ssnote

x

新規登録する

作品にスターを付けるにはユーザー登録が必要です! 今ならすぐに登録可能!

この作品は執筆を終了しています。

罪と罰のミルクティー

    • Good
    • 3

loupe をクリックすると、その人の書き込みとそれに関連した書き込みだけが表示されます。

▼一番下へ

表示を元に戻す

  1. 1 : : 2016/12/01(木) 00:08:08
    こんばんは、あげぴよです。
    今作は冬のコトダ祭の作品となります。



    参加者:
    ・私
    ・風邪は不治の病 さん
    ・縁縄 さん
    ・たけのこまんじゅう さん
    ・パムーンにも花は咲く さん
    ・シャガルマガラ さん
    ・ベータ さん
    ・ノエル さん
    ・祭壇の地縛霊 さん
    ・きゃんでろろ さん
    ・De さん




    テーマ:罪と罰




    登場人物:
    苗木、大和田、山田、セレス、江ノ島、
    狛枝、九頭龍、小泉、罪木、七海
    の中から1名以上
  2. 2 : : 2016/12/01(木) 00:08:51







    目が覚めると、真っ黒い空間にいた。





    (いいや)、実際に真っ黒いというわけではなく、少しだけブルーというか紫というか、とにかく青みがかっているのだ。

    その青みが少々だが足元を照らし、同時に宇宙のように終わりのない空間であることを寝起きの脳に理解させた。

    床と壁の境界すら視えない。自分は宙に浮いているのではないかとさえ考えた。若しくは、そういう感覚は無いが今落下している最中なのかもしれない。

    ここは夢?それとも現実の空間?

    どちらにせよ、自分の意識は此処にある。
    つまり今現在自分はこの場所に立っているのだ。

















    セレスティア・ルーデンベルクは慌てることも助けを呼ぶこともなく、かと言って脱出しようとすることもなく、ただその空間を『自分が今現在存在している場所』として受け入れた。




    (さて、これからどうしてくれましょうか)




    セレスはまず辺りを見回した。
    すると、遠くに僅かだが白い光を確認した。
    何か分かるかもしれない、と彼女の足は無意識にそちらに動く。

    ヒールの音が無限空間にコツコツと響く。
    進んでいるのかそうでないのか分からないほど広く虚しい場所だが、白い光は徐々に大きくなっていく。


    それが光ではないと気づいたのは、その白が詳細まで確認できるようになるほど近くなってからだった。
    黒い空間に対して白く輝いて見えたのは、真っ白いテーブルクロスだったのだ。
    木製のテーブルの脚と左右に構えた椅子が背景()と重なって視えなかったため、白い光がぼんやりと浮かんでいるように見えたのだろう。




    それにしても、なんという光景だろうか。

    人間の世界かどうかも定かではない空間に、どこにでも売られているようなテーブルと椅子のセット、その中心にお菓子の詰め合わせが盛られた皿、左右には向かい合うように金細工の施されたティーカップと透き通る硝子のコップが用意されているのだ。


    ティーカップには落ち着いた湯気の立ち上るミルクティー、コップにはその硝子同様に透き通るアメジストを詰め込んだような葡萄のジュースが淹れられていた。


    正邪や善悪、美醜や強弱。
    対をなしているというか、何ともシュールな図だが、人間味のない空間に対して人間味のあるものを見つけて安心したのは事実であり、椅子の背もたれに手をかけると深呼吸して肩の力を抜いた。






    椅子を引こうとしたその時。





    聞こえた。







    いや、訂正しよう。聞こえる。
    徐々に大きくなっていく。


    自分ではない足音が反対側から聞こえてくるのだ。


    瞬きも忘れるほど警戒して反対側を見据える。
    クラスメイトか、知り合いか。
    それとも見知らぬ誰かか。

    大体誰が来てもその三択に当てはまる筈。
    それ以外と言ったら両親くらいだろう。
    たとえ宇宙人が来ようとも超能力者、未来人、異世界人が来ようともそれは『見知らぬ誰か』に該当するからだ。







    ……しかしどうだ。女の勘、いや、人の勘とはそういうときほど何故か当たらないものである。

    その正体は三択の中には無かったのだ。
    同時にセレスは二の句が継げなくなっていた。







    それはなにも、自分の予想が外れたからではない。
    自分の真向かいに立つ幼女が、幼き頃のセレスティア・ルーデンベルク自身だったからだ。
  3. 3 : : 2016/12/01(木) 00:10:02


    幼き日の自分は、不思議そうな目で自分を見ていた。

    昔気に入っていたのかよく着ていたオーバーオールにさらさらの黒いボブカット。
    化粧が無くても綺麗な肌と、宝石のように輝く眼。


    「おねえさん、だれ?」


    フランス人形を大事そうに抱え、彼女は舌っ足らずな高い声で私に話しかけた。


    「私は─────」









































    私は──────── 。





























    迷った。






    どう答えればいい。



















    「私は……」







































    「……未来の、貴女ですわ」



    「ほんと!?」









    セレスティア・ルーデンベルクとは名乗らなかった。




    目の前の少女は目を輝かせている。

    私の記憶が正しければ、今の私の姿はこの頃の私の憧れそのものだったはず。
    金塊を目の前にした人間のような眼差しも頷ける。






    「ねえねえ、おねえさんの話してよ!」



    少女は人形を抱えたまま椅子にちょこんと座り、テーブルのお菓子に手を伸ばした。

    セレスもつられるように座る。
    まだ温かいミルクティーを少しすすり、自分自身が目の前にいるという状況を冷静に受け入れた。








    「おねえさん、今なにしてるの?どんな人なの?」











    今なにしてる、だって?

    金のために、自分のために、汚れっちまった夢のために他人を欺き続けることに没頭しています。
    金で金を買うような、そんな日々です。






    どんな人、だって?

    友達いません、ギャンブルしか取り柄ないです、プライドばっかり膨れてます、厚化粧で腐れ切った内面隠して生きてます。
    醜さをよりキツい醜さで蓋するような、そんな人です。








    未来の自分を知ろうとする無邪気な声は予想を遥かに超えて心に突き刺さった。

    同時に、過去の自分と今の自分の差を感じた。

    過去の私は、こんなにも明るかったのか。こんなにも光を帯びていたのか。
  4. 4 : : 2016/12/01(木) 00:10:40


    目の前の少女はこちらの心など知る由もなく、質問責めを止めない。

    粒ほどの悪意もない問いに胸の中はズキズキと痛む。








    「おねえさん、『おしろ』住んでるの!?」


    「いえ、今はまだ────」


    「じゃあいつか住むんだ!」


    「────ゆくゆくは、そうですわね」


    「でも、おかね必要なんだよね……??」


    「……ええ、そちらも徐々に」


    「ほんと!?どーやって稼ぐの??」













    どうやって。

    どうやって?

    私の化粧塗れの手を見て。

    マニキュアで醜さ隠した爪を、リングで情けない過去に蓋をした指を見て。


    こんな風に手を汚す(・・・・)だけだよ。





    私が応えに迷うと、少女はその間にお菓子に手を伸ばす。
    そういう形で私は少しの間なら黙ることが許されている。

    袋の端と端をつまんで、クルッと回してお菓子を取り出す。
    私が迷っててもいい時間はどんどん削られていく。




    「……おねえさん?」

    少女はチョコを下で弄びながらこちらに視線を直した。



    「ギャンブルです」


    「ぎゃん……?」


    「ふふ、貴女にはまだ早い世界ですわ」


    「えー!ずるーい!たえこにも教えてー!」





    ずるい。

    確かに、ギャンブルはずるい。
    運が良ければ大金、悪ければ鉄骨。
    バレなければ、イカサマにはならない。

    そんな汚れた大人の世界。

    大人の世界だからこそ、子供は知りたがる。

    子供ではいられない、大人に近づきたがる。

    少女は悲しい背伸びをしている。



    私の虚栄は、ここからすでに始まっていたのだ。
  5. 5 : : 2016/12/01(木) 00:11:06


    ─────ねぇ、どうしたい?







    脳内で私が私に語りかける。







    ─────本当の貴女を、見せてあげなよ。




    ─────薄汚れた貴女を、錆び付いた現実を。





    私が3人いるという、いよいよ「不思議」では済まされない状況になってくる。





    ─────また、自分に嘘を重ねるの?




    ─────また、嘘で誰かを傷つけるの?









    私は私に嫌味ったらしく語りかける。





    目の前には笑顔でお菓子を貪る幼き日の私。




    私はこの子にどう接してやれば良いのか。




    どうすれば、この子は間違えずに生きていけるのか(・・・・・・・・・・・・・)








    ─────ねえねえ、おねえさんの話してよ!





    目の前の純粋な瞳に何を映してやればいい?





    私は…………













    「そうですね」


    「え?」


    「少し、昔の話をしましょう」


    「おねえさんのー?」


    「ええ、その通りですわ」









    やれやれ。

    今日のミルクティーは1杯では済まなそうだ。
  6. 6 : : 2016/12/01(木) 00:11:53

    「あれは何時でしたか……将棋の大会でしたね。メイド服の女性と対局したのは」


    「おねえさんしょーぎできるんだ!」


    「いや、ルールは知りませんでした」


    「え?」


    「まあ、勝ちましたがね」


    「すごーい!たえこもできるかなぁ〜」


    「ふふ、どうでしょうね。勝負には運が必要ですから」




    笑みと笑みが交差する。
    少女は前のめりになって私の話に喰らい付く。




    「あとは?あとはー?」

    「ん……富豪の老人の家で命懸けの勝負をしました。あの時は……麻雀でしたわね」


    「まーじゃん?あのカタカタするの?」



    何という表現力の無さだろう。
    理解(わか)らなくはないが、これが過去の自分だというのだから己に呆れもする。

    だけれど呆れるほどのその幼さが私に微笑みを与えたのも確かだった。



    「ふふ、面白い例え方ですこと」


    「えへへ!ねぇねぇ他には??」




    言えば言うほど、知りたがる。


    知れば知るほど、聞きたくなる。




    『無垢』というナイフは容赦なく私を切りつける。







    だけど、これでいい。






    今はただ、この子に嘘を()きたくない。





    汚れた過去でも、汚い戦歴でもいい。






    胸が痛いけど、これでいいんだ。






    無邪気な視線が心を突き刺すけど、これでいいんだ。
  7. 7 : : 2016/12/01(木) 00:12:27

    ─────ごめんなさい。




    少女の声と私の声が交差する。
    2人、姉妹のように笑顔で会話している。




    ─────ごめんなさい。





    無邪気な声が、霧のかかる微笑みが、無垢な瞳が、紫色の眼が、互いを作る。





    ─────ごめんなさい。





    憧れを抱く心と、痛みと悲しみに打ちひしがれた心がテーブルを挟んで座っている。















    ─────ごめんなさい。






    貴女にとって、私は理想(あこがれ)の姿そのものであったことでしょう。




    だけど、ごめんなさい。



    私は貴女に胸を張れるような人間じゃない。
    堂々と誇れる人間には、なれなかった。


    本当の意味で「理想」になってあげることは、できなかった。




    だけど、いいえ、だからこそ、貴女には嘘を吐かずに私が今まで生きてきたそのものを話したいと思った。









    ─────貴女(過去)に胸を張れる()で在りたかった。









    私に憧れる少女と、よりにもよって誰にも知られたくない現在(いま)このとき出会ってしまった。

    ……いや、そういう仕組みだったのだろう。
















    ─────そう、



















    ─────これは、私への罰。





    嘘を纏い、交わる者全てを欺いてきた()を、幼き日の私が裁きに来たのだ。







    この場所は、脱獄不可能な罪の檻の中。
    今は、目の前の処刑人と、2人きりの反省の時間。
  8. 8 : : 2016/12/01(木) 00:13:17


    ─────嗚呼。


    そうやって、何でもかんでも喰いついて来ないで。

    私は何一つ、貴女に誇れることなんてない。





    もし目の前の少女が両親だったら、どうだったか?





    きっと、変わらないだろう。



    私が希望の象徴、だなんて消防車に轢かれても言えない。





    私は、何一つ持っていない。




    何にも自慢できることなんてない。





    誰かの目標になるなんて、出来やしない。






    今も──────────そう、昔も。














    手が震える。

    ミルクティーの熱じゃ心を落ち着かせることができなくなったようだ。

    口が痺れ出す。言葉が発しにくくなる。

    脳が働かなくなる。

    目の前が少しだけ霞む。





    罪悪感という名の毒を、安心感を得るための(紅茶)と勘違いして飲んでいたようだ。






    私の判決は有罪。

    罪を償う方法なんて無い。死刑なのだから。

    殺し方は毒殺と見て間違いないだろう。








    罪と罰を配合した死刑ブレンドのミルクティー。


    これが、罪の味。
    これが、罰の味。


    一生に一度の味覚を、死ぬ1秒前まで存分に味わうとしよう。






    震える手でカップを優しく持ち上げると私は顎を上げ、唇を少し閉じて、中で舌を転がし、ゆっくりとそれを口の中へ運ぶ。




    少女の明るい声も今は少しだけ無視をした。




    ああ、

    思えばなんという人生だっただろう。




    誰からも相手にされなかったあの頃。


    いじめられていたあの頃。


    将来の自分のヴィジョンとそれに伴うプライドの膨張。



    これが私。



    これが、哀れな愚者の最期。





    ごめんなさい。





    私を産んでくれたのに。





    ごめんなさい。





    私を気にかけてくれたのに。




    ごめんなさい。






    今一度こうして私の前に現れてくれたのに。






    ごめんなさい。
    ごめんなさい。
    ごめんなさい。
    ごめんなさい。
    ごめんなさい。





    ごめんなさい。
  9. 9 : : 2016/12/01(木) 00:14:09


    「おねえさん、泣いてる」


    「……え?」




    少女の声で我に返る。


    憧れを見据える瞳は、いつの間にか不安の眼差しに変わっていた。




    カップを置いて頬を拭う。
    確かに、確かに私は泣いていた。





    「どうしたの?悲しいことがあったの?」





    少女は椅子を飛び出し、私の足元へ駆け寄る。





    その一瞬。
    心の中の何かが、ブワッと溢れ出す。







    私は椅子から立ち上がり、膝をついて少女を抱きしめた。






    強く、強く。
    もう離さないというくらいの勢いで。





    それはもう脳が何か考えたとか、そういうことは一切なかった。

    言うなれば、反射。反射的に抱きしめたのだ。










    「……おねえさん??」



    「私の話を聞いてくれて、ありがとう」



    涙はそのままに、鼻をすするのを我慢し、これ以上心配されぬよう、声を強く出した。




    「ごめんね、私もう行かなくちゃならないの」

    「えー!もう行っちゃうのー?」


    「最期にひとつ、お姉さんと約束してくれる?」



    駄々をこねる声を敢えて無視すると、少女はそれでも「うん」というひとつ返事で応える。



    「いいよ!なになにー?」



    「あなたは、お父さんとお母さんの言うことを聞いて、綺麗なままでいてね」




    「うん!約束する!」






    「………ありがとう」















    「じゃあね、おねえさん!」



    「じゃあね、たえこちゃん」






































    「─────ありがとう(どうか、幸せに)
  10. 10 : : 2016/12/01(木) 00:14:40



    ──────────



    ───────────────



  11. 11 : : 2016/12/01(木) 00:15:24
    目を開けると、見慣れた天井だった。





    身体を起こせば、見慣れた壁と見慣れた床。





    石丸清多夏の煩いノックで頭は完全に昨日の夜から朝にシフトチェンジした。









    食堂にはいつもの14人。


    今日は私が一番の遅刻。






    何人かのおはようの声。





    いつもと同じ、いつも同じ朝だ。








    モノクマの急な呼び出しだって、いつもと同じ。










    百億円、という言葉。それしか聞き取れなかったがおそらくそれだけだろう。
















    「苗木君」





    私の隣の男子生徒が反応する。










    「必ず、生きてここから出ましょうね」










    私は邪気のない笑顔でそう言った。

    END
  12. 12 : : 2016/12/01(木) 00:22:25

    どうも、あげぴよです。

    この度は、冬のコトダ祭り企画の主催をやらせていただきました。

    後ほど、参加されてる皆様の作品が次々と掲載されることでしょう。


    今回主催としてテーマや登場人物を決めたのはこのネタを書きたかったから、というのが一つの理由です。

    ですが幅の広いテーマのもと初の参加者もいて私としては成功だったのかな、と思います。


    参加される皆様のご協力に感謝申し上げます。


    引き続き『冬のコトダ祭り』をお楽しみください。
  13. 13 : : 2016/12/04(日) 17:07:31
    語彙力がないせいでうまく言葉にできねェが、面白い…!!!

    です!

▲一番上へ

このスレッドは書き込みが制限されています。
スレッド作成者が書き込みを許可していないため、書き込むことができません。

著者情報
aimerpiyo

あげぴよ

@aimerpiyo

「ダンガンロンパ 」カテゴリの最新記事
「ダンガンロンパ 」SSの交流広場
【sn公式】ダンガンロンパ交流広場