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敗者救済遊戯

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  1. 1 : : 2017/07/10(月) 22:15:34

    チームコトダ祭り二回目です!前回は、審査員の方に回ってましたが今回は参加者です。頑張ります!


    『奴隷と愉快な仲間たち』

    Deさん (チームリーダー)
    あげぴよさん
    カラミティさん
    シャガルT督さん
    影さん

    『皆殺し』

    タオさん (チームリーダー)
    ノエルさん
    ししゃもんさん
    ライネルさん
    スカイさん

    『真山田組〜追放される空〜』

    ベータ (名ばかりのチームリーダー)
    風邪は不治の病さん
    Ut4m4r0さん
    たけのこまんじゅうさん
    フレンさん


    チームコトダ祭りグループURL
    http://www.ssnote.net/groups/2086


    【役職】次鋒
    【ジャンル】サスペンス
    【キーワード】支離滅裂


    物語は育成計画軸(全員同学年)です
  2. 2 : : 2017/07/10(月) 22:19:51











    1人減って、2人減って、3人減って、そうやってみんな居なくなって。ボクは一人ぼっちになりました。







    この物語は此処から始まります。












  3. 3 : : 2017/07/10(月) 22:22:46






    ◇◆◇




    日向『裏切り者は今の生き残りメンバーの中にいる』






    『YES』





    最原「裏切り者は…やっぱり君だったんだね。江ノ島盾子」


    江ノ島「………」


    江ノ島「うん。そうだよー」



    最原「終わらせよう。日向君、お願い」


    日向「ああ」


    カンカンッ!


    ガベルを二回振るう。


    日向「江ノ島盾子を告発する」





    モノクマ「ウププププ!大正解!江ノ島盾子さんは裏切り者でしたー!」






    これで現実へ戻れる。

    裏切り者を暴き出し、答えを出した。

    それがクリアのルールだった。



    だが



    彼らが生還することを叶わなかった。


  4. 4 : : 2017/07/10(月) 22:29:53








    ◇◆◇





    ヒンヤリとした硬い感触を背中に感じて目を覚ます。



    これがゲームの始まり。僕の物語の始まり。





    【広間】



    モワーーッ…

    顔に感じたのはオイルの臭いが混じった生温かい風。

    苗木「……ぇ…ん…?」

    「あっ。目が覚めましたか」

    苗木「ここは…?」

    キーボ「それが分からないんです。目が覚めたら此処にいて」

    苗木「………」

    温風の正体はキーボ君の機能(ドライヤー)のようだった。

    王馬「本当、使えないよねー。ロボットなら録画機能完備しとけば良いのに」

    やれやれと呆れたように首を振りながら王馬君は嗤った。

    キーボ「ぐっ…」

    辺りを見渡すと真っ黒な大理石で造られた正方形の部屋だった。

    1面に巨大なモニターが埋め込まれており。他の面には扉が付いていた。

    苗木(ここは…どこなんだ?)

    そして、見知った顔が幾つもあった。

    舞園さん、葉隠君、朝日奈さん、セレスさん、不二咲さん、九頭龍君、ソニアさん、西園寺さん、星君、白銀さん、夜長さん。

    その中で真っ先にピントが合ったのが

    舞園「苗木君!目が覚めたんですね…!」

    僕へ向け駆け寄る彼女、遅れてスカートが付いてくる。

    苗木「舞園さん!」

    舞園「えへへ。苗木君が一緒じゃなかったら、私不安でどうにかなってたかもしれません」

    王馬君とは対照的な太陽の様な微笑み。

    茶柱「ピーピピピピーー!舞園さん離れてください!!彼は危険です!」

    そこへ水を差す様に茶柱さんが割り込んでくる。

    舞園「え?」

    茶柱「男死は野獣です!隙を見せたが最後、ひん剥かれ骨までしゃぶり尽くされてしまいます!さあ!はやく此方へ!」

    苗木「そんな事しないよ!」

    茶柱「では苗木さん。貴方は今一切の下心を抱かないでいるんですか?」

    苗木「うっ、な、ない!」

    王馬(うっわ、嘘下ッ手)

    茶柱「ほーぉら見た事ですか、男死に気を許してはいけません!」

    舞園「苗木君はそんな酷い人じゃありません!それに苗木君は頼りになりますよ!」

    茶柱「チビじゃないですか!」

    苗木「うっ」

    星「……」

    花村「……」

    不二咲「……」

    キーボ「……」

    九頭龍「……」

    王馬「あーあ!茶柱ちゃんったら、今のは此処にいる殆どの人を敵に回す発言だよー。各言う俺も…お゛れ゛も゛ーーー!!酷い゛よ゛ーーー!!!気に゛じでる゛の゛に゛ぃぃぃーーーーー!!!!」

    王馬「ま、嘘だけどね」ケロッ

    茶柱「不二咲さんは女子なので!!寧ろ小さい方が愛嬌があって良いと思います!!」

    不二咲「う、うん。ありがとう…」

    王馬「わーお。シカトされちゃった」

    王馬「身長じゃ測れないものがあるんだよ。ね、九頭龍ちゃん」

    九頭龍「おいテメェ…。何で俺に振った?」

    葉隠「背だけじゃねーべ。男に大切なのは器のデカさだべ」

    朝日奈「何でだろ。アンタが言うと良い言葉も安っぽく聞こえるよね」

    花村「そうだよ!男○性器のデカさだよ!」

    ソニア「伏せれてませんね…」

    西園寺「わーーんっ!なんだよコイツら!明らかに背より脳が足りてないじゃん!」

    王馬「酷いぞ西園寺ちゃん、キーボは別にしてよね!」

    キーボ「まさか、王馬君に擁護される日が来るとは…」

    王馬「脳すらないんだから、一緒にしないでよ!」

    キーボ「ああ!皆さん聞きました!ロボット差別です!」ビシッ



    アンジー「んーー。神様は言っているよー。日寄子は毎日牛乳飲めば背が伸びる」

    西園寺「電波ぶりっこ桃色頭は黙ってろ!飲んでるんだよ!いつも!」

    花村「ンフフ。僕の一番搾りはどうかな?」

    アンジー「輝々ー。神様馬鹿にするとー…バチが当たるよ」

    花村「え…あの、いきなりガチトーンになるのは何で…?」

    茶柱「ガルルルルルッ!!男死ッ!ついに尻尾を出しましたねッ!!!」

    西園寺「キモっ」

    花村「うーん、蔑む視線も良いねっ」

    ソニア「花村さんはブレませんね」

    舞園「背なんて関係ありません!苗木君は、誰よりも頼りになります!それに…凄く…優しくてカッコイイ…です」

    白銀「うん!これはもう…誠氏ね!だね」

    苗木「!?」

    白銀「ああ、ダメだ。これじゃ苗木君が西園寺さんに殺されちゃうみたい」

    西園寺「!?!?」


  5. 5 : : 2017/07/10(月) 22:31:55


    王馬「ま。これで俺含めた16人が全員目を覚ましたわけだし、そろそろ始まるんじゃないの?」

    苗木「始まるって…何が?」

    王馬「希望ヶ峰学園の生徒が16人、誘拐されてるんだよ?分かんないかなー」

    葉隠「超高校級の高校生が16人…来るぞ!苗木っち!」

    苗木「何がっ!?」

    白銀「これがフィクションの物語なら、コロシアイ学園生活を強要されたり、生き残りが1人になるまで殺し合いをして貰う!とか言われそうだけどね」

    王馬「案外的を射てると思うけどね」

    苗木「そういえば扉の向こうには何があるの?」

    葉隠「あー、大したもんはなかったぞ」

    朝日奈「1つは倉庫で、中には応急セットと、乾パンとかの非常食、ペットボトルに入った水が沢山あったよ。あと、ドーナツ!!」

    九頭龍「あと在るのはトイレだけだ。男子便所は特におかしな所はなかった」

    ソニア「女子トイレの方も右に同じくです」

    舞園「モニターにはスイッチらしきものは無かったです」

    星「そういやぁ、モニターの前に台座があるだろ?」

    苗木「本当だ。あれ、何なの?」

    白銀「鎖に繋がれた木槌が置いて合ったよ。地味に持ち出し厳禁かも」

    苗木「…木槌?」

    王馬「裁判長が使いそうなやつだね。叩く木の板みたいなのも台座にくっ付いてるし」

    セレス「つまり宿泊施設が無いのに食料は大量にある──と言うことです」

    星「長期の監禁が目的って訳じゃ無さそうだな」

    九頭龍「だな。長期の監禁が目的ならこの状況は中途半端すぎる」

    茶柱「そうですね。男死は鎖を付けて牢屋に入れるべきです」

    九頭龍「そこじゃねぇよ」

    茶柱「男死は獣。頭の中では妄想の中で私達を剥いているに違いません!安心してください!女子に向く牙は、転子がヘシ折ります!」

    花村「僕のを剥いて?」

    九頭龍「…花村。イエローカードだ」

    花村「ふふん。もしもう一枚溜まったらどうなるの?」

    九頭龍「お前の母ちゃんを攫う」

    花村「!!おじゃんばらのでふでふもんば、 かっペんなぞぞぶっこみらろぶすもんぞー!」

    王馬「『ど田舎のイモヤローが勝手に何を抜かすか』」

    朝日奈「何で解読出来るの…」

    苗木「九頭龍君!そういう事は冗談でも言っちゃダメだよ!」

    九頭龍「……そうだな。悪かったよ花村」

    花村「僕もごめんね。九頭龍君はそんな事する様な人じゃないって分かってるのに」

    白銀「花×九頭…ありだね!」

    西園寺「ねぇよ!!馬鹿なんじゃないの!?」

    白銀「馬鹿っていうのは酷─────


    白銀さんが何か言いかけたその時、何の前置きも前兆も無く。




    ウゥウウウウウウウウウウウウウウ──────!




    サイレンの音がホールに響き渡った。


  6. 6 : : 2017/07/10(月) 22:33:42


    ソニア「なんですか?!この音は!?」

    白銀「地味に、間が悪くない?」

    苗木(何だろう…聞き覚えがあるような…)

    不二咲「!あ!あれを見て」

    室内に響くサイレンが止まり、モニターに光がつく。

    モニターに映し出されたのはモノクロカラーの熊の姿。

    右側は白い体に黒い目。一般的なぬいぐるみ。

    だが、左側は黒い体に稲妻の様な赤い目。邪悪に歪んだ口が悪魔を連想させた。

    モノクマ『おはようございます。僕はモノクマ。このゲームの主催者なのでーす!』

    王馬「……ゲーム?」

    モノクマ『寝坊はダメだよ。起きるのが遅かったせいでゲーム開始が遅れたんだから』

    白銀「遅かったのはこの熊だよね!?地味に責任転嫁してる!」

    モノクマ『はいはい。さっさとルールの説明に移らないとね。ゆとりだもんね。待つの嫌いだもんね』

    九頭龍「コイツが話を聞かねぇ奴って事は分かったな」

    モノクマ『このゲームですが。何と、期限がありませーん!!』

    苗木(期限が…ない?)

    モノクマ『つぅまり!オマエラはゲームをクリアしないと此処から出られないのです!』

    西園寺「はぁ!?お前何言って!」

    モノクマ『ゲームを終わらせるには君達の中にいる正しい裏切り者を見つけ出し、告発しないといけないんだ。真っ赤な嘘を付いてる。真っ黒な裏切り者をね』

    モノクマ『君達の目の前に、ガベルがあるでしょ?』

    白銀「ガベル?さっきの木槌の事かな?」

    モノクマ『そうそう。それだよ、その木槌』

    モノクマ『それを二回連続で叩いた後に裏切り者の名前を宣言するんだ。それが正しい裏切り者の場合、残った全員が生還しちゃうのでーす!』

    モノクマ『ま、外れた場合にはオシオキが待ってるんだけどね』

    モノクマ『でさ、ノーヒントじゃ分かんないよね?分かりっこないよね?冴え渡る勘でもないと分かんないよね?』

    モノクマ『そーんなオマエラの為に質問を許可します』

    モノクマ『そこにあるガベルを一回叩いた後に質問をするんだ。僕はそれに、YES/NOで答えるよ』

    モノクマ『だから質問はYES/NOで答えられるのにしてね。YES/NOの基準は、質問したその時。だからね』

    モノクマ『あ・と。質問の内容に個人を指定する言葉を使っちゃいけないんだ』

    舞園「個人を指定?どういう事ですか?」

    モノクマ『例えば、苗木君を例にあげると、苗木君より背が高い人、とか160㎝の幸運より背が高い人。とか使っちゃダメって事だよ』

    苗木「なっ…!」

    僕の身長を!!

    不二咲「使ったらどうなるの?」

    モノクマ『どうもしないよ。ただ、答えないからね』

    モノクマ『質問は、ミニゲームの前に一回だけ可能だよ。ミニゲームっていう事に特に意味は無いから気にしなくて良いクマ』

    朝日奈「今更キャラを作り始めたよ!!」

    モノクマ『運営はゲーム中に君達に一切の危害を加えない。これは約束するクマ』

    モノクマ『ただし例外があるんだ。それは告発を間違えた人とミニゲームで敗退した人──クマ』

    星「その場合どうなるんだ?」

    モノクマ『キツーイオシオキを受けてもらうよ。死んだ方がマシと思うようなキツーイオシオキを、永遠にね。クマ』

    白銀「それって、地味に死刑だよね…」

    モノクマ『じゃ。バイックマー』


    モノクマがそう言うと、モニターは再び明かりを失った。

  7. 7 : : 2017/07/10(月) 22:34:23




    ホールは静けさに包まる。

    だが、それも一瞬の事だった。

    静寂を破ったのは。

    西園寺「うわぁーん!嫌だよぉこんな変態共に囲まれた空間!早く帰りたいよぉ!」

    セレス「あら、それについては簡単ですわ。このゲームに勝てば宜しいのです」

    西園寺「勝つー?私はそもそも嫌だって言ってんの!」

    セレス「あら?降りると言うことですか?」

    西園寺「はぁ?言わないと分かんないの?そうだよ!降りるって言ってるんだよ!」

    セレス「でしたら、裏切り者の名前を言った後にして貰えますか?」

    西園寺「馬鹿なんじゃ無いの?分かるわけないじゃん!言っても外れるだけに決まってる!」

    セレス「ええ。当てて貰えればその時点でゲーム終了みたいですし、外れても、候補が絞れる上に、オシオキというものがどういうものか分かります」

    西園寺「っ!どうせ!お前が裏切り者なんだろ!!良いよ!終わらせてやるから!」

    苗木「ダメだ!西園寺さん!」

    西園寺「邪魔しないでよ!」

    茶柱「転子も反対です!そもそも仲間同士で啀み合うべきじゃないです!」

    星「そんなに死に急ぐなよ。あんたはまだ若いんだ。どうしてもセレスに投票したいってなら俺が投票してやるぜ?」

    舞園「星さんも、西園寺さんも、いっときの感情に流されてそんな事言わないでください!茶柱さんのいう通り私達は仲間なんですから!」

    苗木「そうだよ!それに直ぐに助けが来る筈だよ」

    王馬「いや、それは無いんじゃないかなー?」

    苗木「え?」

    王馬「だって、超高校級の生徒が16人も、攫われた時の記憶も無いまま誘拐されてるんだよ。そんな所でヘマするとは俺は思わないけどね」

    苗木「でも、霧切さんや最原君だっているんだし」

    王馬「それなら何で最原ちゃん達を誘拐しないわけ?」

    苗木「それは…」

    王馬「理由は単純だよ。自信があるから、もしくはそれ自体がゲームなのかもしれないねー」

    朝日奈「助けが…来ない?じゃあ、私達どうなっちゃうの?」

    セレス「単純な話です。全員がミニゲームとやらを勝ち抜けば良いだけの事」

    西園寺「そんな、簡単に行くわけ!」

    苗木「──出来るよ。だってここに居るのは、あの希望ヶ峰学園の生徒なんだよ!」

    王馬「そうだそうだ!最悪苗木ちゃんの幸運で適当に決めて貰えば良いんだし!」

    苗木「僕はどっちかって言うと、不運…なんだけどね」

    九頭龍「それに、今提示されてるデメリットは負けた場合だけだ。下手にゲームから降りようとしたり、反逆の意思を示せばその時点でオシオキとやらで見せしめにされかねねーしな」

    西園寺「………」プルプル

    苗木「僕はさ、大した才能も無い、クジだけで選ばれたような人間だからさ。西園寺さん。力を貸してくれないかな?」

    西園寺「…………」

    苗木「ダメ…かな?」

    西園寺「……仕方ないなー、特別に苗木おにぃに力を貸してあげる。私は絶対に生き残って、また小泉おねぇに会うもん!」

    王馬「さ、西園寺ちゃん……!そ、それ……死亡フラグじゃーんッ!!」

    西園寺「ゲスウザタヌキチビは黙ってろ!」

    苗木(良かった。いつもの西園寺さんだ)

  8. 8 : : 2017/07/10(月) 22:35:25


    星「それで、どうするんだ?」

    ソニア「まずは【質問】。からですね」

    キーボ「こういう時は綺麗に二つに分けるべきです!正攻法として質問する毎に選択肢が半分になるようにするべきかと」

    朝日奈「そうだ!名前で分けてみるとかどう?五十音順にすれば綺麗に分けれるよ!」

    王馬「実は俺、本名は王馬大吉なんだ……嘘だけど」

    セレス「私はセレスティア・ルーデンベルクと申します。本当ですわ」

    白銀「…名前はやめた方が良いみたいだね」

    舞園「最初は男子女子で分けて見ませんか?身長や体重の中間では曖昧過ぎますが、性別だけは誤魔化しようが無いですし」

    九頭龍「それで良いんじゃねぇか?」

    白銀「地味にそれに賛成だよ」

    王馬「俺も異議なしだよ。で、次は何て質問するかだね。苗木ちゃんは黒幕のいる可能性が高いのはどっちだと思う?」

    苗木「そりゃあ、女子の方が多いんだし…可能性としては女子の方が高いと思うけど」

    苗木(僕自身裏切り者じゃないし、そう考えると6:9。この中に裏切り者が居るとは思いたくないけど…)

    王馬「じゃ、最初の質問はこうだよ。『裏切り者は男子ですか?』」

    苗木「『裏切り者は女子ですか?』じゃなくて?」

    王馬「にしし。そうだよー」

    セレス「私も賛成ですわ。そちらの方が確実です」

    苗木「確実って言っても、YES/NOだからそんなに違いはないんじゃ?」

    王馬「NOって言われるのが1番良いんだよ」

    セレス「ええ。先程の説明に嘘がなければ、NOと答えられる方が良いですわね」

    苗木「どうして?」

    王馬「運営は、裏切り者は1人とは言わなかったからね」

    苗木「あ!」

    王馬「ま、俺は1人と思ってるけどね。裏切り者が土壇場でそんな事言い出したら振り出しに戻っちゃうから、NOの確率が高い男子を選ぶべきだと思うよ」

    茶柱「どうせ、男死が裏切り者です。女子を攫うなんて男死の考えそうな事です!」

    花村「男子でも…僕は、良いよ」

    ソニア「どうして花村さんはそこで顔を赤くしているのですか?」

    アンジー「輝々は()っておいて、まずは質問って神様も言ってるよー」

    花村「え!?今!掘ってお───

    セレス「──では苗木君。質問をお願いして良いですか?」

    苗木「え?僕?」

    セレス「ええ。苗木君のお陰で、わたくし達は1つになる事が出来ました。それに西園寺さんとも仲直りする事が出来たので」

    西園寺「はー?仲直りした覚えないんだけど。そもそもあんた誰?知らない人なんだけどー」

    舞園「私も苗木君で良いと思います」

    九頭龍「誰がやっても同じだろ?テメーがちけーんだからさっさとすれば良いだろ」

    苗木「うん。分かった」



    僕は皆んなに見守られながら台座に近付き、ガベルを手に取る。

    苗木「じゃあ、言うよ?」


    周りのみんなに同意を促す。みんなは黙って頷いた。





    カンッ!





    苗木「裏切り者は男子ですか?」










    『NO』










    モニターに大きくそう映し出された。

  9. 9 : : 2017/07/10(月) 22:37:33



    茶柱「………」

    王馬「もしもーし、息してますかー?………し、死んでる!」

    ソニア「何と!事件は密室で起こったのですね!」

    王馬「ま、嘘だけどねー」

    ソニア「あらあら、驚いてしまいましたわ。茶柱さん、起きてくだ……死んでます!」

    苗木「!!」

    ソニア「嘘ですっ」

    苗木「(ホッ)」

    王馬「もー、何でソニアちゃんの発言は信じるのさー」

    茶柱「ハッ!私は一体何を!」

    王馬「裏切り者が女子だと確定し───」

    茶柱「んん!!良い朝です!!!!」

    王馬「時間が分からないから朝とは限らないよ。まあ、大きな収穫は裏切り者は女子だって決ま────」

    茶柱「キェェエエエエエエ!!!転子は気合十分です!!!!!」

    王馬「もう!何で邪魔するのさ!裏切り者だって疑いが掛けられちゃうよ!!」

    舞園「そうです。茶柱さん、落ち着いて下さい!」

    花村「ねえ、モニターに時間が書かれてるんだけど、あれって何かな?」

    言われてモニターを再び見る。



    『ファーストゲーム開始まであと59分』


    其処にはそう記されていた。

    九頭龍「文字通り、最初のミニゲームとやらが開始するまでの時間じゃねーのか?」

    苗木「うん。僕もそう思う」

    セレス「それではこの時間を有用に使わないといけませんね」

    王馬「じゃあ、先ずは男子女子で分かれて話し合おうか。勿論部屋は別々で」

    その意見に反対するもの居らず。女子は倉庫の中へ入って行った。



  10. 10 : : 2017/07/10(月) 22:38:09





    ◇◆◇



    【広間:男子】


    王馬「んじゃ、次の質問も決めておこうか」

    キーボ「何故ですか?質問できるのはミニゲームが終わった後の筈では?」

    星「脱落者が出た後に、裏切り者が主導権を握る可能性があるから。だな」

    王馬「そうそう。脱落者が出て、皆んなが取り乱してる内にいつの間にか主導権握られてたら嫌でしょ?ま、俺が阻止するんだけどね」

    王馬「けど、俺が脱落者になる可能性は無いわけじゃない。裏切り者の敵(こっち側)になった以上、勝つ為に最善は尽くすよ」

    葉隠「王馬っち。死亡フラグだべ」

    九頭龍「俺も王馬の意見に賛成だ。男女比もあるしな。女子(アイツら)だけが残った時、疑心暗鬼になっちまう」

    苗木「そういえば花村君は?」

    九頭龍「ああ。花村の奴なら女子の会議に混ざろうとして茶柱に半殺しにされた」

    苗木「!!」

    王馬「女子の会議を監視するってのは俺も考えたけど、敢えて泳がせて尻尾を出すのを待ったほうが良い筈だよ」

    苗木「そうだね。舞園さんやセレスさん達なら怪しい所を見逃さないと思うし」

    王馬「裏切り者に聞いたら情報を改竄される可能性があるからね。2人以上に聞くのは確かに確実だね」

    星「ハッ。あんた達は大した奴だぜ」

    王馬「で、何でキーボが居んの?」

    キーボ「それは、僕が男子だからで…」

    王馬「お前、性別鉄じゃん」

    キーボ「!!」

    王馬「…悪かったよキーボ。ちゃんと男子女子鉄屑で分かれろって言うべきだったな」

    キーボ「謝らないでください…。冷静になると、もの凄く悲しくなるので」

    王馬「もうっ張り合いがないなぁ!ロケットパンチの二つや三つ撃ち込んで来いよな!撃てないのは知ってるけどさ!」

    キーボ「腕は三本もありません!!」

    苗木(ツッコむ所、そこ?)

    僕らの会議は、泥舟の様に難航した。



    ◇◆◇



    【倉庫:女子】


    アンジー「裏切り者は私達の中にいる筈ないよー。だって神様がそう言ってるからねー」

    白銀「それは無いんじゃないかなー?それって運営が嘘をついてるわけだし、それじゃあゲームってやつが成立しないから」

    ソニア「そうですね。ルールが守られないゲームなど、まして運営側が守らないなど、ただのクソゲーです!」

    朝日奈「それで私達は何を話すの?」

    舞園「質問についてはおそらく苗木君達が考えてくれていると思います」

    セレス「確かにそうでしょうね。裏切り者が紛れている女子の案など通さない方が良いですし」

    舞園「だから、私達は他の事を考えませんか?」

    不二咲「他の事って?」

    舞園「何故、計3クラスのメンバーから私達が集められたのか、です」

    白銀「集められた…理由?」

    舞園「考えられるの可能性は二つです」

    舞園「集めた生徒に理由があるか、一つのクラスで集められない理由があるか。だと思います」

    西園寺「それって殆ど同じことなんじゃないの?」

    舞園「確かに、結果としては3クラスから集めた理由なので多少は似てるかもしれません」

    セレス「つまり、前者では不二咲さんとソニアさん、白銀さんを連れて来る必要があった。後者なら苗木君と霧切さんを一緒に連れてきてはいけない。という事ですね?あくまで一例ですが」

    舞園「そうですね。意図までは読めないんですけどね…。所で、何で霧切さんが例に出てきたんですか?」

    セレス「フフフッ。何となく、ですわ」



  11. 11 : : 2017/07/10(月) 22:39:12





    ◇◆◇



    それぞれの会議が終わった後、僕らは全員を広間に集めた後、特定の人物を呼び出し個別で話を聞いた。


    【倉庫】


    苗木「舞園さんとセレスさんに話を聞いてみたけど、特におかしい所は無かったよ」

    僕は舞園さんとセレスさん、王馬君が白銀さんと不二咲さんだ。

    個別に聞いた理由は片方が倉庫にいない間。他の人と話したり、周りの様子を伺ったりする為。

    これは王馬君の提案だった。

    王馬「俺も聞いてみたんだけど、食い違いは無かったね」

    最後に話を聞いたのは不二咲さん。つまり、王馬君と不二咲さんが先程まで倉庫に居たわけだけど──。

    苗木「…何で洋服がはだけてるの?」

    王馬「激しかったからねー」

    苗木「えっ、激しいって?何が?」

    王馬「もう!苗木ちゃんデリカシーないよ!言えるわけなぁいじゃーん!」

    苗木「う、嘘なんだよね?」

    王馬「…………」

    王馬「さっ、戻ろうか。そろそろ質問について説明しないといけないから」

    苗木「そうだね。でも、あれで大丈夫かな?所でさっきのは嘘なんだよね?」

    王馬「大丈夫大丈夫!苗木ちゃんは心配性だなー。男ならどっしり構えないと!…あれ、俺鍵閉めてきたっけ?」

    苗木「王馬くんも、相変わらずだね…所でさっきのは嘘なんだよね?」

    王馬「苗木ちゃん、変わった語尾だね」

    苗木「嘘だとは思ってるんだけどね…一応確認したくて」

    王馬「安心してよ。不二咲ちゃんのは当然嘘だからね。キノピオ」

    苗木「…王馬君も変わった口癖だね」

    僕は王馬くんの後に続いて倉庫を出た。







    ◇◆◇



    【広間】



    苗木「みんな。待たせてごめん」


    アンジー「アンジー達を集めたって事はー、質問が決まったんだよねー?」


    キーボ「ええ、その通りです。質問の内容はこうです」




    『裏切り者は生き残りの中にいますか?』




    セレス「これだけ…ですか?」

    王馬「うん。そうだよー」

    九頭龍「質問については俺らがやる。言い方でニュアンスが変わっちまうかもしれねぇなからな」

    星「ま、これが気に食わねぇなら勝手にすることだ。ただし、俺らから質問権を奪った時点で裏切り者認定させてもらうぜ」

    西園寺「あーもう、頼りにならないなぁ。此処は馬鹿の見本市なのかな?」

    舞園「でも、何か考えがあってのものかもしれませんし」

    王馬「『私が作りました』」

    王馬君は腕で作った輪の中から顔を出す。

    白銀「地味に野菜に貼られる笑顔の老夫婦を意識してる発言だよね…」

    茶柱「やはり男死!頭に脳がついていない様ですね」

    セレス「ですが、殿方の考えを無下にするのも宜しくないですね。私もその案に乗らせてもらうとしましょう」

    茶柱「………」

    不二咲「僕も、その案で良いと思うよ」

    ソニア「はい!九頭龍さん達が言うなら間違いありません!」

    茶柱「転子もそう思います!」

    苗木(………折れた)



    花村「それにしても、ミニゲームについての説明はまだなのかな?もう時間になっちゃうよ」

    キーボ「確かに、開始までの時間は既に5分を切っていますね」

    不二咲「開始までってわざわざ書いてるから、時間が来た後に説明とは考えにくいもんね…」

    白銀「でも───

    白銀さんが何か言いかけたその時。
  12. 12 : : 2017/07/10(月) 22:41:23


    モノクマ『えー、開始まで残り3分だし、僕もカップ麺にお湯を入れ終わったから、最初にやってもらうゲームの紹介を始めちゃいましょう!』


    モニターに再び光が灯った。


    白銀「私の間が悪いのかな…」


    モノクマ『オマエラにやってもらうミニゲーム。その名も「ハンドレッド鬼ごっこ」ー』

    モノクマ『ルールは至って簡単!ステージ内に居る、全身真っ黒の人間を手でタッチすれば良いだけ!』

    モノクマ『便宜上シャドウって呼ぶけど、身体のどこでも良いから触る事。これがゲームクリアの条件だよ』

    九頭龍「ゲームクリアすると、どうなんだ?」

    モノクマ『なんと!このゲーム自体から脱出!つまり生還する事が出来るクマ』

    西園寺「!」

    モノクマ『こんなサービスゲーム今後無いよ』

    モノクマ『早い者勝ち!どんどんクリアしちゃってね!」

    モノクマ『じゃあ、そろそろ時間なんで転送するねー』





    僕らの足元が輝きだす。




    苗木「えっ…?」




    モノクマ「えーっ。では、ファーストゲーム……始め!!」




    光が僕を飲み込む。



    僕は激しい光に負け、目を瞑る。



    浮遊感だけが僕を支配した。















    ファーストゲーム

    【ハンドレッド鬼ごっこ】




  13. 13 : : 2017/07/10(月) 22:42:25




    ◇◆◇


    【森】


    目を開くと眩しい光と、青々と茂った木々が、僕の視界に映り込んだ。

    苗木「ここは…?」

    星「始まったみたいだな」

    僕の直ぐ横で彼は言う。周りを見渡すが、他に誰も居ない。

    苗木「星くん!他のみんなは?」

    星「どうやら散り散りにされたらしい。それよりアンタ違和感に気付かないか?」

    そう言われて自身の手に目を向ける。

    苗木「いつの間に腕時計が…」

    赤く刻まれた文字が2:00から1:59に変わる。

    苗木「これがタイムリミットみたいだね」

    星「そうみたいだな」

    苗木「………」

    星「どうした?考え事か?」

    苗木「このゲームは罠な気がするんだ」

    星「罠…か。確かにこのゲームは文面だけを見れば簡単過ぎるが…」

    苗木「あはは…、考えすぎかな?」

    星「いや、考え過ぎたとしても杞憂に終わればそれで良い。本当に恐ろしいのは何の警戒もせずに不測の事態に陥ることだからな」

    星「それで、聞かせてくれるんだろう?何でこのゲームを罠って思ったかをな」

    苗木「うん。まずルール説明のタイミングだよ」

    星「確か、開始の直前だったな」

    苗木「時間を与えず。別々の場所からゲームを開始させる事によって、僕らが相談する時間を奪った」

    星「だが、運営はルールで此方へ危害が加えられない。個人で挑むにしても危険は無いんじゃないのか?」

    苗木「…モノクマはシャドウの数を言わなかったんだ」

    星「ハンドレッド…つまり100人居るんじゃないのか?」

    苗木「そうだと…良いのかな」

    星「成る程な。数を正確に伝えない事で早い者勝ちの状況を作り出そうって事か」

    苗木「うん」

    星「だが、今の話を聞いただけじゃ俺には罠とは考えにくいな。初対面の人間ならともかく、見知った奴らで疑心暗鬼にはならないと思うがな」

    苗木「罠だと思う理由はもう一つあるんだ」



















    王馬「このミニゲームは簡単過ぎるんだ」

    九頭龍「簡単過ぎるから罠?何言ってんだオメーはよ」

    王馬「裏切り者を告発するゲームはさ、候補が残り2人になった時点で俺らの勝ちが決まるんだよ。AとBが残ったら、AがBを告発すれば良いんだから」

    九頭龍「確かにな。もしそれでBが裏切り者ならそれでゲーム終了。Aがオシオキになった場合はAが裏切り者。その後に告発すれば良いわけだ」

    王馬「そういう事。で、容疑者を2人まで絞るにはこのゲームを抜いて最短でもう一個ミニゲームをクリアしないといけないんだよね」

    九頭龍「このゲームは実質無いようなものだからなぁ、1つ終わらせれば良いって事か」

    王馬「それが可笑しいんだよねー」

    九頭龍「何が可笑しいってんだ?クリアするのが簡単だからか?」

    王馬「そうだよ。簡単過ぎるんだよ。まるで別の意図があるみたいに。それか、絶対に裏切り者探し(ゲーム)に負けない自信があるのか」




















    アンジー「でもでもー、参加者の人数を減らすのが目的って事もありえるんじゃ無いのー?ねぇどうしてー?」

    セレス「簡単な事ですわ。人数を減らすのが目的なら、わざわざ16人も集める必要が無いでしょう」

    アンジー「あー、なるなるー!」




  14. 14 : : 2017/07/10(月) 22:46:54




    ◇◆◇




    朝日奈「はぁ…何でアンタと2人っきりなんだろ」

    葉隠「何で溜め息ついてんだ?」

    朝日奈「アンタと2人っきりだからだよ。さっき言ったじゃん。暫く歩き回ったけど誰とも会えないし…」

    葉隠「フン、俺だって苗木っちと一緒の方が良かったべ。だって朝日奈っち、裏切り者の可能性があるからな」

    朝日奈「私は違うよ!絶対に違う!」

    葉隠「どうだかなぁ。俺の占いは三割当たる」

    朝日奈「占ってないし、そもそも7割外れるなら当てにならないから」

    葉隠「俺の占いでは犯人は同じクラスの人間だ!」

    朝日奈「それ、33%じゃん。やっぱり当てにならない」

    葉隠「ヒデー事言うなぁ、当たってるかもしれねぇだろ!?」

    朝日奈「かも、って言ってる時点で信じられないよ…、葉隠!あれ!」スッ

    葉隠「ん?」

    朝日奈が指差す方に目を向けると、木の無い拓けた空間に、全身真っ黒な人間がいた。

    フォルムだけ見れば人間だが特徴は無く、マネキンに色を塗ったような姿。

    葉隠「あ、あれをタッチすれば生還出来るんだよな?」

    朝日奈「そうだけど、もう少し様子を見た方が…」

    葉隠「良いや、俺は行く!早い者勝ちだ!」タッ‼︎

    葉隠はシャドウへ向け、一直線に走り出した。

    朝日奈「待って葉隠!様子がおかしい…!」

    葉隠「聞かねーべ!俺を出し抜こうってったって、そうはいかねー!」

    シャドウ「──」

    シャドウが葉隠の方へ向く。



    葉隠「ターーーーーッチッ!!」



    葉隠はそう言いながらてを伸ばす────が、言葉通りには事は進まず。無警戒で伸ばした葉隠の右手は、ポトリと地面に落ちた。


    シャドウ「──」


    シャドウの右手に持っていた刀によって斬り落とされて。


    刀は死角にあったため、2人はシャドウが振り返るまでそれに気付かなかった。


    傷口から、鮮血が溢れだす。



    葉隠「あ゛ァァァァァァァ!!!!!手がァァァァァァァっ!!!!!!!!!!俺の手゛がァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」




    朝日奈(何で?…それよりも逃げないと…!でも、葉隠が…)

    ルール通りならば運営は危害を加えられない筈。

    何かが起こっている。朝日奈でもそれは分かった。

    だが、考える時間がなかった。逃げるor立ち向かう。天秤が傾いたのは。

    朝日奈「葉隠ッ!!!!!!」

    朝日奈はシャドウと葉隠目掛け、駆け出す。

    シャドウは危険。それも分かっていた。

    でも、何よりも危険なのは右手を失った葉隠自身なのだから。


    シャドウが静かに刀を構える。


    朝日奈とシャドウまでの距離、およそ5メートル。


    衝突するまであと僅か。


    朝日奈「っっ!!!!」


    シャドウ「───」


    朝日奈は具現化した死へと脚を踏み───



    「キェエエエエエエエ!!!!!!!!!」



    ──その時、叫び声にも似た掛け声が森に響く。


    シャドウ「………」タッ‼︎


    刺客の登場で、シャドウは三人から距離を取る。


    葉隠康弘。朝日奈葵。そして


    茶柱「茶柱転子。女子のピンチの波動を感じて只今参上しました!」

  15. 15 : : 2017/07/10(月) 22:48:40





    茶柱はシャドウと朝日奈、葉隠を交互に見た後。

    茶柱「男死は忌むべきものですが、手を切り落とすのは些かやりすぎではないですか?痴漢でもされましたか?」

    不思議そうに首を傾げた。

    朝日奈「わ、私じゃないよ!」

    茶柱「そうでしたか。では、やはりあの日本刀を持った方が…」

    朝日奈「うん、そうなんだけど…葉隠が──」

    葉隠「あ゛ァァァ……手゛が、俺のォォオ、手が…ァァァ」

    無い右手を抑えた葉隠がその場でのたうち回る。

    茶柱「……」

    茶柱はリボンを1つ解くと朝日奈に手渡した。

    茶柱「これを葉隠さんの腕にキツく結んで、お二人は安全な所まで逃げてください」

    朝日奈「そんな…茶柱ちゃんは?」

    茶柱「ネオ合気道は木刀まではOKですので!早く行ってください!!!」

    朝日奈「で、でも!!」

    茶柱「早く!!」

    朝日奈「………ごめん。必ず戻って来るから…」

    受け取ったリボンで葉隠の腕を縛り、朝日奈は葉隠を背負って駆け出した。

    茶柱「謝ることじゃないです。このくらいお茶の子さいさいですから、転子を信じて、どうか戻って来ないでください」

    それだけ言うと茶柱はシャドウに左手を突き出しネオ合気道の構えを取る。

    茶柱「だけど、別に倒してしまっても構わないんですよね!!」







    ◇◆◇



    キーボ「…………」

    王馬「あり?キー坊じゃん。体操座りして何してんの?充電切れ?」

    キーボ「違います。遭難した時は動かないのが安全だと聞いたので」

    九頭龍「…これは別に遭難じゃねーだろ。意味あんのか?」

    キーボ「ですが、こうやって合流出来ましたし。さあ早くシャドウをタッチしに行きましょう!」

    王馬「また質問しないとダメ?」

    九頭龍「………頼む」






    ◇◆◇



    茶柱「ぐっ…」

    刀を持ったシャドウに、茶柱は劣勢を強いられていた。

    茶柱(木刀とは違い真剣は厳しいですね。刃で受けられただけで大怪我してしまいます)

    痛々しい生傷だけが、茶柱だけに増えていく。

    茶柱(まさか、転子が一撃も入れられないとは……──っ!)タッ

    ブンッ!

    切っ先が届くギリギリで振るわれる刀を茶柱はステップを活用しながら躱す。

    茶柱(危なかった…ネオ合気道流歩行術。輪廻が無ければ転子は既に立っていなかったかもしれませんね)

    そのフットワークがボクシングの技術である事を、茶柱は知らなかった。

    茶柱(隙が無さすぎます。反撃の糸口すら掴めま──縦の大振り…!?)

    痺れを切らしたのか、小技で攻めて来ていたシャドウが刀を大きく振るう。

    茶柱(避けて一撃を叩き込む────


    斜め後ろへ飛ぼうとした。のだが。


    ──ズルッ!


    血液で出来た水溜りに脚を取られる。

    茶柱「しまっ──」ガク

    右膝は曲がり、身体は右に沈む。故に跳べない。

    茶柱「───てない!!」タッ‼︎

    茶柱は滑らした右脚では無く、左脚で強引に地面を蹴る。

    斜め後ろでは無く、右に転がるように。

    シャドウ「──」スッ

    だが、シャドウはそれを見て縦に振り下ろす刀を肘をたたみ突きに切り替えた。

    冷静で冷徹な。一撃。

    ザクッ──!!

    茶柱「────ッ!!!!!」

    シャドウの一太刀は、左膝に深々と突き刺さった。



    鮮血が、辺りに散る。


    茶柱( )





    茶柱「ぁぁっ…っ………アアアア!!!!」

    痛みでショートしそうな脳を、声を出す事で誤魔化し。茶柱はシャドウへ手を伸ばす。

    茶柱(時間は稼ぎました…触れば終われる…)

    それを見てシャドウは刀を引き抜きながら後方へ跳んだ。

    茶柱(追…撃はして来ない…カウンターを警戒してですね。お陰で脚だけで済みました)

    茶柱(ですが、動けませんね…)

    茶柱は諦めた。

    立ち向かう事も逃げる事も。

    立ち上がる事も。目を開く事すら放棄した。

    シャドウ「───」

    ───ブンッ!

    ペタリと座り込んだ茶柱へ、容赦無く刀が振るわれる。


    茶柱(夢野さん。ごめんなさい、転子はどうやらここまでのようです…)





    ドガッ!!!




    刃は茶柱に届かず。鈍い音だけが茶柱の耳に届く。

    茶柱「え…?」

    茶柱が目を開く。そこにシャドウの姿は無く。代わりに小さなシルエットがあった。

    星「相手は得物を持ってるんだ、男に助けられるってのは癪かもしれないが我慢してくれよ」

    蹴り飛ばしたシャドウを見ながら星は言う。

    茶柱「星…さん…」

    星は、シャドウを引きつけるようにして茶柱との距離を取る。





    そして、遅れて苗木誠()がやって来る。


  16. 16 : : 2017/07/10(月) 22:49:49



    苗木「大丈夫?!茶柱さん!!」

    茶柱「はい。命には別状ないかと…」

    その場に座り込んだまま茶柱さんは言う。

    生々しい傷痕から、大量の血液が溢れ出していた。

    茶柱「アレは危険です。星さんだけでは」

    茶柱さんは手と、左脚を使って立ち上がろうとするが、震えた手足ではそれは叶わず、彼女はそのままドシャリと地に伏した。

    苗木「………」

    立たないのではなく立てないのか。

    苗木「茶柱さんは酷い怪我なんだ…休んでて」

    茶柱「でも!それでは星さんが!」

    苗木「うん。分かってる。だから、僕が行く」

    茶柱「ハァ?馬鹿じゃないんですか?苗木さんが行ったところで直ぐに死ぬのがオチです!いえ、オチDeath!」

    苗木「そうとも限らないよ…。だって、僕は───超高校級の幸運なんだから」

    誰かが言った。ピンチの時ほど、ふてぶてしく笑えって。

    茶柱(…普段、不運だ。ってヘラヘラしてる人が何を…膝だって震えてるのに)

    苗木「大丈夫。きっと、この作戦は上手くいく」

    拳を握りしめ、僕は言う。

    茶柱「…………男死が死ねば、舞園さんに迫る魔の手が減るので、どうぞご自由に」

    苗木「うん」

    茶柱「でも──」

    苗木「……でも?」

    ポツリと、そんな逆説の言葉を置いて、彼女はこう続けた。

    茶柱「──貴方が死んだら、舞園さんは悲しみます。だから、死なないでください」

    苗木「約束するよ」

    僕は上手く笑えていただろうか?

    間違い無く膝は笑っているが、前進めば、笑いも止まった。

    苗木(行くぞッ!!)

    シャドウの後方から迫る。

    忍び足では無く、駆け足で!!

    苗木「…星君!!!!」

    星(ああ、分かっているぜ)

    シャドウ「……」

    シャドウが此方へ視線だけ向ける。

    その瞬間、手に持った砂を投げつける。

    相手の顔へ向け投げられた砂は背の低い星君には当たらない。

    あとはシャドウの頭を超えるイメージで──

    苗木「跳ぶッ!!」

    茶柱(刀を持った相手に飛びかかるって正気ですか!?)

    顔を庇うように構えた腕、刀を持っている為振り下ろされれば死は免れない。

    シャドウ「──」

    星「良いのか?切っ先を俺に定めなくて」

    帽子を深く被り、状態を低くしたまま、星君はシャドウに迫る。


    シャドウ「………」タッ‼︎


    それを見たシャドウは日本刀を振るのをやめ、僕らから距離を取り、そのまま雑木林の中へ消えた。


    茶柱「退いた?」

    星「これで分かったことがあるだろう。タッチされたら終わりなのさ、奴さんはな」

    茶柱「苗木さんは死ぬつもりだったんですか?!あんな無防備に懐に飛び込んで!」

    星「あれは俺の指示だ」

    星「砂を投げられれば誰だって手を顔に近付けるだろ?その状態じゃ刀を上から振り下ろすことしか出来ない」

    茶柱「それでは尚更跳んだ意味が分かりません」

    星「苗木に向けて、刀を振るえば背の低い俺に対して無防備になる」

    茶柱「しかし、下手をしたら死んでいたんですよ!」

    苗木「それは…『あんたに危機が迫った時は、必ず俺がなんとかしてやる』って言われたから」

    茶柱「ハァ?!ただの発言ですよ!?それだけであんな無茶を!?」

    苗木「それは…、星君を信じてたから…かな」

    星「フン。嬉しい事を言ってくれるぜ。あんたが俺を信じて決死の覚悟を見せてくれなければ、シャドウも退かなかったさ」

    苗木「そうかもしれないね…退いてくれて良かったよ」

    茶柱「でも、勇気と無謀は違うのは忘れてはいけません!」

    苗木「うん、分かった」
  17. 17 : : 2017/07/10(月) 22:50:32



    星「それはともかく、そろそろ此処を離れた方が良いかもしれねーな。俺は見ての通りだから無理だが…苗木背負えるか?」

    茶柱さんを一瞥した後、星君は言う。

    苗木「問題ないと思うよ」

    茶柱「嫌です!そんな屈辱を男死から受ける訳にはいきません!」

    それに対し彼女は両手を前に突き出しながら拒んだ。

    苗木「屈辱なんかじゃないよ!僕達は仲間なんだからさ、頼ってよ」

    茶柱「どうせ甘い言葉を使って、転子の胸の感触を愉しむ腹積もりでしょう!」

    苗木「こんな非常事態にそんな事考えないよ!」

    茶柱「おおっと、それ以上近付くと舌を噛み切りますよ。苗木さんの!」ガルル

    苗木「僕殺されちゃうの!?」

    星「…茶柱。本当は分かってるんだろ?苗木が本心からそう言ってるってよ」

    茶柱「ぐっ…」

    星「それに此処は危険だ。いつシャドウが戻って来るか分からないしな。足手纏いになるなら置いていくぜ?」

    苗木「星君!そんな言い方は!」

    茶柱「とにかく、転子はテコでもここから動きません!!男死は何処か遠くへ行って下さい!!」

    腕を組み、鼻息を荒くしながら彼女は言う。その意思はとても固いらしい。

    苗木「…分かったよ」

    茶柱「おや、男死にしては中々物分かりが良いで──」

    苗木「じゃあ僕もここに残る」

    茶柱「……え?」

    星「アンタ…正気か?」

    苗木「うん」

    茶柱「………」

    星「………」

    苗木「こんな所に怪我をした女の子一人置いていけないよ」

    星「それは正しいんだが…」チラッ

    茶柱「………っ」

    茶柱「……………っ」

    茶柱「………………………っ」

    星(まさか、苗木が残るなんて言い出すとは思わなかったんだな…やれやれ)

    星「…苗木。もう一回言ってやってくれ」

    苗木「僕もここに残る!」

    星「…まだまだだな」

    苗木「…?」

    星「それの1つ前だ」

    苗木「!──茶柱さん。背中を貸すよ」

    茶柱「…………はい。断腸の思いで、お借りします」

    苗木「そこまで嫌なの!?」

    星「茶柱は、俺たちの足を引っ張る事を嫌ったのさ」

    茶柱「……」

    星「苗木、茶柱。自分を犠牲にして誰かを救おうとするのは決して美徳じゃねー。それはただの自己満足だ、絶対に忘れるなよ」

    苗木「うん」

    茶柱「はい…」

    星(それが茶柱の心を動かしたのもまた事実なんだがな。説教とは、俺もクールじゃねえな)



    苗木「よっと…」



    茶柱「苗木さん……その…重くないですか?」

    苗木「ぜ、全然大丈夫だよ」

    茶柱「悔やまれます。転子が万全の状態なら、苗木さんなど投げ飛ばした後一瞬で極めれるのに」

    苗木(え?何か間違えた?)

    茶柱「ああ、これは平常運転なので気にしないでください」

    こうして、紆余曲折あったものの、僕らは前に進みだした。


  18. 18 : : 2017/07/10(月) 22:51:25





    苗木「変な質問だけど、茶柱さんの両足、それはシャドウにやられたんだよね?」

    茶柱「はい、その通りです。運営が自ら提示したルールに従わないなんて、滅茶苦茶です」

    苗木「葉隠君の手もそうなんだよね…」

    茶柱「朝日奈さん達に会ったんですか?」

    苗木「うん。朝日奈さんに言われて僕達は来たんだよ、端的しか聞けなかったけどね」

    星「日本刀を持ったシャドウに茶柱が襲われてるって聞いた直後、あんたが飛び出して行ったからな」

    苗木「葉隠君の手と、泣いてる朝日奈さんを見たらね。茶柱さんが危ない事は想像ついたから…、でも、星君にすぐ抜かれるんだけどね」

    星「あんた1人に行かせる事の方がよっぽど危険だと思ったからな」

    苗木「あはは、ありがとう。それにしても…シャドウが僕らに攻撃をしてくるなんて…」

    茶柱「ルールを守ってないだけでしょうか…」

    星「それも考えられるな。あんたはどう思う」

    僕の後方で星君は言う。

    茶柱「!ちょっと待ってください星さん!その位置!転子のパンツを見ようとしてるのではないですか?!」

    星「悪りぃが手負いの女を見て興奮する趣味はないぜ」

    苗木「僕も、星君はそう言う事するとは思えないけど…気になるならブレザーを腰に縛る?」

    茶柱「いえ、大丈夫です。お二人の、言う通りです………話を脱線させてしまいましたね」

    星「フッ。かまわねぇぜ。俺ももう少し身長があれば誤解を生まなくて済むんだがな…。で、苗木、あんたはシャドウの妨害をどう思う?」

    苗木「裏切り者…なのかもしれない」

    星「ルール通りならそれが濃厚だな。だが、あれ程の太刀筋、並みの者が出来るとは思わねぇがな」

    茶柱「転子もそれに同意です。あれは達人の域でした」

    星「いや、そういう意味で言った訳じゃなかったんだがな。まあ、間違ってはいないが」

    苗木「じゃあ、どう意味なの?」


    星「あれは…人殺しの太刀筋だ」


    苗木「人殺し…?それって?」

    星「いやあまり気にしなくて良い。っと、忘れ物をしちまったみたいだ」

    苗木「忘れ物?」

    星「ああ。帽子の片側だ」

    言われてみれば星君の帽子の角が片方無くなっていることに気付く。恐らくシャドウと交戦している時に切られたのだろう。

    苗木「別にそれくらいは…」

    星「あれは昔の女から貰った大切なモンでな。切れ端でも持っておきたいのさ」

    茶柱「未練タラタラですね」

    星「もう二度と会えねーからな。形のあるモンは残しておきたいだ」

    茶柱「…すいません。そう言う事情が有ったんですね」

    星「いや、俺もクールじゃなかった。あんたにとっちゃ知り得ない事だからな、悪かったよ」

    星「悪いがアンタらは先に行っててくれねーか?直ぐに戻ってくるからよ」

    苗木「…分かった」

    星君は駆け足で道無き道を戻っていった。


  19. 19 : : 2017/07/10(月) 22:52:14









    ◇◆◇



    苗木達の姿が見えなくなった頃に、星は駆け足をやめ、地面を蹴るようにして歩き出した。

    星(…砂の上なら楽に消せたんだが、流石に草の上に付いた血痕は消しきれねぇな──)


    ────ガサゴソッ


    星(足音か?)


    物音に反応し、星は顔を上げる。


    星「…よお。随分な歓迎だな」


    そこに居たのは三体のシャドウ


    日本刀のシャドウ「──」


    星「なんだ?来ないのか?」


    星(いや、何かを話してるのか)


    星「俺はここで逃げ出して、守れなかったと月に向かって嘆くつもりはねーぜ?」


    被って居た帽子を外し、投げ捨てる。


    星「だけど勘違いするな。俺は死ぬつもりはねーからな。俺はあいつらを見て、もう少し生きたくなった。あいつらの事を見届けたくなっちまったんだ」


    1人は日本刀。


    1人は大型のナイフ。


    1人は筋骨隆々の肉体。


    星(苗木、茶柱、あんたらは大馬鹿どもだ)



    その3人は星を取り囲むためにジリジリと動き。



    一斉に襲い掛かる。




    星(今更真っ当な生き方が出来るとも、その権利があるとも思ってもねーが、真っ当な生き方をしている大馬鹿共を守る事は許してくれねーか?)


    星(いや、聞くまでもねーな。お前は許してくれるし、微笑んでくれる筈だ。なあ?───。)




  20. 20 : : 2017/07/10(月) 22:54:10






    ◇◆◇




    苗木「ここら辺は、草木が高いし、ここで少し休もうか…」

    茶柱「藪の中なら見つかりにくいですしね。それに──」

    苗木「うん。あんまり遠くに行き過ぎると星君と合流出来なくなるから」

    僕は衝撃を与えないようにゆっくりと茶柱さんを木陰の元へ降ろした。

    腕時計型の端末を見るとあれから30分は経過している。

    苗木「………」

    星君は、未だ僕らに追いついてはいない。

    苗木「もしかして、何かあったんじゃ…」

    残り49分と記された赤い文字が焦燥感を煽る。

    茶柱「星さん程の実力者が、そう簡単にやられるとは思いません…きっと道に迷われてしまっているだけです!」

    力強い声で彼女は言った。

    苗木「そうだと…良いんだけど」

    茶柱「案外、シャドウを捕まえて生還してるかもしれませんよ」

    苗木「…いや、それは無いと思う」

    茶柱「何故ですか?転子には可能だと思いますが」

    不思議そうにしながら、彼女は首をひねる。

    苗木「可能不可能なら可能だと思うけど、星君は、絶対に抜け駆けなんて考える人じゃないから」

    茶柱「確かにその通りですね。でしたら、タイムリミットが来た後、また会える筈です」

    苗木「うん。僕も、そう信じて──ムゴっ?????」

    茶柱さんに突然口を塞がれる。

    僕は殺されるのだろうか。

    茶柱「…何か音がしませんか?」ボソッ

    どうやらそういう訳では無かったようで、彼女は囁くようにそう言った。

    苗木(音…?)

    耳を澄ませた。

    風が木々を揺らす音とは別に。

    ガサゴソと、草木を掻き分ける音が微かに響く。

    苗木「僕見て来るよ…」

    茶柱「…分かりました。気をつけて下さい」

    僕の口に当てた手を地面で拭いながら、彼女は言った。


    苗木(…………行こう)


    音の発生源に近付く。物音をたてないように、慎重に。


    苗木(星…君?)


    覗き込んだ藪の先にいたのは。








    シャドウ「………」



    全身真っ黒の人型の物体。





    苗木「っ!!」

    目らしきモノは無いのだが、彼方も此方に気付いたようで、身体が軽く跳ねた。

    そして。

    シャドウ「…!」タッ‼︎

    逃げ出した。

    苗木「…え?」

    日本刀は持っていなかった為、先程のシャドウとは違うのだろうか?

    いや、そもそもあれが本来のシャドウなのだろうか?

    茶柱「苗木さん。大丈夫ですか?」

    反応のない僕を心配してか、這うように彼女は僕の様子を伺いに来た。

    苗木「大丈夫だけど、ここから離れた方が良いかもしれない」

    茶柱「何かあったんですか?」

    苗木「シャドウが居たんだ。…僕を見た瞬間逃げ出したけど」

    茶柱「!!」

    苗木「でも星君の事もあるし、待つべき…なのかな?」

    茶柱「いえ、ここまで来たら、このゲームが終わってから合流をする事だけを考えましょう」

    苗木「確かにそうだけど…」

    茶柱さんの提案が正しいのは分かっている。だけど、僕は決断出来ずにいた。

    茶柱「転子と苗木さんがやられたら本末転倒です」

    苗木「…それは…」

    茶柱「ウジウジした男死程、見ていて気分を害すものは無いですね。略してウジム死とお呼びしましょう」

    苗木「ムはどこから?」

    茶柱「確かにこの状況ですし、不安になるのも分かります。ですが今は星さんを信じましょう」

    またも力強い声で彼女は言う。

    茶柱「転子を助ける時、星さんを信じたのでしょう?でしたら最後まで信じてあげてください」

    それが僕を鼓舞する為だと分かり、僕は首を縦に振った。

    苗木「分かった。行こう」







    ◇◆◇



    苗木「………」

    茶柱「………」

    場所を移し、タイムリミットを待つ。


    息を殺し、気配を殺し。


    このゲームが終わればまた星君に合流出来ると信じて。


    そして時は流れその時が来た。


    身体が薄い光に包まれ、転送が始まる。


    苗木「…っ」


    眩い光で目を閉じる。


    浮遊感と光が消え、再び目を開くと最初のホールに戻ってきていた。






    ◇◆◇



    【広間】


    苗木「……」


    辺りを見渡す。


    最初の部屋に集まった希望ヶ峰学園の生徒は、僕を含めて12人までに減っていた。


    そこに星君の姿は無かった。


    願いとは裏腹に。


    希望とは絶望に。



    苗木「……………」



  21. 21 : : 2017/07/10(月) 22:57:19





    舞園「葉隠君?!茶柱さん!?どうしたんですかその怪我は…!!」


    九頭龍「ひでぇ怪我だ!倉庫に色々あった筈だから待ってろ」


    王馬「ねぇねぇ、他のみんなはー?」


    西園寺「はぁ?シャドウってヤツをタッチしてゲーム抜け出したに決まってんじゃん!そんなのも分かんないの?」


    九頭龍「ちんたら口動かしてんじゃねぇ!誰でも良いから、ありったけの水と応急道具持ってこい!!!!!」


    朝日奈「うん!」









    苗木「………」


    まるで世界が止まっているかのようだった。


    いや、言葉が僕をすり抜けて行くだけで。世界は動いている。動かないのは僕だけ。


    白銀「苗木君も凄い血!!大丈夫なの?!」

    白銀さんが立ち尽くしている僕へ駆け寄り、声を掛ける。

    苗木「これは…茶柱さんを背負ってた時に付いただけだから…」

    白銀「そっか、それなら良かった…。いきなりあんな密林に飛ばされたら地味に怪我もするよね…」

    苗木「…あのさ」

    脈絡は無いのだが、僕は彼女にこんな事を聞いた。

    彼女が、星君と同じクラスで、衣装について詳しいと思った(超高校級のコスプレイヤー)だから。

    苗木「白銀さん…星君の帽子の事、何か知ってる?」

    白銀「え…う、うん。知ってるよ」

    彼女は僕の問い掛けに対し、知っていると答え、こう続けた。

    白銀「星君のお気に入りのブランドらしいね、同じ物のスペアいっぱい持ってるんだって」

    苗木「…そっか」

    形見。あれは嘘だったのか。

    何故僕は、彼の嘘に気付けなかったのだろう。

    白銀「いきなりどうしたの?でも、苗木君なら地味に似合うと思うよ」

    苗木「そう…かな…」

    白銀「星君は居ないから先にゲームから脱出してるみたいだし、苗木君もクリアしてゲームから脱出したら、頼んでみるのはどうかな?」

    星君がゲームから抜け出した?僕はそうとは思えなかった。

    彼が手負いの茶柱さんとそれを背負った僕を置いてゲームを抜け出すとはどうしても思えない。

    だけど、僕は僕自身に嘘をついた。

    苗木「うん…そうしてみるよ」













    少し浮かれていた。非日常に心躍らせていた。



    ゲームなのだと高を括って、少し褒められれば調子に乗って。



    忘れてはいけなかった。目を背けてはいけなかった。






    これは、ゲームはゲームでも、デスゲーム。






    handRED鬼ごっこ 終


    残り12人


  22. 22 : : 2017/07/10(月) 23:01:55






    ◇◆◇



    九頭龍「まあ、不幸中の幸いだな。ガムテープと接着剤で止血よりはよっぽどマシだろ」

    九頭龍「で?誰か説明出来んのか?この状況をよぉ」

    茶柱さんと意識を失った葉隠君の処置を終え、九頭龍君はホールに響き渡る声でそう言った。

    苗木「…シャドウにやられたんだ。葉隠君も、茶柱さんも」

    アンジー「誠、嘘はダメだよー。ルールで危害を加えないって言ってたからねー」

    朝日奈「ううん。苗木の言う通りだよ。葉隠は私の目の前で右腕を…斬られ…たから」

    キーボ「では!運営側がルールを守って居ないと言う事ですか!?」

    王馬「それか、シャドウに扮した裏切り者の仕業かもねー。俺たちバラバラにされてたし」

    西園寺「ちょ、ちょっと待ってよ!!」

    西園寺さんが声を荒げる。

    きっと、彼女も気付いたのだろう。

    西園寺「これじゃあ誰が生還して誰が脱落したか分かんないじゃん!」

    王馬「うんうん。確かにそれは困った事だねー」

    西園寺「はぁ?ゲスウザタヌキチビ、何で他人事なんだよ」

    キーボ「一旦、アリバイを整理して見ませんか?そこから見えてくる事もあるかもしれませんし」

    王馬「そうだね。じゃあ、1人ずつ言って行こうか」


  23. 23 : : 2017/07/10(月) 23:03:26



    朝日奈「私は葉隠とだったよ。襲われてる時に茶柱ちゃんが助けに来てくれたんだ…」

    舞園「私は1人でした…、心細かったので森の中を歩き回りましたが、誰とも会いませんでした」

    西園寺「私もだよ。心細くは無かったけど、早くクリアしちゃおうって思ってねー」

    白銀「私もだよ。合流したいって気持ちもあったけどね」

    アンジー「アンジーは、セレスと一緒だったよー。あとねー、神様!」

    セレス「そういう事ですわ」

    九頭龍「俺は、王馬と一緒に居て途中でキーボと会ったな」

    王馬「嘘はいけないよ九頭龍ちゃん!キー坊とは会ってないよ!」

    キーボ「いや会いましたよ!録音だって有るんですからね!」

    王馬「じゃあ聞かせてみろよ!どうせ会ってないのは嘘だから聴かなくても良いんだけど!」

    苗木「僕は星君と一緒に居たよ。その後、朝日奈さんと葉隠君に会って、シャドウに襲われている茶柱さんと合流した。その後、忘れ物を取りに戻った星君と合流出来ずに今に至るんだ」

    王馬「何で一緒に行かなかったの?」

    茶柱「苗木さんは足を怪我した転子を担いで居たので…。星さん自身がすぐ戻るから先に行ってくれと仰ったんです」

    王馬「なるほどねー。シャドウに襲われた時間っていつ頃?」

    朝日奈「私と葉隠が遭遇したのは、ゲームが開始して、30分経ってなかった筈だよ」

    苗木「僕が茶柱さんと合流したのもそれくらいだね」

    王馬「えっと、アリバイがないのが舞園ちゃん、西園寺ちゃん、白銀ちゃん、キー坊だね」

    キーボ「僕もですか!?」

    王馬「当たり前だろ!俺は人間とロボットを差別しないぞ!!」

    キーボ「王馬君…僕はこれを喜ぶべきなんでしょうか?」

    王馬「安心して良いよキー坊。嘘だから」

    キーボ「!!」



    苗木「僕達を襲って来たシャドウなんだけど、星君が気になることを言ってたんだ」

    王馬「なんて言ったの?」

    苗木「相当な手練れで、人殺しの太刀筋だって」

    茶柱「転子も見てましたが、相当な実力者だと思います。相手が武器を持っていたとは言え、触る事すら叶いませんでしたから」

    九頭龍「茶柱と星が太鼓判を押す程の刀の使い手…か」

    舞園「私、アイドルなので体は鍛えてますが、刀は使った事ないですね…」

    白銀「私は、模擬刀を持った事あるけど…ああ、コスプレの話ね。だから扱えるかと訊かれたら、厳しいとしか言えないね」

    西園寺「扇より重いもの持って振り回すなんて出来ないよー」

    キーボ「ぼ──」

    王馬「くッ!誰にも不可能だ!」

    キーボ「せめて言わせてください!」

    王馬「お前の腕力元気なお爺ちゃんレベルだろ?無理でしょ。それに星ちゃんならロボットだって見抜きそうだしねー」

    キーボ「確かに…そうですね」

    王馬「あちゃーっ、困ったなー。これじゃ最初に言ってた質問が使えないよ」


    王馬「困ったなー」スタスタ


    フラフラとした足取りで、王馬君はガベルに近付く。













    王馬「ま、嘘なんだけど」




    カンッ!




    王馬「『参加者16人の才能の名前を五十音順に並べた時、裏切り者の名前は真ん中より早い?』」



















    『YES』







    王馬「だってさ」


    西園寺「はぁー?質問全然違うよねー。記憶力ないのー?」


    王馬「にししっ、質問は元からこれだったよ。女子の皆んなには嘘をつかせてもらったんだ」

    舞園「苗木君。そうなんですか?」

    隣に居た舞園さんが確認の為に僕へ問いかけた。

    苗木「うん。騙してごめんね、ただ、あの嘘の質問を用意して裏切り者がどう動くか見たかったんだ」

    王馬「『私が考えました』」

    白銀「王馬君、それ地味に天丼だね」


  24. 24 : : 2017/07/10(月) 23:04:39


    王馬「けど、これで絞れてきたよね」




    【参加者16人の才能(あいうえお順)】

    合気道家
    アイドル
    占い師
    王女
    ギャンブラー
    幸運
    極道
    コスプレイヤー
    スイマー
    総統
    テニスプレイヤー
    美術部
    日本舞踊
    プログラマー
    料理人
    ロボット



    王馬「ここから、半分から下と、男子を抜くと」


    合気道家
    アイドル
    王女
    ギャンブラー
    コスプレイヤー


    王馬「5人に絞れたね」

    キーボ「これで、僕は疑いから外れますね」

    アンジー「でもでもー、キーボが誰かに操縦されてる可能性とかないのー?」

    キーボ「そこまで疑われるんですか?!僕に操縦機能はありません!」

    九頭龍「ああ。それは流石に ねーだろ」

    西園寺「でもさー、入間(品性下劣な豚女)ならやりかねなくない?」

    王馬「確かに入間(雌豚)ならやりかねないけど、発明家だから、後になるんだよねー。どっちにしろないね」

    白銀「何でだろう。ルビなんて見えないはずなのに、誰の事か分かっちゃう」

    朝日奈「じゃあ、全く知らない凄い人とか?」

    舞園「わざわざ裏切り者と言うくらいですから、知らない人とは思えません」

    セレス「そもそも名前が分からないと告発出来ませんわ」

    朝日奈「あ、言われてみればそうだね」

    西園寺「才能込みで考えたら、なりきり地味女も怪しくなーい?」

    白銀「なりきり地味女って私!?無理だよ!無理無理!実際に居る人にコスプレするのは無理だって!変装とコスプレは違うんだよ!私、実際に居る人のコスプレすると蕁麻疹出来ちゃうし!」

    セレス「そもそも、白銀さんが此処に居る時点でそれは成立しません」

    西園寺「それくらい分かってるよー!言ってみただけー」

    王馬「西園寺ちゃん、候補から外れたから強気だねー。そんな西園寺ちゃん、結構好きだぜ?」

    西園寺「キモ」

    王馬「噓ダァァ!!俺は……俺はこんなに君の事を愛して居るのにィィィイイ。噓だけどね」


  25. 25 : : 2017/07/10(月) 23:05:49

    モノクマ『お取り込み中悪いんだけどさー、そろそろセカンドゲーム始めて良ーいー?』

    王馬「あちゃーっ、もうそんな時間かー」

    モノクマ『やあ。ボクだよ。モノクマだよ』

    白銀「2回目の自己紹介…1週間フレン○かな?」

    モノクマ『うぅっ!がおーっ!ギリギリの発言は控えてね!!』

    白銀「このクマも地味にギリギリだから!」

    モノクマ『ええ。セカンドゲームの説明に移る前に此方をご覧下さい』

    モニターが切り替わる。映し出されたのは、希望ヶ峰学園に在学する2名の男子生徒。

    苗木「僕と、王馬君?」

    モノクマ『えー、オマエラに決めてもらうのは苗木君と王馬君。一体どちらと組むかという事です』

    苗木「なっ!」

    モノクマ『次は対抗戦なんだ。苗木陣営vs王馬陣営のね』

    苗木「──ふざけるなよ!!何で、味方同士で争わなきゃいけないんだ!!」

    王馬「苗木ちゃん、落ち着きなよ。まだ死ぬとは限らないんだし、案外緩いゲームなのかもしれないよ」ニィッ

    王馬「それに、冷静さを欠くリーダーじゃ誰も味方になってくれないから」

    モノクマ『あ、ごめんねー。これはミニゲームはミニゲームでもデスゲーム(笑)なんで宜しくね』

    苗木「……!」

    セレス「デスゲームですか。では…」

    彼女は王馬君の元まで近付く。

    苗木「セレスさん…?」

    セレス「この場合、勝てそうな方に付くのが道理だと思います。わたくし負けるのはあまり好きではないので」

    王馬「ひゅーっ!セレスちゃんクールー!!本当は負けるの大っ嫌いなのに!!」

    セレス「ウフフッ。負けた事がないので分かりませんわ」

    王馬「カッコいいーっ!セレスちゃん、心強すぎー!」

    セレスさんの加入(それ)を皮切りに、狼狽えていたメンバーが王馬君の方へ歩み寄る。

    アンジー「神様がねー、小吉の方に付けっていってるよー」

    白銀「ごめんね。苗木君…私も王馬君のチームに入るね」

    キーボ「僕も王馬君側に…すいません」

    九頭龍「悪いが俺も死にたくはないんでな」

    王馬「良かった九頭龍ちゃん!男子1人だけで内心心細かったんだ!嘘だけど!」

    キーボ「あの、男子なら僕も」

    王馬「同じメイルでもお前は防具の方だから。決してmaleじゃないからね」

    キーボ「ついにロボットとしても扱わなくなりましたね!出るとこに出て貰いますから!!」

    王馬「何?嫌なら別に苗木ちゃん陣営に行ってもいいんだよ?」

    キーボ「それは…」

    キーボ君と目が合ったが、彼は直ぐに目を逸らした。

    苗木「……」


    気不味い沈黙が生ま───


    舞園「私!苗木君チームに入ります!」

    苗木「舞園さん!?何で!!」

    舞園「だって私…苗木君を信じてますから」

    苗木「でも、王馬君の陣営の方が頭が良い人だって!」

    朝日奈「大丈夫だよ!苗木!私も苗木の味方だから」

    西園寺「えー?単細胞スポーツ馬鹿なのに頭が良い人ポジにねじ込もうとしてるのー?」

    朝日奈「え?!いや!そういうのじゃないよ!!あと、単細胞スポーツ馬鹿って私!?」

    西園寺「きゃはは!他に誰がいるって言うのー?だって、お人好しの苗木おにぃ側に付くんだよ?馬鹿じゃーん!」

    彼女はそう言いながらもトコトコと歩き、僕の隣に立った。

    苗木「え?」

    西園寺「フン!私は、あっちのチームに気に食わない奴ばかりだから仕方なく入るだけだからね」

    苗木「西園寺さん…!」




















    モノクマ『あのー、いい雰囲気出してる所申し訳ないんっすけど、各陣営6人なんで、もう確定なんだよねー』





    モノクマ『なーのーで!足手纏いの茶柱さんと、文字通り手負いの葉隠君が苗木君陣営だね』


    苗木「お前、良い加減にしろよ!!」


    王馬「苗木ちゃんも堅物だなー。怒鳴っても何も好転しないのに」


    王馬「いや、お人好しなのかな?───それじゃあ絶対に俺達には勝てないよ」


  26. 26 : : 2017/07/10(月) 23:06:24

    王馬【リーダー】
    セレス
    白銀
    アンジー
    キーボ
    九頭龍



    苗木【リーダー】
    舞園
    葉隠
    茶柱
    西園寺
    朝日奈
  27. 27 : : 2017/07/10(月) 23:09:05



    茶柱「苗木さん。すいません、転子をチームに入れることになってしまって…」

    苗木「ううん。謝る事じゃないよ。それに、心強いよ」

    茶柱「心強い…ですか?──男死に気を使われても嬉しくないのですが」

    苗木「本当だよ。ファーストゲーム、茶柱さんが励ましてくれた時凄く心強かったし、安心出来たから」

    茶柱「そ、そそそ、そうですか。転子は別にそういうつもりは無かったのですが…!」

    面食らった表情で彼女は前に突き出した手と首を横に振った。



    葉隠「ぁ?…俺、寝てたんか?」

    苗木「葉隠君!目を覚ましたんだね!」

    葉隠「──あッ! 手が!!」

    痛みと、違和感で彼は全てを思い出した。

    今は包帯でグルグル巻きになっているがそこにあるべき手はもう無い。

    西園寺「入間(品性下劣な豚女)に新しい右手作ってもらったらー?元よりマシになるかもよ」

    葉隠「確かにそうだな!!案外便利になるかもしれん。いや!なる!俺の占いではそう出たべ!」

    朝日奈「あんたの占いは当てにならないってば…」

    葉隠「で、これはどういう状況なんだ?」

    苗木「セカンドゲームはチーム戦らしいんだ」

    葉隠「チーム戦?」

    苗木「チームは王馬君がリーダーの、セレスさん、九頭龍君、キーボ君、白銀さん、夜長さんの6人チーム。そして、僕がリーダーの葉隠君、舞園さん、朝日奈さん、西園寺さん、茶柱さんのチームだよ」

    王馬「どうやら、チーム対抗戦みたいだねー。つまり、葉隠ちゃんと俺らは敵って事」

    葉隠「セレスっちと王馬っちが敵!?い、一体何で勝負すんだ?」

    白銀「何をするかは、これから話してくれるみたいだね」





    モノクマ『じゃあまず、苗木君と王馬君ジャンケンをして。勝った方が先攻後攻選んでね』

    王馬「それって、ゲームのルールを聞いてからじゃ駄目なの?」

    モノクマ『うーん、面倒だから駄目って事で』

    王馬「それじゃ、やろっか」

    苗木「…うん」

    苗木・王馬「「じゃんけん」」






    「「ぽん!」」



    苗木[チョキ]

    王馬[グー]





    王馬「おっ!俺の勝ちみたいだねー」

    セレス「此方が決められるのですね」

    キーボ「ゲームは分かりませんが、何事も後攻の方が気は楽なので後攻の方が良いかもしれませんね」

    王馬「じゃあ、先攻で」

    キーボ「僕の話聞いてましたか?!」

    王馬「聞いてたよ。ただ、それはスポーツに限った話だよ。ルールを事前に知っていて、対策をして、気構えを持った状態で始める場合だけ」

    王馬「もしも、それが。ルールを直前に知らされ、何も対策を打てず、気構え無く始まるのなら?」

    セレス「仕掛けられる先攻にした。と言う事ですわね」

    王馬「そーのとおり!流石セレスちゃん!心強いなー」

    王馬「それと、ゲームは公平じゃないとつまらないからね。ハンデって事で、意図を全部教えてあげたんだけど。奇襲に気を付けてね」

    苗木「………」

  28. 28 : : 2017/07/10(月) 23:12:35





    モノクマ『じゃあルゥールの説明を始めるね』

    モノクマ『まず覚えてほしいのは、カード各種1枚ずつのカードが6種類あって、それぞれ1枚ずつ持って戦うって事なんだよね』

    舞園「6種類のカードですか?」

    モノクマ『7、10、J(ジャック)Q(クイーン)K(キング)、ジョーカーの六つのカードなんだけど、数字が大きい程強いクマ』

    アンジー「ねぇねぇ、ジョーカーはー?」

    モノクマ『ジョーカーは、Kよりも強いカードだよ。ただし、7にだけは負けちゃうんだ』

    モノクマ『振り分けるカードを決める決定権があるのはリーダーだけ』

    王馬「俺と苗木ちゃんがそれぞれの陣営の振り分けをするんだね」

    モノクマ『制限時間までに誰がどのカードを持つか決めてね。制限時間から1分後、攻撃側のドアが開く様になるからね』

    王馬「攻撃側が相手より、弱い数字だとどうなるの?」

    モノクマ『それは攻撃側の負け、攻撃された側の勝ちだね。引き分けは両者共に負けだよ』

    モノクマ『実際に始まれば分かると思うんだけど、席が6つあって、対面した相手と勝負するんだよね』

    キーボ「それで、どうすればクリアになるんですか?」

    モノクマ『勝負は合計3回。それで勝ち越した人はセカンドゲームクリアー』

    モノクマ『ただし、リーダーは違うんだ』

    モノクマ『リーダーだけは、チームの勝ち数に依存するんだ。当然負けてたら、オシオキだよ。引き分けでも駄目だから注意してね』

    モノクマ『リーダーには更に追加ルールが3つあって』

    モノクマ『
    ①3連敗した場合、チームの勝利数関わりなくオシオキ
    ②3回戦はジョーカーと7を持てない
    ③選択側の時、先に勝負出来る』

    セレス「合計3回というのは、野球の様に3回ずつ、合計で6回というわけでは無いのですね」

    モノクマ『うんっ。その通りだよ』

    王馬「つまり、俺は2回、苗木ちゃんは1回、先に勝負が…相手と自分のカードをめくることが出来るんだね。他の5人はその後、残った5人から選ぶって事かー」

    舞園「そんなの!此方側が不利じゃ無いですか!」

    モノクマ『もうっ、うるさいなぁ。ロシアンルーレットと同じだよ。どっちも平等だよ』

    朝日奈「信じられないよ!アンタ、ルールだって守らないのに!また私達を騙そうとしてるんでしょ!」

    モノクマ『安心してよ。僕はルールを守るよ。破った事もないしね』

    セレス「よく言いますわね。とんだ狸ですこと」

    モノクマ『なんだとぉっ!僕は猫──じゃなくてクマなんだよっ!』

    白銀「地味に逆鱗!?」

    モノクマ『細かい事は始まれば分かるから安心してね』

    モノクマ『じゃあ、そろそろシックスカード始めちゃって良いっすか?自分、転送良いっすか?』



    王馬「うん。始めてよモノクマ。────コロシアイをさぁ!」




    王馬君が言い終える同時に、転送が始まる。視界を覆うほどの白と、吐き気を催す浮遊感が僕を襲う。



  29. 29 : : 2017/07/10(月) 23:15:26









    セカンドゲーム
    【シックスカード】






  30. 30 : : 2017/07/10(月) 23:16:41




    ◇◆◇



    【ホール:苗木陣営】


    《残り19分59秒》


    苗木「ここは…」

    目を覚ました部屋は真っ白な正方形の広い部屋、一辺が5メートルはある。

    部屋の一辺にはタッチパネルの付いたまるでATMの様な端末と、それぞれに扉がついており合計3つ、内2つはトイレのようで見慣れた球体に三角形と、球体と逆三角形のマークがそれぞれ、向かい合う扉に付いていた。

    端末の反対側にある扉は、真っ黒な扉。

    そこにはデジタル式のタイマーが埋め込まれており、19分42秒から今も1秒ずつ減り続けていた。

    苗木「時間は20分か」

    朝日奈「もうタイマー進んじゃってるし、急ご!」

    苗木「えっと、じゃあ話し合おっか」

    舞園「はい!そうしましょう」

    既に茶柱さんの元へ集まる様に円が出来ており、僕は床に胡座をかいて座った。

    苗木「まずは、誰が何のカードを持つかだけど…」

    カードの強さは勝ちやすさに直結する。我が身は誰だって可愛い。強いカードを持ちたいのは当然だ。

    葉隠「苗木っち、俺は難しい事は分からんけど、強いカードを持ちてぇべ!」

    西園寺「いきなり協調性のないやつ出て来ちゃったー。誰だってそうに決まってるよー」

    苗木「いや、僕だけは一度勝てれば、後は皆んなの合計で決まるから大丈夫なんだけど…」

    リーダーは一勝で良いルールは、こういう面では有り難かった。

    だが、最弱のカードは2枚ある。7と10だ。それぞれ勝てるカードは1枚のみ。

    1枚は僕が請け負うとして、誰かもう1人最弱のカードを手にしなければならない。

    2勝しないといけない状況で、それを選ぶ人なんて────

    茶柱「転子は弱いカードで大丈夫です」

    ───居た。

    苗木「! 良いの…?」

    茶柱「このゲームは結局は誰かが弱いカードを持たないといけません。それを転子が担うだけなので」

    葉隠「茶柱っちがそう言うんなら良いんじゃねーのか?それに茶柱っちはまだ裏切り者の可能性もあるべ」

    朝日奈「アンタねぇ!まだそんな事を!」

    葉隠「だって事実だべ!」

    茶柱「そこの男死の言う通りです。皆さんから見たら転子は裏切り者の可能性があるからこの役を買っているんです。…それに怪我をしてますし、もしこの先のゲームがあるなら転子は足を引っ張るだけですから」

    舞園「そういうことでしたら、私も弱いカードを持ちます」

    朝日奈「さやかちゃんまで!!」

    舞園「3回中2回勝てば良いんですし、それに弱いカードを持っても勝てないわけじゃないですから」

    苗木「……分かった」

    苗木「カードは、僕がまず7を持つから、他は各々で話し合って決めようか」





    ───
    ─────
    ────────





    話し合いの結果、持つカードは

    苗木【7】
    舞園【11】
    葉隠【joker】
    朝日奈【Q】
    西園寺【K】
    茶柱【10】

    となった。

    苗木「時間は残り7分か」

    タイマーの時間を見た後、僕は立ち上がり部屋に設置してある機械へと向かった。

    機械のディスプレイに指を当てると、この機械について説明が行われた。

    苗木「えーっと、それぞれの名前が書いている所に6種類のカードを一枚ずつスライドする…か」

    指示に従い、先程の組み合わせになる様にカードを動かす。

    そして、6枚全てを振り分け終えると右下に【決定】と表示された。

    苗木「決定…っと」ピッ

    タッチパネルに触れると、カラカラという音と共に、それぞれの名前だけ書かれたカードが合計6つ、機械の下から出て来た。

    苗木「名前の書かれた、真っ黒なカード?」

    機械のディスプレイにそれについての説明が書かれてあった。

    苗木「ええっと、これを席の前に付いている端末に本人が(かざ)すと準備完了。1つの端末に翳せるカードは1つまで、カードは重複して使えない」

    舞園「成る程、カードが名前だけ書かれた黒いカードなのは、相手側から見られない為の配慮なんですね」

    苗木「舞園さん!?」

    突然後ろから声を掛けられた事に驚き、思わず声を上げながら振り返る。

    舞園「はい。どうかしましたか?」

    そこにはキョトンとした顔の舞園さん────と、西園寺さんと葉隠君と朝日奈さんと、朝日奈さんに肩を借りた茶柱さんが居た。

    苗木「いつの間に後ろに…って、皆んな居るし」

    舞園「最初からですよ。おそらくこの機械が説明してくれると思ったので」

    苗木「うん。結果としてはそうだったね、それにこれで説明する手間も省けたし。はい、これ」

    それぞれに名前の書かれたカードを渡す。

    時間はまだ、5分以上残って居た。

    苗木「じゃあ、座って待ってようか」

    僕がそう言うと、既に胡座をかいている葉隠君に続いて彼女達は円を作る様に座った。



  31. 31 : : 2017/07/10(月) 23:18:36


    苗木「………」

    西園寺「…どうしたの苗木おにぃ。お腹痛いの?」

    西園寺さんが何か言った。話を聞いてなかった僕は。

    苗木「………そうだね」

    そんな返事を返す。

    舞園「…………」ジーッ

    視線を感じる。

    いや、僕を凝視する舞園さんを視界の端でとらえた。が正しい。

    苗木「どうしたの舞園さん。僕の顔に何か付いてる?

    舞園「……苗木君。無理していませんか?」

    苗木「無理…?僕が?」

    舞園「はい。そうです。最初ゲームの後もそうでしたが、今はもっと辛そうです」

    苗木「……」

    朝日奈「私も思ってたよ。苗木、ずっと辛そうな顔してる」

    茶柱「………」

    西園寺「おにぃ?」

    視線が僕に集まる。とても心配そうな目で皆んなが僕を見る

    苗木「……辛いよ…」

    苗木「何で僕は、仲間同士で争わなきゃならないんだよ…。」

    思わず口にしてしまった。

    心の奥底にしまっていた本音が外へ出る。

    舞園「…もしかして、負けた方が良いって思ってますか?」

    それに対し舞園さんは僕を覗き込む様にしながらそう言った。

    苗木「…!」

    図星だった。

    蹴落とすなら、裏切るくらいなら、負けた方が良いって。

    僕は勝たない方が良いって。

    舞園「苗木君は悔しくないんですか?」

    苗木「悔しいって…何が?」

    舞園「好き勝手言われてですよ!」

    苗木「王馬君に…?でも、あれは真実だよ。冷静さを欠くリーダーじゃ、付いて行きたくないのは当然だよ」

    朝日奈「苗木!良い加減にしないと怒るよ!前向きな所がアンタの取り柄なんでしょ!私達はアンタがリーダーだからこっちのチームになったんだよ!」

    苗木「……ごめん」

    舞園「私は、オシオキなんてされたくない。だから、負けたくないです!勝ちたいです!…王馬君陣営の皆さんもきっと同じ事を考えている筈です」

    舞園「私が勝つという事は当然、王馬君陣営の誰かが負けるという事です」

    苗木「その通り…だね」

    舞園「確かに苗木君はリーダーです。だけど、それは押し付けられたものです。このゲームだって、理不尽に巻き込まれたものなんです」

    舞園「だからどうか責めるべき相手を間違えないで下さい」

    苗木「分かってる。全部、あのモノクマを操ってる奴が悪いのは…でも、それを全部責任転嫁するだなんて…僕には…」

    舞園「大丈夫です。苗木君は1人じゃないですから」

    朝日奈「うん。そうだよ!私達も付いてる」

    茶柱「苗木さん。どうか1人で背追い込まないで下さい」

    西園寺「もーっ、しっかりしてよね!私達だって、あのゲスウザタヌキチビ達を倒すんだから!おにぃ1人の問題じゃないんだよ!」

    苗木「皆んな…」

    葉隠「俺は良く分かんねーけどなっ」

    朝日奈「アンタねぇ。空気読めなさすぎでしょ」

    葉隠「けど、苗木っちとお別れは嫌だべ」

    苗木「ありがとう。葉隠君」

    舞園「勝ちましょう。誰かを蹴落とす為じゃなく。ここに居る皆んなが生還する為に!」

    朝日奈「苗木!ここまで言えば分かるよね!」

    朝日奈「私達は、アンタにも生還してほしいの!」

    苗木「うん……勝とう。絶対に…皆んなで…!」

    温かい。

    それは心か、それとも頰を伝う涙か。

    舞園「所で朝日奈さん。それは霧切さん意識ですか?」

    朝日奈「そ、そうだけど。さやかちゃん。笑ってる…の?それ」

    舞園「笑ってます!!」

    朝日奈「断言するって事はそうなんだろうね。うん!笑ってる!」

    西園寺「女のドロドロした三角関係は良いけどさー。そろそろ時間になるみたいだよ」

    苗木「よし。行こうか」

    「「うん!」」「「はい!」「おう!」


    バラバラの掛け声と共に僕らは立ち上がる。



    ピーーーーッ!



    タイマーが0になったタイミングで扉が電子音と共にひとりでに開く。


    扉の向こう側、あるのは同じく広い部屋。


  32. 32 : : 2017/07/10(月) 23:19:36




    ◇◆◇




    【ホール:両陣営】


    先程の部屋と同じく真っ白な明るい部屋があった。

    天井は3m程の拓けた空間。

    固定されたデスクと椅子が6組ずつ等間隔で設置されていた。

    約1メートル程の感覚だ。

    その向かい側にも同じ様にデスクが6つあるが此方側からは椅子があるか確認できない。おそらくあちらが王馬君陣営。

    閉じた扉があるので僕の想像は正しいはずだ。

    デスクにはカードを翳す端末が付いており、これに先程のカードを翳す事で準備完了となる。

    左手には大きなモニターがあり、今は48秒と表示された数字が1ずつ減っていた。


    葉隠「俺は此処だ!ここなら勝てる気がするべ!」ピッ

    西園寺「うっわぁ、馬鹿丸出しだぁー。相手が選ぶから関係ないのにーっ。私はここ」ピッ

    葉隠「気分だ気分!」

    舞園「そうですね。気分も大事ですよね」ピッ

    そんなやり取りと共にそれぞれが席に着く。

    茶柱「椅子は、有難いですね」ピッ

    茶柱さんも、朝日奈さんの手伝いもあり、無事に席に着くことが出来た。

    苗木「………」

    朝日奈「苗木…?どうかしたの?」

    僕らを除いて。

    苗木「朝日奈さん。カードを貸してもらって良いかな?」

    朝日奈「うん。大丈夫だよ」

    苗木「ありがとう」

    朝日奈さんから受け取ったカードを端末に翳す。

    ピッ

    『カードリーダーは本人のみ有効』

    ブーッという音と共に端末の画面にはそう表記された。

    苗木「やっぱり…だめか」

    舞園「苗木君!そろそろ1分経つので早く席を決めないと!」

    苗木「あっ、ごめん!」

    僕は朝日奈さんにカードを返し、1番奥の席に着き、カードを翳ざす。

    ピッ─── 『OK』

    画面にはそう表示されていた。

    朝日奈さんも残った席に着き、カードを端末に押し当てた。

    朝日奈「…よーし」ピッ

    朝日奈さんの方を向くと、彼女は指で丸を作った。

    彼女の方も正しく、認識した様だ。


    苗木「…………」


    後は待つだけだ。


    王馬陣営の面々を。


    苗木「…………」


    舞園「大丈夫ですよ」


    苗木「えっ?」


    強張っている僕を見かねてか、彼女はそんな風に声をかけてくれた。


    舞園「きっと、大丈夫です。苗木君も、私も、誰も負けません!」


    何の根拠も無いその言葉だが。


    苗木「うん!」


    身体の震えを止めるには十分過ぎるほどだった。


    そのタイミングで向かい側の扉が開く。

    王馬「苗木ちゃん。正々堂々。宜しくねっ」ニィィッ













    ◇◆◇







    モノクマ『あ、ありのまま 今起こった事を話すぜ?』





    苗木【7】VS王馬【11】
    Lose



    舞園【J】VSセレス【K】
    Lose



    葉隠【joker】VS白銀【10】
    Win



    朝日奈【Q】VSキーボ【joker】
    Lose



    西園寺【K】VS夜長【7】
    Win



    茶柱【10】VS九頭龍【Q】
    Lose









    モノクマ『1回戦が終わったぜ』




  33. 33 : : 2017/07/10(月) 23:20:12
    [戦績]
    苗木誠✖︎
    葉隠康弘○
    舞園さやか✖︎
    朝日奈葵✖︎
    西園寺日寄子○
    茶柱転子✖︎



    王馬小吉○
    セレスティア○
    白銀つむぎ✖︎
    キーボ○
    夜長アンジー✖︎
    九頭龍冬彦○
  34. 34 : : 2017/07/10(月) 23:22:44



    ◇◆◇




    王馬「あはははははははははは!!!分かり易すぎるよ、苗木ちゃんっ!!!」

    ずっと気になっていた。対面して、僕と王馬君のカードがモニターに表示されてから、彼が笑いを堪える様子が。

    王馬「あーあ、惜しいなぁ。もうちょっとで6連勝できたのに」

    朝日奈「え…?」

    王馬「ごめんねー、白銀ちゃん」

    白銀「地味にしょうがないよ。コレばっかりは運なんだし。そもそも『超高校級の幸運の苗木君が7を持つなんて分かりやすい事する訳ない!』って言ったのは私だし」

    舞園「まさか…全部…」

    王馬「あ、そーだ苗木ちゃん。良い事を1つだけ教えてあげる。俺実は知ってるんだー、裏切り者が誰なのかねー」

    真っ黒なカードを手の上で滑らせながら彼は言う。

    苗木「!! 一体誰なの?!」

    王馬「えー?何で教えないといけないの?教えたら、こんなに楽しいゲームが終わっちゃうじゃーん!!」

    王馬君はニヤニヤと嗤う。

    確実にこの状況を楽しんでいる。

    苗木「終わらせるべきだろ!こんなゲームは!!楽しい?そんなの可笑しいよ!!」

    王馬「裏切り者とのゲームは終わった。後は超高校級を相手に命懸けのゲームを楽しもうとする事の何が可笑しいの?」

    彼はキョトンとした顔で首を傾げた。

    本気で思っている。『仲間同士のコロシアイ』を楽しいものだと。

    王馬「いやー、やっぱり協力するゲームは俺らしくないよね。なんて言ったって俺悪の総統だからね」

    王馬「やっぱり蹂躙しないと」

    苗木「でも、ゲームに負けたら君だって…!!」

    王馬「にしし、俺命を賭けたゲームに負けた事ないんだよねー」

    王馬「それと苗木ちゃん。そう言うセリフはね、勝ったから言いなよ。見苦しいからさぁッ!!」

    苗木「……っ」

    舞園「苗木君。今は何を言っても無駄だと思います…。だから、一旦退きましょう」

    苗木「…うん」

    僕らは王馬君の言葉に対し何も言い返す事は出来ず、逃げ帰る様に元の部屋へ戻った。

  35. 35 : : 2017/07/10(月) 23:24:34

    ◇◆◇





    【ホール:苗木陣営】



    《残り19分25秒》



    舞園「全部読まれていました…。もしも、苗木君と茶柱さんのカードが逆なら、全敗だってあり得た筈です」

    朝日奈「読まれたって?どういう事?」

    舞園「一番勝ちにくい7、10を、リーダーである苗木君と、怪我をしている茶柱さんが持つことをです」

    舞園「逆に、強いジョーカー、K、Qを、裏切り者の可能性がない葉隠君、朝日奈さん、西園寺さんが持つこと」

    舞園「そして、私が残ったJを持つことまで」

    苗木「だから、強いカードを持っている人に弱いカードをぶつける事が出来た…」

    西園寺「つまりー、こっちが考える事をほぼ完璧に予測してたって事だよねー?」

    苗木「もしも、僕と茶柱さんのカードが逆だったら…」

    舞園「白銀さんが、茶柱さんに勝負を挑む筈です。10のカードが場に出ているので…」

    苗木「そうなったら、葉隠君、朝日奈さん、西園寺さんの相手が代わって、全敗の可能性があったんだね…」

    不幸中の幸い…と喜ぶ事は出来ない。

    何故ならこれは運ではない。完全に読まれていたから。

    そして4人も負けてしまったから。これで全員生還は遠のいてしまった。

    苗木(いや、クヨクヨしてる暇は無い。今は考えるんだ。これは僕1人の問題じゃない)

    朝日奈「でも、次はこっちが選択する側だし!きっと何とかなるよ!」

    茶柱「そうですね!それに此方が6ポイント取れる可能性もあります」

    葉隠「でもよ、あっちの手が読めねえと無理じゃねぇか?」

    舞園「おそらく、王馬君は強いカードを持っていないと思います」

    苗木「一勝して、個人の成績はあまり関係ないから…だよね」

    舞園「それもありますが、強いカードは第1ゲームで負けた白銀さんと夜長さんに持たせる筈ですから」

    朝日奈「そうだよね。だって次ので負けちゃったら…」

    茶柱「脱落…ですね」

    脱落。つまり、オシオキ。

    西園寺「じゃあ、7を持って地味女か桃色電波女に挑めば良いの?」

    葉隠「強いカードは、ジョーカーとKだから──50%だな」

    苗木「……そうだけど、もし勝った場合」

    舞園「負けた相手の人は脱落してしまうんですね…」

    苗木「ただ、それはこっちも同じだよ。負ければ脱落する人がいるっていうのはね」

    舞園「朝日奈さん、茶柱さん、私、それと苗木君ですね」

    葉隠「苗木っちはまだ大丈夫じゃねぇか?」

    舞園「3回戦は7とジョーカーが持てないので、相手はジョーカーを切って来るはずです」

    葉隠「あぁ!そしたら3連敗で脱落だべ!」

    苗木「希望的観測だけど、相手が僕が弱いカードを持ってるって読んで。そこまで強くないカードを使う可能性もあるよ」

    茶柱「ただ、苗木さん。このゲーム、もしセレスさん達の陣営が5勝したら…」

    苗木「うん…その時点で僕の脱落は決定する」

    朝日奈「駄目だよ!負けるなんて考えちゃ!!しっかりしてよ苗木!私達は皆んなでクリアするんでしょ!!」

    苗木「そうだね、絶対に皆んなでクリアするんだ。…じゃあ、持つカードはこうしようか」

    こうして僕らの話し合いは始まる。

    勝つための作戦会議が。

    苗木「まず、僕がJを持つ」

    舞園「良いんですか?それは下から3番目ですけど…」

    苗木「それでも、上から4番目だし、4人で選ぶなら誰か取らないといけないからね。僕が選ぶ相手は王馬君だから、これで大丈夫な筈だよ」

    茶柱「では、転子がQですね」

    朝日奈「ええ!?駄目だよ!さっきも1番弱いカードだったのに!」

    舞園「そうです!次jokerを持つとしても私達は責めませんよ!いえ!持つべきです!」

    茶柱「フッフーン!甘いです!!相手が男死なら兎も角、女子相手に転子が強いカードを選ぶと思いますか!!」

    苗木「思わないけど…でも」

    茶柱「苗木さん。この中で1番弱いカードを持っているんですから、何を言っても説得力がありませんよ」

    苗木「うっ…」

    茶柱「それに、結局全員負けてるんです。前のゲームは関係ありません!だから良いんです!」

    舞園「本当に良いんですか?」

    茶柱「はい!転子!ここで散っても本望です!!」

    朝日奈「散っちゃ…駄目だからね?」





  36. 36 : : 2017/07/10(月) 23:25:47





    話し合いの結果、僕ら4人のカードはこうなった。

    苗木【J】
    舞園【joker】
    朝日奈【K】
    茶柱【Q】



    残り二枠の話し合いは──


    葉隠「西園寺っち。俺に任せろ。俺が必ずjokerを引き当ててやるべ!」

    西園寺「別にどっちでも良いよー。どうせ勝てるのは一枚なんだしー…ん?あ!駄目!やっぱりじゃんけん!」

    葉隠「何でだ?」

    西園寺「さっきの地味女みたいになるかもしれないからだよ!」

    葉隠「へっ。それは考えもつかなかったぜ。でも良いべ?俺はぁ、ジャンケンで負けた事はない」

    西園寺「フンっ!臨む所!」




    葉隠「じゃん!」西園寺「けんっ」




    「「ポンッ!」」






    葉隠【7】
    西園寺【10】





    こうなった。





    西園寺「嘘!!今の屑ダサ海栗(ウニ)が負ける流れだったじゃん!」

    葉隠「がーっはっはっ!正義は勝つべ!!!」

    朝日奈「小さな女の子と、ドレッドヘアーの男。普通逆だけどね」

    葉隠「ひでぇべ!俺普通に悪口言われてるんだぞ?」

    朝日奈「だって、ホントの事じゃん」

    葉隠「な、苗木っちぃっ!ダサくねぇよな!俺の髪型!ダサくねぇよな」

    苗木「………う、うん」

    苗木(服装も含まれてると思う。とは、言わない方が良いよね)

    葉隠「ほぉれ見たことか!やっぱり、男は男にしか分かんねえ感性があるんだな」

    朝日奈「はぁ、明らかに苗木が気を使ってるの分かんないの」

    葉隠「そんなわけねぇべ!なっ!」

    苗木「そろそろ時間だし、カード出さないといけないから。ごめんね」

    葉隠君との話をそこで打ち切り、僕は最初にやった要領で機械を操作する。

    ジャラジャラと音を立て、カードが6つ出てくる。

    今度は白いカードだ。

    舞園「先程のカードと見分けがつくようにですね」

    西園寺「次は黒いカード反応しないのー?」

    苗木「あ、ディスプレイに書いてあったんだけど、黒いカードはもう何の意味のないカードらしいよ」

    西園寺「ふーん。じゃあ、もう要らないんだー」

    そう言いながら西園寺さんはカードを投げ捨てた。


    苗木「よし。じゃあ、次は勝ちにいこう」

    タイマーが0になり、再び数字が表示される。



    《開始まで残り59秒》



    茶柱「苗木さん、いえ皆さん。お願いがあるんです」

    朝日奈「どうしたの?転子ちゃん」

    茶柱「もしもの話ですが、ここで誰かの脱落が決まっても、少なくとも…ゲームが終了するまで同情も、哀れみも無しです。責任を感じるのは以ての外です!」

    西園寺「今その話するのー?」

    舞園「そうですよ!そんな後ろ向きな考えは…!」

    茶柱「後ろ向きな考えではないです。前を向いて歩いて行く為に心構えをしていてほしいんです」

    朝日奈「……うん。分かった」

    朝日奈さんに続き全員が茶柱さんの言葉に頷いた。

    茶柱「そして、苗木さん」

    苗木「僕だけ、名指し?」

    茶柱「最後まで絶対に諦めない。約束してくれますか?」

    苗木「…約束する」






    ピーーーーッ!!





    電子音と共に扉が開く。



    扉の向こうでは既に6人が席に座り、此方を見据えていた。



    2回戦が始まる。




  37. 37 : : 2017/07/10(月) 23:26:55




    ◇◆◇



    【ホール:両陣営】




    王馬「苗木ちゃんのターンだよ。さあ、誰を選ぶのかな?誰を脱落させようとするのかな?」

    開口一番。彼はそんな言葉を掛けてくる。

    苗木「違うよ王馬君」

    王馬「違うって、何が?」

    真っ向から否定された事により、面食らった表情をしながら僕に問い掛ける。

    苗木「僕は誰かを蹴落とす為に戦うんじゃない!皆んなで勝つために戦うんだ!」

    王馬「同じじゃん。その皆んなに俺らは入ってないんだから」

    苗木「そうかもしれない。少なくとも、王馬君──君は入っていない」

    王馬「ひゃあーーっ、優しい苗木ちゃんからそんな風に言われると俺グサッときちゃうよ。つまり、苗木ちゃんが挑む相手は俺?」

    苗木「ああ!勝負だ。王馬君!!」

    王馬「にしし、勝ってから言いなよって言ったから俺に勝負挑んでくるの?良いよー。受けて立つよ」

    苗木「違う!君が、仲間同士でする命懸けのゲームを楽しむと言ったからだ!」

    僕は端末にカードを翳した。


    ──ピッ。


    電子音と共に、端末にOKと表示された。


    モノクマ『ではでは、モニターに映しましょう!2人のカードは一体…何なのでしょう!!』



















    画面が切り替わり、それぞれのカードが表示される。
















    苗木「嘘……だろ?」














    同じ(・・)カードが、画面に2枚。映し出された。












    王馬「あ、ごめん苗木ちゃん。引き分けだ」



    『王馬 J』

    『苗木 J』




    王馬「一度勝った俺は、弱いカードを持つと思った?…ダメだよ苗木ちゃん。本気で勝ちたいなら、ジョーカーを切らないとさぁ?」

    苗木「ぐっ…、ごめん。皆んな…」

    モノクマ『引き分けなんで、どっちも負けだね』


    苗木誠✖︎✖︎

    王馬小吉○✖︎


    舞園「!」


    モノクマ「じゃあ、残りの皆んなも席を決めてねー」


    舞園「苗木君…」

    朝日奈「苗木……」

    葉隠「苗木っち…」

    西園寺「おにぃ…」

    茶柱「苗木さん…」

    僕が負けた事を受けて、5人が僕の元へ駆け寄る。

    最悪の結果だ。僕の負けが、動揺を与えている。

    前提が崩された。『僕らは相手を読めてない』という現実だけが突き付けられた。

    苗木「みんな…お願い。今は、自分の事に集中してよ。大丈夫だからさ」

    僕らは前に進まないといけない。

    ここで止まるわけにはいかない。

    だからせめて、少しでも気丈に振る舞う事にした。

    何も大丈夫では無いのに。







    舞園「………」

    セレス「あらあら、予想が外れてお困りの様ですね」

    セレス「でしたらお教えします。わたくしのカード、ジョーカーですので、7の方は是非」

    舞園「そうですか。じゃあ、ここにしますね」

    舞園さんはそう言うと、カードをセレスさんと向かい側の席の端末に翳した。

    キーボ「そ、そんなあっさり決めるんですね」


    苗木(舞園さんのカードって…)



    そして各自端末にカードを翳した。



    朝日奈さんはキーボ君

    茶柱さんは九頭龍君

    葉隠君は夜長さん

    西園寺さんは白銀さんに、だ



    苗木(どうか、皆んなだけでも)



    モノクマ『では、まずはセレスさんと舞園さんのカードからオープンしちゃいましょう!』










    『セレス 10』



    『舞園 joker』







    セレス「…何故ジョーカーの貴方が、ジョーカーと言ったわたくしに挑んだのです?ブラフと読んでですか?」

    舞園「元々決めてたんです。もしも自分からジョーカーのカードを持っているって言う人がいたら、その人と勝負しようって」

    セレス「即決した理由はそれでしたか。恐れず、よくもそんな判断が…」

    舞園「当然最初のゲームを落とした私にとって、引き分けでも負けですからね…とっても怖かったですよ」

    セレス「でしたら、何故?」

    舞園「ふふっ。エスパーですから」



    モノクマ『えー舞園さんの勝ちー。セレスティアなんとかさんの負けー』


    舞園さやか✖︎○
    セレスティアなんとか○✖︎



  38. 38 : : 2017/07/10(月) 23:27:29


    モノクマ『次は、朝日奈さんと九頭龍君だね』


    朝日奈「よしっ!どんとこいだよ!」

    九頭龍「…」

    モノクマ『じゃ、時間も押してるんでサクサク行くよー、オーーープンッ!』


    『九頭龍 7』

    『朝日奈 K』



    モノクマ『朝日奈さんの勝ちぃーっ』


    朝日奈「…うそ……」

    九頭龍「ああん?何で勝ったテメーがそんな反応してやがる」

    苗木「…………っ」

    舞園「そんな…」

    朝日奈さんと僕と舞園さんの視線が茶柱さんへ向いた。

    王馬「へーっ、そういう事」

    セレス「なるほど」

    セレスさん達も勘付いた様だ。

    茶柱「………」

    当の本人は静かに目を瞑っていた。




    モノクマ『次は西園寺さんと白銀さんだよ!』




    モノクマ『開けゴマーーッ』


    『白銀 Q』



    『西園寺 10』



    モノクマ『白銀さんの勝ち!』



    西園寺「………私は別に負けても良いけど……」

    白銀「地味にQが残ってたからヒヤヒヤしてたんだよね。良かった」

    白銀さんはそう言うが、僕らはQのカードが持つのは茶柱さんだと知っていた。

    そして、相手の残っているカードがジョーカーとKである事も、当然。








    モノクマ『次は茶柱さんとキーボ君だね!』







    モノクマ『ご開帳ーーーーーっ!』





    『キーボ K』


    『茶柱 Q』



    モノクマ『キーボ君の勝ちぃ!』




    茶柱「………」

    苗木「茶柱さん…」

    茶柱「……転子は大丈夫です。だから今は、悲しむんじゃなくて、葉隠さんの勝利を喜びましょう」







    モノクマ『あ、じゃ残った葉隠君と夜長さんのカード、オープン』





    『夜長 joker』


    『葉隠 7』




    モノクマ『驚きの結果が出ました!葉隠君見事ジョーカーを的中させて勝利!』



    アンジー「あれまっ!」

    葉隠「な?言ったろ!俺の占いは3割当たる!!」


    現状を理解してない葉隠君だけが、嬉しそうに笑い声を上げていた。

    僕らは、到底笑う事なんて出来ない。

    この時点で、茶柱さんと夜長さん。そして、僕の脱落は確定したのだから。


  39. 39 : : 2017/07/10(月) 23:28:17




    ◇◆◇



    【ホール:王馬陣営】



    《ラストは大長編!残り29分41秒》


    王馬「混乱させるって作戦通り俺の引き分けは上手く決まったけどさー」

    王馬「いやぁー、一杯食わされちゃったねセレスちゃん!」

    キーボ「ですが、何故舞園さんはセレスさんに挑んだんでしょうか」

    白銀「発言がブラフで相手に7を出させたいから、セレスさんが10を持ってるって考える事は出来るけど、セレスさんが相手だともっと勘繰っちゃう筈なのにね…」

    王馬「舞園ちゃんが、ジョーカーを持ってた分確率的に勝ちやすかったのもあるけど、やっぱり苗木ちゃんの為なんじゃないかな」

    セレス「…なるほど、そう言うことでしたか」

    アンジー「えー?どうしてー?神様もー気になるってー」

    王馬「負けたら終わりの状況で『私はジョーカーを持っています』って相手が言った場合。アンジーちゃんならどうする?」

    アンジー「んー?持ってるカードにもよるけど挑まないんじゃないの?嘘かホントかは2分の1だし」

    九頭龍「まあ、持ってるか持ってないかで考えれば6分の1なんだがな」

    王馬「信じて挑む場合は、相手が出す数字は7、信じなかった場合は?」

    アンジー「7以外の数字でー、引き分けは嫌だから、11、12、13、ジョーカーかなー?」

    キーボ「しかし、ジョーカーを持っているなら他の所でも良かった気が…」

    王馬「割り切ったんだよ。セレスちゃんは絶対に7を持っていないってね」

    キーボ「確かに、セレスさんが7を持っていた場合。相手が信じて7を出しても、引き分け、信じなくてもジョーカー以外負けですからね…。そもそも『ジョーカーを持っている』は、ジョーカーが来る事を牽制してますし」

    白銀「でも、ハッタリだと思ってるよ相手にジョーカーを使う必要はあるのかな?」

    九頭龍「ま、信じねぇんだったら、弱いカードを持ってる奴がハッタリかましてるって考えるもんな。普通はよ」

    セレス「リーダーの勝利条件を満たす為に、絶対に負けるわけにはいかないからですよ」

    キーボ「それがどう繋がるんですか?」

    王馬「キー坊は本当にバカだなー、もし他の所へ行って、ジョーカーを持った舞園ちゃんが7を引いたらどうなるの?」

    キーボ「苗木君のチームの残りカードは、7、10、J、Q、K。こちらが10、J、Q、K、ジョーカー。基本的には数字が大きい方が勝つルールなので苗木君陣営が圧倒的に不利になりますね…」

    白銀「じゃ、じゃあ舞園さんは、負けるリスクを背負ってセレスさんに挑んだってこと?!」

    王馬「負けるリスクじゃなくて、勝てないリスクだよ。彼女は自分の命を賭けて苗木ちゃんを救おうとしたんだ」

    王馬「ま、苗木ちゃんはこのゲームにも負けて、王手が掛かっちゃってるだけどね。そもそも、勝ち越さなくても終わりだし」

    セレス「王手?フフッ、本当にそう思っているのですか?」

    セレスは不敵に笑う。それを見て王馬も口角を吊り上げた。

    王馬「…そうだね。さっきのは嘘って事で撤回させてもらうね。正しくは────」


















    王馬「───苗木誠は詰んでいる(チェックメイト)



  40. 40 : : 2017/07/10(月) 23:28:43
    [戦績]
    ・二回戦終了時点

    苗木✖︎✖︎
    舞園✖︎○
    葉隠○○
    朝日奈✖︎○
    西園寺○✖︎
    茶柱✖︎✖︎

    王馬○✖︎
    セレス○✖︎
    キーボ○○
    白銀✖︎○
    九頭龍○✖︎
    アンジー✖︎✖︎

  41. 41 : : 2017/07/10(月) 23:29:22


    ◇◆◇


    【ホール:王馬陣営】



    王馬「ざんねーん!俺視点だよーっ!」

    キーボ「?どうかしましたか?」

    王馬「何でもないよ。えーっと、現在、俺達陣営が6勝、苗木ちゃん陣営が5勝だね」

    キーボ「意外と接戦なんですね」

    王馬「jokerに7をぶつけられたのがキツかったね」

    アンジー「神様も言ってるよー。康弘は八親等まで罰が下るってね」

    白銀「地味じゃないくらい恐ろしいね…」

    アンジー「にゃはーっ、嘘だよーっ。神様は言ってるのです。あれで良かったのだとー」

    王馬「か、可愛い!アンジーちゃん!その嘘だよ可愛いよ!俺も使お!にゃはーっ、嘘だよーっ!」

    アンジー「…八親等まで呪うよ?」

    王馬「そんなァァァッ!!!!!!!」

    セレス「やれやれ。では相手の持つカードについて考えていきましょう」

    九頭龍「茶柱のヤローは、もう脱落決まってるんだろ。なら弱いカードが割り当てられるんじゃないか?」

    キーボ「いえ、その考えはやめた方が良いかと」

    九頭龍「一応聞いとくが、なんでだ?」

    キーボ「確かに結果として弱いカードが割り振られるかもしれません。勝っても負けても脱落してしまうので…」

    キーボ「ですが、強いカードを持って此方へ奇襲して来る事もあるかもしれません!」

    セレス「それは無いかと。茶柱さんに強いカードを持たせても他の方に何のメリットもありませんから」

    アンジー「でもー、誠がクリアする為に、独断で決めるかもしれないよ?」

    セレス「ふふっ、苗木君がリーダーだからこそあり得ないのです」

    白銀「…言われてみれば、あのお人好しの苗木君が我が身可愛さに他の人を危険に晒す姿は思い浮かばないかも」

    王馬「苗木ちゃんが勝つ為に動くとしても、茶柱ちゃんを捨てて、他で4勝狙うのが得策だもんね。俺たちのチームが3勝したら苗木ちゃんはゲームオーバーだし」

    王馬「順当にいけば、舞園ちゃん、朝日奈ちゃん、西園寺ちゃん、苗木ちゃんが強いカードを持つはずだよね」

    王馬「まー、そもそも、苗木ちゃんはジョーカーと7を持てないわけだから、ジョーカーを出せば絶対に勝ちなんだけど」

    セレス「ジョーカーが出される事が分かるのでしたらそれ読みで、弱いカードを持っている可能性が高いですが、そこへジョーカー以外のカードを合わせるのはリスクが高過ぎます」

    キーボ「それを更に読んで、苗木君がKを持ってくる可能性もありますしね」

    王馬「それが最後の希望だからねー。ま、苗木ちゃんには悪いけど、此方が苗木ちゃんに切るカードはジョーカーだよ」

    セレス「リスクがない賭けを見逃すのは損ですし、正しい判断かと」

    王馬「セレスちゃんは、ジョーカーを苗木ちゃんに、九頭龍ちゃんはQを持って茶柱ちゃんに」

    セレス「分かりました」」

    九頭龍「了解だ」

    王馬「キーボは7を持って舞園ちゃんに」

    キーボ「舞園さんにですか?僕は良いのですが、舞園さんがジョーカーを持っている可能性は高くないかと」

    王馬「いや、キーボにはわざと負けて来て欲しいんだ」

    王馬「このゲームでは敵だけど、本来は味方なんだし。積極的に減らしに行くべきじゃないからね」

    王馬「白銀ちゃんは、Kを持って葉隠ちゃんに。夜長ちゃんは11を持って…朝日奈ちゃんと西園寺ちゃん、どっちに行きたい?」

    アンジー「んー?日寄子かなー?」

    王馬「じゃあ、俺が10を持って朝日奈ちゃんに行くね」



    王馬「俺の見立てではこうなる筈だよ」


    苗木【J】セレス『ジョーカー』
    茶柱【7】九頭龍『Q』
    舞園【Q】キーボ『7』
    葉隠【10】白銀『K』
    朝日奈【ジョーカーorK】王馬『10』
    西園寺【ジョーカーorK】夜長『J』



    王馬「ま、これで合計9人はクリア出来る筈だよ。でも、俺は悲しいよ。3人も犠牲になるなんてぇぇぇええええうえぇええええええん!!!!」

    アンジー「嘘泣きしてる所悪いんだけどー、小吉口元緩んでるよー?」

    王馬「にしし。だって楽しいからね」



    王馬「苗木ちゃん。君はツマラナクなかったよ」



    そっと呟いた声は、誰にも届かない程小さなものだった。


  42. 42 : : 2017/07/10(月) 23:30:03



    王馬はチラリとタイムリミットを見る。


    《最後は大長編!残り18分18秒》


    王馬「……」



    王馬「キーボ、連れションしようぜ」

    キーボ「申し訳ありませんが、僕には排泄機能は付いていないので」

    王馬「良いから良いから」

    キーボ「ちょっと、引っ張らないでください!」

    王馬「伸びる服は無いんだし、良いだろ?」

    グイッ!

    キーボ「セクハラですか?ロボハラなんですか!?」

    王馬「心外だな!ハラスメントは人に対して行う事だから違うぞ!」

    キーボ「そこを否定するんですか?!嫌な予感しかしません!誰か!誰か!!!」

    セレス「………」

    九頭龍「………」

    アンジー「〜〜〜♫」

    白銀「やっぱり、夜長さんって器用だよねトランプタワーならぬカードタワーだ!」

    キーボ「!!!!!!」













    ◇◆◇



    【ホール:苗木陣営】



    《最後は大長編!残り1分59秒》



    苗木「本当に、これで良いんだね」

    葉隠「ああ!!俺はクリア決まってんだろ?」

    朝日奈「そうだけど、もっと他に言う言葉は無いの?」

    西園寺「恨みっこ無しって約束だし、私はこれで良いよ…」

    茶柱「ええ。転子も覚悟は決まってます」

    舞園「私も大丈夫です。それで苗木君…頰、痛くありませんか?」

    苗木「最初は痛かったけど今は引いてるよ」

    僕の頰には4つの紅葉が描かれていた。

    朝日奈「でもあれは苗木が悪いんだからね」

    西園寺「うん。苗木おにぃが悪いね」

    舞園「はい。苗木君が悪いです」

    葉隠「ああ、苗木っちが悪いべ」

    茶柱「はい!苗木さんが悪いです!」

    苗木「だから、皆んなあれはゴメンって…」

    頰に刻まれた紅葉を摩りながら僕は言う。

    苗木「…勝つ事を諦めてゴメン」

    改めて、謝罪の言葉を述べた。

    舞園「では、今はどう思ってるんですか?」

    そんな風に彼女は聞いてくる。

    ここでの回答を間違えれば、更に紅葉が増えるだろう。

    だから、僕はこう答えた。

    苗木「絶対に勝つ!!」



    「「「「「おおッ!!」」」」」



    ピーーーッ!


    《最後は大長編!残り1分30秒》


    電子音と共に扉が開かれる。


    僕ら6人は赤いカードを持ち、開かれた扉の向こうへ足を踏み入れた。



  43. 43 : : 2017/07/10(月) 23:30:44





    ◇◆◇




    【ホール:王馬陣営】



    《ゲーム開始まで50秒》



    王馬「じゃっ、そろそろ行く準備をしようか」

    キーボ「はい!」

    九頭龍「で、結局何話してたんだよ」

    キーボ「内緒です!」

    九頭龍「さっきからそれの一点張りだな…」

    王馬「まあまあ、良いじゃん!カード作るのも間に合ったんだし」

    セレス「ふふっ、確かにキチンとカードをドラッグしていました」

    王馬「酷いよねー。何も見張らなくて良いじゃん!俺カード変えたりしないって」

    白銀「地味にそういう考えて出来るって凄いよね」


    ピーーーッ!

    ドアが開く。

    ドアの向こう側では、苗木陣営の6人が、王馬達が出てくるのを静かに待っていた。


    アンジー「早く行こうよー、日寄子達待ってるよー?」





    ◇◆◇





    【広間:両陣営】




    苗木「………」

    アンジー「あれー?誠、頰に紅葉がいっぱい付いてるけどどうかしたのー?」

    王馬「ああ、あれはきっとね『僕はこのまま死んじゃう!後生だから、おっぱいを揉ませてくれ!出来ればヤラセ──』」

    キーボ「王馬君!!流石に、そういう風に茶化すのはいけないと思います…」

    王馬「何本気にしてんのキー坊。分かってるよ、それくらい」


    モノクマ『じゃあそろそろ始めてね』


    王馬「最初はリーダーの選択だから、また俺からだね」


    王馬「じゃあ朝日奈ちゃん。勝負だ!俺は負けないぞー!」ピッ


    朝日奈「分かった」



    モノクマ『では、オープンッ!』



    『王馬 10』



    『朝日奈 joker』



    王馬「ぐ、ぐわぁっ!まさか朝日奈ちゃんがジョーカーを持っていただなんて…持っていただなんて!!!」



    『王馬君の負けー。朝日奈さんの勝ちだね』






    キーボ「僕は、舞園さんの席ですね」ピッ

    アンジー「神様がねー。アンジーに言ったんだよ。弱いカードを持って日寄子に挑めってね」ピッ

    白銀「私は葉隠君だよ」ピッ

    九頭龍「悪りぃな…」ピッ

    セレス「苗木君。よろしくお願いします」ピッ



    モノクマ『準備が整ったみたいなので順番に処理していきましょう!!』



    モノクマ『まずは、舞園さんとキーボ君!』


    『キーボ 7』
    『舞園 Q』

    モノクマ『キーボ君の負け!舞園さんの勝ちぃ!』


    舞園✖︎○○
    キーボ○○✖︎



    モノクマ『次は、西園寺さんと夜長さん!』



    『夜長 J』
    『西園寺 J』



    モノクマ『引き分けだから、どっちも負けー!』


    夜長✖︎✖︎✖︎
    西園寺○✖︎✖︎



    苗木「西園寺さ───」

    西園寺「駄目だから!!…言ったじゃん。苗木おにぃ。謝るの禁止だってっ」

    苗木「……うん」


    モノクマ『どんどん行くよ!葉隠君と白銀さん!』


    『白銀 K』
    『葉隠 10』



    モノクマ『葉隠君の負け、白銀さんの勝ちだね』



    葉隠○○✖︎
    白銀✖︎○○





    苗木「………」











  44. 44 : : 2017/07/10(月) 23:32:11




    セレス(残った2人…苗木君は7を持てませんから茶柱さんが7、そうなると苗木君がKでしたか)



    セレス(西園寺さんが引き分けなのは驚きましたが。此方の思惑通りに進みましたね)


    セレス(ジョーカーのわたくしと苗木君のK、九頭龍君のQと茶柱さんの7でこのゲームも幕引きです)



    『えー、ラスト2組になったので、一斉に捲っちゃいましょう!なんと、結果は驚きの──』









    セレス(わたくしの──)
















    九頭龍(俺の──)



















    ((───勝ち!!!))




























    『──セレスティアなんとかさんの負け──!!』














    セレス「…は?」











    セレス「何故、わたくしが負け…」












    セレス「何で、何でわたくしが負けてんだよ、ビチグソがぁぁぁぁぁ!!!!」













    苗木「ごめんね。セレスさん」











    『セレス joker』

    『茶柱 7』









    モノクマ『茶柱さんの勝ちーーー』





    セレス○✖︎✖︎
    茶柱✖︎✖︎○

  45. 45 : : 2017/07/10(月) 23:33:04


    セレス「何故?わたくしは苗木君に…」









    九頭龍「じゃあ、俺はどうなってる!?」


    茶柱「すいません…九頭龍さん、謝っておきます。男死とはいえ、転子のせいで脱落するんですから」





    『九頭龍 Q』

    『苗木 K』





    モノクマ『苗木君の勝ち!九頭龍君の負け!』



    九頭龍○✖︎✖︎
    苗木✖︎✖︎○







    九頭龍「俺が…苗木に負けた?おかしいだろ!俺は茶柱と!!」



    苗木「入れ替えたんだよ」


    九頭龍「入れ替えたぁ!?カードは他人のを使えない筈だ!」


    セレス「そうです!そもそも、苗木君は7を使えない筈…!!」





    苗木「入れ替えたのはカードじゃないよ」


    セレス「カードじゃない…、まさか…!!」


    立ち上がり、茶柱さんの隣に立った僕を見てセレスさんは答えに辿り着く。



    苗木「そうだよ。入れ替えたのは─────僕と茶柱さんの席だ」



    王馬「あははははは!!!」

    それを聞いて片手で顔を覆いながら王馬君は声を出して笑う。そしてひとしきり笑った後静かに息を吐くと。

    王馬「まさか、そんな単純な手で俺が負けるとはね…」

    いつもと変わらぬ表情で僕を見ながら呟いた。

    苗木「このルールは、先攻側が有利過ぎた。だから、気付けたんだ」

    王馬「よくそんな事思いつくよね。ルールが滅茶苦茶なゲームで平等…だなんて」

    苗木「受け売りだよ、ゲームは公平ではないとつまらない」

    僕の発言聞いて、一瞬だけ目を丸くした王馬君は。

    王馬「ははっ、俺は敵に塩を送ってたんだね」

    またも一瞬だけ表情を変え、微笑みながらそう言った。
  46. 46 : : 2017/07/10(月) 23:33:31


    《最終戦》

    苗木【K】九頭龍Q
    茶柱【7】セレスjoker
    舞園【Q】キーボ7
    朝日奈【joker】王馬10
    葉隠【10】白銀K
    西園寺【J】夜長J






    [戦績]

    苗木✖︎✖︎○王馬○✖︎✖︎
    茶柱✖︎✖︎○キーボ○○✖︎
    舞園✖︎○○セレス○✖︎✖︎
    葉隠○○✖︎白銀✖︎○○
    朝日奈✖︎○○夜長✖︎✖︎✖︎
    西園寺○✖︎✖︎九頭龍○✖︎✖︎



    [白星]
    苗木チーム9
    王馬チーム7






    [生存]
    苗木
    葉隠
    舞園
    朝日奈
    キーボ
    白銀




  47. 47 : : 2017/07/10(月) 23:34:15


    ◇◆◇




    モノクマ『脱落した王馬君、セレスさん、九頭龍君、茶柱さん、夜長さんは王馬陣営の席の方に行ってね』







    苗木「ごめん…皆んな」

    王馬「本当だよ!!俺オシオキなんてされたくないよ!!!!!うえぇぇぇえええん!!なんてね。嘘泣きだよ。オシオキされたくないのは本当だけどね」

    王馬「でも、苗木ちゃんが謝る事じゃないよ。君は、こう言わないといけないんだ。『悪いのは、全部黒幕なんだ!』ってね」

    王馬「それは決して責任転嫁じゃないから。だから、そんなに許されようとしないでよ。俺たちだって、本当の敵を見失ったりはしてないんだからさ」

    九頭龍「そーだな。それに、俺だってゲームの中でオメーらを陥れようとしたんだ。それで俺が責めるってのは筋違いだろ」

    アンジー「神様が大丈夫って言ってるから大丈夫だよー」

    舞園「ごめんなさい。西園寺さん、私と西園寺さんのカードが反対だったら」

    西園寺「ひっぐっ…ぐすっ。結果がどうだって、恨みっこ無しって話だったじゃん…!今更蒸し返すなよぉ…!」

    朝日奈「セレスちゃん…」ポロポロ

    セレス「フフ、何故泣いているのでしょうか?敗者に待つのは制裁です。私と勝負した方の中には、血液を全て抜かれた者もおりました」

    朝日奈「だって…私達は巻き込まれただけなのに…」

    セレス「敵の全貌が分からないとはいえ、わたくしはゲームに乗ったんです。今更ルールに従わないなんて、そんな見苦しい真似はしません。命乞いをして、無様に死ぬなんて」

    キーボ「九頭龍君…」

    九頭龍「なんだよ。俺に湿っぽい雰囲気なんて無理だぜ?だけどよ、これだけは言わせてもらう。キーボ、お前は勝ったんだ。胸を張れ!男だろーが!」

    キーボ「は、はい!」

    九頭龍「確かにお前の身体は鉄で出来てるかもしれねー。だけどな、お前の心は本物だ」

    キーボ「本物偽物で考えている時点でロボット差別です!」

    九頭龍「この状況でそれ言うのかよ…」

    キーボ「それとこれとは別です。ですが、有難うございます」

    アンジー「じゃーねーっ。…他に言う事は特に無いよー?」

    葉隠「アンジーっち…ブレない女だべ」

    それぞれが別れの言葉を言う中。


    茶柱「苗木さん…」


    ずっと黙っていた茶柱さんが遂に口を開いた。

  48. 48 : : 2017/07/10(月) 23:34:54




    茶柱「また、背負わせてしまってますか?」


    夜長さんに肩を借りながら、彼女は言う。


    優しい口調で、語りかけるように。


    苗木「…重過ぎだよ。もう、歩けないよ……」


    茶柱「そう…ですか。──てい!!」


    彼女は掛け声と共に、僕の胸目掛けて突きを繰り出した。


    苗木「ぐはぁ──?!!」


    重くはないが、不意をついた一撃が僕を捉えた。


    茶柱「脚に力が入らないので、掌底突きが甘くなりましたね」


    茶柱「女子に重いなんて失礼ですよ。男死はこれだから…」


    吐き捨てるように彼女は言う。だけど、その顔はとても穏やかなものだった。


    苗木「それでも、いきなり掌底は…」


    茶柱「因果応報です!!」


    苗木「そんな…めちゃくちゃだよ!」


    茶柱「滅茶苦茶じゃないです」


    苗木「だって、重たいに決まってるよ…、このゲーム開始からほぼずっと一緒に居たじゃないか。ずっと支えてくれたじゃないか!」


    吐き出すのは言葉。


    流すのは涙。


    溢れ出るのは感情。


    止まらない。思い出がフラッシュバックされる。


    茶柱「背負わないで良いんですよ。苗木さんは、転子を助けてくれました。だから、因果応報なんですよ」


    震わせる僕の肩に、彼女はそっと手を当て、微笑む。


    茶柱「今度は転子が救う番だっただけの事です」


    苗木「茶柱さん…」ポロポロ


    茶柱「だから、どうか、泣かないでください。転子も…つられて泣いてしまうでは無いですか…」ポロポロ


    苗木「…ごめん───ううん、ありがとう。茶柱さん」


    茶柱「白銀さん、舞園さん、朝日奈さんの事をどうかよろしくお願いしますね」


    ブレザーの袖で涙を拭う。泣き顔では格好がつかないから。


    苗木「うん。任せてよ」


    茶柱「では、私も安心していけますね」

    彼女はそう言うと、夜長さんと共に王馬陣営の席まで歩き出す。



    苗木「────!」



    パシッ!

    止めに行こうとする僕の手を誰かが掴んだ。

    振り返ると僕の手を握った舞園さんが、小さく首を横に振った。

    反対側では朝日奈さんが、誰よりも涙で顔をくしゃくしゃにして、首を横に振る。

    ここで止められて、辛いのは彼女達だから。

    覚悟を踏み躙るなと。





    全員が、席の向こう側へ行くと部屋の中心、僕と王馬君の陣営を分断する様にシャッターが降りてくる。



    ガシャンッ!!!



    そして彼女達の姿は見えなくなった。



  49. 49 : : 2017/07/10(月) 23:35:37






    だけど、声だけが聞こえた。



    モノクマ『此方の声は届かないけどー、あちらの声は聞こえるよ。じゃあ、本音を聞いちゃいましょうか!』



    苗木「えっ?」







    ◇◆◇






    王馬「九頭龍ちゃん、泣いてる!?九頭龍泣いてる!?」


    茶化す様に王馬君は言う。


    九頭龍「ああ?目ぇついてんのか?テメーこそ、ビビってるだけだろ」


    ドスの効いた声で九頭龍君は怒鳴り。


    王馬「俺はプレス機に潰されそうになっても逃げない自信があるよ」


    セレス「あら、わたくしは嫌ですわ。圧殺なんて、美しくありませんもの」


    セレスさんはいつもの口調で2人の会話に割って入った。


    アンジー「あれー?泣いてるー?2人ともー、もしかして怖いのー?」


    アンジーさんの声も聞こえた。
    ───2人。それはきっと


    アンジー「ねぇー、日寄子ー、転子ー」


    西園寺「…うるっさいなぁ!!何で逆に澄ました表情でいられるんだよ!!嫌だからに決まってるだろ!!!!」


    西園寺さんが叫ぶ。先程まで必死に堪えていたのだろう。


    分断された事により、堪えていたもののタガが外れた。


    西園寺「私は死にたくない……っ!小泉おねぇや澪田おねぇ、罪木のゲロ豚だって、もっと、もっと、一緒に居たかったよぉ……!!!!」


    鼻声と、荒れた呼吸から絞り出す様に。本音をぶち撒けた。




    苗木「──ッ!」


    何も言えなかった。言っても届かないからではない。


    絶句。言葉を失い、僕らは俯いた。





    王馬「俺も、ゴン太やキー坊をもっとからかいたかったなーっ。最原ちゃん騙したり、赤松ちゃん困らせたり。なーんて!!…ホントだよ!!」



    続いて王馬君が言う。出来た流れは止まらない。



    セレス「夢が叶えられないのはわたくし良しとはしません。残した猫が気掛かりですし。豚にも……」




    九頭龍「ペコと、菜摘。あと日向と左右田のアホ…それと…。チッ。心残りがあり過ぎて困るな!死んでも死に切れねぇよクソが!!…ああ!クソッ!!!!」




    茶柱「転子も!!夢野さんともっとお喋りしたかったです!赤松さん達とお菓子を作ったり、可愛い服を着たり!女の子らしい事だってしたかった!!」





    苗木「ごめん………ごめん、みんな…」



    膝から崩れ落ちる。背負うなと言われたがこれは────





    茶柱「だから!」





    ────「だから」と、彼女は言った。







    茶柱「だから、絶対に迎えに来てください!!」






    苗木「!」






    白銀「何で、私達が…こんな事をしないといけないの」


    舞園「………っ…ぅぅ…ひっく」


    朝日奈「ひっぐっ………また会いたいよ。また、皆んなに会いたいよ…ぐすっ」

    キーボ「…………」

    各々が、違う行動を取っていた涙を流し、不満を言うもの、願望を言うもの、黙って唇を噛むもの、耳を塞ぐ者。









    立ち上がる者。



    苗木「僕だってそうさ。また、会いたい」



    折れた膝を伸ばし、立ち上がる。



    崩れ落ちた姿を見られたら、また掌底を食らわせられかねないから。



    苗木「だから誓うよ!絶対に救ってみせるから!!!」



    此方の声は届かない。だから、これは約束ではなく。誓いだ。




    脱落。オシオキ。別れ。


    だけど、二度と会えないわけじゃない。


    オシオキは永遠に続く苦行だとモノクマは言ったから。


    だからどうか待ってて。


    救い出す、その日まで。








    ────ドゴォオオオオオオンッッ!!!!!!!!



  50. 50 : : 2017/07/10(月) 23:36:05


    苗木「えっ?」






    シャッターの向こう側で激しい爆音がした。

    空気がビリビリと震え、熱気が僕らの元まで届く。



    苗木「モノクマ…今のはどう言う事だよ…」





    モノクマ『エクストリーム!!!!!』





    苗木「今のはどう言う事だって聞いてるんだよッッ!!」



    モノクマ『いやー。趣向を凝らしてヤっちゃいました!やっぱり、派手な方がオマエラも良いよねー』


    苗木「っ………ふざ……な…」


    モノクマ『ん?なぁに?チビだから聞こえないクマ?』


    苗木「ふざけるなッ!!」


    モノクマ『ふざけて無いよ。いつだって僕は真剣だよ?』


    苗木「…待ってろモノクマ、絶対にお前の元まで辿り着いてやる!正体を暴いて、絶対に罪を償わせてやる!!」


    モノクマ『うぷぷ。面白い事言うねぇ。やってみれば?出来るのならね』


    モノクマ『うぷぷ。うぷぷぷぷぷぷ』



    その不愉快な笑い声を聞きながら、僕らは転送の光に包まれる。


    モノクマ『あ、こう言う時ってこれ言うんだよね?「上手に焼けましたーっ」ってね』


    苗木「モノクマぁぁああああああああ絶対に!!絶対にお前だけは────!!!!!」


    溢れる負の感情を声に変えて僕は叫ぶ。


    だけど咆哮はモノクマへ届かない。


    視界は白に覆い尽くされ、不快な浮遊感が僕を襲う。




    苗木「──」






    僕は大切な仲間を失った。


    もう会えない。もう話せない。


    だけど僕は忘れない。絶対に忘れない。


    僕と一緒に戦った彼らの事を。


    最後に見た、彼女の微笑みを。









    シックスカード 終


    残り6人

  51. 51 : : 2017/07/10(月) 23:37:36




    ◇◆◇




    【広間】


    最初の広間に僕らは戻って来ていた。

    広いホールが、更に広く感じる。

    苗木「…………」

    誰も何も言わなかった。

    ただ、黙って、数の減ってしまった広間で俯いて。

    そんな中、口火を切ったのはキーボ君だった。

    キーボ「苗木君。王馬君が最初に考えたフェイクの質問って何でしたっけ?」

    苗木「? 確か、『裏切り者は生き残りの中にいますか』だったよね」

    キーボ「そうです!ありがとうございます!」

    葉隠「…ロボットでも物忘れとかあるんだな」

    キーボ「あ!明らかなロボット差別です!貴方も僕が数学を解いていたら電卓と言う人種ですね!」

    話が逸れかけていると感じた。

    今はもう、会話の中心になって居た王馬君もセレスさんも居ない。

    苗木「質問を決めようか…」

    だから、僕がやらないといけないと思った。

    白銀「そう…だね」

    苗木「じゃあ、男子は倉庫に移動しよう」

    キーボ「そうですね。移動しましょう」

    葉隠「俺は、よく分からんから、苗木っちとキーボっちでやってくれ」

    苗木「うん。分かった」



    ◇◆◇



    【倉庫】


    キーボ「……」

    苗木「……」

    キーボ「お、王馬君の『キー坊』も、違和感がありましたが、『キーボっち』は孤独感があって嫌な気持ちになりますね」

    苗木「…そうだね」

    キーボ(ダメだ!楽しんで貰えなかったみたいだ!)

    苗木「ごめん。キーボ君。割り切ったつもりだったんだけど、人の少なくなった広間を見て、限界だった」

    キーボ君が気を遣ってくれているのは、普段よりなお優しい物腰で話しているのを聞いて分かった。

    だから、素直にそう打ち明けた。

    キーボ「割り切る事なんて出来るわけないじゃないですか」

    それに対し彼は、出来る訳ないと返す。

    苗木「え?」

    キーボ「僕だって…出来てません。なのに苗木君が出来るわけないじゃないですか…、出来てしまったらそれこそ心が機械で出来ています」

    キーボ「ああ、これはロボット差別では無く、卑下なので」

    苗木「そうだよね…。ううん。そうに違いない」

    キーボ「割り切る事は簡単な事じゃありません。なら割り切らずに進めば良いんです。足を止めたら、きっと皆さんは悲しみます」

    苗木「うん。僕は、皆んなを引き摺って行くよ。引き摺って、前に進む」

    キーボ「苗木君…良かったです!では質問を決めましょうか」

    苗木「えっと、候補が…舞園さん、茶柱さん、ソニアさん、セレスさん、白銀さんだよね。これを2、3に分けないといけないね」

    キーボ「僕はこの中に裏切り者が居るとは思えません…いや、思いたくありません」

    苗木「うん。僕も同じだよ」

    キーボ「ですが…、強いて挙げるならソニアさんが怪しくないでしょうか?」

    苗木「何で?」

    キーボ「王馬君が考えたフェイクの質問です」

    苗木「『裏切り者は生き残りの中にいますか?』だよね。これがどうしたの?」

    キーボ「それを聞いて、最初のミニゲームを変えたとは思えませんか?」

    苗木「いや、偶然じゃないかな」

    キーボ「何故ですか?」

    苗木「だって、質問を変えれば済む話だから。裏切り者は広間の中にいますか?ってね」

    苗木「だから、元々の目的と噛み合っただけだと思う。生還者と脱落者を分からなくするための」

    キーボ「その通りですね…」

    キーボ「では、逆に考えてみませんか?誰が違うと思うのか」

    苗木「逆だと…僕は、茶柱さんと舞園さんは違うと思う」

    キーボ「僕は、セレスさんと白銀さん茶柱さん舞園さんは違うと思います」

    苗木「理由は、お互いに言わなくても分かるけど、キーボ君ほぼ全員なんだね」

    キーボ「ええ。彼女達は、僕達に対する裏切り行為を一切してないんです。寧ろ協力的でした」

    苗木「シックスカードは、お互いを貶め合うゲームだったけど、皆んな勝つ為にやってたし、セレスさんは入れ替えれる事を知らなかったみたいだしね」

    キーボ「そうです。それに最初のハンドレッド鬼ごっこで茶柱さんは、身を挺して朝日奈さんと葉隠君を守ったそうですし」

    苗木「逆に、ソニアさんは、妨害も無いけど協力もしなかったよね。ハンドレッド鬼ごっこ以降居ないから当然なんだけど」

    キーボ「それと、もう一つ理由があるんです」

    苗木「理由?」

    キーボ「シックスカードの2回戦が終わった後、王馬君と秘かに話したのですが」

    苗木「王馬君と?」

    キーボ「…実際に流した方が分かりやすいので、流しますね」


    彼はそう言いながら、耳?のダイヤルを回す。すると


    王馬『苗木ちゃん。君がこれを聞いてるって事は、俺は生きていないんだね』

    苗木「!」

  52. 52 : : 2017/07/10(月) 23:38:16


    王馬『なーんて!湿っぽい事言ってるけど、俺はキー坊を乗っ取って蘇ったんだ!当然噓だけど』

    キーボ『勝手な事言わないでください!』

    王馬『あーもう、ややこしくなるから黙っててね』

    王馬『キー坊に頼んだのはね。苗木ちゃんに、フェイクの質問を復唱させてくれって事だよ。あ、これは本当だから』

    キーボ君はコクリと頷く。いや、正確には、ガシャンと。

    王馬『裏切り者は相当正体を隠すのが上手いみたいでさー、まだ見抜けてないんだよねー。俺がゲームを乗っ取ろうにも、男子じゃないから無理みたいでさー。実は俺、女なんだ。って言っても誰も信じてくれないでしょー?』

    キーボ『フフッ…』

    王馬『何、口から温風出してんの?ドライヤー?』

    キーボ『違います!笑ってるんです!相当正体を、と悪の総統で!』

    王馬『はいはい、まさかギャグセンスも老人並みとはね。キー坊は黙っててねー』

    キーボ君が訴える様な目で見てきたので、僕は黙って首を横に振った。

    キーボ「!……」

    王馬『脱線したけど、何でキー坊に言わせたかっていうと、不用意な発言が質問扱いされない為だよ』

    王馬『俺はこう考えた。裏切り者が生き残りに居るなら、皆んなより先に広間に戻ってガベルを叩くんじゃないか…ってね』

    王馬『下手な発言をして、的外れな質問扱いになった時、質問は消費されるし、消費されなくて苗木ちゃんがガベルを叩いた場合、それは2回目になるから──ここまで言えば分かるよね?』

    苗木「告発扱いになる…!」

    キーボ『何故ですか?』

    王馬『だーかーら、キー坊には言ってないんだってば。ま、教えとくと告発扱いになって、下手をすれば裏切り者以外の名前を呼んで脱落しちゃうからでした』

    王馬『だから、言ってもらったんだよ。最初の質問を』

    王馬『これがYESだったら、生き残りの中にいる裏切り者候補2人のどちらかが裏切り者だから、最初に話したABのやつを使えば確実なはずだよ』

    王馬『ま、杞憂に終わってるんじゃないかな、キー坊が苗木ちゃんに質問を復唱させても何も反応なかったと思うよ』


    王馬『だから俺はこう思う。裏切り者は、今広間にいる生き残りの中には居ないんじゃないかってね』


    王馬『あと、今までので分かると思うけど、裏切り者分かってるっていうの嘘だから』

    王馬『じゃあ、苗木ちゃん、頑張ってねー』


    彼は、どこまで見抜いているのか。

    この状況を完璧に見透かして居るなんて。














    王馬『よし、キー坊、カット。切った?』


    苗木「………?」


    王馬『次は裏切り者候補3人のパターンだよ。舞園ちゃんと、セレスちゃんと、白銀ちゃんが残っ──ブチっ!!!


    苗木「え?」



    キーボ「あっ!再生しすぎました…!!」

    苗木「…全パターン録ってたんだね」

  53. 53 : : 2017/07/10(月) 23:38:51


    苗木「でも、王馬君の言いたい事は分かったよ。もし、裏切り者が生き残りの中にいるなら、どうなったか分からないソニアさんという隠れ蓑を使って仕掛けてこない筈はないってことだよね?」

    キーボ「逆に、ここまで何もしてこないのは最初のゲームで生還か脱落をしているのでは無いかということです」

    苗木「じゃあ質問は、ソニアさんに限定出来る質問が良いって事だよね?」

    キーボ「そうですね。先程の5人の中からソニアさんだけに絞るなら、クラスについて聞くのはどうでしょうか?」

    苗木「うん。それが良いかもしれないね。『裏切り者は2組の生徒ですか?』って聞けば問題ないと思う」

    キーボ「舞園さん、セレスさん、苗木君のクラスが1組、僕、白銀さん、茶柱さんのクラスがV3組ですからね」

    苗木「全く関係ないけど、何でキーボ君達のクラスだけ、Vが付いてるんだろうね」

    キーボ「それは僕らにも分かりません…」

    苗木「じゃあ、戻ろうか」

    キーボ「はい!」









    ◇◆◇



    【広間】


    苗木「『裏切り者のクラスは、2組ですか?』これでいこうと思う」

    白銀「…それって、ソニアさんに決め打ちするって事?」

    キーボ「はい。その通りです」

    舞園「本当にそれで良いんですか?」

    苗木「本来なら2、3で分けるのが普通なんだけど、その場合でも100パーセント分かるってわけじゃないから」

    白銀「成る程。地味に決め打つ事で、次のゲームが始まる前に終わらす算段なんだね」

    キーボ「そうです。他の皆さんはゲーム中の行動から見ても裏切り者らしい行動が無かったですし」

    朝日奈「うんうん。私もそう思う!…でも、ソニアちゃんが裏切り者みたいって思ってるわけじゃないからね」

    葉隠「任せた!苗木っち!」

    苗木「うん」


    僕は5人に見守られながら、台座に近付き、ガベルを手に取る。


    カンッ!


    苗木「『裏切り者のクラスは2組ですか?』」























    『NO』








    キーボ「!!」


    苗木「………そんな」



    どんよりとした空気。



    葉隠「まだ…まだ終わんねぇって事なのか?」



    ゲームはまだ、終わらない。


    モノクマ『いやぁ、4分の1だし、当てずっぽうでやるのも手かもしれないよ』

    朝日奈「わっ!いきなりモニターがついたよ!」

    モノクマ『なーんて、誰もそんな勇気ないよねー』

    モノクマ『なーのーで!ゲームの説明して良い?どうせ、くだらない、何の生産性も無い会話しかしないんでしょ?『だべ』と『ロボット差別です』しかバリエーションないんでしょ!』

    キーボ「それは、僕を指しているんですか?全く…」

    モノクマ『何さ。その余裕そうな顔』

    キーボ「いえ。元からこういう顔ですねで。ただ、スペックは僕が勝っていると思います!」

    モノクマ『ふーん、じゃ、サードゲームのルール説明に移るねー』

    モノクマはキーボ君の話を聞き流し、淡々と話を続ける。


  54. 54 : : 2017/07/10(月) 23:39:42


    モノクマ『サードゲームは「三つ巴人柱」ぁー!』

    モノクマ『ゲームのルゥールはとっても簡単。皆んなに1ずつ振り分けられたポイント。これを奪い合うんだ』

    モノクマ『合計3になったら腕時計の端末に表示される【帰還】を押すと戻って来られるよ』

    キーボ「それで、奪い合うとは一体どう言う事でしょうか?」

    モノクマ『ジャンケンだよ』

    白銀「ジャンケンって…あのジャンケン?」

    モノクマ『うん、そうだよ。身体に触った相手とジャンケンをするんだ』

    モノクマ『ああ、そうそう。ジャンケン中は端末を扱えなくなるから注意してね』

    モノクマ『ポイントが0になったら、残念。1分後に脱落です』

    舞園「何で1分猶予があるんですか?」

    モノクマ『1分の猶予はね。ポイントの受け渡しが可能だからだよ』

    モノクマ『ただし、同じ人の間でポイントを受け渡しして1分の時間を何度も稼ぐのは駄目だよ。ポイントをあげた人は2分間、受け取ることも、渡す事も出来ません!』

    モノクマ『ただ、1度に複数人に送信は出来るよ』

    モノクマ『0ポイントの人は、ジャンケン出来ないから注意してね』

    モノクマ『受け渡しとかは、お爺ちゃんがらくらくスマートフォンいじるより簡単だから安心してね』

    白銀「それ、地味に難易度高くない?」

    苗木「また、仲間達で争わせようとするのか…?」

    モノクマ「いや、違うよ。ステージ内にはまたまたシャドウが居るから」


    モノクマ『あと、手を繋いだ人となら一緒にジャンケンできるよ。でも、手以外に触れたらジャンケンになっちゃうから注意してね』











    モノクマ『あ!忘れてた。ジャンケンは右手でしか出来ないから気を付けてよ!左手は意味ないからね!』







    葉隠「ちょ、ちょっと待ってくれぇ!俺は?俺はどうなんだ?!」

    モノクマ『じゃあ、今から始めるよー!バイバーイ!』


    葉隠「ま、待ってくれぇっ!!」


    葉隠君の悲痛の叫びをモノクマは相手にせず。


    僕らは再び光に包まれる。

    やはり、この浮遊感には慣れる事は出来ない。







  55. 55 : : 2017/07/10(月) 23:40:29






    ◇◆◇




    【廊下】


    苗木「学校…?」

    見覚えのない学校に僕は居た。

    学校と分かったのは、廊下の作りと、部屋の前に職員室と書かれていたからだ。

    苗木(窓を開けて出られるんじゃないのか?)

    レバーを下ろすタイプの窓に手を掛ける。

    苗木「ぐぐぐっ…開かない」

    鍵は開いているのだが、窓が開く様子は無く。幾つか試したがどれも全く動かなかった。

    ポンッ

    窓を開く事に夢中になっていて本質を忘れていた。

    真っ黒の手が、僕の肩を叩く。

    苗木(!!)


    『勝負。成立』


    『初回説明。ポンのタイミングで同時に出してください後出しと、相手の邪魔をする行為は即負けですのでお気を付けください』

    『では行きます。じゃん、けん、ポン!』


    真っ黒な手はチョキ。


    僕が出したのは握り拳。つまり、グー。

    『ポイント追加しました』



    苗木「…ふぅ」

    思わず息を漏らした。

    これで、敗け=脱落からは逃れる事が出来る。

    残機が1増えた、が正しいのだろうか。

    その場に居たシャドウは煙の様に消えてしまった。






    ◇◆◇






    葉隠「なあ、頼むよ。朝日奈っち、俺にポイント譲ってくれ、ただとは言わねえ、俺の占い半額券をだな、あっ!待つべ!!!おーい!!」






    葉隠「舞園っちぃーっ、頼むべ。1ポイントで良いべ?何?今1ポイントしかない?いや、椅子持ってる事に他意は無いべ?あ!おーい!待ってくれぇ!!」











    葉隠「酷いべ!!!!!」


    葉隠は、椅子を床に叩きつけながら、現状を嘆いた。






    ◇◆◇


    【廊下】


    白銀「苗木君、無事で良かった。今何ポイント?」

    苗木「白銀さん!」

    学校にいるシャドウが何人いるか分からないが、知り合いに出会えると言うのは精神的にだいぶ有難い。

    苗木「今は2ポイントだよ。白銀さんは?」

    白銀「流石超高校級の幸運だね!クリアまであと1歩。私はまだ1ポイントだよ」

    苗木「じゃんけんだし、ただの偶然だよ。それにまだまだ先は長いよ、少なくともあと3ポイント集めないといけないし…」

    白銀「?あと1ポイントでクリアじゃないの?」

    苗木「うん、そうなんだけど。葉隠君はじゃんけんが出来ないから…」

    白銀「ああ。受け渡しのルールを使うんだね」

    苗木「そうだよ」

    白銀「でも、それで負けたら…」

    苗木「確かに。欲をかいて負ける可能性もある。でも見捨てる事なんて出来ない。だって、友達だから」

    白銀「そっか…私、行くね」

    苗木「えっ、一緒に行動しないの?」

    白銀「うん。地味に足手纏いになりそうだから」

    苗木「足手纏い?」

    白銀「うん。私が、0ポイントになったら苗木君はポイントを渡すと思うんだ」

    白銀「これは個人戦。私は地味だけど、戦える立場で役立たずにはなりたくないからさ」

    苗木「そんな!僕は別にそんな事を思ったりは……」

    僕の言葉を聞く前に彼女は駆け出していった。

    追うのは無粋だと思い。僕も白銀さんとは逆の方へ歩き出す。


    ドンっ!


    苗木「いてっ」


    『勝負成立』


    曲がり角で誰かとぶつかる。


    これが物語ならきっと、僕のぶつかる相手はパンを咥えた女子なのだろう。


    だけど、これは現実。真っ黒な身体のシャドウが僕を見下ろして居た。

  56. 56 : : 2017/07/10(月) 23:41:47
    苗木「……」ゾワッ


    全身の毛が逆立つ。

    ジャンケンというのは勝つ可能性は50-50。

    だけど、このシャドウには勝てない気がした。


    『じゃん、けん──』


    だが、勝負は始まっている。


    逃げる事は出来ない。




    『──ポン!』



    咄嗟に出した手は、チョキ。


    シャドウはグーを僕に突きつける様に出した。



    『ポイント マイナス』



    苗木(負けた…でもまだ、1ポイン──ガシッ!


    ジャンケンの終わった直後。シャドウは僕の腕を掴んだ。



    苗木「!!」



    『勝負成立』



    苗木(嘘だろ?)


    シャドウ「───」

    見上げるが、真っ黒なのっぺらぼうにしか見えない。だが、それは笑っている様に感じた。

    『じゃん、けん』

    苗木「!」

    考える時間は無い。いや、考える意味は無い。だって、これは運ゲー(ジャンケン)なのだから



    『ポン!!』






    苗木「………」


    僕はグーを出した。真っ黒な手は、それを包み込むようにパーを出していた。


    苗木「そん…な」




    シャドウは踵を返し、僕の前から姿を消す。




    僕の負け。



    僕は脱落する。



    誰の無念も晴らせず。



    何も残せず。



    無駄に消える。










    『葉隠康弘さんより、1ポイント受け取りました』







    苗木「え?」

    葉隠「全く。見てられねぇべ」

    苗木「…葉隠君…なんで?」

    葉隠「苗木っちがポイント集め終わったら直ぐに譲って貰おうと思って後をつけてたんだべ」

    苗木「違うよ…そうじゃなくて!何で僕にポイントを!」

    彼はジャンケンが出来ない。つまり、ポイントは初期の1ポイントしかない筈。

    葉隠「苗木っちだけだからだべ。血も繋がって無い俺のために、ここまでしてくれたクラスメイトは」

    苗木「何を言ってるの…?僕は君に何も」

    葉隠「ずーっと、後をつけてたって言ったろ?だから、聞いてた。苗木っちと白銀っちの話をよ」

    苗木「でも、結局。君に何も…!」

    葉隠「この変なゲームの時からじゃねぇぞ?希望ヶ峰学園に苗木っちが入学してからだ」

    葉隠「苗木っちはお人好しで、カモだけど。唯一…俺を友達だって言ってくれた」

    苗木「カモは…余計だよ…」

    葉隠「借金取りが怖くて留年し続けてたけど良かった。だって苗木っちと出会えたからな」

    苗木「僕だって出会えて良かったと思ってるよ……でも、このポイントを渡したら君は…」

    葉隠「いや、きっとどうにかなるべ。俺の占いは3割当たる!!」

    苗木「ならないよ…。絶対に」

    葉隠「んじゃー、どうにかしてくれっ」

    苗木「どうにか?でも、僕はポイントの受け渡しは…!」

    葉隠「そうじゃねーべ。モノクマは、殺すとは言わなかった。永遠に死んだ方がマシなオシオキをするって言っただけだべ。俺の占いが言ってる。茶柱っちや王馬っちは生きてる」

    葉隠「だから、絶対に助けに来てくれ、約束だ」

    葉隠君はそう言うと、光に包まれて消えた。

    苗木「………葉隠君…」

    彼はいつもそうだ。一方的に約束を結ばせる。

    自分勝手で身勝手で、変なセミナーや、変な販売会に、変な漁。

    僕は1度、その変な約束により外国に売り飛ばされそうになった事があった。

    幸い霧切さんや他の皆んなから助けられ大事に至らずには済んだ。

    それからはその約束を断り続けていた。一方的に結ばれた約束も無視していた。

    だけど、この約束だけは。

    苗木「絶対に守るから」


  57. 57 : : 2017/07/10(月) 23:42:12





    ◇◆◇



    学園を彷徨うが、未だシャドウには出会わなかった。

    絶対に救うと意気込んだのだが、まずはこのゲームに勝たなければいけない。

    これはじゃんけん。2度目だが何方が勝つかは50:50──


    茶柱『1人で背追い込まないでください』


    不意にその言葉を思い出す。

    苗木「……! そうか!」



    苗木「これは…3人で協力するゲームなんだ」

    正しくは。

    苗木「味方が多い程、勝ちやすいゲーム」

    このゲームには必勝法は無くとも、攻略法はある。



    白銀「あ、苗木君。まだ帰還してなかったんだね」

    そんな一人言を話していると、再び白銀さんと出会い、声をかけられた。

    苗木「うん…。負けちゃって………葉隠君に助けられたんだ…」

    隠し事はしたくなかった為、僕は素直にそう打ち明けた。

    白銀「えっ、それじゃあ葉隠君は?」

    苗木「………」

    僕は黙って首を横に振る。

    白銀「……そっか。でも、切り替えないといけないよね」

    苗木「大丈夫。約束したから。それに葉隠君の占いを信じるって決めたから」



    舞園「あ!苗木君!それに白銀さん!」



    苗木「舞園さん!良かった。無事だったんだね」

    白銀「そういえば苗木君が口に出してたけど、数が多い程勝ちやすいって?」

    舞園「勝ちやすい方法…ですか?」

    苗木「そのままの意味だよ。ポイントを受け渡せる事と、手を繋いだ人と一緒にジャンケンが出来る事が鍵だったんだよ」

    苗木「例えば、1人、グーを出す人を選ぶ、そして残りのみんながパーを出すんだ」

    苗木「チョキならあいこ、じゃんけんは続くし、シャドウがグーを出した場合、確実に1ポイント手に入る。グーで負けた人には勝った人がポイントを渡す」

    苗木「パーを出して来た場合、また同じ様に1人負ける人を仲間から選んでじゃんけんをする。こうすればシャドウが勝ち続けない限り、こちら側から点を取られる事は無いんだ!」

    白銀「確かに、3分の1を相手が引き当て続けない限り負けないのは秋○さんも驚きの必勝法だよ」

    舞園「私も賛成ですが、誰かが裏切った場合…」

    苗木「そこは皆んなを信じてるから…それにこれは凄く裏切りにくい方法なんだ」

    白銀「確かにそうだね。裏切って違う手を出したとしてもシャドウによってはあいこになる可能性もあるし、シャドウに総取りされる可能性も地味にある」

    苗木「うん。それなら皆んなで確実に勝っていく方が堅実でしょ?」

    苗木「じゃあ、キーボ君と朝日奈さんも探そうか」

    舞園「そうですね」




    ◇◆◇


    暫く学園を探索したが、朝日奈さんやキーボ君は未だ見つけられず。

    そして、道中シャドウにも出会う事は無かった。

    今、この時までは。

    苗木「囲まれた?何で…?」

    前方に2人、後方に3人。

    舞園「シャドウも、全く同じ事をしようとしてるのかもしれません」

    白銀「地味に絶体絶命?」






    キーボ「皆さん!!大丈夫ですか!?」

    手を繋いだ3人のシャドウの向こう側で、キーボ君の姿が見えた。

    キーボ「このシャドウは僕に任せてください。飯田博士が設計してくれたこの手には」

    白銀「まさか、相手の出す手に合わせて自動で勝てる手になる機能が!」

    キーボ「いえ、その様な機能はないです。あるのは綺麗にチョキを出す機能だけです」

    白銀「使えないよね!?そもそも地味だよね!」

    キーボ「僕が3人と相手しておくので、皆さんは残りの2人を!」

    苗木「分かった。ありがとうキーボ君!」

    舞園「早く決着をつけないと、キーボ君が負けた場合、間に合わなくなります」

    苗木「うん。分かってる」


    3人が手を繋いだ状態でシャドウに触れる。


    『勝負成立』



    『じゃん、けん、ポン!』



    ──
    ─────
    ────────



    苗木(何とか勝てた。キーボ君と舞園さんと白銀さんに一斉送信しないと……)





    苗木「キーボ君!大丈──」



    振り返ると右手を高く翳しているキーボ君の姿があった。


    キーボ「チョキは……最強です」


    苗木「キーボ君!?」


    キーボ「あ、苗木君!どうやら僕らのクラスのVは、victoryのVだったようです!」


    苗木「キーボ君!!」


    キーボ「(ピース)」



    キーボ「溢れたポイントを送っておきますね」

    苗木「僕も、舞園さん達に渡すね」


    『キーボさんより、1ポイントと受け取りました』


    『舞園さやかさんと白銀つむぎさんに2ポイント送りました』


    苗木「これで、キーボ君が3ポイント、僕と舞園さんと白銀さんが2ポイントずつだね」

    白銀「そうだね。地味に最初から増えてないし」
  58. 58 : : 2017/07/10(月) 23:43:21




    ◇◆◇



    【屋上】



    4人で学園内を探索する。

    キーボ「暫く学園を見て回りましたが、1番上の階まで来てしまいましたね」

    白銀「1番上というより、屋上だね」

    朝日奈さんとも、シャドウとも、出会う事は無かった。

    何故シャドウと会わないのかと疑問に思って居た。

    考えられる可能性は1つ。数が少ないから。

    だが、それは不正解だったらしい。




    舞園「苗木君…あれ」

    舞園さんが指差す先には、手を繋いだシャドウ。9人。

    此方を見た後屋上へ向かって駆けて居た。

    苗木「!!固まって行動して居たのか…」

    白銀「逃げないと…」

    キーボ「皆さん落ち着いて聞いてください。階段を降りる所だ鉢合わせになります」

    苗木「じゃあ、戦わないと!」

    僕は全員に向けて、3人に向けて手を伸ばした。

    舞園「あの数相手は…流石に無理ですよ」

    苗木「諦めちゃダメだ!!」

    白銀「ううん。諦めないと駄目だよ。これは………全員で帰還する事を…ね」

    彼女はそう言いながら、腕時計型の端末を操作する。


    『白銀つむぎさんより、1ポイント受け取りました』


    苗木「白銀さん…何で…!」

    舞園「私にも…送られて来てます」

    白銀「地味な私が、地味に好きになっちゃったから?なーんて」

    白銀「私は1分後に脱落する。ポイントを受け取る事は出来ない。だから、ね。3人とも。影の薄い私だけど、どうか私を忘れないでね」

    キーボ「絶対に忘れません。僕は、先に帰還します」

    ピッ

    彼が端末のボタンを押すと、キーボ君は光に包まれて消えた。

    舞園「苗木君。早く、帰還を!」

    苗木「で、でも!」

    舞園「ここで私達が脱落したら、白銀さんの覚悟が無駄になってしまいます!!」

    苗木「………だからって」

    白銀「何で躊躇ってるの?2人が帰還する事。これは私の願いなんだよ?だからお願い。一生に一度の最期のお願い、聞いてくれないかな?」

    舞園「苗木君っ!!!」

    苗木「…白銀さん…ありがとう……」

    舞園「本当に、ありがとうこざいます」

    白銀「どう致しまして。またね。苗木君」

    シャドウが僕らへ手を伸ばすが、身体に触れるより早く。僕らは帰還のボタンを押した。



  59. 59 : : 2017/07/10(月) 23:44:20



    ◇◆◇



    モノクマ『しゅーーーりょーーーっ!!!!お疲れ様』



    僕らが帰還した直後。モノクマはそう言った。

    見渡すと、舞園さんが直ぐ横で同じ様に辺りを見渡しており。キーボ君が此方へ向けて駆けてきていた。

    キーボ「苗木君、舞園さん…」

    舞園「白銀さん…が…」

    苗木「僕らにポイントを託してくれた。だから、僕ら2人は帰還する事が出来た…僕は彼女を見捨──」

    キーボ「それは違います。彼女は希望を託したんです。苗木君と舞園さんに。なんて…真っ先に逃げた僕が言うなんて烏滸がましいですが…」

    苗木「いや、キーボ君が正しいよ。その通りなんだ。僕らは前に進まなくちゃ行けないんだ。託された、希望のために」



    モノクマ『熱くなってる所悪いんだけど、実はさぁっ。ミニゲームはこれで終わりなんだよね』


    モノクマ『だーかーら!特別に、二回の質問を許可します!』

    モノクマ『あ、要らないなら良いよ。これは温情だからね。受け取らないなら棚の奥にでも閉まっておくクマ』

    舞園「いります!いるに決まってます!」

    苗木「そうだ。これでこの狂ったゲームは終わらせれる」

    モノクマ『じゃあ、どうぞー。ちゃーんと、YES/NOで答えられる質問にしてね』




    苗木「質問は、僕とキーボ君に任せてもらって良いかな?」

    舞園「はい。お願いします」

    苗木「じゃあ、先ず僕から行くね」

    キーボ「お願いします」

    ガベルを手に取り、振るう。



    カンッ!


    苗木「『裏切り者は、1組の生徒ですか?』」









    『YES』



    表示されたのは肯定の言葉。つまり、裏切り者は僕と同じクラスという事だ。


    舞園「!!嘘…じゃあ、セレスさんが…?」



    この時点で舞園さんが、セレスさんを告発すれば全て終わるのだが。

    舞園さんが裏切り者なら梃子でもする筈が無い。そもそも僕は、舞園さんが裏切り者だとは思いたくは無い。

    だから、2回目の質問はキーボ君と話し合った結果────











    キーボ「『裏切り者はサードゲームで帰還しましたか?』」

















    『YES』



    モニターには、またも肯定の言葉。


    つまり────



    舞園「嘘………嘘です!そんなわけありません!!」

    舞園さんが僕とキーボ君に駆け寄る。

  60. 60 : : 2017/07/10(月) 23:45:12
    自分は裏切り者では無いと。


    だけど、事実。質問の結果答えは出ていた。


    裏切り者は女子である。


    裏切り者は五十音順で真ん中より前の人物。


    裏切り者は2組の生徒では無い。


    裏切り者は1組の生徒である。


    裏切り者はサードゲームをクリアした。


    裏切り者は────



    舞園「そんなわけないです!私は、裏切り者じゃありません!」


    苗木「…………」


    舞園「本当です!!信じてください!!」


    苗木「信じたくないよ…。こんな、こんなのって…」


    キーボ「では僕が告発をしましょう」


    舞園「キーボ君!待ってください!」


    キーボ「安心して下さい。僕が投票するのは、舞園さんじゃありません」


    舞園「え…っ、それってどういう」



    キーボ「内なる声に従います。いや、これは僕の願望なのかもしれません」



    キーボ「このゲームはデタラメだらけでした。だから、僕はこの可能性に賭けたいんです」



    キーボ「首謀者の罠に嵌って疑心暗鬼になってるだけだと」


    彼は握ったままのガベルを再び振り上げ、二度振るった。




    カンカンッ!!




    キーボ「裏切り者は居ない。それが僕の答えです!!」






    モノクマ『……………』







    モノクマ『うん。外れ。残っねぇーんでしたー!』










    キーボ「すいません苗木君。僕はここまで来て脱落の様です」

    苗木「キーボ君…」

    キーボ「僕はロボットですので。造られた存在なので…そんな顔しないでください」

    キーボ「…何て、最後の最後でロボット差別をするのが僕だなんて…」

    苗木「最後じゃないよ」

    キーボ「!まさか、苗木君、この状況で前代未聞のロボット差別をする気ですか!?」

    苗木「ううん。そんなことはしないよ…君は確かにロボットだけど、僕の…大切な仲間だ…」

    苗木「だから、少し待ってて」

    キーボ「…はい。ロボットだって時間を気にしますからね。あまり、待たせないでくださいね」


    キーボ君は口角をクイッと上げ、微笑んだ後。光に包まれて消えた。












    苗木「終わらせよう」

    舞園「苗木君!本当なんです!信じて下さい!」

    僕へ縋り付くようにしながら舞園さんは懇願する。

    舞園「だってこのゲームのルール自体滅茶苦茶だったじゃないですか」

    確かに彼女のいう通りだ。

    滅茶苦茶だった。

    理由の分からぬ拉致監禁。

    直前で始まるルール説明。

    僕達を傷付けるシャドウ。

    仲間同士で潰し合うミニゲーム。

    説明の無い事や、無意味な事が沢山あった。

    苗木「分からない。僕には、分からないよ…何を疑えば良いのか。何を信じれば良いのか」

    信じて来た人達は、皆んな居なくなった。

    皆んな嘘つきだった。

    自分を犠牲にするなと言った彼も

    これは因果応報だと笑った彼女も

    皆んなの為に戦った嘘つきの彼も

    誰よりも生き汚かった友達の彼も

    決して地味では無い優しい彼女も

    生き残りたかった筈なのに。

    誰も死にたくなんかない筈なのに。

    席を、僕に譲った。生きたいという気持ちに嘘を付いて。

    僕は終わらさないといけない。

    僕が終わらさないといけない。

    玉座に肘をつきながら座るのはもうお終い。

    立ち上がって、ガベルを叩いて終わらせろ。この狂ったゲームを。


    僕は舞園さんを振り払い、ガベルのある台座へ向け歩を進めた。


    舞園「苗木君。ごめんなさい…」


    ──ドンっ!!


    苗木「っう!!」

    背中に強い衝撃を受ける。

    突然の事で踏ん張る事は出来ず、僕は床を転がった。

    舞園「…ファーストゲームの後言いましたよね。私、鍛えてるって」

    地面に這っている理由が、舞園さんが突き飛ばされたからだと分かった時には既に遅かった。



    彼女はガベルを僕から奪い───




    苗木(まさか、ガベルを壊す気じゃ…!!)





    カンカンッ!





    ────それを振るった。




    乾いた音がホールに響く。




    二回。それは告発の印。



    苗木「え?」



    舞園「この選択は間違っているって分かってます。でも、貴方には生きていて欲しいんです」


    彼女は、僕の名前を呼ばず。


    大きく息を吸い込み、モニターに向かってこう言い放った。


    舞園「私は、舞園さやかを告発します!!」













  61. 61 : : 2017/07/10(月) 23:45:53



    一瞬にも永遠にも取れる時間が経った後。






    モノクマ「ぶひゃひゃひゃ!!大ハッズレー!!舞園さんは裏切り者じゃありませーん!!」




    モノクマの醜い笑い声だけが広間に響き渡った。




    苗木「なん…で…」



    舞園「こうでもしないと苗木君は私を告発してましたよね?」

    ガベルを台座の上に置き、舞園さんは床に這う僕を見つめる。

    苗木「したよ!ああ、したさ!!…でも、だからって、何で舞園さんが…自分で自分を…!!」

    舞園「さっきも言ったように苗木君が間違った告発をしようとしてたからですよ」

    意味が分からなかった。君が1番滅茶苦茶だ。何を言っているのか分からない。

    苗木「だって…!僕が間違ってオシオキされても君は残れたじゃないか……!!」

    僕なんかを助ける為に君が。

    苗木「何で…なんだよ…教えてよ。舞園さん……僕には、分からない…」ポロポロ


    舞園「私が苗木君を大好きだから…じゃ駄目ですか?」


    苗木「良くないよ…良い筈が、無いんだ…」

    舞園「そうですか?私は満足してますよ」

    苗木「………そんなの…おかしいよ」

    舞園「苗木君。笑ってください」

    苗木「無理だよ…笑えるわけ」



    舞園さんは大きな溜め息をついた後に乾いた口調で話し始める。



    舞園「全く、皆さん酷い人でしたよね」

    舞園「苗木君にどんどん重荷を背負わせて」

    舞園「エゴですよエゴ。押し付けも甚だしいです」

    苗木「今の君だって…エゴじゃないか」

    舞園「そうです。私のエゴです」

    僕の指摘に頷きながら、彼女は花の様に微笑んだ。

    舞園「私が、苗木君の笑っている顔が一番好きだから。何よりも大好きだから、そう……言ってるんだよ」


    彼女の身体が白い光に包まれる。


    消える。消えてしまう。キーボ君の様に。


    二度と会えなくなってしまう。



    嘘吐きは僕だった。



    苗木「─────ッ!」


    僕は立ち上がり、駆け出した。



    仮面は剥がれ、感情は決壊したダムの様に溢れ出す。



    苗木「嫌だ!!もう、誰も失いたくない!誰とも離れ離れになりたく無いんだ!!」


    苗木「行かないで!!舞園さん!!」


    僕は無様に、舞園さんに手を伸ばした。


    舞園「………私も、ずっと一緒に居たかったよ」


    だがその手は何も掴めず。


    彼女は白い光になって消えた。


    残ったのは僕1人。


    苗木「っ…あ…っくっ」


    僕は、舞園さんが居た場所を強く抱きしめる。

    それは、はたから見れば酷く滑稽で、とても虚しい行動だった。

    苗木「…うぅっ…ひっく…」

    嗚咽を漏らしながら涙を流す。

    でも、誰も見てないんだから、これくらい許される筈────





    ────ガチャリっ

  62. 62 : : 2017/07/10(月) 23:46:23


    苗木「!」


    扉が開いた。女子トイレの扉が。


    誰も居ない筈なのに。


    僕は見る。その少女の姿を。


    苗木「…な、なんで…君が…」





    白銀「ほら、私って事件の時何処にいた?って聞かれたらトイレって答えるタイプだから。地味に眼鏡だし」

    苗木「違うよ…。僕が言いたかったのは──」

    白銀「──何でトイレに行けたのか。だよね」

    苗木「っ!」

    白銀「どう考えるかは苗木君の自由だよ。でも、私は苗木君の味方だから忠告してあげるね。それは間違ってるよ」

    苗木「…どうかな。滅茶苦茶で、支離滅裂なルールだったけど、プレイヤーの条件は公平だった」

    白銀「………」

    白銀「ねえ?支離滅裂って言葉に流されすぎてない?」

    白銀「キーワードが『不味い』の作品だったら、作中に出てくる料理は全部『不味い』のかな?違うでしょ、それは、キーワードじゃなくて、テーマなんだよ!!」

    白銀「本質が見えてないんだよ苗木君は」

    苗木「お前が──」


    醜悪を形にした様な笑みだった。

    まるで、あのクマのように。


    苗木「お前が、モノクマの正体なの?」


    白銀「さあー、どうだろうねー?暴くんでしょ?頑張ってね」

    苗木「知ってるんだな…正体を!!なら───」



    モノクマ『しゅーーーーーーりょーーーーーーーー!!!!!!!!!!』


    苗木「終…了…?」

    白銀「あっ終わったみたいだね。生還だよ!ホームに帰れるよ!やったね苗木君!希望が増えるよ!!」

    苗木「ふざけるな!まだ終わってないだろ!!」

    苗木「…これじゃあ……皆んなは何の為に…!」

    白銀「理由があれば納得するの?」

    苗木「するわけないだろ!!!」

    白銀「それなら此処は流されとこうよ。地味にそれが一番楽だからさ」






    白銀「でもね。君ならきっと、主人公にだってなれるよ。ヒーローにだって、英雄だって」





    白銀「だって君は、私の大好きなゲームの主人公にそっくりなんだもん」



    その三日月の様に歪んだ笑みは。

    善と悪をグチャグチャにかき混ぜた様な。

    純粋で醜悪な。最低の笑みだった。

    脳裏に焼きつく程に。

  63. 63 : : 2017/07/10(月) 23:46:52



    ◆◆◆




    pipipipipipipipipipipipi!!!!!!!!!!!!!


    けたたましいほど響く聴き覚えのあるアラーム音。間違いなく僕のスマートフォンが発信源だ。





    長い夢を見て居た。とてもリアルで救いの無い夢を。






    苗木「──!!」





    目覚めたのは硬い床では無く、柔らかなマットレスと布団の上。



    格好はTシャツに寝巻き用の短パン。



    目を覚ましたのは、希望ヶ峰学園寄宿舎。そこにある僕の部屋だ。



    苗木「夢……だったのか?」



    未だに夢か現実かの実感が湧かない。



    状況に脳が追いつかない。



    苗木「………」



    頭は回らずとも体は動く。

    僕は部屋を飛び出し、それを見た。


    寄宿舎の入り口に貼ってある黄色いテープを。


    『keep out』


    苗木「…!!」


    踵を返し、片っ端からインターホンを押してまわる。



    苗木「十神君!!葉隠君!!!桑田君!!大和田君!!!山田君!!石丸君!!ねぇ!!誰か居ないの!?ねぇ!!!!」



    どの扉を開かず、返事は無く。



    苗木「…………」



    僕は部屋に駆け込むと、挿しっぱなしにしていた充電器を引っこ抜き。スマートフォンを開く。





    ピックアップのニュースにはこう記されていた。




    希望ヶ峰学園在校生徒49名行方不明



  64. 64 : : 2017/07/10(月) 23:47:33




    おはよう。

    良い朝なのかは分からないけれど、私は目を覚ました。

    見ていたのは悪夢。死んだ方がマシなほどの悪夢。

    おはよう私。

    こんにちは裏切り者(わたし)

    こんばんは──いや。


    おやすみなさい赤松楓(わたし)







    ◇◆◇





    「ねぇ…大丈夫?…」

    真っ暗な世界でそんな声だけが響いた。

    いや、目を瞑っているから当然か。

    私は目を開き、声のする方を見た。

    赤松「ワカ…メ」

    視点の合わない視界に見える景色に率直な感想を述べ私は手を伸ばす。

    狛枝「あはは、僕の毛髪なんて栄養も価値もないよ」

    狛枝君だった。

    赤松「狛枝君!?」

    思わず口に出た。

    狛枝「僕みたいなゴミ屑が、赤松さんみたいに素晴らしい才能の持ち主に名前を覚えてもらえていたなんて光栄だよ」

    百田「お!赤松!起きたか」

    赤松「百田君。おはよう…じゃなくて!今どういう状況なの?!」

    百田「俺も良く分かんねーんだ。目が覚めたらここに居てよ」

    狛枝「僕もだよ。他の、皆んなもそうだったみたい」

    小泉「楓ちゃん大丈夫?私もさっき目を覚ましたんだけど、目を覚まして直ぐ男子を見たらビックリしちゃうよね」

    赤松「うん、ビックリはしたけど大丈夫だよ」

    東条「赤松さん。どこか痛い所があったりしないかしら?」

    赤松「別にないけど…どうして?」

    東条「赤松さんだけ、相当長い時間起きなかったから。ミネラルウォーターしかないのだけれど、飲むかしら?」

    赤松「あはは…、目覚まし時計があれば起きれたかもね。疲れがたまっているのかも。うん貰うね。体調の気遣いまでありがとね」

    東条「ふふっ、メイドですもの。当然の事をしただけよ」

    桑田(あの「メイドですもの」。舞園ちゃんの「エスパーですから」に通じるものがあるな…俺には一回も言ってくれてないけど)

    真宮寺「赤松さんが目を覚ましたみたいだヨ、七海さんの方は一向に目覚める気配が無いネ」

    七海「……zZZ」

    天海「あれは熟睡してるだけじゃないっすかね」

    左右田「鼻ちょうちん出来てるしな」

    罪木「そうですね。呼吸も乱れてませんでしたし、脈も異常なかったので…」

    夢野「よいか?ただ寝てるだけじゃないぞ。うちのラリホーが効いておるのじゃ」

    田中「貴様!黒魔術士か!ククク。無形の狂気と呼ばれる俺の前で口を滑らせたな。魔技を極める者は俗世に紛れる者と、忌み嫌う者が居るが貴様は前者の様だな。だが、俺もここで手の内を明かす気は無い。今は見逃してやろう」

    夢野「んあー、魔法使いである事はそうじゃ、じゃが、それ以外がさっぱり分からん」

    天海「十神君。一回ザメハって言ってくれないっすか?」

    十神「…くだらんな。何故俺が、そんな意味の分からない単語を言わなきゃならん」

    天海「そこを何とか!愚民の意見にどうか耳を貸して欲しいっす」

    十神「チッ、『ザメハ』これで良いのか?」

    七海「!おはよう」

    夢野「んあー?!勇者!?」

    田中「貴様、英雄の血と運命(さだめ)を引く男だったのか!?」

    十神「何の話をしている。だが、俺の透き通る様な声を聞いたんだ、目覚めるに決まっている」

    左右田「自分の声を小鳥の囀りとでも思ってんのか?」

    十神「黙れ。お前如きに時間を割くなど無駄だ」

    左右田「ケッ、同じ十神でもエライ違いだぜ」

    十神「あんな贋作と一緒にするな。いや、そもそも贋ですらないな。俺の名を語り学園に潜む癌。それが奴だ」

    七海「十神君も、私達と同じクラスの十神君も、どっちも違う人なのは当然だけど、どっちも違う良さがあると思うの。だからそんな事、言わないで欲しいと…思うよ?」

    十神「…フン。相変わらず掴みにくい女だ。だが見る目はある様だ、俺にある良さ?当然だ、俺は超高校級の完璧…だからな」



    大神「戦刃よ。この状況はどう思う…」

    戦刃「………」

    大神「…答えぬか。確かに何も分からぬ状況で突然尋ねられても反応に困るだけだったな、すまぬ」

    戦刃「…………」

    戦刃(盾子ちゃん…どこ?)

  65. 65 : : 2017/07/10(月) 23:47:54
    赤松「……」





    大神さん
    七海さん
    小泉さん
    罪木さん
    東条さん
    戦刃さん
    夢野さん
    十神君
    狛枝君
    天海君
    百田君
    左右田君
    桑田君
    真宮寺君
    田中君



    これが私の敵。

    これが、私が欺かなきゃいけない15人の超高校級。


    赤松「……」


    「ある程度の事は分かったわ」


    いや違う。もう1人いた。最も警戒しないといけない人が、もう1人。



    霧切「皆んな目が覚めた様だし、全員で今の情報を共有する事から始めましょう?」



    霧切さん。…最原君と同じ、超高校級の探偵






    ウウウウウウウウウウウウウウウ──────!!!!!!!!


    サイレンの音が、部屋に響いた。


    桑田「んー?」

    左右田「どうしたんだよ。そんな首捻って」

    桑田「いやー、テンション下がるわ」

    左右田「何でだよ!!」

    桑田「甲子園のサイレン。知らねーの?」

    百田「おっ、どっかで聞いた事があると思ったら甲子園のサイレンだったのか」


  66. 66 : : 2017/07/10(月) 23:48:35



    モノクマ『おはようございます。僕はモノクマ、このゲームの主催者なのです』

    左右田「うお!ぬいぐるみが喋った!!」

    モノクマ『プンプン!失礼しちゃうなあ、僕は、ぬいぐるみじゃないよ!プリチーなクマ型ロボットなんだよ!…はっ、言ってしまった』

    霧切「ねぇ、アナタは何の為にこのゲームをするの?」

    モノクマ『理由?教えたらツマンナイでしょ?解き明かす謎を犯人に聞くって、霧切さんは読んだ推理小説の犯人にマーカーで線を引くタイプ?』

    霧切「答える気が無いのなら、話を続けて貰えない?」

    モノクマ『もう、怖いなぁ。えー、君達には君達の中に紛れ込んだ裏切り者を見つけてもらいます』

    モノクマ『このゲームですが。何と、期限がありませーん!!』

    モノクマ『ゲームを終わらせるには君達の中にいる正しい裏切り者を見つけ出し、告発しないといけないんだ。真っ赤な嘘を付いてる。真っ黒な裏切り者をね』

    東条「それは全員が参加しないといけないのかしら」

    モノクマ『うん、全員強制参加だよ。あ、拒否権はないからクマ』

    百田「…それで?告発ってのはどうやってやるんだ?」

    モノクマ『君達の目の前に、ガベル。分かりやすくいうと木槌があるよね』

    モノクマ『それを二回連続で叩いた後に裏切り者の名前を宣言するんだ。それが正しい裏切り者の場合、残った全員が生還しちゃうのでーす!』

    モノクマ『ま、外れた場合にはオシオキが待ってるんだけどね』

    モノクマ『でさ、ノーヒントじゃ分かんないよね?分かりっこないよね?冴え渡る勘でもないと分かんないよね?』

    モノクマ『そーんなオマエラの為に質問を許可します』

    モノクマ『そこにあるガベルを一回叩いた後に質問をするんだ。僕はそれに、YES/NOで答えるよ。だから質問はYES/NOで答えられるのにしてね』

    モノクマ『あ・と。質問の内容に個人を指定する言葉を使っちゃいけないんだ』

    モノクマ『例えば、バスト82cmの探偵ですか?とかね』

    霧切「………」

    左右田「…ほーん」

    桑田「…ふぅーん」

    大神「お主ら…!」ニブニブニブニブニブニブニブ

    桑田「ち、チゲーってやましい事何て何も考えてねぇーって」

    左右田「ああ!割と小さいなんて誰も」

    小泉「ホンット、最低。あと、82㎝って小さくないから…小さくないから!」

    左右田「まあ、確かにそこそこあるよな…そこそこあると思ってたから意外なだけで…」

    モノクマ『ちなみに、夢野さんは68cm』

    夢野「んあーーッ!!!うちをオチにするのはやめい!!」


    十神「個人を指定か…それを使ったらどうなる?」

    モノクマ『どうもしないよ。ただ、答えないだけどよ』

    モノクマ『質問に答えるのは、ミニゲームの前に一回だけ可能だよ。ミニゲームっていう事に特に意味は無いから気にしなくて良いクマ』

    モノクマ「質問のYES/NOは現在の状態で答えるから注意してね」

    モノクマ『運営はゲーム中に君達に一切の危害を加えない。これは約束するよ』

    モノクマ『ただし例外はあるよ。それは告発を間違えた人とミニゲームで敗退した人』

    天海「あのー、もし間違えたり、敗退した場合どうなるんっすか?」

    モノクマ『キツーイオシオキを受けてもらうよ。死んだ方がマシと思うようなキツーイオシオキを、永遠にね』

    左右田「ギニャーーーッ!そ、それって死刑みてーなもんじゃねぇーか!」

    田中「フッ。この田中眼蛇夢に向かって永遠の苦しみだと?笑止!生き地獄?笑わせる!!人の子が与えられる苦しみなどこの邪眼の代償に比べれば微温(ぬるま)湯の様なものだ!」

    夢野「笑うのか笑わないのかハッキリせーっ」

    モノクマ『じゃあ、僕はこの辺で失礼するねー、バイックマーっ』




    ───プツンッ






    東条「まずは質問の内容に付いて話合わないといけないわね」

    誰かがそう提案した後に言う台詞は決まっていた。

    赤松「やっぱり、最初は男女分けた方が良いと思うんだよね!」

    霧切「ええ、私もそれに賛成ね」

    霧切さんの賛同も得られた。十中八九、質問の内容はこれになる筈。

    狛枝「僕は皆んなの決めた事に従うよ」

    天海「俺も2人の決めた事なら安心出来るっす」

    赤松「何か、他に案がある人はいるかな?」


    (シーーンッ)


    赤松「決まりだね」

    狛枝君はよく分からないが、天海君の発言力は私たちのクラスの中でも人柄の良さからか高い。

    それが後押しとなり、質問の内容は裏切り者の性別についてに決まった。

    赤松「じゃあ、私質問して良い?」

    十神「待て。俺に質問させろ」

    赤松「えっ。大丈夫だけど」


    十神君は台座に近付き、ガベルを手に取ると。1度だけ叩いた。




  67. 67 : : 2017/07/10(月) 23:49:11



    カンッ!




    十神「裏切り者は十神白夜か?」

    左右田「ハァーー??オメー馬鹿かよ!!」

    桑田「アホアホアホッ!!貴重な質問を!!」

    十神「ルール説明を聞いていなかったのか?質問に答えるのが1回であって、質問出来るの回数が1回では無い」

    桑田「アポ…?」

    左右田「バカ⚪︎…?」

    大神「左右田よ。無理に真似しなくても良いのだぞ」

    小泉「で?結局さっきの質問は何だったの?」

    十神「個人を指定した場合の確認だ」

    罪木「で、でもぉ。ルール説明で言ってましたよ?」

    十神「フッ、鵜呑みにするとはな、お前らは猿か?考えろ。頭を回せ、無様に死にたくなかったらな」

    罪木「ご、ごめんなさぃ…ゲロ豚ですいませんっ…」

    夢野「鳥、猿、豚…選り取り見取りじゃな」

    七海「十神君の言い方はともかくだけど、私もそう思うよ。私達を攫ってこんな事させる相手だよ?何事にも疑ってかかっても損は無いはずだよ」

    真宮寺「確かにそうだネ。目的も不明瞭な相手を信頼なんてして良いはずはないヨ」

    モノクマ「ちょっとちょっとちょっと〜!!さっきから聞いてたら何さ!嘘をつかない事で有名なんだよ僕は!鼻が高いくらいにね!伸びちゃうほどにね!」

    戦刃「…矛盾」

    モノクマ「うっせー!ブッコ○スぞブスが!!」

    戦刃「えっ」

    十神「では1つ聞かせてもらおう。先に言っておくがこれは質問では無い。裏切り者は個人を指定するものではないのか?」



    モノクマ「…………」




    モノクマ「電池切れクマーーっ」



    ──プツンッ



    真宮寺「あの反応。かなり確信に近付く質問だったみたいだネ」

    十神「答えなかった以上、憶測の域からは出ないがな」

    小泉「けど考え過ぎても仕方ないんじゃないの?裏切り者ってワードに付いては例外でややこしくなるから。とかかもしれないし」

    赤松「…私はあまり関係ないと思う」

    十神「何故だ」

    赤松「だって、それって裏切り者が1人の場合特定していく質問が出来なくなるって事だよね?」

    赤松「『裏切り者』って単語自体、例外。というより個人を指定する言葉じゃ無いと思う」

    十神「確かにそうだな。だが裏切り者が複数いることを否定する材料には弱い」

    戦刃「シュレディンガーの猫…の状態だね」



    霧切「………」

    狛枝「あれ?どうしたの霧切さん、そんな怖い顔しちゃって。ほら、深呼吸深呼吸」

    霧切「元からよ。ただ、少し考え事をしてたわ」

    七海「裏切り者の正体について?」

    霧切「ええ。でもこれを言うと状況をややこしくしてしまうから…」

    狛枝「裏切り者が居ない可能性?」

    霧切「! その通りよ」

    七海「成る程、そういう可能性もあるんだね」

    霧切「それについては質問でYESが出れば解消されるんだけど……」

    七海「それについては、って事は他に何かあるの?」

    霧切「ええ。この部屋、カメラらしいものが無いの」

    狛枝「カメラ?」

    霧切「監視カメラ、というより。私達を録画するためのカメラ」

    七海「無くてもあっても同じじゃないかな?」

    霧切「いいえ。違うわ」

    霧切「カメラがあるだけで、ある程度の行動の抑止にはなるし、こんな悪趣味なゲームをする人間がこの状況を見ようとしないのは可笑しくないかしら?」

    狛枝「そう言われればそうだね。カメラの破壊を禁止するってルールを作れば壊されないのに」

    七海「……でも、それなら逆の発想が出来るよね?」

    狛枝「逆の発想?」

    霧切「そうね。見る事が目的では無いのか、監視カメラ無しで見る方法があるのか。そのどちらかでしょうね」



    天海「このまま言い合っても不毛だと思うし、赤松さん、十神君。まずは質問してみないっすか?」

    百田「そうだな。赤松と十神の考えはどっちも質問で裏切り者って単語は使える。なら、質問して考えた方が良いに決まってる」

    赤松「うん。十神君、じゃあお願い」

    十神「俺は複数人説を推す」

    そう言いながら十神君は台座に近付いた。




    モノクマ『あ、ガベルはリセットしたからもう一回叩いてねー』




    十神「チッ」




    彼は再びガベルを振るった。





    十神『裏切り者は男か?』





















    『YES』









    赤松(えっ…?そ、そんな、そんなわけ…)







    赤松(裏切り者は、女子のはずなのに!?)








    赤松(どういう……事?)







    何が何か分からなまま、時間が流れる。


















    モノクマ『えー、君達にやってもらうミニゲゲーム、それは…「三つ巴人柱」ぁーっ!』



  68. 68 : : 2017/07/10(月) 23:49:53





    ◇◆◇





    【学園長室】



    苗木「失礼します」

    着替えた僕が最初に向かったのは、学園長の所だった。

    仁「苗木君!?無事だったのか…!」

    苗木「はい。それで、他のみんなは」

    仁「2日前、苗木君を含めた49名が一夜にして行方不明になった。そして、今君が突然姿を現した。という事だよ。僕にも何が何だか…」

    苗木「……そんな」

    仁「そもそも君は今まで何処に居たんだい?」

    苗木「…目が覚めたらよく分からない部屋に居ました」

    仁「監禁されて居たのかい?」

    苗木「いえ、ある程度の自由はあったんですけど脱出する事は出来なくて、脱出したいならゲームに勝利しろと言われました。其処に居たのは16人です」

    仁「…それに君は勝利して君は戻ってきたという事か?」

    苗木「いえ、僕もよく分からないんですけど…」

    仁「はあ……。そんな冗談通じると思ってるのかな」

    大きく息を吐いた後、学園長は呆れ顔でこちらを見る。

    苗木「!!そんな!冗談じゃ!!」

    黄桜「苗木くーん。大人達の中ではね、君達が自分達の足で姿をくらましたんじゃないかって考えてるんだよね」

    苗木「違います!!本当に…!!」

    黄桜「だって、一夜に49人だよ?そんなの普通に考えたら不可能だとは思わない?」

    苗木「確かに難しいかもしれないですけど、現に僕らは…!!」

    仁「君のお遊びに付き合ってる暇は無い。話す気がないなら、もう行きなさい」

    苗木「…………っ」


    何か言おうと思ったが、辞めた。


    僕が何を言ってもきっと彼らは力になってくれない。


    苗木「失礼…しました」


    一礼した後、僕は部屋を出た。






    ◇◆◇



    黄桜「あーらら。あんな風に突っ撥ねてー、良いの?」

    仁「本来なら俺が動くべき…いや、動かないとダメなんだ。大切な生徒と、娘が巻き込まれているんだからな」

    黄桜「仁…」

    仁「だが、俺は動くなと指示が来ている上、監視されている」

    仁「苗木君は嘘を付くような子じゃない、そもそも行方不明になった彼らはそんなことをする子達じゃないのは俺が一番分かってるんだ」

    仁「だが協力出来ない俺に頼られるわけにはいかない。焚きつける事しか…」

    仁「…今は信じるしかない。彼ら(・・)を」






  69. 69 : : 2017/07/10(月) 23:50:33



    ◇◆◇




    【希望ヶ峰学園:中庭】


    苗木「…くそ…っ」

    学園内のベンチに座り込み、右の拳でベンチを叩く。ただの八つ当たりだ。

    噛み締めた唇から血が出たのだろう。
    鉄の味がする。

    目的はあった。だが、その為の過程がない。

    モノクマへの足取りが何1つない。

    白銀さんも、学園内には居なかった。


    「お前が、苗木誠か?」


    不意に声をかけられる。初めて会う人だ。

    ピシッとした8:2分けの白髪(はくはつ)、黒いスーツを来た二十代程の男性。

    苗木「そ、そうですけど。どちら様ですか?」

    何故此方の名前を知っているか分からないが、まずはそう訊くことにした。

    宗方「俺か?俺の名前は宗方京助。元・超高校級の生徒会長だ」

    宗方さんに目がいって気付かなかったが、その後ろに見たことある人物が2人いた。

    逆蔵「逆蔵十三だ。警備員やってるから、顔を見たことはあるだろ」

    雪染「苗木君、間が悪くてごめんね。私元・超高校級の家政婦だから、ハンカチ使う?」

    唇の血を見て、雪染先生がハンカチを差し出してくる。

    苗木「大丈夫です…ありがとうございます」

    僕はそれを丁重に断り、舌で拭った。

    苗木「それで宗方さん達は何で、僕の事を探していたんですか?」

    宗方「霧切仁に頼まれたからだ。お前に協力してくれとな」

    苗木「学園長が?」

    宗方「ああ。本人は下手に動けないらしくてな」

    逆蔵「学園長本人が動けねーとは…たくっ、いきなりキナ臭ぇ話になってきたぜ」

    宗方「苗木も見つかった事だ。話を始めるぞ。まず逆蔵セキュリティに問題と痕跡は無かったか?」

    逆蔵「ああ。外部から侵入した痕跡は全く無かった」

    雪染「49名の失踪者…そんな大規模な事件が全く痕跡無く出来るなんて思えないわね」

    宗方「ああ。それに関しては俺も賛成だ」

    宗方「考えられるのは、痕跡が残らない方法がある、もしくは痕跡を消す手段があるかだ」

    逆蔵「俺は、失踪者達が自らの足で姿を隠したんじゃないかって思ってるけどな」

    苗木「そ───

    雪染「ううん。あの子達は決してそんな事はしない。意味無く人を困らせるような、心配をかける様な事する子達じゃないから」

    ──れは違う!と言う前に、雪染先生が言ってくれたので僕は開いた口を閉じる。

    逆蔵「はいはい。悪かったよ」

    宗方「では、経路はともかく。攫われた後何があったか知る必要があるな」

    宗方「苗木、説明してくれるな?」

    苗木「…はい」





    苗木「僕は…僕達はあるゲームをさせられていました」

    宗方「ゲーム。その内容はどういうものだ」

    苗木「16人の中に、1人潜んだ裏切り者を探すゲームです」

    雪染「その16人は誰なの?」

    苗木「そこに居たのは、僕、舞園さん、朝日奈さん、セレスさん、不二咲さん、葉隠君、九頭龍君、花村君、西園寺さん、ソニアさん、茶柱さん、星君、王馬君、キーボ君、白銀さん、夜長さんです」

    宗方「セレス…というのは安広多恵子の事で良いのか?」

    手元にある資料と示し合わせながら彼は言う。

    何十枚もある分厚い資料だ。

    苗木「そうです…」

    宗方「お前がこうして此処に居るのはゲームに勝ったからか?それとも、お前自身が裏切り者だからか?」

    苗木「どちらでも無いです…」

    逆蔵「ああ?どちらでも無いってのはどういう事だ?」

    苗木「其処は後で説明します。まず裏切り者を見つける為に、僕らには質問する権利がありました───」








    こうして僕はあの悪夢のようなゲームについて語り出した。


    理不尽で、不条理なゲームについて。







  70. 70 : : 2017/07/10(月) 23:51:07











    苗木「───これが…、僕の経験した一部始終です…」

    雪染「そんな…何もかも、滅茶苦茶じゃない!」

    逆蔵「質問への回答も、ゲームのルールも、不正だらけだな」

    宗方「………」

    逆蔵「どうした宗方?何か気付いた事でもあるのか?」

    宗方「…苗木。お前の言って居る事は全て真実か?」

    苗木「はい」

    宗方「ならば、2つ気になる事がある」

    宗方「質問が当てはまらない事と、他の33人についてだ」

    苗木(当てはまらない質問と、不明の33人?)

    宗方「33人はどこへ行った。本当にいなかったのか?そして質問は本当にそれで正しかったのか?」

    苗木「それは…分からないです。同じタイミングで居なくなったのも、今日知りましたし。質問は正しかったです。消去法で舞園さんになった…」

    宗方「だが、舞園さやかは違ったんだろう?そして今の話を聞くに明らかに白銀つむぎが可笑しい」

    苗木「僕もそう思います。彼女が真の裏切り者だって」

    苗木「だから、あのゲームは根本から狂ってるって…」

    雪染「分かったわ。 本当は裏切り者が居ないのよ!」

    苗木「裏切り者がいない…可能性?」

    雪染「疑心暗鬼にさせる為かもしれないわ」

    宗方「それについては、先程言及されただろう?」

    雪染「でも、そう考えないと辻褄合わないじゃない!」

    宗方「そうだが…、それは辻褄合わせというより捏造、こじつけだ」

    逆蔵「ま、全部、滅茶苦茶だったんだ。考えるだけ無駄だろう」

    宗方「お前達は、支離滅裂なルールに流されすぎだ。苗木、お前はどう思う?」




    苗木「僕……は……」



    白銀『支離滅裂って言葉に流されすぎて無い!?』


    モノクマ『僕は嘘は言わないよー』



    苗木(………)



    有り得ない可能性を、切り捨てて。


    有り得る可能性を突き詰めた先にあるのが真実。


    全てを逆転して。


    支離滅裂と云う言葉を忘れ。


    全てが真実であると決め打ち。


    その通りに進ませるなら。




    49人の失踪者





    16人の参加者



    チーム、陣営





    苗木「裏切り者は、複数人居た…?」

  71. 71 : : 2017/07/10(月) 23:51:30



    宗方「ああ、俺も同じ結論だ。そうすれば質問についての辻褄が合うからな。もっとも、それだけだが」

    逆蔵「流石だぜ宗方」

    雪染「そういう考えもあるのね。苗木君も凄いわ!」

    苗木「ありがとうございます」

    宗方「議題を戻そう。失踪者たちがどの様にしてゲームとやらを行なって居たか」

    雪染「森とか見覚えの無い校舎とかあったんでしょ?」

    苗木「そうですね。窓は、開かなかったんですけど」

    逆蔵「それに、催眠薬で眠らせてるのかしらねぇが?転送みたいのも気になるぜ」

    苗木「浮遊感があるから、眠らされては無いと思います…」

    雪染「こんがらがってきたわね。そもそも最初以外は皆んな転送されたタイミングは一緒なんでしょ?一斉にホールに」

    苗木「そうです……、いや、最後の白銀さんの時だけタイミングが違いました」

    逆蔵「睡眠薬でもねぇのに、タイミングをずらせる。そして見覚えのない学校や、森?わけわかんねぇぞ」

    宗方「俺はそういう事には疎いのだが、そういう技術が開発されているのは知っている」

    雪染「もしかして、どこでもdoor?」

    宗方「いや違う。全てが真実とするなら、『ゲーム』と云う事も真実と考えるべきだ」

    苗木「そういえばモノクマは、ゲームっていう言葉を繰り返し使っていた…」

    逆蔵「流石宗方だ。だが、他の生徒達は何処で機械に繋がれてるんだ?出入りの痕跡は無いんだぞ」

    雪染「じゃあ、痕跡を後から消したとか?」

    逆蔵「消す事は不可能だ。俺が証人になる」

    宗方「俺は痕跡消したのでは無く、残さない方法があると考えた」

    宗方「出入りの、痕跡をだ」

    苗木「つまり、僕らが監禁されて居た施設は学園内にある?」

    宗方「その通りだ」

    宗方「更に、何故俺が学園長に呼ばれたのか、何故学園長自身が動かないのか」

    苗木「それは、希望ヶ峰学園の問題だから…!」

    宗方「ああ。中々頭が働くじゃないか」

    逆蔵「………」

    宗方「苗木誠。俺はある程度事件の核心に迫って居た」

    宗方「この資料を見ろ」

    彼はベンチの上に手元にあった資料を広げる。

    資料は見覚えのあるものだった。

    苗木「希望ヶ峰学園の校舎?」

    宗方「ああ。俺は国外の希望ヶ峰学園成立に乗り出している。故に、学園の資料を、工事段階から集めた」

    宗方「無駄が多すぎるんだ。予算も、土地も」

    宗方「地下がある。と俺は考える。其処に、残りの48名は幽閉されている筈だ」

    雪染「京助!それってどこなの?」

    宗方「中庭に芝が植えてある場所があるだろ?」

    雪染「うん。大きな銅像が置いてある所よね」

    苗木「そこなら、僕クラスメイトの友達とキャッチボールしたりしてたけど、特におかしな所は無かったですよ?」

    宗方「予算が明らかに可笑しい。芝を植え、銅像を建てるだけでこの費用はな。見てみろ」

    見せられた資料には、0がズラッと並んでいた。

    苗木(実際の適正価格が分からない以上なんとも言えない)

    宗方「足を運ぼう。意識しないで見ていた記憶など信用ならないからな」


  72. 72 : : 2017/07/10(月) 23:52:02
    ◇◆◇





    【中庭:銅像前】



    苗木「宗方さん。ここ…ですよね?」

    逆蔵(こいつ、さっきから宗方に馴れ馴れしくないか?)

    宗方「ああ。此処だ」

    雪染「怪しい所は特に無いわね」

    苗木「でも、何処かにあるかもしれない。意識して探せば何かあるかもしれない。ですよね?」

    宗方「ああ。そうだ」

    逆蔵(距離近くねぇか?いや、何を言ってる。別に良いだろ?)

    苗木「えーっと、何処かに…おわっ!」

    ヌルッとした触感が足の裏に感じた時は、既に手遅れ。僕はバナナの皮に足を滑らせて転ん───



    ────ガシッ!



    宗方「大丈夫か?」

    苗木「宗方さん…ありがとうこざいます」

    宗方さんに抱き留めてもらい、僕は転ばずに済んだ。

    逆蔵「おい苗木」

    苗木「はい、なんですか?」

    逆蔵「背中に虫が止まってんぞ!!オラっ!」

    バンっ!

    苗木「ったぁ──!!」

    背中を叩かれ、僕はその勢いのまま、銅像の台に手を付いた。


    ガコンッ!


    僕の両手は銅像に飲み込まれた。


    苗木「え?」

    逆蔵「は?」

    雪染「えっ?」

    宗方「!」



    ゴゴゴゴガガガガゴゴゴ…



    駆動音と共に、先程までなかった筈の地下へと続く階段が姿を現した。


    苗木「これは……」

    宗方「隠し通路…だな」

    雪染「苗木くん凄いわ!流石超高校級の幸運ね!」

    雪染「あと、逆蔵君見てたからね!担任じゃなくても!私の大事な生徒なんだから!怪我したらどうするの!」

    逆蔵「いや…悪かったよ」

    雪染「私じゃ無いでしょ、謝る相手は」

    逆蔵「悪かったよ苗木」

    苗木「いや、そのおかげで隠し通路が見つかったんですし!それに謝る事でも!」

    宗方「では、此処から先は、俺達だけで行く」

    宗方さんはそう言いながら雪染さんと逆蔵君を指差した。

    苗木「えっと、その…僕は?」

    逆蔵「テメェは留守番だ、来ても足手纏いにしかならねぇしな」

    雪染「逆蔵君!言い方があるでしょ!」

    逆蔵「いちいち怒鳴るなよ…」

    雪染「ここから先は先生達のお仕事なの。だから、苗木君は来ちゃダメだからね」

    宗方「ここからは大人の問題だ」

    雪染「そうそう!先生達に任せて」

    逆蔵「つーわけで、テメェは部屋に戻っとけ。絶対に来んじゃねぇぞ」


    それだけ言うと、3人は階段を下って行った。






    ◇◆◇



    【大広間】




    階段を降りた先には大きな部屋があった。
    まるで聖堂のような巨大な空間が。

    様々な機械と、奥には数十台のカプセル型の機械。目測で50台。


    そこに1人だけ男が立っていた。


    逆蔵「よお。テメェが黒幕か?」


    「…………」


    長髪を揺らしながら、男は静かにこちらを向いた。


    逆蔵「へっ、無視か。なら拳で聞いてやるよ!」スッ


    逆蔵は拳を構えステップを交えながら男との距離を詰める。


    逆蔵「テメェが黒幕か───ぐわぁあ!!!」ドサッ

    宗方「逆蔵!?」

    雪染「逆蔵君!!」




    ───
    ──────
    ──────────




  73. 73 : : 2017/07/10(月) 23:52:28







    ◇◆◇





    【中庭:銅像前】



    苗木「戻って…来ない」



    宗方『ここから先は大人の問題だ』

    雪染『そうそう!先生に任せて!』

    逆蔵『つーわけで、テメェは部屋に戻っとけ。絶対に来んじゃねぇぞ』



    この学園が黒幕なら僕は誰にも頼る事は出来ない。

    ここは政府公認の学園だ。外部を信用して良いのか分からない。

    学園長は宗方さん達を呼んでくれたけど、学園長自身を完全に信用して良いのか分からない。


    信じられるのは────今は自分だけ。



    なら、進もう。




    皆んなとまた出会う為に。約束と誓いを果たす為に。例え1人になっても僕は戦う。

    苗木「……いや、違うな…」

    僕は1人じゃない。

    僕は、皆んなの思いを背負っているんだ。

    救う為に、僕は前へ進む。



    一意奮闘だ。





    苗木「来るなって言われたけど……宗方さん。すいません!」





    僕は、地下への階段を駆け下りた。



    ──────
    ──────────
    ────────────





    【大広間】



    階段を降りた先は、開けた空間だった。


    ここに3人は来た筈。


    だけど、立っているのは1人だけ。


    それは雪染先生でも、宗方さんでも、逆蔵さんでもない。


    苗木「何で…何で君が」


    その立っている人物に、僕は見覚えがあった。


    カムクラ「僕が人類の希望になるからです」



    49人の失踪者の1人。
    カムクライズル君はそう答えた。



    苗木「雪染先生や、宗方さん、逆蔵さんは…?!」



    カムクラ「安心してください。今は気絶してもらっています」



    苗木「君が…やったのか?」



    カムクラ「彼ら3人を気絶させた事ですか?それとも、あのゲームについてですか?」



    苗木「両方に決まってるだろ!」



    カムクラ「その反応、疑いでは無く、事実確認の様に思えますね。貴方の中では答えが出ている筈でしょう?」


    苗木「じゃあ、やっぱりカムクラ君が…首謀者なんだね」


    カムクラ「ええその通りです。僕があのゲームを指揮し、彼らを撃退した人物の正体です」


  74. 74 : : 2017/07/10(月) 23:53:11



    苗木「何で君はこんな事をするんだよ」

    カムクラ「簡単な事です。僕が超高校級の希望だからです」

    苗木「意味が分からないよ…そんなどうでも良いことのために…」

    カムクラ「どうでも良いとは心外ですね。まず少し説明させてもらいます」

    カムクラ「僕には知識はありますが、記憶はありません。僕は人類の希望になる為に造られた(産まれた)人造人間です」

    苗木「……」

    噂には聞いていた。カムクラ君は人としての器に才能だけを注いで造られた人間だと。

    ただそれは予備学科の生徒が言う嫉妬混じりの発言だった───だが、それを彼は肯定した。


    カムクラ「赤松楓は言いました。僕のピアノを聞き、完璧な技術だと。そして伝えたいメッセージが篭っていないと」


    カムクラ「僕にはそれが分からなかった。才能に邪魔な機能を切り捨てた僕には伝えたい事や、込めたい想いなど無かったからです」


    カムクラ「感情。それは、表面上を解読する事は出来ても、理解は出来なかった」


    カムクラ「僕はカムクライズルプロジェクト唯一の成功例であり、唯一無二の欠落品だったんです」


    カムクラ「感情は才能においてデメリットしか無い。躊躇う暗殺者や、緊張する芸能人が分かりやすい例えですね」


    カムクラ「しかし、今の僕は心地いい音色は出せても心響かせる音色は出せず。完璧な演奏は出来ても、感動させる演奏は出来ない」


    カムクラ「僕を造った科学者達(彼ら)は、考えた。ならば後天的に感情を埋め込めば良いのではないかと」


    カムクラ「それをオンオフ出来るようにすれば他の才能に対しても支障が無いものだと」


    カムクラ「ただし、感情は才能とは違い知識では無く。それは不可能だった」


    カムクラ「感情があるフリは出来ても、それは受動的なものだけ。能動的なものは不可能でした」


    カムクラ「そこで彼らは更に思い付く。ならば感情を知識として理解させれば良いのではないかと」


    カムクラ「超高校級の才能を持つ貴方達の、才能以外の何かを。脳波という形で」


    カムクラ「赤松楓、澪田唯吹、西園寺日寄子、舞園さやか、小泉真昼。彼女達が芸術の才能を持つ面々の中で僕が、才能を使う上で理解する事が必要だと思った人物です」


    カムクラ「夜長アンジー、山田一二三、腐川冬子は不要だと判断しました」


    カムクラ「だから、上記の彼女達は3種類のチームに分けて行いました」


    カムクラ「舞園さやか、西園寺日寄子の参加する第1チーム」


    カムクラ「赤松楓、澪田唯吹の参加する第2チーム」


    カムクラ「小泉真昼の参加する第3チーム」


    カムクラ「ただし、誤算がありました。赤松楓が序盤で脱落した事です」


    カムクラ「彼女は白銀つむぎの案により、第3チームに裏切り者を演じるピエロとして参加してもらう事にしました。クラスメイトを救うことを条件に」


    カムクラ「ゲームは並行して行われました」


    カムクラ「第1ゲーム、第2ゲームは並行に行われ。第2ゲームのメンバーは全滅しました」


    苗木「……やっぱり、そうだったのか…」


    苗木「ずっと、引っかかっていたんだ。何故僕が裏切り者を告発して居ないのに生還したのか…。何で裏切り者である白銀さんが協力的だったのか…。何故質問の回答もルールも滅茶苦茶だったのか」


    苗木「白銀さんは間違いなく裏切り者だった。だけどそれは、僕達のじゃなかった」


    苗木「彼女は第2チームのメンバーで、第2チームの裏切り者だったんだ」


    苗木「つまり、裏切り者は2人居て、その2人は本来参加するチームじゃなく、入れ替わった状態でゲームに参加した」


    苗木「だから、僕らに協力する事は本来のチームに対する裏切り行為だったんだ」


    苗木「シャドウの正体は、第2チームの参加者だったんだろ?」

  75. 75 : : 2017/07/10(月) 23:54:08


    カムクラ「ええ。その通りです。互いが互いをシャドウと認識していました」


    苗木「サードゲーム。三つ巴も気になっていた。ジャンケンは三竦みだから」


    カムクラ「御察しの通り、第3ゲームのファーストゲームは、貴方達のサードゲームと同じルール、同じ会場で行われました」

    苗木「同級生を潰し合わさせる…こんな悪趣味なゲームをしてまで、君は何を…!!」

    カムクラ「脳に電極を繋ぎコピーする事は出来るかもしれません。だけど、それは意味が無かった。ペースト出来なければそれはアルターエゴでありただの数字です」

    カムクラ「…僕は理解しなければならなかった。ペーストではなく、暗記をしなければいけなかったんです」

    カムクラ「人は極限状態で本性を現す。しかし、過度な恐怖やストレスは感情を鈍らせる」

    苗木「だから、ゲームにした?」

    カムクラ「ええ。そうです」

    苗木「…それでオシオキって何だったんだよ」

    カムクラ「本人が無意識的になりたくない存在になる。ですね」


    カムクラ「人を信用せず排他的な人間。真実を見抜けず感情だけで行動する人間。弱者を餌にし甘い汁を啜ろうとする人間」

    カムクラ「例を挙げるなら赤松楓。彼女は超高校級のピアニストという自我は有りながらも、彼女の思う言葉は話せず、行動も出来ず。赤松楓が嫌悪する行動を赤松楓の視点から眺めるんです」

    苗木「悪趣味過ぎるよ…そんなのって…」

    カムクラ「感情をパターンとして理解する為です」

    カムクラ「才能を持つ人間が、才能を持たない状態で何を生み出すか」

    苗木「……いつまでそれを続けるつもりなんだよ」

    カムクラ「あと、10年程あれば僕は完璧に理解出来るでしょうね」

    カムクラ「5名のサンプルと、42名のオマケが付くんですから。当然です」

    苗木「…」

    カムクラ「ただ、後続の為にデータは必要です。10年後突然姿を現されても困りますからね。なので死ぬ迄、此処で機械に繋がれたまま生きてもらいます」

    苗木「良い加減にしろ!!」

    苗木「そんなの…そんなの生きてるなんて言わないよ!!」

    カムクラ「そうでしょうね。貴方から見れば彼女達は植物人間ですから」

    カムクラ「これ以上話し合っても無駄でしょう。あれを生きてるとは言えないなら、再び繋ぎ直す事はやめておきます。その代わり貴方には此処で死んでもらいます」

    苗木「…!」

    カムクラ「せっかく生還出来たのに、貴方は何故此処まで来てしまったんですか?ベンチで静かに座ってれば良かったのに」





    苗木「1つ質問があるんだ」



    苗木「何でわざわざ僕に説明したの?」


    カムクラ「冥土の土産…いえ、此処まで辿り着いた事への報酬です。生還(ホームゲーム)への」


    苗木「いや、それは嘘だね」


    カムクラ「嘘?何故ですか?僕が嘘を付くメリットなど無い筈ですが」


    苗木「殺すなら直ぐ殺すべきなんだ。繋ぐにしても、直ぐに気絶させるべきだった」

    カムクラ「貴方は先程の僕の発言を聞いて──」


    苗木「──躊躇ってるんだろ!カムクライズル!!恐れているんだろ!僕を殺す事を!」


    カムクラ「挑発ですか?貴方の発言の意図は──成る程そういう事ですか」

    カムクラ「まず貴方は確かに生き残りましたが、貴方は超高校級の幸運を持つ僕からすれば一般人と同義です。故に貴方の脳は必要ありません」

    カムクラ「そして希望ヶ峰学園の失態、もとい超高校級の生徒達を失う事は、僕という成功例で帳消しされます」

    カムクラ「いえ、見積もりだけでも遥かに凌駕する」

    苗木「違うよ。そんなどうでも良いことじゃない」

    カムクラ「どうでも良いこと?」

    苗木「ああそうだ!君が恐れているのは、希望ヶ峰学園の失態じゃない」


    カムクラ「?僕には分かりません」

  76. 76 : : 2017/07/10(月) 23:54:25


    彼が恐れている事。それは────



    と こ

    と ら れ
    く な
    な る




    ────とめられなくなること



    苗木(これで証明する!!!)
  77. 77 : : 2017/07/10(月) 23:55:24



    苗木「君が恐れている事。それは…」







    苗木「君自身を止めてくれる存在を殺して、踏み止まる最後のチャンスを棒に振る事だ!!」




    カムクラ「!」


    その時初めて彼は目を見開いた。

    初めて、動揺した。


    カムクラ「何故、僕が人類の希望になる事を止めないといけないのですか?僕はその為に造られた存在です」


    苗木「さっきも言っただろ!そんなどうでも良い事なんかじゃない!!」


    カムクラ「どうでも良い?それは僕の存在意義ですよ。それより大切な事なんて────」



    無い。とは言わせない。絶対に!



    苗木「君は楽しくなかったのか!!皆んなと過ごした日々は!!それをツマラナイ日々だったと君は言うのか!!!」




    カムクラ「 !…………」










    朝日奈『なんとかしてまともに相手させてやりたくて、意地になっちゃいうね…そうだ!放課後!話題用意していくから、待っててよ!』







    カムクラ(相手にしないんじゃない。…出来ないんだ……僕は所詮入れ物だから…)








    赤松『言葉にするより、もっと私のピアノを聴いて貰うのが手っ取り早いと思うんだ。カムクラくんが、いつか私のピアノで笑顔になってくれたらいいなって。ダメかな?』







    カムクラ(僕にあるのは才能だけ。それ以外…)








    七海『あーあ、負けちゃった…接戦だったのにな』



    七海『でも…うん、楽しかったね』



    カムクラ『楽しい?あなたの持つ唯一の才能で敗けたのに?』



    七海『そりゃあ悔しいけどさ……それより、カムクラくんと遊べて嬉しいよ』



    七海『それにゲームって、1回負けたら終わりじゃない。何度でも遊べるんだよ───私達が友達である限りさ』






    カムクラ「………」







    カムクラ(そんな感情……何かを楽しむなんて……楽しむ………なんて………)















    カムクラ「いえ……楽しかったです。少なくとも、僕は幸せでした…」







    ウサミ『才能を持つ事がゴールじゃないんでちゅ。大切なのは、それをどう使うかだからね』






    カムクラ(その通りでした。大切なのは才能自体じゃなかった)


    カムクラ「やはりカムクライズルプロジェクトは失敗のようです」


    もの寂しそうに彼は言う。

    自身の事を指す言葉を失敗だと。


    カムクラ「人類の希望となるべき人間が、1人の人間に心を動かされたのですから」


    カムクラ君は、僕に心を動かされたと語った。


    苗木「それは違うよ。君を動かしたのは、1人の人間じゃない」


    カムクラ「えっ?」


    だけどそれは間違い。


    動かしたのは僕じゃない。


    否、僕だけじゃない。


    苗木「48人の仲間だよ」


    カムクラ「!」


    苗木「それに君は失敗作じゃない。だって、君は、僕とここで会った時からずっと悲しそうな顔をしているから」



  78. 78 : : 2017/07/10(月) 23:55:43



    普段から表情を出さない彼だが、何故か今日は違った。


    カムクラ「…きっと、これが感情というもの何ですね…可笑しいですね。まだ理解出来ていない筈なのに…」


    感情を記憶()だけで考えていた彼が、胸に手を当てた。


    苗木「最初からあったんだよ。君にも。それが稀有だっただけで」

    カムクラ「…やはり…とても、不便なものですね。感情とは…」

    両目から溢れ頬を伝い、落ちる涙の粒を両手で受け止めながら彼は言う。

    苗木「うん。…でもね、とっても大切なものなんだよ。だって君は才能を持つ人形じゃない。人間で、僕らの仲間なんだから」


    確かに彼はあのゲームでは敵だった。

    だけど、そうだとしても。割り切れないのが人のさが。

    仲間である事は───友達である事は変わらない。


    カムクラ「苗木誠。ありがとう、ございます」

    苗木「!!」

    カムクラ「瞳孔が僅かに開き呼吸が乱れました。何か驚く事でもありましたか?」

    苗木「ううん、何でもないよ」

    顔にも出してる上に身体も驚きで仰け反ったのだが、嘘をつく。

    カムクラ「…僕を相手に嘘がつけると思いましたか?」

    バレバレだった。

    苗木「………だって、カムクラ君が御礼を言う所なんて初めて見たから」

    カムクラ「…そうですね。今まで、誰かに頼る事も、慰められる事もありませんでしたし」


    カムクラ君は僕に背を向け、備え付けられた大型の機械のディスプレイを高速で操作する。



    ピピピピピピピピピ──ピーーーッ




    カムクラ「あと数分後に彼女達は目覚めます」

    彼はそれだけ言うと、出口へ向け、歩を進める。

    苗木「カムクラ君…どこへ行くの?」

    カムクラ「僕は制裁を受けなければならない。貴方達を攫った事もそうですが、上の計画に背いた罪もあります」


    カムクラ「もし、僕が戻らなかったら───」


    苗木「駄目だよ」

    カムクラ「まだ何も言って居ませんが?」

    苗木「言わなくても分かるよ。でも、それは君が言わなくちゃいけない。カムクラ君自身がやらないといけない事だよ」

    カムクラ「……それもそうですね」

    コツコツと足音をたて、彼は階段の方へ歩き出した。


    カムクラ「では、この場は失礼しま──────ああ、最後に。裏切り者は自分から名乗り出ました」


    階段の方へ向かう足を止め、彼は此方へふりかえりながら言う。


    苗木「あれ自己申告制だったの!?」

    カムクラ「江ノ島盾子は、興味本位。白銀つむぎは、主人公の活躍出来るシナリオを作りたいから。王馬小吉は命懸けのゲームがしたいから」

    苗木「彼女は、やっぱり意図的に………って?!ええっ!?王馬君!?」

    カムクラ「そうです。ただ、王馬小吉は第3ゲームの裏切り者なので第2終了時点では裏切り者として質問に引っかかる事はありません。あれはあくまで現在の状況でのYES/NOなので」

    苗木(言われて見れば王馬君が、最初の質問の後にこちら側って言ったのはそういう事だったのか)

    カムクラ「そして白銀つむぎのサードゲームでの行動ですが」

    苗木「僕達にポイントを渡す段階で、5ポイント持ってた。だよね」

    カムクラ「はい。その通りです。転送の『到着する』タイミングだけずらしました」

    苗木「あ、もう1つ聞きたいんだけど」

    カムクラ「何ですか?」

    苗木「僕が生還したのって、江ノ島さんが告発されたからだよね?」

    カムクラ「そうですが」

    苗木「それって誰が告発したの?」

    カムクラ「日向創、それと最原終一ですね。特定した裏切り者が貴方達の裏切り者だった為、生還したのは貴方だけなんです」

    苗木「凄いな日向君と、最原君。裏切り者を当てるなんて…」

    カムクラ「僕も驚いてますよ苗木誠。貴方、皮肉が言えたんですね」

    苗木「ち、違うよ!!」

    カムクラ「ではどうして?」

    苗木「結局、僕が生還出来たのは彼らのおかげって考えたら、僕何もしてないなって。主人公なら2人の方が向いてる筈だし……白銀さんも、多分ガッカリしたよね」

    カムクラ「さあ。どうでしょう。もう、分かりません」

    苗木「えっ…それって」

  79. 79 : : 2017/07/10(月) 23:56:16



    再びコツコツと音をたてながら、彼は部屋を出る。



    苗木「待っ─────あれ?」



    声を掛けようとしたが、彼の姿は既にそこには無かった。

    苗木「カムクラ君…」





    プシューーッ!


    追いかけようとする足を止めるように、間抜けな音と共に部屋の奥にあるカプセルがタイミングは違うが開きだす。


    開いたカプセルからは、見知った顔の人物が顔を出した。


    星「…状況はよく分かんねぇが。これは一体どういうことだ?」


    苗木「星君…」タッ


    僕は彼に駆け寄る。


    星「おいおい、何であんたが俺の顔を見るなり安堵の表情で泣くんだ」


    星「だらし無い顔になるんじゃねぇよ」


    苗木「だって…だって…」


    星「そもそも俺は何でここに居るんだ?」


    星君は辺りを見渡す。それはそうだ。変な空間から、森、そして此処なのだから。


    苗木「あれは仮想世界のゲームだったんだよ」


    星「あれ…?仮想世界…?さっぱりだ」


    苗木「もしかして、覚えてないの…?」


    星「ああ、何が何だかさっぱりだ」






    プシューーッ


    また、新たなカプセルが開く。


    茶柱「…ここは?」


    そちらへ目を向けると、茶柱さんが頭に手を当てながら首を左右に動かしていた。


    苗木「茶柱さん…目を覚ましたんだね…!」


    茶柱「げ…」


    苦虫を噛み潰したような顔──いや、苦虫が舌の上を這うような顔で。茶柱さんは僕を見る。


    茶柱「最悪です。寝起きに男死の顔を見るなど反吐が出ます」


    自分の顔を見て、反吐が出ると言われたのに、彼女の姿をまた見れた事が何よりも嬉しかった。


    苗木「良かった…本当に良かった…」


    感極まった僕は、星君の元から茶柱さんの元へ駆ける。


    茶柱「キェエエエエエエエエ!!!!!」


    そして投げ飛ばされた。


    苗木「ええぇえええぇええ!?!?!?────どわぁぁぁぁぁ!!!」


    うつ伏せに倒れた僕へ馬乗りになり、首を上へ引く。


    苗木「いだだだだだだっ!!!」


    葉隠「!あれはキャメルクラッチ!プロレス技だべ!」


    真宮寺「キャメルクラッチ…日本では駱駝(らくだ)固めや、馬乗り固めとも呼ばれているネ」


    九頭龍「ネオ合気道はどこ行ったんだ…」


    茶柱「男死の分際で転子に触れようとするからです。下心丸出しの汚い手で!!」


    苗木「違うよ!!!誤解だよ!!誤解!!!」


    茶柱「ほお。まだ喋る余裕がありましたか、ではもう少し厳しく掛けますね。死んだら報告してください」ググッ


    メキメキメキ!!!


    苗木「ギブ!!ギブ!!!ギィブッ!!!!」バンバンバンッ


  80. 80 : : 2017/07/10(月) 23:57:20



    茶柱「フンっ!これに懲りたら金輪際女子に近寄らない事ですね!!」


    悲痛の叫びが届いてか、茶柱さんは手を離し、僕の背中の上から降りてくれた。


    苗木「はぁ…はぁ…。それは、無理だけど。でも、軽かったよ」


    茶柱「は?何言ってるんですか?」


    苗木「いや、…こっちの話」










    葉隠「苗木っち。首大丈夫か?」


    先程技の解説をしていた葉隠君だが、心配はしてくれているようだ。


    苗木「うん。大丈夫だよ葉隠君は何か身体におかしな所とかない?」


    葉隠「ああ!五体満足!ピンピンしてるべ!」


    そう言いながら手を、グーパーする彼を見て僕は胸を撫で下ろした。


    葉隠「ああ、この際だから言うけど実はよ。楽に儲けれる良いセミナーがあるんだけど行かないか?」


    苗木「どの際か分からないし、行かないけど、どこか遊びには行きたいね」


    葉隠「お、おう!」









    「苗木君…ここは」


    後ろから声を掛けられる。聞き覚えのある声。


    振り返ると、不安そうな表情で舞園さんがすぐ後ろに立って居た。


    苗木「……おかえり。舞園さん」ポロポロ


    感情が込み上げ目頭が熱くなるが、僕の顔はきっと、笑ってくれているはずだ。


    舞園「ふふっ。何で泣いてるのに笑おうとしてるんですか?」


    それを見て可笑しそうに笑いながら彼女は首を傾げた。


    当然、彼女にあの時の記憶は無い。だからこれはズルなのかもしれないが。


    苗木「それは、君には僕の笑った顔を見て欲しいから…かな」


    これ自体は僕の本音なので、きっと許されるだろう。


    舞園「えっ!それって…?」


    舞園さんが、あんぐりと口を開ける。


    舞園(私言いましたっけ?苗木君の笑ってる顔が1番好きって…いえ、それともこれは告白?まさか!いや、毎日味噌汁を作ってほしいの逆バージョン?!嘘…嘘ですよね?でも、苗木君嘘つかないし……あ、でもエスパーですからって私嘘ついてるして!でも冗談ですってちゃんと言うし…。あれ?これ冗談だよって言われるのかな…それはそれでショックかも……。あ!心の中の私!敬語が崩れてます!)


    霧切「苗木君。私も何が何なのか分からないのだけれど、少なくとも貴方は多少の事情を把握しているのよね?」


    舞園「あ!会話に割り込んで来ないで下さい!」


    霧切「あら、会話終わっていなかったのかしら?1人で身悶えてたから終わってるものかと思っていたわ」


    舞園「ぐぅっ!それは否定できないかもしれないかもしれないこともないことも……ううっ。苗木君、私身悶えてましたか?」


    苗木「え?いや、身悶えては無かったと思うよ」


    苗木(空白の時間はあったけど)


    霧切「あら舞園さん。今、苗木君と取り込中だから邪魔しないでくれないかしら」


    舞園「!!」


    苗木「えっと、先の質問だけど…この状況を、だよね」


    霧切「ええ。そうよ」


    流石霧切さんだ。この状況で即座に僕が事情を知ってるって見抜くなんて。


    霧切「人の顔を見るたびに号泣する人物がいれば不審に思うわよ」


    苗木「えっ…なんで僕の考えてることを!」


    霧切「エスパーですから」


    舞園「それ!私のですから!」


    苗木「じゃあ、皆んなが目を覚ましてからで良いかな」


    霧切「分かったわ」


    霧切さんはそれを了承してくれた。






    苗木「………」



    僕は話さなければならない。事の顛末を。




    そして、それをどうするかは彼女達に託される事になる。




    カムクラ君を糾弾するも、償わせるのも。




    彼は許されざる事をした。




    彼が改心しようと、その事実だけは変わらない。




    ─────
    ───────────
    ──────────────────
  81. 81 : : 2017/07/10(月) 23:58:07

    ──────────────────
    ────────────
    ──────















    ◇◆◇






    男『全く、困ったものですよ』



    TVに映るコメンテーターが呆れた表情で話しを続ける。



    男『希望ヶ峰学園の生徒とはいえ、これはやり過ぎだよねぇ』



    男『立案者は誰か分かんないし、全く迷惑するのは大人なんだから』



    男『大人達を驚かす為に集団で姿を隠す何て、優れた才能があるとは言え子供なんだよね。飛兎竜文とはよく言ったものさ』



    男『中にはアイドルやモデルの子だっているんです。スキャンダルですよこれは!分かります?人生の敗者への道を辿ってるんです』



    コメンテーターは、相槌や反応に満足し発言に一層自信を持ったのか、捲くし立てるように話を続けた。




    画面の右上には、議題のタイトルが表記されて居た。







    【行方不明生徒。49名発見!!原因は生徒達の集団ボイコット!?】








    僕らは皆んな嘘吐きだ。








    END

  82. 82 : : 2017/07/11(火) 00:08:53



    『支離滅裂』‬

    ‪統一もなく、ばらばらに乱れている状態。筋道が立たず、めちゃめちゃなこと。‬



    そのゲームの参加者視点から見ると、ルールは滅茶苦茶のうえ裏切り者は其処に居ない

    (読み終わった)読者視点からすれば、物語の順番がぐちゃぐちゃ

    支離滅裂とは筋道が立ってないことを指すようなのでこうしてみました

    支離滅裂を、本来の意味と先入観を持たせる為のブラフとで2種類使わせてもらいました。最初に見えるキーワードなのでそういう使い方が出来ると考えました

    サスペンスと上手く支離滅裂を絡ませる為にミステリーと違って、謎を解けば解くほど分からなくなる見えない裏切り者で緊張感を持たせようと試行錯誤した結果がこの作品です

    ここまで読んでいただきありがとうございました!
  83. 83 : : 2020/10/26(月) 15:31:40
    http://www.ssnote.net/users/homo
    ↑害悪登録ユーザー・提督のアカウント⚠️

    http://www.ssnote.net/groups/2536/archives/8
    ↑⚠️神威団・恋中騒動⚠️
    ⚠️提督とみかぱん謝罪⚠️

    ⚠️害悪登録ユーザー提督・にゃる・墓場⚠️
    ⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️
    10 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:30:50 このユーザーのレスのみ表示する
    みかぱん氏に代わり私が謝罪させていただきます
    今回は誠にすみませんでした。


    13 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:59:46 このユーザーのレスのみ表示する
    >>12
    みかぱん氏がしくんだことに対しての謝罪でしたので
    現在みかぱん氏は謹慎中であり、代わりに謝罪をさせていただきました

    私自身の謝罪を忘れていました。すいません

    改めまして、今回は多大なるご迷惑をおかけし、誠にすみませんでした。
    今回の事に対し、カムイ団を解散したのも貴方への謝罪を含めてです
    あなたの心に深い傷を負わせてしまった事、本当にすみませんでした
    SS活動、頑張ってください。応援できるという立場ではございませんが、貴方のSSを陰ながら応援しています
    本当に今回はすみませんでした。




    ⚠️提督のサブ垢・墓場⚠️

    http://www.ssnote.net/users/taiyouakiyosi

    ⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️

    56 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:53:40 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ごめんなさい。


    58 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:54:10 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ずっとここ見てました。
    怖くて怖くてたまらないんです。


    61 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:55:00 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    今までにしたことは謝りますし、近々このサイトからも消える予定なんです。
    お願いです、やめてください。


    65 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:56:26 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    元はといえば私の責任なんです。
    お願いです、許してください


    67 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    アカウントは消します。サブ垢もです。
    もう金輪際このサイトには関わりませんし、貴方に対しても何もいたしません。
    どうかお許しください…


    68 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:42 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    これは嘘じゃないです。
    本当にお願いします…



    79 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:01:54 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ホントにやめてください…お願いします…


    85 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:04:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    それに関しては本当に申し訳ありません。
    若気の至りで、謎の万能感がそのころにはあったんです。
    お願いですから今回だけはお慈悲をください


    89 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:05:34 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    もう二度としませんから…
    お願いです、許してください…

    5 : 墓場 : 2018/12/02(日) 10:28:43 このユーザーのレスのみ表示する
    ストレス発散とは言え、他ユーザーを巻き込みストレス発散に利用したこと、それに加えて荒らしをしてしまったこと、皆様にご迷惑をおかけししたことを謝罪します。
    本当に申し訳ございませんでした。
    元はと言えば、私が方々に火種を撒き散らしたのが原因であり、自制の効かない状態であったのは否定できません。
    私としましては、今後このようなことがないようにアカウントを消し、そのままこのnoteを去ろうと思います。
    今までご迷惑をおかけした皆様、改めまして誠に申し訳ございませんでした。

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