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エレン「虚しい勝利と死刑台」

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  1. 1 : : 2015/08/14(金) 14:26:02
    このお話は、王政が倒れてから七年後の未来の話をねつ造したものになります。


    アルミンが団長になり、エレン、ジャンが分隊長。ミカサが分隊長と兵士長を兼務しています。


    戦いが終わって、エレンが処刑されることになったというお話です。









    ※この物語はまず、>>8から読むことをお勧めします。



    最後にプロローグを読むと、この物語を一番楽しめるかと思います。







  2. 2 : : 2015/08/14(金) 14:26:38





    プロローグ











    ~調査兵団シガンシナ支部・第一分隊執務室~














    夜の帳の降りた暗い部屋を照らしているのは、一本の蝋燭。
    分隊長の椅子に座り、エレンはソファーに座る一人の女性と話をしていた。










    「感謝してるんだぜ、アニ。お前がいなかったら、壁外の人間たちとの和睦は出来なかったんだからな。」

    「それで、私の出した条件、アンタはしっかりと呑むんだろうね?」

    「分かってる。お前が壁外の国に帰ることが出来るのも、もう少しだ。」










    エレンはアニと、秘密裏に取引をしていた。









    エレンの率いる第一分隊は、表向きは壁外調査のエキスパート。
    壁外の国との和睦に最も功績のあった分隊であった。



    その実態は、秘密裏に壁外の国との交渉を担当する支部。
    アルミンの密命を受けて裏工作を謀る分隊。



    壁外との和睦が達成できたのも、第一分隊の暗躍があってこそ。
    調査兵団の暗部。その指揮官が、エレン・イェーガーであった。






  3. 3 : : 2015/08/14(金) 14:26:52







    さて、和睦が達成され、一度平和が実現すれば、エレンは周りにとって脅威以外の何物でもなくなる。
    エレン自身、そのことを最もよく理解していた。







    「・・・・・・もうしばらくしたら、俺の処刑の話が出てくるだろうな。」

    「アンタがそうやすやすと処刑されるとは思えないけどね。」

    「勿論そうだ。壁外に行くまで、俺は死ねないからな。」

    「へぇ、アンタ・・・・・・何か企んでるね?」








    エレンはすっと立ち上がり、机の引き出しを開けた。
    その中からウィスキーを一本取り出すと、ショットグラスに注いでアニに差し出した。







    「企んだのは俺じゃない・・・・・・アルミンだ。」

    「はぁ、やっぱりあいつが企んだんだね。」








    アルミンは政治工作に長けた男だ。
    和平のための工作も、アルミンが秘密裏に行ってきたことであったし、今度のこともそうなのかと妙に納得できた。






  4. 4 : : 2015/08/14(金) 14:27:03







    エレンは自分のショットグラスにウィスキーを注ぎながら、まるで他人事であるかのように淡々と話を続けた。








    「何でも俺の処刑を利用して、壁内の敵対勢力を引きずり出すつもりらしい。」

    「つまり、アンタの幼馴染みはアンタさえ利用するのかい。」







    少し皮肉った口調で言うと、エレンは少しにやけて答えた。








    「まぁそんなところだ。でだ、アニ。俺の耳に興味深い噂が聞こえてきてな。」

    「・・・・・・ライナーが貴族に手を貸しているという噂?」

    「やっぱりそうか、アルミンの読みは当たったな。」

    「流石だよ、気が付いていたとはね。」





  5. 5 : : 2015/08/14(金) 14:27:11







    ライナーがベルトルトを殺したエレンを恨み、復讐の機会を窺っているのを私は知っていた。


    でも残酷なことに、壁外の国はこれ以上争う気はないらしく、主戦派のライナーは、言ってみれば目障りになっていた。
    アルミンはそこに目をつけて、ライナーを葬る策ありと、壁外の人間たちに話を持ちかけたのだ。


    そして、止めを刺すのはエレンの役目。
    これでエレンの潔白は証明されることとなる。







    ライナーを排除し、エレンの潔白を証明し、敵対する貴族を抹殺――――――これがアルミンの思い描くシナリオだ。
    そして私は、調査兵団との交渉役として、共にライナーの排除を画策している。








    エレンを処刑しようという動きを封じるのに、これ以上巧みなやり方があるだろうか?
    アルミンといい、エレンといい、全くもって恐ろしい謀略家になったものだ。






  6. 6 : : 2015/08/14(金) 14:27:24








    「それで、アンタはどうするつもりなんだい、エレン?」

    「そうだな・・・・・・俺が逮捕されたら、ミカサにライナーと貴族たちのつながりを教えてやってくれよ。」

    「それから?」

    「それだけでいい・・・・・・後はアルミンが上手く立ち回るだろうからな。」











    そう言うとエレンはウィスキーをグイッと喉に流し込んだ。


    「アルミンからの差し入れだ。お前も飲めよ、アニ。」











    小さなショットグラスに、注がれた琥珀色のウィスキー。


    「・・・・・・いいよ、乗った。」










    アニもエレンに習い、強い酒を一気に喉に流し込んだ。










  7. 7 : : 2015/08/14(金) 14:27:36

































  8. 8 : : 2015/08/14(金) 14:28:13











    ~調査兵団本部・団長執務室~












    「どういうこと!? 説明して!!」







    ミカサは団長の机を思いっきり叩いた。
    その剣幕たるや凄まじく、そばに控えていた兵士たちを完全に圧倒しきるほどであった。










    「話した通りだよ、ミカサ兵士長・・・・・・エレン分隊長は明日、王都ミットラスにて公開処刑される。」


    冷静な返答をしたのは調査兵団第15代団長―――――――――アルミン・アルレルト。












    壁外の巨人たちと戦い、素晴らしい功績を遺したエレンが、処刑される。
    彼が巨人であるという理由だけで、ありもしないスパイ容疑をかけられて。







  9. 9 : : 2015/08/14(金) 14:29:48








    話は、数日前にさかのぼる。











    壁外の巨人達との戦争は、七年前、獣の巨人を駆逐してからも、なおも続いていた。








    この戦いを終わらせたのが、ハンジから団長職を引き継いだアルミンだった。
    卓越した交渉術を持つアルミンによって、壁外の人間たちとの和平にこぎつけたのである。









    調査兵団の人間たちにとって、これ以上の名誉はなかった。



    どこに行っても熱烈に歓迎され、
    不毛な戦いを終わらせ、平和をもたらしたヒーローとして祭り上げられた。











    だが、そのうちに、どこからともなく、こんな声が上がってきた。


    ――――――――壁内にいる最後の巨人を処刑しろ。















    冷酷な手のひら返しであった。


    しばらくの平和に浸ったのち、人々は彼の如何に大きい貢献があったかを忘れて、エレンに牙をむいたのである。






  10. 10 : : 2015/08/14(金) 14:31:15









    「なぜなの、アルミン・・・・・・なんでそんなに冷静でいられるの!?」


    ミカサにはアルミンの態度が解せなかった。
    幼馴染みの処刑を前に、なぜそんなに冷静でいられるのか。







    すると、アルミンは周りで待機していた兵士たちに顔を向けた


    「申し訳ないんだけど、僕とミカサを二人っきりにしてくれるかな?」









    アルミンが手を振ると、ミカサの剣幕に泣きそうになっていた兵士たちがすごすごと執務室を出ていった。










    ミカサと二人きりになると、アルミンは引出しをあけて中からタバコを取り出し、火を点けた。


    「ごめんね、ミカサ・・・・・・なかなか気が・・・・・・休まらなくて・・・・・・。」





  11. 11 : : 2015/08/14(金) 14:32:45







    団長になってから、アルミンは滅多なことでは弱気なところを見せなくなっていた。









    長くなった髪を束ねたアルミン団長は、七年前と違って顔つきが細くなり、何というか、凛々しくなった。
    幼馴染みの欲目もあるかと思うが、女性兵士からの人気も抜群に高い。




    一方で、アルミンの性格はだいぶ変わってしまったように思う。
    少なくとも、団長として働いている時のアルミンは謹厳実直。
    時に冷徹さを感じさせるほどだ。




    さっきエレンの処刑を淡々と告げたように・・・・・・。












    でも、私たち幼馴染みの前において、アルミンは素に帰る。
    疲れたようなその表情からは、エレンが処刑されてしまう・・・・・・その悲哀が感じられた。




  12. 12 : : 2015/08/14(金) 14:34:31








    弱弱しい声で、アルミンが言葉を続ける。


    「僕も・・・・・・八方手を尽くしては見たんだ。でも、止めることが出来なかった。」










    そういうと、アルミンは肩を落とし、空を見つめて煙を吐いた。
    そのしぐさがいかにも無気力で、アルミンがいかに打ちのめされているかを私は悟った。








    「・・・・・・教えて、アルミン。私はこれから・・・・・・どうすればいい?」








    どうにかエレンの処刑を止めたくて、私はアルミンに問うた。






    アルミンには正解を導く力がある。
    私は今でも、アルミンの力を信用している。





  13. 13 : : 2015/08/14(金) 14:35:13






    すると、アルミンの目つきが急に鋭くなった。
    まるで力を振り絞るように、アルミンはゆっくりとしゃべりはじめた。







    「今から言うのは僕の独り言だ。だからミカサ、君は僕から何の指令も受けていない。

    エレンの処刑は明日正午。王都ミットラスの広場にて行われる。

    エレンは今、審議所の地下牢に囚われているんだ。」















    そう言うとアルミンは立ち上がってタバコの火を灰皿で消すと、そのまま執務室を出ていった。
    すれ違いざま、アルミンは小さな声で呟いた。






    _________________君に、すべてを託すよ。ミカサ。












    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





  14. 14 : : 2015/08/14(金) 19:27:51









    ~王都ミットラス・中央審議所地下牢~











    光の差し込まない、暗くてじめじめした地下牢の中で、エレン・イェーガーは七年前と同じように、手首を鎖で繋がれていた。
    牢の外の廊下には、やはり見張りの憲兵が二人、同じようにエレンを常時監視している。








    ただ、七年前とは違うこともないわけではなかった。
    それは・・・・・・







    「イェーガー分隊長、何か・・・・・・お困りのことはありませんか!?」

    「もし私たちに出来ることがあれば、何でもお申し付けください!」







    見張りの憲兵がエレンに敬意をもって接してくれたことだ。


    エレンの処刑を声高に叫ぶものを除けば、実際のところ、誰がこの壁内を救った英雄なのか、皆理解していたのである。





  15. 15 : : 2015/08/14(金) 19:29:18






    「お気づかいありがとうございます。そうですね・・・・・・特にないんですが、戦友たちと一緒に話せたら、もう言うことはないですよ。」


    エレンの表情は、何か悟ったような、とても穏やかなものだった。










    なぜこの人が、こんなにも理不尽な理由で殺されなくてはならないのか?
    俺たちは、この人を見殺しにしてもいいのか?






    見張りをしている憲兵たちの心情は、穏やかならざるところがあった。




  16. 16 : : 2015/08/14(金) 19:31:48






    すると、地下の廊下の奥の扉が開いた。
    如何やら、面会者がやって来たらしい。






    「おい、ここは禁煙だぞ!」






    無精ひげを生やしたその男は、禁煙であることなど意にも介さないらしかった。
    憲兵の言葉を無視したその男は、エレンの牢の前に立つと、しげしげとエレンの顔を見つめて言った。






    「あ~あ、ひで~顔だな、死に急ぎ野郎。」

    「はっ、お前には言われたくねぇな、馬面。」







    タバコを咥えたその男は、調査兵団第二分隊分隊長――――――――ジャン・キルシュタイン。

    ジャンも今やアルミン団長の片腕として、調査兵団の実務を統括する第二分隊の長になった。




    性格は以前よりも捻くれ、少しやさぐれたところがあるが、根本が仲間想いなのは変わらない人物である。




  17. 17 : : 2015/08/14(金) 19:36:40







    「たく、少しは俺をいたわることは出来ねぇのかよ。」

    「生憎俺はそんなに器用な人間じゃねぇからな。」








    今まで達観していたエレンの表情は、何か悪友と一緒にイタズラを企むような、そんな笑顔に変わった。



    同期がやってきた気安さからだろうか。
    暫く二人は地上の様子について話していた。






    アルミン団長のこと。
    ミカサ兵士長のこと。
    ヒストリア女王と孤児院の子供たちのこと。
    後任にサシャが分隊長を務めることになったということ。
    サシャとコニーが結婚することを決めたこと。





    「あの芋女が結婚か・・・・・・。」

    「俺もいまだに信じらんねぇな・・・・・・あいつの花嫁衣裳なんざ、俺には想像がつかねぇよ。」







    エレンとジャンは、お腹を抱えて笑った。
    これが最後とばかりに、お互いが・・・・・・何の遠慮もなく。




  18. 18 : : 2015/08/14(金) 19:37:11






    「おお、そうだ、エレン。お前もタバコ吸うか? アルミンのおすすめだぜ?」
    「いや、タバコは止めておく、健康に悪いからな。」






    即答したエレンに、ジャンは再び大笑いした。
    どこか、寂しげな笑いだった。







    「・・・・・・そうだったな、ジャン。明日までの命だった・・・・・・。」







    エレンもまた、自嘲気味に笑い始めた。



    両隣りにいた憲兵も笑っていた。
    その瞳に、涙を浮かべながら。








    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






  19. 19 : : 2015/08/14(金) 21:25:14
    期待しかないのです( ´ ▽ ` )
  20. 20 : : 2015/08/14(金) 21:53:59
    >>19
    期待&お気に入り登録ありがとうございます!
  21. 21 : : 2015/08/14(金) 23:25:53
    期待です!
  22. 22 : : 2015/08/15(土) 06:35:14
    期待!
    ハンカチの準備ならもう出来てるよ!www

  23. 23 : : 2015/08/15(土) 10:23:48
    期待!
  24. 24 : : 2015/08/15(土) 14:15:35
    いつの間にかこんなに期待とお気に入り登録が・・・・・・


    ありがとうございます!
  25. 25 : : 2015/08/15(土) 15:03:57







    ~調査兵団トロスト支部、第三分隊執務室~









    アルミンからの言葉の意味を考えながら、ミカサは自分の執務室へと戻った。







    窓から街中の様子を見ると、すぐそばにある市場は活気でにぎわっていた。
    リーブス商会のフレーゲルはうっかりものではあったが、周りを動かす力があるのも確かなようで、フォローされながらも何とか街の発展に尽くしてきた。



    そのおかげもあって、トロスト区は今や、商業の街として経済活動が盛んであった。








    「・・・・・・随分と発展したんだね。」




    ミカサはハッとした。
    今の今まで、考え事をしていたせいでもあったが、自分の執務室の中に、人が潜んでいたことに今気が付いた。





    「・・・・・・誰?」

    「そう身構えなくてもいい。アンタに対する敵意は無いからね。」






    部屋の暗がりから姿を現したのは、一人の女性であった。


    背は低いものの、鼻のすっと通った端正な顔つき。
    金髪は昔と違い、長く伸ばしている。























    「貴方は・・・・・・アニ・レオンハート!」






  26. 26 : : 2015/08/15(土) 15:05:01







    ミカサにとって、アニの存在は衝撃的であった。





    七年前、自らの意志で水晶体に閉じこもったはずのアニ。
    そのまま封印され、二度と日の目を見ることの無いはずのアニ。





    それがなぜか今、私の目の前にいる。









    「なぜここにいるのか分からない・・・・・・って顔だね。」


    近づいてくるアニに、ミカサは思わず身構えた。
    しかし、そんなことなど意にも介さず、アニはソファーに座った。







    「・・・・・・どうやって水晶から出てきた?」

    「さあね。今ここで話すつもりはないとだけ言っておくよ。」

    「ここは調査兵団の支部。貴方が下手な動きをすれば、私が今ここで捕縛する。」

    「殺す・・・・・・とは言わないんだね。」

    「殺すつもりはない。貴方には、聞きたいことが山ほどある。」








    殺気だったミカサをじっと見つめるアニ。
    ややあってアニは目線をそらし、肩をすくめた。








    「いいよ、少しだけ話してあげる。」





  27. 27 : : 2015/08/15(土) 15:06:16






    まだランプもつけていない執務室の中に、まるで冷気が入り込んだかのような緊張が走る。
    アニはミカサの反応を確かめるように、ゆっくりと話し始めた。







    「・・・・・・エレン・イェーガーの処刑は、単なる処刑じゃない。」

    「どういうことなの?」

    「・・・・・・壁外の人間がそう望んだからさ。」












    頭の中に、花火が弾けて飛んだかのような衝撃をミカサは受けた。






    「そんなはずはない。壁外の国とは、和睦を結んだはず。」

    「そうだね。力では敵わないことを知った壁外の国の人間は、和睦をすることにした。何のためだと思う?」









    _____________私には分からない。



    なぜ打ち立てた平和を崩そうとする?
    なぜこんな茶番にも等しいことをする?




    こんなことをして・・・・・・いったい誰が、得をする?





  28. 28 : : 2015/08/15(土) 15:07:14






    ミカサはしばらく黙ってしまった。
    すると、その様子を汲み取ったアニが再びしゃべりはじめた。









    「・・・・・・壁内の国を内側から滅ぼすためだよ。」

    「!! そんな・・・・・・どうして!?」












    「力では敵わないことを知った壁外の人間たちは、和睦によって表面的には平和を得ることにした。
    でも、水面下では、壁内に内乱を起こそうと必死だ。
    その恰好のエサが・・・・・・エレンの処刑というわけさ。」











    _____________壁外の人間たちがエレンの処刑を望んでいる?











    「それってつまり、この壁内に、壁外と通じたスパイがいるってこと?」

    「かつての私たちみたいにね。」





  29. 29 : : 2015/08/15(土) 15:07:59






    ____________何とも滑稽な話だ。
    エレンにスパイ容疑を被せたやつらが、実はスパイだったとは・・・・・・。








    「・・・・・・貴方の話は信じられない、アニ。私はエレンを守る。」








    アニの表情からは、いかなる感情の揺れも感じられなかった。
    無表情のまま、アニは冷酷に言い放った。





    「壁外のスパイ――――――つまりアンタたちに恨みを持つ人間は、エレンを処刑するという形でアンタたちを挑発している。間違ってもエレンを奪還しようとは考えないことだね。
    エレンの奪還は、そのまま壁内の内乱に発展する。そしてそれを見逃すほど、壁外の人間たちは甘くはない。」

    「!!」










    _______________アルミンは、すべてを託すといった。




    私にエレンを救出せよとの命令を下した。
    なのに、なのに、なのに・・・・・・

















    私はエレンを・・・・・・守れない。





  30. 30 : : 2015/08/15(土) 15:09:16







    「エレンの処刑は、複雑な権力闘争(パワーゲーム)の上に成り立ってる。戦争か平和か、壁外か壁内か。身の振り方を間違えれば、再び戦争は始まる。」

    「・・・・・・私は、どうすれば・・・・・・。」









    すると、アニは立ち上がり、ミカサに耳打ちをした。





    「――――――――――――。」

    「!!」












    そのままアニは執務室のドアに向かって歩き出し、振り返って最後に一言、付け加えた。


    「私はアンタに、伝えたいことは伝えた。アンタがどう動くのか、私は影から見ることにするよ。」








    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






  31. 31 : : 2015/08/15(土) 18:47:33
    期待です!
  32. 32 : : 2015/08/16(日) 06:40:50
    期待&お気に入り登録ありがとうございます!
  33. 33 : : 2015/08/16(日) 21:42:40
    悲しいけど期待です
  34. 34 : : 2015/08/16(日) 23:26:02
    期待ありがとうございます!
  35. 35 : : 2015/08/16(日) 23:37:04
    期待
  36. 36 : : 2015/08/17(月) 01:09:37
    期待&お気に入り登録ありがとうございます!
  37. 37 : : 2015/08/17(月) 01:10:13








    ミカサは急遽早馬を飛ばし、調査兵団の本部に向かった。












    今得た情報をアルミンに伝えなくては!
    ブーツが擦り切れるのも構わず、これまでにないと思われるくらいに急いで、私はアルミンのいる部屋へと向かった。









    ドンドンッ!!

    団長室のドアを力強くたたくと、ギィッとドアが開いた。









    ドアを開けたのは、エレンの副官を務めていたサシャだった。







    「!! どうしたんですか!? 息が切れていますよ!?」

    「サシャ!? アルミンは今どこに!?」

    「僕はここにいるよ、ミカサ! いったい何があったの!?」









    部屋の奥を見ると、執務室の机に座っているアルミンの姿が見えた。
    どうやらエレンの元、第一分隊の副長を務めているサシャと何か話をしていたらしい。





  38. 38 : : 2015/08/17(月) 01:11:24






    「聞いて! アルミン! 大変な、ことが、起こった!」






    そのままミカサがアルミンの前に行こうとすると、息切れを起こして少し足元がふらついた。
    サシャが気を使ってミカサの体を支え、ミカサはゆっくりとソファーに腰を下ろした。








    アルミンはコップ一杯の水を差し出しながら、ミカサに尋ねた。







    「それで、大変なことっていったい何なの?」

    「アルミン・・・・・・アニが・・・・・・あのアニが・・・・・・私に接触してきた!」

    「な、何だって!?」

    「本当ですか!?」









    当然ながら、驚く二人。
    地下深くに封印されていたはずのアニが表を歩いているなど、あってはならないことだったからだ。










    アルミンの表情が、一気に険しくなる。
    ややあって、アルミンが静かに言葉を発した。




    「ミカサ・・・・・・その話、詳しく聞かせてくれ。」





  39. 39 : : 2015/08/17(月) 01:14:00







    ___________________それから私は、ここ数時間で起こった出来事を話した。





    アニが接触してきたこと。
    エレンの処刑が、壁外の国と貴族の陰謀であること。


    そして・・・・・・・・・・・・






















    「アニは言っていた。エレンの処刑を誰よりも望んでいるのは・・・・・・ライナーだと。」









    衝撃のあまり、誰も言葉を発せない。
    氷のように冷たい沈黙が三人の周りを取り囲み、まるでそこだけ時が止まってしまったかのようだった。










    「・・・・・・ミカサ、サシャ。僕らは・・・・・・ツケを払わなくちゃいけないみたいだね。」


    沈黙を破ったのは、アルミンのこの一言だった。











    「七年前のシガンシナ区・・・・・・僕らはそこで、獣の巨人とベルトルトを殺害した。それ以降、ライナーの消息は途絶えたままだったけど、まさか・・・・・・こんなことに、なるなんて。」






  40. 40 : : 2015/08/17(月) 01:15:41









    _________________エレンの救出は、至難の業だ。









    最も安全に救出できるのは、今を置いてほかにはなかった。
    見張りの憲兵も、エレンに絆されている以上、彼を牢から出すのはそう難しくはない。




    だが、その場合、調査兵団全体がスパイ扱いを受けてしまう。
    最悪、調査兵団そのものが粛清される恐れもある。









    以上のリスクを考えたとき、ミカサは悟った。
    もう既に、エレンを助け出せる可能性は無いということを。















    「・・・・・・ミカサ?」


    いつの間にか、ミカサの頬を涙が伝っていることにアルミンは気が付いた。





  41. 41 : : 2015/08/17(月) 01:16:22








    ミカサは、昔と変わった。








    以前のミカサなら、エレンだけを見ていただろう。
    エレンのためならば、たとえ壁外を敵に回したとしても、戦ったに違いない。



    でも、兵士長として、分隊長として、ただ自分のためだけに、再び戦いを起こすわけにはいかない。
    兵士としてのミカサの成長は、ミカサに残酷な真実を突きつけていた。












    戦いを回避するためには、エレンを見殺しにするしかない。








    あり得ない選択。
    そのはずだった。


    はずだったのに・・・・・・。









    「・・・・・・ごめんなさい、ミカサ。私は、何もできないです・・・・・・。」


    サシャはミカサに謝ると、無力感からか、頭を項垂れてソファーに座り込んだ。






  42. 42 : : 2015/08/17(月) 01:18:22








    少しずつ、ミカサの胸に絶望感が広がっていく。


    「私・・・・・・エレンを・・・・・・守れない。どうしたら、一体どうしたらいいの・・・・・・。」










    ______________エレンは私にとって、かけがえのない家族だった。





    いつ何時も、エレンとアルミン、三人で困難を乗り越えてきた。
    でも、今度の困難は・・・・・・。








    エレンの死によってしか、解決できない。








    奮闘したエレンに与えられたのは、虚しい勝利と、死刑台のみ。

    ・・・・・・あまりにも、残酷な仕打ち。









    絶望しきった私は、濡れたその目でアルミンを見た。












    アルミンは、しかし、絶望した様子など、微塵もなかった。


    「・・・・・・アルミン?」







  43. 43 : : 2015/08/17(月) 01:19:22








    次の瞬間、アルミンは立ち上がった。









    「ミカサ・・・・・・会議を開くから至急ジャン分隊長とモブリット分隊長を呼んできて。
    サシャはエレンの代理として会議に出席してくれ・・・・・・・・・・・・作戦を考えた。」


    「わ、分かりました。」








    アルミンの突然の命令に、その真意を測りかね、サシャは戸惑いがちに返事をした。















    __________アルミンにはいつも正解を導く力がある。

    暫く呆気にとられていた私は、急いでジャンとモブリットさんを呼びにアルミンの執務室を出た。









    いつもアルミンは、物事を数歩先まで読んでから行動する。
    アルミンが絶望していない以上、私も絶望するわけには・・・・・・いかない!
















    待っていて欲しい、エレン。
    私たちはあなたを・・・・・・・・・・・・死なせないから。








    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇







  44. 44 : : 2015/08/17(月) 10:11:09










    間もなく、本部にある会議室に、第二分隊の分隊長であるジャン・キルシュタイン。
    ハンジが団長になった際に第四分隊を引き継いだモブリット・バーナーが入ってきた。






    アルミン団長、ジャン分隊長、ミカサ分隊長兼兵士長、モブリット分隊長、そしてエレンの代理としてサシャ副長が席に座ってから、おもむろにアルミンは話を切り出した。







    「こんな時間に急遽集まってもらって本当に申し訳ない。知っての通り、明日の正午には、僕の幼馴染みのエレンが、いわれのないスパイ容疑で処刑される。

    八方手を尽くしてきたけど、どうしても阻止できそうになかった。でも、ついさっきだ。ミカサ分隊長から驚くべき報告があったんだ。」








    _________アルミンはアニのことについて、ジャンとモブリットさんに説明した。




    ジャンは取り出したタバコを吸いながら、渋い顔をして聞いていた。
    反対に、モブリットさんは姿勢を正して真面目に聞き入っている。







    「・・・・・・・・・・・・なぁ、アルミン? その話、信憑性はどれくらいあるんだ?」






    話を一通り聞き終わったジャンが、アルミンに話を切り出した。






    「ミカサの話じゃ、アニはライナーがエレンの処刑を画策してるって話をしたみてぇだが、あいつも壁外の人間だろうが!? そもそもどうやってあいつは表に出た!?」

    「・・・・・・まさかとは思うけど、僕らの中に裏切り者はいないよね?」







    _________ジャンやアルミンの言うことはもっともだ。







    私だって考えていないわけではなかった。


    アニが自力で脱出したとは考えにくい。
    それはつまり、調査兵団の中にも、今回の件を手引きしている人間がいるということになる。






  45. 45 : : 2015/08/17(月) 10:12:14






    そのままアルミンは、話を続けた。





    「ジャン、ミカサ、サシャ、モブリットさん。ここからは僕の推測を交えた話になる。恐らく・・・・・・壁外の国も僕らと同様、一枚岩じゃない。」

    「どういうことですか? アルミン?」

    「ライナーのように内乱を起こそうする人間もいれば、アニのように戦いを阻止しようとする人間もいるということさ。」

    「なぜそう言い切れる? アイツが味方だという保証はどこにもねぇだろうが?」








    アルミンは深く息をついた後、意を決したように長い説明を始めた。








    「壁外の国にも、主戦派と和平派がいるということだよ、ジャン。

    そして、主戦派の筆頭がライナーで、エレンの処刑をエサに、壁内に内乱を起こさせ、その隙に僕らを滅ぼすつもりなんだろうね。

    アニは恐らく和平派だ。だからミカサに接触してきた。味方だから接触してきたわけではないと思うんだ。」


    「つまり、アニはライナーと対立して俺たちに情報を漏らしてきたと? お前はそう考えるんだな? アルミン?」


    「そういうことだよ。」



  46. 46 : : 2015/08/17(月) 10:13:20






    すると、これまで聞き役に徹してきたモブリットさんが話し始めた。








    「となると、壁外にも内乱の兆しがある・・・・・・ということでしょうか? アルミン団長?」


    「・・・・・・そういうことになります。アニの言う通り、エレンの処刑は、壁内ではエレンの処刑を企む黒幕と僕ら調査兵団、壁外では主戦派と和平派、それぞれの勢力の権力闘争(パワーゲーム)の上に成り立っているといえそうです。

    そして、エレンを救出するチャンスはここにあります。」









    __________エレンを救出するチャンスがある。

    アルミンのこの言葉に、他の分隊長たちの視線が一気に集まった。









    「皆もよく聞いてほしい。エレンを処刑しようとしているのは、壁内にいる貴族たちと主戦派であるライナーだ。

    もし、もし僕らが、壁内の貴族たちがライナーのスパイだと証明できれば?」


    「そうか! エレンのスパイ容疑は晴れるってことか!」


    「その通りだよ、ジャン。エレンにスパイ容疑をかけた貴族たちが、実はスパイだったことが証明されれば、エレンの処刑は無くなる!」





  47. 47 : : 2015/08/17(月) 10:15:14






    _________一筋の希望の光が、差し込んだ気がした。









    「もうすぐ夜が明ける。処刑まであまり時間がない。教えて、アルミン。私たちはどうすればいい!?」


    「いいかい、ミカサ。ライナーの目的は、壁内に内乱を起こさせることにある。

    最悪、ライナー自身が暴れるだけでも目的は達せるだろう。エレンがライナーを手引きしたといえばね。

    つまり、アニの話が正しければ、ライナーも壁内にいる可能性が高い。ミカサとジャン、モブリットさんは何としてもライナーを探し出すんだ!」


    「「「はッ!!」」」







    三人の分隊長は見事な敬礼をすると、一目散に会議室から出ていった。


















    調査兵団、貴族たち、ライナー、アニ・・・・・・
    それぞれの思惑が、複雑な利害関係の上に動き出す。





    エレンの処刑まで、およそ6時間。









    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇







  48. 48 : : 2015/08/17(月) 15:26:34






















  49. 49 : : 2015/08/17(月) 15:26:49


















    _______今は一体何時なのか・・・・・・。



    朝なのか、
    昼なのか、






    それすらもよく分からない。













    時間感覚はとうに狂って、あまりよく眠れなかった。
    憲兵さんの話では、もうすぐ処刑の時間だという。






    七年前、この牢獄の中で、もしかすると一生出してもらえないのかもしれないと思っていたことがひどく懐かしい。
    それでも、時はやってくるものだ。




  50. 50 : : 2015/08/17(月) 15:27:50







    地下の扉が開いた。
    どうやら俺のお迎えが来たらしい。







    憲兵たちがその男に敬礼をした。
    ________金髪を後ろに束ねた、俺のよく知っている男。








    「遅かったじゃないか、アルミン。」

    「勘弁してほしいね、エレン・・・・・・時間だ。」








    そう言うとアルミンは地下牢の扉を開け、まるで慈しむように手枷を外すと、俺の腕を後ろにまわして手錠を嵌めた。







    「君はこれから、王都ミットラスを引き回された後、広間にて断頭台で処刑される。僕が君を引き回すことになった。」

    「成程な・・・・・・巨人である俺への、見せしめって訳か。」

    「・・・・・・立派な花道にするから、しばらく我慢してくれ。」








    アルミンはそういうと、地下牢から先に出た。
    牢から出る間際、見張りをしていた憲兵に声をかけた。






    「お世話になりました。俺、あなたたちの恩は忘れません。」







    涙を堪えていた憲兵たちは、遂に堪え切れなくなって泣きながら敬礼した。





  51. 51 : : 2015/08/17(月) 22:04:10
    期待ですッ!
  52. 52 : : 2015/08/18(火) 00:00:28
    期待ありがとうございます!
  53. 53 : : 2015/08/18(火) 00:04:05









    そのまま俺は地下牢を出て、日の当たる外へと出た。
    暫く浴びていなかった日差しが俺の目を焼いた。






    何もかもがひどく眩しくて、
    もうどうしようもないくらいに虚ろだった。









    「すまないけど、この馬に乗ってくれないか?」


    酷く申し訳なさそうに、アルミンは俺をゆっくりと馬の上に乗せた。











    俺を引き回す人間はどうやら、俺の知り合いばかりが選ばれたらしい。





    かつて団長を務めていたエルヴィンさんやハンジさん。
    兵士長を務め、人類最強とまで言われたリヴァイさん。




    憲兵団の師団長になったマルロ。
    今や総統となった元憲兵団師団長、ナイルさんの姿も見える。







  54. 54 : : 2015/08/18(火) 00:05:45
    すごく先の展開が気になり、ブックマークしときました!期待です!頑張ってください!
  55. 55 : : 2015/08/18(火) 00:08:18
    ありがとうございます!

    そこまで気に入っていただけて、とてもうれしいです!
    頑張ります!
  56. 56 : : 2015/08/18(火) 00:08:28









    そのままアルミンは手綱を引き、俺は王都の中を引き回され始めた。






    正直俺は、罵倒されるものだと思っていた。
    巨人である俺の死を、悲しんでくれるものなど、ほんの一握りだと・・・・・・。











    処刑台までの道のりは、人で埋め尽くされていた。
    まるでそれは、棺台を見送るかのような、物々しい沈黙であった。












    どこからともなく、
    だれからともなく、
    人々は俺の通る道に花を投げた。







    まるでこれから、葬式にでも向かうかのような、そんな気分だ。







  57. 57 : : 2015/08/18(火) 00:10:18




























  58. 58 : : 2015/08/18(火) 00:10:54










    _________アルミンに引き回され、エレンが処刑台へと送られていく様子を、俺は建物と建物の隙間から覗いていた。












    あんなに憎いと思っていたエレンでも、いざこうなってしまうと、何だか虚しいものだった。









    アニは拷問され、ベルトルトは殺され、その上屈辱的な和平を結ばされた。


    和平とは名ばかりだ。
    実際はエレンの座標の力に逆らえず、力でねじ伏せられたのだ。


    俺は七年前のあの日、アニを救出するどころか、ベルトルトを守ることすらできなかった。










    俺の目の前で、ベルトルトは・・・・・・息を引き取った。






  59. 59 : : 2015/08/18(火) 00:12:37







    和平が結ばれ、俺は最初からいなかったことにされた。




    俺の苦悩も、
    俺の悲しみも、
    故郷に帰るために過ごした日々も、




    全部が・・・・・・無駄になった。








    憎らしかった。狂おしいくらいに。
    そして俺の心の中の怒りは、壁内の人間。特に、ベルトルトを殺したエレンへと向けられた。









    俺は壁内に入り込み、執念深く壁内の貴族たちを説得した。
    英雄として凱旋しているエレンに憎しみをますます募らせながら・・・・・・。







    有力な貴族とのコネを手に入れ、俺はそいつのつてで、貴族たちをまとめ上げた。
    そして、ありもしないスパイ容疑をようやくエレンに被せることが出来た。





  60. 60 : : 2015/08/18(火) 00:13:48







    ・・・・・・計画は最終段階に入った。






    エレンさえ処刑されれば、俺たち壁外の巨人を止められるものはいなくなる。
    その時だ。俺が巨人化するのは。



















    俺がすべてを・・・・・・破壊する。














    緑のフードを被ったその男は、エレンの葬列から背を向け、広場へ向かって裏路地を歩き始めた。











  61. 61 : : 2015/08/18(火) 00:22:53





















    刹那――――――――空から二本の刃が襲い掛かった。


    「!!」







    バキィィンッ!!



    男の首を狙ったその刃は、硬化した腕によって真っ二つに割れた。










    男はそのまま硬化した右足を振り抜く。
    襲撃者は間一髪、頭を引いて一撃を躱し、そのまま後ろへと後退。



    それから、真っ直ぐ立って男と対峙した。









    「やっと見つけた。貴方に、エレンを殺させはしない! ライナー!」

    「その俊敏さ、相変わらずだな、ミカサ!」






  62. 62 : : 2015/08/18(火) 00:24:11
    期待‼
  63. 63 : : 2015/08/18(火) 00:27:17
    期待ありがとうございます!
  64. 64 : : 2015/08/18(火) 00:27:50







    __________しばらくぶりにあったライナーは、筋骨隆々の大男だった。

    ただ、その目はもう頼れる兄貴分のそれではなくなっていた。












    ・・・・・・炎を宿した、復讐者の目。

    狂気を孕んだ、修羅の目だ。











    ビキビキビキッ!


    ライナーの腕がみるみる黒色に変化していく。
    どうやらライナーは、人間の姿のままでも、巨人の能力を発現できるようになったらしい。







    再びライナーは勢いをつけ、腕を硬化させて、ミカサに殴りかかった。






  65. 65 : : 2015/08/18(火) 00:28:37








    ドゴオォオォオンッ!!




    その凄まじい音は、エレンやアルミンの葬列にさえ微かに聞こえてきた。









    「な、何の音だ!?」


    総統であるナイルの頭の中に、七年前の出来事がふとよぎった。
    あの時は確か・・・・・・






    ナイルは思わずエルヴィンの表情を見た。
    エルヴィンは平時と変わらない様子でその音の発生源を睨んでいた。







    「エルヴィン・・・・・・これは、一体!?」

    「分からない。だが、何か不吉なことが起こっているようだな。」







    エルヴィンの様子に、リヴァイとハンジも表情を引き締めた。








    「ちっ、俺は既に現役じゃねぇんだがな。」

    「まぁ若い人たちのお手本になってあげなよ、リヴァイ教官。」





  66. 66 : : 2015/08/18(火) 00:29:20
    期待です!

    頑張っていないください!
  67. 67 : : 2015/08/18(火) 00:31:14
    沢山のご期待ありがとうございます!

    頑張ります!
  68. 68 : : 2015/08/18(火) 00:31:25







    するとそこへ、調査兵団の兵士が立体機動で飛んできた。
    兵士はすぐさまアルミンの元に駆け寄ると、周りには聞こえない声で報告した。






    「団長。王都ミットラスにライナーが出現。現在、ミカサ兵士長とジャン分隊長が交戦中です。」









    報告を受けたアルミンはすぐさま動いた。






    「総統、王都ミットラスに、再び巨人が出現したようです。」

    「な、何だと!?」








    _________間違いない。







    これはまるで、ストヘス区の時と同じ・・・・・・。



    あの時の悪夢が、再び繰り返されようとしている。
    しかも、今度は王都ミットラスで!








    「入ってきたのはライナー・ブラウン。鎧の巨人です。」

    「!! あの、鎧の巨人が!?」

    「ええ、どうしてここまでやってこれたのかは分かりませんが、誰かの手引きなくしては、ここまでやってこれるはずがありません!」

    「どういうことだ!? まさか壁内にスパイがいるといいたいのか!?」

    「そうです! そしてそのスパイは、エレンではありません!」




  69. 69 : : 2015/08/18(火) 00:32:41






    アルミンはナイル総統の目を見つめ、強い口調で迫った。







    「エレンは今まで、私たちのために様々な貢献をしてくれました! スパイ容疑だなんて、全くのでっち上げです! 私たちには今、エレンが無実であることを証明する準備があります!」

    「じゅ、準備!?」

    「エレンがライナーを倒すことです! エレンは、きっとその覚悟を我々に示してくれるはずです!!」







    ナイルは周囲を見た。
    エルヴィンも、ハンジも、リヴァイも、マルロでさえもゆっくりと頷いた。







    「・・・・・・わかった。エレンの手錠を外すんだ!」








  70. 70 : : 2015/08/18(火) 00:33:31








    エレンの手首から手錠が外された時、天から大きな稲妻が走った。






    「きょ、巨人だ!!」







    大きな悲鳴が遠くから響いてきた。
    ミカサとジャンの部隊が、多大な犠牲を払いながらも、ライナーを人のいない市街地にまで追い詰め、遂に巨人化するところまで追い込んだのである。









    すると、どこからともなく声が沸き起こった。







    「あの巨人を止めてくれ!」

    「あんたらしかいないんだ!」

    「お前たちは・・・・・・俺たちの、希望だ!」








    人々は手に持っていた花を空に投げた。
    たちまち通りには、花びらが降り注いだ。





  71. 71 : : 2015/08/18(火) 00:34:19







    エレンはアルミンと一緒に立体機動装置を身に着けると、同じ馬に跨った。
    エレンが前に座り、アルミンが後ろからエレンにしがみついた。








    「なぁアルミン。こんな展開、予測できたか?」

    「いや、ここまで熱烈に送り出してもらえるとは思わなかったよ。」








    処刑台への道は鎖され、文字通り花道がエレンの前には用意された。
    眩しいくらいの花吹雪が、まるで祝福を与えるかのようだった。








    「行くぞ、アルミン!」

    「うん!」








    二人は馬に鞭打ち、戦場へと走り出した。
    集まった民衆の、熱狂的な歓声に包まれながら。







  72. 72 : : 2015/08/18(火) 01:02:41











    ___________おかしい。







    なぜ俺がここにいることがばれた?
    なぜ俺はここまで追い詰められている?






    これは、計画とは違う!









    無数の兵士を血祭りにあげながらも、ライナーは追い詰められていた。








    俺が巨人化したのを合図に、壁外の巨人が蜂起する手はずだった。
    なのに、ほかの巨人が一向に現れない。
















    ピカアァアァアァッ!!




    鎧の巨人の目の前に、眩しい光が炸裂した。







    巨人化の光だ。
    漸くほかの巨人が現れ――――――――・・・・・・・・・・・・










    バキィィッ!!



    次の瞬間には、鎧の巨人は思いっきり吹き飛ばされた。
    硬化された右拳の一撃が、鎧の巨人の顔面を覆う鎧の左頬を粉砕した。






    鎧の巨人が上半身を起こすと、巨人となったエレンが右腕を硬化させていた。









    「エレン!」

    「ちっ、待たせやがって!」








    英雄の到着に、ミカサやジャンをはじめとする兵士たちの士気も上がった。






  73. 73 : : 2015/08/18(火) 01:03:23










    遂に、味方の巨人は現れなかった。


    __________この瞬間に、俺は漸く気が付いた。











    ああ、俺は・・・・・・嵌められた。






    この戦いは、まさしく茶番だったのだ。
    俺は、徹頭徹尾、利用されただけだった。








    思えば初めからそうだった。




    ガキの頃から戦士として育てられたのも、
    ベルトルトやアニと共に壁を破ったのも、
    かつてエレンと戦ったのも、




    そして今、こうしてエレンと戦っていることでさえも・・・・・・。










    俺は常に誰かに操られてきた。
    だから、最後の最後くらいは・・・・・・・・・・・・華々しく散ってやる!

















    グオオォォオオォォオオォォッ!!



    鎧の巨人は立ち上がると、これまでにないくらい巨大な咆哮をあげた。











    そのまま鎧の巨人は勢いをつけて、エレンにタックルをした。











    二人の巨人は、その持てる力のすべてを懸けて、ぶつかり合った。
    地面が震え、空気がビリつくような、凄絶な死闘が、王都ミットラスを舞台に繰り広げられた。







  74. 74 : : 2015/08/18(火) 01:04:45


































    __________これが、俺の最後の戦いだ、ベルトルト。



    俺も今から、そっちに逝くよ。










  75. 75 : : 2015/08/18(火) 01:05:33






























  76. 76 : : 2015/08/18(火) 01:06:50









    エピローグ












    ~調査兵団シガンシナ支部・第一分隊医務室~












    光の降り注ぐ部屋の中で、ミカサは椅子に座ってうつらうつらとしていた。











    側にあるベットの上では、頭に包帯を巻いた男が横になっていた。
    激しい戦いに傷つき、治療を受けていたのは、エレン・イェーガー分隊長であった。








    コンコンッ


    「失礼するよ。」






    ドアをたたく音に、ミカサは目を覚ました。


    入ってきたのはアルミン団長に、サシャ第一分隊副長であった。








    「アルミン・・・・・・ライナーは、どうなったの?」

    「・・・・・・息を、引き取ったよ。」








    王都ミットラスでの戦闘は、後々まで語り草になるほど激しいものであった。
    長い死闘の末、エレンは何とかライナーを倒したのだった。










    「・・・・・・そう、これで私たちの因縁に、決着がついた。」

    「そうですね、ミカサ。死に際に、ライナーは微笑んでいました。」

    「うん、ベルトルトにこれから会いに行く・・・・・・後のことはよろしくなって、言っていたよ・・・・・・。」






  77. 77 : : 2015/08/18(火) 01:08:18








    エレンの処刑は、アルミンの機転により無くなった。
    ライナーとの戦闘が、皮肉にもエレンの潔白を証明することになったからだ。








    『エレンはスパイではありません。エレンを殺そうとするものが、スパイです。』








    アルミンはライナーを招き入れた貴族たちを糾弾した。
    そして、調査兵団の第一分隊が中心となって、この件に連座した貴族たちを捕え始めた。







    これに対し、壁外の人間たちはすぐさま動いた。
    この件はライナーが独断で行ったことであり、他の人間は関与していないとのメッセージを出したのである。


    国と国同士の権力闘争(パワーゲーム)の中で、敗れたライナーは闇に葬り去られたのだった。





  78. 78 : : 2015/08/18(火) 01:09:03








    「さて、ミカサ・・・・・・そろそろ替わるよ。今日の夕方までは僕とサシャが看病するからさ。」

    「・・・・・・分かった。引き継ぎの資料は?」

    「僕の執務室に置いてある。少しの間だけ、代理を頼むね。」








    ミカサは椅子から立ち上がると、ふっと微笑んだ。






    「・・・・・・ありがとう、アルミン。あなたの機転がなかったら、エレンは助けられなかった。」

    「いや、今回はミカサのおかげだ。君が動かなかったら、エレンは助けられなかったよ。」







    二人はお互い顔を見合わせてくすくすと笑い始めた。







    「ねぇ、ミカサ。僕とエレンの夢、覚えてる?」

    「忘れるわけがない。外の世界を探検することは、私の夢でもある。」






  79. 79 : : 2015/08/18(火) 01:10:59







    ________________やっぱりアルミンは変わっていない。





    夢を語る時のアルミンは、昔から一番キラキラしている。
    団長になった今でも、アルミンはアルミンのまま。










    「私も一緒に、外の世界を探検する。だから、エレン、アルミン。」

    「なんだい、ミカサ?」














    「・・・・・・私と一緒に生きていて欲しい。」


    ミカサはそう言うと、医務室を後にした。











    Fin







  80. 80 : : 2015/08/18(火) 01:11:47




























  81. 81 : : 2015/08/18(火) 01:14:08









    ・・・・・・・・・・・・それで、俺を処刑しようとした貴族は誰か分かったのか?




    残念ながら、分かりませんでした。ライナーを通じて、そいつはエレン処刑に手を貸すよう、他の貴族たちに圧力をかけていたみたいです。




    随分と効果的な手を使ってきたね、その人間は。ライナーの説得は、背後に壁外の国があるっていう無言の圧力になったんだろう。




    だからこそ俺にありもしないスパイ容疑をかけることが出来たってわけか。盲点だったな。




    それで、捕えた貴族はどうしたの? サシャ?




    これ以上は何も知らなそうでしたので、消えてもらいました。




    そう、ご苦労様。







  82. 82 : : 2015/08/18(火) 01:14:51







    (扉が開く音)









    やぁ、久しぶりだね、アニ。




    アンタも相変わらずだね、アルミン。エレンとサシャも変わり無いようで何よりだよ。




    俺は変わり果てたけどな。久しぶりの巨人化だったせいか、体が思うように動かなかった。




    まったくひやひやしたよ、エレン。君がライナーを倒せなかったら、この計画はご破算だったからね。




    やれやれ、ライナーの排除にエレンの潔白の証明、そして敵対する貴族の抹殺・・・・・・すべてアンタの筋書き通りというわけかい? アルミン?




    貴族の抹殺に関しては、完全な成功とはいかなかったよ。黒幕と思しき貴族が誰なのか、結局つかめなかったしね。




    エレンの処刑を阻止できただけでも御の字ですよ。それに、今後はエレンを処刑しようとすれば、スパイ容疑をかけられるんですから。




    そうだね。もうエレンを殺される心配はないし、しばらくは泳がせておこうか・・・・・・。敵味方がはっきりと分かるまではね。





  83. 83 : : 2015/08/18(火) 01:16:45









    それで、私はもう壁外に戻っても?




    勿論だよ、アニ。ただ、今度壁内に来るときは・・・・・・壁外にしかないものを持ってきてくれるとうれしいかな。




    はぁ?




    ただし、このことはくれぐれも内密にね。




    ・・・・・・・・・・・・密貿易でもしようということかい?





















    ふふ、壁外と壁内の関係を保つ上での、ささやかな密約さ。








  84. 84 : : 2015/08/18(火) 01:18:49
    以上で終了になります。
    沢山のご期待、お気に入り登録ありがとうございました!




    これからプロローグを掲載します。
    感想を頂けたら幸いです。
  85. 85 : : 2015/08/19(水) 22:56:36
    すごく面白いです!
  86. 86 : : 2015/08/20(木) 08:53:05
    「……」や「! ーー」
    などのSSとしての細かいところもよく出来ていてとてもよかったです。
    それに話の内容がとても深く時間を忘れて読むことができました。
    これは確実に良作なのでお気に入り20とか超えてもおかしくない位です。
    執筆お疲れ様でした
  87. 87 : : 2015/08/20(木) 09:44:49
    凄く面白かったです!
    お話の設定、内容がとても深くてとてもワクワクしました!
  88. 88 : : 2015/08/20(木) 13:53:34
    書き方、ストーリーともに素晴らしかったです!

    執筆、お疲れ様でした!
  89. 89 : : 2015/08/20(木) 16:04:43
    プロローグ見たけど完成度やべぇww
  90. 90 : : 2015/08/20(木) 17:16:54
    >>85
    ありがとうございます!

    >>86
    そこまで言っていただけるとは・・・・・・
    本当にうれしいです!

    >>87
    ありがとうございます!
    このお話、エレンとアルミンが黒幕だったのですが、楽しんでいただけて良かったです。

    >>88
    お気に入り登録までして頂いて、ありがとうございます!

    >>89
    お褒めにあずかり、光栄であります!


  91. 91 : : 2015/08/24(月) 16:09:54
    ぷろろーぐってなんだっけ⁇
  92. 92 : : 2015/08/24(月) 22:11:11
    物語の序章、そもそもの発端のことであります。
  93. 93 : : 2015/08/25(火) 20:33:40
    執筆お疲れ様でした!
    僕物語の中に引き込まれちゃいました笑
    素晴らしい作品、ありがとうございます!
  94. 94 : : 2015/08/26(水) 08:37:08
    お気に入り登録ありがとうございます!

    この物語、もしアルミンがあらゆる政治的駆け引きを通してエレン処刑を阻止するとしたらという想定のもとに作った作品でした。

    政治的な駆け引きを書くことを目指して書いたのですが、楽しんでいただけてうれしいです!
  95. 109 : : 2018/03/06(火) 20:46:53
    神様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
  96. 110 : : 2019/04/02(火) 13:15:45
    神様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
  97. 111 : : 2020/03/05(木) 09:17:19
    こんなところに神様が、、、!あなたを一生崇めます!
  98. 112 : : 2020/09/27(日) 16:31:57
    高身長イケメン偏差値70代の生まれた時からnote民とは格が違って、黒帯で力も強くて身体能力も高いが、noteに個人情報を公開して引退まで追い込まれたラーメンマンの冒険
    http://www.ssnote.net/archives/80410

    恋中騒動 提督 みかぱん 絶賛恋仲 神威団
    http://www.ssnote.net/archives/86931

    害悪ユーザーカグラ
    http://www.ssnote.net/archives/78041

    害悪ユーザースルメ わたあめ
    http://www.ssnote.net/archives/78042

    害悪ユーザーエルドカエサル (カエサル)
    http://www.ssnote.net/archives/80906

    害悪ユーザー提督、にゃる、墓場
    http://www.ssnote.net/archives/81672

    害悪ユーザー墓場、提督の別アカ
    http://www.ssnote.net/archives/81774

    害悪ユーザー筋力
    http://www.ssnote.net/archives/84057

    害悪ユーザースルメ、カグラ、提督謝罪
    http://www.ssnote.net/archives/85091

    害悪ユーザー空山
    http://www.ssnote.net/archives/81038

    【キャロル様教団】
    http://www.ssnote.net/archives/86972

    何故、登録ユーザーは自演をするのだろうか??
    コソコソ隠れて見てるのも知ってるぞ?
    http://www.ssnote.net/archives/86986
  99. 113 : : 2023/07/01(土) 00:37:17
    http://www.ssnote.net/archives/90995
    ●トロのフリーアカウント(^ω^)●
    http://www.ssnote.net/archives/90991
    http://www.ssnote.net/groups/633/archives/3655
    http://www.ssnote.net/users/mikasaanti
    2 : 2021年11月6日 : 2021/10/31(日) 16:43:56 このユーザーのレスのみ表示する
    sex_shitai
    toyama3190

    oppai_jirou
    catlinlove

    sukebe_erotarou
    errenlove

    cherryboy
    momoyamanaoki
    16 : 2021年11月6日 : 2021/10/31(日) 19:01:59 このユーザーのレスのみ表示する
    ちょっと時間あったから3つだけ作った

    unko_chinchin
    shoheikingdom

    mikasatosex
    unko

    pantie_ero_sex
    unko

    http://www.ssnote.net/archives/90992
    アカウントの譲渡について
    http://www.ssnote.net/groups/633/archives/3654

    36 : 2021年11月6日 : 2021/10/13(水) 19:43:59 このユーザーのレスのみ表示する
    理想は登録ユーザーが20人ぐらい増えて、noteをカオスにしてくれて、管理人の手に負えなくなって最悪閉鎖に追い込まれたら嬉しいな

    22 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:37:51 このユーザーのレスのみ表示する
    以前未登録に垢あげた時は複数の他のユーザーに乗っ取られたりで面倒だったからね。

    46 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:45:59 このユーザーのレスのみ表示する
    ぶっちゃけグループ二個ぐらい潰した事あるからね

    52 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:48:34 このユーザーのレスのみ表示する
    一応、自分で名前つけてる未登録で、かつ「あ、コイツならもしかしたらnoteぶっ壊せるかも」て思った奴笑

    89 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 21:17:27 このユーザーのレスのみ表示する
    noteがよりカオスにって運営側の手に負えなくなって閉鎖されたら万々歳だからな、俺のning依存症を終わらせてくれ

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