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保たない記憶【エレミカ】

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  1. 1 : : 2018/07/15(日) 00:05:20
    眠れないので、短編を書きます。
    エレミカです。
  2. 2 : : 2018/07/15(日) 00:22:18
    ______レン。


    ん?誰だよ、俺のこと呼んでるの。


    _______エレン。


    うるせえな…。キツい訓練あるんだから起こさないでくれよ。


    アルミン「エレン!!」


    エレン「んあっ?」


    アルミン「もう、朝だよ。起きよう」


    エレン「ああ……おはよ、アルミン」


    アルミン「うん、おはよう。着替えて食堂に行こう」


    エレン「おう」


    エレン「なあ、アルミン」


    アルミン「何だい?」


    エレン「俺、誰かに呼ばれてたような気がするんだけど」


    アルミン「僕はエレンの名前を呼びながら起こしてたよ」


    エレン「だったらアルミンの声だったのかな」


    うーん。女の声だったような気がするけどな。

    でも、呼ばれたとしても夢だろう。気にしない。














    食堂


    ジャン「よう死に急ぎ。また寝坊か?」


    エレン「アルミンのお陰で寝坊じゃねえよ」


    ジャン「けっ、自分で起きられないようじゃ立派な兵士になんかなれねえぜ」


    エレン「うるせえ」


    余計なお世話だ。


    アルミン「あ。あそこが空いてるね」


    エレン「2人掛けならここにもあるぞ」


    アルミン「……3人だよ」


    エレン「えっ?」


    アルミン、一体どうしたんだ?

    いつも、俺と2人で食事は摂っているはずなのに。


    クリスタ「エレン、おはよう」


    エレン「おう、おはよ」


    クリスタ「向かいの席、使っても良いかな?」


    エレン「構わねえよ。なあアルミン」


    アルミン「うん、いいよ」


    クリスタ「ありがとう。ほら、ユミル!お礼言って」


    ユミル「あー、さんきゅ」


    ユミルも朝が弱いんだっけ。

    何をするにも気怠るそうだ。


    エレン「朝飯持ってくるよ。アルミンは席を守っててくれ」


    アルミン「うん、頼んだよ」


    混み合っている食堂中を何とか乗り越えて、列に入った。

    前の女、身長高いな。俺と同じぐらいか。

    それにしても、何でマフラーをしてるんだろ。食事の時ぐらい外せよな。

  3. 3 : : 2018/07/15(日) 00:39:41

    しっかりと2人分朝飯を確保した。

    既に食べ終わっていたサシャが、キラキラとした目で見てきたけど無視した。

    こっちだってエネルギーを摂取しないと死んじまうんだ。そう易々と飯はやれない。


    エレン「アルミン、お待たせ」


    アルミン「ありがとうエレン。食べようか」


    ん、アルミンの隣にさっきのマフラー女が座ってるな。

    友達か。俺の知らないところで女友達が出来るなんて、何だか妬けるな。


    エレン「おう、いただきます」


    一口目のパンは固かった。

    いつも通り、水分もろくにない不恰好で不味いパンだ。


    エレン「不味いな、アルミン」


    アルミン「大勢のパンを一度に作るからね……。仕方ないよ」


    エレン「ところでよ、アルミンお前いつ友達なんて出来たんだよ」


    アルミン「え?」


    エレン「?」


    アルミンの顔色が、一気に青くなった。

    アルミンだけじゃない。向かいにいるクリスタや、遠い席にいるジャンまでもが青くなっている。

    そして食堂全体の会話が、途絶えた。


    エレン「俺今、変なこと言ったか?」


    ジャン「……てめえぇぇぇぇぇえ!!」


    バシャアッ!


    俺のテーブルまで走ってきて、ジャンが俺に水を掛けた。

    髪と、服が汚れた。


    エレン「うわっ、ジャン何すんだよ!」


    ジャン「何すんだよじゃねぇよ!!毎日毎日、いつになったら忘れなくなるんだよ」


    忘れるだって?

    俺は何も忘れてないはずだ。……いや、座学の102番をするのを忘れていたな。ヤバい。


    エレン「忘れてるって言ったって、お前には関係ないだろ?怒られるの俺だし」


    ジャン「……っ!」


    食堂にいる全員が、俺たちに注目している。

    ただ1人、マフラー女だけが黙々と朝飯を食べ続けている。

    そう言えばこんな奴、同期にいたか?


    アルミン「エレン、君は今日も忘れているんだね」


    エレン「座学の宿題だろ。はは、すっかり忘れてたぜ」


    アルミン「違うよ。ミカサのことだよ」


    エレン「ミカサ……?」


    ジャン「本当にまた、覚えてないんだな。畜生が」


    エレン「はあ?」


    アルミン「ジャン、席に戻りなよ。マルコが心配そうに見てるよ」


    ジャン「ああ。今日もすまんな、アルミン」


    アルミン「いいよ」


  4. 4 : : 2018/07/15(日) 00:48:13

    訳が分からない。

    俺が知らない話を、2人はしているようだった。


    アルミン「エレン、着替えたいところだろうけど一旦聞いてくれるかな」


    エレン「大丈夫だ」


    アルミン「君は、僕の隣にいる彼女を知らないんだね」


    エレン「ああ。同期にはいないよな。103期か105期の奴か?」


    アルミン「……同期だよ」


    エレン「う、嘘?悪いお前、名前は?」


    マフラー女はようやく食事を止めて、名前を言った。


    ミカサ「ミカサ・アッカーマン」


    エレン「アッカーマン?聞かないセカンドネームだな」


    アルミン「あのねエレン。君は覚えてないかもしれないけど、ミカサは君の家族なんだ」


    エレン「か、家族だって?」


    アルミン「そうだよ。君の、大切な家族」


    エレン「はははははっ!冗談は止めろよ。俺を騙すために他人を巻き込むなって」


    ミカサ「他人、か……」


    エレン「へ?」


    皆、表情は強張っていて嘘を吐いているようにはとても見えなかった。

    俺だけが、知らない世界に来たみたいだった。


    アルミン「本当に、覚えていないんだね」


    エレン「そう、なのかな」


    アルミン「一先ず、ご飯を食べようよ。また後で説明するよ」


    エレン「おう」


    ミカサ「……」


    エレン「?」


    ミカサと目が合った。

    透き通るような黒い目をしていて、引き込まれた。

    何故だか、懐かしいと感じた。

  5. 5 : : 2018/07/15(日) 14:07:44

    朝飯を食べ終わって、俺たちは男子寮に戻った。これから開始する訓練に備えての用意をしに行く。

    説明すると言っていたアルミンだったけど、いつも通りというような態度で俺に接してきた。


    エレン「なあアルミン」


    アルミン「何?」


    エレン「その、ミカサについて何だけど」


    アルミン「そうだったね。ミカサは黒髪のマフラーを巻いている子だよ、分かるね?」


    エレン「ああ」


    アルミン「あの子は君の大切な家族なんだ。もちろん、あの子にとっても君は大切な家族だ」


    エレン「でも俺には姉とか妹とかいないぞ」


    アルミン「……うん、そうだね。僕たちは同い年だしカルラさんのお腹からは生まれてないよ、ミカサは」


    エレン「だったらどうしてだよ」


    アルミン「小さい頃の記憶もないかい?エレンとミカサと僕とで、3人で外の世界について語り合ったこと」


    小さい頃。

    10歳ぐらいの時かな。アルミンが外の世界について詳しく調べてた頃。

    あの時は、俺とアルミンと2人で……。確かに、2人だったはずだ。


    エレン「アルミンと2人で話してたよ」


    アルミン「そっか。分かったよ」


    伏し目がちに返事をしていた。


    アルミン「早く行かないと教官に怒られちゃうな。行こうか」


    エレン「話って、それだけなのか」


    アルミン「まだ色んなことを言わなきゃいけないけど、時間が無いからね」


    エレン「そうか……」


    アルミン「あのね、君は彼女のことを忘れてしまったからもしれない。けれど彼女にとって君は今でも家族だから」


    アルミン「訓練の時に声を掛けてきたりしたらよそよそしくしないで僕と話してるように応えるんだよ」


    エレン「分かったよ。なんか、ごめんな」


    アルミン「それはミカサに言ってあげてよ。忘れられてる本人が一番辛いから」


    エレン「うん」


    素直に返事をして、馬小屋に急いだ。

    最初は馬術の訓練だった。馬を自由自在に操って、1つの班で平地を駆け巡った。

    俺の班にはミカサがいた。訓練中でもマフラーは着けている。


    アルミン「同じ班だったね、ミカサと」


    エレン「だった」


    アルミン「それじゃあ頑張って来てね。僕はあっちだから」


    エレン「アルミンも頑張れよ」


    自分の馬を引き連れに行った。

    今日は機嫌が良いな。言うことを聞いてくれそうだ。


    ミカサ「エレン」


    エレン「ミカ…サだな。どうした」


    ミカサ「私たちの班は東の方へ進むから、ルートを頭に入れておいて欲しい」


    エレン「分かった。東のルートだな」


    ミカサ「そう」


    エレン「……」


    ミカサ「……」


    何でこいつ、行かないんだ?

    自分の馬のところに行ってもいいのに。


    エレン「なあ、馬のとこ行かないの」


    ミカサ「一緒に行こう」


    エレン「良いけどさ」


    俺は馬に乗って。ミカサは地べたを歩いて訓練所に向かった。

    大体の人はもう馬と一緒に触れ合っているが、ミカサは馬を迎えに行かない。

    ずっと、俺の近くにいる。


    エレン「もうすぐ訓練始まるぞ。馬は?」


    ミカサ「……ここから離れないでね」


    エレン「え?」


    ミカサ「お願い」


    エレン「分かったよ。早く迎えに行ってやれ」


    ミカサ「すぐ戻って来るから」


    駆け足で去って行った。

    揺れる黒髪が、可愛いなって思った。
  6. 6 : : 2018/07/15(日) 15:50:30

    キース「集合!!」


    教官の号令がかかった。

    周りの仲間たちは次々と並んで行くけれど、俺はミカサに待っててくれと言われた。

    だから動かなかった。

    そしたら後ろから、ジャンに突進された。俺の馬は悲鳴をあげた。


    ジャン「おいてめぇ!邪魔だ」


    エレン「何するんだよ!直進しないで曲がれよな」


    ジャン「お前こそそんな所に突っ立ってたら邪魔だって分かるだろ。動けよ」


    エレン「俺はミカサを待ってるんだよ」


    ジャン「はあぁぁぁぁ!?羨ましい」


    エレン「意味わかんねえよ。とっとと並ばねえと教官にどやされるぞ」


    ジャン「チッ。覚えとけ」


    相変わらず喧嘩腰の野郎だ。


    ミカサ「エレン、ごめんなさい。遅くなった」


    エレン「来たか。並ぼう」


    ミカサ「えぇ」


    班ごとに、一列になって並んだ。

    ミカサは俺の後ろに並んだ。


    キース「ではこれから馬術訓練を行う。全員、配置につけ」


    「「「「「はっ!」」」」」


    とても苦しい訓練が、今日も始まった。

  7. 7 : : 2018/07/15(日) 19:38:04

    前列はもうほとんど見えない距離にいる。


    キース「23班、用意はいいな。進め!」


    教官の合図とともに馬を走らせた。

    今日はやけに言うことを聞いてくれる。帰ったら丁寧にブラッシングしてやろう。


    エレン「……?、あれ」


    ミカサ「どうかした?」


    エレン「西の方向、人が倒れていないか」


    ミカサ「本当だ」


    エレン「行ってみよう」


    ミカサ「班の皆で行動しないとダメ」


    エレン「だからって、放っておけないだろ!」


    ミカサ「……私も行く」


    エレン「……」


    俺たち2人は、誰にも気づかれないように西に向かった。

    後で、さりげなく合流すれば教官にはバレないと思ったからだ。

    西の平地に着いた。

    倒れている人の正体は、ダズだった。


    ダズ「うっ、うぇぇぇぇ」


    エレン「ダズ!馬はどうしたんだ」


    ダズ「それがよ、いきなり暴れ出して振り下ろされて……。班のみんなも気付かないで行っちまった」


    エレン「俺の馬を使えよ。今日は何だか機嫌がいいから誰が乗っても言うこと聞くと思う」


    ダズ「で、でもそうしたらエレンはどうするんだよ」


    ミカサ「私が連れて行く」


    エレン「危険だぞ。俺たち訓練兵は2人乗りの訓練はまだ受けていない」


    ミカサ「大丈夫。それとも、あなたがダズを乗せて2人でゴールまで来れる?」


    エレン「無理だ。ミカサだって無理だろう」


    ダズ「ミカサなら行けるかもしれないな」


    エレン「はあ?女にそんなこと出来るかよ」


    ダズ「お前、ミカサのことを忘れてしまってるって本当だったんだな……。彼女は歴代の中でも最強だと言われてるんだ」


    エレン「えっ!?」


    ミカサ「……早くしないと、皆が混乱してしまう」


    無表情に、早く判断しろとミカサは諭してきた。

    ダズをこのまま置いて行く訳には行かないし、だからといって1人平地をほっつき歩いていたら減点対象になる。

    強くなる良い成績を取るためには、それはダメだ。


    エレン「分かったよ。2人で乗る。ダズ、あまり強く鞭は打たないでくれよ」


    ダズ「す、す、すまねぇ!恩にきる!」


    ダズはゴールに向かって一目散と目指した。

    俺の馬、ゴールまでで良いからダズの言うことを聞いてくれよ。


    ミカサ「乗って」


    エレン「すまん、ちょっとだけ密着するけど我慢してくれ」


    ミカサ「大丈夫だから」


    エレン「よいっ、しょ」


    ミカサの後ろに乗った。

    元々、2人用の馬じゃないから不安定だった。


    ミカサ「手を前に回して。振り落とされる」


    エレン「でも……」


    ミカサ「私とあなたは家族。問題はないから」


    アルミンが言ってた。

    俺にとっては忘れてしまったかもしれない存在だろうけど、ミカサにとって俺は家族だって。

    大切な、存在だって。

    家族に、触れたくないって拒絶されたら悲しいよな。嫌だよな。


    エレン「お言葉に甘えるぞ」


    ギュッ


    ミカサの腹の辺りで手を組んだ。


    ミカサ「うん……!なるべく急ぐ」


    エレン「安全にお願いするぜ」


    ミカサ「任せて」


  8. 8 : : 2018/07/15(日) 22:16:23

    ミカサの技術はとにかく凄かった。

    スピード、方向転換の正確さ、周りを見ることのできる広い視野。恐らく誰にも真似できない。

    ダズの言っていた歴代最高の成績って、本当のことだったんだ。


    エレン「なあ、こんなに飛ばして大丈夫かよ」


    ミカサ「もうすぐで着くので。エレンは舌を噛まないように気をつけて」


    エレン「あ、ああ」


    先に進んでいる仲間に会おうと、必死に頑張っている。

    ただ、しがみつくことしか出来ない自分を役立たずだと思った。






















    アルミン「エレーーン!ミカサーー!」


    おーい、どこだー?と、俺たちのことを探している。


    エレン「アルミン!こっちだ!」


    アルミン「あっ!2人とも、無事だったんだね」


    エレン「それよりも、ダズは?」


    アルミン「教官にこっ酷く叱責されてるよ。とにかく、無事なら良かったよ」


    エレン「ごめんな、心配させて」


    アルミン「良いよ。エレン、降りなよ」


    エレン「そうだな。ミカサ、ありがとう」


    ミカサ「うん……」


    返事をするなり、前方に倒れてしまった。

    馬の首元をギュッと掴んでいる。


    エレン「どうしたんだ?!」


    ミカサ「暫くしたら、回復する」


    エレン「!」


    普通は1人分のことだけを考えて指示を出せば良いけれど、2人となると重さも危険度も違ってくる。

    頭で考えながら、且つ馬を操っていたんだからそりゃ労力は半端じゃない。


    エレン「どうしようアルミン」


    アルミン「寝不足かい、ミカサ」


    ミカサ「……ちょっとだけ」


    アルミン「とりあえず降りよう。暴れ出したら危険だよ」


    ミカサ「分かった」


    スルッ、と華麗に降りた。

    愛馬のボディを撫でて、「お疲れ様」と声を掛けた。

    大切にしてあげてるんだな。

    もしかして俺も、あんな風に大切にされていたのだろうか。


    アルミン「……エレンは、馬なんかよりももっと大切にしてもらってたよ」


    エレン「!?」


    俺の考えを読み通しているかのように、アルミンは言った。


    アルミン「ミカサにとって、君は最後の家族だからね。毎日毎日、こっちが恥ずかしくなるぐらい過保護にしていたよ」


    エレン「俺に……?」


    アルミン「早く思い出すと良いな。ミカサのために」


    エレン「……」


    ミカサは今、近くの木陰で休んでいる。

    もしかしたら俺が記憶を無くしていることによって、ミカサに負担が掛かっているのかもしれない。

    申し訳ない。

    俺は近づいていって、隣に座った。

    いきなり隣に座ったから驚いたのだろう。勢い良くこちらを見た。


    エレン「お疲れ」


    ミカサ「お疲れ様」


    エレン「俺の分までありがとう」


    ミカサ「どういたしまして」


    エレン「……俺、頑張って思い出すから」


    ミカサ「!」


    エレン「忘れてごめん。でもきっと、思い出すからな」


    気休めなんか言ってるつもりは無い。

    絶対に、思い出したい。


    ジャン「おいおいおい、それお前昨日も言ってたじゃねえか」


    エレン「え?」


    ミカサ「ジャン!」


    ジャン「ミカサは黙ってろよ。お前がミカサのことを忘れたのは今日だけじゃねえ」


    ジャン「昨日も一昨日も先週も先月も!ずっと前から1日ごとにミカサの記憶を無くしてるんだよ」


    エレン「嘘、だろ……?」


    ミカサ「余計なことを言わないで。黙ってて」


    ジャン「お前はそれで良いのかよ。一生、毎日忘れられるんだぞ」


    ジャンの言っている意味が分からなかった。

    1日ごとに、俺はミカサの記憶を無くしている?

    つまりアルミンからの説明や、皆の青い顔色は、今日以前からも見たことがあるってことか?

    けれど昨日の記憶はしっかりあるし、何をしたかもはっきりと覚えている。

    その中には、確かにミカサはいなかった。


    ミカサ「それ以上は言わないで。仕方のないことだから」


    ジャン「だからってよ……!」


    キース「おいそこ!何を言い争っている」


    教官に指された。

    ミカサとジャンの口論は、結構な大きかったようだ。


    ジャン「いや、その……」


    エレン「すみません、教官。自分が原因です」


    ミカサ「エレン!」


    キース「イェーガー……丁度話があったんだ」
  9. 9 : : 2018/07/15(日) 22:34:42

    キース「貴様は自分の独断で、自らの馬を貸し出したな」


    エレン「すみません」


    キース「これが戦場だったらどうしたんだ。今回は貴様の馬の機嫌が良く、アッカーマンの技術があったからここまで来れた」


    キース「いざという時にはこんな手は絶対に役に立たん。自殺行為だ」


    エレン「すみません。何でも罰は受けます」


    ミカサ「エレンは悪くないです。私が一緒の馬に乗れと言ったからで」


    エレン「おい、黙ってろよ」


    キース「……2人共に、問題があるようだな」


    ミカサ「私だけです。罰は1人で受けさして下さい」


    エレン「俺だけです。罰は俺だけで充分です」


    キース「ごちゃごちゃと喚くんじゃない。お互いに主張を述べるな」


    キース「貴様らには協調性が無いみたいだな。罰として和解するまでか、午前の訓練が終わるまで走ってこい」


    エレン「う……ハッ!」


    ミカサ「了解です」


    キース「分かったのならさっさと行け!」


    キース「そしてキルシュタイン!」


    ジャン「は、はい!」


    キース「……こいつが説教中に嘔吐し始めた。医務室に連れていくように」


    ダズ「オロロロロロロロロロロロロロロ」


    ジャン「了解です!」


    キース「馬術の訓練はこれで終了だ。水分補給をした後、立体起動装置の準備に取り掛かるように」




  10. 10 : : 2018/07/16(月) 09:21:09

    入団式の日、サシャが走らされていた荒野まで
    俺たちは駆け足で行った。

    ろくに整備もされていない、ゴツゴツとした地面は体力を削るためにわざと設置されている。


    ミカサ「……黙っていれば、あなたも走ることは無かった」


    エレン「俺に言ってるのか?」


    ミカサ「そう。私が判断したと教官に思わせていれば、1人で済んだ」


    エレン「それは、そっちも同じだろう。俺がしたと思わせていれば1人で済んだじゃないか」


    ミカサ「私はあなたより体力はある。こんな所、午前だけ走っていても午後の訓練には支障はない」


    エレン「自分を買い被り過ぎなんじゃないか」


    ミカサ「そう思うならそれでいい」


    何の合図も無しに、ミカサは先に走り出した。


    エレン「あっ、待てよ」


    続いて俺も走り出した。

    ミカサは初っ端から飛ばしているようだった。俺がどんなに頑張って足を動かしても、全然距離は縮まらない。
  11. 11 : : 2018/07/17(火) 22:13:49

    ______あれから、どのくらい時間が経ったんだろう。

    まだ体力的にはいけるけれど、ジリジリと照りつける日光が結構キツい。

    ミカサは、丁度半周差をつけて走っている。

    俺が速く走ればあいつも速く走るし
    俺が遅く走ればあいつも遅く走る。

    明らかに、こちらを意識して走っている。


    キース「イェーガー!」


    エレン「は、はいっ?!」


    キース「間抜けな声を出すな。みっともない」


    エレン「すみません」


    キース「貴様ら、和解は出来ていないのか」


    エレン「はい、まだです」


    キース「いつもべったりとくっ付いているのに最近はどうした。距離を取っているように見えるが」


    エレン「そうでしょうか」


    キース「仲間割れは絶対に許さん。分かっているな?」


    エレン「勿論です」


    キース「ところで、走り始めてから水分は補給したか」


    エレン「いえ、していません」


    キース「日射病で倒れられても対処はしない。体調の自己管理は自らが行え」


    エレン「はい」


    キース「走る程度で死なれては元も子もない。しっかり水分補給しておけ」


    エレン「了解です」


    キース「アッカーマンにも伝えるように」


    エレン「……はい」


    キース「……和解しないのであれば、どちらとも夕食は抜きだ」


    エレン「!?」


    キース「返事はどうした!」


    エレン「はいっ!了解しました!!」


    キース「それならいい」


    教官は、俺たちの身体を気遣ってくれた。

    注意してくれなければ、数十分後にはぶっ倒れていただろう。


    エレン「おーい、ミカサ!」


    ミカサ「!」


    エレン「教官が水を飲めってよ」


    ミカサ「分かった」


    避けているわけではなさそうだ。

    普通に俺の所にやってきた。


    エレン「行こう」


    ミカサ「走って行かなくていいの?」


    エレン「これぐらい、許してくれるさ」


    ミカサ「そうだね」


    前髪が顔に張り付いていて暑そうだった。

    2人ともすでに汗だくだ。
  12. 12 : : 2018/07/18(水) 22:46:11

    エレン「……」


    ミカサ「……」


    何か話す話題を見つけなきゃいけねえ。

    非常に気まずい。


    エレン「……」


    って言っても、俺にとっては今日知り合ったばかりの人間だから何を話せば良いのか分からない。

    タブーな話だけは避けたい。


    ミカサ「教官には、水のことだけを言われた?」


    エレン「お、おう」


    ミカサ「そう」


    いきなり聞かれて相槌を打っちまったけど、本当は和解しろって言われたんだなあ。

    教官が、赤の他人の人間関係についてとやかく言うのは初めてかもしれない。

    普段、俺とジャンが喧嘩をしていても尻目に見るだけだ。

    それほど、俺のミカサの関係は強かったってことなのか。


    どうして、忘れてしまったんだろう。


    ミカサ「エレン、先に飲む?」


    エレン「ん、ん?!何だ?」


    いつのまにか、井戸に着いていたようだ。


    ミカサ「お水。先に飲むかって」


    エレン「いや、いいよ。先にどうぞ」


    ミカサ「……分かった。ありがとう」


    エレン「?」


    一瞬、悲しそうな表情をしたような気がする。

    俺は先に飲んでいいと言っただけだよな。どうしてだ?

    それとも、勘違いか。


    ミカサ「はい。次はエレン」


    水を飲む用の柄杓を差し出された。

    洗っていない。ミカサが、口をつけた後の柄杓だ。


    エレン「俺もこれで飲むのか?」


    ミカサ「あ、ごめんなさい。いつもそうだったから」


    慌てて俺の手から柄杓を取って、洗おうとした。

    俺はそれを、奪い返す。


    ミカサ「エレン!」


    エレン「いつもこうだったなら今日もそれでいいだろ」


    ミカサ「でも」


    エレン「いつも通りでいい」


    容量いっぱいいっぱいに水を入れて、一気に飲み干した。

    身体中に染み渡っていくのを感じた。


    エレン「戻ろう。いつまでも飲んでたらどやされる」


    ミカサ「……うん」


    並んで歩いた。また、気まずい。


    ミカサ「……エレンは」


    エレン「?」


    ミカサ「エレンは、いつも通りを目指しているの?」


    エレン「何だよ、いきなり」


    ミカサ「私と一緒にいる時。前みたいに過ごそうとしてくれている?」


    エレン「……一応、努力はしている」


    ミカサ「そこまで一生懸命にしなくていい。疲れる」


    エレン「疲れねぇよ」
  13. 13 : : 2018/07/21(土) 22:39:46

    エレン「疲れるのはそっちの方なんだろ?ジャンが言った通り、毎日忘れてるとすれば……」


    ミカサ「私は大丈夫、だから」


    エレン「!」


    「大丈夫」と言った瞬間、ミカサ身体はフラつき俺の肩に当たった。

    足元には、大きめの石が転がっていた。


    ミカサ「ごめんなさい」


    エレン「良い。足は捻ってないか?」


    ミカサ「……えぇ」


    エレン「嘘だ」


    ミカサ「捻ってない」


    エレン「だったら今の間は何」


    ミカサ「一呼吸置いていた」


    エレン「あっそう。だったら、今から走れるよな」


    ミカサ「……」


    一気に口を開かなくなった。足が痛いのは図星だったみたいだ。


    エレン「医務室に行くぞ」


    ミカサ「このぐらい行かなくてもいい」


    エレン「あのな、悪化したら今後に響くんだぞ。誰かが言ってたけど」


    あれ、誰だったっけ。

    俺が腕に擦り傷を作った時、手当てしながら誰かが言ってた言葉。

    アルミンは手当てしてくれる程、男には優しくないし他の野郎たちもしてくれるはずはない。

    女子には知り合いなんていない。

    あれ、これって。


    ミカサ「……エレン?」


    エレン「!、何だ?」


    ミカサ「すごく眉間に皺がよってたから。何を考えていたの?」


    エレン「あれ、何だったけ……」


    忘れちまった。

    朝、起きた時にはもう夢の内容を忘れているような感じだった。


    エレン「俺は良いから医務室」


    ミカサ「どうしても行かなければならないの?」


    エレン「そうだ」


    ミカサ「……分かった」


    エレン「おう。行くぞ」


  14. 14 : : 2018/07/21(土) 23:04:11

    すぐに医務室に向かった。


    医務官「アッカーマンが負傷なんて珍しいな」


    エレン「そうなんですか」


    医務官「そうなんですかって君、1番良く知ってるだろう」


    エレン「あ、はは!そうでした。うっかり」


    医務官「暑さでやられたか?水は飲んでおくんだぞ」


    エレン「はい。それで、ミカサの治療は」


    医務官「軽い捻挫さ。このぐらいなら自分たちで治療できるな」


    ミカサ「湿布はありますか」


    医務官「そこの棚の上から2番目だ。個室でやりなさい」


    ミカサ「分かりました」


    ミカサは個室に入っていった。

    湿布ぐらいなら1人でも大丈夫そうだな。


    エレン「あの、俺は戻っても良いですか」


    医務官「お、今日は離れるのか?」


    エレン「へ?」


    医務官「君が怪我をした時は彼女が付き添ってくれてたじゃないか」


    エレン「あ、そうでした。すみません」


    医務官「しっかりしなよ。あ、そうそう。私はちょっと席を外すから、誰か来たらキースの方に行くよう言ってくれ」


    エレン「はい」


    医務官「それじゃ」


    無責任に色んなことを押し付けて、医務官は出て行った。

    ミカサと2人きりだ。

    何だかとても緊張する。


    ミカサ「エレン」


    エレン「はい」


    ミカサ「ハサミが欲しい」


    エレン「取ってやるけど。入っていいのか」


    ミカサ「良い。足首だから」


    エレン「失礼しますっと」


    カーテンで仕切られただけの簡単な個室の中心に、ミカサは足を出していた。

    ほんのりとだが、足首は紅くなっている。


    エレン「捻挫って言ってたから、今日の訓練は無理だよな」


    ミカサ「午後は座学だけで終わり。後はもう自由時間」


    エレン「そうだったな」


    ミカサ「……もし気を悪くしなければだけど」


    ミカサ「湿布を貼ってくれないだろうか」


    エレン「足に?」


    ミカサ「場所が場所だから無理にとは言わないけど」


    彼女さ「きっと断るだろう」って感じの表情をしているように見えた。

    さっきからと同じように、無表情だけど。


    エレン「良いぜ。やるよ」


    ミカサ「やってくれるの?」


    エレン「貼りにくいんだろ?だったらやるよ」


    ミカサ「助かる。ありがとう」


    独特の異臭を放つそれを、ミカサから受け取った。


    ミカサ「記憶を無くす前のエレンは、こんな風に優しくは無かった」


    エレン「俺?」


    ミカサ「そう。湿布を貼ってくれる依然に医務室に付き添ってなんかくれなかったから」


    エレン「俺ってそんなに酷い奴じゃねえよ?」


    ミカサ「前はそうだった。でも今は、優しいからちょっとだけ嬉しい」


    エレン「そうなんだ……」


    本当に、嬉しそうにしてるって感じた。

    俺がミカサのことを知ってた時は、相当冷たく接していたのかもしれない。


    エレン「ほら、貼ったぞ」


    ミカサ「ありがとう」


    俺がやっても湿布は若干ぐちゃぐちゃになってた。自分でやった方が上手く出来たんじゃないかな。

    貼られた湿布を見てミカサは、満足しているようだった。
  15. 15 : : 2018/07/21(土) 23:42:48

    ミカサは、しっかりと肌に湿布が着くようにペチペチと足首を叩いている。

    そろそろ、話し合っても良いんじゃないかな。


    エレン「なあ」


    ミカサ「?」


    エレン「さっきの、ダズのことについてなんだけど」


    ミカサ「あれは……」


    エレン「自分を責めるのは無しな」


    ミカサ「う」


    エレン「って言っても、俺も自分が悪いとしか思ってないんだけどな」


    ミカサ「どうしてエレンは、自分が悪いって思ったの?」


    エレン「……俺は、別にミカサの馬に乗らなくても良かっただろ。歩けば良かっただけだったあん時は」


    エレン「教官の点数稼ぎだけを考えて2人乗り選んだんだよ。私情なんだよ、だから俺が悪いって思ってる」


    ミカサ「……意外とまともな考えだった」


    エレン「そんなロクでもない考え持ってない」


    ミカサ「どうだか」


    エレン「そっちはどうなんだよ。何で自分を責めるんだ」


    ミカサ「あの時はエレンを止めるべきだった。ダズに馬を貸すのは」


    エレン「そこから?!」


    ミカサ「そう。ダズの状況をどちらかが見ていて、もう片方が報告に行くべきだった」


    ミカサ「その場限りで考えついたことをやってしまったから反省してる」


    エレン「結局それって、俺が悪いんじゃ」


    ミカサ「……違う」


    エレン「俺じゃね?」


    ミカサ「わ、私も悪い」


    エレン「もしかしてだけどよ、俺1人に責任を負わせたら罰が重くなるとか思ってねえ?」


    ミカサ「……」


    エレン「やっぱりな」


    ミカサ「教官には言わないで」


    エレン「どうして」


    ミカサ「そんな考えを告げたら、余計に罰は重くなる」


    エレン「そんなことかよ」


    ミカサ「私は、あなたが苦労するのを見るのは嫌だ。すごく嫌だ」


    ミカサ「だから、私が罰を受けようと思って」


    エレン「……」


    俺のためを思ってくれてやってくれたことだった。

    再度、良い奴だなって思う。

    言語力が残念なのがキズだな。
  16. 16 : : 2018/07/22(日) 10:44:20

    エレン「だったら2人とも悪いってことにしてくれないか」


    ミカサ「2人とも……?」


    エレン「全面的にほぼ俺が悪いけど、それじゃ気が治らないんだろ?だったらもう2人とも悪いってことにしたら平和だ」


    エレン「って、俺が言うのもおかしな話だけど」


    ミカサ「……分かった。2人とも、悪い」


    エレン「話がまとまったから教官に報告に行こうぜ。その足のこともついでに報告な」


    ミカサ「うん。手を貸して」


    エレン「おう」


    俺の手を使って、ミカサは立ち上がった。

    体重を掛けてくれて、俺は信頼されているんだと感じる。


    ミカサ「今の訓練って、何?」


    エレン「立体起動だ。あそこまで歩けるよな」


    ミカサ「歩くのは問題ない」


    エレン「行こう」


    幾多もの巨大樹がそびえ立っている森で、訓練兵は立体起動の訓練を行う。

    移動するのは空中で、非常に高い所で行うので上手くいかなければ落ちて死んでしまう。

    俺たちを除いて、訓練は行われていた。


    キース「スプリンガー!!ブラウス!!獲物は自分で見つけろ!」


    エレン「教官」


    キース「!、イェーガーとアッカーマンか。和解は済んだか」


    エレン「はい。結局は2人とも悪いってことになりました」


    キース「曖昧な選択だな。だが今回は見逃してやる。次は無い」


    エレン「はい。それと、ミカサの足のこと何ですけど」


    キース「どうした」


    エレン「躓いてしまって。今日の訓練は無理かと」


    キース「捻挫か、アッカーマン」


    ミカサ「はい」


    キース「それでは私の目が届く範囲で筋肉を鍛えておけ。2人1組だ」


    ミカサ「私1人でも出来ます」


    キース「もうすぐ訓練は終わる。イェーガーが途中で参加しても足手まといだ」


    エレン「了解です」


    はっきりと足手まといって言われた。

    結構、傷付くな。


    ミカサ「エレン、あっち行こう」


    エレン「あっ、ちょっ」


    俺の手首を御構い無しに引っ張る。

    ていうかこいつ力加減どうなってるんだ?手首折る気なのか?

    いや、そもそも女の力なのか。


    エレン「痛い、離してくれよ」


    ミカサ「あ」


    スッと離してくれた。

    掴まれていた部分が熱くなった。火照っている。


    ミカサ「強く掴みすぎた」


    エレン「いつもこんな力なのか?」


    ミカサ「いつもは制御できているのだけど。おかしい」


    グーパーと手を握ったり開いたりしている。

    本当に無意識の力だったようだ。

  17. 17 : : 2018/07/23(月) 01:24:10

    エレン「調子が悪いんだろ、気にすんな」


    ミカサ「……ええ」


    エレン「それよりほら、筋トレ。腹筋やるから足押さえててくれよ」


    ミカサ「また強くしてしまうかもしれない」


    エレン「固定されて丁度いいさ」


    ミカサ「あなたがそう言うのなら良いけれど」


    エレン「お願いします」


    木から落ちた葉が重なってできた地面に、腰を下ろした。

    植物の独特な匂いが鼻についた。


    ミカサ「汚れてない?」


    エレン「ああ、綺麗な葉っぱだ」


    ミカサ「それでは、押さえる」


    エレン「頼んだ」


    ギュッと足は地面と固定された。

    力は強くない。丁度良い力加減だ。


    エレン「いーーちっと」


    ミカサ「もっと背筋伸ばして」


    エレン「おうっ……!にぃーーい!」


    ミカサの指導は厳しかった。

    いつもやっている鍛え方を少し工夫するだけで、腹にくる圧力が全く違う。

    1回1回の仕草が、キツかった。


    エレン「ひゃくっ」


    ミカサ「変わろう」


    エレン「ああ。凄え腹が痛い」


    ミカサ「工夫することで負担が変わってくる。これからもこのやり方ですると良い」


    エレン「おう、さんきゅ」


    ポジションチェンジをしてミカサの足を固定した。

    遠くでジャンが何かほざいていたけれど無視する。

    散々な言われようだったから俺も何か言ってやらうかと思った。けれど完璧だった、ミカサの鍛え方は。

    そして速さも半端ではない。速い、とにかく速い。


    ミカサ「100」


    エレン「早えな」


    ミカサ「毎晩やってるから」


    エレン「訓練で疲れてるのにか!?」


    ミカサ「そう。たまにエレンもアルミンも一緒にしてた」


    エレン「そうなんだ。凄いな、ミカサは」

  18. 18 : : 2018/07/23(月) 11:11:41

    キース「今日の訓練はここまでだ!各自、午後の訓練に備えて休憩を取るように」


    エレン「終わったみたいだ。腹筋しか出来なかったな」


    ミカサ「アルミンの所に行こう」


    エレン「俺たちを探してるな」


    キョロキョロと周りを見渡しているアルミンの元に、俺たちは向かった。

    すぐに姿を見つけたアルミンは犬が飼い主に飛びつくように、駆けてきた。


    アルミン「仲直りはできたみたいだね」


    エレン「喧嘩なんてしてねえよ」


    アルミン「はは、そっか。2人とも走ってお腹すいたでしょ?食堂に行こう」


    ギュルルル……


    ん、誰かの腹の音が鳴ったな。随分とでけえ音だ。相当腹が減ってるんだろう。


    ミカサ「……///」


    こいつか。

    分かりやすい。頰が真っ赤になっている。

    アルミンも気付いているようだけど、何も言わないから俺も黙っていた方が良いだろうな。


    エレン「今日の昼飯は何だろうな」


    アルミン「またパンとスープだよ」

































    味付けの効いていない、乏しい食事が終わった。

    朝とは違って、俺たちはちゃんと3人で並んで食べた。

    アルミンだけではなく、ミカサとも話をした。

    ミカサはどうやら世話焼きのようで、口の周りについたスープやパンの屑を拭いてくれた。

    恥ずかしいなって言うとアルミンはいつもこうだったと言った。

    昼飯を食べ終わったので、午後訓練の座学の準備をしに部屋に戻った。

    アルミンにやっていない課題の部分を教えてもらう。


    アルミン「それで、ここはAになるってわけさ」


    エレン「おお、解ったぜ」


    アルミン「……エレンは、ミカサに普通に接してあげれてるみたいだったね」


    エレン「だって家族なんだろ、俺たちは」


    アルミン「その自覚があるのなら思い出して欲しいなあ」


    アルミンは目を細めた。

    毎日ミカサのことを忘れている俺は、何か負担になっていたりするのだろうか。


    エレン「思い出すって言ったって、俺の小さい時の記憶からもミカサはいないんだぞ。正直今も、本当に家族だったのか疑っている」


    エレン「そもそも、セカンドネームが違う」


    アルミン「あのね、この話はミカサにしないで欲しいんだけどさ。ミカサは両親を亡くしているんだ」


    エレン「え?」


    あいつが、両親を?


    アルミン「そう。人攫いの暴漢に襲われてね。お父さんとお母さん、どちらも目の前で殺されたんだ」


    エレン「嘘、だろ?」


    アルミン「嘘じゃない。ミカサは東洋人っていって僕らとは少し違う人種でさ。恰好な高価な売り物だったから、拐われた」


    アルミン「拐われた後にミカサを助けたのが君だよ、エレン」


    エレン「俺、が」


    アルミン「あくまでもこれは小さい時の君に聞いた話だから、少しは違いかもしれない。でもミカサは家族になってたんだ、とっくの昔に」


    頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。

    待てよ。シガンシナで俺の母さんも死んでいる。

    家族になっていたとすればミカサは……3人も家族を亡くしているってことか?

    そんなに。

  19. 19 : : 2018/07/23(月) 11:21:43

    アルミン「エレン?エレン!」


    エレン「はっ、ごめんアルミン」


    アルミン「暗い話をしてしまってごめんよ」


    エレン「いや、考え事をしててな。大丈夫だ」


    アルミン「実は、記憶を無くしているエレンにこの話をするのは初めてなんだ」


    エレン「そうなのか」


    アルミン「ミカサの事とかは毎日紹介してるけど、他人だからって認識で素っ気無かったんだ」


    アルミン「ミカサがいつも通りに接すると『結構です』とか言っちゃって。可哀想だった」


    アルミン「ま、夕方ぐらいには仲良くなってるけど。君たち」


    エレン「今日の俺は違うのか?」


    アルミン「ああ!家族って認識してくれているし何よりミカサに優しい」


    エレン「そっか……。思い出せるといいな」


    アルミン「思い出してね。1番は、ミカサのために」


    エレン「でも、ジャンが言うにはいつも俺は思い出すとか言ってたけど出来ていないんだろ」


    アルミン「ジャンが敏感になってるだけだよ。昨日は確かにそう言ってたけど、その前に言ってたのは1週間ぐらい前のことだし」


    エレン「俺っていつからこんな状態なんだ?」


    アルミン「3ヶ月前ぐらい。最初はびっくりしたし、ミカサも泣いてたよ」


    エレン「そりゃ、そうだよな」


    家族から自分を忘れられるなんて、どんなに苦しいことだろう。

    考えただけでゾワっとする。


  20. 20 : : 2018/07/23(月) 13:18:03

    マルコ「おーい、2人とも。今日はすぐに座学が始まるって」


    アルミン「そろそろ行った方がいいかい?」


    マルコ「皆席に着いてるよ」


    アルミン「分かったよ。ありがとうマルコ」


    エレン「何で今日は早いんだ」


    アルミン「教官はエレンが課題をやってないのを知ってるんじゃない?」


    ニヤニヤとゲスい笑顔でアルミンは俺を覗き見てきた。

    こいつ、意外と性格悪い。

    だけど、アルミンに言われたらそんな気がしてきた。教官は知ってないよな。


    エレン「は、早く行こうぜ。いい席が取られる」


    アルミン「席なら多分ミカサが取ってくれてるよ。いつも1番に行ってくれるよ」


    エレン「何でもするんだな、あいつ」


    アルミン「感謝するんだよ?」


    エレン「勿論だ」


    座学室に行くとアルミンが言った通り、最前列でミカサは待っていた。

    2人分の席を確保して、この日の内容を予習していた。


    アルミン「ミカサ、確保ありがとう」


    ミカサ「どういたしまして」


    エレン「悪いな」


    ミカサ「エレンは、課題は出来たの?」


    エレン「アルミンに教えてもらってばっちりだ」


    ミカサ「もし解っていたら私に教えてくれる?」


    エレン「ミカサも課題やってないのか」


    ミカサ「やってない。頭の中で答えは出てるけど確信はないから教えてほしい」


    アルミン「エレン、ちゃんと理解できたかのテストだよ」


    エレン「ぅ、やるよ」


    辿々しくだが、さっきやった問題だから何とか説明できた。

    アルミンとミカサは頷きながら聞いてくれた。


    ミカサ「答え、一緒」


    エレン「本当か?良かった」


    アルミン「面子が守れたね」


    エレン「アルミン、俺を馬鹿にしちゃいけないぜ」


    アルミン「してないよ」


    ミカサ「したの?」


    アルミン「し、してないってば!」


    一瞬、ミカサの雰囲気が変わった気がした。

    なんか、怖くなった。


    ミカサ「ならば良い」


    アルミン「ミカサ怒らないでよ」


    ミカサ「エレンを馬鹿にしたら怒る」


    アルミン「しないから!」


    エレン「おいおい、喧嘩すんなって」


    アルミカ「「してない」」


    エレン「仲良いな」


    アルミン「幼馴染みだしね」


    ミカサ「うん。私とアルミンは仲が良い」
  21. 21 : : 2018/07/25(水) 19:12:38

    ミカサとアルミンは本当に仲が良さそうだった。

    ミカサは表情筋こそ動かしていないけれど、安心しているような雰囲気が出てる。

    アルミンも、ミカサと話している時は楽しそうにしている。

    お似合いの2人だな。


    メガネ教官「遅れてすまない。始めようか」


    コニー「教官!」


    メガネ教官「どうしたんだスプリンガー」


    コニー「なんか皆、課題が出たとか言ってるけどページどこですか?」


    メガネ教官「……その様子では、やってきてはいないようだな」


    コニー「はっ!しまった!」


    サシャ「安心してくださいコニー。私も仲間ですよ」


    メガネ教官「はぁ。どうも問題児が多いな」


    アルミン「教官、課題は集めますか?」


    メガネ教官「やってきていない者もいるようだから、提出は良い。ただし考査までにはやっておくんだ。チェックする」


    危ねえ。アルミンとやっておいて良かった。

    考査の時になったら絶対忘れてるもんな。


    メガネ教官「課題について、まだ質問のある者はいないな?」


    シーーン


    メガネ教官「それでは今日の範囲を始めよう」


    座学ってただ聴いて書いてまとめるだけだからつまらないんだよな。

    もっと巨人の倒し方を詳しく教えてくれたり、巨人についての歴史を教えてくれたら良いのに。

    また立体起動装置の説明かよ。もう10回は聴いたっての。飽きた。


    エレン「クワァ……」


    メガネ教官「……イェーガー。私の授業は欠伸が出るほどつまらないかね」


    エレン「あっ、いえ」


    メガネ教官「眠気覚ましに走ってきても良いんだぞ」


    エレン「大丈夫です」


    ジャン「もう1回走ってこいよ」


    エレン「うっせえ!」


    メガネ教官「口喧嘩はよさないか。座学中だ」


    アルミン「エレン、謝ってこの場を収めなよ」コソ


    エレン「……すみません、続けて下さい」


    メガネ教官「うむ。よく聴いておくように」


    エレン「……」


    流石に欠伸はまずかったな。

    ジャンの茶化しはウザかった。後で殴っておこう。
  22. 22 : : 2018/07/25(水) 22:58:18




    _____あれから、10分が経った。


    ミカサ「……」ジイィィィ


    隣からの視線が熱かった。そこまで執拗に見なくても良いんじゃないのか。

    そもそも何故こちらを見ている。

    気付いていない振りをしているが、視線が気になって座学どころじゃねえ。


    メガネ教官「…と、言うわけで装置は成り立っているのである。分かったか、アッカーマン」


    げっ、よりによってミカサに当たるのかよ。

    答えられないんじゃないか?


    ミカサ「はい。分かりました」


    メガネ教官「ならばよろしい。イェーガーはどうだねれ


    エレン「へあ!?」


    メガネ教官「今の説明、理解できたのかね」


    エレン「あっ、いやっ……」


    メガネ教官「……しっかり聴いておくように。次に答えられなかったら大幅に減点を考える」


    エレン「……了解です」


    メガネ教官「では続けるぞ」


    いやいやいや、絶対ミカサも分かってなかっただろう。

    ずっと俺のこと見てたんだから。

    ていうかあのメガネ教官ミカサの回答に何の疑問もぶつけなかったよな。

    「分かりました」って何だよあんなのコニーでも言えるぞ。


    アルミン「エレン」コソコソ


    エレン「ん?」


    アルミン「集中しなよ」コソコソ


    エレン「……おう」


    それは隣の奴に言ってくれ!


    ミカサ「……」ジイィィィ


  23. 23 : : 2018/07/26(木) 19:50:35


    二時間の時間を要して座学は終わった。

    後の訓練は無いと言っていたから全員、休憩となる。


    エレン「おい」


    ミカサ「?」


    エレン「何で座学中、俺のこと見てたんだよ」


    ミカサ「……?」


    エレン「惚けるなよ。ずっと集中できなかったんだからな」


    アルミン「エレン?集中できない理由をミカサのせいにしちゃダメだよ」


    ミカサ「そう。いくら私がエレンのことを見ていたからといって原因にするのは良くない」


    エレン「やっぱり見てたんじゃねえか」


    ミカサ「欠伸をしていたから、寝るかもって思って見張ってた」


    エレン「あれかよ……」


    アルミン「確かに大きい欠伸だったね」


    ミカサ「アルミンもそう言ってる。だから見てた」


    だからって、あんなに見つめることはないだろう。

    こいつ、変な奴だ。
  24. 24 : : 2018/08/03(金) 15:54:05
    今、俺がミカサについて分かったこと。

    目の前にいるこいつは優しい奴で、変な奴だってこと。

    俺が人のこと言えるか分からないけれど、こんな奴が家族だったなんて信じられないな。



    ズキンッ



    エレン「!?」


    あ、頭が痛い。割れそうな痛みだ。



    ズキンズキンッ



    エレン「う、うぅ……!」


    ミカサ「エレン?どうしたの?」


    アルミン「どうしたんだい?エレン」


    エレン「あ…」


    アルミン「あ?」


    エレン「頭が痛え……」


    何だ、何なんだ。

    痛いなんてもんじゃねえ。脳が出てきそうだ。


    エレン「うあぁぁ……」


    ミカサ「エレン、エレン!しっかりして」


    ミカサは背中をさすってくれる。母さんがやってくれてるみたいで、安心した。

    でも痛みは尚、俺の頭を蝕んでいく。


    アルミン「医務室に連れて行こう」


    ミカサ「そうだね。エレン、私の背中に乗って」


    もう…ダメだ。


    エレン「……」


    アルミン「エレン!」


    ミカサ「エレン!」


    アルミンとミカサの呼ぶ声が、最後に聞こえた。

    そういえば、ミカサは俺の______。








  25. 25 : : 2018/08/03(金) 16:19:28


    夢みたいなものを見た。

    ガキの頃の俺と、アルミンとミカサが街の隅で憲兵団に見つからないように本を読んでいた。

    本を見ながら俺とアルミンが得意げに外の世界の話をして、ミカサが微笑む。

    和やかで楽しそうな感じだった。


    場面が変わって、俺はガキ大将たちと喧嘩していた。

    異端者とまたアルミンと馬鹿にされて怒って殴りかかってたけど返り討ちにされていた。

    俺が奴らに蹴られてる間にいつのまにかミカサが現れて、蹴散らしていった。

    助けられた俺とアルミンは気まずそうにお互い目を合わせた。


    また場面が変わった。

    開拓地で雪の降っている中、3人で畑の世話をしていた。

    リーダー格のやつらが俺たちに命令して、大人たちは暖炉のついた暖かい部屋で娯楽を楽しんでいた。

    寒さを凌ぐため、3人で身を固めて暖め合った。

    ミカサが、特に寒がっていた。


    また場面は変わる。

    俺が何かの訓練で怪我をして、ミカサが手当てしてくれていた。

    多分擦り傷だったのだろう。消毒をしてもらって俺はかなり痛がっていた。

    そしたらミカサが何か言ってた。聞こえない。



    まるで、俺たちはやっぱり昔から一緒にいるって教えてくれているみたいだった。

    でも俺は思い出ではなく、夢にしか思えない。

    こんな記憶、俺には______。












    エレン「……」


    目を覚ますと、薬品のツンとするにおいがした。

    医務室だ。


    医務官「起きたか」


    エレン「俺、倒れて……」


    医務官「アッカーマンが担いできたぞ」


    エレン「……?、あぁ、ミカサですか」


    医務官「アルレルトが血相を変えてきたから何事かと思えば君が意識を無くしててな」


    エレン「すみません」


    医務官「頭はまだ痛むか?」


    エレン「いえ、全く」


    医務官「それでは戻れるな」


    エレン「大丈夫です」


    医務官「気をつけるんだぞ」


    エレン「はい。お世話になりました」


    医務室を出ると、外は紅く染まっていた。

    もう夕方のようだった。


    エレン「うわっ、びっくりした」


    扉の隣の壁に背中をつけて、アルミンとミカサが座って寝ていた。

    アルミンの肩にミカサが寄りかかっていた。

    俺のことを待っててくれたのだろうか。


    エレン「おーい、アルミン。ミカサ」


    アルミン「すぅ……すぅ…」


    エレン「爆睡だ。毎日疲れるもんな」
  26. 26 : : 2018/08/03(金) 17:25:55

    ミカサ「……えれん?」


    エレン「起きたな」


    ミカサ「もう、平気なの?」


    エレン「寝たらこの通り。元気だ」


    ミカサ「良かった。心配してた」


    エレン「悪かったな、連れて来てもらって」


    ミカサ「軽かったから大丈夫」


    ん?今こいつなんて言った?

    『軽かった』って言ったか?


    アルミン「ふわぁ……。あれ、エレン」


    エレン「アルミンも起きたな」


    アルミン「具合は?」


    エレン「大丈夫だ。心配かけてごめん」


    アルミン「良いよ」


    ミカサ「食欲はある?夕食、食べれる?」


    エレン「腹は減ってないかな」


    アルミン「座学が終わったら、すぐ寝ちゃったもんね」


    エレン「悪い悪い」


    ミカサ「栄養不足で倒れたかもしれないから、夕食は摂って欲しい」


    エレン「ああ。一緒に食おうぜ」


    声を掛けたら微かにミカサは笑ったような気がした。

    アルミンもニコニコして俺らを見ている。

    俺は、昨日と違ってミカサの対応が変わったのかな。

    ミカサが喜んでくれているなら、良かった。
  27. 27 : : 2018/08/04(土) 17:21:16

    朝とは違って、俺は3人分の食事を用意する。

    その間にアルミンは席取りを。ミカサは水を汲んできてくれた。

    横に並んで、座った。

    前の席にはクリスタとユミルとサシャの仲が良い3人組が座った。


    サシャ「この時が待ち遠しかったです!」


    クリスタ「サシャ、落ち着いて食べるんだよ」


    ユミル「また他人の取ろうとすんなよ」


    ……お前らはサシャを飼っているのか。躾しているように見える。

    自分の食事を食べつつ、俺の皿を見てるってことは効果は無いみたいだけど。


    アルミン「サシャに取られる前に食べちゃおう」


    エレン「そうだな」


    出来るだけ好きなものは初めに食べた。

    サシャの飯に対する執念は誰よりも強い。こっそりと奪われてしまってもおかしく無い。


    サシャ「美味しかったです!ごちそうさま」


    ミカサ「エレンの食べては駄目」


    サシャ「ま、まだ何もしてないじゃないですか」


    ミカサ「対策」


    サシャ「やだなぁミカサ。私がそんなことするような人に見えます?」


    こいつ……。よくその口で言えたな。

    毎日被害に遭っているコニーやジャンはどうなるんだよ。


    ミカサ「私のをあげるから。駄目」


    サシャ「今日もですか!?あの、もしかしてミカサは第2の神ですか?」


    ミカサ「?」


    サシャ「とにかく、ありがとうございます。いただきまぁす!!」


    ミカサが一口も食べていないパンに豪快にかぶりつきやがった。


    エレン「おい、そんなに食っちゃミカサのが無くなるだろう」


    サシャ「へ?す、すみません。いつも通りに食べてしまいました」


    クリスタ「もう、だから落ち着いて食べてねって言ったのに」


    サシャ「すみませんミカサ」


    ミカサ「いつも通りに食べて大丈夫」


    アルミン「僕のをあげようか?」


    サシャ「本当ですか!?」


    ユミル「お前じゃないっての」ゴツン


    ユミルの拳に構わずサシャはパンを食べ続ける。その執念には若干引いた。

    いつも通りこの量をあげているってのことは、ミカサ全然食べていないってことか。


    エレン「……ん」


    ミカサ「?」


    エレン「半分やるよ」


    ミカサ「それはいただけない。エレンの貴重な栄養分だ」


    エレン「それは同じじゃないのか。お互い」


    アルミン「ミカサ、エレンが珍しく優しいんだから甘えたら?」


    クリスタ「そうだよ。今だけかもしれないよ」


    俺はどれだけ冷たくしてたんだよ。

    こんな言われようは何なんだ。




  28. 28 : : 2018/08/11(土) 14:29:52

    ミカサ「だったら自分のスープを飲む」


    サシャ「そ、そんなぁ!」


    アルミン「サシャ?」


    限度を覚えなさいってアルミンは顔で示していた。サシャには伝わったのか、諦めて他の奴の飯を狙いに行った。

    だが恐らく誰も分けてはくれないから、また夜中に食糧庫に盗みに入るんだろう。

    最近はプロフェッショナルな技術で教官を欺き、食べ物を手に入れている。


    エレン「なあミカサ?」


    ミカサ「何?」


    エレン「飯はしっかり食べないと、こんな過酷な環境なんだから倒れちゃうぞ」


    ミカサ「……や、痩せようと思って」


    エレン「痩せるだあ?余計な脂肪はついてなさそうだけど」


    アルミン「エレン!女の子の事情に首は突っ込まないんだよ」


    エレン「え……」


    ミカサ「アルミン、ありがとう」


    アルミン「任せてよ」


    心配しただけなのに、どうして俺が悪いみたいになってるんだ???


    ユミル「やれやれ、駆逐脳には困るねえ」ハァ


    クリスタ「ユミル。喧嘩を仕掛けないの」


    エレン「……それって、もしかして俺のことなのか?」


    ユミル「さあ?」


    クリスタ「もうっ!エレンごめんね。気にしないでね」


    クリスタ「行くよ、ユミル!」


    ユミル「分かった分かった」


    気がつくと、周りの奴らは片付けを始めていた。

    ダラダラしていたつもりはないが、いつの間にか遅れを取ったようだ。

    急いで食べよう。
  29. 29 : : 2018/08/12(日) 12:23:28

    エレン「ごちそうさま」


    ミカサ「トレー、片付けてくる」


    エレン「お、ありがとう」


    アルミン「食べ終わったね」


    エレン「ああ。部屋に戻るか?」


    アルミン「んー……僕はちょっと用事があるから先に行っててよ」


    エレン「教官に呼ばれたのか?」


    アルミン「そんなところ。長くかかるかもしれないから寝てて良いよ」


    エレン「おう。じゃあ先に行くわ」


    アルミンを残して、スタスタと帰った。

    前方にライナーとベルトルトがいたから、談笑しながら部屋に行った。

    何人かは既に寝ている奴もいた。


    ジャン「おい、死に急ぎ野郎」


    エレン「あ?何だよ」


    ジャン「ちょっと来いよ」


    エレン「何の用だよめんどくせぇ。ここじゃ駄目なのか」


    ジャン「良いから来いよ」


    ライナー「……エレン、行って来い」


    エレン「何だよライナーまで……」


    渋々、腰を上げてジャンの後をついて行った。

    普段俺を馬鹿にしているような感じが出てなくて、本当に真剣な話があるような雰囲気を醸し出しているジャンには若干、不安を覚えた。


    ジャン「ここらで良いか……」


    エレン「で、何の用だ?」


    ジャン「俺と言ったら分かるだろ。ミカサのことだよ」


    エレン「ミカサぁ?何でお前とミカサが関係あるんだよ」


    ジャン「……何でもねえ。それで、記憶のことだが」


    ジャン「今日以外の思い出で、本当にミカサの記憶は無いのか?」


    エレン「……無い」


    ジャン「じゃあ朝起きたらあいつのことなんて存在していないことになってるんだな。お前は」


    エレン「そうだよ。それが何なんだよ」


    ジャン「確認だ」


    エレン「……お前言ってたよな。俺は毎日ミカサと知り合って、毎日忘れていってるって」


    ジャン「そうだ」


    エレン「その、俺はが言うのもおかしいんだが。ミカサはメンタルとか大丈夫なのか?」


    エレン「俺がアルミンに同じ扱いをされたら気が狂いそうだ」


    ジャン「……はぁ」


    深い溜め息を1つ吐いて、ジャンは俺を見た。

    その細い目は真っ直ぐに俺を捉えていた。


    ジャン「食堂に来いよ」


    エレン「は?今から?」


    ジャン「来いよ。1発見せつけてやれば変わるかもな」


    何を見せつけるって……?


























    ジャン「良いか。誰にも気付かれないぐらいにそっと覗くんだぞ」


    エレン「覗く?食堂をかよ」


    ジャン「そうだ。隙間があるはずだから、そこからな」


    ジャン「絶対に声を出すな」


    エレン「……おう」


    そっとジャンの言う隙間から中を覗いてみる。

    そこには教官の元に行ってるはずのアルミンと、テーブルに頭を付けて項垂れているミカサがいた。

    アルミンがしきりに話し掛けていて、それにミカサがボソボソと答えているようだった。

    会話は、微かに聞こえた。


    アルミン「戻らないね、エレン」


    ミカサ「……えぇ」


    アルミン「ミカサは体調大丈夫?」


    ミカサ「平気。ちょっと、今日は視界がくらくらしたぐらい」


    アルミン「それは平気って言わないね。ねえ、食事はしっかり摂ろうよ。いつか倒れちゃうよ」


    ミカサ「食欲が無いの」


    アルミン「無理矢理にでも食べようよ。僕らは今、成長期真っ只中だ。ミカサの身体が悲鳴を上げてる」


    ミカサ「エレンに忘れられるのは、何回経験しても辛い。明日もまた……って考えたら」


    アルミン「いつかはって思っても辛いものは辛いんだね。今のうちに、不満は吐き出しな」


    アルミンは優しくミカサの背中をさすっていた。ミカサも安心しているように見える。


    ミカサ「アルミン」


    アルミン「?」


    ミカサ「私、最近本当に眠れない」


    アルミン「昨日の睡眠時間は?」


    ミカサ「30分眠ったかどうかぐらいだったと思う。今日の訓練も身体が怠くて嫌だった」


    アルミン「エレンのことを考えちゃう?ベッドに入ったら」


    ミカサ「そう。最初の頃は沢山泣いてたからいつの間にか寝ていたけど、今は…」

  30. 30 : : 2018/08/12(日) 12:45:45
    ミカサ「同室のクリスタたちはしっかり寝てれるみたいだから、迷惑は掛けてないのが幸いだけれど」


    アルミン「迷惑ねえ。1番掛けてるのはエレンだと思うけど」


    ミカサ「エレンは違う」


    アルミン「馬鹿にしてないからね。ね?ちょっと口が滑っただけだから」


    ミカサ「……怒るよ」


    アルミン「すみませんでした」


    ミカサ「うん。エレンの悪口は言わないでね」


    アルミン「はい。ごめん」


    2人は、俺が関係することを終始話している。

    俺のことで、ミカサが苦しんでるみたいだった。

    俺は、ミカサの為に何をしてあげれる?___


    アルミン「ミカサはどうやったら眠れると思う?一夜だけでもさ」


    ミカサ「……エレンと一緒に寝るとか?」


    アルミン「あー無理だね」


    ミカサ「でしょう。無理だ」


    アルミン「教官にお願いでもしようか?」


    ミカサ「不純異性交遊と言われる。お願いするだけでも懲罰行き」


    アルミン「そっかあ。どうしようかな」


    ミカサ「……話を聞いてくれるだけで助かってるいつもありがとう」


    アルミン「僕に出来るのはこれしかないじゃないか。悔しいけど」


    ミカサ「そろそろ部屋に戻る?」


    アルミン「んー、ミカサの気が済んだなら」


    ミカサ「すっきりした。アルミンじゃないとこんな事出来ないから」


    アルミン「お役に立てたなら良かった」


    ミカサ「それではおやすみなさい」


    アルミン「おやすみ。今日は寝れると良いね」





    エレン「……っ!」ダッ


    ジャン「あっおい、てめえ!」


    気がつくと俺は、ミカサとアルミンの所に走っていた。

    急に外から足音が聞こえるもんだから、2人はびっくりした顔でこちらを見た。

    俺が扉から姿を現したら驚きをもろに出していた。


    ミカサ「エレン!?」


    アルミン「どうして!」


    エレン「さあな。たまたま見つけちまった」


    アルミン「部屋に行っててって言ったのに」


    エレン「すまんな。……ミカサ、来いよ」


    ミカサ「え?」


    エレン「一緒に来てくれよ」


    アルミン「……行きなよ!」


    ミカサ「アルミンまで」


    エレン「アルミン、後は頼んだ」


    アルミン「はーい。いってらっしゃい」


    ミカサの手首を引っ張って、俺たちは食堂から出た。


    アルミン「ジャン?いるんだろ?」


    ジャン「……すまん」


    アルミン「やっぱり君だよね。ミカサの為に、僕たちの会話をエレンに聞かせるなんて」


    ジャン「惚れてる女の弱ってる姿なんて、見てられっかよ」


    アルミン「流石だね。ミカサに関しては」


    ジャン「当たり前だ。明日になったら、無駄なんだろうけど……」


    アルミン「うーん?」


    アルミン「そうかなあ?」




  31. 31 : : 2018/08/12(日) 13:14:06
    出来るだけ遠くの、誰も来ないような倉庫に連れ出した。

    本当に暗くて、窓から差し込む月明かりだけが頼りだった。


    ミカサ「エレン……?」


    エレン「悪い。さっきの話、途中から聞いてた」


    ミカサ「……」


    エレン「俺のせいで食事も食えないとか眠れないとか」


    ミカサ「そ、そんなこと言ってない」


    エレン「嘘付いても無駄だ。聞いてたんだから」


    ミカサ「仮にそんな話をしていたとしても、エレンのせいではない」


    エレン「俺のせいじゃなくても良いか。俺の考えは変わんねえし」


    ミカサ「あの、こんなところにどうして連れてきたの?」


    エレン「お前言ってたよな。俺と一緒寝れたら良いなって」


    ミカサ「……」カァ


    エレン「だったら一緒に寝たら良いかなって」


    ミカサ「教官に見つかったら」


    エレン「全力で隠れるけど」


    ミカサ「駄目だ。こんなこと」


    エレン「一晩だけだろ」


    ミカサ「だけど……」


    ミカサ「朝起きて、知らない人が隣で寝てたらエレン嫌でしょう?」


    エレン「家族じゃねえの」


    ミカサ「明日にはきっと忘れるよ」


    エレン「希望を持たねえ奴なんだな。なんか知らねえけど、俺は今夜思い出せそうな気がするけど」


    ミカサ「急に思い出せる訳がない。夕食を食べていた時まで、そんな素振り無かったのに」


    エレン「俺は気まぐれだからな」


    ミカサ「エレンは頑固だ…」


    エレン「な?いいだろ?」


    ミカサ「……万が一、眠れなかったら私は1人で宿舎に戻るから」


    エレン「おう。硬い床だけど、許してくれよ」


    やっと2人で腰を下ろした。

    色々あった1日だったと思う。だからこそ、今日は思い出せそうな気がする。

    いや、思い出さないといけないんだ。


    俺は先に寝転んで、頭をつけた。

    ミカサがある方に腕を伸ばして、枕の準備は出来た。


    エレン「寝て良いぞ」


    ミカサ「その腕は……?」


    エレン「硬いから余計眠れなくなると思って」


    ミカサ「腕が疲れると思う」


    エレン「いいから!」


    ミカサ「!」


    強引に寝かした。

    嫌がってたけど、ずっと腕の上に頭を乗せさせていたら大人しくなった。

    腕は疲れない。


    エレン「……」


    ミカサ「……」


    エレン「おやすみ」


    ミカサ「……おやすみなさい」


    ミカサは目を閉じた。俺は、ミカサの顔だけを見続ける。

    視線が気になるのか、たまに目を開けて俺の方を見た。


    ミカサ「あの」


    エレン「ん?」


    ミカサ「ギュッてして良い?」


    エレン「良いよ」


    了解を得るや否、俺の身体に抱きついた。

    そのままの状態で、ミカサは少しずつ寝息を立て始めた。


    完全に、ミカサは寝た。


  32. 32 : : 2018/08/14(火) 14:43:56

    スースーと寝息を立てて寝ていた。

    眠れないと悩んでいたぐらいだから、こんなに早く寝てしまうなんて思わなかった。

    暫くしたら腕が痺れてきたから動かしてみても、一向に起きる気配は無かった。


    ミカサ「エレン…」


    エレン「うん?」


    ミカサ「置いて…行かないで……」


    エレン「ミカサ?」


    ミカサ「スー…スー…」


    寝言を言っていた。

    夢の中で、俺はミカサを不安におもわせていたのだろうか。

    身体に回された筋肉のついた腕に、力が入った。

    力が強い。少し苦しい。

    胸の奥底が、ズキンッと痛んだ。


    エレン「……」ナデ


    ミカサ「うぅん…」


    エレン「ごめんごめん」


    今日の俺は、いつもと比べたら優しいのかもしれない。

    だけど、明日の俺はいつもと比べたら辛辣になっていてまたミカサの心を(えぐ)っているかもしれない。

    そんなの、許せねえ。

    俺のせいでこの子が苦しんで泣いてしまうなんて、そんなのあってたまるか。


    エレン「思い出してやる」


    エレン「なんとしても……!」
  33. 33 : : 2018/08/14(火) 15:12:34







    __________________________________________







    月の高さが、もうすぐ明日になろうとしていると教えてくれた。

    あれから結構な時間が経ったけど、全然思い出せずイライラしている。


    エレン「なんでだよ……!」


    意思は強い方だと思っている。

    母さんを喰らったあの巨人どもに復讐するために、日々訓練も手を抜いていない。

    それなのに、どうして思い出せない。


    エレン「これじゃあ、ミカサが……」


    報われないじゃねえか。

    思い出せ。思い出せ!


    目の前にいる女の子、この子名前はミカサ!ミカサだ!


    ミカサ。


    ミカサ。


    ミカサ。


    ミカサ…


    ミカサ……?


    エレン「ミカサって、誰だ?」


    エレン「俺、今誰のこと……?」


    ミカサ「うっ、ううぅ……」


    エレン「え?うわっ、だ、誰?」


    ミカサ「助けて……」


    エレン「え?え?助けて!?ってここどこだよ?誰もいないじゃねえか」


    ミカサ「寒い…」


    エレン「寒いって今は夏だぞ!?」


    エレン「それよりええっと……」


    ミカサ「エレン…」


    エレン「俺の、名前?」


    ズキッ


    エレン「!!」


    ズキンッ


    エレン「う、あぁぁ……!」


    ミカサ「……?」パチ


    ミカサ「エレン!?どうしたの!?」


    エレン「頭がっ……!」


    ズキンッズキンッ


    ミカサ「痛いの?エレン、エレン!」


    エレン「うぐぅ…」


    ミカサ「しっかりして、冷やすものを持ってくるから」ダッ


    エレン「何で、頭痛なんか…!」


    エレン「あ」


    一瞬にして、頭の中に色々なことが思い浮かんできた。

    俺の家族、ミカサのことが全て。

    出会いは最悪の状況だったこと。
    自分とアルミンとミカサで、3人で遊んでいたこと。
    近所のガキ大将からいつも助けて貰ってたこと。
    開拓地で、暖めあって寝たこと。

    そして、傷の手当てをしてくれたこと。


    エレン「どうして、忘れていたんだ……!」


    エレン「ミカサ・アッカーマン。俺の家族だ」


    ミカサ「エレン!水を……んっ!」


    エレン「……」


    身体は急に動き出して、思い切りミカサのことを抱き締めていた。

    これでもかってぐらい遠慮なしに力を込めた。

    だってミカサだから。これぐらい大丈夫だ。


    ミカサ「え、れん?」


    エレン「……っ!」


    ミカサ「苦しいよ」


    エレン「…思い出したよ」


    ミカサ「!」


    エレン「お前のこと。全部」


    ミカサ「全部……?」


    エレン「そうだ。お前は俺の家族で、1番大切な存在だ」


    ミカサ「本当に、思い出してくれたの?」


    エレン「嘘言わねえよ、今までごめんな」


    ミカサ「……このマフラーをくれたのは誰?」


    エレン「俺だよ。何言ってるんだ」


    ミカサ「本当だ、エレンだ」


    汲んできた水が入ったバケツは、ストンと地面に落ちて溢れた。

    ミカサも、俺を抱き締めてくれた。



  34. 34 : : 2018/08/14(火) 15:25:32

    それからはとにかく謝り倒した。

    長い間、1番忘れちゃいけない奴のことを忘れちまったんだから。

    ミカサにはこっ酷く怒られた。全然怖くなかったけど。

    でも最後には2人とも笑ったと思う。

    そして、いつのまにか朝になっていた_____。


    ミカサ「エレン、起きて」


    エレン「うぅん……」


    ミカサ「朝だよ。起きて」


    ゆさゆさと身体を揺すられた。

    ちょっ、そんなに揺すったら酔うっつうの。


    エレン「何だよ…」


    ミカサ「おはよう」


    エレン「……誰?」


    ミカサ「……」ビクッ


    エレン「嘘だよ。おはよう」


    ミカサ「馬鹿」


    ミカサ「エレンなんか嫌い」


    エレン「ごめんって」


    ミカサ「私にとっては死活問題だったのに」


    エレン「ごめんって。今度なんか奢ってやるからさ、な?」


    ミカサ「……休みの度に一緒に外出するなら」


    エレン「それは嫌だ」


    ミカサ「むぅ」


    倉庫にいた形跡を完全に消して、外に出た。

    日の光が直接当たって眩しかった。


    ミカサ「手を繋いで」


    エレン「暑いって」


    ミカサ「忘れた罰」


    エレン「その脅して一生使う気だろ」


    ミカサ「皆の前では離すから」


    エレン「……はい」


    手を差し伸べると即座に握られた。

    訓練しているはずの手なのに、柔らかく感じた。
  35. 35 : : 2018/08/14(火) 15:40:40

    食堂に行くと、アルミンはニコニコしながら3人分の食事を用意して待っていた。

    あの顔は、全てお見通しってわけだな。


    エレン「おはよう、アルミン」


    ミカサ「おはよう」


    アルミン「おはよう、2人とも」


    エレン「……わかってんだろ?」


    アルミン「んー?何が?」


    エレン「察してくれよ」


    アルミン「言ってくれないと分かんないや」


    ミカサ「アルミン、意地悪だね」


    アルミン「そんなことないけどなあ?」


    エレン「その…思い出したよ、ミカサのこと」


    アルミン「そうかい、それはそれは良かった」


    エレン「えっと……ただいま?2人とも」


    アルミン「お帰り」


    ミカサ「お帰りなさい」


    アルミン「さっ、食べよっか」


    ミカサ「トレーありがとう」


    アルミン「いいよ」


    エレン「俺水汲んでくるよ」


    アルミン「あ、忘れてた。ごめんよ」


    エレン「おう!」


    井戸には数人、水を求めている人たちがいた。


    エレン「あっちいな」


    マルコ「やあエレン」


    エレン「お、マルコ。何だ?」


    ん?隣にいる奴誰だ?

    稀な顔してるな……。馬面だな。


    マルコ「ジャンが聞きたいことがあるらしくて」


    エレン「ジャン?」


    ジャン「おい、死に急ぎ野郎。昨夜はミカサと何も無かったよな!?」


    凄え剣幕で喋るな。

    ていうかこんな奴、同期にいたか?103期か105期だよな。


    ジャン「おい、てめぇ!話聞いてんのか!?」


    エレン「お前……」






    エレン「誰だ?」







    終わり


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eremika1

MARIA

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