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クリスタ「その痛みと同じだけの愛を」

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  1. 1 : : 2014/09/16(火) 21:47:41
    クリスタとクリスタの母親が登場します。

    ※注意

    はっきり言って進撃本編とはあまり関係がありません(

    現パロです
  2. 2 : : 2014/09/16(火) 21:58:47


    クリスタ「海に行くんだね」



    娘が笑った。行き先は内緒だったのに、もうばれてしまった。



    クリスタ「潮の匂いがする」



    「もうわかるんだ」



    母は苦笑した。



    盲目の娘の方が聴覚も嗅覚も優れているのは当然のこととはいえ、目的地はまだ先だというのに。



    電車の窓から吹き込む風に混じる海の気配を、娘は早くも全身で感じとっていた。

  3. 3 : : 2014/09/17(水) 21:25:42


    クリスタ「海に行くの、久しぶりだね」



    嬉しそうに笑う娘を見るたびに母はいつも、人間のもつ潜在能力に感心させられる。



    もちろん盲目というのは不自由なことも多い。




    だが生まれつき盲目である娘は人様がおもうほど不自由と感じてはいないらしく、いたって飄々と生きていた。




    家の中の家具の位置や物の置き場所などは母よりも詳しく、僅かな音や気配から、まわりを察してしまう。




    それこそ、まるで超能力者のように。

  4. 4 : : 2014/09/18(木) 22:07:09


    「人間ってすごいんだ。本当は、すごくすごい力をもってるんだ」



    母はいつもそう思う。



    娘をすごいと思う。すばらしいと思う。



    今こうして向かい合い、見つめあい、あらためて思いめぐる年月。



    娘はもうすぐ嫁いでいく。



    つつましやかな恋を実らせて。



    母と同じくこの子を超能力者のようだと感心する人のもとへ。

  5. 5 : : 2014/09/20(土) 21:11:32


    母ひとり子ひとり支えあって生きてきた。



    しかし実際は、娘に支えられた方が大きかった。



    娘の障害にたいし、母子家庭であることに対し、心無い言葉を投げつけられたこともあった。



    悔しさと申し訳なさと悲しさに傷ついて、枕を噛んで嗚咽する母を慰めたのは、いつの夜も娘だった。



    クリスタ「私は大丈夫だよ。だからお母さんも大丈夫。そうでしょう?」



    その笑顔に何度救われたことだろう。



    ああそうだ。この子が大丈夫なら、自分はそれでいい。自分も大丈夫なんだ。娘の言う通りだ。



    何度も何度も、くじけそうになる度に娘のたくましさを、明るさを、一生懸命見習った。



    娘はいつも、母の生きることの先生だった。



    だからこそ娘が嫁ぐ今、母は二人でたずねたい場所があった。

  6. 6 : : 2014/09/21(日) 22:19:10


    ―――――――――――――――


    ――――――――――


    ―――――



    列車がゆるゆるとホームに滑り込む。



    クリスタ「ついたの?」



    「あと、バスでもうちょっと」



    駅舎を出て、バスへ乗りこむ。



    その一歩一歩に、母の胸はジンと熱くなった。



    あの時と同じ道を行く。



    あの時の思いがこみ上げてくる。



    あの日の自分が、ハッキリと目に浮かぶ。



    晩秋だった。とても、とても寒かった。

  7. 7 : : 2014/09/21(日) 22:25:01


    娘がふと黙りこんでいる。



    母の様子をもう察してしまったらしい。



    母は、鼻をさすって笑った。



    「あんまりなつかしくて・・・。ここにくるのは25年ぶりだからね」



    クリスタ「じゃあ・・・」



    「そう。あんたが生まれた時だよ」
  8. 8 : : 2014/09/22(月) 21:28:53


    母と娘はバスから降りた。



    波が岩にぶつかる音がする。風が強い。



    波のうねる音と風のうねる音が、大地から響いてくる感じがする。



    クリスタ「砂浜じゃないんだね、ここ」



    母につれられ固い岩の上を歩く。



    どどん、ざざんと、岩を打つ波音が足元から這い登ってきた。



    娘は、自分たちは今、断崖に立っているのだと悟った。

  9. 9 : : 2014/09/22(月) 21:34:06


    クリスタ「さっきアナウンスで言ってたね。ここ、有名な自殺の名所なんだね」



    「うん」



    母と娘の間を、風がぴゅーぴゅーと駆け抜けてゆく。



    初秋の風は、もう冷たかった。



    母は娘の手をとった。



    「あんたと・・・・・・死のうと思ってた」



    クリスタ「・・・・・・」

  10. 10 : : 2014/09/22(月) 21:46:00


    自分でもつくづく運の悪い女だと思っていた。



    早くに両親に死なれ、世話になった親戚とは折り合いが悪く、学校を出てやっと独立できたと思ったら、仕事では人間関係に悩み、毎日ないて暮らした。



    好きになる男は決まって女癖、酒癖が悪く、別れるのに苦労した。



    やっと結婚出来そうな男に巡り合えたと思ったら、妊娠を知った途端姿をくらました。



    生まれた子供は障害を持っていた。



    「そのころは生活もどん底で・・・仕事もクビになったし、貯金もないし・・・。どうしていいのか考えるのも疲れちゃって」



    あの時娘を産んだのが、たまたまこの近くの病院だった。

  11. 11 : : 2014/09/23(火) 21:21:37


    ふらりと乗った電車の行き先に、ここの地名があった。



    自殺の名所であることは知っていた。



    「偶然とは思えなかったの。自分は、きっと無意識に死ぬつもりであの電車に乗ったんだと思った・・・。」



    娘の手を握る母の手に力がこもる。ぎゅっと。



    「海が青かった。ものすごく青かった、黒いぐらい・・・。今も・・・・・・とても青いわ」



    娘にいもその青さが伝わるだろうか。



    つないだ手を通して、あの時の吸い込まれそうなくらい青い、深い、海の青、風の冷たさが伝わるだろうか。

  12. 12 : : 2014/09/23(火) 21:30:21


    「何もない・・・。何もなかった・・・。自分には、本当に何も無かった」



    仕事も、金も、家も、頼れる人も、友人すらいない。



    生きる希望も、気力もない。あるのは、この腕の中の娘だけ。



    それだけに。それだけに、この子がいっそ哀れで。



    この子が生きる世界がはじめから真っ暗闇であるということが、すべてを象徴しているようで。



    「死ぬしかないと思ったの。あんたは私にとって、絶望そのものだった」

  13. 13 : : 2014/09/24(水) 21:52:41


    母は、娘の頬を優しくなでた。



    見えない目で、娘は母を見つめていた。



    その闇の中で、今自分はどんな風に見えているのだろう。



    母は、娘を力一杯抱きしめた。



    「でも違った・・・。ちがったよ・・・っ!」



    息もできないくらい、痛いくらい強く、強く抱きしめられた。



    でもその痛みが、娘はとても嬉しかった。

  14. 14 : : 2014/09/24(水) 21:59:45


    この痛みは、母の幸せの証。母の気持ちが、体中に伝わる。



    「クリスタ、ここからは笑わないで聞いてね。おかしなことを言うようだけど、頭は大丈夫だからね」



    娘を抱き締めたまま、母は涙声で言った。



    「あの時、この崖の上で、あたしは今にも飛び込もうとしてた」



    「そのときね、きこえたのよ、『―死なないで―』って」



    吹き付ける風の音に負けることなく、その声はしっかりと母の耳に届いた。

  15. 15 : : 2014/09/25(木) 21:43:32


    母は、誰かが後ろに居るのかと振り向いたが、観光地といえど晩秋の風が冷たい断崖絶壁にたつ人は母の他には居なかった。



    気のせいかと思った瞬間、目が合った。



    「生まれたばかりのあんたが、あたしをじっと見つめてたの。見えるはずも無いのに、まるで見えているみたいにあたしを見つめてた」



    「普通の赤ちゃんでも、あんな風に見ないものよ」



    その瞳が忘れられない。



    一心に自分を見つめる不思議な眼差し。



    「その時思ったの。『死なないで』って、この子がいったのかもしれない」
  16. 16 : : 2014/09/27(土) 12:46:06


    そう思ったとたん全身から力が抜けて、母は赤ん坊を抱いたままその場にへたりこんでしまった。



    でも、体中が熱いもので一杯だった。



    「初めてだった、あんな風に前向きに考えたのは。自分でも信じられなかった」



    それから、住む場所を変え、一から出直した。



    あいかわらず貧乏で、苦労は絶えなかったけど、それをおぎなってあまりある幸せがあった。



    障害をものともせず、たくましく生きる娘。

  17. 17 : : 2014/09/27(土) 12:53:40


    暗闇の中で精一杯手をのばし、空を、太陽を、水を、花を、世界のすべてを感じ取り、自分の力に変えていく。



    その姿を見ているだけで感動した。



    人間とは、本当はこういう生き物なのだと思った。



    自分も、もっと人間らしく生き生きと生きたいと思った。



    母は、娘の少し冷たくなった頬を両手で包んだ。



    おでこをつき合わせ、鼻をこする。



    愛しい。愛しい我が子。なくさないでよかった。本当によかった。わたしの宝物。

  18. 18 : : 2014/09/27(土) 13:02:55


    「あんたから力をいっぱいもらって、あたしは変われたよ。もう昔の、暗いジメジメした女じゃない」



    「なにもかも、あんたのおかげなの。あんたがお嫁に行く前に、どうしてもここへ来たかったんだ。お礼を言いたくて・・・」



    「・・・あの時、死なないでって言ってくれた。聞き違いかもしれないけど、それでもいいの。ありがとう、クリスタ」



    母はそう言って、娘を抱きしめた。もう一度、力一杯。



    そして、抱きしめられた娘が言った。



    クリスタ「うん・・・覚えてるよ」

  19. 19 : : 2014/09/28(日) 17:41:18


    「何を?」



    クリスタ「死なないでって・・・私、お母さんに言ったよ」



    「え・・・・・・?」



    娘はあたりを見渡しながら話した。まるで見えているかのように。



    クリスタ「バスを降りたときから変な感じがしてたの。なんだか身体に感じる空気とか、前に一度来たことがあるような気がすごくして・・・」



    クリスタ「この場所の景色が頭に浮かんでくるの。茶色い岩、高い崖、青い海と白い波、強い風・・・」



    母はただただ驚いていた。

  20. 20 : : 2014/09/28(日) 17:47:33


    クリスタ「お母さんの話を聞いてて、全部思い出した」



    娘は笑った。母は首を振った。



    「あんたは赤ちゃんだったのよ。まだうまれたばかりで、目が見えなくて・・・」



    娘は頷いた。



    クリスタ「でも、見えたの。お母さんの顔が悲しそうで、辛そうで、今にも死んじゃいそうだったから、私必死でよびかけたの・・・」



    クリスタ「死なないで、死なないでって・・・!」



    「うそ・・・」



    涙があふれた。

  21. 21 : : 2014/09/28(日) 17:51:38


    「うそよ。そんなこと・・・」



    クリスタ「お母さん、白いワンピース着てたね。水色のスカーフが風でパタパタして・・・」



    「うそ・・・ありえないわ」



    あふれる涙は暖かかった。



    クリスタ「飛んでいっちゃったね・・・」



    涙に歪む景色の中で、娘は笑っていた。

  22. 22 : : 2014/09/28(日) 17:56:23


    にじむ光を背にした姿は、もしかしたらこの子は天使かもしれないと思えた。



    あの時、絶望を抱いてこの断崖に立っていた。



    だが、自分は本当は奇跡を抱いていたのだと、今ようやく実感する。



    25年の時を隔てて、もう一度その奇跡を抱きしめた。



    その腕の中には、もう幸せしかなかった。


















  23. 23 : : 2014/09/28(日) 17:57:36
    終わりです。

    最後まで読んでくださった方、ありがとうございました!
  24. 24 : : 2014/09/29(月) 02:05:51
    こんばんは!すごい引き込まれました!フォローさせていただきます。
    良かったら私の作品も読んでやってください
  25. 25 : : 2014/09/29(月) 16:19:53
    いいねー短いのに良かったよ乙
  26. 26 : : 2014/09/29(月) 22:11:36
    コメント嬉しいです!

    ありがとうございます!
  27. 27 : : 2014/09/30(火) 22:09:41
    すごく感動しました!
  28. 28 : : 2014/10/01(水) 14:36:46
    ありがとうございます!
  29. 29 : : 2014/10/21(火) 18:09:03
    家族は繋がってるんだね・・・涙
  30. 30 : : 2014/10/22(水) 18:51:10
    すごく引き込まれました

    短いのに心にひしひしと伝わってくる何かがありますね。

    最後の、
    『その腕の中には、もう幸せしかなかった』
    というところが好きです。

    執筆お疲れ様でした!
  31. 31 : : 2014/10/22(水) 19:02:58
    >>29

    コメントありがとうございます!

    そうです、家族は繋がってるんです(` ・ω・)

    原作のクリスタと母親の関係はあまりにもアレなので、、原作でもこういう関係だったらなーとの期待も込めて書きましたw
  32. 32 : : 2014/10/22(水) 19:06:01
    >>30

    引き込まれたなんて……光栄です;;

    私的にも最後の文は気に入っていたので、そう言っていただけて嬉しいです。

    お気に入りまで、本当にありがとうございます!
  33. 33 : : 2014/11/14(金) 21:01:26
    感動…(T ^ T)
    りうすごすぎるー!
    尊敬します!お疲れ様!
  34. 34 : : 2014/11/14(金) 21:04:23
    >>33
    甘夏ありがとー!
    感謝感謝(*^ω^)
  35. 35 : : 2014/11/26(水) 21:50:37
    たしかに。原作でのクリスタと母親との関係はひどすぎますもんね。
  36. 36 : : 2014/11/30(日) 22:05:50
    >>35
    ですよね……。
    SSの中だけでも幸せになってもらいたいです。

    コメントありがとうございました!
  37. 37 : : 2015/02/11(水) 17:34:52
    りうちゃん!

    お疲れ様です。感動しました(=´▽`=)
    クリスタのお婿さんは誰なのか気になります(笑)

    アルミンかな?エレンかな?それともベルトルさん…?
  38. 38 : : 2015/02/11(水) 17:41:16
    >>37
    カンナちゃああん!ヒサシブリ!!

    コメントありがとね!
    クリスタのお婿さんはご想像にお任せします(笑)
  39. 39 : : 2020/10/10(土) 22:54:38
    高身長イケメン偏差値70代の生まれた時からnote民とは格が違って、黒帯で力も強くて身体能力も高いが、noteに個人情報を公開して引退まで追い込まれたラーメンマンの冒険
    http://www.ssnote.net/archives/80410

    恋中騒動 提督 みかぱん 絶賛恋仲 神威団
    http://www.ssnote.net/archives/86931

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    http://www.ssnote.net/archives/78041

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    http://www.ssnote.net/archives/84057

    害悪ユーザースルメ、カグラ、提督謝罪
    http://www.ssnote.net/archives/85091

    害悪ユーザー空山
    http://www.ssnote.net/archives/81038

    【キャロル様教団】
    http://www.ssnote.net/archives/86972

    何故、登録ユーザーは自演をするのだろうか??
    コソコソ隠れて見てるのも知ってるぞ?
    http://www.ssnote.net/archives/86986

    http://www.ssnote.net/categories/%E9%80%B2%E6%92%83%E3%81%AE%E5%B7%A8%E4%BA%BA/populars?p=53

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200301ririko

りう

@200301ririko

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