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【プリズナー】

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  1. 1 : : 2016/07/21(木) 00:00:34
    おまたせしました

    覆面レスラーV3です
  2. 3 : : 2016/08/04(木) 23:46:06



    右腕はヘシ折られた。


    左腕は潰された。


    右脚は切られた。


    左脚は動かせない。



    ───────
    ─────────────
    ─────
    ─────────
    ────────────────
    ───────
    ──









    石丸「修学旅行の班は区切りの良いように四組作る。男女2名ずつだ!」


    黒板に概要を書き込んだ石丸君はそう言うと、教壇を降りて大和田君の元へ向かう。


    石丸「兄弟!僕と班になろうではないか!!!」

    大和田「おう!ったりメーだろ!!」

    ガシッ

    大和田「女子は、不二咲とーー、誰でも良いか」

    不二咲「…うんっ、よろしくね」



    それに続くように班決めが行われていく。

    朝日奈「さっくらちゃーんっ♫」

    ギュッ

    大神「フッ。言わなくとも我らは既に同じ班だと決めていただろう」

    朝日奈「うん!楽しみだね!!」

    大神「ああ」





    腐川「びゃ────」

    十神「黙れ」

    腐川「はい…」

    十神「黙れと言った筈だ」

    腐川「………」

    腐川(ふふふっ…///)





    戦刃「盾子ちゃんが居るから女子二人は決定として…誰誘う?苗木君?」

    江ノ島「は?何ナチュラルに私入れてんの?何で折角の修学旅行をアンタみたいなのと行動を共にしなくちゃいけないわけ?」

    戦刃「あ…それもそうかも」

    江ノ島「なーんでこんな簡単に納得出来んのにいちいち言ってくるわけ?」




    セレス「荷物持ちが必要ですわね。おい豚」

    山田「!まさかセレスティア・ルーデンベルク殿に誘っていただけるとは…!!この山田一二三、地獄でも付き合いましょう」

    セレス「ウフフ。よろしくお願いしますわ」





    桑田「苗木ィ、俺と同じ班になろうぜ!」

    苗木「良いよ!宜しくね」

    桑田「よっしゃあ!これで舞園ちゃんゲットぉ!」

    苗木「えっ?」

    桑田「知ってんだぜ、お前が舞園ちゃんと班組むの」

    苗木「うん…。舞園さんから誘ってもらったんだけど」

    桑田「知ってるっつーのだから誘ったんだし」

    桑田「まあ、確かに舞園ちゃんは中学の同級生という事で苗木と仲が良い。でもな決して、けえぇっして好意があるとかじゃない!」

    苗木「いや、そうだろうけどさ。もっと建前を大事にしてよ…」

    桑田「この修学旅行で俺は舞園ちゃんを落とす。これは決定事項」

    苗木「いや、舞園さんはアイドルだし恋愛は御法度なんじゃ…」

    桑田「分かってるっつーの、だから!心を奪うんだろーが!」

    山田「彼はとんでも無いものを盗んでいきました」

    桑田「あー、そうそう、そんな感じの!」

    山田「それは────」

    葉隠「苗木っちの臓器だな!」

    苗木「怖いよ!!」

    葉隠「なっ!頼む!!肺と腎臓くれるだけで良いから!」

    苗木「ヤダよ!!1つもあげないから!!」

    桑田「んで、残り1人の女子はどうする?江ノ島ちゃんとか?」

    苗木「いや、後1人はもう決めてるんだ」

    桑田「舞園ちゃん以外でか?」

    苗木「うん。誘ったのは───────」






    パチンっ







    一斉に世界から明かりが消える。


  3. 4 : : 2016/08/04(木) 23:52:04


    パチリっ





    幕が上がったかの様に、世界に色が付く。

    苗木「ッ!…ここは…」

    目に映ったのは見覚えのある希望ヶ峰学園の元校舎、その体育館。だけど何かが決定的に違う。

    例を挙げるなら窓が鉄板で覆われている所などだ。

    朝日奈「えっ!?さっきまで教室にいた筈じゃん!」

    周りを見渡すと、僕を含むクラスメイトが入学当初の懐かしい服装で揃っていた。

    僕はパーカーにブレザーを着た格好だ。



    【タイイクカン】



    ????「やあやあ、待ってたよ」


    声のする方を向くと教卓の上に佇むモノクロのクマのぬいぐるみが声を発していた。


    江ノ島「何これ。趣味悪」


    モノクマ「ボクはモノクマ。このゲームの主催者なのだ。…あと趣味悪くないよ!ぷんぷん!」


    地団駄を踏むように足を動かしながら、モノクマはワザとらしく怒り、こう続ける。


    モノクマ「えー、今からオマエラには奪い合いをして貰います」


    大和田「奪い合いィ?一体何を奪うってんだ?」


    モノクマ「んん?知りたい?知りたいのかな?」


    十神「さっさと言え」


    全員が固まっている中、十神君が口火を切った。


    モノクマ「十神君はせっかちだなぁ────人間だよ。オマエラ16人を奪い合ってもらうんだ」


    モノクマ「うぷぷ。命を懸けて…ね」


    朝日奈「何…言ってるの?」


    身体と声を震わせながら朝日奈さんは言う。


    モノクマ「分かんないかぁ。ボクには分かってるんだけどな」


    桑田「アホか!!それで俺たちまで分かれば苦労しねぇよ!」


    モノクマ「はいはい。アホの桑田君に免じて、ルールを説明してあげるよ。猿では分からない説明だから、桑田君、よく聞いてね」


    桑田「だぁれが猿だ!熊!」


    セレス「…合ってるのでは?」


    桑田「………あぽ?」


    モノクマ「茶番は終わりだよ!ルール説明タイムー!」


  4. 5 : : 2016/08/04(木) 23:52:43


    モノクマ「えー、まず。オマエラが殺した人間はね『人形』になるんだ」

    モノクマ「『人形』に何を籠めるかで人形の強さが変わるよ」

    モノクマ「例えばA君がB君を殺したとする。するとB君はA君の操り人形になっちゃうわけ。その時に【綿】と【魂】をどれだけ込めるかが大事になってくるクマ!」

    モノクマ「C君がA君を殺した場合。B君とA君がC君の操り人形になる。主導権が移るだけで、B君の【綿】と【魂】は込め直せないんだけどね」


    セレス「綿と魂を込める?意味が分かりませんわ」


    モノクマ「言葉は同じだけど君達の思ってるそれとは違うかな。【綿】は強さ。異形化させたり人成らざる力みたいなものだね」


    戦刃「何を言っているかさっぱりなんだけど、異形化?何それ」


    モノクマ「やれば分かるよ。殺れば」


    戦刃「………」


    モノクマ「【魂】は操り易さ。【魂】が多く込められている程細かな事をこなせる様になるんだ───人形を人間の様に扱えるんだ」

    モノクマ「ま、僕のオススメは【綿】50%【魂】50%何だけどね」


    十神「もし、その何方かを100%にした場合どうなるんだ?」


    モノクマ「おっ、良い質問。【魂】を100%込めたらそれは唯の人だよ。傀儡師に思いのままに操られる、形だけの人」

    モノクマ「【綿】を100%込めたら、とっても強いんだけど、傀儡師の命令を効かない殺戮マシーンが出来上がっちゃうからオススメしないよ」

    モノクマ「『人形』は死なないから安心してね。最後まで生き残った者のみが帰れるんだ」


    不二咲「じゃ、じゃあ他の人達は…残らなかった人達はどうなっちゃうの?」


    モノクマ「他の人?他の『人形』は帰れるよ。壊れた身体も直った状態で──『人形』のまま」


    不二咲「そん…な…」


    モノクマ「あっ、1つ言い忘れた。【綿】を100%込めた『人形』はね。ちょっと特別で少ししたら身体()が完全に崩壊するんだ。修理できなくなっちゃって、元の世界に帰れなくなるから気を付けてね」


    江ノ島「へぇ…」

    戦刃(盾子ちゃん?)


    モノクマ「それではー!健全なジントリゲェムを始めちゃってくださーーい!!!!」


    モノクマがそう言いながら木槌で赤いスイッチを叩く。


    その瞬間、僕の視界は再び暗転した。







    ────
    ────────────

    ──────


    ────────











    苗木「うわっ…!」

    ドサドサ

    浮遊感の果て、たどり着いたのは見覚えのない教室。

    恐らく他学年の教室だろう。

    辺りを見渡すと机の上に手紙が置いてあった。

    苗木「To 苗木誠…、僕宛?」

    それを手に取り封を切る。










    『苗木誠のハンドアウト』

    『貴方が優勝した場合。その時に『人形』だった物達もゲーム前の状態で日常に帰れる
    ただし貴方の所持していた『人形』(優勝する直前まで)はその例外』

    『※この秘密は他の人に知られた時その効果を失う』

  5. 6 : : 2016/08/05(金) 00:10:37


    苗木「!!…これは」

    思わず声を出す。

    だが、このよく分からない状況で声を出すのは得策では無いため、直ぐに口を閉じた。

    苗木(このハンドアウトが本物なら絶対に誰も人形に()しちゃいけない。…元々そんな気は無いけど)

    苗木(なら隠れておくのが正解か?いや、違う出歩かなくちゃいけない)

    苗木(平凡な僕が人形を手にせず(誰も殺さず)優勝出来る可能性は0だし、みんなで帰るならそもそもコロシアイなんか起こしちゃ駄目なんだ)

    苗木(パニックを起こしている人もいるかもしれないけど、絶対に僕みたいにコロシアイを止めようと動く人の方が多い筈。なら早くみんなと合流しないと)


    扉に耳を当て外の様子を伺った後。

    僕はゆっくりと教室の扉を開けた。


    【ロウカ】


    苗木(よし。行こう)

    出来るだけ足音がしない様に廊下を駆け足程度で走る。

    誰の気配も感じない廊下を不思議と思いながらも、僕は確認する事なく曲がり角を曲がる。

    王道展開なら、曲がり角ではパンを咥えた女の子とぶつかるのが主流。

    だけど、違った。

    僕は超高校級の幸運ではなく。超高校級の不運だから。

    シュンッ!

    何かが僕の鼻の前を高速で通り抜けた。

    何か、は飛んできた方向を見れば明らかだろう。


    戦刃「…危ない。私があと5メートル前に居たら、ぶつかる寸前に殺していた」


    不運な僕は曲がり角でナイフを持った超高校級の軍人と出会ってしまった。

  6. 7 : : 2016/08/05(金) 00:11:35


    苗木「戦刃さん…」

    殺していた、という言葉と飛んできたナイフに若干怯えながら僕は彼女の名前を呼んだ。

    戦刃「大丈夫安心して」

    サバイバルナイフの切っ先を此方に向けながら、普段の声色で彼女は言う。

    苗木「いやっ、ナイフ構えながら安心してと言われても…、あっ、僕が何か武装してるかもしれないから?安心して!何も持ってないよ!ほら!」

    両手を上げながらその場で一回転してみせる。

    無防備かつ無抵抗を示す為に。

    戦刃「?」

    それに対し彼女は不思議そうな顔をするものの未だナイフを構えたままだ。

    苗木「えっと一応安全性は示したんだけど、ナイフをしまってくれないかな…?ほら、だって戦わなくて良いでしょ?」

    戦刃「え、私これから苗木君を殺すんだけど?」

    苗木「はぁ!?」

    戦刃「苗木君。大丈夫。私が殺してあげる(助ける)から」

    苗木「何で、平気でそんな事を言えるんだよ…」

    戦刃「軍人だから…というのは少し違うね。殺す事に抵抗は無いけど、殺す相手が親しい人だと抵抗はあるよ」

    苗木「じゃあ…何で」

    戦刃「守る為。みんなを守る為に殺すんだよ」

    苗木「まさかハンドアウト…?」

    戦刃「いや、ハンドアウトには『はずれ〜バーカ』って書いてあったよ」

    苗木(残念!)

    苗木「じゃあ誰から守るっていうの?」

    戦刃「盾子ちゃん」

    苗木「!!」

    彼女は僕の質問に、実の妹の名前を出した。

    戦刃「苗木君を含めたみんなが、盾子ちゃんの人形になったらどんな目に合うか分からない。だから私がクリアしてみんなを人間の人形(【魂】100%)の状態で元の世界に還すから」

    苗木「それなら協力しようよ!江ノ島さんを無力化すれば良いんでしょ?殺さずに!」

    戦刃「それでも、他の人が殺し合いをしてないとは限らないよね。他の人が人形を使って襲ってきたら私だってやられちゃうかもしれないし」

    苗木「それは…」

    戦刃「そもそも、私でも大神さん相手に生身じゃ分が悪いから。武器が必要なんだ」

    苗木「武器って…まさか」



    戦刃「うん。人形」

    彼女は僕を指差しながらそう言った。

    ダッ!

    その瞬間僕は後ろを向き全速力で駆けた。

    戦刃「……」

    超高校級の軍人(彼女)と僕では考え方が違いすぎる。

    彼女は偽物の平穏(目的)の為に人を殺す(手段を選ばない)

    彼女の言葉を信じるなら、武器が無いと勝てない相手(大神さん)と合流すれば何とかなる筈。

    追い付かれるのは時間の問題だが、僕より3倍素早く動けたともしても、それは3倍速く走れる理由にはならない。

    脚の速さと身体を動かす速さは似ているようで違う。後者は瞬発力だ。

    世界一速く走れる≠世界一高く跳べる人の様に。

    一瞬で詰められない(戦刃さんとの)距離が僕のアドバンテージ。




    の筈だった。

    シュンッ!

    苗木「なっ…!」

    投げられたのはサバイバルナイフ。それは僕の頬を掠め、壁に深々と突き刺さった。

    戦刃「動いたら殺す。大きな声を出しても殺す」

    反射的に。否、本能的に。僕は逃げる脚を止めてしまった

    戦刃「君の大切な人を殺す」

    だって、ナイフは僕の目の前で彼女の髪の一部を切り落としたのだから。

    舞園「…苗木君」

    僕の数メートル先で舞園さんが震えながら佇んでいた。

  7. 8 : : 2016/08/05(金) 00:16:53


    苗木「舞園さん…、何でここに…」

    舞園「私、さっきまで1人で…怖くて歩き回っていたんです」

    最悪だ。何でこんなタイミングで鉢合わせる。

    戦刃「お喋りは終わり。じゃあ、死のうか」タッ

    苗木「くッ…!」


    戦刃さんが2本目のサバイバルナイフを構え、僕との距離を詰める。











    距離を詰める?



    ?オカシイ。何故初撃で、威嚇射撃の様に放ったナイフで僕を殺さなかった?


    殺さなくても、僕自身に当てれば効果的な筈だ。


    そして何故ハンドアウトと聞いて『はずれ〜バーカ』と答えられたのか。

    何故紙に書かれた暴言をハンドアウトと結びつける事が出来たのか。

    そこから導かれる答えは









    嘘をついた理由は単純だ。

    自分に不都合があるから。

    僕みたいに『知られてはいけない』と書いてあるけど、利点があるなら“言えない”と言うんだ。

    つまり彼女の中でのハンドアウトは=自分に不都合のある事。

    これを逆手に取れ。

    じゃないと生き残れない。

    目には目を歯には歯を、嘘には嘘を。






    (苗木誠)。お前に嘘が使えるか?





    苗木「…戦刃さん。僕のハンドアウトを聞いてくれないかな」

    戦刃「何?言うのなら聞くけど」

    苗木「ありがとう。僕のハンドアウトはさ、逃げ回る僕を見て分かるように、普段から不幸な僕を見て納得のいく通り」

    戦刃「……」

    苗木「『殺された場合、強制で【綿】100%』になるんだ」

    戦刃「えっ」

    苗木「だから2人残った状態で殺されるか、最後まで生き残らない限り、僕は暴れるだけ暴れて、器が壊れ消滅する」

    舞園「そんな…っ!」

    戦刃「そんな事になれば苗木君がぬいぐるみになっちゃうね。比喩だけど。それに暴れられたら私まで巻き添えが喰らうかもしれない」

    苗木「そう。だからさっ、此処は引いてくれないかな?」

    戦刃「……紙はある?」

    苗木「見た瞬間破り捨てて、最初に居た教室に捨ててきたよ。嘘だと思うなら確認してみてよ」

    当然嘘。

    紙は折りたたんだ後、内ポケットの中に隠した。

    戦刃「………分かった。此処は退く」

    苗木「良かった」

    戦刃「でも、舞園さんは殺しておく事にするよ」スッ

    苗木「させない」バッ

    3本目のサバイバルナイフを取り出し、此方に近付く彼女に立ち塞がるように僕は腕を開く。

    戦刃「退いてよ苗木君。邪魔なんだけど」

    苗木「どかない!!」

    戦刃「…!!」

    ピタッ

    立ち塞がる僕に怯んだのか、戦刃さんは足を止めた。

    戦刃「成る程。そういう事…ああ、最悪だね」

    苗木「何を言っているの?」

    戦刃「良いよ。退く。舞園さんにも手を出さない」

    苗木「本当!?」

    戦刃「うん。でも…、いや何でもない。気を付けてね」

    何かを言いかけたが皆まで言わず、彼女はクルリと後ろを向く。

    苗木「分かった。戦刃さんも気を付けて」

    退いてくれるなら止める必要は無い。彼女の気が変わるのを恐れて僕はそんな返事しか返せなかった。

    戦刃「苗木君。桃色の紐に御用心」タッ

    最後にそう言い残し、彼女は僕らの居る方と逆の方へ走り姿を消した。

    苗木(桃色…ピンクの紐?)


  8. 9 : : 2016/08/23(火) 22:35:11


    苗木「…ふう。何とか凌げた」

    舞園「大丈夫ですか苗木君!?怪我は!?」タッタッタッ

    緊張の糸が切れてその場にペタリと座り込む僕の方へ彼女が駆けよる。

    苗木「あはは、大丈夫だよ」

    外傷は頬の傷だけなので強がりでは無いのだが、せめて気持ちの面だけでもと気丈に振る舞う。

    舞園「そうでしたか、良かった…。本当に良かったです」

    それをみて安心したのか、彼女はいつもと変わらない様子で屈託の無い笑顔を浮かべた。

    いや、目尻に涙を浮かべている点ではいつもと違うか。

    苗木「舞園さんは……」

    女性の身体をマジマジと見るのは失礼かもしれないが、頭から爪先まで見るマジマジと見るマジマジと。

    苗木「うん。……特に何も無いみたいだね。良かった」

    舞園「ふふっ苗木君が、守ってくれましたからね。あと、女性の身体をそんなマジマジを3回使う程見るのは失礼じゃなくてセクハラですよ」

    苗木「えっ!?そんな具体的な数まで分かるの!?」

    舞園「エスパーですからっ」

    苗木「案外本当なのかもしれないね」

    舞園「エスパーですよ!!」

    苗木「ゴリ押し!?」

    舞園「ふふっ、冗談です。ただの勘ですよ」

    苗木「もうどっちでも信じられるよ…」

    今にも泣きそうな顔をしながら、僕の無事に安堵してくれる、そんないつもと変わらない彼女を見て、非日常に沈みかけていた僕の心は確かに救われた。

    いや、それは良く言い過ぎか。

    正しくは気が緩んだ。

    それがいけなかった。



    ゴキンッ!!!!!!!



    鋭い音と共に舞園さんは倒れた。

    苗木「………え?」

    その横に居たのは……。

    桑田「悪りぃな苗木。舞園ちゃん貰っちまったわ」

    苗木「あ…あぁ…っ」

    桑田怜恩は、金属のバットの先から血を流していた。

    舞園さやかの血を。

  9. 10 : : 2016/08/23(火) 22:37:51


    ◇◆◇



    【ショクドウ】


    そこに居るのは二人の男女。片方は震える手で包丁を持つ、超高校級のスイマー。

    もう片方は模擬刀を手に持った超高校級の占い師。

    葉隠は入り口を塞ぐ様に立ちながら、こう言った。

    葉隠「悪りぃな。俺死にたくねぇーんだ、だから死んでくれ」

    朝日奈「アンタ…本気で信じてんの…?あんな非科学的な説明…」

    葉隠「オカルトは信じねぇータチだけど、タネのない空間移動され続けたら信じるしかねぇーべ」

    朝日奈「だからって……!」

    葉隠「朝日奈っちは、ただ受け入れられて無いだけだべ」

    朝日奈「なんで…何でアンタは受け入れられるのよ」

    葉隠「受け入れた方が良い方に話が進むからだな。例えば十神っちを人形にすれば思い通りなんだろ?なら俺の借金を完済するのは簡単だべ」

    朝日奈「どうして友達を…そんな風に使おうと思えるの?十神だって嫌なヤツだけど、悪いヤツじゃ無いじゃん…!」

    葉隠「ああ友達だ。だから、困っている俺を助けてくれ」

    朝日奈「最っ低……アンタだけは悪いヤツってのは分かったよ」

    朝日奈(殺す必要はない。逃げる隙を作るだけ…!)

    包丁を構えながら、朝日奈は突進する。

    葉隠「やっぱ、朝日奈っちに会えて良かったべ。俺の占いのお陰だ」

    模擬刀を強引に振るう。

    バキッ!

    それは朝日奈の右手を捉える。

    朝日奈「ぐっ!」

    朝日奈は痛みに負け、包丁を手から離す。

    葉隠「なーんか、包丁に良い思い出が無い気がするんだが」

    葉隠は朝日奈の落とした包丁を拾った。

    葉隠「朝日奈っちは確かに鍛えてる。だけど、こんなに体格差のある男相手に、泳ぎが得意なだけで勝てると思ったか?」

    葉隠「喧嘩ならまだ分からん。でもな朝日奈っち、これは殺し合いだ」

    葉隠「殺す覚悟の無い人間が、殺す道具を持っても枷にしかならん」


    グサッ!


    葉隠の握った包丁が朝日奈の柔肌に突き刺さる。

    朝日奈「あっ……そん…な…」

    鋭い痛みが走り、そこから熱が広がっていく。

    包丁が引き抜かれると、切り口から血がワインを注ぐようにドクドクと流れ出し、赤いシミが彼女の白いシャツを汚していく。

    葉隠「許してくれ。だから祟って出らんでくれよっ!」

    血に汚れない様にその場から離れながら葉隠は拝んだ。

    自分のために。

    朝日奈「……ぁ」

    血を失った事による寒気に襲われ、朝日奈は悟った。

    死ぬのだと。

    朝日奈「………死にたくないよ…。まだ、やりたい事だって、いっぱい……まだ…」

    悟ってしまったからこそ生にしがみつく。

    声を出し、もがく様に自身の血でベットリと汚した腕を伸ばす。

    血液と比例して失われていく未来へ手を伸ばす。







    葉隠「おやすみ。朝日奈っち」

    だが、その手を掴んでくれる親友は今此処には居ない。

    朝日奈葵は、悲痛に顔を歪めながら死んだ。





    その時葉隠以外の時が止まる。


    【綿】0%
    【魂】0%


    葉隠「なっ、なんだべ!!」


    『朝日奈葵のステータスを振り分けてください』

    突如目の前に現れた画面に戸惑う葉隠を、アシストするかの様にそんな文字が表示される。

    葉隠「ああ、そういう事か、それはもう決まってる──」




    【綿】90%
    【魂】10%




    葉隠「手駒は強くねぇーとな!!」



    [SUTURE]



    葉隠は意気揚々と表示されたボタンを押した。

    カチ…カチ…カチ…

    止まった時が動き出す。

    朝日奈「───」

    そして死体(朝日奈葵)は人形になった。

  10. 11 : : 2016/08/23(火) 22:40:34


    ◇◆◇


    【キョウシツ】

    ジェノ「あ?ンだこの黒板の字は、ああネクラの字だな。無駄に達筆な所が。慣れてねぇーのか最初らへんはキタねーけど」ゲラゲラゲラゲラゲラ

    黒板には腐川が書いたこれまでの経緯が簡潔に書いてあり、教卓の上にはハンドアウトの手紙が置いてあった。

    ジェノはそれらを読み終えると、興味ありげに1人でうんうんと頷いた後。

    ジェノ「ってか、殺して良いの?殺っちゃって良いの?白夜様殺しちゃって!?」

    嬉々としながら───鬼気としながら鋏を掲げた。

    ジェノ「いやいや、ダーリンには殺意を超えた愛、Loveが湧いちゃってっからどうしよっかなーっ、ま、会ってから決めれば良いか!待っててね!ダーリン!!!!」ダッ!


    〜5分後〜


    【トショシツ】

    ジェノ「やっぱ殺せないわぁ!ダーリン大好きラブちゅっちゅ!」

    十神「チッ、何で俺がこんな目に」

    ジェノ「ダーリンのgoodスメルは何処にいても嗅ぎ分けられる。キャーッ、恥ずかしっ!そんな鼻も恥じらう殺人鬼でぇす!」

    十神「花だ」

  11. 12 : : 2016/09/02(金) 03:43:41


    ◆◇◆


    舞園「──」ピクッ

    ピクリっと舞園さんの指先が動く。

    苗木「舞園さんっ!!!!!」

    彼女が生きてると分かった僕は、流す涙も、垂れる鼻水も気にせずそう叫んだ。

    だが彼女が僕の言葉に返事する事は無く、むくりと起き上がる。

    そして、そのまま桑田君に跪いた。

    苗木「えっ…?」

    桑田「お?これが人形になったって事か?」

    浮かんだ疑問を掻き消すかのように舞園さんが桑田君に抱きつく。

    桑田「おお…」

    胸を押し当てられ、彼は満更でも無さそうな顔をした後。

    桑田「これが、人形……たまんねぇな!!」

    下衆な笑みを浮かべた。

    苗木「────!!!!!!!」

    その瞬間。僕の悲しみは怒りに変わった。

    苗木「桑田ァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!」

    バキッ!!!

    右腕を振り抜き、彼の顔面を殴る。

    生まれて初めて振るった暴力。拳以上に心が痛かった。

    桑田「ってぇーなァ!!!人がせっかく楽しんでるっつーのによ!!!!」


    ドスっ!!!


    苗木「がはッぁっ!!!」


    僕を蹴り飛ばし、殴られた左の頬を摩るようにしながら此方を睨みつける。


    桑田「何お前?殺されてェの?いや殺すけどさ」

    桑田「折角後回しにしてやってんのにいきなり殴るのはねぇんじゃねえの?」

    苗木「ふざけるなよ…!!殴られる理由なんて、舞園さんを殺しただけで十分過ぎるだろ!!!!!!」



    彼女の虚ろな目が全てを語っている。

    舞園さやかは人形になったのだと。



    桑田「ルールだから仕方ねぇだろ!やるしかねぇんだよ!!」

    苗木「目を覚ませよ!!君はそんな気持ちで彼女の事を好いていたの?!君の恋はそんなに不純なものだったのかよ!!」

    苗木「僕だって、舞園さんの事が好きだった…。いつも優しくて、笑っていて、温かい彼女が好きだった!!!君は!!!何もなくて無表情で、冷たい彼女の事が好きなのかよッ!!!!」

    桑田「うるせぇよ…。どうせみんな自分が可愛いんだ!!!舞園ちゃんだってきっと目的の為なら人を殺す!!!!俺だってそうさ、舞園ちゃんと元の世界に帰るために、全員を殺す!!」

    苗木「舞園さんと元の世界に…?──!…まさか君のハンドアウトは」

    桑田「お前にもあんのかよ、ハンドアウトって奴。俺のハンドアウトはお察しの通り『優勝した場合最初に人形にした人間も人間のまま元の世界へ帰れる』」

    苗木「……」

    桑田「俺が舞園ちゃんが好きになったのは顔だ。あと、アイドルっていうブランド?」

    苗木「……」

    桑田「でもさ舞園ちゃんと接してるうちにさ、あー、可愛いな、ヤりてぇな。じゃなくて、付き合いたいなって生まれて初めて思った」

    桑田「惚れた弱みってヤツ?」

    苗木「そんな風に思っているなら、何で…殺したんだよッ……」

    桑田「既にコロシアイは始まってる。葉隠が朝日奈を殺してたからな」

    苗木「そんなっ!」

    桑田「もう、止まらねぇ。生き残る為にはこのコロシアイに全力で参加するしか……参加する…しか……」


    桑田君は金属バッドを手から離し、重力に従って床に落ちたそれは変形したため転がることは無く、カランと音を立てて止まった。


    桑田「何やってんだ……俺」

    桑田「俺がしたいのはこんな事じゃねぇだろ…俺の手は殺す為じゃ無くて繋ぐためにあった筈だろ…」

    虚ろな目をする彼女を見ながら、桑田君は涙を流す。

    桑田「ごめん…舞園ちゃん…」

    彼は僕を殺そうと思えば直ぐ殺せた筈だ。

    腕力も彼の方が上、人形だってある。

    だけどそれをしなかったのは舞園さんを殺した事は紆余曲折あったが救う為であり、僕を殺す事は自分がクリアする為だったから。

    桑田君はチャラチャラしてるが根は優しいヤツだって、僕は知っていた。



  12. 13 : : 2016/09/02(金) 03:44:35



    苗木「僕は君が舞園さんを殺した事を許すつもりは無い」

    桑田「………」

    苗木「でも、もし全部が終わって全員が日常に帰れてた時、彼女が笑っていたら……舞園さんとあと1人を含めた4人で修学旅行回ろうね」

    桑田「ああ…、でも夜の醍醐味コイバナは終わったけどな」

    苗木「…だね」

    桑田「でもよ、皆で帰るなんて出来んのかよ…少なくとも」

    バツが悪そうにしながら彼は横目で舞園さんの方を見た。

    苗木「ある筈だよ。桑田君のハンドアウトを見る限りだと元に戻す技術はあるみたいだし」

    僕のハンドアウトは話せないが、そういう技術がある事は桑田君のハンドアウトからでも十分推測できる内容だ。

    桑田「!!成る程な!つまり黒幕をタコ殴りにして、それを吐かせれば良いって事か!!」

    苗木「タコじゃなくてクマだけどね」

    桑田「あア!?オメーまでそんな事言うのかよ!」

    苗木「ふふ、だって────」


    そんな会話をしながら、僕らは笑った。


    また、油断したのだ。
















    ザクッ──!!!!!





    苗木「えっ?」




    桑田君が首から赤い水を流す噴水のように、鮮血を撒き散らしながらその場に倒れる。


    襲撃者の姿を見るために倒れた桑田君から目線を上げた。


    其処には手にサバイバルナイフを持ち血のシャワーを浴びる少女の姿があった。


    人形の姿があった。


    苗木「舞…園さん?」


    舞園「フフフッ。フフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフッ」


    苗木「何で…?何でだよ」


    舞園「フフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフッ アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」


    ソレは僕の質問に答えず、ただ狂った様に笑う。


    苗木「あ…あぁ」


    最悪だ。最悪


    苗木「僕は…最低だ」


    何故気付かなかった。


    何故彼女に何の変化が無い事で安堵した。


    髪を切られた筈だろ。




    『戦刃「桃色の紐に気を付けて」』


    戦刃さんの言葉も行動も、これで全て合点がいく。


    あれは舞園さんのリボンの事だったんだ。


    彼女は、僕と出会った時から人形だった。







    苗木「ウワァァァぁあああああ!!!!!!!!!!!!!!!!」ダッ‼︎

    怖いから叫ぶのでは無い。叫ばないと、感情を放出しないと、壊れ、人間では無くなってしまいそうだから僕は叫んだ。

    そして彼女達に背を向けて逃げ出した。

    桑田「───」

    2つの人形の前から逃げ出した。

    幸いにも、2人が僕を追ってくる事は無かった。


  13. 14 : : 2016/09/23(金) 01:24:20


    ◇◆◇


    【ショクドウ】



    大神「………」


    大神さくらは血眼で探していた親友と再会した。


    朝日奈「────」


    最悪な状況で。


    大神「朝日奈…?」

    朝日奈「────(さくらちゃん…)

    立ち尽くす少女は何も言葉を返さず。ただそこに立っていた。

    生気の宿っていない抜け殻の様に。

    壁に立てかけられたぬいぐるみの様に。

    葉隠「呼び掛けても無駄だべ。朝日奈(それ)は俺の人形だ」

    葉隠の言葉を聞き、大神は全てを理解した。

    親友は、人形にされ(殺され、奪われ)たという事を。

    大神「!!この…外道がぁぁァァァァ!!!!!!!!!!!!!!」

    葉隠「朝日奈っち!!!俺の命令は唯一つだ!!単純でとってもシンプルなものだ…!!【オーガを殺せ】!!!!!!!!!!!」

    朝日奈「─────(いやだ、イヤだ!嫌!!)」ギュインッ

    朝日奈の首がグルリと大神の方へ向く。

    葉隠「【綿】を90%も込めたんだ。単純な命令しかできねーべ」

    朝日奈「────(やめて、動かないで!)」ダッ!!

    鍛えれた脚力に人形としての力が加わり、朝日奈は二歩で大神の元へ辿り着く。

    大神(速い!!)

    朝日奈「────(逃げて…さくらちゃん)」ブンッ

    左脚を軸に放たれた鋭い回し蹴り。

    大神「ハァッ!!」

    大神はそれを躱すのでは無く腕で受け止める。

    ゴスッ!!

    大神(ぐッ、重い。だが受け止め────なっ!?)

    グルンッ

    振り抜かれた右脚が伸び、(しな)り、大神に巻き付く。

    大神「なっ!!!」

    朝日奈「───────(反撃して良いから、早く!)」ブンッ

    そして距離の取れない状況でのラッシュ

    ダダダダダダ‼︎‼︎‼︎

    大神「はぁぁぁぁ!!!」

    大神は反撃をせず、受け流す事に全神経を注ぎ込む。

    ─ドスッ‼︎─ザシュッ‼︎

    幾つか身体を掠めるが、それは致命傷にはならない。

    大神(見えた!)

    ガシッ

    大神が朝日奈の両手首を掴む。

    朝日奈「──────(早く反撃を!)

    ギュルン

    巻き付けていた右脚を元の状態に戻し、軸にしていた左脚を曲げ、跳ぶ!

    朝日奈の膝蹴りが大神の顔面に迫る。

    大神「くッ!」パッ

    タッ!

    手を離し身体を反らすと同時にバックステップをする事で膝蹴りを避け、大神は朝日奈から距離をとった。

    大神「ハァ…ハァ…」

    葉隠「流石のオーガでも強化された朝日奈っちには手も足も出ねぇな」

    大神(我には朝日奈を傷つける事など出来ぬ。かといって朝日奈の攻撃を掻い潜りながら葉隠を討つのも不可能に近い)

    大神は手も足も出ないわけでは無く。手が出せなかった。

    それはその人形が朝日奈葵である為。

    それを差し引いても、再生する人形相手ではジリ貧だ。

    大神「……止むを得ん」ダッ

    大神は食堂を飛び出し、校舎の方へ走る。

    葉隠「逃げたぁ?!追え!朝日奈っち!」

    葉隠(殺せる!オーガを手駒に出来れば、俺の優勝は間違いねぇ!)タッ

    草履の葉隠は遅れて1人と1つの後を追った。


  14. 15 : : 2016/09/23(金) 01:25:42



    【コウシャロウカ】


    大神は巨大な柱を上手く使い、朝日奈と距離を取る様に立ち回る。

    大神「……む」

    朝日奈「」タッタッタッ

    朝日奈は追ってくるだけで攻撃はしてこない。

    大神(追えと言われたからか?)


    葉隠「はぁはぁ、朝日奈っち、さっさと倒しちま…はぁはぁ、殺れ!」

    朝日奈と大神の姿を遠くから捉えた葉隠が息を切らしながらそう言った。

    その距離10メートル強。

    朝日奈「────(また距離を取って!)」タッ

    追ってくるだけだった朝日奈が攻撃に行動を移行しようとする。

    大神「待ちくたびれたぞ、葉隠!!!!!」

    だが、大神は朝日奈では無く葉隠の方を見ていた。

    大神が食堂を飛び出したのは、逃げる為ではなく。朝日奈と葉隠の距離を離すため。

    大神「はァァ!!!!!!」


    バゴォオオオオン!!


    鋭い蹴りを柱に向ける。それは蹴りと表現するのが些か躊躇われる程に非現実的で。

    大神「うぉォオオオ!!!」

    人類最強の蹴りは2発で巨大な柱を粉々に、まるで爆散するかの様に砕いた。

    ドゴォオオオオン!!!!!!!

    その影響で粉塵が辺りを包み、朝日奈と大神の視界を奪い。葉隠は2人の姿を見失う。

    葉隠「ハァァァ!?!?ほんっとやる事が人外だべ!存在がオカルトだべ!!!!!!」

    それは当然朝日奈が大神を、大神が朝日奈を見失うということ。




    大神(これを待っていた!!!!)

    だが、大神は葉隠を見失ってはいなかった。

    大神(葉隠の居た方角は覚えている。声も聞こえる。後は駆けるだけ)ダッ‼︎

    大神が頼ったのは視覚ではなく聴覚。

    ビュオンッ!!!

    粉塵の中を駆け抜け、超高校級の格闘家は葉隠との距離を詰めた。

    大神(一撃だ!!!!一撃で決める!!!!!)


    人類最強の拳が葉隠に向け、振り抜かれる───


    大神「うおおおおおおお!!!!!!!!!」

    葉隠「ひ、ひぇえええええ!!!!!!」


    ───が、その拳は葉隠に届く事は無かった。


    ザクッッッ!!!!!!


    大神「ガァっ!!!」ガクッ

    大神は血を吐きながら膝を床につける。

    葉隠「…えっ、俺、生きてる?」

    大神「朝…日奈……っ」

    朝日奈葵の右腕が、大神さくらの腹部を貫いていた。

    十数メートル離れた位置から右腕を異形化させ(伸ばし)て。

    葉隠「ハッ、ははっハハハッ!!…ふぅ……死ぬかと思った。良くやった朝日奈っち。早くトドメを刺すべ!!」

    グラスに注がれるワインの様にドクドクと大神の腹部から流れる血を見て、勝利の味に酔った葉隠は安堵のため息を漏らした後、人形にそう指示した。

    朝日奈「───」

    人形は大神の元へ近付くと動きを止め、静かに大神の事を見下ろした。

    葉隠「何止まってるべ。早くオーガを殺せ」

    朝日奈「───」

    大神「……朝日奈よ。安心しろ我はお前を責めぬ。この状況を招いたのは我の実力不足だ」

    朝日奈「──────(ごめん…ごめんね……)」ポロポロ

    葉隠「な、何をやってるべ!!早くトドメを!!!!!!!」

    大神「謝らなくてよい…。寧ろ謝るのは我の方だ、守れなくてすまなかった……」

    朝日奈「────(さくらちゃん……)」ポロポロ

    涙を流す人形はそれに対する返事をすること無く、機械的に左腕を振るい。


    ザシュッ!!


    大神さくらを殺した。



    ーーーーーーーーーー


    『オオガミサクラさん』

    『貴女には人形の声が聴こえます』


    ーーーーーーーーーー


  15. 16 : : 2016/09/23(金) 01:27:20


    ◇◆◇


    不二咲と大和田は転送直後早々に合流した。

    不二咲「ねぇ、大和田君。皆、大丈夫だよね…。殺し合いなんかしないよね…」

    大和田「殺し合い?ンなもんするわけねぇだろ、あんなわけ分かんねェこと言われただけでよ。俺達も俺達以外もな」

    不二咲の不安を一蹴するように大和田は言った。

    不二咲「うん。僕もだよ、きっとみんなだってそうに決まって──」


    そんな希望を掻き消すように。


    「ウワァァァぁあああああ!!!!!!!!!!!!!!!!」


    少年の叫び声が二人に届いた。


    不二咲「この声…苗木君だ!」

    大和田「チッ!行くぞ不二咲!」タッ

    不二咲「で、でも!」

    大和田「叫び声がしてるって事は何か合ったって事と同時にまだ生きてるって事だ、ほら早くしろ!」

    不二咲「うん、分かったよ!」タッ




    【ロウカ】


    不二咲「声も聞こえないし、苗木君も居ないね」

    大和田「走ってた方が俺達の方じゃ無かっただけだろ」

    不二咲「うん。そうみたいだね、でも彼処に桑田君と舞園さんと江ノ島さんがいるよ」

    大和田「んあ、本当だな」

    不二咲「桑田君、舞園さん、江ノ島さん。良かったぁ無事だったんだね」

    パタパタと足音をたてながら不二咲はその3人へ近付く。

    江ノ島「やっほやっほー、アンタらも無事だった?」

    手を振りながら江ノ島はそれを迎えた。

    不二咲「うん大丈夫だよ。ね?大和────」

    同意を求めるために大和田へ視線を向けた不二咲が見たものは。


    大和田「不二咲ッ!!!!!」


    血相を変えて不二咲に向け、右手を突き出す大和田。


    ドンッ


    不二咲「えっ?」


    その腕は不二咲を突き飛ばした直後。



    ゴキィッッ!!!!!



    桑田「────」

    桑田の膝と肘に挟まれるようにして砕かれた。


    大和田「っアァアアッッ!!!!!」


    不二咲「な、何で?何で桑田君」

    青ざめた表情で不二咲は桑田の方を見る。

    江ノ島「それはね。コイツは私の、『人形』だから」

    桑田への質問に江ノ島が答えた。

    私が殺したから(『人形』だから)と。

    大和田「逃げ…るぞ…!」

    不二咲「う、うん!」

    踵を返し、来た道へと引き返す。

    江ノ島(ぷぷぷ。逃がさないけど、逃げる事は許してあげる。足掻いて足掻いて死なせてあげる)

    江ノ島は2人の背中を見ながら紅い三日月を作った。

  16. 17 : : 2016/09/23(金) 01:29:29


    ◇◆◇



    大和田は脚の遅い不二咲にペースを合わせる為、距離を詰められ桑田の痛撃を受け、気まぐれにより見逃される。

    それの繰り返し。


    追いかけっこ。


    江ノ島「飽きたから、そろそろ殺そっか」


    気まぐれが終わった時二人は遂に追い詰められた。





    【コウイシツマエ】



    江ノ島「逃げ場は無いよ」

    江ノ島「あっ、全裸で盆踊り踊るんなら見逃してあげるかもー!」


    更衣室の前で耳を塞ぎながら仁王立ちをする江ノ島が更衣室の扉に向け、そう言った。


    ーーーーーーー


    【ダンシコウイシツ】


    大和田「ケッ、そんな気なんざ微塵も無いくせによく言うぜ」

    不二咲「お、大和田君、大丈夫?」

    大和田「なわけねェだろうが」

    腕を抑えながら大和田は言う。

    隠れては居るが生々しい痣が学ランの下に刻まれていた。

    不二咲「ごめん…」

    大和田「謝る事じゃねえよ」

    不二咲「そもそも、こんな風に追い詰められたのも…僕が足を引っ張ったから…」

    顔を伏せながら、今にも泣きそうな顔で不二咲は言った。

    大和田「追い詰められた?ちげぇよ。この状況を打開する方法なら、1つある」

    不二咲「……なに?」

    少し顔色を明るくした不二咲へ、大和田が打開策を告げる。


    大和田「お前が俺を殺すんだ」


    希望など無い打開策を。








    不二咲「え!?…出来ない…そんな事出来ないよ!!」

    両手を前に突き出し、顔を左右に振りながら不二咲は大和田の提案を拒む。

    大和田「甘ったれた事言ってんじゃねぇ!!殺らなきゃ殺られるんだよ!!」

    不二咲「何で…大和田君が僕を殺すって選択肢だってあるのに……!」

    大和田「お前じゃ人形になっても弱えだろ」

    不二咲「……でも」

    大和田「男にはな、やらなきゃいけねぇー時ってのがあるんだよ!!俺にとっても、お前にとっても今がその時だ!!」

    不二咲「…え?」

    大和田「男見せろや!!不二咲千尋ッッ!!!!」

    不二咲「!気付いて?!」

    大和田「あたりめーだろ。ダチだろーが」ニィッ

    不二咲「お、大和田君…」ポロポロ

    大和田「…なーに、気にすんな。俺のハンドアウトは…[俺を殺したヤツが優勝した場合、元の世界に帰れる]ってやつだ…気兼ねなく殺れ」

    不二咲「無理だよ……。それでも、だって友達だもん……」ポロポロ

    大和田「泣くな!!」

    不二咲「…ひっく…、だって…」ポロポロ

    大和田「だっても何もあるか!泣いたって何も解決しねぇんだ!お前は壁にぶち当たるたびに無理だと座り込んで泣くのか!アァン!?」

    大和田「強くなるんだろーが!!」

    不二咲「!」

    大和田「これで、頭を殴れば俺は間違いなく死ぬ」

    そう言いながら大和田はダンベルを不二咲に渡す。


    ダァン!


    不二咲は差し出されたそれを地面に落とす。

    大和田「はぁ?」

    不二咲「無理…だよ」

    不二咲の腕を止めるのは重いではなく思い。

    頭では理解していた。これしか策が無いと。

    だが思い出が枷となり、不二咲は動けずにいた。



    江ノ島『ねー!まだー!!!そろそろ強行突破しちゃうよー!!!』



    大和田「早くしろ!時間がねえ!」

    そう言いながら大和田は頭を低くし、こうべを垂れる。


    不二咲「はぁ…はぁ…」

    だが、不二咲は息を荒げるだけで、動かない。

    大和田「テメーは殺すのが怖いだけだろ。俺が死ぬ事じゃなくて、殺人を犯して汚れた自分を見たくねぇだけだろ」

    不二咲「…ち、違う。僕は弱いから…だから!」

    大和田「あぁん?!弱いってのはなァ!やらなくて良い理由じゃねぇんだよ!!」

    不二咲「……っ」

    大和田「男、女関係ねぇんだ!!同じ所で足踏みしか出来ない奴は弱いやつですらねぇ!!前だって横だって、後ろだって良い。踏み出せ!!!!」

    不二咲「……踏み出す…。僕は、僕は…」

    不二咲は震える手でダンベルを手に取り、頭上に構える。

    大和田「殺させて、すまねぇな不二咲」

    不二咲「ごめんね…大和田君」ブンッ


    不二咲は、座り頭を低くした大和田の後頭部向け、頭上に掲げたダンベルを重力に従うようにしながら振るった。




    ゴスッ!!!!!!





    大和田(…誰かを守るために死ぬのは悪くねぇもんだ、それがダチなら尚更。なぁ兄貴……アンタはどんな気分だったんだ?)



    ーーーーーーーーーーー


    『オオワダモンドさん』

    『貴方は人形になった場合通常の人形より強い』


    ーーーーーーーーーーー








    【綿】50%

    【魂】50%



    [SUTURE]




  17. 18 : : 2016/09/23(金) 01:33:50


    【コウイシツマエ】


    江ノ島「遅い遅い遅い!!何やってんのアイツら………ん?」


    ドゴォッンッッ!!!


    男子更衣室の扉が蹴破られ。江ノ島の真横を通過した。

    江ノ島「っぶな」

    そして扉を失った更衣室の陰から2つの人影が現れる。

    不二咲「僕は…何てズルいんだ……」ポロポロ

    大和田「────」

    江ノ島が目にしたのは涙を流す不二咲と虚ろな目の大和田。

    江ノ島「あっははー!キタキタ!雑魚がトウモロコシ背負(しょ)ってきた!」

    それを見て江ノ島は理解し、歓喜する。

    大和田が不二咲の人形になった事を。

    不二咲千尋が大和田紋土を殺した事を。

    不二咲「江ノ島さん。君は何で嗤っているの?」

    江ノ島「だって、最っ高に絶望的で面白いじゃん!!友達を殺すなんてさ!!」

    江ノ島「ま。仕向けたのはアタシなんだけど、いやぁ!不二咲、小動物みたいなアンタにしちゃ殺るなァ!!」(デストローイ

    不二咲「………」

    江ノ島「それにしても大和田が死ぬんだ。アタシ逆だと思ってた、大方“女は傷つけられねぇ”とか硬派な事言って死んだんでしょ?ぷぷぷ〜キッモ」

    江ノ島は大和田を嗤い、吐き捨てるようにそう言った。

    不二咲「!!!…」チラッ

    それが不二咲の逆鱗に触れた。

    大和田「────」

    不二咲は大和田を一瞥した後、江ノ島を睨みつける。

    不二咲「そっか。良かった…、そう言ってもらえたら……殺す事に抵抗が無くなるよ」ギロッ

    江ノ島「あっれ?そんなキャラだっけ?てか、目やっばw人殺しの目じゃん!」

    不二咲「そうだね。君も、僕も人殺しだよ」

    不二咲「だから僕が君を殺すよ」

    江ノ島「へぇ。やってみなよ」


  18. 19 : : 2016/09/23(金) 01:34:23


    不二咲「大和田君。桑田君や舞園さんに気を付けつつ江ノ島さんを殺して」

    大和田「───」ダッ

    江ノ島「桑田ァ!大和田を私様に近付けんな!!」

    桑田「───」ダッ


    桑田は金属バッドを担ぐように持ち、大和田は拳を弓を引くように構える。


    桑田「───」ブンッ

    大和田「───」ゴウッ


    人形同士の激突。

    力と力の衝突。

    大和田の拳と、桑田の金属バッドが交差する。


    ────ベキンッッッ!!!!


    その末、桑田の持っていた金属バットがヘシ折れた。

    征したのは大和田の拳。



    江ノ島「ホワイ?アンタ【綿】何%込めた?ちなみに私は5%」

    不二咲「50%」

    江ノ島「10倍かよ。そりゃあ強い筈だパワーと直るスピードも桁違いってか。…もーっ、絶倫で早漏なんだからっ!キャッ下ネタ恥ずかしー!」(ぶりっ子

    不二咲(気をつけるべきは桑田君。舞園さんと江ノ島さんは二の次)

    江ノ島「無視かよ!」

    不二咲「大和田君!遠距離から攻撃されたら厄介だから桑田君を出来るだけ壊して!」

    バキッ‼︎バキッ‼︎バキッ‼︎

    一撃一撃が必殺の一撃である大和田の蹴りが桑田を壊していく。

    江ノ島「エッグっ」


    不二咲「5%なら再生まではそこそこ時間かかるはずだよね…大和田君!江ノ島さんを!」

    大和田「─────」ダッ

    再び、床を蹴るようにして大和田は江ノ島との距離を詰める。

    江ノ島「舞園!!!!」

    舞園「───」バッ

    名前を呼ばれた舞園が両手を広げ、江ノ島と大和田の間に立ち塞がる。

    不二咲「大和田君、倒して!!!!」

    大和田「───」ブオンッ!


    ドゴォンッ!!!


    江ノ島を庇うため間に移動した舞園は大和田の攻撃を直で受け、鈍い音と共に遥か後方まで吹き飛ぶ。

    江ノ島「………」


    江ノ島「あー、負け負け。サレンダーしますー!」

    両手を上に上げながら江ノ島は投了の意思を示した。

    不二咲「大和田君。トドメを」

    そんな意思など構わず、不二咲は大和田に江ノ島を殺すように告げた。

    大和田「───」スッ

    江ノ島「容赦なーい!死んじゃうー!」










    江ノ島「───なーんちゃって」



    ヒュンッ


    不二咲「えっ?」

    不二咲の視界の端に映ったのは高速で此方に向かってくる何か。

    不二咲(躱せな────)

    高速で此方に迫ってくる何か(投げられた金属バッドのグリップ)が不二咲の左腕と腹部捉える。


    ボギッッッ!!!!


    不二咲「ッあァっ!!」


    骨の砕ける音、内臓をグチャグチャに掻き混ぜられたような衝撃。

    不二咲はその場に倒れ込む。


    江ノ島「5%とか本気で信じてたの?70%だよ。バァカ」

    桑田「────」

    未だ外傷の残るように見える桑田と、完璧に投げられたグリップ。

    不二咲(ありえない…、そんなこと…直るのが速いからって……あ!)

    その謎はヘシ折られた筈の桑田の腕が直ってるのを見て不二咲の疑念が確信に変わる。

    不二咲「腕だけ……優先的に直した…?!」

    江ノ島「正解。そして今足も直った。桑田、行け」

    不二咲「くっ、大和田…君、僕を…守って」

    大和田「───」ダッ

    大和田は不二咲の元へ戻り、桑田の方へ向く。


    不二咲「……え?」


    だが、其処には桑田の姿は無かった。

    付け加えるなら、舞園と江ノ島の姿も無い。


    不二咲「逃げ…た?」


    『江ノ島「桑田、行け」』


    不二咲「……殺れじゃ…なかったのは、そういう事……だったんだね…」

    周りの安全を確認した後、不二咲は更衣室前の床に仰向けで寝そべった。

    不二咲(江ノ島さんを殺すにはもっと人形がいる。強い人形が。そもそも僕が優勝するには皆を殺さないといけない)

    大和田「───」

    不二咲「いっぱい殺さないと…。ね、大和田君っ!」

    痛みに顔を歪めながらも、不二咲の声色は明るく。目は希望に満ち溢れていた。


  19. 20 : : 2017/04/02(日) 08:14:14




    ◇◆◇


    【ロウカ】


    戦刃「やあ葉隠君。殺しにきたよ」

    開口一番。葉隠の正面から現れた戦刃はそう告げる。

    葉隠「へっ、そんなんじゃビビんねー!」

    戦刃「へえ?どうして?」

    戦刃は分かっていて質問した。

    葉隠「こっちには強化された大神っちと朝日奈っちが居るんだ。さっさと降参した方が良いんじゃねぇーのか?」

    戦刃は、まるで子供がナイフを持っただけで強くなったと勘違いするかのようだと思った。

    戦刃「何で?何で降参しないといけないの?」

    葉隠「勝てねぇからだべ。無理する事はねぇだろ?さっさと俺の駒になってくれよ」




    戦刃「良い事を教えてあげる」



    葉隠「ん?なんだべ」



    戦刃「馬鹿の扱う象じゃ私には勝てない」
    タッ


    そう言うと戦刃は来た道を引き返すように駆け出した。


    葉隠「逃げたぁ!?ま、待て!」タッ



    戦刃(ほら。馬鹿だから追いかけて来る。ようこそ、私の蜘蛛の巣の中へ)




    葉隠と距離を取りながら、戦刃は自分に語りかける。

    戦刃「ああ、そうだね。うん。何故だろう、少し楽しみでもあったんだよ大神さんとの戦い。殺し合い」

    戦刃「だからかな、葉隠君が朝日奈さんと大神さんを殺しちゃった事に殺意が芽生えちゃってるんだ」

    正確には葉隠がクラスメイトを殺し、【綿】を詰めた(道具にした)事についての憤りなのだが、戦刃は其処まで自分の事を理解出来ていない。

    戦刃「安心して大神さん、朝日奈さん。貴女達の無念は私が晴らしてあげる。葉隠君を絶望させてあげる」

    戦刃むくろは自分に言い聞かせるようにそう呟いた。

  20. 21 : : 2017/04/02(日) 08:15:16


    ◇◆◇


    葉隠は足の速い大神を先に走らせ、自身は朝日奈と並走していた。

    葉隠(これなら戦刃っちが、いきなり振り返ってもオーガが盾になる!)

    葉隠「よし!いけいけ!殺せー!!」

    葉隠が大神に向けそう命令するが先行する大神が体勢を崩す。

    葉隠「ああ!?どういうことだ!?」

    葉隠が駆け寄ると、ピアノ線によって大神の右脚に傷が付けられた事が分かる。

    葉隠「へっ、時間稼ぎだな。どうせ繋がる!」

    葉隠「戦刃っちを人形にすれば、もう敵無しだ。絶対逃がさねぇ!!」

    葉隠は朝日奈と大神の後を追うように再び駆け出した。

    そして。

    葉隠(あと少しだ!あと少しで捕まえ──)


    コロコロ…


    葉隠が口角を緩ませたその時。

    戦刃の向かった曲がり角の方から野球ボールほどの何かが転がってくる。

    葉隠「な、何だべ!?おい!二人共俺を守れ!!」

    大神「───」

    朝日奈「───」

    葉隠は立ちはだかる二人の隙間から改めてその球体を見る。

    何かから垂れた紐についた火を見て葉隠は直感する。

    葉隠「爆弾!?!?危ねぇ!!!!!!」

    だが、その直感は7割で外れる。

    火は導火線を燃やし尽くした後、何も起こらず消えた。

    葉隠「はぁ!?!?!?」

    曲がり角を曲がった先に戦刃の姿は無かった。

    葉隠「見失った…、け、けど!この辺に居るはず!きっと教室に隠れ──」


    カランッ


    その時。見計らったかの様に教室の中から音が聞こえた。


    葉隠「──ほらな!音がしたって事は、戦刃っちは中にいるんだな」

    葉隠「待ち伏せすっか…」



    ここで葉隠は思い出す。

    戦刃むくろの行動の全てが時間稼ぎだという事を。



    葉隠「ああ、もうじれってぇ、2人とも!部屋に突っ込め!!」

    葉隠は教室の扉から離れた場所で指示を出す。

    葉隠(危険な場所には極力近寄りたくないねぇからな)

    命令を聞き、2つの人形が蹴破るようにして部屋に入った。


    その直後不快な臭いが葉隠の鼻腔に届く。

    葉隠「ん…何だこの臭い」

    臭いの疑問は一瞬で解かれた。

    戦刃「人形はガスが充満している部屋でも突っ込んで来るんだね。検証通り」

    背後に立っていた戦刃によって。

    葉隠「えっ…戦刃っち、何で部屋の外に居んだ?」





    ドガァァーーーーーンッッッッ!!!!!!!




    爆音が部屋の中から響き、後から遅れてやってきた熱風が2人の皮膚をチリチリと痛める。

    葉隠「へ?」

    戦刃「だって、ガスの満ちた部屋にあり合わせのもので作った起爆装置を置いてあるんだから、普通中には居ないよ」

    戦刃「逆に何で居ると思ったの?」

    葉隠「だって、お、音が!!」

    戦刃「ああ、単純だよ。張った紐を切れば部屋の中で音がする仕掛けを作っただけ」

    葉隠「で、でもよ…」

    言葉を詰まらせながらも、会話を成立しようとさせる。

    戦刃「あ、2人が再生するのを待ってる?」

    葉隠「!!な、何故それを…」

    戦刃「切り傷と違って焼けてるんだから、直るまでに時間が掛かると思うよ」

    手に持ったナイフを葉隠に向ける。

    葉隠「勘弁してくれ!!頼む!そ、そうだ今度ただで占ってやる!!」

    戦刃「……」

    葉隠「さ、3回まで無料にする!!なっ?良いだろ!俺、死にたくねーんだ!」

    クラスメイトを殺した事を棚に上げ、懇願する葉隠に戦刃は形容し難い不快感を覚えた。

    戦刃「…言いたい事はそれだけ?じゃあ、死のうか」

    葉隠「ひぇっ!ま、待っ」

    戦刃「待たない。さよなら」


    ザクッ!!



    ーーーーーーーーーー


    『イクサバムクロさん』

    『貴女が優勝した場合。貴女が背中を傷付けた相手は元の世界には帰れない』



    ーーーーーーーーーー


    顎からナイフを突き刺し、脳まで到達した後引き抜く。


    戦刃「2度と会う事はないね」





    戦刃「せめて、盾子ちゃんと苗木君は【魂】100%(人間)の状態で現実に帰すように頑張ろう」




    【魂】53%
    【綿】47%



    [SUTURE]

  21. 22 : : 2017/04/02(日) 08:30:07


    ◇◆◇


    【ロウカ】


    タッタッタッ…

    山田「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…」

    山田一二三は逃げていた。

    セレス「………」

    身体の至る所から血を流し、赤いドレスに衣装替えをして、いつ死んでもおかしく無いセレスを背負いながら。

    江ノ島「山田、アンタ結構動けるタイプのデブだったんだー」タッタッタッ

    舞園「────」タッタッタッ

    後ろから追ってくるのは舞園と江ノ島。

    山田「セレスティア・ルーデンベルク殿!まだ無事ですかな?!」

    セレス「…ええ……、山田君、前を…」

    山田「む?…なっ!?」

    桑田「────」

    正面に、江ノ島盾子の傀儡である桑田が居るのを見て山田は足を止めた。

    足を止めた理由は2つ。

    1つ目は単純に挟まれたから。

    2つ目は娯楽室が直ぐそこにあったから。

    山田(挟み撃ちにあって、2方向から攻撃されるよりは幾分かマシ…!)

    ダンッ!

    蹴破るように娯楽室の扉を開き、中に入る。

    江ノ島「あー、ストップ、もう追わなくて良いよ」

    舞園「────」ピタッ

    桑田「────」ピタッ

    江ノ島「ぷぷ、あの2人は一体どんな絶望的なドラマを見せてくれるんだろうね」ジュルッ


    江ノ島盾子は垂れる涎を拭きながら、静かに笑った。


    【娯楽室】


    セレス「私はもう、助からない……でしょうね……」

    山田の背中から降ろされ娯楽室のソファーで横になったセレスは、苦痛に顔を歪ませながらそう言った。

    山田「何を言いますか!まだ喋る余裕があるのです!適正な処置を施せば!」

    セレス「江ノ島さん、達を……掻い潜って?不可能ですわ」

    セレス「残された…選択肢は……1つ。貴方が、私を…殺す。それだけ…」

    山田「で、出来ませんぞ!!セレスティア・ルーデンベルク殿を殺すなんて…!!」

    セレス「このまま……では、私は江ノ島さんの……人形になって……しまいます」

    セレス「私に、牙を向けた……相手の手駒になるなんて、死んでも……ゴメンですわ」

    山田「ですが!!死んだら元も子も…!!」

    セレス「そう…ですね。でも貴方になら…山田君なら、死ぬのと同じくらい嫌な……だけなので、江ノ島さんよりは……マシでしょう」

    山田「…結局嫌な事には変わりませんぞ……」

    セレス「当たり前……でしょう。殺されるのですから……」

    未だポーカーフェイスを崩さず、弱々しくも笑う口元からは血が垂れていた。

    だが、その笑みを見るのが山田には辛くて仕方なかった。

    山田「……僕が殺さず、江ノ島盾子殿の手駒にされない方法が1つだけあります」

    山田はスクッと立ち上がるとセレスを改めて見つめた。

    セレス「それ…は?」

    山田「僕が江ノ島盾子殿を殺せば、セレスティア・ルーデンベルク殿は江ノ島盾子殿の人形に成らずに済みますぞ、そして保健室の道具を使えば…!」

    セレス「……無理ですわ。超高校級の……ギャンブラーとして、賭けても良い……」

    山田「無理かもしれませんし、無茶かもしれませんな。でも、男には退けない時がある。だから待ってて下さい」

    山田「不可能を可能にする。全ての始まりにして、終わりなるものの僕にそれが出来ないとでも?」

    セレス「……豚、いえ山田君」

    山田「何ですかな?セレスティア・ルーデンベルク殿」

    セレス「安広多恵子…で、良い…ですわ。私は……貴方に命を…賭けます。だから……負けるのは許しま……せんわ……」


    山田「はい。行ってきますぞ」


    山田一二三はセレスに見送られ、部屋を出た。

  22. 23 : : 2017/04/02(日) 08:30:53


    【ロウカ】


    江ノ島「あー、やっと出てきた。で?セレス殺した?」

    山田の姿を見た江ノ島は髪をいじるのを止め、山田の方を向く。

    山田「殺してなんか居ない!死ぬのは、江ノ島盾子殿!ただ1人だけ!!」ダッ

    山田(走れ!!ひたすら直線に!!!!)

    江ノ島「…桑田。豚をはたき落としてー」

    桑田「───」スッ

    桑田が硬式ボールを握り締め、振り被る。

    山田(僕は信じていますぞ────桑田怜恩殿のコントロールの良さを…!!)

    山田「はぁっ!」

    桑田が硬球から手を離す直前、山田を身体を低くし、スライディングのような体勢になる。


    ビュオンッ!


    硬球は山田の頭上を激しい音と共に通り抜けた。

    山田「ビンゴ!!」

    江ノ島「あぁ?!豚のくせに何で躱せんのよ」

    山田(やはり、顔を狙って来た!桑田怜恩殿は雪合戦の時でも顔を狙い撃ちして来たのを…僕は忘れていない!)

    暴走してない以上、【魂】は必ず桑田の中に残っている。

    山田はこれを逆手に取った。

    ズルッ

    流した汗は床を滑る潤滑油となり。

    ドンッ!

    山田の巨体はボーリングの玉の様に桑田へぶつかる。

    桑田「───」

    体勢のよろけた桑田を無視し、滑る勢いを使い山田は立ち上がり、また駆け出す。

    江ノ島「なら、包丁を持った舞園はどう?」

    舞園「───」

    山田「うおおおおおお!!」

    山田は足を止めようとせず、寧ろ加速した。

    舞園「───」

    そして包丁は山田の腹部をとらえる。


    グサッ!


    江ノ島「はい。お終──」

    山田「止まってたまるかぁぁぁ!!!!」

    江ノ島「!!」

    腹部に包丁が刺さった状態で、舞園を突き飛ばし山田は走り続ける。

    江ノ島「血が…流れていない?」

    山田(いける!いける!)

    山田を守ったのは腹部に仕込んでいた娯楽室の雑誌。

    山田「江ノ島盾子殿……お覚悟を!!!」

    山田は拳を振り上げ、江ノ島に迫る

    江ノ島はそれを見て、小さくため息を吐いた後。

    江ノ島「人形遊びは終っわり〜っ!」

    そう呟く共にハイキックを山田のこめかみへ向け振り抜いた。


    ゴスッ!!


    山田「ガッ!!」

    山田はその場で膝をつき、痛みに震える。

    江ノ島「私の元まで辿り着けば何とかなると思ってた?」

    江ノ島「残念でした。私は超高校級の軍人の妹だぜ?」

    山田「うっうう…」

    蹴られた左のこめかみに手を当てながら、唸り声をあげる。

    江ノ島「辿り着いた希望が一転した今の気持ちはどう?絶望した?」

    山田「僕は…僕は助けるんだ…、安広多恵子殿を」

    膝はガクガクと震え、視界がボヤける中でも山田は立ち上がる。

    江ノ島「…あっそう。じゃあ───」

    江ノ島が追撃をしようとした直後。

    パチパチパチパチ

    山田(拍手…?)

    眼鏡が外れ焦点の合わない視界で、音の主に目を向ける。

    石丸「山田君、僕は…感動した!!!」

    廊下の向こうから石丸清多夏が涙を流し、手を叩きながら現れた。

  23. 24 : : 2017/04/02(日) 08:36:23



    江ノ島「うわぁ、熱いのが来た。地球温暖化が進むから止めてくんない?心臓動かすの」

    石丸「ハッハッハッ、面白い事を言うではないか!心臓を止めたら死んでしまうぞ !」

    江ノ島「だーかーら、そう言ってんの」

    石丸「何!?危ないでは無いか!」

    江ノ島「……やっぱ、アンタが1番苦手だわ」

    江ノ島「めんどーだなー、舞園ー」

    舞園「───」ダッ

    舞園が動きを封じる為に石丸を襲う。

    石丸「そうか…。やはり、これはドッキリでは無かったのだな」スッ

    ダーン‼︎‼︎

    組みつこうとする舞園の腕を取り、逆に組み伏せる。

    江ノ島「…へぇ、やるじゃん。喧嘩とかした事なさそうないのに」

    石丸「いや、僕は殴り合いの喧嘩をした事は一度も無い。だが、鍛えてはいるぞ!健全な魂は健全なる肉体と健全なる精神からだと聞いたからな!」

    江ノ島「あー、多分苗木だろうな」

    石丸「そうだ!苗木先生に教えてもらったぞ!覚悟しろ江ノ島君!!」

    江ノ島「………」ニヤァ

    江ノ島盾子は口を三日月のように歪め、両手を目に当てた後。

    江ノ島「うぇーん。怖いよー。助けてー、……やーすひーろさーん!」

    わざとらしく泣き叫んだ。

    山田「…え?」

    セレス「────」ヒュッ

    その声と共に現れたセレスが、舞園を組み伏せていた石丸を蹴り飛ばす。

    石丸「ガハッ!…な、何をする!」

    山田「そ、そんな…」

    血に濡れ、赤いドレスに衣装替えしたセレスの服は、元の黒いゴスロリ服に戻っていた────直っていた。

    山田「嘘だ…嘘だぁッ…」

    江ノ島「残念!現実です!!…ねぇ、誰を助けるって言ってたっけ?もう一度言ってくれない?」

    山田「あ…あ゛あ゛あ゛あ゛
    あ゛ああああああ」

    江ノ島「ブーブー鳴くなよ。耳障りだから」

    江ノ島「あっ、でもその絶望に歪んだ顔は良い!凄く良い!」

    自分の体を抱くようにしながら江ノ島は身体を興奮で震わせる。

    江ノ島「だから、殺すわ。桑田、サクッと宜しく」

    桑田「───」

    山田(…また、何とかするしか…)

    江ノ島「あ、もしかしてまた何とか出来ると思ってる?希望持たせる為に手加減してあげてた事も分からないの?」

    ヒュウッ

    山田「えっ?」

    ゴスッ!!!

    鈍い音がした。

    ノーモーションで投げられたボールが山田の頭部を捉えた音だ。

    山田(振り、かぶら…なくても、この速さ……?)

    江ノ島「桑田。終わらせろ」

    桑田「───」


    ドスッ!!


    意識が混濁する山田の胸部を桑田が折れたバットで貫く。

    山田「え…がッ……ぁぁ」

    江ノ島「豚バラ串の完ッ成!!」

    山田「ッた、あ…い……」

    山田は膝をつき、折れたバットの突き刺さった胸部を抑えながら震えた。

    江ノ島「あー、まだ生きてるー♡しぶとーい!女の涙で意識取り戻すタイプだーっ!」

    江ノ島「そんなオメーには!守ろうとしていた女に殺されるって絶望をやるよ!!セレス!」

    セレス「───」

    セレスがゴスロリのスカートを揺らしながらゆらりと近付く。

    山田(…安広多恵子殿に殺されるなら…この山田一二三。本望です…ぞ)

    山田は覚悟を決め、安らかな顔をし、目を閉じた。




  24. 25 : : 2017/04/02(日) 08:37:12












    江ノ島「やっぱ嘘。桑田、殺せ」

    桑田「───」


    ベキッ!!


    山田一二三は桑田怜恩によって頭蓋を踏み砕かれ、死んだ。

    江ノ島「あ、ごっめーん。満足気な顔してたから、口が滑って、桑田に殺させちゃった」

    石丸「山田君!!!!」ダッ

    石丸は山田の死体に駆け寄る。

    江ノ島「無駄ですね。明らかに死んでますから、次は貴方の番です」(メガネ

    石丸「僕は死ぬわけにはいかない!学園のどこかにいる兄弟と合流しなくてはいけないのだからな!」

    江ノ島「…ああ、大和田なら死んだよ。不二咲に殺されて」(ギザ

    石丸「う、嘘だ!!兄弟が死ぬわけ!それに不二咲君が殺すなんて考えられない!!」

    江ノ島「本当だってば。ま、確認する手段も無いかー。だから」

    江ノ島「さ・よ・な・ら」

    石丸「僕は負けなーー

    ガシッ!

    山田「────」

    石丸「や、山田…君?」

    既に頭部の直った山田は江ノ島の人形となり、石丸の足を掴む。

    舞園「───」

    桑田「───」

    セレス「───」

    山田「───」


    石丸「なッ…」


    4つの人形が一斉に石丸に襲い掛かる。


    石丸「ぼ、僕は!!僕は信じない!!!!」

    江ノ島「信じなくて良いから、死んで」

    江ノ島「あー、でも、兄弟のピンチなんだから。血よりも濃い繋がりなんだから、助けに来てくれる筈だよね───人形じゃなくて人間なら」

    石丸は4つの人形に囲まれ、抵抗する間もなく痛めつけられていく。

    石丸「ああああああああああああ!!!」

    江ノ島「良い。良い叫び声」

    石丸が幾ら叫ぼうとも。

    兄弟も助っ人も、誰1人として現れる事は無かった。


    ……………
    ……………………



    叫び声が止んだ時。

    石丸「───」

    そこに居たのは4つの人形に囲まれた、1つの人形。


  25. 27 : : 2017/07/27(木) 03:50:44



    ◇◆◇




    ──ドゴォォォン!!!


    轟音が聞こえる。違う階から。

    霧切(おそらく上の階…爆発?)

    轟音が止んだ後、霧切は改めて耳を澄まし、辺りに警戒しながら進む。

    そして見た。

    霧切「…!」

    膝を抱え、小さく震える苗木誠の姿を。





    ────────
    ──────
    ────




    【1F キョウシツ】


    霧切「戻ったわ」

    十神「!…勝手に出歩いたと思ったら、苗木を連れて来て、どういうつもりだ」

    霧切「別に。放っておくのもおかしな話でしょ」

    苗木「………」

    十神「転送されて直ぐではないんだ。コイツが人形でない確証は無いぞ」

    霧切「大丈夫。彼は人間よ」

    十神「何故そう言い切れる」

    霧切「頬に傷が残っているでしょう?人形の傷は直るけれど、人間の傷は短期間では治らないのよ」

    十神「成る程な」

    苗木「………」

    十神「おい!何があった」

    苗木「………」

    十神「チッ。話が通じんな」

    黙りこくる苗木を見て十神は小さく舌打ちをした。

    ジェノ「まこちんどったの?罪の意識で自殺するってなら私が殺すけど?」ゲラゲラ

    ジェノ「…殺って良い?」

    苗木「………」

    鋏の刃先を首筋に当てるが苗木は反応しない。

    十神「…霧切。苗木をジェノの目の届かない所に連れて行け」

    霧切「分かったわ」




    ──────
    ────
    ──




    【購買部】


    霧切「それで、何があったの?」

    苗木「………」

    霧切「黙ってても何も好転しないわ」

    苗木「………」

    霧切「………」スッ

    パァンっ

    彼女は僕の頬を叩いた。

    苗木「ッたぁっ!」

    霧切「目が覚めた?」

    苗木「………」

    別に眠って居たわけでも、記憶が抜け落ちてるわけでもない。

    憶えている。あの、最悪な結末を。

    苗木「夢なら…今まで眠っていただけなら、一体……どれだけ…楽なんだろうね」ポロポロ

    涙と共に弱音を吐く。

    霧切「それは違うわ」スッ

    それを聞いた霧切さんが僕の頰に手を当て、涙を拭う。

    霧切「きっと、大丈夫。ここには十神君や腐川さん。私もいるし、外には大神さんだっている」

    苗木「でも、今どうなってるかは…」

    霧切「ええ。戦ってるかもしれないわね。それが肉体的な意味か精神的かは分からないけれど」

    苗木「……」

    霧切「楽は苦の種。楽をすれば後で苦しくなるのよ。ちゃんと前を見なさい」

    苗木「うん…」

    霧切「もう一度聞くわ。目は覚めた?」

    苗木「大丈夫。ちゃんと、前が見えるよ」

    霧切「そう。良かったわ」

    苗木「それにしても、頬を叩かれたのは驚いたよ」

    霧切「あら、頭を叩いた方が良かったかしら?それとも裏拳?」

    苗木「そういう捉え方なの?」

    頭も頬も変わらないと思うが、彼女の手袋に施されている装飾からして裏拳だけは避けたいところだった。

    霧切「大丈夫でしょう?男の子なんだから」

    苗木「横暴だよ!男女平等!」

    霧切「ふぅん。苗木君は女性を殴るのね」

    苗木「あ、いや、そういう、ええ!?」

    霧切「落ち着いたかしら?」

    苗木「……うん」

  26. 28 : : 2017/07/27(木) 04:04:04




    ◇◆◇



    戦刃(足音…?)

    静かにナイフを取り出し、戦刃は音の震源の方へ向く。

    江ノ島「お姉ちゃん!!」

    暗闇の向こうから現れたのは実の妹の姿。

    肘の擦り傷を見て、戦刃は警戒を解く。

    戦刃「あ。盾子ちゃん!良かった…無事だったんだね」

    江ノ島「うん。私は無事だよ。お姉ちゃんも見た所無事そうだね」

    戦刃「うん。無傷だよ」

    江ノ島「後ろにいる3人は?」

    江ノ島の視線の先には朝日奈、葉隠、大神の3体。

    戦刃「ああ、警戒してるだけだよ」

    江ノ島「ほーん、あっそ」

    戦刃(人形とは…言わなくて良いよね)

    戦刃「盾子ちゃんは、他に誰かと出会わなかったの?」

    舞園「苗木君と色々あって別れた後、江ノ島さんと合流したんです。その後は誰にも出会わなかったです」

    話を変えるために振った話題に反応したのは、江ノ島の隣に居た舞園だった。

    戦刃「舞園さんも居たんだ」

    舞園「酷いですよ!最初から居ました!」

    江ノ島「まーまー、舞園。私様が隣にいたらアンタにピントが合わないの当然だろ?」

    舞園「当然では無いと思いますけど!?」

    戦刃(当然だよ)

    その光景を緩んだ表情で見つめる戦刃。

    江ノ島「…私、怖かった」ギュッ

    それを見た江ノ島は戦刃に近付き、抱きつく。

    戦刃(武器を隠し持っている様子も無いし…、まさか!やっと盾子ちゃんが私に甘えてくれるように!?!?舞園さんは流暢に喋ってるから【綿】は入ってないし!!)

    戦刃(そっか!盾子ちゃんは計画(コロシアイ学園生活)の為にみんなを救おうとしてるんだ!やっぱり盾子ちゃんは優しいなぁ)

    そう結論付けた戦刃は、優しく江ノ島を抱き

    戦刃「もう大丈夫だよ。お姉ちゃんがついて──」

    優しく微笑


    ────ザクッ!!!!!!!!!!!!!!!!


    鋭い痛みと共に鮮血が辺りに舞う。


    戦刃「え…?」

    それは死角から戦刃を襲った。

    朝日奈、大神、葉隠のいる背後では無く。


    舞園「────アハッ」


    舞園の身体を貫いて。戦刃むくろに届いた。

    江ノ島「あは、あははッ!残念過ぎでしょ本当!!!!!!!」

    戦刃「盾…子ちゃん…何で…?」

    床へ這いつくばり、口から血を吐いて、言葉は途切れ途切れになりながらも江ノ島へ疑問を投げかける。

    江ノ島「ドブみたいなお姉ちゃんの口の臭いを鉄の臭いにする為…かな?」

    おちょくる様な顔で江ノ島は言う。

    戦刃「理由になってないよ…、盾子…ちゃん」

    江ノ島「………」

    戦刃「ねえ…何か…言ってよ。ねぇ、私を見てよ」ポロポロ

    腹部に突き刺さった槍の痛みとは違う痛みで、戦刃は涙を流す。



    江ノ島「さよなら」



    江ノ島が指を鳴らすと、戦刃の頭は弾け飛んだ。













    戦刃「────」


    そして直った。

  27. 29 : : 2017/07/27(木) 04:18:29




    ◇◆◇



    【図書室】



    ──ドガァッ!!


    図書室の扉が蹴り破られた。

    大和田の豪脚によって。

    十神「フン。愚民は扉の開け方すら分からないのか」

    不二咲「はぁ…、はぁ、悪いけど殺させてもらうよ」

    大和田「───」

    十神「ハッ。殺したのか不二咲。だが手負いの状況で、たった1体の人形だけを持って俺に挑もうとは愚かだな」

    ジェノ「家庭的な殺人鬼もセットでーす!」

    不二咲「大和田君。…各個撃破」

    不二咲が静かにそう告げる。

    大和田「───」

    その声に呼応するように十神に向け駆け出す。

    十神「確かに速いが単純だ。なあ不二咲、合気道は知っているか?」

    左足を前に出し斜めに構えた状況でそう言う。

    不二咲「知ってるよ。日本の武道の1つ」

    十神「外面の知識じゃない。中身だ」

    突進を避けながら、十神は足をかける。


    バキッ!


    十神(ッ!?何て硬度だ…!だが!!)

    不二咲「中身を知らない?問題ないよ。技術は力でねじ伏せれば良いんだから」

    十神「ハァッ!」グイッ

    不二咲の言葉に耳を貸さず、十神は大和田の学ランの裾を掴み思いっきり下に引いた。


    バァンッッ!!!!!


    激しい音が教室に響く。

    大和田が床に叩きつけられる音だ。

    不二咲「!──立っ 十神「ジェノサイダー!!」

    ジェノ「はーい!夫婦の初めての共同殺業でぇす!!!」ザクッ‼︎

    鋏を大和田の両脚の腱に突き刺す。

    大和田「───」

    十神「これで再生出来ないだろ。直る場所に異物があるんだからな」

    不二咲「甘いよ…。大和田君、異形化」

    大和田の脚がうねり、膨らむ。

    ジェノ「おお!?」バッ

    バァンッ!!!

    急激に、まるで破裂するかの様に膨らんだ脚、ジェノは後方に跳ぶようにして躱す。


    鋏を持ったまま。


    ジェノ「オォイ!モンチー!脚パンパンに膨らましてんじゃねーぞ!アブねーだろ!膨らますのはその股の下にぶら下がってるトウモロコシだけにしとけっての!」

    手に持った鋏を突き付けながら、軽口をたたく。

    十神「何故鋏を持ったまま跳ぶ、刺しておけ」

    ジェノ「あーら、ホンット」

    自身の手に握った鋏を交互に見た後不思議そうにジェノサイダーは言う。

    不二咲「いや、抜いたのは正解だよ。だって抜いてなかったら大和田君の武器になってたから」

    ジェノ「白夜サマー、正解だってー」

    十神「チッ、相手の言う事を信じるな」

    ジェノ「ま、もっかいぶっ刺せば良いんだけどッ!!!」ダッ‼︎

    殺人鬼は人形に向け、駆ける。



  28. 30 : : 2017/07/27(木) 04:19:31



    ーーーーーーーーーー


    苗木「今の音は?!」

    霧切「何かあった様ね。私が見に行くわ」

    苗木「僕も行くよ」

    霧切「いや、貴方はまだ動かないほうが良いわ」

    苗木「で、でも!」

    霧切「殺し合いなんて、できないでしょう?」

    苗木「!」

    オブラートに包んでいた言葉を、膜を破る様にして僕にぶつけた。

    苗木「………」

    僕は何も言い返せなかった。

    霧切「……じゃあ行くわね」


    そう言って彼女は重厚な購買の扉をゆっくり開け、廊下を出た後静かに扉を閉めた。


    苗木「………くっ」

    無力な自分に嫌気が刺し歯嚙みする。

    苗木「僕は…僕は……!」




    ーーーーーーーー

  29. 31 : : 2017/07/27(木) 04:20:53



    【図書室】





    十神「………」

    不二咲「十神君は来ないんだ。大和田君の脚を引っ掛けた時に痛めた?」

    十神「黙れ。だから何だ?」

    不二咲「いや、カッコ悪いなって思ってさ」

    不二咲は、嘲るようにそう言う。

    ジェノ「萌えねぇが仕方ない、モンチーのお腹開通ッと!!」ブンッ

    ジェノは鋏を大和田の腹部目掛け突き刺す。

    大和田「───」ピタッ

    大和田はそれを躱さず、敢えて受けた。


    キィンッ‼︎


    ジェノ「硬ッ!白夜様ぁ、このモロコシカチンコチンですッ!」

    鋏の先は数センチ学ランの中に沈み、大和田の肌に突き刺さるも貫く事は無かった。

    不二咲「大和田君は人形だよ。それに異形化で硬くもなってる。当たり前だよ、大和田君、殺して」

    十神「ッ!ジェノ!鋏を離せ!!!!」

    ジェノ「んあ」

    ジェノはその声を聞き十神から大和田へ視線を戻す。

    大和田「───」ゴウッ

    ジェノ「おおっと!」タッ

    振るわれる拳を見て、ジェノは鋏を手放し、横に跳ぶようにしながら大和田の拳を避ける。

    ジェノ「あっぶね!今のは本当に危な!!」

    ジェノは大和田から距離を取る。

    大和田は不二咲から離れるのをためらい硬直状態が続く。

    それを破ったのは少女の声。

    霧切「あら、これは一体どういう状況かしら」




    不二咲「…ははっ」

    それを見て不二咲は弱々しく笑った。

    不二咲「霧切さんも居たんだ。良かった、一気に3人だ」

    加勢の登場で、不二咲の注意が逸れた一瞬を十神は見逃さない。

    十神「チミドロフィーバーを刻む時の様にしろ!ただし、肉は貫けない事を加味してだ!」

    不二咲「暗号?」

    ジェノ「ああ、成る程」

    十神「霧切…!!」

    霧切「分かっているわ」

    3人が同時に、別方向から大和田へ向かう。

    不二咲(各個撃破の穴を突いてきた…、でも、警戒するのは様子のオカシイ腐川さんだけで十分!!)

    不二咲「大和田君!腐川さんに集中して!でも、二人も僕の方へ通しちゃダメ!」


    大和田の脅威がジェノだけに傾いた瞬間。

    そこを霧切は見逃さなかった。


    大和田がジェノに向け拳を振るい、重心の傾いたタイミングで霧切は大和田の膝の裏に蹴りを入れる。



    大和田の体制が崩れる。

    十神「ハァッ!」

    十神が全身を使い突き飛ばし、強引に倒す。

    ドンッ!

    大和田「────」スカッ

    ジェノに本来届くはずだった拳は虚空を捉えた。

    ジェノ「オラオラオラオラ!!!!クジャクヤママユみたいにしてやるよ!!!!」ヒュンヒュンッ

    躱す事を優先しなくて良くなったジェノはスカートの下から大量の鋏を取り出し、放つ。

    大量の鋏が捉えたのは大和田自身では無く大和田の学ラン。

    それは床に突き刺さり、大和田を磔にする。

    不二咲「大和田君!!」

    十神「抑えろ!!」

    霧切「…」

    既に霧切さんは大和田君を取り抑えるために動いていた。

    体全体を使うようにして、磔の甘い右腕を捻る。

    硬いが身体の構造は人間と同じ。

    バキッ!

    嫌な音を立て、大和田君の腕はあられもない方向に曲がった。

    不二咲「折れても関係ないよ!大和田君、異ぎょ───」

    不二咲さんは、入り口付近で大和田君に指示をしていた。

    だから。僕の接近に気付かなかった。

    苗木「もう止めようよ」

    不二咲「!!」

    横に立っている僕を見て、不二咲さんは口を動かすのを止めた。

    不二咲「いつの間に…」

    苗木「たった今だよ。普通に近付いただけさ」




    十神「苗木!!殺せ!!!」

    十神君が大和田君を抑えた状態で叫ぶ。

    苗木「……」

    苗木「…出来ないよ」



    不二咲(あの時の僕と同じ…)



    不二咲「何で苗木君は僕を殺さないの?……それは、弱さだよ」

    苗木「弱いとか強いとかじゃないよ。だって…」


















    苗木「僕達、友達だろ?」

    『ダチだからな』

    不二咲「……あ…」

    不二咲「僕は…僕は何て事を…」ポロポロ

    必死に取り繕っていた何かが瓦解する。

    溢れ出す涙を掬う様に顔に両手を当てると膝から崩れ落ちた。

    不二咲「大和田君は、僕に生きてって言ったのに…それは友達を殺す事とは別なのに…」ポロポロ

    嗚咽を漏らしながら不二咲さんは言葉を紡ぐ。

    そこに、先程までのドロドロとした邪気は無かった。


  30. 32 : : 2017/07/27(木) 04:24:33




    霧切「…そう。大和田君は自らアナタに殺されたのね。アナタを守る為に」

    苗木「何でそんな事に…」

    不二咲「江ノ島さんに追い詰められたからだよ。…彼女はこのコロシアイを愉しんでる」

    不二咲「今はどうか分からないけど、僕と戦った時は舞園さんと桑田君を人形にしてたよ」

    舞園さんは僕と出会う前から人形で、桑田君を殺した。つまり

    苗木「江ノ島さんが舞園さんを殺した…犯人」















    「そう。その通り」

















    答える人間なんて居ない独り言に答えが返ってきた。

    ジュラルミン製の矢と共に。


    ──ザクッッ!!




  31. 33 : : 2017/07/27(木) 04:25:41


    振り向いた時には既に遅かった。

    それは不二咲さんの頭を射抜き、深々と突き刺さった。

    苗木「えっ…」

    ビチャッ!

    温かい液体が僕の顔にかかる。

    不二咲さんの血飛沫が舞い。

    2、3歩、狂ったように踊った後、力無く倒れた。








    「苗木、お前コレ何回目だよ。油断大敵」



    声の方へ目を向けるとそこには絶望が居た。



    舞園さやか、桑田怜恩、大和田紋土、石丸清多夏、山田一二三、セレスティア・ルーデンベルク、大神さくら、朝日奈葵、葉隠康広、戦刃むくろを引き連れた、江ノ島盾子がそこに居た。



    苗木「あ…ああ…」



    江ノ島「覚えとかなきゃ、ヒーローは遅れて、敵は突然やって来るってなぁ」



    遅れて理解する。不二咲さんが殺された事に。



    苗木「あ、ぁア…あああああああああアアア!!!!!!!!!!!!!!」



    この叫びが、コロシアイの引き金



    江ノ島「大和田、異形化。破裂」


    霧切「…!!」

    十神「ッ!!」

    ジェノ「アアッ?!」


    ドゴォッ!!


    大和田君が急激に膨らみ、取り押さえていた霧切さん、十神君、ジェノサイダーを跳ね飛ばし、3人は宙を舞う。

    江ノ島「残姉、アポ、的当てゲーム」

    跳ね飛ばされた事によって空中に浮かび、身動きの取れない3人をジュラルミン製の矢と、ナイフが襲う。


    ジェノ「ハァァ?ダーリン殺すのはアタシだっつーの!」

    ジェノが太股から取り出した鋏を矢とナイフに向け放つ。

    キィンっ!

    ジェノ「あり?」

    だが撃ち落とす事は出来ず、鋏のもたらした結果は若干の軌道を変えるのみ。

    ジェノ「…殺させるかっての!!!」グイッ

    ジェノが十神君を空中で突き飛ばし、霧切さんにぶつける。

    十神「なっ…」

    霧切「!」

    それにより、2人()軌道線上から逸れる。


    ジェノサイダーはそれの例外だった。


    ザクッザクッザクッ!!!


    矢が彼女の左胸と右腕を貫き、ナイフが脳天に突き刺さった。


    ボトリ、と音を立てながら床に落ちる。

    苗木「ふ、腐川さん!!!!!」

    霧切「苗木君!駆け寄っちゃだめ!」

    苗木「…っ……」ピタッ

    辺りに撒かれた血は、既に彼女に集まり始めていた。

    江ノ島「ぷぷー、殺人鬼が殺させないって矛盾してるしー」

    口元に手を当てながら江ノ島さんはクスクスと笑う。否、嘲笑う。

    十神「…何がおかしい」

    江ノ島「あれ?怒ってる?」

    江ノ島「守られた男が何か言ってるし、ウケる」

    苗木「何も、何も面白い事なんて無い!!」

    江ノ島「面白くなかったー?うんうん、嗜好を変える?」

    江ノ島「じゃ、いっちょあれやって見ますか」

    そう言うと同時に大神さんが動いた。

    霧切「──!?」

    ドゴォンッッ!!

    僕の前に居たはずの霧切さんが、激しい轟音と共に僕の真横を通り過ぎていった。

    苗木「なに…が」

    後ろを振り向くと、まるで叩きつけられた蛙の様に。霧切さんが壁を血で汚していた。

    苗木「霧切さんッ!!!」

    考えるより先に身体が動いた。僕は彼女に駆け寄り、名前を叫んだ。

    霧切「…」

    意識は無かったが近寄れば弱々しいが呼吸をして居るようだった。

    苗木(良かった。まだ息はある)

    ダンダンッ‼︎

    背後でそんな音がする。

    振り返ると江ノ島さんが悔しそうな表情で地団駄を踏んでいた。

    江ノ島「くぅーっ、ビリヤードしっぱーいっ。くやしぃ〜!!」

    苗木「ビリ…ヤード?」

    江ノ島「そ。ビリヤード。ルール知らない?まあ、棒で球打って球にぶつけて穴に入れるゲームだよ」

    江ノ島「へい!投げてこいよ苗木!!霧切投げてこいよ!」

    苗木「お、お前…!!まさか、霧切さんの事を球扱いしているのか!!!」

    江ノ島「そうそう。アンタも球だけど。そっちのターンだから早くしてよね。飽きちゃうから」

    江ノ島「へいへい!ピッチャービビってる!!」

    苗木「おま───」

    十神「挑発に乗るな!」グイッ

    江ノ島さんへ突っ込もうとした僕を十神君が、強引に引き、本棚の裏まで連れて行かれる。





    江ノ島「あ、相談?全然オッケー!逃げたら殺すけどね!」


  32. 34 : : 2017/07/27(木) 04:28:16



    十神「アイツはこの状況を楽しんでいる。こちらが絶対的不利な状況で茶化すような態度を取り、俺たちに絶望を味合わせようとしている。隙はそこにある」

    開口一番彼は言った。この状況を打開する可能性があると。

    苗木「江ノ島さんに…勝てるの?」

    十神「ここじゃ無理だ。どう足掻いても返り討ちにあう。一旦退かなければ勝機は無いだろう」

    苗木「退くってたって、どうやって」

    十神「囮がいれば。簡単な事だ」

    苗木「!」

    十神「分かるな…。手負いの俺と無傷のお前、何方が大切か」

    苗木「そんなの!」

    言わなくても分かるし、彼が言う事も分かる。

    十神白夜。手負いの状況でも平凡な僕とは比べ物にならない程のエリート────────


    十神「お前だ。苗木誠」


    ────超高校級の完璧と言うに相応しい超高校級の御曹……

    苗木「え…?」

    十神「いけ」

    彼は短く告げた。

    苗木「そんな!」

    十神「今ここで戦えば間違いなく負ける」

    苗木「じゃあ、逃げようよ!」

    十神「逃してくれると思うのか?それに俺は走れんしな」

    一度足元へ視線を向けた後、十神君は霧切さんを一瞥する。

    十神「霧切は捨てていけ。リスクしかないからな」

    苗木「ダメだ。そんな事出来ない」

    十神「奇襲しかない。一撃で江ノ島を仕留めろ、でなきゃお前は殺される」

    苗木「………」

    十神「いけ。それと合図したら耳を塞いで目を瞑れ、そして外へ走るんだ」

    苗木「嫌だ。3人で…3人で逃げよう」

    十神「ハッ、甘いやつだ。この状況で、まだそんな事を言うのか?」

    十神君は穏やかな表情で笑った。まるでコロシアイなどしていない様な。平穏な日常の様な表情。

    十神「苗木。よく聞け、俺は負けるのが嫌いだ。いや、そもそも負けた事自体無いんだがな」

    苗木「何回も…聞いたよ。だから、勝とうよ。君はここで終わるべきじゃないよ…」

    十神「違う。このままじゃ負けるんだ。だから勝つ為に、俺さえも駒にしろ」

    彼はそう言い終わると立ち上がり、体現された死へと足を向けた。

    苗木「待って────」

    惨めに彼へ伸ばす手を叩きながら彼は言った。

    十神「苗木誠。十神白夜の名に置いて命ずる────絶対に勝て」












    ザッ


    十神「…………」


    江ノ島「1人で前に来てどうしたの?ビリヤードじゃなくて、ビビリヤードしにきたの?かませメガネさん」


    十神「フン。舐められたものだな!!!───いけ!!」


    カランっと、地面に何か転がる音がする。僕は目を瞑っているのでそれが何なのか分からない。



    パァン!!!!!!!!!!!!!!



    光と音の共演。



    十神「発煙筒と、チューブ入り着火剤、マグネシウムで作ったお手製のフラッシュグレネードだ。効くだろ?」

    十神「今だ!苗木、霧切、江ノ島を殺せ!!」

    既に苗木は居ない。これはハッタリだ。

    江ノ島「チッ!女子は私を守ることに徹して、男子は私以外を殺す!」

    江ノ島は見えないままバックステップで後方に引き、指示を出す。










    十神「フッ…」

    死の直前。十神白夜は笑っていた。

    それは、呆れ笑い。

    囮を買って出た自身と、霧切を抱え走る(・・・・・・・)苗木に向けられたもの。

    十神「お前は、本当に大した(馬鹿な)やつだ」

    それが十神にとって最初の賞賛であり、最期の言葉であった。


  33. 35 : : 2017/07/27(木) 04:38:14


    ◇◆◇



    【ロウカ】



    霧切「ここ…は」

    背中から、弱々しい声がした。

    苗木「霧切さん!目が覚めたんだね」

    霧切「十神…君は?」

    彼女は僕へ問い掛ける。今いない彼の所在を。

    苗木「……僕らを逃がしてくれた。きっと、十神君の事だから大丈夫な筈だよ…きっと、きっと」

    ただの願望だった。生きて欲しいって。

    それと同時に彼を見捨て見殺しにした事実を否定したかった。

    僕は、弱く、浅ましい。

    霧切「苗木…君、私を置いて、行きなさい」

    苗木「そんな事、そんな事出来るわけないだろ…!」

    霧切「私は、いずれ…死ぬ。死んだら…人形となって…貴方を襲うわ」

    苗木「死なせない。絶対に!」

    霧切「無理よ…。こうして、喋ってるのも…奇跡なくらいの…傷よ?」

    苗木「無理じゃないっ!」


    抱える僕の腕には彼女の血液がベットリと付き、お気に入りのパーカーと学ランを赤黒く染めていた。


    霧切「大丈夫。苗木君は…強い人だから…」

    不規則な吐息が僕の首筋にかかる。

    苗木「そんな事ない。僕は誰よりも弱い…」

    舞園さんに気付けず、桑田君を守れず、不二咲さんを助けれず、腐川さんの脚を引っ張り、十神君を見殺しにして、いま彼女を救えないでいる。


    僕が彼女を背負っているのは、きっと1人が怖いからだ。


    自分は誰かを救おうとする人間だって自分に言い聞かせたいから。


    霧切「諦めて…逃げ回ってるわけでは無いんでしょ…?」

    声は弱々しく途切れ途切れになっているがその言葉には芯があった。

    苗木「………」

    言えない。ハンドアウトの事は絶対に言えない

    霧切「貴方が…自分の事をどう思おうと…、私は信じてるわ」

    そう言うと、彼女は僕の首を絞め始めた。

    霧切「……」

    とても弱々しい力で。



    苗木「そんな人形のフリ(演技)しないでよ…、そんな事されたら余計に見捨てられないじゃ無いか…」

    余計になんて嘘だ。見捨てる勇気のない僕が付いた精一杯の強がり。

    霧切「…違うわ。私はね、…見捨てさせるわけでも……、見捨てられる惨めな女でも無い……」

    霧切「貴方を…生かすのよ。修学旅行の班……誘ってくれて嬉しかったわ……」

    彼女は最後の力を振り絞り、おぶる僕の手を払う。


    霧切「苗木君……負けないで…」


    ドサッ


    そしてそのまま床に落下する。



    苗木「えっ…?」


    モノクマ『ピンポンパンポーーン!!!残り2人になりました!これより決勝戦を始めまーす!!!1分後に転送されるから気を付けてねー!』

    決勝戦、転送。

    そんな事はどうだって良かった。

    それよりも僕が気になったのは残り2人という事。

    1人は僕の筈だ。じゃあ残り1人は?

    信じたくない。認めたくない。嫌だ!

    苗木「霧切さん!!嘘だろ!!死ぬなよ!!なぁ!!霧切さん!!!」

    彼女に駆け寄り、肩を揺する。

    血で汚れている事を除けば眠っているようにも見える。

    苗木「ねえ!!霧切さん!!………目を開けてよ…」

    ただの願望だった。

    ズズズ

    苗木「そん…な」

    しかしその願いは叶わない。

    霧切さんは死んでいる。

    彼女の傷が直っていくのを見て、僕は受け入れがたい現実を受け止めた。

    苗木「霧…切…さん……」ポロポロ

    流す涙を拭ってくれる人物はもう居ない。


    そして確信した。次に彼女が目を開くのは、江ノ島さんの人形として僕の目の前に立ち塞がる時だと。


    皆んな、死んだ。


    皆んな、殺された。


    舞園さんも、桑田君も、不二咲さんも、腐川さんも十神君も、霧切さんも、皆んな。


    皆んな、皆んな、皆んな、皆んな、皆んな、アイツに殺された。


    ピラっ


    揺すった事と身体が直る動きで、彼女のポケットからあるものが零れ落ちる。


    苗木「ハンド…アウト」

    僕はそれを手に取り、中身を見た。







    『キリギリキョウコさん』

    『貴女のハンドアウトは最後に名前を呼んだ人が優勝した場合元の世界に戻れます。※このハンドアウトは誰かに知られた時点で効果を失う』






    苗木「……何でだよ…」


    握った拳を地面に向け振るう。


    苗木「何で、僕の名前を呼んだんだよ…」


    苗木「江ノ島さんの名前じゃ無くて、僕なんかの名前を……」


    そう口に出すが、僕には分かっていた。


    これは彼女の命を懸けて贈った僕への信頼の証。


    僕に知られた時点でこのハンドアウトに意味など無い。


    だけど、その贈り物は僕の心に届き、響いた。


    苗木「絶対に勝つから……勝って、君は間違ってなかったって証明するから」


    苗木「今度は、君を含めた皆んなを救うから」







    苗木「だから、僕はその為に───江ノ島さんを討つ」

  34. 36 : : 2017/07/27(木) 05:04:00



    ガコンッ!



    舞台が切り替わるように視界が暗転する。

    一瞬の静寂の後、僕に聞こえたのは江ノ島さんの甲高い笑い声。




    【タイイクカン】




    江ノ島「アーハッハッハッ、まっさか雑魚の苗木が残るなんて予想外」


    苗木「……」


    江ノ島「ま、私が故意に殺さなかったんだけどねー。アンタが一番嫌いだから」


    苗木「……」


    江ノ島「と、アンタは負け確定なわけなんだけど何かしたい事とかある?」


    江ノ島「ほら、舞園とか霧切とか、今ならおっぱい触り放題だぜ?まっ、ラブドールみたいな感じだけどw」


    苗木「ッ!」キッ‼︎


    江ノ島「何?そんな目見開いて、身の振り方考えた方が良いよ。アンタの命、握ってんのこっちなんだからさ」


    苗木「うる……い…」


    江ノ島「はっ?何々おっぱいだけじゃ物足りない?じゃあ死姦とかしちゃう?身の振り方じゃなくて腰の振り方考えてんの?やっらしぃ〜」


    苗木「ちょっと黙れよ……」


    江ノ島「童貞には刺激キツ過ぎるかな?もしかして突く度に破った処女膜再生するんじゃないの?…あっ、ごっめーんw舞園は枕営業で再生するものがそもそも無いかw」


    苗木「ベラベラ!ベラベラ!うるッさいんだよッ!!!」


    江ノ島「あ、怒った。こっわ、何が気にくわないの?早く私に媚びへつらいなよ。江ノ島盾子の全てを肯定して、絶望しなよ」


    苗木「僕はお前に屈したくない!!お前になんか負けたく無い!!」

    苗木「お前に殺された皆んなの為にもだ!!」

    江ノ島「おいおい、やめてくれよ。全部私のせいみたいな言い方はさ」(ギザポーズ

    江ノ島「私が直接殺したのは舞園だけ。たった1人だぜ?」(ギザポーズ

    苗木「ふざけるなッ!!命にたったも何もあるか!!」

    江ノ島「皆んなじゃないじゃないですか……、認めてください……。すり替えは良くないです………」(キノコ


    モノクマ「あのーですね。大変申し上げにくいんだけど、もうコロシアイは始まっちゃってるわけっすよ。さっさと殺っちゃってください」

    江ノ島「そんなぁ、私ー、コロシアイなんて出来ないーっ」(ブリっ子


    苗木「黙ってろドブス!!!!!」


    苗木「そんな風にキャラを作っても!お前なんか可愛く無い!!」




    江ノ島「…………ま、せいぜい足掻きなよ」

  35. 37 : : 2017/07/27(木) 05:06:18


    江ノ島「おい!オマエラ!苗木を殺さない程度に痛めつけろ!」


    江ノ島さんを除いた14人が、僕に向け一斉に襲い掛かる。


    戦刃さんの投げたナイフが僕の横腹に深々と突き刺さる。


    ザクッ!


    苗木「がァっ!」


    苗木(痛い──けど動ける!距離を取らないと…、囲まれたら死ぬ!)ダッ



    苗木(真正面からだと僕じゃ太刀打ち出来ない。十神君の言っていた通り奇襲しか!)



    体育館の扉に手を掛ける。

    ガンッ

    苗木「開かな…い」

    モノクマ「あ、言い忘れてたんだけど逃げられないように鍵は閉めといたよ、内側からも鍵を開けられない仕組みだから注意してね」

    江ノ島「次にアンタが言う台詞はこうだ。『最初に言え』」

    苗木(奇襲が出来ないなら、せめて彼女との距離を…!!)

    江ノ島「言わねぇのかよ!」

    苗木(構うな。今は勝つ事だけを考えろ!)タッ

    江ノ島「おいおいさっきまでの威勢はどうしたよ苗木!!!!逃げてばっかじゃん」

    戦刃さんを自身の横に置き、僕を人形で囲むようにしながらジリジリと距離を詰めていた。

    それも舞園さんや不二咲さんなど明らかに戦闘向きではない人物を前線に置き、大神さんや大和田君を後方に配置する二重構造。



    苗木(近寄る隙が無い!)



    ジリジリと詰められる距離、時間の問題だった。





    そしてその時間が来た。





    ただ、それだけ。



  36. 38 : : 2017/07/27(木) 05:12:11


    江ノ島「ほら!また命の尊さを説いてよ!!ねぇ!ねぇ!ねぇ!ねえ!!」


    ドゴッ‼︎ゴスッ‼︎バキッ‼︎


    脳を揺らす様に顎へ突き、肋を砕く様に拳が、抉るようにナイフが、腱を狙って鋏が、関節を外す様に組みつかれ、バットが脛を砕き、ヒールが僕の左手を潰す。

    打たれ。刺さり。曲げられ。斬られ。潰され。折られ。絞められ。


    僕の身体が、身体が、からからからカラカラだだだだだガガガガががががが




    苗木「あ゛あ゛ぁアアァ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛ア!!!!!!」




    痛みでロクに叫べなくなった時、丸太の様な脚にまるでサッカーボールの様に蹴り飛ばされる。


    苗木「…ァア」ドサッ…


    吹き飛ばされた僕の身体は2度バウンドした後、体育館の壁にぶつかり止まった。


    江ノ島「諦めろよ。1対15、数の上でも負けてるのに人形すら無い。さっさと命乞いしてよ────絶望してよ」

    彼女は嗤う。ボロボロの僕を見て、1人だからだと、人形を持っていないからだと。










    それは違う。



    苗木「…………よ」






    江ノ島「はぁ?なにー?チビだから聞こえなーい」




    苗木「……僕に……僕にだって………人形はあるよ」



    芋虫の様に身体を捻り彼女のほうを向き、地面を這いつくばるようにしながら壁へもたれかかる。


    江ノ島「は?追い詰められすぎて気が狂った?」


    そんな僕の姿を見て、彼女は鼻で笑った。

    江ノ島「此処に居るのは16人。そして生きてるのはアンタとアタシだけ。他の14人はアタシの人形なわけ。分かってる?」



    苗木「……分か…ってるさ。…この状況は……僕の、望んだことだったんだ」






    決勝時点で僕に人形がいない事。





    『戦刃さん。僕のハンドアウトを聞いてくれない?』






    嘘から出た真。皮肉すぎるだろ






    さよなら。皆んな






    辛うじて動く右手で横腹からナイフを無理矢理引き抜く。

    苗木「あァァァァ…ッ!!!!」




    江ノ島「あっれー?ドMなの?それともそのナイフが人形なのかな??」







    苗木「違うよ」



















    苗木「…人形。それは──────僕だ」





    サバイバルナイフを喉に突き刺す。





    僕は要らない。だから皆んなを救う(倒す)力を下さい。





    【綿】100%
    【魂】0%





    [SUTURE]




    タイムリミット
    6:59



  37. 39 : : 2017/07/27(木) 05:17:56



    江ノ島「バカじゃ無いの?アンタバカじゃ無いの!?」

    苗木「………」

    江ノ島「チッ、何か言えっつーの!!!!」


    殺せ。


    ドクンッ!!


    コロセ殺せコロセコロセコロセコロセコロセコロセ殺せコロセコロセコロセコロセコロセコロセ殺せ。


    ドクンッ!! ドクンッ!!


    殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ。



    苗木「あが…ガァ、ああッ!!!!!!!!!!!」




    『死なないで』




    苗木「ぁア…、ぁあっ、つ、あっあああああああああああアアアア!!!!!!!!!!!!」



    ソウだ。ボクはコロスためにぬいぐるみにナッタわけじゃない…




    苗木「………」



    約束したんだ。僕が皆んなを救うって。


    目を開け、敵を見ろ。

    口を開いて言ってやれ。


    苗木「江ノ島盾子。13秒振りだね、殺される覚悟はできた?」


  38. 40 : : 2017/07/27(木) 05:20:00



    江ノ島「うっわ、理性あるし。何?自分だから操れないとか関係無い感じ?」

    江ノ島「てかー、女性である私に手ェあげんの?苗木サイテー」

    苗木「男女平等だからね…行くぞ!!」ダッ!!

    彼女へ向け地を蹴った。

    苗木(あれ?身体が────重い?)

    ダァンッっっっっ!!!!!!

    苗木「!?」

    体感で言えば足に重りをつけた状態で、走り始めた感覚。

    だが、その一歩は数メートルは進み、江ノ島さんとの距離を一気に詰めた。


    例えるなら自転車のギアを上げたような。



    前に進む足は重いが一歩で数十歩分進む感覚。



    ギュインッ!




    江ノ島(速ッ!!)



    ドゴォオッ!!!!!!


    僕の拳は、江ノ島さんを捕らえる事は無く、体育館の壁にクレーターを作った。


    苗木(外した!!まだ、身体に慣れてないからか!)

    江ノ島「ま、走って、殴ってで2つの事を同時にしてるワケだから、上手くいかないよねー」

    苗木「ッ!」

    既に囲まれていた。当然と言えば当然。人形の配置は江ノ島さんの周りが一番多い。

    安全圏は───

    ダァンッ‼︎

    咄嗟に後ろへ跳ぶ。

    先程まで僕がいた位置は何本もの槍が深々と突き刺さっていた。判断が少し遅れたら、串刺しになっていたのは床ではなく僕の筈だ。

    苗木「はぁ…はぁ…」

    息が乱れる。これは一連の動作への疲れでは無く。

    人間の時とは違う。

    人形という武器を手に入れ(ぬいぐるみになり)、コロシアイの土俵に上がった僕の緊張によるものだ。

    モノクマ「あ、補足だけど壁は一定以上は壊せない仕組みになってるから悪しからず」

    自称学園長の気の抜けた声が、僕の乱れた呼吸を整える時間をくれる。

    時間が与えられるのは相手も同じ、大神さんや大和田君は前衛を守り、戦刃さんは真横に陣取り、他のみんなは弧を描く壁の様に僕へ立ち塞がる。

    自身の周りに全員集めるのでは無く、敢えて横に広げる事で、僕の一点集中攻撃を回避する目論見だろう。

    下手に動けば、左右から手痛い仕打ちを受ける。

    苗木(だけど、1人では臨機応変に全ての人形に命令する事は出来ない。意識するのは強い人形。なら!!)

    ブンッ‼︎‼︎‼︎

    左腕を異形化させて床を擦りながら攘う。

    苗木(弱い人形から倒す!!)

  39. 41 : : 2017/07/27(木) 05:22:36



    巨大化した、凡そ腕とは思えないソレは山田君、不二咲さん、セレスさん、腐川さん、石丸君、朝日奈さんを立て続けに轢き5人を壁まで吹き飛ばす。

    ぶつけたのは6人。だが吹き飛ばしたのは5人。

    朝日奈「───」

    朝日奈さんだけが、僕の腕に巻き付くようにして、飛ばされるのを回避した。

    苗木(人形は硬化だけじゃないのか?!)

    巨大化させ動きの鈍った僕との距離を、朝日奈さんが左腕を這いながら詰める。

    苗木「それなら!!」

    払った腕を腰を使い更に振るう。

    江ノ島「遠心力?そんなんじゃ朝日奈は───」

    苗木「はぁぁッ!」

    一周した腕は、江ノ島目掛けて襲い掛かる。

    江ノ島「なるほど。大和田大神受け止めて」パチンッ

    大木の様な腕を2人がかりで受け止める。

    苗木(これを待っていた!!)


    僕は巨大化させていた腕を縮めた(・・・)

    太さがそのままの僕の左腕は固定されているため、大神さんと大和田君に引き寄せられるように僕の身体は動く。

    江ノ島(あー、成る程これで確実に距離を詰めるって事。でも捕まえてる人形どうすんの?)

    苗木(ここだ!!)

    太さを元の大きさに戻す事により、距離を詰めた状態で拘束を逃れた。

    苗木「ごめん朝日奈さん!」ブンッ

    同時に左腕に張り付いていた朝日奈さんは虚空を掴む事となる。

    そんな彼女の服を掴み大和田君と大神さんへ向け、投げる。

    ドンッ!!

    軟化した彼女の身体は2人に纏わり付くように絡まった。



    江ノ島盾子は既に目と鼻の先。

    苗木(この距離なら外さな────)

    江ノ島「アンタと刺し違えるつもりは無い。だって勝つんだから」

    僕と江ノ島さんの間に人影が割り込もうとする。

    苗木(それなら、2人纏めて──)

    握った拳に力を込めた直後、人形と僕のピントが合う。


    舞園「苗木君…」


    江ノ島さんと僕の間に割り込むよう現れた舞園さんが、拳を振おうとする僕を見てそう言った。

    苗木「なっ…」ピタッ

    江ノ島「はい。残念な程計算通り」

    一瞬動きを止めた僕の左脚を戦刃さんが斬り飛ばす。

    苗木「ぁァぁぁッ!!!!」

    江ノ島「理性があるのが幸い中の不幸だったね。あま(優し)いアンタなら手を止めるって思ったよ。抑えろ」

    戦刃さんを除く6人が体勢の崩れた僕を羽交い締めにする。

    バキィッ!

    グチャッ!

    その過程で、朝日奈さんを解いた大神さんが加わり僕の左腕を潰し、大和田君が僕の右腕をヘシ折った。

    苗木「ッぐぁぁあっぁあぁあアァ──!!!!」


    ぬいぐるみになった影響なのか血は流れない。

    だが、その分どうしようもない痛みだけが僕を襲った。


    苗木「はぁ……はぁ……ァ…」


    江ノ島「ゲームセット、つまんない幕引きだね」


    苗木「ナメるなよ…、まだ終わりじゃない……」

    江ノ島「ハァ?何言ってんの?アンタもう負けでしょ、今何で生かしてやってるか分かんない?」

    苗木「分かんないよ…、でも僕は折れないぞ…、君に屈したりしない」

    江ノ島「折れてるんだって、右手の話だけどさ」

    江ノ島「早く命乞いしなよ。雑魚は雑魚らしく泣き喚きながら助けてって言いなよ」

    苗木「絶対に…言わない!だって、それは皆んなの負けになるから…っ!
    !」

    江ノ島「皆んなの負け?1人で何言ってるの?」

    苗木「1人なのは僕じゃない…お前だ江ノ島盾子!!」

    江ノ島「現実も状況も分かってないんだね。そりゃあ話が通じないワケだ」

    江ノ島「…あーあ、つまんないの。苗木ってば全然絶望しないんだからっ」

    江ノ島「そんな苗木にごほうびでーっす!なんと!いまからぁ!大大大好きな舞園の、汚い本音を聴かせてあげる!!」

    苗木「何を…する気なんだ…」

    江ノ島「舞園。お前の人間として汚い所、苗木に語ってやれよ」

    舞園「はい」

    スポットライトが彼女へ向けられた。



    舞園「私は舞園さやかだから誰かのものになれない」



    苗木「…えっ?」



    スポットライト。それは決して、超高校級のアイドルとして向けられたのではなく。


    舞園さやか個人に、粗探しの為だけに向けられた光。

  40. 42 : : 2017/07/27(木) 05:25:52



    舞園「苗木君が班決めの時、霧切さんを誘おうとしましたよね?私と苗木君が班になるって約束して、他に誰を誘うかって話になった時」

    舞園「苗木君はアイドル舞園さやかのファンなんです。知ってました」

    舞園「まあ。ファンの中にも私に気持ち悪い視線を向ける人もいますが、苗木君は温かいものを私にくれます」

    舞園「苗木君は優しいからきっと他の女の子に好きって言われたら受け入れちゃいますよね?」

    舞園「受け入れて、私なんかよりその子の事を好きになる」

    舞園「だから私は苗木君を人形にしようと思いました。綿の代わりに愛を詰めようと考えました」


    苗木「…っ」


    舞園「誰にでも優しい苗木君を自分のだけのものにする為に」


    苗木「………」


    江ノ島「苗木は、アイドルはトイレしないとか本気で思ってるタイプ?」


    江ノ島「残念!!!しまーす!!!」


    僕の答えを待たずして江ノ島盾子はそう答え、ケタケタと笑う。

    だけど舞園さんの言葉には続きがあった。

    舞園「でも、そんな風に、皆んなに優しい苗木君だから私は好きになったんですよ」

    江ノ島「はっ?アンタ何言ってんの?汚い本音を言えって言ってんの!」

    舞園「立ってください苗木君!私の大好きな苗木君は、そんな弱い人間じゃないです!!人形でもぬいぐるみでもない、強い人間なんです!!!!」



    苗木「舞園…さん」

    僕には判った。

    アイドルとしての彼女は1人の人間を贔屓する事は許されない。




    それが汚い本音。



    僕だけ(1人)に向けられるエールがアイドル(舞園さやか)のNG行動。


  41. 43 : : 2017/07/27(木) 05:27:32



    ここまで言ってもらったんだ、立上らなきゃ、ぬいぐるみでも、人形でも、人間でも、男でも無くなる!!



    苗木「ゥあああああああああああああああッッッッ!!!!!!!」



    僕の咆哮は


    体育館を震わせた。


    江ノ島「叫んだって、超パワーは出たりしないっつーの」

    耳を塞ぎながら彼女は言う。


    だから気付けない。


    江ノ島「ガッ!!!」

    床から現れた僕の右手が、彼女の顎を掠める。

    江ノ島「…成る程。折れた右手を異形化させて地下に広がるトラッシュルームからアタシのこと狙ってたんだ?バレ無いように雄叫びまであげて。でも残念だったね苗木。この距離のせいで手元が狂っちゃったんだ」

    苗木「いいや。僕の勝ちさ」ニヤリ




    江ノ島(…何で苗木(コイツ)希望を捨てていない(笑っていられる)?)

    江ノ島「ああ、ハッタリ?それとも何、オカシクなっちゃった?」


    苗木「これが…僕の答えだ!!!!!」


    ダァンッ!!!!!!!!!!!!!!!



    床に向け全力のヘッドバット。



    苗木「君の背後に異形化させて腕を出す方法もあったけれど、それを防がれたり勘付かれたりしたら詰みだ」

    苗木「だから、勘付かれても良い方法を取らせてもらった」

    ゴゴゴゴゴゴゴ

    江ノ島「床に…亀裂?!」

    苗木「この校舎は巨大な柱を見て分かる通り、1つ1つのフロアが凄く高い事は知ってるよね?」

    江ノ島「まさか───!?」

    苗木「僕は人形だ。だけど、ただの人間の君はどうなるかな」


    柱は既に異形化させた腕で破壊した。


    亀裂は凄まじい速さで広がり。


    ──ガラガラガラガラッッ!!


    床は崩れた。


















    【トラッシュルーム】














    舞う砂塵が晴れた時。











    江ノ島「うん。危なかったよ、ありがとね。残姉ちゃん……ありゃ、いない」キョロキョロ

    1人の少女だけが傷を負いながらも、平然とした顔でそこに居た。

    江ノ島「なーんだ、瓦礫で下敷きになってんのか。本当残念な奴」

    瓦礫からはみ出した、実の姉の脚を叩く。

    江ノ島「さぁーって、苗木はっと」











    苗木「あ……が……」


    僕n からd 粒子ni って


    k えru


    江ノ島「あー、タイムアップか。1番面白く無い終わり方だね」




  42. 44 : : 2017/07/27(木) 05:31:58



    江ノ島「…1人で消えようとしてる可哀想な苗木君にー、朗報がありまーすっ。知りたい?知りたい?」(きゃるーん


    返事は返って来ない。


    呻き声と、苗木誠という粒子が辺りを舞うだけ。


    江ノ島「うん。教えてあげる。いつだって、どんなおとぎ話だって、化け物を殺すのは人間だってことを」

    瓦礫の下敷きになった人形のスカートの中からナイフを抜き取り、少女は立ち上がる。

    江ノ島「ありゃ、足折れてるや」

    涼しい顔で、その余裕の表情とは反比例するように腫れ上がった左足を見る。

    江ノ島「まあ、でも優しい私様がトドメをさしてあげる」


    ナイフを構え、一人ぼっちの人形に狙いを定めた後。


    江ノ島「さよなら」ヒュッ


    そu言いn がら 彼zy は僕に向k ナイh を投g た













    ザクッッッ!!
















    だけど、そのナイフは彼を捉える事は










    苗木「!」

    江ノ島「は…ァ?何で…何でアンタが動けてる訳…?















    ──────霧切!!!!!!!!!!!!」






    霧切「────」


    (私の声は届かない。だって人形だから)


    (私はただ最後に命令された苗木君を取り押さえろって命令にしたがっただけよ。江ノ島さん)













    背中にナイフを受けた、人形の彼女は何も言わず。僕の方へ寄り添うように倒れた。




    霧切さんは微笑んでいた。




    僕は1人じゃない。



    苗木「ははっ……、それだけで十分じゃないか…」

    散り散りになっていた僕が集約する。

    無い左脚を補うように、粒子になりかけている左手で壁にもたれかかるようにして立ち上がる。


    江ノ島「は…?何で立てんの?何で笑ってられるの?」


    苗木「約束したんだ。絶対勝つって」


    跳ぶようにし、彼女に近付く。これは一歩で足りた。


    江ノ島「異形化も出来ない程存在が消えかけてるのに何で?」


    苗木「僕が背負ってるのは、僕だけの命じゃ無いから」



    ヘシ折られた腕を無理矢理振り上げる。


    江ノ島「何で!!アンタは絶望しないんだよ!!!!」


    苗木「簡単な話だよ」


    身体を捻るようにして、右腕を彼女に向け振るう。


    そして、叫ぶ!!


    苗木「希望は絶望に何か負けないんだ!!!!!!!!!」




    ーーーーーーーーーーーーーーー


    『エノシマジュンコさん』

    『貴女はこのゲームで負けた場合。死ぬ前の状態で現実に帰れます』


    ーーーーーーーーーーーーーーー




    江ノ島(全く。最初から負けるのが運命付けられたみたいな)


    江ノ島(気に食わない)


    江ノ島(あーあ、負けちゃった)





    ダァンッ!!!!!!!!!!!





    モノクマ「しゅーーーーりょーーーーー!!!!!!!!!優勝は、何と!何と!!!!!!前向きだけが取り柄の苗木誠君でーーーーす!!!!!!!!!」







    ──────────
    ──────────────
    ──────
    ────────────
    ──────────────────


  43. 45 : : 2017/07/27(木) 05:34:38


    ◇◆◇





    石丸「それでは区切りの良いように4班作ってくれ!」

    そう言って、石丸君は教壇から降りました。

    朝日奈「え?4班15人しか居ないのに?」

    石丸「なんだと!?…僕とした事が割り算を間違えるなんて!!まだまだ勉学が足りない様だ!!!!」


    舞園(男の子は1人決まってますし、後は……あれ?決まってましたっけ?)


    ツー…


    私の頬を温かい何かが伝います。辿った先にあるのは、目。



    舞園「あれ…何ででしょうか?涙が…」
    ポロポロ

    朝日奈「わっ、どうしたのさやかちゃん!大丈夫?葉隠に何かされたの?」

    葉隠「何もしてねーべ!」

    舞園「ごめんなさい。おかしいですよね…、でも、涙が止まらないんです」

    桑田「俺も何か頬がいてぇんだよな。まるで誰かに打たれたみたいに」

    霧切「…なんでかしら。私は何か大切なものを忘れている様な、そんな気がするわ」

    不二咲「僕も…不思議とそんな気がするんだ…」

    十神「…愚民の戯言にしか聞こえんが、俺もだ」

    舞園「私もです…。誰か、直ぐ隣に居たような…そんな…感覚に」ポロポロ


    教室は湿っぽい雰囲気に包まれた。


























    江ノ島「あれ?苗木は?」

    たった1人を除いて。


  44. 46 : : 2017/07/27(木) 05:36:13






    ○◉○◉○◉


    落ちてるのか浮かんでいるのかも分からない。

    息苦しくは無いのでどうやら水の中では無いらしい。

    ただ、『僕』という存在がそこに在るだけ。


    モノクマ「やあ。お目覚めかい?」


    「#→〆%€」


    モノクマ「矛盾が残る勝ち方をするから、オマエの対処に困ってるんだよ!」

    モノクマ「で・も、ボクは悪魔じゃなくてクマだからね。チャンスをあげるよ」


    「◯×$=|*?」


    モノクマ「いってらっしゃーいっ!」



    僕の視界は再び暗転した。



    飛ばされた先に居たのは見知らぬ少年少女達。

    帽子を深く被った少年。

    長い黒髪をシュシュで2つに結った女の子。

    淡い金色の髪にアンテナを生やした女の子。

    金髪の少女「大丈夫?君の名前は…?」






















    「さあ。二回戦の始まりクマ」


    耳元でアクマがそう囁いた。


    檻の中で、僕らはまた殺し合う。


  45. 47 : : 2017/07/27(木) 05:48:09



    To be continued?


  46. 48 : : 2020/10/26(月) 15:32:52
    http://www.ssnote.net/users/homo
    ↑害悪登録ユーザー・提督のアカウント⚠️

    http://www.ssnote.net/groups/2536/archives/8
    ↑⚠️神威団・恋中騒動⚠️
    ⚠️提督とみかぱん謝罪⚠️

    ⚠️害悪登録ユーザー提督・にゃる・墓場⚠️
    ⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️
    10 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:30:50 このユーザーのレスのみ表示する
    みかぱん氏に代わり私が謝罪させていただきます
    今回は誠にすみませんでした。


    13 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:59:46 このユーザーのレスのみ表示する
    >>12
    みかぱん氏がしくんだことに対しての謝罪でしたので
    現在みかぱん氏は謹慎中であり、代わりに謝罪をさせていただきました

    私自身の謝罪を忘れていました。すいません

    改めまして、今回は多大なるご迷惑をおかけし、誠にすみませんでした。
    今回の事に対し、カムイ団を解散したのも貴方への謝罪を含めてです
    あなたの心に深い傷を負わせてしまった事、本当にすみませんでした
    SS活動、頑張ってください。応援できるという立場ではございませんが、貴方のSSを陰ながら応援しています
    本当に今回はすみませんでした。




    ⚠️提督のサブ垢・墓場⚠️

    http://www.ssnote.net/users/taiyouakiyosi

    ⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️

    56 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:53:40 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ごめんなさい。


    58 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:54:10 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ずっとここ見てました。
    怖くて怖くてたまらないんです。


    61 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:55:00 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    今までにしたことは謝りますし、近々このサイトからも消える予定なんです。
    お願いです、やめてください。


    65 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:56:26 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    元はといえば私の責任なんです。
    お願いです、許してください


    67 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    アカウントは消します。サブ垢もです。
    もう金輪際このサイトには関わりませんし、貴方に対しても何もいたしません。
    どうかお許しください…


    68 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:42 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    これは嘘じゃないです。
    本当にお願いします…



    79 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:01:54 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ホントにやめてください…お願いします…


    85 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:04:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    それに関しては本当に申し訳ありません。
    若気の至りで、謎の万能感がそのころにはあったんです。
    お願いですから今回だけはお慈悲をください


    89 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:05:34 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    もう二度としませんから…
    お願いです、許してください…

    5 : 墓場 : 2018/12/02(日) 10:28:43 このユーザーのレスのみ表示する
    ストレス発散とは言え、他ユーザーを巻き込みストレス発散に利用したこと、それに加えて荒らしをしてしまったこと、皆様にご迷惑をおかけししたことを謝罪します。
    本当に申し訳ございませんでした。
    元はと言えば、私が方々に火種を撒き散らしたのが原因であり、自制の効かない状態であったのは否定できません。
    私としましては、今後このようなことがないようにアカウントを消し、そのままこのnoteを去ろうと思います。
    今までご迷惑をおかけした皆様、改めまして誠に申し訳ございませんでした。

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