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滴り落ちる紅い実、求める自由の翼【泪飴×女上アサヒ コラボ企画】

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  1. 1 : : 2014/05/08(木) 00:46:09
    女上アサヒ×泪飴 コラボ企画
    互いに考えた進撃の巨人のネタを交換し、それを元に各々で小説を書き上げました。

    泪飴さんが考えてくださった元ネタ…『アニメ進撃の巨人 #9左腕の行方』
    リヴァイがペトラと共に見送ったあの若い兵士との関係。

    互いが書いた『ネタ』を交換して、それぞれの色で染める。
    書き手が変っただけで、こうも色が変るのか、虹色以上の発色だと思わされました!

    ちなみに私が考えたネタはアニメ版『女型の巨人』からです…。

    乞うご期待…!
  2. 2 : : 2014/05/08(木) 00:48:05
    ――何だ…この音は…あぁ、俺は…喰われてしまったか…憎くて仕方ないヤツに…
    俺の身体はどうなるんだ…巨人の野郎に少しずつ食い千切られ、飲まれていく

     自分の体の中に『骨』が存在する感覚を思い出させる耳障りな音。それは自分の体を
    バラバラにする不愉快な旋律を奏でる。まさに目の前の憎き巨人の憎い口元が立てる
    その音を自分の身体で感じている――

    ――俺が…俺でなくなっていく…こいつ、骨を砕きやがった…

     脈は打っているかもしれないが、その感覚も霞んでゆく。まるで幼い子供が
    無邪気に積み上げた積み木をイタズラにぶち壊される。そんな感覚に襲われる。
     すべてが、何もかもが、まるで存在しなかったように消えてゆく。

     わずかな命とわかっていても、心に沸いてくる感覚。

     痛み、疑問、畏怖と隣合わせの恐怖…そして不安――

     自分が消えそうだからこそ沸いてくる、普段なら感じないであろう感覚。
    かすかに視界に入り込む旧市街地の古びた街並み、
    その上にはどこまでも綺麗に晴れ渡る青空。 なぜか、苛立ちを覚える透明な青。
     悔しいくらい綺麗な晴れ空の下、消えゆく自分の命を痛みを通して感じる。

    ――…ビクリとも身体が動かない…力が入らない…

     巨人の口元を軸にして、体が上下に揺れる。痛みはもう伝わらない。それでも…
    握られた剣だけは手放してなるものか。

    ――あれ…なんで、こんなところに『木の実』が…?
    確か兄弟たちと、木登りしたとき食べたヤツ…なんで…? 違うこれは…そうか

     耐え難い痛みから咳き込むと唇から飛び出した自分の血の塊が再び
    自分の顔に滴り落ちる。それは生の証である紅い血。
     まるで『命の実』でも落ちてきたかのような儚い願いだった。

     いつかは来るであろうと思っていた、生の終わりが迫るこの瞬間。
    小さな願いもむなしく、ほんの一瞬で終えると思っていたのに予想外に長引いている。

     きっと、これは罰なんだろう。
     人が死ぬとき、その人は故郷の懐かしい親兄弟を思い出すのだろう。
    そう、今までの俺は思っていた。確かに自分の血さえ懐かしい出来事を思い出させてくれた。

     だが、いざ自分が本物のその立場になったとき、揺さぶられる脳裏に浮かぶ瞬間は
    全く違うものだった。

     耳にわずかに残る調査兵団団長、エルヴィン・スミスの力強い演説の声
     
     皆の愛馬の蹄の音

     むせ返るような砂埃の匂い

     色に意味を持つ打ち上げられた信煙弾

     巨人の姿…人間のようになぜかそれぞれ違う顔…地響きのような足音、気持ち悪い匂い

     死んでいったかつての仲間たちの笑顔と、間逆で耳に残る断末魔。目の奥に焼きついた死に顔

     そして…それらをすべてをこの身体から押し流すように思い起こされるのは…

     あの人の声だ――

    ――あぁ…この世界の残酷さの中に…俺の手のひらに乗せられる一粒くらいの
    希望が転がっているのなら…誰か、お願いだ…あの人をここに呼んできてくれ…

    ――――
    ――
  3. 3 : : 2014/05/08(木) 00:49:50
     壁外調査前日。壁の中から見上げる空は相変わらず広い、と見上げていると
    リヴァイ兵長が俺に声を掛けてくださった。

     正直、嬉しさよりも驚きを隠し切れなかった。

     壁外調査の前日で多忙を極める兵長が、こんな末端の兵である俺たちの訓練を
    視察目的で、わざわざ足を運んでくださるなんて――。思いも寄らなかった。

     兵長は、他の兵士たちに目もくれず、真っ直ぐ俺のところに歩いて来た。
    視線も真っ直ぐ俺に向けらると、その鋭さにしり込みする。
     心のどこかで、兵長から褒めて頂けるのかと期待していた。
     理由は単純で今回の模擬巨人戦闘訓練では、他の誰よりも俺は多くの討伐数を
    稼いでいたから――

     兵長の感想は思いのほか短かった。

    「…なってない」

     氷で出来た刃のような声が俺のプライドにゆっくりと突き刺さる。

    「え…」

    「あんなスピードで飛んでたら、後衛がおいてかれちまうだろうが…」

     兵長の舌打ちがさらに追い討ちをかけるようだった。
     ただ…ショックだった。俺の一番の強みは立体機動のスピードなのに。
     
     プライドが傷ついたと実感しながら、自分を根底から否定されたような気がして
    思わず反論の言葉を投げかける。口の中は渇ききっても、口答えをせずにはいられなかった。

    「…お言葉…で、ですが……立体機動中はスピードを落とせば落とすほど、
    巨人に捕まりやすくなる……わざわざ失速するなんて………いや、すいません……一般兵の分際で――」

    「…お前の立体機動の能力の高さは知っている…もちろん、書類上じゃない。
    今まで壁外で見てきたんだよ、おまえの飛ぶ姿を」

    「こ、光栄です…!」

     先に空振りの期待に終わった褒めて頂ける瞬間が思いかけずやってきたと思うと
    俺の頬は自然に綻んだ。

    「そして…それ故に…お前に何が足りないのかもわかる」

     兵長の鋭い眼差しが復活しかけていた傷ついたプライドに再び亀裂が走る。
    冷たい声が何と発するか想像するだけで、凍えるような心を抑え息を飲む。

    「…そ、それが…」

    「お前には…仲間との連携能力が足りない――。いや、正確には連携しようとする努力が足りない」

    「努力…ですか…」

     俺が死に物狂いで重ねてきた努力は見ていたのか、と言いたくなっても喉元で止め
    噛み砕き兵長の口元を見つめる。鋭い眼差しは見られなかった。

    「俺達は、一人で戦っているわけじゃない…そもそも、巨人なんて、本来一人で戦う相手じゃねぇ…違うか?」

    「は、はい…」

    「己の力を信じても、仲間の判断を信じても…結果は誰にもわからない…
    だからこそ、お前は周りの人間と協力すべきだ…そうしなければ――」
  4. 4 : : 2014/05/08(木) 00:50:44
    「リヴァイ、急げ」

     突然、兵長の発言をさえぎる声が響く。馴染みのある声の主に視線を送ると、
    佇むエルヴィン団長が兵長を呼び寄せていた。
     属する兵団の長の登場に心臓を捧げる敬礼をすると、片手に鞄を抱えていることに気づく。
     二人がこれからどこかに出かけるのだろうと踏んだ。兵長は舌打ちすると、団長に向って
    右手を軽く上げ、直ちに合流する、という合図を送った。

    「とにかく…、精進しろ、訓練に励め」

     くるりと背中を向け自由の翼を風になびかせると、兵長は足早に去っていった。

    「は、はい!」

     心臓を捧げる敬礼と共に力強く返事をしたつもりだが、それが兵長に届いたかわからない。他の任務もあり多忙の中、わざわざ足を止め俺の訓練を見て頂いたことを目の当たりにして
    ただ自分の愚かさに気づかされたのは、まさにその時だった。

     その上、上官への口答えなど、比較的自由な気風の調査兵団であっても言語道断である。
    それだけでない、兵士長に対してそんな態度を取れば、ただで済むわけがなかった。

     兵長はそんな俺の無礼な言動に対しても、何も言わなかった。
     もともと尊敬していたが、同時に崇拝に近い感情に変る始まりでもあった。

     兵長は団長と何か早口で話した後、急いでどこかに走っていった。
    走ってどこかに行く位の予定があったはずなのに、俺の訓練に付き合ってくれた。
     上官二人の背中が見えなくなるまで、心臓にあてがう拳を崩せなかった。

    ―――
    ――
  5. 5 : : 2014/05/08(木) 00:52:13
    「う……ぐぅ………あっ………」

     噛まれる度に血が滲む唇から漏れる声が弱くなっていく。たやすく理解できる。

     身体が何度も潰される痛み

     なぜ、この巨人は俺をすぐに喰わないのか、という疑問

     死がじわじわと寄ってくる、恐怖…それと同時にこの死線をくぐってきた先輩方への畏怖の念

     このまま…俺は何も出来ずに死ぬのか、という不安…

    ――陣形は…今、どうなっている? 限界点はまだまだ…先のはず…
    本来なら、もっと先まで進まなければいけない…

     こんなところで、悠長に巨人と戦闘している場合ではないはずなのに。

     見通しの悪い旧市街地を通過中、陣形全体が突然大量の奇行種に包囲され
    完全に足並みが乱されてしまった。
     俺の班も当然、善戦したが高い建物が少ない環境ではあまりにも不利すぎた。

    ――いや、違う…そんなのは言い訳だ

     班の仲間たちを見殺しにしたのは、誰でもないこの俺だ。出すぎた真似をしたばかりに…。
     回りの状況を考えず、俺一人で切り抜けようとして招いた結果だ。

    『仲間と協力しろ』

     兵長は…わざわざ前日に忠告して下さったのに…思い返すと冷たくても熱い声が
    身体中に圧し掛かる。

     頬を伝う熱い液体…その血だけではない。 ついさっき、『紅い木の実』が
    落ちてきたなんて、勘違いなんかしては…情けねーが…

    ――悔しいよ、みんな…

     命を落とした仲間たち、団長に…もちろん兵長に申し訳ない。

    ――だけど…このまま死んでたまるか…

    「最後に残るのは…俺たち人類だ!!」

     掠かすれる声と最後の力を振り絞って、折れた剣を振りぬく。次の瞬間、
    俺の身体を無駄に長い時間を掛けて咀嚼していた巨人の頬に刺さった。
     手ごたえはない。悲しいくらい剣から何も伝わらなかった。

     俺の目の前で巨人はジロリと俺を見る。睨んでない。ただ気持ち悪く目が動くと
    巨大な顎に力を入れやがった。

    「ぐあああああああぁぁぁ!!」

     背骨が折れた気がした。気がした、というのは俺の体の真ん中部分から
    骨が砕ける音が身体中に響いたからだ。もう助からない――。
     医学的なことがわからなくても、もうわかってしまう。なんとなく……。

     言葉が通じるはずなんてない化け物に向かい、最後の強がりを浴びせる。

    「お前らなんか…きっと…リヴァイ兵長が……!!」
  6. 6 : : 2014/05/08(木) 00:53:48
     巨人の聴覚が機能していれば、きっと戯言として聞こえただろうと、
    思えた俺の最後の言葉の直後、憎き背後を閃光のように通過する人影が見えた。
     
     死にゆくものへ手向けられた偶然から派生した光と感じた同時に、
    がくんと静かな衝撃を感じながら、目の前の巨人から生気が失われた。
      
     彼だ…待ち望んでいた…彼が俺の目の前に…いる。

     鋭い斬撃切り取られた巨人のうなじの肉片が地上目掛け落ちてゆくのを
    目で追っているはずなのに、目の前に地上が迫る。不本意だが巨人と共倒れとなり
    地面に叩きつけられた。

    「う……っ…」

     巨人の口の中へ身体が飲み込まれていたおかげで、地面に落ちた衝撃が多少は
    和らげていたようだった。それでも痛みは身体に残りうめき声を上げる。

     薄っすら目を開くと、兵長が真上を通過した。相変わらず自由を謳歌するように
    立体機動を翼代わりに操作する姿に頬を緩めたいが、その力さえ残っていない。

    ――そういえば…あっちに巨人が二体いたはず…そうかあれを倒しにいくのか…

     ゆっくりとその考えが頭に過ぎると、傍らに誰かが降り立つ音が響く。

    「大丈夫!? 助けに来たわ!」

     明るく美しい茶髪の持ち主だけでない――
    その声の主は精鋭兵士であるペトラ・ラルだった。 
     彼女は全身の力を使い巨人の口から俺の身体を引きずり出すと、手際よく止血の
    処置を始める。
    「兵長は……あっちか……」

     俺はあっち、と言いながら目線は宙に浮かせたまま…その方向へ視線を送る力もない。

    「ええ……兵長ならきっと大丈夫……」

     ペトラの唇が自信を持ち合わせ動いた瞬間、この身に地響きが伝わってきた。
    彼女が片頬を上げながら、やっぱり、と言いたげに視線をくれる。

    「1体倒したみたいね……あ、もう1体も――」

    「はは……すげぇ……な……」

     もし、負傷していなければ、ペトラと共に尊敬する気持ちを抱え俺も頬を上げていただろう。だが、蚊のなくような声を出すだけで俺は精一杯だった。 

    「気をしっかり持って……大丈夫、きっと」

     励ましながらペトラの手が傷口を力強く圧迫する。

    ――助かるにせよ…助からないにせよ…もう、ペトラに…全てを預けてしまおう
      
     巨人の口に挟まれていた時、心の中で渦巻いていた様々な感情から解放されて、 
    安心感だけが包むようだった。その同時に意識が遠のいていく――

    ――もういい…もうこれで… いや違う…良くなんかない…俺はまだ何も出来てない…

     悔しいよ…
     
     悔しい
  7. 7 : : 2014/05/08(木) 00:56:05
     巨人への憎悪が渦巻き悔しさで拳を握りたくても、そんな力はどこにもない。
    意識が遠く離れていきそうな最中、サク、サクと、地面を踏む音が耳が捕らえる。
     この足音は聞き逃してはいけない、本能的に感じると遠くへ行きそうな意識をどうにか
    連れ戻せた。

    「兵長……血が……止まりません……」

     ペトラの涙声で兵長が来てくださったとき気づく。俺なんかに構わずにまだ戦っている
    他の兵士の支援へ、と叫びたい自分と、最後までそばにいて欲しい自分が心の中で
    生涯で最後の戦いをしている。

    「兵長…」

     どちらが勝ったのか決まらぬまま、ただ尊敬するあなたを呼ぶ。静かな足音の後、
    兵長がそばにしゃがみ込んだ。

    「……何だ?」

    「お…俺は…人類の役に立てた…でしょうか…このまま…何の役にも…
    …立てずに…死ぬのでしょうか…」

    ――あぁ、俺は本当にダメな奴だ…情けない…兵長を困らせることをこの期に及んで…

     これなら、傍に居てくれと、泣きついたしまった方がまだよかったかもしれない。
    だけど、これはきっと、俺だけの言葉じゃないはずだ。死んでいった仲間たちも
    同じような思いを心のどこかに抱えていたはず…絶対にそうだ。

    ――どうか、受け取って…皆の想いを

      気がつけば、視線さえ動かせない俺の身体のはずが、空に向って手を伸ばす。
     血塗れの手――。こんな汚い手、潔癖症の兵長は…きっと見るのも嫌だろう。

    ――あぁ、また兵長を困らせてしまった…え…

     何事もなかったように手を降ろそうとしたその時、力強い手がそれを握る。

    「お前は…」

      まさか、という気持ちが過ぎっても確かに手の感触がそこにある。
     互いの手のひらの中に俺の血が滴る。頬に落ちたあの紅い実もこの中にあるのか…。
     人類最強に相応しい、力強い手の感触を俺は忘れたくない――。

    「お前は…十分に活躍した。
    そして……これからもだ。お前の残した意思が俺に『力』を与える」

     力強い声の兵長の目を見つめる。この人もこんな顔をするんだ。

     何て…熱い眼だろう

     何て強い眼…だろう

     それに引き換え俺は揺れる眼差しを返す。巨人からも死の恐怖からも
    ましてや自己嫌悪や無念の絶望からも、この人は俺を救い出す。

     本当の自由の翼が背中から生えたのか、
    身体がふわりと軽くなり、世界が色彩を取り戻してゆく。
     消えゆく俺を、氷の中でも燃え続ける炎のような力強い声が俺を包む。

    ――兵長…あなたの声は…仲間たちへの嬉しい土産になりました…

     天へ繋がる階段を駆け上がりながら、何度も何度もその言葉が俺の心の中で木魂する。
     
    「約束しよう……俺は必ず! 巨人を絶滅させる!!」





    …fin

  8. 8 : : 2014/05/08(木) 01:11:23
    ★あとがき★

    タイトルの『滴る紅い実』について。
    昨日、買い物途中で見つけたある家の庭先に赤い実を付けた
    木があるなぁって眺めていたら、それは『下がり花』でした。
    赤い『木の実』にも見えるので、タイトルに使おうと
    ひらめきました。
    そして、今日もその庭先の前を通ると空に向って
    花が咲いていました。私が『下がり花』と
    勘違いしたのは、結局、小さな赤い花のつぼみでした。
    ハンジさん『本当に見えているものと、本質は違う』という
    セリフがありますが、まさにその瞬間を目の当たりにして、
    もしかして1日ずれてその花を見ていたら、
    タイトルも変っていたかも、なんて思った次第です…。
  9. 9 : : 2014/05/08(木) 01:17:17
    ★あとがき…2★


    泪飴ちゃんの下書きをもらったとき、
    畏れ多くて、私は大丈夫だろうか、って思いましたが
    でも、書き出したら朝まで書いてました…仕事より
    一生懸命だったかもしれません。。

    泪飴ちゃんと言ったら、やっぱりリヴァイだと思ったので
    ネタのリクエストとして

    最後を『約束しよう…!』と死にゆく兵にと手と取り合う
    というオチ、そしてその兵とリヴァイとの関係をお願いしました。

    泪飴ちゃんの世界観を壊さず、それで私の色を染める
    というのは大変そうで、予想以上に面白かったです。

    また泪飴ちゃんから頂いたネタをUPしますので、
    その違いを感じていただいたら嬉しいです。
  10. 10 : : 2014/05/08(木) 01:19:25
    あくまでも、下書きですので…誤字脱字はご容赦ください!

    泪飴ちゃんから頂いた下書き!

    耳障りな音。
    体が、少しずつ千切られていく。
    散らばり、脈打ちながら霞んでいく、感覚。

    痛い。
    疑問。
    怖い。
    不安。

    混ざり合う感情。

    滲んだ視界に映るのは、苛立ちを覚えたくなるくらい綺麗に晴れた空だ。

    もう力も入らない。
    ただ、体が上下に揺さぶられる。
    だが、剣だけは手放さない。

    いつかは来ると思っていた、生の終わりの瞬間。
    それは、ほんの一瞬で終わるものと思っていたのに、予想外に長引いている。


    きっと、これは罰なんだろう。

    人が死ぬとき、きっとその人は、故郷に残して来た親や兄弟を思い出すのだろう。
    そう、今までの俺は思っていた。

    だが、いざ自分がその立場になった時、揺さぶられる脳裏に思い浮かぶのは全く違うものだった。


    出発前の、団長の演説。
    馬の蹄の音、砂埃の臭い。
    打ち上がる信煙弾。
    巨人の姿、顔、足音、臭い。
    死んでいった仲間達のかつての笑顔、耳に残る断末魔、焼き付いた死に顔。

    そして。
    それら全てを押し流すように思い起こされるのは、あの人の声だ。


    ああ、世界の残酷さの中に、一粒くらい希望が転がっているのなら。
    誰か、あの人をここに、呼んできてくれ。



    ***


    壁外調査前日の訓練の直後、兵長が俺に声を掛けて下さった。

    正直、嬉しい、というよりは驚いた。
    調査の前日で多忙な兵長が、こんな末端の兵である俺達の訓練をご覧になっているとは思わなかったからだ。

    兵長は、他の兵士達には目もくれず、真っ直ぐ俺の所へ歩いてきた。

    内心、兵長からお誉めの言葉を戴けるのではないか、と期待していた。
    今回の模擬巨人戦闘訓練では、俺は他の誰よりも多く討伐数を稼いでいたからだ。

    兵長の感想はとても短かった。

    「なってない」

    「え…」

    「あんなスピードで飛んだら、後衛が置いてかれちまうだろうが…」

    ショックだった。
    俺の一番の強みは、立体機動のスピードだ。
    それを根底から否定されたような気がして、思わず口答えをしてしまった。

    「…で、ですが……立体機動中は、スピードを落とせば落とすほど巨人に捕まりやすくなる……わざわざ失速するなんて……………いや……すいません…一般兵の分際で……」

    「…お前の立体機動の能力の高さは知っている。書類上じゃない、今までの調査で見てきた」

    「こ、光栄です…!!」

    「そして、それ故に…お前に何が足りないのかもわかる」

    「…そ、それが…」

    「お前には、仲間との連携能力が足りない…いや、正確には、連携しようという努力が足りない」

    「努力……」

    「俺達は、一人で戦っているわけじゃない…そもそも、巨人なんて、本来一人で戦うべき相手じゃねぇ……違うか?」

    「は、はい…」

    「己の力を信じても、仲間の判断を信じても、結果は誰にもわからない……だからこそ、お前は回りの人間と協力するべきだ…そうしなければ…」

    「リヴァイ、急げ」

    声のした方を見ると、団長が佇んでいる。
    片手に鞄を持っているところを見ると、これからどこかに出掛けるのだろう。

    「ちっ……とにかく、精進しろ。訓練に励め」

    くるりと背中を向けて、兵長は早足で去っていく。

    「は、はい…!!」

    その返事が届いたかわからない。
    用事があって忙しい中で、わざわざ足を止め、俺の訓練を見て下さったのだと、愚かな俺が気づいたのは、その時だった。

    その上、上官への口答えなど、比較的自由な気風の調査兵団であっても許されることではない。
    ましてや、兵士長に対してそんな態度を取れば、ただでは済む訳がなかった。

    だが、 兵長はそんな俺の無礼な言動に対し、何も言わなかった。
    もともと尊敬していたが、それは、崇拝にも近い感情になった。

    兵長は、団長に何か早口で話した後、急いでどこかへ走って行った。
    2人の背中が見えなくなるまで、敬礼を崩さなかった。
  11. 11 : : 2014/05/08(木) 01:20:13
    ******

    「う………ぐっ…………あ……………」

    噛まれるたびに漏れる声が弱くなっていくのが、自分でもわかる。


    身体が何度も潰される痛み。
    なぜこの巨人は俺をすぐに喰わないのか、という疑問。
    死がじわじわと寄ってくる、恐怖。
    このまま、俺は何もできずに死ぬのか、という不安。

    陣形は今どうなっている?
    限界地点はまだまだ先のはずだ。
    本来ならもっと先まで進まなければいけない。
    こんなところで悠長に、巨人と戦闘している場合ではないのに。

    見通しの悪い旧市街地を通過中、陣形全体が、突然大量の奇行種に包囲されて、完全に足並みが乱れてしまった。

    俺の班も善戦したが、高い建物の少ない環境ではあまりに不利すぎた。


    違う。
    そんなのは言い訳だ。


    班の仲間を殺したのは俺だ。
    俺がでしゃばったりしたから。
    回りの仲間のことを考えずに、一人で切り抜けようとしたから。

    『仲間と協力しろ』


    兵長は、わざわざ前日に、俺に忠告を下さっていたのに。

    頬を伝う熱い液体は、血だけではない。

    悔しい。
    仲間に、団長に、兵長に申し訳ない。


    このまま死んでたまるかよ。


    「最後に残るのは人類だ…!!」

    声と、力を振り絞って、折れた剣を振り抜く。
    それは、俺の体を長い時間掛けて咀嚼していた巨人の頬に刺さった。

    ジロリと巨人が俺を見て、その巨大な顎に力が入った。

    「ぐああああああああああ!!」

    背骨が折れた気がする。
    ああ、もうこれは助からないな。
    医学には明るくない自分でも、なんとなくわかってしまった。

    言葉なんか通じるはずのない化け物に、最後の強がりを言う。

    「お前らなんか…きっと…リヴァイ兵長が……!!!」



    俺の言葉の直後、巨人の背後を閃光のように通過する人影。
    がくん、という静かな衝撃を感じると共に、巨人から生気が失われる。


    彼だ。
    待ち望んだ、彼が来た。

    鋭い斬撃で切り取られたうなじの肉片が落ちて行くのを目で追いながら、俺も巨人ごと地面へ倒れる。
  12. 12 : : 2014/05/08(木) 01:21:31
    「うっ………」

    巨人の口の中に体が入っていたお蔭で、地面に落ちた衝撃が和らげられたようだ。
    薄く眼を開くと、兵長が真上を通過した。

    そういえばあっちに巨人が2体居た
    そうか、あれを倒しに行くのか。

    そう思っていると、すぐ傍に誰かが降り立つ音がした。

    「大丈夫!?助けに来たわ!」

    明るい、美しい茶髪の女性兵士…ペトラ・ラル。
    巨人の口から俺の体を引きずり出し、手際よく止血をする。

    「兵長は……あっちか……」

    「ええ……兵長ならきっと大丈夫……」

    そう言った瞬間、地響きが伝わってくる。

    「1体倒したみたいね……あ、もう1体も……」

    「はは……すげぇ……な………」

    「気をしっかり持って……大丈夫、きっと……」

    ペトラの手が傷口を強く圧迫する。
    助かるにせよ、助からないにせよ、もう、全てを預けてしまおう。
    さっきまで心の中を渦巻いていた、様々な感情から解放されて、安心感に包まれる。

    それと同時に、意識が遠のいていく。

    もういい。
    もう、これで。





    いや、違う。

    良くなんかない。

    俺はまだ、何も出来てない。
    悔しい。

    悔しい。


    サク、サク、と、地面を踏む音がする。

    「兵長………血が……止まりません………」

    ああ、来て下さったのか。

    俺なんかに構わないで、まだ戦っている他の兵の支援に向かって下さい、と叫ぶ自分と、最後まで傍に居て欲しい、と叫ぶ自分が居る。


    「兵長、」

    どちらを言うか決めかねたまま、ただ名を呼ぶ。

    静かな足音の後、兵長が傍にしゃがみ込む。

    「……何だ?」

    「お…俺は…人類の役に…立てた…でしょうか……このまま…何の役にも…立てずに…死ぬのでしょうか…」

    ああ、俺は本当にだめな奴だ。
    これなら、傍に居てくれ、と泣きついた方がまだましだったかもしれない。
    兵長を困らせてどうするんだ。

    でも、きっとこれは、俺だけの言葉じゃない。
    死んでいった仲間達も、同じような思いを心のどこかに抱えていたはずなんだ。

    どうか、受け取って…。

    気が付けば、空に向かって手を伸ばしていた。

    血塗れの手。
    こんな汚い手、潔癖症の兵長は、きっと見るのも嫌だろう。

    ああ、また、兵長を困らせてしまった。

    そっと手を降ろそうとした時、力強い手がそれを握る。

    「お前は、」

    まさか、と思ったが、確かに手の感触がある。
    人類最強にふさわしい、力強い手の、感触が。

    「お前は十分に活躍した。そして……これからもだ。お前の残した意志が俺に『力』を与える」

    兵長の目を見る。

    ああ、この人も、こんな顔をするんだ。
    何て熱い眼だろう。
    何て強い眼だろう。

    巨人からも、死の恐怖からも、自己嫌悪や無念や絶望の闇からも、この人は俺を救い出す。



    身体が軽くなり、世界が、色彩を取り戻していく。
    消えて行く俺を、力強い声が包み込む。

    天への階段を駆け上がりながら、俺は何度もその言葉を心の中で繰り返す。





    「約束しよう……俺は必ず!!巨人を絶滅させる!!」




    【END】
  13. 13 : : 2014/05/08(木) 01:33:24
    羽ばたきの朝【女上アサヒ×泪飴 コラボ企画】(http://www.ssnote.net/archives/16293

    泪飴ちゃんの作品です。

    普段、私の娘だと思っている泪飴ちゃんとのコラボは
    刺激的でした。
    最近の若い子と私(汗)を繋げる『進撃の巨人』に
    感謝すると共に私も精進せねば、と改めて決意しました。

    何度も打ち合わせをしたのですが、同じ作品なのに
    読み手が変れば受け取り方も十人十色だと思わされ
    眼からうろこです。

    改めて大人も楽しめる文章を書きたい、
    このコラボで本当に思いました。

    皆様、楽しんで頂けましたでしょうか。

    読んで下さった一人ひとりの皆様に感謝いたします。

    また第二弾もやっていこう思います。

    これからもよろしくお願い致します!

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lamaku_pele

女上アサヒ

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