宝石と小石

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1 : ネムサレス : 2018/01/31(水) 12:31:21

・育成計画時空が基盤の話

・一応ネタバレ注意

・短いです

・感想等はこちらのグループに書いていただけると有り難いです↓
http://www.ssnote.net/groups/2397

以上、ご確認のほど、よろしくお願い致します
2 : ネムサレス : 2018/01/31(水) 12:32:09

「うーん……」

普段のわたくしの一日は自分のベッドの上で目を覚ますところから始まります。え？そんなのは普通ではないのかですって？いいえ、そうとも限りません

夜遅くまで働いている方にとっては、一日の始まりは電車の中かもしれません。それに、ベッドで寝ているとも限りません。人によっては畳の上だったり、コタツの中だったり……もしくは道路の上であることもあるのです。場合によっては寝ている間に誘拐され、見知らぬ天井を見上げていることもあるでしょう。ですから、ベッドの上で寝起きしたという情報は、とても大事なことなんですよ

あ、申し遅れました。わたくしの名前はソニア・ネヴァーマインド。ノヴォセリック王国の王女で、“超高校級の王女”として、日本の希望ヶ峰学園に留学しているふつつか者です！今回の話は、そんなわたくしの何気ない一日の様子……
3 : ネムサレス : 2018/01/31(水) 12:32:37

早朝、まだ空が薄暗い頃から起き出し、わたくしは学校に行く準備をします。最初の授業が始まるまでは、まだまだ時間はあるのですが、それにも関わらず起きるのには理由があります

王族の朝は早く、使用人に起こされたあと、身じろぎをして様々な習慣を行うのです。古くからの儀式や国民への演説、国内の様子見に王族としての教養を身につけるための勉強などなど……

こちらに来てからそういう事は行っていませんが、身体に染み付いた習慣というのはなかなか変えれるものではなく、どうしてもこの時間に起きてしまいます

最初の頃こそ、普段まわりの方々がしてくださっていたことを自分でするのに手間取って、自然に時間が過ぎていました。髪をとかしたり服を着替えたり、朝食の用意やスコングを怒らせ薄っぺらくするなど、とても大変ながら、新鮮で楽しい一時でした

ですが、人というものはすぐに環境に慣れてしまうものなのです。今となってはそれら全てが余裕のよっちゃんとなり、短時間でできるようになりました

最初のうちはお気に入りのドラマを見返したり、祖国のマカンゴの事に想いを馳せたりしていましたが、それも次第に飽きてきました。そこで、ある日わたくしは朝早くから学園へ行き、教室の掃除をしようと思い立ったのです。皆さんが気持ちよく授業を受けることができ、以前からやってみたいと思っていた掃除もできる……まさに一赤飯二丁目なアイデア！

「行ってきます」

そういうわけで、わたくしはその日より毎朝早くから学校に向かい、教室の掃除をしているのです。ですが、わたくしが早起きをして学校に行く理由は、掃除だけではありません
4 : ネムサレス : 2018/01/31(水) 12:33:01

「おはようございます、田中さん。いいお天気ですね」

「闇の聖母か。此度もまた夜の闇が微かに残る早朝に俺様の前へ現れたようだな。その言霊の通り、実に血のうずく禍々しき空模様よ！」

わたくしが話しかけたのは、“超高校級の飼育委員”でクラスメイトの田中眼蛇夢さんです。わたくしが教室の掃除をしようと思った日、偶然学園に向かう田中さんと会いました。聞くところによると、彼は魔獣さん達の世話のために、毎朝早くから学園に登校しているのだと言います

わたくしにとってクラスメイトと一緒に登校するのは憧れでした。その事を話すと、田中さんはいつでも一緒に登校してくださると言ってくれたのです。それ以来、わたくし達は毎朝共に学園へと出向く盟友となりました。これがわたくしが早くから学園へ行く、もう一つの理由です

「そういえば、今日の午後の授業はOBの方が特別に授業をしてくださるんでしたよね？」

「確か鉄の塊から数多の武器を錬成せし男だったな」

「はい、“元・超高校級の鍛冶屋”だと聞いています」

「ククク……実に面白い。現世の武器がいかほどのものか、この“制圧せし氷の覇王”田中眼蛇夢が見極めてくれよう！」

「ふふ、わたくしも楽しみです」

そんな他愛もない話をしながらわたくしたちは学園へと歩いていきます。多くの人々にとって普通であろう日常。けれどわたくしにとっては、とても珍しく、貴重で、大切な一時なんです

「着いたな。俺様はこのままこの学園に築いた特殊結界の中へ向かおう。今日は幼き魔術師に一時使役させる長き鼻を操りし巨獣の状態を確認してやらねばならないからな。それが終わり、仮初めの喧騒に身をゆだねるその時までさらばだ」

「はい、それではわたくしは教室に向かいますね。授業までバイナラです」

学園に着くと、田中さんは飼育小屋へ、わたくしは教室に向かいます。お互い、自分のすべき事をするため授業まで少しの間お別れです。その間わたくしは、一人教室で掃除をしながら、今日も素敵な一日であるよう願います
5 : ネムサレス : 2018/01/31(水) 12:33:30

「それで、この時代は藤原氏が絶大な権力を握っていて、大抵のゆゆしき事態もなんのそのってくらいの勢いだったの。特に『この世をば～』から始まる歌で有名な……」

今、わたくし達の担任である雪染先生が日本の歴史について教えてくれています。希望ヶ峰学園といえど、大抵は普通の高校と同じ様に授業を行います

留学前に学んだこととはいえ、まだまだこの国について知らないことは沢山あるので、わたくしにとって歴史の授業という物はとても楽しい時間です

何より、こうして他のクラスメイトと一緒に何かを学ぶ機会というのは、わたくしにとっては貴重なのですから

「……ダメだ、腹減ったぞ。花丸！メシだメシ！」

「いや、だからぼくの名前は花村だって……にしても、終里さんは欲しがり屋さんだね。ランチにはまだ早いから、今すぐに料理を出すことは出来ないけど、ぼくの特製ミルクならすぐ……アヴリルラヴィーン！？」

「花村くーん？授業中は静かにね？」

花村さんが喋っている途中で、雪染先生がチョークを投げて話を遮ります。投げたチョークは見事花村さんの眉間に命中、一瞬で花村さんの意識を刈り取りました。ああ、わたくしは今まさに感動しています。ジャパニーズティーチャーの十八番をこの目で見ることが出来たのですから！

「おい、気絶してんじゃねーぞ！早くメシ食わせろよ！」

「全く、お主は仕方がないのう。どれ、ワシが昼休みまでトレーニングの相手をしてやる、それでいいじゃろ？」

「お？バトんのか？よっしゃ、それならまだ待てるぞ！」

「というわけじゃ、先生。ワシらは少し出てくるぞ」

「分かったわ。あとでちゃんと友達にノートを見せてもらうのよ」

弐大さんと終里さんが教室から出て行きます

授業中なのにいいのか、と思われるかもしれません。ですが、希望ヶ峰学園では才能を延ばすためなら授業に出る義務はないのです。実施試験に合格さえすれば、学力に関しては問題にされません。実際、入学したての頃はほとんどの方が授業に参加していませんでした

ですが、その状況を一変させたのがわたくし達の担任、雪染先生です。雪染先生は欠席していたクラスメイトの皆さんを集め、授業に出ることの大切さを説きました。その後は学級委員長に任命された七海さんと、女性の中でもしっかり者の小泉さん、そしてリーダーシップのあるわたくし達のクラスの十神さんの三人が中心となってクラスの結束を固めました

今回のように時々授業の途中で誰かが抜けることもありますが、それでも以前のように空席ばかりが目立つようになる訳ではありません。このような青春を送れるようにしてくださった雪染先生には、国をあげて感謝の意を伝えたいくらいです！

「それじゃあ授業を再開するわよ！この頃の政治には占いがとても影響力があって、それを専門にする陰陽師っていう職業が……」

退出した二人と気絶したままの花村さんを放っておいて、何事もなかったかのように授業が始まります。わたくしも先生の話に耳を傾ける行為に戻ります
6 : ネムサレス : 2018/01/31(水) 12:33:54

「ソニアさん！い、一緒に昼飯……じゃなかった、ランチを食べませんかっ！」

お昼休み、ストーカー……いえ、お知り合いの“超高校級のメカニック”である左右田和一さんが話しかけてきました

「えっと、申し訳ないのですが、今日は予定があるんです。めんごめんご、ですわ」

「そ、そうっすよね！ソニアさんは王女様なんだから、普通にご予定とかありますよね！」

“王女様なんだから”。その言葉に、わたくしの胸はチクリと痛みます。確かに、わたくしは“超高校級の王女”としてこの学園に通い、皆さんもその事を承知でわたくしに接します。ですが、多くの方々はわたくしが王女であるということを気にせず、気軽に話しかけてくれるのです

わたくしにとって、それはとても衝撃的で、嬉しい出来事でした。一人の女、一人の人間である前に、ノヴォセリック王国の王女であったわたくしも、ここでは普通の女子高生として扱ってもらえるのですから

けれど、左右田さんはあくまでわたくしを“王女”として扱います。彼が見ているのは、ソニア・ネヴァーマインドという個人ではなく、異国の国のお姫様なのでしょう。そう思う度に、わたくしは現実に引き戻されてしまうのです

……そうだ、誤解のないように言っておきますが、これはよくドラマなどである、『本当のわたくしを見て！』といった恋愛感情とは無縁です

もう一度言います。わたくしが左右田さんにホの字だなんてことは絶対にありえません。わたくしはただ、普通の女子高生として暮らしたいだけなのです。そもそも、わたくしが左右田さんを苦手としている理由は、ストーカー気味だとか、服が臭うとか、他にも確固たる理由があるんですから！

……失礼、取り乱しました

「それでは、わたくしはそろそろ行きますね」

「は、はい！お気をつけて！」

困ったちゃんの左右田さんと別れ、わたくしは待ち合わせの場所まで行きます
7 : ネムサレス : 2018/01/31(水) 12:34:27

学園から出て、ベンチのある噴水の側に、わたくしは待ち合わせをしていた人を見つけます

「お待たせしました、七海さん！」

「あ、ソニアさん。大丈夫、そんなに待ってない……と思うよ」

“超高校級のゲーマー”七海千秋さん。先ほど述べた通り、わたくし達のクラスの学級委員長です。わたくしは彼女の横に腰掛けます

「今日はわたくしを誘っていただきありがとうございます。ですが、よろしかったのですか？日向さんと一緒に居られる貴重な時間ですのに」

日向さんというのは、予備学科に通っていらっしゃる七海さんのご友人です。わたくしも何度かお話をしたことがありますが、とても見所の多い方です。それこそ、我が国に代々伝わる伝説の勇者にそっくりなのですが……残念ながらここは南の島ではないので、違うのでしょう

「ああ、今日は日向くん休みなんだってさ」

「なるほど、それでわたくしを誘ってくださったのですね」

「うーん、別に日向くんが居ても居なくても誘ったんだけど……実はね、茶柱さんから今日の放課後に、夢野さんのマジカルショーを行うって話を聞いてさ。クラスの女子だけを誘って来ても良いって言われたんだよね」

「まあ！それはとってもミリキ的なお話ですね！」

「ミリキ的……迷子になりやすいガンナーが使いそうな言葉だね。えっと、それでソニアさんにお願いなんだけど、私の代わりにみんなにその事を伝えてくれないかな？」

「あら、わたくしは別にかまいませんが……小泉さんには頼まないのですか？」

七海さんは学級委員長という立場で、それに見合った気遣いは出来ますが、失礼ながら統率力やコミュニケーション力といった点では、他の方よりも劣ります。それはきっと彼女の才能によるところが大きいのでしょうけど……そういった点は、わたくし達が補います

特に男性への連絡はわたくし達のクラスの十神さん、女性への連絡は小泉さんが担うことが多いんです

「小泉さん、今日は西園寺さん達と用事があるらしくってね。気を使わせちゃ悪いから、ソニアさんにお願いしたんだ」

「なるほど、そういう事でしたか。分かりました、武将ながらこのソニア・ネヴァーマインド、皆さんに三行半を叩きつけ、必ずや参加の証を討ち取ってきます！」

「色々間違ってる……と思うよ？」

今まで人に何かをするように頼んだことは数多くありましたが、自分が何かするように指示を受ける機会というものは、そうそうあるものではありませんでした。わたくし、感激です！

その後、他愛のないお話をしながらお昼を終え、七海さんと一緒に教室に戻りました。すると……

「えーっと、みんなにお知らせよ。今日の午後の授業は、全部の時間この学園のOBである“元・超高校級の鍛冶屋”の十六夜惣之助くんから話を聞く予定だったんだけど……彼が急に来られなくなっちゃったの！」

「ああ！？今になってドタキャンかよ。理由はなんなんだ？」

「それが……“元・超高校級のお菓子職人”でもある彼女さんの新作のお菓子を食べるためらしくて……」

「何だよそれ！？んなことが許されのかよ！？とんだクソヤローじゃねえかボケ！」

「まあまあ落ち着けよ、九頭龍。真面目ぶってるけど本当は羨ましいだけなんだろ？甘い物好きだもんな、オメー」

「なっ！？馬鹿言ってんじゃねーぞ左右田！テメーの指全部切り落とすぞ！」

「あーはいはい、喧嘩しないの。とにかく、そういうわけだから、今日は午後の授業はなし！みんな好きに過ごしても良いわよ！」

なんということでしょう、おどろ木ももの木さんしょの木、開けてびっくり玉手箱！土曜日授業でもないのに半ドンとなってしまいました
8 : ネムサレス : 2018/01/31(水) 12:35:05

短いホームルームのあと、用事のない女子の方に声をかけてから、わたくしは教室から離れ廊下を歩いています。せっかく空きの時間が出来たのですから、有効活用しなければ。いわゆる、トキは三成というやつです！

「お！ソニアっちじゃねーか！おーい！」

背後から声をかけられ、振り向いてみるとそこには……なんと、とても巨大なウニ！

……ではなく、ドレッドヘアーの男性が笑顔で手を振りながら近づいてきました

「あら、ごきげんよう葉隠さん」

彼の名前は葉隠康比呂さん。“超高校級の占い師”です。同じ学年ではありますが、わたくしたちとは別のクラスの方です

「いやー、丁度良かったべ。ソニアっちに朗報だ！今なら通常10万円する俺占いを、格安の8万円で受けれるべ！」

「まあ、それは格安ですね。でも、以前申し上げた通り、我が国の掟で王族に関わる予言者はマカンゴを人質にしていただかなくてはいけませんので……」

先日行われた文化祭で、わたくしは葉隠さんに占ってもらうため、店を訪れたのですが、彼はマカンゴを飼っていないという理由から、占ってもらうことが出来ませんでした

「ああ、その事なんだけどな。今から俺が占うのは、ノヴォセリック王国の王女様じゃなくて、同級生のソニアっちっていう一女子高生だべ！それなら問題ないんじゃねーか？」

まあ……なんということでしょう。これはまさに口からウロコ、斬新な考えです。確かに、“王女”としてのわたくしではなく、“ソニア・ネヴァーマインド”という個人を占うのでしたら、だいじょうＶというやつかもしれません

それに何より、わたくしを一個人として扱ってくれる……これほど素敵なお申し出を断る必要があるでしょうか！

「葉隠さん、ありがとうございます！ソニア、マンモスうれピーです！是非とも8万円などでなく、通常価格の倍である20万円で受けさせてください！」

「うおっ！？マジでか！？本当だな？王女……じゃなかった、ソニアっちに限って二言はねーよな！？」

「モチのロンですわ！」

「いやー、助かるべ！丁度まとまった金が必要なって、困ってたんだ！地獄に女神とはまさにこのことだべ！それじゃ早速、先に現金の支払いをしてくれ」

「ええ、分かりました！」

「へへっ、これで一安心……」

「きえええええええええええええええええっ！」

葉隠さんがわたくしから現金を受け取ろうとしたその時でした。突如、廊下に元気な声が響き渡ります。驚いたわたくしたちの視線は、その声を発した人物へと注がれます

「やべっ！？とんでもねーのに見つかっちまったべ！」

「ほほう、女子に対して“とんでもねーの”と表現するなどとは……やはり男死は女子を軽く見ているのですね！それすなわち、男死が悪たる証拠！」

「いやいや、今のは茶柱っち個人に対する評価だべ！」

「女子である転子に対してそんな評価をするとは……配慮がないとしか言えません！やはり男死は悪！」

「どうしろっつーんだべー！！」

葉隠さんが頭をかかて叫びます

先ほど大声を出していたのは同級生の茶柱転子さん。“超高校級の合気道家”で、わたくしとも葉隠さんとも違うクラスの方です。彼女は男子を男死と表現してとても嫌っています。……わたくしにはこの表現の違いというものがいまいちよく分からないのですが……とにかく、今の彼女は葉隠さんに対してただならぬ敵意を抱いているようです

「どうしろですって？そうですね……己の罪を懺悔しながら転子に成敗されるか、醜くも逃げ惑った末に転子に成敗されるか、どちらか選ばせてあげましょう」

「どっちも結果は同じじゃねーか！クソ、仕方ねーべ。ソニアっち、すまねーが今日のところはなしだ！俺は他のカモ……じゃなくて、お得意さんの天海っちに頼むとすんべ！」

そう言うと葉隠さんはだあっとの如き速さでその場から去ってしまいました。ああ、せっかく占ってもらえたはずなのに……チョベリバです
9 : ネムサレス : 2018/01/31(水) 12:35:37

「くっ！逃げ足だけは早いですね！さて、大丈夫ですかソニアさん！悪は去りましたよ！」

「えっと、大丈夫です。お気遣いありがとうございます。ですが、そもそもわたくしは葉隠さんから何もされてませんよ？」

「なっ！？何を言ってるんですかソニアさん！男死というだけで悪だというのに、葉隠さんなんてその中でもさらなる悪じゃないですか！それに、転子は見ていましたよ、あなたを脅して金をむしり取ろうとする葉隠さんの犯行の瞬間を！」

あれは双方の合意の元行われた立派な取引立ったので、それは完全な勘違いなのですが……今の彼女は大変興奮していて、聞く耳を持ってくれそうにありません。ここは別の話題に切り替えるのが最善でしょうか？

「あ、そういえば今日は本来の放課後の時間に、夢野さんのマジカルショーが行われるのですよね？」

「おお！既にご存知でしたか！もしかして、ソニアさんも来てくれるのですか！？」

予想通り、この話題にのってくれました。茶柱さんは同じクラスの“超高校級のマジシャン”である夢野秘密子さんに対して、ホの字なんです。その様子は誰が見ても分かるほどなのですが、お二人は女性同士。つまり、禁断の恋というやつなのです。そこにもし夢野さんに好きな男性が出来たとしたら、もしくは、夢野さんを好きな男性が現れたとしたら……男性が嫌いな茶柱さんは必ず嫉妬してしまうでしょう

わたくしの見ていたトレンディドラマとは少し趣向が違いますが、泥沼化するであろう二人を見ていると、失礼ながらハラハラドキドキして先の展開が気になって仕方が……申し訳ございません、少し脱線してしまいました

とにかく、茶柱さんに対して夢野さんの話は効果的だということなのです

「ええ、七海さんからお誘いを受けまして。他にも、終里さんがいらっしゃいますよ」

「おや？小泉さんや罪木さんたちはいらっしゃらないのですか？」

「はい、小泉さんと西園寺さん、罪木さんと澪田さんの四人はショッピングだそうです。辺古山さんは他に用事があると仰ってました」

「そうですか、夢野さんの愛らしい姿を見てもらえないのは残念ですが、用事があるなら仕方がありませんね。それにしても辺古山さんの用事とは何なのでしょうね？」

「さあ……わたくしも詳しくは聞いていないんです。お役に立てずめんごですわ」

「いえいえ！ソニアさんが謝る必要はないですって！……あ、そろそろ行かなくては」

何かを思い出したのか、茶柱さんがはっとした顔でそのように言います

「あら、何か用事があるのですか？」

「実は、今話していたマジカルショーに必要な物を買ってきて欲しいと、夢野さんに頼まれたんです。その途中で、男死の悪行に出くわしたということです！」

「まあ、そうだったんですか。お引き留めして申し訳ございません。それでは、バイナラです」

話が振り出しに戻りそうだったので、直ぐに別れの挨拶を済まします

「ええ！もしまた悪しき男死に困らされたら、いつでも転子を頼ってくださいね！転子は女子とネオ合気道を学ぶ者の味方ですから！」

そう言い残し、茶柱さんは走り去って行きました。彼女の姿が見えなくなるまで見送ったあと、わたくしは当初の目的のために再び廊下を歩き始めます
10 : ネムサレス : 2018/01/31(水) 12:38:51

わたくしが向かっているのは、この学園の図書室です。元々、本を読むのが好きだという事もありますが、ここには一般には公開されていないような資料が沢山存在しているのです

もちろん、わたくしは王族なのでそういった資料は見たいと思えばある程度閲覧することは可能です。ですが、そのためには幾つもの手続きをしなければいけない上に、いくらわたくしといえど、見ることの出来ないものあります

それらは他国に知られるわけにはいかない機密情報や、自国の恥になり得る情報だったりします。例えば、少し前まで世間を賑わせていたジェノサイダー翔による連続殺人事件。多くの証拠を残しながら、一向に犯人を特定できない様を知られるのは、“日本の警察は無能である”と認識されかねないと思っているのか、くわしい情報を直接手に入れることは出来ませんでした

それでも、留学に行く国のミリキ的な殺人鬼さんに対して無理解なのは失礼と思い、あの手この手で情報を集め、独自に予習はしてきたのですが……その必要はなかったようです

この学園であればそれらの資料を何の労力もなく見ることが出来るから、それも確かに理由の一つです。ですが、それよりも、もっと大きくて、根本的に意味を失わせる要因が……

「ゲラゲラゲラゲラッ！」

どうやら考え事をしている間に図書室の前まで来ていたようです。そしてそれと同時に、目の前の扉が開かれると共に、特徴的な笑い声が廊下中に響きました。噂をすればハゲとは正にこの事、件の人物がわたくしの前に現れました！

「まあ、こんな所でお会いできるなんて！こんにちはジェノサイダーさん！」

「あん？誰かと思ったら王女様じゃねーですか！お久でーす！って、殺人鬼が呑気に王女へ挨拶とかギャグかっつーの！ゲラゲラゲラゲラッ！」

そう、この方こそ先程話していた、今をときめくジャパニーズ殺人鬼、ジェノサイダー翔さんなのです！あっと驚くタメ五郎なことに、ジェノサイダーさんとわたくしは同級生になったのです！
11 : ネムサレス : 2018/01/31(水) 12:39:31

彼女の本名は腐川冬子さん。正確には、腐川さんの中にいるもう一人の人格こそがジェノサイダーさんなのです。本人曰く、“超高校級の殺人鬼”を自称していますが、学園側が彼女のことを認知した上で腐川さんをスカウトしたのかは分かりません。けれど、“超高校級の泥棒”や“超高校級の極道”を入学させるこの学園がジェノサイダーさんの事を知らなかったとは考えにくいことです。何より、彼女のご活躍は“超高校級”を名乗るに相応しいと、様々な殺人鬼に対する知識を持ったわたくしが保証します！

「あの、ジェノサイダーさん！この前のお話の続きで、“萌え”というものについてお聞きしたいのですが……」

わたくしは以前、ジェノサイダーさんに独占インタビューする機会をゲッツしました。ですが、運の悪い事に肝心の話を聞こうとしてるときに、腐川さんの人格に変わってしまったのです。それ以降、腐川さんと話すことや、ジェノサイダーさんを見かけることはあったのですが、直接お話しする機会はなかなか訪れませんでした

ですから、このチャンスを逃さずお話を聞こうと思ったのですが、彼女はわたくしの言葉を遮って話し始めました

「あー、そういうのも面白そうだけど、今はパス！アタシ、今まさに図書室で目を覚ましたところなわけよ。となると、最初にする事といったら白夜様を探すことに決まってんでしょ！」

白夜様とういうのは、彼女のクラスメイトであり、“超高校級の御曹司”たる十神白夜さんの事です。彼女は、彼に対して並々ならぬ想いを抱いていて、なんとその愛故に今は殺人を行っていないんです。わたくしとしては、その辺りの心境の変化にも興味があります

ちなみに、ここでいう十神さんというのは、わたくしたちのクラスの十神さんではありません。どういうことなのかと言われると、説明が難しく、そもそもわたくし自身も正確に全てを把握しているわけではないので、何とも言えませんが……とにかく、十神さんはわたくしのクラスにいる方とジェノサイダーさんのクラスにいる方の二人いるという認識で構いません

「十神さんですか……そういえば、ここに来る途中、すれ違いましたよ」

「マジで！？何処ら辺で！？てか一応聞くけど、アンタのとこのブタの事じゃないわよね？」

「はい、ジェノサイダーさんのクラスの十神さんのことです。場所は確か、娯楽室の近くでした。苗木さんと一緒に、ビリヤードをすると言っていたのが聞こえてきましたし」

「白夜様がまーくんとビリヤード！？男二人が、部屋の中で棒を使って玉を弄くるなんて……何それ滅茶苦茶萌えるじゃねーかよ！こうしちゃ居られないわ！すぐにでも駆けつけなきゃ！」

ジェノサイダーさんは身をくねらせ興奮気味に答えます。ふむ、男性が二人でビリヤードをするのが萌える行為なのですね。これは新しい知識です

「アンタ、アタシを差し置いて白夜様と同じ組織に属してるとか聞いたから泥棒猫とか思ってたけど、なかなか良い奴ね！でこまるの次くらいには良い奴よ！」

「同じ組織……『世界の選択を選択する会』の事でしょうか？」

「あー、うんうんその洗濯がどうたらってやつよ。言っとくけどな！白夜様の御下着とか洗うのはアタシの役目だかんな！」

「は、はい！心得てます！」

良く日本語の使い方について皆さんからツッコミを総受けするわたくしですが、今回ばかりはジェノサイダーさんとわたくしとの間で齟齬が生じていることは分かります

分かりますが……訂正を聞いてくれる雰囲気でもありませんし、勢いに押されそのまま返事をしました

「ま、とにかくアタシは白夜様のとこに行くから。今回のことの礼として、次はちゃんと染めてやるから覚悟しとけよ」

「ええ、よろしくお願いしますね、先生！」

「殺人鬼を先生とか本当訳分かんねー王女様だな。ま、別に良いけどね！ゲラゲラゲラゲラッ！」

そう言い残すと、彼女は笑いながら超特急で娯楽室の方向へと走っていきました。ゆっくりお話を出来なかったのは残念ですが、約束を取り付けたことと、新しい知識を得ただけ良しとしましょう

「さて、ショーまではまだ時間がありますね……」

わたくしはそのまま図書室に入り、開始時刻になるまで暇を潰しました
12 : ネムサレス : 2018/01/31(水) 12:41:30

「あ、こっちだよ、ソニアさん」

「ソニアちゃんだ！ソニアちゃんも夢野ちゃんのマジックショーを見に来たの？」

体育館に着くと、そこには七海さんと他クラスの朝日奈さん、そして大神さんが既に来ていました

「ええ、その通りです。朝日奈さんと大神さんも見に来たんですか？」

「ああ、茶柱に日頃世話になっているお礼にと言われてな。夢野の姿を見て癒されてくれとのことだ」

「他のみんなにも声をかけたんだけどね、みんな忙しかったり興味ないって言って来なかったんだ。だから、私たちのクラスで来れたのはさくらちゃんと私の二人だけなんだよね」

なるほど、確か“超高校級の格闘家”である大神さくらさんは普段から茶柱さんと稽古をしていて、“超高校級のスイマー”である朝日奈葵さんは茶柱さんに泳ぎを教えていると聞きました。その二人に茶柱さんが声をかけるのも最もでしょう

そして、お二人のクラスにいる他の女子の皆さんが来ないのも納得です。舞園さんや霧切さんは学園にいることの方が珍しいですし、セレスさんや江ノ島はあまりこういう事に興味はなさそうです。ジェノサイダーさん……もとい腐川さんは先程十神さんの元へ走り去って行きました

「それにしてもソニアちゃんや七海ちゃんがいて良かった！ほら、さすがにさくらちゃんと私だけだったら、何だか浮いちゃう感じがするでしょ？」

「うーん、そうかな？別に気にするようなことでもないと思うけどな。うちのクラスでゲーム大会をするとき、よく日向くんもいるけどみんな全く気にしてないよ？」

「お主らはそうかもしれぬが、日向自身がどう思っているかは別ではないか？」

「それもそうかもしれませんね、七海さん、今度聞いてみては如何でしょうか？」

わたくしたちがそんな世間話をしていると、入り口の方から二つの話し声が近づいてきました

「ほらほら、春川さんったら早く！」

「別に、そんなに急がなきゃならないような時間じゃないでしょ。……あれ、何であんた達がいるわけ？」

夢野さんのクラスメイト、“超高校級のピアニスト”の赤松楓さんと、“超高校級の保育士”の春川魔姫さんです

「あ、赤松ちゃんに春川ちゃんだ！」

「我らは皆茶柱の誘いによって集まったのだ」

「は？茶柱の？全く、何考えてるんだか……」

「ちょ、ちょっと春川さん、そんな言い方しなくても……」

大神さんから話を聞いた春川さんは、呆れ気味にそう言います。それを赤松さんが慌てて指摘します。……なんだか、西園寺さんと小泉さんのやり取りに似ているような気がするのはわたくしの思い違いでしょうか？

「えっと、もしかしていけませんでしたか？」

「別に、いけない訳じゃないよ。けど、今からやるのは夢野がもうすぐ仕事でやるやつのリハーサルなんだよ」

「元々は夢野さん一人だけでやるつもりだったんだけど、茶柱さんがせっかくだから何人か観客がいた方がいいって言ってね。それで私たちが呼ばれたんだ」

春川さんの話を赤松さんが引き継ぐ形で事情を説明してくれます

「ああ、だから春川さんは何考えてるんだって言ったわけだね」

「こういうのは本番前に人に見せるものじゃないからね。手の内を見せすぎると、一体何処から情報が漏れるか分かったものじゃないし」

「確かに、格ゲーとかでも奥義とかコンボとかはここぞというときのために取っておきたいしね。あ、もしかして春川さんもそういうのいける口だったりする？」

「……別に、一般論を語っただけだよ」

春川さんの言葉を格闘ゲームをする人の発言と思ったのか、七海さんが食いつきますが、一蹴されてします
13 : ネムサレス : 2018/01/31(水) 12:43:26

「ふむ、にしてもそういうことならあの状況も納得がいくな」

「え、あの状況って？」

「あそこで茶柱と夢野が話しているであろう」

大神さんの発言に疑問を抱いた赤松さんに対し、彼女はそう言いながら舞台の方へ顔を向けます。そこには深刻そうな顔の夢野さんとうろたえた様子の茶柱さんが話し合ってました。少し耳を澄ますと、こんな言葉が聞こえてきました

「お主、何故こんなに人を呼んだのじゃ。二、三人で良いと言ったではないか。いや、そもそも呼ぶ必要はないと言ったじゃろ」

「す、すみません！ですがリハーサルとはいえ、夢野さんの頑張る姿が人知れずなんてのは嫌でして……だ、大丈夫ですから！緊張などせず、リラックスですよリラックス！」

「き、緊張などしてはおらぬわ！ウチは魔法使いじゃからな、ひ、人前で魔法を駆使するのに、緊張などせんわ。……それにしても、お主、何故こんなに人を呼んだのじゃ。二、三人で良いと……」

「……先ほどからあの様に同じ話を繰り返している。このままでは一向に先に進まぬだろうな」

「ゆ、夢野さん……相当緊張してるんだろうね」

「うーん、無限ループって怖いからね。選択肢があれば抜け出せるんだろうけど、あの様子だとはい、いいえじゃ片付きそうにないし」

なんということでしょう、夢野さんはすっかり緊張で我を忘れているようです。このままショーが始まらぬまま、週刊誌の人気のない漫画よろしく打ち切りENDなのでしょうか？……あ、忘れているといえば

「……そういえば、終里さんはまだ来ていないのですか？」

「え？終里ちゃんも来るの？それにしては遅いけど……」

「どうせどこかで弐大とでもトレーニング中なんじゃないの」

「確かに、その可能性は高いですね……」

それ以外にも、お腹が空いたという理由でお食事中の可能性もあります

「あ、トレーニングといえば、春川ちゃん、今日は最原や百田とトレーニングしないの？」

先ほどの会話に触発されたのか、朝日奈さんが春川さんに向けて何気ない疑問を投げかけました

「別に、毎日しなきゃならないものでもないし」

「春川さん、元々は見に来るつもりはなかったんだよね。だけど、百田くんにたまには息抜きも必要って言われてそのまま押し切られちゃったんだよね」

「ちょっと赤松。余計なこと言わないでくれる？」

「うーん、これがギャルゲーでよくあるツンデレ？それともクーデレなのかな？……あ、そういえば、他の女子のみんなはどうしてるの？」

「一体何がどうなってそういう質問になったのか訳分かんないけど、東条は仕事でいないし、白銀は今日の深夜から用事があるから帰って寝てる。入間は論外」

「え、えっと！入間さんは自分の研究教室に籠もってまた何か発明してるみたい！」

「……それで、主催の茶柱と夢野がそこで不毛なやり取りしてて、夜長は多分今頃裏の作業中……」

春川さんがそこまで言うや否や、体育館の照明が一気に消え、一瞬暗闇が支配した後、舞台の方だけに明かりがともりました。そしてその舞台の上に立つ一人の少女が話し始めます

「やっはー！舞台のセットが完了したよー！というわけで、今から、夢野秘密子によるマジカルショーを、開始しまーす！」

スポットライトを浴びているのはモチのロン夢野さん……ではなく、舞台のセットを担当していたと思われる、“超高校級の美術部”の夜長アンジーさんです。本来の主役である夢野さんは、茶柱さんと共に舞台の下にいます。茶柱さんが夜長さんに対して恨みのこもった眼差しを向けながら言葉を発します

「くうぅぅ！アンジーさん！あくまで主役は夢野さんなんですよ！早くその場所を夢野さんに譲ってください！ですよね、夢野さん！」

「そうじゃな。ところで転子よ、お主、何故こんなに人を……」

「夢野さぁぁん！戻ってきてくださいよ！」

「あれまー、秘密子ったらキャパオーバーだねー」

未だショックから立ち直れない夢野さんに、取り乱す茶柱さん。そしてどこまでもマイペースな夜長さん。場の雰囲気はグダグダになりつつありました
14 : ネムサレス : 2018/01/31(水) 12:44:14

「……これ、帰ってもいいかな？」

誰もが思っていたであろう言葉を春川さんが発し、わたくしを含め皆さんが同意しかけたところ、いきなり体育館の扉が開かれ、何かが飛び込んできました

「メシはどこだああああああああああ！」

「んああああああああああああああ！？」

「夢野さああああああああああん！！？」

乱入者は入ったときの勢いをそのままに、放物線を描きながら見事夢野さんに命中！……は避けられたようですが、近くに着地したときの振動で、小柄な夢野さんは吹き飛ばされてしまいました

それを見て慌てるのは茶柱さん、すぐさま夢野さんに駆け寄り起こします

「ななな、何じゃ一体！まさかマジシャンズ・キャッスルが本格的にウチを潰すために爆弾でも投げて来たのか！？」

「にゃははー、違うよー。今秘密子を吹き飛ばしたのはちゃんとした人だからねー。ねー、赤音？」

そう、夢野さんを襲った衝撃の正体は“超高校級の体操部”である終里赤音さんだったのです。もう少し正確にいえば、彼女が着地の時に巻き起こした風、というのが正しいでしょうか？

「えっと、遅かったね終里ちゃん」

わたくしたちの中でまず最初に声をかけたのは朝日奈さんでした

「あ？五分しか遅れてねえんだから遅いのうちに入んねえだろ」

「……スポーツ選手とは思えぬ発言だな。それがお主らしいとも言えるが」

大神さんが少し呆れ気味に言います

「んだよ、ゴチャゴチャうるせーぞ！つーか、メシは何処だよメシ」

「お主……ここで何をするか分かっておるのか？というか、お主自身は何のために来たのじゃ」

「んなもん覚えてねーよ。ただこの時間にここに来なきゃなんねえっつーのは覚えてたからな。そんでもって、オレが行かなきゃなんねー事といったら、メシだろ。違うならバトルだな。丁度大神や春川に茶柱もいるしな！」

「……さらっと巻き込まないで欲しいんだけど」

格闘派に自分が含められたことに、春川さんは不満そうにします

「んああああ！ここは食事場でもないし武道会でもないわ！ウチのマジカルショーを行う場じゃ！」

「あー！そうだそれ、そのマカロニショーを見に来たんだったぜ！思い出させてくれてサンキューな！」

「マジカルショーじゃと言っておるじゃろ！」

「……夢野さん、ようやく帰ってきたんですね！」

「……はうっ！？」

終里さんと普通に押し問答する夢野さんを見て、茶柱さんは目に涙を浮かべながら夢野さんに抱きつきます。一方で夢野さんの方は心なしか顔色がよろしくありません。先程まで真っ赤だったお顔が真っ青に変わっていました

「にゃははー。これでようやく始められるねー。それじゃ秘密子、舞台に上がっていいよー。……今からまた同じ言葉を繰り返しても遅いからね？神さまは全部お見通しだよ？」

「ギクッ！？わ、分かっておる……」

夜長さんに凄まれた後、夢野さんはトボトボと舞台の上に上がり、夜長さんと場所を交代し、マジカルショーの開幕を宣言しました

「……これでようやく始まりそうだね。それじゃ、私達も席に座って見る準備をしよっか」

「はい！わたくし、今とても楽しみです！」

「ソニアちゃんは夢野ちゃんのマジックを見るのは初めてなの？」

「はい、残念ながら用事などで今まで見たことがなかったんです。それに、単純に興味があるんです。ジャパニーズマジック、オンヨウドウには！」

「「「「ん？」」」」

「え？」

七海さん以外からの視線が一斉に注がれ、わたくしは困惑します。日本における魔法とは、陰陽の術の事だと持っていたのですが、違ったのでしょうか？わたくしは助け船を出してもらうため、七海さんの方を見ました。七海さんは一度あくびをした後、いつもの眠たげな眼差しのままこう言いました

「あのね、ソニアさん。夢野さんの装備はどう考えても西洋もので、和風ファンタジーものじゃないから、使う魔法も西洋由来だ……と、思うよ？」

この後、七海さんと一緒に四人からツッコミを総受けしました
15 : ネムサレス : 2018/01/31(水) 12:45:03

その後の出来事を簡単に説明いたします。皆さんからわたくしの間違いを説明してもらったあと、夢野さんのマジック……いえ、マジカルショーが始まりました

帽子から鳩を出したり、杖の先を花束に変えるといった小技的なものや、ほうきにまたがり空を飛んだり、何もない空間から突如夜長さんの作った石像が現れるといういうな大掛かりなものまで、実に多種多様でした

中でも驚いたのが、象を使ったマジックでした。何の変哲もない大きな水槽に水を入れ、その水の上を象が歩くというものです

まずは種も仕掛けもないことの証明に、夢野さんが水槽の中にピラニアを投入します。……何故ピラニアだったのかは分かりません。とにかく、ピラニアは普通に水槽の中に入り、泳ぎ始めました。その後夢野さんが魔法の呪文を唱えた後、いよいよ象が水面に足をつけました。そのまま象は沈み、哀れピラニアの餌に！……という事態にはなりませんでした。なんと、沈む事なく見事に渡りきったのです！

これにはきっとインド人もびっくり！象が踏んでも壊れないならぬ、象が踏んでも沈まない水など、見たことがありません！ちなみに、象が暴れる心配などはありませんでした。あの子は田中さんが育てた象だったからです。今朝言っていたことはこの事だったのかと納得しました

そんな楽しい一時を過ごした後、皆さんと一緒に、無事リハーサルを終えた夢野さんをねぎらい、感想を言い合ってから、わたくしは自分の部屋に戻ってきました

服を着替え、明日の用意を終えた後、わたくしは今まさにこの手紙を書いています。そう、今お父様やお母様が読んでいらっしゃるであろう、本国に送るこの手紙をです

何故こんな風な書き方をしているのかと疑問に思われるかもしれません。ですが、そこに大きな理由などはありません。強いて言えば、わたくしたちのクラスではない方の十神さんのお姉さんが、十神さんの普段の生活を物語風に書物に書き留めているという話を聞いたからでしょうか

それはともかく、この日本での暮らしは、とてもマブくてバッチグーなものだというのは、先ほどまでわたくしが書いてきた内容から分かっていただけるかと思います

祖国ではわたくしは宝石でしたが、この国でのわたくしは、ただの小石でしかありません。宝石も小石も、元々同じ石に過ぎませんが、宝石は多くの人間に珍重され、小石はほとんどの方に見向きもされません

ですが、前者がもてはやされるのは宝石そのものが、希少で価値のあるものだという認識が、一般的に広く受け入れられているからです。誰も宝石自体には目を向けず、その本質を見ようとする人は稀です

一方で後者は、ほとんどの人が気にもとめず、時には存在すら認識されません。まさに路傍の石というものでしょう。けれど、そんな小石にも注意を向けてくれる人はいるものです。そして、そういった人はその小石の持つ特徴に何かを見いだし、その人だけの価値を付与するのです

わたくしは、一人の女である前に、そして一人の人間である前に、ノヴォセリック王国の王女です。わたくしの品位は祖国の品位であり、わたくしの意見は祖国の意見なのです。わたくしはノヴォセリック王国の象徴であり、まさに国民たちにとって、国にとって、宝石のような存在だということは分かっています

それでも、わたくしはこの国にいる間は、ただの小石でありたいんです。そしてそんな願いを知ってか知らずか、肩書きなんか気にせず、ソニア・ネヴァーマインドという個人として、普通の女子高生として扱ってくれるこの国と学園の皆さんのことを、わたくしは心から大好きだと言えます

お父様、お母様。ソニアは素敵な異国の地で余裕のよっちゃんに暮らしています。ですから、心配はいりません。この学園を卒業するまで、まだしばらくの月日がありますが、それまで健やかにお過ごしなさいますよう、お祈り申し上げ、筆をおかせていただきます

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　End
16 : ネムサレス : 2018/01/31(水) 12:46:28

以上で短いですが本ssは終了となります

ふと誰か一人に焦点を当てた話が書きたいなと思い至り、このssを作りました。誰にしようか考えたところ、目に留まったのがソニアさんでした。彼女の王女という立場と自分という個人の間でせめぎ合う様が伝わる作品となっていれば僥倖です

なお、本作品中には所々日本語がおかしかったり、言語センスが古臭かったりしますが、それらの八割くらいはソニア・ネヴァーマインドというキャラクターの雰囲気を出すための意図的なものです。……あとの二割くらいは単純な私個人の間違いやセンスでしょう

さて、こんなに短く大したことのない文章を最後まで読んで下さった皆様方にこの場を借り感謝の意を述べさせていただきます

本当にありがとうございました
機会が有りましたら、また別の作品にてお会いいたしましょう
17 : 名無しさん : 2020/10/25(日) 21:32:40

http://www.ssnote.net/users/homo
↑害悪登録ユーザー・提督のアカウント⚠️

http://www.ssnote.net/groups/2536/archives/8
↑⚠️神威団・恋中騒動⚠️
⚠️提督とみかぱん謝罪⚠️

⚠️害悪登録ユーザー提督・にゃる・墓場⚠️
⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️
10 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:30:50 このユーザーのレスのみ表示する
みかぱん氏に代わり私が謝罪させていただきます
今回は誠にすみませんでした。

13 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:59:46 このユーザーのレスのみ表示する
>>12
みかぱん氏がしくんだことに対しての謝罪でしたので
現在みかぱん氏は謹慎中であり、代わりに謝罪をさせていただきました

私自身の謝罪を忘れていました。すいません

改めまして、今回は多大なるご迷惑をおかけし、誠にすみませんでした。
今回の事に対し、カムイ団を解散したのも貴方への謝罪を含めてです
あなたの心に深い傷を負わせてしまった事、本当にすみませんでした
SS活動、頑張ってください。応援できるという立場ではございませんが、貴方のSSを陰ながら応援しています
本当に今回はすみませんでした。

⚠️提督のサブ垢・墓場⚠️

http://www.ssnote.net/users/taiyouakiyosi

⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️

56 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:53:40 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
ごめんなさい。

58 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:54:10 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
ずっとここ見てました。
怖くて怖くてたまらないんです。

61 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:55:00 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
今までにしたことは謝りますし、近々このサイトからも消える予定なんです。
お願いです、やめてください。

65 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:56:26 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
元はといえば私の責任なんです。
お願いです、許してください

67 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
アカウントは消します。サブ垢もです。
もう金輪際このサイトには関わりませんし、貴方に対しても何もいたしません。
どうかお許しください…

68 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:42 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
これは嘘じゃないです。
本当にお願いします…

72 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:59:38 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
お願いです
本当に辞めてください

79 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:01:54 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
ホントにやめてください…お願いします…

85 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:04:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
それに関しては本当に申し訳ありません。
若気の至りで、謎の万能感がそのころにはあったんです。
お願いですから今回だけはお慈悲をください

89 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:05:34 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
もう二度としませんから…
お願いです、許してください…

5 : 墓場 : 2018/12/02(日) 10:28:43 このユーザーのレスのみ表示する
ストレス発散とは言え、他ユーザーを巻き込みストレス発散に利用したこと、それに加えて荒らしをしてしまったこと、皆様にご迷惑をおかけししたことを謝罪します。
本当に申し訳ございませんでした。
元はと言えば、私が方々に火種を撒き散らしたのが原因であり、自制の効かない状態であったのは否定できません。
私としましては、今後このようなことがないようにアカウントを消し、そのままこのnoteを去ろうと思います。
今までご迷惑をおかけした皆様、改めまして誠に申し訳ございませんでした。

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