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雪染「今日からあなたたちは先輩よ!」

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  1. 1 : : 2017/12/05(火) 22:46:19
    このSSは…

    ・雪染「今日からクラスメイトになる日向創君よ!」の続編です
    (http://www.ssnote.net/archives/49713)
    ・この作品から見ても問題ない…ようにする予定
    ・書くペースによって更新速度は変わりますが、更新頻度は火、木、土、日の週4日ペースで最低でも書いていきます
     → 申し訳ありません。無理でした。月、水、土(時々日曜日)くらいで週3日ペースにしていきます。

    ・V3勢は出てきません。無印、スーダン、絶女、アニメ3勢がちょこちょこっと出てくる(予定)
    ・安価はないので、のんびりと見ていただければ
    ・本文中で※の文章はコメントへの反応だったり、説明だったり、独り言だったりします。執筆終了後に削除します。
    ・本作品は日向と78期生との絡みがメインになり、77期生はメインで出張ってくることがあまりないです

    以上をご了承してお読みください。



    【簡単なあらすじ】
    希望ヶ峰学園の予備学科の生徒として才能を羨む日々を過ごしていた日向創。

    ある日、スカウトマンである黄桜にスカウトされる形で超高校級の相談窓口の才能が認められた。

    少し時期遅れな転校生のような形で77期生として学園に入学した日向は騒がしくも平和な日々を過ごしていた。

    日向が入学してから1年。

    騒がしくも楽しい仲間たちと日々を過ごしていた日向も学年が上がり、今年も超高校級の新入生が入学してきた。

    先輩となった彼らに、担任である雪染が改めて学年が上がったことを宣言するのだった……。



    そこからこの物語は始まる。
  2. 2 : : 2017/12/05(火) 22:50:45
    左右田「いや、改めて言われなくってもわかってるけどよ…」

    雪染「今日! から! あなたたちは! 先輩よ!」

    左右田「だーーーーッ! ちょっと突っ込んだだけなのに!」

    小泉「余計なこと言うからでしょ…」

    西園寺「ホント、左右田おにぃは余計なことしか言わないよね~。もしかしてこうなるのを望んでるMなんじゃないの~?」

    左右田「んなわけねーだろ!」

    花村「羨ましいよ左右田君!」

    左右田「オメーは黙ってろ!」

    ひと騒動終わった後、一度咳払いをして雪染は話し始めた。



    雪染「さて。じゃあ改めて言うけれど、あなたたちは今日から先輩よ。つまり、後輩が入学してくるわ」


    澪田「いいっすねー! 先輩後輩の熱い友情とか、ラヴロマンスとか……あ、一曲書けそうっす!」

    狛枝「新たな希望たち……素晴らしいよ! 彼らはどんな希望を見せてくれるのか……今からとても楽しみだね!」


    田中「ふん。その力の奢りに気づかぬようなら我が眷属たちが戒めてやろう」


    花村「ふっふっふ……僕は既にリサーチ済みさ。なんと今年はあの! 舞園さんや江ノ島さんが入学してくるらしいからね!」


    弐大「そういや確か…野球選手も入ってくるらしいのう。会うのが楽しみじゃわい!」


    終里「つえーやつがいたらいいなぁ…」


    雪染「はいはーい。盛り上がるのはいいけれど、私から言いたいことはあなたたちは先輩になるわけだから後輩たちが困ってたら助けてあげてね。でも、変に気遣う必要はないからね、ってこと!」


    西園寺「ぷーくすくす…いい奴隷がいたらいいな~」


    罪木「うゆ……後輩でもお友達できるでしょうかぁ…」


    ソニア「後輩……学園……青春……そして、放送室を占拠するんですね!」



    七海「……うん。一緒にゲームしたいね」



    ざわめくクラスメイトを眺めながら、超高校級の相談窓口、日向創は窓の外を見た。



    日向「……後輩…か。どんな奴ら何だろう」


    超高校級の奴らということは色々と濃い連中なんだろうな…と思いながら、まだ見ぬ後輩たちに会うのがなんだかんだ楽しみな日向だった。
  3. 10 : : 2017/12/06(水) 23:54:11
    七海「ねぇ、日向君」

    日向「なんだ?」

    七海「入学してくる後輩……どんな子たちだと思う?」

    日向「そうだな……。超高校級って言われる奴らだし、このクラスに負けず劣らず個性的な奴らばっかりなんだろうなって思うよ」

    七海「あー……そうだね。個性的な人たちばっかりだもんね」

    日向「……他人事のように言ってるが、お前も個性的だからな?」

    七海「むー…私のような普通の女の子に向かって酷いよ…」

    日向「普通の女の子は空中ハメコンボで同級生の心を折ったりしないぞ」

    七海「むー……されるほうが悪いんだよ…」

    とりあえずむくれる七海の頬を指で啄いて、空気を抜いておいた。





    その後、才能開発の時間になったため、各自研究室などに散っていった。

    日向も超高校級の相談窓口になってから割り当てられた相談室へと向かった。

    一年。正確には10ヶ月程。

    その間に数多くの依頼を受けて、依頼者の成長につながるアドバイスができたこともあれば、大したことも言えずにがっかりされたこともある。

    だが、その全てに真面目に対応した日向の評価は上がっており、さらに一般生徒や部外者でもアポイントを取れば気軽に会える超高校級として有名になっていた。



    そのため、相談室の様子も変わっている。

    日向「ふぅ…。こんなところかな」

    日向は棚の上にあった置物を整理していた。

    依頼者の中にちょっとした金持ちがいたことがあり、お礼にと色々ともらっていた。

    トーテムポールやダルマ、水晶でできた髑髏など。

    何度も相談に来たその人物はそういったものをお礼にと置いていった。

    日向「………なんだか、旅行のお土産を無差別に置いたみたいになってるな…まぁいいけど」

    次に日向はこの1年で増えたファイルの整理を始めた。

    最初の頃は無差別に管理していた依頼者の情報についてのファイル。

    今ではリピーターもいるため、よく来る人物については専用のファイルを作成して整理をしていた。

    そういった人物については年号を書いた区切りのページを入れていく。

    日向「……左右田とか今年も来るんだろうなぁ…」

    ソウルフレンドと呼んで気さくに話ができる男、クラスメイトの一人である超高校級のメカニック、左右田和一を思い浮かべる。

    左右田の相談回数は20回を超えているが、今年も相談に来るだろう。

    日向(左右田自身は成長したとは思うが……結局ソニアには振り向いてもらってないしな…)

    日向は左右田のファイルを仕舞いながら、親友の今後を考えて先は長そうだな…と考えていた。
  4. 13 : : 2017/12/08(金) 01:01:30
    相談室の整理が終わり依頼もないため、暇になってしまった日向は教室に戻ることにした。

    その道中。




    「わわっ!?」

    そんな大きな声と共に曲がり角から誰かが飛び出してきた。

    咄嗟のことに反応できなかった日向はその人物とぶつかってしまった。

    日向「うわ!?」

    「きゃっ!」

    日向とその人物は互いに尻餅をついた。

    「あ、ご、ごめん! 大丈夫!?」

    日向「あ、ああ。大丈夫だ。そっちこそ怪我とかないか?」

    「う、うん…こっちは大丈夫……」

    汚れを叩きながら二人は立ち上がり、日向は改めて目の前の人物を観察した。

    褐色肌の可愛らしい女の子で、赤いジャケットと結った髪が特徴的だった。

    引き締まった体と短パンから覗く足から何かスポーツをしているのだと推測できた。


    ……実際は真っ先に目が行ったのはその豊満な胸であったが、それは男の性であるため、仕方がないと日向は無理やり納得した。


    日向「初めて見るが、もしかして新入生か?」

    「あ、うんうん! 朝日奈葵っす! 超高校級のスイマーだよ! よろしくね!」

    日向「スイマー……水泳選手か」

    朝日奈「一刻も早く泳ぎたくって授業が終わった瞬間に飛び出したんだけど……えへへ、ぶつかっちゃった」

    頭を掻きながら苦笑する朝日奈。

    欲望に忠実というか、慌ただしい性格のようだと日向は感じた。

    日向「俺も自己紹介するか。超高校級の相談窓口、日向創だ」

    朝日奈「……あ! もしかして先輩……。け、敬語とか使ったほうがいいっすか!?」

    日向「敬語になってないし、今更気を使わなくても大丈夫だ」

    朝日奈「あ。そう? 堅苦しいのは苦手だからよかった~」

    何となく納得できた日向だった。


    日向「泳ぎに行くんだろ? 行ってきたらどうだ?」

    朝日奈「あ! そうだった! じゃあね、日向!」

    朝日奈は元気に走り去っていった。


    日向「……肌の色とか、元気なところと、やりたいことに一直線なのは終里に似てるな」

    そのベクトルがスポーツか、戦いに向いてるかの違いはあるが……。


    朝日奈が廊下を曲がって姿が見えなくなるまで日向は、その後ろ姿を見送った。
  5. 14 : : 2017/12/08(金) 22:48:20
    日向が教室に戻ると……。


    花村「ねぇねぇ! さっき舞園さんとすれ違っちゃったんだよ! もうね、全力でそのスメルを吸いに行ったよね」

    左右田「いきなりキモイこと言うんじゃねえよ!」

    小泉「舞園さやかさんね。何というか清純だし、男子はああいう子が好きなんでしょうね」

    西園寺「そこのモブおにぃとかああいう女にちょっと優しくされてころっとイっちゃうんだろうね」

    左右田「こっち指さひながらモブ言うな! そして、オレはそんなにちょろくねえよ!」

    九頭龍「…どの口が言ってんだ」




    終里「なーなー。おっさーん、なんでバトったらダメなんだよー」

    弐大「お前さんじゃあ、全く歯が立たんからじゃ」

    終里「オレがよえーってのか!?」

    弐大「そうではない。またそのレベルに至っとらんということじゃ」

    辺古山「話にしか聞いたことがないが、それほどなのか? 大神さくらは」

    弐大「ああ。一目見て強いと思い知ったわい。まぁ、ワシに任せてもらえれば、さらに伸びるじゃろうがな!」

    終里「…そっかー…そんなにつえーのか…」

    終里が獰猛さを隠さない笑みを浮かべる。



    罪木「うゆ……こ、怖い人ばっかりですぅ……」

    七海「そうなの?」

    澪田「なんかすっごいバイクが学園前に来てたっすねー。めっちゃいい音鳴らしてなかなかよかったっす!」

    七海「……あれ、そんなことあったっけ。…あ、今朝ゲームしながら歩いてたから気付かなかったのかな…」

    罪木「危ないですよぉ…」

    ソニア「あれがジャパニーズヤンキーですね! バッドを持って突撃です!」

    澪田「青春の1ページっすねー!」

    七海「それは違う!……と思うよ?」



    77期生は後輩たちの話題で盛り上がっていた。

    日向「………」

    先輩後輩がどうというよりは、面白そうな奴がいそうかどうかという点に着目している辺、さすがだと思う日向だった。
  6. 15 : : 2017/12/08(金) 23:07:44
    澪田「うーん、うーん……後輩ズが気になるっす…」

    ソニア「そうですね…。どんな方たちなのでしょう」

    日向「さっきその一人と会ったが、元気なやつだったぞ」

    ここで日向も会話に加わることにした。


    澪田「むっきゃー! 創ちゃんっす!」

    花村「創チャンス!? それは一体どんなチャンスなんだい!?」

    澪田「創ちゃんにおはようって挨拶できて、その後にハグができるチャンスっす!」

    日向「そんなチャンスはない」

    花村「僕ならいつでもOKさ!」

    日向「いつからお前のチャンスになったんだ」

    七海「新入生の相談を受けたの?」

    日向は澪田と花村を無視することに決めて、七海たちのほうへ向き直った。


    日向「いや、教室に戻る道中でぶつかっちゃってな。スイマーって言ってたな」

    弐大「それは超高校級のスイマー、朝日奈葵じゃな」

    花村「ああ! あの子だね」

    左右田「なんだ、知り合いか?」

    花村「あの見事なBody……そして、あのおっぱい! 注目せずにはいられないよ!」

    左右田「あ? スイマーって女か?」

    小泉「葵、って普通に考えたら女の子の名前じゃない? 男でもいるだろうけど」

    西園寺「左右田おにぃは男か女かもわかんないんだね。ぷーくすくす、友達が少ないんだねー。かわいそう」

    左右田「うっせうっせ! 小泉も言ってるが、男の可能性もあんだろうが!」

    左右田が涙目で叫んだ。



    騒がしいクラスメイトたちを見ていると気分がいいが、一つ気になることが日向にはあった。

    狛枝「………」

    日向「………」

    普段から希望希望と言っている男が全く騒いでいないからだ。

    日向「……なぁ、狛枝」

    狛枝「……ああ。日向クン。何か用かな?」

    日向「やけに静かだが、どうした?」

    狛枝「ああ、うん…。ちょっと考え事をね…」

    日向「……予め言っておくが、新入生に余計なことはするなよ?」

    狛枝「その言い草は酷いなぁ…」

    日向「普段の行いや言動を省みろ」

    狛枝「うーん…大体予想されちゃってるなら白状するけど……どうやったら新たな希望たちをもっと輝かせられるかな?」

    日向「前もこのクラスのことでも似たようなこと言っただろ。放っておけ。勝手に成長するからな」

    狛枝「確かにこのクラスの人たちは、そうだね。でも、それはより強い希望がいたからだ」

    日向「より強い希望?」

    狛枝「新入生達にもそういう存在がいれば……キミの言うように勝手に希望が育っていくんだろうけど……」

    日向「……はぁ。何かするときは相談しろ。協力できるものは協力するし、まずいと思ったら止めてやる」

    狛枝「…ふふ。じゃあ、期待を裏切らないようにとびっきりすごい案を考えていくね!」

    日向「お前のとびっきりはいい予感が全くしないから加減しろよ」



    狛枝はこれでよし、と日向は安心し、次の人物へ話しかけた。

    日向「田中。静かだけど、どうした?」

    田中「…ふん。俺様は自身に封印をかけたのだ。時世を静観できるようにな。貴様がたった今その封印を解いてしまったがな」

    日向(話題に入れないから黙ってた、ってことなのか…?)

    日向「田中は新入生のことは気にならないのか?」

    田中「多少魔力を持った人間もいるだろうが、所詮は人間。俺様の目に叶う者はいないだろう」

    日向「動物好きとか絶対いると思うがな」

    田中「舐めるな! 言の葉を並べることは誰にでもできる。そこから資格と素質を持った者が俺様と同じ域に到れるのだ!」

    日向(言葉で好きって言っても、結局動物に好かれる素質がいるってことか…。資格はよくわからないけど…)

    日向「…いたらいいな。資格と素質を持ってる奴」

    田中「……ふん。期待はせん」

    破壊神暗黒四天王たちは事情がわかるはずもなく、キョトンとした表情で田中と日向を見ていた。
  7. 18 : : 2017/12/10(日) 21:48:23
    日向「というか、才能開発の時間だったよな。教室に大体揃ってるのはなんでだ?」

    澪田「唯吹はー……今日特に予定なかったんで、教室で千秋ちゃんとおしゃべりしてたっす!」

    七海「…うん。おしゃべりしてた…っす?」

    左右田「オレは予定があったんだが、来るはずだった業者が事故とかでこれなくなったらしくってなぁ」

    他にも聞いたが、予定が特になかったり、急に依頼がキャンセルされたりとたまたま皆の予定が空いために、教室に集めっていたらしい。

    日向「…いや、御手洗とトリスがいないな…ってそうか。締切近いからか」

    左右田「あー、そういや、そんな話もしてたっけな」

    日向「まぁ、今の段階でSOSも来てないし、そこまで余裕がないってことはないんだろうな」


    超高校級のアニメーター、御手洗亮太と日向によりトリスと名付けられた超高校級の詐欺師は、この場にいない。

    御手洗はアニメの作成依頼を受けており、それが才能開発となっている。

    当然として締切にも追われるため、こうして学園にこないこともある。

    しかし、これは以前までと比べると大幅に改善されていると言える。


    左右田「罪木が一度様子見に行ったんじゃなかったか? 今日で3日目だろ確か」

    罪木「は、はぃ…。少し夜更かしをしていたみたいでしたが、徹夜はしていないみたいですし……」

    日向「トリスもいるから、食事周りも大丈夫だろうな」

    澪田「んーーー、でも、亮太ちゃんにもトリスちゃんにも会えないって寂しいっすねー……なんて…」

    日向「でも、前みたいに全員で乗り込むのは迷惑になるからダメだぞ」

    澪田「あれは楽しかったっすねー! 狭いところでむぎゅーって!」


    御手洗とトリスがクラスに馴染みだした頃。

    御手洗のアニメの締切が近くなり、御手洗が学園に来なくなった。

    澪田「亮太ちゃんが大変なら手伝いに行こうっす!」

    この一言によりクラス全員で御手洗のボロアパートに乗り込むことになったが……とりあえず、気弱な御手洗が


    御手洗「作業ができないからお願いだから帰って……」


    と懇願するような騒ぎになった。


    日向「まぁ御手洗も辛かったら連絡くらいは寄越してくるだろうから、それまで信じて待ってよう」

    日向がそう締めくくって、御手洗の話は終わった。
  8. 20 : : 2017/12/12(火) 21:47:00
    その後、通常授業の時間になったため、一度解散した。

    そして、授業後…。

    何やら花村が話があるというので集まったが、そこにいたのはなぜか男子だけである。

    花村「んふふ…集まったね。じゃあ、早速本題を話すけれど、これから後輩たちを視姦……いや、ちょっと見に行かない?」

    左右田「もうわざとだろ、お前…」

    九頭龍「なんでわざわざ俺らが動いてまで見に行かなきゃならねえんだ」

    花村「よく聞いて! 僕たちの上の76期生、そして、僕たち77期生…女の子に綺麗どころは多いけれど、今回入学してきた78期生はそれよりも群を抜くよ! なんせアイドルにギャルという飛び抜けた存在がいるからね!」

    左右田「結局オメーはそいつらが見に行きてえだけじゃねえか!」

    花村「でも、君たちも興味がないなんてことはないよね!?」

    狛枝「確かに…興味はあるよね」

    九頭龍「テメーは黙ってろ」

    田中「ふん。俺様の魔力を前に奴らが耐えられるとは思えんな」

    左右田「オメーも黙ってろっての」

    弐大「じゃが、後輩たちにいる野球選手や格闘家、あとスイマーというのは気になるのう」

    日向「……もう個人で気になる奴を見に行けばいいんじゃないか?」

    九頭龍「一緒に見に行く必要はねえだろ…ったく…時間の無駄だな。俺はもう行く」

    九頭龍が去ったことを皮切りに、左右田、弐大、田中が立ち上がった。

    左右田「オレも行くぜ。そんなことより開発途中のモンを仕上げる方が大事だからな」

    弐大「儂もこの後トレーニングを依頼されとるからな。悪いが、付き合えんわい」

    田中「愚者の集まりになど興味はない」


    そう言って3人は去っていった。

    残ったのは花村、日向、狛枝……。


    花村「さぁ、僕たちでどんな後輩たちなのかこの眼に焼付けよう!」

    狛枝「新たな希望たち……どんな輝きを見せてくれるんだろうね…!」

    日向(不安しか感じないな…)

    日向は先の展開に不安を覚えつつ、花村の先導について行った。
  9. 21 : : 2017/12/14(木) 23:37:56
    花村「ふっふっふ……ここがあの秘密の花園…!」

    日向「お前の頭には女子のことしか頭にないんだな…」

    狛枝「はぁ…はぁ……希望が…希望がすぐそこに…」

    日向「お前の頭には相変わらず希望しかないな…」


    花村が扉に手を掛けようとしたその瞬間……。


    ドゴッ!


    花村「アブルッ!?」


    扉と共に花村が吹き飛んだ。

    日向「は、花村!?」


    「ヤンのかテメェ!!!」


    日向の声も教室内の大声で掻き消えた。


    「……今この瞬間、お前が俺の足を止めているだけで、どれほどの経済損失が出ているのかお前には理解できまい。お前にできるのはさっさとそこを退くことだ。わかったらさっさと退け、プランクトン」


    「あぁあん!? ……何言ってやがんだテメェ! わかるように言いやがれ!」


    日向が中を覗くと、いかにも不良です、という格好の大男と高級そうな服を着た高身長の男が対峙していた。


    ひと目で剣呑な雰囲気であると感じ取れた。


    「この程度も理解できんとはな…。希望ヶ峰学園はこのような低脳を入学させるのか……俺としたことが判断を間違えたらしいな」


    「よぉーし。わかった。何言ってんのかわかんねえが、俺を馬鹿にしてんのはわかるッ! テメーはぶっ飛ばす!」


    「やれるものならやってみるがいい。トウモロコシヘッド」


    ブチッ、という音と共に不良風な男が殴りかかり、メガネのイケメンがそれを軽々と避けた。


    日向「……やっぱり超高校級って一癖二癖あるな……ん?」


    日向が別方向を向くと、教室の隅に4人固まっている姿が見えた。


    どうやら暴れている二人から避難しているようだ。


    日向が手招きすると一人が気づき、ゆっくりと教室を出てきた。


    日向「…えっと、78期生…だよな?」


    「そ、そうです……って、あれ…?」


    日向「ん…? お前…確か……」


    「えっと…日向君、だよね? な、なんでここに…」


    日向「お前こそ……いや、ここにいるってことは新入生ってことだよな」


    日向「苗木」


    数ヶ月前、偶然出会ったその男と日向は再会した。
  10. 22 : : 2017/12/16(土) 21:44:32
    日向と苗木は互いに少し話をしたことがある程度…顔見知りというだけの関係である。

    日向が超高校級の相談窓口として希望ヶ峰学園提携の病院に出向した時、偶然苗木と出会ったのだった。

    お互いに少し話をした程度だが、二人は互いのことを覚えていた。


    苗木「日向クンも超高校級だったんだね。びっくりだよ」

    日向「それは俺も同じだよ。お前も……才能を持っていたんだな」

    こうして超高校級として認められているということは、何かの分野で才能を認められているということ。




    未だに日向の心の奥で燻る嫉妬の感情。


    超高校級として認められてなお、他の超高校級を見るとその才能に嫉妬してしまう。


    予備学科時代に…もっと言えばそれ以前から根付いている感情であるが、超高校級になってからはそれも軽くはなっている。


    軽くはなっているが、やはり少しは羨ましいと思ってしまう。


    そんな自分が浅ましく感じられて日向は軽く自己嫌悪に陥った。



    苗木「…? どうかしたの? 日向クン」

    日向「あ…いや、なんでもない。改めて自己紹介するか。超高校級の相談窓口、日向創だ」

    苗木「えっと…超高校級の幸運の苗木誠だよ。よろしくね」

    日向「幸運? ってことは…」

    日向がチラと後ろを見ると、狛枝がずいっと一歩前に出てきた。

    狛枝「…キミも幸運なんだね…」

    苗木「え? あ、はい…」

    狛枝「……キミはどんな幸運なのかな? 宝くじを当てたりする幸運? それとも自分の都合の良い展開に持ち込むことができる幸運かな?」

    苗木「…えっと…ぼ、ボクは特に何も……ただ本当に抽選で当たっただけで…」

    狛枝「きっと、キミはボクなんかのゴミクズな幸運とは違って、希望なんだよね! 期待してるよ!」

    苗木「ど、どうも……?」

    日向「おい、苗木が困ってるだろ」

    狛枝「ああ、ゴメンね? もう黙ってるよ」

    狛枝は薄く笑いながら日向の後ろへ一歩下がった。


    日向「悪いな苗木。こいつは才能があるやつにはいいやつ……でもないなお前」

    狛枝「アハハ、ひどいな」

    苦笑する狛枝に全く悪気はなさそうである。

    苗木「う、うん…気にしないようにするよ。それより、日向クンの相談窓口っていうのは?」

    日向「ああ。相談窓口っていうのは人に相談を受けて、それを解決できる才能……ってことになってるな。人間関係が主だが、色々な相談に乗って、アドバイスをしたり実際に何かやったり、だな」

    苗木「…人間関係……それって、例えば…?」

    日向「そうだな……わかりやすいのだと友達のつくり方、好きな人へのアピールの仕方…とかだな」

    苗木「…そっか……あの、日向クン。ボクも相談に乗って欲しいことがあるんだけど、いいかな?」

    日向「ああ。いいぞ。明日の午前が空いてるからその時でいいか?」

    苗木「うん。お願いするよ」

    日向と苗木の話が一段落ついたタイミングで、苗木と共に出てきた他3人が近づいてきた。
  11. 23 : : 2017/12/17(日) 16:53:22
    「あ、あのぉ……」

    苗木と共に出てきた4人のうち、苗木よりも小柄な女の子がおずおずと声をかけてきた。

    日向「ああ。すまない。放ったらかしになってしまったな」

    「だ、大丈夫だよぉ…。えっと…不二咲千尋ですぅ。超高校級のプログラマーだよぉ…」

    日向「プログラマー……あまり詳しくないが、どういった才能なんだ?」

    不二咲「うーん…説明が難しいけど……最近作ってる物だと人間と同じ考えや行動をするAIを作ってるよぉ…」

    日向「そ、それはすごいな……。すごいけど、そういうのって秘密だったりしないのか?」

    不二咲「…………あ…」

    日向「…大丈夫だ。言いふらしたりしないから」

    不二咲「あ、ありがとぉ……」

    涙目になったまま、ホッとする仕草は不二咲に小動物のような庇護欲を沸かせた。

    日向「それでそっちは…」

    「ふむ、ついに僕の出番というわけですなぁ!」

    巨漢の男。

    丸々と太ったシルエットが特徴的でその巨漢のせいで背負っているリュックが小さく見える。

    日向の第一印象は「オタク」だった。

    以前、こういった人間の相談を受けたことがあるため、その印象を引っ張ってきてしまったが…。

    「山田一二三……すべての始まりにして終わりなる者……」

    日向(田中と同種の人間か…?)

    山田「超高校級の同人作家ですぞ!」

    日向「同人作家ってことは同人誌を専門ってことか?」

    山田「おや、日向創殿は同人誌に精通してらっしゃるので?」

    日向「いや、実物は読んだことはないが、話には聞いたことがある程度だ」

    山田「なるほどなるほど。では入口に立ったばかりというわけですな。まずは興味を持つ、そこからが新しい世界の第一歩ですぞ。というわけで、今度僕の同人誌を読んでみませんかな?」

    日向「ああ。ぜひ読ませてくれ。相談室になら大体いるからな」

    山田「……これはどうやら早速同士が見つかったようですな」

    山田は嬉しそうに顎を撫でた。


    日向「さて…最後は…」

    日向が最後の一人に目を向けると、不機嫌そうな表情を浮かべた女の子がいた。

    大きなメガネと三つ編みが特徴的であり、超高校級の生徒の中で田舎娘のような姿は逆に目立っていると言える。


    「………」

    日向「すまない。せっかく話す機会ができたわけだし、良かったら自己紹介してくれないか?」

    「………腐川冬子…」

    日向「腐川か。よろしくな」

    腐川「……な、なによ…。せっかく話しかけてやってんのになんだこの女は、とか思ってんでしょ…」

    日向「…え?」

    腐川「ふ、ふん…アンタみたいな人間が何を考えてるなんてすぐわかるわよ…! どうせなんでこんな奴がこんなところに、とか思ってるんでしょ!?」

    日向「初対面でそんなマイナスなことを思うか!」




    日向(やっぱり超高校級は一癖あるやつが多いな…)


    日向はすぐそばで目をキラキラさせている狛枝を横目にため息を吐いた。
  12. 24 : : 2017/12/17(日) 22:18:33
    日向「…それで本題に入るが……アイツ等はなんであんなことになってるんだ?」

    苗木「ええっと……あっちの学ランの人が大和田クンで超高校級の暴走族。あっちのカッコイイ人が十神クンで、超高校級の御曹司だね。なんで喧嘩してるのかはちょっとわからない…」

    不二咲「いきなり大和田クンが大声出して、大きな音がしてぇ……」

    山田「気づけば、一触即発でしたぞ」

    日向「…それで、4人で教室の隅っこへ避難してたってことか」

    和やかに自己紹介をしていたが、依然として大和田と十神の喧嘩……というより大和田が攻撃をして、十神が全て避けている。

    均衡が続いているように見えたが……。


    大和田「ゼェ……ゼェ……クッソ、ちょこまかしやがって…!」

    十神「ふん。もう体力切れか……所詮は不良だな」

    大和田「なめんな!」

    疲労困憊の大和田が突き出した拳を十神は余裕で避けると、大和田の腹に膝蹴りを繰り出した。

    大和田「グアッ!?」

    十神「フン…。無駄な時間を過ごしたものだ」

    悶絶する大和田を放って、十神が教室から出てきた。

    廊下で話す日向たちには一瞥もくれず、去っていった。

    日向「………そうか。十神って…あの十神か」

    苗木「日向クン、知り合いなの?」

    日向「いや、そういうわけじゃない」

    クラスメイトの超高校級の詐欺師……。

    後にトリスと日向に名付けられた彼が御手洗亮太の姿を借りる以前、十神白夜の姿を借りていたと日向は聞いたことがあった。

    日向「……とりあえず、大和田……だっけか。アイツの手当をするか」

    苗木「あ、そうだね」

    日向が大和田に近づくと大和田は腹を抑えているが、立ち上がろうとしていた。

    日向「大丈夫か?」

    大和田「あぁ…? なんだテメェ…」

    日向「超高校級の相談窓口、日向創だ。一応お前らの先輩になるな」

    大和田「…チッ……」

    大和田はフラフラとしながら立ち上がったが、その体は震えている。

    日向「…手を貸すか?」

    大和田「いるわけねェだろ!」

    日向「そうか。なら、保健室は1階の昇降口前にある。中に保健委員がいるから手当してもらうといい。気弱なやつだから優しくな」

    大和田「…………」

    大和田は手負いの獣のようにギラギラとした視線を崩さぬまま、教室を出ていった。

    後に残されたのは荒らされた教室と日向たちだけ…。


    日向「…とりあえず、片付けるか」

    苗木「あ、そうだね…」

    日向「狛枝も有言実行で黙ってるのはわかってるが、そろそろ会話に入って来い」

    狛枝「……そうかい? じゃあ、ボクは外で伸びてる花村クンを保健室に運んでから手伝いにもどるよ」

    日向「……花村のこと忘れてたな…」

    どこからか「ヒドイやヒドイや!」という声が聞こえてきた気がした。
  13. 25 : : 2017/12/19(火) 22:34:05
    日向「さて、じゃあ、そろそろお暇するか」

    荒れた78期生の教室を片付け終わった日向は、一息ついてからそうつぶやいた。

    苗木「相談室には明日お邪魔させてもらうね」

    山田「やー、相談事は特にないですが、日向創殿とは色々と語り合える存在になりそうですし、僕も相談室には言ってみますぞ!」

    狛枝「はぁ…はぁ……日向クンの…希望が……輝いてる…ッ!」

    日向「落ち着け。じゃあ、またな。何か相談事があったら頼りに来てくれ」

    息を切らせながら興奮する狛枝を引きずりながら日向は78期生の教室を出ていった。

    狛枝「いやぁ、なかなか期待できそうな人達だったね」

    日向「…お前、終始息を切らせていたが、そんなにアイツ等のことを気に入ったのか?」

    狛枝「気に入ったも何もスバらしいじゃないか! まだまだ発展途上であるもののこれからに期待できる希望たちばかり……あぁ、彼らのために踏み台になってもっと希望を輝かせて欲しい…」

    日向「落ち着け……。さて、これからどうするか…。狛枝はどうする?」

    狛枝「せっかくだからボクは、日向クンに付いていこうかなと思ってるんだけど…あぁ、ボクみたいなゴミクズに付いてこられるなんて迷惑だよね、ゴメンね」

    日向「お前そういうのやめろって。狛枝を低く見たことはないし、これからもそんな予定はない」

    狛枝「……ふふ。そうかい」

    日向「狛枝に予定がないなら俺も予定がないし、相談室でお茶でもどうだ? 菓子も出すぞ」

    狛枝「ボクが断わるわけないじゃないか! 日向クンが作ってくれたお菓子……食べれる幸運に一口一口感謝しながら食べさせてもらうよ!」

    日向「………」


    口いっぱいに菓子を詰め込んでやろうかコイツ、と日向は思ったが、口には出さなかった。


    その後、相談室で狛枝と茶菓子を食べながら雑談して過ごした。
  14. 27 : : 2017/12/21(木) 23:43:22
    次の日。時刻は午前中。

    日向が相談室で書類整理をしていると、相談室の扉がノックされた。


    苗木「し、失礼しまーす…」

    日向「おう。苗木。待ってたぞ」

    苗木「あ…日向クン…。よかった。立派な部屋だったから間違えちゃったのかと思ったよ」

    日向「立派な部屋…?」

    日向が既に日常となった自身の領域を見渡す。


    飾りは依頼者が持ってきたものが多いが、配置には気を使っているし、ものがひしめき合っているように見えないようにしている。

    また、相談室を割り当てられた時から使われている机やソファなどの備品は、それなりに高価に見える。

    苗木の反応で自身の感覚が超高校級に染まっていることに若干の焦燥感を日向は抱いた。


    苗木「日向クン?」

    日向「ああ。すまん。なんでもない。それじゃあ手間になるが、この紙に記述頼む」

    苗木「…結構本格的なんだね」

    日向「それが俺の才能の成果物になるからな」

    苗木「あ、なるほどね。了解だよ」


    苗木がさらさらと、日向自作の依頼書の必要事項に記述していく。

    苗木「…はい。こんな感じでいいかな?」


    名前 苗木誠
    才能 超高校級の幸運(78期)
    年齢 10代
    相談事カテゴリー 友人関係
    相談事の概要 クラスメイトとの関係



    日向「…ああ。クラスメイトとの関係…な。どういう内容か具体的に頼む。話しにくいことは話さなくて構わないからな」

    苗木「うん。よろしくね」


    苗木は緊張した面持ちで話し始めた。


    >>26 ありがとうございます。飽きられちゃったかなぁとちょっと心配してました。
    こっから展開早くなる(予定)
  15. 29 : : 2017/12/24(日) 14:07:43
    苗木「……日向クンはさ…ボクにどんなイメージを持ってるかな?」

    日向「ん? その質問は相談事に関わることか?」

    苗木「ちょっとした興味もあるけど、関わることだね」

    日向「どんなイメージ…か。そうだな。まだ、そこまで深く話をしたこともないし、イメージらしいイメージはまだ持っていないけど…強いて言うなら普通なやつ…だな。超高校級の中では」

    苗木「…うん。そのとおりだと思う…」

    日向「……それで、お前のイメージが何か関係があるのか?」

    苗木「ああ、ううん。やっぱりボクって外から見ても普通なやつだなって再認識しただけだから…。えっと、それで悩みの本筋なんだけど……」

    日向「……」

    苗木「日向クンが言うようにボクは普通だ。一般人なんだよ。そんなボクが……超高校級と呼ばれる人たちの中にいるのは……何というか気後れするんだよね」

    日向「……『運で選ばれただけの一般人』……だから、本当にすごい彼らと自分が同列に見られるのは、間違っている、ってことか?」

    苗木「……いや、間違ってるとかそういうことを言いたいんじゃないんだ。ただ……目の前にいる人たちがすごい人だと思うと、ボクなんかが関わっていいのか、って思っちゃうんだよね」

    苗木「十神クンが言っていたけど、彼らをボクとの雑談なんかに時間を割くことがどれだけ影響が出るのか…とか考えちゃうんだよ」


    日向「………」

    日向(昔の自分を見ているみたいだな…)

    超高校級の相談窓口と認められても、自分はただ人の相談に乗っていただけ。

    それを才能と言われてもピンと来ない。

    超高校級のメカニックや超高校級の料理人などと同列の超高校級と言われても、自分のほうが劣っているように感じられた。


    そんな時期が日向にもあった。

    結果としてそれは杞憂であったが。






    日向「…苗木は…クラスメイトの奴らを凄い奴らだ、って思ってるんだな」

    苗木「それは…うん。彼らはこれから先の未来を作っていくことができるすごい人たちだよ」

    日向「そうだな。それは間違っていない。なら、お前はどうしたいんだ?」

    苗木「……え?」

    日向「そうだな……。一つ一つ紐解いて行こう」


    Q1.他の超高校級たちと仲良くなりたいのか?


    苗木「もちろんYESだよ」

    日向「じゃあ、次だ」




    Q2.超高校級の生徒たちは友達を必要としていない人間なのか?


    苗木「いや、そんなことはないと思う。……十神クンは…どうだろう」

    日向「あいつは例外でいい。じゃあ、最後だ。今度はYES、NOじゃないぞ」





    Q3.友人関係になるための条件は?


    苗木「……条件…」

    日向「そんな難しいものじゃない。それに普段はあまり意識しないものだ」

    苗木「…………」

    苗木が顎に手を当てて考えている。

    だが、答えを口に出そうとしては言葉を引っ込めているようで、苗木は口をパクパクとさせていた。

    そんな苗木を見て苦笑しながら日向は口を開いた。



    日向「急に言われたら困るよな。最後の質問の答えは俺の持論になるけど、『互いに認め合うこと』だと俺は思う」

    苗木「……」

    日向「どちらかが見下しても、見上げてもそれは友達じゃない。主従関係とかの別のものになってしまう。相手を尊重して、゚尊敬できる、そんな関係が友達だと俺は思う」



    日向「ここまで紐解いたが、苗木はクラスのやつらと友達になれそうか?」

    苗木「…うーん…。言いたいことはわかるんだよね。日向クンの言うことは最もだと思うし、正しいと思う。でも、そんなすぐに切り替えられるものでもないし…」

    日向「…そうか…。なら……ちょっと来てもらえるか?」


    立ち上がった日向を不思議そうに見ていた苗木は、慌てて立ち上がった。


    >>28 ありがとうございます!
  16. 30 : : 2017/12/25(月) 00:02:24
    二人が訪れたのは77期生の教室。

    来たことのないエリアを訪れた苗木は、ひっきりなしに辺りをキョロキョロとしている。

    日向「ここが俺のクラスだ」




    二人が中を覗くと、いつものようにゲームをしているが……メンバーは珍しく西園寺、罪木、九頭龍、辺古山という面子である。


    西園寺「ちょっと! ゲロブタ! それ私が取ろうと思ったのに!」

    罪木「ふ、ふぇ!? ご、ごめんなざいぃぃぃ!!」

    小泉「勝負してるんだから仕方ないでしょう……」


    九頭龍「ペコ……山…。まさかテメェとこうして戦う時が来るとはな…」

    辺古山「ぼっ……九頭龍……立ちふさがるのであれば容赦はしない…」

    左右田「なんでオメーらそんなに雰囲気物騒なんだ…」



    少し離れたところでは七海と狛枝が何やら話をしている。


    狛枝「七海さんを中心に皆の希望が高まる……スバらしいよ…!」

    七海「うーん…最近は私が、っていうより皆率先してやってるような気がするけどね」


    狛枝「それもそうだけど、きっかけはやっぱり七海さんだよ。キミも希望に値する存在…ボクはそう思うよ」

    七海「……狛枝クンはやらないの?」

    狛枝「とんでもない。ボクのようなゴミクズが皆の輪に入ってしまったら不快にさせちゃうよ」

    七海「むー……今更みんながそんなこと言うわけがないのに…」

    七海が不満そうに頬を膨らませた。




    日向「……どうだ?」

    苗木「…ど、どうだって言われても…」

    日向「普通の高校生みたいだろ?」

    苗木「………」

    日向「確かに超高校級っていうのは常識はずれだし、気後れするのもわかる。だが、根本的な部分では高校生とそう変わらない。そこに変に線引きをしてるのは、相手じゃなくて自分なんだ。だからな…」


    日向「まずはゲームとか……なんでもいい。遊びにでも誘ってみたらいい。そして、人となりを理解すれば……一緒に遊ぶくらいはできるようになると思うぞ」


    苗木「……うん」


    苗木は相談に来る前とは違い、明るい表情で77期生たちのやり取りを見ていた。
  17. 33 : : 2017/12/29(金) 02:12:42
    再び二人は相談室へと戻ってきた。


    日向「まずは相手が超高校級っていう自分とは次元の違う人間じゃないってことはわかったか?」

    苗木「うん。壁を感じていたけど、むしろ壁を作ってるのはボクのほうだったんだね」

    日向「そんな壁を感じるのはある意味仕方がない。超高校級の奴らは一癖二癖あるからな」

    苗木「うん。でも、もう大丈夫かな。とりあえず仲良くするために努力していくよ」

    日向「ああ。頑張れよ。…相談に乗った俺が言うのもなんだが、えらく前向きになったな」

    苗木「前向きなのがボクの取り柄だからね」

    苗木は明るく笑った。


    苗木「にしても、日向クン…。よくここまで的確にアドバイスができるね」

    日向「……俺はお前と同じだったからだよ」

    苗木「…? どういうこと?」

    日向「立場から状況まで似ているところがたくさんあるってことだ。まぁその話はまた今度しよう。今日はもう時間だ」

    苗木「あ。もうこんな時間か」

    苗木が立ち上がり、相談室の扉へ向かう。

    苗木「ありがとう。日向クン。また何か相談事があるときはよろしくね」

    日向「ああ。クラスメイトとは色々あると思うが、頑張れよ」

    そう言って二人は別れた。



    その後、午後の別件の依頼を片付けて、苗木のも含めて報告書をまとめていると…。


    コンコン…、と相談室の扉がノックされた。


    「失礼しまーす…」

    恐る恐るといった風に扉を開いたのは、見覚えのある金髪だった。

    日向「菜摘じゃないか。どうしたんだ?」

    菜摘「別に? ちょっと近くを通ったから寄っただけ」


    来訪者は九頭龍菜摘。クラスメイトの超高校級の極道である九頭龍冬彦の妹である。

    彼女自身からの相談と色々とゴタゴタした事件を乗り越えた末、菜摘は時々相談室にお茶を飲みに来るようになった。


    菜摘「とりあえず、来たんだからお茶お願い」

    日向「喫茶店じゃないんだが?」

    菜摘「でも、なんだかんだ出してくれるよね」

    日向「せっかく来てくれたんだから無碍にはできないさ」


    日向がお茶を淹れて、ついでに自作の茶菓子を出す。

    本日の茶菓子はおはぎである。


    菜摘「……美味しい……日に日に腕を上げていってない?」

    日向「まぁ一応研究はしてるからな。だけど、お菓子職人や料理人にはまだ叶わないよ」

    菜摘「どこまで行こうとしてんのよ……そこまで行ったらもう超高校級じゃん…」

    確かにな、と日向は苦笑した。


    菜摘とは日向が予備学科時代からの付き合いである。

    そのため、日向にとって菜摘は才能がない苦しみを知っている同士と言える。

    それ以外にも菜摘の性格が好ましく、こうして来るたびにお茶を出してやっているという側面がある。


    菜摘「うーん…この部屋はもう相談室じゃなくて、喫茶店日向ぼっことかにしたほうがいいんじゃない?」

    日向「相談窓口が才能なのにか?」

    菜摘「喫茶店運営をしつつ、相談も聞く、って形にすればいいでしょ。話題になって儲かりそうじゃない?」

    日向「相談料でお金を取るのか、喫茶としてお金を取るのか…」

    菜摘「あ、その時は私も発案者だし、働いてあげるよ? ありがたく思いなさい」

    日向「なんでそんな偉そうなんだ…」


    こんな会話を繰り広げつつ、午後を過ごした。
  18. 41 : : 2017/12/30(土) 20:51:33
    それから数日。

    日向「……ん?」

    日向は相談室前のポストに入っていた投書の一つに目を止めた。

    相談室前には日向と直接話すことができない者や直接会うコネがない者が相談の依頼ができるように、相談者の情報を簡単に記述して投書ができるポストが置いてある。

    最近では一日に1通、多いと3、4通入っていることがあるが、今日は目の前の1通がポストに入っていた。


    日向「桑田怜恩…? 確か超高校級の野球選手だったか」

    日向(確か、弐大が期待してるとか言ってた奴だな)

    そんなやつが自分に相談の依頼……。

    日向「一体どんな内容なんだ…」




    名前 桑田怜恩
    相談のジャンル 恋愛
    相談内容 女の子の振り向かせ方
    日時 いつでも
    連絡先 090xxxxxxxx
        xxxx@kibougamine



    日向「……なんだか、左右田みたいなやつだな…。」

    「うっせうっせ!」と誰かが泣きながらツッコミを入れた気がした。

    日向は用紙のメールアドレスに自身の連絡先を記述して、都合の良いときに連絡を入れるように記載した。


    日向「しばらくすれば連絡が…」


    ブーッ…ブーッ…


    と、すぐに携帯が震えた。

    ディスプレイを見ると、そこには用紙に書いてある桑田の連絡先と同じ番号が映っている。


    日向「…早すぎだろ」

    少し呆れながら日向は電話に出た。

    日向「もしもし」


    『あー、もしもーし? えーっと、日向センパイ?っすか?』


    日向「ああ。そうだ。超高校級の相談窓口の日向創だ。そういうお前は桑田で大丈夫か?」


    桑田『合ってるぜ! …じゃなくて、合ってますぜ!』


    日向「……敬語に慣れてないなら気にしなくていいぞ。この学園じゃあ年功序列とかないしな」


    桑田『あ、そう? なら普段通りに喋らせてもらうぜ。んで、連絡をくれたってことは相談に乗ってくれるってことでいいんだよな?』


    日向「ああ。明日なら都合がいい。いつでも大丈夫だ」


    桑田『なら、明日の午後一にお願いするぜ。午前だと起きれないかもしれないからな!』


    日向「……ああ、承った」


    日向(時間にルーズなタイプか…?)


    桑田が明日遅刻することも視野に入れつつ、日向は電話を切った。
  19. 42 : : 2018/01/01(月) 22:27:51
    tips【日向創誕生日特別編】


    日向は大晦日に特に夜ふかしすることなく、普段とそこまで変わらない時間に眠った。

    年末が近づくにつれクラスメイトたちのバカ騒ぎに巻き込まれることが増え、大晦日もその例に漏れなかった。

    0時を過ぎて、新年の挨拶を軽くかわしてから解散した。


    新年の朝といっても特別な高揚感もなく、いつもと変わらない朝だと日向は感じた。



    ガッコン!


    澪田「はっじめちゃーん!!」


    澪田が日向の部屋の扉を破壊してから侵入してこなければ…。


    日向「うおお!? な、なんだ!?」

    澪田「おはようございまむ! 澪田唯吹です!」

    日向「いや、知ってるって…。何だ、朝から人の部屋の扉壊してまで…」

    澪田「えっとー、唯吹は創ちゃんを呼びに来ただけなんすけど……勢い余ったっす!」

    てへっ、と反省する気のない笑顔で惚ける澪田。

    日向はため息をつきつつ、扉を簡単にだが補修する。

    日向「俺を呼びに来たって、朝からどこかに行こうとか話してたっけか?」

    澪田「初詣っす! でも、その前にやっとくことがあるんすよ!」

    日向「確かに初詣の約束はしたけど……他に何かあったか?」

    澪田「あー! 自分のことなのに忘れるなんて自分不幸者っすよ!」

    日向「なんだそれ」

    結局事情の説明もないまま、日向は部屋を連れ出されたのだった。





    『HAPPY BIRTHDAY HINATA!』


    そう書かれた弾幕が吊るされ装飾された食堂はいつもと違った景色に見え、日向は一瞬意味が分からず口をポカーンと開けた。


    日向「……あ。そうか。今日は俺の……」

    澪田「そう! 誕生日っす!」

    日頃の相談窓口としての活動や日々の騒動、追い打ちで年末における連日のお祭り騒ぎで、日向はすっかりと忘れていた。


    日向に気づいたクラスメイトたちから次々に祝いの言葉が告げられる。

    七海「んっと……誕生日おめでとう……と思うよ?」

    狛枝「誕生日おめでとう、日向クン。ああ、こんな新年という新しい世界が開けると言ってもいい日にキミの誕生日が存在するだなんてこれもう運命…奇跡だよ! そして、それを祝えるだなんてボクはなんて幸運なんだ!」

    左右田「喜んでんのはわかるが、なげえよ!」

    小泉「もう、主役が遅れてくるだなんていい度胸よね。さっ。主役は真ん中に来なさい」


    日向が皆の真ん中に行くと、大きなバースデーケーキが置かれている。


    日向(……才能才能ってずっとやってきたせいで、誕生日なんて忘れてたな…)

    両親からもいつから祝われていないか忘れるほど、覚えがない。
  20. 43 : : 2018/01/01(月) 22:27:54



    罪木「ひ、日向さんのお誕生日をお祝いできるなんてわ、私…」

    西園寺「ケーキが不味くなっちゃうよねー!」

    罪木「ごめんなざぃぃぃぃ!! わ、私をお皿替わりにしていいので嫌わないでくださいぃぃぃ!!」

    西園寺「本当に不味くなるからやめてよね!?」


    花村「んふっふっふ。このバースデーケーキは、僕が超高校級のお菓子職人のところに行って罵倒されながら教えてもらって作ったものだからね! 味は保証するよ!」

    九頭龍「だから、いらねぇ情報付けんじゃねえよ」

    辺古山「しかし、見事なものだが……何も入っていないだろうな」

    田中「…ふん。我が破壊神暗黒四天王と俺様自身が邪眼を開放して見張っていたのだ。特異点の生誕祭が混沌に飲まれる宿命などありえん」

    ソニア「大丈夫です! 田中さんと一緒に見てましたが、普通に作っていらしてましたよ」



    トリス「……早くしてくれないかな……もう、我慢が…」

    御手洗「ちょっと! 早く始めて!? 彼を抑えるのもそろそろ限界…!」


    御手洗の悲鳴により騒がしかったクラスメイトは、一旦静かになり…。


    「………」

    澪田「ちあきちゃーん!」

    七海「……あ、そっか。私か」

    小声で叫ぶという器用な事をする澪田の声で、七海は何かに気づいたように手を叩いた。


    七海「……んーっと……日向君。お誕生日おめでとう」



    『おめでとう!』



    七海「…だと思うよ?」

    左右田「だぁから、一言余計だっつーの!」

    トリス「もう我慢しなくでいいよね? 否、しない!」

    終里「おっしゃああ! 食うぞ!」

    弐大「ガッハッハッハ! 日向よ。このままでは、お前さんの誕生日なのに食いっぱぐれるぞ!」


    一気に騒がしさを取り戻したクラスメイトを見ながら日向はつぶやいた。


    日向「…今年もよろしくな。みんな」


    ※人数多すぎ問題。
    1/1なので特別編でお送りしました。
  21. 44 : : 2018/01/02(火) 23:24:30
    桑田のことはさておき相談依頼がなかったため、日向は教室へと戻ってきた。

    七海「最近、日向君忙しそうだね?」

    そして、自分の席に着いたところで、携帯ゲーム機を操作しながら七海がそう尋ねてきた。


    日向「ああ。なんだか噂が広まってるらしくて、それで依頼が増えてな」

    相談窓口としての活躍が人伝いに話が広まり、それを頼りに日向の元へ相談に来る者が増えた。

    しかし、日向は”親身になってくれる超高校級がいる”のようなポジティブな噂を想像するだけで、具体的な内容を聞いていないため知らなかった。

    七海「……ああ。あの…」

    日向「あの?」

    七海「んーっと……超高校級なのに普通な奴がいる…とか」

    日向「その評価は喜んでいいのか微妙だな…」

    七海「あとは、的確なアドバイスをくれるし、話すだけでも価値がある…とかも」

    日向「それは喜んでおこう」

    日向と七海が話していると、それを聞いたクラスメイト(女子)が話に加わってきた。

    澪田「あとあとー、見た目普通だけど、色々と気が利いて紳士的とも聞いたっす!」

    ソニア「あら? わたくしは英国紳士風のイケメンだと聞きましたが」

    西園寺「日向おにぃは私の奴隷!」

    日向「なんだか色々な噂が広まってるんだな…。それと西園寺。それはお前が勝手に言ってるだけだろ」


    小泉「うーん、私も聞いたけど……どれも日向とはほぼ関係ない噂ばっかりだったわね」

    日向「ほぼ、ってことは本当のこともあるのか?」

    小泉「アドバイスが的確っていうのと……女の子タラシってことかな」

    日向「俺がいつ女誑しになったんだよ」

    「…………」

    何人かにジト目で見られたが、日向は気にしないことにした。




    その後、クラスメイト(男子)にも話を聞いてみた。

    左右田「噂なぁ…。そんなもんに知り合いで興味あるやつがすくねえから、オレも聞いたことねえな」

    弐大「儂は日向のことを話してる連中がいることは知っとるぞ。内容については知らんがな!」

    九頭龍「…ウチの連中が何人か行ったらしいな。世話んなった。んで、ちとテメーのことは話してたが、頼りになるやつってことくらいだったぜ?」

    トリス「ああ。色々あるよね。一番面白かったのは、日向君は超高校級の女誑しってことだね」

    御手洗「……ああ」


    日向「………噂なんて背びれ尾びれ付くものだけど、付きすぎだろ…。あと、御手洗は何を納得した」


    トリス「僕はあながち間違いないと思うけどね」

    御手洗「日向君は女誑しというよりは、人誑しだと思うんだよね」

    九頭龍「言うようになったじゃねえか、御手洗」

    左右田「ああ。人誑しってのはなんかわかるな」


    うんうん、と頷くクラスメイトを見ながら日向は自分の身の振り方を猛省することになった。


    しかし、結局全力で相談に乗って、自分のできることをするだけだと思い直してこれからも対応は変えないことにした。
  22. 45 : : 2018/01/06(土) 00:16:42
    翌日、午前。

    苗木「日向クン!」

    教室に行く前に相談室に寄った日向の元へ苗木がやってきた。

    日向「苗木じゃないか。どうしたんだ? また相談事か?」

    苗木「いや、そうじゃないよ。ただ、ちょっと…ね」

    苗木は少し言いづらそうに頬を掻きながら話し始めた。


    苗木「えっと…桑田クンって知ってるよね?」

    日向「ああ。昨日依頼箱に投書があって、電話もしたから知ってるぞ」

    苗木「あー…ごめんね。実はそれボクのせいだと思う」

    日向「どういうことだ?」

    苗木「日向クンに相談して、ボクなりに考えてクラスのみんなと仲良くなろうって頑張ったんだ。それで桑田クンは男子で一番最初に仲良くなって、日向クンに相談したことを話したんだよね」

    日向「……流れは何となくわかったが、それですぐに俺の所へ相談に行こうとするのか」

    苗木「彼の行動力を舐めてたよ…。それはともかく、何人かに日向クンに相談して良いアドバイスをもらったって話したからそのうち、ボクのクラスから何人か行くかもしれないなぁって…」


    苗木「だから、今のうちに謝っておこうかなって…」


    日向「いや、謝る必要はない。それが俺の仕事だしな」

    苗木「でも、余計なことしちゃってるかなって」

    日向「普通に紹介してくれる分には問題ない。そういうクチコミから俺の評価も上がるからありがたい話だ」

    苗木「…それなら良かった」

    苗木は安心したように微笑んだ。



    苗木「あ、そういえば、桑田クンが言ってたんだけど、『超高校級の相談窓口は女の子を落とすプロだから相談すればすげぇアドバイスをもらえること間違いねぇだろ』って言ってたんだけど」

    日向「………背びれ尾びれどころか、胸ビレも付きだしたな…」


    日向は放置することを決めたが、それでもため息を抑えることができなかった。
  23. 46 : : 2018/01/07(日) 23:55:12
    そして、午後。

    昼休みも終わり、もう午後の授業が始まったという時刻になっても、まだ桑田は相談室に来ていなかった。


    日向「さすがに連絡してみるか」


    と、日向が携帯を取り出した瞬間。


    「ギリギリセーフ!?」

    日向「……個人的にはアウトと言いたいところだな」

    相談室の扉を叩き壊さんが勢いで入室してきたのは、髪をオレンジ色に染め上げた男だった。

    髪の色やピアス、言動も相まって日向が抱いた印象は「チャラそう」である。


    日向「お前が桑田か?」

    桑田「おーっす! 合ってるぜ! そういうアンタは日向でいいんだよな?」

    日向「ああ。超高校級の相談窓口の日向創だ。…とりあえず座ったらどうだ?」

    初めて訪れる部屋への物珍しさか、部屋をキョロキョロと見渡す桑田に声を掛けた。


    桑田「おお。ふっかふかだな!」

    桑田は子供のようにソファの感触を楽しんでいる。

    日向「……じゃあ、まずはこの用紙に記述頼む。あ、このお茶と茶菓子は良かったら食べてくれ」

    桑田「おお、マジで!? いやー、これ来るだけでもトクなんじゃねー? 日向センパイマジやべぇ」

    桑田は日向が作った草餅を食べながら、用紙に書き込んでいく。

    桑田「おーっし。できたぜ!」

    桑田が元気よく差し出してきた用紙を受け取った日向は、用紙の内容を注意深く見た。


    名前 桑田怜恩
    才能 超高校級の野球選手
    年齢 10代
    相談事カテゴリー 恋愛関係
    相談事の概要 好きな子を振り向かせたい


    日向「……よし。恋愛関係の相談な。詳しく話してくれ。話しづらいことは話さないか、別なものに例えるとかしてくれて大丈夫だ」
  24. 48 : : 2018/01/08(月) 15:39:17
    桑田「いやー、まずこれは自慢じゃねーんだけどさ…。オレってばすげーモテるんだよねー」

    日向(確実に自慢してるだろ)

    桑田「いやさ? 野球部でエースでなんでもできるってなると、女の子から沢山アプローチっていうのは受けてきたわけで? いやー、オレは一人しかいないんだから取り合いはやめてくれって取りなすのも大変っつーか…」

    日向(開幕からやめたくなった相談は初めてだな…)


    桑田「あー、んでよ。相談事は好きな子を振り向かせたいってことなんだけどよ」

    日向「それだけモテるっていうなら好きな子を振り向かせるのは簡単なんじゃないのか?」

    桑田「………あー、なんつーかさ…。今までは女の子から来てくれてたんだけど、オレから言ったことってねえんだよな。だから…」

    日向「ああ。自分から積極的にアプローチする方法がよくわからないってことか」

    桑田「いや、アプローチはしてんだけどな? ただ、全然手応えがねえっていうか、」

    日向「なるほど……。その相手の人っていうのは桑田の肩書きや人格を見ても揺さぶられない人物か…。ちなみに、どんなアプローチをしてるんだ?」

    桑田「そーだな…。カラオケに誘ったりとか、飯に誘ったり…後はオレの話術だな!」

    日向(左右田よりはマシかもしれない、なんて思ってしまった…)

    少なくない罪悪感を得た日向だった。


    日向「もう少し情報が欲しいな。相手がどんな人物なのか、話せる範囲で話してくれ」

    桑田「どんな人物って、清楚って感じだな。それでいて自分の決めたことにまっすぐっつーか、夢に向かって一直線っつーか……とにかく、見ていて気持ちいい奴だ」

    日向(……ふむ、桑田自身は相手のことをある程度は分析できてるみたいだな…)

    ある程度アドバイスの方針が決まった日向は口を開いた。



    日向「まず、現状のアプローチの仕方だと相手は振り向いてくれない、っていうのは理解していると思うが…」

    桑田「そうなんだろうなぁ…。カラオケや買い物とかに本当にたまにしか付き合ってくれねーしなぁ…」

    日向「知っていたらでいいが、その相手は買い物はともかくカラオケなんかの遊技場には興味がないのか?」

    桑田「いや、んなことねーと思うぜ。…歌うのが嫌いってのは絶対にねー」

    日向「……相手のことを見ていないから何とも言えないが、相手に好きな人がいるということはないのか?」

    桑田「………」ガーン
  25. 49 : : 2018/01/08(月) 15:44:39
    日向「真っ先に思いついてもいい可能性だと思うが…。まぁいい。まずは相手に好きな人がいるのかの確認からだな」

    日向「後は……自分の発言が相手にどう捉えられているかを確認する術が欲しいな」

    桑田「…? どういうこった?」

    日向「つまり、桑田とその好きな相手が会話している光景は第三者から見てどのように見えるか、ということだ」

    日向「例えば、第三者から見てその相手が喜んでいるように見えるか、嫌そうに見えるのか、とかな。誰かに自分の評価を聞いてもらうのも手っ取り早いな」

    桑田「なるほどな…」

    日向「同じクラスに苗木がいるだろう? アイツに頼んでみたらどうだ?」

    桑田「おお…。苗木か、アイツなら絶対断らねえだろうし、頼んでみるぜ!」

    日向「ああ。すぐに解決する話でもないから、確認ができたらっまた来てくれ。ああ、もちろん俺の力を借りずに解決できるならそれでも大丈夫だ」

    桑田「おう! そんときは頼らせてもらうぜ!」

    日向「悪いな。こんな回答しか出せなくて」

    桑田「いやー? これからどうすればいいかっていう指針は決められたからいいんじゃね? つーか、さすがにそこまでの期待はしてねーって! また相談に来るからそんときは頼むぜ!」

    朗らかに笑う桑田に嫌味な感情は感じられない。

    日向も依頼をこなせたことにホッとして、笑顔を浮かべた。


    >>47
    相談窓口として自信が付き、お菓子のレパートリーも増えたため、お菓子の評価は西園寺をメインにクラスメイトにしてもらっている…という描写を書いているつもりで、書いていませんでしたね…。
    どこかで修正しておきます。ご指摘ありがとうございます。
  26. 51 : : 2018/01/11(木) 22:01:10
    桑田「ありがとな、日向! やっぱ自分一人だと見えねえもんってのがあるなぁって実感したぜ」

    日向「これが俺の才能だし、まだ解決には至っていないんだ。感謝するのは早いぞ」

    桑田「大丈夫だって! 日向のアドバイスのおかげで成功する未来しか考えられないぜ!」

    日向(……まぁ成功するビジョンを想像するのは悪いことじゃないし、いいか)

    立ち上がった桑田を入口まで送って行く時、日向は気になっていたことを口にした。


    日向「そういえば、俺の…相談窓口のことはどんな風に知ったんだ?」

    桑田「苗木経由ってのもあるけど、入学当初から噂になってたから知ってたぜ。俺が聞いたのは『超高校級の相談窓口は多くの女を落して生殺しにしてる』ってやつだな」

    日向「そんな馬鹿な」

    桑田「いや、俺もマジにそれを信じたわけじゃねーよ? ただ、そういう噂が立つってことは少なくとも恋愛関係に経験は豊富なんじゃねーかって思ってたな」

    日向「……噂については否定させてもらうが、そういう経緯か」


    恋愛関係の相談が多くなってきているのも噂が原因なのかもしれない。


    桑田「でもよー、この学園の女の子ってみんなレベルたけぇよな! 目移りしちまうのもわかるぜ」

    日向「いやだから、女の子に声をかけまくってるとか、そんなことしてないからな?」

    桑田「わかってるって!」

    桑田が扉を開いて、出ていこうとすると相談室の扉が開かれた。



    そこから顔だけをのぞかせた七海が現れた。

    七海「日向くーん? ……あ」

    来客中であることに気づいた七海がすーっと部屋の外に出ていった。



    桑田「………」

    日向「………」

    桑田「あんさ……」

    日向「なんだ?」

    桑田「なんつーか…」

    桑田が言い淀んでいる間に、再び扉が開かれた。



    菜摘「日向ー? いるー? ………あ、あー…し、失礼しました……」

    九頭龍菜摘が七海と同じく入室してきて、恥ずかしそうに出ていった。



    桑田「……これが話術で女の子を次々と落としたっていう超高校級の相談窓口の実力ってわけか……。師匠って呼んでいいか?」

    日向「本気でやめろ」

    桑田をさっさと退室させて、日向は二人へフォローのメールを出しておいた。
  27. 52 : : 2018/01/14(日) 22:57:18
    tips【超高校級の相談窓口はどういう人?】


    「日向ってどういう人だった?」

    クラスの中でもとびきり大きい胸を持つ褐色の女の子がそう訪ねた。

    答えたのはオレンジ色という派手な髪色をした少年だった。


    「最初は普通なやつだって思ったけど、話してみっとよ。なんつーか、ほぼ初対面なのに何でも話しちまう安心感っつーか…。聞かれたことに答えちまうんだよなー。あんな感じで話をしてたらそりゃ女の子も悪い感情は持たねーだろって思ったぜ!」

    「へー。私はちょっとしか話してないけど、そんな印象は受けなかったなー」

    「たぶん、あのなんでも話せるようにする空気作りっつーのがアイツの才能なんだろうな……。よっし、今日も頑張るぜ!」

    「アンタもへこたれないねー」

    「……まぁ正直外部から見て舞園ちゃんに執拗に絡んでるように見えるっつーのはショックだったけどよ…」

    「反省しなよー」






    「……ツマンネー…」

    「じゅ、盾子ちゃん……」

    制服を着崩し、派手な髪飾りをしたツインテールの女子生徒は、自身の姉である地味で残念な少女の髪の毛を魔改造しながら呟いた。


    平和。

    そう、平和そのものである。

    だが、その予定調和(平和)は彼女にとっては毒そのものである。



    「………超高校級の学園って言っても、こんなもんか……」


    楽しそうに笑うクラスメイトを見ながら…超高校級のギャル、江ノ島盾子は、平和な日々に絶望していた。
  28. 53 : : 2018/01/14(日) 23:29:22
    桑田の相談が終わり報告書を書き終えた日向は、明日用の菓子作りを始めた。

    明日中に消費する予定のものをまずは作成し、その後保存が効くモノを作成する。

    それが終われば、今日やるべきことは終わる…のであるが。





    日向「………なぁ。集中できないんだが」

    七海「………」

    菜摘「………」


    事は10分程前。

    日向により「今依頼を済ませたから何か用があったのなら、今なら大丈夫だぞ」とメールが来たたため、二人は相談室に来た。


    そう、ほぼ同タイミングで。


    日向のミスは二人が別々のタイミングで来れるように時間指定をしたり、タイミングをずらして送るということをしなかったこと。


    結果として、七海と菜摘は同時に相談室を訪れて……そして、日向がだしたお茶と茶菓子を前に二人で向き合ってソファに座っている状態へと陥っている。


    七海「………」

    菜摘「………」


    日向からしたら、仲のいい女子が無言で向き合っているだけの状態がとても気まずく感じる。

    現状を打破するためにも、冷や汗を出しながら口を開いた。


    日向「いや、お前ら何か反応してくれ。無言はさすがに…」

    七海「……ねぇ日向君。この子って……」

    日向「……ああ。お前らは初対面か。ソイツは九頭龍菜摘。クラスメイトの九頭龍の妹だよ」

    七海「ふーん…」

    菜摘「…………よろしく」

    日向「それで、菜摘。そっちが七海千秋だ。超高校級のゲーマーだな」

    七海「…よろしく」

    菜摘「………くっ…」

    日向「何を悔しがってるんだ」





    顔、肩書き、胸、能力、スタイル、胸……胸、胸……。


    菜摘(負けた……!!)


    九頭龍菜摘は人生最大の敗北感に苛まれていた。
  29. 54 : : 2018/01/17(水) 22:43:14
    菜摘は突然立ち上がり、「勝ったと思わないことね!」と捨て台詞を吐いてから相談室を出ていった。


    日向「何なんだアイツは…」

    七海「………」フンス

    日向「お前は何を威張ってるんだ?」

    七海「勝利のポーズ…だよ?」

    日向「その胸を張ったポーズがか…?」

    ちなみに突き出された二つの双丘を日向は、必死に視界から外している。


    日向は、七海に新しくお茶を淹れてやってから自分もソファに座る。

    菓子は作り終えてしまったのだ。


    日向「で、何か用事があったのか?」

    七海「うーん……別に用事があったわけじゃないんだけど…たまには日向君とゲームをしたいなぁと思っただけだよ?」

    日向「今日の作業が終わったら教室に戻ろうと思ってたんだが…まぁいい。この後予定もないし、1時間だけな。そうしたら帰るぞ?」

    七海「えー……1時間だけ…?」

    日向「それ以上はやらないぞ。暗くなるからな」

    七海「むぅ………仕方ないなぁ」

    日向「なんで七海が譲歩してやったみたいな感じになってるんだ…」


    そんな感じで今日も今日とて日常は過ぎる。
  30. 55 : : 2018/01/17(水) 23:50:45
    tips【江ノ島盾子の退屈】


    「随分と退屈そうな顔をしてるね?」


    机に肘を付き、窓の外をぼーっと眺めていた江ノ島はその声の方向をチラと見た。


    「……えっと…誰だっけ?」


    「苗木誠だよ。クラスメイトのね」


    「……………ああ、幸運という名の一般人ね」


    「間違ってないけどさ…」


    苦笑する苗木から視線を外し、江ノ島は再び窓の外を見る。


    苗木に対してもう興味がなくなってしまったからだ。


    「……江ノ島さんは…さ」


    「………」


    「…どこか遊びに行きたいところとかある?」


    「…………はぁ?」


    否、興味を失くしたフリをしていただけで、1mmくらいは興味があった。


    そのため、その言葉を耳が拾った。


    「……何? ナンパ? そういうの飽き飽きしてんだよね」


    「ち、違うよ…! ただ、せっかく同じクラスになれたんだし、仲良くしたいなって思って…!」


    「……アンタと私が仲良くするメリットって…何?」


    苗木はいいだろう。


    超高校級のギャルとコネができる。


    これだけで得と言える。


    しかし、江ノ島にとって、目の前の平凡な一般人と仲良くなったところで、得などあり得ない。


    そう思っていた。


    「め、メリットって…ボクは別にそんな……」


    その時、ガシャン、と派手な音を鳴らしながら窓ガラスが割れる。


    そして、そのガラス片はすべて、苗木の方へと向かっていた。


    江ノ島はその様子をまるでスローモーションの映像を見ているかのように眺める。


    (私の分析によると、ガラス片は全て彼に突き刺さり大怪我をするでしょう……。あ、一つは目に当たりますね)


    そのように分析をしていた江ノ島であったが……。


    時は少し遡る。


    「わっ!?」


    ガシャン、と音が聞こえた時、苗木は驚いて一歩後ずさっていた。


    その後ずさりで、足が縺れて後ろへと倒れそうになっており……。


    「…………?」


    「いてて………な、何が…?」


    結果として、ガラス片を避けることに成功していた。




    『うおおお!? 特大ホームランが教室に突っ込んじまったー!!』


    『つーか、アレ。俺らんところの教室じゃねーか?』



    そんな声が窓の向こう側から聞こえてくるが、江ノ島にとっては些細なことである。



    (……分析力が衰えた? …いや、そんな感じじゃない。何かもっと別の……)


    予測不可能(絶望)


    江ノ島は確かに苗木に何かを感じた。



    「………ふーん。ちょっとは興味出てきたかも…」



    目の前で尻餅着いている男をもう少しだけ観察してみよう、そう思った江ノ島は苗木へと近づいた。



    (ちょっとの間暇つぶしにはなるかもね……。早々に壊れちゃわないでね…? 苗木誠)



    狩人が獲物を捕らえた目。


    江ノ島は新たな遊び道具を前ににやりと笑った。
  31. 57 : : 2018/01/19(金) 00:20:55
    桑田の相談からまたある日。

    日向が珍しく相談事もなく、教室へ入ると…。


    終里「………」ゴゴゴゴゴ

    弐大「………」ゴゴゴゴゴ


    クラス一のバトルジャンキーとクラス一の筋肉を持つ男が険しい表情で向かい合っていた。


    日向「お、おい。アイツ等、何やってるんだ?」

    日向は、教室の片隅に避難していた左右田と田中に話しかけた。

    左右田「いや、知らねぇ。突然、でっけぇ音がなったと思ったらもう一色触発って感じでよー…」

    田中「ふん。雑種が…。矢張、貴様の耳は飾りのようだな」

    左右田「おいこら、やはりってどういう意味だ!」

    田中「オレ様と破壊神暗黒四天王は、しかと奴らのコトダマをその魂に焼き付けている! 終里が最強の人類へ戦いへ赴こうとしているとな!」

    日向「……最強の人類…?」

    田中「霊長類最強。その存在へ戦いを挑みに行くのは、並大抵ではあるまい。まだ時期尚早であると…」

    日向「つまり、終里がその…最強のやつに挑みにいくことを弐大が止めてるってことか」

    左右田「あー、行こうとしてんのに止められてるから終里のやつがあんなに怒ってんのか」



    終里「どかねーってんなら……力づくだ!」

    弐大「面白い……やってみんかい!」



    その声と同時に机や椅子が宙を舞い、激しい打撃音が聞こえてきた。


    ちなみに、日向たちは終里が叫んだ辺りから教室の外へと避難した。



    日向「……このまま何も知らないことにして相談室にでも来ないか?」

    左右田「あ? なんでだ?」

    日向「……この惨状のことを雪染先生にでも知られたら……俺たちにも何かしらとばっちりが来ると思うんだよな」

    左右田「よっしゃ! 行こうぜ!」

    田中「ふん。参ろうか。苦悩を抱える者が集う最果ての地へ!」

    日向「どこが最果てなんだよ」




    「オラオラオラオラオラオラ!!!」

    「無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!!」



    教室の中では、相変わらず激しく二人が打ち合っており、その打撃音が廊下へと響いていた。


    >>56 本編や終わり方までは決めていますが、その合間で苗木がどんなことになるかはまだ決まっていません。どうなっちゃうか楽しみにしておいてください。
  32. 58 : : 2018/01/23(火) 00:34:02
    【極道と暴走族、縄張り争いに終止符を】

    日向「暴走族…?」

    九頭龍「ああ。それが最近になって九頭龍組のシマに干渉し始めてな」

    日向「……どう干渉し始めたかは聞かないでおくが、それを俺に相談してどうするんだ…?」

    九頭龍「その暴走族の首領……リーダーが希望ヶ峰学園の生徒なんだとよ。んで、九頭龍組としちゃあ、はしゃぎ過ぎな餓鬼は大人しくさせるように動こうとしたんだが……」

    日向「……そんな話の展開はドラマの中だけで十分なんだが…」

    九頭龍「俺にとっては日常だぜ。まぁ、それには俺が待ったを掛けた。相手が超高校級んなら、一度話をしてみて、使えそうなら組に……じゃなくても、協力関係を築けたらいいんじゃねえかってな」

    日向「はぁ……。超高校級ってことは普通の暴走族じゃないだろうが……それで?」

    九頭龍「それで、その交渉の場にお前も来て欲しいってのが依頼だ」

    日向「………なんで俺が?」

    九頭龍「……情けねぇ話、俺はまだ未熟だ。交渉の場に自分が立つ機会ってのは少ねぇ。だから、俺がカッとなっちまったり、冷静さを失っちまうようなら止めて欲しい……ってのと、もう一つは日向がいれば何とかなんじゃねーかっていう狙いもある」

    日向「俺がいれば交渉が上手くいくわけでもないと思うが?」

    九頭龍「保険みてーなもんだ」

    日向「……まぁそれで九頭龍が安心するって言うのなら引き受けるけど」

    九頭龍「感謝するぜ」

    九頭龍は日向への信頼を表すように自信満々に笑った。
  33. 59 : : 2018/01/23(火) 22:41:51
    九頭龍「邪魔するぜ」

    九頭龍は78期生の教室を勢いよく開け放った。

    当然であるが、教室内にいる人間は突然現れた部外者に注目する。


    「…なんかちっせーやつが来たべ」

    九頭龍「そこの奴、冷たい海にコンクリートを抱いて飛び込みたくなけりゃ黙れ」

    「よくわかんねえけど、物騒だべ!」

    苗木「葉隠クン! か、彼は…」

    騒ぐ葉隠に苗木が耳打ちをして、顔を真っ青にしてウニ頭の男、葉隠は黙った。


    九頭龍「…お、いたな」

    目当ての人物を見つけた九頭龍は、その者の元へ歩いていく。

    日向(超高校級の暴走族って……こいつか…)

    日向が初めて78期生の教室へ来たとき、十神と喧嘩をしていた人物。

    日向(名前は確か…)

    九頭龍「大和田紋土だな?」

    大和田「……ああ? んだ、おめーら…」

    九頭龍「テメーらの先輩ってところだ。まぁ今それは関係ねえ。テメーには超高校級の極道として話がある」

    大和田「極道だぁ? ハッ…何の用だってんだ」

    九頭龍「ここじゃあ、他の奴らの迷惑になる。話が出来る場所へ行くぞ」

    大和田「あぁん? オレが着いてーー」

    カッ!

    九頭龍は隠し持っていたドスを大和田の机に突き立てた。

    そこまで深く刺さっていないが、浅くない傷が付いた机がその刃物が本物であることを証明していた。


    大和田「…チッ。獲物持ちかよ」

    九頭龍「極道だからな。わかったら、着いてこい。何、悪いようにはしねえよ」

    大和田は気丈に振舞っていたが、少し顔を青くしている。

    日向(……事前にどうするのか聞いてて良かった…)

    九頭龍がどのように大和田を連れ出すか聞いていた日向は、何とか止めずに済んだ。


    九頭龍と大和田が教室を出ていき、日向もそれに着いていった。


    苗木「あ、あの、日向クン…」

    日向「ん…? ああ。大丈夫だよ。多分な」

    苗木が何を心配しているかを悟った日向は、安心させるように微笑んでみせた。
  34. 60 : : 2018/01/27(土) 21:29:49
    ~相談室~


    日向「いや、なんでだ」

    九頭龍「あん? どうした、日向」

    日向「なんでここに戻ってきたんだ」

    九頭龍「そりゃあ……邪魔が入らねえで話し合いが出来る場所つったらここくらいだろ」

    日向「俺が依頼受けてない時とか結構人来るけどな…」

    九頭龍「時間帯的に今は授業中だ。大丈夫だろ。なに、んなに時間は取らねえよ」


    日向(大丈夫か…)


    不安を隠せないままであったが、日向はとりあえず3人分のお茶を用意しに行った。


    いつも平和な相談室のソファには不敵な笑みを浮かべる九頭龍と九頭龍を警戒する様子を崩さない大和田の二人が座っている。

    その剣呑とした雰囲気に日向は逃げ出したくなったが、依頼を放り出すわけには行かず、ぐっと我慢した。



    九頭龍「………」

    大和田「………」

    九頭龍「………」

    大和田「……九頭龍……だったか」

    九頭龍「……一応先輩なんだがな。まぁ合ってるぜ」

    大和田「話があったんじゃねえのか」

    九頭龍「日向の茶を待ってんだよ」

    大和田「…茶なんていらねえ……」

    九頭龍「まぁ落ち着けよ。そんなに急いてもいいことはねえぞ」

    日向(クソ…お茶も菓子も準備ができてしまった……持って行きたくない…)


    この場で一番不幸な存在は確実に日向である。



    最後には諦めて日向はお茶と茶菓子を持って、席へ向かった。


    日向「ほら。準備できたぞ。大和田も遠慮せずに食ってくれ」

    九頭龍「サンキューな」

    大和田「………」

    九頭龍「…かりんとうか」

    日向「ちょうどストックがあってな」

    しばらく茶を飲む音とかりんとうを食べる音が部屋に響いた。




    大和田「何なんだ……? なぁ。オメーらは……オレを馬鹿にしてんのか…? あぁ?」

    日向「……え?」

    九頭龍「………」

    大和田「話があるっつって、獲物まで持ち出してきやがったくせに……連れてこられてみたら茶をしばくだけ…? 舐めてんじゃねぇオラ! 仲良しごっこでもしてえのか!」

    九頭龍「……まぁ簡単に言うとそうだ」

    大和田「あぁん!?」

    九頭龍「ふぅ……日向のようには行かねえな。茶と菓子でも食えば何とかなると思ったが」

    日向「時と場合と相手によるぞ、それは…」

    大和田「こんの……オレを無視しやがって…!」

    九頭龍「…極道っつーのは舐められたら終いだ」

    大和田「……あ?」

    九頭龍「新参者だろうが、知らなかったっつー理由だろうが、九頭龍組を舐めたマネをしたやつぁ……それなりの制裁を受けてもらう」

    九頭龍「……最近になってテメーらはウチのシマ辺りを走りまわってやがるな?」

    大和田「…知らねーよ。どこのどいつんとこを走るとかいちいち意識してるわけねーだろ」

    九頭龍「まっ、テメーらはそうだろうな。だが、テメーらがそうすることでウチに少なくない影響が出ちまってんだ。それを解決する手段をウチは2つしか知らねえ」

    日向「2つ…?」

    九頭龍「1つは舐めたマネをしてくれたってことで……まぁ色々だな。もう1つは……」

    九頭龍は大和田を見ながら不敵に笑った。
  35. 61 : : 2018/01/29(月) 00:33:53
    九頭龍「もう1つはテメーらと九頭龍組とで掟を決めるってことだな」

    大和田「……オキテ…?」

    九頭龍「要するにお互いが敵じゃねぇってわかりゃいいわけだ。テメーらが九頭龍組の勢力圏に入って来ても、オレらがそれを認知してりゃあ問題ねぇ」

    大和田「まどろっこしい…。何が言いてぇ」

    九頭龍「じゃあ、単刀直入に言うぜ。テメーら……オレの下に付け」


    日向(は…?)

    この展開を聞かされていなかった日向は心底驚いた。


    大和田「アァ!? テメーの下に付けだァ!?」

    九頭龍「ああ。オレは九頭龍組の跡取りだ。その直属の部下って形にすりゃあ、お前らがどこを走ろうが九頭龍組が後ろ盾になるし、九頭龍組の勢力圏だろうが問題ねえ」

    大和田「…………ふぅー…」

    大和田は一度深呼吸した。

    閉じていた目を開くと、怒りに狂った目が冷静さを取り戻していた。

    大和田「オメーの言いてぇことはわかるぜ。オレらも他ん奴らのところで走ると、そいつらが喧嘩ふっかけてきたりするからな。それが今回は極道かもしれないっつー話だろ」

    九頭龍「まぁそういうこった」

    大和田「んで、オメーの下に付きゃそんな喧嘩なんかしなくていいってことだな?」

    九頭龍「そうだな」

    大和田「ハッ…。わかったぜ。お断りだ!」

    九頭龍「だろうな。一応理由を聞いていいか?」

    大和田「オレの組は兄貴と一緒に作った。トップは兄貴……そして、継いだオレだ。オメーの下に付くってこたぁ、それも変わっちまう。兄貴とオレとで作った暮威慈畏大亜紋土が変わっちまうだろうが!」

    九頭龍「………」

    大和田「ってことでオメーの提案は却下だ」

    九頭龍「……そうか。なら……」


    九頭龍は懐からドスを取り出し、テーブルに置いた。


    九頭龍「………」

    大和田「へっ、ドスで脅しか?」

    九頭龍「ちげぇ……。大和田紋土。ここに、テメーの果し合いを臨もう」

    大和田「……あ?」

    日向「く、九頭竜…?」

    九頭龍「オレが勝ったら、テメーら、暮威慈畏大亜紋土はオレの手足になってもらう。テメーが勝ったら、好きにしろ。オレができることならどんな要求も飲む」

    日向「おい、九頭龍!?」

    九頭龍「わりぃな、日向。最初からこうなるとは思ってたが、これを言ったらテメーは止めるからよ」

    日向「そりゃあ止めるけど……」

    大和田「……おもしれぇ。勝てると思ってんのか?」

    日向は大和田と九頭龍の2人を見比べる。

    体格で言えば、大和田と九頭龍には頭一つ、二つは身長に差がある。

    大和田が上から押さえ付ければ、九頭龍は容易く制圧されてしまうだろう。

    九頭龍「……言っておくが……オレはやれるぜ?」

    獰猛な肉食獣のような笑みで九頭龍は大和田に笑いかけた。
  36. 62 : : 2018/02/04(日) 02:01:14
    場所を武道場に移し、大和田と九頭龍が対峙した。

    九頭龍の自信満々な表情があっても、九頭龍が大和田に勝てる未来が日向には想像できなかった。

    だが、ここで割って入っても何も解決しないと思った日向は、何も口にできないでいた。


    九頭龍「俺は木刀を使うが、テメーは素手でいいのか?」

    大和田「ケッ、オメーの相手は素手で十分だ!」

    九頭龍「そうかよ。じゃあ……日向。開始の合図頼めるか」

    日向「あ、ああ………大丈夫なんだな?」

    九頭龍「当たり前だ」




    日向「………二人共準備はいいな? ……じゃあ、始めッ!」



    大和田「オラァッ!」

    日向の合図と共に大和田の大きな拳が九頭龍に迫る。

    九頭龍は小さな体を更に小さくして、大和田の懐に飛び込んだ。

    大和田「うおっ!?」

    そして、木刀の切っ先を大和田のアゴを狙って突き上げたが、大和田もギリギリのところで避けた。

    九頭龍はバックステップで大和田から距離を取り、木刀を構え直した。


    大和田「……舐めやがって!」


    大和田が素早く九頭龍に接近し、再び拳を振り下ろした。


    大和田「オラオラオラオラ!!!」


    連続で拳を振り下ろし、その全てをギリギリでかわし続ける九頭龍。


    大和田「くそッ! ちょこまかと…!!」


    九頭龍「………そろそろ、終わらせるぜ」


    そう宣言した九頭龍が大和田の拳を避けた直後、一歩前へ強く踏み出した。


    そして……隙だらけな大和田に木刀を振り上げた。



    大和田「………クソが…」

    九頭龍「……俺の勝ちでいいな?」




    九頭龍は大和田の首筋に木刀を添える形で動きを止め、大和田も汗だくで息を荒くしながら動きを止めている。



    大和田「……カーッ! 負けだ負け!」

    大和田は大の字に後ろに倒れ込んだ。

    大和田「……はぁ…はぁ……クソ、やっぱ極道の後継ってだけあるぜ……」

    九頭龍「……ふーっ…。テメーも普段素手ばっかってわけじゃあねえし……そこまで本気でもなかっただろ?」

    大和田「ああ? マジにやったに決まってんだろ。だが……ここに標識はねえしな」

    九頭龍「武道場だからな」

    戦う前の険悪な雰囲気はなく、むしろ清々しく二人は笑い合っていた。
  37. 63 : : 2018/02/06(火) 00:50:39
    九頭龍「さて。テメーは俺に負けたわけだ。果し合いの前の約束は覚えてるな?」

    大和田「……あぁ…。はぁ、男と男の約束だ。違えるわけにはいかねえな。ちっ、アイツ等への説明がめんどいぜ」

    九頭龍「よし。じゃあ、俺からテメー…テメーらに最初の指示を出す」

    大和田「……」

    九頭龍は懐から四つ折りにされた紙を取り出して、床に広げた。

    日向も覗き込んで見た。

    日向(…地図?)

    九頭龍「このあたりが九頭龍組が主に活動してる地域な。んで、前テメーらが走り回ってたのがここだ」

    大和田「地図見せられてもわかんねーよ」

    九頭龍「後で実際に走って覚えてもらう。んで、今度からテメーらがここを走るときは俺に一言連絡を寄越せ。それが最初の指示だ」

    大和田「ハッ、暴走族が律儀に報告すんのかよ。笑えるぜ」

    九頭龍「俺以外が把握してりゃあ、問題が起きても対応が早くなんだろ」

    大和田「………それだけか?」

    九頭龍「あ?」

    大和田「もっと……無茶な要求が来ると思ったぜ」

    九頭龍「俺をなんだと思ってんだ。……俺はな。お前らを買ってんだよ」

    大和田「…はぁ? 売りもんじゃねえぞ」

    九頭龍「高く評価してるって意味だ。有用な奴はいくらいてもいいからな」

    大和田「……テメーが何を考えてるか、どんな目的かはわかんねえ。だが……男と男の約束を交わした上で俺は負けた。だから……オレはアンタの下に付く」

    九頭龍「ああ。そのうち兄弟の杯でも交わそうや」




    大和田は武道場でしばらく休憩すると言ったため、日向と九頭龍は武道場を出た。

    日向「…今回俺必要だったか?」

    九頭龍「日向に期待したことは、公平な目で見れる見届け人が欲しかったってのと…俺が冷静でいられるようにするためだな」

    日向「終始冷静に見えたぞ?」

    九頭龍「ああ見えて大和田の言葉に何度かキレそうになったんだぜ?」

    冗談を言うように笑う九頭龍だが、恐らく本当のことなんだろうな、と日向は思った。

    大和田の挑発するような言葉は、普段の九頭龍なら威嚇するために声を張り上げていただろう。

    九頭龍「改めて感謝すんぜ。日向」

    日向「まぁ、あまりない類の依頼だが、そういう相談を受けたんだから俺は全力でやるだけだ。あまり役立てた感じはしないけどな」

    日向はここで気になることを聞くことにした。

    日向「そういえば、九頭龍は剣道もできたんだな」

    九頭龍「…ああ。剣道が強い奴が身近にいるからな」

    日向「へぇ。やっぱり極道の後継だし、強くなくちゃいけないのか」

    九頭龍「いや………」

    日向「いや?」

    九頭龍「何でもねぇよ」

    九頭龍が言い淀んだ理由を日向が知ることはなかった。
  38. 64 : : 2018/02/08(木) 00:51:18
    【辺古山の葛藤】


    九頭龍「ペコ……少しの間、俺に稽古を付けてくれねえか」

    辺古山「坊ちゃん…?」

    九頭龍のその突然の申し出に辺古山は戸惑った。

    九頭龍の命令、頼みには可能な限り…否、絶対に従わなければならない。

    だが、稽古ともなれば九頭龍に厳しく当たる必要があり、時には傷つけることもあるだろう。

    辺古山としては守るべき主を傷つけるなど言語道断。

    しかし、その命令に従わないなど……と、辺古山の中で葛藤が生まれた。

    九頭龍「ペコが何を考えてるかって何となくわかる。だが……俺のためだと思って…頼む」

    辺古山「………うっ……せ、せめて訳を…」

    九頭龍「……テメーの意思を通したけりゃあ、やっぱり力がいるからな。それをペコに頼んで手に入れるってのは何とも情けねえが、俺に思いつくのはこれくれえだ」

    辺古山「な、情けなくとも私が坊ちゃんの代わりに…!」

    九頭龍「だから…俺の意思を通すのにペコが出張ったら意味ねーだろ。まっ、それに極道なんだからちょっとは腕っ節を鍛えないとな。いい機会だと思うことにするぜ。だからよ」

    九頭龍は辺古山に頭を下げ……ようとして止められた。

    が、辺古山に半分頭を下げている形にはなっている。

    九頭龍「俺を鍛えてくれ。頼む。ペコ」

    辺古山「………くっ……そこまで頼まれてしまっては……断れません…」

    辺古山は引き受けたからには必ず坊ちゃんを強くする! …と固く決意した。




    何度か九頭龍を気絶させ、その度に普段の冷静っぷりを崩してしまったのは九頭龍にも仲の良いクラスメイトにも秘密である。


    ※九頭龍、大和田との下りの裏話。
    わかったとは思いますが、九頭龍の剣は辺古山が鍛えています。
    九頭龍もいろいろ準備してから大和田に渡り合った、ということで。(そうでないとたぶん絶対に勝てないので)

    2をやったのがもうかなり前で通信簿系は結構忘れてしまっていますので、違和感あればご指摘ください
  39. 65 : : 2018/02/12(月) 01:13:06

    左右田「できたぜ! これが超高校級の技術の結晶、VRゲームだ!」

    その才能、もっと別に使い道あっただろと言いたい日向だったが、左右田の達成感から来る笑顔と隣で珍しくウキウキしている七海を見て黙った。

    七海「VR! VRだよ! レトロなゲームもいいけど、やっぱり最新式のゲームも楽しみだよね!」

    日向「……これって左右田一人で作ったのか?」

    左右田「んなわけねーって。俺がやったのはせいぜいそのヘルメットみてぇな奴とサーバーとの通信規格の整備とかその辺だな。他は大体がそこにいる不二咲がやったんだ」

    日向が目を向けるとそこには、PCのモニターがあった。


    日向「…?」

    「あ……こ、ここだよぉ…」

    ひょこっと画面の横から超高校級のプログラマー、不二咲千尋が姿を現した。

    日向「……なんで不二咲と共同でこんなものを作ったんだ?」

    左右田「そりゃーオメー…ロマンだ」

    日向「……そうか…」

    不二咲「…今回はゲームっていう形を取ってるけど、このVRが発達すれば色々応用できるんだぁ…。例えば、車の運転とか…」

    日向「なるほどな。一応、意義があることなんだな」

    左右田「んで、俺らでテストは当然やったが、第三者の意見も取り入れようってことでオメーらの出番ってわけだ」

    七海「ねぇ、まだ…? まだやらないの…?」

    左右田「慌てんなって。準備が必要だからな。んじゃあ、そのヘルメット被ってもらえるか?」


    日向がヘルメットを被ると、その視界に七海の姿が映し出された。



    なぜか七海は水着だった。





    日向「ちょ、は!? な、なんだよこれ!?」

    七海「わー、日向君。たくましいね?」

    日向「え…? どんな格好に見えてるんだ…?」

    七海「んー……山で出会う蛮族って感じかな…?」

    日向「そういうお前は水着なんだけど…」

    七海「………うーん、あまりそんな感覚はないけど、そういう目で見られてると思うと恥ずかしい…。ちょっと…見ないで欲しいかな…」

    日向「あ、ああ……。って、ゲームなのに…」


    日向は周りにいるであろう左右田に話しかける。

    日向「左右田? このゲーム、どういう内容なんだ?」

    しかし、左右田から返事はなく、代わりに不二咲の声が聞こえてきた。

    不二咲「左右田君ならちょっと席を外すだってぇ……。それで今のゲームは……『飛頭蛮』だねぇ…」

    日向「飛頭蛮…?」

    不二咲「んーと、もうすぐだと思うんだけど…」


    不二咲がそういった瞬間、視界に何かが浮かんで来ている姿を日向は捉えた。


    日向「…え? うおっ!?」


    飛んできたのは骸骨(黒いオーラ付き)。

    それが日向目掛けて飛んできて、日向の体を通過していった。


    日向「なんだ今の!?」

    不二咲「飛頭蛮っていう、頭だけの妖怪をモデルにしたゲームなんだぁ。飛んでくる飛頭蛮を剣や銃で打ち落とすっていうゲームだよぉ…」

    日向「骸骨がすごいリアルで驚いた…。七海、聞いてたか?」

    と、日向が七海に視線を戻すと…。


    七海「うーん……実際には何も持ってないけど、腕を振るう速度は現実と同じ…。コントローラーで操作するみたいにやろうとすると、体が付いていかない……難易度高いなぁ…」


    日向「……順応してやがる…」


    『スコア18』となっているため、七海はいつの間にか18体も倒していたようだ。


    日向「……俺も楽しむか」


    日向も迫り来る飛頭蛮を打ち落とすべく腕を振るった。
  40. 67 : : 2018/03/06(火) 22:34:13
    しばらく飛頭蛮を撃ち落とし続けること10分。

    体を動かしたため、疲れてきた日向は一度休憩しようと考えた。

    日向「ふぅ……不二咲、休憩したいんだが、これどうやって終わったらいいんだ?」

    不二咲「あ、そのヘルメットをそのまま外してもらったらいいよぉ」


    ヘルメットを取ると、頭が若干蒸れていることに日向は気づいた。

    日向「……体を動かすから少し汗をかいたみたいだな…」

    不二咲「あぁ…私たちは動作がちゃんとするくらいしかテストしてないけど、それなりにプレイするとそういうことも起きるよねぇ…」

    不二咲がキーボードを素早く打ち込み、結果を記録していく。

    日向「……不二咲、左右田はどうした?」

    不二咲「左右田君なら、別件で開発があるからって出て行っちゃったけどぉ…」

    不二咲「最後まで見てやれなくてわりぃ、って言ってたよぉ」

    日向「……適当なのか責任感が強いのか…」




    日向は一度退出して、自販機で水を購入(当然七海の分も)してから再び戻ってきた。

    水を飲んで一息吐いたところで、ゲームに戻ろうかと日向が考えていると…。


    不二咲「…あのぉ……日向君…」

    日向「なんだ?」

    不二咲「……えっと……そのぉ…」

    しばらく不二咲は口を開いたり閉じたりを繰り返した。

    日向「…? どうした?」

    不二咲「……その…日向君って超高校級の相談窓口……だったよねぇ?」

    日向「ああ。そうだが…」

    不二咲「えっと…」

    日向「…もしかして、何か相談事か?」

    不二咲は一瞬驚いたような顔をして、必死に何度も頷いた。

    日向(……驚いてるようだけど、そんな顔されたらさすがにわかるって…)


    悩んでいる人間特有の苦しんでいるような顔。


    日向は不二咲がそんな表情を見逃さなかった。
  41. 69 : : 2018/03/07(水) 23:16:23
    日向と不二咲はゲームを終わらせたくないとゴネる七海を何とか説得して、相談室へ移動した。


    七海「今度このゲーム耐久でやりたいなぁ…」


    どこからそんな体力が出てくるんだ、とか、そんなものに付き合わせる気か、と言いたいことはあったが、日向は不二咲を優先して聞かなかったことにした。

    日向「どうぞ」

    不二咲「あ、ありがとぉ…」

    不二咲は落ち着かない様子でキョロキョロと周りを見渡している。

    そんな不二咲の前にお茶と茶菓子、そしていつものごとく相談用紙を一緒に置くと、不二咲は顔を赤くしながら日向に向き直った。

    日向「その用紙に簡単に不二咲の情報と相談内容について書いてくれ」

    不二咲「……えっとぉ…ここに書いたことは何に使うのかなぁ?」

    日向「この情報は俺が成果物として学園に提出するときにしか利用しないぞ。さすがに誰のどんな相談を受けたかを記録しておかないと俺の才能が認めてもらえないからな」

    不二咲「あ、なるほど…。ご、ごめんねぇ。こんなこと聞いちゃって」

    日向「いや、今まであまり確認してきた人はいないけど、確かに気になることだと思う。不二咲が確認してくるのも当然だと思う」

    不二咲「え、えっとぉ……書いちゃうね…」

    不二咲がさらさらと自分の名前や才能を記述していき、しばらくして日向に用紙を渡した。


    名前 不二咲千尋
    才能 超高校級のプログラマー
    年齢 10代
    相談事カテゴリー その他
    相談事の概要 勇気の出し方



    日向(……今までに来たことがない相談内容だな…)

    日向は一瞬目を細めて、不二咲に向き直った。

    日向「勇気の出し方……具体的にどういうことか話してくれ。言いづらいことは言わなくて構わない」

    不二咲「うん…」

    不二咲は顔を俯かせながら語り始めた。


    >>68 このSSをまだ見ている人いたのか…
    という驚愕と共に、コメントありがとうございます。
  42. 74 : : 2018/03/10(土) 00:05:21
    不二咲「……えっとぉ……日向君は男らしいよねぇ」

    日向「ありがとうと言っておくが、それは相談内容に関わることか?」

    不二咲「あ、うん……えっと…」

    不二咲は言いたいことはあるのに言葉にできないのか、口をなんども開いては閉じを繰り返した。


    日向「ゆっくり落ち着いて話をして大丈夫だぞ。俺は逃げないからな」

    不二咲「あ……うん。ありがとぉ…」

    不二咲は胸に手を当てながら一度深呼吸をした。

    不二咲「うん……落ち着いたよぉ…。えっとぉ…私は……とても弱いんだぁ」

    日向「弱い? 腕っ節の話…じゃないよな」

    不二咲「うん…。いや、体も弱いよぉ……でも、心ももっと弱いんだぁ…」

    日向(心が弱い…な)

    不二咲「………私には人には言えない秘密がある……でも…でもね、誰かと仲良くなると黙っているのが辛くなってくるんだぁ…」


    日向「……その秘密というのはずっと秘密にはしていられないものなのか?」

    不二咲「うん…。言わなかったら……私も相手も……辛いことになると思う…」


    日向「……なるほど。その秘密を打ち明けたいっていうのが不二咲の相談か?」

    不二咲「あ…ううん。すぐに打ち明けたいとかじゃないんだぁ。ただ……いつか秘密を打ち明けたいって思った時に…僕には勇気がないから……きっと結局言えないと思うんだぁ……今までも…そうだったから…」

    日向「………」

    不二咲「だから……そういう時にどうやって勇気を出したらいいのかなって……そんな……方法ないかなって…」

    不二咲はだんだんと言葉尻が弱くなり、遂には黙り込んだ。

    その目には涙を溜めており、今にも泣き出しそうだった。


    不二咲「…ご、ごめんねぇ……へ、変なことを相談しちゃって……こんなの…日向君も困るよねぇ…」


    泣いている不二咲を見て、日向も言うべき言葉が決まった。
  43. 75 : : 2018/03/30(金) 23:53:53
    日向「…まずは泣きやめ。不二咲」

    日向がハンカチを差し出すと、不二咲はそれを受け取り涙を拭いた。

    日向「さて。まず、勇気の出し方、ということだけど、確認をさせて欲しい。その秘密は不二咲にとって、そして不二咲の大切な人にとって明かさなければならない内容か?」

    不二咲「…うん。仲良くなればなるほど、秘密にするのが辛くなると思うんだぁ…」

    日向「そうか…。……秘密にしていることを明かすのは怖いし、辛いことだよな」

    不二咲「……うん」

    日向も元予備学科であったことを明かすのには少なくない勇気が必要だった。

    そういう意味で、不二咲の恐怖を共感することができた。

    日向「…ああ、悪い。勇気出し方だったな。そうだな……。不二咲が自信を持って得意だって言えることはあるか?」

    不二咲「うーん……やっぱりプログラミングかなぁ…プログラマーだし…」

    日向「プログラミングな。なら、そのプログラミングをする前…もしくは、してる最中…あと作業が終わった後とか、その時にしてる仕草とか癖ってあるか?」

    不二咲「……うーん………」

    日向「もしくは、心の変化とか……あとは達成感とか」

    不二咲「達成感ならあるかなぁ…」

    日向「勇気を持つ、っていうのは自分が行うことに自信を持つってことだ。そのために必要なのは成功するイメージだ。不二咲が怖がってしまうのは、失敗するイメージが先行しやすいからだと俺は思う」

    不二咲「………」

    不二咲は心当たりがあったのか、驚いた顔をした。

    日向「じゃあ、成功するイメージをどうすれば持ちやすいか、ってことなんだが、過去の成功例からその時と同じ、もしくは似たような気持ちになれば成功のイメージは掴みやすい。要はその時と同じ気持ちになればいいわけだ。不二咲なりの仕草や癖、それをつかめれば少しは勇気を持つことにつながってくると思う」

    不二咲「………すごいねぇ、日向君」

    日向「何がだ?」

    不二咲「ちょっと話を聞いただけですぐにアドバイスができるだなんてすごいなぁって…」

    日向「……お前みたいな人が今までにいたからだよ」

    不二咲「え…?」

    日向「いや、何でもない。とりあえず、これから何かを成し遂げたとき、その時の成功をイメージしやすい仕草や癖、そういったものが自分にあるのかを意識してみてくれ。もし特にみつからなかったらまた来てくれ。そのときはまた相談に乗る」

    不二咲「うん…! ありがとぉ、日向君」

    不二咲は先ほどの涙とは打って変わって、とても華やかな笑みを浮かべた。


  44. 77 : : 2018/04/02(月) 23:43:50
    【直向きアイドルと生真面目写真家】

    日向「……この写真がどうかしたのか?」

    日向はクラスメイトである小泉真昼が見せてきた写真を一瞥して、そう問いかけた。

    あまり相談に来ることがない小泉が珍しく相談に来たと思ったら、一枚の写真を見せてきたのである。

    その写真はどこかのスタジオを写しており、多くスタッフが何かの準備をしている様子が映し出されていた。

    そのスタッフの中、オーラの違う女の子が中心に写っていた。

    彼女のことを日向は知っていた。

    超高校級のアイドル、舞園さやか。

    テレビでの活躍に加え、希望ヶ峰学園に入学したことで騒ぎになったため、日向も知っていた。

    日向「いや、待ってくれ。写真の前にどういう状況なのかの説明から頼む」

    小泉「う、うん。ごめん。気が動転しちゃって…」

    小泉は佇まいを直してから話し始めた。

    小泉「まず、状況だけど……私に仕事の依頼が来たのよ。内容は…バレてるし言っちゃうけど、舞園さやかちゃんの写真集の撮影。希望ヶ峰学園主導のね。」

    日向「この写真はその時のものか」

    小泉「そっ。それで写真集用以外でも、撮影風景も適当に撮って欲しいって言われてたから撮ったのよ。それで……えっと……この人」

    小泉が指さした先にはスタッフらしき男性が写っていたが、特におかしな様子はなく普通に作業をしているように見えた。

    日向「この人がどうかしたのか?」

    小泉「……たぶんだけど、さやかちゃんのストーカー」

    日向「この男が何かやっていたのか?」

    小泉「………見ちゃったのよ。この人が……さやかちゃんが捨てたティッシュを拾ってるのを…」

    日向はその様を想像して背筋が凍らせた。

    日向「……たまたまゴミを拾ったとか、そういうのじゃないのか?」

    小泉「ううん。さやかちゃんが差し入れにってもらったお菓子を食べた後に口元をティッシュで吹いたのよ。それでそのティッシュは当然ゴミ箱に入れたんだけど……。私が忘れ物を取りに戻ったら……ティッシュを拾ってポケットに入れてたの……」

    小泉は寒さを抑えるように体を抱えている。

    日向(……真面目な小泉にとってはとてもじゃないが受け入れがたいだろうな)

    日向「それで小泉はこの話を俺に相談しに来てどうするつもりなんだ?」

    小泉「……どうだろう。私、どうしたかったんだろ…」

    日向「どういうことだ?」

    小泉「さやかちゃんくらい人気者なら…こういう人がいるのもわかるの。だけど、実際に目の当たりにして気が動転しちゃって……誰かに聞いて欲しかっただけなのかも…」

    日向「…この話、舞園は知ってるのか?」

    小泉「ううん。知ったらショックだと思って…」

    日向「舞園の秘密にしてどうにかしたい、というのならそっち路線で考えるが、そうじゃないならまずは舞園に話して、舞園がどういう方針を取るか知るべきじゃないか?」

    小泉「………そう、よね。勝手に焦っちゃったけど、事務所の方針とかさやかちゃんの考えとか色々あるはずよね…。わかったわ。さやかちゃんに話してみる」





    そんな小泉の相談があって3日後。

    相談室の前のポストに1つの投書が入っていた。


    名前 舞園さやか
    相談のジャンル その他
    相談内容 ストーカーを諦めさせる方法
    日時 ○月○日であればいつでも。それ以外なら要相談
    連絡先 090xxxxxxxx(マネージャーの番号です)



    日向(……また、難しい依頼になりそうだな)

    そう思いつつ日向は連絡先の電話番号に連絡をいれた。



    >>76 ありがとうございます。励みになります。
  45. 78 : : 2018/04/12(木) 00:56:26
    舞園が指定した日。

    マネージャーと会話をして、指定された日時で問題ないことを伝えた日向は……。

    日向(アイドルだしカロリー高めなお菓子は、忌避されるかな…)

    電話をしてから、そして、相談予定の当日までよくわからないところに気を使っていた。

    日向がいくつかのお菓子を前に悩んでいると、相談室の扉がノックされた。


    日向「どうぞ」

    「失礼します」


    入ってきたのは長髪の黒髪にパッチリとした目、ただ扉を開けただけなのに絵になる存在感を放った少女だった。

    超高校級のアイドル、舞園さやか。

    彼女はきょろきょろと警戒しながら相談室へ入ってきた。


    日向「……舞園、だよな?」

    舞園「はい。日向創さんですよね。今日はよろしくお願いします」

    舞園は礼儀正しく一礼した。




    日向「…とりあえず座ってくれ」

    舞園「はい。ありがとうございます!」

    舞園に席を勧めると、満面の笑顔で礼を言った。


    日向(…なるほど。行動一つ一つが礼儀正しいし、相手に良い印象を持たせるように心がけているのか? アイドルだし、その辺気をつけているんだろうな…)


    日向は相談用紙を持ち出し、舞園に差し出した。

    日向「じゃあ、この用紙に……こういうのって大丈夫か? 個人情報とか…」

    舞園「えっと……ふふ。警戒しすぎです。この程度なら大丈夫ですよ」

    舞園は苦笑しながら相談用紙に書き込みを始めた。



    名前 舞園さやか
    才能 超高校級のアイドル
    年齢 10代
    相談事カテゴリー その他
    相談事の概要 ストーカー対策


    用紙を受け取った日向は、先日の小泉の相談と内容が合致していることを確認した。


    日向「……まず、今回の相談は小泉から話があったからか?」

    舞園「ええ。といっても、マネージャーを通して聞いたので、直接聞いたわけではないです」

    日向「そうか。わかった。じゃあ、舞園はどういう認識で相談に来たかを確認したい。ここに来ることになった経緯を話してもらえるか?」

    舞園「はい」

    舞園はアゴに手を当てながら思い出すように話し始めた。
  46. 79 : : 2018/04/16(月) 00:28:00
    舞園「と言っても、あまり詳しくは知らないんですよね。話はマネージャーさんから伝わってきましたけど、私にストーカーがいるかもしれないということと、後は小泉さんが教えてくれたということくらいしか教えてもらえていなくて…」

    日向「……舞園は誰がクロか知らないのか?」

    舞園「はい。マネージャーさんは小泉さんから色々聞いているみたいですが……。そんな中で、不安そうにしていた私を小泉さんの口添えで日向さんに対策について相談したらどうか、という話になりました」

    日向はなぜ当事者である舞園が碌な情報を持たずにここへ来たかを考える。

    日向(…舞園に知られたくないのは確かだろうけど…だとしたら隠し方が中途半端だな………俺に相談させたかった…もしくは、その状況を作りたかった…?)

    日向「こういうのもなんだが、舞園くらい有名だとストーカーっていうのも初めてってわけじゃないだろ?」

    舞園「残念ながらそうですね。…ちょっと行き過ぎたファン…というだけなんですが…」

    日向「……なぁ、舞園。もう一度聞くが、マネージャーや小泉から誰がクロかは聞いていないんだよな?」

    舞園「はい……」

    日向は舞園が不安そうに顔を曇らせる様を見て確信した。




    日向「……舞園……ストーカーが誰か知っているんじゃないのか?」

    舞園「………」

    日向「もしくは…予想ができてる…と言ったところか。どうだ?」

    舞園「……はい。知っていました…」

    日向「不安そうにしていた、というのは知っていたからか」

    舞園「…そうですね。前々から違和感はあったんです。それで、もしかしたらあの人かも、という程度にも怪しんでいて……そして、今回の話で確信しました」

    日向「……なるほどな」

    日向(マネージャー…はわからないが、小泉の狙いは舞園のカウンセリングか)

    舞園が不安を感じている様子を見て、小泉が日向を頼った、という形である。

    日向に投げたとも言えるが、そこは信頼しているのだと、日向はプラスに考えた。
  47. 86 : : 2018/05/06(日) 23:16:52
    日向「……幸いなのかはわからないが、マネージャーが相手をわかっているから直接的な対処はそちらがやってくれるだろう。舞園として特に何かすることはないと思う」

    舞園「そうですね。今回のパターンであると、私が首を突っ込むと変なことになってしまうかもしれませんし…」

    日向「……そうか…じゃあ……」


    日向は一度立ち上がり、お茶と茶菓子(低カロリーバージョン)を持って戻ってきた。


    日向「雑談しよう」

    舞園「……え? ど、どういうことですか?」

    日向「犯人はわかってる。対処はマネージャーがしてくれる。舞園がストーカーについてすることは特にない。そうだな?」

    舞園「そ、そうですけど…」

    日向「ストーカーができなくする方法…なんてものを考えても不毛だしな。なら、俺がここでできるのは舞園がリラックスできるようにしてやるということだ。……今回の話で舞園は少なからずストレスを溜め込んだはずだ」

    舞園「………」

    日向「なら、雑談でもしたほうが解消になると思ってな」


    舞園「……確かに…それなら、これを機会に日向さんと仲良くなる日と考えることにします!」

    舞園は笑顔でそう言ってのけた。

    日向(……さすがはアイドル…だな)

    不覚にもドキっとしてしまった日向である。



    舞園「と言っても、何をお話しましょうか? 共通の話題があればお話しやすいですけど」

    日向「そうだな…。78期生だと誰が一番仲がいいんだ?」

    舞園「一番…と言われると悩みますが、一番話が合うのは苗木君ですかね」

    日向「苗木か。何というか意外だ」

    舞園「意外…ですか?」

    日向「いや…」

    てっきり桑田だと思ったが、下手に名前を出すわけにもいかないため、曖昧な返事しかできなかった。

    日向「苗木とはどういう縁なんだ?」

    舞園「中学校が同じだったんですよ」

    日向「へぇ、同じクラスだったとかか?」

    舞園「あ、いいえ。3年間同じクラスになったことはないですし、中学生の間は全くおしゃべりしたことがないです」

    日向「縁というほどでもなかったってことか?」

    舞園「ある日、中学校に鶴が迷い込んだことがあって騒ぎになったことがあるんですよ。その時に鶴を逃がしてあげたのが苗木君なんですが、それで強く印象に残っていたんですよ」

    日向「なるほどな。苗木らしいな」

    舞園「日向さんと苗木君はどうやって知り合ったんですか?」

    日向「最初は俺が才能開発の一貫で希望ヶ峰学園提携の病院にカウンセラーとして行った時に会ったな。確か…妹のお見舞いとかだったと思う。まぁ少し話をした程度だし、その時はあまり印象に残っていなかったんだけどな」

    舞園「それで私たちが入学してから希望ヶ峰学園で再会した、ということですか。運命ですね!」

    日向「どっちかというと舞園のほうが運命的だと思うぞ」



    二人の共通の話題として、苗木のことで話が盛り上がった。
  48. 87 : : 2018/05/06(日) 23:27:08
    時刻は夕方。

    苗木の話のみならず、クラスメイトの話、アイドルの話、など時間が許す限り様々な会話を行った。

    日向「……ああ、いつの間にか日が傾いてるな」

    舞園「つい夢中でお話しちゃいましたね。こうして誰かと落ち着いて話すのは久しぶりで楽しかったです」

    日向「舞園のストレス解消になったのなら何よりだよ」

    舞園「……あの、また、来てもいいですか?」

    日向「ああ。相談があれば受けるし、雑談だけでも来てくれて構わない。まぁ、雑談の時は俺に依頼がない時だけに限るけどな」

    舞園「ありがとうございます!」

    舞園はすっきりした笑顔で相談室を出ていった。






    日向が舞園の件について報告書をまとめているとコンコン、と相談室の扉がノックされた。

    入ってきたのは小泉だった。

    日向「小泉? どうしたんだ?」

    小泉「…今日一日教室に戻ってこないから…舞園ちゃんの相談が難航してるのかと思って心配になっちゃって…」

    日向「ああ。つい10分前くらいまで話してたな」

    小泉「え? だ、大丈夫なの?」

    日向「小泉が心配してるようなことはないぞ? ただ、舞園のストレス発散にでもなればって、雑談してただけだしな」

    小泉「……雑談?」

    日向「色々と話ができて、舞園もスッキリしてたみたいだしちょっとは効果があったと思う」

    小泉「……日向は……どうだったの?」

    日向「ん? 俺か? 色々な話が聞けて楽しかったぞ?」

    小泉「……ふーん…」

    日向「…? なんだ?」

    小泉「別に。…調子にのるんじゃないわよ」

    日向「何の話だ」

    しばらくジト目で見つめられてなんだか責められた気分になった日向だが、気にせず報告書を仕上げてしまうことにした。


    >>82 ありがとうございます! ただ、前回のSSほど更新ができていないため、かなりのゆっくり更新です。そんな状態でもよければ、お付き合いして頂ければ嬉しいです。
  49. 88 : : 2018/05/08(火) 00:16:58
    ~次の日~

    今日の日向は早朝に予定があった。


    日向「待たせたな、弐大」

    弐大「応! 来たか、日向。なぁに、儂もさっき来たばかりじゃあ」

    日向「そうか。じゃあ、今日もよろしくな」

    弐大「任せい!」

    弐大とのトレーニングである。

    日向が77期生に転科してからすぐ、何事にも挑戦ということで弐大とのトレーニングが始まった。

    最初は翌日が筋肉痛になるほどのトレーニングであったが、弐大の『アレ』のおかげで肉体的疲労はほとんど残さずにトレーニングを続けられた。

    そのおかげで日向も鍛えられ、それなりのレベルのトレーニングを行えるようになった。


    日向「…さっきから気になってるんだが…そっちにいるのは朝日奈か?」

    日向の視線の先には、タンクトップにホットパンツという身軽な格好でストレッチを行う朝日奈がいた。

    弐大「なんじゃ。知り合いか。奴もトレーニングをしたいと言ってきてな。ならば、今日日向とすることだし一緒にすることにしたんじゃ」

    日向「なるほどな」

    朝日奈「んーーーっ…! あ、日向だ! やっときたんだね!」

    朝日奈は大きく伸びをしたところで日向に気づき、小走りに近づいてきた。

    日向「おはよう、朝日奈。今日はよろしくな」

    朝日奈「うんうん! 一緒にトレーニングする人がいるっていいよね! 今日は負けないからね!」

    日向「勝ち負けがあるのかよ」

    朝日奈「そうした方が効率がいいんだよ!」

    弐大「朝日奈の言うことには一理あるぞ。ならば、今日のトレーニングは、持久力を競うものにするか」

    朝日奈「なんで持久力?」

    弐大「朝日奈はスイマーじゃが、陸上でも優れておる。速さを競えば、圧倒的に日向が不利じゃからのう」

    日向「何で競っても俺が完敗するような気がするんだが…」

    弐大「最初から諦めるとは情けない! それに本当に勝目がないなら儂もこんなことは言わんわい」

    日向「……弐大の見立てで勝率は?」

    弐大「そうじゃな。10%ってところか」

    日向「……逆にそんなにあるのかって言うところだなこれは」

    弐大「儂が1年見てきたんじゃ。それに勝負に絶対はないからのう」

    日向「それならちょっとはハンデが欲しいな」

    朝日奈「私はなんでもいいよ! それよりもまだー? 私もう体を動かしたくてウズウズするよー」

    日向「ああ。悪いな。じゃあやるか」

    弐大「よーし! じゃあ、今日は手始めに耐久マラソンじゃあ…先にぶっ倒れた方の負けじゃ!」

    日向「初日からめちゃくちゃハードだな!」

    朝日奈「よーし、やるよー!」



    二人が走ったのは陸上競技場として使えるグラウンドであるが、日向はその10周分をハンデとしてもらった。

    が、結果として(ある意味当然かもしれないが)負けた。




    日向「はぁ…はぁ…はぁ…いや、朝日奈……足はや……」

    朝日奈「はぁー、日向も早いねー! 本気でやらないとって焦っちゃった!」

    弐大「むう、日向もいい体しておるんじゃが、やはりまだ鍛える余地があるのう。よぉし! 日向は今日はここまでじゃ。朝日奈、まだ行けるなら別メニューがあるが、やるか?」

    朝日奈「もうちょっとだけ体動かしたいからやる!」


    なんだこいつの体力は…と日向は息も絶え絶えになりながら思った。
  50. 89 : : 2018/05/08(火) 00:36:36
    ある程度休憩して落ち着いた頃、朝日奈もトレーニングを終えて日向の隣に腰を下ろした。

    ちなみに弐大は、途中参戦してきた終里と絶賛格闘中である。

    終里「オラァ!」

    弐大「甘いわ!」

    そんな声をBGMに日向と朝日奈は、会話を始めた。



    朝日奈「日向、お疲れ様!」

    日向「お疲れ。やっぱりさすがな朝日奈」

    朝日奈「へへー。それだけが取り柄だからね」

    日向「……それだけではないと思うぞ」

    憎めない性格も朝日奈の長所だと日向は思った。

    日向「スイマーって聞いてたから、てっきり走る方は全然だと思ってたぞ」

    朝日奈「体を動かすのが好きだからスポーツならなんでもやるよ! そうだ! 今度一緒に泳ごうよ! 日向とならいい勝負出来そう!」

    日向「勘弁してくれよ…。走るのと泳ぐのとではまた勝手が違いすぎるだろう。泳ぎの特訓なんてしてないしな」

    朝日奈「じゃあ、一緒に泳ぐだけでもいいよ! 誰かと一緒に何かをするってすっごく楽しいし!」

    朝日奈の笑顔を見ていると、毒気が抜かれる。

    誰かの才能を見るたびに少しの劣等感を抱く日向も、この時だけはそんなものを感じずにいられた。


    日向「……ああ。そういえば一応勝負だったんだし、勝ち負けのケジメを付けるか。何かしてほしいこととかあるか?」

    朝日奈「え? あー、うーん…特に考えてなかったや…。うーん、飲み物を奢ってもらうとかでもいいけど、なんかもったない気がする……」

    朝日奈は腕を組んでうんうんと唸った。

    朝日奈「あ、そういえば日向って相談……なんだっけ?」

    日向「相談窓口だよ」

    朝日奈「そうそれ! それって悩み事とか、困ったことがあったら相談していいってことだよね?」

    日向「ああ。悩み事があるのか?」

    朝日奈「うーん、悩み事なのかな…。とりあえずさ、どこかで時間取って欲しいんだ。日向の相談って人気なんだよね?」

    日向「一日で受けれる相談数に限界があるからな。そういう意味では毎日相談事はやってきてるな」

    朝日奈「じゃあ、私の相談をちょっとだけ優先してくれるっていうのはどうかな?」

    日向「そんなことでいいならいいぞ。日程はいつでもいいのか?」

    朝日奈「うん! 知らせてくれればその日は練習おやすみするから」

    日向「わかった。また連絡するよ」


    その場で連絡先の交換を行って、その日のトレーニングは終了した。
  51. 91 : : 2018/05/09(水) 23:34:46
    その後、朝から体力を使い果たした日向は弐大のアレで何とか回復し、教室へ向かった。

    その道中、日向は地面を這う人物を見つけ、足を止めた。


    日向「大丈夫か? 何か落としたのか?」

    地面に顔を近づけているのは薄紫色の髪色をした女学生であり、日向が声をかけても何も反応をしなかった。

    日向「…? おーい」

    「……聞こえているわ」

    日向「……そうか。それで、何か落としたのか?」

    「……別に」

    はっきり否定しない辺り何かを落としたのだと、日向は判断した。

    日向「落としたのか。手伝ってやろうか?」

    「………」

    そこで初めてその女学生は顔を上げて、日向に視線を向けた。

    「……なぜ?」

    日向「なぜって?」

    「私を手伝うことによって、あなたに何もメリットがないわ」

    日向「困ってる奴ってのは助けるものだろ」

    「………そう」

    女学生はそれ以上何も言わず、再び失せ物探しを再開した。

    日向「どんなものを落としたんだ?」

    「……昔、父親からもらったキーホルダーよ。大したものじゃないわ」

    日向「おいおい。思い出の品ってことだろ? 大切なものじゃないのか」

    「…………」

    何も答えないことから何か訳ありか?と勘ぐった日向だったが、それ以上のことはわからなかった。

    しばらくそのまま捜索を続けるが、日向はあることに気づいた。

    日向「……そういえば、お互い自己紹介をしていなかったな。俺は超高校級の相談窓口、日向創だ。お前は?」

    「……………」

    考え込むような仕草をした後。

    「……霧切、響子。探偵よ」

    搾り出すようにそう告げた。


    日向「…探偵……超高校級の探偵?」

    霧切「……」

    否定をしないことが答えであった。

    日向(……探偵…こいつが?)

    頭に葉っぱが何枚もくっつけながらキーホルダーを探すこの女の子が探偵……。

    と、見た目だけで判断するとちょっと鈍感な女の子にしか日向には見えなかった。

    日向(……本当に色んなやつがいるな)

    個性的な超高校級の生徒達の中で霧切響子もまた、異彩を放つ存在であることは確かだった。



    しばらくして霧切は立ち上がった。

    霧切「……ふぅ。見つかりそうもないし、もういいわ。一応、感謝しておくわ。日向君」

    日向「いいのか?」

    霧切「この辺はもう十分に探したわ」


    霧切はそれだけ告げてさっさと去っていった。


    日向「……本当にいいのか…?」


    少し気になった日向はもう少しだけ継続して探すことにした。
  52. 92 : : 2018/05/10(木) 23:31:52
    日向「うーん…やっぱり探偵が探して見つかってないものを俺が見つけるのは難しいな……」

    ここに来て、キーホルダーとは聞いているが、色や形など特徴について何も聞いていないことに気づいた。

    日向「アホか…俺は…」

    「そんなところでどうしたの? 日向クン」

    日向が視線を向けると、そこにいたのは苗木誠であった。

    日向「おはよう、苗木。いや、自分の迂闊さを嘆いているだけだよ」

    苗木「本当に何があったのさ…」

    日向「苗木のクラスに霧切って奴がいるだろ? ついさっきそいつとここで会ったんだが…」

    苗木「ああ。霧切さん…未だにあまり会話ができてないけど……彼女がどうかしたの?」

    日向「キーホルダーを落としたらしくて一緒に探してたんだが、特徴らしい特徴を何も聞いていないことに今気づいてな」

    苗木「…キーホルダー?」

    日向「ああ。ここで落としたとは行っていなかったけどな」

    苗木「……うーん。もしかしてこれかな…」

    苗木がポケットから取り出したのは、クロネコのキーホルダー。

    小さなクロネコが顔を洗うポーズで気持ちよさそうに目を細めた表情をしていた。

    日向「うーん? 特徴を聞いていないから何とも言えないが、霧切が探しているのは事実だから苗木から聞いてみてもらえるか?」

    苗木「うん。了解したよ」

    日向「頼むな」

    これで見つかってくれればいいが…と日向は去っていく苗木を見送りながら思った。
  53. 95 : : 2018/05/13(日) 01:04:13
    教室に行く前、相談室へと寄り依頼箱を確認すると、3枚の紙が入っていた。

    1枚目、2枚目は一般生徒(予備学科)からの依頼、そして3枚目は…。



    日向「……葉隠……康比呂…?」


    名前 葉隠康比呂
    相談のジャンル 金銭
    相談内容 金稼ぎの方法
    日時 いつでも
    連絡先 090xxxxxxxx
        くれぐれもこの紙を他人に見せないように

    日向「……えらく達筆だな…」

    相談内容云々よりも、そこにまず目が付いた。

    日向「……葉隠って確か……78期生のやつだったよな…」

    直接会ったことはないが、噂程度のことは聞いたことがある。


    ・借金持ちである
    ・友達をも売るクズ
    ・とんでもないウニ
    総合評価:ロクな奴でない


    日向「……まぁ、実際に話してみないとわからないか。噂だけで判断するのも良くないし…」

    まずは連絡をとってみることにした。

    程なくして相手が電話に出た。


    『もしもーし。俺だべ!』

    日向「……誰だ、お前は」

    『いや、俺だって! そういうお前こそ誰だべ!』

    日向「……俺は日向創。超高校級の相談窓口だ」

    『……おお! 日向っちか! 相談受けてくれるんか!?』

    日向「いや、その前にお前は葉隠でいいのか?」

    『俺は正真正銘葉隠康比呂だべ!』

    なんか疲れるなこいつ…と思いながら日向は話を進めた。

    日向「……とりあえず、お前の相談について話を進めたいんだが、今日の夕方なら時間が空いてる。これそうか?」

    葉隠『おお! 大丈夫だべ! よろしく頼むな!』

    そう言って葉隠は電話を一方的に切った。


    日向「………何だろうな…」

    日向は、嫌な予感しかしなかった。



    >>93 \それに賛成だ!/

    >>94 前作のラストにちょろっと出てますが、今後の出番は不明です。絡められそうなら出します
  54. 96 : : 2018/05/15(火) 00:13:34
    その日、午前中に1件依頼を片付けた日向は時間が空いたため、教室へと戻った。

    日向「…なんだか授業を受けるのは久しぶりだな…」

    日向は、参考書を準備しつつ呟いた。

    七海「……日向君いっつもいないもんね」

    日向「好きでいないわけじゃないんだけどな」

    狛枝「そうそう。彼は希望をより輝かせるために頑張っているんだ。そのためなら授業なんて受けてる場合じゃないよね!」

    日向「何が役に立つかわからないから授業も受けた方がいいと思うぞ」

    狛枝「授業が無意味だなんて言わないさ。でも、百聞は一見に如かず、と言うし、実際に経験したほうが得るものが多いのも確かだよね?」

    日向「それはそうなんだが…」

    七海「でも確かに練習は大切だけど、みんなでワイワイやったほうが上達も早かったりするよね」

    日向「乗るんじゃない七海。それに俺は能動的に動ける才能じゃないから、依頼がない時は仕方ないだろ」

    狛枝「はぁ……日向クン。がっかりさせないで欲しいな…。キミの希望はもっと輝けるはずだよ?」

    日向「どういうことだ?」

    狛枝「能動的に動けない才能? それは違うよ! キミはもっと存在するだけで人々に希望を与える、そんな存在になるべきなんだ……。今のままで満足したらダメだ!」

    日向「お前のその熱意は違うところで発揮……いや、それはもう狛枝じゃないな」

    狛枝「…よくわかってくれてて嬉しいよ」

    日向「……」

    七海「…………」ギューン




    授業が開始すればさすがに静かである。


    終里「……あー! じっっっとしてられるかぁーー!!」


    さすがに静か…。


    弐大「終里ぃぃぃ! 静かにせんかい!」


    さすがに…。


    左右田「ダーッ! うっせえぞオメーら!」


    静かな授業である。



    「……希望ヶ峰学園を卒業した生徒たちは様々な分野で活躍しています。キミ達も現在の才能を使ってどのような道を進むか。それを今から考えてもらいます」


    罪木「あ、あのあの……た、例えばどのような…?」


    「例えば、罪木さんなら病院に勤めるのも一つの選択肢ですし、よりよい医療のために研究職に就くのもよいと思います。そういった将来のことを考えるのが今日の授業です」




    狛枝「うーん……適当に宝くじで1等でも当て続ければ生きていけるし……やっぱりボクはみんなの希望を輝かせるための踏み台に…」

    七海「……ゲーマーだし、ゲーム以外ないよね」


    そんな呟きも聞こえて来る中、日向は考える。




    日向(どのような道に、か…。超高校級の相談窓口を活かせる道か…)

    無難に考えるならそのまま相談所でも開いて、現在と同じように相談を受けていく道。

    他には、人の話を聞いて癒すカウンセラーのような道もあるだろう。

    日向(……うーん。俺の道っていうのは2つしかないのか? いや、俺が知らないだけという可能性が高いけど…)


    結局日向はそれ以上思いつかなかった。
  55. 97 : : 2018/05/17(木) 22:47:47
    日向「七海は…ゲーマーって言ってたな。やっぱりプロゲーマーを目指すのか?」

    七海「……うん。私ができることってそれくらいだから……。日向君は色々と考えられそうでいいね」

    日向「そんなことないぞ。今思いつくものって言ったらこの2つだ」

    日向はノートに書いた『相談窓口』と『カウンセラー』の文字を七海に見せた。

    七海「……んー…日向君なら何をやっても上手くやっていけそうなんだけどなぁ…」

    日向「そんなことないぞ。今でこそ相談窓口なんて呼ばれちゃいるが、それを取ったら……俺には何も…」

    七海「………」

    七海「……日向君、本当にそう思っているの?」

    日向「は?」

    七海「君は多くの人に……希望を与えられる存在なんだよ。そんな君が自分には何もないだなんて……。本当にそう思ってるの?」

    日向「だって……俺は相談窓口がなかったら、才能のない人間で……誰にも見向きもされないような……」

    七海「………前に私が言ったこと…覚えてるかな?」

    日向「前に……? いつのことだ?」

    七海は頬をプクーと膨らませて、ちょっとだけ眉に力が入った。

    怒っているようだ。

    日向「……何を怒ってるんだ?」

    七海「……別に」

    日向「……」

    何なんだ一体…と日向は七海と会話することを諦め、自分の机に向き直った。

    その際、クラス随一の厄介さを持つ男がこちらを見ていることに気づいた。

    日向「……なんだ、狛枝」

    狛枝「いや、楽しそうな会話が耳に入ったからついね」

    日向「……そう見えたか?」

    狛枝「あはは、ゴメンゴメン。そうピリピリしないでよ」

    日向「……そういえば、お前は何て書いたんだ?」

    狛枝「ボクかい? 宝くじ、踏み台、後はギャンブラーってところかな」

    日向「宝くじは職業じゃないし、踏み台ってなんだよ…」

    狛枝「ボクを踏み台にしてみんなの希望を輝かせる……そんな存在に、ボクはなりたい」

    日向「……だけど、幸運枠って本当どんなものになるとか想像しづらいな…。運に頼ったものしか考えつかない」

    狛枝「そうだね……。そういう意味ではボクの幸運っていうのはボクを縛る鎖みたいなものだね」

    日向「……言い得て妙だな。才能に縛られてるっていうのか」

    狛枝「………ボクだけ、ってわけでもないけどね」

    狛枝の呟きは日向には聞こえなかった。
  56. 99 : : 2018/05/23(水) 22:48:22
    【幕間】



    午前授業が終わり騒がしい昼食を終えた後、日向は相談室へと戻った。

    午後には二件。

    一つは夕方頃に葉隠の予約。

    そして、もう一つは外部の高校生の相談予約である。

    今日来ているのは女性で、内容は恋愛相談だった。



    「どうやったら彼の方から告白するように誘導できますかね…」

    日向「自分からはしないのか?」

    「なぜ私の方からそんなことを…。これは私のことが好きであると透かせている彼に告白させてあげようっていう私なりの思いやりなんです!」

    日向「…話を聞く限りでお前からも好意があるように聞き取れたんだが」

    「そ、そんなわけないでしょう! 変なことを言わないでください!」

    日向(ツンデレってやつか…?)

    日向「……そいつがどんな奴なのかはわからないが、好意を感じていて告白してこないということは自信がないんだと思う。なら、自信をつけさせてやればいい」

    「…どういうことですか?」

    日向「その『彼』が告白してお前がOKと言ってくれると確信を持たせてやる、ってことだ。」

    「……えっと、具体的に言うと…?」

    日向「例えば…そうだな。『彼』との会話の時のみにする特別な仕草を作る、とかどうだろう。やりやすいものでいいけど、例えばしゃべっている間は笑顔を絶やさないようにする、とか、後は髪の毛を握るとか」

    「……なるほど。特別な情報を与えることで『あなただけの特別』を演出するのですね…。帰って家人に相談してみます!」

    そう言って、彼女は帰っていった。



    日向「……外にも色んなやつがいるな…」

    超高校級の奴らにも負けない個性的なやつが外にいる。

    自分の視野の狭さを実感した日向だった。



    >>98
    忙しかった+書き溜めが消えた+体調崩してた
    とまぁ、色々と重なって更新止まってます。
    頑張って2,3日に1度は更新できるようにしていきます。
  57. 101 : : 2018/05/26(土) 23:45:52
    午後の依頼を一件片付けた日向は、葉隠が来るまでの間に明日の予定を組み始めた。


    手元にある明日指定の依頼は1件。

    他にも依頼はあるが、明日しなければならないというものはない。

    そういった時、日向は学園内の人間の依頼を入れることが多い。

    遠方から来る依頼者は日にちを指定しないと来れないことが多いが、学園内の人間なら急な要請でも対応しやすい。

    そのため、ある程度日向の都合に合わせて相談の依頼を受けることができる。


    日向は携帯電話を操作し、今朝方登録したばかりの人物へ電話をかけた。


    『もしもーし、朝日奈葵っす!』

    日向「よう、朝日奈。今大丈夫か?」

    朝日奈『あ、日向だ! うん、大丈夫だよ!』

    日向「……俺って確認せずに電話を取ったのか?」

    朝日奈『えへへ、合同練習会の後にドーナツ食べてて幸せ気分になってて…』

    日向「……まぁいいけどな。それで今朝言ってた相談なんだが、明日なら時間が取れそうなんだ。朝日奈さえ良ければ、明日どうだ?」

    朝日奈『え? もう? ……もしかして私のためにわざわざ…?』

    日向「いや、本当に明日は午前中に1件相談があるだけで、午後は時間があるんだ。毎日ずっと依頼を受けてるわけでもないから、そういう日もあるんだよ」

    朝日奈『そっかー……あ、それで明日の午後だよね?』

    日向「ああ」

    朝日奈『それなら大丈夫! えっと、よろしくお願いします!』

    日向「ああ。じゃあ、明日午後にな」

    朝日奈『はーい!』


    電話を切った日向は明日の予定表に朝日奈のイニシャルである「A.A」と書いた。


    >>100 幕間なら出してもいいかと勢いでやりました。反省はちょっとだけしています
  58. 102 : : 2018/05/28(月) 00:15:40
    そして、葉隠が来るまでと思い、報告書を作成していると…。

    ガラガラ、と音を立てて相談室の扉が開かれた。


    「んーーーー? えっと、ここでいいんか…?」

    入ってきたのはウニの如く髪の毛が爆発四散したドレッドヘアーをした男だった。

    日向「……ここは相談室だが、お前は誰だ?」

    「人に名前を尋ねる時は自分から言うもんだべ!」

    確かに、と思いながらも目の前の男に言われるのは、なぜだか納得がいかない日向だった。

    日向「……超高校級の相談窓口、日向創だ。それで、お前は?」

    「日向っちな。ってことはここで合ってるみたいだな!」

    日向「人の話を聞け。お前は誰だ?」

    「ああ、俺の名前は葉隠康比呂だべ。超高校級の占い師っつーのをやってるべ!」

    日向(……ああ、やっぱり)

    電話越しで聞いた声であったため、目の前の男が依頼者の葉隠で間違いないようである。

    日向「…まだ予定の時間まで少しあるんだが、どうしたんだ?」

    葉隠「ん? いやな。ちっと早めに行っとくといいことある、って占いで出たから早めに来てみたんだべ」

    日向「まぁ葉隠の依頼までの間は特に依頼もないし、問題ないといえばないが…」

    葉隠が早めに来てもいいことなどあるのだろうか…と、日向が考えていると…。


    葉隠「あ……ああああああ!!??」

    日向「ど、どうした?」

    葉隠「こ、こ、これは……! 超貴重アイテムだべ!」

    葉隠は相談室に飾ってあった水晶でできた髑髏をマジマジと観察しながら叫んだ。

    日向「……そうなのか? 依頼者からのお礼ってことでもらったものだけど」

    葉隠「……て…て…ってことは……ものは相談なんだが、これ譲ってもらえたり……」

    日向「……いや、一応もらいものだし、俺も気に入ってるから悪いが、譲る気はないぞ」

    葉隠「かーっ……ぐうう……じゃ、じゃあ、か、金払うから!」

    日向「いや、譲らないって」

    葉隠「な、なら…無料で占ってやるべ! 俺の占いはたけーんだぞ?」

    日向「……わかったわかった。これを譲ってくれた人に同じものがないか聞いてみる。それじゃあダメか?」

    葉隠「おおー! 日向っちってばいいやつだべ!」

    葉隠は嬉しそうに笑っているが、日向はこの数分のやり取りで疲れたを隠せずため息を吐いた。
  59. 104 : : 2018/06/03(日) 23:15:56
    日向「…というか、そろそろ本題に入っていいか?」

    葉隠「本題…? ……ああ! 俺ってば日向っちに相談に来たんだったな!」

    日向「………とりあえず座ってくれ」

    このままこいつを追い出してやろうかと思ったが、自分の評価が落ちるだけだと考え直し、席を勧めた。


    日向「…簡単にだが、この紙に葉隠のことと簡単に相談内容について書いてくれ」

    葉隠「ほうほう。占いみてーだな! 了解だべ」

    葉隠が思い浮かべたものは姓名占いだろうか、と思いながら葉隠が用紙に書き終わるまで待った。




    名前 葉隠康比呂
    才能 超高校級の占い師
    年齢 20代
    相談事カテゴリー  金銭
    相談事の概要 良い金の稼ぎ方



    日向(……投書の紙の時も思ったが、達筆だな…)


    日向「……金の稼ぎ方…なぁ……」

    葉隠「まぁそういうわけだべ。なんかいい方法ねーか?」

    日向「……そうだな……そんなすぐに言えるなら俺が実践してるところであるが…」

    葉隠「だよなぁ……」

    日向「ちなみに葉隠はどれくらい稼ぎたいと考えてるんだ?」

    葉隠「稼げるもんなら何億でも稼ぎたいべ!」

    日向「………何のためにだ?」

    葉隠「………言わんとダメか?」

    日向「どうしてもって言うなら言わなくていいぞ」

    葉隠「まぁ、色々と理由はあるが、一つはアレだべ」

    葉隠が指差すアレとは水晶でできた髑髏だった。

    日向「…髑髏?」

    葉隠「日向っちは知らんかもしれんが、あれはコレクターに見せれば1億はくだらんものだべ」

    日向「い、1億?」

    そんなものが相談室に転がってるとは到底思えず、何とも現実離れした話になってきたと日向は思った。

    葉隠「ああ……なぁ、日向っちアレやっぱり譲って…」

    日向「それはさっき以上に譲歩する気はないぞ」

    葉隠「はぁぁぁ……」

    あからさまに落ち込む葉隠を無視して、日向は話を勧めた。

    日向「それで、俺から提案できることといえば、葉隠は占い師なんだし、占いで稼げばいいんじゃないか?」

    葉隠「ちまちまと稼いでたら間に合わないべ!」

    日向「……間に合わない? 何にだ?」

    葉隠「え!? え…っと……」

    あからさまに焦った様子を見せる葉隠に日向は雲行きが不穏になったことを感じた。

    日向「……借金でもしてるのか?」

    葉隠「なんでわかるんだべ!?」

    日向「………」

    ここまで分かりやすすぎる人間は久しぶりだった。

    そして、ここまで絶句したのも久しぶりだった。

    日向「………」

    葉隠「口開いてんぞ、日向っち」

    日向「誰のせいだ…。それはともかく、借金の期日はいつなんだ?」

    葉隠「………3日後だべ…」

    日向「3日後までにいくらだ?」

    葉隠は右手を広げて、日向に見せた。

    日向「……? 5万か?」

    葉隠「そんくらいならすぐ返すべ…。5000万だべ」

    日向は桁の違う話にめまいを起こしそうだった。

    日向「……用意する当てはあるのか?」

    葉隠「あったらここには来てないべ!」

    なぜか激昂しながら葉隠は言った。

    日向は相談事において、自分の力、もしくは、相談相手の力で何とかする方向にできるだけ持って行かせる。

    人を当てにした解決方法は根本的な解決にならないし、次似たような状況になれば、相談相手はまたその他人の力を借りる方法を取るようになると予想できるからだ。

    そのため、今回もできれば誰かの力を借りる方向へ持って行きたくはなかったが……。

    日向には短時間で大金を稼ぐ方法はこれしか思いつかなかった。

    日向「…葉隠、短時間で大金を稼げるかもしれない方法がある」

    葉隠「ほ、本当か!?」

    日向「だけど、これにはお前にそのためなら何でもやる、っていう覚悟が必要だと思う。それでもやるか?」

    葉隠「借金返せるんなら何でもするべ!」

    日向は葉隠の言葉を聞いた後、とある男に連絡を行った。
  60. 105 : : 2018/06/03(日) 23:26:13
    狛枝「葉隠君の借金返済のためにボクに付き添って欲しい? 随分妙なことをお願いしてくるんだね。日向クン?」

    日向「俺もそう思うけど、お前しか頼れる人間がいないんだ。お前の幸運にしか、な」

    狛枝「へぇ……ボクなんかを頼ってくれて嬉しく思うけど、日向クンの狙い通りになるかな?」

    日向「俺はそう賭けてる」

    狛枝「……ふふ。日向クンにそこまで期待されてるなら答えなくっちゃね。……葉隠クン? 今日から3日。よろしく」

    葉隠「おう! 狛枝っち、よろしくな!」

    日向「葉隠、狛枝を連れてギャンブルをするんだ。狛枝ならおそらく勝つ。だが、その後全額失う展開が来るかもしれないから大金を得たら借金返済まで油断するんじゃないぞ?」

    葉隠「お、おう?」

    葉隠は最後までよくわからない、という顔をしていたが、日向はそれ以上説明しなかった。




    数日後、葉隠と狛枝が行方不明になり捜索隊が組まれた。

    が、捜索隊が組まれた翌日、狛枝は平然と希望ヶ峰学園に戻ってきた。

    その翌日、葉隠も教室へと来た。

    狛枝はニコニコするばかり何も話さないため、葉隠に事情を聞きに行った日向だったが…。

    葉隠「……命がいくつあっても足りんべ…」

    その言葉だけで何があったか大体察した日向だった。



    ※賭博黙示録ナギト って、タイトルを考えてカイジ的な展開を考えてましたが、長すぎたので割愛。
  61. 107 : : 2018/06/08(金) 00:07:36
    時は戻り、葉隠の相談を受けた翌日の午後。

    今度は超高校級のスイマー、朝日奈葵の相談を受けることとなっていた。

    現在、日向は相談室にて朝日奈を待っている最中である。


    日向「……葉隠のやつ、大丈夫だろうか」


    自分でやったこととは言え、幸運不運が左右されやすい狛枝と一緒に過ごしている葉隠のことを考え、少しだけ早まったかもしれない、などと考えていた。

    そんなことを考えていると…。



    朝日奈「し、失礼しまーす……」


    恐る恐る朝日奈が相談室に顔だけを覗かせた。

    日向「何やってるんだ?」

    朝日奈「あ、日向…。いやー、初めての場所だったからもし間違ってたらー、って思ったら慎重になっちゃって…」

    日向「合ってるから安心しろ…。とりあえず入ってきたらどうだ?」

    朝日奈「あ、あはは~」

    朝日奈は顔だけを扉から覗かせている奇妙な格好を誤魔化すように苦笑しながら入室した。

    日向が朝日奈をソファーに勧めて、自身も向かいのソファーへと座った。

    日向「じゃあ、この用紙に朝日奈の相談事について簡単に書いてくれ」

    朝日奈「わかったよ!」

    日向(元気な奴だ)

    元気よく答えた朝日奈を見て笑みを浮かべながら日向は、朝日奈に相談用紙を渡した。

    日向(悩まない人間はいないだろうが、朝日奈を見ていると悩みとは無縁に見えるな…)

    なんて考えていると、書き終えた朝日奈が「よろしくお願いします!」と言って相談用紙を差し出した。




    名前 朝日奈葵
    才能 超高校級のスイマー
    年齢 10代
    相談事カテゴリー  友人関係
    相談事の概要 友達の友達のつくり方



    そして、相談事の概要を見た日向が最初は意味が分からずに固まってしまうこととなった。
  62. 108 : : 2018/06/13(水) 22:51:06
    日向「…すまない。これだと要領が得られないからどういうことか具体的に聞いていいか?」

    朝日奈「う、うん。えっと……まず、私はこの学園に来てからできた友達がいるんだよね。それで…その子はとてもいい子なのに、見た目で判断されちゃって中々友達になってくれる人がいないの…」

    日向「見た目で判断される…というのは何か、怖がられたりするような近寄りがたい雰囲気がある…とかか?」

    朝日奈「うーん…私はそうは思わないんだけど、そうみたい…」

    日向「なるほどな…。それでその友達が何とか友達を作れるようになれないか、ということか」

    朝日奈「うん…。別にその子が友達欲しい、って言ってるわけじゃないんだけど、なんか…見た目で怖がられたり変な評価されちゃったりするのが悔しくって…」

    日向(友達思いなやつだな…。それはともかく…)

    日向「じゃあ、友達云々は置いておいて、そいつの雰囲気を和らげる方法とかを考えた方が良さそうだな」

    朝日奈「うーん。和らげるってどうすればいいの?」

    日向「一つ確認なんだが、その友達というのは女性か? 男性か?」

    朝日奈「あ、言ってなかったね。女の子だよ!」

    日向「それならリボンや髪飾りをしてみるとかどうだろう」

    朝日奈「うーん…」

    日向「ダメか?」

    朝日奈「ダメ、ってことはないと思うんだけど…その友達は格闘技をしてるから髪飾りとかリボンとか邪魔になる、とか思いそうだなって」

    日向「格闘技か…」

    目つきが悪いとか、高嶺の花のような存在を想像していたが、日向は今までの想像を覆すことにした。

    ※いつも1000字前後書いてから投稿するようにしていますが、最近書くための時間が少ないため、600字くらいで投稿することにしました。
    しばらくこれが続くと思います。ボリューム不足申し訳ない。
  63. 111 : : 2018/06/15(金) 00:27:31
    日向「失礼かもしれないけど、その友達って格闘技をやっているなら体が相当鍛えられてたりするのか?」

    朝日奈「うん! すごいいい体してるよ!」

    日向「……それが原因ってことはないのか?」

    朝日奈「…確かに普通の人が初めてあの筋肉を見ると…」

    朝日奈が腕を組んで考えこむ姿を見ると、その友人は相当鍛えられていると想像できた。

    日向(ちょっとした小道具でどうにかするというのは無理か…?)

    日向「……ちょっとした小道具で簡単にはいかなさそうだな…。あと考えられることとしては、笑顔とか…」

    朝日奈「笑顔?」

    日向「無表情よりは笑顔の方が相手に与える印象は変わるだろう。無表情だと感情が読み取れないから……被害妄想がひどい奴だと『こいつは今怒っている。その怒りのままに殴られるかも…』とか考えてしまうかもな」

    朝日奈「さくらちゃんはそんなことしないよ!」

    日向「落ち着け。例え話だ」

    日向(さくらという名前なのか)

    この手の話はすぐに解決しないことが多いため、その名前を覚えておくことにした。

    朝日奈「ご、ごめん。…うん。でもわかった! 笑顔だね! やってみる! ありがとね、日向!」

    朝日奈は嬉しそうに相談室を後にした。

    日向が止める間もなかった。

    日向「あ……。うーん…大丈夫か…」

    後日、朝日奈の名前で再び相談の依頼が来たため、日向は大体の事態を察した。

    >>109 彼女は全てを許すでしょう。
    ただ、朝日奈さんが許してくれないでしょう…。

    >>110 なんで図書室なんかに行くんすかね?
  64. 113 : : 2018/06/15(金) 23:49:47
    朝日奈「………」

    日向「………」

    朝日奈は下を向いて落ち込んだ様子を見せている。

    その様子から失敗したであろうことは火を見るより明らかであるが、日向は一応事情を聴くことにした。

    日向「何があったか聞いてもいいか?」

    朝日奈「……うん」

    朝日奈はポツポツと話し始めた。




    ~回想~

    朝日奈「さくらちゃん!」

    大神「…どうした、朝日奈よ」

    朝日奈「前話してたことなんだけど…」

    大神「……ああ。我が不当に評価されるのが不満、という話か。我は気にしない、と言ったはずだな。それで話は、終わったと思っていたが」

    朝日奈「さくらちゃんはそう言ったけど、やっぱり気になるもん! だから、私も色々と秘策を考えてみたんだよ!」

    大神「………」

    大神は朝日奈の真っ直ぐな想いに嬉しさを感じつつ、朝日奈の言葉に耳を傾けた。


    朝日奈「まずは、かわいい髪飾り!」

    大神の頭に花の髪飾りが付けられる。

    朝日奈「そして、笑顔! 笑顔だよ!」

    大神「……笑顔?」

    朝日奈「そっ! こうやってにこーって!」

    朝日奈の可愛らしい笑顔に大神も頬を緩める。

    朝日奈「そうそう。そんな感じ!」

    朝日奈は嬉しそうに微笑んだ。

    大神「…しかし、今は朝日奈の前であるから頬も緩むが、意図的にそうするのは難しい」

    朝日奈「うーん。なら楽しいことを思い浮かべてみようよ! そうしたら笑えるよ!」

    大神「楽しいこと…か」



    そして、いざ、実践!




    大神は渾身の笑顔を繰り出した!


    葉隠「ひ、ひえぇぇぇぇぇ!!? お、お助けぇぇぇ!!」


    葉隠は全力で逃げ出した!



    朝日奈「………」

    大神「ふむ……強敵とあいまみえた時を思い出して笑ってみたが……」

    朝日奈もフォローはできなかった。



    ~回想終了~
  65. 114 : : 2018/06/20(水) 00:31:14
    日向「………」

    朝日奈「私はかっこいいって思ったんだけどなぁ…」

    日向(……もしかして…)

    朝日奈は親友を色眼鏡で見ているのではないだろうか。

    そうだとすれば、どんな策を用意したとしても『さくらちゃん』がやったことを失敗であってもポジティブに捉えかねない。

    『さくらちゃん』についての相談事はずっと頓挫し続ける結果となってしまうだろう。



    日向「…朝日奈。確認なんだが、お前が言う『さくら』っていう友達は、超高校級の格闘家、大神さくらのことで合っているか?」

    朝日奈「え? い、一応内緒にしてたのに…」

    日向「少し調べればさすがにわかる」

    朝日奈が所属する78期生。

    そのクラスメイトを調べることは簡単だった。

    今期のみならず希望ヶ峰学園に進学するような学生は、インターネットで情報が出てくるような者たちばかりだ。

    そのため、誰が78期生に所属しているかを把握することは容易かった。

    その中で『さくら』と『格闘家』というキーワードに合致する人物が朝日奈の身近にいれば、朝日奈の悩みの種の人物であるということは想像に難くない。

    と言っても確たる証拠はなかったため、合っているようで日向はほっと息を吐いた。

    日向「……物は相談なんだが、朝日奈…」

    そして、『さくら』=『大神さくら』であると認識した上で日向は提案することにした。

    朝日奈「…?」

    日向の提案に朝日奈は最初、慌てた様子を見せた。

    が、日向の続く言葉に反論できず…。

    結局、日向の言葉に従うこととなり、相談室を出ていった。



    しばらくして再び相談室の扉が開かれた。

    朝日奈「………」

    現れたのは朝日奈。

    そして…。



    「………」


    筋肉隆々のセーラー服の人物、超高校級の格闘家である大神さくらが朝日奈の背後にいた。
  66. 115 : : 2018/06/24(日) 01:48:33
    日向は『大神さくら』という人物のことをあまり知らない。

    精々インターネットで調べられる程度のことで、どんな人柄なのかは全く知らない。

    そのため、目の前の筋肉隆々で体が大きな人物を見てさすがの日向も少し怯んだ。


    大神「………」

    その上、大神自身もそんなに会話を楽しむような性格をしていないため、入室しても無言を貫いている。

    日向自身もどう対処したものか、頭を悩ませていると…。

    朝日奈「え、えっと……さくらちゃん、こっちがさっき言った日向。日向創。超高校級の相談窓口だよ…」

    朝日奈から紹介してもらえたため、きっかけを作ってくれた朝日奈に感謝しつつ、流れに乗ることにした。

    日向「超高校級の相談窓口、日向創だ。よろしくな。……大神さくら…でいいんだよな?」

    大神「……ああ」

    日向「どういう状況なのか、っていうのは把握しているのか?」

    大神「……否。朝日奈が日向に何か相談事をしているということは知っているが、それ以上のことは知らぬ」

    日向「そうか。じゃあ、まずは情報共有からだな」

    見た目と喋り方に威圧感を感じつつも、コミュニケーションに問題がなさそうなことに日向は安堵した
  67. 116 : : 2018/06/28(木) 00:02:38
    大神「……朝日奈よ。我は言ったな。いらぬ心配であると」

    朝日奈「……ごめんね。でも、さくらちゃんが無意味に怖がられたりするのが我慢ならなくって…」

    どんな目にあったかわからないが、初対面で大神を見て僅かにでも怯えずにいられるかと言われると、日向に自信はなかった。

    大神「……朝日奈よ。その想いはとても嬉しく思う。だが、我はたった一人でも我のことを知っていればそれで十分なのだ」

    朝日奈「うぅぅ……そういうとは思ったけど……」

    日向「……互いが互いを思い合って起きたすれ違い…ってところだな。大神もあまり朝日奈を責めないでやって欲しい」

    大神「責めるつもりなどない。だが、我の想いは先ほど語った通り。つまり、このようなことをされても困惑するだけなのだ」

    日向(…まぁ、俺で言ったら狛枝に友達を無理やり紹介しようとするようなものなのかな)

    狛枝が友達を欲しがっている様にはとても思えないし、もしそんなことをしても狛枝にとってはありがた迷惑だろう。

    日向「朝日奈。大神がこう言っていることだし、今回の相談はなかったことにしたほうがいいと俺は思うんだけど」

    朝日奈「うん……ごめんね、さくらちゃん。日向…」

    余計なことをして二人に迷惑をかけた、という想いがあるのだろう。

    朝日奈はションボリと俯いていて謝罪した。



    日向「よし。それなら…」

    大神「待て。日向よ」

    日向「ん? なんだ?」

    大神「日向に頼みたいことがあるのだ」

    日向「頼みたいこと?」

    大神は相変わらずの無表情のまま言い放った。



    大神「77期生にいる超高校級のマネージャー。そして、超高校級の剣道家を紹介してもらうことは可能だろうか」

    その申し出に日向はわずかばかりに嫌な予感がした。
  68. 117 : : 2018/07/03(火) 00:33:58
    日向「一応、理由は聞いていいか?」

    大神「…超高校級の剣道家、辺古山ペコは我と出身校が同じなのだ。同じ出身同士、一言挨拶をしようと思ったまでだ」

    日向「弐大…超高校級のマネージャーに会いたい理由は?」

    大神「…超高校級のマネージャーは独自のトレーニング法と指導法により、多くの実績がある。我のトレーニングにも改善の余地があるだろうから意見をもらいたい、と思っている」

    日向「…なるほどな。そういうことならいいぞ」

    大神「…日向よ。感謝する」

    日向「……ああ、だけど…」

    日向(終里が勝負を挑みそうだな……たとえ止めても…)

    日向「一人、大神を見つけたら勝負を挑みそうな奴がいるんだが、それでもいいか?」

    大神「ああ。挑まれれば拒みはしない」

    頼もしい言葉が聞けたところで日向は大神を案内するために、77期生の教室へと向かった。



    朝日奈「さくらちゃんは辺古山さんって人のことを知ってるの?」

    大神「…知っているというほどではない。同じ高校に剣道で強い者がいる、という程度だ。我は格闘技を極めるために武者修行を行っていたが、剣道家の元へ行く用事はなかった」

    大神なら竹刀や他の武器を持っていたとしてもあまり関係なさそうだ、と日向は心の中で思うだけにした。


    朝日奈「弐大のことは知ってるの?」

    大神「……朝日奈に聞いた以上の事は知らぬ」

    日向「どんな説明をしたんだ、朝日奈」

    朝日奈「え? うーん……? 練習メニューを見てもらったこととか、朝練のこととか……。あ! あと、暑苦しい!」

    日向「……朝日奈も結構暑苦しい性格だよな」

    朝日奈「え? そう? えへへ~」

    日向「褒めたつもりはないんだが…」

    嬉ぶポイントがイマイチわからない日向だった。
  69. 118 : : 2018/07/08(日) 00:48:31
    77期生の教室に到達し中を覗くと…。

    終里「オラオラオラオラ!!」

    弐大「ヌウウウウ!!」

    終里と弐大が机や椅子を吹き飛ばしながら戦っていた。

    日向「おいおい、何事だ…?」

    その日向の言葉に反応した者がいた。

    田中「終里は、最強の戦乙女に挑むために全身全霊を持って己の力を試している…」

    日向「田中。無事だったか」

    田中「ふん。あの程度、俺様にとっては児戯に等しい」

    日向「えっと、それで最強の戦乙女って誰のことだ?」

    田中「……我が邪眼を持ってしても、かの者の真名は見通せぬ。それほどの魔力の持ち主だ」

    日向「知らないのな」

    田中「……大神、とは聞いている」

    日向「知ってるんじゃないか」

    大神「……我、か。とりあえず、教室がこれ以上荒れては困るであろう。止めてこよう」

    大神はその巨体に似合わない素早さで教室に入った。

    そして…。


    終里「オラアアアアア!!」

    大神「ふん…」

    終里の渾身の蹴りを掴み、そのまま掴み上げてしまった。



    終里「ガアアア! なんだ!? 誰だ!?」

    弐大「無ッ!? 何奴……お前さんは……」


    弐大は驚愕の表情を浮かべて固まってしまった。
  70. 120 : : 2018/07/12(木) 23:23:10
    大神「………」

    終里「うおおおおお!! 離しやがれぇぇぇぇ!!!」

    ジタバタと暴れる終里を完全にいなしながら、大神はどうしたものかと考える。

    そして、すぐにここへ自分を連れてきた存在を思い出した。

    大神「日向よ」

    日向「ああ、わかったよ」

    弐大「……日向? こりゃあ一体…」

    日向「……ただの仲裁だよ」

    日向はため息を吐きながら、暴れる終里を見つめた。

    日向「とりあえず、大神。終里を離してやってくれ」

    日向(この場に気にする奴がいないとは言え、パンツ丸見えだから)

    大神「ふむ」

    大神が終里を話すと、終里は体操選手さながらの身体能力で身体を捻りながら逆さの状態から復帰した。

    終里「……大神?」

    弐大「…間近で見たのは始めたじゃが……やはり只者じゃないのう」

    大神「………」

    日向「まず、終里。暴れるのは話をしてからだ。そして、弐大。大神はお前に用があるらしいから話を聞いてやってくれ」

    弐大「ほう。儂に話か」

    終里「……んなもん関係ねぇ」

    終里はその肢体から繰り出せる最高の回し蹴りを大神へ放った。

    大神「無ッ…」

    終里は大神が二の腕に力を込め回し蹴りを受け止めたことを確認すると、バク転をしながら距離を取った。

    終里「話なんか聞く必要はねぇ。目の前につえー奴がいる。なら…戦うだけだ!」

    大神「……良いだろう。我の目的のために戦わねばならぬと言うなら…我は引かぬ」

    日向「………」

    結局こうなるのか、と日向は頭を抱えることになった。


    >>119 ありがとうございます!
    身体はいいんですが、時間がないですねー
    更新は出来る時にやっていくので、良ければお付き合いください
  71. 121 : : 2018/07/15(日) 22:56:21
    大神「場所を移すぞ。ここで拳を交えれば、修復が更に困難になるだろう」

    終里「場所なんてどこでもいい。早くやろうぜ」

    大神「では、武道場に行くぞ」


    そして、場所は武道場へと移り、大神と終里は改めて対峙した。

    事の顛末を見守るために、日向と弐大、朝日奈も一緒に着いてきていた。


    大神「……弐大よ。審判を頼めるか」

    弐大「…しゃーないのう。まぁ、いい加減抑え込むのも限界だったし、ちょうどいいわい」

    弐大は、耳をほじりながらため息を吐いた。



    弐大「両者、どちらが勝っても負けても文句無し。戦意喪失、もしくは、戦闘続行が不可能と儂が判断したらそこで終わりじゃ。いいな?」

    終里「おう!」

    大神「……」

    大神は静かに一度だけ頷いた。



    弐大「では、始め!」

    終里「オラアアア!!」

    大神「無ッ…!」

    終里が高速で放った蹴りを大神は、右腕で受け止めた。

    終里は防がれることを予想済みだったようで、地面に手を着いて身体を捻って更に攻撃を繰り出す。

    終里「オラオラオラオラ!!」

    大神「………身体能力のみに策無しに攻撃をするだけ…。舐められたものだ」

    大神が終里の足を掴み、その身体を宙へ放った。

    終里「……あ…?」

    大神「……天星奔烈」

    空中で受身も取れない終里に向かって、大神が翼のように広げた両手を終里へと叩き込んだ。

    終里「ガッ…?!」

    そのまま終里は武道場の端まで吹き飛ばされ、壁に激突した。




    日向「おいおい、大丈夫か…?」

    朝日奈「大丈夫! さくらちゃんは手加減出来る子だから! たぶん!」

    日向「たぶんって言うんじゃない。不安になるから。それよりも弐大…」

    弐大「………」

    現状を見ても弐大が勝負終了を宣言することはなかった。

    日向の目から見ても終里に勝目があるとは、到底思えない。

    弐大の様子に疑問を持ちながら、日向は二人の勝負に目を戻した。



    終里「ゲホッ、ガハッ……な、なかなかやるじゃねぇか…」

    大神「……まだやるか」

    終里「当たりめぇだろ!」

    終里は大神に向かって走り出した。

    が…。


    終里「な、なん…だ? う、動かねえ…」

    大神「……自身の身体の状態すらわからぬか。もう良いだろう、弐大よ」

    弐大「そうじゃのう。この勝負、大神の勝利じゃ」


    終里「ああ!? ふ、ふざけ……ぐ…」

    弐大「そのザマで何を言っておるんじゃ。ほれ、保健室で罪木に見てもらうぞ」

    終里「いかねぇ! まだ勝負は着いてねぇ!」

    足をガクガクと震えさせながら吠える終里を抱えて、弐大は退出しようとした。



    大神「……待て。弐大、そして、終里よ」

    弐大「………」

    終里「……なんだよ…」



    大神「……聞け。終里よ。お主がなぜ強さを求めているかは知らぬ。だが、独りよがりな強さには限界がある。よく考えることだ」


    終里「………何言ってんのかわかんねーよ」

    大神「そうか…」

    大神はそれ以上何も言わず、弐大も大神の用事が終わったのだと思い、そのまま武道場を出ていった。


    ※天星奔烈・・・元ネタ、北斗の拳の『天将奔烈』です。
    大神はそれっぽい型で終里を攻撃したということにしています。
  72. 122 : : 2018/07/17(火) 00:01:07
    大神「………さて、弐大が出て行ってしまったことであるし、また日を改めた方がよかろう」

    日向「そうだな。さっき教室には辺古山はいなかったし、俺の方で日程調整しておく」

    大神「感謝する。日向よ」

    大神は威厳たっぷりの目礼で日向に礼を述べた。


    大神「さて、今回我は朝日奈の相談事のついでに日向に此度のことを頼んだ。日向としては相談窓口の範疇からも出ているであろう」

    日向「そうだな……。相談事として処理するのも簡単だが、人を紹介するだけで相談とするのは俺としてはあまりしたくないな」

    大神「ならば、日向よ。此度の事の代償として、我は日向に何をすればいいだろうか」

    日向「ん? 代償?」

    大神「うむ。我が一方的に頼んでおいて、日向に何の益もないというのは我の気が収まらぬ」

    日向「…と急に言われてもな」

    大神「今すぐに決めろ、という話ではない。決まったら遠慮せずに言うのだぞ」

    日向「……わかったよ」

    人を紹介しただけの代償として、超高校級の格闘家にさせられることなんてあるのか…と、日向は更に頭を悩ませることになった。
  73. 123 : : 2018/07/18(水) 23:00:27
    日向は辺古山や弐大が戻ってきていることを期待して教室に戻ってみたが、目的の二人はいなかった。

    代わりにいたのは、教室の片付けをする狛枝と雪染だった。

    雪染「あ! 日向くん! ちょうどいいところに!」

    日向はうわっ、と思ったが、ここで逃げるわけにもいかないため、雪染へ近づいた。

    雪染「教室がこんなことになっているなんて由々しき事態……日向君も片付けるの手伝ってくれるわよね?」

    日向「………」

    正直否定したいが、断ると雪染先生怖いからな…と日向が考えていると。

    雪染「手伝ってくれるわよね?」

    いつの間にか目に光を失くした雪染が日向の肩に手を置いて、顔を近づけていた。

    日向「は…はい…」

    断わることもできずに、日向は片付けをすることになった。

    日向「狛枝、お前も雪染先生に頼まれたのか?」

    狛枝「そうだね。でも、すごいよね。終里さんと弐大君が教室をこんなにしちゃうなんていつものことだけど、今日はより一層激しかったみたいだね?」

    日向「今日は終里にも譲れないものがあったみたいでな」

    狛枝「ああ…きっと終里さんの希望、そしてそれを止める弐大君の希望が輝ける場面が見れたんだろうね……。クッ、ボクはなんて運がないんだ…!」

    いつもどおりだなコイツは、と思いつつ、日向は手を動かした。

    雪染「全くもー、こんなことするのは終里さんか、弐大君ねー。帰ってきたら二人共お仕置きね」

    雪染は壁にめり込んだ椅子を引っ張りながらぼやいた。


    花村「雪染先生のお仕置きと聞いて」

    そんなセリフと共に花村がひょこっと顔を出した。

    日向「どこから出てきた、花村」

    花村「たった今教室に来たところさ。戻ってきたら教室はめちゃくちゃだし、片付けをしてるし、雪染先生のお仕置きだし、もうめちゃくちゃだよね!」

    日向「そうだな。その3つを一緒くたにするとめちゃくちゃだろうな」

    花村「そ・れ・で…雪染先生のお仕置きってどんアヒン!?」

    雪染「あ、あー、ご、ごめんね、花村君」

    どうやら壁にめり込んでいた椅子が勢いよく引き抜かれて、花村に激突してしまったようだ。

    花村「ご…ご褒美…で…す」

    それでも親指を立てながら沈んでいった花村を日向は、冷ややかな目で見ていた。
  74. 124 : : 2018/07/28(土) 23:08:40
    教室を片付け終わった日向は、花村を保健室に連れて戻ってきた。

    左右田「お、片付け終わってんな」

    日向「左右田?」

    西園寺「綺麗になってるねー、さすが私の奴隷!」

    日向「……西園寺?」

    この黄色いコンビが都合よくこのタイミングで現れたのは……。

    日向「……お前ら、片付けするのが面倒くさくて逃げたな?」

    左右田「だってよぉ。教室覗いたらテメーらはせっせと片付けしてるし、雪染先生は鬼のような顔して椅子を引き抜いてるし……」

    西園寺「こういうことは奴隷に任せるものでしょー?」

    日向「……まぁいいけどな」

    日向は自分の席に座って、久しぶりに授業が受けれると呑気に構えていた。

    そんな日向の前の席に座ってきた人間がいた。


    狛枝「ねぇ、日向クン。ちょっといいかな?」

    日向「……なんだよ、狛枝」

    狛枝「そんな露骨に嫌そうな顔しないで……ちょっと相談事があってさ…。できればどこかで時間をもらえないかなぁ?」

    大いに嫌な予感がしたが、自分の才能上断わることもできない。

    日向は渋々、狛枝の相談に乗ることに決めた。

    日向「時間と場所はこっちで決めて大丈夫だな?」

    狛枝「ああ、えっと……できれば3日後以降にしてもらえたら都合がいいかな。ボクから言い出しておいて、こんなことを言うなんて申し訳なさに自殺したくなるよ…」

    日向「死ぬな。わかった。3日後以降で時間を取っておくから決まったら連絡する」

    狛枝「ありがとう、日向クン」

    狛枝の感謝の言葉がなぜか嫌味に聞こえて仕方が無かった。
  75. 125 : : 2018/07/30(月) 00:37:05
    結局、日向が都合を付けれたのは5日後。

    前もって依頼されていたものを処理していくと、それくらいになったのだが。

    狛枝「ああ、ボクなんかのためにゴメンネ…」

    日向「いや、こっちも結局5日後になってしまって悪いな」

    狛枝「別に急ぎの用事じゃないよ。むしろ、時間があったほうが都合がいいかな」

    日向「どういう意味だ?」

    狛枝「日向君は気にしないで大丈夫だよ」

    嫌な予感しかしなかった。




    狛枝を適当にあしらいつつ、日向は相談室で次の相談者を待っていた。

    本日の依頼はこれで最後の予定だった。

    夕方であるため、1時間程度しか時間を取っていないが、依頼者がそれで構わないとのことだったため、日向も了承した。


    日向「……そろそろなはずだけど…」

    日向が時計で時間を確認していると、相談室の扉が勢いよく開かれた。

    「はぁ……はぁ……ご、ごめんなさい……研究に……夢中……なってて…」

    現れたのは黒いマスク、左目を髪で隠した女生徒、76期生超高校級の薬剤師である忌村静子だった。


    日向「いえ、約束の時間の前なので大丈夫ですよ。座ってください」

    日向に促され、忌村は乱れた息を整えつつソファに座った。

    日向「では、この用紙に依頼内容を書いてください」

    忌村「あ……その……敬語じゃなくて…大丈夫…」

    日向「ん……でも」

    忌村「…日向君みたいな人に……敬語……喋られると…落ち着かない…」

    日向「……そうか。わかった。これでいいか?」

    忌村は小さく頷き、用紙に記入を始めた。



    名前 忌村静子
    才能 超高校級の薬剤師
    年齢 10代
    相談事カテゴリー 友人関係
    相談事の概要 喧嘩した友達との仲直りの仕方



    日向「……喧嘩、か。話せる範囲で経緯を話してくれ。話しにくいことは、省略して構わない」

    忌村「……いや…全部話す……。話さないと……わからない……と思う…」


    忌村は深呼吸しながら、話し始めた。


    ※忌村のキャライメージがふわふわしているので、これじゃねぇ!感が出ると思います。いくらなんでもこれは言わない、とかあったら指摘をお願いします……
  76. 128 : : 2018/08/01(水) 23:52:28
    忌村「……最初に……言っておく…。期待……してない…」

    日向「……? どういうことだ?」

    忌村「あなたに……一度相談したから……解決すると……思ってない……」

    日向「……いくら俺が超高校級だからと言って、一度相談したくらいで自分の悩みが解決すると思っていない。だから期待しない、ってことか?」

    忌村は小さく頷いた。

    忌村「……怒った…?」

    日向「いや、むしろ安心したな」

    忌村「……?」

    日向「超高校級っていう肩書きを持ってみてわかったけど、俺に相談すればなんでも解決する、みたいな期待を持ってくる奴が多いんだ。俺は俺にできることしかできない。だから、忌村みたいな相談者の方が俺としては、気が楽だ」

    忌村「………そうね。…確かに……そういうこともある…」

    日向「忌村も超高校級の薬剤師だからどんな薬でも作れる、とか思って接してくる奴がいたのか?」

    忌村「……いたわ…不老不死とか……寿命を伸ばす薬とか…ね」

    日向は忌村も忌村で大変なことがあったのだろう、と思い、それ以上の詮索はしなかった。

    日向「すまない。話が逸れたな。本題に移ってくれ」

    忌村「………私には……幼馴染が…いるの…」

    忌村は次の言葉を選ぶようにゆっくりと話し、日向は遮らずに忌村が話すまで待った。

    忌村「……その子は……私が作った薬を……よく使う…。だけど……この前……断ったら……友達じゃない……って怒られて……喧嘩…しちゃった…」

    日向「……それで、忌村はどうしたいんだ?」

    忌村「……仲直りしたい」

    日向「その薬、というものがないと友達が困ることになるのか?」

    忌村「……わからない。でも……必要だって言ってくれる…」

    日向「忌村が薬をあげることを断った理由は?」

    忌村「……材料が…なかった」

    日向「…それで幼馴染は怒ったのか? それはあんまりじゃないか?」

    忌村「………」

    あまり喋らない忌村を前に日向は、今までで一番手ごわい依頼かもしれない、と依頼の難易度の高さにすこし絶望していた。
  77. 129 : : 2018/08/05(日) 22:06:12
    日向「……俺から提案できることは二つだ。一つはその幼馴染が求めたという薬をすぐに用意してやることだ」

    忌村「……用意は…してる。でも……」

    日向「喧嘩してるから渡しづらい、ってところか? そこは勇気を出して渡すしかない」

    忌村「………」

    日向「まぁ、それももう一つの提案を聞いたら意味がないんだけどな」

    忌村「……?」

    日向「俺のもう一つの提案は、忌村とその幼馴染の関係を見直すということ。お前達が本当はどんな関係なのかはわからない。だけど、話を聞いてる限りだと忌村とその幼馴染を繋いでいるものは、友情ではなく薬のように聞こえたよ」

    忌村「………」

    日向「そうじゃない、っていうならそう言ってくれ。だけど、もし俺の言っていることが正しいなら……一度薬を上げ続ける関係が正しいかを考えたほうがいいと、俺は思った」

    忌村「………わかった…」

    忌村は感情のない瞳のまま頷くと、そのまま立ち上がって相談室を出ていった。


    日向は手付かずのお茶と茶菓子を自分で処理しつつ、忌村のことを心配していた。
  78. 130 : : 2018/08/08(水) 23:03:41
    【残滓】

    「なーんかーないかなーっと」

    江ノ島は綺麗に並べられた書類を次々と床に落としていく。

    ここは希望ヶ峰学園の図書室……に隠された秘密の通路から行ける資料保管用の部屋。

    江ノ島にとっては秘密になっていなかったが、確かに書いてある内容は世間には出せないような内容のものばかりだ。


    だが…。


    「……意外とつまんないものしかないなー」


    彼女にとっては取るに足らない紙の束にしか見えない。



    「はぁー。こういう学園だし、裏でヤバいことやっててもこの程度かぁ……」


    「……まっ、収穫はあったし、いっかー」


    そう言って、江ノ島は目をつけた資料をその場でパラパラと速読した後、資料を投げ捨てるを繰り返した。



    一通り読み終わった江ノ島は資料室を荒らした状態のまま、部屋を去っていった。
  79. 131 : : 2018/08/23(木) 23:03:21
    日向創は超高校級の相談窓口として、さまざまな依頼を受けてきた。

    特に人間関係の相談に特化しているとされているため、恋愛や友人等さまざまな人の在り方を目の当たりにした。


    だが、そんな彼でもまだまだ複雑な人間関係は存在する。


    日向「………」

    霧切「………」

    黄桜「アッハッハッハ…」


    突如として現れた霧切、そして、黄桜に日向は困惑した。

    無表情であるが、明らかに不機嫌な霧切。

    困ったように笑い、そしてボトルを煽る黄桜。

    日向(何のんきに飲んでるんだこの人…)

    と、日向は黄桜に若干怒りを思いつつ、この状況に対応に取り掛かった。


    日向「……黄桜さん。この状況の説明をお願いできますか?」

    黄桜「……いつまでも笑ってられないねぇ。いや、この状況はとても愉快なんだけどね」

    日向「黄桜さん」

    黄桜「わかってるって。んっと、まずは自己紹介でもどうだい? 君たち、初対面だろう?」

    日向「いや、俺たちは」

    霧切「彼とは初対面ではないわね。そうでしょう? 超高校級の相談窓口、日向創君」

    日向「…そうだな。超高校級の探偵、霧切響子」

    なぜこんなにもピリピリしているのかわからないが、つい日向もピリピリとしてしまった。

    黄桜「おや、お互い知り合いだったんだねぇ。それなら話が早い」

    そんな霧切の様子を知ってか知らずか、黄桜は話を続けた。

    日向(黄桜さんは気づいててわざとやっていそうだな)

    黄桜「……キミに響子ちゃんのことで相談があってね」

    霧切「私にそんなものはないわ。……それと、黄桜さん。響子ちゃんはやめて」

    黄桜「いや、手厳しいねぇ」

    刺々しく黄桜に反応しているが、ここまで付いてきて、さらに逃げない辺り霧切は黄桜の言葉を無碍にできないのだろう。

    日向「……それならこの用紙に必要事項の記載をお願いします」

    黄桜はスラスラ、と用紙に書き込み、すぐに用紙を日向へと返した。


    名前 霧切響子
    才能 超高校級の探偵
    年齢 10代
    相談事カテゴリー 親子関係
    相談事の概要 親と子の接し方



    日向は思わず、知るか!と叫びそうになる衝動を抑えつつ、黄桜の方へと向き直った。
  80. 132 : : 2018/08/24(金) 02:37:01
    そういえばこの世界線の仁さんは原作みたいにアレな人なんだろうか?
  81. 133 : : 2018/10/02(火) 07:15:24
    こりゃあ苗木くんの力を借りるしかない案件
  82. 134 : : 2018/10/06(土) 18:12:18
    いつまでも期待
  83. 135 : : 2018/10/06(土) 23:07:35
    ※更新ではありません
    現在、SSNoteで何かを書こう!っていうやる気が全くなくてですね……(『最近投稿があったSS』の更新履歴の動向やそれを見て他グループを覗いてみた結果、ちょっとこのサイトで書き続けるのはいかがなものか、と思いまして)

    そのため、このSSの続き、また、新たに何か書くにしても別の場所で書こうと思っています(尚且つもうちょっと整理して読みやすいようにしたいと思っています)

    楽しみにしてくださっている方、期待されている方には申し訳ないですが、ここで待っていても更新される可能性は低いということをお知らせします。
  84. 136 : : 2018/10/07(日) 07:49:52
    そうですかー
    別の場所てどこにする予定なのでしょうか?
  85. 137 : : 2018/10/07(日) 12:50:53
    >>136
    今のところはPixivです(ユーザー名は同じで)
  86. 138 : : 2018/10/08(月) 23:00:46
    期待
  87. 139 : : 2018/10/17(水) 16:47:05
    すごい気持ち分かります…
    もうダンガンロンパのキャラとか全部無視して中学生が汚い妄想を書き込む場と化してますもんね
  88. 140 : : 2020/10/26(月) 15:01:18
    http://www.ssnote.net/users/homo
    ↑害悪登録ユーザー・提督のアカウント⚠️

    http://www.ssnote.net/groups/2536/archives/8
    ↑⚠️神威団・恋中騒動⚠️
    ⚠️提督とみかぱん謝罪⚠️

    ⚠️害悪登録ユーザー提督・にゃる・墓場⚠️
    ⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️
    10 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:30:50 このユーザーのレスのみ表示する
    みかぱん氏に代わり私が謝罪させていただきます
    今回は誠にすみませんでした。


    13 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:59:46 このユーザーのレスのみ表示する
    >>12
    みかぱん氏がしくんだことに対しての謝罪でしたので
    現在みかぱん氏は謹慎中であり、代わりに謝罪をさせていただきました

    私自身の謝罪を忘れていました。すいません

    改めまして、今回は多大なるご迷惑をおかけし、誠にすみませんでした。
    今回の事に対し、カムイ団を解散したのも貴方への謝罪を含めてです
    あなたの心に深い傷を負わせてしまった事、本当にすみませんでした
    SS活動、頑張ってください。応援できるという立場ではございませんが、貴方のSSを陰ながら応援しています
    本当に今回はすみませんでした。




    ⚠️提督のサブ垢・墓場⚠️

    http://www.ssnote.net/users/taiyouakiyosi

    ⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️

    56 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:53:40 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ごめんなさい。


    58 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:54:10 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ずっとここ見てました。
    怖くて怖くてたまらないんです。


    61 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:55:00 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    今までにしたことは謝りますし、近々このサイトからも消える予定なんです。
    お願いです、やめてください。


    65 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:56:26 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    元はといえば私の責任なんです。
    お願いです、許してください


    67 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    アカウントは消します。サブ垢もです。
    もう金輪際このサイトには関わりませんし、貴方に対しても何もいたしません。
    どうかお許しください…


    68 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:42 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    これは嘘じゃないです。
    本当にお願いします…



    79 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:01:54 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ホントにやめてください…お願いします…


    85 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:04:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    それに関しては本当に申し訳ありません。
    若気の至りで、謎の万能感がそのころにはあったんです。
    お願いですから今回だけはお慈悲をください


    89 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:05:34 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    もう二度としませんから…
    お願いです、許してください…

    5 : 墓場 : 2018/12/02(日) 10:28:43 このユーザーのレスのみ表示する
    ストレス発散とは言え、他ユーザーを巻き込みストレス発散に利用したこと、それに加えて荒らしをしてしまったこと、皆様にご迷惑をおかけししたことを謝罪します。
    本当に申し訳ございませんでした。
    元はと言えば、私が方々に火種を撒き散らしたのが原因であり、自制の効かない状態であったのは否定できません。
    私としましては、今後このようなことがないようにアカウントを消し、そのままこのnoteを去ろうと思います。
    今までご迷惑をおかけした皆様、改めまして誠に申し訳ございませんでした。

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