ssnote

x

新規登録する

作品にスターを付けるにはユーザー登録が必要です! 今ならすぐに登録可能!

この作品は執筆を終了しています。

悔いなき選択~炎の心が消える時~

    • Good
    • 12

loupe をクリックすると、その人の書き込みとそれに関連した書き込みだけが表示されます。

▼一番下へ

表示を元に戻す

  1. 1 : : 2015/04/21(火) 01:14:06
    叶わない恋をしてしまった私は諦めようと努力しました

    けれど、忘れることなど決してできなかった





    「部隊長!!落ち着いてください!!!」


    「これが落ち着いていられるかよ!調査兵団に巨人になれる男の子が入団したんだよ!!」





    貴女の頭の中には巨人のことでいっぱいなんですよね

    それだけだったら私は辛くはなかったんですよ

    貴女の頭の中には巨人以外にも興味を持ってしまう現実がある

    そして、その現実とは私と同じ【男】だから私は辛いのです。







    ※ネタバレ有り
    悔いなき選択のネタバレ有り
    私の妄想が産み出したストーリーです
    それでも読んで良いと言う方だけ御覧になってください


    SSを読者の皆様に気持ちよく読んで貰うために、作品が終了するまでコメントを制限させて頂きます。

    コメントを貰えると本当に嬉しいです
    しかし、途中で貰ったコメントを非表示にするのは心が痛みます。

    ですので、作品が終了するまではこちらにコメントを頂けると嬉しいです!

    http://www.ssnote.net/groups/347/archives/10
    作品の感想
  2. 2 : : 2015/04/21(火) 01:15:28
    私達が生きている世界には恐怖の化身である【巨人】という生き物が存在している

    その巨人に立ち向かうのが我々調査兵団である






    「…」





    その調査兵団であるこの人物、他の調査兵団と比べるとどこか派手さがない男である

    けれど、彼は調査兵団で1番と言っていい程の仕事を任せられている





    「モブリット!!早く来てくれ!エレンの所に行って実験させてもらうよ!!」


    「少しは彼の気持ちも考えてあげてください!!」



    調査兵団一の変わり者であるハンジ・ゾエの見張り……いいえ、そばで支えるという大事な仕事があるのである
  3. 3 : : 2015/04/21(火) 01:15:59
    巨人になれる力を持った少年が調査兵団に入団した

    彼の不思議な力は調査兵団にとっても、人類としても希望の力である

    彼はその希望の力で多くの闘いを乗り越えてきたのである


    巨人になれる力を持った戦士と戦った時に情報は聞き出せなかったが、結果としては勝利に近い闘いをしたのである


    その後も多くの闘いを乗り越えてきた、彼は闘いの中で巨人の力を高めていったのだ







    「何とか壁内も落ち着いてきたね」


    「肩の傷は大丈夫ですか?なるべく安静にしててくださいね」


    「モブリットは心配症だなぁ、こんなの舐めとけば治るさ」



    多くの闘いの中でハンジは肩を負傷したのである



    「治ってないから困ってるんですよ……まったく」


    「私の肩よりさ、ヒストリアはどうなってんの?」


    「安心してください、彼女は人類の英雄として、新しい王になると思います」



    壁内の人民を納得させるだけのパフォーマンスをすることができた

    それは調査兵団だけでなく、多くの兵士が命を懸けたからこその結果である
  4. 4 : : 2015/04/21(火) 01:16:27
    「ですので、ハンジさん?今は休んでください」


    「………そうだね、ゆっくり休もうかなぁ!!」




    ハンジはそう言うと寝転がって寝ようとしているが、その目は何かを求めているような目である

    その何かとは『私が1番嫉妬してしまう存在』なのである




    「……それでは、ゆっくり休んでください…お休みなさい」




    モブリットはそう言い残し、部屋を出ていったのである

    部屋の外には月の光によって明るさを残している





    「…………私は…強くなりたいです」



    1人だったからか、少しだけ溜め込んでいた想いが言葉にして出てしまった
  5. 5 : : 2015/04/21(火) 01:16:49
    多くの命が奪われていった
    そして、これからも多くの命が奪われていく

    月の光に照らされた炎のような心をもつ男は夜風を感じていた





    「……おい、あいつは寝たのか?」




    1人で夜風に浸っている時、後ろから声をかけられた




    「リヴァイ兵士長!!」


    モブリットは敬礼をし、ハンジが寝かけていることを伝える

    リヴァイは簡単に礼を言ってから黙ってハンジがいる部屋へ向かって歩いていった






    「…………」






    モブリットはその後ろ姿を黙って見詰めることしかできないでいた

    月の光が夜の闇を照らしてくれるが、彼の心には深い暗闇がおおっているのである……。
  6. 6 : : 2015/04/21(火) 01:17:10
    モブリットは眠くなるまで外にいることにした



    「……ふぅ」


    静かな夜の世界は彼にとっては落ち着く場所なのであろう

    普通の人なら誰もがそう思うだろう
    朝から番まで元気いっぱいの兵士の側近として働いている

    そんな彼は1人の時間が好きだと思われがちだが、実際はそうではない




    「何だか落ち着きませんね、やっぱり人と話していない……」


    最後まで言おうとした言葉を飲み込んだ

    『人と話していたい』のではない
    『あの人と一緒にいたい』が信実なのである





    「何だか疲れましたね……本当に…」





    モブリットは部屋に戻り、明日のためにも身体を休めようとし

    夜風に当たるのをやめ、部屋に向かって歩き始めた
  7. 7 : : 2015/04/21(火) 01:17:34
    夜の闇は人を不安にさせる

    1人で生きていくことはできない世界に生まれてきた

    だから人は1人でいることを恐れてしまうのだ







    「おい、糞眼鏡……まだ寝ないのか」


    「いやぁ…何だかんだ傷が痛むんだよね……困ったよ」



    それは調査兵団で巨人と戦っている兵士も同じなのである

    人類最強と言われているリヴァイも1人は苦手なようだ





    「チッ……てめぇの傷が治るまで俺達は何も動くことはできねぇ…さっさと治しやがれ」


    「あははっ!!巨人みたいに一瞬で治せる方法はないかなぁ?」


    「あるわけねぇだろ」




    他愛ない会話をしているのはハンジが怪我をしているから

    普段、この時間2人で一緒にいるときは身体を求めあっている

    そのことを調査兵団で知ってる者はゼロに近い

    近い……数人だが中には知ってる者もいるのである
  8. 8 : : 2015/04/21(火) 01:18:00
    リヴァイとハンジが2人で過ごしてる時間、モブリットは寝付けないでいた






    「……」


    「………」




    目を閉じては開く、暗闇に目が慣れてきたのか

    部屋の中が見渡すことができてしまっている



    「しまった…完璧に寝過ごしてしまった」


    モブリットは明日のためにも寝ようと努力する

    何度も何度も目を閉じて寝ようと試みるが寝ることはできない




    「…………」

    「ハンジさん……しっかりと寝てますかね」




    頭の中にはハンジの姿がある
    肩を負傷している彼女は身体を休めてることができているのだろうか

    彼女の部屋に入っていた男は彼女の身体を労っているのか

    そんなことを考えているからか、モブリットはまったく寝付けないでいる





    「…」

    「少しだけ様子を見に行きますか」



    モブリットはゆっくりと立ち上がり、調査兵団のジャケットを着て部屋を後にした
  9. 9 : : 2015/04/21(火) 01:18:23
    先程と同じで外は月の光に包まれていた

    モブリットはゆっくりと歩き、ハンジの部屋を目指した




    「モブリットか……ハンジの所に行くのか?」


    「だ、団長!こんな遅くに何をなさってるんですか!?」


    目の前には調査兵団団長であるエルヴィン・スミスがいた


    「今度の壁外調査での陣形を考えていたんだ……君の方こそどうしたんだ?」


    「私は…その……」


    「ふっ、ハンジのことが心配なのか?」


    「……はい」




    肩を負傷したハンジが気掛かりで仕方がないモブリット

    さらにはその部屋に自分以外の男がいること次第がモブリットには許せないのである




    「モブリット……ハンジとリヴァイは…」


    「わかっています………わかっているんで…それ以上は言わないでください」


    「そうか……すまなかった」




    エルヴィンはモブリットに謝り、1度は黙っていた

    しかし、モブリットはエルヴィンに質問をすることになる





    「エルヴィン団長……私の…私のこの気持ちは…この考え……」


    「……」


    「この想いを寄せたまま…過ごすという選択は間違いなのでしょうか」



    モブリットの突然の問に、エルヴィンは目をつぶり考える
  10. 10 : : 2015/04/21(火) 01:18:59
    「モブリット……君も調査兵団の一員だ…」


    「……」


    「結果は誰にもわからない……私達が明日もこうやって話せるかどうかすらわからない」


    「そんな世界を生きていかなければならない私達の世界には、正しい選択など存在はしないのかもしれないな」


    「正しい……選択…ですか?」



    エルヴィンの言葉にモブリットは深く考えることになる

    自分が選ぶべき選択とは何なのか
    何が正しく、何が間違っているのか

    自分の答えを考えてる最中にエルヴィンはさらに話し出した




    「もしかしたら……間違っているのは私達の方かも知れない」


    「巨人になれる彼等が人類を滅ぼそうとした理由を私達が知った時……」


    「死刑台に立たなければならないのは私達、人類かもしれない」


    「わかるだろ、モブリット……正しい選択など誰にもわからないのだ」


    「そうかも……しれませんね」


    「モブリット………後悔のない選択を選びたまえ」




    エルヴィンはそう言い残し、モブリットを1人だけ残して歩いて行ってしまった





    「後悔のない……選択」




    モブリットは歩みを止め、夜空を見る
    綺麗な月が見えるが、彼の心にはその光は届いていない
  11. 11 : : 2015/04/21(火) 08:33:32
    エルヴィンの言葉を聞いたエルヴィンは言葉の真意を考えていた

    正しい選択など存在していないかもしれない

    それでも戦い、進もうとする人類





    「はぁ……頭が痛くなりますね」



    モブリットは月を見ながら柱に凭れかかった






    「ちくしょう……今日もエレン、エレンってよ…何であんな死に急ぎ野郎がいいんだよ」




    そんなモブリットの耳に聞き慣れた声と内容が耳に入ってきた



    「こんばんは、君も寝れないのかな?」


    「モブリットさん!?こんな遅くに何をしてるですか!?」


    「私は……ちょっと考え事をね、ジャン君はどうしたんだい?」




    少しでも誰かと話していたい衝動に襲われてしまった
  12. 12 : : 2015/04/21(火) 10:45:53
    「お、俺は…そのぉ……」


    「恋の悩みかな?」


    「ちがっ!そ、そんなんじゃないです!!!」


    「あれ?ジャン君はミカサさんに……」


    「ちょっ!まってくれ!ください!!」



    あたふたとするジャンを見て自然と笑ってしまうモブリット

    少しだけ若返った気がしてしまうのはジャンと気が合うからかもしれない




    「安心してください、私も似たような感じですよ」


    「モブリットさんも!?ミカサに惚れてるですか!?」


    「違いますよ!!私はハンジさんですよ!!」


    「えぇぇぇ!?」



    ジャンは叫んだ

    モブリットは自分の口を両手で押さえた

    が、ジャン・キルシュタイは聞き逃さずにしっかりと名前を聞いたのである





    「そうだったんですね……へぇ~ハンジさんが好きなんですか」


    「忘れてください、忘れてくれたら朝食にパンを差し上げますから」


    「俺はサシャじゃないんでパンはいらないです」


    「……何を貰えれば忘れることが出来ますか?」


    「いやいや、絶対に忘れることなんて出来ませんからね」





    モブリットの問にジャンは自信満々の顔で答えている

    その顔を見たモブリットは諦めてしまうのである
  13. 13 : : 2015/04/21(火) 10:46:18
    「はぁ……叶わない恋をしてしまっているんですよ…はぁ」


    「叶わない……ですか…ってか…付き合ってなかったんですね」


    ジャンは頬をかきながらモブリットに声をかける

    周りから見てみたらモブリットとハンジは恋人のようにも見える

    ジャンもそう見えていたから、モブリットの発言には驚いたのだ




    「まぁ…俺も叶わない恋をしてるんですけどね」



    モブリットの立場に自分が重なって見えたジャンは、モブリットに自分の恋も叶わないと言い切ったのだ



    「……」

    「……」



    2人は黙って自分達の立場を恨んだのである




    「ジャン君も大変だね、彼女はエレンにしか興味を示さないもんね」


    「それを言ったらハンジさんも、巨人にしか興味を示さない気がしますよ」


    「はははっ……何度も死にかける行動をするハンジさん……はぁ」




    モブリットは今までのハンジの行動を思い出すと溜め息が出てしまうのであった
  14. 14 : : 2015/04/21(火) 10:46:45
    「それでも好きなんですよね?どこに惹かれたんですか?」


    「そうですね……彼女の良いところは数え切れないぐらいありますけど」


    「1番はやっぱり、ハンジさんの隣で一緒にいる時間が私にしてみたら最高の幸せなんです」


    「……」


    「何度も何度も…死にかけましたけどね……それでも彼女の…ハンジさんの隣に立ってる自分が1番……幸せなんです」





    自分が1番の幸せを感じる瞬間、それは彼女の隣で一緒に生きてる時である

    いつも隣に立ち、彼女を支えることが自分にとっての幸せであるのだ

    だから、今回の作戦で彼女の隣で彼女を守れなかった自分に

    彼女の隣に立つことが出来なかった作戦に

    彼女を怪我をさせた中央憲兵を許せない気持ちでいっぱいなのである





    「ミカサ……」


    「え?」


    「ミカサ…も……モブリットさんと同じ気持ちなのかもしれない…ですね」


    「………」


    「俺は死に急ぎ野郎みたいに死に急ぎたくなかったんです」


    「訓練兵時代は絶対に憲兵団になってやるって言ってたのに……今じゃ調査兵団…」


    「巨人を倒すために身に付けた技術で人を殺めてしまった……殺人者」


    「俺の選んだ選択……正しかったのかは……正直…わからなくなってます」


    悲しげな表情を見せるジャン、彼が調査兵団を選んだ理由

    同期の大量の死
    親友の死

    その親友の言葉が彼を調査兵団に導いた




    「俺は……誰の骨かも…わからない……そんな骨を見た時に…」


    「俺は調査兵団になろうと…決めたんです」


    「……その親友は…君を誇りに思ってるでしょうね」



    モブリットは今は亡き、ジャンの親友に感謝をしていた

    ジャンの存在は調査兵団の大きな力になることを感じていたからだ




    「ミカサは…すげぇや」


    「モブリットさんも……」




    ジャンは急にミカサとモブリットを褒めた

    その発言にモブリットは驚き、ジャンに答えを求めたのである
  15. 15 : : 2015/04/21(火) 15:33:42
    「ミカサ……彼女が凄いのは私にもわかりますけど、私は凄くありませんよ」


    「俺にとったら凄いですよ、ハンジさんのために命を懸けて戦ってるんですからね」


    「……」


    「俺は見返りを求めてしまうんで……ミカサを守って…俺に少しでも興味を持ってくれたら嬉しい……みたいな」



    寂しそうに答えたジャンを見て、モブリットはすぐに言葉を発した




    「私だって見返りを求めてますよ……私だって人間です」



    その言葉にジャンは少しだけ微笑んで安心した表情を見せた
  16. 16 : : 2015/04/21(火) 15:34:08
    「ぶっふ…ふはっ!」


    「はははっ!!モブリットさんと同じ気持ちって!何だか俺が大人の仲間入りした気がしますね!」


    「それを言うと私も若返った気持ちがしますよ」




    夜の中、眠れない2人は雑談に花を咲かす

    大人と子供の恋愛話は差はあるのだが、2人とも恋愛経験が少ないからか

    気が合い、すぐに打ち解けて話すことが出来たのである






    「はははっ……あっ…そろそろ戻らないと!」


    「そうですね、明日はエルヴィン団長から今度の陣形についての説明がありますからね」


    「そうなんですか!だったら俺、説明中に寝ないように寝ます!」


    「私も寝ることにします、楽しかったです!お休みなさい…ジャン」


    「はい!モブリットさんもお休みなさい!失礼します!」バッ




    ジャンはモブリットが呼び捨てて呼んだことに気が付かず、敬礼をして戻っていった

    モブリットはそんなジャンを見てクスクスと笑ってから部屋に戻ったのである
  17. 17 : : 2015/04/21(火) 15:35:07
    次の日、大きな部屋に集められた調査兵団の兵士達

    エルヴィン・スミスはそんな兵士達の前に立ち、今後の作戦を説明し始めた





    「陣形は前回と同様にする、シガンシナ区にあるエレンの家に辿り着き……地下の秘密がわかること」


    「これが今の私達がやらなければならない真実である!」


    「今回の作戦が成功すれば人類は確実に前進することが出来る!」



    エルヴィンの演説に心を奮い起たせる調査兵団達

    しかし、1人だけエルヴィン・スミスに抗議することになる




    「待ってください!前回と同じって!また俺を危険から避ける陣形になってます!!」



    エレン・イェーガーはエルヴィン・スミスの陣形に抗議をした

    理由はリヴァイ班を全滅させられたしまった時のことだと周りは察した




    「あの時……俺がアニと闘ってたらリヴァイ班の皆は死ななかった!俺は俺のせいで皆が死ぬのだけは嫌だ!!」


    「もう、俺を守るために人が死ぬのが嫌なんだ!!!」





    エレンの抗議に調査兵団は黙ってエルヴィンを見つめる

    エルヴィンは黙ってエレンを見ていた
    そして、エレンに言葉を発した





    「エレン……今の君には何が見えている?」



    「何がって!また、あの時と同じ様に人が死ぬ!しかも俺を守るために!!」




    エレンは自分が見た未来をエルヴィンに言い切った

    エルヴィンはその答えを聞いた時、エレンに向かって調査兵団の意思を伝える




    「我々は人類のために心臓を捧げた兵士だ……人類の希望を守るためなら命は欲しくない」


    「ここにいる兵士……調査兵団は人類のために死ぬ覚悟で戦う」


    「エレン……君が我々の希望であり、人類の希望なんだ」




    エルヴィンの説明を聞いたエレンは巨大樹の森での戦いを思い出した

    あの時、アニと戦う選択を選んでいたら今、この調査兵団の集まりにリヴァイ班の先輩達がいたかもしれない

    そんな罪に心を押し潰されそうになっているエレンが出した答えは1つであった







    「俺は……戦います…この力でシガンシナを取り戻します!だから……」


    「俺のために死のうとするのだけは辞めてください!!」


    「おい……エレン…舐めんじゃねぇよ」




    エレンの叫びに声を出したのはジャンであった




    「お前の為に何か死なねぇよ!俺は何が何でも生き残ってやる!舐めんじゃねぇよ!!」


    「てめぇはな!シガンシナについてから死ぬ気で働いてもらうんだよ!!」


    「それまで大人しく寝てやがれ!!」




    ジャンの一言に調査兵団の皆は笑いながらエレンに語り始めた




    『自分達を信じてくれ』



    その言葉を聞いたエレンは納得した表情を見せてエルヴィンに謝った

    エルヴィンは話を続け、この作戦を元に壁外調査に向かう日を決めようとした

    全勢力が発揮できる日ではないと困ってしまうことから

    ハンジの傷が癒えてからの実行になるのであった
  18. 18 : : 2015/04/21(火) 21:51:04
    会議の終わった日の夜

    モブリットはジャンと一緒に話をしていたのである



    「今日のジャン君は格好良かったですよ」


    「そんなことないです!あの死に急ぎ野郎が聞き分けのねぇ糞死に急ぎ野郎だったからムカついただけっす!」



    照れ隠しか、ジャンはいつもより多くエレンの悪口が言葉に出てくる

    そんな人間らしいジャンと一緒にいると自然とモブリットも素直になることができるのだ



    「ハンジさんの怪我が治り次第、また壁外調査ですね」


    「……生き残れるか…どうか……はぁ、死にたくねぇ」


    「会議の時の発言をしたジャン君は消えてしまいましたね」




    そう言い、笑い出す2人は周りから見てみたら友達のように映るのだ
  19. 19 : : 2015/04/21(火) 21:52:04
    「大丈夫です……人類は必ず前進します」


    「……」


    「今回の壁外調査は今までで1番と言っていいほど強く練られた作戦です」


    「これが成功し、エレンの家にある地下室に辿り着けば……巨人の謎がわかり、無駄な死をする兵士はいなくなりますよ」



    モブリットの強い気持ちが伝わる表情を見たジャンは、次の壁外調査を全力で成功させようと誓うのである





    「今度の壁外調査から帰ってこれたら……一緒に飯でも食いに行きませんか?」


    「いいですね、壁内で私達に敵意を見せる民衆は少なくなりましたからね」


    「一緒に食べに行きましょう!」





    モブリットとジャンは約束をし、その場を後にする

    ジャンは疲れていたのか、あくびをしながら歩いていった

    そんな彼の後ろ姿を見送ってから、モブリットはハンジの容態を見に行こうとする
  20. 20 : : 2015/04/21(火) 21:52:43
    モブリットはトコトコと夜の本部を歩き、ハンジの部屋の前に辿り着いた

    中から話し声が聴こえるのがわかった
    モブリットは誰と誰の声なのかがすぐにわかってしまう






    「……」





    部屋の中からはハンジとリヴァイの話し声が聴こえるのである

    その声を聴いた時、モブリットは強く握り拳を作っていた
  21. 21 : : 2015/04/21(火) 21:53:22
    「肩の傷はどうだ」


    「ん~まぁ、大丈夫だよ!それより……今日のエレンは凄かったね」


    「………あいつなりに考えた答えだろ」


    「そうだね、エレンも本当は子供だからなぁ……人の死は辛いもんがあるよなぁ」


    「しかも…それが自分のせいで死ぬ……子供には耐えれないよね」




    ハンジとリヴァイは今日の会議で注目を浴びたエレンについて話していた

    ハンジはエレンの置かれている立場が辛いものだと感じている

    それはリヴァイも同じだが、リヴァイは選択を選ぶのは自分自身だと思っている




    「リヴァイは厳しいねぇ、流石は人類最強と言われる掃除男!」


    「黙れ」





    リヴァイとハンジの会話は真面目な話をしているのに、少しだけ優しい空気に包まれていた
  22. 22 : : 2015/04/21(火) 21:54:21
    そんな雰囲気の中、ハンジはリヴァイに問い掛けた




    「あははっ!リヴァイは私が巨人に殺されそうになったら助けてくれたりしちゃう!?」



    ハンジは笑いながら問い掛けたが、その瞳の奥にみえる心は真剣であった

    そのハンジの問にリヴァイは答えた




    「てめぇは自分から巨人に近付いて行くだろうが……糞眼鏡」


    「ぶはっ!だって巨人だよ!興奮する!滾るよね!!」


    「この………糞眼鏡が」


    リヴァイは呆れた表情を見せたが、少しだけ間を開けて答えた





    「俺がお前を助けれる保証はねぇ」



    「……」



    「俺は……その場で正しい選択を選ぶ自信はねぇからだ」



    「だから……お前にも負担を掛けちまうが…」




    「死ぬな」





    リヴァイはいつもより真剣な悪人面でハンジに答えた

    『死ぬな』

    この言葉はリヴァイの心の声だとハンジは理解した

    ハンジは笑いながら答えた『死なないから安心してくれ』と……。
  23. 23 : : 2015/04/21(火) 21:55:23
    そんな会話を部屋の外から聞いていたモブリットは握り拳をほどいていた

    挨拶をするのを辞め、1人で自分の部屋に戻ろうと歩き出した







    「……」




    頭の中には想い人であるハンジの姿がある

    その人が想いを寄せる男、リヴァイの姿も頭を過る





    「………はぁ」




    モブリットは悔しさのあまりに涙が零れた

    その涙が頬から廊下の地面に落ちていく

    叶わぬ恋をしていることに改めて気が付いた

    そんな彼を月は優しく包んでいたが、黒い雲によって姿を消してしまう





    「正しい……選択を…ですか」






    モブリットは1つだけ、何があっても心に誓ったものがあった

    それは自分にしか出来ないことだと自負している





    「人類最強の男……リヴァイ兵士長…私は貴方に唯一勝てることがあります」




    モブリットの瞳に迷いはなかった
    その瞳と心には炎のような熱き強さが感じられるのであった


    そんな彼を嘲笑うかのように冷たい風が通り過ぎていった……。
  24. 24 : : 2015/04/21(火) 22:37:59
    追いかけて

    手に入れようとした自由は孤独を意味する

    足元から崩れ落ちていく現実に人は涙を流しながら謝るのだ

    別の自分を作り、別の素顔で過ごす日々に慣れてきた











    「前進せよ!!!」









    エルヴィンの叫び声により、調査兵団は叫び声をあげ自らを奮い起たせる

    肩を負傷していたハンジは傷が治り、今まで通りの興奮状態であった






    「……」


    「どうしたんですか?」

    表情が暗いモブリットにジャンは問い掛ける

    気持ちの迷いは壁外調査では死に繋がる

    モブリットはわかっているのだが、わかることを恐れていた

    その気持ちの迷いを受け入れるということは、想いを捨てることになる気がしたからだ






    闘う時、偽りの自分で戦っていた

    自分は強い……巨人に負けない…最強の存在になったのだ

    自分にそう言い聞かしていた



    そんな偽りの自分で過ごすことに疲れてきていた

    追いかけてきた夢は儚く崩れ落ちていくことを知る日が来る

    崩れ落ちていった現実の先に、生きとし生ける者達は夢を見るのだ
  25. 25 : : 2015/04/21(火) 22:38:22
    「帰ったら約束のご飯ですね!」



    モブリットは微笑みながらジャンに話し掛けた

    その表情を見たジャンは少しだけ安心した様子で馬を走らせる





    「……」




    調査兵団が目指すはシガンシナ区、調査兵団は不安を隠せない様子でいた





    「いやっほーー!!!!!」


    「静かにしてください!」


    「これが静かにしてられるかよぉ!上手く行けば巨人の謎が解明されるんだよ!!」




    調査兵団で1番と言っていいほど変わりがないのはハンジだけであった

    この陣形を保つためにも巨人との遭遇は最小限にしたい

    大切な仲間であり戦力である調査兵団をすぐには失いたくない

    それがエルヴィン・スミスの考えである
  26. 26 : : 2015/04/21(火) 22:38:56
    何時間も走っている

    巨人との遭遇がない、普通に考えれば嬉しいことである

    けれど、調査兵団一同は不安を隠せないでいた





    「おい、エルヴィン」

    リヴァイは代表して調査兵団が不安に感じていることを口にする





    「巨人がいねぇのは良いことだが……何か変だと思わねぇか」


    「私も感じている…巨人と全く遭遇しないのはかえって不気味だ」


    「チッ……雲行きが怪しくなってきやがったな」




    前方の空に黒い雲が見え始めていた
    雨が降ってくると感じた瞬間、大粒の雨が調査兵団を襲った




    「エルヴィン……どうする」


    「左翼側と右翼側に別れて作戦通りの行動をする」


    「エレンはそのまま動くな!ミカサとリヴァイで守りを固めるんだ」


    「チッ……片腕のねぇ奴が壁外調査に出てきて指示か」


    「馬鹿な選択を選んで俺達の仲間を無駄死にさせるなよ」



    リヴァイの問にエルヴィンはすぐに言葉を返した





    「リヴァイ……今のお前には何が見えている?」



    「………」




    「……………さぁな」







    雨が降るなか、調査兵団は左翼側と右翼側に別れて走り始める

    雨が降っているからか少しだけ作戦と違う展開を迎えてしまうのだ






    「おぉ!!向こうに行かないと人数が少ないよ!どうするの~?」


    ハンジは右翼側を担当して走っていたが、左翼側に行かねばならない調査兵団の乗っていた馬が右翼側に来てしまっていた

    それに気が付いたハンジはエルヴィンに大声で叫んだ





    「……モブリット!悪いが左翼側に向かってくれ!左翼側の戦力が心配だ!!」

    「そ、そんな!私はハンジさんの!」

    「頼む!エルヴィンには聞こえてなかったみたいだ!戦力的に考えて君が左翼側に行って力を貸してあげてよ!」

    「……」

    「心配しなくて大丈夫!後で会えるからさ!!」







    「……………わかりました」





    モブリットは左翼側を走る最後尾の調査兵を追う形で走っていった

    こと時、モブリットの頭の中にはエルヴィン・スミスの言葉が残っていた




    『後悔のない選択』



    その言葉が残っていたのだ……。
  27. 27 : : 2015/04/22(水) 14:37:40
    大雨が降るなか、調査兵団は左と真ん中と右に別れて走っていた

    これは情報を集める際に使う陣形であった

    今回が初となるエルヴィンとアルミンの考えであった





    「おい…アルミン……この陣形…マズくないか?下手したら大量に!」


    真ん中を走るエレンはアルミンにその事を問い詰める

    この陣形で巨人に遭遇した時、どうするつもりなのかと




    「わかってるよ…けどね、今回の調査は絶対に成功させないとダメなんだ」

    「何で真ん中だけ少ないか……わかるよね?」



    アルミンの顔はフードで見えないが、エレンには恐ろしいことを考えてる時の顔だと感じた




    「………まさか…」



    「うん……奇行種に遭遇した時のためだよ…」



    「アルミン……お前…エルヴィンさんも!!」



    「エレン、今は前を向く、そしてシガンシナに生きて辿り着くことが優先」



    「そうだよ…君が生き残って壁に開いた穴を塞いで……地下室に辿り着ければ無駄死にする人は減るんだよ!」




    アルミンとミカサの言葉にエレンは苛立ちを覚えていた

    『また人が死ぬかもしれない』

    エレンはその恐怖と闘うことが何よりも怖かった





    「(頼む……巨人に遭遇しないでくれ…俺のために死なないでくれ)」





    馬を走らせるエレン達は迷いが隠せないままであった

    迷いが隠せないのはエレン達だけではなかった





    「……あの!リヴァイ兵士長…聞いてもいいですか」


    「何だ…ジャン?」




    ジャンはリヴァイの表情を見た時、どうしても聞きたいことがあったのだ






    「……どうして…その……」


    「………何だ…?」


    「不安そうな表情を……されてるんですか?」




    ジャンの言葉にリヴァイは前方を見たまま何かを思い出していた…
  28. 28 : : 2015/04/22(水) 14:38:20

    『リヴァイ……俺達を信じてくれ』




    『頼むぜアニキ!地上の居住権、取ってきてくれよな!!』








    心から信頼していた仲間の言葉

    その仲間と一緒に夢見た3人だけの夢と自由

    3人で見た月の光は時間がどれだけ過ぎても忘れることはない







    『くっ……てめぇを…殺す…!!そのために、ここにいる…!!』








    酷い怒りを感じた時、自分の周りには大切な仲間はいなかった

    自分の周りにいた大切な仲間は無惨な姿で眠っていた





    後悔した

    自分の選択が間違ったから大切な仲間を失ってしまった




    『よせ、後悔するのは』


    その言葉を聞いた時、意味がわからなかった




    『後悔の記憶は、次の決断を鈍らせる…そして決断も…他人に委ねようとするだろう


    そうなれば後は死ぬだけだ


    結果など誰にも分からない


    1つの決断が、次の決断のための材料にしてはじめて意味を持つ』





    忘れてはいけない記憶、大切な仲間の死を乗り越える

    簡単ではない、それを知っているから選ぶことが怖いのだ
  29. 29 : : 2015/04/22(水) 14:39:17
    「……」



    リヴァイはジャンの質問に口を開き、自分の気持ちを伝える





    「俺には分からない………ずっとそうだ」



    「自分の力を信じても、信頼に足る仲間の選択を信じても」




    「結果は…誰にも………」




    その言葉を聞きながら馬を走らせるリヴァイ班

    ジャンやサシャ、コニー達はその不安に繋がる言葉を真剣な顔で聞いている

    その台詞を聞いたのが初めてではないのはエレンだけであった

    そして、もう1人いた






    「……兵長………俺は…俺のあの時の選択は間違いだった気がします」

    「あの時!俺の覚悟が足りなかったから皆を危険な目にあわせて…」

    「アルミンの手を汚させるはめに……なりました」



    中央憲兵との闘いを語るジャンの言葉に、手を汚したアルミン達は暗い表情を見せる



    「リヴァイ兵長………あの時…俺に俺の選択が本当に間違っていたのか?」

    「そう…聞きましたよね」

    「あの時の……答え…は……」




    雨が降っている中、ジャンは瞳に涙を浮かべながら答える





    「俺は間違ってない……そう思いたいです……だって…だって…」


    「人なんか殺したくなかったから!俺は…俺らは人を殺したくなかったから!!」




    ジャンの言葉にサシャやコニー達は人を殺めた時の光景を思い出した

    フードで顔を隠し、辛い表情をしていることを隠したのだ

    そんな、ジャンの言葉にリヴァイは…






    「………それが…お前の答えか…」



    「その答えが正しいか…どうか…」


    「俺にはわからない……が」


    「自分で出した答えを尊重しろ、例えエルヴィンの陣形を壊すことになってもな」




    リヴァイはそう言い残し、馬を走らせる

    強く降っていた雨は徐々に弱くなり、周りの雰囲気は【霧】に包まれるようになった。
  30. 30 : : 2015/04/22(水) 14:45:00
    そんな時、右翼側から黒い炎弾が放たれたのが見えた




    「向こうはハンジさんがいる方の!奇行種と……巨人と遭遇したんじゃ!!」


    「落ち着いて!君は今、生きてシガンシナにつくことだけ考えろ!!」


    「アルミン!!お前の案で人が死ぬんだぞ!良いのかよ!?」




    エレンはアルミンに怒鳴り付ける
    アルミンは沈黙したが、すぐに言葉を発した



    「これが……僕が正しいと思った選択だから」


    「この…選択に……悔いはないよ」




    その言葉に周りにいた調査兵団は静かに口を閉じる

    先頭を走っていたエルヴィンは奇行種との遭遇に気を付けろと指示を出した






    「……」




    リヴァイは悩んでいた


    後悔のしない選択とはなんなのか


    目を閉じれば今まで死んでしまった仲間達の姿がある






    「チッ……」



    陣形を崩してしまうということは、多くの調査兵団を危険に晒してしまう

    そのためにも右翼側の無事を祈ることしかできない






    そう思っていた






    左翼側から現れた男を見るまでは……
  31. 31 : : 2015/04/22(水) 16:43:43
    「モブリットさん!」




    ジャンの叫び声に調査兵団はモブリットの方に目を向ける

    エルヴィンは黙ってモブリットを見つめていた

    彼の行動を止めようとする調査兵団は多くいたが、彼は止まらない

    ただ馬を走らせる、黒い炎弾が打ち上げられた方向へ走っていく







    「……それが…お前の選択か…モブリット…」


    エルヴィンは小さな声で言葉を口にした

    そんな彼の行動をリヴァイは黙って見ていた



    そして一瞬、目の前が暗闇に包まれた


    時間が止まったかのような雰囲気に包まれる


    そんな暗闇の奥から友の声が聞こえた






    『兄貴!兄貴の選択は間違ってねぇぜ!』


    『そろそろ……自分の選択を信じてみろよ』







    その声を、その言葉を聞いた時
    リヴァイの視野は元に戻るのである




    「イザベル……ファーラン!」



    二人の名前を口に出した後、リヴァイは黒い炎弾が打ち上げられた方向へ走っていく

    エルヴィンもリヴァイの行動には驚いた様子を見せる

    104期のエレン達はリヴァイの行動を不安に思うのが強かった

    ジャン以外は……




    「エルヴィン団長!!俺達も行きましょう!」

    「ジャン!?」



    ジャンの言葉にアルミンは驚いた様子を見せて止めようとした



    エルヴィンはジャンにすぐに答えを出した


    「今の君には何が見える?」

    「……えっ?」



    その言葉に周りの調査兵団はジャンを見つめた


    「ジャン・キルシュタイン……選べ…自分が正しいと思った方を選べ」


    ジャンは悩む

    尊敬している先輩が今、この瞬間に命をかけて愛する人を助けに行こうとしている

    そして死ぬことを覚悟している

    そんな状況に置かれたジャンの出した答えは





    「………す……進みます…この…この……まま!」


    「……このまま……信じて進みます!!」





    ジャンの言葉を嘲笑うかのように強い風が吹き始めた。
  32. 32 : : 2015/04/22(水) 16:44:40
    あとどれぐらい頑張ればいいのでしょうか

    気付かないふりをして過ごしていくのが1つの愛の形だと理解して生きるのか

    待っていなくていい、先に進んでくれて構わない

    ゆっくりと歩いて貴女の隣に立つと約束しますから






    「この人……この人は…」


    目の前に調査兵団を壊滅させた奇行種の巨人が手を伸ばしてくる

    意識を失ってしまっている貴女を守るため、巨人の盾になりましょう


    「ハンジさんには……ハンジさんは…」


    「私が命に変えても守ってみせます!」




    貴女の隣で笑っていた日々はいつかは壊れると覚悟していました

    その壊れる瞬間まで、1秒でもいいから一緒にいたかった





    キイイイイイイイイン!!



    立体機動装置で巨人のうなじを削ごうと試みるモブリット

    熟練の調査兵団を壊滅させた奇行種はモブリット1人で倒せる相手ではなかった

    苦戦しながらも巨人を削ぐことに成功する

    しかし、削ぎ損ねて奇行種からの攻撃を受けて地面に叩き付けられる





    「あっ……くっ…そっ……」

    触れることすら許されない貴女の近くに近付こうとする巨人

    あと数メートルで巨人に捕まろうとする貴女を守ろうとした時

    体の奥底から不思議な程の力が漲る



    「うあぁぁ!!!」

    最後のガスを使い巨人のうなじを削いだ

    奇行種は倒れ、煙を体から放出させる







    「ハンジ…さん……よかっ…た」





    「モブリット……大丈夫か?」





    後ろから【想い人】の【想い人】が声をかけてきた





    「……リヴァイ…兵士長」

    「喋るな…すぐに…」



    モブリットはリヴァイの手を強く握った

    その表情を見たリヴァイは悟ったようにモブリットの手を強く握る






    「ハンジに……伝えることはあるか?」



    「………ありません…伝えることが…ある……のは…貴方です」




    「何だ?」




    「支えてあげて……守って…あげ……て…ください」



    「ハンジさん…は……本当は…弱い…女性……ですから」



    「リヴァイ…兵士長………」




    モブリットはリヴァイの瞳を真っ直ぐ見て答えた




    「あぁ、約束しよう……俺が必ず…必ず…!」




    最後まで伝えることが出来なかった



    けれど



    モブリットの顔は安らかに目を閉じて長い眠りについていた
  33. 33 : : 2015/04/22(水) 16:45:20
    そんな、モブリットを嘲笑うかかのように先程の巨人が立ち上がっていた





    「てめぇら……何で人を殺すんだ?」


    モブリットが削ぎ損ねた巨人は煙を出しながらリヴァイに近付いてくる





    「……」


    ブレードを握る手が自然と震えてしまう

    怖いからではない、怒りで震えてしまうんだ



    「………モブリット…」


    「お前の生きた証……俺が…」


    「俺が……必ず守って見せる」





    立体機動装置で巨人めがけて空を舞う
    調査兵団に入団した兵士達の憧れである男の姿

    他の調査兵団では不可能な動きで巨人を斬りつける






    「………必ず……必ず…!」


    「てめぇら、巨人を絶滅させてやる」








    大きな地響きを鳴らしながら巨人は地面に倒れていった

    巨人の返り血を浴びたリヴァイは空を見上げた

    空には白い鳥が群れで空を舞っていた
    自分達が憧れた自由を手にするためには、多くの犠牲が生まれてしまう






    「………イザベル……ファーラン…」



    「オルオ……グンタ……ペトラ…エルド……」




    「必ず……お前らに…手土産を持ってそっちにいく…」




    「見ていてくれ」





    リヴァイはモブリットの隣で気絶しているハンジを抱き抱える

    その横で安らかに眠っているモブリットの顔を見ることが出来なかった




    「……」



    リヴァイは戻ってきた馬に跨がろうとした

    その時、モブリットの方から人の気配を感じて振り返った






    「………」





    リヴァイの目には死んでしまった仲間達の姿が見えた

    リヴァイ班であったエルド達に中央憲兵と戦った時に助けられなかったニファ達の姿もある

    イザベルとファーランの姿もあった






    「……お前ら…」



    「……………」



    「……モブリットを頼む」




    そう伝えると微笑んでくれた
    そしてモブリットの顔を見る、安らかに眠っている彼はとても美しかった


    リヴァイは馬を走らせる
    唯一の生存者であるハンジを抱えながら


    そして感じるのだ
    彼女の生きている鼓動と暖かさを……。
  34. 34 : : 2015/04/22(水) 16:45:41
    霧で視界が悪い中、馬を走らせるリヴァイはハンジを強く優しく抱きしめる

    心の声を聞いた

    自分1人では理解することが出来なかった彼女の裸の心

    その裸の心を見抜いていた男の姿は、人類最強ですら尊敬した










    「リヴァイ兵長!ハンジさん!」


    「無事だったんですね!!」


    「あれ……モブリット…さんは?他の調査兵団の…方達は…」


    ジャンの言葉にリヴァイは目を閉じる
    リヴァイの腕の中で寝ているハンジを残りの調査兵団が手当てをしようと駆け寄る

    リヴァイはハンジを地面に寝かし、手当てを他の調査兵団に任せた





    「………モブリットさん」


    「ジャン……あいつは…俺なんかより強かった」




    愛する人のために命をかけて戦った調査兵団モブリット・バーナー







    「あっ、あぁ……うっ…ちくしょう……ちくしょう!!!」






    ジャンの声は雨が止んだ空に響いて消え入った



    無くすことを恐れずに、愛を信じて戦うことの難しさ



    捨てることのできない気持ちは必ずある








    「……モブリット…」







    「約束しよう」










    「俺は……必ず…巨人を絶滅させる」










    「そして……必ず…」






    「こいつを幸せにする」














    「俺がこの決断を悔いることはない」









    「決して」










    今日も鳥は空を舞う




    自由の翼を広げ、誇り高く空を舞うのだ

















    ~悔いなき選択~炎の心が消える時
    ―――Fin―――
  35. 35 : : 2015/04/22(水) 17:43:54
    執筆お疲れ様でした。

    ハンジに、決して叶うことのない淡い想いを寄せるモブリット。そんな彼が愛する人を守るために、その儚い命を散らし果てたシーンは、目頭が熱くなりました。


    乙です!
  36. 36 : : 2015/04/22(水) 18:41:00
    紅蓮:無銘の戯言遣いさん
    コメントありがとうございます!!
    モブリットのハンジさんへの想いは凄く強いと思うんです!そんな彼だからこそ、命を捨ててでも守ろうとすると思ってたんです!
    そして、それはリヴァイにもすぐには真似できない…そんな気がしてたので書きたくなった作品です!モブリットが散るシーンを格好良く書けてたら嬉しいです!!

    コメントありがとうございました!!
  37. 37 : : 2015/04/22(水) 18:56:10
    師匠ー執筆お疲れ様でした!
    モブリットの散り様がかっこよすぎて潔すぎて……涙が止まらなかった( ;∀;)
    モブリットなら、我が身などハンジさんのために平気で差し出すでしょう……
    リヴァイはモブリットの分までハンジを慈しむ責任があるね( ;∀;)
    心が震えました。・゜゜(ノД`)
  38. 38 : : 2015/04/22(水) 21:07:40
    88師匠
    コメントありがとうございます!!
    原作でもモブリットはハンジさんを守るためなら絶対に命を捨ててでも戦おうとすると思うんです!それは調査兵団としてじゃなく、一人の男として守りたいっていう想いがあると私はかんじるんですよね♪そんなモブリットを見て人類最強のリヴァイも成長する……そんなお話しを書きたかったんです!!読んでもらえて良かったです!!本当にありがとうございます!!
  39. 39 : : 2015/04/23(木) 23:21:04

    執筆お疲れ様です
    いやあ、雷に撃たれた気分です(笑)

    リヴァイが幾人もの死を背負うシリアスな話はよくあるのですが、その背負った死があまり重く感じない温かいSSでした

    モブリットの選択は喜べるものではないのですが、男として尊敬し恋する人間としてもこうありたいと思える格好良さでした(o´∀`o)=惚れた

    リヴァイは簡単には死ねませんね

    ハンジを幸せにしなくては

    素晴らしい作品をありがとうございました!
  40. 40 : : 2015/04/23(木) 23:23:19

    あ、重く感じないという表現は誤りでした
    刺々しく、そして生臭い(血的意味で)といった本人を苦しめるものではないという意味です

    言葉選びの誤り、すみません
  41. 41 : : 2015/04/24(金) 18:34:29
    影刻さん
    読んで頂きありがとうございます!!

    リヴァイが仲間の死を背負う話は多くありますが、その後の展開でリヴァイが最強として苦しむのではなく、人として成長するといった感じで書きたかったので!温かさがあると思って貰えて本当に嬉しいです♪
    モブリットはやはり、誰よりもハンジさんのことを想っていると思うんです!!それはリヴァイよりもハンジを理解してる…だから命を捨ててでも守ろうとするモブリットが書けて満足しました(笑)

    こちらこそ読んで頂きありがとうございます!!これからも目に止まって楽しんでもらえるような作品を作れるように頑張ります!!コメントありがとうございました!!
  42. 42 : : 2015/04/25(土) 15:57:37
    執筆お疲れ様でした。

    各々の悔いなき選択を貫く姿に感動しました。
    リヴァイとハンジとモブリットの関係って凄く好きなので、一つの理想の関係を見れて嬉しいです。ありがとうございました。
  43. 43 : : 2015/04/25(土) 23:06:07
    キミドリさん
    ありがとうございます!!

    悔いなき選択って格好いい言葉に聞こえますが、選択する者にとっては過酷なものだと思ってしまいます…モブリットやリヴァイやハンジ、他にもライナーやベルトルトにアニ達も迷いながらさ迷いながら選択を信じて生きている、難しいことですよね…
    そして理想の関係が書けて嬉しいです!!こちらこそ読んで頂きありがとうございます!!
  44. 44 : : 2015/05/01(金) 07:07:19
    遅くなってしまってすいません汗
    今回もすごく良かったです。
    原作の方でモブリットもうそろそろ死にそうなんですが…死んで欲しくないです(笑)
    悔いなき選択は一巻しか読んでないんですがイザベルとファーラン死んじゃうんですよね…可哀想です…

    お疲れさまでした!!
  45. 45 : : 2015/05/02(土) 17:31:19
    チワワさん
    コメントありがとうございます!!
    原作でモブリットがどうなるのか…どうかハッピーエンドになって欲しいですね…
    イザベルとファーランが原作で登場してたら面白そうですよね(笑)読んでいただきありがとうございます!!
  46. 46 : : 2015/05/03(日) 18:08:29
    >>1
    分隊長じゃないの?

    こういう未来も悪くないなと思いました

  47. 47 : : 2015/05/03(日) 20:39:28
    とあさん
    時間があるときに直させてもらいます!
    ありがとうございます!
  48. 48 : : 2015/05/03(日) 23:02:21
    モブリットがとってもかっこよかったです!
    エレアニも期待して待ってます♪
  49. 49 : : 2015/05/05(火) 23:10:06
    進撃の俺さん
    モブリットが格好いいと思って貰えて嬉しいです!エレアニも頑張ってストーリーを作っていきますね!!
  50. 50 : : 2015/05/24(日) 23:45:04
    モブリットさんのことより一層 好きになりました!
    モブリットさんのssをかいていただきありがとうございます!!!
    あなたは神様でしょうか!!!??
  51. 51 : : 2015/05/27(水) 17:39:31
    凛さん
    こちらこそ読んで頂きありがとうございます!!
    紙とか髪の毛とかの間違いです!!
    モブリットが好きになってもらえて嬉しいです!ありがとうございました!!

▲一番上へ

このスレッドは書き込みが制限されています。
スレッド作成者が書き込みを許可していないため、書き込むことができません。

著者情報
ani45

EreAni&88★

@ani45

「進撃の巨人」カテゴリの最新記事
「進撃の巨人」SSの交流広場
進撃の巨人 交流広場