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Eine kleine Nacht Musik  ※マルミカ

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  1. 1 : : 2014/12/28(日) 19:58:32
    書き溜めグループで少し溜めたものを投稿します。新たなCPにばかり挑戦していますが、よろしくお願いします

    Eine Kleine Nacht Musik(アイネクライネナハトムジーク) の意味は、小さな夜の曲という意味があります。モーツァルトさんが作曲した曲の名前でもあります。ドイツ語です。

    目線がたまに変わることがあるかもしれないですが、察してやってください。


    感想コメントありがとうございます。読みにくいかなと思うので、非表示にさせていただきます。
  2. 2 : : 2014/12/28(日) 19:59:24



    僕はこんなところで死ぬわけにはいかない…





    君をもう一度見たかった。


    君ともうしばらく一緒にいたかった。


    だけど僕は弱いから、今ここで死んでしまう


    それでも、君には僕のことを忘れないで欲しい


    楽しい時をくれて…




    ありがとう


  3. 3 : : 2014/12/28(日) 20:01:31
    月に三回程、訓練兵には休日が与えられていた。

    休日の日は町へ行くのも良いし、部屋で寛ぐのも良いわけである。

    しかし、今日は寒く雨が降っている為、町へ出かける者が少ない。



    マルコ「僕は出かけるけどジャンはどうするんだ?」

    ジャン「眠いから寝てる…」

    マルコ「そう、じゃあ行ってくるね」

    ジャン「おう…」

    マルコはそう言って、部屋から出て行った。

    休みの日と言えば、マルコは大抵本屋へと足を運んだ。

    気に入った本を買って満足したら、いつも喫茶店へと行き、珈琲や紅茶を飲みながら、その本をゆっくりと読む。

    ジャンがいる時は、ジャンの買い物に付き添って、部屋に帰ってからその本を読む。

    それがマルコにとっては決まりのような、そんなものであった。


    今日もマルコは本屋へと足を運んだ。

    お薦めの本はいつもお会計をするカウンターに置かれている。

    マルコはチラリと見るが、興味深い本はない。

    奥の方へと行くと、恋愛小説、官能小説、伝記が置かれている。

    マルコはその中から興味深いものを見つけた。


    『東洋のお伽噺』


    それに目が行った。

    東洋とは壁の外の場所らしいのだが、東洋人の血が入り交じる人はごく僅かにいる。

    例えばミカサ、とか。

    そして、その者達は人身売買をされたりと酷い目に遭う。

    それに遭わない為にも森でひっそりと暮らしていると、祖母から聞いたことがあった。
  4. 5 : : 2014/12/28(日) 20:02:50
    僕はその本を手に取った。

    表紙には、黒髪の東洋の顔立ちをしている少女が本を持って涙を流している。

    どこかミカサに似ていると思った。

    目次を見れば、『かぐや姫』『白雪姫』『シンデレラ』と数々の物語がある。

    マルコはそれを買うことにした。

    お会計を済まそうと思い、お会計のカウンターへと向かう。


    「マルコ、じゃないか?」

    そう呼ばれ、マルコはクルリと振り返った。

    振り返った先にはアルミンにエレン、それからミカサがいた。

    マルコ「やあ、三人とも。ここで会うとは偶然だね」

    アルミン「本当にそうだね、マルコも本を買いに来たの?」

    マルコ「うん、アルミンも?」

    アルミン「うん、そうだよ。マルコは欲しい本、決まった?」

    そう言われたのでマルコはアルミンに本を渡した。

    マルコ「東洋のお伽噺なんだって」

    アルミン「へえ!興味深いものだね、今度貸してよ!」

    マルコ「いいよ」

    そう言うと、アルミンは目をキラキラと輝かせ嬉しそうにする。

    アルミン「本買ったあと、何が用事でもある?ないなら、一緒にお昼でもしないかい?」

    マルコ「…そうだね、僕もそうするよ。エレンとミカサはいいのかい?」

    エレン「おう、大勢で食べた方が楽しいしな」

    ミカサ「私も別に構わない」

    マルコ「ありがとう」

    アルミンが本を選んでいる間、マルコはお会計を済ませた。

    本を開きペラペラと捲ると、新しい本の良い匂いがした。
  5. 7 : : 2014/12/28(日) 21:44:33
    エレン「なあ、マルコ」

    エレンが話しかけてきたので、マルコは本から目を離した。

    マルコ「何だい?」



    エレン「俺も本、読んだ方がいいのか?」


    エレンが珍しいことを言ったので、マルコは驚く。

    普段、読書などの以前の問題に座学ですら寝てしまうエレンにとっては〝本を読む〟というものは辛いだろう。

    しかし、何故エレンは本を読もうと思い立ったのか、マルコは不思議に思った。

    マルコ「エレンは何故、本を読もうと思い立ったの?」

    エレン「いや、ミカサは強いしまあ頭もそれなりだ、アルミンは頭良いだろ?何かしらの知識を持っていて損はないと思うんだよな…」


    意外にしっかりとした理由でマルコは安心というよりは感心した。

    マルコはエレンに暖かな微笑みを向ける。

    マルコ「いいと思うよ、知識を持っていて損はないし、それが何かの役に立つこともあるしね」

    マルコがそう言うとエレンは嬉しそうな顔をした。

    元気で明るく、快活な笑みであった。
  6. 11 : : 2014/12/29(月) 16:40:58
    エレン「俺あんまり本はよくわからねえんだけど、マルコのお薦めを教えてもらえないか?」

    マルコ「うん、いいよ。エレンはどういうことに興味あるのかな?」

    マルコがそうきくとエレンは悩むような表情をする。

    エレン「読みやすいのとかないか?」

    マルコ「そうだね…、ちょっと待ってて!何冊か持ってくるから」

    マルコはそう言うと、店内の奥の方へと向か
    う。


    手前から、『ウォールローゼの歴史』などの歴史の本が置いてある。

    これはエレンは読まないだろうと思い、マルコはさらに奥へと向かう。

    すると黒髪で赤いマフラーをしている女性を見つけた。

    マルコ「ミカサじゃないか、何を読んでいるの?」

    ミカサは何かを熱中して読んでいた。

    マルコが近づいてくるのに気づかないほどに。

    ミカサ「…手芸の本」

    マルコ「手芸かー、もうすぐで冬だもんね。何を作るの?」

    ミカサ「…マフラー、エレンの為に編むの」

    ミカサは少し恥ずかしそうにして言った。

    マルコは初々しいと思い、自身の顔がほころぶのを感じた。

    マルコ「ミカサは器用そうだからね」

    ミカサ「ありがとう」

    微笑んだミカサはいつもの凛々しさではなく、愛らしいとマルコは思った。

    そして少し、エレンが羨ましいと思った。
  7. 14 : : 2014/12/29(月) 21:46:45
    エレンが読みやすい本とは一体何なのだろうと、マルコは頭に思い浮かべた。

    難しい本や、言葉の言い回しを理解するのは、やはり無理がある。

    そうなると、やはり誰でも気軽に読めるものが良いだろう。

    すると、マルコは自分が初めて読んだ本を思い出した。




    マルコが本を初めて読んだのは、五歳頃のこと。

    祖父の部屋へと勝手に入り、適当にとり読んでいた。

    それがバレ、怒られると思ったマルコであったが、ポンと祖父の手が置かれたのを覚えている。

    祖父はマルコの持っていた本を取り、別の本を渡した。

    そして、

    「この本の内容全てを理解したら、私の部屋の本を好きなだけ読むといい」

    そう言って祖父はニカッと笑った。

    マルコはわからない言葉は父親や祖母に聞いたりとして、本の内容を完璧に理解するのに半年かかった。

    祖父にそのことを報告すると、祖父はマルコの頭の上に祖父の手を置き、撫でた。

    「マルコ、お前はすごいよ。五歳でこの本の内容を理解するのは容易いことではない。よくやった」

    祖父は嬉しそうにしていた。

    「私の部屋の本を好きなだけ読むといい」


    祖父からもらった本、それは少年と、お婆さんの話であった。

    心を失った少年は、新聞記者になった。そして、貴族であるお婆さんに取材に行く。

    少年は、温もりを知らなかった。愛を知らなかった。

    お婆さんは、そんな少年の心に触れる。冷たい心を包んでくれる。

    少年は心を取り戻す、そんな話であった。



    五歳のマルコと、十四歳のエレン。

    初めて本を読んだのが五歳のマルコ、初めて本を読むのが十四歳のエレン。

    スタート地点に大差はない。

    少し、エレンの方が大人なだけ。

    マルコはとある本を取り、エレンの下へと戻った。
  8. 15 : : 2014/12/29(月) 21:57:20

    マルコ「エレン、待たせてしまってすまないね」

    エレン「いやいや、俺が頼んだ訳だからな!」

    マルコは早速見つけた本をエレンに差し出す。

    エレンは驚いて目を見開いた。

    エレン「俺にこんな分厚い本は読めねえよ!流石に無理がある」

    そう言うと思っていたかのように、マルコは満面の笑みを浮かべた。

    マルコにはわかっていた、エレンがこんな反応をするのではないか、と。

    しかし、マルコは知っていた。

    真面目にコツコツ積み上げる人間は、目標があるとより熱心になることを。


    マルコ「この本はね、僕が初めて読んだ本のあとに読んだ本なんだ」

    マルコがそう言うと、エレンはまだ驚いた表情を浮かべていた。

    エレン「そりゃ、マルコならこんな本は余裕だろうけど、よ」

    マルコ「この本を読んだ頃、僕は五歳だった…」

    思い深げにマルコは差し出した本を見る。
  9. 16 : : 2014/12/30(火) 07:17:42
    マルコ「立体機動や対人格闘、それはどうやって上手くなったのかな?僕たち」

    エレン「そ、そりゃ、訓練を積んで上手くなったんだよ」

    マルコ「訓練は何度も、何十回もやった。これは〝慣れる〟というものに等しい」

    エレン「それがどうしたんだよ?」

    マルコがこれから言う言葉にエレンはわからないでいた。

    マルコがここまで持ってきて、何を言うか、予測もつかないでいた。



    マルコ「本も慣れなんだよ」


    マルコはこの言葉を言いたかったのだ。

    驚いたような表情をするエレンにマルコは微笑んだ。

    マルコ「五歳の頃、僕はこの難しい本を読んで、その後の難しい本も楽に読めてきた。活字に慣れるのは、まず難しい本から読むことだよ」

    エレンはあまりマルコの言っている事がわからなかったが、マルコが何を言いたいのはわかった。

    せっかく選んでくれた本なのだから、こんなにも一生懸命に考えてくれたのだから、

    そういうマルコの気持ちを無下にはしたくなかったエレンは、マルコに笑顔を見せた。

    エレン「わかった、俺も挑戦してみるよ!」

    マルコ「うん…!」
  10. 17 : : 2014/12/30(火) 11:03:02
    マルコ「わからない言葉があったら、聞いてね!」

    マルコがそう言うと、エレンは大きく頷いた。

    エレン「じゃあ、お会計してくるわ、俺」

    カウンターへ向かったエレンの背を見て、マルコは懐かしく思った。

    きっと、五歳の時の自分はああだったのだろうと。



    アルミン「ごめんね、待ったせちゃって」

    思いに更けていた為、不意にアルミンに声をかけられ、肩がビクッとする。

    マルコ「いや、待ってないよ」

    そう言うと、アルミンは良かったとふんわりと笑った。

    アルミンの容姿は小柄でまるで女の子のように見える。

    可愛らしく見える。
  11. 18 : : 2014/12/30(火) 12:14:59
    アルミン「そういえば、エレンは?」

    そう言ってアルミンはぐるりと周りを見回した。

    マルコ「エレンはお会計をしに行ったよ」

    アルミン「えっ?エレンは何を買ったの?ここでエレンが買うものはない筈だけど…」

    どうやら、アルミンはエレンが〝本を買う〟などとなまるっきり思っていないようだ。

    マルコ「何言ってるんだい、アルミン。ここは本屋だろ?本を買ったんだよ」

    マルコがそう言うと、アルミンは目を見開いた。

    すごく、驚いているようだ。まるで鳩が豆鉄砲をくらったようだ。

    そんなアルミンを見て、マルコはクスリと笑った。

    アルミン「う、嘘だろ?!エレンが本を買う…なんてあり得ないあり得ない…変なものでも食べたのだろうか…」

    アルミンは動揺しすぎてブツブツと言い始めた。

    アルミン「僕が薦めても読まなかったのに、いきなりどうしたのだろうか…」

    マルコは何とも言えない表情をしている。



    エレン「アルミン!終わったか?」


    噂をすれば…という状況でエレンが来た。

    どうやら、ミカサも一緒で手には何かを持っていた。

    アルミンはエレンに問いかけた。

    アルミン「エレン、本を買ったのかい?君が!ここで!」
  12. 19 : : 2014/12/31(水) 18:31:43
    エレン「そうだけど、それがどうしたんだ?」

    アルミン「僕があんだけ薦めていたのに、今更どうしたっていうんだ?」

    アルミンはそう言ってエレンの肩をガシリと掴み、ブンブンと揺らす。

    ミカサが戸惑ったように、アルミンの腕を掴む。

    ミカサ「あ、アルミン、揺らしすぎ…、エレンが目を回している」

    アルミン「あ、ごめん。で、理由を教えてくれないかな?」

    そう言うと、エレンは少し恥ずかしそうに頭をポリポリと掻いた。

    そんなエレンにマルコはクスリと笑う。



    エレン「アルミンは当然のこと、ミカサも頭良いだろ?俺もさ知識を身に付けたいんだよ、知識は多いほうがいいだろ?」


    そう言うと、アルミンは「そういう理由か…」と呟いてふんわりと微笑んだ。

    するとホッとしたように息を吐くミカサを、マルコは優しいと感じた。

    二人が争うことを、好んでいないんだろうと、

    マルコはそう思った。

    アルミン「いいと思うよ、どんな本にしたの?」

    エレン「マルコにお薦めされて、買った本なんだけどな…」

    エレンがそう言って本を見せると、アルミンは興奮したように目をキラキラと輝かせた。
  13. 20 : : 2014/12/31(水) 18:38:08


    そんな二人から距離を置いていたミカサは、二人を見て微笑ましいと思った。

    ミカサのことが気になったマルコはミカサに近づいて話かけた。

    マルコ「ミカサはあの二人の輪にはいらないの?」

    ミカサ「ええ、二人とも楽しそうだから」

    そう言うミカサはふんわりと笑っていた。

    しかし、どこか寂しさが漂っている。

    マルコ「そっか…、ミカサは優しいね。あの二人のことを本当に大切に思ってる…」

    マルコがそう言うと、ミカサは驚いたような表情をする。


    ミカサ「ええ、あの二人は幼い頃からの家族。大切な…家族」


    マルコ「そっか、いいな」

    少し羨ましくなったマルコは自然と言葉が漏れた。

    ミカサ「…マルコには大切な人がいないの?」

    マルコ「まあ、家族は大切だけど、命を捧げても守りたい人ってのはいないかな」

    ミカサ「そう…」
  14. 21 : : 2015/01/03(土) 16:28:49
    マルコ「ミカサのその赤いマフラー、ずっとつけているけど、誰かからもらったものなのかな?」

    そうマルコが言うと、ミカサはマフラーに顎を埋め、頷いた。

    そして、マフラーをギュッと握った。


    ミカサ「…幼い頃、エレンがくれたの。大切…、私にとってすごく大切なもの」


    マルコ「…宝物みたいなものか、本当に大切にしてるよねミカサは。肌身離さずって感じで」

    訓練中でもマフラーをつけているミカサ。

    それがどんなに暑い夏の日でも、立体機動や対人格闘の訓練の際、邪魔であろうとも。

    ずっとつけているミカサ。それは本当に大切にしているということなのだ。

    ミカサ「エレンが私に温かさを教えてくれた、私に家族を教えてくれた…。私に…」


    ミカサ「生きることを教えてくれた」


    マルコ「ミカサにとってはエレンがかけがえのない、人なんだね…」

    マルコは静かに聞いた。

    ミカサはそれに頷く。
  15. 23 : : 2015/01/04(日) 17:26:57


    アルミン「ごめん、エレンとの会話に夢中になってた!」

    アルミンはいつの間にかミカサとマルコのもとに来ていた。

    そして手を合わせて、謝るようなポーズをとった。

    エレンもゆっくりとこちらにやって来て、本をわきに持っている。

    マルコ「大丈夫だよ」

    ミカサ「気にしないで、アルミン」

    マルコとミカサがフォローするかのように言うと、アルミンはホッとしたような顔をした。

    エレン「アルミーン、腹減ったから飯にしようぜ…」

    エレンが場違いにそう言うと、アルミンはミとカサは互いに目を合わせ、ふうと息を吐いた。

    そして笑うと、

    アルミン「はいはい、そろそろお昼の時間だしね」

    ミカサ「そうしましょう」

    そう言って、アルミン、エレン、ミカサは歩き出した。

    マルコはその三人の背を見て、ふんわりと笑顔になる。

    気遣い屋さんで温厚なアルミン、

    大きな目標を持つ努力家のエレン、

    世話焼きでお母さんみたいなミカサ、

    その三人はまるで、何かに包まれ輝いているように見えた。

    マルコは微笑んでから、その三人の背を追った。
  16. 24 : : 2015/01/06(火) 19:27:31


    マルコ達は昼食を、訓練兵がよく来る定食屋で食べることにした。

    カウンターの席の壁には、メニューが書かれた大きな紙が貼り出されている。

    マルコ達は、丸いテーブルを四人で囲む。

    マルコの正面には、ミカサ。右にエレンで左にはアルミン。

    アルミン「どれにしようかな…エレンは決めたの?」

    エレン「パンと卵とチーズのサンドイッチにするけど」

    ミカサ「エレン、野菜も摂らなくては駄目」

    エレン「お前は俺のお母さんかよ?!」

    マルコ「まあまあ、いいじゃないか。せっかく外で食べるのだし、ね?ミカサ」

    ミカサとエレンの仲裁に入るマルコは、少し楽しそうな表情を浮かべた。

    結局、エレンはパンと卵とチーズのサンドイッチを頼んだ。

    マルコとアルミンは同じで、ミカサは三人とは違うものを頼んだ。

    辺りをマルコが見回すと、やはり訓練兵ぐらいの若者がこの店に来ていた。
  17. 25 : : 2015/01/07(水) 19:56:14
    頼んだものが届くと、エレンは嬉しそうな顔をした。

    そして、四人で「いただきます」と手を合わせていうと、サンドイッチを口に運ぶ。

    アルミンは天使のような表情を浮かべながら、食べている。

    頬張って食べているエレンに、

    ミカサ「エレン、食べ方が汚い。ボロボロと溢れている」

    と、ミカサが注意をすると、エレンは少し嫌そうな顔をした。

    しかし、ミカサは気にしていないようで、無表情に黙々と食べる。

    マルコはアルミンを見ると、アルミンも少し困ったような顔をしていた。

    エレン自身が少し、不機嫌な雰囲気を出している為、四人の食事の場の雰囲気が気まずくなっていく。

    アルミンはしょうがないなと思いながら、口を開いた。

    アルミン「や、やっぱりここのサンドイッチは美味しいよね、そう思わない?エレン」
  18. 26 : : 2015/01/07(水) 20:00:59
    アルミンがそう話題をエレンに振ると、

    エレン「別に。まあ、食堂のメシよりは美味いけどな…」

    エレンはあまり乗り気ではない様子であった。

    アルミンの取り計らいも失敗に終わる。

    アルミンは助けを求めるように、マルコを見つめた。

    マルコ「きょ、今日は、誘ってくれてありがとね!」

    アルミン「大勢で食べた方が美味しいしね、ね?エレン」

    エレン「ああ…」

    エレンはやはり乗り気ではないらしい。

    アルミンは顔を見合わせて、苦笑いをし、それから困ったような顔をする。

    エレン「トイレ行ってくる…」

    エレンがそう言ったので、アルミンはそれについていった。

    マルコはミカサと二人という少し気まずい状況になる。
  19. 27 : : 2015/01/12(月) 08:52:09
    話題を考えなくては、と焦るマルコに対し、ミカサは平然とサンドイッチを口に運ぶ。

    マルコは話題の欠片にでもなるようなことを、探す。

    やっとの思いで思い付くと、マルコは内心ホッとし、口を開いた。

    マルコ「ミカサは、本屋で何を買ったの?」

    必死に考えた割には、と思うかもしれないが、マルコ自身、ミカサと関わる機会というものが少ない。

    そうなると、共通する話題というのも、少なくなるのだ。

    だから、マルコが考えた話題というのは、やはり必死に考えた話題ということ。

    ミカサ「手芸の本」

    マルコ「手芸の本って、本屋で読んでた?」

    ミカサ「ええ、それを買ったの」

    マルコ「へえ…、少し見せてもらってもいい?」

    マルコがそう聞くと、ミカサは戸惑ったような表情をした。

    マルコは嫌なのかと思い、

    マルコ「あ、ごめん…嫌だった?」
  20. 28 : : 2015/01/12(月) 17:43:22
    ミカサ「違う」

    ミカサは少し大きめな声でそう言って、脇に置いてある手芸の本を手に取る。

    そして、マルコに渡す。

    呆気にとられているマルコが何だか可笑しくて、ミカサはフフッと笑いを溢した。

    マルコ「え、あ…いいの?」

    ミカサ「ええ、嫌だったら渡さないでしょう?」

    マルコ「それもそうだね、ありがとう」

    ミカサ「マルコが買った本、見せてもらえない?」

    マルコ「いいよ」

    マルコはそう言って、本をミカサに渡した。

    渡す際、ふと見えた本の表紙の少女、その少女ミカサの顔立ちによく似ていた。
  21. 30 : : 2015/01/16(金) 20:59:58
    マルコは、手芸の本をペラペラと捲る。マフラーや手袋、可愛らしい人形などの作り方が載っている。

    マフラーや手袋なんかは、冬にはとても重宝するものである。

    マルコが訓練兵になった当初は、祖母が作ってくれた手袋、母親が作ってくれたマフラーを持っていた。

    しかし、祖母からもらった手袋は糸がほつれ、もうボロボロになってしまった。

    かろうじて、マフラーがまだ使えるぐらいである。

    自分のマフラーや手袋を作ってくれる人がいる、というのは安心できることかもしれない。

    少なからず、自分のことを思ってくれる人がいる、ということに繋がるからだ。

    前の自分にはいたが、もう祖母も母親も側にはいない。

    そう思うと、少し恋しさがマルコを襲うのだった。

    ミカサ「ありがとう、マルコ。少し私もこの本に興味が湧いた。今度貸してもらえるといいのだけど…」

    マルコ「勿論!構わないよ!ミカサもありがとう」
  22. 31 : : 2015/01/18(日) 21:22:38
    マルコ「ミカサはさ、東洋のお伽噺、何か知ってる?」

    ミカサ「お伽噺…、お母さんから聞いたのならあるけれど」

    マルコ「へえ…、どんな話?」

    ミカサ「…私は説明することが苦手。要約するのも、苦手。だから、聞いた通りのことしか、上手く話せない」

    ミカサは申し訳なさそうな顔をして言った。

    マルコ「聞かせてもらえないかな、その話」

    ミカサ「ええ、長いけれど」

    マルコ「かまわないよ…」

    マルコは目をキラキラと輝かせて言った。

    そんなマルコのワクワクした表情に、ミカサはこそばゆいものを感じた。

    ミカサはお伽噺を話し始めた。
  23. 32 : : 2015/01/18(日) 21:32:26





    昔、大きな国に王様がいました。


    その王様は、堅実的で頑固でそして、疑り深い王様でした。


    貴族であったお妃様と結婚し、女の子が生まれました。


    お妃様は大層美しく、お妃様に似て女の子もとても可愛らしかったのです。


    お姫様が生まれ、しばらくして、お妃様は病で亡くなりました。


    お姫様は、お妃様が亡くなったことを悲しみました。


    そして、その悲しみがお姫様を賢く、そして美しくしたのです。
  24. 33 : : 2015/01/19(月) 21:39:40
    王様はそんなお姫様を可哀想に思い、新たなお妃様と結婚しました。


    そのお妃様はとても麗しく、本当の母親のようにお姫様に愛情を注ぎました。


    お姫様も、お妃様を本当の母親のように慕っていました。


    そんなお妃様に、王様は嫉妬を覚えました。


    お姫様が王様より、お妃様を慕っているというのです。


    本当はそんなはずはないのです。


    お姫様は王様を誰よりも慕っていました。


    お妃様よりも、ずっと。
  25. 34 : : 2015/01/19(月) 21:51:14
    お姫様は王様の誤解を解こうとし、こう言いました。


    「お父様、私はお父様のことを、誰よりも慕っております」


    これで王様の誤解が解けると思ったお姫様ですが、やはりそうはいきませんでした。


    「嘘をつくな!私より妃のことを慕っておるのだろう?」


    そう言って王様はお姫様に怒鳴りました。


    王様はお姫様の言葉も信じられなくなりました。


    「あんなのを…」


    王様は口をつぐみました。


    そして歩きだし、お姫様に背を向けました。


    が、お姫様は王様が次に言おうとしていたことがわかりました。


    お姫様は懇願しました。


    「お父様!なりませぬ!お願いですから!」
  26. 36 : : 2015/01/25(日) 21:52:46
    「いいや、いくらお前の頼みと言えど聞くことはできぬ」


    「お父様!!!」


    懇願するお姫様を鬱陶しく思った王様は、お姫様を部屋に閉じ込めました。


    そして、王様は王国中にあることを密かに命令しました。


    「妃の首を打ち取った者に、姫と結婚させよう」


    このことは、王様と国の男しか知りません。


    お城に仕える兵には一切告げず、王様は命令をしたのです。
  27. 37 : : 2015/01/25(日) 21:57:23
    お姫様は部屋で泣いていました。


    宝石のようにキラキラと輝く涙を美しい瞳から、ぽろぽろとこぼしました。


    「お父様は変わってしまったわ…」


    そう嘆くお姫様を可哀想だと思った騎士がいました。


    その騎士は、お妃様が密かにころされてしまうことを知っていたので、お姫様にそれをつげました。


    「お妃様は密かに殺されようとしています」


    「何故!?」


    「王様が命令をくだしたのです」
  28. 38 : : 2015/01/26(月) 21:33:21
    「そんな…お父様が?!」


    お姫様は驚きました。


    心からお慕いしているお父様が、まるで〝化け物〟のように、冷酷非道になったからです。


    お姫様は騎士に頼みました。


    「騎士様、お母様を殺させないようにしてください!お願いいたします!」


    お姫様は深々と頭を下げました。


    騎士はそんなお姫様の手を握り、言いました。


    「わかりました、絶対に殺させないようにします。もしかしたら、王様を殺してしまうかもしれません。それでも…」


    騎士は口をつぐみました、お姫様にとっては大変酷なことだからです。


    しかし、お姫様は言いました。


    「お父様を殺してしまってもかまいません、化け物と化したお父様は、もう戻らないのです」


    お姫様は悲しそうな顔でした。
  29. 39 : : 2015/01/26(月) 21:49:32


    淡々と語るミカサの話に聞きいってしまったマルコは、アルミンとエレンが戻ってきたことに気付かなかった。

    アルミン「二人とも、何を話したの?」

    マルコ「ミカサが知っているお伽噺を教えてもらっていんだ」

    アルミン「へえ、今度僕にも教えてよ、ミカサ」

    ミカサ「ええ…」

    エレンが気になりマルコはエレンに視線をやる。

    先ほどのふてくされた顔はもとに戻っており、マルコは安心する。

    アルミン「このあと、僕は兵舎へと戻ろうと思ってるけど、マルコはどうする?」
  30. 40 : : 2015/01/28(水) 19:54:54
    マルコ「僕も戻ろうかな。本も読みたいしね」

    アルミン「ミカサとエレンは?」

    ミカサ「ええ、戻ろうと思う」

    エレン「俺も」

    そう言ってマルコ達は戻った。

    兵舎へとマルコ達は身体を向ける。町に背を向け、歩き出す。

    ミカサは赤いマフラーをなびかせ、町を振り返る。

    前から吹く風に揺られ、前髪が顔にかかる。それをかきわけた。

    アルミンに呼ばれ、ミカサは歩き出した。
  31. 41 : : 2015/01/29(木) 21:59:11



    ミカサが部屋に戻ると、部屋にはあまり人がいなかった。それもその筈、まだ門限まで時間があるからだ。

    部屋にいたのはミーナで、ミーナは本を読んでいた。

    ミーナ「お帰りなさい、ミカサ」

    ミカサ「ええ、ただいま。ミーナはずっと部屋で過ごしていたの?」

    ミーナ「うん。何か出かける気分じゃなかったからね~」

    そう言って、ミーナは結わいてあるおさげのゴムを取る。

    ふんわりと結わいていた髪が広がり、おさげのときとは違う可愛らしさがある。

    普段、おさげしかしないミーナだが、休日になるとそれを下ろすことが多い。

    クリスタがよく、「他の髪型にしたらいいのに」と悔しそうに言っているのをミカサは耳にしたことがある。

    きっと、ミーナの髪の長さなら色々な髪型ができるだろう。

    そう思うと、クリスタの言うことにも納得でき、共感できる。
  32. 42 : : 2015/02/01(日) 19:26:54
    ミーナ「ミカサは町で何か買ったの?」

    ミーナは興味ありげに聞くと、ミカサはゆっくり頷く。

    そして、ミカサは自身が持っていた鞄の中から、それを取りだしミーナに見せた。

    ミカサ「これを買った」

    ミーナ「手芸の本かあ。何か作るの?」

    ミカサ「ええ、エレンの為にマフラーを編む……。あと、アルミンにも」

    〝エレン〟と口にしたとき、ミカサの顔が恥ずかしそうな顔をしていた。

    そして、エレンだけではいけないと思い、ミカサはアルミンのことを付け足したのが、ミーナにはわかった。

    そんなミカサを可愛らしく思い、ミーナは口角が自然とあがり、ニヤけてしまった。

    そしてついつい、うふふなどの声ももれてしまった。


    「あんた、何ニヤけてるの?気持ち悪いよ…」


    突然、ミカサ以外の声が聞こえ、ミーナとミカサは驚く。そして、扉の方に視線をやる。
  33. 43 : : 2015/02/02(月) 21:36:49
    そうぶっきらぼうに言ったのは、アニであった。

    外が寒かったせいか、鼻が少し赤く染まっていている。

    アニはそう言うと、着ているコートを脱ぎ、ハンガーにかけるとミーナを見た。

    ミーナは、不服そうな顔でアニをじーっと見ている。さすがにじーっと見られるのはあまり気持ちの良いものではなく、アニは口を開く。

    アニ「なんだい?」

    ミーナ「さすがに〝気持ち悪い〟は酷いよ…」

    ミカサ「確かに、ミーナのニヤけ面は気持ち悪かったが、口に出してはいけない。アニ、あなたはミーナに謝るべき」

    ミカサはそう言うと、アニをジッと見る。

    アニ「…あんたも酷いこと言ってるじゃないか…」

    アニは呆れたように呟く。都合よく、ミカサの耳には届かない。

    ミーナ「二人とも酷いよ…、そんな気持ち悪い気持ち悪い言わなくてもいいじゃない…」

    ミーナは悲しげに呟いたが、その呟きはアニにもミカサにも聞こえなかった。
  34. 44 : : 2015/02/02(月) 21:50:11
    ミカサ「アニは何処へ行ってたの?」

    アニ「別にあんたに教えるほどじゃあないよ。何さ、あんたは人のプライベートに口を挟むのかい?」

    ミカサ「そういうつもりではない。ただ、何となく。アニを不快にさせたのなら、謝る。ごめんなさい…」

    ミカサはそう言ってペコリと謝る。

    そんなミカサにアニは拍子抜けし、ふふっ…と笑いが零れてしまった。

    アニを不思議そうにキョトンと見るミカサは、実に面白く、アニの笑いに拍車をかけた。

    ミカサ「アニは何故笑っているの?」

    アニ「…ふふっ、何でもない。それより、あんたは町へ行ったのかい?」

    ミカサ「ええ、エレンとアルミンと…それから、マルコと町へ行った」

    アニはそうと興味なさげに言うと、ひとりいじけているミーナの頭を叩くと、

    アニ「いつまでいじけてんのさ」

    ミーナ「叩かないでよ、アニの叩きは普通の叩きじゃないから、痛いんだから…」

    そう言って、ミーナは叩かれた頭をさする。
  35. 45 : : 2015/02/03(火) 21:45:54
    ミカサ「私もそう思う…」

    アニ「は?あんたに言われたくはないわね…」

    アニはそう言ってミカサを一睨みし、扉のドアノブに手をかけた。

    ミーナ「何処へ行くの?」

    アニ「トイレぐらい好きに行かせてもらえないかい?」

    アニは呆れたような表情をミーナに向けた。それから、ミカサにも。そして、部屋から出て行った。


    部屋にはミカサとミーナだけと、先程と同じになる。

    ミーナ「ミカサ、毛糸とかあるの?」

    ミカサ「ええ、この前買ったのがたくさんある…、赤に緑、青に白…」

    ミーナ「エレンとアルミンのマフラーを何色にするの?」

    ミカサ「編む時に決めようかなと思っている…」


    ミーナ「喜んで貰えるといいね」


    ミカサ「ええ…」

    ミカサはにっこりと微笑んだ。柔らかく、この寒い冬の中に一輪の花が咲いたように。

    綺麗だな…、とミーナはそう思った。
  36. 46 : : 2015/02/03(火) 21:57:28


    その日の夜はかなり冷え込んだ。

    しかし、マルコは眠れなかった。隣ではジャンがスヤスヤと赤子のように眠っている。

    どうしたものかと、マルコは頭を悩ませる。色々な方法を試すもの、どれもマルコを眠りにはつかせてはくれなかった。

    最終手段として、マルコは本を持って外へと出た。勿論、温かい格好をして。

    何故なら、寝れない時は本を読むと眠くなると聞いたことがあるからだ。しかし、同期が寝ている部屋で本を読むために灯りを灯すわけにはいかなかった。

    だから、マルコは外へと出たのだ。


    外は月の光りが丁度良いくらいにマルコを照らしていた。マルコは本を読むのに、適する場所を探し歩く。

    兵舎だと教官にバレてしまう恐れがある。それなら、食堂はどうだろうかと、マルコは食堂へと足を運ぶ。

    すると、人影が見えた。

    教官かと思い、マルコは身構えたがすぐに違うと気付く。


    風に靡く黒髪


    真っ赤な太陽のようなマフラー


    マルコには見覚えがある人物だ。
  37. 47 : : 2015/02/04(水) 22:03:55
    その人物はすぐにマルコに気付いた。当然だろう。なんたってその人物は、


    マルコ「ミカサ…」


    そう、ミカサなのだから。

    常にありとあらゆる神経を研ぎ澄ませる彼女なら、マルコに気付くことは容易いことだ。

    ミカサ「マルコ、こんな夜にどうして?」

    マルコ「眠れなくて、本を読もうかと思ってね」

    ミカサ「そう…」

    ミカサは納得したようにそう言って、再び下を向いた。マルコは食堂の三、四段ある階段のミカサの隣に腰を下ろす。

    暗くてよく見えなかったが、ミカサは編み物をしているらしい。

    何を作るのだろう、そうマルコは疑問に思ったが、すぐさまミカサが何を作るのかがわかった。

    今日、ミカサとその話をした。エレンの為に、作るとミカサは言っていた。


    そう、マフラーである。


    マルコ「マフラーを編んでいるのかい?」

    ミカサ「ええ、もうすぐで本格的に寒くなるから、マフラーを編み始めなくてはと思い…」

    マルコ「確かに冷え込むよね」
  38. 48 : : 2015/02/07(土) 22:20:16
    ミカサもマルコも鼻の先、それから耳の縁を赤くしている。

    吐く息は白く、口から出ていく白い息はまるで湯気のようだ。

    ミカサ「その本って、今日買った本?」

    マルコ「そうだよ」

    マルコがそう言うと、ミカサは納得したように本を眺めてから、止まっていた手を動かす。

    ミカサの手を見れば、寒さで手が少し赤くなっていた。

    そして、やはり女性らしい細さがあった。

    ミカサは手をしなやかに動かし、編んでいく。
  39. 49 : : 2015/02/07(土) 22:30:23
    二人の間に沈黙が訪れた。


    マルコはミカサの手をしばらく見たあと、本来の目的であることをやろうと、本を取る。

    本の匂いである羊皮紙の匂いが微かにし、マルコはふふふ、と笑ってしまう。

    マルコはこの匂いが好きだ。

    大好きな祖父からもこの匂いがする。

    マルコにとってこの匂いは安心できる匂いであり、祖父のことを思い出させてくれる。

    本の匂いを嗅ぐ時、本に触れている時、マルコの心のどこかにある不安を取り除いてくれる。


    寒さで乾いた手ではやはり、ページを捲るのは少し大変であった。

    手にハァーと息をかける。微かな温かい空気に手は包まれる。

    そしてページをまた捲る。


    どんどん本の世界に引き込まれていく。

    訓練のことも、今自分がいるこの壁内のことも、遠い夢なような気がしてくる。

    寒さも次第に気にならなくなり、マルコは本を読み進めていく。

    マルコはあっという間に「シンデレラ」を読み終えた。


  40. 50 : : 2015/02/07(土) 22:36:02
    ミカサはというと、ミカサはただ無心に編んでいたわけではない。


    このマフラーをあげたら、エレンは喜んでくれるのだろうか。

    もしかしたら、あまり喜ばないかもしれない。

    もしかしたら、必要ないかもしれない。

    そんな不安を抱えながら編むと同時にミカサはこんなことを考えた。

    もしかしたら、喜んでくれるかもしれない。

    もしかしたら、必要なのかもしれない。

    そう思うと少し不安だった心も、温かな空気に包まれたように温かくなる。


    エレンにあげるマフラーは赤。ミカサとおそろいである。

    おそろいと言っても、ミカサの方が断然古いのだが、おそろいと言ってもいいのだろう。

    きっと喜んでくれる。

    ミカサは自分に言い聞かせる。

    もし、エレンが喜んでくれるとしたら、エレンはこんなことを自分に言うだろう。


    「ありがとな!ミカサ」


    たったひとつの〝ありがとう〟だけでもミカサは満足できる。

    そう言ってくれるだろうと想像すれば、少しニヤけそうになった。
  41. 51 : : 2015/02/11(水) 20:10:13
    マルコはマルコでシンデレラを読み終わると、自分とミカサの沈黙が気になった。

    ミカサもミカサで、にやけた顔を隠すかのように何か喋ろうと考える。




    ミカサ「ねえ、マルコ」


    マルコ「ねえミカサ」



    二人の声が重なった。


    それに驚いたせいか間が空いてしまった。


    マルコ「ミカサから言ってよ」


    ミカサ「いや、マルコから」


    自分たちは何をしているのだろうと、馬鹿らしく思ってしまうが、それでも歩み寄るかのように話すことを考える二人。


    再び間が空いてしまう。



    マルコ「じゃあ、僕から話すね」
  42. 52 : : 2015/02/11(水) 20:16:55
    マルコ「今日、ミカサがお伽噺を話してくれたよね」

    ミカサ「ええ、途中で終わりになってしまったけれど」

    マルコ「あの話の続きが聞きたいなって思ったんだ」


    マルコがそう言うと、ミカサは驚いたような表情をした。

    しかしこれは嘘偽りなくマルコの本心で、あのお伽噺の続きが聞きたかった。

    途中で終わってしまったとき、花が散ってしまったかのような残念な気持ちが残った。

    最後まで聞きたいと、素直に思った。


    ミカサ「いいのだけれども…」

    マルコ「けれど?」

    ミカサ「時間がない。休日はなんだかんだ言って出掛けてしまうし、休憩時間も…」

    マルコ「そっか…」


    少しシュンと残念そうな顔をするマルコに、ミカサは申し訳なく思う。
  43. 53 : : 2015/02/11(水) 20:21:55
    どうにかマルコに話を伝えることはできないのだろうかと、ミカサは頭を悩ませた。

    マルコの顔をチラリと見れば残念そうな顔をまだしていた。




    ミカサ「なら、今みたいに私がマフラーを編みながら話すということはどうかしら?」



    マルコ「えっ?いいの?」

    ミカサ「お伽噺の続きが聞きたいのでしょう?」

    マルコ「ありがとう!」


    マルコの笑顔に心がポカポカと温かくなるような気がした。

    まるで日溜まりにいるかのように、心が温まる。



    自然と自分の口角が緩む。


    にやけた顔なんかじゃなくて、ミカサの顔は笑顔である。

  44. 54 : : 2020/10/27(火) 10:11:11
    http://www.ssnote.net/users/homo
    ↑害悪登録ユーザー・提督のアカウント⚠️

    http://www.ssnote.net/groups/2536/archives/8
    ↑⚠️神威団・恋中騒動⚠️
    ⚠️提督とみかぱん謝罪⚠️

    ⚠️害悪登録ユーザー提督・にゃる・墓場⚠️
    ⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️
    10 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:30:50 このユーザーのレスのみ表示する
    みかぱん氏に代わり私が謝罪させていただきます
    今回は誠にすみませんでした。


    13 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:59:46 このユーザーのレスのみ表示する
    >>12
    みかぱん氏がしくんだことに対しての謝罪でしたので
    現在みかぱん氏は謹慎中であり、代わりに謝罪をさせていただきました

    私自身の謝罪を忘れていました。すいません

    改めまして、今回は多大なるご迷惑をおかけし、誠にすみませんでした。
    今回の事に対し、カムイ団を解散したのも貴方への謝罪を含めてです
    あなたの心に深い傷を負わせてしまった事、本当にすみませんでした
    SS活動、頑張ってください。応援できるという立場ではございませんが、貴方のSSを陰ながら応援しています
    本当に今回はすみませんでした。




    ⚠️提督のサブ垢・墓場⚠️

    http://www.ssnote.net/users/taiyouakiyosi

    ⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️

    56 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:53:40 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ごめんなさい。


    58 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:54:10 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ずっとここ見てました。
    怖くて怖くてたまらないんです。


    61 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:55:00 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    今までにしたことは謝りますし、近々このサイトからも消える予定なんです。
    お願いです、やめてください。


    65 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:56:26 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    元はといえば私の責任なんです。
    お願いです、許してください


    67 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    アカウントは消します。サブ垢もです。
    もう金輪際このサイトには関わりませんし、貴方に対しても何もいたしません。
    どうかお許しください…


    68 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:42 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    これは嘘じゃないです。
    本当にお願いします…



    79 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:01:54 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ホントにやめてください…お願いします…


    85 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:04:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    それに関しては本当に申し訳ありません。
    若気の至りで、謎の万能感がそのころにはあったんです。
    お願いですから今回だけはお慈悲をください


    89 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:05:34 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    もう二度としませんから…
    お願いです、許してください…

    5 : 墓場 : 2018/12/02(日) 10:28:43 このユーザーのレスのみ表示する
    ストレス発散とは言え、他ユーザーを巻き込みストレス発散に利用したこと、それに加えて荒らしをしてしまったこと、皆様にご迷惑をおかけししたことを謝罪します。
    本当に申し訳ございませんでした。
    元はと言えば、私が方々に火種を撒き散らしたのが原因であり、自制の効かない状態であったのは否定できません。
    私としましては、今後このようなことがないようにアカウントを消し、そのままこのnoteを去ろうと思います。
    今までご迷惑をおかけした皆様、改めまして誠に申し訳ございませんでした。

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chihiro

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