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舞園「疑い鬼のパーティー」

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  1. 1 : : 2017/07/16(日) 00:00:56
    どうもたけのこまんじゅうです!
    この度、チームコトダ祭りに参加させて頂きました!
    この企画は、チームを分けてジャンル毎に作品を投稿する!みたいなやつです!
    チーム分けは


    『奴隷と愉快な仲間たち』

    Deさん (チームリーダー)
    あげぴよさん
    カラミティさん
    シャガルT督さん
    影さん

    『皆殺し』

    タオさん (チームリーダー)
    ノエルさん
    ししゃもんさん
    ライネルさん
    スカイさん

    『真山田組〜追放される空〜』

    ベータさん (チームリーダー)
    風邪は不治の病さん
    Ut4m4r0さん
    たけのこまんじゅう
    フレンさん


    となっております!
    自分は今回『真山田組〜追放される空〜』の副将を務めて参ります!
    ジャンルは日常、キーワードは「疑心暗鬼」です!
    山田組を追放されてしまったスカイさんに思いを馳せて頑張ります…
  2. 2 : : 2017/07/16(日) 00:01:23










  3. 3 : : 2017/07/16(日) 00:02:06


    みなさんこんにちは。


    いえ、夕方頃だから『こんにちは』だと少し違う気がしますけどそこは気にしない方向でお願いします!


    【超高校級のアイドル】舞園さやかです!


    希望ヶ峰学園にスカウトされて1年と少し…


    そろそろ梅雨も明けそうで、蒸し暑い日々が続いています。


    教室の掃除用具入れとして使用されているロッカーの中にいるんだからなお暑いです…


    いや本当、蒸し暑いったらないです。


    …え?どうしてそんなところに入っているのか、ですか?


    よくぞ聞いてくれました!


    だって私エスパーですからね、あなたの考えていることなんてマルッとお見通しですよ!


    実はこの教室で待ち合わせしているんです。


    待ち人です。人を待っているんです。


    誰だと思います?当ててみてください。


    え?どうせ苗木君…?


    ………なんで当てちゃうんですか。


    そうですよ苗木君ですよ!


    ふふふ、聞いてくれます?聞いてくれます?


    私事なんですけど、実はクリスマス・イヴに苗木君に告白されちゃって…


    ホントたまたまイヴなのにお仕事入ってなかったんです!運命ですよね!?


    私、中学の頃から苗木君のことずっと気になってたから二つ返事でOKしちゃって…


    そう、苗木君は私のボーイフレンドなんです!


    恥ずかしいですね、赤くなっちゃいますね…


    …ゴホンッ。


    そこからはみんなに内緒でお付き合いさせてもらってて…


    と言っても、付き合う前と付き合ってからで何が変わったわけでもないんですけど。


    私がこうして苗木君のことをロッカーで待ってるのも付き合う前からですし。


    ……いや嘘です。ロッカーに入って待ってるのは初めてです。


    驚かせたくって、苗木君のこと。


    ああ、驚かせたりするのは割とな頻度でやってます。


    苗木君の反応可愛いんですよ本当!


    雪染先生から呼び出されてどうのってだからそろそろ戻ってくると思うんですけど…


    …あ、ほら噂をすれば───


    ───あれ?


  4. 4 : : 2017/07/16(日) 00:02:25

    足音が2つ、それと教室のドアが締め切られてて全く内容は聞こえないけど会話…


    苗木君、誰かと話してる…


    ……足音が止まった。苗木君教室に着いたんだ。


    驚かせる準備しないと…というか暑いから早く出たい…



    苗木「…じゃあ霧切さん、また」


    霧切「ええ、また話しましょう」



    ───────。


    え?


    霧切さん?


    ああ、呼び出されたのは苗木君だけじゃなかったんですね多分。


    …でも " また話しましょう " ってどういう…



    苗木「…あれ?舞園さん?」



    あ、苗木君いつの間に教室に!


    そっか、2人の会話が聞こえたのは教室のドアを苗木君が開けたからか!


    どうしよう…完全に出るタイミング見失っちゃった…



    苗木「…先に帰っちゃったのかな?」



    ああ苗木君が出て行こうとしてる!落ち着いて!落ち着いて舞園さやか!


    ……よし。



    舞園「…苗木君」


    苗木「あれ?舞園さん?
    ……?
    おかしいな、確かに声が聞こえたはずなんだけど…」


    舞園「ここです苗木君、ここです」


    苗木「え…?
    どこにいるの?舞園さーん?」


    舞園「こっちです…こっち…
    そう、もう少し前…」


    苗木「えー?どこ…?」



    ふふふ、まんまと私の誘導に引っかかりましたね!


    私の華麗な策略にハマり声のする方へと向かった結果、苗木君はロッカーに近づいて来ました。


    さあ後は勢いよく私が扉を───



    苗木「…ははは、なんてね」


    舞園「あっ」



    ───ロッカーの扉は私の意思とは無関係に開いて、そこには私の大好きな人。


    好きな人を見ると瞳孔が開くそうですけど、そのせいでしょうか?


    窓から差し込む光を受けている苗木君はいつもよりもすごく輝いてて…


    ……じゃなくて!



    苗木「いい加減隠れてるのぐらい分かるよ、それこそエスパーじゃなくても」


    舞園「…今日は私の負けだね」


    苗木「あ…敬語……
    そっか、2人きりだもんね」


    舞園「ホントは2人きりじゃなくてもこうやってお喋りしたいんだけど」


    苗木「まあ仕方ないよ…
    それじゃあ、行こっか?」


    舞園「うん!」



    少し背が低くて、頭にアンテナがあって。


    誰とでも仲良しで、誰にでも優しくて。


    これが苗木誠君。


    最近は私の扱いに慣れてきたみたいです。



    苗木「…あ、すごい汗!
    タオル使う?」


    舞園「ありがとう…
    ロッカーの中すっごく暑いんだもん」


    苗木「入らなきゃいいのに…」


    舞園「それは言いっこなしです!」


  5. 5 : : 2017/07/16(日) 00:02:43



    私がお仕事がない日は、宿舎までの短い距離をこうして苗木君と歩きます。


    歩きながら他愛のない話をして、宿舎についたら各々の部屋に戻る。


    苗木君は優しいから私の歩くスピードに合わせてくれるんです。


    でも気づいてるかな?私がわざとゆっくり歩いてること。



    舞園「そう言えば、雪染先生に呼ばれたのはどういう用事だったの?」


    苗木「ああそうそう、その事を話さなきゃだった」


    舞園「え?」


    苗木「ほら、雪染先生ってボクたちの1つ上の学年の担任の先生だよね?
    先生の受け持ってるクラスの学級委員さん…
    …確か七海先輩だったかな?
    彼女が他の学年と交流会をしたいって言ってるみたいでさ」


    舞園「先輩たちと親睦を深める…ってこと?」


    苗木「そんな感じかな?
    七海先輩は【超高校級のゲーマー】だから、多分ゲーム主体の交流会になるみたいなんだけど…」


    舞園「その交流会への参加を促すように雪染先生に言伝されたんだ?」


    苗木「うん、まあそんなところ。
    楽しそうだからボクは参加したいんだけど、みんな参加するかが心配で…」


    舞園「私たちのクラスで参加してくれそうなの、石丸君と朝日奈さんぐらいだもんね」


    苗木「やっぱり舞園さんもそう思う?
    朝日奈さんが参加するから大神さんも参加してくれるだろうとして…
    …ちなみに舞園さんは?」


    舞園「苗木君が参加するんだからもちろん参加するに決まってるよ!
    都合がつけば、だけど…」


    苗木「そっか、舞園さんは忙しいもんね。
    まだ詳しい日付とかは決まってないからな…」



    そこでふと先刻のことを思い出す。


    苗木君が教室に入る前、談笑していたのであろう彼女。


    今苗木君が連ねた名前の中に彼女がいなかった。


    …気になる。



    舞園「……苗木君」


    苗木「え、なに?」


    舞園「その…さっき教室に来るとき霧切さんと話しながら来てたよね?」


    苗木「あ…」


    舞園「……」



    苗木君が言葉を失っている。


    というか、明らかに言葉を探してる。


    私は霧切さんと話してた事を問い詰めたいわけじゃないんだけど…



    舞園「あー…あのね!
    霧切さんと話しながら来てたから、てっきり霧切さんも雪染先生に呼ばれたんだと思ってて…
    ほら、さっき交流会に参加してくれそうなクラスメイトの中に霧切さんがいなかったから、おかしいなー?って!」


    苗木「あ───」



    と。不自然に固まる。


    と言っても、ほんの1秒にも満たない時間だったけど。


    そして苗木君は思い出したかのように話し始めた。



    苗木「あ、霧切さんとは偶然廊下で会って…それで少し喋ったってだけなんだよ」


    舞園「…」













    舞園「そうなんだ、私てっきり霧切さんとは交流会のことでお話ししながら来てるんだと思っちゃった」



    ほんの少し。とても、とてもとてもとても。


    蟻さんぐらいに小さい感情が芽生えた感覚がした。


    私の心の中に何かが生まれた。


    多分誰にも分からないぐらい小さいんです。


    でも分かる。醜悪なのが。


    醜くて醜くて醜くて醜くて醜くて醜くて醜くて。




    悟られたくなくて歩く速度を普段と変わらないぐらいにした。


    苗木君は私の歩くスピードに合わせてくれるんです。



    苗木「…」



    優しいから。

  6. 6 : : 2017/07/16(日) 00:03:12

    宿舎に着き、苗木君と別れて自室に戻る。


    ベッドの淵に座って考える。


    頭の中は、さっきの挙動不審な苗木君の仕草のことばかり。




    舞園「はぁ…」



    多分苗木君、私に何か隠してる。


    隠してる内容はどんなことかは分からないけど、でも隠してることは分かった。


    私に隠し事なんて、苗木君今までにしたことあったかな?


    別に問い詰めるつもりはなかったけど、何だかモヤモヤするから霧切さんとの会話の内容を知りたい。



    舞園「…」



    " 何だかモヤモヤ " って、ふふっ。


    何でモヤモヤしてるかなんて私が1番よく分かってるくせに。


    ……ダメだ。今物事を考えてもネガティヴなイメージしか膨らまない。


    酷い奴ですね私は。


    苗木君のこと信じてるつもりだったってだけ。


    何というか、器の小ささに呆れます。


    それこそ、苗木君の方が私のことを疑う機会が多いはずなのに。


    私が生きる世界はそういう欺瞞が満ち満ちてるところだから。


    それでも苗木君はいつも私の前で笑ってくれる。


    そんな彼をどうして私は疑えるのだろう?


    本当惨め、惨めで惨めでたまらない。



    舞園「………はぁ」



    ため息をひとつこぼした。


    どんなに自分に言い聞かせても、モヤモヤは私の中で膨らむばかり。

  7. 7 : : 2017/07/16(日) 00:03:35





    ─────





  8. 8 : : 2017/07/16(日) 00:03:56

    朝の日差しが瞼を閉じているままでも分かるぐらいに目を刺激する。


    ……朝?


    いつの間にか眠ってたみたい。


    私は最低限の身支度を済ませて朝食をとりに食堂まで向かう。


    と言っても、購買部で買っておいたおにぎりを食べるだけなんですけど。


    朝の食堂のメニュー、今お休みしてるんですよね。


    コックさんが体調不良とか何とかで。


    だからここ数日は寂しい朝食です。



    舞園「…」



    特に珍しくもないけど、向かう道中は誰1人とも会うことがない。


    食堂で食事を出してもらえる出してもらえない関係なく、誰とも会わない。


    自室から食堂までの距離がそんなに長いわけじゃないっていうのは誰にも会わない理由の1つなんだろうけど…


    多分仕方ない事なんだろうな。


    なんてボンヤリ考えているとすぐに食堂の扉の前に差し掛かる。


    ルーチンワークに従って少し重たい扉を開いた。



    舞園「…」



    いつも通りガラガラの食堂。


    いつものように扉から1番遠い席に座って、紅じゃけのおにぎりの封を開ける。


    口に含む。咀嚼する。飲み込む。


    繰り返す。繰り返す。繰り返す。


    思考を放棄して食べる。何も考えないで。


    考えないで。


    考えないでよ。ねえ。


    考えちゃダメ。



    舞園「…ダメ、やっぱり考えちゃう」



    寝たらスッキリすると思ってたけど、モヤモヤするものはするみたい。


    頭の中は昨日のことでいっぱいになってる。


    振り払おうにも無理そうだから考えないよう努めたけど、それも無駄撃ち。



    舞園「……はぁ」



    ダメだ、苗木君に聞こう。


    彼のことを信じてるなら行動で示すべき。


    後ろめたいことなんて何一つないのなら、苗木君はきっと素直に答えてくれるはず。


    とか何とか言ってるけど、結局は私が安心したいだけなんですよね。


    今の今まで、ここまで自分を嫌いになったことなんてあったかな?


    うーん…まあどっちでもいいや。


    おにぎりの最後の一口をよく噛んで飲み込んで、手を合わせて。



    舞園「ごちそうさまでした」



    そして私は食堂を出た。


    あ、昨日寝ちゃったから今から授業の準備しなきゃ。
  9. 9 : : 2017/07/16(日) 00:04:45


    「お仕事とお勉強の両立って忙しそう」ってよくメンバーにも言われるんですけど、思いの外案外楽なんですよ。


    と言うのも、希望ヶ峰学園と私の所属している事務所が密に連絡を取ってくれてて、マネージャーさんがスケジュールを週ごとに組んでくれているんです。


    私が芸能活動と学校生活を両立できているのは、有り体に言えばみんなのおかげというか。


    で、今日は学校生活を頑張る日。


    まあ、才能研究が主だから結局はアイドル関連のお勉強なんですけどね。


    それでもやはり学生、才能研究が主とはいえ勉学も勤しまなければなりません。


    個人個人での勉強だから結局バラバラになっちゃうんですけど、それでも朝礼は存在しています。


    と、いうわけで私は今教室のドアの前。


    いつもは石丸君と霧切さんに次いで3番目に教室に来るんですけど、授業の準備に手間取っちゃって今日は少し遅れ気味。


    廊下なのに教室内の笑い声が聞こえてきます。


    …多分、苗木君もいます。



    舞園「…」



    意を決して教室のドアを開く。




    舞園「おはようございます!」


    桑田「おっ!舞園ちゃんちーっす!
    今日はいつもより遅かったな?」


    大和田「あぁ?舞園オメェ、今日は仕事じゃねぇンだな」



    舞園「はい、今日は学校です!
    そのことを今朝まで忘れてて授業の準備してなかったからこんな時間になっちゃいました」


    不二咲「舞園さんでもそういうことあるんだねぇ」



    うん、笑えてるはず。


    大丈夫、みんなの反応はいつもと一緒。


    そのことに少し安堵して自分の席に着く。


    私の右斜め前、教卓の真ん前っていう普通の学生なら絶望する場所が霧切さんの席なんですよ。


    まあつまり、視界に入るんですよね霧切さん。



    苗木「……またあとで」


    霧切「ええ」


    舞園「…っ」



    また?


    またなの?なんで?あれ?


    なんで苗木君わざわざ霧切さんの席に?


    私何かしたかな?どうしよ、どうしよう。


    どうしよう怖い…



    苗木「───さん…舞園さん?おーい?」


    舞園「…え?」


    苗木「舞園さん?どうしたの?」



    いつの間にか苗木君が隣にいた。


    これは別に私のために来てくれたとかじゃなくて、苗木君が自分の席に戻っただけなんです。


    私の左が苗木君の席。


    で、私が混乱している時に戻ってきていたみたいです。気づかなかったけど。



    舞園「…な」


    舞園「なんでもないですよ、おはようございます苗木君」



    私は笑った。



    苗木「うん、おはよ
    なんでもないならいいんだけど…」



    苗木君も笑った。笑った。




    舞園「────」



    私の心の中の黒いモヤモヤが、何かの形を成した。


    醜悪な形を成した。


    はじめまして、鬼さん(ワタシ)


    こんにちは。どうぞよろしく。
  10. 10 : : 2017/07/16(日) 00:05:14



    舞園「…」



    今日1日何をしていたのか覚えてない。


    気づいたらホームルームで、教室にいたはずのクラスメイトもまばらになってた。


    頭が働かない。動かない。動かせない。


    どうしよう、私どうすればいいのかな。


    今日はちゃんと笑えてたかな?不審に思われてなかったかな?取り繕えてたかな?


    不安。すごく不安。どうしよう、もしも誰かに気にかけられてたりしたら。嫌だな。


    というか、というか。なんていうか。


    私はどうしてこんなことになっているんだっけ。


    忘れちゃった。忘れちゃった。忘れたい。


    忘れることができれば、明日からまた頑張れるのに。頑張りたいのに。


    不安。すごくすごくすごく不安。


    もしかして私、苗木君に嫌われちゃったのかな?


    だって苗木君…今日また霧切さんと話してた。


    「また後で」って言われてた。ねえ。なんで。


    ……あれ?

    あれれ?また後で?


    あれ?あれあれあれあれあれれれれ



    舞園「………いない」



    苗木君も霧切さんもいない。教室に。


    どうしよう、苗木君私のこと置いて行っちゃった。嫌だ。嫌だどうしよう。


    嫌わられた、嫌われちゃった。嫌われちゃった?


    私より霧切さんがいいんだ。多分。



    舞園「……あ」



    いけない。ダメだ。


    この思考はマズいでしょ、私。


    鬼に内側から食い潰されていってる。何かを。


    黒くなってる、だんだん。ジワジワと。


    ダメ、ダメダメダメダメ落ち着いて。


    とりあえず新鮮な空気を取り入れて深呼吸しよう。うん、そうしなきゃいけない。



    舞園「…」



    いつの間にか教室には誰もいなくなっていた。


    私は窓まで歩く。鍵を開ける。窓を開く。


    新鮮な空気を肺いっぱいに取り込む。


    深く、深く深く深く息を吸って



    舞園「ふぅ…」



    吐いた。ドロドロでグチャグチャな感情も一緒に吐き出した。つもり。


    少なくともさっきまでよりは清々しい気分。


    頭も働く。リセットされた。うん、うんうん。


    今日の出来事も断片的だけど思い出してきた。


    そうだ、苗木君は今日どうしても外せない用事があるんだっけ?


    でも雪染先生絡みのことなら私にそう言うだろうし…


    と、クリアになった頭でぐるぐるぐるぐる思考を繰り返していると。


    なんと。なんとなんと。




    舞園「あ」




    私は教室を急いで出た。向かうは校外。



    ポケットに常備してるマスクと眼鏡を階段を駆け下りながら装着。


    靴に履き替えて走る。


    そしてすぐに視界にとらえた。



    舞園「……………」




    茂みに隠れて様子を伺う。


    息を殺す。悟られてはダメ。そう、これは尾行。




    苗木「ホントごめんね、付き合わせちゃって」


    霧切「いいのよ、それはお互い様なんだから」




    まごうことなき、正真正銘の尾行。



  11. 11 : : 2017/07/16(日) 00:05:38



    とても遠いところから2人を尾行しているから話し声は聞こえない。


    ただ、少なくとも苗木君はとても…


    とてもとてもとてもとてもとても楽しく霧切さんとお喋りしてるように見えた。


    笑ってる。苗木君すごく笑ってる。


    幸せそうに笑ってる。


    なんで?私じゃダメなのかな?


    妬ましい。妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい。


    ………。


    ……ああ、落ち着かなきゃ。




    舞園「…ふぅ」



    苗木君と霧切さんは学校のすぐ近くにあるショッピングモールへと入ってゆく。


    それなりに規模も大きくて、大体のものはここで手に入るってまで言われてるショッピングモールだけど…


    …霧切さんのお買い物に付き合ってあげるんだ、苗木君。そっか。


    でも何を買うのかな?お洋服?


    霧切さんの私服?それは別の意味で気になるけど。


    物陰に隠れつつ2人の後をつける。


    徐々に距離を詰める。ジリジリと。



    かろうじて会話が聞こえる距離まで達する。


    ───でも。



    霧切「…あら?」


    苗木「ん?霧切さんどうかしたの?」


    霧切「視線を感じたような気がしたから…
    …ごめんなさい、気のせいみたい」


    苗木「ははは、何だか探偵みたいだね今の」


    霧切「バカにしてるつもりならやめてちょうだい」


    苗木「え!?そんなんじゃないよ!
    ちょ、待ってよ霧切さん!」



    これまた楽しそうにショッピングモールの中へと進んでゆく2人。


    なんて、冷静に状況を報告する余裕は今の私にはありません。


    心臓が、まるでライブで曲を歌い終えた後みたいに脈を打ってます。



    舞園「はっ…はっ…はっ…」



    危なかった。


    そうだ、霧切さんは【超高校級の探偵】


    この国において最も優れた高校生探偵を相手に…


    つまり、尾行なんて息をするよりも上手くやってのけるだろう彼女を素人同然の私が尾行してるんだ。


    近づいたら気づかれるに決まってる、彼女の第六感は本物。


    会話の内容はこの際聞こえなくてもいい、2人がどんな様子なのかだけをしっかり追えたらそれで…


    …はぁ、でもこれって難しいな。



    舞園「……よし」



    自分を奮い立たせて、2人が向かった方へと歩を進める。


    程なくして再び苗木君たちを視界に捉えることに成功。一定の距離を保って後をつける。


    すると、2人は雑貨屋さんに入っていった。


    さほど大きくない。多分可愛い物がたくさん隠れてるんだろうけど…


    ……雑貨屋さん?なんで?

  12. 12 : : 2017/07/16(日) 00:05:59


    なんで、なんて考えてる暇はない。


    何をしてるか分からないなら、何をしてるかを見ればいいんだから。


    2人の後を追って私も雑貨屋さんに入───



    舞園「───いや、ダメだ」



    ダメだった。『さほど大きくない』雑貨屋さんだった。


    そんな所に私も入ったらすぐに見つかるに決まってる…というか、そんなの見つかりに行ってるようなものですよね?


    ああ、ダメだ。色んな意味で。


    冷静さを欠いてる。頭が正常に働いてない。


    段々いけない方向に傾倒していってる。明らかに…というか間違いなく私の中の鬼さん(ワタシ)が大きくなってる。


    大きくなれば、それだけ私を取り込んでゆく。


    取り込まれたら多分………多分。


    だから落ち着かなきゃ、冷静に事に当たらなきゃ。


    ひとつひとつ現状を拾い上げて、そこから最善策を選ぼう。


    ……と言っても。


    どう考えても『2人が雑貨屋さんから出てくるまで隠れて待つ』が最善だった。


    何をしているのかは確かに気になるけど、見つかるリスクを考えればそこは我慢しなきゃいけない。


    雑貨屋さんでの買い物って女の子なら割と時間を食っちゃったりしますけど、まあそれはそれ。


    どんなにあの2人が買い物に時間をかけようと、私はしぶとく図太く隠れつつ2人が出てくるのを待つだけです。


    だって仕方ないじゃないですか。


    仮にこれで見つかって苗木君に引かれても、仕方ないんですよ。


    悪いのは私じゃないんですから。悪いのは疑わしい行動をしてる苗木君なんですから。


    疑う心を育んだ苗木君が悪いんです。


    だから待ちます。いつまでも。


    何分だって何十分だって何時間だって待ちます。


    どうぞごゆっくり。私はここにいますから。


  13. 13 : : 2017/07/16(日) 00:06:18




    5分経過。


    一曲フルで歌い終えたぐらいですかね?


    まあ、5分しかかからない買い物なんてありませんし…雑貨屋さんですし?


    まだまだ待てますよ。余裕です。余裕すぎます。


    でも、こんなに近くにいるのに苗木君と霧切さんが2人きりでいることを許してるこの状況は耐え難いですね…


    それには耐えられそうにないから早く出てきてほしいですね。ええ、一刻も早く。


    ……。


    それにしても本当に何をしているんでしょう。


    何を買っているんでしょう、のほうが正しいかな?


    いえ、いいえ。そうじゃなくて。


    私が気になってるのは『これがどちらの買い物なのか』という点だけなんだと思う。


    霧切さんの買い物なら、どうして苗木君に付き添ってもらったの?という疑問が出てくる。


    もしも苗木君の買い物だったとしたら、どうして私が付き添うのはダメで、霧切さんならいいの?って問い詰めたくなる。


    私が登校してる日は基本的にお仕事はオフだってこと苗木君は知ってるはずなのに…


    苗木君とお出かけできるならどこでもいいって普段からあんなに言ってるし、それを汲み取って苗木君から放課後ショッピングを提案してくれた事だってあったのに。


    なんで私じゃダメなの?私が付き添っちゃいけない理由でもあるの?


    もし私じゃダメな理由があるんだとしたら、それを私にきちんと説明してほしい。


    重ねて言えば、どうして霧切さんならいいのかも。


    ……ああ、苗木君。苗木君。


    問いかけたい、問い詰めたい。問い詰めたい。


    まだかな、まだかな。


    …出てきた所で問い詰めたりはできないんですけどね。


  14. 14 : : 2017/07/16(日) 00:06:36




    更に30分経過。


    まだまだ待てますね。


    …まあ、ホントのこと言うとちょっと待ち疲れてきましたけど。



    割と時間がかかってるってことは苗木君のお買い物じゃないのかもしれませんね。


    私の勝手な印象ですけど、男の子ってお買い物にそんなに時間かけない気がします。


    30分以上かかってるなら、もしかしたら霧切さんが色々悩んでるからかも。


    というわけで、これは苗木君のお買い物じゃない!のかもしれません。


    ……そう思いたいだけですけど。




    舞園「…」



    それはそうと喉が渇いてきました。


    教室で2人を見つけて全力疾走しましたからね…そりゃあ喉も乾きます。


    むしろ今まで何も飲まずにいた事のほうが驚きですね。


    集中切れてきたかな?…いやいやいやいや。



    舞園「んー…
    …あ」



    ちょっと離れたところに自動販売機発見。



    すこーしだけ雑貨屋さんの近くを離れて、飲み物を求めて自動販売機へ。


    あれ?小銭あったかな?ポケットに小銭入れあったと思うんだけど…



    舞園「…ん」



    あったあった…よかった…


    ラインナップを見ようと顔を上げると、私の目線ちょうどにあるのは炭酸飲料。


    男の子なら…苗木君ならここで炭酸飲料を買うのかな?


    なんてことを考えながら、200円を入れてミネラルウォーターを購入。


    お釣りを小銭入れに入れて、私はまた所定の位置へと戻る。


    雑貨屋さんの出入り口に気を配ってはいたけど、2人どころか誰もお店から出ていなかった。


    つまり2人はまだ雑貨屋さんの中なんだろうけど…




    舞園「…んくっ…んくっ……ふぅ」



    ミネラルウォーターの封を開けて一気に流し込んだ。


    喉の渇きは潤ったけど、心の渇きは潤わない。


    苗木君はまだ出てこない。


  15. 15 : : 2017/07/16(日) 00:06:56




    更に1時間経過。


    ………さすがに疲れました。


    だって現時点の待ち時間を合計したら1時間半ですよ!?


    私ここに1時間半ずっと何もせずにいるんですよ!?


    疲れましたしお腹空きましたし眠いです。


    忍耐力のなさを思い知らされてる気分…


    多分霧切さんは1時間半なんて簡単に待ってられるんだろうな…探偵だし。


    特に突出した部分だからっていうのはあるけど、それでも霧切さんに負けてる部分があるのは嫌だな…


    それが引き金で苗木君が離れていってるのかもしれない、なんて思いたくないし。


    つまり、根気よく私はこのまま2人がお店から出るのをケロッとした顔で待たなきゃいけないわけです。


    そうしないと霧切さんに負けてしまいます。


    勝手に戦ってるだけですけど、それでも勝ちたい。


    既に限界に近いですけどね…お腹空きました。


    空腹も限界に近いですし、何よりそろそろ出てきてもいい頃だと思うんですよね…


    時間を忘れてショッピングなんてこれじゃまるでデートみたい…………


    ……………。



    舞園「…………………」




    やだやだやだやだやだやだやだやだやめてよやめてよやめてよやめてよやめてよ!


    なんでそんな事考えるの!?


    デートって…!デート…デ、デート?


    そんなわけ、そんなわけそんなわけないないやめて…なんで…?なんで?デートなの?


    もしかして苗木君、霧切さんとデートしてるの今?嘘でしょ?嘘ですよね?そんなわけないないないない




    舞園「やめてやめてやめてやめて…」



    震える。カタカタと。体が。頭が。心が。


    震えてる震えてる震えてる震えてる。


    カタカタカタカタケタケタケタケタ。


    笑ってる。嗤ってる。嗤ってる。わらってる。


    わらわないでよ!わたしだけ舞い上がってたみたいにしないでよ!


    だって、だってだって!
    告白してきたのは苗木君ですよ?私からじゃない!だから私のことを捨てたりなんて…!


    私のこと好きだって、好きって…


    だから笑わないでよ……笑わないで…



    舞園「はぁ……はぁ……」



    ケタケタ、ケタケタケタケタ。


    まだ嗤ってる。鬼さん(ワタシ)が嗤ってる。


    あれ?数が増えてませんか?そんなに沢山いましたっけ?


    醜い醜い醜い(ワタシ)が、いつの間にか心の至る所に巣食ってた。


    私が苗木君と霧切さんの関係を疑えば疑うほどに、大きくなって、数を増やして、私を蝕む。


    暗い暗い暗い感情が私を引き裂く。


    どうしよう、このままじゃおかしくなっちゃいそう。


    せめて、せめてデートなんかじゃないって思いたい。思いたい。思いたいけど


    思いたいけど……今のままじゃ無理だよ…


    私、苗木君のことどうやって信じてたんだっけ?


    あれ?あれれ?分かんなくなってきた。


    どうしよう…思い出さなきゃ…
  16. 16 : : 2017/07/16(日) 00:07:17




    ええと…苗木君のことが好きだから信じるのは当たり前で…


    好きな人を信じてあげるのは当然…当然ですよね?


    はい、はいそうですよ当然ですよ。


    そうやって私は苗木君を───




    苗木「なんとか決まってよかったね」


    霧切「ええ、やっぱり苗木君に頼んで正解だったわ」


    舞園「──────────!!!」



    咄嗟に隠れた。元々柱に隠れるようにはしてたんですけど、それじゃ心許なくなって。



    舞園「おちついておちついておちついておいついておいついて」



    心を、頭を、(ワタシ)を落ち着ける。


    まず真っ先に確認しようと思っていた事を確認しよう。


    うん、頭は正常に働いてる。混乱してない。



    舞園「…」



    落ち着こうとしている間に2人は私がいる方とは反対に歩いていた。


    それでも手元が確認できない距離じゃない。


    袋を持ってる方が買い物をしてるはず…



    舞園「っ…」



    よく目を凝らして2人の手元を確認する。


    ───と。



    舞園「……あれ?」


    2人とも袋を持ってる…?


    同じぐらいの大きさの袋…なに?なにが入ってるの?


    …お揃いのキーホルダー?ストラップ?とか?



    舞園「え…いや、待って考えすぎ」



    考えすぎ?ホントに?



    舞園「だって…だってほら、苗木君は私の…」



    もう(あなた)の彼氏じゃないのかもしれないですよ?



    舞園「そんなわけ…ないじゃないですか…
    私はこんなに好きなのに…なんで?
    あ、伝わってないのかなもしかして」



    そうかもしれませんね。伝わってないかもしれませんね。


    じゃあもう少しだけ追いかけませんか?次は会話が聞こえるぐらい近づいて、今度こそ苗木君のことを本当の意味で信じてあげましょう?



    舞園「……そう、ですね、はい」



    そうですよ!まだ諦めちゃダメです!



    舞園「諦め……あれ?」



    あれ?待って。今私誰と喋ってたの?


    待って、本当待って。ダメ。こうなっちゃダメですよ。


    お化けの類は苦手なんですから…ははは…


    はははは…は、ははっ……



    舞園「………」



    もう誤魔化しがきかない。無理だ。


    ここまで育っちゃったなら、きっと受け入れる他に道はない。


    疑う心でできた、暗がりに潜む(ワタシ)を。



    舞園「…………」



    …ので、受け入れました。


    信じてません。疑ってます。すごく。


    2人の関係を、じゃありませんよ。


    苗木君を疑ってます。疑っちゃってます。


    枷が外れたみたいに体が軽いです。けど、心はずっと重たいまま。


    どうか、どうか疑いを晴らして心の重りを取り去って。私の、ワタシの苗木君。



    舞園「…」



    ワタシは2人が進んだ方へと向かって行く。


    2人を追いかける。心を晴らすために。

  17. 17 : : 2017/07/16(日) 00:07:42






    舞園「………………………………」



    で、クレープ屋さんですか。


    流石ショッピングモール、フードコートどころかクレープ屋さんもあるなんて完璧ですね。


    この時間がいけないのか今日が偶然なのか、フードコートの席は埋まっててやむなく外のベンチに2人で腰掛けてますけど。


    ベンチの後方にある観葉植物で作られた壁を挟んだ向こう側、彼の隣に座ってる人が私なら言うことなかったんだけどな…


    私彼女のはずなのに、他の女と仲良く座ってるの彼氏の背中を何もできずに見てるだけです。


    虚しい。すっごく虚しいです。


    …ああ、私は何も買ってませんよ。お腹は空きましたけど。


    そんなことはどうでもいいんです、今は目の前の2人をよーく見てなきゃいけませんからね。


    と言っても、2人で仲良くクレープ食べてるだけ…それ以上でもそれ以下でもなく。


    何か話してるみたいだけど、霧切さんに悟られないためになるべく気づかれにくい場所から様子を伺ってるから相変わらず会話は聞こえません。


    ……放課後に2人きりでショッピングしてその後クレープを食べるなんて、普通しますか?しますっけ?しませんよね?


    しないしない、いやしませんよ。


    だってそういうことするのは恋人で。


    つまり苗木君と私こそがするべきなんですよ。


    ねえ?そうですよね?ねえ?……ねえ。



    舞園「…」



    疑念に満ちた目で2人を観察する。


    観葉植物から覗く隙間からかろうじて観察しているから、細部までくまなく状況は分からない。


    けどそれでもいい。2人が一緒にいるっていう事実が分かればそれで。



    舞園「……」



    今のままじゃ疑念は晴れない、どころか一層深く、濃ゆく、濁ってゆく。


    何かアクションを起こさなければならないのは分かっている。けど、ここで下手に動けばどうしても霧切さんに気づかれ───





    霧切「……………」





    舞園「ッ!?」



    目が合った!?いや、そんなわけない!


    だってこんな隙間から覗く視線に、いくら探偵だろうと気付けるわけ…!


    そうだ、落ち着いて…落ち着いて私…!


    恐れるな!目をそらすな!相手は苗木君を奪った泥棒でしょう!?


    何を恐れるの!?私が負けちゃいけない!


    ………。


    よし…落ち着いて……うん……。




    舞園「………ふぅ」



    そして私はまた2人を観察する。


    霧切さんは、もうこちらを向いていませんでした。
  18. 18 : : 2017/07/16(日) 00:08:03


    どうやら2人ともクレープを食べ終わったみたい。


    苗木君が霧切さんの分の食べ終えたゴミをすぐそこのゴミ箱に捨てに行ってます。


    やっぱり苗木君は誰にでも優しいです。


    ええ本当、誰にでも優しい。誰にだって。


    だから嫉妬しちゃうんです。だから疑っちゃうんです。だから嫌なんです。


    私だけに優しくして。私だけを見てて。


    ………なんて。


    そんな誰にでも優しい苗木君だからこそ、私も好きになったんですけど。



    あ、苗木君戻ってきた。



    やっぱり霧切さんの隣に腰掛けるんですね。


    …って、そりゃそうですよ。当たり前でした。


    こんな当たり前のことを一々気にしてるんじゃ身が持ちません…



    …苗木君と霧切さん、楽しそうに喋ってる。


    主に苗木君が、すっごく笑顔で霧切さんに話しかけてます。


    そんなに楽しいですか?霧切さんとのお喋り。


    霧切さんも楽しそうに聞いてます、本当嫌になってきますねこれ見てるの。


    というか、2人はいつになったら宿舎に戻るんでしょう。ずっとこんなの見せられてるからいい加減病みそうです。


    絶対に観察はしてなきゃいけないですけど、段々苦行にしか思えなくなってきました。


    明らかに集中力が切れちゃってますね、これ。


    …決して苗木君のこと諦めたから嫌になってきたわけじゃないですからね?そこはお願いですから勘違いしないでください。


    はぁ…ダメだ、意識したら疲れがドッときちゃいました。


    我慢が足りませんよ私、こんな調子で【超高校級のアイドル】なんてよく名乗れますね?


    そう、アイドルは我慢も大事なんだから。この永遠にも等しく感じる苦行がいずれアイドル活動に繋がっていくかもしれませんし。


    ……そう思ってなきゃこんなのやってられません。


    本当…いつまで他の女と話してるんですか苗木君。ねえ、お願いだから早く帰りましょう?


    ねえ……私と話してよ…嫌だよ……


    私────────────


    ───と──。














    ───────────────え?
  19. 19 : : 2017/07/16(日) 00:08:34



    駆け出した。私は走った。


    どこへ?宿舎へ。希望ヶ峰学園へ。


    え。なんで?走ってるんだろう。あれ?


    そう、見た。苗木君が、苗木君を?見た?


    私は何かを見た。見た。見た。見た?


    見てしまった。見てしまった?え?え?え?


    いやいやいやいやいやいやいやいやいやそんなわけないでしょ目を疑って疑って疑って?


    見間違い、見間違い。見間違い見間違い見間違い。


    ほら、ほらほらほらよくあるじゃないですかそういうの…ね?ね?ね?ね?


    疑いすぎてそう見えただけです。そうです。


    そう、でしょ?でしょ?でしょ?でしょ?


    じゃなかったら…あんな…!あんなの!


    やだやだやだやだやだやだやだやだ!



    舞園「はっ…!はっ…!はっ…!」



    走る。走る走る走る走る走る走る走る走る走る。


    独りになりたい誰にも今の私を見られたくないやだやだ見ないで見ないで見ないで。




    舞園「やだよぉ…はっ…はっ…」




    ああ、校舎が見えてきた。


    あれ?校舎の中って走ってよかったっけ?


    いや、でも、疲れました。校舎に着いたら歩こう。そうしよう。




    舞園「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」



    校舎に着いた。中へ入る。歩いて自室へと向かう。


    ─────自室に着いた。


    鍵を開けた。扉を閉めた。服を脱いだ。


    シャワーを捻る。最初は冷たかったけど、しばらくするとお湯が出てきた。


    浴びる。シャワーを浴びる。あったかい。


    …………ははっ。



    舞園「ああああああああっ!!!!!!!」



    拳を作って壁を何度も叩いた。何度も。何度も。


    次第に白から赤へと滲んでいく壁。多分出血した。どうでもいい。



    舞園「なんで…!なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで!!!」



    殴る。殴る。殴る。殴る殴る殴る殴る殴る殴る。


    その行為はエスカレートしていく。痛みはない。


    痛みはなくても、激情に任せた行為はいずれ沈静化されます。そうできてるんです。


    なので、殴るのは止まりました。


    でも次は涙が止まりません。


    ああ、こんなことなら。こんなことなら後を追わなきゃよかった。


    あんなの見ちゃったらもう信じられないよ。



    舞園「うっ……ひぐっ…
    あっ…ああああっ…ああああああ……」



    多分私は見ちゃいました。




    苗木君が霧切さんにキスしたのを。



  20. 20 : : 2017/07/16(日) 00:08:56











    喧騒が聞こえる。悲鳴が。嗚咽が。


    でも、これは全て私の心から放たれているものだと知っている。


    それらに目を塞ぎ、耳を塞ぎ、塞ぎに塞いで塞ぎこんで。


    そして(ワタシ)の嗤い声で絶望を、悔恨を、呪詛を塗りつぶす。


    ああ、よかった。この部屋が防音で。


    こんなの誰かに聞かれてたら私、いよいよ頭のおかしい人だから。




    舞園「ははは、ははっ…はははははははは…
    ははっはははははははははははははははは」




    おかしい。可笑しい。おかしいな、うふふ。


    ああ、私の中で沢山の(ワタシ)が宴を開いてる。ああなんて、なんて盛大な。



    舞園「ふっ、ふはははっ、私もまぜてー?
    ぶふっ!ははははっ!あははははははははは!!!!!!」



    わからない感情がいろんなとこから吹き出してる。

    私はわけもなく吹き出した。



    舞園「あははははははははははははははははははははははははは─────




    ドンドンッ!!!



    舞園「───────は?」



    鬼の宴を戸を叩く音が遮った。


    嗤う私を誰かが遮った。どんどんどんどん。


    宴に太鼓は付き物でしょう?むしろ宴を続けましょうよ、さあさ、さあさあ。




    …………………………………………。




    ああだめだめだめだめ開けなきゃね、はい。


    わたしアイドルですもん、にっこにこにこしてなきゃですねー、ははは。



    舞園「……」



    とか何とか言ってるけど、すぐに切り替えられそうにないからゆっくりと扉を開いた。








    苗木「舞園さんっ!!!!!」







    誰かがいた。ゆっくりと目を見開いた。



  21. 21 : : 2017/07/16(日) 00:09:16






    ─────────





  22. 22 : : 2017/07/16(日) 00:09:35




    今日、ボクは霧切さんと買い物に行くことになっていた。


    舞園さんがオフだったから少し心苦しかったけど、これも舞園さんのためだし仕方がない。


    雪染先生と親睦会についての相談を終えて、ボクは霧切さんが待つ校門前へと向かう。




    苗木「霧切さんごめん!遅くなっちゃった」


    霧切「いいのよ別に、むしろ思っていたよりも早かったし」



    それだけ言って、霧切さんは今から向かうショッピングモールへの歩を進めた。


    ボクは少し小走りで霧切さんに追いついて疑問をぶつける。



    苗木「あれ?そんなに遅く来るかもしれないって思ってたの?」


    霧切「雪染先生のことだから、本件から脱線して苗木君に怒涛のように惚気やら愚痴やらを浴びせると思っていたのだけれど…杞憂だったようね」


    苗木「さすが霧切さんご名答…
    そのパターンに入りそうだったから、『人を待たせてるから次の機会に』って言って見逃してもらったんだ」


    霧切「ああ、そういうこと」



    満足する回答が得られたからか分からないけど、霧切さんの歩くスピードが若干早くなる。


    ボクも負けじとそれについて行く。


    …もしかして今日の買い物自体あまり乗り気じゃなかったのかな?


    不安になってきた…それとなく聞いてみよう。



    苗木「あのー…
    ホントごめんね、付き合わせちゃって」


    霧切「いいのよ、それはお互い様なんだから」



    別に気を悪くしているわけではなさそうだ…よかった。



    霧切「せっかく2人で行くのだから効率的にいきましょう?
    お互いがお互いにとって得な関係であるべきよ」


    苗木「買い物にそこまで効率を求めなくても…」


    霧切「あら、ガールフレンドへの贈り物を真剣に吟味したいのでしょう?
    あなたの彼女の好みは抑えてきてるからサッと決めちゃうわよ」


    苗木「はいはい…
    で、学園長へのプレゼントのほうになるべく時間を割きたいってことだよね?」


    霧切「………協力してあげないわよ?」


    苗木「すみませんでした」

  23. 23 : : 2017/07/16(日) 00:09:57


    実は昨日、思い切って舞園さんの誕生日プレゼントのことを霧切さんに相談したんだ。


    そうしたら意外なことに

    霧切「私も贈り物について悩んでいるの、丁度よかったわ」

    なんていう予想もしてなかった返事が返ってきて…


    …まあ、霧切さんがプレゼントするものを悩んでた相手は学園長だったわけだけど。


    なんでも、どうしようか考えに考えてたらいつの間にか誕生日を過ぎてしまったみたいで…


    ああ、悩んでたのはプレゼントの内容じゃなくて『送る』か『送らないか』の2択。


    父の日も同じ月にあったりしてすごく心が揺れちゃって、ボクの相談のせいで結局『送る』に傾いちゃったとかなんとか…


    そもそもプレゼントを『送る』か『送らないか』で悩むぐらいなら送ればいいのに、って話を聞いてて思ってたけど、多分そんなことを言えば霧切さんの協力を得られないと思って口をつぐんだ。


    まあそんなこんなで、今は学園の近くのショッピングモールにある雑貨屋さんに2人で向かっている。


    なんでも霧切さんの調査曰く「品揃えが豊富な隠れ名店」だそうだ。


    そのお店目指して2人で歩いているわけだけど…



    霧切「……」



    ……会話弾まないなぁ。


    いや、ボクから話しかけなきゃ会話もなにもない事ぐらい分かってはいるんだけど…


    相変わらず霧切さんはボクの少し前を歩くことを維持してるし、ボクはそれに着いていくだけ。


    主人と従者みたいな……うーん。




    霧切「ところで」



    なんてことをぼんやり考えていたら、なんと霧切さんから会話を切り出してきた。


    助かった………。




    苗木「ん?どうしたの霧切さん?」


    霧切「舞園さんとか上手くいっているのかしら?」



    ああ、そういうこと一応気にはなるんだ…



    苗木「上手くいってるか…かは分かんないけど、少なくともボクは舞園さんといて楽しいかな」


    霧切「…そう」



    あ、会話途切れる!何とか続けないとボクの身が持たない!



    苗木「あー…まあでも、舞園さんがボクといて楽しいかは分かんないや…」


    霧切「あら、そんなこと不安がっていたの?」


    苗木「え?」


    霧切「あなたと一緒にいる時の舞園さん、アイドルとして活動してる時よりも一層笑顔が輝いてるわよ?
    苗木君も少しは自信を持ちなさい?」



    ニヤニヤした顔で言われた。



    苗木「……霧切さんもそういう顔するんだね」


    霧切「人間だもの、当たり前よ」



    また霧切さんは前を歩いていく。


    少しだけ、霧切さんとの距離が埋まった気がした。
  24. 24 : : 2017/07/16(日) 00:10:28


    道中割とボクらの話を霧切さんが聞きたがっていた。というか割と言わされた。


    やっぱり人の恋バナに興味があるっていうのは例え【超高校級】だろうとそうそう変わるものじゃないらしい。


    ましてやそれが、普段口数が少なかったりなに考えてるのかよく分からなかったりする霧切さんからの質問責めなんだから、多分世の女子高生は総じて恋バナが好きなんだろうと思った。


    なんてうんざり答えてそうに言ってみてるけど、実際言うと話してる方も話してる方で楽しかったりする。


    舞園さんとの思い出をなぞって、それを言葉に紡いで誰かに伝えるということは何となく満たされるものがあった。


    まあ、結局これってただの惚気話なんだけど…


    それで霧切さんも何だか楽しそうだし悪い気はしなかった。



    で、希望ヶ峰学園からそんなに距離がないこともあって、すぐにショッピングモールに到着。


    確かここの2階に雑貨屋さんがあるって言ってたけど────



    霧切「…あら?」



    突然、霧切さんが振り向いた。



    苗木「ん?どうかしたの霧切さん?」


    霧切「視線を感じたような気がしたから…
    …ごめんなさい、気のせいみたい」



    視線を感じた…?


    ボクは何も感じなかったけど…これも【超高校級の探偵】の才能が成せる第六感なのかな?


    なんて考えてたもんだからつい




    苗木「ははは、なんだか探偵みたいだね」




    なんて余計なことを口に出してしまった…


    予想は当たってたみたいで、霧切さんは少しムッとすると



    霧切「…バカにしてるつもりならやめてちょうだい」



    と言って、1人でショッピングモールの中へ入っていってしまった。



    苗木「え!?そんなんじゃないよ!
    ちょ、待ってよ霧切さん!」



    今度は小走りじゃなくて駆け足で霧切さんを追いかける。


    霧切さん歩くの早すぎない…?

  25. 25 : : 2017/07/16(日) 00:10:48


    なんとか霧切さんに追いついて、目的の雑貨屋さんに到着。


    外見から少し察してはいたけど、中はそこまで広くなかった。


    入口から見ても店内の左端から右端を容易に視界に入れることができるぐらい。


    ……ホントにこのお店で大丈夫なのかな?


    なんか不安になってきた…



    霧切「さて、まずは舞園さんへのプレゼントを探すわよ」


    苗木「あ、はいっ」


    霧切「…なに?いきなりかしこまって」


    苗木「いや、なんとなく…」


    霧切「そう…」



    特に深い意味はなかったんだけど…


    っていうボクの考えを見透かしたのか、こちらに一瞥もせずに霧切さんはアクセサリーが並ぶ棚へと足を運ぶ。


    正直手探り状態のボクは、霧切さんの行く先を辿るしかできない。さながら金魚のフンだ。


    ……自分で言っててなんだけどこの例え嫌だな。




    霧切「さて…
    私の見立てでは舞園さんは苗木君からのプレゼントなら例え何だろうと心から喜ぶわ」


    苗木「えっ?」


    霧切「例えばそうね…苗木君がこんな事をするわけないっていう前提で話すけれど、市販のクッキーを開封して取り出して、百均かどこかで買った可愛めの袋に詰めてラッピングして渡しても喜ぶわ」


    苗木「…それ本気で言ってる?」


    霧切「本気も本気よ?
    手作りなんて一言も言わないでも『苗木君が作ってくれたクッキー、大切に食べます!』って渡した直後に間違いなく返ってくるわ」


    苗木「そんなんで騙せるわけないと思うけど…」



    若干似てたな、霧切さんのモノマネ。



    霧切「いいえ、騙せると思うわ
    やる気になったら試してみたらどう?」


    苗木「絶対やらないよそんなこと…」


    霧切「ふふっ、分かってるわよ」



    霧切さんとはそれなりに親しいつもりではあったけど、何だろう…ここまで霧切さんがおしゃべりなのも珍しい。


    何だか機嫌もいいみたいだし、そんなに買い物が好きなのかな?



    霧切「…さて、舞園さんの好みの話をするわよ」


    苗木「……」



    なんかこう "改めて" って感じで仕切り直されると緊張するな…
  26. 26 : : 2017/07/16(日) 00:11:16

    霧切「何をあげても喜ぶだろう舞園さんだけれど、この前彼女が江ノ島さんと話してる時に『新しい髪留めが欲しい』って言ってるのを聞いたわ」


    苗木「ふむふむ…つまり?」


    霧切「髪留めよ!
    今から私たちが吟味しなければならない品物はこれに決まりね」



    やたらビシッと決めるなぁ…気合い入ってる…


    ボクより気合い入ってるかもしれない…



    苗木「なるほど髪留めだね!
    じゃあとりあえず髪留めがどこらへんにあるかっていうのを探さなきゃ…」


    霧切「あら、私をナメないでちょうだい?
    ここよ」



    得意げに霧切さんが指差したのは、彼女の真ん前。


    まあつまりボクの真ん前でもあった。


    で、そこにあったのは色々なデザインの髪留め…


    …ていうか、ヘアピン?かな?



    苗木「さすが霧切さん……」


    霧切「広い視野を持って観察することは探偵の基礎中の基礎だもの、これぐらい当然よ」



    こちらを向かずに、ヘアピンを眺めながらしたり顔で霧切さんは答える。


    ………。


    やっぱり霧切さん今日機嫌いいよね?気のせいじゃないよねこれ?


    まあいいや、今はそれよりも舞園さんの誕生日プレゼントに相応しいものをこの中から探さなきゃ。


    霧切「舞園さんってアイドルなだけあって女の子らしいものを好む傾向にあるのよね…
    いわゆる『可愛い』を体現した感じのものね
    ガーリーっていうのかしら?オシャレに疎いから用語はよく知らないのだけれど」


    苗木「確かに言われてみればそうかも…
    舞園さん自身が可愛いっていうのもあるけど、そっか…身につけてるものも可愛いから相乗効果を起こしてたわけなのか…」


    霧切「その話を聞くに間違いないようね、やっぱり舞園さんに贈るべきは可愛い系の物ね」


    苗木「ふむ…なるほどね…」



    けど男子基準の《可愛い》と女子基準の《可愛い》はどうやったって違ってくる。


    ボクが可愛いと思ったものを必ずしも舞園さんが可愛いと思うわけじゃない。


    価値観なんて人それぞれだし、男子と女子でなんてそれこそ違いまくりだろう。


    だから霧切さんに頼み込んだわけだけど…



    霧切「これは…舞園さんの好みではなさそうね」



    頼りになりすぎる。


    どうした霧切さん。本当にどうした。


    張り切りすぎだよ流石に!いやいやいやいや!


    霧切さんが舞園さんに贈るプレゼントで真剣に吟味してるっていうなら分かるけど、これ贈るのボクだよね!?


    別の意味で不安になってきた!うわぁ!



    霧切「………苗木君、これなんてどうかしら?」


    苗木「え?どれ?」



    彼女が見せてきたのは銀色の蝶と紫の花があしらわれたクリップ型のヘアピン。


    自分で言ってたことを全力で無視したチョイスだった。



    苗木「霧切さん、これ自分の好みだよね?」


    霧切「────ッ!?」



    前言撤回、あまり頼りにならないかもしれない。
  27. 27 : : 2017/07/16(日) 00:11:36

    霧切「オホンッ………
    ………これ買おうかしら」



    違う、そうじゃないだろ霧切さん。



    苗木「霧切さん…」


    霧切「っ!?
    なっ、何よその哀れんだ目は…」


    苗木「はぁ…いや、哀れんでなんかないからそこは安心して欲しいんだけど」


    霧切「今ため息つかなかった?」


    苗木「全然気のせいだと思う」


    霧切「……そういう事にしておいてあげるわ」



    そう言いつつ霧切さんは先ほどのヘアピンの値札とにらめっこ。


    これは協力を仰げそうにないな…とりあえずボクなりの可愛いヘアピンを探すか…



    苗木「えーと…
    …あ、霧切さんこれとかどう思う?」


    霧切「どれ?……え、それ?」



    ボクが見つけたのは黄色とかオレンジとかの花のブローチがあしらわれた、挟むタイプのヘアピン。


    少なくとも霧切さんよりはコンセプトに沿った選択ができていると思う。間違いなく。



    霧切「……狙いすぎじゃない?」



    酷評だった。



    苗木「基準がわかんないよ…」


    霧切「舞園さんがそれを付けたら間違いなく似合うとは思うけれど…
    …私が考えてる物とは違う気がするわ」


    苗木「うーん、そっか…」


    霧切「イメージがしっくりこないのよね…
    まあ、それを言えば私が自分用に買おうとしてるこのヘアピンも舞園さんのイメージとはかけ離れてるけど」


    苗木「じゃあなんで提案したんだよ…」


    霧切「無意識だったから仕方ないでしょう?
    それぐらい私の好みを的確に突いてきたのよ、これは」


    苗木「へぇ…
    やっぱり霧切さんは大人っぽいのの方が好きなんだね」


    霧切「そうね、落ち着くし」



    今度はちゃんと可愛らしいヘアピンを両手に持って、霧切さんは答えた。


    2つずつ吟味していくようだ、効率的かも。


    僕も霧切さんに倣って手頃なものを2つ選んで純に眺めて吟味する。





    ……うーん、分かんなくなってきた。


    これどっちも舞園さんに似合いそうだしな…


    いや、それを言えば舞園さんならここにある商品全部似合うだろうし…



    苗木「うーん…」


    霧切「……」



    ボクたちのプレゼント選びは想像以上に難航していた。


    当初の予定である
    『舞園さんへのプレゼントをサクッと決めて学園長へのプレゼント選びに時間をかける』
    とはこの時点で随分と変わったものになっていることを、真剣に吟味しているボクらはまだ気づいてない。

  28. 28 : : 2017/07/16(日) 00:11:59




    ボクと霧切さんは「あれじゃない」やら「これじゃない」やらを散々繰り返し、もしや商品にすべて目を通したんじゃないか?とまで思えるほどの数の髪留めを舐め回すように見た。


    それでもまだ決まらない。


    それは決して優柔不断なんかじゃなくて、単純に "これだ!" と思わされるような品物に出会っていなかったから。


    なので仕方なく品定めを繰り返して───


    ──そして、体感で30分程経過した時、霧切さんがらしくない声を上げた。



    霧切「───っ!
    苗木君!これ、これはどう…?」


    苗木「これは……」



    可愛らしい子猫のプレートが施されたシンプルなヘアピン。


    霧切さんはそれを手にしていた。


    一見するとプレゼントするには少々お粗末な気もするけど、不思議とボクたちはそのヘアピンに惹かれた。



    苗木「うん……うん!
    これ、すごくいいよ!なんだろう、舞園さんがきっと喜んでくれるっていう確信がある!」


    霧切「ええ、私もそう思うわ…
    まさしく私がイメージしていたものっていう感じね」



    ボクらは子猫のヘアピンをまじまじと見つめる。


    体感30分程の戦いは、唐突に幕を閉じた。


    ボクはそこでふと気になって、ポケットにしまっていた端末を取り出して現在時刻を確認。



    苗木「…………え、1時間経ってる」


    霧切「嘘でしょ…」


    苗木「そりゃあこんなに疲れるわけだよ…
    舞園さんでこれだけかかったんだから、学園長へのプレゼントなんてもっとかかるんじゃないの?」


    霧切「〜〜〜っ…
    ……まあ、仕方ないでしょ?ここまで付き合ってあげたんだから苗木君も付き合いなさい」



    これから浪費する時間を思って参っていた様子の霧切さんだったけど、すぐに切り替えて店内をぐるりと見回した。


    多分、ここでうなだれてる方が「時間を浪費する」と判断したんだろう。


    というか、実際その通りだし。


    ボクは子猫のヘアピンを大事に手に持って、すでに歩き出した霧切さんの後を追った。
  29. 29 : : 2017/07/16(日) 00:12:30




    そして30分後………



    苗木「いやー、無事に学園長へのプレゼントも決まってよかったね」


    霧切「そうね…
    それにしても本当に疲れたわ…慣れないことはするべきじゃないわね…」



    目当ての物を互いに購入したボクらは雑貨屋さんを出る。


    ちなみにだけど、学園長へのプレゼントはボクらで決めたんじゃなくて、30分ぐらいで根を上げて店員さんに事情を説明してオススメを聞いてそれを買いました。


    江ノ島さんがプロデュースしてるブランド『monokuma』のネクタイピン…


    霧切さんの「これでいいや」っていう心からの素の言葉を初めて聞いた瞬間だった。


    まあ江ノ島さんのブランドだから製品として問題はないだろうし、何よりこの白黒のクマ何となく愛嬌あるし…学園長は好まなくても霧切さんからの贈り物だからどうせ喜ぶだろうし。


    つまりボクらは妥協した。


    舞園さんへの贈り物に2人とも全力を費やしすぎた結果だからまあ仕方ないんだけど、それにしたって霧切さんに申し訳ない。



    霧切「別にいいのよ、私だってペース配分を失敗したのだし」



    とは言ってるけど…



    苗木「ちょっと申し訳ないしさ、互いの疲れを労うっていう名目で何か軽く食べに行かない?」


    霧切「私は別に構わないけれど」


    苗木「ならよかった!
    うーん……あ、クレープとかどうかな?」


    霧切「クレープ………いいわね」



    お、食いついた?



    苗木「じゃあ決まり!
    学園長へのプレゼントを手助けできなかったことへのお詫びとしてボクがおごるよ」


    霧切「あら、苗木君のくせにこういう時はカッコつけるのね?」



    "苗木君のくせに" ってなんなんだよ…


    霧切さんの方が全てにおいて優れてるから何も言い返せないけど!



    苗木「カッコつけとかじゃなくて…
    ほら、さっきも言ったけど申し訳ないからさ」


    霧切「そう…じゃあお言葉に甘えようかしら?
    私用のヘアピンも買っちゃったら実は財布がピンチなのよね」



    と言いながら霧切さんは手に持ってた買い物袋を覗き見た。


    そこに入っているのは先刻に霧切さんが目を奪われたヘアピンと、丁寧なラッピングが施された学園長へ贈るネクタイピン。


    その2つを目を細めて見る霧切さんをボクは微笑ましく眺めた。

  30. 30 : : 2017/07/16(日) 00:13:02



    クレープ屋について、霧切さんはいちごのクレープ、ボクはキャラメルソースがかかったクレープを注文。


    フードコートだから本来は食事をするスペースがあるはずなんだけど…


    ……えーと、なんでかな?今日は全席埋まってる。


    まさかこんな所で不運を発揮するとは思ってもなかった…


    出来上がったクレープを受け取って、どうしようかを1人で考えていると

    霧切「確か屋外の駐車場付近にベンチがあったでしょう?そこで食べましょう」

    という霧切さんの鶴の一声でボクらの行く先は決まった。


    そして今、ボクと霧切さんはベンチに腰掛けてクレープを頰ぼっている。


    正面から見て霧切さんが右、ボクが左だ。



    霧切「おいしい…クレープなんて久しぶりに食べたわ」


    苗木「疲れたからっていうのはあるだろうけど、いつもに増して甘さが体に染みるね…」



    疲れた体が糖分を欲していたのか、クレープを食べるペースが普段より圧倒的に早い。


    元々少食の霧切さんも、今はただただ食べ続けることを優先しているようだ。


    話しかけるようなネタも特にないし、ボクは無言でクレープを食べ続ける。




    …と、その時、霧切さんがふと後ろを見た。




    苗木「?
    霧切さんどうかした?後ろに何かあるの?」


    霧切「……………」


    苗木「霧切さん?」


    霧切「…いえ、何かある気がしたけれど何もなかったわ」


    苗木「そっか…?」



    イマイチ腑に落ちなかったけど、霧切さんがクレープを食べるのを再開したのでボクもクレープを食べる。


    しばらくしてボクと霧切さんはほぼ同時にクレープを食べ終わった。



    苗木「うーん美味しかった!」


    霧切「そうね、本当に美味しかったわ」


    苗木「あ、ゴミ出たでしょ?
    あそこにゴミ箱あるから捨ててくるよ」


    霧切「あらいいの?ありがとう」



    霧切さんからゴミを受け取ると、ボクはゴミ箱まで歩いて向かった。


    苗木「…」



    それにしても、霧切さんがふと後ろを向いた時からテンションが低いような…?


    気のせいかな?食べるのに集中したかった、とかそういうのかな?



    苗木「うーん…」



    よく分からなくなってきたので、そういう思考もゴミと一緒にゴミ箱へ投げ捨てる。


    目的を果たしたボクは霧切さんが座ってるベンチへと戻り、腰掛け直した。

  31. 31 : : 2017/07/16(日) 00:13:34

    霧切「ありがとう、苗木君」


    苗木「いえいえ、これぐらいどうってことないよ」



    食後の満足感に浸りつつ、何か話題を振ろうかな?なんて考える。


    ……あ、そうだ。


    気になってたし聞いてみるか…もう買い物自体は終わったし。



    苗木「ねえ霧切さん、1つ聞いていいかな?」


    霧切「? 何かしら?」


    苗木「なんで舞園さんへの贈り物にあんなに協力的だったの?」


    霧切「…………」



    うわあ、明らかに動揺してる。


    いつもの冷静さはどこへ行ったんだ霧切さん。



    霧切「それは……まあ、アレよ」


    苗木「アレ?」


    霧切「…何でもいいでしょう、対した理由じゃないわよ」


    苗木「そっか…じゃあ質問は取り消すよ」



    別段問い詰めたい事ってわけじゃないし、理由が分からなくてもまあいいか…?


    なんて適当に疑問への折り合いを付けようとしていると、霧切さんが恐る恐る口を開いた。



    霧切「……………友だち、だから」


    苗木「え?」


    霧切「ほら…私ってあまり人に対して心を開けないから、友だちって呼べるような間柄の人が少なくて…
    …勝手に苗木君のことは友だちだと思ってるけど」


    苗木「…!」



    なんと。嬉しい事を言ってくれる。


    霧切さん今日はあれか?デレの日なのかな?



    霧切「それで、苗木君が困ってたから何か力になってあげたくて…
    おとう…学園長への贈り物を理由にしてプレゼント選びに協力しようと思っただけ」


    苗木「霧切さん…」


    霧切「友だちが困ってたら助けてあげるのが当たり前なんでしょう?
    そうらしいからって事で意気込んでたら、何だか思ってたよりも熱が入っちゃって…」


    苗木「はははっ………ありがとう」


    霧切「苗木君のくせに……
    いいえ、どういたしまして…と返しておくべきかしらね」



    霧切さんは笑った。


    こんなに柔らかい笑顔の霧切さんは、やっぱり初めて見たんだけど…


    それを他所にボクは頭の中で色々な可能性を検討していた。


    ぶっちゃけると、あんまり霧切さんの話を聞いてない。


    いやだって、霧切さんの肩になんか割と大きめの虫が止まってて…


    まだ霧切さんが気づいてないからいいけど、これ霧切さんが虫を視界に入れたら絶対に発狂するパターンのやつだよ…


    どうしよう…気づかれたらダメだよな…


    ていうかなんで虫は右肩に止まってるんだよ…!


    せめて背中とかに止まれよ!だったら気づかれずにソーッと払えたのに!


    ……ああいや、左肩に止まられてたらボクが霧切さんの左側に座ってるから視線の先に虫がいることになって視界にinでアウトだったのか。


    うーんどうしよう…うーん…


    ……いや、虫が飛んで行くのを待つなんて考えられない。


    やっぱりリスクを背負ってボクが手で払うしかない…!

  32. 32 : : 2017/07/16(日) 00:13:59

    ボクは覚悟を決めて、霧切さんに覆いかぶさるようにして目標を目で補足する。



    霧切「は!?」


    苗木「静かに!いい?絶対に右肩を見ちゃいけないからね!」


    霧切「は?」


    苗木「えいっ!」



    そしてボクは割と大きめの虫を手で払った。



    割と大きめの虫「さよならやで」



    彼方へと飛んで行く虫。


    さようなら、お前はどこかここから遠くの安息の地で息絶えてくれ。頼む。


  33. 33 : : 2017/07/16(日) 00:14:17



    苗木「ふぅ…」



    一仕事終えたボクはまたベンチに腰掛け直す。


    最初は混乱していた霧切さんだったけど、すぐに状況を飲み込んで冷静さを取り戻した。




    そして、何故か後ろを瞬時に向いた。



    霧切「─────ッ!!!」



    霧切さんの表情が明らかに曇る。


    どうしたんだ?一体何が…



    霧切「……………」



    顎に手を添える霧切さん。これは思考する時に必須で行なっている事だ。意識的か無意識的かは知らないけど。


    そして、思考の邪魔をしてはいけないとは思いつつ、どうしても気になってボクは口を開いた。



    苗木「霧切さん…?どうしたの?」


    霧切「待って、説明するからあと少しだけ時間をちょうだい」



    とだけ言って霧切さんは立ち上がった。


    どこへ向かうのかと思ったら、ベンチから少し離れた位置にある観葉植物が置いてある所…の更に奥。


    しばらくそこで静止しているかと思えば、早歩きでこちらに戻ってくる。


    待ちきれないボクは戻ってくるや否や霧切さんに問いかけた。



    苗木「…それで?」


    霧切「先に結論だけ言うわ、今すぐ学園へ戻りなさい」


    苗木「え…?」


    霧切「ええ、意味が分からない事ぐらい分かってる…だから順を追って説明するわ」



    そして霧切さんの説明が始まる。まだ全容は見えない。



    霧切「覚えているかしら?このショッピングモールに入ろうとした直前に私が視線を感じて後方を確認したの」


    苗木「うん、覚えてるけど…?」


    霧切「あれは正しかった。私たち、どうやら何者かに付けられてたみたいね」


    苗木「え…!?」



    動揺。混乱。恐怖。


    様々な感情がボクという存在を一瞬で覆い尽くした。


    付けられてた…?なんで?どうして?


    そんな物騒な事が今の今まで起こってたのか?本当に?信じられない。


    …だけど信じるしかないみたいだ、だって霧切さんは確信を得た時にしか自分の考えを話さないから。

  34. 34 : : 2017/07/16(日) 00:14:50

    霧切「付けられてた事に関してはまあいいの、今は考えないで」


    苗木「いや、でも…!」


    霧切「そっちが問題じゃないの
    …問題は、さっきの苗木君の行動」



    苗木「え?さっきの?」



    って言うと…虫を手で払ったやつかな?



    霧切「恐らく私の肩に虫でも止まってたんでしょう?苗木君はそれを手で払ってくれた…
    しかも私に気を使って、私が虫を見ないで済むような方法を考えてそれを実行した」


    苗木「まあ、うん……そう、だね」



    人の口から聞くのなんか恥ずかしいな…



    霧切「けどそれがマズかったの
    …いいえ、私にとっては本当にありがたかったのだけど、付けてる人にとってそれは目を疑うような光景だったはずよ」


    苗木「え?」



    付けてる人が目を疑った…?ボクが虫を手で払ったことを?



    苗木「ボクってそんなに良い行いをしないイメージでも持たれてるのかな…」


    霧切「違うわ、そこじゃないの
    問題なのは、付けてた人がどこでその光景を見ていたか」


    苗木「どこで…?
    付けてるってぐらいだから隠れてたんだよね?」



    …ここは駐車場付近だから割と正面は開けてる。


    さっきの霧切さんの行動から察するに…



    苗木「…観葉植物の裏?」


    霧切「そう、そこに彼女はいた」


    苗木「…?」


    ……彼女?



    霧切「その位置からさっきの光景を見るイメージをしてみてちょうだい?
    どう?一応答えに辿り着けるようにヒントは与えて話してるつもりなのだけど」


    苗木「観葉植物の裏からさっきの光景を…?」





    ───ボクは覚悟を決めて、霧切さんに覆いかぶさるようにして目標を目で補足する。




    覆いかぶさるようにして……


    今ボクたちが座っているベンチから見て観葉植物は真後ろ。


    真後ろからさっきの動作を見ると丁度顔と顔が重なったように見えるから…



    苗木「……キスしてるように見えた?」


    霧切「そう、ね…
    …ここまで導けたなら分かるでしょう?
    どうして私が焦ったのか、どうして苗木君は今すぐ学園へ戻らなきゃいけないのか」



    ボクは霧切さんが言い終える前に駆け出していた。


    もしかしたらまだ追いつけるかもしれない、ここから希望ヶ峰学園までのルートは1つしかないから。


    だから全力で走った。脇目も振らず、なにも考えず。


    だって、もし霧切さんの推理が当たっているのなら。


    もしさっきまであの場所にいた人物がボクの考えている通りなら。


    ………いや、間違い無いのだろう。


    だから「付けられてた事に関してはいい」んだろう。





    苗木「舞園さんっ………!」





    ボクは付けてた人(彼女)の名を零した。

  35. 35 : : 2017/07/16(日) 00:15:15


    道中舞園さんに追いつくことはなかった。


    ボクはまだ荒い息のまま舞園さんの部屋へと早足で向かう。


    全力で走った事と、漠然とした焦りで心臓は早鐘を打っていた。



    苗木「はぁ…はぁ…」



    息を整えつつ宿舎へ向かっていると、桑田クンがいた。



    桑田「苗木?どーしたんだよ、そんなに急いで」


    苗木「いや、ごめん…はぁ……その…
    …舞園さん、見なかった?」


    桑田「舞園ちゃん…?
    ああ、そういやちょい前に自分の部屋に戻ってったような?
    話しかけたんだけど、聞こえてなかったのか無視されてさ〜…」


    苗木「…!
    そっかごめん、ありがとう!」


    桑田「あ?お、おう…?」



    ボクは向かう足を更に速める。


    舞園さんが自分の部屋にいることは間違いないみたいだ。急ぐしかない。



    苗木「くそっ…クソクソクソクソ…!」



    なんでこんな事になった?


    ボクは舞園さんに喜んでほしかっただけなのに。


    その想いが今は彼女を傷つけている。


    …いや、傷ついていてほしいと願うのはボクのエゴなのかもしれない。最低だ、ボクは。



    苗木「クソ野郎…」



    そんな自虐めいた思考に囚われたまま舞園さんの部屋に到着。


    勢いのままにインターホンも鳴らさずドアをノック…というより殴って舞園さんを呼ぶ。



    苗木「舞園さん!ボクだよ!苗木だよ!
    ねえ、ここを開けて!舞園さん!」



    もちろん、この声が届いてないことぐらい分かってる。でも、ドアを殴る音は届いているはず。


    ボクは何度も何度もドアを殴りつけた。


    焦りや苛立ちや、自分に対する怒りをぶつけ続けた。




    ───程なくしてドアが開く。



    ボクは無我夢中でドアの先にいる彼女の名を叫んだ。



    苗木「舞園さんッ!!!」


    舞園「─────ッ」



    舞園さんは、大きく目を見開いた。

  36. 36 : : 2017/07/16(日) 00:15:41



    ─────




  37. 37 : : 2017/07/16(日) 00:16:01


    ボクは今、舞園さんの部屋にいる。


    2人並んでベッドに腰掛けて。


    舞園さんはさっきまでシャワーを浴びていたのか、髪が濡れている。


    着ている服も制服じゃなくて可愛らしいパジャマだった。



    舞園「……それで、話ってなんですか」


    苗木「…っ」



    普段からは考えられないような低い声。


    まるでついさっきまで叫んでいたかのように、発せられた声はかすれていた。


    そして、よく見るとひどく疲れた顔をしている。


    ……やっぱり、思っていた通りだったみたいだ。


    ボクは必死に言葉を選ぶ、必死に。



    苗木「その……ごめんね、今日はそんなに構ってあげられなくて」


    舞園「……ははは」


    苗木「…」


    舞園「いいんですよ、仕方ありませんよ
    …だって苗木君は放課後にどうしても外せない用事があったんですから」



    顔を覗き込まれた。目に光がない。


    怖い。単純に、舞園さんが怖い。



    苗木「あの…その用事の事なんだけどね」


    舞園「…はい、なんでしょう?」



    作られた笑いを向けられた。


    ………これが初めてだった。



    苗木「実はね、霧切さんと近くのショッピングモールに行ってたんだ、さっきまで」


    舞園「知ってますよ、エスパーですから」


    苗木「そ、そっか…」



    色々と並行して考えてたせいで気づかなかったけど、舞園さん敬語だ。


    あ、これは地味にキツいな。本当、気づかなきゃよかった。



    舞園「それで、何を買ったんですか?
    2人で仲良く袋を下げて雑貨屋さんから出てきてましたけど」


    苗木「───!」



    じゃあホントに…ホントに最初から舞園さんはボクたちを…!?



    舞園「そしてその後は2人で仲良くベンチに腰掛けてクレープを食べてましたね
    …美味しかったですか?甘かったですか?」


    苗木「…」


    舞園「あれ?無視されてます私?
    嫌だなあ酷いですよ苗木君」



    違う、答えられない。


    舞園さんがまるで「喋るな」と言ってきているようで、その圧に負けて口を開けない。



    苗木「…………」



    そして、一向に口を開かないボクをみかねたのか、舞園さんは再び口を開く。

  38. 38 : : 2017/07/16(日) 00:16:24

    舞園「────ねえ」


    舞園「ねえ、ねえ苗木君、私あなたの事好きです。本当に、本当に本当に好きです」



    手と手が触れる。そこに感情は、ない。



    舞園「だからね、だから苗木君が他の女と一緒にいるなんて耐えられないんです。私ってほら、とってもとってもとっても嫉妬深いから…あれ?知りませんでした?知らなかったですよね?」



    舞園さんの指が、ボクの手の甲を滑る。


    もう走っているわけでもないのに、ボクの額から一筋、汗が流れた。



    舞園「たまにいるじゃないですか?『浮気しても最終的に私の所に戻ってくるならそれでいい』って言う女、あれどう思います?私信じられなくって」


    舞園「それって本当に相手を愛しているんですかね?愛って束縛だと私思ってて、だから私そういう考えの人あんまり好きじゃないんですよね。つまり、私はそういう思考を持ってないってことなんですけど」



    舞園さんの言葉は続く。さながら拷問のように。ボクを言葉で縛ってゆく。


    いつの間にか舞園さんの手はボクの頬を撫でていた。ボクは、動けない。



    舞園「だーかーらー、苗木君苗木君苗木君、私とっても悔しいんですよ。許せないんですよ。正直、もうどうにかしちゃたいんです」


    舞園「だって私、だって私まだ苗木君と…
    だってあいつの方が先に苗木君とキ………」


    舞園「……………」


    苗木「………」



    時間が止まる。ボクの、舞園さんの、この部屋の、時間が止まる。


    舞園さんは何を考えているのだろう?


    いや、分かってる。分かってる…


    分かってるから…分かってるからボクがその誤解を解かなきゃいけない。


    今、ボクの目の前で静かに泣いている彼女は、きっとボクじゃないと救えない。



    舞園「……なんで霧切さんとキスしてたんですか?」



    時間が進み出す。さっきまでとは違う。


    口を開け苗木誠。そうしなきゃボクは多分…


    ……いいや、絶対に一生後悔するから。



    苗木「舞園さん、それは誤解だ…!
    お願いだから信じてくれ!」


    舞園「はぁ?????????????」
  39. 39 : : 2017/07/16(日) 00:16:58


    苗木「本当なんだ!
    だってあの時ボクは霧切さんの肩に止まってた虫を手で払おうとしただけで…!」


    舞園「じゃあわざわざ覆いかぶさるようにした理由はなんですか?キスしてないならなに?そんなに密着したかったんですか?」


    苗木「違う!
    それは霧切さんが虫に気づかないようにしようとして───」


    舞園「そんな払い方したら流石に私でも気づきますよ?じゃあなんでそんな方法とったんですか?言い訳にしてはレベル低いですよ」


    苗木「そんな…!
    ボクは霧切さんの視界に虫が入らないようにしようとしたからああいう払い方を選んだんだよ!
    払い終えた後に気づかれても、虫さえ見なきゃ大丈夫だと思ったから!」


    舞園「っていうことにしようとしても無駄ですよ?あれが見間違いな訳ないです、勘違いなわけないです
    仮にキスしてなかったとして、今日放課後デートしてたのは事実じゃないですか」



    ダメだ、舞園さんは心を閉ざしてる。


    何を言っても彼女の疑いの心を晴らせる気がしない。



    舞園「だってあれデートですよね?あんなのデートって言わずになんて言うんですか?
    2人で放課後にショッピングモールの雑貨屋さんに行って、その後クレープ買って、ベンチで並んで食べて…」


    舞園「ほらデート、デートですよこれ。私が望むようなデート。私とじゃ何故か実現しないデート」


    苗木「雑貨屋さんへは…」



    まだ言えない。1日早い。


    手に下げている袋の中身を伝えるには、まだ少しだけ時間が早い。


    …多分、そうも言ってられないんだろうけど。



    苗木「…霧切さんに頼まれたんだ、学園長への贈り物を一緒に考えて欲しいって」


    舞園「はあ、そうですか
    …それに1時間半も費やします?普通ある程度絞って買いに行きますよね?無計画だったんですか?ねえ」



    学園長のほうはまごうことなく無計画だった。


    でも実際にかかった時間は30分。舞園さんに嘘はつきたくない……けど。



    苗木「……うん、ホントに無計画だったから」


    舞園「へぇ…そうですか…
    …じゃあその手に下げてる袋の中身はなんですか?」


    苗木「───ッ!」

  40. 40 : : 2017/07/16(日) 00:17:38

    苗木「それは……言えない」


    舞園「…」



    苗木君また目をそらした。これで2回目。


    私に対して後ろめたい気持ちになったら目を合わせてくれなくなるんだね、ねえ。


    バレバレなのに、必死に隠してる。隠してる。


    何を?何を隠してるの?なんで?


    もう分かり切ってるのに、もう暴かれてるのにどうしてまだ偽るの?



    舞園「……見せられないのは、そこに霧切さんとペアのキーホルダーでも入ってるからですか?」


    苗木「そんなわけないだろ!」


    舞園「…」



    苗木君怒った?なんで?私が怒りたいぐらいなのになんであなたが怒るの?



    舞園「じゃあなんで見せられないんですか?なんで隠すんですか?私に見せられなくて霧切さんに見せられるってなんですか?」


    苗木「それは…だって…」



    また言い淀んでる。また。


    ああ、霧切さんと私、何が違うのかな。


    私の方がきっと可愛いのに。私の方がずっと苗木君を好きなのに。なんでかな。


    私に秘密で霧切さんには教えられるなら、私の方が負けてるのかな。負けてる?


    ……やだやだやだやだやだやだやだやだ



    舞園「だってなんですか?ねえ、だってなに?私じゃダメなの?なんで?
    私になくて霧切さんにあるものってなに?」



    やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだ



    舞園「どうして隠すの?見せてよ…!
    お願いだから見せてよ!ねえ!
    私信じたいの!苗木君を信じたいの!」



    やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだ



    舞園「もう嫌だよ!疑いたくないよ!なんで苗木君のこと疑わなきゃいけないの!?
    どうして?どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして!?」



    いやだ。いやだいやだいやだいやだいやだ




    苗木「舞園さん落ち着いて!」


    舞園「落ち着いて!?
    じゃあ見せてよその袋の中身を!なにが入ってるかぐらい見せてくれてもいいでしょ!?
    見せてくれないなら私に見せられない理由の1つや2つ説明してよ…!」



    とまらない。とまらないとまらないとまらないとまらないとまらない。


    感情が。涙が。疑いが。嗚咽が。


    止まってくれない。押さえ込めない。




    舞園「酷いよ!私はこんなにあなたの事好きなのに!
    なんであなたは私のことを見てくれないの?
    私じゃダメ?私じゃ不満?私にはもう飽きた?」


    苗木「……そんなわけないだろ」


    舞園「そんなわけないなら───」
  41. 41 : : 2017/07/16(日) 00:18:22

    苗木「そんなわけないだろ!?
    ボクだって…ボクだって舞園さんのこと好きだよ!当たり前だろ!?ボクが告白したんだから!」


    舞園「…」



    信じられない。苗木君の言葉が薄っぺらに聞こえる。ああ、聞きたくない。



    苗木「いつだって舞園さんのこと考えてる!
    今日だって舞園さんのこと考えてた!
    考えてたから今ここにいるんだろ!?」


    舞園「え?」



    わからない、訳がわからない。苗木君の言ってる事が理解できない。ので、聞くしかない。




    舞園「どういう──」


    苗木「……霧切さんに教えてもらったんだよ、舞園さんが付けてるって」


    舞園「え───────」



    え、え?え?え、えええええ、うそ


    気づかれてた?嘘、いつ?まさか最初から?


    あの時目が合ったのは偶然じゃなかったってこと?嘘、嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘



    苗木「そして多分誤解してるってことも教えてくれた…
    そしたら思ってた通り誤解してた…
    …後で霧切さんにお礼言わなきゃ」


    舞園「え、待って?じゃあなんで苗木君今ここに…」


    苗木「さっきから言ってるだろ?
    ボクは誤解を解きに来たんだって」


    舞園「そんな……え…?
    いや、でも…」



    だって私は確かに見たんだ、苗木君と霧切さんがキスしてるのを見た。見たはず。


    ………見間違い?え?そんな、そんなわけ



    苗木「…はぁ、ムードも何もないけどこうなったら仕方ないよね」



    そう言って苗木君は袋から何かを取り出した。


    綺麗に包装された小さな何か。


    中身はなんだろう?私が開けていいのかな?



    苗木「ごめんね舞園さん、ボク嘘ついた」



    ……………。




    舞園「へ?」


  42. 42 : : 2017/07/16(日) 00:22:32

    苗木「どうしても明日渡したかったんだよ、これ…
    だから『学園長への贈り物に全時間を費やした』ってことにしてた」


    舞園「え、え?待ってわかんないわかんない」


    苗木「ホントはボクが霧切さんに頼まれたんじゃなくて、ボクが霧切さんに頼んでたんだ
    …そこも嘘ついてた」


    舞園「ちょ、じゃあ、これって…」



    これって…………


    ……あ、あら、あれれ?あれ?



    苗木「……ちょっと、ううん…すごく早いけど言っていいかな?」



    あ、あああああ、あああああ


    ────────!!!!!!



    舞園「待って!!!!!」


    苗木「っ!?」


    舞園「待って、待って待ってダメ、その先は言わないで」


    苗木「え、でも…」


    舞園「ううん、言って欲しい!すごく!
    すごく言って欲しいけど!
    …でも」


    舞園「でも謝らせて、先に」


    苗木「舞園さん…」


    舞園「っ………ごめんなさい…私信じたいなんて言ってあなたの事困らせてた…
    勝手に疑って、結局私が悪くて…!
    だから……その…」



    恥ずかしいとか、申し訳ないとか、そういう気持ちが溢れて溢れて止まらなくなった。


    それは大粒の涙として、私の両目から溢れてくる。



    舞園「そうだよね…苗木君が…ひぐっ…
    ……そんなことするわけないのにね、なんで疑ってたんだろう、恥ずかしい……」


    苗木「でもほら、ボクだって隠してたからさ…?」


    舞園「それは…私に喜んでほしかったからでしょ?私だってそうするから…
    サプライズしたいもん…したい……」


    苗木「…」


    舞園「その……こんな私でごめんなさい。
    疑っちゃってごめんなさい。
    苗木君の気持ちを踏みにじって、何もかも踏みにじってごめんなさい…!」



    謝った。謝って許されるか分からないけれど。


    それで目の前の袋を受け取れる資格が与えられたか分からないけれど。



    舞園「……それ、受け取っていいですか?」



    私は苗木君が持ってる小さな袋を指差した。


    苗木君は笑顔で答える。



    苗木「うん、だってこれは君のために買ったんだからさ…
    ちょっと早いけど…誕生日おめでとう、さやか」


    舞園「〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!」



    さやか、と呼ばれて。


    私は決壊した。わんわん泣いた。


    困った笑顔で苗木君が私の背中をさする。


    今はただ、彼の優しさに甘えていたかった。


    ただ彼を感じていたかった。抱きしめていたかった。腕に抱かれていたかった。


    欲張りかな?そうだとしても……





    ……私の中にいた鬼は、いつの間にか姿を消していた。





  43. 43 : : 2017/07/16(日) 00:22:47




    ─────




  44. 44 : : 2017/07/16(日) 00:30:45

    そして翌日。


    私は今日も仕事がオフだ。何故なら今日は私の誕生日だから。


    何だかクラスのみんなが会を企画してくれているみたいで、今日は授業を全部潰して朝から晩までパーティー…らしい。


    …嬉しいな、すごく。



    いつものように教室に行く準備をして、自分の部屋を出る。


    宿舎から教室への移動中、廊下でばったり霧切さんと出くわした。



    舞園「っ…」


    霧切「…」



    気まずい、ものすごく気まずい。


    昨日の今日だし、何より霧切さんは私が誠君を付けてたことを知ってるわけだし…


    これはどうしよう…困った…



    ……。



    よし挨拶だけして通り過ぎよう!


    これが1番妥当!昨日は何もなかった!そう!



    舞園「おはようございます、霧切さん」



    自分でもわかるぐらい下手くそな笑顔。


    表情筋が明らかに強張ってる…だめだ…


    …なんて落胆していたけどどうやら杞憂だったようで

    霧切「おはよう、舞園さん」

    と返されるだけだった。


    霧切さんはその場から動こうとしなかったから、私は教室に向かうために霧切さんを横切ろうとする。


    ──と、声がかかった。




    霧切「ねえ、舞園さん」


    舞園「はい?」


    霧切「素敵ね、その髪留め」



    霧切さんはクスリと笑って、私が使用している髪留めの事を言った。


    ……ふふふ、全く。苗木君も霧切さんも優しすぎます。



    舞園「ですよね!とっても可愛いです!」



    今度は、心からの笑顔で霧切さんに答えた。


  45. 45 : : 2017/07/16(日) 00:31:02





    おわり
  46. 46 : : 2017/07/16(日) 00:33:15

    おわりー!終了!
    如何でしたでしょうか?

    チムコ、と言えど「コトダ祭り」である事に変わりありません!
    読み比べ、そして作品の違いをどうか楽しんで頂ければと思います!

    ここまで読んでくださりありがとうございました!ではまたいつか!
  47. 47 : : 2017/07/16(日) 00:58:10
    凄く面白かったです!
    苗木君視点のとき先の展開が気になって仕方なかったし、病んでる舞園さんも若干天然入ってる霧切さんも戦犯である割と大きめの虫さんも可愛かったです。
  48. 48 : : 2017/07/16(日) 01:01:43
    非常に面白かったです!

    苗木視点と舞園視点があり、とても読みやすい作品でした(っ´ω`c)

    展開どうなるの!?と言うハラハラ感を味わってました(っ´ω`c)

    投稿お疲れさまでした!
  49. 49 : : 2017/07/16(日) 20:07:26
    お疲れ様でした!本当にテーマとキーワード通り、「日常の中に疑心暗鬼」がこれでもかというほどしっかり書かれていてわかりやすかったです。
  50. 50 : : 2017/07/17(月) 00:00:18
    お疲れ様です。愛するが故に疑ってしまう舞園さんの悲痛な思いが此方に伝わってくるかのようでした。二人にこれから幸多きよう、願っています
  51. 51 : : 2020/10/26(月) 23:04:08
    http://www.ssnote.net/users/homo
    ↑害悪登録ユーザー・提督のアカウント⚠️

    http://www.ssnote.net/groups/2536/archives/8
    ↑⚠️神威団・恋中騒動⚠️
    ⚠️提督とみかぱん謝罪⚠️

    ⚠️害悪登録ユーザー提督・にゃる・墓場⚠️
    ⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️
    10 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:30:50 このユーザーのレスのみ表示する
    みかぱん氏に代わり私が謝罪させていただきます
    今回は誠にすみませんでした。


    13 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:59:46 このユーザーのレスのみ表示する
    >>12
    みかぱん氏がしくんだことに対しての謝罪でしたので
    現在みかぱん氏は謹慎中であり、代わりに謝罪をさせていただきました

    私自身の謝罪を忘れていました。すいません

    改めまして、今回は多大なるご迷惑をおかけし、誠にすみませんでした。
    今回の事に対し、カムイ団を解散したのも貴方への謝罪を含めてです
    あなたの心に深い傷を負わせてしまった事、本当にすみませんでした
    SS活動、頑張ってください。応援できるという立場ではございませんが、貴方のSSを陰ながら応援しています
    本当に今回はすみませんでした。




    ⚠️提督のサブ垢・墓場⚠️

    http://www.ssnote.net/users/taiyouakiyosi

    ⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️

    56 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:53:40 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ごめんなさい。


    58 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:54:10 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ずっとここ見てました。
    怖くて怖くてたまらないんです。


    61 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:55:00 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    今までにしたことは謝りますし、近々このサイトからも消える予定なんです。
    お願いです、やめてください。


    65 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:56:26 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    元はといえば私の責任なんです。
    お願いです、許してください


    67 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    アカウントは消します。サブ垢もです。
    もう金輪際このサイトには関わりませんし、貴方に対しても何もいたしません。
    どうかお許しください…


    68 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:42 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    これは嘘じゃないです。
    本当にお願いします…



    79 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:01:54 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ホントにやめてください…お願いします…


    85 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:04:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    それに関しては本当に申し訳ありません。
    若気の至りで、謎の万能感がそのころにはあったんです。
    お願いですから今回だけはお慈悲をください


    89 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:05:34 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    もう二度としませんから…
    お願いです、許してください…

    5 : 墓場 : 2018/12/02(日) 10:28:43 このユーザーのレスのみ表示する
    ストレス発散とは言え、他ユーザーを巻き込みストレス発散に利用したこと、それに加えて荒らしをしてしまったこと、皆様にご迷惑をおかけししたことを謝罪します。
    本当に申し訳ございませんでした。
    元はと言えば、私が方々に火種を撒き散らしたのが原因であり、自制の効かない状態であったのは否定できません。
    私としましては、今後このようなことがないようにアカウントを消し、そのままこのnoteを去ろうと思います。
    今までご迷惑をおかけした皆様、改めまして誠に申し訳ございませんでした。

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donguri

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