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ハンジ「私の名前を呼ばないで」※モブハン

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  1. 1 : : 2014/04/20(日) 23:13:46

    転成ものでハンジさんとモブリットの名前が変化しています。

    ハンジ→アリス・エルサ
    モブリット→ジェーン・カイル

    この話は名前を主題としたものです!
    モブハンが苦手な方、シリアス駄目な方は控えましょう!(>_<)ゞ
    大丈夫な方は支援お願いします!そして安定の亀です!

    荒らしさんに荒らされてしまったので作り直します!
    お気に入り登録、応援コメントしてくださった方、申し訳ありません!
  2. 2 : : 2014/04/20(日) 23:14:43
    コメント制御してしまいますが、読んでくださると光栄です!
  3. 3 : : 2014/04/20(日) 23:15:08


    ねえ、やめてよ。
    君の愛しい口から、君の愛しい声で、私の名を呼ばないで。
    お願いだから…私の‘今’の名前なんて呼ばないで。

    まるで知り合いに話しかけるような声で呼ばないで。

    お願い、お願いだよ。



    モブリット――――、どうか、私の名前を呼ばないで…

  4. 4 : : 2014/04/20(日) 23:15:36

    私の名前はジェーン・カイル、牧場で牛を育ててミルクを売っている。
    父の代からあるこの牧場には、いまや私一人しかいない。
    両親がなくなってたった一人の私は、此処にいる牛達が友人である。

    田舎だから人間もあまり来ないこともあり、人間との時間よりも、私は牛との時間を大切にしてきた。

    だが、別に人間が嫌いとか、そうゆうわけじゃない。
    ミルクを買いに来てくれる人や、牛達と遊んでくれる近くに住む子供達との時間も、私にとっては幸せな時間だ。

    今日は良い天気なので、洗濯物を干そうと、外に出た。

    ジェーン「ふう、今日は洗濯日和かな…」

    ミーナ「カイルおじさん!!」

    ジェーン「やあ!ミーナ。今日はどうしたのかな?」

    目の前の女の子の名前はミーナ。
    いつもミルクを買いに来て、私の牛達に大変人気のある女の子だ。
    彼女は優しから、牛達も安心して接することができるのだろう。

    ミーナ「ええとね!お父さんが、ミルクを分けてくれって!あとね、今月のつけ?はちゃんと返すだって!!」

    ジェーン「ゲルガーさんがそう言って酒代、返してもらったためしがないんだよなあ…」

    ミーナのお父さんはゲルガーと言って、お酒が大好きな男だ。
    だが、決して駄目な親ではなく、娘や妻のために毎日力仕事でお金を稼ぐ、私からすれば、カッコいいお父さんだ。

    ジェーン「仕方ないね。来月まで待ってあげますよ、って言っておいてくれるかい?ミーナ」

    ミーナ「うん!!」

    ミーナは笑顔で頷くと、牛達の方へと走っていった。
    私は一度、自分の住む小屋に戻って、美味しいミルクを用意する。

    ミーナ「カイルおじさん!!」

    ジェーン「うん?どうしたのかな?」

    ミーナ「牛さんのところに女の人がいる!!」

    ジェーン「女の人?」

    ミーナ「きっと都会の人だよ!!だって、服がすっごく高そうだもん!」

    都会と聞いて、私は思わず嫌そうな顔をしてしまう。
    何度か観光目的で此処にくる人間はいたのだが、牛達を怒らせたり、からかい目的で来る人間が多いのだ。

    もし、そんな奴だったら追い返してやろう、と心に決めて、

    ジェーン「ミーナ、案内してくれる?」

    ミーナ「うん!!」

    ミーナに手を引っ張られて、そこに向かったのだった。

  5. 5 : : 2014/04/20(日) 23:16:02

    そこに近付けば近付くほどに、そこに立っている女の人の姿は確実になっていって…

    確かに都会の人と言った格好の人に、私は思わず見惚れた。

    私の牛の背中を優しく撫でている彼女は、茶黒の髪を上の方で一つに纏めていて、下は皮で出来たスレンダーなズボン。
    上には白衣に似た白い上着、そして、一切焼けていない白い首には青い空が埋め込まれたかのような石のネックレス。




    眼鏡の下にあるのは、悲しげなヘイゼルの瞳―――。




    ジェーン「……」

    私は何故だか勝手に動く声にならない言葉を発した。

    この言葉は、きっと彼女にも、隣のミーナにすら届かなかっただろう。
    私にも、聞こえていなかったのだから。

    彼女はこちらに気づくと、大きな瞳を極限まで見開かせた。


    ?「あ…、…ここの…主人かな?」


    ジェーン「え?ええ!はい!あの…牛に興味でも…?」

    ?「いや…その、偶然、ここらの景色に眼を奪われてね…それで、とても幸せな牛たちだなあ…って、」


    ジェーン「…幸せ?」

    ?「…体を見る限り、大事に水で洗ってもらってウイルスの心配も無い、食料も十分に摂取しているらしい、健康そのもの。
    大事に育ててもらっている証拠だよ。これは飼い主に恵まれて、幸せなのは一目瞭然だろう?」

    私は不意打ちな賞賛の言葉に頬を赤くした、こんなに褒めてくれる人にあったことがないのだ。
    喜ばずにはいられないだろう。

    ジェーン「あの…失礼ですが、お名前は?」

    もっと話がしたい。

    そう思ったから、彼女の名前を聞いた。

    すると彼女は辛そうな顔をして、言った。




    アリス「アリス・エルサ…」


    彼女の名前が耳に入った瞬間、何故か、違うと否定した自分がいた。
  6. 6 : : 2014/04/20(日) 23:17:04

    ジェーン「じゃあ、アリスさんは生態系について研究しているんですか」

    私とアリスさんは、牛と遊んでいるミーナを眺めながら、互いの話をした。

    何故だか彼女の過去を聞くと、彼女は辛そうに表情を固くした。
    過去に何かあったのかもしれない。

    初めて会ったばかりというのに…私は彼女の表情を見て会話するようになっていた。
    できることなら、彼女の辛い顔を見たくなかった。

    生物のことを聞けば、彼女の表情は太陽のように明るくなっていく。


    それを見ると、心から満たされた。

    アリス「ああ!あれは素晴らしいよ、奥深く、それでいて人類の誰にもその一番奥深くに触れさせたことがない!」

    ジェーン「…」

    アリス「私はその奥底に眠る秘密というやつを掘り起こしたいのさ!
    どんなものがあるのか、それを見て私は喜ぶのか、それとも幻滅するのか!あぁ、探究心が疼いて仕方ないよ!」

    ジェーン「ふふっ、」





    全くもう…相変わらずなんだから…***さんは…




    ジェーン「…え?」



    今、私は何を考えた?




    アリス「…?どうかしたかい?ジェーン」

    ジェーン「え?あ、いや…」

    アリス「…そう…」

    アリスさんは落ち着いたのか、私のことを見つめて微笑んだ。

    ドキンッと何故か跳ねる心臓に私は首をかしげる。

    アリス「ねえ、ジェーン…君の話を聞かせてくれ」

    ジェーンと呼ばれることに違和感を感じた。
    きっと気のせいだろうと私は笑顔を作った。

    ジェーン「私の…ですか?」

    アリス「ああ、君の今まで過ごした時間を私に語ってくれ」

    自分の過ごした時間…か。

    ジェーン「アリスさんが面白がるような話はないですよ?」

    アリス「そんなことはないさ、私は気になった事は聞いておかないと気がすまない主義なんだ。君の人生に興味があるんだ」

    ジェーン「……じゃあ、私の言える範囲で…良いんですよね?」

    アリス「うん!」

  7. 7 : : 2014/04/20(日) 23:17:35

    私のつまらない話をアリスさんは熱心に聞いてくれた。
    こっちが申し訳ないくらいだ。

    ジェーン「…それで両親が死んで、私が後を継いだんです。…って、なんでそんなに嬉しそうなんですか?」

    アリス「へ?あ…いや…君のご両親に感謝しないとね!
    君がこんなにも優しい性格になったのは、君のご両親のおかげなんだろ?」

    ジェーン「…え、まあ…そうですね。二人には感謝しきれないくらいですよ」

    アリス「ふふっ、」

    アリスさんはからからと笑った。
    何故だかその姿に…何か別の人が重なった気がする。


    この人に会ってから、変な違和感を感じてばかりだ。


    ジェーン「あの…アリスさんは私と何処かでお会いになったことがありますか?」

    アリス「…っ」

    私の質問に、アリスさんは一瞬喉を鳴らした。と、思えば腹を抱えて笑い出す。


    アリス「なぁにソレ?もしかしてアタックされてる?」

    ジェーン「ちちちちちち違いますよ!///」

    アリス「ふふふっあははっ!」

    ジェーン「もういいです!」


    顔が赤くなるのを隠して、私は横目で彼女を見た。
    魅了するような大人の美しさを持っていて、どこか子供な彼女の笑顔は何故だか辛そうで、


    それの理由がなんなのか、私には皆目見当がつかなかった。



    アリス「じゃあ私は帰るよ。連れももうすぐ来るだろうし…」

    ジェーン「あ…そうなんですか…」

    落胆の気持ちが胸に残る。



    ジェーン「あの…アリスさん!ちょっと待っててください!」

    アリス「…?」


    急いで小屋に戻って、ミーナに用意しておいたミルクの瓶をアリスさんに渡した。

    ジェーン「これ、うちのミルク…よかったら飲んでください」

    アリス「…ありがとう!」


    アリスさんは嬉しそうに微笑んだ。

    それに胸を撫で下ろすと、


    アリス「じゃあ、バイバイ」



    ジェーン「アリスさん!」

    アリス「?」

    ジェーン「また…来て…くれますか?」






    その言葉に、彼女は困ったように笑うと、

    アリス「明日も来るよ」

    そう言って去っていった。

  8. 8 : : 2014/04/20(日) 23:17:59

    明日も来てくれる…その事実に、何故か喜びから胸が躍った。
    いつの間にか、此方に来ていたミーナが不思議そうに私を見上げてくる。

    ジェーン「どうしたのかな?」

    ミーナ「カイルおじさん、なんだか嬉しそう!」

    ジェーン「…ああ。嬉しいよ」

    ミーナはきゃっきゃと私の周りを走り回る。
    いつ転ぶか気が気じゃないので、小さい体を抱き上げて、

    ジェーン「さて、ゲルガーさんのところにでも行こうか」

    ミーナ「うん!あれ?ミルクは…?」

    ジェーン「…あ」

    さっきアリスさんに咄嗟に渡してしまったんだった。

    ジェーン「溜めておいたのは、もう無いしなあ…仕方ない。
    ミーナ、ゲルガーさんに、明日届けに行きますって言っておいてくれるかな?」

    ミーナ「うん!わかった!」

    これ異常ないほどに満面の笑顔で応じたミーナの顔を見て、アリスさんもこれくらい思いっきり笑ってくれたら…
    と、無意識のうちに考えてしまった。


    私は青く広がる大空にを見て、



    「明日、晴れるといいなあ」

    と、呟いたのだった。
  9. 9 : : 2014/04/20(日) 23:18:34


    翌日、朝眼を覚ませば、激しい雨が降っていた。
    私の家は脆く、木で作られた小屋は強い雨に打たれて嫌な音をたてる。

    隙間から、ポタリ、ポタリ、と落ちてくる雫を眺めて、はっとベッドから飛び起きる。

    ジェーン「牛達が大丈夫か見に行ってやらなくては!」

    急いで牛達の眠る大きめな小屋に向かった。
    私の家よりもちゃんとした作りになっているから、大丈夫だとは思うけど、念には念を、だ!

    予想がはずれて、牛たちは何も以上はなかった。
    けど、中に牛でないものがいた。

    ジェーン「…ミーナ?」

    牛の背中を摩る小さい女の子に、私は驚いて走りよる。

    ジェーン「どうしたんだ!!?こんな朝早くに?」

    ミーナ「…んとね!さっき可愛い女の子とお友達になったの!」

    ジェーン「女の子?」

    ミーナ「うん!金髪の女の子!でね、一緒にかくれんぼしてたら、はぐれっちゃったの!」

    ジェーン「じゃあ、おじさんも探すよ」

    ミーナ「うん!」

    牛を摩るのをやめて、私の手を取ると、ミーナは笑った。
  10. 10 : : 2014/04/20(日) 23:18:51

    ジェーン「でも、もうこんな大雨の日に、かくれんぼなんかしてはいけないよ?」

    ミーナ「はあい!」

    元気良く返事をしたは良いが、果たして分かってくれたかどうか、不安だ。

    ジェーン「それで?金髪の女の子の名前は?」

    ミーナ「アニだよ!この間引っ越してきたイェーガーおじさんの娘さんなんだって!」

    ジェーン「へえ…そうなのか…、どこではぐれたのかな?」

    ミーナ「んーと、んーと、わかんない!」

    ジェーン「はあ…」

    どうするかな…この天気だし、そう遠くは行っていないと思うけど、子供がもし雨に打たれたままだと体を壊すかもしれない。
    幸いに、金髪の女の子なんてこの辺じゃ珍しいから、すぐに見つかると思うけど…

    ジェーン「…うーむ」

    ここの近くの建物といったら、私が先程まで寝ていた小屋なのだけど…

    ジェーン「戻ってみるか」

    ミーナにカッパを着させて二人で私の小屋に向かった。
    アニという女の子は余程しっかりしているのか、ミーナは心配ないと鼻歌を奏でていた。

    選曲は『いぬのおまわりさん』だった。
  11. 11 : : 2014/04/20(日) 23:19:10


    小屋に戻ると、金髪の女の子と、もう一人、アリスさんがいた。
    金髪の女の子に気づくと、ミーナは抱きつく勢いで走り出して、私もそれに続いた。

    ジェーン「アリスさん!!」

    アリス「やあ、おはよう。昨日の約束どおり、また来たよ」

    ジェーン「あ、あの…」

    アリス「うん?」

    アリスさんは昨日と同じ服装で、堂々と私の前で腰に手を当てた。
    しかし、昨日と違うのが、雨に濡れたせいで、白い白衣の下に着ている柄付きのシャツが透けて下着が見えてしまった!
    青い生地が微かに見えて、私は頬に熱を感じながら目を逸らした。

    アリス「!…ああ、」

    アリスさんは気づいたのか、声を漏らす。
    しかし、恥ずかしがる気配すら見せず、隠そうともしない彼女に思わず私は叫んだ。

    ジェーン「ちゃ、ちゃんと隠してください!まったくもう、貴方は!女性だという自覚を持って……って、すいません!」

    口から出た言葉を手で押さえながら眼の前の女性に謝った。

    な、私は何を!!?
    昨日今日会ったばかりの人にこんな失礼なことを!でも、女性としてそれくらいは…

    女性の下着を不本意とはいえ、見てしまった羞恥から、頭でよく考えられなかった私をアリスさんは嬉しそうに眺めた。

    アリス「ははは、そう言われたの久しぶりだな!!」

    初めてじゃないんですか…、

    私は思わず頭を抱えた。
  12. 12 : : 2014/04/20(日) 23:31:29

    そして、ふと下を向くと、小さい女の子二人が、再会を喜んで抱き合っていた。

    ミーナ「アニ!此処にいたんだ!」

    アニ「…うん」

    アニの方はアリスさんと同じく、びしょ濡れで、早く替えの服を着させないと風邪を引いてしまうだろう。
    私はミーナ、そして濡れた二人を小屋の中に入れて、自分ので悪いけど服や毛布を渡した。

    ジェーン「アニはちょうどいい服がないから、ミーナが昔置いて行った服を貸してもいいかな?」

    ミーナ「うん!貸してあげて!」

    ジェーン「アリスさんは、私の服でいいですか?」

    アリス「うん、構わないよ」

    そう言って脱ぎだすアリスさんを必死に制して、

    ジェーン「私が外に行きますから、まだ脱がないで下さい!!」

    アリス「はーい」

    その気の抜けた声を余所に、私は急いでドアを閉めた。

  13. 13 : : 2014/04/21(月) 23:27:47

    私は外に出て、一面に広がる雨でできた海に視線をやり、溜め息をついた。

    …こんな天気なんて、最悪だな…せっかくアリスさんが来てくれたというのに。

    そう思っていると、思い出したように腹の虫が、限界だと音(ね)を上げた。

    そういえば起きてから一食も食べていないのだ。
    今日の朝御飯を何をするか考えていれば、背中越しのドアが開かれて、私の服を着たアリスさんが顔を出す。

    アリス「やあ、すまないね。寒かっただろう?ミーナとア二が朝飯を食べに家に帰るらしいから、送ってあげたいのだけど…。
    貴方も付いて来てくれるかな?」

    ジェーン「構いませんよ。ちょうどミーナのお父さんに、ミルクを渡さなくてはいけなかったんです」

    アリス「へえ、やはりそうなんだね」

    ジェーン「やはりって?」

    アリス「昨日の私にくれたミルクの瓶に、何やら知らない名字が書いてあってね。
    これはもともと、誰かのために用意されたものだということは、すぐに察しがついたよ」

    私はにこりと微笑んだ彼女の言葉に、気恥ずかしさから頭をポリポリと掻いた。
  14. 14 : : 2014/04/21(月) 23:31:01

    なんだ、バレていたのか…
    しかしまあ…あの行動を何故したのか、自分自身でも分からない。
    何故かこの人との時間の口実を作りたかったのだ。

    ジェーン「…はは、」

    もしかしたら私は、彼女に一目惚れでもしてしまったのかな?

    アリス「そういえば…貴方の苗字をまだ聞いていなかったね?」

    ジェーン「カイル…カイルです。確かに昨日。貴方に教えたのは名前だけでしたね、すみません」

    アリス「いや…構わないよ。カイル…か、そっか…ジェーン・カイルっていうんだ」

    複雑そうな顔に私はまただ、と胸が締め付けられたような感覚に陥る。

    こんな顔をさせたくない。

    もっと、もっと…

    貴方の笑顔が見たいのに…


    アリスさんは下を向いたまま小さく呟いた。


    アリス「…*****…!」


    ジェーン「え?何ですか?雨の音で声が…」

    アリス「…」

    此方を見上げた彼女の表情は貼り付いたような笑顔。
    水分を十分に摂取した髪を揺らして水飛沫を飛ばしながら首を振った。

    アリス「いや…なんでもないよ…」
  15. 15 : : 2014/04/21(月) 23:32:51

    ジェーン「…」

    彼女の表情に、私は全身から、なんでもないわけがない!と、訴えた。
    何か…凄く大事な事を言っていた気がして、私は彼女の両肩を掴む。

    アリス「へ?ジェーン…?どうかしたかい?」

    ジェーン「あのっ…」




    さっき何を言ったんですか?

    そう聞こうとしたら、タイミング良く元気な声がドアを開けて放たれた。

    ミーナ「カイルおじさん!アリスおねーちゃん!カッパちゃんと着たよ!」

    アニ「…」

    ミーナの服と、カッパを着用したアニは私達の状況を見て、指を差した。

    アニ「告白でもするの?」

    その小さい子供によって発せられた言葉は、彼女を意識し始めている私を大きく動揺させた。

    ジェーン「ちちちち、ちがっ///」

    ミーナ「こくはくって、なあに?」

    アニ「…結婚すること」

    ジェーン「違うでしょ!」

    可愛い顔して何て事を言うんだ!
    私はアリスさんの肩を掴んでいた手を直ぐに放して、先程から何も言わない彼女の顔を見て、言葉を失った。

    アリスさんは貼り付いたような笑顔が取り除かれて、本当に面白そうにクスクスと笑っていたのだ。

    アリス「そんなに必死にならなくても、ふふっ!」

    そのあどけない顔に私は今度こそ、隠しきれないくらいに頬を赤く染めたのは仕方のないことだろう。


    それぐらい、魅力的な顔だった。


    ミーナ「わかった!結婚ってキスすることか!」

    アニ「…まあ…そうだね」
    …なんだか否定するのも疲れてきたので、好き勝手言わせることにした。
  16. 16 : : 2014/04/21(月) 23:43:55


    私の家はシガンシナ村という村の外れにある、ミーナの家はシガンシナ村の真中にあった。

    アリス「ミーナとアニの家、どっちの方が近いのかな?」

    アニ「私…の方が近いと思う」

    アリス「じゃあアニの方を先にいくとしようか!」

    アリスさんはアニに手を差しのべる、アニは恥ずかしがりながらも、その手を受け取った。

    新しく引っ越してきたイェーガー家に来たのは私も初めてで、ドアの前で些か緊張しながらノックする。

    アリスさんは、アニの両親の名を聞くと、足を止めて途中で待っていると言った。
    長い時間待たせるわけにもいかないし、早く出てきてほしいのだが、全くドアから人が出てこない。

    アニはドアを開けて、

    アニ「お母さんは耳が悪いの」

    と言った。

    ジェーン「え?そうなのかい?」

    アニ「うん。でも気配に敏感だから家に入れば気付くよ」

    どこぞのゴルゴですか?お母さんは。

    少し待てば、二階の方から短髪黒髪のまだ若い女性が下りてきて、赤いカーディガンを羽織った彼女はまさに病人のようだった。
    アニは彼女のロングスカートの裾を引っ張って、

    アニ「ただいま」

    と言った。そこまで近付かなければ聞こえないのだろうか。

    ?「おかえりなさい、アニ。どこに行っていたの?」

    アニ「うん、牧場。このおじさんが送ってくれたの」

    女性は私に気づくと、無表情で頭を下げて挨拶をしてきた。

    ミカサ「初めまして、アニの母のミカサ・イェーガーです。あの…失礼ですが、貴方は?」

    ジェーン「あ!ジェーン・カイルです!あ、あの!村の外れでミルクを売ってましてっ」

    あ、耳が悪いのか…もっと近付かなくてはいけなかったのかも…

    ミカサ「そうですか。アニを連れてきてくれて、ありがとうございます」

    あれ?

    ジェーン「あの…聞こえるんですか?」

    ミカサ「口の動きである程度はわかります」

    す、すごい。私は心の底から目の前の女性、ミカサ・イェーガーの能力の高さに拍手を送った。
  17. 17 : : 2014/04/27(日) 14:26:26

    イェーガー家に別れを告げて、途中で別れたアリスさんとミーナを探していた私は、
    ミーナの父、ゲルガーさんの後ろ姿を建物と建物の間から見つけた。

    どうやら誰かと話しているらしい。
    聴いているだけで身体が重くなるような、威圧感を持った男性の声だ。

    ?「いいか?見つけたら直ぐに連絡をくれ。アイツはこの村に興味を持っていたから、来ているかもしれん」

    ゲルガー「ああ、わかったよ。しかし、お前さんとアイツが今回は兄妹とはなあ…神様も面白い感じに造り替えてくれたもんだ」

    ?「笑い事じゃねえよ。本当に俺達を造り替えた神がいるなら俺は心から軽蔑する。
    アイツからまた自由を奪った神なんてな…」

    ゲルガー「…どういうこった?」

    ?「アイツの今回の身体は昔と違う。…ガンなんだよ」

    ゲルガー「なに!!?」

    ?「つっても、一応治療可能なんだが、アイツの年齢から五分五分の手術らしい」

    私は壁に背を向けて、何故だかとんでもない焦りを感じた。
    心の片隅で、この会話に出てくるアイツが、アリスさんではないかと思ってしまったのだ。

    とにかく此処から離れようと決めれば、地に散らばってある小枝を踏んでしまった。

    ?「誰かいるのか?」

    !!
  18. 18 : : 2014/04/27(日) 14:27:30

    ゲルガー「ん?ジェーンじゃねえか」

    ?「!!!…まさか、」

    ゲルガーさんと一緒に歩み寄ってきたのは、少し背の低い刈り上げの男性だった。
    しっかりとしたスーツに、高そうなバッグ、アリスさんと同じ都会の人なんだなと私は戸惑う。

    まさか、本当にガンの人間が、アリスさんじゃないだろうな…?

    ジェーン「あ、ゲルガーさん…ミーナを送り届けに来まして…後、ミルクも…」

    ?「モブリット…、バーナー…か…」

    ジェーン「へ?」

    モブ、…なんだ、…?よく聞こえなかった。
  19. 19 : : 2014/04/27(日) 14:29:55

    首をかしげた私に、男性は辛そうに表情を歪ませて舌を打った。
    その辛そうな表情は…アリスさんのソレと同じようなモノだった気がした。

    ?「なるほどな…、アイツが此処に興味をもった理由が分かったぜ…ちっ、コイツがいたとはな…」

    ジェーン「あの…」

    リヴァイ「リヴァイだ。お前…、はん…」

    ゲルガー「おっとっと!悪いなモブリット!ミルクもミーナも有り難く頂戴するぜ!
    でも俺はコイツと昔馴染みの付き合いで、飲みに行くんだ!女房によろしく言っておいてくれ!」

    ジェーン「えっ!?ちょ、ゲルガーさん!」

    リヴァイさんの言葉を遮って、誤魔化すように笑った遠ざかる彼の背中を眺めて、私は溜め息をついた。

    ジェーン「また怒られますよ…私はもうお金貸しませんからね!」

    そう悪態ついて、ゲルガーさんは片手を挙げて笑った。
    ああでも、リヴァイさんお金持ちそうだったしと、自分の財布の心配は、最終的に無くなったのであった。
  20. 20 : : 2014/04/27(日) 14:35:40

    ゲルガーさんの家の前にはアリスさんとミーナがいた。
    しかし中には入ろうとせずに、少し様子が可笑しいように見える。

    ジェーン「アリスさん!ミーナ!」

    ミーナ「アリスおねえちゃん、気分悪いんだって」

    ジェーン「ええ!!?大丈夫ですか!!」

    アリス「ああ、…大丈夫。少し立ち眩みをしてしまってね」

    ジェーン「駄目じゃないですか!!リーネさんに椅子でも貸してもらいましょう!」

    私は先程のゲルガーさんとリヴァイさんの話を思い出して、不自然に慌ててしまった。
    それにアリスさんは不思議がりながらも、首を横に振った。

    アリス「いや、大丈夫。私は外で待っているから、早くミーナを返して小屋に戻ろう」

    ジェーン「ですが…」

    いや、まて。そうだ、別にガン持ちのリヴァイさんの妹が、何もアリスさんだと決まったわけじゃないじゃないか。
    雨も止んでいないし…早く終わらせて帰った方が確かにいいんじゃないか?

    ジェーン「わかりました。では直ぐに来るので待っていてください」

    アリス「はいはい」

    無理に笑うアリスさんに背中を向けて、私はミーナの手を掴むと目の前の扉にノックした。
    瞬間、バタリッという音が聞こえて、後ろを振り向くと、

    アリスさんが倒れていた。



    ジェーン「アリスさん!!!!」

    やっぱり無理してたのか!!!
  21. 21 : : 2014/04/27(日) 23:12:32

    リーネ「どうしたの!?ジェーン!!…、え…?」

    家から出てきたミーナの母親であり、ゲルガーさんの妻、リーネさんは、アリスさんの身体を抱え挙げた私を見て驚いた表情を見せた。
    私は、そんな彼女を気遣う暇はなく、勝手に家に上がりこんで、彼女の心拍数などを確認した。
    こういうのって…牛と同じでいいのかな…?わからない!

    ジェーン「リーネさん!すいません!ベッド貸していただけますか?」

    リーネ「え、ぁあ、はい!じゃあ、二階に!」

    ジェーン「ミーナ、すぐに医者を…」

    ミーナ「わかった!」

    ミーナが家を飛び出していくのを確認して、私はアリスさんの身長に対して軽すぎる体に焦りながら、彼女を大切に運んだ。
    寝かせた後に、若い男性の医者が駆けて来る。

    ?「どいてください!」

    ジェーン「は、はい!」

    医者はアリスさんの手を握っていた私を突き飛ばして、アリスさんの心音や呼吸などを見た。
    私とリーネは邪魔者だったらしく、医者の助手らしき金髪の男性に出て行くように促された。

    アリスさん…!

    私は頭の中で、ガンという病名を思い浮かべて唇を噛んだ。


    しばらくして、

    金髪の助手「すいません、少し…エレン…いや、先生から重要なお話があります。ご家族の方は、どなたですか?」

    ジェーン「…はい」

    この時点で彼女の家族はいないし、私が聞いたほうがよいだろう、と結論付けて、片手を挙げた。
    すると、隣のリーネさんが、

    リーネ「わ、私にも聞かせていただけますか?」

    ジェーン「でも、リーネさんには関係が…」

    リーネ「なくないのよ…いいから、聞かせて」

    思いのほか真剣な表情に、私は生唾を呑んで頷いた。
  22. 22 : : 2014/04/29(火) 22:26:10

    別室で若い医者と金髪の助手、そして私とリーネさんが一つの机を取り囲んで座った。
    若い医者は礼儀正しくペコリと頭を下げる。

    エレン「始めまして、俺はエレン・イェーガー、こっちが助手のアルミン・アルレルト」

    ジェーン「イェーガーって、ミカサさんの旦那さんですか?じゃあ、引っ越してきたイェーガー家主は貴方だったのですか!」

    エレンさんは照れ隠しか、頭をぽりぽりと掻いて頷く。
    アルミンさんはそんな彼をクスクスと笑いながら補足と言いたげに続けた。

    アルミン「僕もエレン達と住んでいるんです。医学のない場所で病気や怪我に侵された人々を助けるために此処に来ました」

    ジェーン「立派ですね…」

    エレン「わ、悪いんですが、さっきの女の人のことで、お知らせしたいことが…」

    趣旨がずれたことに気づいた私は、咳払いをしてから耳を傾けた。
    隣のリーネは真剣な表情で、いまかいまかとエレンさんの知らせを待っている。

    こんな真剣に…もしかして、リーネさんとアリスさんは知り合いなのかな?
    そうどうでもいいことを思っているときに、耳に届いた知らせは、あまりにも残酷な事だった。




    エレン「嘘偽りなく言います。彼女はがんです」




    ジェーン「…!!」

    がん、その単語を聞いたとき、私の心臓が勢いよく跳ねた。
  23. 23 : : 2014/05/01(木) 17:06:30
    ガンと聞いてガーンΣ(゚□゚;)………失礼しました。なんでもないです。
  24. 24 : : 2014/05/01(木) 17:08:14
    進撃のキャストをたくさん出そうと思うので、応援よろしくお願いします♪
  25. 25 : : 2014/05/01(木) 22:33:16

    薬はフルツロンとかリツキサントカアルケランとか

    ガンの薬ですよ。

    親戚の人の点滴見たら覚えた。

    死なないで、ハンジ

    期待だ
    泣き
  26. 26 : : 2014/05/01(木) 23:04:37
    >>25
    ハンジもどきさん!
    すいません、ガンのことはあまり詳しくはないのですが、少し辛いお話しになる予定です!
    でも今回は死なせません!あくまでもハッピーエンドをお届けします♪
  27. 27 : : 2014/05/01(木) 23:22:07
    y約束ですよ!(サシャ風)
  28. 28 : : 2014/05/01(木) 23:28:31
    期待です!
  29. 29 : : 2014/05/01(木) 23:32:51
    >>27
    ハンジもどきさん!
    もちろんですよ(♪(゚▽^*)ノ⌒☆

    >>28
    杞憂さん!
    ありがとうございます!頑張りますね!
  30. 30 : : 2014/05/01(木) 23:32:55
    期待してるぜ
  31. 31 : : 2014/05/01(木) 23:33:55
    >>30
    進撃のリヴァイ兵士長さん!
    ありがとうございます!(o≧▽゚)o
  32. 32 : : 2014/05/02(金) 06:11:15
    表示がかわりましたね
  33. 33 : : 2014/05/02(金) 22:11:41
    題が決まらないのです>_<
  34. 34 : : 2014/05/06(火) 19:45:42


    呼んで欲しい名前があった、囁いて欲しい声があった。
    でも、彼は私のことを覚えていない。

    それは、良い。あんな残酷な世界や、昔の恋人の名前なんて思い出さなくても良い。
    思い出さなくてもいいから、呼んで欲しかった。

    お望みどおり、彼は私の名を呼んだ。
    呼んで欲しくない、私の名前を――――――――。

  35. 35 : : 2014/05/06(火) 19:55:44

    アリス「…ん、」

    倒れてから3時間たって、アリスさんは目を覚ました。
    まだ完全に目覚めていないのか、きょろきょろと辺りを見渡して、私を見た。

    ジェーン「大丈夫ですか?アリスさん」

    アリス「ああ、…私は、もしかして、…倒れちゃった?」

    ジェーン「ええ、心臓止まるかと思いましたよ」

    アリス「あはは、すまないね…えっと、ここは?」

    ジェーン「ミーナの家です」

    そう聞いて、アリスさんはなんとも言えない顔をして、気づいたように私の後ろ、部屋の扉の前で立っているリーネさんを見た。
    リーネさんは怒ったような、悲しんでいるような表情をしている。

    やはり、この二人は知り合いなのか。

    リーネ「久しぶりね、」

    アリス「うん…」

    リーネ「はん…」

    アリス「アリス!……私の名前はアリスだよ。リーネ…」

    リーネ「…」

    ちらりと私を見て、リーネさんは諦めたように苦笑を浮かべた。

    リーネ「そう、わかったわ、アリス…」
  36. 36 : : 2014/05/06(火) 20:05:53

    アリス「…ジェーン、帰ろう」

    ジェーン「ええ!!?もう、身体は大丈夫なんですか?いや、駄目ですよね!動いちゃ駄目ですよ!!」

    アリス「大丈夫!!」

    ジェーン「駄目です!」

    アリス「大丈夫だってばああ!!」

    ベッドから立ち上がろうとするアリスさんを、私は必死にとめた。
    だけれど、何度とめても、諦めないアリスさんに私は溜め息をついて外を窓から眺めた。

    鬱陶しいほどに激しい雨はからりと止んで、曇り空には微かな太陽の光が差していた。

    ぷくりと可愛らしく頬を膨らませるアリスさんを、視界の端でみとめて、私は諦めたように、わかりました、と頷いた。
    嬉しそうに顔を上げるアリスさんに心臓を躍らせながらも、それを底に隠して、

    ジェーン「ただし、私の背に乗ってください」

    アリス「はあ!?」

    ジェーン「嫌なら此処に残ってください」

    アリス「うう…わかったよ。ただし、私は重いからね?」

    大丈夫、さっき抱えたときに、軽いことはわかってますから。

    私が差し出した腕をアリスさんが掴むのを見て、隣のリーネさんは嬉しそうに微笑んだのだった。
  37. 37 : : 2014/05/06(火) 20:31:09

    背中に乗せたアリスさんの重さは、先程と同じく軽くて、でも確かな体温に、私は少しだけ頬を緩ませた。
    それに気づいたのか、アリスさんは私の頭をこつんと小突く。

    アリス「なに笑っているのさ?ジェーン」

    ジェーン「い、いえ!すいません!」

    アリス「どうせ私が重くて無理やり笑っているんでしょう!言っておくけどね!私は身長からしたら軽いんだからね!」

    ジェーン「いやいやいや!軽いですよ!ぜんぜん!」

    アリス「怪しい…」

    この初めての会話に、なぜだか懐かしさを覚えた私は、ふと、世間話がてらに最初に感じたことを白状してみることにした。
    もしかしたら、アリスさんも私と同じ事を感じてたりしてないのかなって思って、晴れ晴れと、

    ジェーン「そういえば、私、アリスさんと話していると、すごく懐かしさを覚えるんです」

    アリス「…え、…」

    ジェーン「最初にあったときに、アリスさんの名前を聞いたときにね、この人の眼を、気配を、私は知っているって思いました。
    でもね、名前に違和感を覚えたんです、失礼かもしれないけど、なぜだか私の心が否定した」

    アリス「…」

    ジェーン「もしかしたら、前世ってやつで会っていたのかもしれませんね」

    アリス「…ぜん…せ…」

    ジェーン「アリスさん?」

    頭を私の肩に埋もれさせたアリスさんの行動に、全身に熱がこもるのを感じながら、彼女の名を呼んだ。

    しかし、返答は無い。

    ジェーン「アリスさん?」

    アリス「呼ばないで…」

    ジェーン「え?」






    アリス「私の名前を…呼ばないで!!!」


    彼女のその悲痛の叫びに、私は後悔した。
    何故、私はこんな話をしてしまったのか、…と。
  38. 38 : : 2014/05/10(土) 22:53:43


    次の日は静かな雨が降っていた。

    僕は物憂げに外を見やる。
    隣で私のことを心配してくれた牛達が、私にすりすりと擦り寄ってきて頭を上げた。
    そんな可愛らしい私の牛達に、私は無理やり笑顔を送った。

    アリスさんは、今日は来ていない。


    あの後、アリスさんの悲痛な叫びに、私は驚いて何も言えなかった。
    そして、嫌な空気のまま、私達は別れてしまったのだ。


    アリス『私の名前を…呼ばないで!!!』


    あれはどういう意味だったのだろう。
    会ってから、たった2日目だったけど、彼女の名前は何度も呼んだ。
    それがいけなかったのだろうか?

    ジェーン「アリスさん…もう、来て…くれないのかな…」

    ふいに呟いたのは恐怖と悲しみに彩られた言葉。

    もっと、話したい、もっと、一緒に…いたい!!!

    ジェーン「アリスさん…!」


    もう一度、笑顔を見せて欲しい。

  39. 39 : : 2014/05/11(日) 00:55:29
    明日にたくさん進めますね♪
  40. 40 : : 2014/05/11(日) 17:17:08

    言い知れない孤独感に包まれて、ふいに雨の中へと脚を踏み入れた。
    今思えば、彼女の辛そうな、あの表情は…まるで雨にうたれたように重く、悲しいものだった。

    昨日のあの一瞬、アリスさんが本当に楽しそうに笑ってくれたとき、青空が広がり素晴らしい晴天が其処にはあったというのに…


    ジェーン「名前…か、」


    私は無我夢中で、ゲルガーさんの家に向かおうと準備した。
    昨日のあの怖い男の人と飲みに行ったゲルガーさんは、もう帰ってきているだろうか。

    いや、別に誰でもいい。
    とにかく…アリスさんの居場所を知っている人なら、誰だって…!

    そう準備を終えて小屋から出た瞬間に、私の目の前に飛び込んできたのは、昨日の男の人…リヴァイさんだった。

    リヴァイさんは不機嫌そうに凶悪な笑みを見せてから、私に向けて、呼んだ。



    リヴァイ「…久しぶりだな…モブリット・バーナー…」

    ジェーン「…え?」

    心臓が勢いよく、跳ねた、気がした。
  41. 41 : : 2014/05/11(日) 17:20:16


    リヴァイ「…やはり覚えていないのか…?」

    そう溜め息を溢された後に、勢いよく首を捕まれて、後ろの小屋の柱へと押し付けられた。

    背中に強い痛みが走り、よろければ…次に首の苦しさが伝わった。
    目の前のこの人の力は驚くほどに強いはずなのに、心のどこにも恐怖を感じなかった。
    それどころか、懐かしさで口元がにやける始末。

    別に痛いの好きとか、そういう性質はないはずなのになあ…


    リヴァイ「残酷じゃねえか…身体の自由も奪われ、それだけでなく、恋人まで奪うとはな。
    本当に…この世に神がいたら八つ裂きにしているところだ」


    ジェーン「あの…っ、くるしっ…い…ですっ」

    ぎりりと鈍い音をたてながら苦しみを与えてくる憎らしい手を全力で押さえながら、途切れ途切れにそう言った。

    リヴァイ「モブリット…、思い出せ。
    全部、…全部だ!!!思い出してアイツを救え、導け、呼んでやれ、お前なら覚えているだろう?
    お前はこの世で一番、アイツのことを忘れちゃいけねえ男だ」

    激しい感情によって彩られた目の前の瞳に私は身体を震わせた。


    何を?…何を思い出せばいい?


    何を私は忘れているんだ?アイツ、アイツって誰なんだ?


    モブリットって…誰なんだ?


  42. 42 : : 2014/05/11(日) 17:23:48


    ジェーン「あ、あ…の…とり、あえず…っ、説明をっ…してくださっ、…」


    私の言葉に、私の首を苦しめていた腕は、糸が切れたようにだらんと力を無くした。
    自分の首を絞めていた腕に今更ながら恐怖を感じて、目の前の男、リヴァイさんを見つめる。

    リヴァイ「モブリット…とりあえず、お前の小屋に入れろ」

    ジェーン「あ…えっと、僕の名前はジェーン…カイル…なんですが…、誰かと勘違いしていませんよね?」

    リヴァイ「…勘違いじゃねえよ。俺が認めた二人の男のうちの一人だ。いいから入れろ、雨が鬱陶しい」

    モブリット「…はい」

    なんか素で柄の悪い人だな…、私はリヴァイさんを小屋に招き入れてタオルを渡した。

    ジェーン「どうぞ…」

    リヴァイ「…何処までアイツに聞いた?」

    ジェーン「アイツって…アリスさん…です、よね?やっぱりアリスさんのお兄さんなんですか!
    アリスさんは何処に?身体は大丈夫なんですか!!?」

    夢中になってそう質問攻めにすれば、重い拳が私の頭を殴った。
    あまりの痛さに頭を押さえて、涙を流しそうになったのはカッコ悪いので全力で秘密だ。

    リヴァイ「うぜえ…、まあ…わかった。お前が何も聞かされていないことは、な」

    リヴァイさんは私の表情を見て辛そう目を伏せながら、はっきりとした口調で語り始める。


    リヴァイ「ゲルガーも、アイツも…お前の幸せを祈り、昔を話したくないらしい…
    が、俺はお前よりもアイツの幸せを祈っている…だから話す」

  43. 43 : : 2014/05/11(日) 17:26:39
    >>42
    すいません。名前のところを一箇所、モブリットと表記しちゃいました!
    ジェーンに脳内で変換しておいてください!!スライディング土下座!!
  44. 44 : : 2014/05/11(日) 17:28:34

    何を言いたいのか全くわからないけど、アリスさんが私の幸せのために苦しんでいるということだけは分かった。

    なら…私は…

    ふと、頭によぎるのは、木々の中を飛ぶ勇ましい後ろ姿。
    その人は愉しそうに此方を振り向いて、私を呼ぶのだ。


    “モブリット!!!“




    ジェーン「ぐぅうっ…」

    頭に針を刺したような鋭い痛みが走った。
    心臓が、止まってしまうのではないかと思うくらいに熱い、そして、…痛い、私は其処を服越しに押さえて、リヴァイさん睨むように見つめる。

    リヴァイ「モブリット…拒否するか?聞くことを、」

    ジェーン「いえ、話してください。私は…アリスさんと会ったばかりですが、彼女を苦しませるのは…嫌なんです。
    私の幸せよりも、私の魂が、彼女の幸せを祈っている」

    リヴァイさんはニヤリと笑うと目を細めた。

    リヴァイ「そうか…、…合格だな。拒否すれば殺してやろうかと思っていた」

    ジェーン「物騒な人ですね…お兄さん」

    リヴァイ「誰がお兄さんだ」

    また頭を殴られて、私は今度こそ泣きそうになった
  45. 45 : : 2014/05/11(日) 17:35:45


    リヴァイ「俺達には前世というモノはが存在する。そして、俺達はその前世で出逢った仲間だ」


    ジェーン「…へ?」


    最初から話がぶっ飛んできましたけど…
    まあ、リヴァイさん自体が余り話すのが得意ではないのだろう。
    細かいことは気にしないでおこう。


    リヴァイ「…そして…その時のお前の名前はモブリット・バーナー…アリスの副官で、恋人だった男だ。
    アリスは前世の記憶をお前が思い出すのを恐れていた、なんせ死が日常のクソみたいな世界だ、
    …お前に残酷な世界をまた記憶だけとはいえ、味わわせたくなかったらしい」


    ジェーン「私が…アリスさんの…」


    リヴァイ「ああ、前世で生を終えて転生した俺とアリスは、兄妹という形で再会した。
    幸いか不幸か、俺達は物心ついた頃から記憶を取り戻していた。
    そしてアイツは、お前を必死に探しだそうとし始めた、アイツは言っていた。

    思い出して欲しくはない、が、一目お前に会いたい、とな」

    ジェーン「…」

    リヴァイ「アリスは餓鬼の頃から身体は強い方じゃなかったが、それでも十分普通の生活ができるくらいだった。
    だが一年ほど前に、まれに身体に力が入らないという謎の異変が起きた。ガンの存在が明らかになったのは一ヶ月前。
    そして三日前に病院で入院していたはずのアイツの姿が病室から消えていた。
    アイツは、探すなと書いてある一つの置き手紙を残して、家族の前から姿を消しやがったんだ」


    怒気の込められた声を発したリヴァイさんは、悔しそうに眉をひそめた。

  46. 46 : : 2014/05/19(月) 23:08:28

    ジェーン「じゃあアリスさんは…今何処に住んでるのかすら分からないんですか?
    身体は?がんの進行状態はどうなっているんです!?」

    リヴァイ「うるせえ、住んでるところを知っているならわざわざお前に聞かねえよ。
    アリスのがんは…比較的に遅いし発見するのも早かったために一先ず安心な筈だ。

    が、このまま何もしなければ…間違いなく死ぬな」

    私は淡々と発せられた死の単語に悪寒を感じた、…もしかしたら、
    前世の恋人と聞いてしまって、この感情が生まれてしまったのやもしれない。

    でも、この感情は嘘ではないから、私は…きっと、


    ふと気が付けばアリスさんのことばかり考えていた。

    あの人を心の底から笑わせるたいと思った。

    きっと、きっとこれは…

    私は自分に従ってリヴァイさんの腕をグッと掴んだ。
    気持ちを押し付けるように、殴りかかる勢いで、私はリヴァイさんに叫ぶ。


    ジェーン「あの人が、僕はアリスさんが好きなんです…!!!!」



    リヴァイ「…あ?」

    ジェーン「アリスさんを探しましょう!私もお手伝い出来ることがあるならば、この身を犠牲にしてあの人を探します!
    リヴァイさん!私は彼女にっ、会いたい!」

    昨日に嫌な別れ方をして嫌だった!
    今彼女が隣にいないことに不安を感じて、不信感を抱いた。

    この孤独に耐えられないと、私の魂は叫んでいる。

    リヴァイさんは私の言葉が気に入らなかったのか、不機嫌そうに眉を潜めた。

    リヴァイ「ふざけるな。
    ノリで言ってんじゃねえよ、お前はアイツを覚えていない、それがお前の気持ちを嘘だと証明しているんじゃないか?」

    ジェーン「確かに、タイミングからして、私は彼女が前世の恋人だから、いまこの愛情があるのかもしれません

    …ですが、例えそうでも、私は…」


    初めてあったときに魅せられた、あの悲しげなヘイゼルの瞳に。

    引き込まれた、全ての思考が、あの目に。

    そして疑問を持った。



    何故あの名を名乗るのかを、


    アリス・エルサ


    違う、僕が呼びたいのはそんな名前じゃない。

    僕は、僕が愛したあの人の名前はっ!










    ジェーン「…、…さん」


    もう少しで呼べる名を、私は抑えきれない絶望とともに飲みこんだ。


    彼女の本当の名前が、僕には、分からない。

  47. 47 : : 2014/05/21(水) 18:28:30
    このお話は、もう、私の読みたかったストーリーその物で、始まった時からたぎってたぎって仕方ありません!!
    超絶期待です!!
  48. 48 : : 2014/05/21(水) 19:31:41
    >>47
    リオン様!
    そう言って頂けて本当に嬉しいです!
    私もこのssは死ぬ気で仕上げるつもりなので期待していてね♪
    応援よろしくです(屮°□°)屮
  49. 49 : : 2014/05/21(水) 22:54:16
    ハnゲホンアリスは何処へいっっっったのおおおお
  50. 50 : : 2014/05/21(水) 23:15:35
    >>49
    ハンジもどきさん!
    さあ、どこでしょうねえ(ニヤニヤ)ww
    応援よろしくです!
  51. 51 : : 2014/05/24(土) 18:40:22
    続きは夜に進めたいと思います(^○^)
  52. 52 : : 2014/05/25(日) 00:39:20


    次の日も、その次の日も、アリスさんはやって来なかった。
    そして、雨もずっと降り続ける。

    ジェーン「アリスさん…」

    私は今此処にいない彼女の姿を思い浮かべて、孤独感を味わった。
    毎日欠かしたことがない牛たちの体を撫でるという習慣を今日初めて怠った。

    何よりも大切にしてきた私の牛たちに心から謝ろうとしても、アリスさんが脳裏によぎるばかりだった。

    ジェーン「何故…来てくれないんですか…アリスさん…」

    また来るよと言った貴方の表情が懐かしい。

    ジェーン「私では、駄目なのですか?」

    ふと溢れる言葉は自分でも予想外なくらいに情けない言葉。

    貴方の恋人でない、モブリットという男でない、私は駄目ですか?
    私が貴方の名前を呼んではいけませんか?

    ジェーン「私は、貴方の名前を呼びたいです…アリスさん…」



    コンコン、と小屋の扉がノックされた後に開かれた。
    私は思わずアリスさんを思い浮かべて慌てて扉の方を見るが、その人はアリスさんではなかった。

  53. 53 : : 2014/05/25(日) 00:43:46


    エレン「…どうも…」

    雨に濡れた頭をペコリと下げて、エレン・イェーガーは、

    エレン「少し、いいですか?」

    と訪ねてきたのだった。



    ジェーン「すいません、こんなもんしかなくて…」

    ことり、とイェーガーさんの前に置いたのは、私が端正込めて作ったミルクを温めたものだ。
    雨に濡れた彼を暖めるために作ったのだが、彼はそれに手をつけず、ただただ気まずげに俯いていた。

    ジェーン「あの…」

    イェーガーさんと向かい合う形で椅子に腰掛けると、私は本題に入ることにした。

    ジェーン「それで、私に何か御用ですか?」


    エレン「えっと、奥さんも一緒に話を聞いて貰いたいんですけど」


    ジェーン「…はい?」

    エレン「…え?」

    沈黙が続くと、私はもしかしてと思ってイェーガーさんが勘違いしているであろう女性の名前を言ってみる。

    ジェーン「もしかして…アリスさんのことですか?」

    エレン「えっと、先日にゲルガーさんのところで倒れた女性のことです」


    間違いない、アリスさんだ。

  54. 54 : : 2014/05/25(日) 00:51:00


    ジェーン「勘違いです。私とあの人は…」

    私はそこで口を止めた、私とアリスさんの関係はなんだ?
    昔は恋人だったかもしれない、でもそれは私であって私ではないモブリット・バーナーという男だ。

    私と彼女は、出逢ってまもないし…友人、というわけでもない、ましてや恋人でもない。
    ただ、私が彼女のことを…、思っているだけで、彼女は…私でない私を思っている。

    その現実が何故だか悔しくて、私は俯きながら、否定した。

    ジェーン「私と彼女は…そんな関係ではありません」

    エレン「そう…ですか…、でもあの女性と一緒にいたのは紛れもなくアンタだ。
    だから…その、アニを家に送り届けてくれた恩人への親切として、教えておきます」

    ジェーン「…」

    エレン「あの女性…そろそろ治療を始めないとヤバイですよ」

    ジェーン「…え?」

    エレン「確かにあの年齢のわりには進行が遅そうだった。俺は何人もの患者を診てきたから大概の進行状態は分かる。
    でもな、あの若さだ、どうなるか予想がつかない。早々に都会の病院で治療を開始したほうが…」

    ジェーン「で、でも、発見も早くて、一先ず安心だって!」

    エレン「いいか?発見が早いから患者が助かるんじゃねえ、治療を早く始めたから患者が助かるんだ。
    専門家の話は聞いておくもんだぜ?」

    イェーガーさんの口調が素なのか、乱暴なものに変わっていることに気づいても、それを指摘する気にはなれない。
    なによりも、アリスさんの体が心配すぎて、まともに思考が働かない。

    ジェーン「どうしたら…」

    彼女を早く探さなくては!!!

  55. 55 : : 2014/05/25(日) 01:04:15


    エレン「…え?居場所が分からない?」

    ジェーン「そうなんです。彼女は家族にすら、自分の居場所を話していなくて…」

    エレン「…」

    どうしたらいいんだ?そうだ、そういえば、何故アリスさんは自分の居場所を教えなかったんだ?
    私に、モブリット・バーナーに会うために病院を出たのなら、どうして目的を果たしてからすぐに病院に戻らなかった?



    ジェーン「まさか…アリスさんは…助かる気がないのか?」



    おぞましい結論に達した私は一気に頭が真っ白になった錯覚を覚えた。

    エレン「カイルさん…、ゲルガーさんに話を聞いてみよう。何か手がかりがあるかもしれない」

    ジェーン「!!?…そう、ですね…」

    でも、実の兄であるリヴァイさんが見つけられていないのだから、ゲルガーさんが何か知っているとは考えにくい。
    望みは薄いだろう…。

    ジェーン「アリスさん…っ!!」

    流れる冷や汗を拭いながら、私は雨合羽を着用して、外に出た。

  56. 56 : : 2014/05/25(日) 01:19:01


    ゲルガーさんの家に私とイェーガーさんは向かった、きょとんとした表情で私達を迎えたミーナの後ろで、珍しくゲルガーさんが家にいる。
    まるで私を待っていたかのように、

    ジェーン「ゲルガーさん…」

    ゲルガー「よお、リヴァイから聞いた。知っちまったんだな、昔の話について、よ」

    ジェーン「…はい…」

    私が頷くと、ゲルガーさんは悲しげに微笑んだ。
    私とゲルガーさんの会話に、首をかしげるイェーガーさんは、リーネさんに腕を引かれて別の部屋へと移動して行った。

    ゲルガー「さっきの、エレンは、昔、人類の希望って呼ばれてたんだぜ?」

    ジェーン「っえ!!?」

    イェーガーさんまで私の昔に関係しているんですか?!
    どんだけ前世の知り合いが住んでいるんだ、この村は!

    ジェーン「じゃあ、アリスさんがイェーガーさんの家や、此処の家にも入りたがらなかったのは…」

    ゲルガー「まあ、お前さんか、俺達の記憶を思い出させないようにするためだろう。
    しっかし、残念ながら、俺とリーネはとっくに思い出してたんだけどな」

    にかっと笑っているはずなのに、普段のゲルガーさんの覇気は感じられなかった。

  57. 57 : : 2014/06/01(日) 22:20:49


    ゲルガー「ジェーン…今ならまだ間に合うぞ?アリスのことを、昔のことを忘れて新しい恋人を作るんだ」

    ジェーン「…どうして、そんなことを言うのですか?」

    ゲルガーさんの言葉は私を驚かせた。何故と聞いたものの分かってはいたのだ。
    ゲルガーさんが私を思って言ってくれている気持ちの篭った言葉だと。

    忘れてもいいと、昔じゃなく、今を生きろと、私の逃げ道を作ってくれているんだ。

    ゲルガー「これはアリスが思ってることでもあるんだよ」

    ジェーン「…私は、」

    ゲルガー「自分に束縛されないでほしかったんだろうぜ?」

    ジェーン「無理ですよ」

    ゲルガーさんの言葉に私はゆっくりと、確かに首を振った。


    束縛?

    会ったときからされている、あの人の…悲しげな、

    僕を見つめるヘイゼルの瞳に。


    ジェーン「前世なんか、昔なんか関係ない。私は、アリスさんが、好きなんです」

  58. 58 : : 2014/06/08(日) 13:55:33


    僕の言葉に、ゲルガーさんは「仕方ねえな…」と言って一つの手帳を出した。

    ジェーン「それは…?」

    ゲルガー「昔の仲間の住所だ。金類や携帯を家に置いて出ていったアリスがどこかに滞在するなら、昔の仲間に頼ってる可能性が一番高い…」

    ジェーン「そんなの…リヴァイさんがもうやっているのではないですか?」

    ゲルガー「一ヶ所だけ、アイツが知らなくて俺が知っている住所があるんだよ…、たぶんアリスは其処にいる…」

    ジェーン「どうして…それをリヴァイさんに話さなかったんですか?」

    ゲルガーさんは、困ったような顔をした後に肩をすくめた。

    ゲルガー「さぁなあ…でもよ、俺はリヴァイもお前も、アイツも大好きなんだよ…」

    ジェーン「…」

    ゲルガー「アリスは死にたがってる」

    ジェーン「…」

    そうだ。あの人は、ガンを治療する気がないのだ。何故だかは分からないけれど…

    ゲルガー「その間違った選択を正すのは、俺でもリヴァイでもなくて、」

    私は差し出された手帳を握り締めた。

    ゲルガー「モブリット…バーナーだからな」

    ゲルガーさんに御礼を言って、僕は手帳の中で丸がついているのを見た。
    ミーナさんと茶を飲んでいるイェーガーさんに、

    ジェーン「アリスさんの場所のヒントを頂きました」
    と言って笑った。

    エレン「何処なんですか?」

    丸がついている住所を私は読み上げる。

    ジェーン「〒123-4567進撃町シガンシナ2番地123-45」

    最後に‘ナナバ’という人名も書かれていた。

    エレン「そこは、俺やアルミン、ミカサの出身地です!」

    ジェーン「え?本当ですか。申し訳ありませんが、案内してもらえませんか、…私は都会が不馴れで…」

    というか行ったことがない。
    イェーガーさんは快く頷いて、翌日に立とうと言って、私達は別れた。

  59. 59 : : 2014/06/08(日) 14:00:32
    住所は完璧に作ってますw
  60. 60 : : 2014/06/08(日) 14:33:11


    家に帰れば、リヴァイさんが前に来たときと同じように不機嫌そうに柱にもたれかかっていた。
    私はアリスさんの居場所の手がかりを伝えようか、迷って、彼を見つめる。

    リヴァイ「…、モブリット…」

    ジェーン「…きょ、今日も、アリスさんは来てくれませんでした」

    リヴァイ「そうか…」

    雨に濡れて髪を、鬱陶しげに払いながら、リヴァイさんは私の方へと歩み寄ってくる。

    リヴァイ「お前…これからどうする気だ?」

    ジェーン「…私は、」

    リヴァイ「数日前に俺が来たとき、お前は俺に言ったな。アリスが好きだと…」

    ジェーン「はい…」

    肩に重さを与える雨は私とリヴァイさんに圧し掛かる。
    雨の勢いが強くて、あまり目を開けていられないけど、微かに見えたリヴァイさんの瞳は悲しみに揺れていた。

    リヴァイ「今も好きか?」

    ジェーン「はい。好きです」

    リヴァイ「なら、どうする?これから…」

    ジェーン「行きます。アリスさんのところに…必ず、アリスさんを死なせたりはしません」

    リヴァイさんを安心させるようにそう言った。
    今回は私が一人で、アリスさんのもとに行く、良い悪いもなく、ただ、一対一であの人と向き合いたいから。

    リヴァイさんには、明日のことを言わなかった。


    ただ、去り際に、

    リヴァイ「アリスを頼む」

    と言った彼は、もしかしたら、察しはついていたのかもしれない。
    私がアリスさんの居場所を知っていることを、明日そこに行くことを…

    どちらにしろ、私は応えた。

    ジェーン「はい!」

  61. 61 : : 2014/06/08(日) 21:38:58
    このssももうすぐ終わりですね~(´・ω・`)最後まで応援よろしくです!
  62. 62 : : 2014/06/09(月) 19:56:14


    翌日の朝早くに、私はイェーガーさんの家に向かった。
    私を出迎えたのは主人の方でなく妻のミカサさんであった。

    ミカサさんは私に都会を歩いても注目されないように、黒いスーツを着させてくれた。

    それに私は、ミカサさんが読み取りやすいように大袈裟に口を動かして御礼を言った。

    ジェーン「ありがとうございます。ミカサさん」

    ミカサ「いや、サイズは大丈夫ですか?」

    ジェーン「はい」

    私が頷くと、別の部屋からスーツ姿のイェーガーさんが顔を出す。
    うまくネクタイを結べないのか、ミカサさんを黙って見つめていた。

    ミカサ「…はあ、」

    ミカサさんは嬉しそうに溜め息をつくと、イェーガーさんに近寄り、ネクタイを器用に結んだ。
    ぎゅっと固く締めてから「これでいい?」と首をかしげる。

    エレン「べ、別に頼んでないからな!」

    ミカサ「目で訴えていた」

    エレン「くっ…」

    ミカサさんはクスクスと笑いながらイェーガーさんに背を向けて私に頭を下げると部屋から出ていった。

  63. 63 : : 2014/06/09(月) 19:58:02


    私は微笑ましい夫婦に気を良くした後に、改めてイェーガーさんに頭を下げた。

    ジェーン「あの、ありがとうございます…イェーガーさんには関係が無いのに、都会まで案内してもらうことまで…」

    エレン「別に、良いですよ。これは俺の我が儘でもあるんで」

    ジェーン「我が儘?」

    エレン「ああ…、」

    イェーガーさんはこくりと頷くと、窓の外の、雨で支配された世界を見る。
    アリスさんと別れてから、ずっと降り続ける雨は一体いつやむのだろうか?

    エレン「ミカサの耳は、一生治らないんです。治したくても治らない…」

    ジェーン「…」

    エレン「望んでも叶わない人間がいるのに…、…望めば叶う人間が、望まない…そんなことは俺が許さねえ!!」

    ジェーン「…」

    エレン「助かるなら助ける、例えソイツが望まなくても…助からない奴のために苦しんで生きなきゃいけねえんだ!俺はっ…」

    ジェーン「そうです…、よね」

    どんなに辛いことがあっても、苦しまなきゃいけない。

    例え彼女が生きることを望まなくても…私は彼女を生かすのだ。


    それが私の役目だから、

    彼女の名前が分からない私だけれど、これは私の義務だから。



    昨日の夜に夢を見た。
    そこにはたくさんの本の中で眠るアリスさんと瓜二つの女性がいて…、私はその人にそっと毛布をかけていた。

    自分の表情は幸せそうで、私は心から彼女を愛していた。

    ジェーン「アリスさん…、」

    アリスでない、本当の彼女を私は、愛していたのだ。
    私はアリスさんの背中を思い浮かべて、困ったように笑った。


  64. 64 : : 2014/06/13(金) 23:42:13


    都会は私の想像を遥かに越えていた、まさに夢のような世界だった。
    首が痛くなるほどに高い高層ビルが、見える限り立ち並び、多くの人が波を作って横断歩道を渡る。

    イェーガーさんと離れないように必死に人波に逆らうけれど、気を抜けば人波に拐われてしまいそうだった。

    エレン「カイルさん!大丈夫ですか?」

    ジェーン「は、はい!なんとか…」

    エレン「ゲルガーさんに渡された住所は、歩けば30分ほどかと思います…まあ初めての都会は息が詰まるでしょうけど我慢してください…」

    ジェーン「大丈夫…大丈夫ですけど…うわっ、」

    どんと勢いよく人とぶつかってしまった私は、相手の高そうなバッグが落ちてしまったことに気付いた。

    それに気づいて、慌ててバッグを拾うと、ぶつかった相手にそれを差し出す。
    相手は金髪の髪をなびかせて、まるで彫刻で出来た女神像のように微笑んだ。

    ?「どうもありがとう。モブリット」

    ジェーン「え?…どうして…その名前を…」

    ?「ふふふ…何故だと思う?」

    ジェーン「…貴方は…一体…」

    目の前の女性に私が詰め寄ろうとした時と、イェーガーさんが私を呼ぶのは同時だった。

    エレン「カイルさん!何してるんすか!」

    ジェーン「すいません…この女性とぶつかってしまって…あれ?」

    一瞬エレンさんに視線を移してもう一度彼女が居た場所を見やると、彼女はいなくなっていた。

    ジェーン「…」

    エレン「誰か居たんですか?」

    ジェーン「いえ…、何でもありません」

    先程の彼女は前世での私の名前を知っていた…ということはアリスさんの手掛かりを知っていたかも!

    そう思うと、私は無我夢中で周りを見渡して彼女を探した。


    しかし大勢の人間の中で探すことは出来ず、私は彼女を探すのを諦めたのだった。


  65. 65 : : 2014/06/15(日) 15:20:56


    住所の場所に向かうと、そこは大きな一軒屋、私は其処を驚きながら眺めた。
    なんせそこは私の家の小屋の何個分だって文句を言ってやりたいほどに大きくて、インターホンを鳴らすことさえ忘れていた。

    エレン「カイルさん!早く押してください!」

    ジェーン「あ、ああ…すみません」

    私がインターホンのボタンに指を当てたときと、目の前の扉が開くのは同時だった。


    ガチャリ…

    「じゃあ、世話になったね。ナナバにはよろしく伝えといて…!」


    出てきたのはずっと会いたかった顔で、

    私はその人の名を呼んだ。


    ジェーン「アリスさん!!!」


    アリス「っ!!」

    アリスさんは持っていたバッグを私に向かって投げて、私が下がった瞬間に逃げていった。


    ジェーン「ま!まって!!待ってください!アリスさん!!」

    私は彼女の背中を慌てて追った。

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kokonattukasi

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