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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

火の精霊とそれを宿す者

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  1. 1 : : 2015/12/11(金) 16:34:09
    ・戦闘シーンとか。まぁ軽いグロ注意

    ・キャラの言動とか可笑しいとこあるかも…

    ・感想はこちらへ。アドバイスなどはグループへお願いします
  2. 2 : : 2015/12/11(金) 17:05:04





    パチ…パチパチッ


    『お母さん!お母さん!!』


    ボウッ・・・ボウボウ


    『ミカサ!いやよ…離して!!ミカサっ!!』


    ユラユラユラ・・・



    松明を片手に、母親から私を引きはがす男たち。

    必死にもがき、男たちの手から逃れようとするも…ちょうど10歳になった頃のあのミカサでは、抵抗など無意味に等しかった。

    温厚で優しい母親の、私と同じように泣き叫び、乱れる姿。


    暴れ続けるも、ついに後ろから薬を嗅がされ意識が消えてゆく。

    ミカサは消える意識の中で、

    松明の炎に囲まれ、男たちに押さえつけられながらも、

    泣き叫び

    懇願し

    嘆く

    母親の姿を見ていた。


    ――――――――――――――――――――

    ―――――――――

    パチ・・・パチパチッ

    ―――――――――

    ――――――――――――――――――――


    「う…ん」


    あの時と同じ、何かの燃える音でミカサは目を覚ました。


    起き上がり、眠気から目を擦る。

    ミカサの目は濡れていた。


    「…あれ」


    周りをみると、ミカサが居たのは石造りの塔の中だった。



    「私、またあの夢見てたんだ…」


    ミカサは、あの母親と引き離された五年前。

    この塔に幽閉された五年前から、よくこの夢を見るのだ。

    幸せだった生活の夢のあと、その生活が壊されるこの夢。

    起きるたびに、ミカサの目は濡れていた。


    「…そう言えば」


    思い出したミカサ。

    私は〈何かが燃えている音〉で目を覚ました。

    でも、石で作られ、これといった燃えるもののない塔は、当然燃えていない。

    …どこが燃えているのだ?


    もっとよく周りを見回すと…嘘だ。


    「扉が…開いてる…?!」


    幽閉されてからというもの、外に出たことは一度もなかった。

    一日二回、食事を運んでくる兵士が入ってくるときと、この塔のある城の中で教育係をやっているという、優しい女性が会いに来てくれるときしか、あの扉は開かれない。

    兵士の不注意だろうか?

    何にせよ、私は外へ出たい一心で、使っていない筋肉を総動員させて塔の長い階段を駆け下りる。


    「はぁっ…はぁっ…!」


    下へと降りるたびに、あの燃える音と焦げ臭いにおいが強まっていく。


    ミカサは階段をすべて降り、塔の入り口の前へと出た。

    人々は大騒ぎだった。







  3. 3 : : 2015/12/11(金) 17:31:48



    立派な木造のお屋敷が、火だるまと化していた。

    この城には、記憶では城本体のほかに、いくつかのお屋敷があった。

    5年前の記憶では、あのお屋敷は子供用のものだったはず。


    「急げ!火を消せ!!」


    使用人と思しき中年の男は声を張り上げ、ほかの者に水を急がせる。

    何度も何度も水を掛けるが、火の勢いは一向に収まらない。

    使用人の中には、『この行為に意味は無い』と諦めの表情を
    見せるものも居た。

    だが、建前上水を掛けることはやめられなかった。


    火事に夢中になる使用人たち。今なら逃げることができるはずだ。

    …私を閉じ込めた憎い王にも、いつか復讐の時が訪れるかもしれない。

    教育係の女性には悪いが…逃げさせてもらおう。

    そうミカサが思ったとき。


    「離せっ!まだヒストリアが…ヒストリアが中に!!」


    高貴な服に身を包み、燃え盛る屋敷へ行くことを、メイドらしき人物に止められている少年。

    この国の次の国王となる人物、王子である。

    5年前に手錠をされ、塔へと連れて行かれるミカサが庭先で遊ぶ彼を、ちらっと見たことがあった。


    「アルミン王子…!危険です!お離れ下さい…!!」


    メイドの静止など、耳に入っていない様子で誰かの名前を叫ぶ彼。

    妹の名前だろうか…?


    そんなことを考えていた私の体に、〈声〉が響いた。




    『姫を助けろ』




    その声は、私の体に木霊して響き渡った。

    女だか、男だかも分からない誰かの声。

    ミカサはその声に…操られるかのように火の燃え盛る屋敷へと歩を進める。

    自分の意識はあるのに、体は乗っ取られているよう。

    本能のままに、炎の中に飛び込む。

    王子や使用人たちの驚きの声が聞こえる。

    炎に包まれているはずなのに、私の体は熱さを感じなかった。
  4. 4 : : 2015/12/11(金) 17:56:21




    屋敷の中を探し回り、ミカサは3階へと続く階段でヒストリアと思しき少女を見つけた。

    気絶しているようだが、火傷などはないようだ。


    「…よい、しょ」


    ヒストリアをおぶる。

    火の中を通って屋敷から出ようと思ったが、よく考えればミカサは良くてもヒストリアは大やけどをしてしまう。

    考え込んでいるうち、また体が勝手に動き出した。

    体は3階へと進む。


    3階の、ある部屋へと導かれたミカサ。

    中へ入る。

    また体が勝手に動き出す。


    「…何…え…っ」

    連れてこられたのは、大きな窓の前だった。


    私を操っているものは、ここから飛び降りろとでも言うのだろうか。

    ここは3階。

    二階くらいなら、切羽詰まれば常人でも飛ぶことはできるだろう。

    だが3階ともなると…。


    「わっ……本当に飛べって言うの…?」


    考えていても、体は動く。

    窓を開けたミカサは、下を見下ろした。

    王子がこちらに気付く。

    おぶっているヒストリアに気づき、安堵の表情を見せるも、私がやろうとしていることに気付き、顔は青ざめた。


    「…飛べない…!」


    私は、私の体を操っているものよりも、私自身の本能が勝っているようで、飛ぶことを躊躇していた。

    だが、後ろで燃え盛る炎の音に、私の体に何かが起こった。

    バチバチと、体の底から力が沸き起こる。

    私なら、ここから『飛べる』。


    「…いける」


    そう感じた私は、窓の枠に足を掛け、飛び降りた。



  5. 5 : : 2015/12/12(土) 14:54:55


    ズサッッ!!


    飛び降りたミカサはヒストリアが落ちないよう、細心の注意を払って足で着地した。

    その達人技とも思える行為に、その場にいた者すべてが驚き、動けないでいた。

    ミカサでさえも、ろくに体も鍛えず…それどころか5年も幽閉されていた自分に、こんな力があったのかと驚いていた。


    「…ふぅ」


    おぶっていたヒストリアを地面に寝かせ、一息つく。

    次に動いたのは王子だった。


    「ヒストリア…っ!」


    大事な妹の容体を確認しに駆ける王子。

    王子の行動に、ハッと我に返った使用人たちも動き出す。

    誰かが呼んだ主治医から、ヒストリアが無傷だと言うことを聞いた王子たちは、みな安心した。

    その間、ミカサはずっと考え込んでいた。


    (私は…何をした)


    王子たちが行ったわけでは無いにしろ、自分を幽閉した王を…あれほど憎んでいたではないか。

    その王の大切な子どもを助けるなんて、私は何てことをした?

    あの時…私を突き動かした〈何か〉は、もういない。

    でも、姿を見せないではいるが、私の体に宿っているのだ。

    自分以外の何かが体を支配したことに、ミカサはとても気持ち悪く感じた。


    「あ…あの?」


    王子が俯いていたミカサへと話しかける。

    それに気づいたミカサ、王子の顔を見上げた。


    「妹を助けていただき…ありがとうございます」


    憎き王同然の人間に、お礼を言われたことに面食らったミカサ。

    たどたどしくも、「どういたしまして」と返す。

    しかし、使用人はミカサの正体が幽閉されていた罪人(あの塔に放り込まれるのは、よほどの罪を犯したもの)と分かっているから、そんなものが王子と話していることに、ヒヤヒヤしていた。


    「…よければ、お礼をしたいのです。お食事でも…」


    妹の命の恩人に、王子はお礼をする気である。

    だが、塔に幽閉されるほどの罪人を城の中へ入れることなどできるか…と、王子を止めた。


    「あ、アルミン王子…その者は、王子様からお礼を受けるほどの位ではございません故…」


    でも、王子は引かない。


    「…位が低いならば、僕の力で上げさせよう」


    「王子…」


    困るメイドの元に、ある女性がやってきた。


    「どっ、どうしたの?この騒ぎは…!」


    「ペトラさん!」


    王子たちの教育係である、ぺトラ・ラル。

    彼女のことは、ミカサも知っている。


    「ペトラさん,今日は休みで隣の国に行っていたんじゃ…」


    王子が思わず聞き返す。


    「帰ってきたのよ…火事?けが人は?」


    「大丈夫です。いません」


    「そう、なら良かった…」


    ペトラは、王子たちの教育係をしているが…本職は薬剤師である。

    教育係の仕事が休みの日にはミカサの塔へと足を運んだり、色々な国へと出かけて、薬草やら新種の花を見つけては新しい薬を作ったりしている。

    だから医療にも詳しく、王子たちの主治医の代わりになることもできる。


    「…え…?!」


    ペトラは、王子たちの傍にいるミカサに気づいた。


    「ミカサちゃん…?なんでここに…」


    塔の外にミカサが出ていることに、驚きが隠せないペトラ。

    ペトラは王以外に、ミカサが塔へ幽閉されている理由が、罪を犯したからではないということを知っている人間なのだ。

    だからこそ、ただの罪人をあの塔から出すより…ミカサを出す方が大変なことだと知っていた。


    「ミカサ…って言うんですか、名前」


    恩人の名を知った王子の顔は、いっそう明るくなる。


    「…そう、です」


    満面の笑みを見せる王子に、少し顔が赤くなるミカサ。


    「…どういうことなの?」

    二人を横目に、訳をメイドへと聞くペトラ。

    その顔は、重大なことが目の前で起こっていることにただ自分一人が気づいていると、不穏な気持ちを表していた。












  6. 6 : : 2015/12/13(日) 15:58:31




    ――――――――――――――――

    ―――――――――


    「と、言うことなんです…」


    「そう…」

    ミカサがどうしてここにいるのか、事の顛末を聞き終えたペトラは、王子に話しかける。


    「アルミン。いや、王子」


    「…ペトラさん?ミカサを…城へ連れていきましょう」


    アルミンは頑固だ。

    一度、こうすると決めたらば、てこでも動かない。


    「王子、それはいけません」


    「…ペトラさんまで許してはくれないのですか?」


    自分の理解者と思っていた者に否定され、少し不機嫌になる王子。


    「王子、その子は…ミカサは、塔に閉じ込められていた罪人です」


    「!…本当なのですか?」


    王子は、恩人があの塔に居た人間だとしり、驚きが隠せない。


    「…はい。ですから、城の中へ入れることは…」


    ミカサが幽閉されている理由をしり、仕方ないとは思いつつも、自分なりにミカサへ同情をしていたペトラ。

    ミカサの目の前で罪人扱いするのは気が引けたが、その前に私は城の人間なのだと、自分を納得させる。


    「…ペトラさん、ミカサがどんな罪を犯したのかは知りません」

    「ですが、姫の命を救った英雄となれば…罪は軽くなりませんか?」


    「王子…」


    王子は、何としてでも引かない気である。

    こうなったらもうしょうがない。

    理由を王子へ教える必要があるだろう。


    「…分かりました。…ミーナ」


    「は、はい…」


    ペトラは数人のメイドの中から、一人のメイドを呼び出し、こう伝えた。


    「王に、この子…ミカサを城の中へ入れても良いか、聞いて来なさい。…早急に」


    「え…は、はい…!」


    ミーナは城へと、大急ぎで走っていった。


    「王子、これで良いですね?」


    「…分かりました」


    王子はどっちにしろ、父親…王の許しを得なければ、ミカサに礼をすることは叶わないと悟った。


    「ですが、このままでは王子も納得しないでしょう…訳をお話しします。一旦城へ行きましょう」


    ペトラは王子を連れ、城へと入って行った。






  7. 7 : : 2015/12/27(日) 22:02:45
    期待
  8. 8 : : 2015/12/31(木) 16:10:55
    >>7
    ありがとうございます
  9. 9 : : 2015/12/31(木) 16:19:47
    ギイ・・・バタン


    壁一面が本棚で囲まれ、我が国の歴史からほかの国の最近の出来事まで、何でもそろっているのがこの図書室。

    それ一つ一つの書物は、平民が一生働いても買えないほどの金額のものばかりだ。


    ペトラはその図書室の一番奥にある本棚から、ある一冊の本を取ると、王子に手渡した。


    「…王子、王子はこの国の歴史を…建国神話を知っていますね?」


    ペトラは、目の前の王子に問いかける。


    「当たり前です。この国の者なら、誰だって知っている」


    王子はそう答え、渡された本を見てみる。

    ペトラが王子へ手渡した本の表紙には、金色の文字で<建国神話>と書かれていた。


    「王子。どのような話であるか、聞かせてはくれませんか?」


    「…え、ペトラさん?あなただって話を知っては居るでしょう」


    「ですが、今から私が話すことは建国神話に大きくかかわっているのです。話を整理するために、一度おさらいしてみましょう」


    「?…分かりました」


    王子は、その手に持った本のページを捲った。
  10. 10 : : 2015/12/31(木) 16:45:52



    「――――昔々、まだこの国が出来る前の話。


    この国の後の初代王は、国を作る土地を探していた。


    そして、初代王の側近であった魔術師の占いで、ある土地を見つけた。


    緑豊かな山。<巨神山>と呼ばれていたその山から流れる清き川。

    その川によって美しい花々や動物が住むその土地に、初代王は惚れ込んだ。


    その土地は、何千年も前からある一族が住んでいた土地だった。


    <巨人族>。


    初代王は巨人族たちと共に、永久に栄える国を作るつもりであった。


    だが、その土地には恐ろしい生き物が住んでいた。


    100年に一度、巨人族の子供たちを襲いに、巨神山から降りてくる、巨人という化け物。


    ちょうど王が来た年は、巨人が山から下りてくる年だったのだ。


    巨人は大きいものだと十数メートルにもなる巨大な化け物。

    知能は持ち合わせていなかったが、その巨体と生命力に巨人族の親たちはなすすべも無く、子供が喰われるのを待つしかなかったと。


    そこで王は、自分の側近であった女魔術師とのほかに

    世界から有名な女格闘家と、強力な力を操る精霊を宿していたという少女を連れてきて

    王と共に巨人に立ち向かったという。


    重傷を負いつつも、最後には巨人が現れていた洞窟を塞ぎ、彼女たちは勝利した。



    初代王は3人への敬意とこの国がいつまでも栄えるようにという思いを込め

    巨人から国を守る防壁をつくらせ、

    その3つの壁に勇者たちの名前である


    魔術師<マリア>、格闘家<ローゼ>、精霊使い<シーナ>


    を付けた。


    3人の勇者の功績は称えられ、<建国神話>として

    いつまでも語り継がれた。」

  11. 11 : : 2016/01/04(月) 16:16:41
    期待です!(///∇///)
  12. 12 : : 2016/01/13(水) 17:33:43
    >>11
    ありがとうございます。頑張ります!
  13. 13 : : 2016/08/29(月) 14:13:02
    頑張ってくれ!!
  14. 14 : : 2016/08/29(月) 14:17:53
    続きが気になるぞ(~o~)
  15. 15 : : 2016/08/29(月) 14:27:53
    アルミンが王子なんだな
    楽しみ。
  16. 16 : : 2016/08/29(月) 14:32:54
    最後まで書いてください
    期待してます
  17. 17 : : 2016/08/29(月) 14:40:30
    他の人と同様に楽しみにしてるから早く書いてほしい。
  18. 18 : : 2016/09/16(金) 21:17:11
    期待する
  19. 19 : : 2016/09/16(金) 21:48:41
    頑張れ!!
  20. 20 : : 2016/09/16(金) 22:18:06
    書くきあんのか・・・
  21. 21 : : 2016/11/23(水) 22:46:21
    楽しみ!
  22. 22 : : 2016/11/23(水) 23:20:16
    続き読みたい(΄◉◞౪◟◉`)
  23. 23 : : 2016/11/24(木) 00:09:43
    期待しておく
  24. 24 : : 2018/03/14(水) 20:33:38
    期待‼
  25. 25 : : 2018/12/27(木) 12:01:41
    おうふ

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1290

鬼灯

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