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エレヒス「一恋の最期」

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  1. 1 : : 2018/03/10(土) 22:39:38
    卒業の時期ですね。

    それに因んだ切ない青春のssです。

    他作品はしばしお待ち下さい。
  2. 2 : : 2018/03/10(土) 22:47:06
    うむきたい!
  3. 13 : : 2018/03/10(土) 23:31:31
    今日、先輩が卒業した。

    それは一瞬のようで永遠のようにも感じた日々があっけなく最期を迎えた。







    ……



    ………


    「新入生のご入場です。拍手でお迎え下さい。」


    体育館。それは校長の一言で始まった。




    私の中学生の時の印象はこうだろう。


    根暗。
    無愛想。
    人見知り。
    人形。


    少なくとも私には本音を話せれる友がいた。

    が、それも過去というなのゴミ箱に捨てた。


    私は根暗な自分が嫌だ。

    だからその過去を知ってる人とは同じ高校に行きたくなかった。

    だから県外の高校に進学した。

    親の説得を無視して飛び出してきた。


    「私達はここに残ります。貴女が行きたいというのなら一人で暮らしなさい。」


    そんな声も聞こえたような気がする。

    決して多くはない小遣いを使って安いアパートでひっそりと暮らし始めた。

    案外、そういう所の方が落ち着く気がする。

    決して裕福ではないが、のびのびと出来る生活だ。




    が、そんな安堵感は今は存在しなかった。

    緊張している。だいぶ。

    いや、怯えていると言った方が正しいか。


    今年の入学生でも軽く三百人は越してるだろう。

    制服の袖を捲って、暴言を吐く男子。

    この場で、厚めの化粧を施して男女に点数評価をつける女子。


    まだクラス発表もないのに騒がしい周りに私は着いていけず、ただただじっと校長を見つめていただけだった。

    校長のお話が終了した後、二言三言くらい教頭がお話した後、一人の男子が舞台に上がった。

    態度が落ち着いていて、見るからに先輩だろう。

    「二年生の生徒会長を務める……ン君のスピーチです。しっかり聞きましょう。」


    その先輩のスピーチ前には私達の学年は沈黙を用意していた。

    きっと半数が寝ていたのだろう。

    私も迂闊だったが、寝てしまっていた。

    その後の事はあまり覚えていなかった。

    ただ、その先輩の事が少し、気になっただけ。

  4. 14 : : 2018/03/11(日) 13:07:04
    しーののさんの書かれるエレヒスがとても好きです
    今回も期待してます(*^_^*)
  5. 15 : : 2018/03/11(日) 16:38:00
    >>14さんに同じ
  6. 16 : : 2018/03/11(日) 21:01:40
    私もしーののさんの作品が大好きです!!
    今回も期待です!
  7. 17 : : 2018/03/11(日) 21:55:08
    >>14 名無しさん

    本当ですか!?そのような言葉を頂けるととても嬉しいです!!

    >>15 GAKUTO「エレクリエレヒス信者」さん

    いつもコメントありです!

    とても嬉しいです!!

    >>16 名無しさん

    照れますね…笑

    ありです!
  8. 18 : : 2018/03/11(日) 21:55:33
    一応短編を目指します。

    一応。
  9. 19 : : 2018/03/13(火) 02:15:27
    アオハルかよ(笑)

    しーののさんお久しぶりです?
    今回も期待しちゃってもいーのかな?

    期待だよー?
  10. 20 : : 2018/03/14(水) 23:44:52
    次の日、校舎の壁にクラス表が貼り付けてあった。




    良かった。私の知り合いはいない。

    拳をきゅっと握り締め、自分のクラスへと足を動かした。






    どしん。


    「あ…すいません。」


    背の高い同級生らしき人物が顔を顰める。


    「ぃ…だ、大丈夫ですよ。」


    …。

    やっぱりそんなすぐには変わらないのね。

    一歩の勇気なんてありゃしない。

    尻餅をついた箇所を叩き、少し痛い足をとぼとぼと進ませる。

    が、また尻元に衝撃が走る。

    階段の目の前に差し掛かった時、その男子は2階の踊り場からここへと大ジャンプで飛んできた。


    「す、すいません!急いでいたも…の…で…」

    「……ぅ、大丈夫です…よ。」

    「あ…そうです…か?で、でも!良ければ保健室まで!」


    何故だか私の顔から目線を外さない男子は余計に誘ってきた。

    見知らぬ人だし、さっきの事もあってか私は今、機嫌が悪い。


    「だ…大丈夫ですので。そ、それでは。」

    「大丈夫に見えないですって!保健室に行きましょう!!!」


    だから、嫌ですって。

    ほんとに少し痛いだけだから。

    こんなにも私に執着して来る人は初めてだった。

    だから、最初は驚きだけだったけど、今はなんかなぁ…

    うんざり。

    断り方も知らない私は黙って走り逃げようとした。

    が、


    「とにかく!行きましょう!」


    キラキラとした汚い笑顔をこちらに向けないで欲しいな。

    それと、私の腕を掴まないで欲しいな。

    周りにいた同級生はもう自分のクラスに入っていて、私達の周りには誰もいなかった。

    保健室には嫌な思い出しかない。

    だから行きたくない。

    まぁ、『この人と』ってもの理由の一つなんだけれども。

    どうしようか迷っていた時、また“それ”は起こった。


    「君?そんなところで初対面の女の子の腕掴んじゃ駄目でしょ。」


    はっきりわかる。昨日の人だ。


    「いや…僕は別に何も…」

    「ほんとに?」

    「本当…です。」

    「ならその腕を離してあげて?彼女、嫌がってるんじゃないか?」


    そうです。嫌です。

    ん?こっち見ないで。

    名残惜しそうに私の腕から手を離した男子はこの数コマの間にもチラチラ顔見てくる…

    怖いな…


    「ほら、まだ怯えちゃってるよ?彼女。君も急ぎの用事があるみたいだし、早く用事済ませてきてよ。」

    「え…でも…」

    「ん?」

    「…俺が怪我させたみたいだ…し。」


    違うと言えば違うけど…

    合ってると言えば合ってる…かな。

    いや、でもここは遠慮して一歩引こう。


    「あぁ。そういう事ね。大丈夫。俺、保健委員にも所属してるから。」

    「…」

    「ほら!行った行った!じゃないと先生に報告するよ!」

    「…すいませんでした!」

    『先生』というワードが出た途端目の色を変えて逃げていった。

    登校初日という怖さからなのかな。

    だとしたら同級生?

    同じクラスじゃなきゃいいけど…


    「おーい?」


    もし、同じクラスならやばいよね。

    早く女友達作らなきゃ。


    「おーい?」

    「…へ?」

    「そそ。君君。名前は?」


    え…この人も?

    でも、さっきの人みたいな感じじゃないし…


    「ヒストリアです…」


    恐怖感からか自然と微かにしか声が出ない。


    「ヒストリアか!了解したよ。」


    あ、聞こえてた。耳が良いのね。


    「それで、ちょっと足見せてみ?」

    「え、ちょ大丈夫ですって。」

    「そういうのが一番危ないんだよ。一応見なきゃね。」

    制服のスカートをほんの少しだけ。

    脹脛半分まであげた状態で私の足の関節を二本指でぎゅっと押した。


    「痛っ…」

    「やっぱり捻挫してるじゃん。ほら。保健室行こう。」

    その先輩が私に手を貸そうとしている様を見て、私がまだ廊下に尻餅をついている事に気づいた。

    「ぁ…りがとうごさい…ます…」

    「うん。ごめんね。今の時間保健師いるか分からないからもしかしたら俺が手当するかも。」

    「…大丈夫ですよ。」


    何故だか好感が持てるこの人と歩いているとまた、“それ”は起こった。


    「あの…あなたのお名前…」

    「ん?俺?俺はエレン・イェーガー。さては昨日の話聞いてなかったな?」

    「は…はい。眠かったので。」

    「あぁ。分かるよ!それ!俺も眠かったから!」

    自然と盛り上がる会話は一瞬でいつの間にか沢山の事を話して、少しだけ、あなたの事を知った。

    二年三組。エレン・イェーガー先輩。

    部活は入っていない。

    沢山会話したのにこれだけ。

    でも、すごく楽しかった。

    自然的に笑みを零していた事も後々分かって赤面。

    それが“それ”の序章であった。


















  11. 21 : : 2018/03/14(水) 23:47:20
    保健室までの道のり。

    さっきの私の腕を掴んだ男子の名が判明した。

    いや、エレン先輩が教えてくれた。

    一年二組。ライナー・ブラウン。

    筋肉質な身体は一部女子からモテそう。

    私は興味ないけど。

    悪い人じゃないみたい。

    ただ、私のクラスは六組。

    校舎も違うし、再び会うこともほぼないだろう。

    なんとなく、良かったと思う。
  12. 22 : : 2018/03/15(木) 00:21:40
    期待!
  13. 23 : : 2018/03/15(木) 23:13:26
    それとなく教室に着き。

    それとなく座席の近くの男女とお話をし、

    一限から三限を熟し、一年生は帰る事となった。

    中学の時と最初は変わらないのね。

    私の存在も変わらない。

    いや、変えたい。

    変えたいが為に三つ編みにしていた髪を解き、黒縁メガネもコンタクトに変えた。

    漫画ならこれで、目立たない女の子が一気に注目の的となり、男子からはモテ、女子からは親しい友人として扱われる。

    はず…なのに。

    元の顔が駄目なもんは駄目なのかな。

    期待していた私が馬鹿だったのね。

    漫画とは全く逆だった。

    男子は遠いところから私を見て、その場友人とヒソヒソと喋っていた。

    ニヤニヤしてて薄気味悪い。

    中にはライナーさんって人みたいに積極的に話しかけてきたけど、顔が蕩けてたから無視した。

    女子はそんな私を見て、舌打ちをし、ヒソヒソと喋っていた。

    軽蔑を覚える目線はすごく痛くて悲しいものだと初めてしった。

    こんなのを知るくらいなら前のままで良かったじゃない。

    心の底から強く思った。

    が、多分明日もこの容姿で登校するだろう。

    何故だって?

    だってさっきのライナーさん事件の事後、


    「ヒストリアってモテそうだよな!」

    「そう…ですか?」

    「おう!髪はサラサラで綺麗だし、目は碧蒼で凛としてるけど、実際そんな事ないっていうギャップが…」

    「も、もう大丈夫ですよ!」


    褒められることなんてなかったし、恥ずかしい!

    頬が紅く染まるのを体温で感じた。


    「そうか?でも、もっと笑えよ?」

    「…?」

    「無表情だと怖いから。ほら!ニッて!」

    「…こ、こうでうか?」

    「ははっ。練習するもんか?」


    そんなにすぐには出ませんよ…

    ただでさえ、なんだか緊張してるし…


    「ま!次会った時は笑えるようになっとけよ!その容姿で笑わなかったらもったいねぇよ!」

    そうやって爆弾を落として去っていった。

    淡いピンク色の爆弾。

    先程の会話をリピートするだけで何回褒められたか。

    すごく。恥ずかしい。

    でも、すごく。

    心地よかった。





    下校中、

    春風共に舞い散る桜の影に歩く彼女の口元は、

    自然に笑っていた。

    それは彼女も気づかないし、

    通りすがりの人も気づかない程度に。



    リピートされる会話の中で、私は何回も“それ”感じた。

    春の音楽に乗せて。
  14. 24 : : 2018/03/17(土) 21:06:17
    すごくいいです!
    ぼちぼち、頑張ってください!
    応援してます!
  15. 25 : : 2018/03/17(土) 22:26:44
    期待!
  16. 26 : : 2018/03/18(日) 23:23:23
    それから数日が経過した。

    クラスの中に数える程だが友達も出来た。

    自己採点で言うと私のクラスの位置は下の中くらいなのかなと思う。

    私に話しかけてきてくれる人もいるし、嫌われてる訳じゃないから。

    割合、中学の時と変わった事と言えば、男子が物凄く話しかけてくる。

    イメージでは散々人気者になっているのに、現実では中々上手くいかないことも分かってる。

    それでも、私は話しかけてくれる人に対して、言葉をかけようとするけれども、相槌だけや、心無い言葉しか当てれない。

    特に、気の強い一軍女子。

    クラスの中で一軍?の位置に立つ男子らに攻め寄っているが、いつもあしらわれている。

    それを慰める二軍女子。

    高校の秩序はある意味、弱肉強食で保たれているに違いない。


    そう言えば、エレン先輩はどの位置何だろうか。

    あの爽やかさならきっと一軍だろうな。

    みんなに期待されて。

    みんなの期待に応えて。

    なんだか尊敬しちゃうな。

    それと、少し妬いちゃう。

    私もそんな人になりたいと。


    授業中、窓の外の浮雲を眺めながら、小さな考え事をした。



  17. 27 : : 2018/03/19(月) 00:10:26
    放課後になると、新人生。いわゆる一年生の入部を集める仮入部期間に入った。

    元から、私は運動が得意ではなかった。

    小、中と運動会の徒競走では万年ビリ。

    しまいにはゴール直前で足を滑らせ動転。

    こんなんじゃ運動部に入っても、基礎練すら出来ないよね。

    友達に運動部を誘われたけど丁重に断った。


    放課後に一人で本屋に立ち寄り、本を買って
    毎日、家で本を読むのも悪くは無い。

    そう結論を出した私は帰宅部にしようと職員室に入部カードを返却しようとした。

    職員室までの道のり。

    少し歩いて曲がり角を曲がる。

    ここには階段がある。

    あのライナーさん事件の階段だ。

    あの出来事が脳内を瞬間で巡る。

    勿論、エレン先輩の事も。



    不意に美味しそうな匂いが鼻へと進んできた。

    どこからだろう。

    甘い匂い。

    パンを焼いた匂いかな。


    一人暮らしでは自炊も達者では生きていけない。

    昔から料理は得意な方だ。

    それでか、朝昼晩、三色きちんと作り、お菓子を作って自問自答したりしている。

    自分で言うのもなんだが、料理には自信がある。

    とっても。美味しそうな匂いだなぁ。

    自然とこの匂いを醸し出す人が気になる。

    どんな人なのかな。

    …匂いの方向を確かめる。

    …どうやら匂いはこの階段の上から下ってきたようだ。


    この校舎の二階は確か、二年生の階なはず。

    階段を上がり終えると、突き当たりには家庭科室があった。

    目の前に来ると、甘くて、暖かそうな匂いへと匂いの詳細が明らかになってくる。

    窓越しからはカーテンがかかっていて、中は見えない。



    どうしよう。

    この匂いの元因も知りたいけど、作っている人も知りたい。

    家庭科室へと身体を向けたり、階段へと身体を戻したりと、心は揺れる。

    少しずつ自信が家庭科室に近付いているのに気づいた。

    廊下窓から見える夕暮れ。

    それは部活動に励む人達に終わりを告げる合図だろうか。





    ええい。

    いっちゃえ。


    ここままだと、この匂いもなくなってしまうのかもしれない。

    焦る私の影は、家庭科室のドアに手を付けた。


    コンコンガラガラ



    「失礼します…この匂いは…って、あれ?」



    自分でも、脳内回路は数秒止まった感覚だった。

    その時は、唖然としていただろう。

    私は何故か言葉が出ず、固まっていた。


    「あれ?ヒストリアじゃん。何しに来たんだ?」


    この顔。

    あの声。

    間違いない。


    「…エレン先輩?」

    「おうよ。」


    理解はした。

    だが、解決はしていない。

    自分の中での。ね?

    運動場側の窓から見えてる夕日がエプロン姿のエレン先輩を輝かせる。

    白を基調としたエプロン姿で袖を捲り、お皿の上には、少しの蒸気を発するクロワッサンが三つ、見事に同形で綺麗だった。

    そんなエレン先輩は、私の憧感をより強深くした。

    そんなにもエプロンが似合うなんて。

    見ただけでわかる、パンの調理工程、焼き加減の上手さ。

    顔が火照り、ニッと白煌の歯を出す様は、

    なんというか。

    素敵で。

    綺麗で。


    「…かっこいいです。」

    「え!?ありがとな!」

    「ほんとに。凄く。かっこいいです!」

    「いやぁ。そんなにも褒めてくれるのはヒストリアだけだなぁ。…礼だ。ほれ。クロワッサン!」


    ポイッと私の両手に投げられたクロワッサンはまだほんのり暖かった


    「さっき焼いたからまだ暖かいだろ?」

    「は、はい!」

    「食ってみ?すごく上手ぇと思うから!」


    サックっと。

    パリッと。

    私はリポーターじゃないから、上手くは言えないから簡単に。一言だけ。


    「美味しいです!」


    精一杯の声を出して、感想を口にした。


    その時のエレン先輩は、ちょっぴり恥ずかしそうで。

    けれども、嬉しいそうで。

    はしゃぐ彼を見て、私はまた、“それ”を感じた。





  18. 28 : : 2018/03/19(月) 17:41:45
    しーののさんの作品は見ていてとてもほっこりします。
    毎回情景描写も綺麗です!続きも期待です!
  19. 29 : : 2018/03/19(月) 22:57:08
    それから少しの雑談を終え、エレン先輩は料理器具の片付けを始めた。


    「あの!私も手伝いましょうか?」

    「いいよ、いいよ!ヒストリアは部員じゃないからな。本当は手伝って欲しいけど。」


    重そうな器具を運びながらも、はにかんで答えるエレン先輩の二の腕はエプロンの袖からでも分かるくらい男筋がある。

    いや、別に凝視なんてしてないけれども。

    してないけれども!

    細そうな身体付きなのに案外筋肉あるな、とか思ってないから。

    本当に。




    考えれば考えるほど、自分が恥ずかしく感じた。

    会話を遡う。

    エレン先輩はさっき入って欲しそうな言葉使いをしてたよね。

    もしかしたら私なんかが招待されてるのかな。

    …いや、自信過剰になっては駄目ね。

    で、でも、もしかしたら僅かな希望が叶うかもしれない。

    ここに入りたいです。と。










    「先輩。」

    「ん?なんだ?」

    「やっぱり私も手伝います。」


    私は小さな器具を手に取って片付け始めた。


    「…」

    「…」

    「…」

    「…」


    終始沈黙の時が訪れる。

    声音はなく、あるのはチクタクと発する掛け時計と、がちゃがちゃとした器具の擦れる音だけ。

    窓の外からは帰宅する生徒で溢れ、窓越しに漏れる声が微かに聞こえる。


    「なぁ。ヒストリア。」

    「はい?」

    「この部活、入りたいか?」

    「え、えっと…」


    この問いかけパターンは答え方に困る。

    肯定すれば、ガツガツして過剰だし。

    否定すれば、先輩をも拒否するようだし。


    「…」

    「あぁ。今のは悪い。この部活、入ってくれるか?」


    エレン先輩は、ぱたんと引き出しを閉め、後ろで作業していた私の方へと体を向けた。

    先輩の顔の側面には夕日が差し掛かり、まるでドラマのワンシーンのような。

    こういうシチュエーションは私だって大好物なの。

    いっぱい青春小説を読んで、いっぱい見返して。

    こんなの、

    こんなの。


    「は、入ります!入らせて下さい!」












    その日はそこまでで私の脳は目を閉じた。

    次の日の放課後。

    昨日みたく、家庭科室に足を運ぶとエレン先輩は入部カードにサインをしてくれた。

    その日は私のリクエストでクッキーを焼いた。

    待機時間は家庭の電力よりも少ない為か、余程の時間を費やした。

    その時間は色々な情報が私の頭を駆け巡った。


    この部活にはエレン先輩しか何故か入っていない事。

    エレン先輩だからこそ一人でも「部」としてやってこれた事。

    自分では食べきれないお菓子や料理は部活帰りの友達や、先生にあげている事。

    一年生の時から一人で頑張ってきたけど、ちょっぴり寂しかった事。


    そして、



    「これから二人でこの部活を支えあっていこうな!」







    私は一度(ひとたび)、ある小説を思い出した。


    それは何故だか、私の心をきゅっと締め付ける。

    優しく、綺麗に。乱暴に。残酷に。

    相対峙する言葉は良くも悪くも、とてもよく似ている。

    私はまた、“それ”を感じた。

    “それ”とは恋愛小説には絶対条件で書かれている言葉。

    魔法の言葉。





    私は初めて、恋をした。

  20. 30 : : 2018/03/20(火) 01:58:19
    青春を感じますね。期待です!
  21. 31 : : 2018/03/25(日) 17:15:01
    ほぅちしなぃでね!はーと
  22. 32 : : 2018/03/25(日) 23:31:31
    >>31 名無しさん

    放置はしておりません!

    毎日執筆していますが、投稿するかしないかで悩んで結局投稿しない日が続いています。

    すいません。
  23. 33 : : 2018/03/26(月) 23:19:13
    頑張れ
  24. 34 : : 2018/03/28(水) 08:04:30
    ゎかりました!
    がんばってね!
  25. 35 : : 2018/03/28(水) 09:43:45
    楽しみに待ってます!
  26. 36 : : 2018/04/01(日) 00:02:14
    その日から先輩と部活の事、仲のいい関係を作りたいと連絡先を交換した。

    最初は私の早とちりで返信が着てはすぐに文字を並べて送信して…

    けれども先輩は私に乗ってくれた。

    二週間もすると、夜に最低限の会話をちょこっとだけするくらいには落ち着いた。

    もっと話したいけど、話しすぎたら引かれちゃうよね。


    メールでエレン先輩の周りの事情をなんとなく理解出来た気がする。

    幼馴染の二人が幼、小、中、高と同じ校に上がってきて、今でも毎日のように登下校をしている事。

    バレンタインデーの前日、当日には女子に家庭科室を占領されては買ってきた材料や調味料が底を突くしまう事。

    教室と材料を貸してくれたお礼という名目の義理チョコをその二日間は大量に貰う事。

    多すぎて食べきれず、男友達に上げると軽蔑の目線が痛い事。



    いつもは携帯に向かって真顔で文字を打つのに、先輩とのメールには頬が緩む。

    きっと、恋色の薄紅色なのだろう。


  27. 37 : : 2018/04/01(日) 00:42:46
    連絡先の交換は別にエレン先輩だけで良かったが、それを指摘されたあげく、無論、そんなんじゃ友達が出来ないと軽く罵倒された。

    それからクラス大半の女子。

    それとちょっぴり男子。

    あ、あと何故かライナーさんも。



    学校ではあまり話しかけてこない男子もメールになると性格も言葉遣いもコロッと変わるのね。


    そんな一例。

    〜〜〜

    「急で悪いな。レンズ。今度の休み俺と二人で遊園地行こうぜ!」

    うん。凄く急ですね。あと、そんなに話した事ないのに大丈夫なの?

    ~〜〜

    「なぁなぁレンズ!お前家庭科部なんだろ?俺に料理作ってくれ!」

    多分塩と砂糖を間違えちゃうからごめんね。
    故意的に。
    あと、私が部活に入ったってどこで知ったのかな。

    〜〜〜

    「ヒストリア!俺の家に泊まりに来ないか?」


    直球過ぎて言葉が出ません。
    強いて発言するなら…



    先輩に言われたら……



    ………//





    ……馴れ馴れしいです。

    〜〜〜

    クラス女子とのグループメールにも参加した。


    大半は男子への罵声と陰口。

    あとは純粋な恋愛相談。

    学校から家に帰るまでの僅かな数十分。

    それでだけで通知四百件は軽く超えていた。

    確認する度に増えていく。

    〜〜〜

    「それでね。○○君ったらほんとに酷いの!」

    「サイテーだね。それ。」

    「それでも、○○君とか○○君とか…○○」

    「○○○○○○…………………………」

    「○○○○○○○○○○…………」

    〜〜〜

    もう何人で会話してるのかわからないくらい通知音が携帯に鳴り響く。

    持ち手、熱いもん。

    大丈夫かな。結構高かったんだけど。


    ゆっくりと会話を見る暇もなく、うんざり気分な私は適当に下へ下へと画面をスライドさせていた。









    スライドしている人差し指がふと止まる。

    今しがた何かひっかかる言葉が見えた。

    少しずつ、上へ上へとスライドさせる。





    以外と簡単にその言葉は見つかった。

    〜〜〜

    「エレン・イェーガー先輩知ってる?」

    「うん。入学式の時、いた人でしょ?」

    「そそ。」

    「その人がどうかした?」

    「あ、それがね…その先輩の…」

    〜〜〜



    画面が黒くなった。


    「はぇ?」


    思わず声も出た。



    ぶぶんと機械音を鳴らし、私の携帯は光を失くした。

    理由は勿論バッテリー切れ。

    近くに友達がいたら突っ込まれていたでいただう。

    そりゃみんな喋りすぎだと。





    肝心な箇所を見逃した私の視神経と、旧世代の携帯を呪いたい。


    「充電し終わったら何件来てるんだろ…」


    そっちかい!とツッコまれるであろう彼女。


    口ではそう言ってるものの、本心はわからない。

    ただ、彼女は急いで。

    これまた急いで充電器にケーブルを差し込んだのは間違いなかった。



    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


    しれっと投稿。

    二つ投稿したので許して…


  28. 38 : : 2018/04/01(日) 08:56:05
    うわーーー期待!!
  29. 39 : : 2018/04/01(日) 10:04:33
    (≧Д≦)ンアーッ期待
  30. 40 : : 2018/04/01(日) 16:15:56
    期待すぎる!!!
  31. 41 : : 2018/04/01(日) 21:58:58
    今回も神ssになるのか。。。

  32. 42 : : 2018/04/02(月) 00:08:15
    充電開始から時計の微小針が一周する前に瞼に重いシャッターがかかった。

    一言で言うと寝た。

    何かの夢を見てた気がするけど思い出せない。

    悪夢か良夢かわからないくらいちっちゃな夢だと自分で解釈し、睡眠前の目的をふと思い出した。

    寝起きにもかかわらず、私の手はいつもより素早く携帯を手に取った。

    コンタクトをしたまま眠ってしまったからか、少々眼球が痛い。

    が、ぐっと眼球に力を込め、萎む瞼を無理矢理開けた。


    案の定、通知は表示される数字よりも遥か上へと昇っていた。

    現在進行形で。

    自分の睡眠は浅かったのかと掛け時計を見上げる。



    チク。




    チク。





    チク。




    うん。一時間は経ってるよね。

    なのにこんなにも盛り上がっているのはなんでなんだろうか。

    このクラスには暇人しかいないのかと心でツッコミ。

    いくらスクロールしても先程の会話部分は出てこない。


    「見つからない…かぁ。」


    しょげていても鳴り止まない通知音。

    いや、通知音消せば良いって話なんだけれどもね?

    もし、先輩からのメールだったらってなると…ね?

    わかるでしょ?








    誰に話しかけているのだろう。

    自分が馬鹿みたい。

    ベットに携帯を放り投げ、カーテンを開け、窓を開け、夕暮れ時の紫空に背伸びした。



    ピロロン。

    ピロロン。




    …今伸びてるところなんだから待ってよ。

    誰かな。

    ひっくり返った携帯を手に取り、その発信者の名を見る。







    三秒ほどの硬直。

    名前が分かるのに脳に入らない。

    緊張?困惑?熱情?

    分からないが、目を丸くしたまま指も動かない。


    「うへぇ?」


    変な声出ちゃった。


    人間、怖くなった時は何も出来なくなる。

    身体は勿論、声をも出す事が出来ない。

    それと似た感触だよ。

    まぁ、今は怖い時じゃないけどね。


    カラスの鳴き声と共に春風がそよそよと靡かせて胸元を締め付ける。

    今よ。今が肝心よ。

    春風は無音で私の耳に響いた。


    すぅぅぅ。

    ふぅぅぅ。


    深呼吸一回。

    これだけでどれだけ身体が軽くなるか。

    親指が通話マークを味占めるようにタップした。



    「はい。もしもし!」

    「お?やっと出たか。遅いぞ?」

    「ごめんなさい!緊張しちゃって。」

    「緊張?あはは。そんな事あるかぁ…」


    ふふっ。

    ははっ。



    電話越しに二人の笑い声が響き合う。

    彼女はとても。


    嬉しそう。


    一つ年上の彼は、











    とても。















    哀しそう。




  33. 43 : : 2018/04/02(月) 00:55:19
    期待です
  34. 44 : : 2018/04/02(月) 09:01:11
    やばい期待
  35. 45 : : 2018/04/03(火) 18:18:27
    思い悩んでます。
    こんな作品を見て下さる数少ないお方々への
    アンケです!

    1→この作品をもっと見たい!長編にして欲しい。

    2→さっさと完結させて他作品、新作品を出して欲しい。


    >>50まで確認します!
    どうかご回答よろしくです
  36. 46 : : 2018/04/03(火) 23:37:38
    やっぱり>>48までにします。
  37. 47 : : 2018/04/03(火) 23:44:48
    迷ったけど1で!!
    これからも期待です
  38. 48 : : 2018/04/04(水) 00:16:11
    1でお願いします、それから期待です!
  39. 49 : : 2018/04/04(水) 10:01:01
    >>47 名無しさん

    >>48 セシルさん

    回答ありがとうございました!

    期待ありです!

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    100スレ超えたら頑張ったって証拠。
  40. 50 : : 2018/04/04(水) 10:24:05
    他クラスにも友達が出来る頃。

    梅雨の時期を終え、夕暮れ時が遅れを見出す七月。

    一年生の最大行事といっても過言ではない日が近づいてきた。

    最大行事なんだから二学期とか三学期の方が生徒としては嬉しいんだけどなぁ。

    試験や他の行事の都合上、不遇なこの時期になってしまった宿泊学習。

    二週間前には就寝班、行動班。そしてバス席やレクリエーション等を決めた。

    最大四人の就寝班は仲の良い友達と同じ班になれた。

    言葉遣いは男臭いけど稀に見る優しさはとても女性らしいユミル。

    The・女子の称号を持つバカ真面目なミーナ。

    食い意地が強固で、私と同じで今年引越してきたサシャ。
    私よりも遠くから引っ越してきたんだとか。


    最大六人の行動班は男女混合で決めた。

    先生からは男女対比同じにしろよ的な事言われてたけど、誰も聞かなかった。

    私達を除いては。

    ミーナは別の班に行っちゃったけど、ユミルとサシャは私と同じ班になってくれた。


    「ごめんね!ヒストリア。でも、寝る時はオールで喋ろうね!」

    気遣ってくれたのだろうか。

    ちょっとした背徳感なのだろうか。

    微妙な表情を見せる彼女の感情は分かりずらい。

    でも、


    「うん!いっぱい喋ろ!」


    楽しみは少しでも多くした方が良いよね。

    取り敢えず肯定した。


    作り笑顔で。
  41. 51 : : 2018/04/04(水) 10:44:25
    四月、私は無笑の高嶺と言われていた。

    実際、笑う事は部活の時か、先輩とメールや電話をする時以外あまりなかったが、心に突き刺さった。

    なんとか笑顔を“作ろう”と頑張って、頑張って。

    調べて。

    聞いて。

    結局、どれも自分に合わないものばかり。

    が、解決策はすぐに見つかった。


    「笑い方が分からない?」


    まぁ、それは単純に人間として普通の疑問だろう。


    「はい。クラスの中で無笑の高嶺とか言われてるんですよ!?」


    「ははっ。貶してるんだか、褒めてるんだかわからないな。それ。」


    苦笑しながら先輩は答えた。


    「部活の時はよく笑ってるんだけどなぁ。」

    「クラス内では全然笑えないんです。」

    「そうか。なら、“作り笑顔”はどうだ?」

    「作り笑顔?」

    「おう。但し、俺には絶対“作り笑顔”は見せるなよ?」


    ? それは疑問。


    「な、なんでですか?」

    「………嫌いだからだ。」

    「そ、そうですか。」


    やけに長い間をとってまで嫌悪した。

    理由は…聞かない方がいいだろう。


    「ありがとうございました!頑張ってみますね!」

    「おう!…ヒストリア。」

    「はい?」

    「絶対に慣れたら駄目だからな。」

    「? 分かりました。」

    「じゃ。」


    切信音が流れた。

    意図が理解出来ない言葉を残して。



  42. 52 : : 2018/04/04(水) 11:03:24
    期待!!!!
  43. 53 : : 2018/04/04(水) 11:11:09
    五月、ようやく作り笑顔を完璧に仕上げる事が出来た。

    まだ、沢山喋る事は出来ないけど。


    〜〜〜

    前席からプリントを送ってくる男子。

    「ありがと。」

    ニコッ。


    「あ、おうぅぅ!!!」

    〜〜〜

    隣席の男子と会話をする時も。


    「○○○○だよな!」

    「うん。そうだね。」

    ニコッ。


    「これは……」


    じゅる。と唾液を飲み込む音がしたが気付かぬふりをした方が良いよね。


    〜〜〜

    ユミルの場合。

    「ね!ね!ユミル。」

    ニコッ。


    「……あっ。そうだな。」


    私の顔をずっと見てくるのは何故?


    〜〜〜

    五月中旬、私の机の中に一通の手紙が入っていた。

    ………これはっっ!?





    ヒストリア・レイスさんへ。

    貴女の笑顔に心と体が堕ちてしまいました。

    貴女の側に居られる事が出来るのなら僕はとてもとても感激です。

    貴女を絶対幸せにします。

    どうか、お返事下さい。
    ×××××より





    私。初めてラブレター?というものを貰いました。

    とってもとても。嬉しいです。

    とても綺麗な字で。何回も書き直した後が残ってるよ。


    「ふふっ。頑張ったんだなぁ。」

    「何がだ?」


    独り言のつもりで小さな声で言ったんだけれどもユミルに聞こえていたらしい。


    「いや、これ。見てよ。頑張って書いたって伝わるよね。」

    「あぁ。こいつか。」

    私の問いかけに相互せず、ユミルが喋り始めた。

    こいつ?

    あ、名前ちゃんと見てなかった。


    「こいつはやめとけよ?」

    「うん?付き合うつもりはないよ?」

    「そうか。ならいいんだ。」



    ユミルの否定の意味がわからない。

    ユミルから手紙を取り、名前を確認した。

    …?

    「これ、誰?」

    「えっ。知らないのか?」

    「うん。知らないの。」


    初めて貰った嬉しさなのか、この人に興味を持った。

    誰かは知らないが。




    それは要らぬ興味。

    彼女は知らない。

    ストーカーって言葉を。
  44. 54 : : 2018/04/04(水) 14:44:26
    やめたげて~( ;∀;)
  45. 55 : : 2018/04/04(水) 15:30:53
    期待すぎる!!!
  46. 56 : : 2018/04/06(金) 19:13:15
    バットエンドですか?
  47. 57 : : 2018/04/08(日) 08:31:20
    >>56 名無しさん

    “甘酸っぱい”アオハル物ですね。

    答えになってなくてごめんなさい。
  48. 58 : : 2018/04/08(日) 10:15:07
    期待!!!
  49. 59 : : 2018/04/08(日) 12:22:40
    教室授業が終わり、次は体育だからなのかユミルはいつも以上にぐうの音を走らせる。

    ユミルだけじゃない。

    他の一部女子も同じ事。


    「なんで体育とかあるのかしら。」

    「汗かくし髪が乱れるし嫌なんだけど。」

    「ほんとよ。ほんと。」


    私?私は別に嫌いじゃないよ。

    ただ、飛び跳ねるだけで拍手が貰えるから。

    まぁ、主に男子からだけど。

    授業中、寝ている男子達も体育となればその有り余った体力を大いに使っている。

    教室授業終了のチャイムが鳴れば男子の感怒の声が教室を撒き散らす。


    「よっしゃぁぁぁ!体育だぁぁぁ!」

    「今日こそはジャンなんかには負けねぇからな!」

    「あぁ?チビ坊主野郎。何言ってんだ?」

    「え?今日サッカーだろ?」

    「違ぇよ。今日は走り幅跳びだ。」

    「あー?そうか…なら勝負だ!」

    「良いぜ?いつものように勝ってやるよ!」


    いや、コニー。どれだけジャンに負けたくないの。

    ジャン。めっちゃドヤ顔ジャン…





    しょうもないギャグは脳内から突き落とさないとね。

    されど、二人とも。

    教卓の上でそれ言うかな。普通。


    「ヒストリア。着替えに行くぞ?」

    「あ、うん!わかった!」


    ユミル。ありがと。

    もっと寒いギャグ思いつきそうだったからね。


    「何笑ってんだ?」

    「んー?なんとなく。ふふっ。」


    思わず笑みが溢れる。


    カシャ


    「? ユミル。何か言った?」

    「ん?別に何も言ってねぇよ。」

    「そう。」


    気のせいかな。

    まぁいいや。

    着替えに行かなくちゃ。


    カシャ






    男子も女子も着替えが終わり、教室には誰もいない…はずだった。


    「これがヒストリアちゃんの筆箱か。」

    すんすん。

    「はぁぁ。もっと。もっと。」


    クラスにはいない男。

    人からあまり好かれない類の男。

    そんな男が舐めるように好意を送る彼女の筆箱を“触って”いた。

    誰にも気づかれまいと。

  50. 60 : : 2018/04/08(日) 12:26:46
    上のスレ、なんかbadendに進んでるっぽくなってますね…

    一応、もう一度言っときます。

    “甘酸っぱい”アオハル物です。
  51. 61 : : 2018/04/08(日) 14:50:32
    きたい!
  52. 62 : : 2018/04/12(木) 22:42:13
    やばい。やばい。

    気づけば4日更新せず…

    はっきり言います。

    サボってました。

    ごめんなさい!
  53. 63 : : 2018/04/12(木) 23:26:19
    今日は男女混合で体育になった。

    運動場は工事で使用不可とか言ってたかな。

    それを先程知らされた男子達は不機嫌の黒気で覆われていた。


    「なんで体育館なんだよ!」

    「男女混合とかやる気ねぇわー。」


    とか言いつつ、こっち見ないでよ。

    いや、すごく見てくるよ。

    怖いよ。ユミル。助けて。


    「はぁ。男子とか一緒とかだるいわー。」

    「ほんと。なんでなのかなぁ。」


    いや、貴女達、髪を触りすぎでしょ。

    ん…

    臭ぁ…

    誰ですか。香水を大量に使用したの。



    だんだん香水の匂いが近くなってきたな。

    だんだん…

    だんだん…


    「おぉ!ヒストリア!ここにいたのか!」

    「んぐっ。ユ、ユミル?」


    思いっきり抱擁を強いられた私の足は体育が始まってもいないのに疲労を利かす。

    身長差考えてよ…

    重たい…


    「寂しかったか?私が癒してあげよう!」

    「重った……痛っ!」


    私を覆うように抱擁してくるユミルの圧力に耐えきれず、背面から床に落衝した。


    「だ、大丈夫か!ヒストリア!」


    ユミルの顔が一気に青さを増した。

    加害者の第一声が大丈夫かって…


    「う、うん。大丈夫だよ。」


    ここで責めてもお互いにメリット無いし、やめとこ。


    「ごめんな!?わざとじゃないんだ!」

    瞬間的に土下座まで行うユミルは余程私を心配してくれてるんだろうか。

    …自信過剰すぎだよね。


    「大丈夫だよ。ほら、立てるし。」

    「お、おい!膝から血が出てるじゃないか!保健室行こう?」

    「あ、私の机の中に治療セットあるから大丈夫だよ。」

    「そ、そうか?なら私も一緒に…」

    「こんなの私一人で十分だよ。」

    「わ、わかった。ごめんな?ほんとに。」

    「良いよ。大丈夫だから。」


    今のユミルとこれ以上一緒にいたら危ない気がする…



    教科担任の先生に事情を伝え、自クラスへと足を運ぶ。

    体育館から自クラスまでは僅かな廊下道と階段しかない。

    階段にさしかかる頃にはもう血は止まっていて、脹ら脛に垂れた流血も既に動きが無くなっていた。

    痛みはまだあるけどね。


    とりあえず、三階の水道場を使って足を洗おう。

    それから教室に入ろうかな…

    と、考えている時にはもう自クラスの目の前だった。

    水道場はこの奥の正面。

    何も考えずに水道場にヒリヒリと感じる足を運ぼうとした。

    した。

    …?

    自クラスに疑問を感じる。

    両サイドのドアは鍵をきっちりと閉められているのに、一枠の窓だけが少し開いている。

    おかしいな。

    今日、私は鍵閉め当番だ。

    与えられた仕事は真面目に熟す事で先生からの評価は少し上がった。

    閉めるだけでお礼を言ってくれる。

    それが密かな楽時として身に感じる私は体育館に行く直前、男子が全員出た事を確認した上で教室に入り、窓もドアもきっちり閉めたはず。

    なのに、開いている。

    泥棒?いや、そんなわけないか。

    まぁ、とりあえず、足洗おっと。



    彼女はその場では何もせず、奥の水道場へと進んだ。

    教室に潜む一つの影を見落として。

    ガサガサと衣類を漁る嫌音は工事の爆音でかき消されていた。
  54. 64 : : 2018/04/12(木) 23:27:21
    補足→自クラス(自分のクラス)
  55. 65 : : 2018/04/13(金) 00:05:07
    冷水で濡らしたハンカチが傷に染みる。

    痛っ…

    歯を食いしばりながら、ちょこちょこと流血を拭いていった。

    今の顔はきっと恥ずかしい顔をしているんだろうな。

    先輩には見せれないや。

    とか思っちゃったり。



    いけない。いけない。

    また先輩の顔が出てきちゃった。

    夕紅の赤面をしながら、慌てて首を振った。

    ついでに顔も洗おっと。

    ばちゃ。ばちゃ。ぐっ。


    「ふぅ…よし。行こ。」


    自クラスの方向へと体を向ける。

    僅かに耳に階段を下る足音が響いた。

    リズムが早いから慌ててるのかな。

    特に何も気にせずにその音は消音と化した。


    「…あれ?」

    窓が閉まってる。

    ぐっぐっ。

    鍵もちゃんとしてる…?


    「え?」


    この場には一人という事もあり、急に寒気を感じた。

    首元の鳥肌が騒ぎ始める。

    依然、両サイドのドアは閉まったまま。

    恐怖心もあるが、この場から離れるという事は考えなかった。

    消毒したいし。

    絆創膏貼りたいし。


    いつも以上に慎重に鍵を開けて、ドアを開いた。



    何も変わったことがない?

    風景は見た目同じ。

    教室の中をじっくり観察した。


    「なんだ。特に何も起きてな……」


    鳥肌が再度立つ。

    先程より身震いした。

    自分の机の上に置いていた筆箱が“空いている。”

    “開いている”のも確かな事だけれども、“空いている。”

    中身がない。

    足元を探しても、ない。

    心拍が上がってきているのも気に止めず、他の持ち物があるか確認した。

    教科書は、ある。

    机の中は何も盗まれていなかった。



    そうだ。

    鞄。

    机の横にかけている鞄は、悪予想が当たった。

    ファスナーを無視して力ずくで開けたのであろうか。

    持ち手は引きちぎられ、ファスナー辺りから破られていた。

    …鞄の中身は既に空っぽ。



    ……

    ………


    怖くて。

    気持ちが悪くて。

    逃げたくて。

    涙が溢れて止まらない。


    携帯も。
    財布も。
    メモ帳も。

    そして。



    「ぁ…ぁ…エプロン返してよぉぉぉ!!!!」


    エレン先輩に選んで貰ったエプロン。
    エレン先輩に買ってもらったエプロン。
    思い出をいっぱい収納しているエプロン。

    まだまだ収納出来るはずなのに。




    「ぅ…どうして?どうして?どうしてなの!!」


    ぐすぐすと泣き止まぬ涙が体操服にぽつり。ぽつりと落ちる。

    滲んでは、消え。

    滲んでは、消え。

    その繰り返しが終わる頃にはチャイムが鳴り響き、彼女は魘されるように、

    倒れた。
  56. 66 : : 2018/04/13(金) 16:13:55
    期待です
  57. 67 : : 2018/04/13(金) 16:33:22
    期待!!
  58. 68 : : 2018/04/13(金) 18:57:25
    期待〜!!!
  59. 69 : : 2018/04/13(金) 22:37:11
    ※某サイトの小説や、某アプリの小説のように上手く執筆する事は出来ません。

    なのであまり大きな期待はしないで下さいね?笑

    でも、期待コメはすごく嬉しいです。
  60. 70 : : 2018/04/13(金) 23:11:42


    涙が乾燥して肌に付着している。

    そよ風がその肌に当たって痛みを連れてくる。

    意識はそこで機能を取り戻した。


    目を開けるとそこは綺麗な白天井だった。

    家の枕ではない硬い枕が後頭部を支えている。

    保健室か。

    首を窓へともっていくと、カーテンが舞い動く向こう側でガヤガヤと騒がしい生徒が走り回っている音がした。

    ボールを蹴る音だったり、

    ボールを打つ音だったり、

    並ぶ掛け声の音だったり。


    何気なく時計を見た。

    予想は…的中。


    「もう部活の時間帯かぁ。はやく先輩のとこ行かないと。」


    上半身を起き上がらせたところで安吐の余地もない記憶が鮮明に焼き上ってきた。

    ここに運ばれる前の悪夢を。


    「あ、あぁ。そうだった。先輩に謝らなくちゃ。」


    犯人を探すよりも、先輩に謝罪をする事を選んだ彼女はおかしくなったのかもしれない。

    泣き疲れて吹っ切れたのかもしれない。


    「…どうしようかな。先輩に嫌われるのかな。」


    違う。

    違うでしょ。

    そうじゃない。と彼女を正す人さえ、ここにはいない。

    眠気は彼女を襲う。

    それを何も動じずに受け入れる。

    目を閉じて。手を絡ませる。


    「夢って夢で寝たら起きるんだっけ。」





    ……


    ………


    結局、人はこうやって壊れていくのだろうか。

    自分を指摘してくれる人がいなかったら。

    自分を注意してくれる人がいなかったら。





    ……

    彼女の睡眠はふとした時に突然終わった。


    見たところ、ここには保険医もいないみたい。

    特にやる事もなく、窓の外の運動部を見つめてた。

    あ、ライナーさんだ。

    サッカー部だったんだ。

    意外だなぁ。

    アメフト部とか入ってそうだったのに。

    あ、この学校はアメフトなんてないか。


    「ははっ。私ったら馬鹿だなぁ。」



    きっと、彼女を注意する人が現れても、彼女は
    何も耳を傾けないだろう。

    だって。夢だと思ってるから。


    「…んぅ。」

    だらしない開き方で口を開け、背筋を体の芯と並行に伸ばした。


    「…さて。教室に戻って鞄とって来よ。先輩が待ってるからね。」


    小さな両手で二つの拳を握り、眠気を覚ます。

    ただ、“体は震えている。”が。


    それに静止をかけたのはドアのノックの音だった。

  61. 71 : : 2018/04/14(土) 18:34:14
    もうほんとに期待です〜!!
  62. 72 : : 2018/04/14(土) 23:01:06
    いい作品です!
    期待しています!
  63. 73 : : 2018/04/15(日) 16:59:53
    この作品はまだまだ続きますが、先を見越してのアンケです。

    皆様の意見ばかり聞いてすいません…

    この作品が終了した場合の事です。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    1,「遠い過去には近くの未来」の執筆再開。

    2,「クリスタ先生の診療所」の続編。

    3,新作品(エレヒスまたはエレペト)の執筆。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    どれが良いでしょうか?

    >>78までが対象とします。
  64. 74 : : 2018/04/15(日) 17:02:55
    名無しさんは対象外とします。

    用が増えますが、名前かトリップを入力お願いします。
  65. 75 : : 2018/04/15(日) 17:12:24
    迷うけど1で!

    期待!
  66. 76 : : 2018/04/15(日) 18:30:48
    2でお願いします!
    これからも期待です!
  67. 77 : : 2018/04/15(日) 21:48:10
    2かなぁ〜
    続編気になるから
    ゆっくりでいいので頑張ってください!
    期待です!
  68. 78 : : 2018/04/15(日) 21:53:36
    2でお願いします
    これからも楽しみにしてます!
  69. 79 : : 2018/04/16(月) 22:01:03
    了解です!
    こちらの作品の執筆が終了次第、2に移ろうかなと思います!

    >>75 鈴さん
    >>76 ススさん
    >>77 (`・ω・)bグッ!さん
    >>78 ラルさん

    ご回答ありがとうございました!
  70. 80 : : 2018/04/16(月) 22:34:19
    真空の時々。

    換気扇の音と微かに香る砂の匂い以外に何があるのか。

    仮にも私は保健室で寝ている。

    第三者からは病人とも思われるような風景に佇んでいるのに、訪問者は目の前の丸椅子に腰をかけたまま、窓の外を見ていた。

    薄々気づいて…いや、はっきりと気づいていた。

    あれが夢では無い事が。

    訪問者。先輩の顔色は正にそれを知っているかの様。

    何かを待っているのだろうか。

    私の第一声を待っているのだろうか。

    そうだとしても、私は何も言いたくない。

    一番会いたくて。一番会いたくなかったから。

    それを知られるのが怖かったから。

    何より、

    それを彼に告げられるのがとても怖かったから。

    私から話せば、それを否定する形からしか話す事が出来ない。

    事実である事は変わりないが。




    ころん。




    何の原因もなく、薬瓶が棚から落ちた。

    私と先輩は同時に目を向けた。

    何かのスタートを切るように。


    「……ヒストリアもあんな風に倒れたんだってさ。」

    「そう…ですか。」


    緊張していたからなのか。それとも、口を動かす事が疎かになっていたせいなのか。

    寝起きのような枯れ声は一文を辿った。

    見た事のない顔。

    今日の全てを悟られた感触が心に刺さる。

    彼は、何かを濁すように席を立った。

    徐に窓を開け、まだ夕日に差し掛かる直前の日を浴びて、背伸びを一つした。


    「んんー!今日は休部にするか?」


    それは突然の投げかけ。


    「え…?でも、先輩は先輩達のお菓子を…」

    「心配すんなって。一日くらい大目に見てくれるさ。」

    「そう…で…すか?で、でも。」

    「良いんだよ。今日はちょっと出掛けようぜ。ヒストリアが大好きそうな喫茶店見つけたんだ。」

    「…はい。行きます!」




    ……


    ………

    彼なりのフォローのつもりなのだろうか。

    それならちょっと不合格かな。

    強引過ぎですよー。

    ふふっ。かっこいいですよ。

    ありがとうございます。



    「どうした?」

    「先輩は不器用ですよ?」

    「…なんの事か分からないな。」

    「ささっ。行きますよ!」

    「お、おう。」


    先輩。今だけその不器用さに乗っかってみます。

    嫌な事忘れて、楽しみます。

    まぁ、出来るか分からないけどね。




    彼女は男が開けたカーテンと窓を閉め、“無表情”で保健室を後にした。


  71. 81 : : 2018/04/16(月) 22:55:59
    アンケート出遅れちゃった(^^;)
    久しぶりに読ませてもらったけど
    タイトルからもこの先どうなっていくのか
    (自分は)想像できないので余計面白く感じます
  72. 82 : : 2018/04/17(火) 23:52:20
    まだ準備運動中のグラウンドからは掛け声の数字が四方八方から飛び交っている。

    そのリズムを足で弾みながら下校した。

    時刻は四時を通り過ぎた頃。

    中学生も部活をしている時間だからなのだろうか。

    いつもなら横一列に並んで帰る中学生の姿が道行く道に見えない。


    「ここを右だな。」


    いつもは曲がらない道を曲って商店街に入った。

    この時間帯は主婦達が目の色を変えて食材の安売りに食い入っている。

    肉屋さんも、魚屋さんも、野菜売り場のおばあちゃんも。

    出来るだけ沢山売ろうと必死に客を引き入れ、少しの値下げで黒字に近づけようとしている。

    そんな必死さが愉快で。

    先輩も群れと化する主婦に苦笑い。


    「すげぇな。あの人らは。」

    「目の色が違いますもんね。」

    「そうだな。お。ここを左だ。」

    「へげっ。」

    店と店の間に聳える小さな裏路地に入り込む。

    それも唐突だったのだから、反応しきれないよ。

    ぐっと力を込められ、手を引かれ。

    群れの中を掻き分けて、強引に進んでいった。


    「おっと。ごめんな。無理矢理だったな。」

    「い…いえいえ。大丈夫です…よ。」


    うん。

    正直に言えば疲れた。

    それに顔が痛い。

    群は互いに互いを反り避け合い、火種をあちこちに飛ばす。

    その火種が何も知らぬ自分に当たったのだ。

    如何せん、自分は身長が人より“少し”ね。“少し”だよ?

    …まぁ、それだけ低いんだから自分の顔の位置に群の主将とも言える奥様のラリアットが飛んできたわけですよ。


    「痛い…」

    「大丈夫か?ほれ。見せてみ。」


    先輩の手が私の頬に添えられる。

    あ、これは。

    いつかの保健室の時みたいな。


    「ふふっ。先輩は変わらないですね。」

    「そうか?」


    まぁ、まだ初めて会ってから数ヶ月しか経ってないんだけれども。


    「お前は変わったよ。」

    「そうですか?」

    「おう。だってさ。」

    “心の無い笑顔が無くなってるからな。”


    え?

    自分でもそんな自覚はなかった。

    自分は心の無い笑顔を人に向けていたって事?

    なんだか、それはそれで…


    「先輩って何かと失礼ですよねっ。」

    「お、おい。何怒ってんだよ。」

    「なんでもないですっ。早く連れてって下さいよ。」


    頬を膨らまし、半分冗談で言葉を繋げた。

    きっと先輩もそれを分かって冗談を繋げてくるのだろう。

    そう思った。






    ぎゅっ。






    「え?」


    わからない。

    ただ、わからない。

    一瞬で目の前が黒一面になった。

    ハグ。というよりかは抱きしめられる?いや、そんなものではない。


    「ど、どうしたんですか?先輩?」


    私を両手で閉じ込めた先輩は痙攣を起こしたかのように震え始めた。

    頭も固定されて顔も見れやしない。

    ただ、
    ひっぐ、ひっぐ。と、涙を流しているのは先輩の鼓動が激しく動いていたので理解した。


    「…頼む…怒らないでくれ!頼む!もう嫌だ!嫌なんだよ!消えないでくれ!!……頼む…」






    傍から見れば、カップルがハグしているように見えるのだろう。

    もし、私が第三者なら心で舌打ちをして去るだろう。

    誰かから貰う抱囲は初めだった。

    少女漫画でみたような、優しく包み込む。そんな感触は一切しなかった。

    泣きじゃくる先輩のまだ見ぬ顔を想像しながら、そう考えていた。

    ドキドキなんてしなかった。

    私にはわからない。

    何が?

    どうして?

    言葉に出来るのは、


    「…先輩?」


    ただ、この一声。
  73. 83 : : 2018/04/20(金) 23:03:55
    先輩が泣き止むまではあれからすぐの事だった。

    その後、ケロッと純笑を映し、薄汚くない路地裏に入った。


    「えっと…あ、こっちかな。」


    横から見る(ちょっと下からだけど)先輩の目は薄かった。

    目を細め、一所懸命に店物の看板を探していた。

    探す?

    あれ。見つけたとか言ってなかったっけ。


    「お!あれだ。あれ!」


    見つけたのは、もう何年も交換していないであろう看板が小さく佇む黒木の喫茶店だった。

    窓からは埃で店内が見えず、薄い明かりが蝋燭のようにも見えた。


    「これ…がですか?」

    「 何がだ?」


    疑問は疑問で返された。


    「この店が先輩の言っていた店ですか?」


    今度は丁寧に。


    「あぁ。そうだ。」


    何故、自身満々に我を貫くような顔をしているのだろうか。

    先輩が見る先は、その店。

    いや、汚いし。見た目がね。

    それに…汚いし。



    汚いし。

    埃で店内が見えないんだもの。しょうがないよ。

    その一言しか評価出来ない。


    「ま、まぁとにかく中に入ろうぜ。絶対に気に入るはずだ。」


    肩に手を置かれ、体が少し火照る。

    火照ったのが運の尽き、店内に引きずるように私はするりと店内に入ってしまった。

    絶対店内も汚いよ。ほんと。

    こんなの、料理も珈琲も不味いって。



    不服な気持ち全開な少女がドアノブに手をかける。

    カラリン。

    小さくも美しいベルの音がドアを閉めた。


  74. 84 : : 2018/04/20(金) 23:16:16



    ……


    ………


    はい。ヒストリアです。

    今、私の目の前にはまだ一皿しか頼んでない先輩がいます。

    そして、私の手には三皿分のガトーショコラ。

    四皿分のバニラアイス。

    そして、十三杯目の珈琲。

    ここに入る前の私。よく聞きなさい。

    一言で断言します。


    「美味しい!」

    「……はは…だろ…」


    凄く美味しい。

    ガトーショコラは五層ものなるチョコから成り立つ形とは思えないくらいの美形。

    程よく甘い。ありきたりなアイスだけれども、濃い珈琲のおかけでより甘さが引き立つ。

    あ、一言で伝えきれなかった。



    それにしても、これ美味しいな。

    穴場店だよ。ここ。

    先輩を宥めるのにカロリーを物凄く使った。

    先輩のせいなんですからね。

    例え、フォークに突き刺したガトーショコラを口に含む前に、私を見て唖然としていても。

    先輩が若干引いていそうなのも。

    店員さんも店の物が尽きるのが怖くて注文しても中々来ないのも。

    ジャンケンで負けて、先輩が全額支払うとか言ったのも。


    全部先輩のせいですからね!





  75. 85 : : 2018/04/23(月) 22:57:12
    時は一興。

    時計の時針は、来店時から軽く一周を回っていた。

    テーブルの端には、いくつも積んであった皿が見事にその姿を伏せている。

    店員さんが持って行ってくれたのだろうか。




    気付かぬうちにと言うのは、やはり怖い。

    その空間がすっぽりと無くなってしまう様で。

    そうだ。と、昼の嫌事を思い出す。

    あれも気付かぬうちだったかな。

    事足りた罪悪感と怒りが、右手にある最後のアイスティーを揺らす。

    アイスティーと言うより、右手が。

    いくら目の前に先輩がいて、妄想の中で描いていた描写が今、正にこの場で実現している事すら嫌になる。

    私は氷郡が溶け終わる前に、ストローで十六方に混ぜた。

    その音は正確には、かちゃかちゃと相殺する氷音だろう。

    が、私の目には。耳には。

    正確なんて言葉はありゃしない。

    ぐちゃぐちゃと嘆く音が染み渡り、
    薄山吹色の液体がストローに惑わされているだけ。

    ひねくれ者だね。私。

  76. 86 : : 2018/04/23(月) 23:02:41
    アイスティーを入れたカップも、 透明色の空に成り下がった。

    先輩は少しずつ。時より窓の外を見てはため息を吐き、少しずつカップに口をつける。



    この窓、あまり外の方を見れないようになってる。

    その行動の意図を問う為に口を開く。

    否。開こうとした。


    「先輩は……」「知ってるか?」


    その話は唐突の投げかけからだった。
  77. 87 : : 2018/04/23(月) 23:26:58
    見ているとワクワクしますね(笑)



    期待です!
  78. 88 : : 2018/04/23(月) 23:28:53
    この学校。この高校は大学進学率が近年大幅に上昇した事は知っていた。

    その理由は、ある事を省略する事であった。

    部活動の“省略化”。

    それは時間単位のものだと思っていた。

    第一、家庭科部は他部のよりも部活動日数は少ない。

    ライナーさんのいるサッカーは週六。

    家庭科部は週四。

    この差だけで、“省略化”に繋がるものだと舞い上がっていたのは遂、この間の私。

    他の部活の事なんて私は知らない。

    適当に休部を得ていたりしていたんではないかとも思っていた。



    それを今、この場で。

    先輩の口から。

    エレン先輩の口から打ち砕かれた。






    ……



    ………


    先輩ともっと楽しめれると思ってたんだ。

    先輩ともっと学べると思ってたんだ。


    先輩の長所と短所を見つけて。

    からかったりして。

    好きって気持ちが収まらないくらい日々を過ごして。

    アピールするチャンスがあるかも?とか思っちゃったり。

    思い上がってた私が馬鹿みたい。






    ……



    ………


    二年の俺は、この時期から受験対策に入るんだ。

    他部の二年は秋くらいまで残る奴もいるがな。

    規則なんだよ。仕方ないんだよ。

    俺だってさ。ヒストリアともっと料理作りたかったよ。

    でもな…

    無理なんだよ。


    「…あと一週間で俺は退部するよ…」



    それは冷たく。突き放されるように。


    「だから、これ。」


    テーブルに差し出されたのは白のエプロン。


    「新しいの買ってやるからそんなに落ち込むなよな?ほら、これも前みたいに…」


    なんで苦笑いなの?

    新しいエプロン?





    違う。

    違うよ。先輩。


    「違う!!そんなのじゃない!!」


    私は耐えきれない“何か”に押し込まれるように店から颯爽に出ていった。








    「……また。こうなっちゃうのか。」


    少年。

    否、青年に成り代わる男は笑みを浮かべた。

    滲んだティッシュで目を拭いて。

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juBnaitry

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