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佐天「鉄球の…回転…」

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  1. 1 : : 2016/06/03(金) 17:04:05
    佐天さんの能力シリーズ

    無能力者である佐天さんが鉄球という未知の技術を目の当たりにしジャイロ・ツェペリを師として成長していくお話。

    ジャイロの生まれた年代等設定を少し作っています、更に鉄球の能力などを独自に解釈し描写しますのでとあるシリーズ及びスティール・ボール・ランを熟読されている方には?となる箇所が出てくるかもしれません…

    そういった事に納得できる方のみお読みください。

    コメントをしてくださる場合は他の読者の方に迷惑にならない程度にお願いします。

    一応コメントは読みやすくする為に隠させて貰いますがちゃんと読んでいます。

    それでは始めます。
  2. 2 : : 2016/06/03(金) 18:20:36
    ……銀行強盗


    本来聞いた事は誰だってあっても遭遇する事など人生に1回あるかどうか


    恐らく無いままその生命を終える人間が大半だろう


    その銀行強盗に佐天涙子、白井黒子、初春飾利、御坂美琴……そしてある男が遭遇していた


    黒子「お待ちなさいな……風紀委員(ジャッジメント)ですの!」


    白井黒子が腕章を誇らしげに見せ、犯人に投降を促す


    …が


    強盗A「ぶっ、ははははは!こんなガキが風紀委員だと!?」


    強盗B「風紀委員も人手不足だなぁ!」


    強盗C「怪我したくなきゃさっさとどけぇ!」


    聞く耳など持つはずもなく強盗は小柄な少女に襲いかかる


    白井黒子「やれやれ…これだから野蛮人は…」


    クイッと犯人の腕の袖を引き、足をかけて強盗の一人を引き倒す


    強盗A「こいつ!」


    発火能力(パイロキネシス)を用いた攻撃


    黒子「発火能力者…レベル3程でしょうか」


    路上を走り助走をつけた後、瞬間移動(テレポート)で強盗の一人の頭上へと跳びドロップキック


    強盗A「うぐあっ!」


    ドタン、と地面に叩き付けた後に腿に巻いてあるホルスターから金属矢を強盗の服に瞬間移動で打ち付ける


    鮮やかに三人の強盗の内二人を無力化


    黒子「…(さて…これで残るのは一人ですの)」


    ふと黒子が考えたその時


    少女の悲鳴と男の怒鳴り声


    見やると初春の友人の佐天涙子が少年を抱きとめ、強盗の最後の一人が少年の腕を引っ張っていた


    人質にしようとしたのか分からないが少年を諦めた強盗は佐天の顔を蹴り、逃走用に用意していたのであろう車に乗り込む


    ???「おいおい…女の顔面蹴るなんざ胸糞悪いもん見せやがって…」


    少し離れた位置から自分の『愛車』に跨りながら呟く男


    御坂「…ッ」


    出会ったばかりとは言え友人となった人を傷つけられる


    そんな光景を目の当たりにした御坂美琴は目を見開く


    御坂「黒子!……ここからは私がやる…個人的な喧嘩よ…」


    黒子「はぁ…」


    御坂は道路の中央に仁王立ちし待ち構える


    車を御坂に向けて走らせる強盗


    対する御坂はポケットからゲームセンターのコインを取り出し腕を伸ばす


    御坂「吹っ飛びなさい!」


    手加減はしつつも最強の超能力者(レベル5)の撃つ超電磁砲(レールガン)

    その一撃を下部に受けた自動車は跳ね上がりひっくり返ったままアスファルトに落ちる


    強盗C「うぐっ…クソっ…」


    ヨロヨロと車から出て、側の街路樹にもたれかかりながら逃げれる乗り物(あし)を探す強盗


    見つけたのは大型のバイク


    しかしそのバイクには先客がいた


    強盗C「おい!そいつをよこせ!」


    ???「そいつってのは…『コイツ』のことか?」

    コンコン、とバイクのタンクをノックする男


    強盗C「そうだよ!そいつをよこせ!」


    ???「そいつは出来ない相談だな…俺の『ヴァルキリー』はわざわざ海を越えてまで運んで来た『愛車』なんだよ」


    あくまでも堂々とした態度は崩さず、睨みつける


    強盗C「これでもか!?」


    腰のベルトから強盗は拳銃を取り出す


    黒子「ッ(拳銃!?)…そこのあなた!離れてください!」


    ???「…」


    男は動かない


    強盗C「おら!さっさとどきやがれ!」


    強盗が拳銃をバイクの男に向ける瞬間、バイクの男は腰にあるガンベルトのような物から野球ボールのような大きさの球を投げ付ける


    球は強盗には当たらず、側の街路樹に当たる


    強盗C「はっ!ノーコンが!」


    拳銃をバイクの男に向ける強盗


    ???「いや…これでいい…」


    強盗C「はぁ!?」


    強盗の背後からミシミシという音


    強盗が振り返ると街路樹がグルリと捻れていた


    黒子「!?(まさか…あの殿方は能力者ですの?)」


    御坂「能力者!?」


    初春「…(念動力…?)」


    強盗C「な、何が…」


    ???「まぁ、女の子の顔面を蹴ったんだ…前歯の一、二本は覚悟しろよ」


    ビュオン、という音と共に捻れていた木は元に戻り


    人の腕ほどある太さの枝が強盗の顔面を弾き飛ばす


    強盗C「ぷぎゃ!?」


    ゴロゴロと転がる強盗を横目に辺り見回す男


    佐天「何…あれ…」


    佐天涙子は確かにその時見ていた、球が意思を持っているかのように跳ね上がり男の掌に収まるのを…
  3. 3 : : 2016/06/03(金) 18:48:53
    黒子「もし!そこの貴方!」


    黒子がバイクの男に詰め寄る


    ???「…何だ?」


    黒子「貴方は一体何者ですの!?」


    ???「…答えないといけないのか?」


    黒子「当たり前ですの!」


    ???「そうか、まぁそれよりあそこの女の子の手当をしてやりな…顔に傷が残ったらせっかくの綺麗な顔が台無しだ」


    男が佐天を指差す


    黒子「ッ、そうでしたの!」


    忘れていたのであろう黒子は瞬間移動で佐天の側に寄る


    黒子「佐天さん、大丈夫でしたの!?」


    顔を覗き込み怪我の具合を見る


    佐天「だ、大丈夫です…少しヒリヒリしますけど…」


    黒子「少し赤くなっているだけ…ですわね(切り傷などは見当たりませんの…良かったですの…)」


    すぐに初春や御坂も寄ってくる


    その光景を見届けた男は愛車のキーを回しUターンして現場を離れていく


    黒子「それにしても…乙女の顔を蹴るなんて男の風上にも置けない人間ですの」


    御坂「別に良いんじゃない?あの人が懲らしめてくれたみたいだし…って…あれ?」


    バイクの男を指差そうとしたのだろうが、男はもう既にバイクと共に姿を消していた


    黒子「あああ!いなくなってますの!」


    初春「大丈夫ですよ白井さん、あの人は外国の方だと思いますから…」


    御坂「…あぁ、なる程」


    初春「はい、風紀委員の支部に戻って学園都市に入る許可の出た外国の方を調べれば見つけれるはずです」


    黒子「そう…ですわね、それよりも前に…彼等を拘束しておきませんと…」


    テキパキと手錠を掛けていく黒子と初春を見ながら佐天は思案する


    佐天「…(何だったんだろう…あれ…)」


    思い出すのは彼の掌に収まっていった緑色をした球


    御坂「佐天さん」


    ポン、と肩を叩かれ見上げると


    御坂「カッコよかったよ?」


    ニッコリと笑いながら親指を立てる御坂


    それを受け佐天も顔が緩む


    佐天「はい!」


    今度初春があの人の事を調べる時に一緒に調べよう


    そう思っていると通報を受けた警備員(アンチスキル)が到着する


    本格的な事件の集結を実感して近くのベンチに腰を下ろす佐天


    その後、男の子や親御さんからお礼を言われたり…


    警備員の人に状況を説明したりで時間がかかり結局バイクの男の人を調べるのは明日という事になった
  4. 4 : : 2016/06/03(金) 19:45:31

    -翌日、常盤台中学-

    御坂「…(結局あの人の事調べられなかったな…)」


    窓の外を眺めながら教師の話を話半分に聞きながら昨日の事を思い出す


    教師「………そういう訳で、イタリアから出向いてもらったイタリア語講師の『ジャイロ・ツェペリ』さんだ」


    外国語講師、と聞いて入ってきた男を見て御坂は言葉を失う


    ジャイロ「ここちょっと4()2()0()〜ってね、ニョホホ」


    謎の動作をした後間の抜けた笑い方をする男


    金歯のような前歯に『GO!GO!ZEPPLI』の文字


    帽子こそ被っていないものの講師として紹介されたのは昨日の男だった


    御坂「な、何でアンタがここに!?」


    机をバン、と叩きながら言うとクラスの目線が御坂に一斉に集中する


    ジャイロ「…ん?お前さんは…昨日の凄いビーム撃ってた…」


    御坂「そうよ!何であんたがここにいるのよ!」


    ジャイロ「何でも何も俺は交換留学生としてここに来たんだよ…ついでにこの中学校のイタリア語講師も頼まれたんでな」


    御坂「交換留学生〜?」


    教師「御坂…また聞いてなかったのか?ジャイロさんはイタリアの歴史ある大学の医学部生で交換留学生としてここに来てるんだ」


    御坂「それは…」


    ジャイロ「ま、プライベートはここまでだ…これからは教師と生徒として話をするぞ」


    そうしてイタリア語講座が始まった


    御坂「…(こんな事ってあるんだ…)」


    ーーー
    ーー



    イタリア語の授業を含めた一日の授業が終わり、一度寮に戻る


    扉を開けると黒子が目を血走らせながら走り寄ってくる


    黒子「お姉様!見ましたの!?昨日の殿方が!!」


    御坂「見たわよ、私も授業受けたし…普通に面白かったわ」


    授業は上々の評価だった


    発音は現地の人間なのでもちろん、教え方も中学生が興味を持ちやすい恋愛話を絡めた会話


    皆楽しそうに授業を受けており中には話しかけられて惚れたんじゃないかというほど赤くなっている娘もいた


    御坂「どうするの?直接話に行く?」


    黒子「んんんん…少し風紀委員の支部に顔を出して彼を調べましょう、その後でも大丈夫ですの」


    御坂「OK、じゃあ行きましょ」


    そうして寮を出て風紀委員の支部に向かう二人


    ーーー
    ーー



    ー第一七七支部ー


    初春「そんな事があったんですか!?」


    御坂「えぇ、私もびっくりしたわよ」


    佐天「はぇ〜こんな偶然ってある物なんですねぇ」


    黒子「それはそうと初春、調べましょう」


    初春「はい」


    カタカタと素早くタイピングをしながら調べていく初春


    学園都市に入った人間のリストをスクロールしながら探していく


    初春「ありました、これですね」


    カチカチとマウスをクリックすると顔写真などの情報が出てくる


    初春「名前は…『ユリウス・カエサル・ツェペリ』…?『ジャイロ・ツェペリ』じゃないんですか?」


    黒子と御坂は名前を聞いて絶句する


    佐天「ど、どうしたんですか?」


    御坂「い、いや…」


    黒子「で、ですわね…」


    佐天「…?」


    御坂「お父さんどうかしてるわね…」


    黒子「ですわね…」


    初春「えっと、イタリアの…パ…パドヴァ大学?…の医学部生みたいですね」


    御坂「へ〜、医学部はかなり有名よそこ」


    黒子「かのガリレオ・ガリレイも教鞭をとった歴史のある大学ですの」


    御坂「評価もほぼ完璧、見かけによらず優秀なのね…」


    黒子「人の事は言えませんの」


    御坂「ちょっと、どういう事よそれ」


    佐天「というか…この人能力者じゃないんですか?」


    ずっと言えなかった疑問を吐き出す佐天


    御坂「……っあ!そうよ!あれは何なのよ!」


    黒子「初春!どうですの!?」


    初春「いえ…特に書いてありません…」


    調べるも能力に関係有りそうな事は何も書いていない


    御坂「どういう事…?じゃあ昨日のあれは…」


    佐天「もしかして、『原石』って奴ですかね?」


    黒子「あれは噂でしょう?」


    初春「ですが…あれはどう見ても何らかの能力に引き起こされた現象ですよ?」


    御坂「もしくはこの大学が学園都市の真似事をしてるとか…?」


    黒子「それはあり得ませんの…この大学には海外の方も少なからずいるはずですの…」


    初春「もしそんな事すればたちまちマスコミが来ますね」


    佐天「うーん、やっぱり本人に聞くのが一番じゃないですか?」


    御坂「話してくれるかな…?」


    佐天「何よりもまずは行動ですよ!」


    そうしてまた明日の放課後に支部で待ち合わせとなり今日は解散した
  5. 5 : : 2016/06/03(金) 21:03:11
    ー翌日、常盤台中学ー


    昼休みの食堂で男がひとりメニューを見ていた


    ジャイロ「こんなに高いのか…」


    世界有数のお嬢様学校とはいえ定食で数万の金が飛ぶなんて聞いたこともない


    とはいえ成績優秀なジャイロは大学から給付型の奨学金も貰っているし学園都市に滞在する間のホテルもスイートルームだったりもする


    更には常盤台中学から先払いという形で給料も貰っているのでお金に苦労もしていない


    ジャイロ「ま、食ってみるか」


    不味かったら文句を言ってやろうとも思ったが生徒に注目されている事に気付かない人間でもないジャイロは大人しくコックに注文をする


    座って待っていると生徒が集まって声をかけてくる


    様々な質問を処理していきながら出来上がった定食を受け取りに行く


    見た目は上々で美味しそうとも思うが数万の価値あるか?


    そう考えながら席に戻ると周りにいた生徒が少し距離を置いていた


    ジャイロ「…(何だ?何かしたか?)」


    もしかしてこの定食を頼むやつなんてそうそういないから引いたのか?


    と思ったが他の生徒もこの定食を食べているからそれはない


    正面を向き直ると目の前に一人の生徒


    食蜂「やっほー先生☆」


    ジャイロ「君は…」


    なる程、だから周りの生徒は自分から距離を置いたのか…と悟る


    先生方から聞いたこの学校で覚えておくべき生徒の特徴を思い出し目の前の彼女はその一人である事に気づく

    腰まで伸びた長い絹糸のような金髪


    中学生とは思えないスタイルと胸


    ジャイロ「食蜂操祈でよかったか?」


    食蜂「先生に名前を覚えてもらってるなんて感激だわぁ」


    スッと肩から下げたバックに手を入れる食蜂


    リモコンを取り出そうとした食蜂の腕がバックから出る前に抑えられる


    食蜂「…え?」


    ジャイロ「今……明確な『敵意』を感じたんだが…この中身は?」


    ジャイロから発せられる威圧感


    食蜂「…なんて事ないですよぉ、只のコンパクトミラーです、何か付いてたら嫌ですからぁ」


    少なくともこの相手は無警戒では無いことを知り思案を始める食蜂


    ジャイロ「そうか…すまなかったな…でもそういうのは化粧室でするものだろ?」


    手を離し席につくジャイロ


    食蜂「今度からは気をつけま〜……すっ」


    サッとリモコンを取り出しジャイロに向けボタンを押そうとした食蜂だが


    リモコンは食蜂の手を離れ地面に落ちた


    ジャイロ「取り出そうとしたのは…コンパクトミラー……じゃないのか?」


    テーブルに肘をつき食蜂を見るジャイロ


    その目は完璧に食蜂に対し敵意を孕んでおり食蜂は久しぶりに冷や汗というものを感じる


    食蜂「…(どうして…)」


    ジャイロ「どうしてそのリモコンを落としたのか知りたいか?」


    食蜂「…」


    食蜂は何も答えない


    ジャイロ「まぁ…ある方法で…君の前腕から先の筋肉を弛緩させた…つまりは…『君から握力を奪った』…といえば分かるか?」


    だからリモコンを握る事が出来ずに地面に落ちた


    まぁ分からなくもない、『相手がなんらかの能力者なら』


    食蜂「先生は…能力者なんですかぁ?」


    ジャイロ「…さぁな?」


    定食を口に運びつつもこちらから意識は外さない


    食蜂が次の言葉を発しようとしたその時


    「ちょっとあんた!」


    よく通る声が食堂に響く


    御坂「あんた!先生に何かしようとしてないわよね!?」


    ズカズカと走って来たのは御坂とその後ろにいる黒子


    食蜂「あら御坂さぁん」


    御坂「先生!?何かされなかった!?」


    ジャイロ「ん?…まぁ…今のところはな」


    御坂「…」


    食蜂「そんな怖い目で見つめちゃ嫌だゾ☆」


    御坂「…(おかしい…コイツがここに来たって事は先生に何か能力を使おうとしたって事よね…なのに先生は無事…これも能力のおかげ?)」


    食蜂「それじゃあ先生、私はこれでぇ」


    ジャイロ「食蜂、これから化粧直しは化粧室でやれ」


    食蜂「はぁ〜い」


    リモコンを拾い上げ手を振りながら背を向けて歩き去る食蜂とその背中を睨みつける御坂


    御坂「先生、本当に何も…?」


    ジャイロ「あぁ」


    御坂「……先生、質問してもいいですか?」


    ジャイロ「何か食ったらどうだ?食堂だぞ?」


    黒子「確かにずっと先生を探していましたので昼食はまだでしたわね…お姉様、何になさいますか?」


    御坂「カツ丼定食よろしく」


    黒子「はいな」


    注文をしに行く黒子を横目で見ながらあら方の食事を終えるジャイロ


    御坂「先生、正直に言いますがさっきの生徒は先生に何かしようとしたはずです…」


    一呼吸置いてから御坂が切り出す


    御坂「どうして無事なんですか?」
  6. 6 : : 2016/06/03(金) 22:11:56
    ジャイロ「どうして無事か?…か…」


    御坂「この前の銀行強盗の時もそうです…あれは…」


    ジャイロ「…場所が悪いな」


    辺りを見回すと先程と同じ様に距離はとりつつも多くの生徒が二人を見ていた


    御坂「場所を変えますか?」


    ジャイロ「いや、もう飯を頼んでるだろ?…もし話をするなら放課後だな」


    御坂「…わかりました、では放課後に校門で待ってます」


    ジャイロ「いいだろう」


    ジャイロは席を立ちコックにエスプレッソを注文しに行き


    すれ違うように黒子が戻ってくる


    黒子「お姉様、聞けましたの?」


    御坂「話は放課後に…だってさ」


    黒子「そうですの…まぁ佐天さん達も呼べるのでいいのではありませんの?」


    御坂「放課後までが辛いわね」


    黒子「楽しみにしておりましたしね」


    エスプレッソを片手に戻ってくるジャイロ


    ジャイロ「それで…お前はどうして食蜂操祈にあそこまで食って掛かったんだ?」


    御坂「彼女は…能力を悪用する事があります」


    黒子「…(人の事を言えませんの)」


    黒子は自販機に回し上段蹴りをしたり自販機に電流を流して飲み物を取り出す御坂を思い浮かべる


    そうする理由は過去に一万円札を自販機に飲み込まれたから…らしいが自販機からお札がお釣りとして出てくる筈もなく、少し考えれば分かる事だった


    ジャイロ「悪用…ねぇ?」


    スティックシュガーをサラサラと入れて沈んだのを見てから一口飲む


    御坂「彼女の能力である心理掌握(メンタルアウト)は人の精神を自由に操作することが出来るんです、私は能力の相性で操作される事は有りませんが…」


    ジャイロ「それで操作させれてない俺はおかしいから能力者じゃないかって?(なんてもん使おうとしてんだよあいつ…)」


    御坂「ハッキリ言えばそうなります」


    ジャイロ「まぁそれも含めて放課後だ」


    グイッと2回でエスプレッソを飲み干し底に溜まった砂糖をスプーンで掬って口に運ぶジャイロ


    食事ができたらしく黒子と御坂が定食を取ってくる


    御坂「いただきます」


    黒子「いただきますの」


    カツ丼定食と焼き魚定食を食べる二人を見る


    カツ丼はまだしも黒子の焼き魚を食べる際の箸使いからもマナーが完璧に教えこまれてるのを悟る


    ジャイロ「…(中学生とは思えないな…本当に…)」


    黒子「何か?」


    ジャイロ「いや、何でもない」


    砂糖を食べ終わりカップを置く


    ジャイロ「確か風紀委員っていったか?いつもあんな現場に?」


    黒子「風紀委員は学園都市内での数少ない治安維持組織ですの 


    ジャイロ「治安維持組織…」


    黒子「えぇ…教員などの学園都市にいる大人から組織された警備員、そして生徒達から組織させた風紀委員、この2つが学園都市の治安を維持していますの」


    ジャイロ「なる程ね…」


    黒子「とはいえ先日のような事は稀ですの
    、流石に銀行強盗等はそうそう起きることではありませんから…通常は落し物探しだとか迷子の保護などの『外』で言う交番のような仕事が多いですわね」


    ジャイロ「それを毎日か…」


    黒子「それだけやり甲斐のある仕事ですの」


    御坂「にしても先生って日本語上手いよね?」


    ジャイロ「知り合いの彼女が日本人でな、教えてもらった」


    思い出すのは一人の親友とも言える男とその男の愛した女性


    黒子「いい講師をお持ちになったようですわね」


    ジャイロ「男言葉を教えるのは苦労したみたいだがな」


    御坂「先生、放課後の事だけど二人呼びたい子達が居るんだけどいいかな?」


    ジャイロ「この前一緒にいた子達か?」


    御坂「そうです、その子達も知りたいって」


    ジャイロ「まぁ一度見られてるしな…いいだろう」


    ジャイロ「じゃあ俺は先に戻る…放課後に校門の前だな?」


    御坂「はい、そうです」


    ジャイロ「わかった」


    そういって食堂を後にするジャイロを見送る二人


    黒子「初春にメールを送りますの」


    少ししてメールが帰ってくる


    黒子「二人共問題なく来れるそうですの」


    御坂「そっか…わかったわ」


    じゃあ午後の授業も頑張りますか…と残りの定食を平らげて二人共各々の教室に向かった
  7. 7 : : 2016/06/03(金) 23:35:54

    ー放課後、第一七七支部ー
    待ち合わせは第一七七支部、人は初春と佐天以外誰もおらずジャイロから出された人がいない場所の条件をクリアしている


    まだかまだかと待つ佐天と初春


    扉が開いて黒子と御坂、その後にジャイロが入ってくる


    黒子「ここなら私達以外暫く人は来ませんわ」


    ジャイロ「ここが風紀委員の支部ね」


    黒子「紹介しますの、こちらの頭がお花畑なのが私と同じく風紀委員の初春飾利でその隣が佐天涙子さんですの」


    よろしくお願いしますと頭を下げる佐天とお花畑じゃありませんと注意する初春


    ジャイロ「ジャイロ・ツェペリ…ジャイロって呼んでくれ」


    佐天「はい、ジャイロさん!」


    初春「そうだ、何かお飲み物を入れますが何か欲しいですか?皆さんも何かあれば出しますよ」


    御坂「私はオレンジジュースがいいかな」


    佐天「私もオレンジジュースがいい!」


    黒子「私はアイスコーヒーをお願いしますの」


    ジャイロ「そうだな…俺もアイスコーヒーを頼む」


    初春「はい、わかりました」


    直ぐにキッチンに向かって準備を始める初春


    飲み物を出すのが終わるまでは佐天が幾つか質問をしてジャイロがそれに答えるという雑談のような時間


    少しして初春が飲み物をそれぞれ持ってきたのを見計らい御坂が切り出す


    御坂「先生、お昼も言いましたが先日の先生が使った能力についてお聞きしたいんですが…」


    ジャイロ「…」


    その場にいたジャイロを除く全員がジャイロの言葉を待つ


    ジャイロ「…まず一つ言っておくことがある」


    御坂「…?」


    ジャイロ「俺がこの前使ったのも、今日食蜂操祈に対して使ったのも『能力』じゃない」


    キッパリと言いきる


    御坂「そんなはずは…」


    ジャイロ「信じられないか?俺からすればお前達の力の方が信じられない物だ」


    御坂「…」


    佐天「なら一体何なんですか?」


    ジャイロ「俺のは……『技術(ワザ)』だ」


    佐天「技術…?」


    黒子「技術…といいますと練習すれば出来ると?」


    ジャイロ「極論を言えばな」


    瞬間、ドクリ…と心臓が脈を打つのを佐天は感じた


    ジャイロ「まぁ今この世界でこれが出来るのは俺だけだろう…(ジョニィは多分似て非なるものだろうしな)」


    御坂「?」


    黒子「どういうことですの?」


    ジャイロ「この技術は一度廃れてるんだよ」


    初春「廃れた…?」


    ジャイロ「そうだ、それでこの技術の書いてある本を見つけたからある程度読み込んで何度か実践したら再現できたってとこか…」


    佐天「でもこの前の時の事も考えると廃れるような技術だと思わないんですけど…むしろ重宝されません?」


    ジャイロ「弱いから廃れたんじゃない…必要が無くなったから廃れたんだよ」


    初春「必要が…無くなる?」


    ジャイロ「まぁ見てくれれば早い」


    そういって腰のベルトに付けたガンベルトから緑色の球を2つ取り出す


    ジャイロ「使うのはこれだ」


    ゴトリ…と重い音が鳴る


    御坂「触ってもいいですか?」


    ジャイロ「あぁ」


    御坂が手に取り調べる


    御坂「鉄球…?」


    ジャイロ「そうだ」


    納得がいかない、この鉄球でどうして木が捻れたり食蜂を退けることが出来たのか


    御坂「これでどうやって…」


    ジャイロ「言ったはずだ、俺のは『技術』だと…」


    そういってジャイロが鉄球を手に取ると


    シュルシュルと鉄球が回転し始める


    御坂「うそ!?」


    黒子「!」


    初春「!?」


    佐天「いったい…」


    ジャイロ「大切なのは鉄球じゃなくてこの『回転』だ」


    別に鉄球じゃなくてもいい、例えばこのビー玉とかな…と迷子用の遊び道具の中にあったビー玉を回してみせる


    ジャイロ「この回転こそ俺の先祖が長い年月をかけて編み出した技術だ」


    御坂「この回転が…」


    ジャイロ「例えば…さっき俺は食蜂操祈に回転を使って食蜂操祈の筋肉を支配した」


    御坂「筋肉…?」


    ジャイロ「あぁ、何かをバックから取り出すのが見えたし敵意もあった…だから取り出す瞬間に彼女に気付かれないように彼女の足に鉄球を当てて回転させていた」


    御坂「その回転で何が?」


    ジャイロ「前腕から先の筋肉を弛緩させた」


    黒子「握力を奪った…という事でよろしいですの?」


    ジャイロ「そう考えていい」


    初春「でも体に鉄球なんて押し当てられたら気づかれませんか?」


    黒子「普通気付くと思いますが…」


    ジャイロ「初春だったな、手を開いてみろ」


    初春「へ?」


    初春が手を開くと、中には未だ回転し続けるビー玉が入っていた


    初春「え!?」
  8. 8 : : 2016/06/04(土) 10:56:18
    黒子「気づきませんでしたの!?」


    初春「は、はい…」


    御坂「どうして…」


    ジャイロ「皮膚までだ…」


    佐天「皮膚?」


    ジャイロ「そう、筋肉を支配しようとして筋肉に押し当てるようにすると気付かれる…だから皮膚までだ…皮膚を支配すれば筋肉も支配出来る…現に気付かなかっただろ?」


    初春「は…はい…」


    ジャイロ「俺の先祖が注目したのはこの筋肉を支配出来るという点だった」


    黒子「その必要性が無くなったから廃れた…」


    ジャイロ「そうだ、俺の先祖はある仕事を王から授かっていてな…その仕事に必要な技術だったんだ…この回転はな」


    初春「仕事?」


    ジャイロ「ちなみに日本にもあったな…今は方法も変わってるが似たようなものが残っててイタリアにはもう無い」

    全員が思案する


    御坂「…(日本にもあって…今は形が変わってる…?…筋肉を支配…動けなくする?)」


    ジャイロ「もう一つヒントを出すと…これが残ってるから日本は世界から非難される事がある」


    御坂「ッ…」


    この時点で御坂が気付いた


    ジャイロ「気付いたか?一抜けだな…」


    御坂「…」


    ジャイロ「この回転は自分達のためでもあるが…何よりも相手の為に必要だったんだ…この仕事にミスは許されない」


    黒子が次に気付く


    黒子「本当ですの?」


    ジャイロ「あぁ、今思い浮かべてるので間違いない」


    初春「んんん〜?」


    佐天「わかんないや…参りました…」


    一生懸命答えを見つけようとする初春と諦めた佐天


    ジャイロ「まぁ答え合わせだな…涙子だったか…少しいいか」


    佐天「へ?」


    いきなり名前を呼ばれた事もあり驚きで間の抜けた声が出る


    ジャイロ「少しそこに正座してみてくれ」


    佐天「はぁ…?」


    ペタンと正座をする…と


    ジャイロ「こうするんだ」


    背中に鉄球が触れる


    佐天「…?…ッ!?…えっ!?」


    御坂「…」


    黒子「…」


    初春「えっ?」


    グググ…と佐天の意思に反し体が前傾に


    倒れまいと手を付いた為に正座から土下座のような姿勢になる


    その姿勢から見動き一つ取れなくなり


    トン、と首筋に手を置かれる


    ジャイロ「俺の先祖はこういう仕事を任されていて、この為に回転の力が必要だったんだ」


    全てを理解して佐天は背中に鳥肌が立ち、初春は絶句した


    ジャイロ「家の書物を読む限り人の首を刎ねるってのは想像以上に難しいらしくてな…少しズレるだけで刃が途中で止まって即死させられなくなっちまう…しかも死にたくないもんだから相手は暴れるだろ?」


    黒子「だから尚の事難しくなる…と…」


    ジャイロ「そうだ、だからこの回転が必要とされた…見動き一つ取れなくし一撃で相手を即死させる…余計な苦痛を与えない…相手の為にな」


    御坂「イタリアでは斬首刑は遠い昔に廃止になったので廃れた…と…」


    ジャイロ「その通り」


    佐天「それを再現したんですね」


    ジャイロ「あぁ、最初は興味本位だったがな」


    佐天「でも一度失伝したものを再現するってのも凄いですよ…」


    ジャイロ「本残ってたから然程凄くもないけどな」


    初春「お父さんやお祖父ちゃんは使えなかったのですか?」


    ジャイロ「あぁ、まず書庫の奥の奥にあったし…本の存在すら知らなかっただろうな…曾祖父で使えたかどうかってところか?」


    御坂「という事はこの技術が残ってたのは19世紀の末辺りまで?」


    黒子「それくらいからは処刑も銃殺刑に移ったでしょうし妥当な所ですわね」


    ジャイロ「俺の先祖は代々処刑人として仕事をしてきた…その事を知ってるのは一家の主人とその妻、そして長男だけ」


    黒子「処刑人…辛い仕事なのでは?」


    ジャイロ「どうだろうな…むしろ誇りを持ってたかもしれないな…『人を人として尊厳を持ったまま死なせてやれる』…貴賎貧富に関係なく罪人を裁く尊い仕事とな」


    御坂「そういう考え方もあるのねぇ…」


    ジャイロ「とまぁ…俺からはここまでだ…食蜂操祈もこの前の木も使った技術は似たようなものだしな…」


    佐天「…」


    黒子「でも驚きましたわね」


    御坂「学園都市の力も使わずに能力に匹敵する力を身につける…」


    初春「しかも廃れた技術を興味本位で復活させるっていうのもまた凄いですね」


    ジャイロ「俺からはここまでだ…コーヒーありがとうな、今度は俺が本場の味って奴を教えてやるよ」


    初春「イタリアンコーヒー!楽しみにしてます!」


    ジャイロ「あぁ、任せとけ」


    黒子「お手間を取らせて申し訳ありませんの」


    御坂「今日はありがとうございました」
  9. 9 : : 2016/06/04(土) 17:12:41
    ジャイロ「あ、そうだ…この能力の事は他の人間には内緒だぞ…一度見たお前達だから教えたんだ」


    初春「大丈夫です!」


    黒子「プライバシーは守りますの」


    ジャイロ「ん」


    手を振り部屋を後にするジャイロ


    御坂「本当に『原石』っているのね…」


    黒子「彼は『技術』と仰っていましたが私達から見れば『原石』と何ら変わりありませんの」


    佐天「さてと…」


    初春「あれ?どこ行くんですか佐天さん?」


    佐天「私実は補習の課題あってさ…放ったらかしにしてここ来たんだよね…だから部屋に戻って課題進めちゃおうって事」


    初春「そうだったんですか…手伝いますか?」


    佐天「いいっていいって、自分でやるからこそだから…それじゃあまた明日!」


    御坂「またね」


    黒子「ですの」


    第一七七支部を後にする佐天


    嘘をついた


    補習の課題など出されてはいない、出されたとしても今やるつもりもない


    大通りに飛び出して『彼』を探す


    『可能性』を感じたから


    『超能力』ではなく『技術』


    『技術』ならば『無能力者(レベル0)』の自分でも出来るのではないか


    『彼女達に並べるんじゃないか』


    一人は学園都市に7人しかいない『超能力者(レベル5)』の第三位


    一人は『大能力者(レベル4)』にして風紀委員のエース


    一人は風紀委員の『目』としてエースを支える人間、実は学園都市で噂されている伝説的なハッカーだったりもする


    対して自分はどうだろう


    何も無い


    本来釣り合う訳がない存在


    そう彼女は感じていた


    三人に聞けば皆口を揃えて『そんな事はない』と言うだろう


    でも佐天はそう思えない


    何を聞いてもマイナスにしか受け取れない劣等感と言う名のフィルター


    『能力』を持つ彼女達には佐天の奥底の感情を本当の意味で理解は出来ない


    理解出来るのは…同じ無能力者のみなのだから


    佐天「まっ、待って下さい!」


    息を切らし、肩を上下させて追いついた


    ジャイロ「む?」


    膝に手を付き息を整えてすべての息を吐き出すように


    佐天「私に!その『技術』を教えて下さい!」


    想いをすべて吐き出す





    ジャイロ「断る」





    佐天「ッ…」


    そう言ったジャイロは思い出していた


    昔、教えてくれと懇願してきた男を


    同じ目、同じ必死さ


    ジャイロ「言ったはずだ、これはお前さんが求めるほど綺麗な物じゃない」


    佐天「それでも…」


    ジャイロ「人を殺す為に使われてた技術だ…血にまみれてる」


    佐天「銃だって一緒じゃないですか!…銃だって人によって守る道具にも殺す道具にもなるじゃないですか!」


    ジャイロ「なら…お前は何故この能力を欲した」


    佐天「……え?」


    ジャイロ「力が欲しいなら銃でいいだろ…銃がダメなら能力の開発に努力すればいいだろ」


    佐天「銃の所持は…犯罪になるし…能力は…私には有りません…」


    ジャイロ「この能力を手に入れて何をする?」


    佐天「それは……」


    ジャイロ「彼女達に認められたいのか?…それとも御坂美琴のように持て囃されたいのか?」


    佐天「違います!私はただ…」


    ジャイロ「……」


    佐天「ただッ……ッ……」


    嗚咽が混じり声が震える


    佐天「『並びたいッ…だけ』…なんです…」


    重なっていた


    ジャイロ「……(何でここまで似るのかね…)」


    過去に出会った親友の言葉を思い出す


    『ゼロ』に向かって行きたい


    そう言ったあの時の親友と同じ感情を吐き出している


    佐天「皆が…遠くに行っちゃうんです…私だけ…私だけが…『ゼロ』から進んでいないんです…」


    ジャイロ「……」


    彼女のような感情を持っている人間はこの街には多くいるだろう


    ジャイロ「……昔…お前の様な奴に出会ったんだ」


    佐天「……え?」


    ジャイロ「お前よりもずっと荒んでてな…そいつも君と同じ事言ってたよ…『ゼロ』からどころか…『ゼロ』に向かって進みたいってな…」


    佐天「……」


    ジャイロ「あいつはマイナスの中に生きてた…アイツの成長は…見ていて楽しかったよ…また…あの感情が味わえるのかね」


    佐天「じゃあ…」


    ジャイロ「いいだろう…この能力は超能力じゃない…だから持て囃される物でもない…それでもこれが欲しいか?」


    佐天「はい!」


    ジャイロ「…よし……ほら」


    鉄球を一つ手渡される


    佐天「い…いいんですか…?」


    ジャイロ「さっきも言っただろうコイツはただの鉄の球、重要なのは回転だって…鉄球はまたその辺の廃材置き場の鉄屑から作れる」
  10. 10 : : 2016/06/05(日) 00:13:26
    佐天「……」


    鉄球を見つめる


    ジャイロ「先ずはイメージだ…リアルにイメージしろ」


    佐天「イメージ…」


    ジャイロ「回るものをイメージして…回転が無限に続く感覚を持て、もし回せたらお前は一歩前進する」


    佐天「一歩…」


    ジャイロ「応用もなにもまずは回せるようになったらだ」


    佐天「はい!」


    ジャイロ「それじゃあ俺は帰る、もし回せたら…この番号に連絡しろ…俺のホテルの番号だ」


    佐天「わかりました!また明日、会いましょう!」


    ジャイロ「おう」


    バスに乗り込むジャイロ、その背中を見送る佐天


    佐天「ッッッ!!………やったッ!!」


    渡された鉄球を沈みかけた太陽に重ねながら喜びを噛み締める


    佐天「ふふ…」


    佐天が帰ろうと歩き出そうとした瞬間


    パン!と火薬が破裂したかのような音がする


    佐天「うひっ!?びっ…びっくりした…」


    音は植え込みから発されたようで植え込みの周囲に人だかりが出来ている


    佐天「イタズラかぁ…」


    気を取り直して歩き出す佐天


    そばの路地で男が呟く


    「いいぞ…少しずつ…強くなってる…凄いぞ…ふふふ…あはははは…」


    ーーー
    ーー



    ー翌日、常盤台中学ー


    ジャイロ「風紀委員…ですか…?」


    教師「そう、もし良かったら体験してみないかい?」


    ジャイロ「はぁ……」


    教師に呼び止められたジャイロ


    話は風紀委員への体験加入というものだった


    教師「君は講師という立場だけど生徒という立場も持ってるでしょ?危ない事はさせないからさ」


    ジャイロ「……因みに何処の所属に?」


    教師「第一七七支部になるね、内の生徒も所属してるからさ」


    ジャイロ「白井黒子ですか」


    教師「そう、知ってたんだ?」


    ジャイロ「えぇ、まぁ……いいでしょう、わかりました」


    教師「本当かい?…いやぁ……常盤台中学の教師は警備員が少ないんじゃないかって小言を言われててね…」


    ジャイロ「仕方ないでしょう…この学校の生徒を教えれる教師は少ないですから…怪我をしたら後が面倒ですし」


    教師「そう言ってもらえると助かるよ…こちらも裏方に回れるよう手を回すからさ」


    ジャイロ「えぇ、助かります(まぁ…チンピラに負けるほどやわな鍛え方はしてないが…)」


    学園都市での生活を体験する、その名目を利用した所か


    教師の背中を見送る


    ジャイロ「……いきなり行ってビックリさせてやるか」


    なんて言いながら入ってやろうかなんて考えながら職員室に向かう


    ジャイロ「とはいえ、まずは授業を消化しないとな」


    ーーー
    ーー



    授業を消化しきり、職員室に顔を出してから第一七七支部に向かう


    渡された風紀委員の腕章を荷物に入れて駐輪場へ、今回は道も覚えたのでバイクを使っての移動


    キーを回してヴァルキリーの目を覚まさせる


    ヴァルキリーの鼓動が身体の芯に響く心地よい感覚


    ジャイロ「すまねぇな…最近バス移動が多かったからよ…今日は思い切り走らせてやる」


    大通りを颯爽と駆けるヴァルキリーとジャイロに注目が集まる


    ジャイロ「少し遠回りしていくか…」


    風に長い髪を靡かせてビルからビルへと変わらない景色を眺める


    ジャイロ「…(景色が悪いな…仕方がないが…)」


    一通り満足したのか第一七七支部の前にヴァルキリーを止めて階段を上がる


    荷物から腕章を取り出し、取り付けてドアを開けた


    ーーー
    ーー


    ージャイロが扉を開ける10分前、第一七七支部ー


    佐天「…」


    初春「佐天さん?」


    佐天「なーにー?」


    間延びした返事をする佐天


    初春「今日はずっとそればかりですね…授業も上の空でしたし…」


    佐天は机に突っ伏しながら手の上の鉄球を指で弾く


    鉄球は少し回るもののすぐに止まる


    佐天「うん…もう少し…そんな感じなんだよなぁ…」


    初春「もう少し…?」


    佐天「うん…こんな感覚初めてなんだ…能力開発でもこんな感覚味わった事もない…なんて言えばいいのかな…取っ掛かりっていうのかな」


    初春「取っ掛かり…」


    佐天「そう…あと…少し…」


    初春「…」


    実は構ってもらえなくて寂しかったりするが、とても生き生きとした目をした親友を邪魔する訳にもいかないので冷たいお茶を出すことにした


    初春「お茶をお持ちしますね」


    佐天「んー…ありがとー」


    ふと窓の外に目を向ける佐天


    外では旋風が木の葉を巻き上げている


    佐天「…」


    回り続ける回転をイメージ


    佐天は回転のイメージは部屋にあった扇風機を見て回していた
  11. 11 : : 2016/06/05(日) 01:00:57
    しかし


    佐天「…(扇風機の機械的な回転とは違って滑らかだな…)」


    クルクルと踊るように回る葉に目を奪われる


    佐天「…(こっちにしてみよう)」


    クルクルと回る葉をイメージし、ピシッと指で鉄球を弾き力を加える





    佐天「…?…わっ…え!?」


    今までなら止まっていたタイミングでも未だにシュルシュルと鉄球が回り続けている


    佐天「う、初春!初春!」


    初春「お茶を持ってきましたよー…っあ!」


    見て見てと言わんばかりに腕を伸ばした佐天の手の平から鉄球が転がり落ち、初春の持っていたトレイの端へ


    シーソーのように鉄球が下へ、お茶の入った二人分のコップが上へと弾き飛ばされ…


    佐天「うわっ!?」


    佐天の上半身に直撃し、セーラー服がお茶を飲んでしまった


    初春「だ、大丈夫ですか佐天さん!?」


    佐天「うん…大丈夫だけど…っ…そうだ見て見て初春!さっき出来たの!回ったの!」


    初春「み、見ますから先ずは服を着替えてください!」


    佐天「え…でも着替えなんて持ってないし…」


    初春「こ、固法先輩がジャージを置いていた筈ですからそれを借りましょう!電話しますから!」


    佐天「うーん、ま、そうだね…こっちはどうしよう…」


    濡れたセーラー服を少し浮かして下半身まで濡れないようにする


    初春「ここでは泊まり込みで調べものが出来るように家具は一通り置いてあります!ですから洗濯機も使えます!今電話しますから服脱いじゃってください!」


    携帯の短縮ダイヤルを使い固法に電話し


    数回の呼出音の後に電話が繋がる


    『もしもし、どうしたの初春?』


    初春「固法先輩…いきなりなんですけど佐天さんがセーラー服を汚しちゃって…セーラー服を洗って乾かすまで支部に置いてある先輩のジャージ貸してもらってもいいですか?」


    『えぇ、大丈夫よ』


    初春「ありがとうございます!洗って元に戻しておきますから…」


    『別にいいわ、ジャージで走る訳でも無いんでしょ?着替えたらそのまま元に戻してくれればOKよ』


    初春「そうですか?ありがとうございます!佐天さん!ジャージ大丈夫みたいです!」


    佐天「わかったー」


    スカーフを外して上着を脱いでいく佐天


    シャツもダメだったようで上半身は下着のみ


    『あ、そうだ初春…』


    初春「なんですか?」


    『実は今日ね…常盤台中学に来てる交換留学生の方が…』


    ガチャリ、と扉が空く


    佐天「あぁ、白井さん?聞いてくださいよ〜…お茶をセーラー服に零しちゃっ……て……」


    ジャイロ「……」


    佐天「……」


    初春「……」


    『風紀委員に暫く体験加入するみたいだから…私は今日学校の用事があるしそっちいけないけど…もし来られたら簡単な説明お願いね』


    ジャイロ「まぁ…何だ………俺はその色嫌いじゃないぞ」


    バタン、と扉が閉じられ何事も無かったかのように時が動き出す


    佐天「ッッ………」


    扉越し、電話越しからも耳をつんざくような佐天の悲鳴が周囲の建物にまでこだました


    ーーー
    ーー



    ジャイロ「そんな気にすんなって…」


    佐天「します!……うぅ…見られたぁ……」


    初春「はい…大丈夫ですから…はい…はい…それではまた明日…はい…失礼します…」


    ピッと通話を切る初春


    初春「ふぅ…固法先輩があんなに焦ってるの久しぶりでした…」


    ジャイロ「凄ぇ声だったな」


    佐天「そもそもノックくらいしたらどうなんですか!?」


    ジャイロ「コイツはノックするのか?」


    初春「いえ全く」


    佐天を指さし聞くジャイロにキッパリと否定する初春


    佐天「う、裏切ったな初春!」


    初春「ひゃはぁ!?」


    バッサァっとスカートを捲る佐天と慌てて抑える初春


    ちゃっかり白と薄い黄色のストライプが見えたりもしたがジャイロは動じなかった


    ジャイロ「ま、ノックをするのが習慣だってんなら俺も謝ったがそうじゃないならお前が悪い」


    佐天「ううぅぅ…」


    初春「それはそれとして…固法先輩が行っていた新しく加入する風紀委員というのは…」


    ジャイロ「俺の事だな…コイツを見てもらえば分かるように俺も今日から暫くここの一員として放課後は顔を出すようになるからよ…よろしく頼む」


    初春「はい…よろしくお願いします先生!」


    ジャイロ「……それはそれとして…お前は何で着替えてたんだ?」


    佐天「ッそうだ!ジャイロさん!回転出来ました!」


    ジャイロ「……本当か?」


    着替えを見られた事などすっかり忘れてテンションが振り切れる


    佐天「はい!」


    ジャイロ「見せてみろ」
  12. 12 : : 2016/06/05(日) 17:22:50

    鉄球を手に乗せて深呼吸をする佐天


    初春もツバを飲み込みジャイロの隣で集中しており、ジャイロは初春の作ったインスタントコーヒーを飲む


    佐天「……(イメージ…イメージ…木の葉…旋風…滑らかに…クルクルと!)」


    外を見て風に舞う木の葉を見て指を弾く





    ジャイロ「!」


    初春「わっ!」


    佐天「…っ!ど、どうですか!」


    シュルシュルと手の平に留まり続ける鉄球


    初春「す!凄いです佐天さん!」


    佐天「でしょ!でしょ!」


    ジャイロ「…(力は弱いが…回転はしてる…)」


    顎に手を当てて考え込むジャイロ


    ジャイロ「よし、いいだろう…回転はしてるな」


    佐天「!!」


    ジャイロ「次は応用を教えていこう」


    ドン、とバックの中から一冊の本を取り出すジャイロ


    佐天「これ……」


    初春と佐天が覗き込むように見ると


    図鑑のような大きなの本の表紙は全裸の男性が円の中で手足を広げていると同時に正方形の四角形の中で脚を閉じ両の手を水平に掲げている図


    初春「な、何でしたっけこれ…よくテレビに出てくる図ですよね…?」


    佐天「う、うん…これは…」


    ジャイロ「表紙のはウィトルウィウス的人体図…でコイツはダ・ヴィンチの残した解剖学についてのノートをまとめたものだ」


    佐天「解剖学…?」


    ジャイロ「そうだ、この前教えたから知ってるだろうが俺の先祖は処刑人だといったよな?」


    初春「はい」


    ジャイロ「処刑人…ってのは一撃で首を刎ねる為に人間の身体を知り尽くしてなければいけない…」


    佐天「…」


    ゴクリ、とツバを飲み込む佐天


    ジャイロ「俺の一族は解剖学と医学から人体を理解する事で人間をどうすれば効率的に、且つ一撃で死に至らしめるかを発見したんだ」


    佐天「鉄球の技術で動きを止めて…医学と解剖学の知識から首を刎ねる位置を勉強した…ということですか?」


    ジャイロ「分かりやすく言えばそうだ」


    佐天「…でも私人の首なんて刎ねませんよ?」


    ジャイロ「これは人間の身体を理解しろって意味だ…人間の急所なんかの弱点、何処に回転を加えれば相手の手足や筋肉を操れるか…」


    初春「もしかしてこれを使ってジャイロさんも勉強を…?」


    ジャイロ「俺は鉄球と同時に医学と解剖学も勉強してたからな…一石二鳥って奴だ」


    佐天「で…でも……」


    パラパラとページを捲る佐天


    ジャイロ「中身はイタリア語だが…図が大半だし長ったらしい文章じゃなく単語が多い」


    ポン、と辞書を取り出すジャイロ


    ジャイロ「日英伊辞書だ、俺も使った」


    佐天「ま、まさか…」


    ジャイロ「自分で翻訳して勉強しろ」


    佐天「ええ!イタリア語じゃなくて日本語の解剖学書じゃダメなんですか!?」


    ジャイロ「あぁ、俺も日本語の物を探したりもしたが文章が長くて分かりにくかったり…何より美しくなかったからな」


    解剖学には結びつかない言葉が出てくる


    初春「う、美しくない?」


    ジャイロ「図がな、美しくないんだ」


    佐天「どういうことですか?」


    ジャイロ「お前らもさっき言ったけどこのウィトルウィウス的人体図は名前は知らなくても覚えてただろ?」


    佐天「えぇ…印象的でしたから…」


    ジャイロ「そうだ、ダ・ヴィンチの解剖学書は印象的な図が多い…知ってるよな?ダ・ヴィンチは画家でもある…構図の取り方から何まで人の目を引くもの、印象に残るものを描き残してる」


    佐天「だからわざわざこの解剖学の本を?」


    ジャイロ「そうだ、知識では知ってても目で見てわからなければ意味ないだろ」


    佐天「……」


    ジャイロ「出来ないか…?」


    初春「佐天さん…」


    ジャイロ「これは俺の持論だが…俺は何時だって遠回りをしてきた…目の前の道を敢えて逸れて…遠回りを」


    佐天「遠回り…」


    ジャイロ「俺にとってはそれが最短の道だったのさ…他の奴に流されて同じ道を歩んだらいつだって時間を取られ、無駄に終わった」


    初春「…」


    佐天「…」


    ジャイロ「お前の言うように近道を模索するのもいいだろう…楽な道を探すのもいいだろう…」


    だが…それは逃げなんじゃないか?


    その言葉が佐天を揺り動かす


    佐天「…わかりました…やりましょう…やってみせます!」


    鉄球だって回せたのだから…これも乗り越えれるはず、そう確信している


    ジャイロ「それでこそ、だ…地道だか確実に進んでいる実感はあるはずだ…その感覚を楽しめ涙子」


    名前を呼ばれる


    佐天「はい!」
  13. 13 : : 2016/06/07(火) 16:29:27

    すぐさま勉強に取り掛かった佐天を見ながらジャイロが話し始める


    ジャイロ「にしても風紀委員ってのは日頃何してるんだ?」


    腕章を弄りながら退屈そうに話す


    初春「この前白井さんが仰っていたように普段はパトロールでしょうか…通報があれば落し物や迷子の保護…稀に喧嘩の仲裁等も行います」


    ジャイロ「落し物や迷子の保護ならまだしも喧嘩の仲裁ねぇ…好きにやらせとけばいいんじゃねぇか?」


    初春「そうはいきませんよ……能力を用いて喧嘩をされたりしたら被害が大きくなりかねません」


    ジャイロ「ふぅん……まぁ俺は喧嘩の仲裁専門にしようかね」


    初春「そうですね、最近は白井さん一人だと対処しきれない程の通報が有りましたしこちらは歓迎です」


    扉が開き黒子と御坂が現れる


    黒子「少々遅れましたの…」


    どことなく焦げたような臭いを発する黒子と顔を赤らめながら入ってくる御坂


    御坂「アンタがいきなり抱きついてくるからでしょうが!」


    黒子「仕方ありませんの、体育の授業を終えたお姉様の汗の香りを嗅いでしまったらもう我慢などバカらしくなるんですの」


    御坂「あんたまだ凝りて……あれ?先生?」


    黒子「どうされたんですの?」


    そうだ、これを言うつもりだったと思い出し一言


    ジャイロ「風紀委員ですの」


    ーーー
    ーー



    ジャイロ「とまぁこういう訳だ、よろしくな」


    一通りの説明をし終えるジャイロ


    御坂「そんな事が…」


    黒子「正直気乗りしませんの」


    御坂「何で?」


    黒子「言わせてもらえばジャイロ先生は部外者、その方に書庫(バンク)を調べられるというのは…」


    御坂「確かに…高位能力者の情報は下手な国家機密レベルには大切だし…」


    黒子「学園都市が秘匿している情報を漏らす訳にはいきませんの」


    初春「んー…ならジャイロさんにはこちらから依頼を出すという事にしては?」


    ジャイロ「なんでもいいぜ?俺は頼まれただけだしな」


    黒子「……」


    御坂「いいじゃないの、最近あんた少し怪我して帰ってきてたし…手伝ってもらえば?」


    黒子「うぬぬ…た、確かに最近怪我をする事はありましたが…」


    御坂「はい、決定」


    パン、と手を叩き有無を言わせない御坂


    御坂「それよりもさっきから気になってたけど…佐天さん何してるの?」


    黒子「……?そうですわね…これは……解剖学の…?」


    佐天「はい…ジャイロさんに教えてもらってるんです」


    黒子「何でですの…?」


    佐天「いやぁ…ジャイロさんから回転の『技術』を教えてもらおうと…」


    恥ずかしそうに呟く佐天


    初春「…」


    黒子「…」


    御坂「…」


    三人は何も言わない


    彼女がどうしてこの『技術』を欲したのか、理由は嫌でもわかる


    佐天「そんな落ち込まないでくださいよ!」


    場の空気を取り繕う佐天


    御坂「そう…ね」


    黒子「折角顔を出しましたし…見回りに行ってきますの。初春、何かあれば私の携帯に連絡を」


    初春「わかりました!」


    ジャイロ「俺も行くか?」


    黒子「外部の方を怪我させたとあっては外交等にヒビが入りかねませんの…ここにいてくださいまし」


    ジャイロ「俺は裏方なんて柄じゃないんだがな」


    黒子「それは私も承知していますの…ですが貴方にも立場というものがありますの」


    ジャイロ「あ〜あ…」


    黒子「それでは失礼しますの」


    シュン、と黒子が消える


    ジャイロ「いつ見ても面白いな、瞬間移動ってのは」


    御坂「私からしたら先生の鉄球の方が面白いですよ」


    ジャイロ「そうか…?俺のなんて所詮野球でいう変化球の延長線上だぞ」


    御坂「延長線上といっても果ての果てじゃないですか…」


    その時、支部の電話が鳴る


    初春「はい、風紀委員です……はい……わかりました!」


    電話を切り即座にヘッドセットから黒子へコールする初春


    初春「白井さんですか、第七学区のコンビニで不審物があるとの通報が入りました」


    ジャイロ「不審物…?…爆弾でもあるまいし」


    初春「…爆発っ!?どういうことですか!?」


    ジャイロ「何?」


    佐天「へっ!?」


    初春「はい…はい…わかりました…」


    カチリ、とヘッドセットのスイッチを切る初春


    ジャイロ「どうした」


    初春「第七学区のコンビニで不審物があると先程通報がありました…そして…現地にたまたま居合わせた風紀委員が先に到着し、不審物を調べた所突如爆発し重傷を負ったと…白井さんが…」


    ジャイロ「おいおい、そりゃもうテロじゃねぇか」
  14. 14 : : 2016/06/08(水) 01:18:54
    初春「今白井さんから応急処置を受けている風紀委員の方によると爆発したのは人形との事らしいです」


    ジャイロ「……何?……人形?……紙袋にでも入ってたのか?」


    初春「いえ、人形がそのまま落ちていたそうです…それがいきなり縮んで爆発したと…」


    御坂「…(縮んだ?)」


    ジャイロ「因みに他に不審物と言える物は無かったってことでいいのか?」


    初春「はい、他には…」


    ジャイロ「……」


    考え込むジャイロ


    佐天「どうしたんですか?」


    ジャイロ「……おかしいと思わないのか?」


    佐天「?」


    ジャイロ「通報では不審物という事だったな?」


    初春「えぇ、そうですけど…」


    ジャイロ「でも爆発したのは『人形』だった…おかしいだろ?」


    御坂「……なる程」


    佐天「??」


    ジャイロ「いいか?…お前がもし人形が落ちてるのを見て風紀委員に連絡をしようとしたら…なんて言う?」


    佐天「それは…『人形が落ちてるから落し物として回収して欲しい』…って……あぁ!」


    ジャイロ「わかったか?…普通人形が落ちてたら『不審物がある』なんて連絡しないだろ…するなら『落し物がある』…だろ?」


    佐天「確かに…でも何で…」


    初春「……」 


    考え込む佐天と初春


    ジャイロ「なのに通報した人間は『不審物』だとわかっていた…見た目はただの人形なのにな?」


    御坂「不審物なんて言うのは『その物体』が危険であるという可能性を含んでいるから…バックにも入ってない只の人形を『不審物』と言ったのは…」


    初春・佐天「『危険だとわかっていたから』!!」


    気付いた佐天と初春が顔を合わせる


    ジャイロ「そうだ、じゃあ只の人形を爆発する前に危険だと知っていた人間は?」


    初春・佐天「『犯人』!」


    ジャイロ「正解だ」


    初春「通報して来た電話を特定します!」


    即座にキーボードを叩き始める初春


    佐天「それにしても凄いですね…こんな事に気付くなんて…」


    ジャイロ「分かるのはこれだけじゃない、初春…コンビニ周辺の監視カメラの映像出せるか?」


    初春「はい、こちらです」


    パッとコンビニが映り、黒い煙が立ち昇っている映像が映し出される


    ジャイロ「……」


    周辺の建物、コンビニのそばの大通りにいる野次馬が映し出されていく


    ジャイロ「やっぱりな、犯人はこのコンビニの周辺にいたんだ」


    キッパリと言い切るジャイロ


    佐天「こんな近くにですか?」


    初春「何で…?」


    ジャイロ「それと…犯人は『風紀委員(ジャッジメント)』を狙ってるってことも分かる」


    佐天「風紀委員を…?」


    ジャイロ「理由は通報が入った時間と爆弾が爆発した時間のタイムラグの少なさだ」


    佐天「タイムラグ…」


    ジャイロ「恐らく犯人は風紀委員の到着はもう少し遅いと考えていた」


    初春「確かに…白井さんならまだしも普通の風紀委員の方は移動は徒歩になりますから…」


    ジャイロ「そうだ、だが偶然にも近くを事情の知らない風紀委員が通りがかり人形を回収した」


    御坂「だから爆破した」


    ジャイロ「だが直ぐに爆破するには現場が見える位置じゃないといけない」


    御坂「周囲をビルに囲まれたこのコンビニでは遠方からの監視は出来ないって事ですね」


    ジャイロ「だから犯人はこの周辺で風紀委員の到着を待っていた…いや…今もいるかもしれねぇな」


    佐天「ここにですか?」


    ジャイロ「あぁ、この混乱を見て楽しんでるかもしれねぇ…初春、これに似たようなものは以前にもあったか?」


    初春「えっと……はい、怪我人は出ていませんが…深夜に別のコンビニで爆発騒ぎがあったようです」


    ジャイロ「深夜から人通りの多い日中にシフトし、更には風紀委員が怪我を負うように仕向けた…」


    御坂「この事件…エスカレートしてる…」


    ジャイロ「愉快犯の典型だな、人が自分の起こした事件で混乱する様子を楽しんでる。これはまだ続くぞ…止めないとその内一般人にも被害が出かねない」


    佐天「でもどうやってですか?人物の特定もまだ…」


    御坂「初春さん、さっき爆弾が爆発した時人形が縮んだって言ってたわよね」


    初春「はい」


    御坂「なら周辺で能力による何らかの異常が出てるはずなんだけど…わかったりする?」


    初春「大丈夫です……っと、ありました…重力子の増大を観測してます」


    映し出されたグラフの一つが桁違いに伸びているのがわかる


    御坂「重力子……量子変速(シンクロトロン)の可能性が高いわね、それも高位の…特定は楽じゃないかしら」
  15. 15 : : 2016/06/08(水) 22:01:25
    初春「書庫を当たってみます……っと……出ました」


    モニターに一人の生徒の画像が映し出される


    御坂「釧路帷子……大能力者(レベル4)…彼女なら出来そうね」


    初春「ですがこちらを見ていただければ分かるように…」


    詳細のページが表示され、御坂は首を傾げる


    御坂「昏睡により入院……?」


    『原因不明の昏睡』により入院の文字


    ジャイロ「……この学生には無理みたいだな」


    御坂「でも……他に出来そうな人間は…」


    ジャイロ「いないのか?」


    御坂「同系統の能力者ならいると思いますが…ここまでの規模の爆発を起こせるとなるとレベル4相当でないと」


    ジャイロ「……手詰まりって奴だな」


    初春「…」


    佐天「じゃ、じゃあその同系統の人のレベルが上がってた……とかは……無いですよね…」


    御坂「可能性は0じゃないけど……難しいわね」


    ジャイロ「だが着眼点は悪くない、一応同系統の能力者をピックアップしておくべきだ、初春」


    初春「わかりました!」


    顔写真等が表示されていき、プリンターから紙が数枚吐き出されてくる


    ジャイロ「よし…じゃあ明日は張り込むか」


    初春「へ…?」


    ジャイロ「犯人はもっと大人数がパニックになるような場所を選ぶ、このコンビニ周辺も人は多いがここよりももっと人が多くなる場所がある…」


    初春「…?」


    佐天「セブンスミスト……」


    ジャイロ「そうだ、そこでもし爆弾が爆発しようものなら大パニック間違いなしだ」


    御坂「でも……風紀委員がいないとダメなんじゃ…?」


    ジャイロ「そこでこいつの出番だ」


    ジャイロが腕章をつまんでみせる


    初春「囮になるつもりですか!?」


    ジャイロ「あぁ…爆弾が爆発しても俺なら軽傷程度に抑えることは出来るだろうから俺が適任だろ」


    御坂「それはできません。いくら先生が納得しても先生の大学の事もあります」


    ジャイロ「じゃあ俺から大学側には伝える、それに大学側も軽くとはいえ学園都市に恩を売れると考えれば頷く可能性も無くはない」


    初春「ですが…」


    ジャイロ「いいんだよ、俺が納得してんだから…大学だって俺に怪我されちゃあ困るだろうが俺にそっぽ向かれても困る位には俺は大学の顔として立てられてんだよ」


    佐天「…(やっぱりジャイロ先生優秀なんだ…)」


    ジャイロ「じゃあ明日セブンスミストに行くぞ」


    そうして作戦の決行は明日となった


    後々作戦を聞いた黒子を説得するのに何十分と時間を費やしたのは言うまでも無い


    ーーーーー
    ーーーー
    ーーー
    ーー



    ー翌日、セブンスミストー


    初春「にしても…本当に犯人は仕掛けてくるんですか…?…今日という確証もないと思いますけど…それにジャイロ先生は少し遅れてくるらしいですし…」


    アクセサリーや文房具の売っているお店で小さなウサギのアクセサリーを弄びながら考え込む初春


    御坂「ジャイロ先生は少し呼び止められたらしいわよ?…でもすぐに向かうって言ってた。それに爆弾魔が仕掛けてくる可能性は高いと思うわ」


    御坂はキルグマーのシャープペンシルをカチカチとノックしている


    佐天「何でですか?」


    御坂「この前の深夜のコンビニが一昨日、前回のコンビニが昨日…今日も考えられない?」


    初春「んー…規則性として決定付けるにはまだ足りないですね…でも十分に考えられる可能性もありますし…」


    佐天「張り込む価値はある!って事ね〜」


    佐天は両端が緑色と赤色の二色の暗記用のペンと単語帳をパラパラと捲る


    それぞれレジを通して店を後にする


    初春「次はどこに行きますか?」


    佐天「下着見ようよ下着!いいの選んであげるからさぁ!こっちこっち!」


    初春「もー佐天さんったら…爆弾魔がわたしたちを狙ってるかも知れないのに…」


    下着売り場に着くと佐天はそばのワゴンから一枚の下着を手に取り


    佐天「初春!これなんてどう?私がスカート捲ってもむしろ見せつけられるよ〜?」


    ニヤニヤと笑う佐天の手にあるのは赤色の下着


    初春「む、無理ですよそんな大人なの!それに捲らないでください!」


    御坂「…あ」


    突如何かに気付いたかのように声を上げる御坂


    初春「?…どうしたんですか?」


    御坂「うぅん、何でもないよ?」


    初春「そうですか、御坂さんは何か捜し物などありますか?」


    御坂「ん〜、私はパジャマかなぁ」


    初春「じゃあこちらです!」


    手を引かれるように向かう中、御坂は首を回して振り返る


    先には下着売り場の一枚の下着


    御坂「……(あれ可愛いな…)」


    あったのはキルグマーがプリントされたキャラ物の下着だった
  16. 16 : : 2016/06/09(木) 01:47:17
    キルグマーに後ろ髪を引かれながらもパジャマ売り場に着いた三人


    佐天「いやー、いっぱいありますね」


    御坂「あ、あれ黒子が着てた奴に少し似てるわね」


    指差した先はとても中学生が着るものとは思えないもの


    佐天「うわぁ…か…過激ですね…」


    初春「流石白井さん…」


    御坂「…あ」


    御坂が足を止める


    目に留まったのは、ピンク色の下地に様々なパステルカラーの花柄がふんだんに使われたパジャマ


    御坂「…ねぇねぇ、あれ」


    御坂が指差し


    佐天「うわ…見てよ初春あのパジャマ、あんなの今時の小学生でも着るかどうか…」


    初春「私も小さい頃は着てましたが今はもう着てませんね…」


    御坂「……」


    ガックリと肩を落とす


    佐天「あっち行ってみよ初春!」


    初春「わわわ、引っ張らないでくださいよ佐天さん!」


    御坂「……(ちょっとだけ…ちょっとだけ身体に当てるだけだから……)」


    初春達が離れた隙にパジャマを手に取り初春や佐天の位置を確認し


    御坂「…(今だっ!)」


    鏡に向かって身体にパジャマを当てる


    御坂「……え」


    鏡に映っていたのはパジャマを当てた自分と


    ジャイロ「いくら頭が良くても……やっぱ歳相応ってやつだな」


    ジャイロだった


    御坂「せっ……せせせせ先生!?いやっ、これはその!昔を思い出してですね!?」


    慌ててパジャマを背中に隠す御坂


    ジャイロ「そうなのか?」


    御坂「えぇそれはもう!こんなの今時の小学生も着ませんよ!」


    ジャイロ「そうなのか…俺は好きだけどなぁその柄、可愛いし」


    御坂「へっ?」


    ジャイロ「いや、だって可愛くないか?」


    御坂「か、可愛い…?」


    ジャイロ「あぁ、可愛い物は好きだぞ」


    ほら、とジャイロが紙袋から買ってきたであろう物を取り出す



    御坂「……キ、キルグマー?」


    それは御坂が部屋のベッドの下に隠している巨大キルグマーの小さいタイプだった


    ジャイロ「あぁ、俺もテディベア持ってるんだけどよ…イタリアに忘れてきちまってな…同じテディベアを買うって言うのも味気無いからコイツをな」


    キルグマーを紙袋に戻すジャイロ


    御坂「先生って……テディベア抱いて寝たりするんですか?」


    ジャイロ「抱いてとまでは言わないが…ベッドのそばにはあるな」


    御坂「イ…イメージが……(あんたイギリス人じゃなくてイタリア人でしょうが……)」


    ジャイロ「何だよ、俺を完璧超人だとでも思ってたのか?」


    その時


    女の子「お兄ちゃん、お姉さんたち見つけた?」


    ピンクのバッグを下げた女の子がジャイロに声をかける


    ジャイロ「おぉ、見つかった見つかった…ありがとうな手伝ってくれて…これはお礼だ」


    レジ袋から先程のキルグマーから更に一回り小さなキルグマーを手渡すジャイロ


    女の子「わぁ!可愛い!ありがとうお兄ちゃん!」


    バッグの中に大切そうにしまう女の子とそれを見て微笑むジャイロ


    女の子「私もお服買ってオシャレするの!だからお母さんの所に戻らないと!またねお兄ちゃん!もう迷子になっちゃダメだよ〜!」


    ジャイロ「おう、任せとけ」


    手を振りながら走り去っていく女の子に手を振り返すジャイロ


    御坂「迷子って…」


    ジャイロ「ここについてからお前ら探そうとウロウロしてたらあの子に話しかけられて…お前達の特徴教えたらさっき見かけたって言われてな」


    御坂「特徴…」


    ジャイロ「あぁ、一人はサラサラした長い黒髪の娘…もう一人は頭に満開の花飾りを着けた娘…んで最後はスカートの下に短パン履いた茶髪の娘ってな」


    御坂「ちょっ、なんで私だけそんな特徴なんですか!?」


    ジャイロ「いや、さっきの子がスカートの下に短パン履いてた女の人なら知ってるって…よっぽど印象的だったんだな」


    御坂「そうかもしれませんけど!なんで先生は私が短パン履いてるって知ってるんですか!?」


    ジャイロ「黒子に相談された。どうしたら短パンを履かないようになるかってな」


    御坂「く〜〜ろ〜〜こ〜〜…」


    御坂の額からパチパチと電気がほとばしる


    佐天「あれ?ジャイロ先生やっと来たんですか?」


    ジャイロ「おう、待たせたな」


    初春「それじゃあ…どうしますか?」


    佐天「どうもこうもこっちは待つだけだから、買い物でもしてればいいんじゃない?」


    初春「緊張感の欠片もないですね」


    ジャイロ「ずっと気張ってもしょうがねぇ、今の内にリラックスしとけ」


    御坂「……(さっきのキルグマーの下着とパジャマ…今度買いに来よう)」


    初春「大丈夫かなぁ……」
  17. 17 : : 2016/06/09(木) 16:46:03
    初春の携帯に着信が入る


    初春「…白井さんからです」


    四人の間の空気が引き締まる


    初春「はい、白井さんですか?」


    『ドンピシャですの初春、衛星が重力子の爆発的な加速を確認しましたの』


    初春「場所はセブンスミストですね」


    『えぇ、そうですの』


    初春「わかりました、今すぐ避難誘導を始めます」


    パタンと携帯を閉じた初春が真剣な口調で話す


    初春「御坂さん、ジャイロ先生、手伝って貰えますか?」


    御坂「わかったわ」


    ジャイロ「涙子、作戦通りに頼むぞ?」


    佐天「はい」


    一つの鉄球を握りしめ出口へ走り出す


    佐天「……(私達の予想が正しいなら…『この中』の誰かがいるはず)」


    プリントアウトされた紙を開く


    中には数人の学生の顔写真と名前


    『お客様にご連絡申し上げます…現在、電気系統の故障を確認したため…本日の営業は……』


    初春が店員に連絡したのだろう


    営業の中止と避難誘導が始まる


    佐天「すいません、通ります〜!」


    出口へ向かう人混みを掻き分けて佐天は外へ飛び出した


    ーーー
    ーー



    初春「慌てないでこちらの指示にしたがって下さ〜い!」


    数人を出口へ向かわせあたりを見回す


    ジャイロ「これで全員か」


    初春「はい、辺りに人はいません」


    御坂「さて…そろそろ支部の方で昨日みたいに通報が入るはずだけど…」


    女の子「お兄ちゃ〜ん!」


    女の子がぬいぐるみを持って走ってくる


    初春「まさかあれが!?」


    御坂「ちょっと嘘でしょ!?」


    慌てる御坂と初春


    ジャイロ「……御坂、初春と自分を守れるか」


    ジャイロは女の子にズンズンと近づいていく


    御坂「は、はい!ですが!」


    ジャイロ「余計な事はするな、自分の身を守ることだけ考えろ」


    御坂「……(私の超電磁砲なら……いや、言う事を聞くべきね)」


    ジャイロの真剣な眼差しを見て考えを改める御坂


    御坂「初春さん、こっちへ!」


    初春「は、はい!」


    洋服を置いていたワゴンや棚を能力で引き寄せ固定、強固な壁を作り出す


    女の子「はい、眼鏡のお兄ちゃんがお兄ちゃんに渡してって!」


    ジャイロがぬいぐるみを受け取るとぬいぐるみがグシャリと潰れていく


    ジャイロ「やってくれるな…」


    バスン!とぬいぐるみを遠くに蹴り飛ばすジャイロ


    ジャイロ「鉄球を作り直しといてよかったよ」


    自分と女の子に鉄球を当て回転させる


    女の子「えっ?」


    ジャイロ「目を閉じて耳をふさいでから口を開けるんだ」


    女の子「あ、え?」


    ジャイロ「ほら、真似して」


    女の子「う、うん」


    目を閉じて耳をふさいだ後口を開ける女の子を見たジャイロは肩に片耳を当て、手でもう片方の耳を塞いだ後女の子を抱きとめて遠くに蹴り飛ばしたぬいぐるみに背を向けた


    その時


    ーーー
    ーー



    ズドン!!!


    佐天「っ!」


    窓ガラスが吹き飛び中から爆炎が飛び出す


    ザワザワと騒ぐ民衆


    中には爆弾魔の仕業だと言い出す者もいる


    佐天「……(大丈夫、ジャイロ先生なら大丈夫!)」


    人混みから少し離れた位置から見回す


    人混みとセブンスミスト、両方を視界に入れる事の出来る位置…


    その位置にいる人物の顔と紙の顔写真を見比べていく


    佐天「……(見つけた……介旅初矢……)」


    介旅の表情を見て確信する


    他の人間はそれぞれ心配そうな顔をしていたり


    自分が今までいた場所が爆破され驚いたあと、自分がもし巻き込まれていたらと恐怖した顔をしていたが


    介旅だけは頬を吊り上げてニヤついており


    介旅がふらりと路地裏に入っていくのを見て後を追った



    ーーー
    ーー



    介旅「いいぞ…徐々に力を使いこなせるようになってきた…もうすぐだ!あと少し数をこなせばあの無能な風紀委員も、不良達も皆纏めて吹き飛ばせる!」


    アハハハハと高らかに笑う介旅


    「見つけましたよ…爆弾魔さん…」
  18. 18 : : 2016/06/09(木) 17:58:24
    ピタリ…と介旅の動きが止まる


    介旅「一体……何を言ってるのか分からないな…」


    佐天「………とぼけますか」


    介旅「とぼけるも何もなんの事か僕にはわからないよ」


    佐天「じゃあ別にいいです…『これは只の八つ当たりですから』」


    介旅「は?」


    ドスン、と介旅の腹部に鉄球が投げ込まれる


    介旅「ガッ!?………ぐぇ…」


    佐天「……疑わしきは罰すると言いますもんね?」


    介旅「お前……くっ……こんな事をして只で済むとでも…思ってるのか!?」


    腹を押さえうずくまりながら叫ぶ介旅


    佐天「思いませんよ?」


    パシリ、と戻ってきた鉄球を掴む


    介旅「っ…(念動力……?)」


    佐天「もし貴方が無罪なら私は只じゃすまないでしょうね……」


    介旅「なら…」


    佐天「『でもやめません』」


    介旅「!?」


    佐天「言った筈ですよ?…『これは只の八つ当たりですから』って……」


    投球体勢に入る佐天


    介旅「うっ……ぐ……クソおおお!」


    落ちていた自分のバッグからスプーンを掴み取り佐天に向かって投げようとする介旅


    佐天「…」


    介旅が腕を振り上げたタイミングで肘に鉄球を投げ込む


    鉄球は命中


    回転の力で前腕の筋肉が弛緩し介旅の指先からスプーンが背後へとすっぽぬける


    介旅「っ!?しまっ!」


    背後でスプーンが爆発し、爆風で前に転がるようにして吹き飛ばされる介旅


    介旅「ぐ…」


    携帯を取り出す佐天


    佐天「……白井さん…確認とれましたか?……えぇ、はい……わかりました……それじゃあ直ぐにお願いします」


    携帯をしまい介旅に近づく


    佐天「今ここで重力子の爆発的な加速を衛星が確認したみたいです…『何よりの証拠』ですよ…爆弾魔さん?」


    介旅「くっ………いつも……いつも何をやっても『力』でねじ伏せられる…」


    佐天「……」


    介旅「殺してやる…!お前だって風紀委員と同罪だ!『力』のある奴は皆そうだろうが!」


    佐天「………『能力(ちから)』なら私だって欲しいですよ」


    介旅「あぁ!?」


    佐天「貴方…『異能力者(レベル2)』ですよね」


    介旅「だからさ!能力があっても暴力でねじ伏せられるんだ!だから僕は『幻想御手(レベルアッパー)』を使って……!」


    佐天「……ゼロです」


    介旅「ぁ…?」


    佐天「私のレベルはゼロ…無能力者です」


    介旅「そ……そんな筈はあるか!じゃあさっきの『能力(ちから)』は何だって言うんだよ!?」


    佐天「……さっきのは『能力(ちから)』じゃありません、『技術(わざ)』です」


    介旅「…わ…『技術(わざ)』…?」


    佐天「『無能力者(レベル0)』の私が…絶望していた私に希望をくれた一つの可能性…それがこの『技術(わざ)』です」


    信じられないと頭を抱える介旅


    介旅「そんな…じゃあ僕は……無能力者に負けたって言うのか……?」


    佐天「私は能力が欲しかった…でも…能力があっても……今の貴方の様になるくらいなら…そんな物いらない…!」


    それは決意


    佐天「人を傷付ける為に能力を手に入れる位ならそんな物はいらない!…私は…人を守る為にこの技術を得たんです!」


    介旅「う……」


    佐天「覚悟して下さい…」


    再び投球体勢に入る


    佐天「『もういっぱつ!!』」


    介旅「う、うわああああ!」




    ドグシャ!!




    と介旅の側の室外機がひしゃげる


    介旅「ひ……あ……?」


    佐天「……もし……もし私の親友達とジャイロ先生が怪我をしてたら…私は鉄球を貴方の顔面に投げ込んでました」


    介旅「……」


    佐天「それじゃあ白井さん、お願いしますね」


    いつの間にか介旅の背後にいた黒子に声をかける


    黒子「はいな、ほらお立ち下さいまし…行きますわよ」


    介旅「……」


    シュン、と介旅ごと瞬間移動をした黒子を見届ける佐天


    『だから僕は幻想御手(レベルアッパー)を使って!』


    介旅の言葉を思い出し呟く


    佐天「幻想御手(レベルアッパー)……本当に有るんだ……でも…」



    パシリと鉄球を手に戻しみつめる


    佐天「もういらないかな!」


    携帯を取り出し初春にコールする


    佐天「初春?…こっちは上手く行ったよ〜?うん…そっちは大丈夫〜?」


    ーーーー
    ーーー
    ーー
  19. 19 : : 2016/06/09(木) 23:19:26
    ー爆発後、セブンスミストー


    爆発した衝撃で気を失っていた初春


    目を覚まし辺りを見回す


    「気付いた?」


    初春の隣には御坂


    御坂「結構威力高かったけど…」


    能力を解除し固めていたバリケードを崩す


    御坂「先生!!」


    ジャイロ「おう、無事だったか」


    御坂「えぇ…女の子は…」


    ジャイロ「気絶してるだけだ」


    女の子は意識を失っており、ジャイロに抱えられていた


    ジャイロ「ったく…まさかこの子を使うとはなぁ…おかげで気に入ってたジャケットがパァだよ」


    御坂「…」


    ジャケットの背中の部分はところどころ黒く焦げており爆発の威力を物語っている


    御坂「因みに…何をしたんですか?」


    ジャイロ「知りたいか?」


    御坂「それはそうですけど…」


    ジャイロ「まぁ…今は連絡だ、初春」


    初春「はい」


    ジャイロ「黒子に無事だと連絡しといてくれ…一応この後は病院で精密検査受けるぞ」


    初春「はい」


    短縮ダイヤルで黒子へコール


    『無事でしたの初春!』


    初春「はい、こちらは怪我人等はいません」


    『そうでしたの…よかった…佐天さんにもそう伝えておきますの』


    初春「はい、お願いします」


    ジャイロ「さて…後は涙子だが…」


    御坂「上手く行きますかね」


    ジャイロ「当たり前だ…回転は無限の力だぞ?」


    その時


    ドン、と少し離れた位置から爆音がする


    初春「さ、佐天さん…本当に大丈夫ですかね…」


    ジャイロ「大丈夫だ」


    女の子をベンチに寝かせて少し焦げたジャケットをかける


    ジャイロ「さてと…ジュースでも買ってくるが…何かいるか?」


    御坂「じゃあヤシの実サイダーお願いします」


    初春「私もそれで…」


    ジャイロ「ま、その子の分もそれでいいか…」


    ジャケットから財布を取り出し自販機へ向かう


    自販機に着くと


    ジャイロ「ヤシの実サイダー…っと……は?」


    自販機にあったのはヤシの実サイダー等のまぁ普通に飲めそうな物から


    いちごおでんやスープカレー、果ては冷たいお汁粉等の謎飲料が


    ジャイロ「……(いちごはわかる…でも『おでん』…って…あの『おでん』だよな?)」


    頭を埋め尽くす?マークを無視して4本のヤシの実サイダーを買う


    ジャイロ「涙子と黒子の分は後でいいか」


    御坂達の元へ戻ると女の子が目を覚ましていた


    女の子「え…ここどこ…お母さん…お母さん…?」


    ジャイロ「よ、びっくりしたな」


    女の子「お、お兄ちゃん…」


    ジャイロ「もうすぐお母さんもここに来るから少し待とう、な?」


    ヤシの実サイダーを一本手渡す


    ジャイロ「頭痛かったりしないか?」


    女の子「うん…大丈夫…」


    ジャイロ「そうか、なら良かった…でも一応後でお医者さんの所に行こうな?」


    女の子「あ、じゃあカエルのおじちゃんの所がいい!」


    ジャイロ「カエルのおじちゃん?」


    女の子「うん、カエルのおじちゃんに診てもらうと風邪もすぐに治るんだよ!」


    御坂「カエル…」


    ジャイロ「そうか、じゃあそのお医者さんに見てもらおう」


    その時初春の携帯が鳴る


    初春「佐天さんからです!…もしもし佐天さんですか!?…はい、わかりました、こちらは大丈夫です…えぇ、それではまた後で」


    御坂「どうだって?」


    初春「上手く行ったみたいです…はぁ〜…」


    ジャイロ「な?大丈夫だったろ?」


    初春「心配したんですからね…もう…」


    遠くからサイレンの音が聞こえる


    ジャイロ「警備員達が来たみたいだな…」


    御坂「終わったんですね…」


    ジャイロ「あぁ、後は精密検査だ」


    その後病院へ行き精密検査を受けた全員


    女の子も身体に異常は見られず検査後直ぐに帰ることになった


    ーーー
    ーー
  20. 20 : : 2016/06/10(金) 02:24:33
    固法「……にしても…本当に変わった能力ね」


    手の平の上で回り続ける鉄球を眺めて呟く固法


    精密検査を終えた後


    第一七七支部に帰ってきた一行は介旅初矢を無力化したのは佐天だと聞いた固法に色々と問い詰められてしまい


    洗いざらい話すことになった


    佐天「技術ですって」


    固法「あぁ、ごめんごめん…そうだったわね」


    佐天「可能な限り人には教えない方がいいんですけど…固法先輩はこれからもジャイロ先生を通じて関わりが深くなるので今の内に知っておいて貰おうって訳です」


    固法「別に言いふらすつもりは無いけど…他の人に見られたらどう言い訳するつもり?」


    佐天「取り敢えず御坂さんと相談した結果磁力操作に特化した能力とでも…」


    御坂「私も鉄球を引き寄せるだけなら出来るしそうしとくのが都合いいと思って」


    固法「苦しい気もするけど…まぁ何とかなるかな…にしても…この能力…いや技術はレベルにしたらどれくらいなのかしらね」


    固法の素朴な疑問に黒子が答える


    黒子「今の状況ですとレベル3程ですがジャイロ先生曰く佐天さんはまだまだ発展途上とのことですので……最終的にはレベル4は堅いと思いますの」


    固法「そんなに便利なんだこの技術…」


    御坂「私から見ても便利だと思うくらいには用途に富んでると思いますよ」


    固法「因みにこれはジャイロ先生から教わったのよね?」


    佐天「はい」


    固法「学園都市の外にもこんな技術があるって事か…私も出来るようになるかな?」


    ジャイロ「恐らくは難しいだろう」


    固法の期待は簡単に切り捨てられた


    固法「そうですか……」


    ジャイロ「この技術はまず門外不出と言える技術だから俺自身これ以上他人に教えるつもりはないし…それにある種の才能が必要だ」


    固法「才能…?」


    ジャイロ「そう、俺なりにここの超能力ってもんをある程度勉強させてもらったが…『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』ってのがあるだろ?」


    固法「ありますね」


    ジャイロ「要はこの現実世界から自分の現実を独立させて自分にとって能力が使える事を常識とすることで能力を発現させる…って事でいいんだよな?」


    固法「えぇ、ま」


    ジャイロ「この鉄球の能力を使う以上この現実世界から己を切り離すってのは恐らくタブーだ」


    初春「タブー?」


    ジャイロ「あぁ、超能力を己からこの世界へと発する物とするなら…この技術は世界から己へと受け入れる物、俺はそう考えている」


    固法「受け入れる…」


    ジャイロ「この世界を受け入れて尊敬し、尚この技術を信じる事が出来るか……要は『能力に頼るな』って事か」


    固法「なる程…なら学園都市の生徒はほぼ無理なんですね」


    ジャイロ「あぁ、この学園都市では能力は身近だからな…この技術に頼る前にカリキュラムを受けて能力を発現させる方が遥かに楽だろう」


    御坂「学園都市の外から来た佐天さんだからこそ…か…」


    黒子「外では超能力なんてものは非現実的でしょうから…」


    ジャイロ「超能力を使える感覚ってものが想像つかなかったんだろう」


    佐天「だから能力が使えずに…この技術が使えるようになった…って事ですか」


    ジャイロ「確証は無いけどな」


    佐天「でも納得しました。瞬間移動とか…電気を出したりする感覚とか…想像付きませんでしたから」


    固法「なる程ね………一息入れましょうか」


    初春「じゃあ私が何か飲み物を入れますね」


    固法「ありがとう初春」


    黒子「にしても…今回の事件はわからない事が多いですわね」


    御坂「介旅初矢の書庫に登録されてたレベルと爆発の規模が合わないってことでしょ?」


    固法「そうね…それがわからないのよ…」


    佐天「それなら『幻想御手(レベルアッパー)』を実際に使ったみたいですよ」


    黒子「といいますと…あの簡単にレベルを引き上げられると噂の…?」


    佐天「はい、本人がそう言ってましたから」


    固法「本人から少し話を聞く必要があるわね」


    携帯を取り出し警備員へ連絡を取る


    固法「もしもし…風紀委員、第一七七支部の固法といいます…介旅初矢の取り調べを行いたいのですが…………倒れた……?……えぇ、はい……わかりました、意識が戻り次第連絡をお願いします…はい、失礼します」


    黒子「倒れた…とはどういうことですの?」


    固法「言葉の通りよ、確保した後警備員が移送している途中に意識を失ったそうよ」


    佐天「私もしかして何かしました…?」


    固法「いえ、特にこれといった外傷も無いから貴方が原因ではないわ」
  21. 21 : : 2016/06/12(日) 14:39:09
    御坂「持病などがあった…?」


    固法「精密検査の結果待ちね」


    黒子「しかし…証言が取れないとなると、幻想御手がどういった物かすらわかりませんの」


    固法「…それを今から考えましょう」


    介旅初矢の意識が回復しない以上、各々の意見を出しある程度の予測をつけることに


    初春「考えられるのは…次の『身体検査(システムスキャン)』までに急激にレベルが上昇した…って事ですかね?」


    御坂「可能性は0じゃないけど…無理ね」


    固法「そうね、レベルを1から2に上げるならまだしも2から3…3から4へ引き上げる事は難しいでしょう」


    黒子「特殊なカリキュラムを受けた…なんて事は学園都市が把握できないわけがありませんし…」


    ジャイロ「……薬物だな」


    御坂「薬物…」


    ジャイロ「学園都市の科学がどういった物かは時間が少なすぎて把握仕切れないが…俺の理解が及ぶ範囲で考えられるのは薬物だ」


    初春「どうしてですか?」


    ジャイロ「能力のレベルが引き上がるって事は『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』をより明確にする事が出来るって事だよな?……って事はそれだけ実際の現実から自我が隔絶される…」


    固法「つまり薬物による一種のトリップ状態を踏み台にしてレベルが引き上がる…と?」


    ジャイロ「あくまでも仮説の一つだ」


    黒子「……でも可能性は十分にありますの」


    御坂「介旅は薬物の副作用で…?」


    初春「違法薬物だとすると…売れるなら副作用なんて考慮されていない筈です」


    佐天「うわぁ…えげつないなぁ…」


    黒子「麻薬を作る人間の思考などお金だけですし…使う側の人間がどうなろうとどうでもいい…そう考えている筈ですの」


    ジャイロ「もし本当ならこれを欲する人間はこの街の学生の6割以上…能力を更に強化したい人間も含めるともっと増える、いい商売だな?」


    佐天「……」


    自分なら手を出していただろうか


    この技術を学ぶ前の自分なら


    初春「許せません…ね…」


    黒子「でも売人はどう見つけるんですの?」


    ジャイロ「こんなもんを流す人間なんて昔から相場は決まってるだろ」


    御坂「『[ruby]武装無能力集団(スキルアウト)[ruby]』ね」


    黒子「では私は聞き込みに行きましょう」


    ジャイロ「俺もだな…荒事には慣れてる」


    御坂「あんた門限は?…遅刻なんてしてたら流石に首狩られるわよ」


    黒子「っ……お姉様、怖い事仰らないでくださいな…」


    鳥肌の立つ腕を擦る黒子


    ジャイロ「………初春、常盤台の寮に繋いでくれ」


    初春「へ?……あ……どうぞ」


    マイクを受け取ると


    『はい、常盤台中学女子寮』


    黒子「っ…」


    御坂「っ…」


    側のスピーカーから低く落ち着いた聞き慣れた声に二人の背筋が凍る


    ジャイロ「寮監さんですか?…この前挨拶に行ったジャイロです」


    『っ…ごほん……ジャイロ先生?どうされました?』


    御坂「っ!?(声のトーンが…)」


    黒子「…(上がってますの…)」


    ジャイロ「いやぁ…今回の爆弾魔事件の調査で少し人手が要りまして…そちらの白井黒子さんと御坂美琴さんをお借りしたいと思うのです」


    『?…白井さんは風紀委員ですしわかりますが…何故御坂さんまで?…それに爆弾魔事件は解決したのでは…』


    黒子「……(さんって……いつもは呼び捨てが当たり前ですのに…)」


    御坂「…(恐るべしジャイロ先生)」


    ジャイロ「それが…今回の事件はかなり規模が大きいみたいで…下手を打つと数多くの生徒を傷付けかねない…もちろん常盤台中学の生徒も…」


    『つまり…』


    ジャイロ「御坂さんは自分の学校の後輩や友人が傷付けられるのは許せない…と学校想いの良い娘ですね…寮監さんの教育の賜物ですか?」


    『そ、そんな事は…おほほほほ』


    黒子「…(誰ですのこの方は)」


    御坂「……(誰よこの人)」


    ジャイロ「そういう理由で少し門限を延ばしていただきたいのです…帰りは私が寮の前まで責任を持って送りますので」


    『ジャイロ先生がついてくださるのでしたら……大丈夫ですが…』


    ジャイロ「ありがとうございます…あぁ、お礼として今度美味しいお魚料理を作る店に夕食に行きませんか?」


    『っ!え、えぇ…大丈夫ですよ?』


    ジャイロ「わかりました、日程はまた後日…それではまた」


    『はい、失礼します…』


    カチリ…とマイクを切る


    黒子「誰ですの今のは!?」


    御坂「知らない…あんな人知らない…」


    佐天「本場の口説きを見たって感じですね…」


    固法「お魚料理かぁ…」


    初春「美味しそうですねぇ」
  22. 22 : : 2016/06/13(月) 23:42:36
    ジャイロ「じゃあ俺と黒子、御坂で聞き込み…初春と固法でネットから情報収集、涙子は家に帰れ」


    佐天「うぇ!?私だけ仲間外れですか!?」


    ジャイロ「もう少し回転を応用出来るように勉強だ」


    佐天「えぇ〜……」


    ジャイロ「腐るな、遠回りだよ遠回り」


    佐天「……はぁ……わかりました」


    初春「それではまた明日ですね、佐天さん」


    佐天「うん、また明日」


    御坂「どうせだし送ってくわよ佐天さん」


    佐天「バスを使うんで大丈夫ですけど…」


    御坂「まぁまぁ…いいからいいから、それじゃあ私は佐天さんを送った後に聞き込み行きますね」


    ジャイロ「……」


    初春「お気をつけて」


    ー大通りー


    御坂「さ、行きましょ佐天さん」


    佐天「へ?…どこへ…?」


    御坂「決まってるでしょ?聞き込みよ聞き込み…」


    佐天「いいんですかね…」


    御坂「夜遅くならないようにするからさ」


    佐天「でも…いざ行くとなると不安になりますね……」


    御坂「私もいるから大丈夫大丈夫」


    手を引かれるようにして人通りの少ない路地へ


    御坂「さて…初春さん達がヒントを見つけるまでぶらぶらしてましょ」


    佐天「ぶらぶらって…こんな所でぶらぶらしてたら…」


    不良A「おっ…どうしたの君達こんな所で?」


    佐天「あ〜…やっぱり…(絡まれちゃった…)」


    不良B「俺達暇だからさ…良かったら遊ばない?」


    御坂「良くないんで、それでは」


    離れようとする佐天と御坂


    二人の肩が掴まれる


    不良B「そんな事言わずにさぁ…」


    佐天「や、やめてください」


    不良A「つれないなぁ…これからダチの所に行くんだよ…来といた方が…身の為だと思うけどなぁ」


    雰囲気が変わり肩を掴まれる力が強くなる


    不良B「だからさ…一緒に…ねぇ?」


    佐天「……これ以上、私達に構わないでください」


    肩からかけたバッグから鉄球を取り出す


    御坂「……」


    不良A「はぁ?だから来いっていってんだろ!」


    ーーー
    ーー



    佐天「も〜本当こういう人達苦手…」


    御坂「全く…まぁもしかしたら何か聞き出せるかもしれないし別にいいけど…」


    一人はピクピクと小刻みに震えながら気絶しており


    もう一人は地面に引き倒されており


    鉄球の回転で背中に腕の関節を極められ見動きが取れなくなっている


    不良B「いででで!何だこれ!?」


    御坂「アンタら…幻想御手って知ってる?」


    不良B「あぁ!?」


    御坂「探してるんだけど知らない?」


    不良B「……知らねぇな」


    御坂「ふぅん……知らないんだ…」


    パチン…と指から電気を流して見せる


    不良B「し、知らねぇもんは知らねぇって!」


    不良の身体から携帯の着信音と思わしきメロディが流れてくる


    御坂「……」


    ポケットから携帯を取り出しスピーカーモードに


    『お前ら何してんだよ、俺もうジョナGに着いたぞ……幻想御手欲しいって奴がもうすぐ来るからさっさと来い』


    不良B「バ、バカ!」


    『は?何言って』


    ピ、と通話を切る


    御坂「知らないんじゃ……無かったのかしら」


    不良B「ひっ…」


    佐天「ジョナGですか…近いですね」


    御坂「初春さんに連絡しよっか」


    佐天「はい…あ…私帰ってる事になってるんで…」


    御坂「大丈夫大丈夫」


    ピピピ、と初春の番号を入力する


    御坂「初春さん?私だけど、幻想御手の事知ってるっぽい奴等見つけたんだけど…」


    『本当ですか?…その事なんですけど…私達も幻想御手の事を知ってる人達の溜まり場を見つけたんです、近くのファミレスらしいんですけど…』


    御坂「あ〜、ジョナG?」


    『知ってるんですか?』


    御坂「うん、絡んできた不良がたまたまね…」


    『そうですか…では、ジャイロ先生や白井さんがもう向かってますので…御坂さんも向かってください』


    御坂「わかったわ、それじゃあまた後で」


    佐天「行きますか?」


    御坂「ジャイロ先生も来るみたいだし…ここまでかな」


    佐天「……それもそうですね、それじゃあまた明日」


    御坂「うん、気を付けて帰ってね」


    ーーー
    ーー
  23. 23 : : 2016/06/15(水) 04:10:49
    御坂と別れたあと自室に戻り、机に向かいパソコンに電源を入れる


    佐天「『幻想御手(レベルアッパー)』っと……」


    幻想御手で検索


    出てくるサイトは幻想御手の在り処を聞く質問サイトや掲示板


    佐天「やっぱ無いよね〜…私が見つけれる物だったら初春が見つけてるし…新曲でも入れよっと」


    音楽サイトを開きめぼしい物を探す為にカーソルを移動させる


    佐天「…?……隠しリンク?」


    隠しリンクをクリックすると


    佐天「…?うわっ、何かダウンロードしてる!?」


    いきなりダウンロードが始まり慌てるが、セキュリティソフトが反応していないという事はウィルスでは無いらしい


    佐天「え」


    そして驚く事にダウンロード中のファイル名は


    佐天「Level…Upper…」


    とあった


    佐天「うそ……」


    ダウンロードされたのは音楽ファイル


    佐天「…(薬物の作り方でも何でもない只の音楽ファイル……これは…明日初春達に相談した方がいいかな)」


    携帯を取り出し電話をかけようとする


    佐天「…(でも…もし偽物だったら…迷惑かな…)」


    ジャイロの協力があったとはいえ門限を延ばしてまで事件の調査をしている彼女達に


    確証も無い物を渡す訳にはいかない


    佐天「…(ここは私だけでも調査をしよう…)」


    掲示板を開いて書き込みを見ていく


    佐天「…」


    書き込みには幻想御手などという単語は使われておらず、隠語と思わしき言葉が多く使われている


    佐天「…そりゃあ馬鹿正直に書くわけ無いか」


    下へ下へと書き込みをスクロールしていくと取引の場所や日時と思わしき言葉


    佐天「…(この中のいくつが本当の取引かわからないけど…こうなったら虱潰しにしてやる)」


    携帯のメモアプリにメモを取りバッグにしまう


    そして身を守る為に使う事になるであろう鉄球をバッグから取り出し、回転させる


    佐天「……回転の応用…かぁ」


    自分が知っている事は回転の力で相手の筋肉を操作する事


    佐天「これだけじゃないのかな?」


    クルクルと机の上で回る鉄球を見る


    佐天「応用の事を話したって事はジャイロ先生は何か知ってるって事…だよね」


    しかし考えても考えても何も思い浮かばず思考を放棄する


    佐天「あーあ、お風呂入ろ」


    パソコンをスリープさせる為にマウスに手を伸ばすが、手は佐天の予想に反して空を掴む


    佐天「へ?」


    目をこすりもう一度手を伸ばす


    が、視界に入っている筈のマウスが掴めない


    佐天「…」


    手を更に伸ばすとコツ、と指先にマウスが当たり掴み取る事が出来た


    佐天「これ…」


    鉄球は未だに回り続けている


    佐天「……応用…これの事なのかな?」


    鉄球を掴み取り眺める


    佐天「蜃気楼みたいだったけど…あれって空気の層の温度差?…で出来るんだよね?……て事はちょっと違うのかな…ん〜、超能力でもないし考えても意味ないか!」


    出来たのだからそれで良し、とすっぱりと浮かんでいた疑問を飲み込む


    佐天「これでまた一つ進んだ!」


    良くも悪くも技術であるこの力はなんとなくというアバウトな感覚で扱えるのが黒子のような複雑な演算を必要とする超能力にはない強みだったりもする


    佐天「明日ジャイロ先生に見てもらおっと」


    足取りは軽く、着替えとタオルを持ってお風呂場へ向かった


    ーーーーー
    ーーーー
    ーーー
    ーー

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