薄暗い4畳半の部屋、机上に置かれたデスクトップのPCは不規則なリズムを奏でる。

[背景、この文章を読んでいる人間がいるなら、おそらく僕はこの世に存在せず天国か地獄の分岐点を彷徨っているでしょう。]机の上には多量の睡眠薬、カッター、ロープなど様々な用具がある。
日本では、一日に約3000人の人間が命を落とし、そのうち自ら命を絶つのは約90人という統計学上の無機質な数字をどこがで見た事がある。僕も明日か明後日にはその中の一人になる予定だ。
このまま静かに死ぬのはなぜか勿体無いと思ったので、最期くらい愛用のデスクトップには言葉を残しておこうとPCのメモに、所謂(遺書)と言うものの冒頭を打ち込んだところだった。まぁ、こんな言葉を書いても世間と関わりを持たない、いや、持てない僕の遺書に興味を示す人はあまりいないだろう。いたとしてもこのボロアパートの隣人、大家くらいか。
続きを打ち込もうとした瞬間、部屋のインターホンが鳴った。焦りを感じた。普段誰も来ない部屋に誰だ、時計は午前2時を指している、こんな時間に誰だ。先程までやっていたネットゲームの音量がうるさいという苦情か?大家の家賃の取立てか?ネトゲは今はやっていないので今来ることはない。大家もいくら家賃を払っていなくてもこの時間に来るはずがない。もしかして幽霊という奴の仕業なのか?様々な思考が駆け回る。取り敢えず慌ててPCの画面を閉じ、机上の物を隠して、玄関に出る。一度深く深呼吸をして鍵を開ける。ドアノブを回し開けるとそこにいたのは、想像していなかった人物だった。