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苦労兎うどんげ!〜第1話〜

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  1. 1 : : 2015/05/09(土) 17:44:49


    永琳「うどんげ〜、ちょっといらっしゃーい」


    私の目の前にある、薄い一枚の襖。

    今にも影が透けて見えそうな、しかし決して見える事のないこの襖は、ここ──永遠亭において最も重大な役割を負わされた襖だ。

    この襖の奥は、一言で言えば阿鼻叫喚の地獄絵図。言数制限が無ければ、恐らくレポート用紙を何百枚束ねても足らず、そして最適な表現を探すために宇宙語まで修める必要があるだろう。

    そう、つまりは……私の師匠、八意 永琳の実験室なのだ。この襖の向こうは。


    鈴仙「はい、何ですか師匠…」ガタッ


    つい先刻の私を呼ぶ声は、当然の如くこの結界の境目の向こう側から聞こえたわけで。

    従者(モルモット)たる私は知らんぷりをする事も許されず、この先にある深淵の裏側を覗き込む事を余儀なくされているわけで。

    私は妙にガタつく襖を、一思いにガタリと開けた。


    永琳「ヘイ カモン」


    目の前に立つ師匠の白衣は、当然のように赤に染まっていた。

    嫌な予感がいよいよ現実になるのを直感して総毛立った私の身体は、突如として両サイドからガッチリと押さえ込まれた。


    てゐ「はっ、悪く思うなよ鈴仙。お前をやらなきゃやられるのは私なんだ」


    左サイドを押さえたのは、同居兎であり妖怪兎の因幡 てゐだ。

    薄笑いしながら三流映画の台詞を吐いている辺り、遊んでやがるなこいつ。


    輝夜「うへへへへ、姉ちゃん大人しくしろや、うへへへへ」


    右サイドを押さえながら君の悪い笑い声を漏らしているのは、私の師匠のさらに上司であり、元は月のお姫様であった、蓬莱山 輝夜様だ。

    にしてもなんて笑い声だよ。あんたには姫のプライドってもんが無いのか。仮にもかぐや姫だろう?なんでこんなのに求婚したんだ昔のお偉いさん共は。


    鈴仙「な、何するんですか2人共!!冗談にしては度が過ぎ……!!!」


    この後の展開を色々と悟って仙人の境地に達しようとしている頭に反し、私の身体は不安を隠そうともせず喚き散らす。

    意味のない抵抗(そんなの)したって何も変わらないだろう、とは思ってはいるのだが、いかんせん身体は正直(?)だ。

    背筋が凍り付き、汗が滝のように流れ落ちる。


    永琳「はーい、怖くないですからね〜」


    凍った背筋を割り砕くような猫撫で声を出しながら、注射一本片手に、ゆっくりと近づいてくる師匠。


    永琳「今からあなたには、ちょっとした旅行をして貰うわ。場所は倫敦、年代は──1880年代後半辺りかしら。丁度切り裂きジャックが暴れてた時代ね」


    倫敦?切り裂きジャック?

    羅列される明らかに物騒な言葉達に、ついに私の意識は朦朧とし始めた。


    永琳「目標は、そうねえ……特にどうでも良いけど、プラン案としては路地裏にでも足を突っ込んでみたらどうかしら?中々エキサイティングよ、あの時代の路地裏は」

    鈴仙「〜〜〜!!!」


    プスリ、と注射針が私の腕に刺される。

    朦朧としていた意識はドンドン靄の中に突っ込んで行き、そして、とうとう何も見えなくなった。


    「頑張ってね、鈴仙……幻想も現実も、もう貴女の手の中よ」


    最後に聴こえたその言葉は、意識が定まらないからかは知らないが、酷く意味の理解し難い音の羅列のように思えた。









  2. 2 : : 2015/05/09(土) 17:51:37





    苦労兎うどんげ!

    〜第1話〜

    【紅魔組における美鈴のハブられ率について】



    ✳︎タイトルと本文の内容は必ずしも一致するものでは御座いません




  3. 3 : : 2015/05/09(土) 18:11:19



    鈴仙「……う……ん」

    鈴仙「!?…あ、そっか……私、師匠にやられて……」


    ヒンヤリとした感触に目を覚ました。

    一瞬困惑が襲ってきたが、記憶がハッキリするに連れてそれは薄れていく。

    代わりに私を襲ったのは、疑問だった。


    鈴仙「……なんで私はこんな所に送られたんだろう。師匠を信じれば、ここは1880年代後半の倫敦……うん、私とは縁も所縁もない場所だ。」


    これでも昔はエリートと呼ばれていただけあって、私の頭の回転はかなり速い。常人には到底及べない物事の本質にまで考えは回るし、演算能力だってまあザッとそこら辺の一般人100人分はあるだろう。

    問題なのは、私をここに送った張本人──師匠の頭脳が桁外れな事だ。

    流石の私でも師匠には敵わない。私が2人も居れば圧勝出来るだろうが、1人では流石に敵わない。

    だから、彼女が何を思って私をこんな場所に送ったのか、全くもって分からないのだ。


    鈴仙「うーん……取り敢えず立とうか。なんかヒンヤリ通り越して痛くなってきたし……」


    自分が倒れた体勢のままなのに気付いて、また自分の手と足が痛みを訴え出した事に気付いて、私は身体を起こした。

    そして、顔を真っ直ぐ前に向けて……『目が、あった』。


    「……???」


    私を見て疑問符を乱立する目の前の少女に、私は見覚えがあった。

    そして……だからこそ私は、何を考える事もなく、ただ反射的に横へ跳んだ。


    パァンッ


    まるで風船が破裂するかのような気安い音を立て、少し前まで私が居た場所が弾け飛んだ。


    「あら?なんで分かったの?」


    不思議そうに首を傾げる少女。


    鈴仙「〜〜〜!!なんで…貴女がここに……!?」


    私が前にこの少女を見たのは、一体いつの事だっただろうか。


    「なんでって……私の部屋に私が居るだけなのに、そんな事言われても」


    あらゆるものを破壊する程度の能力を持った、無邪気な笑みを絶やさぬ悪魔の妹……


    鈴仙「……フランドール・スカーレット……!!」
  4. 4 : : 2015/05/09(土) 20:00:32
    編集パス忘れてしまったので建て直します

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