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止まり木
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                  - 1 : : 2017/03/13(月) 21:40:05
- こんにちは蒼電と言います。
 
 みーしゃさん企画の春花杯に参加させていただきました。
 今回は四字熟語部門に参加しました。テーマは「喋々喃々」
 男女がうちとけて小声で楽しそうに語り合うさまという意味みたいです。
 締め切りがだいぶ近いですが完成させます!
 
 前置きはこれくらいに済ませて本編へ。
 
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                  - 2 : : 2017/03/13(月) 21:40:36
 某県某市、とある街――
 急行電車が止まるそれなりの都会に僕は電車から降りた。
 この駅に降りた目的は特になかった、強いて目的を上げるとするならばちょっとした買い物をするため。
 駅を中心に広がっているそのとある街の大通りを進む。
 大通りに並ぶ多くの店の内、某有名居酒屋チェーン店と焼き鳥屋の間の細い路地を縫うように通る。
 細い路地を通り、突き当りを右に曲がればその店があった。
 ある休日の日、何を思ったかは分からないが先程説明した路地に吸い込まれた私はその店に着いた。
 更に何を思ったのか、私はその店に足を向け扉に手をかけていた。何の店かも分からずに。
 店の名前は何だったか、そう言えば見てなかった――そんな事を思いながら扉は開いていく。
 カランコロン――
 
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                  - 3 : : 2017/03/13(月) 21:47:47
 扉を開くと珈琲の独特の香りが迎え入れた、入り口から見える棚には珈琲豆が入った箱や紅茶の茶葉が入った缶がある。どうやらこの店は喫茶店の様だ。
 真ん中に切り株のような形の大きなテーブル、その周りをいくつかの椅子がある。
 そこへ窓から太陽の光が入ってさながら森の中の喫茶店だった。
 そこを囲うように他の椅子と机がいくつかあるが基本的に切り株テーブルの椅子に座る事を進めているように見えた。
 適度な明るさに保たれた照明を見てみると天井は意外に高く開放的な雰囲気になってる。
 俺は取り敢えず切り株テーブルの椅子に座りメニューを見ると、棚の方から一人の女性が出て来る。
 「あらあら、わざわざこんな所へ来て頂きありがとうございます」
 
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                  - 4 : : 2017/03/13(月) 21:49:19
 そう丁寧なお礼をしたのは、とても綺麗なおばあさんだった。
 彼女の髪は真っ白で顔にはしわが目立つものの、ピンと伸びた背筋に綺麗な歩き方と生き生きとして見える。
 「あ、なんだか歩いてたらここに着いたので中に入ってみました」
 「あらそうなの。とても嬉しいわ」
 ふふふ、と笑みをこぼす彼女は嬉しそうでなんとなくで入ったけど入って良かったと思えた。
 「あぁ、失礼しました。ご注文は何にしますか?」
 笑い過ぎたと感じたのか慌てて表情を戻す彼女に内心茶目っ気を感じて今度はこちらの笑みがこぼれる
 「じゃあ、ブレンドティーを一つホットで」
 「それと……オムライス」
 「かしこまりました」
 午前十一時、少し早い昼食をここで食べることにした。
 
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                  - 5 : : 2017/03/13(月) 21:52:08
 了承の返事をした彼女は棚の奥、キッチンへと消えていった。
 店に入ってからの彼女が来るまでの時間、今のキッチンに向かっていったりといい、どうやらこの店は彼女一人でやっているのかもしれない。
 彼女は水を沸かし始めてオムライスを作る準備を始めた。
 やはり彼女一人のようだ。
 特にすることもないのでキッチンに目を向ける。
 そうすると彼女はとても手際が良く、昔からこの仕事をやっているのが伺える。
 そうしてると紅茶が運ばれてきた。
 「ブレンドティーです」
 お礼を言って紅茶を受け取る。
 春の陽気な日差しを連想させるような柔らかな香りが広がる、一口飲んでみると新芽のさわやかな味が伝わり、香りがまた一層と広がっていく。
 ブレンドティーを味わいつつ再び彼女の姿を見ていると、二度目のドアを開ける音がした。
 カランコロン――
 
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                  - 6 : : 2017/03/13(月) 22:10:47
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 音が鳴るほうを向くと、僕より一回り程年上に見えるスーツを着た男性等四人が来た。
 
 「ふぅ、やっと昼飯だな」
 
 「そんな事言ったってまだ十二時回ってないですよ」
 
 「お前は本当ここ好きだよな。まぁ俺も好きだけど」
 
 「今日は何食べますかね」
 
 聞こえる会話の内容からして、常連の方々らしい。
 
 その四人は僕と同じテーブル、切り株テーブル周りの椅子に座った。
 
 彼らは僕に見て話しかけてきた。
 
 「お兄さんこんにちは、何歳?」
 
 少し動揺しつつも
 
 「こんにちは、20歳です」
 
 「そうなんだ、学生さん?」
 
 「そうですね、県内の大学に通ってます」
 
 「実家通いですか?」
 
 「いえ、実家は遠いので近くで賃貸を借りてます」
 
 突然始まった会話だが不思議と嫌な気はしない、この店の雰囲気がきっとそうさせているのだと思う。
 
 「お兄さん方々は……近くの会社ですか?」
 
 「おじさんでいいよ、結構年食ってるし」
 
 年食ってるしのところで笑いながらおじさんは紹介を始めた。
 
 「俺……上田とこいつ……中山は駅前の手前の会社、そこの原田さんはファミレス上の会社の社員、奥の村山さんは駅に一番近い銀行の銀行員さん」
 
 紹介に合わせてそれぞれの男性等が合図した。
 
 「驚きました……皆さん同じ会社出身かと思ってて」
 
 「もしかして……お兄さんここ初めて?」
 
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                  - 7 : : 2017/03/14(火) 14:15:38
 予想外の質問に動揺しつつも
 「あ、はい」
 そう答えると紹介をしていた男性は申し訳なさそうにして
 「そうだったのか……突然話しかけてしまってすまないね」
 と謝罪してこう続けた。
 「ここはこうして店に訪れた人達が積極的に会話をする喫茶店なんだ」
 そうだったのか、道理で――そんな納得の感情がすとんとはまるように落ちてきた。
 謝る男性に気にしないでくださいと伝えて店を見渡してみる
 切り株テーブルや会話が自然と始まるような雰囲気、きっとそれ等は客同士が積極的に会話するためなんだと。
 「すいませんお待たせしました。オムライスです」
 そういっておばあさんからオムライスが渡された。
 お礼を言っていつの間にか飲み干していた紅茶のカップを戻してもらった
 「咲さんこんにちは」
 先程説明して頂いた上田さんが彼女に挨拶していて僕らも挨拶を交わした。
 「こんにちは、今日もありがとうございます」
 彼女――咲さんは丁寧にお辞儀をして上田さん達に注文を伺った。
 時々冗談を交えながらも注文をした後、彼女は再びキッチンに戻っていった。
 「美味しそう」
 目の前に出されたオムライスは綺麗な黄色に赤の波線が引いてあって本当に美味しそうだった。
 「やっぱ美味しそうですね。俺もオムライスにしてよかった」
 「俺も後でオムライス食べよう」
 「上田さんナポリタン頼んだのに大丈夫ですか?最近お腹出てますよ」
 原田さんと上田さんが反応して中山さんが突っ込んだ。
 確かに上田さんを見てみるとお腹が出てるように見える。
 「ほらほら出来立ての内に食べとけ、勿体無いぞ」
 村山さんに言われ、オムライスに手をかける。
 スプーンで卵のドームを切ると、ケチャップライスライスが顔を出した。
 スプーンで卵とケチャップライスを一口サイズにまとめて口に入れると卵の甘さとケチャップライスの酸味が口の中を満たしていった。
 「美味しいですね」
 「だろうここは本当に美味しいんだよ」
 食べてる内に先程から気になっていたことを思い出した。
 「咲さん、いつも一人でお仕事なさってるのですか?」
 常連だから知っているかもしれないと思い、聞くと中山さんが答える。
 「キッチンの奥にお手伝いの姪っ子がいますよ」
 それを聞いて安心した、流石に一人は大変だろう。
 それから再び会話が始まる。
 話が弾んでいく、そんな中三度目の扉を開く音が鳴る。
 
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                  - 8 : : 2017/03/14(火) 15:31:49
 カランコロン――
 次に来たのは年は僕と同じくらいだろうか?若い女の人二名と主婦の人おぼしき女性三名だった。
 「こんにちはー!」
 若い女の二人の内ジーパンの活発そうな女の人が元気な挨拶をした。
 それに続くように他の方々、おじさんたちも挨拶を交した。
 「こんにちは」
 僕ももう慣れたのか、平然と挨拶をしていた。
 彼女等は咲さんにそれぞれ注文した後僕らと同じように切り株テーブルの椅子に座った。
 「お兄さん初めて見る顔ね、もしかして初めて来た?」
 「はい、先程きました」
 「あらそうなの!随分若いのね、何歳?」
 「二十歳です。近くの大学に通ってます」
 「そうなの、ここはいい所よね」
 主婦の方と会話が始まる。水たまりに石を投げた時に広がる波紋のように。
 その波紋が物体に当たり新しい波紋が広がるように会話が広がっていく。
 老若男女問わず色んな人が会話していく、現代では見かけない光景がそこにある。
 だがその光景が僕には至極当然に見えた。
 きっとこの店がこの普通ではないような光景を自然に見せているのだろう。
 だからこそ誰もが気負わず、当たり前のように会話をできているのだろう。
 そんな風に考えていたら僕のオムライスはなくなっていた。
 「あ、注文しますか?」
 そう声をかけてきたのは若い女の人の二人組のもう片方、白いワンピースの女性だった。
 「あ、そうですあなたもですか?」
 「えぇ、先程悩んでて注文しそびれたので」
 「そうだったのですか」
 そうして二人で咲さんに注文をした。
 「そういえば私も二十歳なんですよ」
 「同い年なんですか。大学に通っているのですか?」
 「えぇ、都内の大学で――」
 
- 
                  - 9 : : 2017/03/14(火) 15:32:12
 会話が始まる。
 こんなにも自然に。
 小鳥が止まり木に止まり鳴くように僕等はここにここに訪れて会話を楽しむ。
 となると僕らは小鳥だろうか、ならば咲さんは僕らを見守る木?
 それより、止まり木の所有者ってイメージだな――そう思って笑みがこぼれる。
 「どうしたのですか?」
 「あぁすみません。ここって良い所だなと思って」
 「えぇ、私もそう思います」
 会話をしてた彼女も笑みをこぼす。
 男女や世代を超えても人はやっぱり人で分かり合えるし、会話ができる。
 現にここではそれが出来ている。
 その事実がなんだか無性に愛しみを感じさせた。
 そしてそんなお店を開いてる咲さんに感謝の気持ちが沸く。
 同時にきっと皆同じような事を考えているのだろうとも思う。
 だからこそここがあって、皆ここを好きになっているのだから。
 初めてきた店だが、とても好きになることができた。
 会話が広がっている光景に見とれていると咲さんが来て注文した品の数々を持ってきた。
 その時の咲さんはとても暖かく見えた。
 
- 
                  - 10 : : 2017/03/14(火) 15:33:28
- おしまい
 
- 
                  - 11 : : 2017/03/14(火) 15:39:00
- 終了です。
 喋々喃々の意味を初めて知って……恋愛ものには個人的にする気が無くて、ひねり出してみました作品です。
 春花杯のグループはこちらに
 http://www.ssnote.net/groups/835
 
 
 四字熟語お題なのは初めてでしたがとても楽しかったです。
 
- 
                  - 12 : : 2017/03/19(日) 01:07:36
- 面白かったです!!
 とてもほっこりするお話でした。明るくて素敵です
 
- 
                  - 13 : : 2023/07/04(火) 09:49:19
- http://www.ssnote.net/archives/90995 
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 2 : 2021年11月6日 : 2021/10/31(日) 16:43:56 このユーザーのレスのみ表示する
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 16 : 2021年11月6日 : 2021/10/31(日) 19:01:59 このユーザーのレスのみ表示する
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 36 : 2021年11月6日 : 2021/10/13(水) 19:43:59 このユーザーのレスのみ表示する
 理想は登録ユーザーが20人ぐらい増えて、noteをカオスにしてくれて、管理人の手に負えなくなって最悪閉鎖に追い込まれたら嬉しいな
 22 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:37:51 このユーザーのレスのみ表示する
 以前未登録に垢あげた時は複数の他のユーザーに乗っ取られたりで面倒だったからね。
 46 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:45:59 このユーザーのレスのみ表示する
 ぶっちゃけグループ二個ぐらい潰した事あるからね
 52 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:48:34 このユーザーのレスのみ表示する
 一応、自分で名前つけてる未登録で、かつ「あ、コイツならもしかしたらnoteぶっ壊せるかも」て思った奴笑
 89 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 21:17:27 このユーザーのレスのみ表示する
 noteがよりカオスにって運営側の手に負えなくなって閉鎖されたら万々歳だからな、俺のning依存症を終わらせてくれ
 
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