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TRIANGLE─幸せのカタチを探して─

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  1. 1 : : 2015/03/29(日) 19:20:38
    今回は合作作品です。
    合作してくださる方は、影刻さんという方!
    本当に嬉しく思います!

    104期生を中心としたお話になります。また、それぞれが主人公のようにしていきたいと思っています。

    進撃の巨人の世界観ではないので、その点におきましてはご注意ください。世界観的なイメージだと、中世ヨーロッパ辺りです。



    感想などは非表示にさせていただきます。


    更新は1日3~5程度の予定です。
  2. 2 : : 2015/03/29(日) 19:37:39

    どうも、影刻です
    蘭々さんと楽しく合作していきますので、是非読んで頂けると嬉しいです

    よろしくお願いします
  3. 3 : : 2015/03/29(日) 19:46:07





    「逃がすな!追えーっ!!抹殺するのだ!」





    背中に向けられる無慈悲な掛け声

    それを受け止め、必死に暗闇を走るのは男

    息は乱れ、心拍数の上昇により胸が痛むのを必死に堪えながら走り続ける

    男の名はベルトルト・フーバー

    彼は宛もなく、目的もなく、ただただ自分を狙う魔の手から逃げるためだけに無我夢中で深い深い暗闇へと身を落としていた

    「はっ…はっ…助けてっ…」

    無意識に目の前の空に向けて腕を伸ばした



    誰か僕を…救ってくれ!!



    ベルトルトは心の中でそう叫ぶと、ごくりと息を飲み込み、鉛のように重い足に鞭を打ち、走る速度を上げた



  4. 4 : : 2015/03/29(日) 19:53:12



    【序章】逃避行


    其処は王国軍本部のある一室

    その扉から慌てて入室して来る部下にライナー・ブラウンは手元の資料から視線を移した

    「ライナー中佐!」
    部下は青ざめた顔をして叫ぶ

    「どうした?」

    「ベルトルト元中佐を見逃しました!!」

    それにライナーは無表情で「そうか」と応える 

    部下は落ち着かない様子で次の指示を待ったが、ライナーに焦りはない

    「ならば捨て置け。別に重罪を犯したわけじゃないからな…それよりもキルシュタイン家のご子息が行方不明らしい。その探索に当たれ」

    ライナーは涼しい顔でそう命令すると、再び意識を資料に落とした

    「え?し、しかし…」

    なおも言い募る部下にライナーは視線だけを向けた、その瞳は燃えるような輝きを放ち反論を許さないものだった

    「っ…」

    思わず部下は生唾を飲み込む

    「俺の命令が聞こえないのか?」

    最後の忠告

    自分に逆らうなという警告でもある

    「はっ…承知いたしま…」

    「待って」

    恐怖した部下の言葉は凛とした声に阻まれた
  5. 5 : : 2015/03/29(日) 19:58:27

    その声の持ち主は史上最年少で王国軍大佐に上り詰めた天才…ミカサ・アッカーマンである

    彼女は王国軍で‘人類最強’と恐れられるリヴァイ・アッカーマンの妹であり、才能も共通に十年に一人の逸材だと言われた

    「ライナー、貴方の判断は間違っている」

    彼女はライナーの目の前に仁王立ちした

    「ベルトルトと親しかった貴方は冷静な判断が出来ないでいる…」

    ミカサのその言葉にライナーは眉をひそめる

    「俺は冷静だ」

    「普段の貴方ならもう少しまともな命令が出来たはず…。キルシュタイン家の家出騒動を解決しつつベルトルトは全国指名手配するべき」

    「…必要ない」

    怒気の孕んだライナーの声にミカサは溜息をつく

    「ベルトルトは元中佐の立場にいた。彼は王国軍の機密情報を一兵卒の三倍は持っている。反乱軍に捕らえられれば情報が漏れる」

    「ベルトルトはそんなことはしない」

    「…拷問は堪えられても、情をかけられれば人は動く」

    ミカサは重々しく言い放つ

    「ライナー中佐、命令だ。ベルトルトを全国指名手配しなさい」

    ミカサそれを告げるとは部屋を出て行く

    残されたライナーは苦痛の呻き声と共に壁を殴りつけた


    「…くそっ!ベルトルト…っ…」


  6. 6 : : 2015/03/29(日) 20:17:42

    その後、数日に渡り世界中へとベルトルト・フーバーの指名手配書が配布された

    彼の情報の価値も加算され、賞金もかけられた

    しかし、反乱軍に目を付けられる恐れもあり、ベルトルトは元王国軍軍人としてではなく貴族殺しの汚名が着せられた

    生死問わずの案もあったが、それは王国軍中佐のライナー・ブラウンの必死の抗議により取り消される




    「……貴族殺し…か」

    ざわざわと賑やかな街中でフードを深く被った長身の男は配布された手配書を眺めると呟く

    「クリスタに一応伝えておくとするか」

    唇を吊り上げて男は歩き出した




    時は同じくして王国軍に唯一牙を向けた命知らずな集団、反乱軍もまた動き出していた

    「おい、アルミン。本当にこのベルトルト・フーバーを捕らえるのか?」

    反乱軍頭であるエレン・イェーガーは目の前に座るアルミン・アルレルトにそう問う

    アルミンは優しげな微笑みを浮かべて答えた

    「うん、彼が殺した貴族はレオンハート家の人間だ。確かに王の寵愛を受けた家として重要視されるだろうけど…今の政府が彼を全国指名手配までする理由がない。逆に王のお気に入りを消してくれて英雄扱いする筈さ、レオンハート家は多くの貴族の嫉妬の的だったろうし」

    「……」
    エレンは眉を顰める

    「なのにここまで政府は彼に執着を見せている。少し前に中佐の席が一つ空いた情報と何か関係があるかもしれない。僕の意見はここまで、どうかなエレン。彼を捕らえたいのだけど」

    アルミンの言葉にエレンは問う

    「アイツの部下とかじゃないよな?」

    「大丈夫。今回の事件に彼女は関係していないから…僕達がベルトルト・フーバーを捕らえても何か損失があるわけじゃないさ」

    アルミンはそう言うと、エレンはやっと安心したように笑った
  7. 7 : : 2015/03/29(日) 20:21:37

    「なら、遠慮は要らねえな」

    「本当なら…僕達の革命に彼女も参加して欲しかった…でも立場上それは出来ない。僕達はなるべく彼女とぶつからないように小さく動こう。いずれ、その時が来てしまうのだから」

    アルミンは幼い頃にエレンをいれてもう一人、最も大切な人間の一人である黒髪の彼女を思い浮かべた

    エレンも同じだろう

    「ああ…少しだけの悪足掻きはしてやるさ」

    反乱軍頭、エレン・イェーガーは立ち上がる

    革命の旗揚げの瞬間

    彼は王国軍にいる幼なじみの姿に語り掛けた

    「ミカサ…、俺は止まらないぞ。例えお前と戦うことになっても、だ」

    彼の瞳の輝きはあまりにも強く、勇ましい

    アルミンは彼の背中を眩しそうに見つめて口角を曲げた

    「そうだ、僕達は止まらない!この世界を変えるために…!」







    王国軍、反乱軍…そして他勢力も




    各々の意志とともに動き出す




    ‘時’は既に目の前へと来ていた





    「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」


    ベルトルト目の前に手を伸ばす

    果たしてその先にあるモノは……?







  8. 8 : : 2015/03/30(月) 09:09:22






























  9. 9 : : 2015/03/30(月) 09:10:50


    【第一話】数年後





    男は長身の癖に細い身体で、狭い路地を意図も簡単に歩いていく。

    大通りでは、甘ったるい声を出す娼婦が通りすがる男達に媚を売る。

    そんな娼婦等を、振り返ると男は憐れみの視線を娼婦等に向けた。そして、再び歩く方向へと身体を向けて歩き始めた。


    「ちょっとそこのお兄さん」


    少し低めの女性らしそうな声に、男は振り返った。

    男に声をかけたのは、娼婦にしては清潔な身なりをしている娼婦。

    男は少し黙って考えると、はあと溜め息をついてから、重々しい口を開いた。


    「いくらで君を買えばいいの?」

    男がそう言うと、娼婦は大きな声で、あはははっ!と笑った。

    そして、ニヤリと笑みを浮かべた。


    「いや、泊めてくれさえすればいい」



    「そう…」


    男はそう言ってまた歩き出した。娼婦はそれについて行った。
  10. 10 : : 2015/03/30(月) 18:24:58

    しばらく歩くと、娼婦と男は古びた廃屋にたどり着いた。

    男は廃屋の戸を開けて、娼婦に入るようにと促すと、娼婦は廃屋へと入る。

    中は廃屋の見た目よりは清潔感がある。

    元々酒屋か飲み屋なんかだったのか、カウンターになっていて、その奥にキッチンらしきものがある。

    男は廃屋に入るなりに、カウンターの奥へと消えた。

    娼婦は興味深そうに辺りを見回すと、丸テーブルに丸椅子。

    スプリングの利かなそうなベッド。

    弾力のなさそうなソファー。

    そしてちょっとした小造な、本棚。

    男は何をしに行ったかと思うと、ワインを持って戻って来た。


    「はいどうぞ」

    男はそう言って、娼婦にグラスを渡す。グラスにはワインらしきものが注いであった。


    「お兄さんの名前、何ていうんだ?」


    娼婦はそう言って、男を見つめた。



    「客の名前を聞くの?」


    「あんたみたいな奴は珍しいからな」

    「そう…それなら、君の名前を教えてくれよ」


    男がそう言うと、娼婦は黙った。考えを張り巡らしているのだ。

    そして口を開く。
  11. 11 : : 2015/03/30(月) 20:35:45




    「私の名前はユミルだ」




    ユミルはぶっきらぼうに言った。すると、男も口を開く。




    「僕の名前はベルトルトだよ」



    ベルトルトは静かな声で言うと、ワインを口に含む。

    ワインに手をつけないユミルにベルトルトは気になったのか、


    「ワイン飲まないの?」

    そう聞くと、ユミルは何かを考えるようにしてから、一気にワインを飲み干した。

    驚いたような表情をするベルトルトを見て、ユミルは笑った。



    「ベルトルト、すごい顔してんぞ?あはは!」


    「だって一気に飲み干すとは思わなかったから…」


    ユミルはまだ大笑いをしていたが、次第にその大笑いも止まった。
  12. 12 : : 2015/03/30(月) 20:37:05



    「君は何歳なの?」


    ベルトルトがそう聞く。

    すると、ユミルは考えるようにして、手の指を一本一本折り曲げたりしている。


    「二十といったところかな」

    「へえ、僕とあまり変わりはないね」


    ベルトルトは納得したかのようにして、ワインをまた一口、口に含む。

    ユミルは近くにあった、丸椅子にドカッと座る。


    「あんたの仕事って何だ?」


    ユミルがそう訪ねると、ベルトルトは黙りこくった。

    疑い深くベルトルトを見るユミルの目付きは、先程よりもきつくなっている。



    「教えられないほどのヤバい仕事をしてんのか?」


    「いいや、そういう類いの仕事はしていないよ」


    その言葉に少し安心したのか、ユミルの目付きは先程よりも緩くなる。
  13. 13 : : 2015/03/31(火) 17:11:21


    「じゃあ、何の仕事してんだ?」

    「君と同じような仕事だよ。男娼さ」


    ユミルは納得したような顔をしている。


    「男にケツを貸したりするのか、大変だな」

    ユミルは「大変だな」と言っている割りには、あまりそういう顔をしていない。

    どちらかというと、「どうでもよくなった」ような顔をしている。


    「口が悪いし下品だよ、ユミル」

    「娼婦何かに下品もクソもあるかってんの」


    「女の子だろ?君は」


    ベルトルトはそう言ってワインの瓶を持ち、ユミルの空いたグラスと、ベルトルトのグラスにワインを注いだ。
  14. 14 : : 2015/03/31(火) 17:13:45
    久しぶりに覗いて見ると、影刻さんと蘭々さんの合作なんて夢のようですね!

    進撃の巨人とは違った世界観なのに、全く違和感なく読むことができます!
    引き続き期待しています。
  15. 15 : : 2015/04/01(水) 06:21:41

    ユミルは馬鹿にしたようなそんな顔をする。


    「ベルトルト、娼婦何かには〝女の子〟なんて言葉は似合わねえよ」


    素っ気なく言うと、ユミルはグラスを手に取る。

    そして、一口ワインを口に含んだ。

    先程は、一気にワインを飲み干してしまった為、あまりよく見れなかったが、こうして見るとよく絵になる。

    ユミルはそばかすはあるが、それでいても綺麗な顔立ちをしている。

    ついついベルトルトが見とれていると、ユミルはベルトルトを睨む。


    「何ジロジロ見てるんだよ?」


    「絵になるなあって思って」


    無意識に、ベルトルトの口から漏れた。
  16. 16 : : 2015/04/01(水) 06:23:18

    ベルトルトはそれに気付くと、「しまった…」とでも言うかのような顔をする。

    ユミルは驚いたように口をポカーンと開けている。

    二人の間に沈黙が訪れた。




    「何かごめん…」


    気まずくなったのか、ベルトルトがそう言うと、ユミルの開いた口がふさがった。


    「あんたもそういう空想的なことを言うんだな、驚いたよ」

    「いや、だって綺麗だったから…」


    〝綺麗〟という言葉にユミルは少しくすぐったくなった。

    寝る客寝る客は「可愛い」としか言わなかった。決して綺麗とは言わなかった。

    しかし、ベルトルトはユミルのことを綺麗と言った。

    ベルトルトが初めてだったのだ。

    少し嬉しそうな顔をしているユミルに、ベルトルトも悪い気はしなかった。
  17. 17 : : 2015/04/01(水) 20:15:04



    「話は変わるんだけど、ユミルは何で娼婦になったの?」


    そうベルトルトが不思議そうにたずねる。


    「私が娼婦になった理由ねぇ……」


    何か過去のことを思い出しているような、それとも思い出せないのか、そんな様子のユミル。



    「やりたくてなったわけじゃあない…。まあ、多分…、金が欲しかったからかな」


    少し濁すように言うユミルにベルトルトは違和感を感じた。

    言葉の節目に、どこか変な感じがする。

    しかし、そのことについて聞くほど、ベルトルトは馬鹿ではなかった。

    そのまま受け流すと、ユミルも特に気にしてはいないようだ。
  18. 18 : : 2015/04/01(水) 20:16:12

    二人の間に再び、沈黙が訪れようとしていた。



    しかし、その沈黙をユミルが切り裂いた。




    「なあ──」


    ユミルはそう言って、ワインのはいったグラスを眺めた。


    「何?」


    「あんたは今日、仕事してきたのか?」


    ベルトルトはそう聞かれたことに少し驚いた。

    ベルトルト自身は、ユミルがそういうことを聞くかもしれない、そう思っていた。

    しかし、ユミルとこうして言葉を交わした時間はほんの一握り。

    それだけでも、ユミルという女性は〝ある程度は踏み込ませない〟という印象を受けたからだ。

    あまり過去の話をしたくないのであろう、彼女は、先程聞いた時も言葉を濁した。

    別にユミルが悪いわけではない。

    ベルトルトだって、ユミルには過去の話をしたくないのだから。
  19. 19 : : 2015/04/03(金) 22:27:21
    ヤバい!ユミル様命だよぉ~期待!!
  20. 20 : : 2015/04/04(土) 19:32:20

    ベルトルトはユミルを見ると、ユミルはワインを口に含んでいた。


    「今日は仕事しようと思ってたんだけど、何かあまり釣れなくてね…」

    「じゃあ、今日はしてねえんだな」

    「うん。ユミルは?」


    そう聞くと、ユミルはもう一度ワインを口に含む。


    「してねえよ、だから泊まるところもねえから、ベルトルトに迫ったわけだ」

    「迫られた覚えはないけど」

    「じゃあ、丸め込んだわけだ」

    「丸め込まれてもないよ」

    「どうでもいいだろ?…誘惑したわけだ」


    「誘惑って…、まあいいか」

    ベルトルトがそう言うと、二人は顔を見合わした。

    そして一斉に大笑いをする。

    その笑い声は、部屋中に響いたのだった。
  21. 21 : : 2015/04/04(土) 19:33:27





    数時間ぐらい経つと、テーブルには空き瓶が倒れていた。

    大きめのサイズの瓶だったのだが、ユミルもベルトルトも酔った様子は見られない。


    「今日はやるのか…?」

    「今日は…いいや。眠くなってきたし…」


    ベルトルトがそう言うと、ユミルは少し驚いたような顔をする。

    無理もないだろう。


    「まあ、やらずに済むのなら楽なんだけどな、こっちは」

    「あ、でも。朝食を一緒に食べてよね」

    「そんなことでいいなら、楽なもんだよ。わかった、一緒に食べてやる」


    ユミルがそう言うと、ベルトルトはふふふと笑った。

    ユミルは幼い子を見ているようで、こんなにも大柄な男のことを〝可愛い〟と思った。

    二人は眠ろうと、寝室へと向かった。
  22. 22 : : 2015/04/04(土) 19:34:34



    寝室はこじんまりとした部屋であった。

    ベッドに、それからテーブルがあった。しかし、椅子はなかった。

    テーブルにはユミルの目を惹くものがあった。

    ユミルはそのテーブルへと惹き付けられるように近付いていく。

    テーブルに置いてあるのは、王国軍しか持つことを禁止されている、金の紋様のナイフ。

    そのナイフには、金の王冠の模様が刻まれていた。

    ユミルは少し驚くも、そのナイフに触れる。

    貴金属独特の匂いと、ゾワリとするほどの冷たさが、肌に残る。


    「ベルトルト…これは何だ?」


    ユミルはそう言って、ベルトルトの方へと向かう。

    ベルトルトは動揺する様子もなく、何の感情も読み取れぬ表情をしていた。


    「どう見てもナイフだろ?危ないからあんまり触らない方がいいよ」
  23. 23 : : 2015/04/04(土) 19:35:29


    「そんなヘマはしない…、それに私が聞いたことはそんなことじゃない」

    「どういうこと?何のこと?」



    「この金の王冠が刻まれていることだよ」


    そう聞くと、ベルトルトは黙った。

    ユミルは内心、別にベルトルトを責めるつもりも何もない。

    ただ、好奇心で聞いているだけだ。

    ベルトルトは口を開いた。


    「まあ、僕にも色々とあるんだよ…」

    濁すように言うベルトルトには、少し怪しく思えた。

    だが、それ以上、ユミルは追求しなかった。
  24. 24 : : 2015/04/04(土) 19:36:22

    その場の雰囲気が、少し冷たくなる。

    そして、重い雰囲気をユミルは感じとった。

    ユミルはその雰囲気を紛らわすように、口を開いた。


    「眠いから、寝ていいか?あんたはどうするんだ?」

    「うん、僕はまだ寝ないかな…、先に寝てて」


    ベルトルトは穏やかな表情に戻り、言った。





    「おやすみ、ユミル。良い夢を」



    「ああ、悪い夢は見ねえだろうよ。おやすみ」

    ユミルはそう言って、ニヤリと笑った。


    その笑った顔は、艶かしく綺麗に見えた。夜空で輝く月のように、ベルトルトには見えた。


    ユミルは毛布を被ると、すぐに深い眠りへとついた。
  25. 25 : : 2015/04/04(土) 19:37:04

    眠っていないベルトルトは、テーブルへと近付いていく。

    テーブルには、先程ユミルが触れたナイフがある。

    そのナイフのことを、ユミルが気になるのは仕方もないこと。

    ベルトルトのような、男娼が到底持っている筈はない。持っていてはいけないのだ。

    ベルトルトは、ユミルと同じように、金の王冠に名残惜しく、ツゥーと触れる。

    先程、ユミルには言わなかったが、ベルトルトには深い深い過去がある。

    それはとても感動的なものではない。

    ただ、それでも人間地味た話ではある。


    「──ライナー」


    ベルトルトは消えるように呟いた。





  26. 26 : : 2015/04/05(日) 21:04:55




















  27. 27 : : 2015/04/05(日) 21:06:43

    第二話【過去】



    金の冠は支配者を意味する

    この世界は反乱軍などの反逆者以外は全て王が支配する

    そのシステムに疑問を持つ者が居れば、その者は反逆者と認定されてしまうのだ

    これぞ‘絶対王政’

    王国軍中佐、ベルトルト・フーバーはそのシステムに疑問を持ちながらも口にはしない

    心の中でほんの少し、愚痴を漏らす程度である

    「ベルトルト中佐!反乱軍のメンバー特定、失敗に終わりました!」

    部下の一人の報告にベルトルトは眉をひそめた

    「そう…ありがとう。僕は一度城に帰るよ」

    「はっ!」

    見事な敬礼で送り出されたベルトルトは冷たく暗い瞳を隠してニコリと微笑んだ
  28. 28 : : 2015/04/05(日) 21:08:51

    暗闇を歩くベルトルトの表情は堅い

    反乱軍の情報は少ないにもほどがあった
    まだ動きが表立っていないからか、軍全体の確証的な手掛かりがなかった

    そう、反乱軍があるかどうかすら怪しいところ

    未だ反乱軍がいるという噂を頼りに行動を起こしているのに過ぎない

    「まったく…居なかったら骨折り損だな…」

    そう彼は呟くと、目の前に現れる人影に柔和に微笑んだ


    「やぁ、ライナー」


    人影は月の光に照らされて、実体のある者へと変えてゆく

    現れた男はベルトルトよりも身長は低いが、体格が良く、まさに鍛えぬかれた身体の持ち主だった

    彼の名前はライナー・ブラウン、ベルトルトと幼い頃からの腐れ縁であり、親友の位置にいる男だ

    「よお、ベルトルト中佐殿。反乱軍の情報は掴めたかね?」

    わざとらしい言い方にベルトルトは苦笑する

    「いえいえ、ライナー中佐、収穫なしですよ」

    そうベルトルトが返せば、ライナーは笑う

    「なら、飲みにでも行こうぜ、お互いに休養は必要だろ?」

    「んー、…そうだねえ」

    二人は肩を並べると、軽やかな足取りで夜道を歩き始めた

  29. 29 : : 2015/04/05(日) 21:16:24




    所時期変わって翌日の朝、王国軍大佐であるミカサ・アッカーマンは出勤時間になる前に城に訪れている国内一、二を争う腕利きの医師グリシャ・イェーガーの所へと向かった

    彼女の目的は二つである

    一つは昨夜に反乱軍の情報収集活動時に、彼女を襲撃した反逆者から受けた傷を診て貰うためである

    残念ながら反逆者であって、反乱軍の一味ではなかったが

    ミカサ・アッカーマン

    数々の反逆者を逮捕し、闇では天敵とされている女幹部

    反乱軍どころでなく、彼女が闇を歩けば必ず追っ手に狙われるほどにミカサは恨みを買っている

    だからこそ、生傷が絶えない

    グリシャ・イェーガーが城に訪れれば必ずと言って良いほどにミカサは彼の診察を受けている

    そして二つ目の目的は、

    「…グリシャさん…入ります」

    ミカサはイェーガー家の為に用意された部屋を数回ノックするとがチャリと扉を開けた

    すると彼女を迎えたのは黒髪の青年だった
    意志の強い瞳が印象的な青年は、ミカサの顔を見るなり少しの怒りを表情に乗せる

    「…なんだ、ミカサかよ」

    あまりにも無愛想な声を漏らした青年、エレン・イェーガーは奥に控える父親のグリシャを呼びつけた

    「父さん!ミカサだぜ」
  30. 30 : : 2015/04/05(日) 21:18:40

    「ああ、よく来たね。ミカサ」

    グリシャはエレンとは対照的にミカサを快く笑顔で歓迎した

    「血の匂いがするな…」
    小さく漏らすエレンの言葉にグリシャは、

    「傷の所を見せなさい」

    とミカサに言った

    彼女は素直にコクリと頷くと傷のある箇所の太股を見せた

    刺し傷がそこには存在しており、応急処置で固まった血はウイルスが入り込んだのか赤紫色へと変色していた

    「…私以外にも王国の医師はいるだろうに…適当な応急処置だけだから悪化してしまっているぞ?」

    溜め息混じりにグリシャはそう言うとミカサを叱るように見つめた

    「…グリシャさん以外は、信用できない」

    小さな、しかし確かな呟きに喜んで良いのやら呆れて良いのやら、グリシャは何も言えなくなった

    イェーガー家とミカサの間には深い絆があった

    早くに両親を亡くし、孤独に苦しめられたミカサはイェーガー家に一時引き取られた

    後に彼女の生き別れの兄である人類最強ことリヴァイ・アッカーマンと再会するまでは家族としてミカサはグリシャやエレンと暮らしていたのだ

    だからこそ、ミカサはグリシャ以外の医師には自分の傷どころか身体に触れさせなくなっていた
  31. 31 : : 2015/04/06(月) 22:01:45

    「だが、私が旅に出てる間はどうする?私だってまだまだ医師としては放浪の身だ。偶に旅をする期間があっただろう?その時も放置しているのか?」

    グリシャの問いにミカサは首を縦に振った

    「私に出来ることはないので」

    「馬鹿だろお前」

    彼女の言葉に即、エレンが罵倒を浴びせた

    「…傷は放置すれば有害なウイルスが入り込む可能性が高いし、血はそのまま固まって傷は残る…女なんだから少しは気にしろ」

    「私は女だと思ったことはない」

    「世間的には女だろうが」

    エレンの声に苛付きが込められ始める

    ミカサはそれに気付いて口を閉じた
  32. 32 : : 2015/04/06(月) 22:03:40

    遅れての説明だがミカサが此処に足を運ぶ二つ目の目的はエレンに会うことにある

    もう一人の金髪の青年も入れて、ミカサにとって幼馴染みである二人は、大切な存在であった

    彼等さえ居れば、ミカサは幸せなのだ

    だが、エレンとは王国軍に所属してからというもの、上手くはいかなかった

    所属当初の大反対での大喧嘩
    それ以来、彼とはギスギスした空気が張り詰めている

    しかし、エレンは知らないが、ミカサはどんなに気まずくとも会いたいと望んだのだ

    だからこそ、エレンともう一人に、時間のある時は会いに行った

    コンコン、とノックの音がすると、次の瞬間にもう一人がやってきた
  33. 33 : : 2015/04/06(月) 22:08:45

    金髪の髪を揺らして、控えめに中へと入ってくる青年を見るとエレンもミカサも自然と笑みをこぼした

    「やあ、二人とも、おはよう」

    片手を挙げてそう言った彼はアルミン・アルレルト、エレンとミカサの幼馴染みであり、世界的に有名な学者の一人息子である

    才能は子にも受け継がれたのか、アルミンの研究は王国にも高く評価され援助金まで出ている将来有望な新米学者であった

    アルミンはミカサとエレンに順に視線を寄越すと困ったようにため息をついた

    「また喧嘩かい?まったく…エレンは…」

    「おい、なんで真っ先に俺なんだよ!」

    アルミンの言葉にエレンは食ってかかった

    彼の横でグリシャはクスクスと笑う

    「残念だったな、エレン。アルミンには丸分かりのようだ…ミカサが心配なのは分かるがもう少し素直になりなさい」

    「父さん!」

    顔を真っ赤にして叫ぶエレンが面白かったのかミカサもつられて頬を緩ませた

    「…あ、もう行かなくては…軍事会議に遅れる」

    ふと視線の先に見えた時計の針にミカサは目を見開くと、エレンをちらりとみた

    彼女の言葉にエレンは眉をひそめている

    「…それじゃあ、アルミン…グリシャさん…また今度…」

    「うん、またね!ミカサ…行ってらっしゃい」

    「怪我はあまりするなよ」

    二人の優しい言葉に微笑むとミカサは控えめに「エレン…」と呼ぶ

    「行ってきます」

    ミカサの言葉にエレンは何も言わない

    それが少し寂しいと思いながらもミカサは顔を引き締めて部屋を出た

  34. 34 : : 2015/04/07(火) 23:22:53


    会議室にて

    ミカサを迎えたのはライナー・ブラウンだった
    彼は会議室に一番最初に訪れる

    毎度真面目な彼らしい行動だ
    そして彼の次に訪れるのがベルトルト・フーバー、ライナーの隣には必ず彼がいる

    今のところミカサとこの二人しか居ない

    「アッカーマン大佐、おはようございます」

    礼儀正しいベルトルトがミカサに声を掛けた

    ミカサは軽く「ええ」と応えるが、瞳には何も映してはいないだろう

    「今日は議題は…反乱軍の調査の成果だったな」

    「ええ」

    ライナーの問いにミカサは頷く

    「上は反乱軍に警戒し過ぎじゃないか?ただの噂で軍を動かすとは…慎重なこった」

    皮肉が込められた台詞は真っ向から王国内を小馬鹿にしているように伺えた

    「…慎重なのは良いことだ…けれど、確かに慎重し過ぎるのは同意。もしかしたら上は既に何らかの情報を得ているのかもしれない」

    ミカサの言葉にライナーの目は光る

    「俺達の所に流れない情報…か」
  35. 35 : : 2015/04/07(火) 23:23:33

    「ええ、しかしライナー…王国軍への否定的な言葉は控えなさい、貴方も私も無事ではすまない」

    ミカサの忠告を最後に、部屋へ続々とメンバーが集まった

    大佐のミカサを筆頭に軍事会議が始まる

    「では、始める」







  36. 36 : : 2015/04/07(火) 23:25:41


    何の情報も得られない形だけの会議が終了するとベルトルトは誰よりも早く椅子から立ち上がり、ライナーの傍らに向かった

    「ライナー…反乱軍の情報が一つ手には入ったから今から其処に向かわないかい?」

    ベルトルトの提案にライナーは頷く

    今、自分達がするべき事は片っ端から情報に動かされて調査していく事なのだ

    「部下達を連れてくのも気が引けるし…俺達二人で行くか」

    ここの所、収穫無しの反乱軍調査で軍全体の活気が衰えているのをライナーは頭の片隅から引っ張り出した

    誰しも意味のない行動を続ければ苛つきもする

    今日くらいは羽を伸ばすのも良かろう

    そうライナーは考えていた
    ベルトルトも同意し、会議室から出ようとする

    「待って…私も行く」

    が、二人の背中にそうミカサが声を掛けた

    驚きを隠せないライナーに、ミカサは変わらずの無表情を貼り付けて小さな声で続けた

    「二人で行くのは危険…私達は団体行動をするべき…少人数で行きたいなら私がついて行く」

    それに冷静さを取り戻したベルトルトが控えめに苦笑した

    「ですが…、大佐は不確定な情報なのは承知の上で…僕達と一緒に行くと言っているのですか?」

    ミカサは静かに頷く

    それにベルトルトはライナーに視線を送った

    彼は真剣な表情であったが、目を閉じて「了解だ」と言った

    「御同行よろしくお願いします、大佐殿」

    少しふざけた口調でライナーは言ったが、

    「ええ、よろしく」

    ミカサの返答は、やはり素っ気ないの一言で、何故ミカサが自分達について行く気になったのか疑問を持ったベルトルトは静かに目を細めた
  37. 37 : : 2015/04/09(木) 22:35:43

    ベルトルトが掴んだ情報は、もう何度目か知れない反乱軍のアジトの場所のものだった

    スラム街の奥にある酒屋に反乱軍メンバーはたむろっている、今までに調査してきた情報と似たり寄ったりで場所が違うだけ

    何度似たような情報に苦虫を咬んだか知れない

    「…スラム街」
    ミカサは呟いた

    「まあ、良い所とは言えないな…」

    ミカサの隣でライナーもそう眉をひそめる

    「…リヴァイ・アッカーマンは其処で軍の勧誘を受けたそうだ…。手練れも多いということ…油断はしないで」

    自分の兄をフルネームで発したミカサの瞳は複雑な色を伺わせた

    ベルトルトは目ざとくそれに気付く

    ミカサとリヴァイは兄妹であるにも関わらず仲があまりよろしくない

    最初王国にミカサがやって来た時は彼女とリヴァイの喧嘩はほぼ日常の出来事であった
  38. 38 : : 2015/04/09(木) 22:37:45


    ー貴方のせいでっ!私は家族と離れ離れ…っー


    涙を流しながらそう訴えるミカサに、リヴァイは冷たく言った


    ー悪いが、実際にお前と同じ血を引いてるのは俺だ。俺が人類最強という肩書きで王国にいる限り、お前もお前自信の潜在能力と立ち位置のせいでここにあり続けなきゃならねえ。…残念だったなー


    彼の言葉はミカサに現実を突きつけるには十分な力を持っていた


    ー悔やめ、お前がアッカーマンであることをー


    それからミカサとリヴァイの間の亀裂は完全に生まれた

    ベルトルトは不思議と彼女に同情をした

    理不尽な運命に、幸せな時間との亀裂
    彼女は両親を亡くしたと同時に素晴らしい家族を得たらしい

    しかし、本物の家族が帰ってきた瞬間に幸せは遠のいたのだ

    なんと残酷な現実だろう

    端からでしかベルトルトは見ていないがイェーガー家専用の部屋に通うミカサは健気だった

    大佐という役職についてなければ、ミカサは直ぐにでもイェーガーの所へ、つまり自分の愛する家族の元へと帰ってしまうだろう

    しかしそれは許されない

    王国軍はアッカーマンを軍事力の一部として重視しているから

    アッカーマンは王国軍の切り札なのだ

    「……ト、ベルトルト!」
    ライナーの呼び掛けにベルトルトははっと意識を現実へと戻した
  39. 39 : : 2015/04/09(木) 22:38:59

    ライナーは呆れたような顔でベルトルトに言う

    「まったく、ぼーっとすんな。ここはスラム街なんだぞ?」

    「ご、ごめん」

    ベルトルトが申し訳無さそうに頭を下げたのと同時にミカサは酒屋へと歩き出した

    ゆっくりと開く扉に、酒屋内に居た人間の目は全て三人へと注がれる

    ーおい、王国軍だー

    ーあの身包み、高く売れるぞ?ー

    コソコソと聞こえる囁きにベルトルトは眉を顰めるが、彼の目の前のミカサはなんのその

    周りなど気にせずにカウンター席で酒を作る男に話し掛けた

    「少し、良いだろうか」
    男は女であるミカサを侮り、肩を竦める

    「お嬢ちゃん、とっとと帰りな、ここはアンタみたいなお綺麗なお嬢様が来るような所じゃない。温室育ちは城で花でも愛でてな」

    それは王国軍の軍人への侮辱の言葉だった

    ミカサの後ろでライナーのプライドが傷ついたのか、彼は懐にある武器に手を当てた

    それをミカサは片手で制する

    「…情報が欲しい。反乱軍について」

    彼女の声は普段と同じで平淡だ
  40. 40 : : 2015/04/11(土) 16:08:00

    男はスッと目を細めた

    「反乱軍…ありゃあまだ軍とは言えねえだろう」

    「知っているのか!?」

    男の言葉にベルトルトは声を荒げる

    「ああ、まだ数人の小さなグループさ。だが、恐ろしく計画的で隙が無い。ありゃあ先が楽しみな奴等だぜ」

    感心した言葉にミカサは懐から小袋を出した

    「その者達の似顔絵を描きたい。城まで同行して欲しい」

    小袋の中身は金だ

    男はミカサを見極めるように眺めた

    「俺は金じゃ動かねえ、今の所俺はその反乱軍モドキの若い奴等が気に入ってるんだ。情報はやれねえなあ?…嬢ちゃんが俺を惚れさせてくれるってんなら考えるけどな」

    下品な笑みを浮かべる男にミカサの鉄仮面は揺るがない
  41. 41 : : 2015/04/11(土) 16:15:33

    そんなミカサに男は続けた

    「あの若い奴等以上に、嬢ちゃんの覚悟があるのか、それを俺は知りたいのよ」

    男は小袋を掴むと、客全員に投げつけた
    金に飢えた者達は其れに一斉に飛び掛かる

    「…」
    静かなミカサの瞳に僅かながら変化が見える

    ベルトルトは冷や汗を流しながら彼女を見やる

    下手にミカサを怒らせてこの酒屋で戦闘となったら確実に此方が不利だと分かっているのだ

    何せ、この男も客も、スラム街の住人だからだ

    弱肉強食の世界を生きている者達に、圧倒的に人手の足りない自分達が勝てるわけが無い

    「…反乱軍に覚悟はあった?」

    やっとのことで発せられたミカサの言葉

    男は驚いたように目を見開く

    そんなことは気にせずにミカサは続けた

    「死を覚悟し、恐怖に打ち勝ち、絶対王政に真っ正面から立ち向かう覚悟がその人達にはあった?」

    「…」
    男は何も言わない、ミカサを計りかねている

    ベルトルトは隣のライナーを見やった
    彼もまた、同じ事を考えているだろう

    目の前のミカサの、異変に

    「その覚悟を反乱軍が持っているなら、私は貴方を認めさせることは出来ないだろう」

    ミカサはふっと目を閉じた、諦めたように

    「何故なら私は王国の為に全てを投げ出す覚悟は無いから…だから私には不可能…」

    そこまで言うとミカサは振り向いた

    「ので、この私でなく彼等を見て欲しい」

    託されたベルトルトとライナーは驚き、眼を見開く

    「彼等は本物の王国騎士であるから」
  42. 42 : : 2015/04/12(日) 20:50:54

    男はミカサの言葉に戸惑いながらも、ベルトルトとライナーに視線をやった

    「アンタらが、俺に何を見せてくれんるんだ?」

    男が問えば、ライナーがまず一歩を踏み出した

    彼は意志の強い瞳でミカサを見ると、男をじっと見つめる

    ライナーに先手を打ちたかったのか男は言った

    「先に言うが、俺が王国軍に力を貸したくないと思ってるのは反乱軍の奴等にかつての軍人としての覚悟を見たからだ」

    「…」
    ミカサは首を傾げる

    「今の王国軍の絶対王政制度、ありゃあ俺達一般人を見えない鎖で支配してやがる。いいか?俺達一般人はお前達への信頼を無くしてるんだ」

    男は続けた

    「恐怖政治が歴史上長続きしなかった理由は今の反乱軍みてえにその状況に適応しなかった奴等が今の状況をぶっ壊すからだ」

    ライナーは黙る
    自分もまた、王国に疑問を持っているからだ

    もしかしたら、形は違うけれども、ライナーこそが反乱を企てていたかもしれない

    今の状況を改善するために
  43. 43 : : 2015/04/12(日) 20:52:45

    男はそんなライナーの気持ちなど知らずに最後の自分が求めているものを口にした

    「俺はな、王国軍よ。今の絶対王政に反乱軍が反旗を翻すことでどれだけの人間が力を貸し、どれだけの人間が王国軍に味方をするかってのを考えた結果、俺が反乱軍を売る理由はあるのか?って言いてえんだ」

    それに三人は考えた

    どれだけの人間がどちらに動くのかを

    「少なくとも、今の反乱軍の若い奴らは信頼を重視できる奴等だと見込んでる。アンタらは一般人の信頼をモノに出来るのかって俺は聞きたいわけさ、今のまま恐怖政治を続けるなら、俺は絶対に反乱軍の情報を売らねえ」

    その台詞と共に煌めいた男の眼は拷問すらも堪えてやると言っているようだった

    それに一瞬とはいえ、ライナーは気圧される

    出来ることなら、自分も其方の意見に賛同したいと思ってしまうのだ

    「…僕は確かにそちらが正しいと思います」

    と、そのとき、控え目な声がその場を支配した
  44. 44 : : 2015/04/12(日) 20:55:06
    面白い!期待ですя(^>^)b
  45. 45 : : 2015/04/12(日) 20:58:08

    ライナーが振り向けば、辛そうに眉をひそめたベルトルトの姿がそこにはあった

    自然にその場の人間の視線がベルトルトに向けられる

    ベルトルトは意を決したように生唾を飲んだ

    「確かに、今の王国は絶対王政制度で一般人の信頼もなく幸せすら少ない。僕も、そこの彼も、王国の考えに疑問を持ち、上手く仕事が出来ないでいる」

    バカ正直に答えるベルトルトに、ライナーは瞠目した

    「おい!ベルトルト…!」
    制止の声も聞かずにベルトルトは続ける


    「でも、反乱軍の人間が例え反旗を翻しても、この王国は変わることは出来ない。何故なら必ず反乱軍に反乱する勢力が登場するからだ」


    「どういうことだ?」
    男は問う

    「今の王政は王族がやるからこそ成立し、今の均衡を保っているんです。ようはその立場に相応しい者が王国を統べるからこそ王族がある。

    それを反乱軍の…王族でないものが統一したらどうなると思いますか?多神教のこの世界、必ず王族を支援する人間が出てくるでしょう」

    「…」

    「王は、王族という王になるために生まれてきた人がやらなくては意味がないんです」

    ベルトルトはそう断言した

    男は苦虫を咬むように表情をゆがめる

    「俺たちは絶対王政に堪えてろって言うのか?」

    「いえ、…言ったでしょ、僕達も疑問を持っているって…」

    ベルトルトは男の目の前まで行くと、背筋をぴんっとのばした

    「僕達が…いや、僕1人でも、内側から王政を変えます」

    ベルトルトのその言葉に、全員が固まった
  46. 46 : : 2015/04/12(日) 21:04:17

    「お、おい!ベルトルト!」
    我に返ったライナーは戸惑いの声をあげた

    普段、穏和な自分の親友は信じられないほどに力強く男を見据えて離さない

    男は眼を見開き、未だ口を開けて固まっている

    そんな状況下でミカサの声が響いた

    「王政を変える、どうやって?」

    彼女の凍えるような瞳にベルトルトは答える

    「勿論、‘改心’させるのさ」

    いとも容易く発せられた言葉はあまりにも重罪だった

    恐怖政治を行っている王族は、かつて処刑されたアントワネットと同じく、腹黒い臣下の言葉になんの疑いもなくして民から金や食料を貪り尽くしていた

    王国、城、全てのモノに守られている王は何も知らないのだ、外のことさえも

    全ては王国軍上層部の本当の意味での悪によって政権は行われている

    ベルトルトは考えた

    反乱せずして変える方法を

    「書状を送るんです、王自身に」

    彼の言葉にまたも全員が絶句した

    王族に書状を送ることは上級階級の貴族にすら許されない冒涜行為なのだ

    「そんなこと出来る分けねえだろ!」
    男は反論した

    ベルトルトは頷く

    「確かに、僕達には無理です。でも、1人の貴族ならそれが可能になります」

    彼の言葉にライナー閃いた


    「エルヴィン・スミスか!」


  47. 47 : : 2015/04/12(日) 21:08:28

    「そう、彼は王族との接触権を与えられた唯一の貴族、スミス家の当主。彼を味方に付ければ王と間接でも意見交換が可能だ」

    ベルトルトの言葉に、男は眉を顰めた

    「…アンタの覚悟は伝わった…が、反乱軍の身元は教えねえ。アンタが本当に王政を変えられるという兆しを少しでも俺に見せてくれたら、俺はどんな情報でも売ってやる」

    その言葉に、コクリとベルトルトは頷いた












    「エルヴィン様!」

    場所は変わってエルヴィン・スミスは背中に掛けられた声にニコリと振り返った

    「やあ、マルコ、どうしたんだい?」

    彼の視線の先にはマルコ・ボットの姿

    マルコは王族出身だが、妾の子として差別を受け、キルシュタイン家に引き取られたという過去を持つ

    しかし、彼の生来の真面目な性格が幸をなして、今や駆け出しの研究者としてエルヴィンの講師を受けている

    人望もあり、キルシュタイン家とも上手くやっているらしい

    当初、王の正妻がマルコに同情してエルヴィンに彼の御身を守るように命じた

    が、エルヴィンの予想よりもマルコは優秀だった…正直に言えば、彼の加護など必要無かったのだ

    「ええと、先ほどハンジさんがやってきて、エルヴィン様を捜していらっしゃいましたよ」

    「おお、そうか…そういえば茶会の約束をしていたな。よし、マルコもおいで」

    エルヴィンはそう言うと微笑む

    マルコは嬉しそうに「はい!」と答えた
  48. 48 : : 2015/04/14(火) 00:03:37

    ハンジ・ゾエは軍事機関に精通した貴族である

    戦争や軍事バランスを思案、実行のための予算の37%はゾエ家が出していると言って良い

    そのゾエ家の次期当主がこのハンジ・ゾエ

    彼女は女性の身でありながら、王国軍の上層部と渡り合う権力を自分の実績だけで築き上げ、絶対王政に加担しない姿勢を保っている

    しかし、加担しないだけであって、反対もしていなければ軍事財政へと寄付も怠っていない

    まさに王国内の中立にいるのが彼女だ

    おかげで絶対王政を推進する上層部の貴族達には睨まれているが、それを全く気にしない彼女を誰かは「将軍貴族」と呼んだ

    「いや、将軍貴族って笑うところだから」

    「何を言い出すんだハンジ、立派な二つ名じゃないか」

    顔を真っ赤にして首を振るハンジにエルヴィンはクスクスとからかい半分に笑った

    王族直属の騎士と呼ばれるエルヴィン

    軍事財政を大幅寄付している将軍貴族ハンジ

    この大物二人と肩を並べて茶会に参加するのは王の妾の子マルコ

    マルコは申し訳なさと嬉しさで頬を緩めた

    「マルコ、そういえば困ったことはないかい?誰かに苛められるとか…、お姉さんがいつでも助けてあげるよ」

    ハンジの急な提案にマルコは首を横に振った

    「いえ、ハンジさん。俺みたいな妾の子に皆、ビックリするほど優しくしてくれます。この間なんかジャンが俺の誕生日にケーキを用意してくれて…」

    「ああ、あの風来坊は元気なようだね」
    エルヴィンは安心したよと笑った

    風来坊ことジャン・キルシュタインはキルシュタイン家の一人息子であり、マルコの義兄である

    突然転がり込んできた自分に、ジャンは気にした風もなく不器用な愛情を送ってくれた

    マルコは心の底から溢れ出る感謝の気持ちを隠そうともせずに、微笑んだ

    「ええ、元気じゃないと俺が困りますから」

    でも、とマルコは眉を顰める

    「ん?」

    ハンジはそんな彼に首を傾げた

    「この頃…様子が可笑しくて…この間も、王家への不満を隠そうともせずに外を出歩くものだから此方がオロオロしてしまいます」

    「はっはっは!!」

    「いや、笑い事じゃないぞ?ハンジ」

    大爆笑のハンジに、エルヴィンは一応指摘する
  49. 49 : : 2015/04/14(火) 00:07:25

    「でも確かに心配だね、護衛でも付けておこうか。王国軍に眼を付けられたら大変だ」

    ハンジの提案にマルコはお願いしますと頭を下げた

    それと同時にハンジの後ろで‘確かに’控えていた男が動いたのは言うまでもない













    「やあ、アニ、久し振り」

    ベルトルト・フーバーは名門、レオンハート家の門を叩いていた

    中庭の庭園で剣技を鍛える少女を見つけると、ベルトルトは優しさと少しの緊張とともに近付く

    「ああ、アンタか…」
    アニは虚ろな瞳で彼を迎えた

    レオンハート家、騎士貴族として王国内で名が知れているにも関わらず、前当主であるアニの父親が殺されたことから衰退化している

    アニは現当主として頑なに自分の家を護ろうとしているが、その行いが貴族の間でも煙たがられている

    「久し振りって、一週間前にも来たじゃないか…もうこの家には何もないってのに、物好きな奴だね」

    アニの棘のある物言いにすら、ベルトルトは笑みを崩さなかった

    ベルトルトとアニは親の仲が良好だったため、長い付き合いであった

    彼はアニの事を妹のように大切にしている

    「何もなくはないさ…君がいる」

    「それもいつまでかな…」
    アニの言葉にベルトルトは眉を顰めた

    「どういうことだい?」

    「私は近いうちに父親の仇を討つ」

    「!」
    ベルトルトは眼を見開いた

    「待ってくれ!君1人じゃ無理だ!」

    アニの父親は貴族の勢力争いから除外するために複数の貴族によって暗殺された

    そんな大勢力に、アニ1人で勝ち目があるわけない

    「辞めるんだ」

    「…辞めないね、私は騎士だ。自分の誇りの為に戦う」

    アニの強い瞳にベルトルトは気圧されそうになったが、必死に言葉を選び、首を振った

    「頼むから、もう少し待ってくれ…」

    「待つって何を?どんな貴族でも罰せられるような時代が来るとでも?私がどれほど講義しても王国軍はまったく動かなかったじゃないか」

    「…それは…」

    「絶対王政…あれのせいで貴族共は皆グルだ。奴等を倒すには、法も関係ない。物理的な攻撃しかないだろ」

    ベルトルトはアニの肩を掴むと、


    「僕が止めるから!」と叫んだ

  50. 50 : : 2015/04/14(火) 00:09:59

    目を見開くアニに、ベルトルトは訴える

    「僕が、変える。絶対に…君の無念を晴らしてやる。だから、もう少しだけ待ってくれ。アニ…頼むから、死にに行くような事はしないでくれ」

    まるで縋るかのようなベルトルトの声に思わずアニは彼の背中に腕を回したくなった

    アニも、ベルトルトを兄弟のように大切に思っている

    父親が死んだことで自分の家柄目的だった友人は殆ど自分に近付かなくなった

    他の貴族に眼を付けられるからだ

    今もアニと共に居てくれるのはミーナやベルトルト二人のみ

    まだ若いアニには厳しい現実である

    「…分かったよ、私は待つ。…でも、アンタがそれをして死んでしまったら私はアンタの仇を討つために動くよ?」

    「…あまり嬉しいことを言わないでくれ」

    ベルトルトの言葉に、アニは笑った











  51. 51 : : 2015/04/15(水) 22:45:49


    ジャン・キルシュタインはキルシュタイン家次期当主を約束された男である

    王族からの信用を勝ち取り、貴族の中でも上級に位置づけされた名門、キルシュタイン家

    誰もが憧れる立ち位置

    しかしジャンはそれに誇りなど感じたことが無かった

    弱いものから金や食料を貪り、何不自由なく生きる貴族の横暴と、絶対王政の元に行われる虐殺

    ジャンは貴族や王国軍全般に憤りを感じていた

    「ちっ、…胸糞悪い」

    自然に呟いてしまった言葉は誰にも受け止められることなくその場に響くだけかと思われたが、彼の後ろに完全に気配を絶っていた男が控えていた

    「言葉遣いがなってないな、ジャン君」

    優しい声でそう注意したのは背の高い男

    モブリット・バーナー、ゾエ家でなくハンジ・ゾエに忠誠を誓った元腕利きの暗殺者である

    現在は暗殺家業を辞めて、ハンジの執事兼ボディガードをしている

    今回はハンジの命令でジャンの警護だが

    ジャンはモブリットを睨むように見つめた
  52. 52 : : 2015/04/15(水) 22:48:53

    「…あのさ、なんなんだよアンタ…さっきから俺のうしろをウロウロウロウロ…」

    「さっきも俺は言ったぞ?ハンジ・ゾエの執事をしているモブリット・バーナーだと…彼女の命令で君の警護を任されている」

    「だ、か、ら、!なんで俺が警護されなくちゃいけないんだよ!」

    声を荒げるジャンにモブリットは貼り付けた笑みを浮かべた

    「思い当たらないかい?自分が警護される理由…」

    「…俺は何もしてない」

    ふいとジャンは視線を逸らした

    モブリットは溜め息に似たものを吐き出すと、仕方ないなと話し出した

    「君の義弟君が心配していたよ、君が王国に対して不信感を持っているとね…」

    「…っは、だから監視か?ご苦労な事だ」

    ジャンは心にも無い悪態をついた

    彼自身、分かっているのだ、マルコが自分を心配して、絶対の信頼を置くハンジ・ゾエに頼み込んだのだと

    「…マルコが何を言おうと…俺は…気に食わねえんだよ…」

    ぼそりと呟いた言葉は、空気にとけ込んだ

    と、次の瞬間にジャンは顔を上げた
    彼等が歩いているのは都会よりの町だ

    なぜかそこに王国軍の第二部隊、つまり貴族直属の命令で動く部隊が四列で並んでいた

    反射的にジャンとモブリットは影に隠れる

    「…こんな街中に…何してるんだ?」
    ジャンの質問にモブリットは応えた

    「…確か、もうすぐレオンハート家の処分が課せられる日取りだったね…」

    「処分?」

    ジャンは首を傾げた
  53. 53 : : 2015/04/15(水) 22:51:08

    「そう」
    モブリットは苦い顔をして語り出した

    「王族の寵愛を受けることが許されるスミス家やゾエ家とは違い、どんなに上級な貴族でも王族と顔を合わせることは叶わない」

    「…」

    「しかし、レオンハート家は一度だけ面会が許された。前当主は恐るべき剣技を認められ、スミス家の後押しでね…だが、それが不運だった」

    ジャンは王国の醜い嫉妬心を想像した

    「…権力争いにレオンハート家は一番排除すべき対象として狙われてしまったんだ。今はもうご息女が継いでいらっしゃるけど…それが貴族の逆鱗に触れた」

    ジャンは他人事ながら令嬢に同情を向けた

    「レオンハート家か…」

    「見に行くかい?」

    モブリットの言葉に、ジャンは無意識に頷いた














  54. 54 : : 2015/04/15(水) 22:56:40

    レオンハート家は薔薇に囲まれた城だった

    その庭で剣の訓練に勤しむ少女は神々しい金髪をなびかせ、汗が大量に出てもなお気にするこのなく剣を奮い続ける

    そこに可愛らしい令嬢などいない

    立派な志を持った騎士が居た

    ジャンは目を奪われる思いだった
    彼女に敗北の色など無い、そこにあるのは騎士としてのプライド

    「立派なもんですね」

    隣のモブリットがそう呟いた

    「…ああ」
    ジャンも素直に頷く

    これから王国軍が自分を処分しにやってくるとは知らずに彼女はどこまでも真っ直ぐに前を向いていた

    ジャンは歯がゆくなった

    こんな素晴らしい騎士がいるというのに、貴族の醜い嫉妬などで騎士としての彼女は呆気なく殺されてしまうのだ

    もし、彼女が貴族でなくなったら、あの容姿だし何処に売られるかも分からない

    薔薇園を覆う鉄格子は、ジャンと彼女の間を完璧に阻んでいた

    「…ちっ、」

    「ジャン君、あまり軽率な事は考えるんじゃないよ」

    モブリットの言葉はジャンの冷静さを欠いた

    「じゃあお前は!アイツを見殺しにするのか?理不尽にあの女は処分されるんだぞ!?王国軍の誇りもない、権力に屈する奴等によって!」

    「君はまだ子供だからそんなことが言える」

    彼の声はあくまでも淡々に…

    「権力に逆らえる人間は権力のある人間だけだ」

    「っ!」

    ジャンがなおも何か言おうとしたとき、モブリットは勢い良く彼の腕を引っ張り、身を屈ませる

    少女の所へ、遠慮も無しに王国軍第二部隊がやってきた

    『これよりレオンハート家は、キルシュタイン家によって引き込まれる事になる。よって君は貴族から迫害され奴隷の身分となる』

    少女は黙ったまま王国軍を睨み付けた

    『…三日の猶予をやろう。荷造りでも、キルシュタイン家に取り入るでもするがいい』

    王国軍はそう伝えると去って行った

    残される少女に、ジャンは眼を見開いたまま何も言えない

    そう、レオンハート家を排除したのは他でもないキルシュタイン家、つまりジャンの家なのだ

    「親父っ…!!」

    ジャンは苦虫を噛んだような顔をして憎々しげに自分の父親の顔を思い浮かべた

    そんな彼を横目にモブリットは空を見上げる 

    そこには美しい青空が広がっている

    「けれども世界は残酷なんだ…」

    彼の呟いた言葉は風に流されて消えた
  55. 55 : : 2015/04/15(水) 23:08:05

    モブリット・バーナーは暗殺者だった

    しかし、彼は自分の立場を忘れて一人の女性に忠誠を誓い暗殺者家業を辞めて彼女だけに仕えることを望んだ

    モブリットは彼女と最初に出逢った時の事を忘れはしない

    彼女は自分に刃を向けられてもなお、余裕の態度を崩さずに眼を閉じて、モブリットに話し掛けた

    「君も大変だね、こんな命の関わる事を職業とするなんて…ほら、暗殺者ってさ捕まったら死刑じゃん?私だったらそんな仕事辞めるよ」

    「…そりゃあ…貴族の方からしたらそうなんでしょうね…でも、俺達平民はこういう生き方しか出来ない。男娼にでも堕ちろって言うんですか」

    「まさか、それは君が選んだ選択なんだろ?責めないし説教じみたこともする気はない」

    彼女は続けた

    「君の生き方は君が選択し、君が受け入れる運命なんだ。それで君が泣こうが喚こうが君の責任、私が関与するべきことではないよ」

    モブリットはハンジが何を言いたいのか分からない

    しかし、ハンジが言葉通りに自分の運命を受け入れる体制に入っているのが分かった

    「…貴方は抵抗しないんですか?」

    「私はただ受け入れるだけさ」

    片目を瞑り、ニコリと微笑む

    「俺は躊躇いなく殺しますよ?」

    何を今更とモブリットは自嘲する

    言葉ではそう伝えても、念押ししてしまう自分はハンジを殺すことに躊躇いがある証拠ではないか

    しかしハンジは追求せず

    「仕方ないさ、この世界は理不尽で残酷で…それでも、それでもね」



    確かに、美しいのだよ








  56. 56 : : 2015/04/16(木) 23:47:27



    美しいけれども残酷な世界



    ハンジは世界をそう捕らえる

    これは彼女の口癖であり、暗示に近い

    かのミカサ・アッカーマンならば残酷だけれど美しいと言い換えるだろうがハンジは違う

    やはりこの世界は理不尽で残酷なのだと評する

    「そう思わないかい?エルヴィン」

    ハンジは目の前の男にそう語り掛けた

    先程まで茶会をしていたせいかマルコは自分の講義に慌てて飛んでいき、残された二人は茶菓子を摘まんでいた

    エルヴィンは笑みを崩さずに首を傾げる

    「何がかね?」

    「ジャン君の事だよ。だってさ、どれだけ反抗をしても、どれだけ吼えようとも、絶対王政は揺らがない」

    ハンジは続ける

    「そんなのは子供だって分かる事さ」

    眼鏡の奥で光る瞳は何を見据えているのか

    「貧しい子供だってその環境に適応するための術を身につけている、例えそれが奴隷でも、盗人でもどんなことだろうとも目の前の現状に適応しているのさ」

    「…」

    「なのに全てを与えられた貴族であるジャン・キルシュタインという男はただただ犬のように届かない月に吼えるだけ…なんて愚かな事なんだろうね」

    ハンジは茶菓子の一つを摘まむと口内へと放り込んだ

    「…レオンハート家の娘さんも上手く適応して生き延びる事ができると良いけど…」

    まるで他人事、他人事には違いないのだが、ハンジの言葉には同情の色が無かった

    それにエルヴィンは笑む

    「君ほど、自分の立場に適応している人間はいないだろうね、ハンジ」

    「そう?」
    ハンジはぐぐっと背筋を伸ばした

    そんな二人に近付くのは漆黒の騎士
    無愛想な顔の彼はエルヴィンの後ろからぬらりと姿を表した

    人類最強、リヴァイ・アッカーマン

    「さて、リヴァイ…反乱軍の虫を見つけようか」

    エルヴィンの言葉にリヴァイは溜息を吐き出した、まるで面倒とでも言うように

    「…候補は見つけた。それと…反乱分子もな」

    リヴァイの淡々とした声音にハンジは立ち上がり、自分の領分では無いとその場を立ち去った

    エルヴィンもまた立ち上がる


    「さて、害虫駆除の時間だ」


  57. 57 : : 2015/04/16(木) 23:53:23

    ある日の夜にライナー・ブラウンは街中のパトロールをしていた

    根から真面目な彼は軍服を乱すことなく身につけ、服越しでも分かる鍛え抜かれた身体を隠すようにマントを羽織っていた

    「…」
    先日のベルトルトの宣言からライナーはある一つの悩みを抱えている

    それは自分に力がない事である

    友人の決意した行いは一種の自殺行為だ

    もしエルヴィン・スミスを抱き込むことが出来なければ彼はなんの躊躇いもなく自分の足で王の目の前に行き、絶対王政を終わらせる要求をするのだろう

    それは大きな罪

    そうならないためにも、ライナーには権力が必要だった

    いざという時にベルトルトの助けになる力

    「……出世、か」

    彼は考えたことも無かっただろう
    ライナー自身、自分の信念と力で目の前にある理不尽から大切な民を救う事が全てだった

    それは今も、昔も、これからも、

    そして、そのためになら、ライナーは出世をする努力を怠らない

    「……だが、出世に何年かかるかな…」

    彼はぼやいた

    子供のような顔をして、途方に暮れる

    そんな正義の名の下に動く彼に、悪魔の声は降りかかる



    「お前がライナー・ブラウンだな」



    無機質な声と冷たい空気
    ライナーが振り返るとリヴァイ・アッカーマンの姿があった

    彼が動くのはエルヴィン・スミスかそれと同等の上級貴族の命令でだけだ

    「…なっ」
    ライナーは後退る

    「お前に、二つの選択肢を与えよう」

    二つの選択肢にライナーの瞳は揺れた

    「…一つ、反乱分子としてベルトルト・フーバーとミカサ・アッカーマンの二人とともに俺に斬られるか…」

    ドキリと心臓が揺れる

    「それとも、絶対王政に従い、俺の監視下に入るか…だが、この後者の選択はお前にとって有利に事が運ぶと思うぞ」

    「なに?」

    「俺の監視下ということは、俺の直属の部下になるということだ」

    ライナーは自分の鼓動が大きくなるのを感じた

    「…お前は大抵の物事を自分の思うままに動かせるようになる。条件はあるがな」

    「…条件?」

    「…そうだ」
    悪魔は続ける

    二者択一の審判を授けるために

    「お前の親友であるベルトルト・フーバーを貴族殺しに仕立て上げて…処分しろ」


    悪魔の言葉は蜜より甘く、

    何よりもおぞしい

  58. 58 : : 2015/04/16(木) 23:54:41

    「ただし、お前がその貴族を殺すんだ」

    リヴァイの言葉にライナーはぐっと拳を握った

    「…アニ・レオンハートを殺せ」







  59. 59 : : 2015/04/17(金) 21:26:11


    「ライナー、おかえり」

    城に帰ると、ベルトルトが穏やかな顔をして出迎えた

    彼の表情には暗い影が見え隠れする

    それにライナーは目を細めた

    「どうした?」
    彼の問いにベルトルトは小さく語り出す

    「悪いけど…僕は王に直接要求することになるかもしれない…、スミス家と交渉する時間が無くなった」

    「どういうことだ?」

    「レオンハート家が処分される」

    レオンハート家、その言葉にライナーは目を見開くとベルトルトの表情にある暗い影の正体を悟った

    「…アニ・レオンハートを助けたいのか」

    「ああ…レオンハート家はスミス家の後押しで一度だけ王の寵愛を受けたことがある。王に言えば情けを掛けられる可能性が高いからね」

    「…」

    「三日しかないんだ…」

    俯く彼の姿に、ライナーは胸を痛めた

    「…ベルトルト…」

    ライナーの頭にリヴァイの声が響く

    このままベルトルトが王に直接要求することになれば彼は処刑される

    何十年も共に肩を並べた親友が死ぬのだ

    「ベルトルト…」

    ライナーは一歩を踏み出した

    ベルトルトは顔を上げる


    「…悪い…」


    苦痛を滲ませたライナーの顔にベルトルトは目を見開くと彼がその言葉を追求する前にライナーは背中を見せた

    「お前はこれから、死ぬよりも辛い目に遭うことになるかもしれねえ…だが約束する。お前は絶対に死なせない…」

    「ライナー…?」

    「俺は俺の為に動く」

    そう言うと、彼の恐ろしくも逞しい姿は闇に消えた











    「…エレン?…アルミン?」

    ミカサは目の前の状況に目を白黒させた

    彼女らしくなく取り乱し、イェーガー家の為にもうけられた部屋を見渡して机の上にある手紙とグリシャの姿を見つめる

    グリシャは目を伏せて呟いた

    「ミカサ、エレンとアルミンは帰ってこない」

    「…な…、ぜ?」

    ミカサは縋るような勢いでグリシャに近付いた

    「どうしても、だ」

    彼は理由を言わない

    それがミカサに一層の不安を与えた

    「私は…また、独り?」

    彼女の呟きに耐えきれず、グリシャは彼女の頼り無い身体を抱き締めて愛しい子に愛を囁くように優しく言った


    「ミカサ…大丈夫だ…どんな運命が待っていようともお前とエレンは家族だ」



    少しずつ、少しずつ、絶望は広がる

  60. 60 : : 2015/04/17(金) 21:29:23


    アニ・レオンハートはメイドのミーナに腕を引かれ、暗い夜道を走り続けていた

    ミーナは彼女の腕を絶対に離すまいと力を入れる

    自分の敬愛する主君の娘、そして無二の親友であるアニは今、三日という猶予を与えられたとは言え騎士の誇りを捨てて奴隷にされようとしている

    それをミーナが許せるわけながなかった

    彼女達の逃避行が金髪の悪魔の手のひらの上であるにも気付かず…走り続ける




    彼女達の目の前に現れたのは鬼

    悪魔に魂を売った男の姿




    「アニ・レオンハート…だな」



    彼はそう呟く












    そして、悪夢が始まる












    「貴族殺し!ベルトルト・フーバーを処分せよ」







  61. 61 : : 2015/04/18(土) 18:47:28


















  62. 62 : : 2015/04/18(土) 18:48:35

    【第三話】娼婦の日常










    「おーい、ベルトルさん」



    そう呼ばれ、頬を軽くペチペチと拍手をするかのように叩かれ、ベルトルトは目覚ました。

    うっすらと目を開ければ、キツい目付きをした女性の顔がすぐそこにあった。


    「うわあ!」と情けない声を出し、ベルトルトは後ろに倒れた。

    そんなベルトルトを見て、女性はケラケラと乾いた声で笑う。


    「立ったまま寝るとは器用だな、ベルトルさん」


    そう言われて、自分は立ったまま寝ていたことに気付く。

    しかしそんなことよりも、倒れた拍子に尻餅をついてしまい、鈍い痛みにベルトルトは顔を歪ませる。
  63. 63 : : 2015/04/18(土) 18:49:22


    「ユミル!驚いたじゃないか……」


    ベルトルトはそう言いながら打ち付けたところをスリスリと擦る。

    そして「痛たた……」と呻き声をあげる。ユミルはまだ笑っている。


    「そんなに笑わないでよ」

    「だって、立ったまま眠るなんて有り得ないだろ……、しかも、尻餅つくし」


    やっとの思いでユミルの笑いがおさまると、ベルトルトは立ち上がる。

    そしてまた打ち付けたところを擦る。

    ベッドを見れば、まるで今まで誰も使ったことのないような真新しい状態になっていた。

    シーツのシワもなく、布団は綺麗に畳まれている。


    「ご飯にしよっか……」

    「ああ……」


    二人は寝室から出た。
  64. 64 : : 2015/04/19(日) 17:19:00


    朝食を食べ終えると、


    「んじゃベルトルさん、世話になったな。縁があったらまた……」


    と言って去ろうとした。そんなユミルをベルトルトは引き留めた。

    「ユミル、一緒にここに住まない?」

    「は?」

    「君はまた今回みたいなことを繰り返すのだろう?寝床がないのは不便だろうし、君も利用するといいよ」


    「あんたにそこまで世話はかけられねぇ……」


    「君がどうしても嫌だというなら良いけども」




    「…………わかったよ」



    諦めたようにユミルがそう言うと、ベルトルトはニッコリと嬉しそうに笑った。
  65. 65 : : 2015/04/19(日) 17:19:33





    「今日は何処かへ行くの?仕事でもしてくるのかい?」

    「まあ、仕事じゃないが用事があってな……」

    「そう、気をつけてね」


    ユミルは廃屋から出る。

    ベルトルトと暮らしてもう一週間近くは経つ。自分の居場所があることにユミルは馴染めずにいる。


    「私なんかに居場所ができちまうとはな……、ははっ」


    独り言をそう呟くとユミルは歩き出した。

    少し柄の悪い繁華街へと出る。横目でチラチラと周りを見る。


    昼間から甘ったるい声で客をひこうとしている娼婦。

    金目のものがないかと辺りを見回し、スキあらば人から物を盗もうかと企む盗人。

    柄の悪い繁華街には相応しくない、都市の商人が奴隷を連れ歩く。

    麻薬なんかに手を染め、泥酔状態で通路の脇に座り込む者。

    煙管なんかを吸い上等そうな面であるく女。

    そして柄の悪い繁華街何かに最も似合わぬ、王国軍の軍服を身に纏う目付きの悪い男。
  66. 66 : : 2015/04/19(日) 17:20:12
    軍服を着た男に見覚えがあった。

    男は堂々と不機嫌そうな顔でユミルの脇を通った。


    しばらく歩くと繁華街を抜ける。

    あの柄の悪い繁華街に来たことのないものにはわからないだろうが、最初の頃は息がつまるようなものだ。

    しかしユミルはとうに慣れきった。きっとベルトルトも。

    太陽の下では歩くことができない。

    許されないのだ。

    ユミル達は影となり、夜空の暗闇の下しか歩けない。


    繁華街を抜ければ、ひたすら田畑やこじんまりとした農家がある。

    視界が開け、久しぶりに新鮮な空気を吸ったような気がした。
  67. 67 : : 2015/04/26(日) 13:06:38
    さらにしばらく歩くと、他の建物に比べて少し高い建物がある。

    建物の天辺には十字架があり、それがその建物の象徴的なものに見える。

    どんどん近付くと人影が見える。

    すると、



    「ユミル!」



    そう呼ばれた。

    ユミルは自然と微笑む。

    いつもならつりあがっている目は緩くなり、あまり上がることのない口角は上がっている。

    その人物はユミルの方へと駆けてくる。まるで母親を求める幼き動物のように。



    「久しぶりね…!ユミル」


    その人物はそう言ってユミルに抱きついた。その人物の背にユミルは手を回す。
  68. 68 : : 2015/04/26(日) 13:07:39


    「久しぶりだな、クリスタ。元気でやってたか?」

    「ええ、ユミルは元気にしてた?」

    「まあぼちぼちな……」

    「それにしてもユミルに会えて良かった…、きっとこれも神様の導きだわ……!」


    ユミルに抱きついてきたの人物であるクリスタは、透き通る青い瞳をキラキラとさせる。

    金糸のようにまばゆい髪、透き通る青い瞳、彼女の容姿はまるで〝天使〟のようである。


    十字架がある建物は教会で、クリスタはこの教会の修道女(シスター)である。

    くるぶしまであるローブみたいなトゥニカを着て、ベール状になっているウィンプルを被っている。

    そして首から十字架のあるロザリオをかけている。

    クリスタはユミルから離れると、神々しい笑みを浮かべた。
  69. 69 : : 2015/04/26(日) 13:08:53



    「ユミルは今、どんな仕事をしてるの?」


    不意にそんなことを訊かれた。

    二人の間に僅かな沈黙が訪れたが、すぐさまユミルは口を開く。


    「知り合いの飲み屋で働いているんだ」

    「へえ!その知り合いって?」

    「…………友達だよ」


    「ユミルにも友達が出来たのね!今度紹介してね!」



    「…………ああ、今度な」



    ユミルに友達が出来たことをまるで自分のことのように喜ぶクリスタは、天使のような人物だと言える。

    困っている者を見つければ助けるし、

    みんなに平等に接するし、

    その人の為に怒ったり、泣いたり、笑ったりする。
  70. 70 : : 2015/04/27(月) 13:05:44
    ユミルにとってたったひとりの友人で、自分自身が心を開くことのできるのはクリスタだけ。

    勿論、ユミルはクリスタの為なら、命を投げ打つこともできる。

    無論、クリスタはそんなことを決して許しはしないのだろうが。

    しかし、クリスタもユミルの為ならそうするだろう。

    それほど二人の繋がりは深い。


    ユミルがクリスタに本当の仕事である〝娼婦〟を打ち明けなかったのはクリスタが心配するからだ。

    元々、クリスタと同様に修道女だったユミルは、修道女であること、神に仕えることが酷く窮屈であった。

    まるで硬く破れぬ鎧でもきているかのように感じられた。

    そして修道女であることをやめ、娼婦になった。

    娼婦何ていうのものをやっている何て言ったらクリスタはどんな反応をするだろうか。

    きっとユミルの為に怒るだろう。そして涙を流すに違いない。

    最終的には「ごめんね……」と涙を流し嗚咽しながらユミルの頭を撫でたりするのだろう。

    そんなクリスタの優しさに、ユミルは甘えたくなかった。

    クリスタの重荷になりたくはない。クリスタの人生を自分のせいで縛り付けたくはない。
  71. 71 : : 2015/04/27(月) 13:06:20



    「──ねえ、ユミル。聞いてる?」


    クリスタの声が聞こえる。


    「何だ、クリスタ」

    「もう!聞いてなかったのね」

    「悪い悪い…………、ぼーっとしてた」

    「具合でも悪いの?大丈夫?ユミルがぼーっとするなんて珍しい……」


    「大丈夫だけど、珍しいか?」


    「うん!ユミルが修道女だった頃は常に神経を研ぎ澄ませていたもの!夜はあまり眠らなかったし、些細な音とかも聞きのがさないだもん!」


    クリスタはまるでユミルが異国の〝忍者〟であるかのように話す。

    その表情は何とも幼く愛くるしい表情。
  72. 72 : : 2015/04/27(月) 13:07:15


    「そうだったか?」

    「うん!あ、でも──」

    「でも?」


    「何事にも慎重なのに、シスターの部屋に忍び込んで食べ物を盗むのは、毎回見つかってたよね。そういうところは、ユミルはそそっかしいよね」


    ふふふと楽しそうに笑うクリスタに、ユミルは「そうか!」と言って頭をポリポリとかいた。

    こんな他愛もない話をして、笑って……



    そんな日々が続けばいいにに…………。


    少なからず願ってしまう。

    太陽の下で生きるクリスタと、夜空の下で生きるユミル。正反対な二人。

    もう後戻りはできない。

    クリスタの隣にいることはできない。

    そう思うとユミルは修道女でいれば良かった、と後悔もする。
  73. 73 : : 2015/04/28(火) 18:49:01



    「あ!教会のお掃除しなくちゃ!」



    クリスタは思い出したかのように大きな声でそう言う。


    「私もそろそろ帰らなくちゃな……」

    「うう……、ユミルと久しぶりに会ったのに…………。また今度来てね!………………そうだ!」

    「ん?」


    「ユミルにこれをあげる!」


    そう言って渡されたのは綺麗なリボンでキュッと結ばれた袋。

    中に何がはいっているのだろうかとユミルは開けようとするが、クリスタが


    「それはねクッキーなの。お腹空いている子にあげようと思ったのだけどいないみたいだから、お友達と食べてね!」



    ユミルは驚いたように袋を見る。


    目がじんわりとする。


    今にでも大きな雫が溢れそうで、ユミルは下唇をギュッと噛む。

    血が滲む……。



    嘘をついている自分に嫌気がさして、


    クリスタに嘘をつく自分がいることに情けなくて、


    そんな自分に優しく振る舞うクリスタを見て、


    その優しさに触れ、涙が溢れそうだ。
  74. 74 : : 2015/04/28(火) 18:50:03




    「ユミル?」



    彼女の、クリスタの声が自分の名前を呼んでいる。

    泣きそうなところを抑え、ユミルは口角と顔を上げてクリスタを見る。



    「ありがとよ、クリスタ」



    ユミルはそう言ってクリスタの頭をポンポンと優しく叩く。

    クリスタはふふふ、と嬉しそうに笑う。


    隣にいたい、そう強く思ってもやはり太陽の下は歩けない。

    けれど影となり近くで見ていよう。

    そうユミルは思った。



    「じゃあな、クリスタ。また来るよ」

    「今度はお友達を紹介してね!」



    「あぁ……」


    ユミルはクリスタに背を向け歩き出す。








    「しばらくはさよならだ、クリスタ」



    ユミルの呟きはクリスタには聞こえなかっただろう。
  75. 75 : : 2015/05/24(日) 16:44:35









    〝家〟となった場所にユミルは戻ると、驚いたことにベルトルト以外の人物がいた。

    ソファーにドカリと座る馬面で少し人相の悪い男と、その男を少し睨むような目付きの金髪の小柄な女。

    二人はユミルを訝しげに見た。


    「あんた、誰だ?」


    不機嫌そうな声で男は言う。

    それはこっちの台詞だ、とユミルは言いたいところだったが、


    「お前らはベルトルさんの知人、か?」


    「知人……、まあそんなもんだね」

    「あんたはもしかして、ベルトルトの女なのか?」

    「いや……、女ではない。てか、顔赤らめて言うなよ、気持ち悪い」


    〝ベルトルトの女〟と言うときに男は少し顔を赤らめた。

    そういうのに敏感ということは、もしかしたらユミルより年下なのかもしれない。


    「それよりベルトルさんは……?」
  76. 76 : : 2015/05/24(日) 16:45:40

    「俺らもベルトルトを待っているわけ、だ」

    「そうか」


    女は見た目からしての通り無口なようで、あまり話さない。

    男はユミルに敵意を向ける様子は口調からしてさらさらないようだ。

    だがもともとのせいか、少し相手を苛つかせる感じがした。

    しばらくの間沈黙が続くが、男が舌打ちをしたことに破られた。


    「ベルトルトの奴、どこ行ったんだよ」

    「いきなり私らが来て都合良くベルトルトがいるわけないだろ?あんたはもう少し温厚になったらどうだい?」


    「…..…..悪いな、沸点が低くてよ。あんたは知らないのか?ベルトルトがどこにいるのか」


    「いいや、知らねえよ」

    「そうかよ」
  77. 77 : : 2015/05/24(日) 16:46:32



    適当に待っていてもベルトルトは中々帰って来ない。

    ついに帰ってきたのは夕方頃。

    男はソファーから勢いよく立ち上がった。


    「───ただいま。ってジャンにアニじゃないか。久しぶりだね」


    「久しぶりだね、じゃねえよ!遅すぎるだろ、お前」

    「来るとは思ってなかったからね。ほら、五年ぶりくらいだろ?」

    「…………まあいい」


    面倒になったのか男は溜め息をついた。

    どうやら本当に知人らしい。それも五年前という昔からの。


    「ここに来た理由は追々話すけれど。あんたが誰かをここに住まわしてるとは意外だね」

    「そうかな?」


    「ああ。人との関わりを避けていたじゃないか、あの時から。随分と変わったね……、あんたは──」




    「それ以上ここで話すのは野暮でしかないよ」



    ベルトルトは話を途中で遮った。

    これがユミルとベルトルトの距離だ。



    埋まるにはまだ時間がかかる。
  78. 78 : : 2015/05/26(火) 18:38:54
    待ってましたああああ!
  79. 79 : : 2020/10/27(火) 10:10:36
    http://www.ssnote.net/users/homo
    ↑害悪登録ユーザー・提督のアカウント⚠️

    http://www.ssnote.net/groups/2536/archives/8
    ↑⚠️神威団・恋中騒動⚠️
    ⚠️提督とみかぱん謝罪⚠️

    ⚠️害悪登録ユーザー提督・にゃる・墓場⚠️
    ⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️
    10 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:30:50 このユーザーのレスのみ表示する
    みかぱん氏に代わり私が謝罪させていただきます
    今回は誠にすみませんでした。


    13 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:59:46 このユーザーのレスのみ表示する
    >>12
    みかぱん氏がしくんだことに対しての謝罪でしたので
    現在みかぱん氏は謹慎中であり、代わりに謝罪をさせていただきました

    私自身の謝罪を忘れていました。すいません

    改めまして、今回は多大なるご迷惑をおかけし、誠にすみませんでした。
    今回の事に対し、カムイ団を解散したのも貴方への謝罪を含めてです
    あなたの心に深い傷を負わせてしまった事、本当にすみませんでした
    SS活動、頑張ってください。応援できるという立場ではございませんが、貴方のSSを陰ながら応援しています
    本当に今回はすみませんでした。




    ⚠️提督のサブ垢・墓場⚠️

    http://www.ssnote.net/users/taiyouakiyosi

    ⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️

    56 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:53:40 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ごめんなさい。


    58 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:54:10 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ずっとここ見てました。
    怖くて怖くてたまらないんです。


    61 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:55:00 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    今までにしたことは謝りますし、近々このサイトからも消える予定なんです。
    お願いです、やめてください。


    65 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:56:26 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    元はといえば私の責任なんです。
    お願いです、許してください


    67 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    アカウントは消します。サブ垢もです。
    もう金輪際このサイトには関わりませんし、貴方に対しても何もいたしません。
    どうかお許しください…


    68 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:42 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    これは嘘じゃないです。
    本当にお願いします…



    79 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:01:54 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ホントにやめてください…お願いします…


    85 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:04:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    それに関しては本当に申し訳ありません。
    若気の至りで、謎の万能感がそのころにはあったんです。
    お願いですから今回だけはお慈悲をください


    89 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:05:34 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    もう二度としませんから…
    お願いです、許してください…

    5 : 墓場 : 2018/12/02(日) 10:28:43 このユーザーのレスのみ表示する
    ストレス発散とは言え、他ユーザーを巻き込みストレス発散に利用したこと、それに加えて荒らしをしてしまったこと、皆様にご迷惑をおかけししたことを謝罪します。
    本当に申し訳ございませんでした。
    元はと言えば、私が方々に火種を撒き散らしたのが原因であり、自制の効かない状態であったのは否定できません。
    私としましては、今後このようなことがないようにアカウントを消し、そのままこのnoteを去ろうと思います。
    今までご迷惑をおかけした皆様、改めまして誠に申し訳ございませんでした。

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chihiro

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