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  1. 1 : : 2014/08/11(月) 21:56:54
    あ、どうも、元・憲兵団です。改名しました。


    初めましての方が多いかもですね、宜しくお願いします!


    カゲプロは初めてです。至らない部分が多々あると思いますが、海より深く広いお心をお持ちの皆様、許してください。


    ちなみにカノアヤです。アヤノちゃん可愛過ぎです。あれは反則です。
  2. 2 : : 2014/08/11(月) 22:05:17
    此処は…何処だろう…?


    僕は今、何処に居るのだろうか。


    辺りはまるで不気味な程に静寂に包まれており、真っ暗で何も見えない状態だった。


    どうやら、この摩訶不思議な場所には、僕しか居ないらしい。


    ねぇ…キドは?セトは?マリーは?ねぇ…何処に居るの…?


    誰も居ない。


    得体も知れない何かが、僕の躰を蝕んでいく気がした。


    誰も居ない。声も届かない。不安と焦りと恐怖が混ざった意味の分からない感情でいっぱいだった。



    「ねぇ…皆…何処に居るの…?ねぇ…ねぇ…!!」



    僕はいつも見せない不安な顔で、大声を出した。


    しかし、返答は無かった。
  3. 3 : : 2014/08/11(月) 22:16:39
    次第に膨らむ、僕の不安。


    涙が出るのを必死に堪える。どうせ、欺く相手も居ないのに、僕は何をしているんだ。そう感じた。


    しかし、それしか出来なかったんだ。


    毎日、毎日、人を欺いて、騙して、嘘を吐くの繰り返しだ。


    もう、自分の本音なんて分からなくなる位に。虚言癖とは、良く言ったものだ。 


    きっとこれは、そうやっていつも騙してきた僕への報いだろう。


    隔離して、触れさせないようにする。


    そうすれば、安心だものね。


    騙される事もなく、欺かれる事もなく、平穏で、安全な日々が送れる筈だ。騙されてきた皆は。


    もう、頬を伝う生暖かい液さえ出てこない。


    いや、出す方法を忘れたんだ。


    仮面を被って、気付かれないように。


    僕は、何て愚かな奴だ。


    ごめん、皆、こんな僕で。


    諦めたように僕はその場に寝転んだ。すると…



    「修哉…」



    聞き覚えのある、忘れはしない懐かしい声が聞こえた。
  4. 4 : : 2014/08/11(月) 23:51:37
    「修哉…」



    電撃が躰を巡る。


    僕は思わず上半身を起こして、辺りを見渡した。



    「此方だよ。」



    僕は声のする方を向いた。


    見馴れたセミロングの黒髪。


    整った顔立ち。


    季節外れの、一際目を引く赤い赤いマフラー。



    「姉ちゃん…」



    それは、紛れもない僕の大好きな、


    姉ちゃんだった。


    僕は安堵して、姉ちゃんの方へ駆け寄る。


    すると姉ちゃんは、今まで聞いた事のないくらいに声を張上げた。



    「来ちゃ駄目!!!」


    「え…」



    姉ちゃんが、僕を…


    拒んだ…?


    信じられないという絶望が、僕の躰を支配する。


    大好きな人に、一番頼っていた人に、僕は…


    拒絶、された。


    僕は膝から崩れ落ちた。


    僕は欺くのも忘れて、目を見開いて姉ちゃんを見つめた。



    「修哉…ごめんね…」



    不意に、耳を疑うような言葉が聞こえた。



    「は…?」



    僕は驚きの余り、間抜けな声が口から漏れ出した。


    ごめん…?



    「姉…ちゃん…?」


    「勝手に死んじゃってごめん、寂しい思いさせて…ごめんね…」



    姉ちゃんは、寂しそうな笑顔で僕に言った。


    姉ちゃんを亡くしてから、僕はただ自分の思いを押し殺してた。


    勿論、姉ちゃんと住んでいた時も、ただ笑っていた。


    けど、そんなのは姉ちゃんに敵う筈もなく、いつも見破られては、



    『嘘、吐かないで。』



    なんて寂しい顔させてた。


    けど今は、僕の虚言を見破る者なんて居なかった。


    都合が良かったのは確かだけど、何処か物足りなくて、孤独な気持ちだったのもまた、確かだ。


    だけど、姉ちゃん、


    自分で言っておいて、嘘を吐くのは良くないよ。



    「姉ちゃん、笑わないでよ。」


    「え…?」



    本当は、実の母さんを亡くして、実の父さんまで狂って、それに加え、責任感の強い姉ちゃんだから、僕達に負担を掛けさせまいと、頑張ってた。


    独りで。


    誰にも相談せずに、抱えて、家族の事も、あの蛇の計画の事も、全部全部呑み込んで…。


    誰よりも、自分の躰に鞭打って、泣きたいの堪えてたの、自分なのに。


    15歳という若さで命を断つのは、どれ程の勇気がいったんだろうか。


    何で、謝るの?謝るのは此方だよ。


    いつも気付いて貰ってばっかりで、一番気付かなくちゃならない姉ちゃんの涙に、気付いてやれなかった。


    僕は不思議と、怒りが沸いてきた。


    何も言わなかった姉ちゃんと、不甲斐ない自分に。


    そして何より、この理不尽な世界に。
  5. 5 : : 2014/08/12(火) 07:04:37
    期待\(^o^)/
  6. 6 : : 2014/08/12(火) 11:13:53
    Kidsさん、初めまして!
    期待に応えられるか分かりませんが…私なりに頑張ります!ありがとう!
  7. 7 : : 2014/08/12(火) 11:28:57
    もう、こんな茶番はお仕舞いだ。



    「本当は…ずっと我慢して、僕達に嘘吐いてきたの、姉ちゃんの方だよ。」


    「修哉…?」



    何を言ってるんだとでも言いそうな顔をして、僕を見る。


    ごめん何て、大丈夫何て、強がんないでよ。だって、君は、


    僕達のヒーロー何だから。


    憧れて、憧れて、何時だって姉ちゃんみたいなヒーローになりたいと思ってた。


    全部を包み込む包容力。強い正義感。全て全てが、僕の憧れ。


    ………もう、届きはしないけど。



    「せめて…せめて、僕の前では強がらないで!」


    「…」



    暫しの沈黙が流れた。


    姉ちゃんは一瞬、無表情になってからまた、見馴れた笑顔に戻って、



    「強くなったね。


    修哉。」



    そう優しく言った。


    懐かしい香り。懐かしい笑顔。全部、思い出になってしまうのが怖くて、思い出したくなかった。



    「皆、頑張ってるね。お姉ちゃん、知ってるよ?ちゃんと見てるもん。」


    「姉ちゃん…?」



    姉ちゃんは、本当に輝かしい笑顔で、にっこり笑って、僕に言った。


    僕の頬にはいつの間にか、忘れ欠けていたものが流れた。


    名前すら、忘れそうだった。


    ああ、まただ。また、姉ちゃんに気付かされた。やっぱり、姉ちゃんには叶わないなぁ…ハハ。


    もう、不気味に上がる口角もなければ、業とらしく細める目もない。


    僕の今は、本当に笑っていた。


    思い出したよ、姉ちゃん。


    これが、涙だね。


    ありがとうじゃ納め込めない、想いがある。


    それ以上、領域を越えてはならなかった。


    初恋の君。



    「当たり前だよ、だって私は…



    _____________。」
  8. 8 : : 2014/08/12(火) 11:47:04
    「____ノ…____カノ…!」



    上の方から、聞き慣れた優しい、姉ちゃんと似てる声が聞こえた。



    「…………セト…」


    「いつまで寝てるんスか?もうお昼…って!何で、泣いてるん…スか…?」


    「え…?」



    セトは驚いて、目を見開き後退りした。


    そんなに驚かれると地味に傷付くよ…。


    心でセトに向かって言いながら、僕は自分の頬に触れる。


    すると、頬が少し濡れていた。



    「怖い夢でも…見たんスか?」



    コイツは何れだけ僕を下に見てるんだ。


    怒りを通り越して呆れたよ。


    ………………まぁ、でも、


    こんなのも、悪くないかな。


    僕はセトに気付かれないように、そっと笑った。



    「何でもないよ。」



    君の居ない世界は、何か物足りないよ。


    けど、まぁ何とか頑張ってみるよ。



    「先行ってて、僕後で行くから。」


    「絶対っスよ。」



    セトが扉を閉めると同時に、僕は立ち上がり引き出しを開ける。


    随分、見てなかったなぁ。


    古びて埃を被った一枚の写真を静かに見つめる。


    僕は埃を払って、その写真を優しくなぞった。


    その写真には、懐かしいあの頃の僕達4人が写っていた。


    姉ちゃんが僕達を包み込んでいる写真。



    「姉ちゃん、僕、頑張るよ。もっと、強くなるから。」



    その時は…と言おうとしたところで止めた。もう、駄目だから。


    儚く散った僕の初恋は、いつか頑張って諦めよう。


    僕は朝日が差し込む光の中、優しく写真に唇を落とした。


    その朝日が、まるで姉ちゃんのように僕を包み込んだ。


    僕は机の上に写真を置き、扉を開けて、リビングへ向かう。


    何処かで、『頑張れ』という声が聞こえたのは、心に仕舞おう。
  9. 9 : : 2014/08/12(火) 11:48:15










    『当たり前だよ、だって私は…





    ヒーローだから。』










  10. 10 : : 2014/08/12(火) 11:51:55
    短いですね、すいません…。

    読んでくれた方、ありがとうございました!
  11. 11 : : 2014/08/12(火) 12:04:31
    http://www.ssnote.net/archives/21582


    続編?みたいなのです。需要あればですが…。
  12. 12 : : 2014/08/13(水) 20:54:34
    うわあ~面白かったです!!
    すごく良かったです!

    アヤノさん、初めまして、ですね。
    しかし私は、憲兵団さんだった頃のアヤノさんの作品を何回も読んでいた事があって、私はよくアヤノさんの事を知ってます。

    今回もとても面白かったです。執筆お疲れ様でした。
  13. 13 : : 2014/08/14(木) 02:42:40
    セトさん、初めまして!読んでくれてありがとうございます!!

    お、面白いですかぁ…///
    あまり誉めると調子乗りやすいタイプですよ、私(爆)


    あ、憲兵団の頃から読んでくれてたんですか、へぇ…へぇ…………って!!??
    えっ、嘘、えっ?えっ、えええ!?
    まさか見てくれてたとは…しかも何回も…駄作を見させてお恥ずかしい限りです……。

    でもでも、嬉しいです!!読んでくれてありがとうございます!!(2回目)

    はい、お疲れ様でした。
  14. 14 : : 2014/08/14(木) 06:44:50
    何という文章力…あっぱれでございますm(__)m

    自分には無いものがあると感じられました!アヤノさんの作品では始めてでしたが、他の執筆している作品も面白そうです!

    執筆お疲れ様でした。

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