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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この雷霆を君に撃つ

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  1. 1 : : 2018/07/11(水) 16:58:16


    ──この大陸には、『神々の骸』が各地に封印されている。
    それ触れ魅入られた者は超常的な力を得る代償として、逃れられない恒久の死線へと引き寄せられていく。
     
     
    これは、無くしたモノを取り返すために『神々の骸』を拾い集める少年と、無くした自分を取り戻すために戦う少女の物語────。
     
     
    ###
     
     
     
    「はっ.......はっ.........は────」
     
    とある北国。辺り一面雪化粧の雪原で、華奢な少女が自身の身の丈の半分ほどある木製の古びた箱を抱えながら必死に駆ける。雪が降る中かなりの距離を走ったのだろう、凍えるほどの気温のはずなのに額には脂汗が浮かんでいる。
     
    「.......ああっ」
     
    雪に埋もれた段差に気づかなかったのだろう。少女は盛大に転けてしまった。にも関わらず、抱えた木箱を離さない。よほど大切なものが入っているのだろう。
     
    「はやく.......逃げなきゃ.......」
     
    言葉とは裏腹に、少女の身体はなかなか動いてくれない。神経回路に異常があるわけではない。満身創痍の身体に見かねた脳がこれ以上動くなとリミッターをかけているのだ。
  2. 2 : : 2018/07/11(水) 17:16:09


    「いたぞ!王女殿下だ!」

    少女が1人で走り続けていた理由.....それは追っ手から逃げるためだった。
    礼服を几帳面に着こなした男たちが少女を見つけるやいなや、血眼になって駆け出す。

    「軍の上層部からは殺しても構わないとの御達しだ.........が、さすが王族の娘だ。かなりの上玉じゃねぇか」

    少女を追う集団のリーダー格の男が逃げ惑う少女を舐めるように見つめる。

    「とっ捕まえて好き放題ヤッてからでも遅くがねぇだろ...ヒヒッ」

    薄気味悪い笑みを浮かべた男は少女に銃口を向け──撃った。弾丸は空気を切り裂きながら少女に向かって真っ直ぐに飛ぶ。刹那後、太ももに着弾。

    「っく.....ぁっぁあっっ!!」

    少女はその場に倒れ込み、痛みにのたうち回る。患部からは鮮血が吹き出し、真っ白な雪原に紅い花弁を散らす。

    「さぁて、リリナ王女。ったくあんたは手癖の悪い下品な女だよ.......なっ!」

    ドン!と鈍い音が響く。男がリリナと呼ばれた少女の腹に蹴りを入れたのだ。

    「っふ.......ぐ.......ぁぁ.........」

    痛みで意識が朦朧としているのか、腹を抑えながらうずくまっている。

    「あんたが持ち出した『神々の骸』を取り戻すためにこんな遠いとこまで追っかけてきたんだ.....もちろん後で存分に楽しませてくれるんだよな?その身体でよぉぉ」

    「.....っ.......うっさいわね」

    「あ?」

    「あんたみたいな薄汚い髭ずらのオヤジ.....死んでもごめんだわ」

    リリナの一言で男の怒りの沸点が頂点に達したのか、顔を真っ赤にしてリリナを蹴り飛ばした。

    「生意気な女だな!どんな教育したら王家の娘がこんなクソガキになるのか聞きたいくらいだ!!」

    「...そのクソガキに手こずってこんな僻地までわざわざ.....ご苦労なことね」

  3. 3 : : 2018/07/11(水) 17:28:03

    「.....おいクソアマ.....いい加減にしろよ」

    男の怒りは頂点を通り越してカンストしてしまったらしい。懐にしまっていた拳銃の再び取り出すと、リリナの銀糸のような長い髪を鷲掴みにして引っ張り上げる。

    「女王殿下に捨てられた.....哀れな小娘風情が。お前はもう居場所を無くした奴隷同然」

    「.....」

    「あばよ、王女殿下。せいぜい、その生意気な態度を悔やみながら安らかに死ぬといい」

    リリナは双眸を固く瞑った。母に.....王国に捨てられてからというもの、いつかこうして消されることになるだろうと薄々感じていた。
    王家からその存在を消され、いなかったことにされた悲しさ。その悲しさからか、王国が最近封印を解除したという『神々の骸』を奪い逃げ出した。なんで自分がこんなことをしたの分からない。もっと皆に見て欲しかったのだろうか。皆を見返したかったのか。

    どちらにせよ、もう終わる。

    「.......死にたく、ない」

    誰にも聞こえない、微かな絞り出した声だった。

    「誰か────助けて」

    それは虚しい祈り。誰にも届かない。誰も来ない。誰も────いない。はずなのに。

    「ちょっと目ぇ瞑ってろ」

    「え.........」

    刹那にも満たない短い時間。眩い光が視界いっぱいに広がり、一瞬遅れて聞こえた天を衝く轟音が全てをかき消した。
  4. 4 : : 2018/07/13(金) 10:35:06


    「やっべぇ!やりすぎた!」

    リリナが目を開くと、そこには頭を抱えながら悶える青年がいた。20歳前後だろうか?リリナより2、3歳年上に見える。
    宵を思わせる漆黒の黒髪に、アメジストのような紫色の瞳。かなり整った顔立ちだが、雪の上を転がり回る姿を見ているとなんだか情けない大人に見えてきた。

    「くっそぉぉぉぉとっ捕まえて尋問しようと思ったのに!おい!起きろおっさん!『神々の骸』はどこだ?」

    気を失っている男達の頬っぺをパシンパシンとビンタする青年。

    「ひ.....酷い.........」

    「ん?ああ、そういえばお前、大丈夫だったか?」

    突然声をかけられ硬直するリリナだったが、即座に頷く。

    「ったくよぉ、どっかのバカがアルカイン城から『神々の骸』を奪いやがったからおかげでこっちは休日出勤.....勘弁しろよな、まったく」

    やれやれと両手をあげてため息を吐き出す青年。リリナは冷や汗が止まらない。この青年は王国軍の人間だ。盗み出された『神々の骸』を取り返しに来たのだ。

    「いやぁさ、そこのおっさんは最近『神々の骸』が封印されてる地下室に入り浸ってるって噂だったから追っかけて来てみれば.....案の定、骸を持った王女殿下を狙ってるわけだ」
  5. 5 : : 2018/07/13(金) 13:26:23

    青年はリリナが抱えている木箱を一瞥すると、にっと笑った。

    「このおっさんが骸を奪ったか.....あるいは骸の無くなった同時期に女王に捨てられた『廃棄王女』が持って行ったか.....と思っていたが、ドンピシャだったな」

    リリナは1歩後ずさった。

    「あなたは.....私を捕らえにきたの?」

    「そうだが.....正確に言うとお前が取った『神々の骸』に用があるんだ。手荒な真似はしたくねぇ。さっさと骸を差し出せ」

    「.........嫌よ」

    「んん?」

    「嫌って言ったの!聞こえなかったの?この唐変木!!」

    「おいおい.....由緒正しい王家の娘さんがそんな汚い言葉を使うんじゃありません...ったく、教育機関はどうなってんだか」

    確固たる信念をもつ双眸に睨みつけられた頭をかく青年。言葉での説得は不可能と見たのか、1歩、また1歩とリリナに歩み寄る。

    「お前.....『神々の骸』がどんだけ危険なものかわかってんのか?何も知らねぇお子ちゃまが一丁前に骸に手ぇ出してんじゃねーよ」

    紫色の瞳がリリナを捉える。凍えるような冷たさの双眸に射抜かれ、背筋が凍てつく。

    でも。それでも。

    「.....む...骸は.....『神々の骸』は私に必要なの!!」
  6. 6 : : 2018/07/13(金) 18:01:36


    確固たる意思と信念。この小さな少女を突き動かしている源は何なのか分からないが、そういった心に決めた何かを感じる。この手の人間は1度腹を括ったらものすごく手ごわい。

    「.....だから、これは渡せないわ」

    木箱を抱く力を強める。

    「.......お前は、なんでそこまでして『神々の骸』を欲するんだ?女王陛下へ復讐するためか?国家転覆でも企んでいるのか?」

    「私は.....分からないけど、困ってる人を助けたいの!『神々の骸』はそういうものなんでしょ!?」

    「...........何も分かっちゃいねぇんだな、お前は」

    「え.....?」

    「骸に封印されているのはかつてこの世界を1度滅ぼした神々の力だ。使い方を違えたり、骸に呑まれたら災厄が国家に降り注ぐんだよ。たとえ名も無い下級の神々の骸であってもな」

    リリナは固唾を呑んだ。
    確かに自分は『神々の骸』のことを知らない。知っているのは、人智を超えた力が手に入ることだけ。身の丈に合わない大きすぎる力を持つことの怖さを知らない。
    だが、自分の善意を以て骸を使えば、きっと正しい方向へと進める。力に呑まれたりすることもないはずだ。

    「ほら、さっさと渡せ。骸さえ渡してくれればお前をとっ捕まえたりしねえよ」

    気だるげな顔をして近寄ってくるが、リリナは同じように距離を取る。

    「これ以上近づくなら今すぐ骸の力を解放するわ」
  7. 7 : : 2018/07/13(金) 18:16:39


    リリナは木箱の蓋を開き、投げ捨てる。
    リリナ自身、木箱を開けるのは初めてだ。おもむろに中を覗くと────。

    「きゃっ────!?」

    人間の頭蓋骨に似た骨格が禍々しい雰囲気を帯びて鎮座している。ほんの少しでも気を抜けば何かに呑まれそうな、二度と帰って来れなさそうな、薄ら寒い恐怖を覚えた。

    「っち.......おい!今すぐ骸を手放せ!!呑まれるぞ!」

    ハッとしたリリナは骸の入った木箱を放り投げた。骸は木箱から飛び出し、虚空に弧を描きながら雪原に落ちる。

    「.....はぁ.....はぁ.......」

    「.....ったく、手間かけさせやがって」

    骸の落下地点に向かって歩き出す青年。
    その背中を力ない瞳で見つめるリリナ。
    その視線に気づいたのか、くるりとリリナの方に向き直って説教を始める。

    「分かったろ?骸に触れるということは自ら死神の鎌に首をかけるということなんだよ。仮にもし骸に魅入られても『恒久の死線』って言われる逃れられない戦いに誘われるんだ。この機に骸は諦めて別の道を歩みな」

    「.......ぁ」

    当のリリナは全く話が耳に入ってない様子だ。

    「おいおい.....年長者の言うことは素直に聞かんかい」
  8. 8 : : 2018/07/13(金) 18:37:42


    「ぁ.......骸.....が.....」

    「どうした?トイレ行きたいのか?あ?」

    リリナが糸切れ人形のような仕草で青年を指さす。いや、正確には青年の後ろ、骸がある場所を。
    青年は振り返り、驚愕した。

    「へへへ.....骸.........『神々の骸』ぉぉぉおおお!!」

    リリナが目を瞑っている隙にいつの間にか倒れていた王国軍の男が骸を両手に持って担ぎ上げている。骸からは黒い霧のようなおぞましい何かが放出されて男の周りを漂っている。

    「これさえあれば私は.....私ははぁぁあああああああああ!」

    男の叫びに呼応するかの如く、骸が空中に浮く。すると何も無い虚空から巨大な骨格が現れ、男を取り込む。
    黒い霧を放ちながら、骸は男を蝕んでいく。

    「っぐ...ぁぁぁぁぁああ!!!」

    骸に呑まれた人間の末路.....それは肉体と精神の破壊。暴走する骸に取り込まれ、自身が死ぬまで殺戮を繰り返す。先程何か果実が弾け飛ぶような音がしたのは、おそらく男の臓物が破裂した音だろう。

    やがて男を包む黒い霧が晴れ、姿を現し──。

    「殺す.........殺す...皆殺しだ...殺す...」

    男の首が幾重にも枝分かれに、りんごの木のごとく顔が無数にぶら下がっている。その体躯は3メートルをゆうに超え、無数のうねうねとした腕をそこらかしこから生やしている。
  9. 9 : : 2018/07/13(金) 22:12:59
    見てくださっている方、コメントとか感想くれたらとても喜びます(*⌒▽⌒*)
  10. 10 : : 2018/07/14(土) 09:49:32


    「うっへぇ.....気持ち悪ぃ.....」

    心底気持ち悪そうな顔をする青年。しかしリリナは恐怖で腰が抜けてしまいその場にへたり込む。

    「あ.......力.....入らない.....」

    「あぶねぇ!!!」

    骸に取り憑かれた男が腕を伸ばしてリリナを穿たんとするが、間一髪のところで青年がリリナを抱き抱えて地面を転がり難を逃れる。

    「死にてぇのか!」

    そのまま青年はリリナを抱きかかえながら男と距離を取る。

    「逃げても無駄だぁぁぁぁあ!!!!」

    男は無数に生えた顔のひとつをねじ切った。切断部から血が間欠泉のように吹き出るが、もはや痛みの概念は存在しない。それどころか、患部が急速に回復し、ねじ切れた顔が逆再生したかのように元通りになる。
    そしてちぎった顔を青年に向けてぶん投げる。

    「アンパンマンじゃねぇんだぞ!俺に新しい顔はいらねぇ!!」

    咄嗟に体を左に捻って回避。恐るべき反応速度。瞳の色を失った顔がリリナのすぐ横を擦過し、表情が一気に青ざめる。

    「クソ、おいお前!1人で走れるか?」

    「い、いま.....力入らないの.......」

    「ドちくしょう!!」

    申し訳無さそうに俯くリリナ。
  11. 11 : : 2018/07/15(日) 09:34:49

    「ともかく、俺はあいつを速やかに抹殺せねばならん。放っておいたら近隣の街や村で多くの死人が出る」

    抹殺──。
    そう言った青年の瞳は絶対零度の冷たさを放っていた。恐らく、彼自身殺すか殺されるかの世界で生きているのだろう。

    「あ、あんな化け物に勝てるはずない.......王国軍を呼びましょう!」

    「あほ。そんな時間ねぇよ。そもそも──」

    背後から伸びてきた男の腕を跳躍して躱す。完全に死角からの攻撃を完璧に躱してみせた。背中に目がついているのではないか。

    「──あいつは俺たちに時間を与えてくれないらしい」

    青年の目付きが変わる。

    「やつは.....そうだな、王女ストーカー親父.....もとい、骸に呑まれたヒゲ骸と命名するっ!」

    「ひ、ヒゲ骸.......」

    センスのない名前をちょうだいした男を哀れみながら、リリナは青年に抱かれたままもう一度ヒゲ骸に視線をやる。
    恐ろしい姿だ。今すぐ殺されてもおかしくない状況なのに、どこか──なんだろう、彼から滲み出る──苦しさ。どこか救済を求めているかのような──そんな瞳。
    このまま殺してしまっていいのだろうか?
  12. 12 : : 2018/07/15(日) 16:48:28


    「王女さまぁぁぁぁあまままぁぁ!!その身を私によこせえぇぇぇぇぇぇ!!」

    地の底から響いてくるかのようなおぞましい叫び声。そんな声を聞いても表情ひとつ動かさない青年。ゆっくりとリリナを地面に下ろす。

    「行け。お前まで巻き込んじまう」

    リリナの方を見ずに言い放つ。冷たい声ながらも、彼なりの不器用な温かさを感じたような気がした。気がした。

    「あ、あなたは.......」

    「.....教えてやるよ。リリナ。『神々の骸』ってもんはな.......こう使うんだ」

    言うと、青年は左手で自身の左胸──心臓に手を当てる。ゆっくりと、ことさらゆっくりと。自分の心音を確かめているかのように、ゆっくりと。目を閉じ、開ける。

    「行くぜ『雷霆神(トール)』.....!」

    刹那、雪原に響き渡る轟音と閃光。その正体は雷だということに気づくのは数秒後だった。
    あろうことか、青年を中心に雷の渦が発生していた。先程まで雪雲だった空は、黒塗りの分厚い黒雲の天へと変わり果て、耳をつんざく轟音が鳴り響いている。

    「こ、これは.......」

    およそ科学的にはありえない現象。そういえば、ヒゲ骸に捕まっていた時、どうやって一瞬で群がる男共を倒したのか気になっていたが、そういうことか。

    「俺も────『神々の骸』に魅入られた哀れな道化さ」

  13. 13 : : 2018/07/15(日) 16:57:52


    雷を纏い、どこか神々しい光を放つ青年。相対するヒゲ骸は多少の驚きはあれど、意に介さず言い放つ。

    「貴様も骸を.....神を宿した者だったとはな...!」

    「うっせぇ。ついさっき骸に取り込まれたヒゲ野郎が一丁前に骸を語ってんじゃねぇよ」

    「ふふ.....ははは!!いいだろうガキ、神の力を得た私の最初の犠牲に相応しいではないか!!!」

    高笑いするヒゲ骸。無数の腕を青年に向けて伸ばし攻撃する。恐るべきスピードで青年に向かう腕は拳銃の弾丸ほどの速度はあるだろう。リリナが「危ない!」と声を発するひまもなく青年が無数の腕の餌食に──ならなかった。
    バチバチぃぃ!!という音とともに黒焦げになったヒゲ骸の腕が力なく地面に叩きつけられる。

    「なっ.......!」

    「素手で雷を触ってんじゃねーよ」

    リリナの目にははっきりと見えた。腕が青年を貫く瞬間、青年の身体から発生した雷が青年を包み込むようにして周囲に展開。その電撃に当たった腕は消し炭になったというわけだ。

    「そもそも────」

    バチバチ、と音だけを置き去りにして青年はヒゲ骸の後ろに高速移動する。

    「なん──」

    「そもそも、『解号』すら持たねぇ下級の神が俺に勝てるわけだねぇだろうが」
  14. 14 : : 2018/07/15(日) 17:08:53


    青年が雷を纏った右腕を横一線に薙ぐと、地面と並行に電撃の刃が駆け抜ける。電撃の刃が空気中で消える頃には、ヒゲ骸の胴体は真っ二つになっていた。

    「がっ.......き、貴様ぁぁぁぁぁぁああ!!!」

    それでもまだ戦うことをやめない。だが、青年にダメージを与えることはできないと判断したのだろう。標的をリリナに変え、腕を伸ばす。

    「てめぇ!!」

    「きゃ──────」

    腕がリリナを貫通する寸前、天高く出現した黒雲から落雷が発生。大地に向かって降り注ぐ。神々しい黄金色の落雷が大地を叩き、地響きが駆け抜ける。
    リリナを狙った腕は跡形もなく消え去り、腕を通して身体に落雷を食らったヒゲ骸は瀕死状態になっていた。

    「あっぶねぇ.........おい大丈夫か?」

    「え、えぇ.......おかげさまで.....」

    もう既に人間が身体が真っ二つになっても生きていて、雷を自在に操っていたとしてもそんなに驚かなくなってしまった。

    「さて、と」

    青年は再びヒゲ骸。向き直ると、左手を天に掲げる。

    「てめぇの生命力は異常だ。恐らく、『幻魔神(ロキ)』が造ったものだろう。ここで確実に息の根を止めなきゃならねぇ」

    「クソっ.....こんなガキに.....この私がぁぁまああああああああ!!」

    腕が伸び、青年を貫かんとするが、電撃の壁によって消し炭と化す。

    「.....《雷霆よ、黒雲の天に轟け》」

  15. 15 : : 2018/07/15(日) 17:21:33


    解号────。
    『神々の骸』が持つ本来の能力を引き出すために必要な鍵のようなもの。
    青年はそれを何の迷いもなく言い放った。

    「王女を狙い、殺そうとしたそのクソッタレな根性.....俺が雷霆の裁きをくれてやらぁ!!」

    突然ヒゲ骸の頭上と足元に現れた巨大な魔法陣。幾何学的な紋様が張り巡らされ、どこか神秘的にも感じるそれは、膨大な電撃を含んでいるということが容易に想像できる。

    「な、なんだこれは.....」

    「てめぇに撃つぜ──『滅却の雷霆槌(ミョルニル)』!!」

    天高く掲げた左手を振り下ろすと、それに呼応されるかのように頭上の魔法陣から極大の電撃が大地の魔法陣に向かって放出される。なんという膨大なエネルギー、なんという美しさ。まさに雷霆神の鉄槌と呼ぶに相応しい最強の一撃──。
    衝撃波が周囲の雪を溶かして雪原の服を脱がせる。離れたところにいるリリナですら皮膚に電撃が走るくらいだ。直撃したヒゲ骸はどれほどのダメージを受けているのだろうか。

    「.....雷霆神の加護あれ」

    すべての電撃を放出しきった魔法陣は大地に巨大なクレーター──爪痕を残して霧散した。
  16. 16 : : 2018/07/21(土) 20:28:40
    おもしろい!期待です!

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