました。


    舞園「霧切さん…。私はやっぱり、苗木君が危ない人だとは思えません」

    霧切「…私も、証拠が示せないから無理には言わないわ」

    霧切「でも心の片隅には絶対留めていて。苗木君は危険かもしれないってこと」ガタッ


    霧切さんは席から立ち上がり、真剣な表情で見つめます。

    霧切「ごちそうさま。…あと、私も明日、楽しみにしてる」


    相変わらずクールにそう言うと、食堂から出て行きました。


    舞園(……私も、部屋に帰ろう)
  80. 80 : : 2014/04/08(火) 19:35:26

    ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


    =in マイゾノ room=


    部屋に帰って、ベッドに倒れ込んで…

    …不意に浮かぶあの映像を振り払うように、無理やり目を閉じました。




    舞園(ここは…どこ?夢なの…?)


    真っ暗な部屋。

    その隅に私の意識は佇んでいました。


    だんだんと暗さに目が慣れ、部屋の様子が分かってきました。


    舞園(ここは…。希望ヶ峰学園の寄宿舎?)


    そこは間違いなく、私が眠る寄宿舎の一室。

    違う点といえば、窓に打ち付けられた鉄板や監視カメラがないことでしょうか。


    ???「…怖いよね」

    舞園「!」

    舞園(苗木君…?)


    暗闇に紛れて聞こえてくる、爽やかで…でも物憂げな声。

    それは間違いなく苗木君の声でした。


    苗木「大丈夫。優しくするよ、出来る限り」

    苗木「別に悲しんでなんて言わないよ。ボクはとても悲しいけどね」

    苗木「ただ、キミに覚えていて貰いたいんだ。もう触れられないのなら、キミの記憶に直接刻み込むしかないでしょ?」


    その声は弱々しいのに、いつまでも脳の中に響くような声。


    苗木「キミなら信じられるよ。ボクとひとつになった証、きちんと残してくれるよね?」

    苗木「ねえ、ボクの───…」




    ピンポーーン


  81. 81 : : 2014/04/08(火) 20:48:36

    舞園「んっ……」


    時刻は午後10時

    目が覚めると、そこはやっぱり息苦しい閉鎖空間でした。


    ピンポーン


    その閉鎖空間に、インターホンが響いています。


    舞園(こんな時間に誰でしょう…)

    舞園「はい……」ガチャ

    苗木「あ、舞園さん…」


    そこには、困ったように笑う彼がいました。
  82. 82 : : 2014/04/08(火) 21:13:39

    苗木「実は部屋の鍵をなくしちゃって…。自分の部屋に入れないんだ」

    舞園「大変じゃないですか!」

    苗木「本当バカみたいだよね。あはは……」


    苦笑いを浮かべて、頬を掻く彼。


    苗木「本当は桑田クンに泊めてもらおうと思ったんだけど、寝ちゃったみたいでさ…。インターホン押しても返事がなかったんだ」

    舞園「お二人は仲がいいですもんね」

    苗木「うん。…で、女の子のキミに頼むのは心苦しいんだけど」

    舞園「私は別に構いませんけど…。でも、それだと校則に違反しちゃうんじゃないですか?」

    苗木「大丈夫だよ。校則で禁止されてるのは『個室以外での就寝』。自分の個室とまでは書いてないからね」

    舞園「なるほど…。それなら平気そうですね」

    苗木「じゃあ、お邪魔してもいいかな?」

    舞園「もちろん!どうぞ」

    苗木「ありがとう、ゴメンね、お邪魔します」


    そう言って、遠慮気味に苗木君は部屋に足を踏み入れました。
  83. 83 : : 2014/04/08(火) 22:08:39


    キーンコーンカーンコーン


    モノクマ『えー、午後10時です。夜時間になりました。……』


    苗木「じゃあ夜時間だし、ボクは適当に雑魚寝しとくね」

    舞園「いえ、床に直接はダメですよ」


    そう言ってベッドからシーツを取り、苗木君に手渡しました。


    苗木「いいの?」

    舞園「ええ。こっちは布団をシーツ代わりにすればいいので」

    苗木「舞園さん…。ありがとう」


    苗木君はシーツをぎゅっと抱きしめて、笑顔でお礼を言います。


    苗木「部屋もシーツも貸してもらってるし、もしも何かあったら、ボクがきちんと舞園さんを守るよ!」

    舞園「ふふ…。ありがとうございます」

    苗木「そのためにコレ、持ってきたんだし」


    苗木君が得意気に懐から取り出した物。

    ソレを見た瞬間、私は固まってしまいました。


    苗木「厨房から借りてきたんだ。これなら一番小さくて使いやすいし」

    苗木「それにボク、スローイングナイフ得意なんだよ」ニコッ


    その手に握られていたのは、刃の部分に布を巻いたナイフだったのです。
  84. 84 : : 2014/04/08(火) 22:36:42

    舞園「えっと…。でもそれ、刃を布で覆っていたら使えないんじゃ……」

    苗木「ん?ああ、大丈夫大丈夫!」スッ


    彼はニコニコと笑いながら、裾をめくり上げます。


    舞園「きゃっ…!?」

    苗木「…この通り、検証済みだからさ」ニコニコ


    血の滲んだ包帯。

    それは傷を誇張するように大袈裟に、彼の右腕に巻き付いていました。


    苗木「いや~、抜くとき布が細胞を擦り切ってるのがじんわり伝わってきて、痛くてたまらなかったんだ」

    苗木「…でもね、『キミを守るためだ!』って思えばこんなの全然余裕だったよ!」


    自慢気に語る彼から伝わる狂気にめまいがします。


    舞園「な、苗木君…。冗談ですよね?」

    苗木「うんそうだね、冗談」

    舞園「…えっ?」

    苗木「あははっ、引っかかった♪」


    苗木君ははしゃぎながら、するりと包帯を解きました。

    …その下の腕には、生々しい傷なんて一つもありませんでした。
  85. 85 : : 2014/04/08(火) 23:34:09

    苗木「包帯に、厨房にあったレバーの血を染み込ませたんだ。自分でもリアルに出来てると思ったよ」


    無邪気におぞましいイタズラのネタばらしをする苗木君。

    そんな彼に私はただ、震える声で話すことしか出来ません。


    舞園「良かった、ウソで…。苗木君が怪我したら…わ、私……」

    苗木「…舞園さん?」


    そんな私の様子を見た彼の表情は、あっという間に怯えるようなものに変わります。


    苗木「ゴメン、舞園さん…!ボクそんな、キミを怖がらせるつもりじゃ……!」

    舞園「いえ、大丈夫です…。分かってくれたのなら大丈夫ですよ」

    苗木「………ゴメン、なさい…」シュン


    彼はがっくりと肩を落とすと、抱えていたシーツに顔をうずめました。


    苗木「もう寝るね…。おやすみなさい」


    そう言うと、シーツを床に広げてその中でうずくまってしまいます。


    舞園(苗木君…)


    私は彼を心配しながらも、ベッドに横になりました。


    舞園「………………」


    『すぐ隣に刃物を持った人間がいる』という意識は、…例えそれが苗木君でも、私を素直に眠らせてはくれませんでした…。
  86. 86 : : 2014/04/08(火) 23:44:30

    …そのまま眠れないで、何時間経ったでしょうか。

    苗木「舞園さん、舞園さん」

    不意に遠慮がちに私を呼ぶ声がしました。


    舞園「…どうしたんですか?」

    苗木「今、何時?」

    舞園「ええっと…。1時25分ですね」

    苗木「そっか」


    私は、彼にもらった目覚まし時計の盤面を覗き込んで答えると、隣で彼が起き上がる気配がします。


    苗木「ボク、ちょっとトイレに行ってくるよ。ボクが出た後、きちんとカギをしめててね」

    舞園「私のシャワールームのものを使っていいんですよ?」

    苗木「いや、もしかしたらトイレにカギを落としてきたかもしれないって思ったんだ。だから、その確認って意味でさ」


    暗闇の向こうで、はにかむ苗木君。


    苗木「もしカギが見つかったら、キミに一言ことわってから自分の部屋に戻るね」カチャン


    そう言って内カギを外すと、夜時間の廊下へと出て行きました。
  87. 87 : : 2014/04/08(火) 23:58:46

    彼がいなくなったことで、さっきまでの緊張感が一気にほどけました。


    舞園(なんで、こんな風に感じちゃうんだろう…)


    その答えは分かっているんですが、私は素知らぬフリをします。

    舞園(だって…私は彼を信じることにしたんだもの。その私が彼を疑ってどうするの)

    それに、これは半分意地でした。

    …苗木君をやたら敵視する、霧切さんに対しての。



    ピンポーン



    数分後、私の部屋のインターホンが鳴り響きます。

    舞園「あっ、苗木君…もう戻って来たんですね」ガチャ

    苗木「うん。手を洗ったときに落としちゃったのかなって思ったんだけど、どうやらハズレだったみたい」


    お手上げというように、彼は微笑みながらヒラヒラと両手を振りました。


    苗木「そんなワケだから、申し訳ないけど今晩は完璧にお世話になっちゃうね」
  88. 88 : : 2014/04/09(水) 00:39:33

    苗木「くぅ……」Zzz


    穏やかな寝息がぼんやりと耳に入ってきます。

    その横で、寝れないまま寝返りをうつ私。


    舞園「彼は…なんでこんなにぐっすり眠れるんだろう…」


    懐に持ったナイフを奪われて刺殺される…なんて想定もしてないんでしょうか。

    舞園(ううん。ここで殺されれば、犯人が私だっていうことは簡単に分かるから……)

    逆に彼がここで私を殺したところで、丁寧に犯行を行えば特別不利なことはありません。

    舞園(って何考えているの!?私は彼を信じるって決めているのに!!)

    舞園(寝ましょう。起きてるからこんな事考えちゃうんだ……)


    私はぎゅっと目をつむり、早く眠ってしまおうと頭を空っぽにしました。



    ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
  89. 89 : : 2014/04/09(水) 19:44:19

    ー翌日ー


    ピンポーンピンポーンピンポーン!


    私を叩き起こしたのは、けたたましいインターホンの音でした。


    舞園「はーい…」ガチャ

    石丸「舞園くん、完全に寝坊だぞ!一体どうしたというのだ!」

    舞園「寝坊?」


    ベッドに置かれた目覚まし時計は、朝の8時を指しています。


    舞園(あっ!…昨日、目覚ましをかけるのを忘れてた……)


    そこになかなか眠れなかったことも影響して、完全に寝坊してしまいました。


    霧切「石丸君、そんなことはどうだっていいわ」

    舞園「霧切さん!」


    気のせいでしょうか。

    いつも冷静な彼女が、慌てているように見えるのは……。
  90. 90 : : 2014/04/09(水) 23:18:28
    頑張ってください
    期待してます
  91. 91 : : 2014/04/13(日) 01:04:02
    >>90
    ありがとうございます頑張ります!
  92. 92 : : 2014/04/13(日) 01:04:23

    霧切「舞園さん、苗木君はどこ?」

    舞園「苗木君なら…ここにいますよ」

    石丸「なんだって!?男女が同じ部屋で一夜を共にするなど不健全ではないか!」

    舞園「石丸君、その言い方は語弊があります!」

    霧切「もう…。そんなことはどうだっていいのよ」

    石丸「良くないだろう!」
    舞園「良くないです!」


    声を合わせて必死に弁解する私たちを呆れたようにスルーして、霧切さんはズカズカと苗木君の元まで行きました。

    その彼はというと、この喧騒にもかかわらず、シーツに包まれながらすやすやと眠っています。


    霧切「苗木君、起きなさい。もう8時よ」

    苗木「!」ビクッ


    彼女にしては大きな声に驚いたのか、苗木君は身震いして起き上がりました。


    苗木「ふぁ…、ボクって起こされるの嫌いなんだよ霧切さん……。で、8時って本当?」


    気が抜けるような大きなあくびのあと、涙が溜まった目で霧切さんを睨む彼。


    霧切「そう、8時。…そんなことより、あなたに見てもらいたいモノがあるんだけど」

    苗木「そんなことよりって…。せっかく舞園さんにコーヒーごちそうしてもらう約束したのに」

    霧切「そうね。だけど優先度はこっちの方が断然高いわ」


    刺々しい視線と会話が、2人の間で飛び交います。
  93. 93 : : 2014/04/13(日) 16:00:36

    =寄宿舎:廊下=


    苗木「もしかして、ボクの部屋のカギ盗んだの霧切さん?」

    霧切「そんなワケないでしょう」


    開け放された苗木君の部屋のドア。

    廊下に出ると、他の皆さんも集まっていました。

    …のですが

    舞園(何だが皆さん、苦い顔です……)

    それに違和感がもう1つ。

    舞園(桑田君は…どこ……?)


    ぞわり、と寒気を感じます。

    私は浮かんだ最悪の考えを振り払いました。


    霧切「みんな。来て」



    だけど、それはただの逃避にしかなりませんでした。



    「きゃあああああっ!!」
    「うわあああああっ!!」


    部屋を覗いた誰かが叫びました。

    …もしかしたら、私も叫んでいるのかもしれませんが、パニックでその判別もつきません。


    ピンポンパンポン♪

    モノクマ『死体が発見されました。一定の捜査時間の後、学級裁判を開きます』

    モノクマ『うぷぷ、うぷぷぷぷ…。ボクはこの瞬間を待ってたよ!ねえ、みんなもそうでしょう?』

    モノクマ『今から学級裁判の説明を行うので、至急体育館までお集まりくださーい!』


    もう…、目の前のモノが何か認めざるをえないようです。


    舞園「桑田君……」


    …それは散々に痛めつけられた、桑田君の死体だってことを。





    to be continued…
  94. 94 : : 2014/04/16(水) 17:49:21
    苗木だろどう考えても
    狛枝「はははやっぱり彼ならやってくれると思ったよ絶望があるなか彼らはどんな希望を見してくれるかな?桑田くんはその為に踏み台になったんだよ、いや言い方が悪っかったね桑田くんはこれから始まる希望と絶望の交差の始まりに過ぎなかったんだよ」
  95. 95 : : 2016/08/01(月) 00:32:57
    犯人絶対苗木だろ。
    夜に鍵を探しに行くって言っていたし。

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舞園「幸運の私とアイドルの彼」 シリーズ

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