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舞園「誰が一番苗木君と仲がいいかですか?」

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  1. 1 : : 2016/09/12(月) 22:53:15
    ・見切り発車
    ・ネタバレ注意
    ・登場人物タグに女子が多いですが、男子も出てきます。
    ・若干のキャラ崩壊注意
  2. 2 : : 2016/09/12(月) 23:06:54
    舞園「そんなの私に決まっているじゃないですか。」

    霧切「何を言っているのよ、あなたなわけがないじゃない。」

    セレス「勘違いも甚だしいですわね。」

    戦刃「……わ、私が一番……。」

    江ノ島「大事な主張でもどもった上に最後まで言えないなんて本当に残念ですね。」


    江ノ島「まぁ?苗木とクラスで一番仲がいいって言ったら私だろうけどねー?」


    舞園霧切セレス「は?」


    戦刃「じゅ、盾子ちゃんと苗木君が仲良し……好きな人同士が仲良し……良い…。」



    朝日奈「あはは…なんだろう、この殺伐とした空気。」

    大神「男子達が怖がって、隅に固まってしまっているな…。」



    桑田「おいおいおい、なんだよあの空間。近寄りたくねえ。」

    山田「全くですな。これではさすがの大和田紋土殿もビビってしまうのでは?」

    大和田「ビビるか豚コラァ! ……だが、触らぬ…何とやらだ。」

    石丸「触らぬ神に祟りなしだぞ兄弟! しかし……彼女たちの雰囲気はその…。」

    不二咲「はっきり言って、怖いよねぇ…。」

    葉隠「俺の占いでも近づくなって出てるべ。むしろ、こっから退散したほうがいいとまで出てるべ。」

    桑田「つーか、話題の中心の苗木はどこ行ったんだ?」


    その質問には誰もが首を振った。
  3. 3 : : 2016/09/12(月) 23:22:09
    議論が白熱しだしたその時、教室の扉が開かれた。

    苗木「あれ、今日はほとんどみんないるなんて珍しいね。」

    桑田「な、苗木ぃぃ!」

    山田「救世主殿ぉおおお!」

    苗木「わっ、えっ、なに!?」

    桑田「あれを何とかしろ!」


    苗木「あれ?」


    桑田が指さした先にはけんか寸前にまで議論が白熱している女子たちであった。

    よくわからない苗木はそのまま彼女たちに事情を聞きに行ってしまった。

    自分が原因とも知らずに。


    苗木「ねぇ、何だか白熱してるみたいだけど、どうしたの?」


    江ノ島「苗木はっけーん!残姉!」

    戦刃「え、うん。」

    苗木「え?」


    苗木はいつの間にか戦刃によって椅子に縛られていた!


    苗木「なにこれ!?」

    江ノ島「さて、じゃあ始めましょう。絶望の学級裁判を!」

    苗木「ちょっと、江ノ島さん!?」

    江ノ島「ルールは簡単、自分が苗木と仲が良いというアピールをしていって、最後に苗木が誰が一番かを決定してもらいます。」

    江ノ島「ぶっちゃけよー、苗木に決めてもらったほうがはやくねっ?」

    苗木「ねぇ、未だに状況がわからないんだけど!」

    セレス「手っ取り早いですわね。いいでしょう。」

    舞園「苗木君と一番仲が良いのは私です!」

    霧切「負ける気がしないわね。」

    戦刃「が、がんばる。」

    朝日奈「わ、私たちも?」

    大神「不毛な…。」

    江ノ島「あ、そこの男子共も無関係決め込んでるそこのメガネコンビも強制参加ね。」


    十神「メガネコンビだと……。まぁいい、くだらんが付き合ってやる。」

    腐川「白夜様がやるなら私も…!」



    江ノ島「じゃあ、第1回苗木と一番仲がいいの誰なのか選手権開始~!」

    苗木「ねぇ、誰もボクを助けてくれないの!? ねぇ!?」

  4. 9 : : 2016/09/13(火) 20:32:31
    ~議論開始~

    江ノ島「さって……早速だけど、誰から行こうか?」

    桑田「つってもよー、仲がいいアピール?何話せばいいんだ?」

    江ノ島「はぁ……ここまで理解力がないだなんて…絶望的です…。」

    桑田「んだとコラ!」

    江ノ島「まぁ、このままだと何やらかすかわかんない連中もいるわけだしー?」

    江ノ島「私様が例を見せてやろう!」

    その場いる全員が様子見をすると決めたようで、江ノ島の言葉に反応はない。

    江ノ島「ねーえ?苗木くぅん?」

    苗木「…何?」

    江ノ島「怒ってるのー?それはともかくぅ…。」

    江ノ島「この前行った温泉旅行は楽しかったなぁ!? 苗木ぃ!」


    舞園「な……。」

    霧切「なん…だと…。」

    セレス「…ふっ、う、嘘はいけませんよ、江ノ島さん」

    山田「セレス殿…膝が笑っておりますぞ。」


    江ノ島「うそぉ?なんで私がこんな場を設けて、そんなことする必要があるのさ。」

    舞園「本当なんですか!? 苗木君!」


    苗木「えっと……うん。」


    山田「キタコレ!」

    石丸「男女で温泉旅行…ふしだらだ!」


    苗木「でもあれは……。」
  5. 12 : : 2016/09/13(火) 23:19:16
    ~回想~


    苗木「よし、準備もできたし、学園に行くぞ。」


    ピンポーン


    苗木「誰だろ、はーい。」

    江ノ島「どもー、江ノ島盾子でーす!」

    苗木「江ノ島さん?どうし」

    江ノ島「首トン!」

    苗木「うっーーー」



    江ノ島に漫画とかである首をトン、とされて気絶させられた苗木…。

    目が覚めたら…温泉宿にいた。



    苗木「いや、なんでだよ。」

    江ノ島「苗木きゅんと思い出作りたくなっちゃったんだねー。」

    苗木「できれば普通に誘って欲しかったよ。」

    江ノ島「普通なんて絶望的にツマんねーだろ!」

    苗木「だと思ったよ。」

    江ノ島「やだ、私のことを隅々までわかってくれてる…。」ゾクゾク

    苗木「これだけでわかったことになるの?」

    江ノ島「じゃあ早速、温泉に行こうか。」

    苗木「唐突だね! わかったよ。ボクは待ってるから入っておいでよ。」

    江ノ島「何言ってんのよ。この流れは混浴に決まってるじゃない。」

    苗木「…は? え!?」

    江ノ島「さぁ、レッツゴー!」

    苗木「いや待って!?」

    抵抗むなしく、苗木は江ノ島に連れて行かれた。
  6. 13 : : 2016/09/14(水) 20:38:31
    江ノ島「苗木きゅんとのラブラブ混浴デート楽しかったよねぇ?」

    苗木「それは違うよ!ボクの同意はなかったし、ボクが全力で逃げて、別々に入ったじゃなかったじゃないか!」

    江ノ島「でーもぉ?その後さぁ…」

    苗木「その後…って!」

    江ノ島「恥ずかしそうな苗木ぃ…かわいかったなぁ。」

    苗木「やめてよ江ノ島さん!!」


    舞園「な、何があったって言うんですか…!」

    霧切「しょ、証拠がないわ。証拠がなければ全ては…」ブツブツ


    山田「誘拐されたか弱い少年が勝気な女性にあんなことやこんなこと…創作意欲が捗りますなぁ!」

    桑田「いっしょに温泉行ったってだけでも羨ましすぎだろ!くっそ!オレも舞園ちゃんと行きてぇ!」

    舞園「お断りします。」

    桑田「即答!?」



    江ノ島「この状況を続けるのもいいけど、事実はー、室内に備え付けの温泉で、苗木は必死にこっちを見ないように布団の中で震えてたのよねー。いやぁ、あの毛布を引っペがしたかったわー。」

    苗木「いや、引っペがしたじゃないか! …あ。」


    桑田「ん?つまり…?」

    葉隠「江ノ島っちの裸を見たっちゅうことか! なるほどな!」


    苗木の周囲の場の空気が5度は下がった…気がした。


    舞園「先を越され…先を…」脱ぎっ

    苗木「舞園さん!?アイドルが簡単に脱いだらダメだ!」

    舞園「私のことを大切に思ってくれるんですね!」やめっ

    桑田「ちっ。」



    江ノ島「ってなわけでぇ…こんな感じで思い出とかで根拠を述べるって感じかな?わかった?」

    朝日奈「苗木との思い出かぁ…。」

    江ノ島「あっ…もちろん、ないって方はないで構いません…。」


    苗木「…ないって場合ボクにもダメージ来るんだけど…。」

    苗木が悲しそうに呟いた。
  7. 14 : : 2016/09/15(木) 22:40:30
    江ノ島「っつーわけで、我こそは苗木の大切な人間だって自信を持ってるやつはアピールしなっ!」デストローイ

    江ノ島「あっ…挙手制お願いします……。」


    石丸「つまり、苗木君と一番親友であるのは誰か、ということか! そんなものは僕に」

    桑田「おいコラ! 聞き捨てならねーぞ!? 苗木の親友つったら俺だろ!」

    大和田「テメー、何兄弟に意見してんだ…って言いてぇところだが、苗木の一番のダチつったら俺だ! 兄弟であろうと異論は認めねえ!」




    山田「……なにあれ暑苦しい。」

    不二咲「す、すごい熱気だねぇ…。」

    十神「ふん、見苦しいものだ。」

    山田「…と言いながら、十神白夜殿も自分が一番、とか思っている口では?」

    十神「そんなことに興味などない。」

    山田「ですよねー。」

    十神「…まぁ、苗木が一方的に俺を尊敬しているのは確定事項だがな。そういう意味では俺が一番かもしれんな。」

    山田(ぶふぉっ…ツンデレキタコレ。誰得ですが。)

    腐川「苗木と白夜様が……ぎぎぎぎ……あ、でも…あーなって…ふ、ふひひ…」

    山田「需要あるんですか、そうですか。」



    江ノ島「なげーわ!男子共がやる気になったところで、開始!挙手した人を苗木が指定してあげてね!」

    苗木「え、ボク!?」


    バッ!

    ほとんどの者が一斉に手をあげた。



    苗木「えっと…じゃあ、桑田クン。」

    桑田「よっしゃ!行くぜ!」
  8. 17 : : 2016/09/17(土) 17:37:24
    桑田「苗木とオレつったら、よく遊びにいくよな?」

    苗木「うん、そうだね。」

    桑田「それに、何かと一緒にいることも多いし、互いにいて落ち着いてるっつーかさ、居心地がいいんだよ。」


    桑田「これで親友じゃないならなんだっつー話だよな!」


    舞園「それは違います!」

    舞園「それで親友だと言うならこの場にいる人全員が当てはまってしまうのではないですか?」


    霧切「苗木君と一緒にいて落ち着くという点なら私も感じているわ。」

    不二咲「あ、それわかるかも。黙っていたとしても、落ち着くというか。」


    苗木「あの…恥ずかしいんだけど…。」


    山田「ファ〇ク!そもそも男と女の居心地の良さ、というのを同列にしている時点でナンセンス男キャラと女キャラを攻略していく上で居心地がいいなんて展開は男キャラなら友情エンドですが女キャラは恋人エンド目指してるのに親友エンドで終わってまた周回するはめになるとかもうこのクッソゲー!とか思いながらしかしでもくやしいやっちゃう本当にありがとうございました」ブツブツ

    戦刃(なにブツブツ言ってるんだろう。怖い。)

    江ノ島「あー、山田の話が若干わかっちまった…絶望的…。」

    戦刃「さっすが盾子ちゃんだね!」



    江ノ島「というか、桑田君。そんな常日頃に一緒にいて、居心地が良い、なんて話を聞いてるわけじゃないんですよ。」

    江ノ島「もっとよォ!嬉し恥ずかしエピソードとか苗木の希望溢れる出来事とか苗木の恥ずかしい過去とかそういうのを聞いてんだよォ!」

    苗木「…ん?最後おかしくない?」


    桑田「あ、それならあるぜ。」

    苗木「一番最後で思いついたわけじゃないと信じてるよ。」
  9. 20 : : 2016/09/19(月) 00:15:24
    桑田「オレと苗木って時々キャッチボールするんだがよ…。」


    桑田はポツポツと話し始めた。



    桑田「よっと。」

    苗木「っ! 相変わらずすごい球だね。さすが超高校級の野球選手だよ。」

    桑田「まっ、オレはミュージシャン目指してんだけどな。苗木こそ、なかなか筋はいいぜ? 」

    苗木「…もったいない、なぁ。」

    桑田「おっと、ちっとコントロール乱れてんぞ? んで、何がもったいないって?」

    苗木「…っう! せっかくの才能なのに、って思ってさ!」

    桑田「うおっと、疲れたか?苗木。届かなくなってきたな。このあたりでやめとくか。」

    苗木「ん、そうだね。そろそろ時間だし。」


    その時、桑田は見た。
    内出血を起こし、ところどころが黒くなっている苗木の手を。


    桑田「おいおいおい!苗木どうしたんだよ、その手! ってオレの球受けたからだよな!? 痛えなら早く言えっての!」

    苗木「あはは…ごめんね。」

    桑田「なんで言わねえんだよ!」

    苗木「……桑田クンってさ。キャッチボールをしてる間ってすごい楽しそうなんだよ。」

    桑田「…は?」

    苗木「カラオケやゲームセンターとか行って遊ぶのも楽しそうなんだけど、キャッチボールのときが一番楽しそうなんだよ。変な言い方なんだけど、一番笑顔が輝いてるっていうかさ。やっぱり野球が好きなんだなって思えて…。」

    桑田「……。」

    苗木「そんな桑田クンを見てるのが楽しくってさ。それに、これくらい…。」

    桑田「ばっかやろう…。お前が楽しくてもオレが今楽しくねえよ。」

    苗木「…ごめんね。」

    桑田「いいや、許さねえ。罰として舞園ちゃんと遊びに行くセッティングしろよ。」



    桑田(……そっか。オレって意外と野球、好きだったんだな。)


    桑田(それに…苗木すっげえいい奴じゃん。知ってたけど。)


    苗木が自分のことを考えている、見てくれている、そして、野球が好きなことを気づかせてくれた苗木は既に自分の中で大切な存在であると、桑田は自覚した。
  10. 21 : : 2016/09/19(月) 00:27:51
    桑田「互いに信頼しあってるっての? これは親友って呼べるし、この中で一番仲がいいだろ?」

    舞園「待ってください、一時期苗木君の手に包帯が巻かれていたのは…。」

    霧切「あなたのせいだったのね。」


    桑田「いや…まぁ…。」


    舞園「く わ た く ん?」


    桑田「いや、つってもさぁ!? 苗木もその日までは言ってくれなかったし、それを察しろっていうのもいやいや舞園ちゃんその手の包丁どっから出し」



    【しばらくお待ちください】



    舞園「さて、次に行きましょうか。」


    江ノ島「さすがの私もドン引きするわぁ。まぁどうでもいいけど。」

    戦刃(右手が包帯に包まれてる苗木君かっこよかったんだけど、普通に怪我だったのか…。)

    江ノ島「まっ、右手に包帯巻いた苗木も新鮮だったけどね。」

    戦刃「だよね!」




    とある2年生のクラス

    「むっ、我が右手に封印されし暗黒竜が共鳴を起こしている?」

    「せんせーい!田中がまた発作を起こしてまーす。」

    「いつものことじゃない。そんなことより!今日はみんなでーーー」
  11. 22 : : 2016/09/19(月) 00:34:51
    苗木「…そんなこともあったっけ。」(桑田から目をそらしつつ)

    江ノ島「じゃあ、次。」

    苗木「ねぇ、これ全員やるの?」

    江ノ島「あったりまえじゃん! こんなおもし…貴重なことを聞ける機会は滅多にないからね!」

    苗木「面白いって言おうとしたよね?」


    江ノ島「さっ、次ー!さっさと指定しちゃって苗木ー?」

    江ノ島「あ、全員の話しを聞いてから最終的な判定ね。」


    苗木「はぁ……じゃあ…石丸クン。」


    目に映る中で一番綺麗な挙手をしていたために、思わず苗木は指定してしまった。


    石丸「はい! では、ボクと苗木クンの熱いエピソードを話そう!」

    山田「始める前から熱い!」
  12. 25 : : 2016/09/20(火) 00:21:40
    石丸「あれは僕が教室に一人残って勉強をしていた時…。」



    ~~~


    石丸「ふむ、『良き友好関係を結ぶための秘訣はツッコミ!』か。」

    石丸「もっとツッコミの精度を上げるべきだな!よし!」

    石丸「なんでやねん!」



    ~~~



    葉隠「いや、なんでやねん!? って、んな切実なことしてたんか!?」

    石丸「君達とは仲良くなった自信はあるが、より仲良くなるためにはどうすれば良いか、僕は日々勉強中だ!」

    朝日奈「……石丸ってツッコミというよりボケ…。」

    大神「朝日奈よ、確かそういう芸風もあったはずだ。」

    山田「違う、そうじゃない。」

    石丸「静かに! 続きを話すぞ! 僕が教室で練習していると…。」



    ~~~

    ガラッ

    苗木「…あれ、石丸クン?」

    石丸「やあ、苗木君ではないか。こんな時間に会うとは珍しいな!」

    苗木「確かにね。ボクは日直だったんだけど、石丸クンは?」

    石丸「僕はツッコミの練習だ!」

    苗木「え、なんで!?」

    石丸「この本によると、潤滑な友好関係にはツッコミが重要らしいのだ!」

    苗木「へ、へぇ…石丸クンもこういう本読むんだね。」

    石丸「勉強は教科書を読めばいいが、人とのコミュニケーションの仕方は教科書に書いていないからな。このような本から勉強するしかあるまい。」

    苗木「…石丸クンってさ、努力することをやめないよね。」

    石丸「…努力は自分を裏切らない。届かないことはあっても、それまで努力したことが消えるわけではないからな。」

    苗木「石丸クンが今努力しているのはみんなともっと仲良くなりたいからだよね。」

    石丸「そうだ! 皆とは仲良くなったと自信を持って言えるが、仲良くなる努力を怠る理由にはならないからな。」

    苗木「……素晴らしいことだと思うよ。でもさ、一つ、できてないことがあるよ。」

    石丸「…なに?」

    苗木「ボク…じゃなくてもいいんだけど、友達に相談する、ってことだよ。」

    石丸「……。」

    苗木「そういった視点が抜けちゃったのかもしれないけどさ、ボクからすると石丸クンが皆と仲良くするために頑張ってくれてるのに、何もできない、っていうのは…悔しいし、もどかしいんだ。」

    石丸「………。」

    苗木「だからさ、『もっと皆と仲良くなりたい。どうすればいいだろう。』って、大和田クンとか、不二咲クンとかにも相談したらいいんだよ。意外で、良い意見が出るかもしれないしね。」

    石丸「…………。」

    苗木「石丸クン?」




    石丸「ぼ、ぼぐば……皆と仲良くなりだいと思いながら……その皆のことを忘れるどああああ……!!!」

    石丸「ぐぅぅううううう!!!」




    苗木「わっ、だ、大丈夫!?」

    石丸「大丈夫だ! 苗木君は大切なことを教えてくれた! もはや君はただの学友ではない!」

    苗木「普通に友達、でいいんだよ。」

    石丸「では親友だな!」

    苗木「大和田クンは?」

    石丸「兄弟は兄弟だ!」

    苗木「そっか。」アハハ


    苗木は苦笑気味に応えたのだった。
  13. 28 : : 2016/09/21(水) 00:30:49
    石丸「これが僕と苗木君との熱い思い出だ!」

    舞園「た、確かにいい思い出…に聞こえなくもない。」

    石丸「僕はこれで苗木君を心の底から信頼でき、そして、大切な存在であると自覚した!」

    石丸「苗木君も【同じ思い】に違いない!」



    霧切「それは違うわ。」

    霧切「石丸君、確かにそれはあなたにとっても大切な思い出で、聞いているこっちも美談だと感じたわ。」


    霧切「でも、苗木君が同じ思いであるとは限らないはずよ。」


    石丸「否! これは女子にはわからない感覚のはずだ! 僕と苗木君の絆は硬いぞ!」


    霧切「…いいわ、徹底的に論破してあげるわ…!」





    江ノ島「まっ、あそこはほっといて、次行こうか。」

    苗木「ねぇ、腕が痛くなってきたんだけど。」

    江ノ島「えー、仕方ないなぁ。じゃあ、私が抱きついて拘束っていうのは?」

    苗木「新たな火種を生むようなことを言わない。」

    江ノ島「仕方ないですね。では、解きますが、動いてはいけませんよ?」

    苗木「この囲まれた状態で逃げれるとは思っていないよ。」


    苗木を縛っているロープが解かれて、苗木は開放された。


    江ノ島「じゃあ、苗木、つぎ、と言いたいですが、あとで整理しやすいし、男子から話聞いていくことにしたから。たぶん、そうしたほうが面白いし~。」

    苗木「どういうことなのさ…。じゃあ、次は……山田君。」


    山田「やや、僕を指名するとは苗木誠殿も人が悪い。他とは違う圧倒的な友情度というものを見せて差し上げましょう!」

    山田は自信満々に腰に手を当てて、宣言した。
  14. 37 : : 2016/09/23(金) 01:10:14
    山田「あれは、苗木誠殿と漫画の話をしている時でしたな。」



    ~~~

    山田「ぐふふ、苗木誠殿、このブー子の漫画は如何でしたかな?」

    苗木「面白かったよ。女の子向けかな、ってことで忌避してたけど、意外と設定が凝ってたりで面白かったよ。」

    山田「そうでしょうそうでしょう。苗木誠殿はその道の素質がありますな。」

    ~~~


    舞園「苗木君をオタクにするならアイドルオタクにしてくれませんか?具体的に言えば、舞園オタクに。」

    山田「ヌアアアアア! 何も分かっていない! 今オタクの一言で我らを語りましたな!?」

    舞園「私からしたら違いがわからないんですが…。」

    山田「舞園さやか殿、全国どころか世界のオタクを敵に回していますぞ…。」

    舞園「と言われても…。」

    苗木「舞園さん、さすがに言いすぎだよ。」

    舞園「すいませんでした! 十人十色。色々な人がいて当たり前ですよね!」

    山田「この差である。」


    山田「と言っても、苗木誠殿が拙者の勧める漫画に理解を示してくれたのもそうですが、もう1つ決定的な証拠があるのですぞ。」


    ~~~

    山田「苗木誠殿~、今度イベントがあるのですが、苗木誠殿に手伝いを頼みたいのですが、よろしいですかな?」

    苗木「イベントかぁ。うん、いいよ。ちょっと興味あるし。」

    山田「おお、良い返事ですな。では当日は楽しみにしておりますぞ。」

    苗木「…? うん。」


    苗木(楽しみって何のことだろう?)



    イベント当日。

    苗木は笑顔を引きつらせていた。


    苗木「山田クン…。」

    山田「なんですかな?」

    苗木「これ…着るの?」

    山田「そうですぞ。これを着て売り子をやってほしいのですぞ。」

    苗木「…なんで、魔法少女の衣装なの?ボク、男だけど?」

    山田「いやぁ、今回のボクの同人誌は男の娘がメインテーマでして、それならば売り子も男の娘、というわけで、我がクラスで一番中性的な苗木誠殿に任せようと…。」

    苗木「とんでもないこと任せてくれたね!? 内容聞かずに引き受けたボクもボクだけど!」

    山田「しかし、魔法少女の服を着る機会なんて滅多にないですぞ?」

    苗木「一生訪れなくていいよそんな機会!」

    山田「今訪れております。さぁさぁさぁ?」

    苗木「嫌だよ!? こんなことならボクはこなか」

    山田「バイト代、弾みますぞ?」

    苗木「………。」


    苗木もバイト代は欲しかった!


    苗木「う、うぅぅ…ま、まぁ…山田クンしか知らないし…今日だけってことで……。」ブツブツ



    山田(うっひょおおお、やっぱり似合いますなぁ。写真撮っとこ。)パシャ


    そして、山田のブースは売り子の魔法少女(男の子)のおかげで盛況に終わることができた。
  15. 38 : : 2016/09/23(金) 01:23:53
    山田「僕のことを気味悪がらず、尚且つ、快く僕に協力してくれる苗木誠殿と拙者は親友と呼べるにふさわしいものでしょう。」

    苗木「前半はよくても、後半は詐欺っぽいし、最終的にはお金の繋がりしかないよ。」



    江ノ島「色々言いたいことはあるけどさー、山田?」

    山田「はいですぞ。もちろん、ここに」チラ

    江ノ島「やっぱりあんたなら写真撮ってるよねー?」

    苗木「なぁ!?いつの間に!?」

    山田「いやぁ、いつか役に立つかと思いまして、そして、その時は今だ!と思いまして。」


    江ノ島「へー、うっわ、苗木超似合っててウケるんですけどー。」

    戦刃「わぁ…かわいい。」

    舞園「さすが苗木君!何を着ても似合いますね!」

    セレス「ふむ、執事服も良いですが、こちらも中々…。」

    石丸と言い争っていた霧切もいつの間にか戻ってきていた。

    霧切「恥ずかしそうな顔もグッドよ苗木君。」



    苗木「死にたい。」

    江ノ島「そんな簡単に死にたいとか言っちゃダメです…。」

    苗木「やかましいよ。」


    大和田「何がいいのかわかんねーな。」

    十神「同感だな。」

    石丸「うむ、やはり男ならば男らしい格好をするべきだ。」

    不二咲(…意外と似合うと思ってしまった……。)

    葉隠「……これ金儲けに使えそう…閃いた!」

    山田「通報した。」


    腐川「ギギギ…私よりもかわいい…とか思ってるんでしょ苗木!?」

    苗木「もういっそのこと殺してくれない?」



    江ノ島「さって、あの写真は後でクラスの共有財産にするとして。」

    苗木「聞き捨てならないんだけど。」

    江ノ島「次の人行ってみよー!」

    苗木「ボクのこと本当に友達って思ってる?無視はひどくない?」

    江ノ島「さぁ、は・や・くー。」

    苗木「………不二咲クンで。」

    不二咲「わっ、僕かぁ…。がんばるよぉ。」
  16. 43 : : 2016/09/24(土) 02:58:38
    不二咲「でも、僕の場合って、みんなみたいに大したエピソードがあるわけじゃないんだぁ。」

    江ノ島「ほぉ、つまり初のないパターンですね。どう、苗木?絶望した?」

    苗木「絶望はしないけど、まぁ話せるほうが珍しいと思ってたから…。不二咲クンは気にしないで。」

    不二咲「あ、で、でも…思い出話はないんだけどぉ…。」


    ~~~

    苗木「あ、舞園さん、この間出たCD聞いてみたけど、すごく良かったよ。」

    舞園「本当ですか? ありがとうございます!」



    苗木「大和田クン、雑誌で見たんだけど、こういう良さそうな道があるんだけど、どうかな?」

    大和田「おお!こりゃあ見事にまっすぐじゃねえか!スピードの出し甲斐がありそうだぜ!」



    苗木「十神クン、この前美味しいコーヒーを出す店があってさ、よかったらどう?」

    十神「この俺を誘うからには半端な店とコーヒーは許さんぞ。まぁいい付き合ってやろう。」




    不二咲(苗木クンって、みんなのことよく見てるんだなぁ。僕だったら、あんなにみんなに目を向けて、話しかけるなんて無理だよぉ…。)

    苗木「あ、不二咲クン。」

    不二咲「なぁに苗木君。」

    苗木「昨日見つけたんだけどさ、こんな雑誌があったんだよ。」

    『男の中の男。~効率的な筋トレ編~』

    不二咲「わぁ、こんな本もあるんだねぇ。ありがとう!」


    不二咲(僕のこともちゃんと見てくれて…本当すごいなぁ…。)


    不二咲(あ、そっかぁ…。)

    苗木にとって誰かが一番、ではなく、みんな大切なのだ。

    だから、平等に目を配れるし、自分にもこうやって話しかけてくれる。

    不二咲(…みんな一番、なんだね。…彼の一番になりたい人は大変なんだろうなぁ…。)

    不二咲はほっこりしながら、クラスメートと苗木を眺めた。


    ~~~


    不二咲「だからね、僕は苗木君と仲がいい自信はあるけど…一番かって言われると苗木君自身はみんなが大切だろうから……えっと…。」

    江ノ島「新勢力! みんな仲良くが一番! ってことですか?」

    不二咲「う、うん。誰かが一番、ってことは苗木君にはないと思うんだよねぇ…。」

    大和田「いや、不二咲、さすがにそれはねえんじゃねえか? いくら苗木でも仲のいい奴にも上下があんだろ。」

    不二咲「う、うん…で、でも……それで順位とか付けたらさ…最下位の人は苗木君と仲が悪い…苗木君に嫌われてるみたいで…そ、そんなのは嫌で…うぅぅ…。」

    大和田「お、おい! わかった! わかったから泣くな!」

    朝日奈「もー、何泣かしてるのさー。」


    山田(天使)

    大神(みんなが好き、というのは一番良い落としどころな気がするが…。)


    江ノ島「そんな『みんな大好き!』で終わるわけねーだろうがよ!」

    江ノ島「だいたいよぉ、山田も言ってたが、男子と女子で「大切」って感情が同じなわけねーだろぉ!?」

    江ノ島「まぁ、私も鬼ではありません。意見の一つとして取り入れてあげます。」


    苗木「もうみんな大好きだからさ、この話終わろうよ。」

    江ノ島「やだ、苗木君。私のことが大好きって、結論を出すのはまだ先だよ?」

    苗木「その耳は飾りなのかな?」

    江ノ島「はいはい、じゃあ次次ー。」

    苗木「…じゃあ大和田クン。」

    大和田「おう。まぁ不二咲が言いてえこともわかるんだがよ、やっぱこん中で苗木と一番付き合いあるのは俺だと思うぜ。」
  17. 49 : : 2016/09/27(火) 00:35:43
    大和田「ありゃあ、苗木が絡まれてたときだな。」


    ~~~~~~~

    「ただ運が良かっただけのお前がなんで本科に行けるんだ!」

    「お前なんて何の才能もないだろうが!」

    苗木「いや…あの…。」

    「はっ、何も言い返せない。図星ってことだろ?こんなのが本科に行けるなら俺だって」





    大和田「…行けねぇよ。」




    「な…だ、誰…ひっ!?」

    「お、お前は…超高校級の暴走族!?」


    大和田「大和田紋土だ。名前があんだ。肩書きで呼んでんじゃねぇよ。」

    「な、なんだ。助けるつもりか?たかだが族の不良如きが。お、俺たちに手を出したらタダじゃすまねえぞ?」


    大和田「あ?」


    「超高校級の暴走族に暴力を振るわれた。不良と一般市民の言葉、どっちを信じるかな?」


    大和田「おいおい……。」

    大和田「オイオイオイオイオイ!」

    「な、なんだよ…!」

    大和田「俺が今更風聞や周りからの評価と気にするやつに見えたか?それとよぉ……。」



    大和田「ダチを馬鹿にされて俺が見逃すわけがねええだろうがああああああああ!!」



    「ひぃぃいいい!?」

    「助けてくれー!」


    大和田「待ちやがれ!」

    苗木「待って!大和田クン!」

    大和田「あぁん!? 苗木!? なんで止めやがる!」

    苗木「落ち着いて! ボクなら大丈夫だから!」

    大和田「オメェは関係ねえ! 俺ぁムカッ腹が立って仕方ねえんだ!」

    苗木「だったら尚更だよ! ボクのために怒ってくれてる大和田クンがボクのために拳を振り上げる必要なんてない!」

    大和田「………かーっ! わかったわかった! 離せ。」




    苗木「えっと、大和田クン。ありがとう。助けてくれて。」

    大和田「気にすんな。…あれは初めてか?」

    苗木「え?」

    大和田「ああやって、絡まれることだ。」

    苗木「えっと……3度目…かな。」

    大和田「ちっ…。コソコソと気に食わねぇ。」

    苗木「…まぁでもあの人たちが言うことも合ってるんだよ。ボクはそこらの高校生と大して変わらない。ただ運が良かっただけだ。」

    苗木「気に食わなく思っても仕方ないよ。」

    大和田「……はぁ…。いいか、苗木。一度しか言わねえぞ。オメェは強え。78期の奴らん中でも一番かもな。」

    苗木「いや、そんなわけないよ…。ケンカなんてできないし。」

    太田「腕っ節の話じゃねぇよ。なんつーか……気合?心意気っつーのか。逆境に立たされたとき誰よりも折れねぇもんを持ってる…って言えばいいか。」

    大和田(それによ。何も持ってねえやつがあんなに好かれるわけねーだろ。)


    大和田の脳裏に教室での苗木が思い浮かぶ。常に誰かが隣にいるといっても過言ではない。

    斯く言う自分もいつの間にか苗木に心を許してしまった一人であるのだから。

    大和田「あー、だから……オメェは才能以上のもんを持ってんだ。だから……気にすんなよ。」

    大和田(クソが…下手くそか。)

    慣れないことをして、結局失敗した自分に悪態を付く。



    苗木「……ありがとう。うん、そうだね。前向きなのがボクの唯一の取り柄だし…。」

    大和田「おう。」

    照れくさかった大和田は苗木から顔を逸らして、短く返答した。



    大和田「苗木、オメェは強えが腕っ節はそうじゃねぇ。ああいうことがあったんなら相談しろよ?」

    苗木「いや、でも迷惑かな…って。」

    大和田「ダチを助けんのに迷惑もクソもあるか。」

    苗木「……うん、また何かあったら頼りにさせてもらうよ。約束する。」

    大和田「男同士の約束だ。俺もお前もダチは絶対に助ける。いいな?」

    苗木「うん。約束だよ。」


    大和田も苗木も嬉しそうに拳を合わせあった。
  18. 54 : : 2016/09/28(水) 22:34:38
    大和田「苗木に腕っぷしが足りねぇなら俺が貸してやりゃあいい。逆に苗木は俺に足りねぇもんを埋めてくれりゃあ、俺はもっと強くなれる。」


    大和田「だから…俺と苗木は…あー…なんつーか…親友? いや、そんなちんけな表現でも表せねぇ。」


    石丸「わかったぞ! つまり、兄弟と苗木君は魂で繋がってるんだな!」

    大和田「おお! さすが兄弟だぜ! その通りだ!」




    朝比奈「…暑苦しい…。それはともかく、男同士の熱い友情だね!」

    大神「そのような話があったとは…。ふっ、青春をしているな。」

    不二咲「いいなぁ。男らしい…。」

    山田「そんな展開がリアルで起こっている…だと? 二次元だけではなかったというのか!」

    霧切「くっ…手ごわいわね。」

    舞園「嫉妬するほど良い話です。できれば、苗木君のポジションを私が、大和田君のポジションを苗木君にやってほしいですね。」

    戦刃(それすごくいいな…!)キラキラ



    江ノ島「絶望的です…絶望的に青い春です…。」

    苗木「絶望的な青春って何さ。」

    江ノ島「あっちーぜ! 暑苦しすぎて服を脱ぎてぇ! 嘘だけど!」

    葉隠「なんだべ。江ノ島っちのヌードとか売れそうなのに。」

    江ノ島「オッケーオッケー。あとは男子で残ってるのは、十神と葉隠だけど、葉隠は飛ばしていいかー。」

    葉隠「待つべ! 俺と苗木っちは大の大親友! 大和田っち以上の熱いエピソードをお届けしてやるべ!?」

    江ノ島「えー? 絶望的になさそうなんだけどー。」

    江ノ島「私の分析でもない、と告げています。」

    江ノ島「ここは苗木君に決めてもらいます…。彼の話、聞きたいですか…?」

    苗木「…えっと…一応…。」


    江ノ島「苗木君の不安を隠せない表情、絶望的で良いですね。さあ、葉隠君、どうぞ?」

    葉隠「よっしゃ! 覚悟するべ。感動して泣くんじゃねーぞ?」
  19. 57 : : 2016/09/28(水) 23:35:06
    葉隠「ありゃあ、苗木っちと組織の奴らから逃げてたときだったな。」

    朝日奈「もうオチ読めたんだけど。」

    大神「朝日奈よ、最後まで聞いてから判断するのだ。」



    ~~~~~

    葉隠「はぁ…!はぁ…! 苗木っち! 次はどっちだ!?」

    苗木「ええっ!? ええっと……こっち!」

    葉隠「よっしゃ! 行くべ!」

    苗木「なんでボクも逃げなきゃ…。」

    葉隠「苗木っちがいないと逃げ切れないって占い…つーか、俺の勘が告げてるべ! だからマジ頼むからぁ!」

    苗木「わ、わかったよ…。」

    葉隠「さっすが苗木っち!俺の親友!」


    ~~~~~


    舞園「まさか、これで親友気取ってるとかじゃないですよね?」ヒソヒソ

    セレス「ありえますわよ。だって葉隠君ですもの。」ヒソヒソ

    霧切「苗木君も幸運というより不運よね。」ヒソヒソ



    十神「数回肩代わりしてやったというのに、まだ借金があるのか。」

    朝日奈「もうしないほうがいいよ絶対。っていうか、もう返ってこないんじゃない?」

    山田「ちなみにおいくらで…?」

    十神「大した額ではない。一般家庭の生涯収入くらいだ。」

    山田「それは決して無視できる額ではなぁぁぁぁい!」



    葉隠「そこ!うるさいべ!まだ話は終わってないべ!」


    ~~~~~

    「もう逃げ場はねえぞ!」

    葉隠「ひぃぃぃ!助けてくれぇぇぇえ!」

    苗木「え、えっと、ボク関係ないんだけど!?」

    葉隠と苗木は借金取りたちに連れ去られた。

    ~~~~~


    不二咲「ええ!?連れ去られちゃったのぉ!?」

    大和田「苗木巻き込んでんじゃねぇぞコラァ!」


    葉隠「俺だけなんでこんな中断させられんだべ! あぁもう、途中省略すっぞ!」


    ~~~~~

    なんやかんやあって、苗木が葉隠を助けるための命がけのゲームをすることになった。


    苗木「……あの、ボク本当にやらなきゃダメですか?」

    「あいつを見捨ててもいいならな。」

    苗木「………。」

    葉隠「苗木っち~!マジで頼むぅ!」

    苗木「ちなみにボクが死んだら?」

    「そんときはあいつも死ぬ。大丈夫だ、有効活用してやる。」

    苗木「ここで見捨てたら?」

    「あいつが死ぬだけだ。」

    苗木「……はぁ…。やるしか…ないのか。」

    葉隠「苗木っち~!さすが俺の親友~!」ブワッ

    苗木「やかましいよ。」


    こうして、苗木は多くの金持ちが見物している中、鉄骨を命綱なしで渡ったり、実弾が入った銃でロシアンルーレットをしたりした。

    ~~~~~
  20. 58 : : 2016/09/28(水) 23:48:03
    葉隠「俺のために命を張ってくれた苗木っち。これはもう親友どころか大親友だべ!」


    舞園「……とりあえず、言いたいことあります。」

    霧切「奇遇ね。私もあるわ。」

    セレス「概ね全員言いたいことは同じではないでしょうか?」

    朝日奈「なら、せーので言おう! せーの!」





    「「「「苗木(君)に何やらせてんだコラアアアアアア!」」」」




    ほぼ全員分の怒声が響いた。

    葉隠「い、いや!俺がやらせたんじゃない…」

    セレス「原因はテメェの借金だろうがっ!」

    朝日奈「それにちゃっかり苗木だけ命賭けてるじゃん!」

    葉隠「いや、苗木っちが失敗したら俺も死んでた…。」

    十神「ゲームとやらをやったのは苗木だけ。お前はそれを眺めていただろう? 明確な差があるな。」

    舞園「これは……ちょっと許せないですね。」

    霧切「桑田君以上がいるとは驚きだわ。」

    大神「これには我も手を貸そう。葉隠は一度話し合う必要があると思っていたのだ。」


    葉隠「いや、なんだべこの流れ!? いやー、あのーあれだッ! 結果俺も苗木っちも助かって良かったっつーハッピーエンドだろ? な? な?」


    大神が肩を回しながら近づいてくる。そのオーラに当てられ、葉隠は尻餅を付く。


    葉隠「ひ、ひぃぃぃ!? な、苗木っち!?」


    最後の希望とばかりに苗木を見るが


    苗木「さすがに二度目はないよ。」




    直後、破壊音が希望ヶ峰学園中に鳴り響いた。
  21. 62 : : 2016/09/30(金) 01:11:28
    桑田「」チーン

    葉隠「」チーン



    江ノ島「ほのぼのな教室の片隅で暗躍する影。響く悲鳴。増える犠牲者。犯人は一体誰なのか。」

    苗木「全ての原因を言うなら江ノ島さんだね。」

    江ノ島「私じゃないです……。二人ともそこの枕や手袋たちがやったんですよ……。」

    江ノ島「それはともかくよーッ!やぁっと男子があと一人になったなぁ!」

    苗木「ここに来るまでに随分と時間がかかった気がするよ。」

    江ノ島「じゃあ、最後は十神君……よろしくお願いします……。」


    十神「この茶番もやっと終わるのか。まぁいい、さっさと終わらせてやる。」
  22. 66 : : 2016/10/01(土) 01:57:22
    十神「まず初めに断っておくが、俺と苗木は親友などという間柄ではない。」

    江ノ島「では、このお話は終わりってことで。」

    苗木「もっと興味もってあげてよ。十神クン、続けて?」

    十神「……まぁいい。俺と苗木の関係を表すなら主人と下僕。当然、苗木が下僕だ。」

    江ノ島「今回の趣旨わかってる?苗木と一番仲が良い人ってのを決めようとしてんだよ?」

    十神「ふん、俺と苗木の関係を客観的に言ってやっただけだ。それに、親友とやらだからと言って、一番仲が良い、とは言えんだろう。」

    石丸「十神君! 親しい友と書いて親友だぞ! つまり、親友は一番仲が良いと言えるはずだ!」

    十神「クク、つまり、お前にとって、苗木が親友であるなら、その他は特に親しくない人間と言うわけか?」

    石丸「いや、そういうわけでは…。」

    十神「愚民共が行く施設や一緒に会話をして、楽しい程度で親しいとは俺は思わん。俺と苗木は主人と下僕…だが、そこにあるのは信頼関係だ。」

    十神は自信満々に話始めた。


    ~~~~~

    十神「苗木、俺の仕事の手伝いをしろ。」

    苗木「え?十神く」

    苗木の返事を待たずに十神は指を一度鳴らす。

    すると、黒服の男たちが苗木を担ぎ上げた。

    苗木「ええっちょ何!?」

    十神「では行くぞ。」




    十神の仕事の手伝い…と言っても、苗木がしたことは主に十神のスケジュール管理と書類整理くらいだ。

    過密なスケジュールの中、苗木は十神が食事をしていないことに気づいた。


    苗木「十神クン、食事をしていないけど、どうする? スケジュール的にあまり余裕はないけど。」

    十神「そうだな……。では、コーヒーと軽食を作ってくれ。」

    苗木「わかったよ。頼んでくる。」

    十神「いや、お前が作れ。苗木。」

    苗木「え、ボクが?」

    十神「ああ。そこらの者に任せて、毒の混在などあっても困る。」

    苗木「ボクがするとは思わないわけね。」

    十神「お前が俺を毒殺してどうなる。そんな度胸も理由もないだろう。」

    苗木「あはは…まぁね。十神クンをどうにかして、って頼まれても断わるだろうし。」

    苗木「とりあえず作ってくるよ。」

    苗木は軽食を作りに一度席を外した。

    間もなくして戻ってきて、十神の前に軽食を置く。

    苗木「はい。コーヒーとサンドウィッチ。具材は高級なものだとおいしいのかボクには判断つかなかったから、普段ボクが食べるものにしてみたよ。」

    十神「ふん。愚民が食べるメニューか。まぁないよりはマシか。」

    いつもの辛口なコメントを零しながら十神は軽食に手を付ける。

    メニュー的にはありふれているが、使われている食材は最高級なものだ。

    簡単なものであったこともあり、十神の口にも合った。

    十神「ふむ、お前にしてはよくできているな。」

    苗木「あはは、ありがとう。作った甲斐があるよ。」

    苦笑する苗木に十神は一つ疑問に思ったことを口にした。


    十神「……お前は何も言わないんだな。」

    苗木「え?」

    十神「今回のようにお前の都合など関係なく、巻き込むことは多々あるが、お前は一度も不満を言うことはなかったな。それに、俺の突然の指示にもお前は素直に従っている。」

    十神「実際のところ、お前はどう思っている。」

    十神にとって、ただの興味本位だった。目の前の自分とは住む世界の違う人間はこのような状況をどう思っているのか。


    苗木「うーん…考えたことなかった、かな。確かにいきなり連れ去られるのは驚くけどさ。こうやって十神クンがボクを仕事に連れてくるのはボクを必要としてくれてるんだって思うし…。」

    十神「……。」

    苗木「仕事の内容もボクでもできるくらいにいは簡単だけど、ボクなんかに任せていいのかってものもあるし…ただ、その辺十神クンがボクのことを信頼してるのかな…なんて思ったりさ。」

    苗木は照れくさそうに笑った。

    十神「……そろそろ時間だ。仕事に戻るぞ、苗木。」

    苗木「あ、そうだね。」

    軽食の皿やコップを片付けて行く苗木を見ながら、十神は呟く。



    十神「……ふん、信用していない人間を側に置くものか。」


    苗木を見るのもそこそこに十神は仕事へと戻った。

    ~~~~~
  23. 67 : : 2016/10/01(土) 02:26:49
    最後の発言以外の部分を十神は自信満々に話していた。

    十神「俺を尊敬し、信頼している。つまり、苗木と一番仲が良いと言うなら最も信頼関係を築いている俺だ。」


    石丸「ぐっ、悔しいが一理ある。」

    大和田「待て、兄弟。だからと言って、苗木の一番の親友が奴とは決まってねぇ!」

    石丸「確かにそのとおりだな!」


    朝日奈「へー、意外。十神って『愚民は支配者の言うことを聞いとけばいい』とか言うかと思ってた。」

    霧切「確かにね。予想外なところから強敵が現れたわね。」

    舞園「くっ、苗木君の手料理…羨ましい…。」

    朝日奈「あ、そこなんだ。」

    戦刃(苗木君の手料理…いいなぁ…。)


    腐川「びゃ、白夜様との信頼関係……!? う、羨ましすぎるぅぅ…ぎぎぎぎぎ…!」



    江ノ島「………。」

    山田「………。」


    江ノ島、山田(ツンデレおつ…。)

    二人は同時に同じことを思った。




    苗木「やっと男子が終わったんだね。」

    江ノ島「うんうん、みんないい感じに話持ってんじゃん。苗木も罪な男だね~。」

    苗木「『罪な男』は何か違うんじゃない?男同士だし。」

    江ノ島「男子も攻略してしまう苗木君であれば、間違った表現でないと思います。」

    苗木「攻略した覚えはないよ。」

    江ノ島「じゃあ、次は女子パート行ってみましょー!」

    苗木「話を聞いてくれない…。それで、また指名したらいいの?」

    江ノ島「そ。男子と同じ感じでやっちゃって。」

    苗木「……じゃあ、腐川さん。」

    苗木が一通り女性陣に目を向けたところ、気合が入りすぎた女性陣が怖すぎて、ついこちらを唯一見ていなかった腐川を指名した。
  24. 70 : : 2016/10/04(火) 01:29:05
    腐川「ぎぎぎ…厄介者は早めに終わらそうって言うんでしょ!そうに決まっているわ!」

    苗木「それは違うよ。」

    腐川「ふ、ふん…まぁいいわ。な、苗木は……私を見てくれたのよ…白夜様以外で。」

    十神「…俺がいつそんなことをした。」

    朝日奈「そんなところあったっけ。むしろ、罵倒されてる気がするんだけど。」

    大神「我は知っているぞ。十神の中にある腐川への思いやりをな。」

    十神「やめろ、大神。お前が言うと本当のように聞こえるだろう。」

    山田(ツンデレ乙ですぞ。)

    腐川「ふん…私なんかの話は誰も興味ないでしょうけど、進まないから話してやるわよ…。」


    心底嫌そうに腐川は話し始めた。



    ~~~~~

    一人で本を読んでいた腐川の元に苗木がやってきた。

    苗木「ねぇ、腐川さん。この前出版された腐川さんの本についてなんだけど。」

    腐川「な、何よ…面白くないとか言うんでしょ!? そうに決まっているわ…!」

    苗木「それは違うよ。読んでて感情移入もできたし、面白かったよ。それで、作者がちょうど身近にいることだし、作品についての意見交換をしたい、と思ってね。」

    腐川「………。」

    何が狙いだ、とか、上げて落とす気だろう、とか苗木を否定するための言葉が浮かんでは消える。

    『拒絶』よりも、自分の作品に興味を持ってくれ、さらに、自分が作り出した作品について話し合うことができる『歓喜』のほうが勝った。

    腐川「意見交換って何をするのよ…。」

    苗木「うん。この登場人物なんだけど---」

    苗木の意見は悪く言えば普通で、大衆の意見をまとめてみただけ、のようなものだと腐川は感じた。

    腐川(やっぱり苗木も他の人間と同じ---)

    苗木「っていうのが、一度目に感じたことなんだけど、二度目に読んだらこの登場人物たちがさ。」

    腐川「………。」

    苗木「で、三度目に読んだ時にはさ---」

    腐川「何回読んでるのよ…。」

    苗木「さすがに三回でやめておいたよ。で、何回も読んで気づいたんだけどさ。」

    苗木「この男の子は十神クン、この女の子は腐川さんがモデルだよね。」

    腐川「!?」

    苗木「あと、ほかの作品だけど、女性の登場人物でも腐川さんがモデルだったことあったよね。」

    腐川「な、なんで!?」

    苗木「うーん、なんで、って言われても、なんとなく…だけど。」

    なんとなく、で自身を投影してきた小説の人物たち。

    それを理解した苗木は……。

    腐川(わ、わ、私の全てを理解している!?)

    腐川「ふ、ふん…。いい気になるんじゃないわよ。」

    苗木「なんでそうなったの。」


    悪態をつきながら、腐川はその口がにやつくのが止められなかった。

    ~~~~~
  25. 71 : : 2016/10/04(火) 01:43:53
    腐川「な、苗木はね…白夜様以外で初めて私を理解してくれたのよ…。私という人間を見てくれた……。」

    腐川「こ、こ、こ……これは苗木は私に気があるってことでいいと思うのよね…。」


    江ノ島「うわぁ……。勘違い?いや、苗木のジゴロ?もうよくわかんない。」

    大和田「兄弟、今の話俺にはさっぱりだったんだが。」

    石丸「つまり、苗木君が腐川さんの作品をちゃんと読んでいて、嬉しかった、そういうことだろう!」

    大和田「おお、なるほどな!」


    不二咲「んー、自分の作ったものに理解を示してくれた…まではわかったけどぉ…。」

    山田「わからないでもないんですが……、さすがの拙者でも、同人誌に自身を投影したことはないですな…。」


    腐川「あんたの低俗なものと一緒にしてんじゃないわよ。」

    山田「ぬぁぁぁぁぁ! 低俗と言いやがりましたな! 前にも言いましたがね---」


    江ノ島「はいはーい、その議論は長くなるから隅っこでやっててねー。」

    苗木「懐かしいなぁ。あの時と今とじゃあまた作風が違ってるし、腐川さんはすごいよ。」

    江ノ島「この天然ジゴロめっ!」デコピン

    苗木「いたっ!?」

    江ノ島「まぁ腐川さんの話はわかる人にはわかる……ということで……。」

    江ノ島「次行ってみよー!次!」

    苗木「(地味におでこ痛い)じゃあ、次は朝日奈さんで。」

    苗木(なんかあの辺りのオーラが出てる人たちが怖い…。)


    苗木に指名されずに黒いオーラが出続けている人物たちを放置して、話は進む。
  26. 77 : : 2016/10/05(水) 02:24:24
    朝日奈「わ、私かぁ。えへへー、こういうの照れちゃうね。」

    舞園霧切「……ちっ。」

    朝日奈「え、舞園ちゃん、霧切ちゃん。なんで舌打ち?」

    霧切「なんでもないわ。」

    舞園「どうぞ話を続けてください。」

    朝日奈「う、うん。えっと、苗木と一番仲が良いアピールだよね。えーっと……。」

    江ノ島「あ、苗木君とこっそりやってる恋人の練習ごっこ以外でお願いしますね…。」

    朝日奈「な、な、な、なんで知ってるの!?」

    江ノ島「私の情報網にかかればこの程度の情報収集は簡単なことです。」

    江ノ島「それにぃ……『ごっこじゃなくって本当になったらいいのに』とか内心思って顔を赤くして、あとで枕に顔をうずめて、叫び声をあげているとかそんなことも容易く想像できるので。」

    朝日奈「…っ!?」ガーン

    江ノ島「あら、図星?」



    舞園霧切セレス「江ノ島さん、ちょっとその辺詳しく。」

    江ノ島「えー、説明するのが絶望的にめんどくさい…。」

    戦刃(私が見た時は本当に恋人みたいだったけど……ごっこだもんね。)


    朝日奈「え、えっと! そ、そうだ、あの話があったね!」

    朝日奈は名案を思いついたとばかりに手を叩いた。

    朝日奈「苗木ってよくドーナツくれるし、たまに一緒に泳いだりするし、カラオケとか遊びに行ったりとかも行くんだけどさ。」

    江ノ島「二人で?」

    朝日奈「え、う……さくらちゃんもたまにいたり…。」

    江ノ島「つまり、時々は二人で行くわけですね。」

    大神「ふむ、我がいない時でも遊びに行っているとは思っていたが、やはりそうだったか。」

    舞園「つまりデートということですね。」

    朝日奈「で、デートじゃないよ! デートって恋人がするものじゃん! ちょっと一緒に遊びに行ってるだけだもん!」

    霧切「……すごいわね。ある意味。」

    朝日奈「もう、話が進まないから先行くよ! あれは苗木と遊びに行ってた時の話なんだけどさ。」

    ~~~~~

    苗木と朝日奈は朝日奈のスポーツ用品の買い物に来ていた。

    朝日奈「苗木、今日は付き合ってくれてありがとね!」

    苗木「いや、ボクも買い物できたし、有意義な時間だったよ。」

    朝日奈「えへへ~、まさかあの入荷待ちのプロテインを手に入れられるなんて~。苗木が幸運だからかな?」

    苗木「ボクには大した運はないよ。宝くじとか買っても当たったことないし。」

    朝日奈「まぁまぁ、そう落ち込まないで。そうだ、ついでだしドーナツ買いに行こう!」

    苗木「うん、いいよ。というか最初からそのつもりだったよ。そう言うとも思ったし。」

    朝日奈「さすが苗木~。わかってる!」

    ~~~~~

    山田「まるで何年も付き合ってる恋人のようですね本当にありがとうございます。」

    朝日奈「ち、違うって言ってるじゃん! 続き話すよ!」

    ~~~~~

    朝日奈「今日は何ドーナツがいいかな。」

    苗木「この後、水泳の練習があるんだったよね。なら、おやつ用と練習後用って買ったらどうかな。」

    朝日奈「苗木、ナイスアイディア! そうしようそうしよう!」

    朝日奈はさっそくとばかりにドーナツを選び始める。

    朝日奈「せっかくだからさ、苗木も選んでよ。それで、味の比べしよ。」

    苗木「いいよ。」

    苗木と朝日奈はドーナツを次々選んでいく。

    苗木「そろそろ買おうか。」(量がとんでもないことになってる。)

    朝日奈「そだねー。これだけあれば今日は足りるかな。」

    朝日奈のその発言に苗木は笑顔を引きつらせた。



    朝日奈「おお、さすが苗木だー。私が選んでないものを的確に選んでる。」

    苗木「あはは、朝日奈さんの好きな味は覚えてたからね。こういう時、朝日奈さんは好きなものを選ぶと思って、被らないようにしたんだ。」

    朝日奈「えへへー、苗木って私のことなんでもわかってるみたいだね。」

    苗木「さすがにそれはないよ。でも…大事な人の好物はわかってて損はないからね。」

    朝日奈「えっ…。」

    大事な人、大事な人、大事な人、と苗木が言ったワードを心の中で復唱する。

    理解が及んだ瞬間、顔が火を吹くように赤くなった。

    朝日奈「な、苗木…。」

    苗木「あ、そろそろ時間が近いし、急がなくちゃね。行こうか、朝日奈さん。」

    苗木は自然な動作で手を差し出した。

    苗木「あ、ごめん。妹にやってるみたいになっちゃった。」

    引っ込めようとした苗木の手を朝日奈はとっさに掴む。

    朝日奈「…え、えっと! た、たまには手をつなぐのも悪くないよね!」

    苗木「え、あ、朝日奈さん!? 走ったら危ない!?」

    気恥ずかしさのあまり全力で走る朝日奈と息も絶え絶えにもはや引きずられている状態の苗木がこの後目撃された。
  27. 82 : : 2016/10/06(木) 00:18:31
    ~~~~~

    朝日奈「だ、だから、苗木は私と一番仲がいいと思うんだ!」

    戦刃「……ん?どういうこと?」

    朝日奈「いや、だから……さっきの話からして…。」

    戦刃「ごめんなさい、聞いてたけど、よくわからなかったの。」

    戦刃「主張するならちゃんと説明して。」

    朝日奈「だ、だから! 苗木は私のことを『大事な人』って言ってくれたから!一番仲がい…い……の……。」プシュー

    大神「落ち着け朝日奈よ。湯気が出ている。」

    江ノ島「うっわ、超鈍感な残姉にも絶望的だけど、あんなことを残姉に言われるとか想像するだけでも絶望的で、しかも実際にいう場面を見ることになるなんて、なんて絶望的……。」

    苗木「江ノ島さんが嬉しそうでなによりだよ。」

    舞園「苗木君。」

    苗木「え、何かな?」

    舞園「苗木君はどういう意図でそのような言葉を?」

    苗木「どういう意図も何もそういうことだけど…。」

    セレス「はっきりと申し上げましょう。朝日奈さんのことが好きなのですか?」

    苗木「そりゃあ好きだよ。」

    朝日奈「苗木……。」


    霧切「まだよ。苗木君は友人としての好きと異性への好きを混同してる可能性があるわ。だから、まだ希望はあるはず。」

    舞園「霧切さん、声が震えてますよ。」


    苗木「あ、そういうこと? うーん、考えたこともなかったなぁ。」


    苗木「ボクなんかがこのクラスの女子を好きになるなんて身分が違うっていうかさ…身の丈に合ってないと思うんだよね。」


    舞園「し、知ってましたし……な、苗木君が友人として接してきてくれてることくらい……。」

    セレス「ふっ……賭けに負けましたか……ギャンブラーの名折れですわね……。」

    霧切「いえ、まだよ。苗木君自身が気づいていない無意識の領域で私のことを---」ブツブツ

    戦刃(私のことも大事って思ってくれてるのかな。)



    朝日奈「え……じゃあ、苗木のあれって……う、うわああああああああん!」

    朝日奈は羞恥のあまり教室を飛び出していった。


    苗木「あ、朝日奈さん!?」

    大神「良い、我が追う。お前たちは話を続けていろ。」

    江ノ島「あ、待って待って。大神の話まだだからそこの暇そうな男子に追わせたらいいって。」

    大和田「誰がヒマそうだコラ!」

    大神「む、しかし。」

    江ノ島「じゃあ、見つけたら連絡してもらうから、話終わった頃には見つかるでしょ。ってわけで、話が終わった男子たちはお願いね!」

    大和田「仕方ねぇなぁ…。」

    石丸「うむ、話は気になるが、朝日奈君のことも心配だからな! 探しに行くとしよう!」

    不二咲「わ、わかったよぉ。」

    そう言って、大和田と石丸、不二咲は出て行った。

    山田「僕はここで皆さんのお話を---」

    セレス「あなたも行きなさい?」

    山田「いや、僕も聞きた---」

    セレス「さっさと行けや、この豚がぁああ!!」

    山田「ブヒィィィ!はいぃぃぃぃ!!」

    悲鳴をあげながら山田も転がるように出て行った。

    江ノ島「あれ、白夜ちーんは行かないのん?」

    十神「ふざけた呼び方はやめろ。なぜ俺が足を動かして、愚民を探さなければならない。」

    十神「…それに、探すにしても3人いれば十分だろう。」

    江ノ島「ま、そういうことにしといたげる。」




    江ノ島「さて、オーガちんは行きたくてウズウズしてるみたいだし、さっそく行こうか?」

    大神はそわそわしながらも、皆へと向き直った。
  28. 86 : : 2016/10/09(日) 01:35:38
    大神「手短に話すとしよう。と言っても、我も不二咲同様に苗木と仲が良いということはできるが、一番かと言われると疑問が残る、という主張になるな。」

    江ノ島「えー!つーまーんーなーいー。もっとドロドロにグログロに自分が一番って主張しようよー。」

    大神「我は仲が良いにもそれぞれ形があり、そして、それぞれが一番であり、順位の付けるものではないと思っている。ここにいる者はそれぞれの形を持っている…とな。」

    霧切(…うっ、嫉妬して、一番を主張して、争って…自分が醜く見えてきた…。)

    セレス「くっ、眩しい……。」

    舞園「確かに仲がいいにもそれぞれ形がありますよね! 友人とか恋人とか夫婦とか!」

    大神「性別でまた形も変わるもの、であるな。」

    戦刃「…じゃあ、大神さんと苗木君の仲のいい形っていうのはどういう形なの?」

    大神「そうだったな、主張をするために根拠を述べるのであったな。」


    ~~~~~

    大神は日課の鍛錬をしていた。

    丸太に向かって、拳や足を叩きつける。

    大神「ふん……はぁっ!」

    苗木「………。」

    大神「む、苗木か。どうしたのだ。」

    苗木「いや、武道場から凄い音がしたから様子を見に来ただけだよ。」

    大神「そうか。では、我は鍛錬の続きを…。」

    苗木「あ、大神さん。せっかくの機会だし、ちょっと頼みたいことがあるんだけど、いいかな。」

    大神「珍しいな。どういった要件だ?」

    苗木「ボクを鍛えてほしいんだ。」

    大神「ふむ、なぜだ。」

    苗木「……言わなきゃいけないかな?」

    大神「ああ。苗木がよからぬことに拳を振るうとは思えぬ。だが、その拳を振り上げる時の理由によってはお主自身をも傷つけることになる。だから、教えることは構わぬが、何を持って我に教えを請うのかを知りたい。」

    苗木「……ちょっと恥ずかしいし、おこがましいことを言うんだけどさ。みんなを守るため、かな。」

    大神「ほう。どういうことだ。」

    苗木「ボクって、毎年選ばれる幸運っていう運がいいだけで選ばれたやつだからさ。みんなよりは一般人よりなんだよね。だから、妬まれたり、絡まれたりすることが多くってね。」

    大神(……そのようなことが起こっていたのか。)

    苗木「それで、ボク自身が何か言われるのは構わないんだけど、たまにみんなのことを悪く言う人がいてさ。この前、それにカッとなって言い返したら殴られそうになっちゃったんだ。」

    大神「…何」ピキッ

    大神の変化に気づかず、苗木は話を進める。

    苗木「みんなを悪く言われて、カッとなっても自分で何とかできるように…それに…もしかしたらみんながピンチになったときに助けることができたらな…ってね。」

    苗木「まぁそういうわけで、護身術くらいは身につけたほうがいいかなって……大神さん?」

    大神「な…な……」

    苗木「な?」

    大神「なんということだああああああ!!!」

    苗木「うわっ!?」

    大神「我の知らぬところで苗木がそんな危険な目に合っていたとは……。」

    苗木「いや、仕方ないことだと…」

    大神「否、事情を知ったからには我が鍛えてやろう。並大抵の者が襲ってきても返り討ちにできるようにな。」

    苗木「いや、そこまでは求めてないよ!?」

    大神「いいや、お主にもある程度の戦闘力は必要だとわかった。……お主の理由もわかったしな。お主が力に溺れて、自身のために拳を振るうこともないだろう。」

    大神「では、まずは身体作りからだ。腕立て、腹筋、型作り、それらを軽く1000回ずつやるぞ。」

    苗木「全然軽くないんだけど!?」


    その後、苗木の必死の申し出により、超初心者練習メニューが考案された。

    ~~~~~
  29. 87 : : 2016/10/09(日) 02:01:49
    大神「我と苗木は互いを信頼し、苗木は仲間が皆が傷つかぬように自身を鍛える道を選んだ。ならば、我は苗木を信じ、道を誤るなら正し、支えていくべきであろう。」

    大神「我と苗木を言葉で表すのであれば、師弟であろうな。」

    舞園「な、苗木君……そんなことになっていたなんて…。」

    霧切「……苗木君が絡まれる事は数回あったけれど、暴力を振るわれそうになった事はなかったはず…。調査不足ね。まだまだね、私も。」

    戦刃「私に言ってくれれば暗殺するのに…。」

    セレス「うふふ、地下行き1000年くらいでしょうかね…。」

    苗木「江ノ島さん、舞園さん以外の女子が怖いこと言ってるんだけど。」

    江ノ島「……例のビデオの実験材料にするか…。」

    苗木「……十神クン。」

    十神「……ああ、今すぐだ。78期生に恨みを持っているという噂でも何でも良い、そいつらを捕らえ、俺の目の前に連れてこい。」

    十神は携帯で誰かに指示を出していた。

    苗木「……今日はいい天気だな。」

    最終的に苗木は現実逃避をした。



    『一旦みんな落ち着くまでお待ちください。』



    大神「では、我は朝日奈を探しに行く。」

    江ノ島「あ、その前にさ。桑田と葉隠を起こしていってくれない?なんかこう…秘孔的なあれで。」

    大神「そうだな。ずっと仲間はずれになっておったからな。」



    「「うごああああああああああ!!!」」



    桑田「体中痛えんだけど…。」

    葉隠「なんか、ひどい悪夢を見た気がするべ。」


    江ノ島「よっし、人が少なくなったから復活しただけだから、余計なことを言うと、また同じ目にあうかもね?」

    桑田「葉隠は知らねえが、俺は何もしてねえんだけど!」

    舞園「苗木君を傷つけました。」

    桑田「理不尽じゃね!?」

    苗木「舞園さん、桑田クンはボクが怪我してるって知らなかったからさ…。」

    舞園「知らなかったのなら仕方ないですね!」

    桑田「……釈然としねぇ……。」


    江ノ島「はいはい。じゃあ苗木。ダークネスゾーンの指定をお願い。」

    苗木「……じゃあ、セレスさん。」

    ダークネスゾーンに言いたいことはあったが、否定だけはできなかったので、苗木は何も言わずに次を指定した。
  30. 96 : : 2016/10/10(月) 02:00:50

    セレス「いよいよわたくしですか。ふふっ、前の方の話も、そして、後の方の話が霞む話をしてあげましょう。」


    ガラッ


    山田「セレス殿の話と聞いて!」

    セレス「お呼びじゃねえんだよ豚がぁああああ!!」

    山田「ぶひぃぃいいいい!!」

    江ノ島「あっれー、朝日奈はどうしたのさ。」

    山田「いえ、探していたのですが、偶然セレス殿が指名されている声が聞こえまして。」

    江ノ島「うっわ、嘘くせえけど、まっいいや。」

    山田「お許しを得たところで……さぁさぁ、どうぞセレス殿。」

    セレス「………まぁ良いでしょう。先ほど、大神さんのお話にあったように、仲が良いにも形があります。わたくしからすれば、苗木君は……わたくしのナイトですわ。」

    セレスは楽しそうに話し始めた。

    ~~~~~

    セレスは一人で暇を持て余していた。

    その日に限って山田は用事で学園から出ており、自分にロイヤルミルクティーを淹れてくれる人間がいない。

    そこに偶然通りかかった苗木にセレスは思いつきを口にした。

    セレス「苗木君。以前、十神君にコーヒーを淹れていましたが、よければわたくしにも淹れて頂けませんか?」

    苗木「うん、いいよ。ちょっと待ってね。」

    しばらくして、苗木がコーヒーを淹れて戻ってきた。

    苗木「はい、どうぞ。と言っても、口に合うかわからないけど。」

    セレス「ありがとうございますわ。」

    セレスはミルクと砂糖を少量入れ、一口コーヒーに口を付ける。

    セレス「……ふむ、何が良いのかわかりませんね。やはり苦くて好みではありませんわ。」

    苗木「あはは、やっぱりコーヒーじゃなくてミルクティのほうが良かったね。」

    セレス「……そうですわね。しかし……暖かい気持ちになりますわね。」

    セレスはミルクと砂糖を更に入れて、飲んだ。

    セレス「ふぅ、モノは試しにと飲みましたが、やはりミルクティーですわね。苗木君、入れ直してくださらない?」

    苗木「うん、いいよ。そう言うと思ったから、準備だけはしておいたんだ。すぐに準備するよ。」

    セレス「まぁ、用意のよろしいことで。」

    苗木「じゃあ淹れてくるね」

    苗木の背中を見ながら、セレスは思う。

    セレス(まるで自分のことを何でもお見通し、と言わんばかり。)

    セレス(わたくしのナイトなのですし、苗木君になら全てを見通されても……。いけません。スキを見せては…。)

    頬が赤くなりかけたことを自覚し、目を閉じて、心を落ち着ける。

    苗木「はい、どうぞ。」

    セレス「……! あ、ありがとうございます。」

    ロイヤルミルクティーを受け取ったセレスは苗木に悟られないように普段通りを装う。

    セレス「…苗木君、腕を上げましたわね。」

    苗木「ありがとう。まぁ十神クンやセレスさん、たまに他の人にもにも淹れてあげてるから慣れちゃったのかな。」

    セレス「さすがはわたくしのナイトですわね。」

    苗木「あはは、これで将来、セレスさんの執事とかになってもやっていけそうだね。」

    セレス「そ、そ、そ、それは…!?」

    苗木は冗談めかして言ったが、セレスにとってはティーカップを落としそうになるほどの衝撃だった。

    苗木「おっと、危ない。」

    苗木はセレスが落としそうになったティーカップをセレスの手ごと支えてやる。

    セレス「は……ひ……。」

    苗木「大丈夫ですか?お嬢様。」

    セレス「…………!!!」(声にならない悲鳴)

    苗木「なんてね。本当に大丈夫?体調が悪いのかな?」

    セレス「……苗木君のせいですわ。」

    苗木「え?ボク?」

    わけがわからないという顔をして、キョトンとし、セレスは恨めしそうにその顔を見やった。

    ~~~~~
  31. 97 : : 2016/10/10(月) 02:01:48
    セレス「つ、つまり、苗木君はわたくしの将来の執事なのです。十神君も言っていましたが、これには信頼関係も必要であり、わたくしと苗木君がその辺一番だと思いますわ。」

    セレスは自分と苗木の過去を話していると意外と恥ずかしかったのか、少し早口気味にまくし立てた。



    山田「ふむぅ、苗木誠殿のお茶入れの腕は気になりますなぁ。今度飲み比べでもしてみたいですぞ。」

    苗木「うん、いいよ。山田クンのお茶は美味しいし、ボクもどれくらい美味しくできるようになったか知りたいし。」

    十神「ふん、お前たちだけでは互いに美味しい、とでも言って終わるだろう。審査役には俺を呼べ。審査してやる。」

    苗木「十神クンなら信頼できるね。その時はよろしく頼むよ。」

    桑田「おいおい、そういうことすんなら俺も呼べよな?」

    葉隠「ただで飲めるなら俺も行くべ!」

    男子で平和に話をしている最中、女子は……。


    舞園「苗木君のお茶……苗木君のお嬢様……。」

    霧切「…………。」

    江ノ島「視線で人殺せそうな顔してますよ……。探偵なのに……。」

    戦刃「私もお嬢様って言われたい…。」

    江ノ島「オメーはお嬢様って柄じゃねーだろうがよぉ!」


    セレス「ふふふ、これはわたくしが一歩リードですわね。」

    舞園「……確かにそうかもしれません。ええ、それはもうとても羨ましいです。」

    霧切「……でも、それでも…私たちには私たちの苗木君と仲が良いという思い出があるわ。」

    舞園「だから、まだ苗木君と一番仲が良いポジションは決まっていません!」

    霧切「勝負はこれからよ!」



    戦刃「盾子ちゃん。私、蚊帳の外なんだけど……。」

    江ノ島「オメーは本当に残念だなぁ!! 」

    江ノ島「…そうは言っても私も蚊帳の外なんですけどね……。」

    戦刃(あぁ、苗木君と日向ぼっこしながらお弁当食べたいな…。)

    戦刃は窓の外を見ながら現実逃避を始めた。
  32. 98 : : 2016/10/11(火) 00:44:56
    江ノ島「よーし、じゃあ苗木、次の指名お願い。」

    苗木「女子の方、落ち着くのに随分時間かかってたね……。それはそうと、次は舞園さんで。」

    江ノ島「ほう、舞園は最後かと思ったんだけど、次でするんだ。」

    苗木「ちょっと怖いオーラ出してるあのあたりは早めに終わらせた方がいいかと思って。」ボゾボゾ

    江ノ島「なるほど。」ボソボソ


    江ノ島(あとで言ってやろ。うぷぷ…。)


    江ノ島「じゃあ、舞園、よろしく~。」

    舞園「はい。私と苗木君の仲の良さ、証明してみせます!」

    舞園は生き生きと話し始めた。

    舞園「そう、あれは私がメインを勤めたファッション雑誌を見ていたときのこと…。」

    桑田「舞園ちゃんがメインのファッション雑誌、ってこれか?」

    苗木「ああ、うん。それだね。」

    舞園「…なんで持っているんですか?」

    桑田「や、舞園ちゃんも出てるし、あと普通にファッション雑誌だからよ。色々参考にしてるんだよ。」

    舞園「そういうことにしておきましょう。それにおしゃれに対する向上心があるのはいいことです。」

    桑田「お、俺のこと見直した?」

    舞園「言わなければ見直しましたね。」

    桑田「…」ガーン

    江ノ島「はいはーい、んで、その雑誌が何?」

    舞園「あ、そうでしたね。この雑誌で取材も受けているんですが…。」

    舞園が椅子に座った背景のインタビューページを指さしながら、舞園は話し始めた。
  33. 99 : : 2016/10/11(火) 00:45:13
    ~~~~~

    舞園「……はぁ。」

    苗木「どうしたの、舞園さん。ため息なんてついて。」

    舞園「それが…この間ファッション雑誌に掲載するインタビューを受けたんですけど…。」

    舞園はインタビューページの一端を指差す。


    Q.恋愛経験はありますか?
    舞園.うーん、気になる男の子がいたことはありますけど、それが恋愛だったかどうかはわかりませんね。

    Q.では、現在でも好きな人は?
    舞園.いえ、少し気になる程度の方はいますよ。

    Q.ほう、その方は希望ヶ峰学園の方ですか?
    舞園.内緒ですよ(笑)

    Q.ですよね。

    その後もインタビューは続いていく…。


    苗木「あー、よくあるインタビューって感じだけど、これがどうかしたの?」

    舞園「いえ、ここに書いてあることは事実なんですが、これが掲載されて以降、ファンの方からもですが、メンバーのみんなからも誰なのか、ってしつこく聞かれていまして…。」

    苗木「なるほどね。まぁ確かに舞園さんの気になる人、って言われたら気にならない方がおかしいと思うけど。」

    舞園「私が気にしている人…気になりますか?」

    苗木「好き、とまで行かなくても、それなりに舞園さんと信頼関係を築いているってことでしょ? 誰なのかは気になるよ。」

    舞園「ふふっ、そうですか。」

    苗木「? それで、しつこく聞いてくるからどうしようか悩んでる、ってこと?」

    舞園が笑った理由はわからないが、とりあえず悩みのほうを聞こうと苗木は先を促す。

    舞園「そうですね。いっそのこと、この人です!って答えちゃうのもアリかもしれません。」

    苗木「ええ、それって大丈夫なの?」

    舞園「別に好きな人を発表するわけじゃあないですし、結婚する!なんて話でもありませんからね。」

    苗木「ああ、うん。そういうことなら…いいのかな。」

    芸能界のことは全く詳しくないため、苗木はイマイチ分かっていなかった。

    舞園「というわけで、苗木君。これからは聞かれたときは希望ヶ峰学園の幸運さん、って答えますね。」

    苗木「ああ、うん……うん? それってボクのこと?」

    舞園「そうですよ。」

    苗木「ええ!? 舞園さんの気になる人って…ボク!?」

    舞園「あはは、大げさですよ。苗木君のことは良き友人として意識してる、ってことですから。」

    苗木「な、なんだ。そういうことかぁ。」

    ホッとした苗木は知らなかった。その後起る出来事を…。



    某掲示板

    『舞園さやかが気になる人のことを希望ヶ峰学園の幸運さんって発表したぞ!』

    『希望ヶ峰学園の幸運ってことは超高校級の幸運? 誰?』

    『あああああああ!!! そいつブッコロリ!!!』

    『幸運如きがオレの舞園ちゃんに……。』

    『あく特定はよ』

    『ほかの超高校級はすげえ有名だけど、幸運枠って全く有名にならんよな。』

    『そりゃ運だけで入学してる奴らだから、他とは扱いが違うだろうさ。』

    『結局誰もわかんねーの?』


    一種のお祭り騒ぎを見せたが、結局苗木のことを知られることはなかった。


    苗木「舞園さん、すごい騒動になってるんだけど。」

    舞園「本当ですね。気になる人、って言っただけなのに、性急な方たちです。まぁ、メンバーも大概大騒ぎしていましたが…。」

    苗木「どうしようか、これ。」

    舞園「そのうち、収まりますよ。それに……苗木君が本当に私の恋人候補になれば解決です。」

    苗木「ええっ…そんな…ボクごときが舞園さんと釣り合うわけが…。」

    舞園「釣り合えば問題ないんですか?」

    苗木「それは……本来なら舞園さんと話をする機会さえ得ることがボクにとっては幸運なのにそれ以上なんて……想像できないよ。」

    舞園「ふふっ、そうですか。その反応だけで十分です。」

    少なくとも苗木が自分を好きになる可能性がある。それだけで舞園は今回の騒動を起こした甲斐があったと思った。

    ~~~~~
  34. 100 : : 2016/10/11(火) 21:43:17
    舞園「つまり、苗木君と私は将来を誓い合った仲なんです!」

    苗木「それは---」

    霧切「それは違うわ!」

    苗木「ボクのセリフが!」

    霧切「今の話のどこに将来を誓い会うなんて要素があったの?それに苗木君と将来を誓い合っているのは私よ。」

    苗木「それも違うよ!?」

    舞園「甘いですね霧切さん! 全く脈がないならこのような反応は返ってきません! つまり、あとは時間の問題というわけです。」

    霧切「そうかもしれないわね。それで?肝心の誓いとやらはどこで出てくるの?」

    舞園「後日私が一人で誓いました!」

    セレス「……どこかの宗教に入って、勝手に誓ってて欲しいですわ。」

    セレスは呆れ気味に呟いた。



    山田「あー、そういえば一時期舞園さやか殿の彼氏について、と拙者に聞きに来た同胞がいましたな。」

    桑田「んなあああ!? そんな話があったのかよ! 噂になるんなら苗木じゃなくって普通オレじゃね!?」

    葉隠「いや、そりゃないべ。占わなくっても分かるべ。」

    桑田「んだとコラぁ!!」




    江ノ島「ふーむ、冷静に分析すると苗木と舞園は友達以上恋人未満(苗木は無自覚)ってところかね。つってもー、ここの女子全員そうだろうけど。」

    不二咲「そういうことだったんだぁ。」

    江ノ島「あれ、不二咲じゃん。朝日奈は?」

    不二咲「う、うん。それぞれで各場所を分担をしたんだけど、自分のところを見終わっていなかったから一度戻ってきたんだぁ。」

    江ノ島「あっそ。で? そういうことってのは?」

    不二咲「その、舞園さんの彼氏についてっていう話ね。ネット上ですっごい盛り上がったっていうか……下手をすると希望ヶ峰学園の風聞とかにも関わるからって、火消しとか対策とか僕が色々やってたんだぁ。」

    江ノ島「へー、自然鎮火したように見えたけど、裏ではあんたが動いてたんだ?」

    不二咲「えへへ、アルターエゴのおかげだよぉ。」

    江ノ島(笑顔でとんでもないことを言っている自覚はあるんですかね……。)

    密かに戦慄した江ノ島だった。



    江ノ島「えー、話が終わらないから、とりあえず舞園のターンは終了。次の人行こうか?」

    舞園「まだです! 私の主張フェイズは終了していません!」

    江ノ島「どこの王様よあんた。」

    江ノ島「時間が押しているんだよ……。あとむくろと霧切だけだし、ちゃっちゃといってしまいたいわけさ。」

    江ノ島「ぶっちゃけよ! とりあえずその議論は終わった後にやりたいやつとやれ!ってことだよ!」

    舞園「……わかりました。」チェ

    桑田(口を尖らせる舞園ちゃん……かわいいぜ…。)

    舞園「アイドルですから」

    桑田「え?」



    江ノ島「じゃあ、あと残姉と霧切の2人か。苗木、指定して。」

    苗木「長いようで短かったね…。じゃあ、霧切さんで。」

    江ノ島「その心は?」

    苗木「これ以上黒いオーラを出して欲しくない。」

    江ノ島「切実だな。じゃあ、霧切よろしくぅ。」


    霧切は一度咳払いをしてから話し始めた。
  35. 101 : : 2016/10/12(水) 20:19:21
    霧切「舞園さんが将来を誓い合った、とか寝言を言っているけれど、それは違う。その枠は私の物なのよ。」

    舞園「それだけ言うなら根拠があるんですよね?」

    霧切「当たり前よ。あなたみたいに勝手に誓った、とかそういう話じゃないわ。」

    舞園「…聞かせてもらいますよ。最後に勝つのは私ですが。」


    険悪…とまではいかないが、二人の雰囲気に誰もが口を挟めなかった。


    霧切「ふぅ…さて、じゃあ私の話しを始めるわ。私にとって、苗木君は……欠かせないパートナーよ。」

    大切な思い出を思い出すべく、霧切は目を閉じながら話し始めた。

    ~~~~~

    苗木と霧切は謎の人物から届いた招待状に応じて、山奥の洋館に来ていた。

    苗木「はぁ…まさか車が爆破されて、橋も爆破されて、更に携帯電話も通じないなんて…まるで映画やドラマみたいだね。」

    霧切「あら、あれらのフィクションだって、準備さえすれば現実に起こせるものよ。それに遭遇する確率は低いだろうけどね。」

    苗木「さすがに冷静だね、霧切さん。」

    霧切「常に冷静でいないと最適な回答が得られないわ。感情で結果を急ぐと酷い結果が待ってるものよ。」

    苗木「確かにね。」


    部屋には二人しかおらず、会話が途切れてしまえば、物音一つしない。


    苗木「あ、雨…。いよいよ、フィクションの世界っぽくなってきたね。このままだと、誰かが死んじゃったりするのかな?」

    霧切「……例え、そういう事態になっても大丈夫よ。あなたは私が守るわ。」

    苗木「あはは…普通は逆なんだけどね…。」

    霧切「あなたはいざという時に護身術も使えないでしょう? なら、まだ多少は戦える私が守るべきよ。」

    苗木「効率的なのはわかるけどね。でも、なんというか…男の矜持っていうかさ、大和田君辺りなら『女は男が守ってやるもんだ』とか言いそうだし。」

    霧切「古い考え方ね。」

    苗木「容赦ないね……。」

    霧切「……でも、嫌いじゃないわ。」


    苗木は少しだけ恥ずかしそうに顔を背ける霧切を見て、穏やかな気持ちになりながら窓の外へと視線を向ける。


    霧切「…ごめんなさいね。」

    苗木「え?」

    霧切「私に付き合わずにここに来なければ、あなたは巻き込まれることはなかったのに。」

    苗木「……。」

    霧切「そもそも、私も油断してたわね。絶対に何かあるとわかっていたのに…。」

    苗木「…これはボクのわがままなんだけどさ、霧切さん。こういうことがあったら、やっぱり言ってほしいって思うよ。巻き込まれたなんて思わないし、後から知ったらやっぱり一緒に行けばよかった、って後悔するからね。」

    霧切「…でも、あなたにできることはないし、あなたはリスクだけを背負うことになるわ。」

    苗木「メリットならあるよ。霧切さんを直接守れるかもしれないからね。それに…ボクは霧切さんの心を守ってあげたいんだ。」

    霧切「…心?」

    苗木「必要ないかもしれないけどさ。こうやって話をして、一緒に過ごして、いつもどおりの霧切さんでいてもらうこと、かな?」

    苗木「今回のボクは助手だからね。霧切さんをどんな形であっても支えてあげたいんだ。」

    霧切「………苗木君のくせに生意気よ。」

    苗木「あはは、やっぱり必要なかったかな。」

    霧切「……そんなことないわ。」

    苗木「え?何?」

    霧切「なんでもないわ。」

    苗木「いや、今確かに…」

    霧切「なん・でも・ない!」


    苗木は苦笑しながら、再び窓の外に目を向けた。


    霧切(ずっと前から……あなたは私の助けになってくれているわ。苗木君。)

    霧切は苗木を盗み見ながら、苗木のことを想うのだった。





    苗木「どうでもいいけど、今の会話って死亡フラグみたいだね。」

    霧切「じゃあ、死ぬのは苗木君かしらね。」

    状況を忘れて、二人は笑いあった。


    その後、なんやかんや、館の秘密を解き明かして、脱出し、希望ヶ峰学園へと戻ったのだった。

    ~~~~
  36. 102 : : 2016/10/13(木) 21:26:05
    霧切「私のことを支えてくれて、そして、私も彼のことを信じてる。つまり、私たちは心から通じ合ったパートナーなのよ。」

    舞園「セレスさんと言い、霧切さんと言い、羨ましすぎます!」

    江ノ島「ああー、キミの心を守ってあげたい、なんて言われたらグッと来るかもねぇ。」

    セレス「ふふ、私の場合は身も心も守ってもらいますから。」

    戦刃(『私があなたを守るから』。苗木君に言ってあげたい。)



    葉隠「二三突っ込みてえんだけど、館の秘密ってなんだべ?」

    苗木「最終的に館の主が隠した隠し財産が出てきたよ。」

    葉隠「そ、それは…。」

    苗木「館の主が付けた爆弾で木っ端微塵。」

    葉隠「もったいねぇ!」



    ガラッ



    大和田「戻ったぞ。朝日奈のやつ、食堂でドーナツ食ってやがった。」

    朝日奈「仕方ないじゃーん。お腹すいたし、調子悪い時はドーナツ食べれば治るんだしー。」

    石丸「いや、調子が悪い時こそバランスの良い食事をだな。」



    大和田「つーか、苗木が他のやつとどう過ごしてんのかとかちと聞きたかったんだがな。」

    石丸「確かにな。このような機会は滅多にないのだし、今になって損をした気になってきたぞ!」

    朝日奈「私もドーナツをさっさと持って、戻ってくればよかったなぁ。」

    山田「では、聞いてない方々は聞いてた方に掻い摘んで話を教えてもらって、補完するしかありませんな。拙者が聞いていたのはセレス殿以降ですが。」

    石丸「山田君、よろしく頼むぞ!」



    江ノ島「さて、全員戻ってきたところで、最後に残姉ちゃん。」

    江ノ島「聞いてやるから話すが良い。」

    戦刃「う、うん。」

    苗木「戦刃さん、緊張しないで大丈夫だよ。ちゃんと聞くからさ。」

    戦刃が口下手であることを考慮して、励ましの言葉を苗木は送った。

    今まで、そういった言葉はなかったことから一部では嫉妬の視線が戦刃に絡んだ。

    戦刃「じゃ、じゃあ話す、よ。」

    緊張しています、と言った面持ちで戦刃は話し始めた。
  37. 103 : : 2016/10/13(木) 21:30:39
    戦刃「んー…苗木君と一番仲がいいのは自分だ、って言えばいいんだよね?」

    江ノ島「最後の最後になって趣旨確認とか…本当に残念ですね…。」

    戦刃「で、でも…今までのみんなのお話聞いてて、一番仲がいいなんて言える自信ないから。」

    朝日奈「うーん、私から言うのもなんだけど、戦刃ちゃんって苗木のことどう思ってる?」

    戦刃「どう?うーん…。」

    朝日奈「じゃあ、好きか嫌いかで。」

    戦刃「好き。」

    朝日奈「じゃあ、好きな人には自分のことを一番って言ってほしくない?」

    戦刃「…うん。」

    朝日奈「じゃあ、頑張って!」

    戦刃「……苗木君にとって、私が一番、って言える自信はない。けど、苗木君が私のことを考えてくれてる、想ってくれてるっていう出来事ならある。」

    江ノ島「残姉のくせに生意気だ。」

    戦刃「え、ごめん……。」

    霧切「話が進まないから江ノ島さんはしばらく口を閉じてて。」

    霧切はどこからか取り出した罰印のついたマスクを江ノ島につけた。

    戦刃「続ける、よ?えっと…。」

    たどたどしく戦刃は話し始めた。
  38. 104 : : 2016/10/14(金) 00:23:14
    ~~~~~

    戦刃は一人屋上でポツンと昼食を摂っていた。

    一緒に食べようとした江ノ島には断られ、クラスの誰かと食べるという選択肢も最初からない戦刃は誰にも見つからない屋上に来ていた。

    戦刃「……静かだなぁ。こう静かだと…。」

    絶望的な気分になる。

    江ノ島に相手にしてもらえない自分にも、戦場ではなくこんなところにいることも、もっと前まで遡ると生まれたことさえ…。

    戦刃(私は戦場でしか生きていけないのにな…。)

    のんびりみんなと楽しい学園生活。時々そんな彼らといると……イライラする。

    競争もない。戦闘もない。ただ己の才能を磨け。

    それゆえ、クラスメート同士が争うこともない。

    仲良しこよし。平和。あるのはちょっとした言い争いくらい。

    自分が場違いな空間で生きているという気分になり、そんな空間で生きていられる彼らに嫉妬とイラつきを覚える。

    そういう時に屋上は最適だった。一人で落ち着けて、とりあえずは忘れることができる。

    その代わりに別の問題も発生しているが…。

    とにかく、戦刃にとって、屋上は一種の避難場所だった。



    そんなある日。屋上を駆け上がってくる足音が聞こえた。

    ---ガチャン

    苗木「はぁ…はぁ…!」

    戦刃「…苗木君?」

    来たのはもっとも自分とかけ離れていると思われるもっともクラスで平凡な男の子だった。

    苗木「はぁ…あ、あれ。戦刃さん?」

    戦刃「息を切らしてどうしたの?」

    苗木「ちょっと…追われてて。あはは…。」

    戦刃「そう。」

    苗木の手には弁当があり、なぜ追われたのかなどどうでもよかった戦刃はすぐに興味を失くした。

    苗木「えっと、隣、いいかな?」

    戦刃「いいよ。」

    この平凡な男の子がいてもいなくても何も変わらないだろう、と戦刃は了承した。

    戦刃「………。」

    苗木「…えっと、さ。戦刃さん。」

    戦刃「何?」

    苗木「いつもいつの間にか教室からいなくなってたけど、いつもここで食べてるの?」

    戦刃「いつもじゃない。けど、たまに来てる。」

    苗木「そっか。教室で食べないの?」

    戦刃「…騒がしいのは好きじゃない。」

    苗木「あはは、確かに今日も騒がしかったし、苦手な人にとっては辛いかもしれないね。」


    苗木「でもさ、せっかくクラスメイトになったんだし、みんなと話してみるのもいいんじゃないかな?」

    戦刃「…いい。私には必要ない。」

    苗木「…そっか。でも、ボクは戦刃さんと話をしてみたいよ。」

    戦刃「私と?」

    苗木「うん。超高校級の軍人とクラスメイトになるなんて、滅多にないだろうし、そんな人と仲良くなる機会もこの先絶対にないだろうからさ。」

    戦刃「……。」

    苗木「ボクは超高校級の幸運だけど、そんな運なんて全然良くないし、むしろ不運なぐらいだけどさ。こういう機会が得られたっていうのは幸運なんだ、って思えるよ。」

    戦刃「…私みたいな人はきっとその辺にいるよ。」

    苗木「いや、絶対にいないよ…。」

    戦刃「……勝手にすればいいよ。」

    戦刃は突き放すように言ったが、内心心の中に広がる感情に戸惑っていた。

    戦刃(なんだろ……ふわふわ?ぽかぽか?変な感じ。)
  39. 105 : : 2016/10/14(金) 00:23:54
    ~数日後~

    苗木「やっ、戦刃さん。今日も屋上だったんだね。」

    戦刃「最近盾子ちゃんが忙しいみたいで…。」

    実際は戦刃と食べたくないという理由で避けられていることを彼女は知らない。

    苗木「よいしょ。ふぅ、今日もいい天気だね。」

    戦刃「そうだね。絶好のスナイプ日和だね。」

    苗木「狙撃するの!?」

    戦刃「冗談、だよ。」

    苗木「な、なんだ。そうだよね。この国で銃は違法だし…。」

    戦刃「手に入れようと思えば、手に入るよ。」

    苗木「そ、そう、なんだ…。」

    苗木は引き気味に応えた。


    苗木「戦刃さん、最近よく笑うようになったね。」

    戦刃「…そう?」

    苗木「前まではクスリとも笑わなかったのに、今は口角が少し上がるくらいには笑ってるよ。」

    戦刃「……なんでだろ。」

    ここ数日で変化があったこと言ったら、苗木と屋上で一緒に昼食を摂っていることくらい。

    戦刃「……苗木君が原因?」

    苗木「え?何?」

    戦刃「…ううん、何でもない。」

    咄嗟に誤魔化したが、意識をすると、思い当たる節はある。

    いつの間にか昼食を苗木と摂るのが普通になってきた。

    苗木がいつ来るのかそわそわと待つようになった。

    昼休憩が終わる時に苗木と一緒の時間が名残惜しくなった。


    素直な感情と欲求を表すなら、"苗木ともっと一緒にいたい"。

    戦刃「…なるほど。」

    苗木「…どうしたの?悩み事?」

    戦刃「ううん。解決した。」

    苗木「自己完結早いね。」

    戦刃「…苗木君はここ最近毎日ここに来てるけど、他に食べる人、っていないの?」

    苗木「いや、前までは他のみんなと食べてたんだけどさ…なぜだかわからないけど、ボクと一緒に食べるのは~って言い争いが前に始まっちゃってさ。それ以来、こっそり抜け出すようになったんだ。」

    戦刃「…苗木君は……私と一緒で、楽しい?」

    戦刃は信じられないくらい質問をするための言葉が出てこないことに困惑した。

    戦刃(……これは…恐怖?)

    何の? 拒絶の? 今更他人に拒絶されても……。

    でも、苗木君には嫌われたくない…。

    そのことに気づいた戦刃は質問をしたことを後悔した。

    苗木「うん、楽しいよ。戦刃さんといると落ち着くし、話をするのも楽しいよ。」

    戦刃「…そっか。」

    苗木「戦刃さんはどう?ボクがいたら迷惑?」

    戦刃「それは絶対にない。命を賭ける。」

    苗木「そ、そこまでしなくていいよ…。」

    苗木は戦刃から視線を外して、青空を見上げる。

    苗木「でも、楽しんでるなら良かったよ。こうやってさ、戦刃さんが生きてた世界とは違う場所かもしれないけど、のんびり過ごして、ボクと過ごすことを戦刃さんがそれを楽しいって感じてくれたら…ボクはとても嬉しいよ。」

    戦刃「…はっ…うっ…。」

    戦刃(ど、どうしたの…不整脈? 心臓がすごい脈打ってる。)

    苗木「それに、戦刃さんは無表情よりは笑ってるほうがかわいらしいからね。」

    戦刃「か、かわ…。」

    戦刃(ムリムリムリ、心臓が爆発する!? このままでは死んでしまう!?)

    苗木「戦刃さん?どうしたの?」

    苗木は何気なく、戦刃の手を取った。

    戦刃「あっ……。」プツン


    限界に達した戦刃はそのまま気絶した。

    苗木「わっ!? ど、どうしたの!? 戦刃さん!? 戦刃さーん!?」

    屋上に苗木の叫び声が響き渡った。

    ~~~~~
  40. 106 : : 2016/10/14(金) 00:25:02

    戦刃「えっと…だからね、苗木君は一人でいた私の相手をしてくれて、すっごく優しくて、私のことを想ってくれて……。」

    江ノ島「好きになってしまった、と。」

    戦刃「うん……って、ち、違うよ?あれだよ?友達としてというか、いつもそばにいて欲しいっていう好きっていうか!」

    舞園「……残念ですね…。」

    霧切「残念ね。」

    セレス「残念ですわね。」

    朝日奈「残念だね。」

    戦刃「じゅ、盾子ちゃん、みんながひどくかわいそうなモノを見る目で私を見る…。」

    江ノ島「本当に残姉ですね……絶望的です…。」

    戦刃「ああ…かつてないほど絶望的な顔をしてる…!」

    桑田「へー、戦刃ちゃんって最初の頃は全然クラスにいなかったけど、屋上にいたんだな。」

    山田「彼女の場合ツンデレ、とかじゃなく、触ったら殺すとでも言うような雰囲気でしたからなぁ。」

    大和田「それを今や、クラスメイトと普通に会話できるくらいにしたと。」

    不二咲「今思えば、僕たちも苗木君を通して話をするようになったようなものだもんねぇ。」

    石丸「確かに、教室に来ない者もたくさんいた中、苗木君と話をしてから来るようになったこともあったな。」

    十神「……なんだ。汚らしい視線を向けるな。」



    江ノ島「ぶっちゃけさ、この学園って才能さえ磨ければ普段授業を受ける必要もないわけだけど、苗木ってばできれば来て欲しい、なんて言ってたよねー。」

    苗木「せっかくこうやってすごい才能を持った人たちが集まったんだからさ。仲良くしたかったし、機会を大切にするべき、って思ったんだ。」

    苗木「それに…みんなと過ごすのはさ、平凡な毎日を過ごしてきた時と違って、刺激的ですごい楽しいんだ。」

    江ノ島「ふーん、苗木ってば人畜無害で無欲な顔して、意外なこと考えてんのね。」

    苗木「ボクが無欲だなんてことはないよ。むしろわがままな方だよ。」

    舞園「苗木君のわがままならなんでも聞きますよ!」

    霧切「助手なのだから少しくらいなら要望に応えてあげるわ。」

    セレス「ナイトに褒美をあげるのは主人の務めです。」

    朝日奈「え、えっちなの以外なら…」モジモジ

    戦刃「苗木君が誰かを倒したいなら協力するよ。」

    江ノ島「残姉が残念すぎる……。」

    苗木「ボクはみんなで仲良く過ごして欲しいかな。」


    霧切「私たちは仲良しよ?」

    舞園「ええ。普通に友人関係は築けていると思いますよ。」

    セレス「一緒にお茶を飲むくらいには友好的ですわよ。」

    朝日奈「お茶と一緒に飲むドーナツは美味しいよ!」

    戦刃「レーションを上げていいくらいには仲いいと思うよ。」

    江ノ島「残姉だけどっかズレてんだよなぁ。」


    苗木「そっか!仲が悪いのかなって思ってたけど、ボクの気のせいだったんだね。」


    江ノ島(まぁ苗木のことに関しては誰ひとりとして仲良くできてないんだけどー…。)

    大神(皆、心の内で苗木のことでは一歩も譲らぬからな…。この後のことを考えると……我の出番もありそうだな。)

    引き止める役として、と大神は談笑する彼女たちを見て、思った。
  41. 107 : : 2016/10/14(金) 00:25:42
    桑田「つーか、あとは苗木が選んで終了か?意外と短かったなー。」

    江ノ島「え?何言ってるの?」

    桑田「え?つっても、もう全員分終わったよな?」

    江ノ島「まだわたくし様がいるでしょう!」

    舞園「え、江ノ島さんは一番最初にやったじゃないですか!」

    江ノ島「あれはただの例だしー?それにもっともっとすごい話があるしー?」

    霧切「温泉旅行以上のすごい話…!?」

    セレス「ふ、ふふ…ハッタリですわ。わたくしにぶ、ブラフとは…。」

    葉隠「みんな声が震えてんべ。」


    江ノ島「じゃあ、正真正銘ラスト! 残姉の残念なエピソードで終わるわけねーだろ! 最後にわたくし様で盛大に締めてやんよ!」

    苗木「嫌な予感しかしない。」
  42. 108 : : 2016/10/14(金) 00:26:54
    ~~~~~


    江ノ島はこの学園に期待していた。

    ここではどんな希望が自分を待ち、そして、そんな希望がどうやって自分を絶望させてくれるのか。

    江ノ島はクラスメイトに期待した。

    自分の予測も自分の思惑も何もかもを台無しにして、絶望に陥らせてくれる人がいてくれるかもしれないと思ったから。


    だけど、蓋を開けてみれば…。

    江ノ島「絶望的につまんね…。」

    江ノ島(平和な平和な学園生活。誰かが欠けることも、予想外な騒動が起こることもなく、全て全て予想の範疇。超高校級が通う学園とか言っても結局こんなもんか…。)

    苗木「江ノ島さん? どうしたの? 随分と憂鬱そうだけど。」

    江ノ島「あぁん? …えっと、誰だっけ?」

    苗木「苗木誠だよ。一応キミと同じ78期生のクラスメイト。」

    江ノ島「……………あぁ、幸運か。」

    幸運なだけの一般人。このクラスで一番分析しがいのないやつ。

    つまり、江ノ島にとってももっともツマラナイやつだ。

    江ノ島「なんか用?アタシ、忙しいんだけど。」

    苗木「いや、江ノ島さんが楽しそうじゃないからどうしたのかなって。」

    江ノ島「よくぞ聞いたな人間!」

    江ノ島「ぶっちゃけよー! この平凡な日々に飽き飽きしてきたのさ!」

    江ノ島「刺激のない人生なんて…ツマラナイと思いませんか…。」

    苗木「え?急なキャラチェンジ。それはともかく、刺激がないのはつまんないとは思うよ。」

    江ノ島「それにー、何もかも分析して、予測したとおりに物事が起こっちゃおうとー、絶望的に何もしたくなくなるっていうかー。」

    江ノ島「つまり、アタシは現状に絶望してんのさ。」

    苗木「……江ノ島さんが何を言っているのかよくわかんないや。」

    江ノ島「……はぁ…絶望的…。」

    予想通りの反応過ぎて。

    理解されようとも、思ってないが、この100人に聞いたら90人はしてきそうな反応をしてきて、絶望的な気分になった。

    苗木「…でも、現状がつまんないってことはわかったよ。」

    江ノ島「あっそ。」

    その日の会話はそれで打ち切られた。


    ~次の日~

    今日も今日とて、ツマラナイ日々。

    仕事もなく、ただただ平和な学園生活。

    江ノ島(平和なんて、希望なんて、予定調和でツマラナイ…。)

    苗木「江ノ島さん。」

    江ノ島「んあー?何? えっと…あれだ、植物に関係してる名前。」

    苗木「苗木ね。ボク自身には植物は何の関連がないからね。」

    江ノ島「で、何のよう?」

    苗木「つまんないっていう話をしてたからさ、ボクと一緒にクラスメイトを集めにいかない?」

    江ノ島「は?何言ってんのあんた。」

    苗木「このクラスって、みんな才能さえ伸ばせば、ってことで好き勝手に来たり来なかったりするけど、せっかくだからみんなに来て欲しいし、たぶん江ノ島さんも覚えてなかったようにお互いをクラスメイトって知ってる人も少ないと思うんだ。」

    苗木「せっかくクラスメイトになったんだし、仲良くしたいと思わない?」

    思わない。

    全ての行動が予想可能な連中が増えたところで何にもならない。

    だが、このまま教室の机に項垂れていても何も起こらない。まだ、苗木についていった方が何か起るだろう。

    江ノ島「はぁ……仕方ないなぁ……。」

    苗木「うん。じゃあ行こう!」


    それから二人はそれぞれ好き勝手に過ごしているクラスメイトたちの元を訪れることになる。

    快く応じた者、渋々応じた者、最初はまともに相手すらしなかった者。

    色々といたが、最終的に半月もすれば、クラスメイトたちは可能であれば必ず学園に顔を出すようになっていた。


    江ノ島「なんでこうなったのかねぇ。」

    苗木「ボクと江ノ島さんで説得したおかげだよ。」

    江ノ島「私なんにもしてないけどー?苗木しかほとんど喋ってないじゃん。」

    苗木「江ノ島さんがいてくれて心強かったから何もしてないなんてことはないよ。」
  43. 109 : : 2016/10/14(金) 00:27:44
    正直江ノ島は苗木がクラスメイトを集めることはできないだろうと分析していた。

    この平凡な男に一癖二癖もあるクラスメイトたちをまともに扱えることはないだろう、と。

    だが、実際は全てのクラスメイトが苗木の説得に応じた。

    これは入学して以来の江ノ島にとっての刺激だった。


    舞園「苗木君!お昼一緒にどうですか?」

    苗木「うん、いいよ。江ノ島さんも一緒にどう?」

    江ノ島「アタシは用事があるからパス。」

    苗木「わかったよ。またね。」

    舞園と去っていく苗木を見ながら思う。

    苗木の何がクラスメイトを動かしたのか。

    それは苗木の希望。どんな逆境にも挫けず前向きに生きていくその姿勢。

    人柄の良さとか苗木の天然ジゴロっぷりとかその点はどうでもいい。

    とにかく、苗木がクラスメイトに希望を植え付ける様を目の前で見せつけられた。

    江ノ島(…ちょっとは暇つぶしにはなるかも?)

    苗木を絶望に陥れたらクラスメイトの全員の絶望が見れるかもしれない。

    そんな思惑が働いた。

    しばらくは動く気はなかったが、ちょっとした暇つぶしを見つけて、江ノ島の機嫌は良くなった。
  44. 110 : : 2016/10/14(金) 00:28:22
    ~さらに二週間後~

    舞薗「苗木君、よかったら一緒に」

    江ノ島「なっえぎ~!」ダキッ

    苗木「うわっぷ! むむむん!?(江ノ島さん!?)」

    江ノ島「わたくし様のパフパフは気持ちよかろう!」

    舞薗「な、な、な…何を…。」

    江ノ島「あ、舞薗~、いたんだ? 今から私と苗木はいちゃいちゃタイムだからもらってくね~。」

    舞薗「い、いちゃ…いちゃ…。」

    苗木「むぐむぐ~!」

    苗木はパフパフ状態のまま拉致された。


    ~別の日~

    霧切「苗木君。」

    苗木「あ、霧切さん…。」

    江ノ島「苗木~!アタシがコーディネートしてあげるから、服買いに行くよ~!」

    苗木「え?なんで急に」

    江ノ島「思いついたが絶望、なのさ。」

    苗木「意味がわからないよ!?」

    江ノ島「ほらほら、さっさとデート(強調)行くよー!」



    江ノ島(はぁぁぁぁ…苗木を中心にドロドロとした感情がうずまいてる…! あの苗木を何かに誘おうとして、希望に輝いた顔が絶望に落ちる瞬間! たまんない!)

    江ノ島(しばらくしたら、今度は私が誘おうとしたら邪魔してくるようになるだろうし、それはそれで絶望的ぃ……。)

    江ノ島(希望がないと絶望が生まれない! 苗木がいないと絶望は生まれない!)


    江ノ島「だから私は絶望的なまでに苗木が大好きなのさ。」

    苗木「だからの意味がわからない! 自分で歩くからいい加減離してよ。」

    江ノ島「断わる。苗木は私のモノって周囲に知らしめてー…偶然見かけた私のファンとか、苗木のことが好きな誰かとかに嫉妬してもらうんだー。」ハァハァ

    苗木「ろくな目的じゃない! ぐううう! なんでこんな力強いの!」

    江ノ島「女の子に力が強いだなんて…ひどいです…。でも離してあげません…。」

    苗木「……はぁ…。なんでそんなに周囲を引っ掻き回すようなことを…。」

    江ノ島「決まってるじゃん。絶望のためさ。」

    苗木「…絶望、っていうのがよくわかんないけどさ。江ノ島さんは今楽しい?」

    江ノ島「もう最ッ高よ! あんたは予想外に予想通りだけど、でも時々それを覆す。これが楽しくないわけがないわ!」

    苗木「…そっか。江ノ島さんが楽しんでくれてるならこの境遇も甘んじて受けようかな。」

    苗木「1か月前の時のような憂鬱な顔じゃなくって、今の希望に輝いてる顔の方がかわいいし。」

    江ノ島「……ハッ!」

    江ノ島(よりにもよって希望に輝いてると来やがった! このわたくし様の表情に希望を感じるなんて絶望的な観察眼ね。)


    江ノ島「…こんの朴念仁はいつか女に刺されればいい。そして、アタシやほかの女どもを絶望させな。」

    苗木「刺されたくはないなぁ。それに、江ノ島さんにそう言われちゃったら、尚更絶対に死んだらダメかな。」

    江ノ島「ほう? その心は?」

    苗木「江ノ島さんは予想外のことが好きみたいだからさ。ボクが死んじゃうっていう予想を常に覆せたら、とても予想外だと思わない?」

    苗木「江ノ島さんが笑顔でいてくれるならボクはずっと江ノ島さんの予想を覆し続けるよ。」

    江ノ島「……マジで女に刺されるなこれは…。いや、そのうちアタシが刺しそう…。」

    苗木「やめてよね!?」


    江ノ島(この絶望的なまでに希望を持っている男はいつまでアタシを絶望させてくれるかな? できればずっとずっと、生きている限りずっと、そして最後にはアタシが殺して、絶望したい。)

    江ノ島(その最後を考えると……最ッ高じゃない…!)


    江ノ島は脱出を諦めた苗木を抱え直しながら祈った。

    江ノ島(これからもずっとアタシを楽しませるために予想を裏切り続けてね。予想通りになっちゃったら…殺しちゃうから。)

    その日をきっかけに、江ノ島は殺したいほど苗木を愛することとなった。

    ~~~~~
  45. 111 : : 2016/10/14(金) 00:28:55
    江ノ島「あの時苗木は言ったのです。」

    江ノ島「『キミをずっと笑顔にさせ続けてみせる』(イケボ)」

    江ノ島「ってね。」

    苗木「待って! 前後が色々省略されてる気がする!」

    葉隠「はぁー、やっぱり苗木っちはすげえなぁ。女子はほぼ全員落ちてるって言ってもいいな。」

    桑田「…あいつの才能もう超高校級のプレイボーイとかに改名しろよ。あいつがいるから俺がモテねえんだ。」

    山田「それは関係ないと思いますぞ。」



    舞園「ふ、ふふふ……わ、私たちに嫌がらせするために……事あるごとに苗木君をさらっていたんですね…。」

    霧切「タイミングがおかしいと思ったわ。やけにデートを強調してたし。」

    セレス「では、ミルクティを入れてもらおうとした時も…。」

    朝日奈「放課後にドーナツ食べに行こうとした時も…。」

    戦刃「………。」

    戦刃(あれ、そんなことあったっけ。)


    江ノ島「そう、全てはあんたたちの絶望する顔を見るためにやっていたのさ!」

    江ノ島「まぁ……その後すぐに私も苗木君に堕とされてしまいましたが……。」


    舞園「いいでしょう。江ノ島さん、戦争です。」

    霧切「その喧嘩、買ったわ。」

    セレス「生きて帰れると思うなよてめええええ!」

    朝日奈「もう!みんな仲良くすればいいのに!」

    戦刃(……どっちの味方をすれば…)オロオロ



    江ノ島「ふふっ、あなたたちの相手はしてあげますが、その前にするべきことをしましょう。」

    江ノ島「ってわけで苗木ぃ。あんたにとって一番って誰なのか決めといてねー!」

    苗木「ええっ!? い、一番なんて…。」

    江ノ島「どういう意味でもいいよん。親友でも恋人でも友達でも尊敬でも畏怖でも恐怖でも…希望でも絶望でも。」

    苗木「ぼ、ボクにとって…一番……。」



    全員の視線が苗木に向けられる。

    苗木は落ち着いて今までの話と自分の考えをまとめる。

    彼、彼女たちの話は苗木にとっても大切な思い出だ。

    今回、彼らの視点から話を聞け、そして、彼らの口から大切な思い出であると話をしてもらったことはとても嬉しかった。

    彼らの中に自分が確かに存在している、その証をもらったようなもので、身に余る光栄だ。

    だけど…その中から一番を決める…というのは……。


    苗木「……どんな形でもいいって言ったよね。」

    江ノ島「うん?言ったけど…。」

    苗木「…これがボクの答えだ。」
  46. 112 : : 2016/10/14(金) 00:32:18
    苗木「決められないよ。」

    江ノ島「ほう。」

    苗木「決められない、というより、決めたくないかな。みんなはボクにとって大神さんが言ってたように仲が良いにもそれぞれの形があって、それぞれで一番だと思ってる。」

    江ノ島「…そんな優柔不断な回答が許されるとでも?」

    苗木「それでも…みんなとの仲に優劣なんて付けたくない。」



    「………。」



    苗木の回答に場が沈黙する。

    江ノ島「…はぁ…やっぱりそうだよねー。それが苗木だよねー。」

    苗木「やっぱり?」

    江ノ島「苗木にとって誰が一番なのか、つって、結局みんなが一番って言うのはわかってたってことだよ。」

    苗木「ええ…今回の話の意味…。」

    江ノ島「それではっきりしたら良し、みんなが一番、って言ったらまぁだよねー?で終わり。」

    江ノ島「ってわけで撤収! さぁて、舞園たちと遊んでくるかー!」ダッ!

    舞園「あっ! 逃げましたよ!」

    霧切「逃がすわけがないわ! 追うわよ!」

    セレス「あまり走りたくないのですが…。」

    朝日奈「走りじゃ負けないよー!」

    戦刃「こ、これで盾子ちゃんを捕まえたら絶望してくれるかな…。」

    大神「やれやれ…。」

    腐川「え、え、これ私もついていったほうがいいの?」



    十神「ふん、くだらん。」

    大和田「全くだぜ。おい、残った奴らで飯食いに行こうぜ。」

    桑田「お、いいな。ちょうど腹減ってたんだよ。」

    石丸「食事なら買い食いではないな!よし、僕も行こう!」

    葉隠「むむ、俺の勘が告げたべ! こういう時はラーメンだべ!」

    山田「いいですなぁ。餃子も付けましょうぞ。」

    不二咲「話してたらお腹空いてきちゃったぁ。早く行こぉ。」



    苗木「………。」

    あっという間に誰もいなくなった教室。

    苗木(今日は…いや、今日もか…。それはともかく、大変な目にあったけど…嫌なことばかりじゃなかったな。)

    苗木は自分との思い出とその想いを語ってくれた仲間たちのことを思い、温かい気持ちになった。

    そして、その温かい気持ちのまま、教室を出る。


    苗木「待って!ボクも行くよ!」


    いつも振り回され、追いつくのが大変な仲間たちを追いかけるために苗木は駆け出した。


    ー完ー
  47. 113 : : 2016/10/14(金) 00:36:13
    ~あとがき的な~

    最後のほうは駆け足気味に、というか書き貯めてから一気に投下しましたので、気づいたら終わってると思います。

    このSSは『苗木って八方美人なところあるけど、誰が一番?って求められたらどうなるんだろう』(勝手なイメージ)と考え、書き始めました。であるので、今回の着地点や途中の展開などかなり行き当たりばったりだったので、色々おかしいところあるかもしれません。

    以上で、このSSは完結とします。
    ここまで見てくださった方はありがとうございます。
    SS自体が読みやすいように途中にあるSSに関係のないレスは非表示にさせていただきます。
    また、たくさんのコメント、期待、お気に入り登録ありがとうございました。かなりモチベーションに関係しましたので、完結まで持って行けてよかったです。


    感想等コメントは随時募集しますので、よろしくお願いします。
    ではでは。
  48. 114 : : 2016/10/14(金) 20:58:02
    完結お疲れ様です。
    色々とありましたが楽しくSSを読ませて頂きました。
    江ノ島で始まり江ノ島で終わったところが個人的にツボでした。
  49. 115 : : 2016/10/14(金) 23:20:54
    >>114
    コメントありがとうございます。
    大まかにストーリーラインはあったんですが、
    江ノ島は「例は挙げたけど、私の話はしてないよね」ってことで
    最後で書く予定でありました。
  50. 116 : : 2016/10/16(日) 12:17:50
    面白かったです。やっぱり江ノ島さんに対抗できるのは苗木君だけですね。まあ日向君もそうですが。もし日向君が普通の状態で77期生にいて、苗木君がもう少し早く希望になっていれば、雪染先生を含め、他の人達も絶望しなかったんじゃないかと今でも思ってしまいます…今度は日向君バージョンのこれも見てみたいですね。 長文なってすみませんでした。
  51. 117 : : 2016/10/16(日) 18:38:28
    >>116
    コメントありがとうございます。
    2メンバーでやると、なぜかみんなヤンデレになる(偏見)ので
    今回の78期生とはまた違う感じになりそうで面白そうです。

    苗木たちは江ノ島に一番近いところにいたんだから何とか気付けなかったのかなとは思います。
    とは言っても、苗木たちはクラスメイトの江ノ島を
    信頼していたでしょうから、諸悪の根源であると気づくのは難しいでしょうね。
  52. 119 : : 2016/11/27(日) 21:07:28
    このあと、絶望事件は起こらなかったのでしょうか?こんな世界ならなにも起こらないでほしい
  53. 120 : : 2016/11/28(月) 00:49:52
    >>119
    コメントありがとうございます。

    起こっていたのなら今回の話を動機にコロシアイが起きているかもしれません。
    起こらないならこのSSの思い出話のようなことが彼らの日常として紡がれていく話になっていくでしょう。

    書いている側としてはコロシアイが起きるとしても、忘れ去られた日常の中にこういった話があってもおかしくはない、というスタンスで書いています。
    と言っても、このSSは特にそういった「このあと絶望的事件が~」とか「このあとコロシアイが」、ということは考えて書いてはいませんので、その辺は個人のご想像にお任せします、としか言えません。

    個人的な意見を書くなら、本編が殺伐としてるし、こっちのSSの未来は平和であってほしい、くらいですかね。
  54. 121 : : 2016/11/28(月) 22:18:20
    返信ありがとうございます。今書いてらっしゃる日向&77期生の話も大好きです!いつかまた78期生の苗木ハーレム?も書いてもらえたら嬉しいです!そのときは日向たちも絡むのかな?
  55. 124 : : 2016/12/14(水) 23:54:13
    お疲れ様です。
    秋巻さんの作品はどれもお気に入りですが、このSSも面白かったです。
    葉隠のシーンが個人的にツボです笑

    あと、これの2バージョンも執筆して頂ければ嬉しいです!
  56. 125 : : 2016/12/15(木) 00:55:52
    >>124 コメントありがとうございます。
    全部いい話だな~で終わるのも面白くない(という考えだったはず)ということで、葉隠と桑田には犠牲になってもらうしかなかったのです…。

    楽しいんで頂けたなら良かったです。
    2メンバーバージョンは今書いているもの以外にネタがなくなったら書くかな、くらいに考えていますのでお待ちを!

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