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君の瞳に届けたい

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  1. 1 : : 2016/04/06(水) 21:25:41
    「海に行きたい」


    不慣れな手つきでハンドルを握り、規制速度をきっちりと守り運転している慎二をよそに歩美は無邪気にそう呟く。


    「何キロあると思ってんだよ。俺の運転じゃ命一つじゃとても足りねえよ」


    「じゃあ運転の練習にいっぱいお出かけだね」


    歩美は満面の笑みで答えた。


    「あのなあ、お前俺の財布の事情も少しは考えろよ。今日だけでも死活問題だってのに」


    「じゃあ連れてってくれないの?」


    「行くけどさあ!!」


    「さっすが!慎二が彼氏で良かった!」


    「またやられた……」


    他愛もない会話。何気ない日常。いつもと変わらぬ日曜日。歩美の笑顔。

    こんなことがいつまでも続くと思っていた。いや、そんなことは考えてもいなかったかもしれない。
  2. 2 : : 2016/04/06(水) 21:26:15


















    衝突音が鳴り響き、目の前を血飛沫が舞った。














  3. 3 : : 2016/04/06(水) 21:26:35

    頭が痛い。瞼が重い。最悪の目覚めだ。
    ここはどこだ?こんな天井見たこと……。


    「おお、気がついたようだね」


    医者らしき人が慎二に声をかける。


    「運転中に居眠り運転のトラックが前から突っ込んできたらしい。ほとんど外傷がないのが奇跡だよ」


    医者の話を聞きながらだんだん脳が目覚め出すのがわかり、少しずつ記憶が蘇ってくる。慣れない車を借りての運転。歩美との他愛もない会話。前から迫り来るトラック。

    ……歩美?


    「そうだ歩美は?一緒にいた香月歩美という女性はどこですか?」


    「そのことだが……」
  4. 4 : : 2016/04/06(水) 21:27:05

    『今は意識はありませんが、幸い脳に大きな障害は見当たりませんから何日か経てば目が覚めるでしょう。しかし視覚神経が大きく傷ついてしまっています。まだなんとも言えませんが、目が見えなくなる確率がかなり高いです。』


    悪い夢を見ているような話を医師が淡々と語る。受け入れ難い現実が頭の中を駆け巡る。全てを受け入れられぬまま、吸い寄せられるように歩美の病室へと向かった。
  5. 5 : : 2016/04/06(水) 21:27:24
    不安で震える手を奮い立たせるように病室の扉をノックすると、中から聞いたことのない声でどうぞと返ってきた。

    病室に入るとそこには歩美の母親らしき人が座っていた。そしてその奥のベッドで寝ている頭を包帯で覆われ。全身傷だらけで眠っている歩美が目に入った。

    受け入れ難かった現実がはっきりと目の前に映し出された。悲観するよりも現実から逃げるよりも先に、気付けば頭を下げていた。


    「本当に申し訳ありませんでした」


    深々と頭を下げ心から詫びた。頭の中が自責の念で溢れ返る。


    「顔をあげて下さい。これは事故です。前からトラックが突っ込んで来たのだから、あなたに責任はありません」


    「それでも、僕がもっと慣れた運転が出来れば避けることなんていくらでも出来たはずです。どんな形でも少しでも責任を取れることがあればなんでもします。本当に申し訳ありませんでした」

    今にも泣き出しそうな叫ぶような声で思いを訴える。


    「……先生から、話を聞きました。この娘、目が見えなくなるかもしれないんですって」


    ゆっくりと口を開き、悲しそうな声で語り出す。


    「この娘は本当に良い娘です。私の誇りです。そしてそんなこの娘が愛しているあなたは本当に良い人なんでしょう。こうやって話していても、なんとなくわかる気がします」


    歩美の母は慎二の目をしっかりと見つめて続けた。


    「あなたが償うことなど何もありません。ですが、あなたが責任を感じているのならば、この娘のそばに居てやってくれませんか?例え目が見えなくても、それだけでこの娘は幸せです」

    心を包み込むような言葉に慎二は泣き崩れた。

    そして震える声を絞り出して言った


    「……勿論です」
  6. 6 : : 2016/04/06(水) 21:27:47


    歩美の意識が戻ったのは慎二が退院した次の日だった。やはり目が見えないようで、怪我で体も動かせない状態だったが、慎二といる時は必死に笑顔を作っていた。

    俺は歩美の笑顔を見ることが出来る。しかし歩美はもう何も見ることは出来ない。

    辛い現実を変えたくて、慎二はネットや医学の本で視力を取り戻せる方法をとにかく探し回った。

    しかし専門知識などまるでない慎二に見つけられる筈もなく、医師にももう少し細かい検査をしないと言い切ることは出来ないが、恐らく視力が戻ることはないだろうと言われ、慎二は打ちひしがれていた。
  7. 7 : : 2016/04/06(水) 21:28:27
    なにも解決策が見つけられないまま、病院へ向かう道の途中、いつもと違う道を通っていると妙に目に付く看板を見つけた。


    【運命を変える魔法売場】


    明らかに気味の悪いこの文面が、絶望の淵にあった慎二の目には微かな光に見えた。

    藁にもすがる思いで古びたビルの2階にあるこの店へ向かった。



    ドアにかけられた開店中の表札を見て、息を飲んで呼び鈴を押すと、ピンポーンとチャイムが鳴る。30秒程してドアが開いた。


    「お客さん?驚いたなあ、1ヶ月振りだ」


    整わない髪の毛と無精ひげを生やした3.40代の男性が出てきた。

    慎二は1ヶ月も客が来ていないという男の言葉に戸惑い、その場を立ち去ろうかと迷っていると。


    「まあ入りなよ、大丈夫、怪しい所なのは間違いないが家は普通の家だ」


    男の全く安心できない言い回しで家の中に連れ込まれ、昼間なのに薄暗い部屋で落ち着かぬ様子で椅子に座っていると、男がコーヒーを運んできた。

    男は向かいの椅子に座ると、徐に煙草を口に咥え、一吹きしてから口を開いた。


    「今日はどういったご用件で?」


    「えっと……、運命を変える魔法というのは?」


    「人の運命、それが自分でも他の誰かでも、本来進むべき未来とは違った道へと導くことが出来る」


    「と言っても100%じゃない。大体7割は願った方向へと導いてくれるが2割はなにも起きない。残りの1割は前よりもっと悪い道に進んでいく。そんなに都合の良い魔法じゃないってことだ」


    話を聞いた慎二は全く信用できなかった。

    慎二はSF物やファンタジー色の強い漫画や映画も良く読むし、死後の世界や幽霊といった不可解な類にも少なからず興味を持っていたが、目の前で魔法が存在すると言われて信じるほどではなかったし、そんな人はこの世に数えるほどしかいないだろう。

    ……どうやら無駄な時間だったようだ。

    慎二が鞄を持って立ち去ろうとすると男はわかっていたかのように言った。


    「信用できないよな。当たり前だ。こんな話をして信じた奴はいない。まず店に来る人がほとんどいないんだが」


    「だが今から見せる物を見てお前がこの話を信じる要素は大きく増えるだろう。こんな気味の悪い店に来るほど大きな悩みを抱えているなら、もう少し俺の話を聞いてくれても良いんじゃないか」


    慎二は男の妙に自信のありそうな言い回しにもう少し話を聞くことにした。追い詰められているのは事実だった。


    「なにを見せると言うんですか?」


    「君、これから予定はあるか」


    「え?病院にお見舞いですけど……」


    それを聞くと男は徐に一冊のノートを取り出し、新しいページを開いた。


    「このノートは魔法のノートでな、ここに書いた物が人の運命だとさっき話したようなことが起きるのさ」


    慎二は馬鹿らしくなって、深くため息をついた。


    「おいおいガッカリするのはまだ早いぞ。名前はなんだ?」


    「堂本慎二です」


    「堂本慎二か、よーし」


    それを聞くと男は『堂本慎二 この後お見舞いに行かなくなる』とノートに書いた。


    その瞬間、鞄の中で携帯が鳴った。歩美の母からメールだった。


    「見てみろ」


    男が少し微笑みながら言った。

    『無題:今日は点検とかで病院もうすぐ面会終わるみたいだから、今日は来なくても良いそうです。母より』


    慎二は目を見開いた。本当にこの男がノートに書いたことが、その瞬間に起こった。

    慎二は携帯を閉じた。急に胸が苦しくなった。男は間髪入れずに。


    「もう一度やろう。今度は俺の明日の予定だ」


    男は次は一枚の紙を取り出した。


    「これは俺のバイトのシフト。明日朝から出勤と書いてるのが見えるな。この運命を変える」


    すると男はまたノートに『黒田小次郎 明日のバイトがなくなる』と書いた。


    男の携帯が鳴る。メールだ。


    「店長からだ。見てみろ」


    『無題:明日臨時休業になったからお前も休みたければ休めよ』


    慎二は怖くなった。すぐにその場から立ち去りそうになったが、そこを動かなかった。


    歩美を救えるかもしれない。
  8. 8 : : 2016/04/06(水) 21:28:42
    慎二は男の話を信じた。そして全てを打ち明けた。


    「事故とは言え、僕のせいで歩美の目が見えなくなるなんて耐えられない。どうか力を貸してください。お願いします。お金ならいくらでも、一生かかってでも出しますから」


    慎二は必死に頼み込んだ。もう希望はここにしかなかった。


    「それは構わないが、生憎この店は金じゃ魔法を売っていない」


    「え?じゃあなにで売ってくれるんですか?」


    男は一つ息を飲んでこう言った。


    「………寿命だ」


    「寿命?」


    慎二は全く意味がわからずそのまま聞き返した。


    「さっきも言ったがこの魔法はそんなに都合の良い魔法じゃない。成功率が100%じゃない上に使えば自分の寿命が縮む」


    「そんな……」


    慎二は動揺を隠せなかった。こんな突拍子もない話だが、なぜか直感的に男の言っている事は本当だとわかった。


    「でも、それならなぜあなたはさっき魔法を2度も使ったんですか?」


    もっともな疑問をぶつける。


    「さっきのような今日明日のどうでもいい予定なら縮む寿命は少しだ。大体今の回で1.2週間程縮んだかなという程度だ」


    慎二はホッと一息をつく。


    「だがお前さんのようなその娘のこれからの人生がかかった運命なら話は全く別だ」


    「最低でも30年、最悪だと60年縮んでもおかしくない。現実的じゃない数字だろうから簡単に言えば、お前は間違いなく50そこらで死ぬし、お前の元の寿命次第じゃ明日死んでもおかしくないって事だ。しかも成功する保証はない」


    慎二は唖然とした表情を浮かべていた。飲み込みきれない事が多すぎる。寿命縮む。明日死ぬかもしれない。歩美が助かる保証はない。

    「少し、考えさせてください……」


    「勿論だ。知っての通り俺の明日の仕事は休みだし、家に居る時は常時開店中だ」


    「一つ、聞いても良いですか?」


    「なんだ?」


    「あなたはどこでその魔法を?」


    慎二は素朴な疑問をぶつける。


    「それは企業秘密だ。企業でもなんでもねんだが」



    「そうですか……。じゃああなたはなぜなんのためらいもなく、たとえ1週間でも寿命を減らせたんですか?それに無償でこのような魔法を売っている理由は?」


    「おいおい全然一つじゃねえじゃねえか。まあ良い。俺は色々あってもう人生に未練はない。今も生活するのに精一杯だし明日死んだって悔いはねえしそっちの方が楽だ。まあ自分で死ぬような真似はしないんだが」



    「無償で売ってる理由についてはノーコメントだ。まあ何か言うとするなら人の寿命を取るのに金とるなんて酷だろう」


    「そうですか。では、少し考えてまた来ます」


    「おお。それと、俺もその娘の目が見えるようになるように、祈っといてやるよ」


    その言葉を聞いて店を出た。何かを間違えたようなセリフだったが、一応励ましたつもりだったのだろう。やはり悪い人ではないようだ。

    慎二は少しずつ降り出した雨に打たれながら、いつもと違う道を戻って家に帰っていった。
  9. 9 : : 2016/04/06(水) 21:29:04

    家に帰った慎二は何もせずたださっきの会話を思い返していた。

    普通に考えれば信じられる訳のない話だ。魔法で運命が変えられて、しかも寿命が縮むなど。

    しかし何故か本当のことなんだと信じられた。目の前で起こった現象もそうだが、男の話し方はとても嘘をついているとは思えなかった。


    力なくベットに横たわった慎二は、眠る訳でもないのに目を閉じ、考えを巡らせた。

    自分のせいで歩美が目が見えない一生を過ごすか、自分が死んで歩美が自由になるか…。

    成功する確率は7割。3割は無駄死にに終わる。もっと悪い方へということは、二人とも死んでしまうかもしれない。


    それでも、自分のせいで歩美が不自由な思いをするのは耐えられなかった。


    慎二は賭けることにした。人生全賭け(オールベッド)の勝負に。
  10. 10 : : 2016/04/06(水) 21:29:17

    怪しげなビルの階段を上がり、また呼び鈴を押す。ピンポーンとチャイムが鳴る。今度はすぐに出てきた。


    「来たか。仕事は休みで正解だな」



    昨日よりも濃いひげとボサボサの髪の男が慎二を出迎える。


    「まあ入れ」


    「はい」


    薄暗い部屋の椅子に腰掛ける。また目の前にコーヒーが並ぶ。

    男は昨日と同じように煙草吹かして口を開いた。


    「で、ここに来たという事は、やるということか?」


    「はい。覚悟は決めてきました」


    慎二が少し大きくな声ではっきりと宣言する。


    「よし。じゃあ早速やろうか」


    男が徐にノートを取り出した。


    「わかってると思うがもう一度言う」



    慎二がゴクリと唾を飲み込む。


    「このノートに書いたことが人の運命に背くものなら、それが現実となる。それと引き換えに寿命が失われる。それでも絶対に成功するとは限らない」


    「お前がやろうとしていることなら最低でも30年。最悪だと60年程縮むだろう。もし寿命が縮み過ぎれば明日死んでもおかしくない。それが事故なのか急病なのか殺人なのかはわからんがな。それでも、やるんだな?」


    数秒の間、沈黙が流れた。


    慎二はしっかりと目を見開き、男を見つめて声を絞り出した。


    「……やります」
  11. 11 : : 2016/04/06(水) 21:29:34
    手が震えている。自分の命、他人の運命がかかった行動が、ノートに一文を書くというだけなのなら、21歳の慎二には余りにも重過ぎた。

    「やめとくか?」


    男が心配そうに声をかける。


    「やります。書きます」


    覚悟は決めたんだ。やるしかない。

    慎二は歯を食いしばりながら、ノートに字を書き始めた。
  12. 12 : : 2016/04/06(水) 21:30:18




    『香月歩美 目が見えるようになる』


    震える指でペンを離した。


    ……また、数秒の沈黙が流れた。


    祈るように携帯を見つめる。まだ鳴らない。まだ鳴らない。



    ……今流行の音楽が流れ出す。慎二の携帯が鳴っている。


    「歩美の、母さんからです」


    「取ってみろ」


    心拍数が上がる鼓動がはっきりと聞こえてくる。慎二はさっきよりも強く震える指で応答のボタンを押した。


    『もしもし。慎二君?歩美の目、少し大きな手術になるけど成功すれば見えるようになるそうです。良かった…』


    「本当ですか!?」


    魔法は上手く行ったのだ。慎二は歓喜の涙を流した。極度の緊張からの解放だった。
  13. 13 : : 2016/04/06(水) 21:30:37

    手術当日。慎二は一睡もしないまま病院に来ていた。


    「もうすぐだな」


    「うん」


    なんとなくぎこちないやりとりをする。


    「私、思ったの。この手術は、神様が私にチャンスをくれたんだって」



    歩美が微笑みながらそう呟いた。



    「て言っても頑張るのはお医者さんだけなんだけど。私頑張るから、目が見えるようになったら、海に連れてってね」


    その笑顔は、何故かとても目に焼き付いた。
  14. 14 : : 2016/04/06(水) 21:31:11
    手術が始まった。慎二と歩美の母は手術中のランプを眺めながら座り込んでいた。


    「まだ、ですよね」


    「4時間程の予定だって言ってたけど…」


    丁度3時間半が過ぎた所だった。不安で吐き気まで押し寄せていた。


    「慎二くん、ありがとう」


    歩美の母はゆっくりと口を開いた。


    「あなたが歩美の目を治すために色んな事を調べてくれたのは知ってます。それが直接的な事じゃなくても、あなたのその気持ちは、歩美にとっても私にとっても本当に嬉しい事でした。ありがとう」


    慎二の目からは、また涙が溢れた。

    まだ手術は終わってない。それでも、何かが報われたような気がした。まるで本当の母の言葉のように心に響いてきた。
  15. 15 : : 2016/04/06(水) 21:31:43



    その時、手術中のランプが落ちた。

    扉が開き、中から医師が出てくる。マスクを外して慎二の目を見た。


    「手術は成功です。意識が戻った時、彼女の視力は戻っているでしょう」


    「やった!」


    慎二はとっさに医師の手を握った。


    「ありがとうございます!!」


    母は涙を流した。場の雰囲気が一気に和やかに変わっていった。
    歩美の手術は成功したのだ。




    その時、止まっていた砂時計の砂は滑り落ち始めた。

  16. 16 : : 2016/04/06(水) 21:32:16
    まだ眠る歩美の病室で、母と慎二は延々と歩美ほ顔を眺めていた。

    意識が戻るのが楽しみでならない。


    「俺、お祝いになんか買ってきます。ケーキとか」



    「あはは。そんなの良いのに。まあ、華やかなのは悪い事じゃないもんね」


    「はい。クラッカーとかあれば良いんですけど」


    笑いながら病室を出た。


    歩美の手術が成功した。嬉しくてたまらなかった。また前と変わらず遊べる。映画にも、カラオケにも、海にだっていける。


    一生一緒にいられる。


    色んな事を考えながら信号を待つ。これを渡った先がケーキ屋だった。


    クラッカーをどこで買おうか。そんな事を考えながら青に変わった信号を渡り始めた。




    左からトラックが全速力で突っ込んできた。

  17. 17 : : 2016/04/06(水) 21:32:42
    トラックは慎二に直撃した。

    慎二は無慈悲に吹き飛ばされる。

    トラックは200m先の建物に突っ込んで止まっている。

    道路は血まみれだった。


    すぐさま人だかりが出来る。悲鳴をあげる者。救急車を呼ぶ者。慎二に近寄り歩道に寄せる者。


    救急車は2分で到着した。すぐに病院に運ぶ準備がなされる。ベッドに体を固定すると、救急車は走り出した。
  18. 18 : : 2016/04/06(水) 21:33:02


    救急車に揺られ、ぼんやりと意識が戻った。

    そうか、車にはねられたのか。


    『寿命が縮み過ぎれば明日死んでもおかしくない。それが事故なのか急病なのか殺人なのかはわからんがな』


    魔法売りの男の言葉が頭をよぎる。そうか、俺は死ぬのか。

    もう少しで、もう少しで歩美の瞳に届ける事が出来た。俺の笑顔を。

    何度も何度も俺に見せてくれた。勇気をくれた。元気をくれた笑顔を、俺は歩美に返したかった。

    これが結末だというのなら、余りにも残酷だ。

    思考が重い。時間の流れがとてつもなく遅く感じる。俺はもう死ぬんだろう。


    もしも生まれ変われるのならば、もう一度君に出会いたい。


    そして今度こそ、君に届けたい。


    元気を与えられる。勇気を与えられる笑顔を。


    そして世界で一番の愛を。


    君の瞳に届けたい。






    砂時計の砂の全てが、滴り落ちた。







    fin
  19. 19 : : 2016/04/06(水) 21:37:40
    おしまいです。
    大昔に少しだけ書いていただけなので真面目にssを書いたのは今回が初めてでした。
    見苦しくて仕方ない駄作となってしまいましたがこれからも精進して行こうと思います。
  20. 20 : : 2016/04/06(水) 21:46:28
    お疲れ様

    次回の作品も期待しています
  21. 21 : : 2016/04/06(水) 21:56:53
    おつかれ
  22. 22 : : 2016/04/20(水) 00:57:13
    乙です。PICK UPトップおめでとうございます。


    全速力で突っ込んできたトラックに無慈悲にも吹き飛ばされたにも関わらず救急車が到着するまでの2分を正確に測る慎二強い(確信)


    黒田小次郎がトラックの運転手説クルー?
  23. 23 : : 2016/04/20(水) 22:32:15
    >>22

    ちがいます

    あとべつに慎二が2分数えてたわけじゃなくて俺が勝手にかいただけです。慎二くんそんなつよくないです。
  24. 24 : : 2016/04/21(木) 00:02:16
    >>23

    いい加減な解釈及び勘違い、申し訳ありませんでした。


    勝手ながら感想をつけさせていただくとするならば
    >>3における
       頭が痛い。瞼が重い。最悪の目覚めだ。
       ここはどこだ?こんな天井見たこと……。
    の慎二の感情らしき表現が地の文と紛らわしく感じました。



    歩美ちゃんの視力のために寿命を削ることを決心した慎二くんは十分つよいです。
  25. 25 : : 2016/04/21(木) 22:34:59
    >>24
    そうですね

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